(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153494
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】テールゲートの開閉システム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/73 20150101AFI20231011BHJP
E05F 15/611 20150101ALI20231011BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20231011BHJP
E05B 49/00 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
E05F15/73
E05F15/611
B60J5/10 K
E05B49/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062805
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】柳 潤一
(72)【発明者】
【氏名】榊 和彦
【テーマコード(参考)】
2E052
2E250
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA06
2E052CA06
2E052EA01
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA12
2E250AA21
2E250FF23
2E250HH01
2E250LL05
2E250MM05
(57)【要約】
【課題】簡便な動作により、作業者の意図したタイミングでテールゲートを開閉できるテールゲートの開閉システムを提供する。
【解決手段】車両2の後面部3に配置されているテールゲート1を開閉させる開閉装置4を制御する制御装置12を備えたテールゲート1の開閉システム10において、閉じた状態のテールゲート1よりも下方の後面部3に配置されて、後面部3よりも後方に存在する物体までの距離データを逐次、取得する測定装置11を備え、制御装置12は、測定装置11が取得した連続した複数の距離データに基づいて、測定装置11の測定範囲内のトリガ領域13への物体の進入動作およびそのトリガ領域13からの物体の退出動作を特定するデータ処理と、特定した進入動作および退出動作の組み合わせに基づいて、開閉装置に4よりテールゲート1を開閉させる制御処理と、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後面部に配置されているテールゲートを開閉させる開閉装置を制御する制御装置を備えたテールゲートの開閉システムにおいて、
閉じた状態の前記テールゲートよりも下方の前記後面部に配置されて、前記後面部よりも後方に存在する物体までの距離データを逐次、取得する測定装置を備え、
前記制御装置は、前記測定装置が取得した連続した複数の前記距離データに基づいて、前記測定装置の測定範囲内の前記後面部から離れた領域に設定されているトリガ領域への前記物体の進入動作およびそのトリガ領域からの前記物体の退出動作を特定するデータ処理と、特定した前記進入動作および前記退出動作の組み合わせに基づいて、前記開閉装置により前記テールゲートを開閉させる制御処理と、を実行することを特徴とするテールゲートの開閉システム。
【請求項2】
前記物体が前記後面部よりも後方に存在する作業者の足の場合に、前記進入動作および前記退出動作の組み合わせが前記作業者の足によるステップ動作である請求項1に記載のテールゲートの開閉システム。
【請求項3】
実行された前記制御処理では、その制御処理の実行前の前記テールゲートの開閉状態に応じて、前記テールゲートの開動作、閉動作、および、開閉動作の停止のいずれかが行われる請求項1または2に記載のテールゲートの開閉システム。
【請求項4】
前記組み合わせが、前記進入動作および前記退出動作の特定された順番を条件とする許可パターンに適合した場合に、前記制御処理が実行される請求項1または2に記載のテールゲートの開閉システム。
【請求項5】
前記許可パターンは、前記順番に加えて、前記トリガ領域での前記物体の待機時間を条件とし、前記待機時間が待機時間閾値以上の場合に前記許可パターンに不適となる請求項4に記載のテールゲートの開閉システム。
【請求項6】
前記制御装置は、実行中の前記データ処理で、前記組み合わせが前記許可パターンの途中まで適合した場合に、前記テールゲートまたは前記後面部に配置された報知装置により前記組み合わせが前記許可パターンの途中まで適合したことを報知させる制御処理を実行する請求項4に記載のテールゲートの開閉システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テールゲートの開閉システムに関し、より詳細には、開閉装置により車両の後面部に配置されているテールゲートを開閉する開閉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後面部に位置しているテールゲートは、荷物を荷室に入れたり、荷室から荷物を取り出したりするときに、手を使わずに開閉できることが望まれている。これに関して、テールゲートをハンズフリーで開閉する装置が種々、提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-196798号公報
【特許文献2】特開2020-128637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、カメラの画像から車両操作者による予め定められた動作を検出して、ゲートを閉位置から開位置に動作させている。この予め定められた動作は、画像データから画像解析により検出可能なキック動作などの足を大きく動かす特異な動作であることが必須である。しかしながら、そのような特異な動作は、不安定な姿勢になったり、その不安定な姿勢が検出されるまで維持する必要があったりする。それ故、この発明では、テールゲートを意図したタイミングで開くことができるが、特異な動作を車両操作者に強いることになる。また、歩行器、歩行補助杖、あるいは、車椅子の使用者などの足の動作に制限あり、特異な動作を行うことができない者には、テールゲートを開くことができない。
【0005】
特許文献2に記載の発明は、カメラで撮像したテールゲートの移動範囲内に、同一の人物が一定時間以上入っていると判断した場合に、その人物が移動範囲から抜けたらテールゲートを閉鎖している。この発明では、人物に特許文献1に記載のような特異な動作を強いることが無いが、テールゲートが意図しないタイミングで閉鎖するおそれがある。例えば、複数の荷物を荷室に積み込む作業中に、その作業者がカメラの撮像範囲外に移動するごとにテールゲートが閉鎖してしまう。
【0006】
以上のように、作業者に特異な動作を強いることなく、テールゲートを意図したタイミングで開閉するには、改善の余地がある。また、特許文献1、2に記載の発明は、どちらもテールゲートにカメラやセンサを備えており、テールゲートを開くか、あるいは、閉じるかのどちらか一方に限定されてしまう。仮に、両方の発明を組み合わせたとしても、テールゲートを開くための動作と、閉じるための動作とが異なり、テールゲートの開閉制御が複雑になることに加えて、開閉時に作業者が混乱するおそれがあり操作性に難がある。この点でも改善の余地がある。
【0007】
本開示の目的は、簡便な動作により、作業者の意図したタイミングでテールゲートを開閉できるテールゲートの開閉システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の一態様のテールゲートの開閉システムは、車両の後面部に配置されているテールゲートを開閉させる開閉装置を制御する制御装置を備えたテールゲートの開閉システムにおいて、閉じた状態の前記テールゲートよりも下方の前記後面部に配置されて、前記後面部よりも後方に存在する物体までの距離データを逐次、取得する測定装置を備え、前記制御装置は、前記測定装置が取得した連続した複数の前記距離データに基づいて、前記測定装置の測定範囲内の前記後面部から離れた領域に設定されているトリガ領域への前記物体の進入動作およびそのトリガ領域からの前記物体の退出動作を特定するデータ処理と、特定した前記進入動作および前記退出動作の組み合わせに基づいて、前記開閉装置により前記テールゲートを開閉させる制御処理と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様は、トリガ領域への進入動作とトリガ領域からの退出動作とが、歩行や足の踏み出しの動作、あるいは、歩行器、歩行補助杖、車椅子などの前進や後退などの動作により簡便に成立する。また、トリガ領域への進入動作とトリガ領域からの退出動作とを組み合わせることで、開閉の合図として規則性のある動作を用いることができる。それ故、本発明の一態様によれば、簡便な動作により、作業者の意図したタイミングでテールゲートを開閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】テールゲートの開閉システムの実施形態を例示する説明図である。
【
図2】
図1の計測装置とトリガ領域の中央モードを例示する説明図である。
【
図3】
図1の計測装置とトリガ領域の左右モードを例示する説明図である。
【
図4】
図1の計測装置とトリガ領域の左右モードの別例を例示する説明図である。
【
図5】テールゲートの開閉方法におけるデータ処理方法を例示するフロー図である。
【
図6】許可パターンに不適であったステップ動作を例示する説明図である。
【
図7】許可パターンに不適であったステップ動作を例示する説明図である。
【
図8】許可パターンに不適であったステップ動作を例示する説明図である。
【
図9】許可パターンに不適であったステップ動作を例示する説明図である。
【
図10】許可パターンに不適であったステップ動作を例示する説明図である。
【
図11】許可パターンに不適であったステップ動作を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、テールゲートの開閉システムを、図に示す実施形態に基づいて説明する。図中では、車両2の左右方向(幅方向)をX方向とし、車両2の前後方向(進退方向)をY方向とし、鉛直方向をZ方向とする。なお、本開示では、
図1で図示したテールゲート1の開閉を操作する作業者は、車両2の運転者である。また、作業者は、テールゲート1を含む車両2のドア類の施錠および施錠の解除を無線通信により行う携帯器(FOBキー)31を携帯しているものとする。
【0012】
図1に例示するテールゲート1は、車両2の後面部3に配置されている。テールゲート1は、開閉装置4の駆動により開閉する構成であればよく、公知の種々の電動式テールゲート(パワーテールゲート)を用いることができる。テールゲート1には、施錠装置5と報知装置6とが配置されている。報知装置6としては、テールゲート1の開閉状態を作業者に報知可能な音響発生器や発光装置が例示される。
【0013】
開閉システム10の実施形態は、テールゲート1の開閉状態に応じて、テールゲート1の開動作、テールゲート1の閉動作、および、それらの開閉動作の停止の三つのうちのいずれかを操作するシステムである。開閉システム10は、測定装置11、および、制御装置12を備えている。開閉システム10は、制御装置12により、測定装置11で取得した連続した複数の距離データに基づいて作業者のトリガ領域13への進入動作およびトリガ領域13からの退出動作を特定するデータ処理と、その進入動作および退出動作の組み合わせに基づいて、開閉装置4によりテールゲート1を開閉させる制御処理とを実行する。
【0014】
進入動作および退出動作は、作業者の歩行、あるいは、前への足の踏み出しやその踏み出した足の後ろへの戻しなどの簡便な動作により成立する動作である。また、進入動作および退出動作は、作業者が歩行や足の踏み出しなどの動作が困難な者(例えば、車椅子の使用者など)でも成立可能な動作でもある。つまり、進入動作および退出動作は、作業者の両足が地面に着いていても成立することから作業者が不安定な姿勢になることがない動作であり、バリアフリー対応が可能な動作でもある。
【0015】
測定装置11の距離データの対象が作業者の足である場合に、進入動作および退出動作の組み合わせは、作業者の足の動作により決定される。このような作業者の足の動作による進入動作および退出動作の組み合わせは、以降、ステップ動作とする。以下、本実施形態では、一例として、制御装置12により、データ処理でステップ動作を特定し、制御処理でそのステップ動作に基づいてテールゲート1の開閉動作が行われる構成について説明する。
【0016】
測定装置11は、後面部3よりもY方向後方に存在する物体までの距離を示す距離データを逐次、取得する。測定装置11は、超音波センサ、二次元走査型の光距離センサ、三次元測域センサなどの公知の種々の距離計を用いることができる。測定装置11は、閉まっている状態のテールゲート1の下端よりも下方の後面部3に配置されている。後面部3には、テールゲート1の他に図示しないリアバンパー、尾灯(テールランプ)、方向指示器(ターンランプ)などが配置されているが、測定装置11は、リアバンパーに配置されることが望ましい。測定装置11がテールゲート1の下端よりも下方の後面部3に配置されることで、テールゲート1の開閉に関わらずに、測定装置11は測定を行うことができる。また、測定装置11が後面部3のより下方に配置されているリアバンパーに配置されることで、測定装置11の距離データの対象を作業者の足に定めることが可能となる。
【0017】
制御装置12は、公知の種々のコンピュータを用いることができる。制御装置12は、中央演算処理部、主記憶部、補助記憶部、入出力部を有している。制御装置12は、入出力部を介して測定装置11、開閉制御装置20、および、ボディ制御装置30に接続されている。開閉制御装置20およびボディ制御装置30も制御装置12と同様に公知の種々のコンピュータが用いられている。開閉制御装置20は、開閉装置4、施錠装置5、および、報知装置6を制御している。ボディ制御装置30は、開閉制御装置20よりも上位の制御装置であり、テールゲート1を含む車両2の全てのドア類の施錠および施錠の解除を管理、制御している。ボディ制御装置30は、作業者が携帯している携帯器31と無線通信可能である。ボディ制御装置30は、携帯器31の固有の情報を受信して、その固有の情報を認証することで、テールゲート1を含む車両2のドア類の施錠や施錠の解除を管理、制御している。制御装置12は、自身の電源の入切が、ボディ制御装置30により制御されている。
【0018】
図2~
図4は、測定装置11のより具体的な一例を示している。また、制御装置12が実行するデータ処理に用いられるトリガ領域13の一例も示している。
【0019】
測定装置11は、一つの距離計で構成されていてもよいが、後面部3のX方向に並んだ複数の距離計で構成されていることが望ましい。詳述すると、測定装置11は、車両2のX方向の中心線(図中の一点鎖線)を介して左右の各々に配置された二つの距離計で構成されることが望ましい。測定装置11が一つの距離計で構成された場合には、作業者のY方向の動きのみしか把握することができないが、測定装置11がX方向に並んだ複数の距離計で構成された場合には、各々の距離計の距離データをデータ処理することで、作業者のX方向の動きも把握することが可能となる。これにより、後面部3よりも後方の領域を広く活用することが可能となり、より利便性が増す。また、作業者のX方向の動きを把握することで、作業者のステップ動作と作業者以外が行う動作とを区別することが可能になる。作業者以外が行う動作としては、作業者以外の者が後面部3の後方を横切る動作などが例示される。よって、測定装置11が複数の距離計で構成されることで、テールゲート1の誤作動を防止することができる。
【0020】
実施形態では、測定装置11が、二つの超音波センサで構成されている。測定装置11が複数の距離計で構成された場合に、距離データは、複数の距離計の各々で測定された距離データを含む。また、測定装置11が複数の距離計で構成された場合に、複数の距離計の各々の測定周期(サンプリング周期)の長さは同一である。各々の測定周期は、同期してもよいが、非同期にして、各々の距離計で距離データが測定されるタイミングが異なることが望ましい。二つの超音波センサの場合は、測定周期を非同期にして交互に超音波が発振されることが望ましい。このように、複数の距離計の各々の測定周期を非同期にすることで、距離データの測定の連続性が増し、距離データに基づいた動作の特定には有利になる。
【0021】
距離計の距離データを測定可能な測定範囲は、Z方向視で、車両2の後方に向いていて、中心が距離計の後端に位置する扇形状を成している。複数の距離計の各々の測定範囲は、車両2の中心線の近傍で重なることが望ましく、重なった部分の形状が中心線で左右対象であることがより望ましい。複数の距離計どうしの間の長さや各々の測定範囲の扇形の中心角は、各々の測定範囲が重なる範囲で適宜選択可能である。複数の距離計どうしの間の長さや各々の測定範囲の中心角を調節することで、トリガ領域13やスタート領域14の後面部3からの離間距離や、それぞれの領域のX方向の幅を調節することが可能となる。X方向視での距離計の測定範囲は、特に限定されるものではないが、少なくとも作業者の足が測定対象となっていればよい。なお、距離計の距離データは、測定範囲外を全て一定値とする。一定値は、後述する遠距離Hと等しくするとよい。
【0022】
トリガ領域13およびスタート領域14は、制御装置12の主記憶部や補助記憶部に記憶された特定の領域であり、測定装置11の測定範囲内で後面部3から後方に離れた位置に設定されている。トリガ領域13およびスタート領域14は、距離計の後端からの距離である近距離L、中距離M、および、遠距離Hに基づいて設定されている。近距離Lが最も短く、遠距離Hが最も長く、中距離Mは近距離Lおよび遠距離Hの間の長さである。近距離Lと中距離Mとの間の領域は、作業者がテールゲート1を手動で開閉するための施錠装置5を操作可能な領域であることが望ましく、中距離Mと遠距離Hとの間の領域は、作業者が開閉するテールゲート1に接触しない領域であることが望ましい。
【0023】
トリガ領域13およびスタート領域14は、各々の並び方や形状が異なる三つのモードがあり、各々のモードの切り替えは二つの距離計の距離データの差に基づいている。三つのモードは、各々の領域がY方向に並んだ中央モード(
図2参照)と、X方向に並んだ左モードまたは右モード(
図3、
図4参照)と、に区別される。なお、
図3および
図4には、右モードが例示されており、左モードは、
図3および
図4が左右に反転した状態になるために図示を省略した。距離データの差は、一方の距離計の距離データから他方の距離計の距離データを減算した値である。距離データの差が、負のモード基準値から正のモード基準値の範囲内(ただし、負のモード基準値や正のモード基準値を含む)の場合に中央モードとなり、距離データの差が、負のモード基準値未満または正のモード基準値超の場合に左モートまたは右モードとなる。モード基準値は、二つの距離計の測定範囲の重なりに基づいて適宜設定可能であるが、二つの距離計の測定範囲の重なりに基づいて設定されるとよい。
【0024】
図2に例示する中央モードのトリガ領域13は、二つの距離計の近距離L以上、中距離M未満の扇形環状を成す測定範囲の各々が重なった領域である。中央モードのスタート領域14は、二つの距離計の中距離M以上、遠距離H以下の扇形環状を成す測定範囲の各々が重なった領域である。中央モードでは、Y方向後方から前方に向かってスタート領域14およびトリガ領域13の順に並んでいて、スタート領域14の面積がトリガ領域13よりも広くなっている。
【0025】
図3に例示する右モードのトリガ領域13は、一方の距離計の近距離L以上、中距離M未満の扇形環状を成す測定範囲の領域である。右モードのスタート領域14は、他方の距離計の遠距離H以下の扇形状を成す測定範囲の領域から、トリガ領域13に重なった領域が省かれた領域である。右モードでは、X方向右方から左方に向かってスタート領域14およびトリガ領域13の順に並んでいて、スタート領域14の面積がトリガ領域13よりも広くなっている。
【0026】
図4に例示する右モードのスタート領域14は、他方の距離計の近距離L以上、遠距離H以下の扇形環状を成す測定範囲の領域から、トリガ領域13に重なった領域が省かれた領域である。このように、左右モードでは、スタート領域14の範囲を変えることもできる。また、左右モードでは、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作時に、
図3に例示する右モードを使用し、トリガ領域13からスタート領域14への退出動作時に、
図4に例示する右モードを使用することもできる。
【0027】
中央モードと左右モードとの切り替えは、測定装置11が取得した距離データに基づいて、検知物体の静止と運動とを判定し、検知物体が静止している場合に左右モードに切り替えるとよい。例えば、検知物体としては、駐車場に駐車した車両の後方に壁がある場合に、測定装置11はその壁を検知物体として検知し、検知物体が静止しているため、左右モードに切り替えられる。このように、検知物体の静止と運動とに基づいて中央モードと左右モードとが切り替えられることで、車両の後方に壁があり、車両の後方からアクセスできず、中央モードではテールゲート1の開閉が行えない場合に、左右モードに切り替えることでテールゲート1の開閉を行うことが可能となる。
【0028】
測定装置11が取得した連続した複数の距離データに基づいたステップ動作の特定は、動作基準値を用いている。例えば、中央モードの場合に、左右の距離計の各々の連続した複数の距離データのうちのそれらの複数の距離データでの変位が動作基準値以上になったタイミングの距離データがステップ動作の終点の距離データとなる。また、右モードの場合に、左側の距離計の連続した複数の距離データのうちのそれらの複数の距離データでの変位が動作基準値以上になったタイミングの距離データがステップ動作の終点の距離データとなる。なお、距離計の距離データは測定範囲外を一定値として扱うため、その変位が動作基準値以上になる前に、距離データが一定値になった場合は、一定値がステップ動作の終点の距離データとなる。ステップ動作の終点は次のステップ動作の始点でもある。動作基準値は適宜設定可能であるが、トリガ領域13のY方向の長さ、つまり、近距離Lと中距離Mとの差分以下の値であることが望ましい。
【0029】
トリガ領域13への進入動作およびトリガ領域13からの退出動作の組み合わせは、多数の組み合わせが存在する。制御処理を実行するための組み合わせの許可パターンは、単純なパターンであることが求められる。それ故、許可パターンは、進入動作および退出動作の動作回数が、2回以上、6回以下が望ましい。
【0030】
また、許可パターンは、進入動作および退出動作の特定された順番を条件とすることが望ましい。本実施形態の許可パターンは、進入動作および退出動作の順に特定された組み合わせの場合のみに適合し、それ以外の組み合わせの場合に不適となる。よって、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作が特定された後に、トリガ領域13からスタート領域14以外への退出動作が特定された場合の組み合わせは、許可パターンに不適となる。許可パターンは、進入動作および退出動作の特定された順番に基づいたパターンであればよく、進入動作が特定された後に退出動作が特定されるパターンに限定されるものではない。例えば、許可パターンは、退出動作が特定された後に進入動作が特定されるパターンでもよい。また、進入動作が特定された後に退出動作が特定されるパターンが複数回繰り返されるパターンでもよい。また、許可パターンは、車両2の運転者により適宜変更可能でもよい。ただし、本実施形態で例示した許可パターンは、規則性のあるパターンのなかでも動作数が少ないため、ステップ動作がより簡便になり、テールゲート1の開閉の操作性の向上には有利になる。
【0031】
図2~
図4には、許可パターン(AからDまで)に適合したステップ動作の一例が示されている。Aはスタート領域14への進入動作を、Bはスタート領域14からトリガ領域13への進入動作を、Cはトリガ領域13からスタート領域14への退出動作を、Dはスタート領域14からの退出動作を、各々示している。この許可パターン(AからDまでのステップ動作)は、進入動作および退出動作の特定された順番が条件となっており、その順番として、先に進入動作(B)が特定されて、後に退出動作(C)が特定される順番が条件となっている。
【0032】
許可パターンは、トリガ領域13のみを用いて、トリガ領域13への進入動作(B)とトリガ領域13からの退出動作(C)との二つの動作で構成されてもよい。ただし、トリガ領域13のみを用いる手法では、トリガ領域13の前方からの進入動作やトリガ領域13をX方向に横断する動作でも許可パターンが成立して、開閉制御が実行されることになる。このように、単純な動作で許可パターンが成立するようになると、作業者以外の人、動物、物体のちょっとした動作でも開閉制御が実行されることになり、開閉作業が頻発することになる。そこで、許可パターンは、トリガ領域13とスタート領域14との二つの領域を用いて、スタート領域14への進入動作(A)とスタート領域14からトリガ領域13への進入動作(B)とトリガ領域13からスタート領域14への退出動作(C)とスタート領域からの退出動作(D)との四つの動作で構成されることが望ましい。このように、トリガ領域13とスタート領域14との二つの領域を用いることで、許可パターンが簡便に成立する条件でありながら、より複雑になり、予期しないタイミングでのテールゲート1の開閉動作の防止には有利になる。以下のデータ処理工程では、
図2~
図4で示した許可パターンを用いることとする。
【0033】
図5にテールゲート1の開閉方法でのデータ処理工程の一例を示す。まず、ボディ制御装置30が制御装置12への通電を許可する条件が成立したか否かを判定し、条件が成立したと判定した場合に、制御装置12への通電が開始されて、開閉方法がスタートする。ついで、測定装置11が距離データを取得する(S110)。ついで、測定装置11が取得した連続した複数の距離データに基づいて、進入動作および退出動作を特定する各データ処理を行う(S120~S180)。このデータ処理工程により特定したステップ動作に基づいて、開閉装置4によりテールゲート1を開閉させる開閉工程を行う。以下に、制御装置12への通電を許可ステップおよび(S110~S180)の各ステップの内容を詳述する。
【0034】
開閉方法のスタート前に、制御装置12への通電を許可するステップでは、ボディ制御装置30により、予め設定された条件が成立したか否かが判定される。ボディ制御装置30により、条件が成立したと判定された場合に、制御装置12への通電が許可され、条件が成立しないと判定された場合に、制御装置12への通電が不許可となる。通電を許可する条件は、車両2が発進しないことが確認できる状態で、携帯器31が有する固有の情報が認証された場合に成立する。例えば、携帯器31が車両2の外に存在している場合には、ボディ制御装置30が車両2の外にある携帯器31の固有の情報を認証した場合に成立する。また、車両2のエンジンが稼働している場合には、車両2が発進しないことを確認した場合に成立する。車両2のエンジンが稼働している状態は、既に携帯器31の固有の情報が認証された後の状態である。車両2が発進しないことは、オートマチックトランスミッション車の場合にシフトレバーがPレンジになっているあるいはサイドブレーキが作動していることで確認でき、マニュアルトランスミッション車の場合にシフトレバーがNレンジになっていることで確認できる。通電を許可する条件が成立した場合でも、ブレーキペダルが踏み込まれたときは、制御装置12への通電を停止するとよい。なお、この通電を許可する条件は、車両2のセキュリティが確保された状態で、テールゲート1を開閉しても安全が確保される前提で適宜変更することが可能である。
【0035】
距離データを取得するステップ(S110)では、測定装置11により、距離データが取得される。より具体的に、測定装置11の二つの距離計が互いに非同期の測定周期ごとに交互に距離データを測定する。測定装置11の作動状態は、常に一定ではなく、車両2の状態や後面部3よりも後方での物体の動作状態に応じて変化させるとよい。例えば、制御装置12への通電が許可されてからの所定期間は、測定装置11が所定の測定周期で作動し、所定期間が経過するまでに距離データを取得できない場合は、測定装置11が測定周期よりも遅い周期で作動する。また、車両2が発進した場合や車両2のアクセサリ電源がオフの状態が所定期間よりも長い期間継続した場合に、測定装置11を休止状態にする。これにより、開閉システム10の電力消費を抑制するには有利になる。
【0036】
ステップ(S120~S170)のデータ処理工程では、制御装置12により、測定装置11が取得した連続した複数の距離データに基づいて、進入動作および退出動作を特定し、許可パターンと照合するデータ処理が実行される。データ処理工程は、一定の期間の連続した複数の距離データを一定の期間ごとにデータ処理してもよく、距離計が距離データを測定するごとに測定された距離データをデータ処理して、最終的に、連続した複数の距離データに基づいて許可パターンと照合するようにしてもよい。本実施形態では、後者の方式でデータ処理する。後者の方式では、先に進入動作を特定した場合に、フラグを立て(flag:ON)、後に退出動作を特定した場合に、立てたフラグを下ろす(flag:OFF)。より具体的に、許可パターンは、進入動作および退出動作の特定された順番を条件とし、フロー図では、(S130:YES)の後に(S160:YES)が順番に成立するパターンである。
【0037】
進入動作を特定するステップ(S130)では、制御装置12により、取得された距離データに基づいて、トリガ領域13への作業者の進入動作を特定するデータ処理が実行される。より具体的に、制御装置12により、三つのモードのいずれかのモードで、スタート領域14への作業者の進入動作が特定された後に、トリガ領域13への作業者の進入動作が特定される。
図2の中央モードでは、まず、スタート領域14への進入動作(A)が特定される。ついで、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作(B)が特定される。
図3の右モードでも同様に、スタート領域14への進入動作(A)が特定される。ついで、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作(B)が特定される。モードの違いにより、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作(B)の方向が異なり、中央モードでは、概ねY方向後方から前方に向かっており、右モードでは、概ねX方向右方から左方に向かっている。進入動作を特定するステップで、進入動作が特定された場合には(S120:YES)、フラグが立てられて(S140)から次のステップ(S150)へ進む。このステップで進入動作が特定されない場合には、スタートへ戻る。
【0038】
報知工程(S150)では、制御装置12により、先に進入動作が特定されてフラグが立てられて、ステップ動作により許可パターンの条件が途中まで成立したことを、報知装置6により報知させる制御処理が実行される。このときの報知装置6による報知は、吹鳴回数や点滅回数が少なくとも一回でよい。
【0039】
退出動作を特定するステップ(S160)では、制御装置12により、取得された距離データに基づいて、トリガ領域13からの作業者の退出動作を特定するデータ処理が実行される。より具体的に、制御装置12により、進入動作を特定したときのモードで、トリガ領域13からのスタート領域14への作業者の退出動作が特定された後に、スタート領域14からの退出動作が特定される。
図2の中央モードでは、トリガ領域13からスタート領域14への退出動作(C)が特定される。ついで、スタート領域14からの退出動作(D)が特定される。
図3の右モードでも同様に、トリガ領域13からスタート領域14への退出動作(C)が特定される。ついで、スタート領域14からの退出動作(D)が特定される。退出動作(C)の方向は、概ね進入動作の方向の逆方向であり、中央モードでは、概ねY方向前方から後方に向かっており、右モードでは、概ねX方向左方から右方に向かっている。退出動作を特定するステップで、退出動作が特定された場合には(S160:YES)、フラグが下ろされて(S170)から次のステップへ進む。このステップで退出動作が特定されない場合には、スタートへ戻る。
【0040】
報知工程(S180)では、制御装置12により、(S130:YES)の後に(S160:YES)が成立した状態、つまり、ステップ動作と許可パターンとが適合したことを、報知装置6により報知させる制御処理が実行される。このときの報知装置6による報知は、報知工程(S150)と異なる吹鳴回数や点滅回数が望ましい。以上によりデータ処理工程が完了する。
【0041】
開閉工程では、データ処理工程で特定した動作の組み合わせと許可パターンとが適合したことから、制御装置12により、開閉制御装置20に指示を出して、開閉装置4によりテールゲート1を開閉させる制御処理が実行される。この工程では、制御処理が実行される前のテールゲート1の開閉状態に応じて、テールゲート1の開動作、テールゲート1の閉動作、および、それらの開閉動作の停止の三つのうちのいずれかの動作が行われる。テールゲート1が全閉に閉じた状態の場合に、ステップ動作が許可パターンに適合すると、テールゲート1は開動作を行う。テールゲート1が全開に開いた状態の場合に、ステップ動作が許可パターンに適合すると、テールゲート1は閉動作を行う。テールゲート1が開閉動作中に、ステップ動作が許可パターンに適合すると、テールゲート1の開閉動作が停止される。なお、ステップ動作に基づいて開閉装置4によりテールゲート1を開く場合に、ステップ動作が許可パターンに適合したことを確認した後に、携帯器31の認証を行うことが望ましい。これにより、セキュリティの確保には有利になる。
【0042】
許可パターンは、進入動作および退出動作の特定された順番のみを条件にしてもよいが、順番のみの条件では、テールゲート1の開閉を操作する作業者の意思の確認が不十分である場合がある。また、順番のみの条件では、ステップ動作として特定された動作が実際に作業者により行われた動作であるかの確認が不十分である場合がある。そこで、許可パターンは、各領域での待機時間、進入動作および退出動作の各々の方向、動作範囲、動作距離、動作速度、ならびに、動作時間、の少なくとも一つを条件に加えることが望ましい。また、施錠装置5の操作も条件に加えることが望ましい。許可パターンは、幾つかの条件の組み合わせでもよいが、それらの全てを条件に加えることがより望ましい。以下に、それらの条件についての詳細を説明する。
【0043】
図6は、許可パターンの条件として各領域での待機時間を用いて、許可パターンに不適であったステップ動作の一例である。この一例では、中央モードのスタート領域14への進入動作(A)が特定された後に、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作(B)が特定されている。ついで、トリガ領域13での待機時間tbが予め設定した待機時間閾値t以上経過したことが特定されている。この場合は、テールゲート1を開閉する意思がないと見做すことができ、ステップ動作が許可パターンに不適となる。このようなステップ動作は、作業者がテールゲート1を開いた状態での荷物の積み込みや積み下ろし作業が考えられる。各領域での待機時間は、トリガ領域13での待機時間tbに限定されずに、スタート領域での待機時間でもよい。例えば、トリガ領域13からスタート領域14への退出動作が特定された後に、スタート領域14での待機時間が待機時間閾値以上経過したことが特定された場合には、テールゲート1を開閉する意思がないと見做すことができる。待機時間閾値tは、テールゲート1を開閉する意思を確認可能な時間であればよく、五秒以下の短時間でよい。
【0044】
図7は、許可パターンの条件として進入動作および退出動作の各々の方向を用いて、許可パターンに不適であったステップ動作の一例である。この一例では、右モードのスタート領域14への進入動作(A)が特定された後に、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作(B)が特定されている。ついで、トリガ領域13からスタート領域14への退出動作(C)が特定されている。進入動作(B)は、車両2のX方向の中心線を跨いでおり、退出動作(C)は、その中心線を超えていない。この場合は、進入動作および退出動作の各々の方向の一致性が低いため、ステップ動作が許可パターンに不適となる。このようなステップ動作は、後面部3の後方での横切りが考えられる。
【0045】
図8は、許可パターンの条件として進入動作および退出動作の各々の動作範囲を用いて、許可パターンに不適であったステップ動作の一例である。この一例では、中央モードのスタート領域14への進入動作(A)が特定された後に、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作(B)が特定されている。ついで、トリガ領域13からスタート領域14への退出動作(C)が特定されている。退出動作(C)は、右側の距離計の測定範囲を超えている。そのため、退出動作(C)の終点は、左側の距離計の距離データと一定値(遠距離H)との交点Pとなる。交点Pはスタート領域14の範囲外である。この場合は、退出動作の動作範囲が広いため、ステップ動作が許可パターンに不適となる。このようなステップ動作は、後面部3の後方での横切りが考えられる。
【0046】
図9は、許可パターンの条件として進入動作および退出動作の各々の動作距離を用いて、許可パターンに不適であったステップ動作の一例である。この一例では、中央モードのスタート領域14への進入動作(A)が特定された後に、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作(B)が特定されている。ついで、トリガ領域13からスタート領域14への退出動作(C)が特定されている。退出動作(C)は、退出動作(C)の始点(進入動作(B)の終点)から退出動作(C)の終点までのX方向の長さLbcが予め設定された動作距離閾値Lよりも長い。この場合は、退出動作の動作距離が長いため、ステップ動作が許可パターンに不適となる。このようなステップ動作は、後面部3の後方での横切りが考えられる。動作距離閾値Lは、後面部3の後方での横切り動作を判定可能な値であればよい。
【0047】
図10は、許可パターンの条件として進入動作および退出動作の各々の動作速度を用いて、許可パターンが不適であったステップ動作の一例である。この一例では、中央モードのスタート領域14への進入動作(A)が特定された後に、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作(B)が特定されている。ついで、トリガ領域13での待機動作(C)が特定された後に、トリガ領域13からスタート領域14への退出動作(D)が特定されている。退出動作(D)は、退出動作(D)の始点(待機動作(C)の終点)から退出動作(D)の終点までの動作速度Vcdが予め設定された動作速度閾値V以上である。この場合は、退出動作の動作速度が速いため、ステップ動作が許可パターンに不適となる。このようなステップ動作は、作業者が荷物を投げ入れた際に、その荷物の移動が進入動作(B)および待機動作(C)として検知された後に見失われて、退出動作(D)の終点として作業者が検知された場合が考えられる。また、作業者の作業中に、小動物が車両2の後方から前方に向かって車両2の下に潜り込む動作が考えられる。動作速度閾値Vは、許可パターンが成立する場合の平均的な動作速度よりも速い速度に設定される。
【0048】
図11は、許可パターンの条件として進入動作および退出動作の各々の動作時間を用いて、許可パターンが不適であったステップ動作の一例である。この一例では、中央モードのスタート領域14への進入動作(A)が特定された後に、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作(B)が特定されている。進入動作(B)は、その始点から終点までに要した動作時間Tabが予め設定された動作時間閾値T以上である。この場合は、進入動作(B)の動作時間が遅いため、ステップ動作が許可パターンに不適となる。このようなステップ動作は、テールゲート1の開閉の意思がないものと判断できる。動作時間閾値Tも待機時間閾値tと同様に、テールゲート1を開閉する意思を確認可能な時間であればよい。
【0049】
許可パターンの条件として施錠装置5の操作を用いた場合に、ステップ動作を特定中に施錠装置5の施錠状態が変化したときは、ステップ動作と許可パターンとの照合が中断する。施錠装置5の施錠状態が変化したときは、手動でテールゲート1の開閉が行われたときや、運転席からの操作を受けてボディ制御装置30によるテールゲート1の開閉が行われたときである。そのような場合に、ステップ動作によるテールゲート1の開閉は行われないことが望ましく、ステップ動作と許可パターンとの照合が中断されるとよい。
【0050】
ステップ動作が許可パターンに不適となった場合は、再度、スタート領域14への退出動作を行って、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作をやり直す必要がある。しかし、上記に例示したようなステップ動作が許可パターンに不適となるパターンを多く設定することで、テールゲート1の誤作動を防止するには有利になる。
【0051】
ステップ動作が許可パターンに不適となった場合は、制御装置12により、ステップ動作が許可パターンに不適となったことを報知装置6により報知させる制御処理が実行されることが望ましい。これにより、ステップ動作が許可パターンの途中まで適合したことと、ステップ動作が許可パターンに適合したこと、ステップ動作が許可パターンに不適になったことの三つの状態を報知装置6により報知させることで、作業者はテールゲート1の操作の状況を詳細に把握することが可能となる。ただし、ステップ動作が許可パターンに不適となったことに関しては、その全てのパターンで報知装置6による報知を行うと頻繁に報知が行われることがある。そこで、ステップ動作が許可パターンに不適になったことを報知するパターンは、トリガ領域13からスタート領域14への退出動作の後にスタート領域14からの退出動作が所定の時間以上特定されないパターン、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作の後、トリガ領域13からより前方の領域への退出動作が特定されたパターンなどに限定するとよい。後面部3の後方での横切り動作などでの報知は、却って煩わしいことがあり、報知しないことが望ましい。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、トリガ領域13への進入動作とトリガ領域13からの退出動作とは、歩行や足の踏み出しの動作、あるいは、歩行器、歩行補助杖、車椅子などの前進や後退などの動作により簡便に成立する。また、トリガ領域13への進入動作とトリガ領域13からの退出動作とを組み合わせることで、単純ではあるが作業者の意図したタイミングをテールゲート1の開閉動作の合図にすることができる。それ故、本実施形態によれば、簡便な動作により、作業者の意図したタイミングでテールゲートを開閉できる。
【0053】
また、本実施形態によれば、測定装置11がテールゲート1の下端よりも下方の後面部3に配置されることで、テールゲート1の開閉に関わらずに、測定装置11が測定を行うことができる。これにより、一パターンのステップ動作により、テールゲート1の開閉の両方を行うことが可能になり、テールゲート1の開閉の操作性の向上には有利になる。また、テールゲート1の開閉中にテールゲート1の開閉動作を停止することも可能となり、利便性がより高い。
【0054】
さらに、本実施形態によれば、進入動作および退出動作が、作業者が歩行や足の踏み出しなどの動作が困難な者(例えば、車椅子の使用者など)でも成立可能な動作でもある。よって、テールゲート1の開閉の操作に、作業者が不安定な姿勢になることもなく、カメラの撮像範囲外まで大きく動くような動作も必要がない。これにより、バリアフリー対応が可能になる。また、テールゲート1を手動で開閉する場合に、その作業者は、テールゲート1に近づく動作やテールゲート1から離れる動作を行っている。進入動作および退出動作は、テールゲート1を手動で開閉する場合に行われる動作に近い動作になっている。それ故、テールゲート1を手動で開閉する場合に行われる動作に近い動作をテールゲート1の開閉の合図に組み込むことで、ステップ動作が複雑になることを回避して、ステップ動作による煩わしさを緩和することができる。
【0055】
本実施形態は、実行中のデータ処理で、ステップ動作が許可パターンの途中まで適合した場合や許可パターンに完全に適合した場合に、報知装置6により報知することで、ステップ動作の進行状況を適宜、教示することができる。例えば、テールゲート1の開閉の意思がない場合に、後面部3の後方での動作で許可パターンの途中まで適合しても、許可パターンに不適な動作によりテールゲート1の開閉が行われないように対処することが可能となる。また、テールゲート1の開閉の意思がある場合に、報知装置6の報知を道標とすることで、許可パターンに不適なステップ動作が繰り返されるような事態を回避するには有利になる。
【0056】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示のテールゲートの開閉システムおよび開閉方法は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0057】
測定装置11は、一つの距離計で構成することもできる。測定装置11が一つの距離計で構成される場合に、トリガ領域13は、一つの距離計の近距離L以上、中距離M未満の扇形環状を成す測定範囲の領域になる。また、スタート領域14は、一つの距離計の中距離M以上、遠距離H以下の扇形環状を成す測定範囲の領域になる。また、測定装置11は、二つ以上の距離計で構成することもできる。例えば、測定装置11が三つの距離計で構成される場合に、左右に配置された距離計の測定範囲と中央に配置された距離計の測定範囲が重なればよい。なお、左右に配置された距離計どうしの測定範囲は重ならなくてもよい。
【0058】
トリガ領域13とスタート領域14との間にヒステリシス領域を設けてもよい。ヒステリシス領域は、その領域で測定された距離データがデータ処理に使用されない領域である。ヒステリシス領域を設けることで、トリガ領域13とスタート領域14との境界が広がり、スタート領域14からトリガ領域13への進入動作やトリガ領域13からスタート領域14への退出動作をより明確な動作にする必要があるが、動作が誤って特定されることを回避可能になる。
【0059】
二つの距離計の間のX方向の長さをより長くしたり、各々の測定範囲をより広くしたりすることで、トリガ領域13およびスタート領域14を後面部3からより遠方に離間させることができる。反対に、二つの距離計の間のX方向の長さをより短くしたり、各々の測定範囲をより狭くしたりことで、トリガ領域13およびスタート領域14を後面部3の付近に近づけることもできる。つまり、車両2の使用者により適した領域を設定することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 テールゲート
2 車両
3 後面部
4 開閉装置
5 施錠装置
6 報知装置
10 開閉システム
11 計測装置
12 制御装置
13 トリガ領域
14 スタート領域
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後面部に配置されているテールゲートを開閉させる開閉装置を制御する制御装置を備えたテールゲートの開閉システムにおいて、
閉じた状態の前記テールゲートよりも下方の前記後面部に配置されて、前記後面部よりも後方に存在する物体までの距離データを逐次、取得する測定装置を備え、
前記測定装置は、前記車両の車幅方向に並んだ複数の距離計で構成され、
前記測定装置の測定範囲内の前記後面部から離れた領域にトリガ領域とスタート領域が設定されていて、前記トリガ領域と前記スタート領域には、互いの並び方および形状が異なる三つのモードとして、前記車両の前後方向に前記トリガ領域と前記スタート領域とが並んだ中央モードと、前記車両の車幅方向に前記トリガ領域と前記スタート領域とが並んだ右モードおよび左モードとがあり、
前記制御装置は、前記測定装置が取得した連続した複数の前記距離データに基づいて、前記三つのモードの中の一つのモードに切り替えるデータ処置と、切り替えたそのモードにおいて、前記スタート領域から前記トリガ領域への前記物体の進入動作およびそのトリガ領域から前記スタート領域への前記物体の退出動作を特定するデータ処理と、特定した前記進入動作および前記退出動作の組み合わせに基づいて、前記開閉装置により前記テールゲートを開閉させる制御処理と、を実行することを特徴とするテールゲートの開閉システム。
【請求項2】
前記三つのモードの中の一つのモードに切り替えるデータ処置では、それぞれの前記距離計が取得したそれぞれの前記距離データの差分が予め設定された範囲内の場合に前記中央モードに切り替え、前記差分が前記範囲外の場合に前記右モードまたは前記左モードに切り替える請求項1に記載のテールゲートの開閉システム。
【請求項3】
前記三つのモードの中の一つのモードに切り替えるデータ処置では、それぞれの前記距離計が取得したそれぞれの前記距離データに基づいて前記物体の静止と運動とを判定し、前記物体が静止している場合に、前記右モードまたは前記左モードに切り替える請求項1または2に記載のテールゲートの開閉システム。
【請求項4】
前記組み合わせが、前記進入動作および前記退出動作の特定された順番を条件とする許可パターンに適合した場合に、前記制御処理が実行される請求項1または2に記載のテールゲートの開閉システム。
【請求項5】
前記許可パターンは、前記順番に加えて、前記トリガ領域での前記物体の待機時間を条件とし、前記待機時間が待機時間閾値以上の場合に前記許可パターンに不適となる請求項4に記載のテールゲートの開閉システム。
【請求項6】
前記制御装置は、実行中の前記データ処理で、前記組み合わせが前記許可パターンの途中まで適合した場合に、前記テールゲートまたは前記後面部に配置された報知装置により前記組み合わせが前記許可パターンの途中まで適合したことを報知させる制御処理を実行する請求項4に記載のテールゲートの開閉システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の一態様のテールゲートの開閉システムは、車両の後面部に配置されているテールゲートを開閉させる開閉装置を制御する制御装置を備えたテールゲートの開閉システムにおいて、閉じた状態の前記テールゲートよりも下方の前記後面部に配置されて、前記後面部よりも後方に存在する物体までの距離データを逐次、取得する測定装置を備え、前記測定装置は、前記車両の車幅方向に並んだ複数の距離計で構成され、前記測定装置の測定範囲内の前記後面部から離れた領域にトリガ領域とスタート領域が設定されていて、前記トリガ領域と前記スタート領域には、互いの並び方および形状が異なる三つのモードとして、前記車両の前後方向に前記トリガ領域と前記スタート領域とが並んだ中央モードと、前記車両の車幅方向に前記トリガ領域と前記スタート領域とが並んだ右モードおよび左モードとがあり、前記制御装置は、前記測定装置が取得した連続した複数の前記距離データに基づいて、前記三つのモードの中の一つのモードに切り替えるデータ処置と、切り替えたそのモードにおいて、前記スタート領域から前記トリガ領域への前記物体の進入動作およびそのトリガ領域から前記スタート領域への前記物体の退出動作を特定するデータ処理と、特定した前記進入動作および前記退出動作の組み合わせに基づいて、前記開閉装置により前記テールゲートを開閉させる制御処理と、を実行することを特徴とする。