(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153573
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】冷媒配管、冷媒配管の接続構造、および弁装置
(51)【国際特許分類】
F16L 13/08 20060101AFI20231011BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20231011BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20231011BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
F16L13/08
F16L55/00 M
F16L1/00 F
F16K27/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062929
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】三留 陵
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聡
(72)【発明者】
【氏名】剱持 大一郎
【テーマコード(参考)】
3H013
3H025
3H051
【Fターム(参考)】
3H013CA06
3H013CA07
3H025BA21
3H025BB05
3H051AA03
3H051AA08
3H051BB01
3H051BB02
3H051CC01
3H051CC02
3H051CC11
3H051CC15
3H051DD02
3H051DD03
3H051EE06
3H051FF08
(57)【要約】
【課題】互いの材料が異なる場合であっても、容易にろう付けを用いて接続できる冷媒配管、冷媒配管の接続構造、および弁装置を提供する。
【解決手段】ステンレスからなる継手部材100であって、少なくとも長手方向の一方の端部における内周面100a、外周面100bまたはその両面に、ろう付け接合された銅または銅合金の接続補助部200が設けられている。よって、継手部材100自体がステンレスからなる場合であっても、銅または銅合金の接続補助部200が設けられている端部を介して接続対象とろう付けを用いて容易に接続できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレスからなる冷媒配管であって、
少なくとも長手方向の一方の端部における内周面、外周面、またはその両面に、銅または銅合金からなる薄板状の接続補助部が設けられ、
前記内周面、外周面、またはその両面と前記接続補助部との間には、ろう材の溶融固化層が形成されていることを特徴とする冷媒配管。
【請求項2】
前記接続補助部材は、前記冷媒配管における内周面、外周面、またはその両方に押圧されて配置されている、請求項1に記載の冷媒配管。
【請求項3】
前記接続補助部は、軸方向に直交する方向から見てC字状に丸められた状態で配置されている、請求項1に記載の冷媒配管。
【請求項4】
前記接続補助部は、環状の筒状体である、請求項1に記載の冷媒配管。
【請求項5】
前記接続補助部が前記一方の端部における端面まで延在して設けられている、請求項1に記載の冷媒配管。
【請求項6】
前記接続補助部は、前記端面に対向するフランジ部を有し、前記フランジ部と前記端面との間にろう材の溶融固化層が形成されている、請求項5に記載の冷媒配管。
【請求項7】
前記接続補助部は断面がU字形状をなし、当該U字形状の内周側に前記一方の端部が挿入される、請求項1に記載の冷媒配管。
【請求項8】
前記冷媒配管の前記長手方向における前記接続補助部の内方側端部が位置する部位に、接続対象となる他の冷媒配管の差し込み量を規制する配管ストッパ部が形成されている、請求項1に記載の冷媒配管。
【請求項9】
前記配管ストッパ部は、前記冷媒配管の外周面から外方または内周面から内方に向けて突出してなる、請求項8に記載の冷媒配管。
【請求項10】
前記接続補助部の前記冷媒配管に設けられた状態における前記長手方向の内方側端部に、接続対象となる他の冷媒配管の差し込み量を規制する配管ストッパ部が形成されている、請求項1に記載の冷媒配管。
【請求項11】
前記配管ストッパ部は、前記接続補助部の外周面から外方、内周面から内方、またはそれら双方に向けて突出してなる、請求項10に記載の冷媒配管。
【請求項12】
前記接続補助部の厚みが前記冷媒配管の厚みよりも薄い、請求項1に記載の冷媒配管。
【請求項13】
前記溶融固化層の厚みが前記接続補助部の厚みよりも薄い、請求項1に記載の冷媒配管。
【請求項14】
第1の冷媒配管と第2の冷媒配管とが、ろう付けによって接続された冷媒配管の接続構造であって、
前記第1の冷媒配管はステンレスからなり、前記第2の冷媒配管側端部の内周面、外周面、またはその両面に、ステンレスとは異なる第2の金属材料からなる薄板状の接続補助部が、ろう材の溶融固化層を介して接合されており、
前記第2の冷媒配管は、前記第2の金属材料からなる、もしくは前記第1の冷媒配管側端部の外周面、内周面、またはその両面に、前記第2の金属材料を用いた薄板状の接続補助部が前記ろう材の溶融固化層を介して接合されていることを特徴とする冷媒配管の接続構造。
【請求項15】
前記接続補助部が、
前記第1の冷媒配管の前記第2の冷媒配管側端部における端面、および前記第2の冷媒配管が前記第2の金属材料製ではない場合、当該第2の冷媒配管の前記第1の冷媒配管側端部における端面まで延在して形成されている、請求項14に記載の冷媒配管の接続構造。
【請求項16】
前記接続補助部が前記第1の冷媒配管の前記第2の冷媒配管側端部における端面まで延在して設けられている、請求項14に記載の冷媒配管の接続構造。
【請求項17】
前記接続補助部は、前記端面に対向するフランジ部を有し、前記フランジ部と前記端面との間にろう材の溶融固化層が形成されている、請求項16に記載の冷媒配管の接続構造。
【請求項18】
前記接続補助部の厚みが前記第1の冷媒配管の厚みよりも薄い、請求項14に記載の冷媒配管の接続構造。
【請求項19】
前記溶融固化層の厚みが前記接続補助部の厚みよりも薄い、請求項14に記載の冷媒配管の接続構造。
【請求項20】
弁本体に継手部材が接続された弁装置であって、
前記継手部材として請求項1~13のいずれか一項に記載の冷媒配管が用いられていることを特徴とする弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒配管、冷媒配管の接続構造、および弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ルームエアコンなどの空気調和装置では、冷房運転時に冷媒配管を介して接続された圧縮機、室外熱交換器、膨張弁、および室内熱交換器を経由して冷媒を圧縮機に環流させ、暖房運転時に圧縮機、室内熱交換器、膨張弁、および室外熱交換器を経由して冷媒を圧縮機に環流させるように、冷媒の環流方向を逆転させている。このように、冷媒の環流経路を逆転させる弁装置である流路切換弁(所謂、四方切換弁)として、弁本体の内部にスライド自在に設けられた弁体を有するスライド式切換弁が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。そして、このような空気調和装置では、装置内に配管された冷媒配管と、スライド式切換弁の吐出管および吸入管として設けられた継手部材(冷媒配管)とが、ろう付けによって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかる弁装置(スライド式切換弁)は、一般に本体が真鍮製であり、その他の継手部材などの部品が銅製である。しかしながら、近年、銅の値段の急激な高騰化に起因して、弁装置における継手部材の材料として従来から用いていた銅をステンレスに切り替えるステンレス化が進む傾向にある。その反面、弁装置が搭載される空気調和装置では、加工の容易性や性能の安定性から、冷媒配管の材料として、従来と変わらず銅が用いられている。そのため、弁装置のステンレス化された継手部材と、空気調和装置の銅製の冷媒配管とは、互いに材料が異なることから、従来のように、単純にろう付けを用いて接続することが困難であるという問題があった。
【0005】
しかも、弁装置の継手部材と空気調和装置の冷媒配管とのろう付けにおいては、濡れ性を確保するフラックスを用いた場合、当該フラックスの除去に手間がかかるため、従来からフラックスを用いていない。つまり、素材にステンレスを含む冷媒配管と、素材に銅を含む継手部材とは材料が異なる上、フラックスも用いることがないため、これらをろう付けするのは至難の業であった。
【0006】
そこで、本発明は、前述した問題を鑑みてなされたもので、その目的は、互いの材料が異なる場合であっても、容易にろう付けを用いて接続できる冷媒配管、冷媒配管の接続構造、および弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷媒配管は、ステンレスからなる冷媒配管であって、少なくとも長手方向の一方の端部における内周面、外周面、またはその両面に、銅または銅合金からなる薄板状の接続補助部が設けられ、前記内周面、外周面、またはその両面と前記接続補助部との間には、ろう材の溶融固化層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、冷媒配管自体がステンレスからなる場合であっても、少なくとも長手方向の一方の端部における内周面、外周面、またはその両面に、ろう材の溶融固化層を介して(すなわち、ろう付けによって)接合された銅または銅合金からなる薄板状の接続補助部が設けられているので、この接続補助部を介して接続対象とろう付けを用いて容易に接続できる。また、接続対象である他の冷媒配管との接続のために、銅リングやスリーブ等の部材を設ける場合と比べて、接続補助部の肉厚(厚み)を薄肉化できる分、材料費などの接続コストを低減できる。さらに、接続対象との接続時におけるろう付けの熱が伝わり易いため、当該ろう付けの際の過加熱を抑えられ、接続対象とのクリアランスの安定化を図ることができ、ろう付けの品質を向上させることができる。
【0009】
この際、本発明の冷媒配管では、前記接続補助部材は、前記冷媒配管における内周面、外周面、またはその両方に押圧されて配置されていることが好ましい。このような構成によれば、スポット溶接などによって配置部位へ保持する手間を省き、容易に配置できる。また、前記接続補助部は、軸方向に直交する方向から見てC字状に丸められた状態で配置されていることが好ましい。このような構成によれば、接続補助部が冷媒配管の端部における内周面に配置される場合には、接続補助部がC字状に丸められた状態から開く方向へ形状保持のための弾性力によって冷媒配管の内周面に押圧されて保持され、接続補助部が冷媒配管の端部における外周面に配置される場合には、接続補助部がC字状に丸められる方向へ形状保持のための弾性力によって冷媒配管の外周面に保持されるため、簡単な構造で接続補助部を容易に配置できる。
【0010】
さらに、本発明の冷媒配管では、前記接続補助部は、環状の筒状体であることが好ましい。このような構成によれば、筒状体の接続補助部を配置部位に応じて外径方向へ拡張したり、内径方向へ収縮したりすることで、例えばスポット溶接などによって配置部位へ保持する手間を省き、容易に配置できる。
【0011】
また、本発明の冷媒配管では、前記接続補助部が前記一方の端部における端面まで延在して形成されていることが好ましい。このような構成によれば、冷媒配管における接続対象の面(外周面または内周面)と接する面(内周面または外周面)だけでなく、冷媒配管の端面まで延在して接続補助部が設けられているため、接続対象の材質を接続補助部と同じ銅または銅合金とした場合に、良好にフィレットが形成され易くなる。これにより、隙間なく接合され、ろう付け部位の気密性を確実に確保でき、接続の信頼性をより一層確保できる。さらに、この際、前記接続補助部は、前記端面に対向するフランジ部を有し、前記フランジ部と前記端面との間にろう材の溶融固化層が形成されていることが好ましい。これにより、冷媒配管の端面まで延在する接続補助部を容易に設けることができるため、前記接続の信頼性の確保をより容易に実現できる。
【0012】
また、本発明の冷媒配管では、前記接続補助部は断面がU字形状をなし、当該U字形状の内周側に前記一方の端部を挿入されることが好ましい。このような構成によれば、冷媒配管の端部における外周面および内周面の双方のみならず、冷媒配管の端面まで一体的に覆う接続補助部を容易に設けることができるため、接続対象の材質を接続補助部と同じ銅または銅合金とした場合に、良好にフィレットが形成され易くなる。これにより、隙間なく接合され、ろう付け部位の気密性を確実に確保でき、接続の信頼性をより一層確保可能な構成を容易に実現できる。
【0013】
さらに、本発明の冷媒配管では、前記冷媒配管の前記長手方向における前記接続補助部の内方側端部が位置する部位に、接続対象となる他の冷媒配管の差し込み量を規制する配管ストッパ部が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、接続対象の冷媒配管(継手部材)の差し込み量を容易に規制できるとともに、ろう付けに用いるろう材の垂れを防止できる。
【0014】
このとき、前記配管ストッパ部は、前記冷媒配管の外周面から外方または内周面から内方に向けて突出してなることが好ましい。このような構成によれば、配管ストッパ部を冷媒配管と一体的に形成できるため、配管ストッパ部を別体で設ける必要がなく、部品点数を抑制できる。
【0015】
さらに、本発明の冷媒配管では、前記接続補助部の前記冷媒配管に設けられた状態における前記長手方向の内方側端部に、接続対象となる他の冷媒配管の差し込み量を規制する配管ストッパ部が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、接続対象の冷媒配管(継手部材)の差し込み量を容易に規制できるとともに、ろう付けに用いるろう材の垂れを防止できる。
【0016】
このとき、前記配管ストッパ部は、前記接続補助部の外周面から外方、内周面から内方、またはそれら双方に向けて突出してなることが好ましい。このような構成によれば、配管ストッパ部を接続補助部と一体的に形成できるため、配管ストッパ部を別体で設ける必要がなく、部品点数を抑制できる。また、前記接続補助部の厚みが前記冷媒配管の厚みよりも薄いことが好ましい。また、前記溶融固化層の厚みが前記接続補助部の厚みよりも薄いことが好ましい。
【0017】
本発明の冷媒配管の接続構造は、第1の冷媒配管と第2の冷媒配管とが、ろう付けによって接続された冷媒配管の接続構造であって、前記第1の冷媒配管はステンレスからなり、前記第2の冷媒配管側端部の内周面、外周面、またはその両面に、ステンレスとは異なる第2の金属材料からなる薄板状の接続補助部が、ろう材の溶融固化層を介して接合されており、前記第2の冷媒配管は、前記第2の金属材料からなる、もしくは前記第1の冷媒配管側端部の外周面、内周面、またはその両面に、前記第2の金属材料を用いた薄板状の接続補助部が前記ろう材の溶融固化層を介して接合されていることを特徴とする。このような本発明によれば、第1の冷媒配管がステンレスからなる場合であっても、第2の冷媒配管側端部の内周面、外周面、またはその両面に第2の金属材料(例えば、銅や銅合金、アルミなど)の接続補助部が設けられているので、接続対象である、第2の金属材料製、もしくは第1の冷媒配管側端部の内周面、外周面、またはその両面に第2の金属材料の接続補助部を有する第2の冷媒配管と、容易にろう付けを用いて接続できる。
【0018】
さらに、本発明の冷媒配管の接続構造は、前記接続補助部が、前記第1の冷媒配管の前記第2の冷媒配管側端部における端面、および前記第2の冷媒配管が前記第2の金属材料製ではない場合、当該第2の冷媒配管の前記第1の冷媒配管側端部における端面まで延在して形成されていることが好ましい。このような構造によれば、第1および第2の冷媒配管の双方において互いに接触する面、すなわち、双方の接続対象側端部の面(外周面または内周面)だけでなく、双方の接続対象側端部の端面まで延在して接続補助部が設けられているため、第1の冷媒配管にとって接続対象となる第2の冷媒配管の材質または第1の冷媒配管側端部に設けられる接続補助部を、第1の冷媒配管の接続補助部と同じ前記第2の金属材料とした場合に、良好にフィレットが形成され易くなる。これにより、隙間なく接合され、ろう付け部位の気密性を確実に確保でき、接続の信頼性をより一層確保できる。さらに、前記接続補助部が前記第1の冷媒配管の前記第2の冷媒配管側端部における端面まで延在して設けられていることが好ましい。また、前記接続補助部は、前記端面に対向するフランジ部を有し、前記フランジ部と前記端面との間にろう材の溶融固化層が形成されていることが好ましい。また、前記接続補助部の厚みが前記第1の冷媒配管の厚みよりも薄いことが好ましい。また、前記溶融固化層の厚みが前記接続補助部の厚みよりも薄いことが好ましい。
【0019】
本発明の弁装置は、弁本体に継手部材が接続された弁装置であって、前記継手部材として上記のいずれかの冷媒配管が用いられていることを特徴とする。このような本発明によれば、上記と同様に、継手部材がステンレスからなる場合であっても、当該継手部材の接続側端部が、その内周面、外周面、またはその両面に、銅または銅合金の接続補助部が設けられているので、接続対象の冷媒配管と容易にろう付けを用いて接続できる。加えて、上記の各冷媒配管と同様の効果を得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の冷媒配管、冷媒配管の接続構造、および弁装置によれば、互いの材料が異なる場合であっても、容易にろう付けを用いて接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係るスライド式切換弁を示す断面図である。
【
図2】
図1のスライド式切換弁に設けられる継手部材の端部を示し、内周面に接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【
図3】
図2の継手部材の端部における要部を拡大して示す断面図である。
【
図4】変形例に係る継手部材の端部を示し、内周面に接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【
図5】変形例2に係る継手部材の端部を示し、内周面に変形例2に係る接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【
図6】
図5の継手部材に設けられる接続補助部を示し、(a)は軸線方向と直交する方向から見た正面図であり、(b)は軸線方向に沿った断面図である。
【
図7】
図5のスライド式切換弁における継手部材と冷媒配管との接続状態を示す要部拡大断面図である。
【
図8】変形例3に係る継手部材の端部を示し、内周面に変形例3に係る接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【
図9】
図8の継手部材に設けられる接続補助部を示し、(a)は軸線方向と直交する方向から見た正面図であり、(b)は軸線方向に沿った断面図である。
【
図10】変形例4に係る継手部材の端部を示し、外周面に変形例4に係る接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【
図11】変形例5に係る継手部材の端部を示し、外周面に変形例5に係る接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【
図12】
図11の継手部材の端部における要部を拡大して示す断面図である。
【
図13】変形例6に係る継手部材の端部を示し、外周面に変形例6に係る接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【
図14】
図13のスライド式切換弁における継手部材と冷媒配管との接続状態を示す要部拡大断面図である。
【
図15】変形例7に係る継手部材の端部を示し、内周面から外周面に亘って断面がU字形状の変形例7に係る接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【
図16】変形例8に係る継手部材の端部を示し、内周面から外周面に亘って断面がU字形状の変形例8に係る接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【
図17】変形例9に係る継手部材の端部を示し、内周面から外周面に亘って断面がU字形状で配管ストッパ部を有する変形例9に係る接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【
図18】変形例10に係る継手部材の端部を示し、内周面から外周面に亘って断面がU字形状で配管ストッパ部を有する変形例10に係る接続補助部が設けられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る冷媒配管、冷媒配管の接続構造、および弁装置の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)10は、「弁本体」としての弁ハウジング1内に、一対のピストン2L,2R、連結板3、弁座4、弁体5を備えている。
【0024】
弁ハウジング1は円筒形状のステンレスなどの金属製の円筒部11とステンレスなどの金属製の2つのキャップ部12L,12Rとで構成されている。キャップ部12L,12Rはそれぞれ円筒部11の端部を塞ぐように円筒部11に取り付けられている。また、円筒部11およびキャップ部12L,12Rの中心軸が弁ハウジング1の軸線Xとなっている。一対のピストン2L,2Rは互いに対向配置され、パッキン21を円筒部11の内周面に押圧しながら往復移動可能となっている。これにより、弁ハウジング1の内部は、2つのピストン2L,2Rにより、中央部の高圧室11Aと、高圧室11Aの両側の2つの第1作動室12Aと第2作動室12Bとに仕切られている。連結板3は金属板からなり、この連結板3は、弁ハウジング1の軸線X上に配置されるようにピストン2L,2Rの間に架設されるとともに、その中央に弁体5を保持している。また、連結板3には透孔3aが形成されている。そして、弁体5はピストン2L,2Rが移動すると連結板3に連動して弁座4上を摺動し、予め定められた左右の位置で停止する。
【0025】
弁座4は円筒部11内の中間部に配設され、円筒部11の中間部の弁座4と対向する位置には、円筒部11内に開口する本実施形態の冷媒配管である継手部材としてのD継手管13dが取り付けられている。また、弁座4には、弁ハウジング1の軸線X方向に一直線上に並んで、本実施形態の冷媒配管である継手部材としてのE継手管13e、S継手管13s、C継手管13cが取り付けられている。弁体5にはその内側に椀状凹部5Aが形成されている。そして、弁体5は、
図1の左側の端部位置において、S継手管13sとE継手管13eとを椀状凹部5Aにより導通する。このとき、C継手管13cは高圧室11A内で主に連結板3の透孔3aを介してD継手管13dに導通する。また、弁体5は、
図1の右側の端部位置において、S継手管13sとC継手管13cとを椀状凹部5Aにより導通する。このとき、E継手管13eは高圧室11A内で主に透孔3aを介してD継手管13dに導通する。
【0026】
ここで、本実施形態のスライド式切換弁10は、例えば不図示の冷凍サイクルに設けられるものである。なお、冷凍サイクルとしては、一般的な冷凍サイクルを広く適用できるため、ここでは便宜上、図示を省略する。
【0027】
かかる冷凍サイクルにおいて、D継手管13dは圧縮機の吐出口に接続され、S継手管13sは圧縮機の吸入口に接続される。C継手管13cは室外熱交換機に接続され、E継手管13eは室内熱交換機に接続される。室外熱交換機と室内熱交換機は絞り装置を介して接続される。このC継手管13cから室外熱交換機、絞り装置、室内熱交換機およびE継手管13eからなる経路と、S継手管13sから圧縮機およびD継手管13dからなる経路とにより、冷凍サイクルが構成される。なお、冷凍サイクルにおける冷媒中には、圧縮機およびその他機器の保護のため、微量の冷凍機油が含まれている。
【0028】
パイロット弁はスライド式切換弁10に接続されている。パイロット弁は、例えばスライド式切換弁10と同様な構造であり、電磁アクチュエータなどにより弁体を移動して流路を切り換える。そして、このパイロット弁は、圧縮機の吸入口と接続されたスライド式切換弁10のS継手管13sに連通する導管の接続先を、スライド式切換弁10の左側の第1作動室12Aに連通する圧力導入管14Lと、右側の第2作動室12Bに連通する圧力導入管14Rとで切り換え、これと同時に圧縮機の吐出口と接続されたスライド式切換弁10のD継手管13dに連通する導管の接続先を圧力導入管14Rと圧力導入管14Lとで切り換える。これにより、圧縮機の吸入圧力または吐出圧力が導入された第1作動室12Aの圧力と、反対側の第2作動室12Bの圧力との圧力差により、ピストン2L,2R、連結板3および弁体5が、弁ハウジング1の軸線Xに沿って移動され、この弁体5の位置が切り換えられて冷凍サイクルの流路が切り換えられる。
【0029】
以上の構成により、圧縮機で圧縮された高圧の冷媒はD継手管13dから主弁室11A内に流入し、冷房運転の状態では、高圧冷媒はC継手管13cから室外熱交換機に流入される。また、弁体5を切り換えた暖房運転の状態では、高圧冷媒はE継手管13eから室内熱交換機に流入される。すなわち、冷房運転時には、圧縮機から吐出される冷媒はC継手管13c→室外熱交換機→絞り装置→室内熱交換機→E継手管13eと循環し、室外熱交換機が凝縮器(コンデンサ)、室内熱交換機が蒸発器(エバポレータ)として機能し、冷房がなされる。また、暖房運転時には冷媒は逆に循環され、室内熱交換機が凝縮器、室外熱交換機が蒸発器として機能し、暖房がなされる。
【0030】
スライド式切換弁10の各ピストン2L,2Rは、
図1に示すように鏡映対称な構造になっている。ピストン2L,2Rは、それぞれパッキン21と、連結板3に固定される固定円板22と、板ばね23と、円板状のストッパ板24とを備えている。これらのパッキン21と、固定円板22と、板ばね23と、ストッパ板24は軸線Xを中心として同軸に配置され、リベットにより一体に固定され、一体のピストン2L,2Rはボルトにより連結板3に固定されている。
【0031】
以下、このような構成のスライド式切換弁10に取り付けられている本実施形態の冷媒配管である継手部材としてのD継手管13d、E継手管13e、S継手管13s、C継手管13cについて説明する。なお、以下では、これらD継手管13d、E継手管13e、S継手管13s、C継手管13cを、総じて継手部材100と称するものとする。なお、以下では、継手部材100に対し、後述する接続補助部200が内周面に設けられている場合と、外周面に設けられている場合と、内周面および外周面の両面に設けられている場合と、について、それぞれ
図2~
図9と、
図10~
図14と、
図15~
図18と、を用いて順に説明する。
【0032】
図2および
図3に示すように、本実施形態の冷媒配管である継手部材100は、ステンレスからなり、少なくとも長手方向の一方の端部における内周面100aに、ろう付けによって接合された銅または銅合金(ここでは、すずを含有するリン青銅)からなる薄板状のライニングとも呼ばれる接続補助部200が設けられている。このような接続補助部200は、厚みが0.05mm~0.5mmの条の状態である薄板状のシート状体によって構成されていることが好ましい。
【0033】
また、接続補助部200Aは、
図2に示すように、継手部材100の長手方向の一方の端部における内周面100aに、軸方向に直交する方向から見てC字状に丸められた状態で配置される。このとき、接続補助部200Aの互いに対向する端部201と端部202とは、当接した状態で配置されてもよいし、間隔を開けて配置されてもよい。
【0034】
このような接続補助部200は、継手部材100の一方の端部における内周面100aに形成されたろう材(ここでは、すずを含有するリン青銅)の溶融固化層300を介して配置され、継手部材100の内周面100aの表面に形成された酸化被膜を除去したうえで接合するろう付けによって強固に接合されている。酸化被膜の除去は、例えば酸化還元炉を用いることができ、これにより酸化被膜を除去可能な環境下でろう付けを行うこともできる。このとき、接続補助部200の厚みは継手部材100の厚みよりも薄いことが好ましい。これにより、接続補助部200における熱膨張・熱収縮の影響を低下させることができ接続補助部200が継手部材100から剥離することを抑制できる。また、溶融固化層300の厚みは、接続補助部200の厚みよりも薄いことが好ましい。これによりろう材の溶融固化層300の厚みのばらつきが抑制され、継手部材100の内周面100aに対する接続補助部200の取り付け位置のばらつきを抑制できる。また、ろう材の溶融固化層300の厚みが接続補助部200の厚さの25%以下であることが好ましい。ろう材の溶融固化層300の厚みを接続補助部200の厚みの10%以上とすることで溶融固化層300の強度を維持できる。なお、接続補助部200の融点は、溶融固化層300の融点よりも高い。
【0035】
また、接続補助部200は、継手部材100に後述する接続対象としての他の冷媒配管60(
図7参照)が差し込まれる長さとほぼ同等の範囲に亘って設けられている。詳述すると、接続補助部200は、継手部材100に接続される冷媒配管とのろう付け強度を充分に満足できる範囲に亘って設けられており、具体的には、継手部材100の端面から長手方向における内方に向けて、少なくとも継手部材100の肉厚以上の長さの範囲、好ましくは継手部材100の内径の半分以上の長さの範囲、より好ましくは継手部材100の内径以上の長さの範囲に亘って設けられている。
【0036】
また、本実施形態の場合、継手部材100は、長手方向における接続補助部200の内方側端部が位置する部位に、接続対象となる他の冷媒配管の差し込み量を規制する配管ストッパ部101が形成されている。このとき、配管ストッパ部101は、ロール加工(内ダボ)によって、継手部材100の内周面100aから内方に向けて突出して形成されている。なお、配管ストッパ部101は、
図4に示すように、継手部材100の外周面100bから外方に向けて突出して形成されていてもよい。この場合、換言すると、継手部材100の接続補助部200が設けられる端部側を、その他の部位より拡径することで、配管ストッパ部101を形成する。このような構成によれば、接続対象の冷媒配管(継手部材)の差し込み量を容易に規制できるとともに、後述するろう付けに用いるろう材(ここでは、すずを含有しないりん銅ろう)の垂れを防止できる。また、配管ストッパ部101は、継手部材100と一体的に形成できるため、別体で設ける必要がなく、部品点数を抑制できる。
【0037】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果がある。すなわち、継手部材100自体がステンレスを含む材料からなる場合であって、その内周面100aに第2の金属材料としての銅または銅合金の接続補助部200が設けられる。このため、後述の
図7に示すように、継手部材100に差し込まれた冷媒配管60と、継手部材100と、が接続補助部200を介して容易にろう付けを用いて接続できる。
【0038】
この際、継手部材100では、接続補助部200を形成する銅または銅合金からなる接続補助部は薄板状のシート状体であり、C字状に丸められた状態で配置されていることが好ましい。このような構成によれば、接続補助部200が継手部材100の端部における内周面に配置される場合には、継手部材100の内径よりも小さい内径となる程度まで弾性変形されたシート状体の接続補助部200がC字状に丸められた状態から開く方向へ形状保持のための弾性力によって冷媒配管の内周面に保持され、接続補助部200が冷媒配管の端部における外周面に配置される場合には、継手部材100の外径よりも小さい内径まで塑性変形された接続補助部200がC字状に丸められる方向へ形状保持のための弾性力によって冷媒配管の外周面に保持されるため、接続補助部200を例えばスポット溶接などによって配置部位へ保持する手間を省き、容易に配置できる。
【0039】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0040】
例えば、
図5および
図6に示す変形例2のように、接続補助部200における継手部材100の開口側端部(端面100c)に配置される部位には、径方向外方へ折り曲げられてなるフランジ部203が設けられていることが好ましい。これにより、接続補助部200がC字状に丸められた状態で継手部材100の開口端部に配置される際、フランジ部203と継手部材100の端面100cとが対向し、当該開口端部に対して接続補助部200を容易に位置決めできるようになっている。さらに、フランジ部203と継手部材100の端面100cとの間に、ろう材の溶融固化層300が形成されているため、継手部材100の端面100cまで延在する接続補助部200を容易に設けることができ、接続の信頼性の確保をより容易に実現できる。
【0041】
このように、リン青銅からなる薄板状の接続補助部200を有するステンレス製の継手部材100では、
図7に示すように、継手部材100の内周面100a側に接続される冷凍サイクル(不図示)における冷媒配管60が銅または銅合金製である場合でも、ろう付けを用いて容易に接続できる。接続補助部200を有するステンレス製の継手部材200に冷媒配管60を接続するためのろう材は、接続補助部200を継手部材100に接合するために用いられるろう材よりも低い融点(低い固相線温度)のものが使用される。例えば上記のようにすずを含有しないりん銅ろうが用いられる。このとき、継手部材100の冷媒配管60の外周面60aと接する面(この場合、内周面100a)だけでなく、継手部材100の端面100cまで延在したフランジ部203を有するリン青銅の接続補助部200が設けられているため、冷媒配管60の材質を接続補助部200と同じ第2の金属材料としての銅または銅合金とした場合に、良好に冷媒配管60を接合するための第1のフィレット70が形成され易くなる。これにより、隙間なく接合され、ろう付け部位の気密性を確実に確保できる。よって、継手部材100と冷媒配管60との接続の信頼性をより一層確保できる。また、冷媒配管60の端面60c側においては、配管ストッパ部101と当接することで、継手部材100に対する冷媒配管60の差し込み量を容易に規制できるとともに、ろう付けに用いるろう材の垂れを防止できる。さらに、冷媒配管60の材質を接続補助部200と同じ第2の金属材料としての銅または銅合金とした場合に、冷媒配管60の端面60c側においても接続補助部200との間に良好に冷媒配管60を接合するための第2のフィレット80が形成され易くなる。これにより、隙間なく接合され、ろう付け部位の気密性を確実に確保でき、継手部材100と冷媒配管60との接続の信頼性をより一層向上できる。
【0042】
なお、本実施形態の冷媒配管である継手部材100では、
図5および
図6との対応部分に同一符号を付した
図8および
図9に示す変形例3のように、接続補助部200を形成する銅または銅合金からなる接続補助部200Aが、環状の筒状体で構成されていてもよい。また、
図9に示す接続補助部200Aは円環状の断面を有するものとしたが、略多角形の断面とし、略多角形の頂点が、継手部材100の内周面に圧入して 配置してもよい。これにより、内周面100aに押圧されているため、スポット溶接等によって配置部位へ保持する手間を省き、容易に配置できる。また、以上の
図2~
図8に示す各形態の継手部材100において、配管ストッパ部101は、その突出量が接続補助部200の内周面よりも継手部材100の内方に突出して形成されている。すなわち、配管ストッパ部101の内径が接続補助部200の内径よりも小さくなるように形成されている。
【0043】
ここまで、継手部材100の内周面100aに接続補助部200が設けられる場合について述べたが、
図2、
図4との対応部分に同一符号を付した
図10、
図11に示す変形例4、変形例5のように、接続補助部200は継手部材100の外周面100bに設けられていてもよい。このように、接続補助部200を継手部材100の外周面100bに設ける場合も、接続補助部200は、冷媒配管60(後述する
図14参照)に継手部材100が差し込まれる長さとほぼ同等の範囲に亘って形成されている。詳述すると、継手部材100に接続される冷媒配管とのろう付け強度を充分に満足できる範囲に亘って形成されており、具体的には継手部材100の端面から少なくとも継手部材100の肉厚以上の長さの範囲、好ましくは継手部材100の内径の半分以上の長さの範囲、より好ましくは継手部材100の内径以上の長さの範囲に亘って形成されている。
【0044】
また、継手部材100の外周面100bに接続補助部200が設けられる場合においても、内周面100aに設けられる場合と同様に、継手部材100の長手方向における接続補助部200の内方側端部が位置する部位には、接続対象となる他の冷媒配管の差し込み量を規制する配管ストッパ部101が形成されている。このとき、変形例4として、配管ストッパ部101は、バルジ加工(外ダボ)によって継手部材100の外周面100bから外方に向けて突出して形成してもよいし(
図10)、変形例5として、継手部材100の接続補助部200が設けられる端部側を、その他の部位より縮径することによって継手部材100の内周面100aから内方に向けて突出して形成してもよい(
図11、
図12)。このような構成によれば、接続対象の冷媒配管(継手部材)の差し込み量を容易に規制できるとともに、ろう付けに用いるろう材の垂れを防止できる。また、配管ストッパ部101は、継手部材100と一体的に形成できるため、配管ストッパ部101を別体で設ける必要がなく、部品点数を抑制できる。
【0045】
さらに、この場合、
図13に示す変形例6のように、接続補助部200における継手部材100の開口側端部(端面100c)に配置される部位には、径方向内方へ折り曲げられてなるフランジ部203が設けられていることが好ましい。これにより、接続補助部200がC字状に丸められた状態で継手部材100の開口端部に配置される際、フランジ部203と継手部材100の端面100cとが対向し、当該開口端部に対して接続補助部200を容易に位置決めできるようになっている。さらに、フランジ部203と継手部材100の端面100cとの間に、ろう材の溶融固化層300が形成されているため、継手部材100の端面100cまで延在する接続補助部200を容易に設けることができ、接続の信頼性の確保をより容易に実現できる。
【0046】
そして、前述と同様にろう付けによって接合された接続補助部200を有する継手部材100では、
図7との対応部分に同一符号を付した
図14に示すように、継手部材100の外周面100b側に接続される冷媒配管60が銅または銅合金製である場合でも、ろう付けを用いて容易に接続できる。このとき、継手部材100の冷媒配管60の内周面60bと接する面(この場合、外周面100b)だけでなく、継手部材100の端面100cまで延在したフランジ部203を有するリン青銅の接続補助部200が設けられているため、冷媒配管60の材質を接続補助部200と同じ銅または銅合金とした場合に、良好に冷媒配管60を接合するための第1のフィレット70が形成され易くなる。これにより、隙間なく接合され、ろう付け部位の気密性を確実に確保できる。よって、継手部材100と冷媒配管60との接続の信頼性をより一層向上できる。また、冷媒配管60の端面60c側においては、配管ストッパ部101と当接することで、継手部材100に対する冷媒配管60の差し込み量を容易に規制できるとともに、ろう付けに用いるろう材の垂れを防止できる。さらに、冷媒配管60の材質を接続補助部200と同じ銅または銅合金とした場合に、冷媒配管60の端面60c側においても接続補助部200との間に良好に冷媒配管60を接合するための第2のフィレット80が形成され易くなる。これにより、隙間なく接合され、ろう付け部位の気密性を確実に確保でき、継手部材100と冷媒配管60との接続の信頼性をより一層向上できる。
【0047】
次に、継手部材100の内周面100aおよび外周面100bの両面に接続補助部200が設けられる場合について述べる。
図2、
図4との対応部分に同一符号を付した
図15、
図16に示す変形例7、変形例8のように、接続補助部200は断面がU字形状をなし、当該U字形状の内周側に継手部材100の一方の端部が端面100cから挿入されて構成されていてもよい。この場合、接続補助部200は、継手部材100の内周面100aから端面100cを介して外周面100bに亘って設けられている。
【0048】
このように、接続補助部200を継手部材100の内周面100aから外周面100bに亘って設ける場合も、接続補助部200は、冷媒配管60(
図7および
図14参照)に継手部材100が差し込まれる長さとほぼ同等の範囲に亘って形成されている。詳述すると、継手部材100に接続される冷媒配管とのろう付け強度を充分に満足できる範囲に亘って形成されており、具体的には継手部材100の端面から少なくとも継手部材100の肉厚以上の長さの範囲、好ましくは継手部材100の内径の半分以上の長さの範囲、より好ましくは継手部材100の内径以上の長さの範囲に亘って形成されている。また、以上の
図10~
図14に示す継手部材100において、配管ストッパ部101は、その突出量が接続補助部200の外周面よりも外方に突出して形成されている。すなわち、配管ストッパ部101の外径が接続補助部200の外径よりも大きくなるように形成されている。一方、
図15、
図16に示す継手部材100において、配管ストッパ部101は、その突出量が接続補助部200の内周面よりも内方に突出して形成されている。すなわち、配管ストッパ部101の内径が接続補助部200の内径よりも小さくなるように形成されている。
【0049】
このような構成によれば、継手部材100の端部における外周面100bおよび内周面100aの双方のみならず、継手部材100の端面100cまで一体的に覆う接続補助部200を容易に設けることができるため、接続対象の材質を接続補助部200と同じ銅または銅合金とした場合に、良好にフィレットが形成され易くなる。これにより、継手部材100と接続対象とが隙間なく接合され、ろう付け部位の気密性を確実に確保でき、接続の信頼性をより一層確保可能な構成を容易に実現できる。
【0050】
なお、ここまで継手部材100の長手方向における接続補助部200の内方側端部が位置する部位に、接続対象となる他の冷媒配管の差し込み量を規制する配管ストッパ部101が形成されている場合について述べたが、本発明はこれに限ることはない。すなわち、
図17および
図18に示す変形例9、変形例10のように、接続補助部200の継手部材100に設けられた状態における長手方向の内方側端部に、接続対象となる他の冷媒配管の差し込み量を規制する配管ストッパ部205が形成されていてもよい。このような構成によれば、接続対象の冷媒配管(継手部材)の差し込み量を容易に規制できるとともに、ろう付けに用いるろう材の垂れを防止できる。
【0051】
このとき、配管ストッパ部205は、接続補助部200の外周面100bから外方、内周面100aから内方、またはそれら双方に向けて突出してなることが好ましい。このような構成によれば、配管ストッパ部205を接続補助部200と一体的に形成できるため、配管ストッパ部205を接続補助部200と別体で設ける必要がなく、部品点数を抑制できる。
【0052】
なお、本実施形態では、冷媒配管である継手部材100と冷凍サイクルの銅または銅合金製の冷媒配管60とを接続する場合について述べたが、継手部材100の接続対象としては、銅または銅合金製の冷媒配管に限らず、継手部材100と同様に接続側端部の内周面、外周面、またはその両面に銅または銅合金の接続補助部200を有する例えば、ステンレスや鉄などの金属製の配管や継手部材であってもよい。接続補助部200を有する冷媒配管の材質としては銅または銅合金よりも融点の高い金属であることが好ましい。また、本実施形態では、冷媒配管である継手部材100に設けられた接続補助部200の材質として、銅または銅合金製である場合について述べたが、接続補助部200の材質(第2の金属材料)は、冷媒配管60の材質(第2の金属材料)と同じあるいは同等の材質であればよい。例えば、冷媒配管60の材質をアルミ(第2の金属材料)とした場合には、ステンレス製の冷媒配管60にアルミ(第2の金属材料)製の接続補助部を設ければよい。すなわち、継手部材100に設ける材質は冷媒配管60の継手部材100側の表面と同等の材質とすればよい。
【0053】
以上、説明した冷媒配管(継手部材100)の接続構造は、継手部材100(第1の冷媒配管)と冷媒配管60(第2の冷媒配管)とが、ろう付けによって接続された継手部材100の接続構造であって、ステンレス製の継手部材100は、冷媒配管60側端部の内周面100a(または外周面100b)に、ろう付けによって接合された銅または銅合金の接続補助部200が設けられており、冷媒配管60は、銅または銅合金からなる(もしくは、継手部材100側端部の外周面100bまたは内周面100aに、ろう付け接合された銅または銅合金の接続補助部200が設けられている)ことが好ましい。このような継手部材100の接続構造によれば、継手部材100(第1の冷媒配管)がステンレスからなる場合であっても、冷媒配管60(第2の冷媒配管)側端部の内周面100aまたは外周面100bにろう付け接合された銅または銅合金の接続補助部200を有するので、接続対象である、銅または銅合金製、もしくは第1の冷媒配管側端部の外周面60aまたは内周面60bにろう付け接合された銅または銅合金の接続補助部を有する第2の冷媒配管と、容易にろう付けを用いて接続できる。
【0054】
以上、説明した弁装置としてのスライド式切換弁10は、弁本体としての弁ハウジング1に継手部材11が接続された弁装置であって、継手部材として上述したいずれかの冷媒配管(継手部材100)が用いられていることが好ましい。このようなスライド式切換弁10によれば、上述した継手部材100と同様に、継手部材100がステンレスからなる場合であっても、当該継手部材100の接続側端部が、その内周面100aまたは外周面100bに、ろう付け接合された銅または銅合金の接続補助部200が設けられているので、接続対象の冷媒配管と容易にろう付けを用いて接続できる。加えて、上述した各継手部材100と同様の効果を得られる。
【0055】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することない。例えば、以上述べた実施形態においては本発明の冷媒配管をスライド式切換弁に適用した場合について説明をしたが、本発明の冷媒配管はスライド式切換弁に限らず、電動弁、電磁弁、逆止弁等の各種弁装置に適用できるほか、熱交換器、アキュムレータ、オイルセパレータ、圧縮機等の各種機器にも適用できるものである。また、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 弁ハウジング(弁本体)
11 円筒部
12 キャップ部
2 ピストン
21 パッキン
22 固定円板
23 板ばね
3 連結板
4 弁座
5 弁体
10 スライド式切換弁
100 継手部材(冷媒配管、第1の冷媒配管)
100a 内周面
100b 外周面
100c 端面
101 配管ストッパ部
200 接続補助部
201 端部
202 端部
203 フランジ部
205 配管ストッパ部
300 溶融固化層
60 冷媒配管(第2の冷媒配管)
60a 外周面
60b 内周面
60c 端面
70 第1のフィレット
80 第2のフィレット