(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153572
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】化粧シート、及び化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062928
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 臣吾
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彩加
(72)【発明者】
【氏名】野口 祥太
(72)【発明者】
【氏名】明石 彩
(72)【発明者】
【氏名】桑村 健介
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK07A
4F100AL05A
4F100AT00D
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DD01A
4F100EJ91B
4F100GB07
4F100GB81
4F100HB00C
4F100JA13A
4F100JB16A
4F100JC00
4F100JC00A
4F100JC00B
4F100JK12
4F100JL01
4F100JL02
4F100JL10A
4F100JN01A
4F100JN18C
4F100JN18D
(57)【要約】
【課題】植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る化粧シート1は、熱可塑性樹脂層を少なくとも備え、当該熱可塑性樹脂層は、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であって、着色されている着色基材層2又は無色透明の透明熱可塑性樹脂層である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂層を少なくとも備え、
前記熱可塑性樹脂層は、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であって、着色されている又は無色透明である、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
表面保護層をさらに備え、
前記熱可塑性樹脂層は、一方の面に凹凸部が形成されており、
前記表面保護層は、前記熱可塑性樹脂層の前記一方の面側に積層され、バイオマス由来成分を含む樹脂層である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂層は、前記熱可塑性樹脂層全体の質量に対し、前記バイオマス由来のポリプロピレンを5質量%以上99質量%未満の範囲内で含む
ことを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂層の厚みが50μm以上300μm以下の範囲内であり、
前記熱可塑性樹脂層の比重が0.9以上1.3以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂層には絵柄層が積層されていない
ことを特徴とする請求項4に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂層には絵柄層が積層されており、
前記熱可塑性樹脂層は無色透明である
ことを特徴とする請求項4に記載の化粧シート。
【請求項7】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備える
ことを特徴とする化粧材。
【請求項8】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項6に記載の化粧シートと、を備え
前記基材と前記絵柄層とには位相差が生じている
ことを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート、化粧部材、及び化粧シートの製造方法に関し、特に、建築内装用および外装用、建具の表面や枠材、家電製品の表面材、床材等々の建築用資材に用いられる化粧シート、及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル製の化粧シートに代わる化粧シートとして、例えば、特許文献1に開示されているように、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、環境問題の背景から、化粧シートの材料を、従来の材料である石油由来の材料から、植物由来の材料へ代える要求がある。しかしながら、化粧シートに用いることが可能な植物由来の材料として、バイオマスポリエチレン等のバイオマスポリオレフィンを用いると、化粧シートとして用いるためには、表面硬度が低下するという課題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を鑑み、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、熱可塑性樹脂層を少なくとも備え、前記熱可塑性樹脂層は、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であって、着色されている又は無色透明である化粧シートである。
【0007】
また上記課題を解決するために、本発明の他の一態様は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された前記化粧シートと、を備える化粧材である。
また、上記課題を解決するために、本発明のさらに他の一態様は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された前記化粧シートと、を備え、前記化粧シートにおいて前記熱可塑性樹脂層には絵柄層が積層されており、前記熱可塑性樹脂層は無色透明であって、前記基材と前記絵柄層とには位相差が生じている化粧材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態における化粧シート及び化粧材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0011】
以下、
図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、
図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
基材9は、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板等を用いて板状に形成されており、一方の面(
図1では、上側の面)に、化粧シート1が積層されている。すなわち、化粧材10は、基材9と、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える。なお、本発明はこれに限られず、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に加え、基材9の他方の面(
図1では、下側の面)に積層された化粧シート1を備える構成としてもよい。
【0012】
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、少なくとも熱可塑性樹脂層を備えている。例えば化粧シート1は、
図1に示すように、着色されている熱可塑性樹脂層(着色熱可塑性樹脂層)である着色基材層2と、絵柄層3と、表面保護層6と、プライマー層8とを備える。
図1に示す化粧シート1は、一例としてプライマー層8、着色基材層2、絵柄層3および表面保護層6がこの順に積層されている。
より詳細には、化粧シート1において、絵柄層3、表面保護層6は、着色基材層2の一方の面側においてこの順に積層されている。また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(
図1では、下側の面)側に積層されている。
【0013】
<着色基材層>
熱可塑性樹脂層の一例である着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であって、バイオマス由来(植物由来)のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層である。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物を用いて形成された透明な樹脂層であればよい。化粧シート1は、熱可塑性樹脂層(本例では、着色基材層2)が当該樹脂組成物を用いて形成されることにより、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリプロピレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能となる。
【0014】
環境問題の背景から、近年では化粧シートの材料としてバイオマス由来の樹脂材料を用いることが注目されている。しかしながら、化粧シートとしての用途に適した物性を維持することが可能なバイオマス由来のプラスチックの種類は少なく、バイオマス由来の樹脂材料を用いた化粧シートの実用化は十分に進んでいなかった。本実施形態による化粧シート1は、再生可能資源であるバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で熱可塑性樹脂層(例えば、着色基材層2)を形成することにより、石油資源の節約を可能にするとともに、二酸化炭素の排出量が削減できる。このため、環境へ配慮した持続可能な社会へ貢献することができる。
以下、着色基材層2の組成について詳しく説明する。
【0015】
(バイオマス由来のポリプロピレン)
本実施形態において、バイオマス由来のポリプロピレンは、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のプロピレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたプロピレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のプロピレンを用いているため、重合されてなるポリプロピレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリプロピレンの原料モノマーは、バイオマス由来のプロピレンを100質量%含むものでなくてもよい。
【0016】
バイオマス由来のポリプロピレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のプロピレンをさらに含んでもよい。
【0017】
バイオマス由来の原料であるプロピレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
【0018】
上記のポリプロピレン中のバイオマス由来のプロピレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリプロピレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本実施形態においては、ポリプロピレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
【0019】
本実施形態においては、理論上、ポリプロピレンの原料として、全てバイオマス由来のプロピレンを用いれば、バイオマス由来のプロピレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリプロピレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリプロピレン中のバイオマス由来のプロピレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリプロピレンのバイオマス度は0となる。
【0020】
本実施形態において、バイオマス由来のポリプロピレンやそのポリプロピレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
【0021】
本実施形態において、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、プロピレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
【0022】
プロピレン重合体の重合方法は、目的とするポリプロピレンの種類、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0023】
また、バイオマス由来のポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンをそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0024】
(バイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物)
本実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリプロピレンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のプロピレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5質量%以上99質量%未満、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内で含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のプロピレンの濃度が5質量%以上99質量%未満の範囲内であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0025】
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリプロピレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のプロピレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0026】
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のプロピレンをさらに含んでもよい。つまり、本実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリプロピレンと、化石燃料由来のポリプロピレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
【0027】
本実施形態によれば、樹脂組成物は、好ましくは5質量%以上99質量%未満の範囲内、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内のバイオマス由来のポリプロピレンと、好ましくは1質量%以上95質量%以下の範囲内、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内の化石燃料由来のポリプロピレンとを含むものである。このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のプロピレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0028】
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリプロピレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
【0029】
着色基材層2は、比重が0.9以上1.3以下の範囲内である。具体的には、着色基材層2は、比重が0.9以上1.3以下の範囲内となるように無機物が添加されている。比重が0.9以上1.3以下の範囲内となるように、着色基材層2に無機物を添加することによって、着色基材層2の隠蔽性を高めることができる。
【0030】
(無機物)
無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他酸化物等のうちのいずれか一つ又は複数を適用することができる。
【0031】
以上のように、着色基材層2は、バイオマス由来のプロピレンを着色基材層2全体に対して5質量%以上、好ましくは5質量%以上99質量%未満、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内で含んでなるものである。着色基材層2中のバイオマス由来のプロピレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0032】
さらに、着色基材層2は、比重が0.9以上1.3以下の範囲内となるように無機物が添加されている。これにより、着色基材層2の隠蔽性を高めることができる。
【0033】
着色基材層2は、着色基材層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。また着色基材層2は、バイオマス由来のポリプロピレン以外に、化石燃料由来のポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0034】
着色基材層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
【0035】
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、50μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましく、51μm以上200μm以下であることがより好ましく、55μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。これは、着色基材層2の厚さが50μm以上である場合、下地となる基材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが300μm以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
【0036】
なお、本実施形態では、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリプロピレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリプロピレンに加えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、本実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
【0037】
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄層3は、着色基材層2の着色で代用することが可能である場合には、省略も可能である。つまり、熱可塑性樹脂層には、絵柄層3が積層されていなくてもよい。
【0038】
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
【0039】
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、又はそれらの混合物等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
【0040】
絵柄層3の厚さは、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。これは、絵柄層3の厚さが1μm以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層3の厚さが10μm以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
【0041】
<表面保護層>
表面保護層6は、着色基材層2と絵柄層3(絵柄層3は無し(省略)の場合もある)の上に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
表面保護層6は、バイオマス由来の材料を含む樹脂組成物で形成された樹脂層であって、例えば、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートで形成されている。また表面保護層6において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。つまり、表面保護層6は、バイオマス由来成分を含んでいる。ポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかは、バイオマス由来成分を含んでもよく、含んでいなくてもよい。以下の説明において、バイオマス由来成分を含むウレタン(メタ)アクリレートのことを、バイオウレタン(メタ)アクリレートとも称する。
【0042】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール及びイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られるものである。バイオウレタン(メタ)アクリレートにおいては、ポリオールとして植物由来のポリオールを使用するか、イソシアネートとして植物由来のイソシアネートを使用するか、或いはポリオール及びイソシアネートの何れも植物由来のものを使用することができる。
【0043】
ポリオールとしては、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオール、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であるポリエーテルポリオール、又は、多官能アルコールとカーボネートとの反応物であるポリカーボネートポリオールを用いることができる。以下、各ポリオールについて説明する。
【0044】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能カルボン酸の少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物
【0045】
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、及びサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
【0046】
バイオマス由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較し、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
バイオマス由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、これを水添することによって製造することができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。
【0047】
化石燃料由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2個以上、好ましくは2~8個の水酸基を有する化合物を用いることができる。具体的には、化石燃料由来の多官能アルコールとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコールの他、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等を使用することができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0048】
バイオマス由来の多官能カルボン酸としては、再生産可能な大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油、ひまし油等の植物由来の油、及びそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油等の植物原料から得られる脂肪族多官能カルボン酸を用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本発明では、特に、バイオマス由来のコハク酸又はバイオマス由来のセバシン酸を用いることが好ましい。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0049】
化石燃料由来の多官能カルボン酸としては、脂肪族多官能カルボン酸や芳香族多官能カルボン酸を用いることができる。化石燃料由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、アジピン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、及びダイマー酸、ならびにそれらのエステル化合物等が挙げられる。また、化石燃料由来の芳香族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、及びピロメリット酸、ならびにそれらのエステル化合物等を用いることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0050】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能イソシアネートの少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物
【0051】
バイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールを用いることができる。
【0052】
バイオマス由来の多官能イソシアネートとしては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化し、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られたものを用いることができる。バイオマス由来の多官能イソシアネートは、例えば、バイオマス由来のジイソシアネートである。バイオマス由来のジイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のジイソシアネートを得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
【0053】
1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの他の合成方法としては、ホスゲン化法やカルバメート化法が挙げられる。より具体的には、ホスゲン化方法は、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩を直接ホスゲンと反応させる方法や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法により、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。また、カルバメート化法は、まず、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩をカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメート(PDC)を生成させた後、熱分解することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。本発明において、好適に使用されるポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートが挙げられる。
【0054】
化石燃料由来の多官能イソシアネートとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート等も挙げられる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0055】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、ポリカーボネートポリオールとしては、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いることができる。または、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含むカーボネートとの反応物を用いることができる。カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコールを用いることができる。
【0057】
<イソシアネート化合物>
次に、イソシアネート化合物について説明する。バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物としては、ポリエーテルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能イソシアネートを用いることができる。
【0058】
<ヒドロキシ(メタ)アクリレート>
次に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートについて説明する。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を一つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を二つ以上有するヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
また、表面保護層6は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、表面保護層6は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートにニトロセルロースを添加して形成されてもよい。
【0060】
<ニトロセルロース>
ニトロセルロースは、セルロース骨格の水酸基の一部を硝酸エステル化したニトロ基置換体のセルロース系樹脂である。ニトロセルロース樹脂のセルロース骨格は、バイオマス材料である。ニトロセルロースとしては、一般的なニトロセルロースが支障なく利用できるが、とりわけ、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1.3~2.7個のニトロ基で置換されたものを利用することが好ましい。
【0061】
ニトロセルロースには、分子量に応じてLタイプとHタイプがある。有機溶剤に対する溶解性の面からは、Lタイプのものを利用することが好ましい。
【0062】
表面保護層6は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下のバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。表面保護層6の乾燥後の重量は、好ましくは0.1g/m2以上15g/m2以下、より好ましくは3g/m2以上10g/m2以下、さらに好ましくは6g/m2以上9g/m2以下である。表面保護層6は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上10μm以下、さらに好ましくは6μm以上9μm以下の厚さを有する。
「バイオマス度」について、例えばバイオウレタン(メタ)アクリレートの場合には、上述のとおり、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値として求められる。
【0063】
また「バイオマス度」について、例えばニトロセルロースの場合には、出発物質であるセルロース骨格を構成するグルコース単位1個(式量=172)当たりに含まれる水酸基の数が3個であるから、この水酸基の1~3個が硝酸エステル化し(水素がニトロ基(非バイオマス材料、式量=46)に置換され)得る。そうすると、もとのセルロース骨格がバイオマス材料100重量%からなるとして、グルコース単位1個あたりの置換されたニトロ基の数が平均してn個の場合、ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合(重量%)は、(172-n)×100/(172-n+46n)で計算できる。
ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合は、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1個のニトロ基で置換された場合は、約78.8重量%、2個のニトロ基で置換された場合は約64.9重量%、3個のニトロ基に置換された場合は約55.0重量%になる(上記の式での計算値)。
【0064】
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。
また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
本実施形態において表面保護層6は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートを含む熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を、グラビア印刷法等の各種印刷法を用いて塗布して形成される。
【0065】
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、熱可塑性樹脂層(本例では、着色基材層2)と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(
図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合しても良い。
化粧シート1のプライマー層8側に接着剤を塗布して、化粧シート1と基材9とを貼り合わせてもよい。基材と化粧シートを貼る接着剤については、本発明は、関与しないので一般的な材料として、例えばエバジャパンコーティングレジン社製の接着剤BA-10Lや、ジャパンコーティングレジン社製硬化剤BA-11B等を用いることができる。またこれらの接着剤を混合して用いてもよい。
プライマー層8の厚さは、例えば、1μm以上10μm以下の範囲内である。
なお、化粧シート1は、プライマー層8を省略してもよい。例えば、基材9にプライマー層が設けられている場合や、熱可塑性樹脂層(例えば、着色基材層2)にプライマー層としての機能がある場合は、プライマー層8を省略可能である。
<化粧シート全体の比重>
化粧シート1全体の比重は、0.91以上1.5以下であることが好ましい。より好ましくは、比重が0.99以上1.4以下である。このようにすることによって、例えば、化石燃料由来のポリエチレン等を用いて形成した構成と同等程度の隠蔽性を有する化粧シート1を形成することが可能となる。
<化粧シート全体の総厚>
化粧シート1全体の厚みは、51μm以上400μm以下であることが好ましい。より好ましくは、55μm以上200μm以下である。このようにすることによって、例えば、化石燃料由来のポリプロピレン等を用いて形成した構成と同等程度の隠蔽性を有する化粧シート1を形成することが可能となる。
【0066】
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0067】
<変形例>
上記実施形態では、化粧シート1が備える熱可塑性樹脂層の一例として着色されている熱可塑性樹脂層(着色基材層2)を例示したが、本発明はこれに限られない。図示は省略するが、化粧シート1は、熱可塑性樹脂層として、無色透明の熱可塑性樹脂層(透明熱可塑性樹脂層)を備えていてもよい。透明熱可塑性樹脂層は、着色されていないことを除いて、着色基材層2と同等の構成であればよい。
すなわち、化粧シート1は少なくとも熱可塑性樹脂層を備え、熱可塑性樹脂層は、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であって、着色されている(着色基材層2)又は無色透明であればよい。
【0068】
また、透明熱可塑性樹脂層においても、着色基材層2と同様に、比重を0.9以上1.3以下の範囲内とすることができる。熱可塑性樹脂層が透明熱可塑性樹脂層である場合、無機物として例えばガラスビーズを添加することができる。これにより、透明性を維持しつつ、比重を上記範囲内とすることで不燃性を向上することができる。
【0069】
また、熱可塑性樹脂層が着色されている場合(着色基材層2)と同様に、熱可塑性樹脂層が無色透明である場合(透明熱可塑性樹脂層)において、熱可塑性樹脂層に絵柄層3を積層してもよい。つまり、熱可塑性樹脂層は、無色透明であり、かつ絵柄層3が積層されていてもよい。これにより、下地となる基材9の意匠を活かしつつ、絵柄層3によって意匠性を向上することができる。またこの場合、化粧材10において基材9と、化粧シート1において透明熱可塑性樹脂層に積層された絵柄層3とには位相差が生じていてもよい。化粧材10において、絵柄層3と透明熱可塑性樹脂層を介して視認される基材9とに位相差があることにより、立体的な視覚効果が発揮されて化粧材10の意匠性をより向上することができる。
【0070】
また上記実施形態では、絵柄層3は着色基材層2の着色で代用することが可能である場合に省略可能であるとしたが、熱可塑性樹脂層が無色透明である場合も、絵柄層3が積層されていなくてもよい。これにより、下地となる基材9の意匠をより活かすことができる。
つまり、化粧シート1において熱可塑性樹脂層(着色基材層2、透明熱可塑性樹脂層)には、絵柄層3が積層されていなくてもよい。
【0071】
また化粧シート1において、熱可塑性樹脂層(着色基材層2、透明熱可塑性樹脂層)に凹凸部(不図示)を設けてもよい。凹凸部は、上記熱可塑性樹脂層の一方の面(
図1では、上側の面)側、すなわち熱可塑性樹脂層の表面保護層6側の面に形成されていてもよい。つまり、表面保護層6は、熱可塑性樹脂層の凹凸部の上側に設けられていてもよい。また凹凸部は、絵柄層3の絵柄と同調させた形態でもよい。凹凸部は、例えば、エンボス版を用いて目的の意匠、性能に見合った形状とすることができる。
【0072】
また化粧シート1において、表面保護層6に凹凸部を設けてもよい。凹凸部は、熱可塑性樹脂層および表面保護層6の両方に設けてもよいし、いずれか一方に設けてもよい。
また、凹凸部は化粧シート1の全体に設けてもよい。例えば化粧シート1の製造時において、表面保護層6上からエンボス加工を行うことで、透明熱可塑性樹脂層、絵柄層3および表面保護層6に凹凸部を形成してもよい。また絵柄層3および表面保護層6に凹凸部を形成してもよい。また、絵柄層3に凹凸部を形成し、凹凸部を有する絵柄層3上に表面保護層6を積層してもよい。
【0073】
(本実施形態の効果)
本実施形態および上記変形例に係る化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)化粧シート1は、熱可塑性樹脂層を少なくとも備え、熱可塑性樹脂層は、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であって、着色されている着色基材層2又は無色透明の透明熱可塑性樹脂層である。
これにより、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シートを得ることができる。
(2)表面保護層6をさらに備え、上記熱可塑性樹脂層(着色基材層2、透明熱可塑性樹脂層)は、一方の面に凹凸部が形成されており、表面保護層6は、上記熱可塑性樹脂層の当該一方の面側に積層され、バイオマス由来成分を含む樹脂層である。
これにより、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下をより確実に抑制することが可能であり、且つさらに環境へ配慮した化粧シートを得ることができる。
(3)化粧シート1において上記熱可塑性樹脂層(着色基材層2、透明熱可塑性樹脂層)は、上記熱可塑性樹脂層全体の質量に対し、バイオマス由来のポリプロピレンを5質量%以上99質量%未満の範囲内で含む。
これにより、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能であり、且つ従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
(4)化粧シート1において上記熱可塑性樹脂層の厚みが50μm以上300μm以下の範囲内であり、熱可塑性樹脂層の比重が0.9以上1.3以下の範囲内である。
上記熱可塑性樹脂層について厚みを上記範囲内とすることにより、施工仕上がりを良好するとともに製造コストを削減することが可能である。また、熱可塑性樹脂層の比重を上記範囲内とすることで、熱可塑性樹脂層が着色されている(着色基材層2の場合)場合には隠蔽性が向上され、熱可塑性樹脂層が無色透明(透明熱可塑性樹脂層)の場合には不燃性が向上された化粧シートを得ることができる。
(5)化粧シート1において、上記熱可塑性樹脂層には絵柄層3が積層されていなくてもよい。
これにより、化粧シート1の化粧材10への加工時に下地となる基材9の意匠を活かすことができる。
(6)また化粧シート1において、上記熱可塑性樹脂層には絵柄層3が積層されており、上記熱可塑性樹脂層は無色透明であってもよい。
これにより、化粧シート1の化粧材10への加工時に下地となる基材9の意匠をさらに活かすことができる。
(7)化粧材10は、基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1と、を備える。
これにより、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧材を得ることができる。
(8)化粧材10は、基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1と、を備え、化粧シート1は上記熱可塑性樹脂層に絵柄層3が積層されており、上記熱可塑性樹脂層は無色透明であり、基材9と絵柄層3とには位相差が生じていてもよい。
これにより、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能であり、且つ立体的な視覚効果が発揮されて意匠性を向上可能な化粧材を提供することができる。
【0074】
[実施例]
本実施形態を参照しつつ、以下、実施例1の化粧材と、比較例1から3の化粧材について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
基材層(熱可塑性樹脂層)の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材層の一方の面に、ウレタン系印刷インキで印刷された木目柄の絵柄層を設けた。また基材層と化粧材用の基材との接着性を向上させる目的で、基材層の他方の面にコロナ放電処理を施した後、基材層の他方の面にポリエステルウレタン樹脂からなるプライマー層(厚さ:1~2μm)を形成した。その後、表面保護の目的で、表面保護層を絵柄層上に積層した。こうして、実施例1の化粧シート(総厚:85μm)を得た。この化粧シートのプライマー層側に、エバジャパンコーティングレジン社製の接着剤BA-10Lとジャパンコーティングレジン社製硬化剤BA-11Bとを用いて、MDF(Medium density fiberboard:中質繊維板)を貼り合わせることで化粧材を得ることができる。
実施例1では、基材層として、バイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成され、無機物としての酸化チタンと、無機顔料とが添加された着色基材層(厚さ:0.07mm(70μm)、重量69.3g/m2)を用いた。着色基材層の比重が0.99になるように、無機物として酸化チタンを配合した。この樹脂をルーダーラミネートすることで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層のバイオマス度は88.5%である。
また、実施例1では、表面保護層として、バイオマス由来のポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂化合物を5質量%以上含むトップコート用樹脂を塗布し、乾燥硬化させて形成した樹脂層を用いた。
【0076】
(比較例1)
熱可塑性樹脂層である着色基材層の材料を、石油由来のポリプロピレンに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例1の化粧材を得た。
(比較例2)
熱可塑性樹脂層である着色基材層、および表面保護層の材料を、石油由来のポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂化合物に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例2の化粧材を得た。
(比較例3)
熱可塑性樹脂層である着色基材層の材料を、石油由来のポリエチレンに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例3の化粧材を得た。
【0077】
(性能評価、評価結果)
実施例1の化粧シートと、比較例1から3の化粧シートに対し、それぞれ、「意匠性」、「表面硬度」、「着色熱可塑性樹脂層(着色基材層)の生産性」、「後加工性」、「石油依存性」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0078】
<意匠性>
各実施例・比較例の化粧シートに備わる絵柄層の絵柄がはっきりよれない状態であるもの(予定した絵柄がはっきりと視認できるもの)を「〇」と評価し、絵柄に若干のよれがあるものを「△」とし、絵柄層に一部欠けが確認されたものを「×」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。
【0079】
<表面硬度>
JIS K5600-5-4 引っかき硬度(鉛筆法)に準じた試験を行った。
各実施例・比較例の化粧シートに対して鉛筆に荷重を付加した状態でスライドさせ、表面保護層に凹み(傷)が形成されるか観察をした。
化粧シートとしての耐傷性を十分有しているものを「〇」と評価し、耐傷性が若干劣るものを「△」とし、耐傷性が劣るものを「×」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。また、表に記載した「〇(6B)」とは、6Bであれば表面保護層に凹み(傷)が形成されないことを意味する。また「△(7B)」は、7Bの場合に表面保護層に若干の傷が生じたことを意味する。また、7B未満の硬度の鉛筆を用いて傷が生じた場合を「×」とした。
【0080】
<生産性(押出適性)>
生産ラインにおいて、基材層を押出成形する際に支障がなかったもの(問題なく成形できるもの)を「〇」と評価し、押出成形する際に少し支障があったもの(不良が出る可能性があるもの)を「△」と評価し、押出成形する際に、そのほとんどに支障があったもの(不良が出る可能性が極めて高いもの)を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。また、評価が「△」であれば、使用上問題はない。
【0081】
<後加工性(曲げ加工性)>
MDFに貼り合わせた化粧シート(即ち化粧材)を用いてVカット加工適正(曲げ加工適性)に問題がないもの(折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等がほとんど無し)を「〇」と評価し、Vカット加工適正にほとんど問題がないもの(折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等が少し生じたもの)を「△」と評価し、Vカット加工適正に問題があったもの(折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等が多く生じたもの)を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。また、評価が「△」であれば、使用上問題はない。
【0082】
<石油依存性>
化粧シートを作成する際の化石燃料への依存性を評価した。
【0083】
【0084】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1の化粧シートは、表面硬度を含めた全ての評価項目に対して、従来の化石燃料由来の材料を用いた化粧シートと同等以上の優れた性能を示した。
【0085】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
熱可塑性樹脂層を少なくとも備え、
前記熱可塑性樹脂層は、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であって、着色されている又は無色透明である、
ことを特徴とする化粧シート。
(2)
表面保護層をさらに備え、
前記熱可塑性樹脂層は、一方の面に凹凸部が形成されており、
前記表面保護層は、前記熱可塑性樹脂層の前記一方の面側に積層され、バイオマス由来成分を含む樹脂層である
ことを特徴とする上記(1)に記載の化粧シート。
(3)
前記熱可塑性樹脂層は、前記熱可塑性樹脂層全体の質量に対し、前記バイオマス由来のポリプロピレンを5質量%以上99質量%未満の範囲内で含む
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の化粧シート。
(4)
前記熱可塑性樹脂層の厚みが50μm以上300μm以下の範囲内であり、
前記熱可塑性樹脂層の比重が0.9以上1.3以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(5)
前記熱可塑性樹脂層には絵柄層が積層されていない
ことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(6)
前記熱可塑性樹脂層には絵柄層が積層されており、
前記熱可塑性樹脂層は無色透明である
ことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(7)
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された上記(1)から上記(5)のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備える
ことを特徴とする化粧材。
(8)
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された上記(6)に記載の化粧シートと、を備え
前記基材と前記絵柄層とには位相差が生じている
ことを特徴とする化粧材。
【符号の説明】
【0086】
1…化粧シート、2…着色基材層、3…絵柄層、4…接着性樹脂層、6…表面保護層、8…プライマー層、9…基材、10…化粧材