(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153501
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】タイヤ試験用路面、タイヤ試験装置及びタイヤ試験用路面の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20231011BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062815
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 貴之
(72)【発明者】
【氏名】西本 雅彦
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA22
(57)【要約】
【課題】耐久性の高いタイヤ試験用路面、タイヤ試験装置及びタイヤ試験用路面の製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤ試験用路面は、タイヤと接触する接触面を有する路面基材と、シート状の補強材と、を備え、前記補強材は、前記路面基材に埋設されている。タイヤ試験装置は、前記試験用路面と、前記タイヤ試験用路面が直接又は間接的に固定される回転体と、前記回転体又は前記タイヤを回転駆動させる駆動装置と、を備える。タイヤ試験用路面の製造方法は、タイヤと接触する接触面を有する路面基材にシート状の補強材を埋設する工程を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤと接触する接触面を有する路面基材と、
シート状の補強材と、を備え、
前記補強材は、前記路面基材に埋設されている、タイヤ試験用路面。
【請求項2】
前記補強材は、第1方向に沿って延びる第1繊維材と、前記第1方向と異なる第2方向に沿って延びる第2繊維材と、を備える、請求項1に記載のタイヤ試験用路面。
【請求項3】
前記第1方向は、前記第2方向と実質的に直交する、請求項2に記載のタイヤ試験用路面。
【請求項4】
前記路面基材は、前記接触面に凹凸を備え、
前記凹凸は、高さ寸法が5mm以上の突起を備える、請求項1に記載のタイヤ試験用路面。
【請求項5】
前記突起の高さ寸法は、15mm以下である、請求項4に記載のタイヤ試験用路面。
【請求項6】
前記突起の局部山頂の平均間隔は、30mm~80mmである、請求項4に記載のタイヤ試験用路面。
【請求項7】
前記突起の底面積は、100mm2~700mm2である、請求項4に記載のタイヤ試験用路面。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のタイヤ試験用路面と、
前記タイヤ試験用路面が直接又は間接的に固定される回転体と、
前記回転体又は前記タイヤを回転駆動させる駆動装置と、を備える、タイヤ試験装置。
【請求項9】
タイヤと接触する接触面を有する路面基材にシート状の補強材を埋設する工程を備える、タイヤ試験用路面の製造方法。
【請求項10】
合成樹脂によって平板状に形成された前記路面基材を加熱し、タイヤ試験装置において前記タイヤ試験用路面が固定される曲面状の固定面に前記路面基材を湾曲させて沿わせる工程を備える、請求項9に記載のタイヤ試験用路面の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ試験用路面、タイヤ試験装置及びタイヤ試験用路面の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の市場において、タイヤのトレッドへたりに対する品質の向上が求められている。トレッドへたりとは、悪路走行などの長時間の走行試験によって、トレッドの各ブロックが押し潰されて側方に膨出したマッシュルーム形状となり、トレッドに設けられた溝が狭く且つ浅くなる現象のことである。本明細書において、悪路とは、砂利道や岩場などの平坦でない未舗装路を想定している。
【0003】
従来、トレッドへたりに関するタイヤの性能評価試験は、台上試験ではなく、実車試験で実施されていた。しかしながら、実車試験には、評価期間の長期化や評価時期の制約、路面状態による評価結果のばらつきなどの問題点があった。
【0004】
他のタイヤの性能評価試験は、回転ドラムなどの回転体を備えるタイヤ試験装置を用いた台上試験によって行われることがある。タイヤ試験装置を用いて性能評価試験を行うことによって、評価期間の短縮や評価結果のばらつき抑制が期待できる。
【0005】
回転ドラムの外周面には、実際の路面を模擬したタイヤ試験用路面が固定される場合がある。特許文献1には、砕石や砂などの骨材と骨材同士を結合するバインダーとの混合物で形成されたタイヤ試験用路面が開示されている。当該タイヤ試験用路面は、走行時間の比較的短いタイヤ騒音試験に用いられている。
【0006】
トレッドへたりに関するタイヤの性能評価試験を台上試験で行う場合は、騒音試験などの他の評価試験と比べて、非常に長い走行時間を設定する必要がある。そのため、試験の途中でタイヤ試験用路面が破損する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、耐久性の高いタイヤ試験用路面、タイヤ試験装置及びタイヤ試験用路面の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のタイヤ試験用路面は、タイヤと接触する接触面を有する路面基材と、シート状の補強材と、を備え、前記補強材は、前記路面基材に埋設されている。
【0010】
本開示のタイヤ試験装置は、タイヤ試験用路面と、前記タイヤ試験用路面が直接又は間接的に固定される回転体と、前記回転体又は前記タイヤを回転駆動させる駆動装置と、を備える。
【0011】
本開示のタイヤ試験用路面の製造方法は、タイヤと接触する接触面を有する路面基材にシート状の補強材を埋設する工程を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】同実施形態に係るタイヤ試験装置の回転体の側面図
【
図3】同実施形態に係るタイヤ試験用路面の分割片を示す斜視図
【0013】
<タイヤ試験装置>
まずは、本実施形態に係るタイヤ試験用路面が固定されるタイヤ試験装置の一例について、
図1を参照しながら説明する。なお、各図(
図2~
図7も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
タイヤ試験装置は、悪路試験、摩耗試験、騒音試験などのタイヤの性能評価試験に用いられる。タイヤは、空気入りタイヤであってもよく、非空気圧タイヤであってもよい。
【0015】
図1に示すように、タイヤ試験装置10は、タイヤTの性能評価試験を行うためのタイヤ試験用路面1と、タイヤ試験用路面1が固定される回転体101と、回転体101を回転駆動させる駆動装置103と、を備える。本実施形態において、タイヤ試験装置10は、回転体101の中心に配置される第1回転軸102と、タイヤTをタイヤ試験用路面1に押し付けると共に回転可能に支持するタイヤ支持装置105を更に備えている。
【0016】
本実施形態において、タイヤ試験装置10は、一対の回転体101,101と、複数のタイヤ支持装置105と、を備える。回転体101は、円柱状の回転ドラムである。回転体ドラムは、例えば金属製である。一対の回転体101,101は、それぞれ第1回転軸102の軸方向の両端に固定されている。タイヤ支持装置105は、タイヤTを回転可能に支持する第2回転軸1051を備える。
【0017】
駆動装置103は、駆動モーター1031と、第1回転軸102に固定される第1プーリー1032と、駆動モーター1031に固定される第2プーリー1033と、第1プーリー1032と第2プーリー1033とを連結するベルト1034と、を備える。第1プーリー1032は、第2回転軸1051に固定され、駆動装置103は、タイヤTを回転させる、という構成であってもよい。
【0018】
図1~
図3に示すように、タイヤ試験用路面1は、回転体101の外周面に固定部材104を介して間接的に固定されている。タイヤ試験用路面1は、これに限られず、回転体101の外周面に直接固定(例えば、接着)されていてもよい。
【0019】
固定部材104は、板部材である。固定部材104は、例えば、金属製である。本実施形態において、固定部材104は、円弧板状に形成されている。複数の固定部材104を回転体101に固定することにより、複数の固定部材104が環状に連接される。固定部材104の外周面には、タイヤ試験用路面1を構成する1枚以上の分割片1aが固定(例えば、接着)される。分割片1aは、タイヤ試験用路面1を分割(本実施形態においては、6分割)したものである。
【0020】
固定部材104は、回転体101に不図示のボルトで固定するための複数の貫通孔1041(
図3参照)を備える。これにより、回転体101にタイヤ試験用路面1(分割片1a)を容易に着脱することができる。貫通孔1041は、固定部材104の幅方向の外側に配置されている。固定部材104の幅寸法は、タイヤ試験用路面1(分割片1a)の幅寸法よりも大きい。
【0021】
各固定部材104は、それぞれ異なる印(例えば、数字などの刻印)が付され、回転体101は、各固定部材104が固定される位置にその印と同じ又は対応する印が付されていることが好ましい。これにより、回転体101において分割片1aを固定する位置が変わることを防止できる。即ち、回転体101への着脱毎に、タイヤ試験用路面1の路面パターンが変わることを防止できる。本実施形態において、図示していないが、上記の印は、固定部材104及び回転体101のそれぞれの側面に付されている。
【0022】
タイヤ試験装置10、回転体101、第1回転軸102、駆動装置103、固定部材104、タイヤ支持装置105は、一例であり、上記に限られない。
【0023】
<タイヤ試験用路面>
図2及び
図3に示すように、タイヤ試験用路面1は、固定面10aに沿った形状に形成されている。固定面10aは、回転体101の外周面又は固定部材104の外周面である。本実施形態において、固定面10aは、曲面状に形成された固定部材104の外周面であるが、これに限られない。
図3においては、後述する凹凸21(
図4参照)の図示を省略している。
【0024】
タイヤ試験用路面1は、複数の分割片1aによって環状に形成されている。タイヤ試験用路面1を分割して形成することにより、タイヤ試験用路面1(分割片1a)の持ち運びを容易にすることができ、回転体101へのタイヤ試験用路面1(分割片1a)の着脱やタイヤ試験用路面1(分割片1a)の製造における作業性を向上させることができる。タイヤ試験用路面1は、上記に限られず、一体的に形成されていてもよい。
【0025】
図4に示すように、タイヤ試験用路面1は、タイヤと接触する接触面2aを有する路面基材2と、シート状の補強材3と、を備える。補強材3は、路面基材2に埋設されている。補強材3は、通液性を有することが好ましい。補強材3が通液性を有することにより、埋設時に路面基材2を形成する液状材が補強材3の隙間に入り込み、路面基材2と補強材3とを強固に接合することができる。これにより、補強材3を埋設することによる路面基材2の厚み方向D3の強度の低下を抑制することができる。
【0026】
タイヤ試験用路面1の耐久性確保の観点から、補強材3の幅寸法は、路面基材2の幅寸法の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。本実施形態において、補強材3の幅寸法は、路面基材2の幅寸法と実質的に同じである。路面基材2に埋設される補強材3の枚数や補強材3の厚みは、特に限定されず、タイヤの試験条件等によって適宜設定される。本実施形態において、補強材3は、路面基材2に1枚埋設されているが、これに限られない。
【0027】
補強材3は、通液性を確保する観点から、有機繊維又は無機繊維で形成された繊維集合体であることが好ましい。有機繊維としては、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ビニロン繊維、セルロース繊維などが挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などが挙げられる。補強材3の加工を容易にする観点から、補強材3は、有機繊維で形成されていることが好ましい。
【0028】
補強材3(繊維集合体)は、織物、編物、不織布のような繊維形態で形成されている。タイヤ試験用路面1の耐久性確保の観点から、補強材3の繊維形態は、織物であることが好ましい。なお、補強材3は、上記に限られず、例えば、シート材に無数の穴を設けることによって通液性を確保したものであってもよい。その場合、補強材3は、常温又は加熱時に変形可能な材質であることが好ましい。
【0029】
図5に示すように、本実施形態において、補強材3は、ナイロン繊維で形成された織物である。補強材3は、第1方向D1に沿って延びる第1繊維材31と、第1方向D1と異なる第2方向D2に沿って延びる第2繊維材32と、を備える。本実施形態において、第1繊維材31及び第2繊維材32は、繊維太さが470dtex/1であり、それぞれの繊維密度は、40本/5cmであり、補強材3の引張張力は、700N/3cmであるが、これに限られない。補強材3は、例えば空気入りタイヤに埋設されるメッシュチェーファー(例えば、メッシュ状に配置されたナイロンフィラメント)を用いてもよい。
【0030】
第1方向D1は、第2方向D2と実質的に直交していることが好ましい。即ち、第1繊維材31は、第2繊維材32と実質的に直交し、それぞれメッシュ状に配置されていることが好ましい。ここでいう実質的に直交とは、互いに80度~100度の範囲で交わることを指す。織物の織り組織としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。なお、補強材3は、上記に限られず、例えば、第1繊維材31で形成されたシート材と第2繊維材32で形成されたシート材とを重ね合わせたものでもよい。また、補強材3は、第1方向D1及び第2方向D2と異なる方向に延びる繊維材を更に備えていてもよい。
【0031】
本実施形態において、第1方向D1は、タイヤT(
図1参照)のタイヤ周方向と実質的に平行であり、第2方向D2は、タイヤTのタイヤ軸方向と実質的に平行である。実質的に平行とは、一方に対する他方の傾きが10度以内の範囲であることを指す。
【0032】
路面基材2は、合成樹脂を母材として形成されている。合成樹脂としては、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。本実施形態において、路面基材2は、単一材料(エポキシ樹脂)で形成されているが、これに限られない。路面基材2は、合成樹脂を母材とする複合材料で形成されていてもよい。複合材料の場合、路面基材2は、耐久性を確保する観点から、骨材を含まない材料で形成されていることが好ましい。骨材としては、砕石、砂、石粉、シリカサンドなどが挙げられる。
【0033】
図4に示すように、路面基材2は、接触面2aに凹凸21を備える。凹凸21の算術平均粗さ(高さ)Raは、1.0mm~3.0mmであることが好ましい。本実施形態において、凹凸21の算術平均粗さ(高さ)Raは、1.605mmである。凹凸21の二乗平均平方根高さRqは、1.5mm~4.0mmであることが好ましい。本実施形態において、凹凸21の二乗平均平方根高さRqは、2.226mmである。
【0034】
凹凸21は、高さ寸法H1が5mm以上の第1突起211と、高さ寸法H2が5mm未満の第2突起212と、を備える。第1突起211を設けることによって、タイヤ試験装置10においてタイヤの悪路試験を行ううえで有用となる。凹凸21は、上記に限られず、例えば、第1突起211又は第2突起212の何れか一方のみを備える、という構成であってもよい。高さ寸法H1,H2は、各突起211,212の底面から先端までの厚み方向D3の寸法である。
【0035】
第1突起211の高さ寸法H1は、15mm以下であることが好ましい。高さ寸法H1が5mm以上の突起(第1突起211)の局部山頂の平均間隔Sは、30~80mmであることが好ましく、30mm~50mmがより好ましい。本実施形態において、その局部山頂の平均間隔Sは、50.63mmである。
【0036】
高さ寸法H1,H2が1mm以上の突起(第1突起211及び高さ寸法H2が1mm以上の第2突起212)の局部山頂の平均間隔Sは、10~40mmであることが好ましい。本実施形態において、その局部山頂の平均間隔Sは、26.10mmである。
【0037】
算術平均粗さRa及び二乗平均平方根高さRqは、それぞれJISB0601:2013に準拠して計測され、局部山頂の平均間隔Sは、JISB0601:1994に準拠して計測される。局部山頂の平均間隔Sの基準長さ及び評価長さは、80mmである。上述したこれらの本実施形態における値は、ロボットアームに固定したレーザー変位計(例えば、高さ方向のレーザー精度:10μm、計測方向のレーザー精度:200μm)を用いて計測したものである。但し、これに限られず、例えば、非接触光学スキャナやプロフィロメータなどの計測器を用いて行ってもよい。本実施形態においては、計測時のノイズ(例えば、ロボットアームの移動時の振動などによって生じるノイズ)を除去するために、計測器の計測方向と直交する方向(ロボットアームの移動方向)に5点の移動平均フィルターをかけている。
【0038】
第1突起211の底面積は、100mm2~700mm2であることが好ましく、100mm2~300mm2であることがより好ましい。底面積は、例えば、定規やノギスなどによって第1突起211の底面の長さを計測して算出することができる。第1突起211の底面が略円形の場合、計測した長さから算出した円の面積を底面積とすることができる。底面積は、例えば、厚み方向D3視における撮影画像から画像解析ソフトなどを用いて計測してもよい。
【0039】
<タイヤ試験用路面の製造方法>
タイヤ試験用路面1の製造方法について説明する。
【0040】
(1)実路面を型取りし、タイヤ試験用路面1(分割片1a)を形成するための路面型を製作する。本実施形態において、路面型は、悪路面を型取りして製作しているが、これに限られない。路面型は、例えば、実路面から型取りせずに加工のみによって製作してもよい。
【0041】
(2)路面型を用いて分割片1aを複数形成する。この工程では、路面基材2に補強材3を埋設する工程を備える。具体的には、路面基材2を形成する液状材の一部(例えば、半分)を路面型に流し込み、その上に補強材3を載置する。そして、補強材3の上から液状材の残りを路面型に流し込む。これにより、路面基材2に補強材3を埋設した分割片1aを形成することができる。なお、例えば、厚み方向D3に2分割された路面基材2の間に接着剤(例えば、路面基材2の液状材)を塗布した補強材3を挟み込むことによって、路面基材2に補強材3を埋設してもよい。
【0042】
(3)平板状に形成された分割片1a(の路面基材2)を加熱し、固定面10aに分割片1a(の路面基材2)を湾曲させて沿わせる。そして、湾曲させた分割片1aを固定面10aに固定(例えば、接着)する。本実施形態において、固定面10aは、回転体101に固定される固定部材104の外周面である。なお、例えば、路面型を固定面10aに沿わせた形状で製作することによって、分割片1aを加熱して湾曲させる工程を省略してもよい。
【0043】
(4)分割片1aが固定された複数の固定部材104を回転体101に固定(例えば、ボルト止め)する。これにより、タイヤ試験用路面1を形成することができる。固定面10aが回転体101の外周面である場合、複数の分割片1aを回転体101に直接固定(例えば、接着)することにより、タイヤ試験用路面1を形成することができる。
【0044】
<1>以上、本実施形態のように、タイヤ試験用路面1は、タイヤTと接触する接触面2aを有する路面基材2と、通液性を有するシート状の補強材3と、を備え、補強材3は、路面基材2に埋設されている。
【0045】
斯かる構成によれば、補強材3によってタイヤ試験用路面1の耐久性を向上させることができる。これにより、タイヤTの性能評価試験によって、タイヤ試験用路面1が破損することを抑制することができる。
【0046】
<2>また、<1>に記載のタイヤ試験用路面1のように、補強材3は、第1方向D1に沿って延びる第1繊維材31と、第1方向D1と異なる第2方向D2に沿って延びる第2繊維材32と、を備える、という構成が好ましい。
【0047】
斯かる構成によれば、複数方向におけるタイヤ試験用路面1の耐久性を向上させることができる。また、補強材3の通液性を良好にすることができ、補強材3を路面基材2に埋設した際、路面基材2を形成する液状材が補強材3の隙間に入り込みやすくなる。これにより、路面基材2と補強材3とを強固に接合することができ、補強材3を埋設することによる路面基材2の厚み方向D3の強度の低下を抑制することができる。
【0048】
<3>また、<2>に記載のタイヤ試験用路面1のように、第1方向D1は、第2方向D2と実質的に直交する、という構成が好ましい。
【0049】
斯かる構成によれば、第1繊維材31及び第2繊維材32の耐久性の弱い方向を互いに補うことができ、タイヤ試験用路面1の耐久性を向上させることができる。
【0050】
<4>また、<1>~<3>の何れかに記載のタイヤ試験用路面1のように、路面基材2は、接触面2aに凹凸21を備え、凹凸21は、高さ寸法H1が5mm以上の突起(第1突起211)を備える、という構成が好ましい。
【0051】
斯かる構成によれば、悪路試験を台上試験で行うことができ、評価期間の短縮や評価結果のばらつきを抑制することができる。また、路面基材2の厚みが不均一な悪路試験用のタイヤ試験用路面1の耐久性を向上させることができる。これにより、長時間の走行を要する悪路試験によってタイヤ試験用路面1が破損することを抑制することができる。さらに、タイヤTの性能評価試験によって、第1突起211が摩耗によって消滅することを抑制することができる。
【0052】
<5>また、<4>に記載のタイヤ試験用路面1のように、突起(第1突起211)の高さ寸法H1は、15mm以下である、という構成が好ましい。
【0053】
斯かる構成によれば、第1突起211の先端における周速度の上昇を抑え、タイヤTが第1突起211上で滑ることを抑制することができる。また、タイヤTが第1突起211を乗り越えた際に、回転体101に強い振動が生じ、例えば、タイヤ試験装置10が故障することを抑制することができる。
【0054】
<6>また、<4>又は<5>に記載のタイヤ試験用路面1のように、突起(第1突起211)の局部山頂の平均間隔Sは、30mm~80mmである、という構成が好ましい。
【0055】
斯かる構成によれば、第1突起211の局部山頂の平均間隔Sを30mm以上とすることにより、タイヤTが備えるトレッドの各ブロックと接触する第1突起211の数を少なくすることができ、ブロックに加わる面圧を高めることができる。これにより、第1突起211と接触したブロックの潰れ量を大きくすることができ、タイヤTのトレッドへたりが生じやすくなる。その結果、悪路試験においてタイヤTのトレッドへたりの評価を効果的に行うことができる。また、第1突起211の局部山頂の平均間隔Sを80mm以下とすることにより、悪路試験においてトレッドの各ブロックに第1突起211を確実に接触させることができる。これにより、トレッドへたりを生じやすくすることができ、タイヤTのトレッドへたりの評価を効果的に行うことができる。
【0056】
<7>また、<4>~<6>の何れかに記載のタイヤ試験用路面1のように、突起(第1突起211)の底面積は、100mm2~700mm2である、という構成が好ましい。
【0057】
斯かる構成によれば、第1突起211の底面積を100mm2以上とすることにより、第1突起211がタイヤTの試験中に破損することを抑制することができる。第1突起211の底面積を700mm2以下とすることにより、トレッドの各ブロックと接触する第1突起211の接触面積を適度に小さくすることができ、第1突起211と接触したブロックの潰れ量を大きくすることができる。これにより、タイヤTのトレッドへたりが生じやすくなり、タイヤTのトレッドへたりの評価を効果的に行うことができる。
【0058】
<8>また、本実施形態のように、タイヤ試験装置10は、<1>~<7>の何れかに記載のタイヤ試験用路面1と、タイヤ試験用路面1が直接又は間接的に固定される回転体101と、回転体101又はタイヤTを回転駆動させる駆動装置103と、を備える、という構成が好ましい。
【0059】
斯かる構成によれば、タイヤ試験装置10において、タイヤ試験用路面1が破損することを抑制することができる。
【0060】
<9>また、本実施形態のように、タイヤ試験用路面1の製造方法は、タイヤTと接触する接触面2aを有する路面基材2に通液性を有するシート状の補強材3を埋設する工程を備える。
【0061】
斯かる方法によれば、補強材3によってタイヤ試験用路面1の耐久性を向上させることができる。これにより、タイヤTの性能評価試験によって、タイヤ試験用路面1が破損することを抑制することができる。
【0062】
<10>また、<9>に記載のタイヤ試験用路面1の製造方法は、合成樹脂によって平板状に形成された路面基材2を加熱し、タイヤ試験装置10においてタイヤ試験用路面1が固定される曲面状の固定面10aに路面基材2を湾曲させて沿わせる工程を備える、という方法が好ましい。
【0063】
斯かる方法によれば、平板状のタイヤ試験用路面1を容易に固定面10aに沿わせることができる。
【0064】
なお、タイヤ試験用路面1、タイヤ試験装置10及びタイヤ試験用路面1の製造方法は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤ試験用路面1、タイヤ試験装置10及びタイヤ試験用路面1の製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0065】
本実施形態において、回転体101は、回転ドラムであるが、これに限られない。例えば、
図6に示すように、回転体101は、ターンテーブルであってもよい。斯かるタイヤ試験用路面1は、円板状に形成され、回転体101の上面に直接又は間接的に固定される。斯かるタイヤ試験用路面1の製造方法は、分割片1aを加熱して曲面状の固定面10aに沿わせる工程を省略することができる。
【0066】
また、例えば、
図7に示すように、回転体101は、内周面にタイヤ試験用路面1が直接又は間接的に固定された回転ドラムであってもよい。斯かる構成において、固定面10aは、回転体101の内周面又は固定部材104(
図2参照)の内周面である。
【符号の説明】
【0067】
1…タイヤ試験用路面、1a…分割片、2…路面基材、2a…接触面、21…凹凸、211…第1突起、212…第2突起、3…補強材、31…第1繊維材、32…第2繊維材、10…タイヤ試験装置、10a…固定面、101…回転体、102…第1回転軸、103…駆動装置、1031…駆動モーター、1032…第1プーリー、1033…第2プーリー、1034…ベルト、104…固定部材、1041…貫通孔、105…タイヤ支持装置、1051…第2回転軸