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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153567
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】エンジンの吸排気構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/30 20160101AFI20231011BHJP
   F02M 26/32 20160101ALI20231011BHJP
【FI】
F02M26/30
F02M26/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062922
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】加藤 二郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 裕司
(72)【発明者】
【氏名】津田 周
(72)【発明者】
【氏名】野小生 晃
(72)【発明者】
【氏名】山内 武俊
(72)【発明者】
【氏名】山根 久幸
(72)【発明者】
【氏名】藤平 伸次
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 靖
(72)【発明者】
【氏名】須藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】高群 保
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062ED08
3G062ED10
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で吸気通路に付与される熱害を抑制できるエンジンの吸排気構造を提供する。
【解決手段】エンジン本体の一側面であるポート開口面に開口して吸気通路に接続される吸気ポートと、ポート開口面のうち吸気ポートよりも下方の位置に開口して排気通路に接続される排気ポートとを設け、吸気通路に、吸気ポートと連通し且つ吸気ポートの開口部分から上方に延びる姿勢でポート開口面に固定される吸気マニホールドを設け、排気通路に、吸気マニホールドの下方に配設されて排気ポートと連通する状態でポート開口面に固定される排気マニホールドを設け、EGR通路に、EGR通路を通過するEGRガスを冷却するEGRクーラを設け、EGRクーラを、ポート開口面の側方において吸気マニホールドよりも下方且つ排気マニホールドよりも上方の位置に配設する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、前記エンジン本体から導出された排気が流通する排気通路と、前記排気通路と前記吸気通路とを連通して排気の一部をEGRガスとして前記吸気通路に還流するEGR通路とを備えたエンジンの吸排気構造において、
前記エンジン本体は、当該エンジン本体の一側面であるポート開口面に開口して前記吸気通路に接続される吸気ポートと、前記ポート開口面のうち前記吸気ポートよりも下方の位置に開口して前記排気通路に接続される排気ポートとを備え、
前記吸気通路は、前記吸気ポートと連通し且つ当該吸気ポートの開口部分から上方に延びる姿勢で前記ポート開口面に固定される吸気マニホールドを備え、
前記排気通路は、前記吸気マニホールドの下方に配設されて前記排気ポートと連通する状態で前記ポート開口面に固定される排気マニホールドを備え、
前記EGR通路は、当該EGR通路を通過するEGRガスを冷却するEGRクーラを備え、
前記EGRクーラは、前記ポート開口面の側方において前記吸気マニホールドよりも下方且つ前記排気マニホールドよりも上方の位置に配設されている、ことを特徴とするエンジンの吸排気構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの吸排気構造において、
前記EGRクーラは、前後方向に延びる形状を有するとともに、EGRガスの流れ方向について上流側の方が下流側よりも前記排気マニホールドとの上下方向の離間距離が小さくなるように配設されている、ことを特徴とするエンジンの吸排気構造。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンの吸排気構造において、
前記排気マニホールドは、前後方向に延びる形状を有し、
前記EGRクーラは、EGRガスの流れ方向について上流側の方が下流側よりも下方に位置するように配設されている、ことを特徴とするエンジンの吸排気構造。
【請求項4】
請求項1に記載のエンジンの吸排気構造において、
前記吸気マニホールドは樹脂製である、ことを特徴とするエンジンの吸排気構造。
【請求項5】
請求項1に記載のエンジンの吸排気構造において、
前記EGRクーラは、内側を流通する冷却水によってEGRガスを冷却する水冷式である、ことを特徴とするエンジンの吸排気構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のエンジンの吸排気構造において、
前記エンジン本体は、エキセントリックシャフト、当該エキセントリックシャフト回りを回転する1つのロータ、および、当該ロータを収容する1つのロータ収容室を備えた1ロータ式のロータリーピストンエンジンである、ことを特徴とするエンジンの吸排気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、車載用エンジン等において、排気通路と吸気通路とがエンジン本体の共通の一側面に支持される場合がある。具体的に、特許文献1には、ロータリーピストンエンジンであって、エンジン本体の一側面の上部に吸気通路が固定され、同じ一側面の下部に排気通路が固定されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-221849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気通路は、エンジン本体から導出された燃焼後の高温のガスが内側を流通することで高温になる。そのため、特許文献1のように、排気通路の上方に吸気通路が配設される構成では、排気通路からの放射熱によって吸気通路が熱害を受けるおそれがある。この熱害を抑制するべく吸気通路の厚みを大きくする等して吸気通路の熱容量を大きくすることが考えられるが、この場合には吸気通路の重量が増大してしまう。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で吸気通路に付与される熱害を抑制できるエンジンの吸排気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、エンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、前記エンジン本体から導出された排気が流通する排気通路と、前記排気通路と前記吸気通路とを連通して排気の一部をEGRガスとして前記吸気通路に還流するEGR通路とを備えたエンジンの吸排気構造において、前記エンジン本体は、当該エンジン本体の一側面であるポート開口面に開口して前記吸気通路に接続される吸気ポートと、前記ポート開口面のうち前記吸気ポートよりも下方の位置に開口して前記排気通路に接続される排気ポートとを備え、前記吸気通路は、前記吸気ポートと連通し且つ当該吸気ポートの開口部分から上方に延びる姿勢で前記ポート開口面に固定される吸気マニホールドを備え、前記排気通路は、前記吸気マニホールドの下方に配設されて前記排気ポートと連通する状態で前記ポート開口面に固定される排気マニホールドを備え、前記EGR通路は、当該EGR通路を通過するEGRガスを冷却するEGRクーラを備え、前記EGRクーラは、前記ポート開口面の側方において前記吸気マニホールドよりも下方且つ前記排気マニホールドよりも上方の位置に配設されている、ことを特徴とする。
【0007】
この構成では、エンジン本体のポート開口面に共通して吸気マニホールドと排気マニホールドとが固定されて吸気マニホールドの下方に排気マニホールドが配設されるエンジンにおいて、ポート開口面の側方において吸気マニホールドよりも下方且つ排気マニホールドよりも上方の位置にEGRクーラが配設されている。そのため、高温の排気マニホールドから吸気マニホールドに向かう放射熱をEGRクーラによって遮断できる。従って、この構成によれば、EGRクーラを上記位置に配設するという簡単な構成で、吸気マニホールドに付与される熱害を抑制できる。
【0008】
前記構成において、好ましくは、前記EGRクーラは、前後方向に延びる形状を有するとともに、EGRガスの流れ方向について上流側の方が下流側よりも前記排気マニホールドとの上下方向の離間距離が小さくなるように配設されている(請求項2)。
【0009】
この構成によれば、高温の排気が通過することで高温になりやすいEGRクーラの上流側部分と吸気マニホールドとの距離が長くされるので、高温となったEGRクーラの上流側部分から吸気マニホールドに熱が加わるのを抑制できる。また、EGRクーラの下流側部分を、吸気マニホールドを含む吸気通路に近づけることができ、EGRクーラと吸気通路とを連結する通路の寸法を短くできる。
【0010】
排気マニホールドおよびEGRクーラの構成としては、前記排気マニホールドは、前後方向に延びる形状を有し、前記EGRクーラは、EGRガスの流れ方向について上流側の方が下流側よりも下方に位置するように配設されている、構成が挙げられる(請求項3)。
【0011】
前記構成によれば、EGRクーラーによる冷却によってEGRクーラー内で発生した凝縮水を排気通路に流すことができる。そのため、凝縮水が吸気通路およびエンジン本体に流入してエンジン本体での燃焼が不安定になるのを防止できる。
【0012】
前記構成において、好ましくは、前記吸気マニホールドは樹脂製である(請求項4)。
【0013】
この構成によれば、吸気マニホールドを軽量化できる。ここで、吸気マニホールドが樹脂製の場合は金属製の場合に比べてより熱害を受けやすいが、本発明では上記のように吸気マニホールドに付与される熱害が抑制される。そのため、この構成によれば、吸気マニホールドの熱害を抑制しつつ吸気マニホールドを軽量化できる。
【0014】
前記EGRクーラとしては、内側を流通する冷却水によってEGRガスを冷却する水冷式のものが挙げられる(請求項5)。
【0015】
また、前記エンジン本体としては、エキセントリックシャフト、当該エキセントリックシャフト回りを回転する1つのロータ、および、当該ロータを収容する1つのロータ収容室を備えた1ロータ式のロータリーピストンエンジンが挙げられる(請求項6)。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のエンジンの吸排気構造によれば、簡単な構成で吸気通路に付与される熱害を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの概略構成を示したシステム図である。
図2】エンジンの概略正面図である。
図3】エンジンの概略側面図である。
図4図3のIV-IV線断面の一部を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(エンジンの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの吸排気構造が適用されたエンジン1の概略構成を示したシステム図である。図2は、エンジン1の概略正面図、図3は、エンジン1の概略側面図である。
【0019】
本実施形態に係るエンジン1は、車両に搭載される。例えば、エンジン1は、エンジン1に加えてモータを車輪の駆動源として備えるとともに、モータに給電するバッテリ、バッテリを充電するための発電機を備えるハイブリッド車両に搭載されて、発電機を回転駆動するための装置として用いられる。
【0020】
エンジン1は、エンジン本体10と、エンジン本体10に導入される吸気が内側を流通する吸気通路3と、エンジン本体10から排出される排気が内側を流通する排気通路5と、排気通路5を流れる排気の一部であるEGRガスを吸気通路3に還流するEGR装置4とを備える。
【0021】
(エンジン本体)
エンジン本体10は、1ロータ式のロータリーピストンエンジンである。エンジン本体10は、所定の方向に延びるエキセントリックシャフト12と、エキセントリックシャフト12回りを回転するロータ11と、ロータ11を収容するロータ収容室Rとを有する。エンジン本体10は、ロータ11の外周を囲むロータハウジング13と、ロータハウジング13の上記所定の方向の両側(つまりロータ11の回転軸に沿う方向の両側)に設けられる一対のサイドハウジング14、14とを有する。ロータ収容室Rは、ロータハウジング13と2つのサイドハウジング14、14により区画されている。ロータハウジング13は、2ノードのペリトロコイド曲線に沿う内周面を有する。ロータ11は、エキセントリックシャフト12に対して遊星回転運動してロータハウジング13の内周面に沿って回転する。
【0022】
エンジン本体10は、一方のサイドハウジング14のロータハウジング13と反対側(上記所定の方向について)に連結されて、フライホイールが収容されるリアカバー20を有する。エンジン本体10は、他方のサイドハウジング14のロータハウジング13と反対側(上記所定の方向について)に連結されるフロントカバー22を有する。
【0023】
エンジン1は、上記所定の方向が略水平方向と一致する姿勢つまりロータ11の回転軸およびエキセントリックシャフト12が略水平方向に延びる姿勢で車両100に搭載される。以下の説明では、上記所定の方向(エキセントリックシャフト12の長手方向およびロータ11の回転軸に沿う方向)を前後方向という。この所定の方向(前後方向)は、請求項の「前後方向」に相当する。また、以下では、この前後方向について、リアカバー20が設けられる側を後、フロントカバー22が設けられる側を前、として説明を行う。また、以下では、エンジン1が車両100に搭載された状態での上下方向を単に上下方向とし、エンジン本体10を後方から見たときの左右方向を単に左右方向として説明する。
【0024】
本実施形態では、エンジン1は、上記の前後方向(エキセントリックシャフト12の長手方向およびロータ11の回転軸に沿う方向)が車幅方向と一致し、上記左右方向が車両前後方向と一致する姿勢で車両100に搭載される。ここで、図1のエンジン本体10の図は、これを前方から見たときの概略断面図である。また、図2はエンジン1を前方から見たときの図であり、図3はエンジン1を右方から見たときの図である。なお、本実施形態では、エンジン本体10の後面に、減速機および発電機が収容されるジェネレータハウジングケースが取り付けられており、図2の符号200はこのジェネレータハウジングケースを示している。
【0025】
エンジン本体10には、吸気通路3に接続されて吸気通路3内の吸気をロータ収容室Rに導入する吸気ポート16、および、排気通路5に接続されてロータ収容室Rから排気を排気通路5に導出する排気ポート15が形成されている。吸気ポート16は、ロータ収容室Rの右側上部に開口しており、排気ポート15はロータ収容室Rの右側下部に開口している。つまり、エンジン本体10は、ロータ11が前方から見て時計回りに回転し、ロータ収容室Rの右側上部、左側上部、左側下部、右側下部の各領域がそれぞれ概ね吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の実施領域となるように構成されている。換言すると、エンジン1は、上下方向について、各行程の実施領域が上記の位置になるように車両100に搭載される。
【0026】
吸気ポート16および排気ポート15は、それぞれ2つずつエンジン本体10に設けられている。エンジン本体10は、サイドポート式のロータリーピストンエンジンであり、吸気ポート16および排気ポート15はサイドハウジング14に形成されている。具体的に、2つのサイドハウジング14の上部には、それぞれ1つずつ吸気ポート16が形成されており、各吸気ポート16は、各サイドハウジング14の右側面の上部に開口している。また、2つのサイドハウジング14の下部にそれぞれ1つずつ排気ポート15が形成されており、各排気ポート15は、各サイドハウジング14の右側面の下部に開口している。2つの排気ポート15は、前後方向についてほぼ対称な形状を有し、2つのサイドハウジング14の右側面のほぼ同じ高さ位置に開口している。同様に、2つの吸気ポート16は、前後方向についてほぼ対称な形状を有し、2つのサイドハウジング14の右側面のほぼ同じ高さ位置に開口している。
【0027】
エンジン本体10には、ロータ収容室R内に燃料を噴射する燃料噴射装置17と、ロータ収容室R内に形成された燃料と空気の混合気を添加する点火プラグ18とが取り付けられている。燃料噴射装置17は、ロータ収容室Rの上端(詳細には上端から点火プラグ18側にオフセットした位置)を臨むように取り付けられており、点火プラグ18は、ロータ収容室Rの左下部を臨むように取り付けられている。
【0028】
(吸気通路)
吸気通路3には、吸気中に含まれる異物を除去するエアクリーナ31と、吸気通路3を開閉してエンジン本体10(ロータ収容室R)に導入される吸気の量を調整可能なスロットル弁32とが、上流側からこの順に設けられている。吸気通路3のエアクリーナ31よりも下流側の部分には、当該部分を通過する吸気の流量を検出するエアフロメータセンサSN1が設けられている。
【0029】
スロットル弁32はスロットルバルブケース33に収容されており、スロットルバルブケース33に固定されたアクチュエータ34によって駆動される。吸気通路3のうちスロットルバルブケース33よりも下流側の部分は、2つの吸気ポート16、16と連通して吸気をこれら2つの吸気ポート16、16に分配する吸気マニホールド38を構成している。吸気マニホールド38には、これを通過するガスの温度である吸気温を検出する吸気温センサSN2が設けられている。
【0030】
(排気通路)
排気通路5は、2つの排気ポート15、15と連通して内側でこれら排気ポート15、15から導出された排気が合流する排気マニホールド52と、排気マニホールド52の下流端から下流側(排気ガスの流れ方向について)に延びる下流側排気通路53とを備えている。下流側排気通路53の途中部には、排気を浄化するための浄化装置51が設けられている。浄化装置51は、例えば、触媒作用によって排気を浄化する触媒装置と、排気中の微粒子を捕集するフィルタとを含む。
【0031】
(EGR装置)
EGR装置4は、排気通路5と吸気通路3とを連通してEGRガスを排気通路5から吸気通路3に還流するEGR通路40を備える。EGR通路40には、EGR通路40を開閉してEGRガスの量を調整するEGRバルブ42と、EGR通路40を流れる排気であるEGRガスを冷却するEGRクーラ41とが、上流側(EGRガスの流れ方向について)からこの順に設けられている。EGRバルブ42はEGRバルブケース43に収容されており、EGRバルブケース43に固定されたEGRバルブアクチュエータ44によって駆動される。
【0032】
EGRクーラ41は、水冷式の熱交換器であり、内部に導入される冷却水とEGRガスとの熱交換によってEGRガスを冷却する。
【0033】
(吸排気系の配置)
吸気マニホールド38、EGR装置4および排気マニホールド52の配置の詳細について説明する。図4は、図3のIV-IV線断面の一部を概略的に示した図である。
【0034】
上記のように、各吸気ポート16は、各サイドハウジング14の右側面の上部、つまり、エンジン本体10の右側面10Aの上部に開口している。各排気ポート15は、各サイドハウジング14の右側面の下部、つまり、エンジン本体10の右側面10Aの下部に開口している。なお、これら吸気ポート16および排気ポート15の開口部分が形成されたエンジン本体10の右側面10Aは、請求項の「ポート開口面」に相当する。
【0035】
吸気マニホールド38は、エンジン本体10の右側面10Aに固定されている。吸気マニホールド38は、エンジン本体10の右側面10A(各サイドハウジング14の右側面)に沿って、吸気ポート16の開口部から上方に延びている。吸気マニホールド38の下端部は、2つの吸気ポート16にわたって前後方向に延びる形状を有しており、この下端部において2つの吸気ポート16と連通している。本実施形態では、吸気マニホールド38は樹脂製である。吸気マニホールド38の上端には、スロットルバルブケース33が連結されている。
【0036】
排気マニホールド52も、エンジン本体10の右側面10Aに固定されている。排気マニホールド52は、エンジン本体10の右側面10Aに沿って前後方向に延びる形状を有する。排気マニホールド52は略水平面に沿って延びている。排気マニホールド52は、後側排気ポート15Bから前方に延びている。排気マニホールド52は、その後端部において後側排気ポート15Bと連通しており、前後方向の中間部分において前側排気ポート15Aと連通している。排気マニホールド52の前端部は、右斜め前方に膨出する形状を有している。つまり、排気マニホールド52の前端部は左方に湾曲しており、排気マニホールド52はその前端部においてエンジン本体10の前方に回り込んでいる。下流側排気通路53は、エンジン本体10の前面10Bに沿って排気マニホールド52の前端から左方に延びた後、エンジン本体10の左側面10Cに沿って後方に延び、エンジン本体10の後端と対向する位置付近から左方に湾曲している。なお、後側排気ポート15Bは、2つの排気ポート15、15のうち後側に位置する排気ポートであって、2つのサイドハウジング14、14のうち後側に位置するサイドハウジング14Bに形成された排気ポートであり、前側排気ポート15Aは、2つの排気ポート15、15のうち前側に位置する排気ポートであって、2つのサイドハウジング14、14のうち前側に位置するサイドハウジング14Aに形成された排気ポートである。
【0037】
排気マニホールド52は、吸気マニホールド38の下方に位置しており、これらは平面視で互いに重複している。詳細には、排気マニホールド52のうち、その後端部から、前側の排気ポート15付近までの部分が、吸気マニホールド38と平面視で重複する位置に配設されている。
【0038】
EGR通路40は、エンジン本体10の右側面10Aに沿う位置で、排気マニホールド52と吸気マニホールド38とを接続している。
【0039】
排気マニホールド52の前端部の上面にはEGRガスを導出するためのEGR導出部52Aが設けられている。EGR導出部52Aは、排気マニホールド52の上面から上方に突出しており、その中央には上下方向に貫通して排気マニホールド52の内側空間と連通する貫通孔が形成されている。EGR通路40は、その上流端に設けられた第1フランジ4AがEGR導出部52Aにボルト92によって固定されることで、排気マニホールド52に連結されている。EGR導出部52Aの上面および第1フランジ4Aの下面とは略水平に延びる平面であり、EGR導出部52Aと第1フランジ4Aとは、各上面と下面とが面接触する状態で締結されている。
【0040】
吸気マニホールド38の上端部の後面にはEGRガスが導入されるEGR導入部38Aが設けられている。EGR導入部38Aは、吸気マニホールド38の上端部において後方に突出しており、その中央には前後方向に貫通して吸気マニホールド38の内側空間と連通する貫通孔が形成されている。EGR通路40は、その下流端に設けられた第6フランジ4FがEGR導入部38Aにボルト92によって固定されることで、吸気マニホールド38に連結されている。EGR導入部38Aの後面と第6フランジ4Fの前面とは前後方向とほぼ直交する平面であり、EGR導入部38Aと第6フランジ4Fとは、各後面と前面とが面接触する状態で締結されている。
【0041】
EGR装置4は、EGR導出部52Aから排気マニホールド52と吸気マニホールド38との間を通って後方に延びた後、吸気マニホールド38の後方を通ってEGR導入部38Aに向かって上方に延びる姿勢で、エンジン本体10の右側面10Aの側方に配設されている。つまり、EGR装置4は、排気マニホールド52と吸気マニホールド38の間を通ってEGR導出部52Aから後方に延びる上流側部分4Xと、上流側部分4Xの後端からEGR導入部38Aに向かって上方に延びる下流側部分4Yとを有する。
【0042】
上流側部分4Xは、EGRクーラ41と、EGRクーラ41の上流端と第1フランジ4Aとの間で前後方向に延びる上流側通路401とを含む。EGRクーラ41と上流側通路401とは溶接等により連結されている。
【0043】
上流側通路401は、第1フランジ4Aから上斜め後方に延びている。EGRクーラ41は、排気マニホールド52と吸気マニホールド38の間において上流側通路401の後端から後方に延びている。
【0044】
具体的に、EGRクーラ41は、略直方体を有しており、前後方向に延びる姿勢で配設されている。EGRクーラ41は、排気マニホールド52の上方、且つ、吸気マニホールド38の下方であって、平面視で排気マニホールド52および吸気マニホールド38と重複する位置に配設されている。EGRクーラ41の前後方向の寸法と、吸気マニホールド38の前後方向の寸法とはほぼ同等に設定されている。EGRクーラ41は、前後方向について、吸気マニホールド38の後端とほぼ同じ位置と、吸気マニホールド38の前端よりもわずかに前方の位置との間にわたって延びるように配設されている。
【0045】
本実施形態では、EGRクーラ41は、上流側通路401の後端から上斜め後方に延びており、EGRガスの流れ方向について上流側の方がより下側に位置する姿勢とされている。ここで、排気マニホールド52は、略水平面に沿って前後方向に延びる姿勢とされている。これより、EGRクーラ41と排気マニホールド52との上下方向の離間距離は、EGRガスの流れ方向についてEGRクーラ41の上流側部分の方が下流側部分よりも短くなっている。
【0046】
EGRクーラ41には、その内側に冷却水を導入するための冷却水導入パイプ41bと、EGRクーラ41内でEGRガスと熱交換を行った後の冷却水をEGRクーラ41の外部に導出するための冷却水導出パイプ41aとが接続されている。これらパイプ41a、41bは、EGRクーラ41の右側面に接続されている。冷却水導入パイプ41bは、EGRクーラ41の前端部つまり上流端部に接続されており、冷却水導出パイプ41aは、EGRクーラ41の後端部つまり下流端部に接続されている。
【0047】
EGRクーラ41は、ブラケットを介してエンジン本体10の右側面10Aに支持されている。具体的に、EGRクーラ41の下面には、EGRクーラ41の下面から下方に延びる第1ブラケット101が溶接等により固定されている。第1ブラケット101には、第2ブラケット102がボルト92により固定されている。エンジン本体10の右側面10Aには、排気マニホールド52の左端に設けられたフランジ52Gがボルト91により固定されている。第2ブラケット102は、この排気マニホールド52のフランジ52Gにボルト92を介して固定されており、EGRクーラ41は、第1ブラケット101、第2ブラケット102および排気マニホールド52のフランジ52Gを介してエンジン本体10の右側面10Aに支持されている。
【0048】
EGR装置4の下流側部分4Yは、EGRクーラ41に連結された中間通路402と、中間通路402に連結されたEGRバルブボディ45と、EGRバルブボディ45に連結された下流側通路403とを含む。EGRバルブボディ45は、EGRバルブ42とEGRバルブケース43とEGRバルブアクチュエータ44とを含むユニットである。
【0049】
中間通路402は、EGRクーラ41の後端部(下流端部)から上斜め後方に延びている。EGRクーラ41と中間通路402とは、フランジを介して連結されている。具体的に、EGRクーラ41の後端部には上下方向に延びる第2フランジ4Bが設けられている。中間通路402の前端部には上下方向に延びる第3フランジ4Cが設けられている。EGRクーラ41と中間通路402とは、これら第2フランジ4Bと第3フランジ4Cとがボルト92により締結されることで連結されている。また、中間通路402は、エンジン本体10の右側面10Aに沿って延びるブラケット103を介してボルト92により当該右側面10Aに支持されている。
【0050】
EGRバルブボディ45は、吸気マニホールド38の後方に上下方向に延びる姿勢で配設されている。EGRバルブボディ45と中間通路402とは、フランジを介して連結されている。具体的に、中間通路402の上端には水平方向に延びる第4フランジ4Dが設けられている。EGRバルブボディ45(EGRバルブケース43)の下端部には水平方向に延びる第5フランジ4Eが設けられている。EGRバルブボディ45と中間通路402とは、これら第4フランジ4Dと第5フランジ4Eとがボルト92により固定されることで連結されている。また、EGRバルブボディ45は、エンジン本体10の右側面10Aにボルト92により支持されている。
【0051】
下流側通路403は、EGRバルブケース43の左側面から上方に延びている。下流側通路403の上端部はフランジを介して、吸気マニホールド38のEGR導入部38Aに連結されている。具体的に、下流側通路403の上端部には、上下方向に延びる第6フランジ4Fが設けられている。下流側通路403は、この第6フランジ4FがEGR導入部38Aにボルト92によって固定されることでEGR導入部38Aに連結されている。ここで、第6フランジ4Fの前面およびEGR導入部38Aの後面はともに前後方向と略直交する平面となっており、第6フランジ4FとEGR導入部38Aとは、その前面と後面とが面接触する状態で固定されている。
【0052】
上記のように構成されたEGR装置4は、上流側部分4X、中間通路402、EGRバルブボディ45および下流側通路403が連結された後、第1フランジ4AとEGR導出部52Aとがボルト92によって締結されるとともに、第6フランジ4FとEGR導入部38Aとがボルト92によって締結されることで、排気マニホールド52および吸気マニホールド38に固定される。その後、中間通路402およびEGRバルブボディ45がエンジン本体10の右側面10Aに固定されるとともに、EGRクーラ41が排気マニホールド52のフランジ52Gを介してエンジン本体10の右側面10Aに固定されることで、EGR装置4はエンジン本体10の右側面に固定される。
【0053】
ここで、上記のように、第6フランジ4FとEGR導入部38Aの締結面は前後方向と直交する平面となっており、第1フランジ4AとEGR導出部52Aの締結面は水平に延びる平面となっている。そのため、本実施形態では、上記のように、まず、第6フランジ4FとEGR導入部38Aとを締結し、第1フランジ4AとEGR導出部52Aとを締結することで、EGR装置4を上下方向および前後方向について適切な位置、つまり、EGRクーラ41を吸気マニホールド38と排気マニホールド52の間に配置しつつ下流側通路403および上流側通路401が吸気マニホールド38および排気マニホールド52と密着する位置に、固定できるようになっている。
【0054】
(作用等)
以上のように、上記実施形態では、エンジン本体10の右側面10Aにおいて、吸気マニホールド38の下方に、高温の排ガスが流通する排気マニホールド52が配設されている。そのため、排気マニホールド52からの放射熱が吸気マニホールド38に伝わりやすい。これに対して、上記実施形態では、エンジン本体10の右側面10Aの側方において吸気マニホールド38よりも下方且つ排気マニホールド52よりも上方の位置にEGRクーラが配設されている。そのため、高温の排気マニホールド52から吸気マニホールド38に向かう熱をEGRクーラ41によって遮断できる。従って、上記実施形態によれば、EGRクーラ41を上記位置に配設するという簡単な構成で、吸気マニホールド38に付与される熱害を抑制できる。
【0055】
特に、上記実施形態では、前後方向に延びる形状を有するEGRクーラ41が、EGRガスの流れ方向について上流側の方が下流側よりも排気マニホールド52との上下方向の離間距離が小さくなるように配設されている。
【0056】
そのため、高温の排気が通過することで高温になりやすいEGRクーラ41の上流側部分と吸気マニホールド38との距離を長くでき、高温のEGRクーラ41の上流側部分から吸気マニホールド38に熱が加わるのをより確実に抑制できる。また、EGRクーラ41の下流側部分を、吸気マニホールド38を含む吸気通路3に近づけることができ、EGRクーラ41と吸気通路3とを連結する通路つまりEGR装置4の下流側部分4Yの寸法を短くでき、EGR装置4をコンパクトに構成できる。
【0057】
また、仮に凝縮水が吸気マニホールド38およびロータ収容室Rに流入すると、ロータ収容室Rで空気と燃料の混合気の燃焼が不安定になりやすい。これに対して、上記実施形態によれば、EGRクーラ41が、EGRガスの流れ方向について上流側の方が下流側よりも下方に位置するように配設されていることで、EGRクーラ41内で発生した凝縮水を排気マニホールド52に流すことができ、凝縮水が吸気マニホールド38およびロータ収容室Rに流入するのを防止できる。
【0058】
また、排気マニホールド52が前後方向に延びる形状を有するのに対してEGRクーラ41が前後方向に延びるように配設されていることで、排気マニホールド52のより多くの面積をEGRクーラ41によって上方から覆うことができ、排気マニホールド52から吸気マニホールド38に向かう熱を効果的に遮断できる。
【0059】
また、上記実施形態は、吸気マニホールド38が樹脂製であるので、吸気マニホールド38を軽量化できる。ただし、吸気マニホールド38が樹脂製の場合は金属製の場合に比べてより熱害を受けやすい。これに対して、上記実施形態によれば上記のように吸気マニホールド38に付与される熱害が抑制される。そのため、吸気マニホールド38の熱害を抑制しながら吸気マニホールド38を軽量化できる。
【0060】
(変形例)
上記実施形態では、EGRクーラ41が水冷式の場合を説明したが、EGRクーラ41は水冷式であってもよい。
【0061】
上記実施形態では、ロータリーピストンエンジンが1つのロータ11のみを有する1ロータタイプである場合を説明したが、複数のロータ11を有するロータリーピストンエンジンに上記構成を適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
3 吸気通路
4 EGR装置
5 排気通路
10 エンジン本体
10A エンジン本体の右側面(ポート開口面)
11 ロータ
12 エキセントリックシャフト
38 吸気マニホールド
41 EGRクーラ
52 排気マニホールド
図1
図2
図3
図4