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特開2023-153538ネットワークシステム及びネットワークスライスの生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153538
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ネットワークシステム及びネットワークスライスの生成方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/0897 20220101AFI20231011BHJP
   H04L 41/0895 20220101ALI20231011BHJP
   H04L 61/4511 20220101ALI20231011BHJP
【FI】
H04L41/0897
H04L41/0895
H04L61/4511
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062874
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯島 智之
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 誠由
(72)【発明者】
【氏名】眞澤 史郎
(57)【要約】
【課題】ネットワークスライスの設計及び設定を容易にし、設定内容を考慮してエッジ装置への転送設定を行う。
【解決手段】ネットワークシステムは、無線基地局、データ処理装置、及び複数の通信処理装置を含む、通信施設と、管理装置と、を含む。管理装置は、ネットワークスライスの特性毎に、通信施設に設定する項目の値をリソースとして管理するためのリソース管理情報を管理する。管理装置は、ネットワークスライスを生成し、ネットワークスライスの特性に基づいてリソース管理情報を参照して、項目の値を決定し、通信施設に、決定された項目の値を設定するための第1設定情報を送信し、無線端末の識別情報と、データ処理装置の識別情報とを対応づけることによって転送ルールを生成し、通信施設に、転送ルールを設定するための第2設定情報を送信する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークシステムであって、
無線基地局、無線通信を介して受信したデータを処理する少なくとも一つのデータ処理装置、及び通信の制御を行う複数の通信処理装置を含む、少なくとも一つの通信施設と、少なくとも一つの管理装置と、を含み、
少なくとも一つの前記管理装置は、少なくとも一つの前記通信施設によって実現されるネットワークを論理的に分割したネットワークスライスの特性毎に、前記ネットワークスライスを生成するために少なくとも一つの前記通信施設に設定する項目の値をリソースとして管理するためのリソース管理情報を管理し、
前記項目は、少なくとも一つの前記データ処理装置の識別情報を含み、
少なくとも一つの前記管理装置は、
前記ネットワークスライスの特性を含むネットワークスライス生成要求を受け付けた場合、複数の前記通信処理装置を論理分割することによって前記ネットワークスライスを生成する第1処理と、
前記ネットワークスライス生成要求に含まれる前記ネットワークスライスの特性に基づいて前記リソース管理情報を参照して、前記項目の値を決定し、少なくとも一つの前記通信施設に、決定された前記項目の値を設定するための第1設定情報を送信する第2処理と、
生成される前記ネットワークスライスを介して通信する無線端末の識別情報と、当該ネットワークスライスにおける少なくとも一つの前記データ処理装置の識別情報とを対応づけることによって、前記無線端末から送信されたデータを少なくとも一つの前記データ処理装置に転送するための転送ルールを生成し、少なくとも一つの前記通信施設に、前記転送ルールを設定するための第2設定情報を送信する第3処理と、を実行することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワークシステムであって、
複数の前記通信処理装置は、少なくとも一つのDNSサーバを含み、
前記第1処理では、少なくとも一つの前記管理装置は、少なくとも一つの前記データ処理装置に設定するドメイン名及びIPアドレスを決定し、
少なくとも一つの前記管理装置は、決定された前記ドメイン名及び決定された前記IPアドレスを関連付けることによって、前記無線端末から前記ドメイン名を含むデータを受信した場合に、少なくとも一つの前記DNSサーバが名前解決により少なくとも一つの前記データ処理装置に当該データを送信するための設定情報を生成し、少なくとも一つの前記DNSサーバに送信する第4処理を実行することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のネットワークシステムであって、
少なくとも一つの前記管理装置は、
前記ネットワークスライスの特性毎に、満たすべき通信品質に関する品質条件を管理するための通信品質条件管理情報を管理し、
少なくとも一つの前記データ処理装置の通信品質に関する値を含む通信状態情報を取得し、
前記通信品質条件管理情報を参照して、少なくとも一つの前記通信施設に生成された前記ネットワークスライスの特性に対応する前記品質条件を特定し、
前記通信状態情報に基づいて、少なくとも一つの前記通信施設に生成された前記ネットワークスライスの特性に対応する前記品質条件を満たすか否かを判定し、
少なくとも一つの前記通信施設に生成された前記ネットワークスライスの特性に対応する前記品質条件を満たさない場合、前記第2処理及び前記第3処理を実行することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のネットワークシステムであって、
複数の前記データ処理装置を含み、
少なくとも一つの前記管理装置は、
少なくとも一つの前記通信施設に設定された前記ネットワークスライスの特性に対応する前記品質条件を満たさない場合、前記通信状態情報に基づいて、当該ネットワークスライスに含める前記データ処理装置を選択し、
前記第2処理及び前記第3処理を実行することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項5】
ネットワークシステムが実行するネットワークスライスの生成方法であって、
前記ネットワークシステムは、無線基地局、無線通信を介して受信したデータを処理する少なくとも一つのデータ処理装置、及び通信の制御を行う複数の通信処理装置を含む、少なくとも一つの通信施設と、少なくとも一つの管理装置と、を含み、
少なくとも一つの前記管理装置は、少なくとも一つの前記通信施設によって実現されるネットワークを論理的に分割したネットワークスライスの特性毎に、前記ネットワークスライスを生成するために少なくとも一つの前記通信施設に設定する項目の値をリソースとして管理するためのリソース管理情報を管理し、
前記項目は、少なくとも一つの前記データ処理装置の識別情報を含み、
前記ネットワークスライスの生成方法は、
少なくとも一つの前記管理装置が、前記ネットワークスライスの特性を含むネットワークスライス生成要求を受け付けた場合、複数の前記通信処理装置を論理分割することによって前記ネットワークスライスを生成する第1処理を実行する第1のステップと、
少なくとも一つの前記管理装置が、前記ネットワークスライス生成要求に含まれる前記ネットワークスライスの特性に基づいて前記リソース管理情報を参照して、前記項目の値を決定し、決定された前記項目の値を設定するための第1設定情報を少なくとも一つの前記通信施設に送信する第2処理を実行する第2のステップと、
少なくとも一つの前記管理装置が、生成される前記ネットワークスライスを介して通信する無線端末の識別情報と、当該ネットワークスライスにおける少なくとも一つの前記データ処理装置の識別情報とを対応づけることによって、前記無線端末から送信されたデータを少なくとも一つの前記データ処理装置に転送するための転送ルールを生成し、少なくとも一つの前記通信施設に、前記転送ルールを設定するための第2設定情報を送信する第3処理を実行する第3のステップと、
を含むことを特徴とするネットワークスライスの生成方法。
【請求項6】
請求項5に記載のネットワークスライスの生成方法であって、
複数の前記通信処理装置は、少なくとも一つのDNSサーバを含み、
前記第1処理では、少なくとも一つの前記データ処理装置に設定するドメイン名及びIPアドレスが決定され、
前記ネットワークスライスの生成方法は、少なくとも一つの前記管理装置が、決定された前記ドメイン名及び決定された前記IPアドレスを関連付けることによって、前記無線端末から前記ドメイン名を含むデータを受信した場合に、少なくとも一つの前記DNSサーバが名前解決により少なくとも一つの前記データ処理装置に当該データを送信するための設定情報を生成し、少なくとも一つの前記DNSサーバに送信する第4処理を実行するステップを含むことを特徴とするネットワークスライスの生成方法。
【請求項7】
請求項5に記載のネットワークスライスの生成方法であって、
少なくとも一つの前記管理装置は、前記ネットワークスライスの特性毎に、満たすべき通信品質に関する品質条件を管理するための通信品質条件管理情報を管理し、
前記ネットワークスライスの生成方法は、
少なくとも一つの前記管理装置が、少なくとも一つの前記データ処理装置の通信品質に関する値を含む通信状態情報を取得する第4のステップと、
少なくとも一つの前記管理装置が、前記通信品質条件管理情報を参照して、少なくとも一つの前記通信施設に生成された前記ネットワークスライスの特性に対応する前記品質条件を特定する第5のステップと、
少なくとも一つの前記管理装置が、前記通信状態情報に基づいて、少なくとも一つの前記通信施設に生成された前記ネットワークスライスの特性に対応する前記品質条件を満たすか否かを判定する第6のステップと、
少なくとも一つの前記管理装置が、少なくとも一つの前記通信施設に生成された前記ネットワークスライスの特性に対応する前記品質条件を満たさない場合、前記第2処理及び前記第3処理を実行する第7のステップと、を含むことを特徴とするネットワークスライスの生成方法。
【請求項8】
請求項7に記載のネットワークスライスの生成方法であって、
前記ネットワークシステムは、複数の前記データ処理装置を含み、
前記第7のステップは、
少なくとも一つの前記管理装置が、少なくとも一つの前記通信施設に設定された前記ネットワークスライスの特性に対応する前記品質条件を満たさない場合、前記通信状態情報に基づいて、当該ネットワークスライスに含める前記データ処理装置を選択するステップと、
少なくとも一つの前記管理装置が、前記第2処理及び前記第3処理を実行するステップと、を含むことを特徴とするネットワークスライスの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークスライスとエッジコンピュータの設定システム、及び設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信の利用が拡大している。5G(5th Generation)の通信方式では、企業及び自治体が無線通信網を独自に構築することが可能となっている。独自に無線通信網を構築することによって、高品質な無線通信網を、外部環境の影響を受けることなく、独占的に利用できるようになる。
【0003】
また、5Gの通信方式では、一つの無線通信網を、通信品質が異なる、複数の無線通信網に論理的に分割することができる。例えば、一つの無線通信網を、高速大容量の通信が可能な通信網、低遅延な通信が可能な通信網、及び多数の同時接続が可能な通信網に論理的に分割することができる。前述のような論理的な分割によって、例えば低遅延が求められる通信が、高速大容量の通信によって影響を受けないようにしている。これを実現するための規格を、「ネットワークスライス」と定義している。
【0004】
さらに、5Gの通信方式では、低遅延な無線通信を可能にするため、特定の宛先向けのパケットをエッジに配置したコンピュータへ転送することも可能となっている。エッジに配置したコンピュータは一般的にエッジ装置又はMEC(Multi-access Edge Computing)と呼ばれ、MECへ転送する規格を「Traffic Steering」と定義している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-41266号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TR 38.913 V16.0.0: “Study on Scenarios and Requirements for Next Generation Access Technologies”、 Jul. 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ネットワークスライスは、その概念の定義は進むものの、無線通信機器から送信されたパケットを目的地まで届ける通信網をどのように論理的に分割するか、パケットを転送する各装置にどのような設定を行うか等に関しては、まだ規格化がされていない。そのため、実際にネットワークスライスを構築するためには、運用者が設計及び設定の作業を行う必要がある。エッジ装置へのパケット転送に関しても、同様に、運用者が設計及び設定の作業を行う必要がある。
【0008】
5Gの通信方式では、企業及び自治体に装置が設置されることも想定されることから、これらの作業を無線通信網の提供者が実施するのは、手間がかかりコストが大きくなる。
【0009】
特許文献1に開示された技術を用いれば、ユーザの要求を契機として、最適なエッジ装置を選択し、Traffic Steering機能の設定を行うことができる。また、通信状態に応じて、異なるエッジコンピュータを選択し、Traffic Steering機能の設定を変更できる。
【0010】
しかし、エッジ装置へのTraffic Steering機能の設定は、ネットワークスライスを実現する装置の設定内容を考慮する必要がある。また、通信状態に応じてTraffic Steering機能の設定を変更する場合も同様である。
【0011】
本発明の目的は、ネットワークスライスを実現する装置に対して、運用者が設計及び設定に要する作業を簡略化し、また、ネットワークスライスを実現する装置の設定内容を考慮してエッジ装置へのTraffic Steering機能の設定を行う。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、ネットワークシステムであって、無線基地局、無線通信を介して受信したデータを処理する少なくとも一つのデータ処理装置、及び通信の制御を行う複数の通信処理装置を含む、少なくとも一つの通信施設と、少なくとも一つの管理装置と、を含み、少なくとも一つの前記管理装置は、少なくとも一つの前記通信施設によって実現されるネットワークを論理的に分割したネットワークスライスの特性毎に、前記ネットワークスライスを生成するために少なくとも一つの前記通信施設に設定する項目の値をリソースとして管理するためのリソース管理情報を管理し、前記項目は、少なくとも一つの前記データ処理装置の識別情報を含み、少なくとも一つの前記管理装置は、前記ネットワークスライスの特性を含むネットワークスライス生成要求を受け付けた場合、複数の前記通信処理装置を論理分割することによって前記ネットワークスライスを生成する第1処理と、前記ネットワークスライス生成要求に含まれる前記ネットワークスライスの特性に基づいて前記リソース管理情報を参照して、前記項目の値を決定し、少なくとも一つの前記通信施設に、決定された前記項目の値を設定するための第1設定情報を送信する第2処理と、生成される前記ネットワークスライスを介して通信する無線端末の識別情報と、当該ネットワークスライスにおける少なくとも一つの前記データ処理装置の識別情報とを対応づけることによって、前記無線端末から送信されたデータを少なくとも一つの前記データ処理装置に転送するための転送ルールを生成し、少なくとも一つの前記通信施設に、前記転送ルールを設定するための第2設定情報を送信する第3処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、ネットワークスライスの生成に要するコストを抑えることができ、また、ネットワークスライスを実現する装置の設定内容を考慮してエッジ装置に対するTraffic Steering機能の設定を行うことができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1のネットワークシステムの構成の例を示すブロック図である。
図2】実施例1のスライス管理装置の構成の例を示すブロック図である。
図3】実施例1の無線通信管理装置の構成の例を示すブロック図である。
図4】リソース管理情報のデータ構造の一例を示す図である。
図5】スライス管理情報のデータ構造の一例を示す図である。
図6】転送ルール管理情報のデータ構造の一例を示す図である。
図7】ドメイン名管理情報のデータ構造の一例を示す図である。
図8】通信状態管理情報のデータ構造の一例を示す図である。
図9】通信品質条件管理情報のデータ構造の一例を示す図である。
図10】データ処理装置管理情報のデータ構造の一例を示す図である。
図11】無線通信管理情報のデータ構造の一例を示す図である。
図12】実施例1のネットワークシステムにおけるネットワークスライスの設定処理の一例を示すシーケンス図である。
図13】実施例1のスライス管理装置が提示する画面の一例を示す図である。
図14】実施例2のネットワークシステムにおけるネットワークスライス設定変更処理の一例を示すシーケンス図である。
図15】実施例2のスライス管理装置が実行する通信品質確認処理の一例を示す図である。
図16】スライス管理情報の更新結果の一例を示す図である。
図17】転送ルール管理情報の更新結果の一例を示す図である。
図18】ドメイン名管理情報の更新結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0016】
以下に説明する発明の構成において、同一又は類似する構成又は機能には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、同一又は類似する構成又は機能を区別する場合、数値及びアルファベットを組み合わせた符号を用いる。
【0017】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数又は順序を限定するものではない。
【実施例0018】
(A1)システム構成
図1は、実施例1のネットワークシステムの構成の例を示すブロック図である。
【0019】
ネットワークシステムは、複数の無線通信機器(無線端末)10、複数の無線通信施設110、スライス管理装置80、無線通信管理装置30、及び遠隔データ処理装置130から構成される。無線通信機器10は、無線ネットワークを介して、無線基地局20と接続する。また、無線通信施設110は、インターネット120を介して、スライス管理装置80、無線通信管理装置30、及び遠隔データ処理装置130と接続する。
【0020】
無線通信機器10は、無線通信を行う機器であり、例えば、工場で動作するロボット、無人搬送車、及びセンサ等、タブレット型PC(Personal Computer)、並びに、スマートフォン等がある。無線通信機器10は、無線通信施設110との間で、無線通信にて、テキスト、音声、及び映像等を送受信する。図1では、無線通信機器10a、10b、10cが存在し、無線通信機器10aが無線通信施設110aの無線基地局20と無線通信している。
【0021】
無線通信施設110は、無線通信ネットワークを実現する通信施設であり、無線基地局20、宛先判定装置40、DNS(Domain Name System)サーバ50、パケット中継装置60、及びデータ処理装置90から構成される。図1では、無線通信施設110a、110bが存在する。宛先判定装置40、DNSサーバ50、及びパケット中継装置60は、無線ネットワークの通信を制御する通信処理装置の一例である。
【0022】
無線基地局20は、無線通信機器10と無線通信を行う。また、無線基地局20は、宛先判定装置40と有線で接続し、無線通信機器10から受信したデータを宛先判定装置40に送信し、また、宛先判定装置40から受信した無線通信機器10宛てのデータを受信する。
【0023】
宛先判定装置40は、無線基地局20及びパケット中継装置60と有線で接続し、無線基地局20から受信したデータをパケット中継装置60へ送信し、また、パケット中継装置60から受信したデータを無線基地局20へ送信する。宛先判定装置40は、データに含まれる宛先及び送信元の情報を参照して、特定の宛先及び送信元の情報を含むデータを、無線通信施設110内のデータ処理装置90に送信できる。
【0024】
DNSサーバ50は、データ処理装置90及び遠隔データ処理装置130のIPアドレス及びドメイン名の対応を管理する。無線通信機器10がドメイン名のIPアドレスを問い合わせた場合、DNSサーバ50はドメイン名に対応するIPアドレスを応答する。
【0025】
パケット中継装置60は、宛先判定装置40、データ処理装置90、インターネット120と有線で接続し、宛先判定装置40から受信したデータをデータ処理装置90又はインターネット120へ送信し、データ処理装置90又はインターネット120から受信したデータを宛先判定装置40に送信する。なお、パケット中継装置60は、通信網を分離するため論理的に分割することができる。図1では、パケット中継装置60を仮想パケット中継装置70a、仮想パケット中継装置70b、仮想パケット中継装置70cの三つに分割している。仮想パケット中継装置70a、仮想パケット中継装置70b、仮想パケット中継装置70cは、それぞれインターネット120、データ処理装置90a、及びデータ処理装置90bと通信している。
【0026】
データ処理装置90は、エッジ装置として機能する装置であり、無線通信機器10から受信したデータに対して所定の処理を実行する。例えば、データ処理装置90は、受信したデータに対して、リアルタイム処理等の即時実行が必要な処理を実行し、実行結果を無線通信機器10に送信する。なお、データ処理装置90は、論理的に分割することができる。図1では、データ処理装置90aには仮想データ処理装置100aが存在し、データ処理装置90bには仮想データ処理装置100bが存在する。
【0027】
スライス管理装置80は、無線通信施設110が実現する無線ネットワークを論理的に分割した仮想無線ネットワークであるネットワークスライスの設定を行う。具体的には、スライス管理装置80は、無線通信施設110内の宛先判定装置40、パケット中継装置60、及びデータ処理装置90、並びに、無線通信管理装置30に対して設定を行う。さらに、スライス管理装置80は、宛先判定装置40、パケット中継装置60、及びデータ処理装置90間の通信状態に関する情報を取得する。また、スライス管理装置80は、無線通信管理装置30からデータを取得する。装置に対する設定及び通信状態に関する情報の取得の詳細な手順は後述する。
【0028】
無線通信管理装置30は、無線通信機器10のセッションを管理し、また、無線通信施設110に含まれる無線基地局20及び宛先判定装置40への設定を行う。
【0029】
遠隔データ処理装置130は、無線通信機器10から受信したデータに対して所定の処理を事項する。例えば、遠隔データ処理装置130は、バッチ処理等の時間をかけることが許される処理を実行し、実行結果を無線通信機器10に送信する。
【0030】
なお、無線通信機器10、無線基地局20、宛先判定装置40、DNSサーバ50、パケット中継装置60、仮想パケット中継装置70、データ処理装置90、仮想データ処理装置100、スライス管理装置80、無線通信管理装置30については、構成、種類、及び数は、図1に示す例に限らず、適宜、他の態様としてもよい。
【0031】
なお、スライス管理装置80は、無線通信施設110に含まれてもよい。なお、無線通信管理装置30がスライス管理装置80の機能を有してもよいし、また、スライス管理装置80が無線通信管理装置30の機能を有してもよい。
【0032】
(A2)スライス管理装置の構成
図2は、実施例1のスライス管理装置80の構成の例を示すブロック図である。
【0033】
スライス管理装置80は、パケット送受信ポート31、ストレージ装置32、メモリ33、及びCPU(Central Processing Unit)34を有する。
【0034】
ストレージ装置32は、ハードディスク、半導体ディスク、及びフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶素子から構成される記憶装置である。ストレージ装置32は、CPU34が実行するプログラムの一部又は全部が記憶され、また、プログラムが使用する情報の一部又は全部が記憶される。
【0035】
プログラム及び情報の一部又は全ては予めストレージ装置32に格納されていてもよいし、非一時的記憶媒体から又は外部の非一時的記憶装置を備えた情報処理装置からネットワーク経由で導入されてもよい。
【0036】
CPU34は、メモリ33に格納されるプログラムを実行する。CPU34がプログラムに従って処理を実行することによって、特定の機能を実現する機能部として動作する。以下の説明では、プログラムを主語に処理を説明する場合、CPU34が当該プログラムを実行していることを示す。なお、スライス管理装置80は複数のCPU34を有してもよい。
【0037】
メモリ33は、スライス管理装置80の各機能を実現するプログラムを格納する。また、メモリ33は、プログラムが一時的にデータの読み書きを行うためのワークエリアとしても用いられる。なお、プログラムがストレージ装置32に格納されている場合、CPU34は、ストレージ装置32からプログラムを読み出し、メモリ33にロードする。
【0038】
実施例1のメモリ33は、ユーザインタフェースプログラム81、スライス管理プログラム82、装置設定プログラム83、転送ルール管理プログラム84、ドメイン名管理プログラム85、通信状態情報取得プログラム86、装置インタフェースプログラム87、及び無線通信管理装置インタフェースプログラム88を格納する。また、メモリ33は、リソース管理情報91、スライス管理情報92、転送ルール管理情報93、ドメイン名管理情報94、通信状態管理情報95、通信品質条件管理情報96、及びデータ処理装置管理情報97を格納する。なお、メモリ33には、OS(Operating System)等のプログラムが含まれるが省略している。
【0039】
(A3)無線通信管理装置の構成
図3は、実施例1の無線通信管理装置30の構成の例を示すブロック図である。
【0040】
無線通信管理装置30は、パケット送受信ポート31、ストレージ装置32、メモリ33、及びCPU34を有する。
【0041】
スライス管理装置80と同様に、CPU34はストレージ装置32及び/又はメモリ33に格納されたプログラムを実行する。これらのプログラム及びプログラムが使用する情報の一部又は全部は、スライス管理装置80と同様に、外部から導入されてもよい。
【0042】
実施例1のメモリ33は、無線通信管理プログラム36を格納する。無線通信管理プログラム36は、無線通信機器10へのアドレスの割当及びセッションの管理を行う。また、メモリ33は、無線通信管理情報38及び無線通信機器管理情報39を格納する。
【0043】
(A4)情報のデータ構造
図4は、リソース管理情報91のデータ構造の一例を示す図である。
【0044】
リソース管理情報91は、ネットワークスライスを実現する通信処理装置に設定する項目の値をリソースとして管理するための情報である。リソース管理情報91は、リソース名称911、開始912、終了913、及びインクリメント914を含むエントリを格納する。一つの項目に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0045】
リソース名称911は、リソースの種別を表す名称を格納するフィールドである。開始912及び終了913は、リソースの範囲を特定するための値を格納するフィールドである。インクリメント914は、リソースの割当て数を格納するフィールドである。
【0046】
例えば、リソース名称911が「VLAN」のエントリは、「10」から「250」の範囲がVLANの識別情報(項目)のプールとして管理されていることを示す。
【0047】
図5は、スライス管理情報92のデータ構造の一例を示す図である。
【0048】
スライス管理情報92は、無線通信施設110上に生成されたネットワークスライスを管理するための情報である。スライス管理情報92は、タイプ921、データネットワーク922、VLAN ID923、サブネット924、装置名925、IPアドレス926を含むエントリを格納する。一つのネットワークスライスに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0049】
タイプ921は、ネットワークスライスのタイプを示す値を格納するフィールドである。ネットワークスライスのタイプとしては、例えば、低遅延な通信に対応したネットワークスライス、大容量通信に対応したネットワークスライス、及び多数の無線通信機器10の同時接続に対応したネットワークスライス等がある。
【0050】
データネットワーク922は、ネットワークスライス上のデータネットワークの識別情報を格納するフィールドである。VLAN ID923は、ネットワークスライスに割り当てられたVLANの識別情報を格納するフィールドである。サブネット924は、ネットワークスライスに割り当てられたサブネットを格納するフィールドである。
【0051】
装置名925及びIPアドレス926は、ネットワークスライスを構成し、かつ、スライス管理装置80が管理する装置の名称及びIPアドレスを格納するフィールドである。本実施例では、一つのエントリには宛先判定装置40及び仮想データ処理装置100の行が含まれる。
【0052】
図6は、転送ルール管理情報93のデータ構造の一例を示す図である。
【0053】
転送ルール管理情報93は、ネットワークスライス宛てのデータの転送ルールを管理するための情報である。転送ルール管理情報93は、送信元931及び宛先932を含む。一つの転送ルールに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0054】
送信元931は、送信元であるユーザ用サブネットを格納するフィールドである。宛先932は、宛先のネットワークスライスに割り当てられたサブネットを格納するフィールドである。送信元931に設定されたIPアドレスを含むデータは、宛先932のサブネットが割り当てられたネットワークスライスに転送される。
【0055】
例えば、一番目のエントリは、送信元「60.60.10.0/24」であるデータは、サブネット「192.168.10.0/24」に転送されることを示す。なお、図5に示すように、サブネット「192.168.10.0/24」が割り当てられたネットワークスライスに転送されるデータは、VLAN IDが「10」のネットワークを介して、IPアドレスが「192.168.10.2」の仮想データ処理装置100aへ送信される。送信元931が「Any」のエントリは、他の転送ルールに該当しないデータに対する転送ルールである。
【0056】
図7は、ドメイン名管理情報94のデータ構造の一例を示す図である。
【0057】
ドメイン名管理情報94は、DNSサーバ50が名前解決を行うために用いるドメイン名及びIPアドレスの対応関係を管理するための情報である。ドメイン名管理情報94は、ドメイン名941及びIPアドレス942を含むエントリを格納する。一つの対応関係に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0058】
ドメイン名941は、エッジ装置のドメイン名を格納するフィールドである。IPアドレス942は、ドメイン名に対応するIPアドレスを格納するフィールドである。
【0059】
図8は、通信状態管理情報95のデータ構造の一例を示す図である。
【0060】
通信状態管理情報95は、ネットワークスライスを構成するデータ処理装置90の通信品質を管理するための情報である。通信状態管理情報95は、データ処理装置ID951及び通信品質952を含むエントリを格納する。ネットワークスライスを構成する一つのデータ処理装置90に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0061】
データ処理装置ID951は、ネットワークスライスを構成する一つのデータ処理装置90に割り当てられたIPアドレスを格納するフィールドである。通信品質952は、データ処理装置90の通信の品質を示す値を格納するフィールド群である。通信品質952には、遅延及び通信速度等の値が格納される。
【0062】
図9は、通信品質条件管理情報96のデータ構造の一例を示す図である。
【0063】
通信品質条件管理情報96は、ネットワークスライスの特性毎に、満たすべき通信品質の条件を管理するための情報である。5Gの通信方式では、非特許文献1にて、ネットワークスライスの特性毎に通信品質の目標値が定義されている。例えば、低遅延な通信に対応したネットワークスライスでは、無線の片道伝送遅延の目標値が「0.5ms」と定義されている。大容量の通信に対応したネットワークスライスでは、下りのピーク通信速度及び上りのピーク通信速度の目標値が「20Gbps」及び「10Gbps」と定義されている。
【0064】
通信品質条件管理情報96は、タイプ961及び品質条件962を含むエントリを格納する。一つのネットワークスライスの特性に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0065】
タイプ961は、ネットワークスライスのタイプを示す値を格納するフィールドである。品質条件962は、ネットワークスライスのタイプに対して設定された品質条件を格納するフィールド群である。品質条件962は、通信品質の項目毎の閾値(許容値)を格納するフィールドを含む。
【0066】
例えば、タイプ961が「大容量」であるエントリは、大容量の通信に対応したネットワークスライスは、遅延の上限値が「100ms」、許容される通信速度の下限値が「200MB」であることを示す。
【0067】
品質条件は、個別のデータ処理装置90に対して設定される訳ではなく、ネットワークスライスに対して設定される。ネットワークスライスを構成する少なくとも一つのデータ処理装置90が品質条件を満たさない場合、ネットワークスライスそのものが品質条件を満たさないことを示す。
【0068】
図10は、データ処理装置管理情報97のデータ構造の一例を示す図である。
【0069】
データ処理装置管理情報97は、データ処理装置90を管理するための情報である。データ処理装置管理情報97は、データ処理装置ID971及び仮想データ処理装置ID972を含むエントリを格納する。データ処理装置90及び仮想データ処理装置100の組合せに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0070】
データ処理装置ID971は、データ処理装置90に割り当てられたIPアドレスを格納するフィールドである。仮想データ処理装置ID972は、仮想データ処理装置100に割り当てられたIPアドレスを格納するフィールドである。なお、データ処理装置90が論理的に分割されていない場合、仮想データ処理装置ID972は空欄となる。
【0071】
例えば、一番目のエントリは、IPアドレス「192.168.0.251」が割り当てられているデータ処理装置90に、IPアドレス「192.168.10.2」が割り当てられている仮想データ処理装置100が存在することを示す。二番目のエントリはIPアドレス「192.168.0.252」が割り当てられているデータ処理装置90には仮想データ処理装置100が存在しないことを示す。
【0072】
図11は、無線通信管理情報38のデータ構造の一例を示す図である。
【0073】
無線通信管理情報38は、ネットワークスライスにおける無線通信機器10が使用するサブネットを管理するための情報である。無線通信管理情報38は、タイプ381、データネットワーク382、ユーザ用サブネット383、及び無線通信機器ID384を含むエントリを格納する。一つのネットワークスライスに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0074】
タイプ381は、ネットワークスライスのタイプを示す値を格納するフィールドである。データネットワーク382は、ネットワークスライスの識別情報を格納するフィールドである。ユーザ用サブネット383は、無線通信機器10が使用するサブネットワークを格納するフィールドである。無線通信機器ID384は、サブネットワークを介して通信を行う無線通信機器10の識別情報を格納するフィールドである。
【0075】
一番目のエントリは、タイプが「低遅延」のネットワークスライス上に識別情報が「network 1」であるデータネットワークが定義され、当該データネットワークを利用する無線通信機器10のサブネットとして「60.60.10.0/24」が割り当てられていることを示す。また、無線通信機器10a、10bがデータネットワークを使用する無線通信機器10として登録されていることを示す。
【0076】
(A5)運用者の設定要求を契機とした設定動作シーケンス
図12は、実施例1のネットワークシステムにおけるネットワークスライスの設定処理の一例を示すシーケンス図である。図13は、実施例1のスライス管理装置80が提示する画面の一例を示す図である。
【0077】
無線通信網の運用者140は、スライス管理装置80に対してスライスの作成要求を発行する(ステップS1001)。スライスの作成要求には、スライスのタイプ及びデータネットワークの識別情報が含まれる。
【0078】
スライス管理装置80のユーザインタフェースプログラム81は、スライスの作成要求を受信した場合、スライス管理プログラム82を呼び出す。スライス管理プログラム82は、無線通信管理装置30にスライスの作成要求を送信する(ステップS1002)。
【0079】
無線通信管理装置30の無線通信管理プログラム36は、スライス作成要求を受信した場合、無線通信施設110の通信処理装置を論理的に分割することによってネットワークスライスを生成する。ネットワークスライスの生成方法は公知の技術であるため詳細な説明は省略する。このとき、ユーザ用サブネットも設定される。無線通信管理プログラム36は、ネットワークスライスの生成が完了した場合、スライス管理装置80に応答を送信する。
【0080】
スライス管理プログラム82は、応答を受信した場合、リソース割当を行う(ステップS1003)。ここでは、VLAN ID、IPアドレス、及びサブネットが割当対象の項目となる。
【0081】
具体的には、スライス管理プログラム82は、スライス管理情報92を参照し、指定されたタイプのネットワークスライスに割当済みのリソースを特定する。リソースが割り当てられていない場合、すなわち、指定されたタイプのネットワークスライスが存在しない場合、スライス管理プログラム82は、リソース管理情報91の各エントリの開始912に設定された値を払い出す。リソースが割り当てられている場合、スライス管理プログラム82は、各項目に割り当てられているリソースの最大値を特定し、当該最大値にインクリメント914の値を加算する。当該値が終了913の値より以下の場合、スライス管理プログラム82は当該値を払い出す。当該値が終了913の値より大きい場合、スライス管理プログラム82は、スライス管理情報92を参照して、使用されていない値を特定し、当該値を払い出す。
【0082】
このとき、スライス管理プログラム82は、使用するデータ処理装置90を決定し、データ処理装置90に仮想データ処理装置100を生成するための情報を生成する。
【0083】
スライス管理装置80の装置設定プログラム83は、装置インタフェースプログラム87を介して、宛先判定装置40、パケット中継装置60、及びデータ処理装置90に、払い出された項目の値を設定するための設定情報を送信する(ステップS1004)。
【0084】
宛先判定装置40、パケット中継装置60、及びデータ処理装置90は、設定が完了した後、スライス管理装置80に設定結果を送信する(ステップS1005)。スライス管理装置80の装置設定プログラム83は、設定の成功を示す設定結果を受信した場合、設定した内容をスライス管理情報92に登録する。
【0085】
次に、スライス管理装置80の転送ルール管理プログラム84は、無線通信管理装置30に、ネットワークスライスを利用するユーザ用サブネットの問合せを行う(ステップS1006)。当該問合せには、ネットワークスライスのタイプ及びデータネットワークの識別情報が含まれる。
【0086】
無線通信管理装置30の無線通信管理プログラム36は、スライス管理装置80からの問合せを受け付けた場合、ユーザ用サブネットを含む応答をスライス管理装置80に送信する(ステップS1007)。
【0087】
具体的には、無線通信管理プログラム36は、無線通信管理情報38を参照し、タイプ381及びデータネットワーク382の値の組合せが、問合せに含まれるネットワークスライスのタイプ及びデータネットワークの識別情報の組合せと一致するエントリを検索する。無線通信管理プログラム36は、検索されたエントリのユーザ用サブネット383からユーザ用サブネットを取得し、当該ユーザ用サブネットを含む応答を送信する。例えば、ネットワークスライスのタイプが「低遅延」かつデータネットワークの識別情報が382の場合、ユーザ用サブネット「60.60.10.0/24」が応答に含まれる。
【0088】
スライス管理装置80の転送ルール管理プログラム84は、無線通信管理装置30から応答を受信した場合、応答に含まれるユーザ用サブネットと、ネットワークスライスに割り当てられたサブネットと関連付けた転送ルール情報を生成し、無線通信管理装置30に送信する(ステップS1008)。
【0089】
無線通信管理装置30は、転送ルール情報を受信した場合、転送ルール情報を宛先判定装置40に送信する(ステップS1009)。
【0090】
宛先判定装置40は、設定が完了した後、無線通信管理装置30に設定結果を送信する(ステップS1010)。無線通信管理装置30は、宛先判定装置40から設定結果を受信した場合、設定結果をスライス管理装置80に送信する(ステップS1011)。
【0091】
スライス管理装置80は、無線通信管理装置30から設定の成功を示す設定結果を受信した場合、転送ルール管理情報93に転送ルールを登録する。
【0092】
次に、スライス管理装置80のスライス管理プログラム82は、仮想データ処理装置100に割り当てるドメイン名を払い出す(ステップS1012)。
【0093】
ドメイン名管理プログラム85は、仮想データ処理装置100のIPアドレス及びドメイン名を関連付けた設定情報を生成し、DNSサーバ50に送信する(ステップS1013)。DNSサーバ50は、設定が完了した後、スライス管理装置80に設定結果を送信する(ステップS1014)。
【0094】
スライス管理装置80のドメイン名管理プログラム85は、設定の成功を示す設定結果を受信した場合、ドメイン名管理情報94に設定情報を登録する。
【0095】
スライス管理装置80のユーザインタフェースプログラム81は、一連の処理の結果を運用者140に送信する(ステップS1015)。
【0096】
例えば、図13に示すような画面1300が表示される。画面1300は、ネットワークスライス表示欄1301、設定表示欄1302、及び状態表示欄1303を含む。
【0097】
ネットワークスライス表示欄1301は、ネットワークスライスを表示する欄である。設定表示欄1302は、ネットワークスライスの設定状態を表示する欄である。状態表示欄1303は、ネットワークスライスに含まれるデータ処理装置90又は仮想データ処理装置100の通信状態を表示する欄である。
【0098】
図13では、無線通信施設110aに「低遅延」タイプのネットワークスライス「スライス101」が設定され、全ての項目の設定が成功していることを示す。また、当該ネットワークスライスのエッジ装置にはドメイン名「aaa.abc.co.jp」が割り当てられ、通信遅延が発生していないことを示す。
【0099】
無線通信機器10が、エッジ装置「aaa.abc.co.jp」にデータを送信する場合、DNSサーバ50によって、ドメイン名から宛先IPアドレス「192.168.10.2」が特定され、データの宛先として「192.168.10.2」が設定される。当該データは、宛先判定装置40のTraffic Steering機能によって、ネットワークスライスに割り当てられたVLAN ID「10」のデータネットワークを介して、エッジ装置に転送される。
【0100】
なお、処理の整合性が保たれる限り、各処理の実行順序を変更してもよい。
【0101】
実施例1によれば、運用者は、ネットワークスライスのタイプを指定することによって、ネットワークスライスを実現する装置への設定が自動的に完了する。また、ネットワークスライスの設定に合わせて、エッジ装置への転送ルールも自動的に設定される。
【実施例0102】
実施例2では、ネットワークスライスの通信状態が品質条件を満たさない場合に実行される処理について説明する。以下、実施例1との差異を中心に実施例2について説明する。
【0103】
実施例2のネットワークシステムの構成は実施例1と同一である。実施例2のスライス管理装置80及び無線通信管理装置30の構成は実施例1と同一である。
【0104】
(B1)通信品質の変化を契機とした設定動作シーケンス
図14は、実施例2のネットワークシステムにおけるネットワークスライス設定変更処理の一例を示すシーケンス図である。図15は、実施例2のスライス管理装置80が実行する通信品質確認処理の一例を示す図である。図16は、スライス管理情報92の更新結果の一例を示す図である。図17は、転送ルール管理情報93の更新結果の一例を示す図である。図18は、ドメイン名管理情報94の更新結果の一例を示す図である。
【0105】
実施例1で説明したネットワークスライスの設定処理が実行された後、スライス管理装置80の通信状態情報取得プログラム86は、宛先判定装置40とデータ処理装置90との間の通信品質に関する情報を取得するために、周期的に、取得要求を宛先判定装置40に送信する(ステップS2001)。なお、周期は任意に設定できる。
【0106】
宛先判定装置40は、データ処理装置90までの通信品質を計測し、計測結果を含む通信品質情報をスライス管理装置80に送信する(ステップS2002)。スライス管理装置80は、通信品質情報を受信した場合、通信状態管理情報95に登録する。
【0107】
スライス管理装置80の通信状態情報取得プログラム86は、通信品質確認処理を実行する(ステップS2003)。ここで、図15を用いて通信品質確認処理について説明する。
【0108】
通信状態情報取得プログラム86は、データ処理装置90のループ処理を開始する(ステップS3001)。まず、通信状態情報取得プログラム86は、通信状態管理情報95から一つのエントリを選択する。
【0109】
通信状態情報取得プログラム86は、データ処理装置管理情報97を参照して、選択したデータ処理装置90に仮想データ処理装置100が存在するか否かを判定する(ステップS3002)。
【0110】
選択したデータ処理装置90に仮想データ処理装置100が存在しない場合、通信状態情報取得プログラム86はステップS3007に進む。
【0111】
選択したデータ処理装置90に仮想データ処理装置100が存在する場合、通信状態情報取得プログラム86は、スライス管理情報92を参照して、選択したデータ処理装置90上の仮想データ処理装置100を構成として含むデータネットワークが所属するネットワークスライスを特定し、さらに、当該ネットワークスライスのタイプを特定する(ステップS3003)。
【0112】
通信状態情報取得プログラム86は、特定したネットワークスライスのタイプの品質条件を満たすか否かを判定する(ステップS3004)。
【0113】
具体的には、通信状態情報取得プログラム86は、通信状態管理情報95から選択したエントリの通信品質952と、通信品質条件管理情報96の特定されたタイプに対応するエントリの品質条件962とを比較する。例えば、通信品質952に含まれる遅延の値が、品質条件962に含まれる遅延の値(閾値)より小さいか否かが判定される。少なくとも一つの項目について要求される品質を満たさない場合、ネットワークスライスのタイプの品質条件を満たさないと判定される。
【0114】
特定したネットワークスライスのタイプの品質条件を満たす場合、通信状態情報取得プログラム86はステップS3007に進む。
【0115】
特定したネットワークスライスのタイプの品質条件を満たさない場合、通信状態情報取得プログラム86は、通信状態管理情報95を参照して、通信品質を満たすデータ処理装置90を選択する(ステップS3005)。なお、通信品質を満たすデータ処理装置90が複数存在する場合、通信品質が最も良好なデータ処理装置90が選択される。
【0116】
通信状態情報取得プログラム86は、特定されたデータ処理装置90に接続するパケット中継装置60を特定し(ステップS3006)、その後、ステップS3007に進む。
【0117】
ステップS3007では、通信状態情報取得プログラム86は、全てのデータ処理装置90について処理が完了したか否かを判定する(ステップS3007)。
【0118】
全てのデータ処理装置90について処理が完了していない場合、通信状態情報取得プログラム86は、ステップS3001に戻り、新たなデータ処理装置90を選択する。
【0119】
全てのデータ処理装置90について処理が完了した場合、通信状態情報取得プログラム86は通信品質確認処理を終了する。
【0120】
以上が通信品質確認処理の説明である。図14の説明に戻る。通信品質確認処理において、新たなデータ処理装置90が選択された場合、以下のような処理が実行される。
【0121】
通信状態情報取得プログラム86は、スライス管理プログラム82を呼び出す。スライス管理プログラム82は更新処理を実行し(ステップS2004)、ユーザインタフェースプログラム81は、一連の処理の結果を運用者140に送信する(ステップS2005)。更新処理では、ステップS1003からステップS1005、ステップS1008からステップS1014の処理が実行される。ただし、一部処理が異なる。
【0122】
ステップS1003では、スライス管理プログラム82は、新たなVLAN ID、サブネット、及びIPアドレスを払い出す。リソースの割当て方法は実施例1と同一であるため詳細な説明は省略する。
【0123】
ステップS1004では、装置設定プログラム83は、装置インタフェースプログラム87を介して、宛先判定装置40、パケット中継装置60、及びデータ処理装置90に、新たに払い出された項目の値を設定するための設定情報を送信する。スライス管理装置80の装置設定プログラム83は、設定の成功を示す設定結果を受信した場合、設定した内容に基づいてスライス管理情報92を更新する。例えば、スライス管理情報92は、図16のように更新される。
【0124】
図16では、データネットワーク「network1」のVLAN ID、サブネット、及びエッジ装置のIPアドレスが更新されている。また、装置設定プログラム83は、更新前のサブネット及び更新後のサブネットを転送ルール管理プログラム84に出力し、更新前のIPアドレス及び更新後のIPアドレスをドメイン名管理プログラム85に出力する。
【0125】
ステップS1008では、転送ルール管理プログラム84は、宛先932に更新前のサブネットが設定されたエントリを検索し、当該エントリの送信元931のユーザ用サブネット及び更新後のサブネットを関連付けた転送ルール情報を生成し、無線通信管理装置30に送信する。スライス管理装置80は、無線通信管理装置30から設定の成功を示す設定結果を受信した場合、検索されたエントリの宛先932を更新する。例えば、転送ルール管理情報93は、例えば、図17のように更新される。
【0126】
図17では、送信元931が「60.60.10.0/24」のデータの宛先が「192.168.10.0/24」から「192.168.70.0/24」に更新されている。なお、図16に示すように、サブネット「192.168.70.0/24」が割り当てられたネットワークスライスに転送されるデータは、VLAN IDが「70」のネットワークを介して、IPアドレスが「192.168.70.2」の仮想データ処理装置100aへ送信される。
【0127】
ステップS1013では、ドメイン名管理プログラム85は、IPアドレス942に更新前のIPアドレスが設定されたエントリを検索し、当該エントリのドメイン名941のドメイン名と更新後のIPアドレスを関連付けた設定情報を生成し、DNSサーバ50に送信する。スライス管理装置80は、設定の成功を示す設定結果を受信した場合、検索されたエントリのIPアドレス942を登録する。ドメイン名管理情報94は、例えば、図18のように更新される。
【0128】
図18では、ドメイン名941が「aaa.abc.co.jp」のIPアドレスが「192.168.10.2」から「192.168.70.2」に更新されている。無線通信機器10が、エッジ装置「aaa.abc.co.jp」にデータを送信する場合、DNSサーバ50によって、ドメイン名から宛先IPアドレス「192.168.70.2」が特定され、データの宛先として「192.168.70.2」が設定される。当該データは、宛先判定装置40のTraffic Steering機能によって、ネットワークスライスに割り当てられたVLAN ID「70」のデータネットワークを介して、エッジ装置に転送される。
【0129】
実施例2によれば、通信品質に基づいて、ネットワークスライスの設定を自動的に更新することができる。
【0130】
なお、本発明及び/又は本実施例は、スライス管理装置80による構成のほか、設定方法や、スライス管理装置80で実行されるコンピュータプログラムとしても構成できる。コンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されるとよい。記録媒体としては、例えば、フロッピーディスク、CD-ROM、DVD-ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用できる。
【0131】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をしてもよい。
【0132】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0133】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0134】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0135】
10 無線通信機器
20 無線基地局
30 無線通信管理装置
31 パケット送受信ポート
32 ストレージ装置
33 メモリ
34 CPU
36 無線通信管理プログラム
38 無線通信管理情報
39 無線通信機器管理情報
40 宛先判定装置
50 DNSサーバ
60 パケット中継装置
70 仮想パケット中継装置
80 スライス管理装置
81 ユーザインタフェースプログラム
82 スライス管理プログラム
83 装置設定プログラム
84 転送ルール管理プログラム
85 ドメイン名管理プログラム
86 通信状態情報取得プログラム
87 装置インタフェースプログラム
88 無線通信管理装置インタフェースプログラム
90 データ処理装置
91 リソース管理情報
92 スライス管理情報
93 転送ルール管理情報
94 ドメイン名管理情報
95 通信状態管理情報
96 通信品質条件管理情報
97 データ処理装置管理情報
100 仮想データ処理装置
110 無線通信施設
120 インターネット
130 遠隔データ処理装置
140 運用者
1300 画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18