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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153590
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】絣糸括り機および絣糸括り装置
(51)【国際特許分類】
   D06B 11/00 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
D06B11/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062953
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】301050027
【氏名又は名称】有限会社坂田織物
(71)【出願人】
【識別番号】522137068
【氏名又は名称】MECS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512063276
【氏名又は名称】株式会社ロジカルプロダクト
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】坂田 和生
(72)【発明者】
【氏名】森 博幸
(72)【発明者】
【氏名】辻 卓則
(72)【発明者】
【氏名】廣橋 健太郎
【テーマコード(参考)】
3B154
【Fターム(参考)】
3B154AA02
3B154AB02
3B154BA09
3B154BB45
3B154BB51
3B154BB64
3B154CA03
3B154CA23
3B154CA33
3B154DA13
(57)【要約】
【課題】絣の文様の多様化に対応し得る、より利便性の高い絣糸括り機および絣糸括り装置を提供する。
【解決手段】絣糸括り機10は、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む動作データに基づいて絣糸に括り糸を巻く第1の括りユニット110と、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む動作データに基づいて絣糸に括り糸を巻く第2の括りユニット120と、第1の括りユニット110および第2の括りユニット120を独立に制御する制御部130と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む動作データに基づいて絣糸に括り糸を巻く第1の括りユニットと、
括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む動作データに基づいて前記絣糸に括り糸を巻く第2の括りユニットと、
前記第1の括りユニットおよび前記第2の括りユニットを独立に制御する制御部と、
を有する絣糸括り機。
【請求項2】
前記第1の括りユニットは、前記第1の括りユニットを前記絣糸に沿って移動させる第1の移動モータと、前記第1の括りユニットのボビンを回転させる第1の回転モータと、を備え、
前記第2の括りユニットは、前記第2の括りユニットを前記絣糸に沿って移動させる第2の移動モータと、前記第2の括りユニットのボビンを回転させる第2の回転モータと、を備える
請求項1に記載の絣糸括り機。
【請求項3】
前記括り開始位置、前記巻き幅、および前記巻き方向を含む前記動作データを送信する端末と、
前記端末からの前記動作データを受信し、当該動作データに基づく工程が完了した旨を示す応答または当該動作データに基づく工程において障害が発生した旨を示す応答を前記端末へ送信する請求項1または2に記載の絣糸括り機と、
を有する絣糸括り装置。
【請求項4】
前記端末は、
製作される絣のデザイン画像およびデザインパラメータに基づいて動作データを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部により生成された動作データを、前記絣糸括り機からの要求に応じて転送するデータ転送部と、
を有する請求項3に記載の絣糸括り装置。
【請求項5】
前記データ生成部は、
前記絣のデザイン画像に基づいて画像の二次元データを緯糸の一次元データにマッピングし、
前記緯糸の一次元データを緯糸の長さ情報に変換し、
前記絣のデザインパラメータに含まれる収縮率と、前記長さ情報とに基づいて前記括り開始位置を算出することにより、
前記動作データを生成する請求項4に記載の絣糸括り装置。
【請求項6】
前記絣糸括り機は糸切れセンサを有し、前記糸切れセンサにより障害を検知した場合、その旨を前記端末へ送信する請求項3に記載の絣糸括り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、久留米絣(かすり)や伊予絣、備後絣などといった絣織物を製造するための絣糸括り機および絣糸括り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の織物技法の一つとして、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を使用して織物を織り上げて文様(模様、デザイン)を表す絣が知られている。当該文様は、かすれたような部分を規則的に配置して表されている。
また、絣糸は2色以上の色に染め分けられているものであるが、この染め分けるための手法として、括りと言う防染が知られている。なお、絣糸は段染め糸とも呼ばれているように、例えば緯糸を括り糸で2段に括ったり3段に括ったりして、括った箇所を染め分けることができる。
【0003】
絣を製造する技術として、特許文献1や非特許文献1に記載の技術がある。
例えば、特許文献1には、所定長のロープを所定張力に保持するための搬入摩擦プーリー及び搬出摩擦プーリー並びにこれらに接続する2基のトルクモータと、所定長のロープ両端を固定する2個の固定チャックと、所定長のロープに沿って往復動する移動台とからなり、該移動台にはロープの送りチャックと括り糸の給糸ボビンと、糊付ローラ及び括り装置を搭載してなる絣糸用自動括り機が記載されている。
【0004】
なお、非特許文献1には、久留米絣緯くくり機の開発に関する技術が記載されている。非特許文献1には、絣のデザインが写った青写真を読み込み、当該青写真に基づいてくくり情報を出力することや、制御用パソコンを用いて、くくり♯1,くくり♯2,くくり♯3を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-224859号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】久留米工業高等専門学校紀要 14(1),5-9,1998年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年絣の文様が多様化していることもあり、より利便性の高い絣糸括り機などが求められている。特に、緯糸は経糸よりも複雑な染め分けが必要とされるため、この複雑な染め分けに対応し得る、より利便性の高い絣糸括り機が求められている。
そうすると、特許文献1に記載の絣糸用自動括り機では2段括りが自動でできないため、このようなニーズに応えることはできない。一方、非特許文献1には、久留米絣緯くくり機の開発に関して3段括りまでできることが記載されているが、3段(くくり♯1,くくり♯2,くくり♯3)とも同時に移動するため括り長さが制限されるなど、こちらも絣のデザインの多様化に対応できるものではない。
【0008】
よって、本発明は、より利便性の高い絣糸括り機および絣糸括り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の絣糸括り機は、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む動作データに基づいて絣糸に括り糸を巻く第1の括りユニットと、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む動作データに基づいて絣糸に括り糸を巻く第2の括りユニットと、第1の括りユニットおよび第2の括りユニットを独立に制御する制御部と、を有する。
これにより、制御部で、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む第1の括りユニットの動作データと、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む第2の括りユニットの動作データと、に基づいて、第1の括りユニットと、第2の括りユニットと、がそれぞれ独立に制御される。
【0010】
また、第1の括りユニットは、第1の括りユニットを絣糸に沿って移動させる第1の移動モータと、第1の括りユニットのボビンを回転させる第1の回転モータと、を備え、第2の括りユニットは、第2の括りユニットを絣糸に沿って移動させる第2の移動モータと、第2の括りユニットのボビンを回転させる第2の回転モータと、を備えることが好ましい。
これにより、制御部で、第1の括りユニット用の動作データと、第2の括りユニット用の動作データと、に基づいて、第1の移動モータ、第1の回転モータ、第2の移動モータ、および第2の回転モータがそれぞれ独立に制御される。
【0011】
また、本発明の絣糸括り装置は、括り開始位置、巻き幅、および巻き方向を含む動作データを送信する端末と、端末からの動作データを受信し、当該動作データに基づく工程が完了した旨を示す応答または当該動作データに基づく工程において障害が発生した旨を示す応答を端末へ送信する上記絣糸括り機と、を有することが好ましい。
これにより、端末からの動作データに基づいて、絣糸括り機側で動作工程が正常に完了したか、または動作工程において障害が発生したかの情報が、工程毎に端末側で受信される。
【0012】
また、端末は、製作される絣のデザイン画像およびデザインパラメータに基づいて動作データを生成するデータ生成部と、データ生成部により生成された動作データを、絣糸括り機からの要求に応じて転送するデータ転送部と、を有することが好ましい。
これにより、絣のデザイン画像およびデザインパラメータに基づいて端末のデータ生成部で動作データが生成され、当該生成された動作データが、絣糸括り機からの要求に応じてデータ転送部で転送される。
【0013】
また、データ生成部は、絣のデザイン画像に基づいて画像の二次元データを緯糸の一次元データにマッピングし、緯糸の一次元データを緯糸の長さ情報に変換し、絣のデザインパラメータに含まれる収縮率と、長さ情報とに基づいて括り開始位置を算出することにより、動作データを生成することが好ましい。
これにより、データ生成部で、絣のデザイン画像およびデザインパラメータに基づいて、括り開始位置を含む動作データが生成される。
【0014】
また、絣糸括り装置は、糸切れセンサを有し、糸切れセンサにより障害を検知した場合、その旨を端末へ送信することが好ましい。
これにより、糸切れセンサで検知された障害の情報が、端末側で受信される。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明の絣糸括り機は、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む動作データに基づいて絣糸に括り糸を巻く第1の括りユニットと、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む動作データに基づいて絣糸に括り糸を巻く第2の括りユニットと、第1の括りユニットおよび第2の括りユニットを独立に制御する制御部と、を有する構成により、制御部で、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む第1の括りユニットの動作データと、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む第2の括りユニットの動作データと、に基づいて、第1の括りユニットと、第2の括りユニットと、がそれぞれ独立に制御されるため、多種多様の文様を作ることができ、利便性が高い絣糸括り機を実現することができる。
【0016】
(2)また、第1の括りユニットは、第1の括りユニットを絣糸に沿って移動させる第1の移動モータと、第1の括りユニットのボビンを回転させる第1の回転モータと、を備え、第2の括りユニットは、第2の括りユニットを絣糸に沿って移動させる第2の移動モータと、第2の括りユニットのボビンを回転させる第2の回転モータと、を備える構成により、制御部で、第1の括りユニット用の動作データと、第2の括りユニット用の動作データと、に基づいて、第1の移動モータ、第1の回転モータ、第2の移動モータ、および第2の回転モータがそれぞれ独立に制御されるため、より多種多様のデザインを作ることができ、より利便性が高い絣糸括り機を実現することができる。
【0017】
(3)また、本発明の絣糸括り装置は、括り開始位置、巻き幅、および巻き方向を含む動作データを送信する端末と、端末からの動作データを受信し、当該動作データに基づく工程が完了した旨を示す応答または当該動作データに基づく工程において障害が発生した旨を示す応答を端末へ送信する上記絣糸括り機と、を有する構成により、端末からの動作データに基づいて、絣糸括り機側で動作工程が正常に完了したか、または動作工程において障害が発生したかの情報が、工程毎に端末側で受信されるため、利用者は端末を介して絣糸括り機側で発生した障害を迅速に検知することができ、かつ作業を途中でストップすることができる。
【0018】
(4)また、端末は、製作される絣のデザイン画像およびデザインパラメータに基づいて動作データを生成するデータ生成部と、データ生成部により生成された動作データを、絣糸括り機からの要求に応じて転送するデータ転送部と、を有する構成により、絣のデザイン画像およびデザインパラメータに基づいて端末のデータ生成部で動作データが生成され、当該生成された動作データが、絣糸括り機からの要求に応じてデータ転送部で転送されるため、従来技術のように青写真を読み込ませる必要がなく、所定の画像やパラメータから絣糸括り機への動作指示を作成することができ、利便性が高い絣糸括り装置を実現することができる。
【0019】
(5)なお、データ生成部は、絣のデザイン画像に基づいて画像の二次元データを緯糸の一次元データにマッピングし、緯糸の一次元データを緯糸の長さ情報に変換し、絣のデザインパラメータに含まれる収縮率と、長さ情報とに基づいて括り開始位置を算出することにより、動作データを生成する構成により、データ生成部で、絣のデザイン画像およびデザインパラメータに基づいて、括り開始位置を含む動作データが生成されるため、利用者は容易に絣糸括り装置を動かすことができ、利用者の熟練度を問わないより利便性が高い絣糸括り装置を実現することができる。
【0020】
(6)また、絣糸括り装置は、糸切れセンサを有し、糸切れセンサにより障害を検知した場合、その旨を端末へ送信する構成により、糸切れセンサで検知された障害の情報が、端末側で受信されるため、利用者は端末を介して糸切れや糸の緩みなどを含む絣糸括り機側で発生した障害を迅速に検知することができ、かつ作業を途中でストップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る絣糸括り装置の概略構成図である。
図2】端末の概略ブロック図である。
図3】端末に表示される画面の一例を示す図であり、(A)は画像読込み画面、(B)はデータ生成画面(パラメータ入力画面)である。
図4】括り糸で緯糸を括る仕組みを説明する図である。
図5】括り糸で緯糸を括る仕組みを説明する図であり、(A)は括り糸の括り位置を説明する図、(B)は括り糸の巻き方向を説明する図である。
図6】本発明の実施の形態に係る絣糸括り装置の動作を示すフロー図である。
図7】動作データが生成される流れを示すフロー図である。
図8】本発明の実施の形態に係る絣糸括り装置の動作において、端末と絣糸括り機との間の通信を示すシーケンス図である。
図9】緯糸のテンションを監視する構成のセンサを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の内容に限定されない。
【0023】
[絣糸括り装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る絣糸括り装置の概略構成図である。図1に示すように、絣糸括り装置1は絣糸括り機10と、端末20とを有する。
【0024】
端末20は、絣糸括り機10を動作させるデータ(動作データ)を生成し、当該動作データを絣糸括り機10へ送信(転送)する装置である。
【0025】
一方、絣糸括り機10は、端末20からの動作データに基づいて、絣糸に括り糸を巻く機械である。以下、絣糸括り装置1(絣糸括り機10)は緯糸に括り糸を巻く形態を説明するが、経糸に括り糸を巻く形態とすることもできる。
【0026】
[端末]
図2は、端末の概略ブロック図である。図2に示すように、端末20は入力部210と、表示部220と、記憶部230と、データ生成部240と、データ転送部250と、通信部260とを有する。
【0027】
入力部210は、利用者(絣糸括り装置1を利用する者)から入力される絣のデザイン情報を受け付ける機能である。また、表示部220は、端末20の画面に情報を表示させる機能である。なお、記憶部230はメモリやデータベースなど各種情報を記憶、保存する機能である。
【0028】
絣のデザイン情報とは、絣のデザイン画像やデザインパラメータなどである。例えば、図3(端末に表示される画面の一例を示す図)に示すように、記憶部230に保存されている絣のデザイン画像をフォルダパス欄210Aで指定することにより読み込ませることができる(図3(A)参照)。この際、絣の表デザイン画像と裏デザイン画像を読み込ませることができる。
また、図3(B)に示すように、利用者は絣のデザインパラメータをパラメータ欄210Bから入力することができる。
【0029】
データ生成部240は、絣糸括り機10を動作させる動作データを生成する機能である。また、データ転送部250は、データ生成部240により生成された動作データを絣糸括り機10へ転送する機能である。
なお、通信部260は絣糸括り機10と通信する機能である。図1の破線矢印に示すように、通信部260によって端末20は絣糸括り機10(制御部130)と相互に通信することができる。端末20と絣糸括り機10との間の通信は、有線LAN通信または無線LAN通信など既存の技術で実現することができる。
【0030】
動作データには、括り糸が緯糸を括り始める位置である括り開始位置、括り糸の巻き幅、括り糸の巻き方向(括り糸を巻く方向)、および括り糸の巻き数(括り糸を巻く回数)などが含まれる。
【0031】
なお、端末20は、例えばモバイルPCやデスクトップPC、またはタブレットなどを用いることができる。利用者は、このようなPCなどに本発明の実施の形態に係る端末として動作させるためのプログラムを実行させ、図2に示すような構成を構築(実装)することによって、PCなどを本発明の実施の形態に係る端末として用いることができる。
【0032】
[絣糸括り機]
図1に示すように、絣糸括り機10は、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む動作データに基づいて緯糸に括り糸を巻く第1の括りユニット110と、括り開始位置、巻き幅、巻き方向、および巻き数を含む動作データに基づいて緯糸に括り糸を巻く第2の括りユニット120と、を有する。
【0033】
また、絣糸括り機10は、第1の括りユニット110および第2の括りユニット120を独立に制御する制御部130をさらに有する。制御部130は例えば、PLC(Programmable Logic Controller)である。上述したように、制御部130は端末20と相互に通信することができるため、端末20から送信された動作データを受信し、当該動作データに基づいて第1の括りユニット110および第2の括りユニット120の動作を制御する。
【0034】
なお、絣糸括り機10は緯糸(緯糸の糸束)を送るプーリーP1,P2を有する。一方のプーリー(図1に示す例においては、プーリーP2)にはモータMPが備えられており、モータMPがプーリーP2を回転させることにより緯糸が送られる。
第1の括りユニット110および第2の括りユニット120は、プーリーP1とプーリーP2との間に設けられ、送られる緯糸を括り糸で括るユニットである。便宜上、送られる緯糸の進行方向に対して手前側にある(図1の左側の)ユニットを第1の括りユニット110、奥側にある(図1の右側の)ユニットを第2の括りユニット120と言う。
【0035】
第1の括りユニット110は、第1の括りユニット110を緯糸方向に沿って移動させる第1の移動モータM11と、第1の括りユニット110のボビンB1を回転させる第1の回転モータM21と、を備えている。
一方、第2の括りユニット120は、第2の括りユニット120を緯糸方向に沿って移動させる第2の移動モータM12と、第2の括りユニット120のボビンB2を回転させる第2の回転モータM22と、を備えている。
以下、第1の移動モータM11と第2の移動モータM12とを合わせて単に「移動モータM11,M12」と言うことがある。また、以下、第1の回転モータM21と第2の回転モータM22とを合わせて単に「回転モータM21,M22」と言うことがある。
【0036】
そして、制御部130は第1の括りユニット110および第2の括りユニット120を独立に制御するものであるため、移動モータM11,M12および回転モータM21,M22をそれぞれ独立に制御する。つまり、制御部130はこれらのモータに対して、移動モータM11,M12により括り開始位置まで移動する距離や、回転モータM21,M22により括り糸を巻く方向などについて、それぞれ異なる制御指示を出す。
もちろん、制御部130は、絣のデザインによっては同じ制御指示(例えば、回転モータM21,M22により括り糸を巻く方向が同じ)を出すこともできる。
【0037】
また、絣糸括り機10は、第1の括りユニット110において糸切れを検知する糸切れセンサS1と、第2の括りユニット120において糸切れを検知する糸切れセンサS2と、を有する。糸切れセンサS1,S2は、例えば巻かれている括り糸が切れたことを検知し、制御部130へ通知することができる。
【0038】
また、糸切れセンサは、緯糸のテンションを監視する構成とすることもできる。例えば図9に示すように、監視対象が緯糸のテンションに応じて鉛直方向に上下し、また、センサ側でこの監視対象がどの位置にあるのか(どの高さにあるのか)を監視する構成とすることができる。
緯糸のテンションが落ちると(テンションが緩むと)、監視対象は鉛直方向に落ちる(下がる)ため、センサはこの落ちた(下がった)監視対象の位置に基づいて、糸切れや糸の緩みなど緯糸に発生した障害を検知することができる。
【0039】
[緯糸を括る仕組み]
図4は、括り糸で緯糸を括る仕組みを説明する図である。図4に示すように、一本の緯糸で表と裏の文様を作ることができる。つまり、緯糸を端(耳)の部分で折り返して段を構成することで、表と裏を交互に出現させる。
【0040】
そして、糸始点から表部分が始まって、右の端(耳)の部分で折り返されて今度は裏部分が始まるため、デザイン画像が読込まれる際(図3参照)、表は左から右へ、裏は右から左へデザイン画像の情報が取得される。
【0041】
また、図5は、括り糸で緯糸を括る仕組みを説明する図であり、(A)は括り糸の括り位置を説明する図、(B)は括り糸の巻き方向を説明する図である。
図5(A)に示すように、括り糸1の括り位置に括り糸が最初に巻かれ、その後、括り糸2の括り位置に括り糸が巻かれる。つまり、括り糸2は単独で緯糸に巻かれたり、括り糸1(の一部)の上から巻かれたりするものである。括り糸2が括り糸1の上から巻かれる場合、括り糸1と括り糸2の境界では、括り糸1の上から括り糸2が一定長重ねられて巻かれる。
【0042】
この括り糸1と括り糸2が巻かれた状態から、
(1)緯糸を「濃い色」で染める。
(2)括り糸2をほどく。
(3)緯糸を「薄い色」で染める。
(4)括り糸1をほどく。
という手順を踏むことで、
・括り糸1と括り糸2のどちらも巻かれていない部分(図5(A)の[1]の部分)は「濃い色」で染まる。
・括り糸2のみが巻かれている部分(図5(A)の[2]の部分)は「薄い色」で染まる。
・括り糸1のみが巻かれている部分(図5(A)の[3]の部分)、または括り糸1と括り糸2のどちらも巻かれている部分(図5(A)の[4]の部分)は緯糸の「下地の色」となる。
【0043】
このように、緯糸を「濃い色」、「薄い色」、および緯糸の「下地の色」の3色に染め分ける場合(3色染めの場合)は括り糸を2種類(括り糸1、括り糸2)使用する。そして、このようなどこから括り始めるか(括り開始位置)やどこまで括るか(巻き幅)の調整は、移動モータM11,M12により決定することができる。一方、括り糸を巻く方向(左巻き、右巻き)は、回転モータM21,M22により決定することができる。
【0044】
[動作例]
図6は、本発明の実施の形態に係る絣糸括り装置の動作を示すフロー図である。また、図7は、動作データが生成される流れを示すフロー図であり、図6に示すフロー図における動作データ生成(ステップS200)の詳細な流れを示したものである。なお、図8は、本発明の実施の形態に係る絣糸括り装置の動作において、端末と絣糸括り機との間の通信を示すシーケンス図である。
以下、各図面を参照して、本発明の実施の形態に係る絣糸括り装置の動作例を説明する。
【0045】
まず、利用者は、端末20にデザイン画像やデザインパラメータを入力する(ステップS100)。デザイン画像やデザインパラメータの入力は、図3を用いて説明した通りである。
【0046】
動作データを生成するための必要な情報が集まると、端末20は、データ生成部240(図2参照)により動作データを生成する(ステップS200)。
【0047】
ここで、図7に示すように、データ生成部240は入力されたデザイン画像の縦画素数を緯糸数に変換する(ステップS210)。図3に例示されるようなデザイン画像の行は、緯糸に相当するものである。そのため、緯糸を縦方向に配置していくことで、デザイン画像に示される文様が作られる。緯糸数の値(パラメータ)は、利用者によりステップS100の段階で入力されたパラメータが参照され、変換処理に用いられる。
また、このステップでは、後述するようなデザイン画像の二次元データ(縦×横)を緯糸の一次元データにマッピング(変換)させる処理のために、緯糸数とデザイン画像の縦画素数を一致させる。例えば、読み込まれたJPEGやPNGなどのデザイン画像ファイルの縦画素数が1000ピクセルであり、かつ利用者により入力された緯糸数の値が500(本)であった場合、当該デザイン画像ファイルの縦画素数を1000ピクセルから500ピクセルに変換する。
【0048】
次に、データ生成部240はデザイン画像の色を識別し(ステップS220)、さらに文様とは関係のないノイズを除去する(ステップS230)。例えば3色染めの場合、デザイン画像に基づいて識別される色は3色となる。
【0049】
そして、データ生成部240は、デザイン画像の二次元データ(縦×横)を緯糸の一次元データにマッピング(変換)する(ステップS240)。また、データ生成部240は、1画素当たりの横方向の長さを「横寸法÷デザイン画像の横画素数」より算出する(ステップS250)。横寸法は、利用者によりステップS100の段階で入力されたパラメータを参照する。
【0050】
それから、データ生成部240は、算出された1画素当たりの長さに基づいて、緯糸の一次元データを長さ情報に変換する(ステップS260)。
【0051】
その後、データ生成部240は緯糸の収縮率を反映させる(ステップS270)。以上のような手順を踏むことで、データ生成部240はデザイン画像やデザインパラメータから、実際に作る文様の寸法(実寸)を算出することができる。
【0052】
最後に、データ生成部240は色ごとに括り開始位置を算出する(ステップS280)。なお、上述したように実際に作る文様の寸法を算出することができるため、データ生成部240は巻き幅、および巻き方向を含む動作データを生成することができる。
【0053】
そして、動作データ生成が終了すると、図6図8に示すように、端末20は開始通知を絣糸括り機10へ送信する(ステップS300)。
【0054】
開始通知を受信した絣糸括り機10(制御部130)は、動作データ要求を端末20へ送信する(ステップS311)。一方、動作データ要求を受信した端末20(データ転送部250)は、1工程分の動作データを絣糸括り機10へ転送する(ステップS312)。
1工程分の動作データとは、目的の文様が出来上がるための全ての動作データのうち、分割された一部の動作データである。例えば全ての動作データを10分割した場合、1工程分の動作データは全体の進捗の10%分に当たる。
【0055】
一方、1工程分の動作データを受信した絣糸括り機10は、当該動作データに基づいて動作を行う。具体的には、制御部130が移動モータM11,M12や回転モータM21,M22などに、当該動作データに基づいて制御指示を出す(図1参照)。
【0056】
そして、絣糸括り機10は、1工程分の動作が終わった旨を示す完了報告を端末20へ送信する(ステップS313)。
【0057】
端末20は、完了報告を受信し(ステップS313)、さらに絣糸括り機10から動作データ要求を受信した場合(ステップS311)、次の1工程分の動作データを絣糸括り機10へ転送する(ステップS312)。
【0058】
このように、端末20は、全ての動作データを絣糸括り機10へ転送するまで動作データ転送処理(S310~S320)を繰り返す。例えば全ての動作データを10分割した場合、端末20から絣糸括り機10への動作データ転送は10回行われる。
この際端末20は、図3(B)の進捗バー220Aのように、絣糸括り機10から受信した完了報告に基づいて全体の進捗を表示させることができる。
【0059】
全ての動作データを転送し終わると、端末20は、全ての動作データを転送し終わった(作業が終わった)旨を示す終了通知を絣糸括り機10へ送信する(ステップS330)。
【0060】
以上のような手順で、端末20に入力されたデザイン画像やデザインパラメータから動作データが作成され、絣糸括り機10へ転送され、絣糸括り機10が当該動作データに基づき動作することによって文様が作られる。
【0061】
なお、端末20で生成され、絣糸括り機10へ転送される動作データは、括り開始位置、巻き幅、および巻き方向などである。一方、巻き数は絣糸括り機10(例えば、制御部130)で管理される。
もちろん、巻き数に関する情報も、動作データとして端末20で作成され、絣糸括り機10へ転送されてもよい。このような動作データに含まれる情報は、端末20側で管理(生成・転送)するか、または絣糸括り機10側で管理するかを、絣糸括り装置1の用途に応じて適宜設計変更することができる。
【0062】
このように、絣糸括り機10の制御部130は第1の括りユニット110(第1の移動モータM11、第1の回転モータM21)や第2の括りユニット120(第2の移動モータM12、第2の回転モータM22)を独立に制御することができ、お互いが別々の動作を行うことができるため、多種多様のデザインを自動で作ることができるため、利便性が高い。
【0063】
また、従来技術のように青写真を読み込ませる必要がなく、所定の画像やパラメータから絣糸括り機10への動作指示を作成することができるため、利便性が高く、生産性を向上させることができる。
【0064】
なお、利用者は、絣糸括り機10側で発生した障害を迅速に検知することができる。
例えば、糸切れセンサS1,S2(図1参照)で括り糸が切れたことが検知された場合、糸切れセンサS1,S2はその旨を制御部130へ通知する。そして、制御部130はその旨を障害報告として端末20へ送信する。端末20は、障害があった旨を表示部220により画面に表示させることで、利用者に伝える。
【0065】
そうすると、端末20(データ転送部250)はステップS313(図6参照)において、障害報告を受信するとそれ以上の動作データの転送を中止する。よって、利用者は絣糸括り機10側で発生した障害を迅速に検知することができ、かつ作業を途中でストップすることができる。
特に、本発明の絣糸括り機10は、第1の括りユニット110と第2の括りユニット120が独立して制御されるため、第1の括りユニット110と第2の括りユニット120で、括りに用いられる括り糸の糸量がそれぞれ異なったり、異なるタイミングで異なる障害がそれぞれに発生したりする場合がある。そのため、全ての工程を最初から最後まで行わせるような動作データを一度に送信されるよりも、工程毎に分割された複数の動作データがそれぞれ分けて送信されることで、第1の括りユニット110と第2の括りユニット120の独立制御が容易になり、かつどちらか一方の括りユニットまたは両方の括りユニットで障害が発生した場合でも、迅速にその障害を検知することができる。つまり、本発明の端末20と通信(やり取り)を行うことにより、複数の括りユニットに対して独立制御を行う本発明の絣糸括り機10を適切に制御することができる。
【0066】
絣糸括り機10側での障害は糸切れ以外にもあり、例えば、モータが故障したり、回転モータM21,M22(図1参照)が所定数回転しなかったり(例えば、10回転するところ8回転しかしなかったり)、ボビンB1,B2(図1参照)に括り糸が無いといったケースがある。
【0067】
このようなケースにおいて、例えば回転モータが所定数回転しなかったりすると、目測では正しく動いているか否かは分からないため、利用者は最後まで実際に織ってみないと回転モータが正しく動いているか否かが分からず、出来上がった問題のある織物を廃棄せざるを得ないといった事態となる。
【0068】
よって、絣糸括り機10側の動作のフィードバックを逐次端末20側へ返すことにより、利用者は絣糸括り機10側で発生した障害を迅速に検知することができ、かつ作業を途中でストップすることができるため、障害(問題)の早期解決を図ることができる。
【0069】
なお、端末20と絣糸括り機10との間の通信が切れたり、絣糸括り機10の電源が落ちたりしたために絣糸括り機10から完了報告が返ってこない場合でも、同様に作業を途中でストップすることができる(図6のステップS313)。
【0070】
以上のように本発明の実施の形態を説明したが、説明した実施の形態はあくまで一例であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、この内容に限定されない。
例えば、4色染めを実現するために、第1の括りユニット110、第2の括りユニット120の他に、これらと準じる構成で第3の括りユニットを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、より利便性の高い絣糸括り機および絣糸括り装置として、久留米絣を始め様々な絣織物を製造することができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 絣糸括り装置
10 絣糸括り機
110 第1の括りユニット
120 第2の括りユニット
20 端末
210 入力部
210A フォルダパス欄
210B パラメータ欄
220 表示部
220A 進捗バー
230 記憶部
240 データ生成部
250 データ転送部
260 通信部
M11 第1の移動モータ
M12 第2の移動モータ
M21 第1の回転モータ
M22 第2の回転モータ
B1,B2 ボビン
S1,S2 糸切れセンサ
P1,P2 プーリー
MP モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9