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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153546
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ガス測定器
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
G01N27/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062887
(22)【出願日】2022-04-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和1年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム 産業競争力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】水谷 学世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誉久
(72)【発明者】
【氏名】野田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和明
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA19
2G046AA20
2G046BD01
2G046BD06
2G046BH02
2G046FE22
2G046FE25
2G046FE46
(57)【要約】
【課題】可燃性ガスを適切にふるい分けできるガス測定器を提供する。
【解決手段】ガス測定器は、フィルタと、フィルタを通過したガスを検出するガスセンサと、を備える。フィルタには、電圧または電流を印加する電源が接続され、抵抗発熱すると共に接触した可燃性ガスを燃焼させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧または電流を印加する電源が接続され、抵抗発熱すると共に接触した所定の可燃性ガスを燃焼させるフィルタと、
前記フィルタを通過した可燃性ガスを検出するガスセンサと、
を備える、ガス測定器。
【請求項2】
タイミングを決定する同期信号を出力する信号発生部と、
前記フィルタの温度を決定する制御信号と前記同期信号とに基づいて、前記同期信号によって決定されるタイミングで前記フィルタの温度が前記制御信号によって決定される温度となるように前記電源を制御する制御部と、
前記ガスセンサの検出値を、前記同期信号によって決定されるタイミングで取得する取得部と、
前記検出値と前記制御信号とを関連付けて出力する出力部と、
を備える、請求項1に記載のガス測定器。
【請求項3】
予め取得された関係と前記検出値と前記制御信号とに基づいて、ガス種を判定する判定部をさらに備え、
前記予め取得された関係は、前記ガス種と前記検出値と前記制御信号との関係である、請求項2に記載のガス測定器。
【請求項4】
前記フィルタは、タングステン、ニッケルクロム合金、モリブデン及び銅の少なくとも1つからなる、請求項1~3何れか一項に記載のガス測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、金属塩を含むフィルタと感知素子とを備える可燃性ガスセンサを開示する。この可燃性ガスセンサは、浸食性を有する硫黄化合物からなるガスを、フィルタに含まれる金属塩と反応させることで除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-523182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、測定対象とするガスは、複数の種類のガスを含むことがある。このような場合、何れのガスを検出しているのか区別できないため、検出するガスのふるい分けが必要になる。特許文献1に記載の可燃性ガスセンサは、フィルタの化学反応により検出するガスのふるい分けを行うが、金属塩と反応する特定のガスしかふるい分けできない。本開示は、可燃性ガスを適切にふるい分けできるガス測定器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るガス測定器は、フィルタと、フィルタを通過したガスを検出するガスセンサと、を備える。フィルタには、電圧または電流を印加する電源が接続され、抵抗発熱すると共に接触した可燃性ガスを燃焼させる。
【0006】
このガス測定器では、電圧または電流が印加されることで、フィルタが抵抗発熱して上昇する。フィルタの温度が可燃性ガスの発火点まで上昇すると、フィルタに接触した可燃性ガスが燃焼する。燃焼した可燃性ガスは、ガスセンサに検知されない。このとき、発火点は可燃性ガスの種類に応じて異なるため、ガス測定器は、フィルタの温度を変更することにより、ガスセンサが検出する可燃性ガスをふるい分けできる。
【0007】
一実施形態においては、信号発生部と、制御部と、取得部と、出力部とを備える。信号発生部は、タイミングを決定する同期信号を出力する。制御部は、フィルタの温度を決定する制御信号と同期信号とに基づいて、同期信号によって決定されるタイミングでフィルタの温度が制御信号によって決定される温度となるように電源を制御する。取得部は、ガスセンサの検出値を、同期信号によって決定されるタイミングで取得する。出力部は、検出値と制御信号とを関連付けて出力する。この場合、ガス測定器は、検出値と同期信号とを関連付けて出力できる。
【0008】
一実施形態においては、予め取得された関係と検出値と制御信号とに基づいて、ガス種を判定する判定部をさらに備える。予め取得された関係は、ガス種と検出値と制御信号との関係である。この場合、ガス測定器は、可燃性ガスのガス種を判定できる。
【0009】
一実施形態においては、フィルタは、タングステン、ニッケルクロム合金、モリブデン及び銅の少なくとも1つからなってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るガス測定器によれば、可燃性ガスを適切にふるい分けできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るガス測定器の一例を示す断面図である。
図2図2の(A)は実施形態に係るガス測定器の一例を示すブロック図である。図2の(B)は制御信号及び同期信号の一例である。
図3】触媒部材の温度に応じたガス分子の反応を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0013】
[ガス測定器の構成]
図1は、実施形態に係るガス測定器の一例を示す断面図である。図1に示されるガス測定器1は、ガスの成分を測定する機器である。ガス測定器1は、電気回路部品として提供され得る。一例として、ガス測定器1は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスである。ガス測定器1は、フィルタ10、ガスセンサ30、及び基材40を備える。
【0014】
基材40は、その内部に空間を画成する。基材40は、ガスを透過しない材料で形成される。基材40は、その上部が開放され、空間に連通する開口を有する。フィルタ10は、基材40の上部の開口を塞ぐように配置される。フィルタ10は、略板状の部材であり、ガスを透過する材料で形成される。フィルタ10及び基材40は、ガスを透過する隙間が無いように接合される。これにより、フィルタ10及び基材40は、ガス室41を画成する。
【0015】
フィルタ10は、電気伝導体であって、通電によって発熱する。フィルタ10は、タングステン(W)、ニッケルクロム合金又はモリブデン(Mo)などの抵抗値が高い金属からなる。フィルタ10は、銅(Cu)からなっていてもよい。フィルタ10は、電圧または電流を印加する電源11に接続され、電圧印加または電流印加によって発熱する。フィルタ10は、マイクロオーダーからナノオーダーの範囲の複数の隙間を含んでいる。ガスは、フィルタ10の隙間を通過する。発熱したフィルタ10は、ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させる。
【0016】
ガスセンサ30は、ガス室41内に設けられる。一例として、ガスセンサ30は、フィルタ10の下流、即ちガスがフィルタ10に接触してフィルタ10を通過した側に設けられる。ガスセンサ30は、フィルタ10を通過しても燃焼していない、ふるい分けされたガスを検出する。ガスセンサ30は、例えば、半導体を利用したガスセンサである。ガスセンサ30は、ガスを検出する検知面を有している。この場合、ガスセンサ30は、ガスセンサ30の検知面に接触したガス分子を、電気信号として出力する。
【0017】
[ガス測定器の制御回路]
図2の(A)は、実施形態に係るガス測定器1の一例を示すブロック図である。ガス測定器1は、測定部2(ガス測定器の一例)と回路部3とを備える。回路部3は、信号発生部50、制御部60、取得部70、出力部80及び判定部90を備える。回路部3は、例えば、電気回路で構成され得る。回路部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(ReadOnly Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、及び通信装置などを有する汎用コンピュータで構成されてもよい。
【0018】
信号発生部50は、制御部60及び取得部70へ制御信号及び同期信号を出力する。制御信号は、フィルタ10の温度を決定する信号である。同期信号は、制御部と取得部とを同期させるタイミングを決定する信号である。制御部60は、制御信号及び同期信号に基づいてフィルタ10の温度を制御する電圧または電流をフィルタ10へ印加するように、電源11を制御する。図2の(B)は、制御信号及び同期信号の一例である。図2の(B)では、制御信号は、SIG1、SIG2、SIG3の三種類の温度に相当する信号となる。同期信号は、水晶発振器などの発振器に基づいた矩形波である。制御部60は、制御信号に示される温度となるように、フィルタ10の温度を制御する。取得部70は、同期信号に基づいて検出値を取得する。
【0019】
制御部60は、同期信号の矩形波を所定の回数受信した際に、フィルタ10の温度に対応する波形の制御信号を出力する。一例として、図2の(B)の3段階に変化する制御信号は、フィルタ10の温度を3段階で制御する。フィルタ10の温度は、無段階で制御されてもよい。この場合、制御信号は、三角波又は正弦波を示す。
【0020】
取得部70は、同期信号の矩形波を所定の回数受信した際に、検出値を取得する。よって、取得部70は、制御信号によるフィルタ10の温度の変化に対応した検出値を取得できる。取得部70が検出値を取得する際の矩形波を受信する所定の回数は、制御部60が制御信号を出力する際の矩形波を受信する回数以上でもよい。取得部70が検出値を取得する時期を、制御部60が制御信号を出力する時期よりも遅くすることで、取得部70は、フィルタ10の温度が変化した後にフィルタ10と接触したガスが最大となったタイミングで、検出値を取得できる。
【0021】
出力部80は、制御信号と、取得部70から取得された検出値とを関連付けて出力する。判定部90は、ガスと検出値と制御信号との予め取得された関係と、出力部80により出力された検出値及び制御信号とに基づいてガスを判定する。ガスと検出値と制御信号との組合せについては、事前に予め取得され、例えばガス特性テーブルとして記憶される。判定部90は、出力部80によって出力された組合せに基づいてガス特性テーブルを参照し、ガスを決定する。
【0022】
[ガス測定器の動作]
図3は、触媒部材の温度に応じたガス分子の挙動を例示する模式図である。一例として、検出対象の可燃性ガスは、メタン(CH)及びエタン(C)などの炭化水素を含む混合ガスとする。ガス測定器1は、メタン(CH)及びエタン(C)などの炭化水素のうち、特定の種類の分子を検出可能なガスセンサ30を有する。本実施形態では、一例として、ガス測定器1は、メタン(CH)及びエタン(C)を検出する。
【0023】
図2の(B)に示されるように、最初に、フィルタ10の温度は、制御信号及び同期信号に基づいて動作する制御部60によって変更される。図3の(A)は、制御信号がSIG1の場合に、フィルタ10と接触するガス分子の挙動を示す。一例として、制御信号がSIG1の場合、制御部60は、フィルタ10に電圧または電流を印加しないように、電源11を制御する。よって、フィルタ10は発熱しない。制御信号がSIG1の場合、メタン(CH)及びエタン(C)は、燃焼しない。ガスセンサ30は、メタン(CH)及びエタン(C)を検出する。
【0024】
図3の(B)は、制御信号がSIG2の場合に、フィルタ10と接触するガス分子の挙動を示す。制御信号がSIG2の場合、制御部60は、フィルタ10に電圧または電流を印加するように、電源11を制御する。フィルタ10は、通電によってエタン(C)の発火点(一例として、520℃)まで発熱する。フィルタ10を通過したエタン(C)は、燃焼する。メタン(CH)は、発火点がエタンよりも高いため、燃焼しない。ガスセンサ30は、メタン(CH)を検出する。
【0025】
図3の(C)は、制御信号がSIG3の場合に、フィルタ10と接触するガス分子の挙動を示す。制御信号がSIG3の場合、制御部60は、フィルタ10に制御信号がSIG2の場合より大きな電圧または電流を印加するように、電源11を制御する。フィルタ10は、通電によってメタン(CH)の発火点(一例として、537℃)まで発熱する。フィルタ10を通過したメタン(CH)及びエタン(C)は、燃焼する。ガスセンサ30は、メタン(CH)及びエタン(C)が存在しない場合を検出する。
【0026】
次に、取得部70は、ガスセンサ30が出力した測定値を、同期信号に基づいて取得する。出力部80は、制御信号と、取得部70から取得された検出値とを関連付けて出力する。判定部90は、ガス特性テーブルと、取得部70により取得された測定値及び制御信号とに基づいて、ガスを判定する。制御信号が示すフィルタ10の温度と測定値との予め取得された関係から、混合ガスは、メタン(CH)及びエタン(C)を含むと判定される。
【0027】
[実施形態のまとめ]
ガス測定器1では、電圧または電流が印加されることで、フィルタ10が抵抗発熱して上昇する。フィルタ10の温度が可燃性ガスの発火点まで上昇すると、フィルタ10に接触した可燃性ガスが燃焼する。燃焼した可燃性ガスは、ガスセンサ30に検知されない。このとき、発火点は可燃性ガスの種類に応じて異なるため、ガス測定器は、フィルタ10の温度を変更することにより、可燃性ガスをふるい分けできる。
【0028】
ガス測定器1では、制御部60によって、フィルタ10の温度を決定する制御信号と同期信号とに基づいて、同期信号によって決定されるタイミングでフィルタ10の温度が制御信号によって決定される温度となるように、電源が制御される。そして、取得部70によって、ガスセンサ30の検出値が、同期信号によって決定されるタイミングで取得される。このように、ガス測定器1は、検出値と同期信号を関連付けて出力できる。
【0029】
ガス測定器1では、判定部90によって、予め取得された関係と検出値と制御信号とに基づいて、ガス種が判定される。これにより、ガス測定器1は、可燃性ガスのガス種を判定できる。
【0030】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記の例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0031】
フィルタ10及びガスセンサ30は、別々に形成された後に組み合わされて作製されてもよい。フィルタ10及びガスセンサ30は、一体として作製されてもよい。
【0032】
フィルタ10は、その内部に空間を画成してもよい。この場合、フィルタ10は、可撓性及び導電性を有しており、かつ、熱による変形量が小さい素材からなってもよい。フィルタ10は、例えば、金属のメッシュからなる。フィルタ10は、その下部が開放され、空間に連通する開口を有する。板状の基材40は、フィルタ10の下部の開口を塞ぐように配置される。これにより、フィルタ10及び基材40は、ガス室41を画成してもよい。この場合、ガスセンサ30は、基材40から離間して、ガス室41の中心に配置されていてもよい。
【0033】
信号発生部50は、制御部60と一体であってもよい。取得部70は、出力部80と一体であってもよい。出力部80は、判定部90と一体であってもよい。
【0034】
ガス測定器1は、基材40及びガス室41を含まないように構成されてもよい。この場合、ガス測定器1は、ガスセンサ30にフィルタ10が密着するように構成される。ガス測定器1は、M種類のガスセンサ(Mは2以上の整数)を備えてもよい。Mが3以上の場合、M種類のガスセンサは同じ種類のセンサを含んでいてもよい。また、フィルタ10の温度は、N段階で(Nは2以上の整数)で制御されてもよい。この場合、ガス測定器1は、最大でM×N種類の組み合わせでガスを測定できる。
【0035】
ガス測定器1は、判定部90を含まないように構成されてもよい。この場合、ガス測定器1は、出力部80が測定値と制御信号とを外部へ出力する。
【符号の説明】
【0036】
1…ガス測定器、2…測定部、3…回路部、10…フィルタ、30…ガスセンサ、40…基材、41…ガス室、50…信号発生部、60…制御部、70…取得部、80…出力部、90…判定部。
図1
図2
図3