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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153601
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】可動式通路
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B61B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062972
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓守
(72)【発明者】
【氏名】北森 達也
(72)【発明者】
【氏名】池田 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 啓明
(72)【発明者】
【氏名】青木 優介
(72)【発明者】
【氏名】増田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】井本 清紀
(72)【発明者】
【氏名】山川 弘平
(72)【発明者】
【氏名】堂城 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕隆
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101AA02
3D101AA05
3D101AA21
3D101AA24
3D101AA31
(57)【要約】
【課題】可動通路の伸縮をスムーズにしつつ、レールの配置スペースを低減できる可動式通路を提供すること。
【解決手段】短縮位置から可動通路3が伸長する際には、前部ブロック22及び後部ブロック33によって可動通路3が前後に離隔した2点で支持される。これにより、可動通路3が片持ち状態になることを抑制できるので、短縮位置付近における可動通路3の伸縮をスムーズにできる。前部レール31が可動通路3に取り付けられ(前部ブロック22が固定通路2に取り付けられ)、前部ブロック22に沿って前部レール31がスライドするので、前部レール31を短縮状態の可動通路3よりも前方側に突出させる必要がない。よって、前部レール31の配置スペースを低減できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅のホームに固定される固定通路と、その固定通路に対して伸縮する可動通路と、その可動通路の伸縮を案内するレール及びブロックと、を備え、前記レール及び前記ブロックのスライドにより、前記ホームに停車する車両側に向けて前記固定通路から伸長する伸長位置と、前記固定通路側に短縮する短縮位置との間を前記可動通路が伸縮する可動式通路において、
前記固定通路に取り付けられる後部レールと、その後部レールにスライド可能に係合し、前記可動通路の後端側に取り付けられる後部ブロックと、前記後部レールよりも前方側で前記固定通路に取り付けられる前部ブロックと、その前部ブロックにスライド可能に係合し、前記可動通路の前端側に取り付けられる前部レールと、を備え、
前記前部ブロックは、前記短縮位置において前記前部レールの前端側に係合することを特徴とする可動式通路。
【請求項2】
前記伸長位置において前記可動通路を支持する車輪を備えることを特徴とする請求項1記載の可動式通路。
【請求項3】
前記車輪による前記可動通路の支持は、前記短縮位置から前記伸長位置に向けた前記可動通路の変位途中で開始されることを特徴とする請求項2記載の可動式通路。
【請求項4】
前記固定通路は、前記前部ブロックを支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記前部ブロックの下方への変位を規制して前記可動通路を支持する支持状態と、その支持状態から前記前部ブロックの上方への変位を許容して前記可動通路の支持を解除する非支持状態と、を形成可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の可動式通路。
【請求項5】
前記支持部材は、前記固定通路に固定され、前記可動通路の伸縮方向と直交する左右方向に延びる円柱状の軸と、その軸に沿って上下にスライドする長円形の長穴を有する固定部材と、を備え、
前記前部ブロックが前記固定部材に固定されることを特徴とする請求項4記載の可動式通路。
【請求項6】
前記後部レールは、前記可動通路の上下方向中央よりも上方側で前記固定通路の側壁に固定されることを特徴とする請求項1記載の可動式通路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式通路に関し、特に、可動通路の伸縮をスムーズにしつつ、レールの配置スペースを低減できる可動式通路に関する。
【背景技術】
【0002】
駅のホームに固定される固定通路と、その固定通路に対して伸縮する可動通路と、を備える可動式通路が知られている。この種の可動式通路は、ホームに停車する車両の乗降口に向けて可動通路を伸長させることにより、ホームと車両との間で乗客を乗降させるものである。
【0003】
例えば特許文献1には、固定通路(扉状壁材56)にレール(ガイド棒64)を固定すると共に、そのレールにスライド可能なブロック(ガイド65)を可動通路(壁板部63)に固定する技術が記載されている。この技術によれば、レールに対するブロックのスライドによって可動通路の伸縮を案内できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-325365号公報(例えば、段落0026~0028、図24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動通路(壁板部63)の伸縮方向において、可動通路が伸長する方向を前方側、短縮する方向を後方側とすると、上述した従来の技術では、可動通路の後端側にブロック(ガイド65)が固定されている。つまり、ブロックによって可動通路が片持ち状態で支持されており、可動通路の重量による負荷がレールとブロックとの係合部分に加わり易い。この係合部分における負荷は、レールにブロックがスライドする時の抵抗になるため、可動通路をスムーズに伸縮させることができない。
【0006】
このような片持ち状態を回避して可動通路の伸縮をスムーズにさせるためには、例えばブロックを可動通路の後端側と前端側との各々に取り付け、ブロックによる可動通路の支持位置を前後に離隔させれば良い。しかし、このような構成の場合、可動通路の前端側に取り付けられるブロックを前方側にスライドさせるためには、短縮状態の可動通路よりも前方側にレールを突出させる必要があり、レールの配置スペースが増大する。即ち、上述した従来の技術では、可動通路の伸縮をスムーズにすることと、レールの配置スペースを低減することとを両立させることができないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、可動通路の伸縮をスムーズにしつつ、レールの配置スペースを低減できる可動式通路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の可動式通路は、駅のホームに固定される固定通路と、その固定通路に対して伸縮する可動通路と、その可動通路をスライド可能に支持するレール及びブロックと、を備え、前記ホームに停車する車両側に向けて前記固定通路から伸長する伸長位置と、前記固定通路側に短縮する短縮位置との間の前記可動通路の伸縮が前記レール及び前記ブロックによって案内されるものであり、前記固定通路に取り付けられる後部レールと、その後部レールにスライド可能に係合し、前記可動通路の後端側に取り付けられる後部ブロックと、前記後部レールよりも前方側で前記固定通路に取り付けられる前部ブロックと、その前部ブロックにスライド可能に係合し、前記可動通路の前端側に取り付けられる前部レールと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の可動式通路によれば、固定通路に取り付けられる後部レールと、その後部レールにスライド可能に係合し、可動通路の後端側に取り付けられる後部ブロックと、を備えるので、可動通路の後端側は、後部レール及び後部ブロックによってスライド可能に支持される。また、後部レールよりも前方側で固定通路に取り付けられる前部ブロックと、その前部ブロックにスライド可能に係合し、可動通路の前端側に取り付けられる前部レールと、を備えるので、可動通路の前端側は、前部レール及び前部ブロックによってスライド可能に支持される。
【0010】
後部ブロックが可動通路の後端側に取り付けられ、前部ブロックが短縮位置において前部レールの前端側に係合するので、短縮位置での後部ブロック及び前部ブロックによる可動通路の支持位置を前後に離隔させることができる。これにより、可動通路が短縮位置付近を伸縮する時に片持ち状態になることを抑制できるので、可動通路の伸縮をスムーズにできるという効果がある。
【0011】
また、前部ブロックが固定通路に取り付けられ、前部レールが可動通路に取り付けられるので、可動通路の伸長時には、前部ブロックに沿って前部レールが前方側にスライドする。よって、例えば前部ブロックを可動通路に取り付ける(前部レールを固定通路に取り付ける)構成とは異なり、前部レールを短縮状態の可動通路よりも前方側に突出させる必要がない。よって、前部レールの配置スペースを低減できるという効果がある。
【0012】
請求項2記載の可動式通路によれば、請求項1記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。可動通路の伸長位置において可動通路を支持する車輪を備えるので、片持ち状態に近づいた可動通路を車輪で支えることができる。これにより、各レール及びブロックの係合部分に加わる負荷を低減できるので、可動通路の伸縮をスムーズにできるという効果がある。
【0013】
請求項3記載の可動式通路によれば、請求項2記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。車輪による可動通路の支持は、短縮位置から伸長位置に向けた可動通路の変位途中で開始されるので、短縮位置付近では、車輪に支持されていない状態で可動通路を伸縮させることができる。これにより、短縮位置付近における可動通路の支持点を低減できるので、可動通路の伸縮をスムーズにできるという効果がある。
【0014】
請求項4記載の可動式通路によれば、請求項1から3のいずれかに記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。前部ブロックを支持する支持部材は、前部ブロックの下方への変位を規制して可動通路を支持する支持状態と、その支持状態から前部ブロックの上方への変位を許容して可動通路の支持を解除する非支持状態とを形成できる。これにより、可動通路が上下に変位するようなガタつきが生じた場合に、前部ブロックによる可動通路の支持状態を解除できるので、前部レール及び前部ブロックの係合部分に加わる負荷を低減できる。
【0015】
請求項5記載の可動式通路によれば、請求項4記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。支持部材は、固定通路に固定される軸と、その軸に沿って上下にスライドする長穴を有する固定部材と、を備え、この固定部材に前部ブロックが固定されるので、長穴に挿入された軸に固定部材が吊り下げられる(前部ブロックの下方への変位を規制する)ことにより、前部ブロックで可動通路を支持する支持状態を形成できる。一方、その支持状態から軸に沿って固定部材が上方に変位する(前部ブロックの上方への変位を許容する)ことにより、前部ブロックによる可動通路の支持を解除する非支持状態を形成できる。
【0016】
可動通路の伸縮方向と直交する左右方向に延びる軸が固定部材の長円形の長穴に挿入されるので、前後方向の負荷が固定部材に作用した場合に、固定部材を軸回りに回転させることができる。よって、軸と固定部材の長穴との嵌合部分に加わる負荷を低減できるという効果がある。
【0017】
請求項6記載の可動式通路によれば、請求項1記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。後部レールは、可動通路の上下方向中央よりも上方側で固定通路の側壁に固定されるので、可動通路の伸長によって乗降客の通路(側壁)に後部レールが露出しても、その後部レールに乗降客が触れることを抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における可動式通路の斜視図である。
図2】可動通路が短縮位置に短縮した状態を示す可動式通路の断面図である。
図3図2の状態(短縮位置)から可動通路が所定量伸長した状態を示す可動式通路の断面図である。
図4】(a)は、図3のIVa部分を拡大した可動式通路の部分拡大断面図であり、(b)は、図4(a)の状態から可動通路が持ち上がった状態を示す可動式通路の部分拡大断面図である。
図5図3の状態から可動通路が伸長位置まで伸長した状態を示す可動式通路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、可動式通路1の全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態における可動式通路1の斜視図である。なお、図1では、固定通路2側に可動通路3が短縮した状態を図示すると共に、可動式通路1の一部(例えば側壁23の上端同士を繋ぐ天井等)を省略して模式的に図示している。
【0020】
また、図1の矢印F-Bは、可動通路3の伸縮方向を示しており、矢印F側が可動通路3の伸縮方向における前方側であり、矢印B側が伸縮方向における後方側である。また、矢印L-Rは、可動通路3の伸縮方向と直交する水平方向を示し、矢印U-Dは、可動通路3(可動式通路1)の上下方向を示している。また、以下の説明においては、可動通路3の伸縮方向を単に「前後方向」と記載して説明する。
【0021】
図1に示すように、可動式通路1は、駅のホーム100に固定される固定通路2と、その固定通路2に対して伸縮する可動通路3と、を備える可動式の通路である。可動通路3を停車中の車両(図示せず)の乗降口に向けて伸長させることにより、乗降口とホーム100とが固定通路2及び可動通路3によって接続され、乗客の乗降が可能になる。
【0022】
固定通路2には、左右方向(矢印L-R方向)に延びる仕切壁20が形成され、この仕切壁20によってホーム100側と車両側とが仕切られる。仕切壁20には矩形の開口20aが形成され、この開口20a内で可動通路3が前後方向(矢印F-B方向)に伸縮する。
【0023】
可動通路3は、開口20aに挿入される角筒状の筒部30を備え、筒部30の側面の上端側には、前後方向に延びる前部レール31が固定される。前部レール31は、筒部30の左右両側の側面に固定され、この左右一対の前部レール31のスライドを案内するための突出部21が固定通路2に設けられる。
【0024】
突出部21は、仕切壁20の前面から前方側に突出しており、左右に所定間隔を隔てる一対の突出部21が開口20aの上部に設けられる。左右一対の突出部21の各々には、後述する固定部材41(図1の右下の拡大部分参照)を介して前部ブロック22が吊り下げられており、この前部ブロック22に可動通路3の前部レール31が係合する。
【0025】
筒部30の後端部には、張出部32がフランジ状に張り出しており、この張出部32のスライドを案内するための側壁23が仕切壁20の後面から後方側に延びている。側壁23は、開口20a(及び張出部32)を挟んで左右一対に設けられ、これら一対の側壁23の各々の内面(可動通路3側を向く壁面)には、前後方向に延びる後部レール24が固定される。張出部32の左右両側の端面には後部ブロック33(図1の左上の拡大部分参照)が固定され、この後部ブロック33が固定通路2の後部レール24に係合する。
【0026】
これらの各レール24,31及びブロック22,33(以下「各レール及びブロック」という)は、レールとブロックとの間に介在される転動体の転動により、レールに沿ってブロックが直動するLMガイド(登録商標)である。よって、図示しない駆動手段(前後に伸縮するシリンダ等)の駆動力が可動通路3に付与されることにより、可動通路3の伸縮が各レール及びブロックのスライドによって案内される。
【0027】
次いで、図2~5を参照して、可動式通路1の詳細構成および伸縮動作について説明する。まず、図2及び図3を参照して、可動通路3が固定通路2側に短縮した位置(以下「短縮位置」という)から伸長する動作について説明する。図2は、可動通路3が短縮位置に短縮した状態を示す可動式通路1の断面図であり、図3は、図2の状態(短縮位置)から可動通路3が所定量伸長した状態を示す可動式通路1の断面図である。
【0028】
なお、図2及び図3では、図1の左右方向(矢印L-R)方向と直交する平面であって、固定部材41を含む平面で切断した断面を図示すると共に、可動通路3に隠れている後部レール24及び後部ブロック33を破線で図示している(図4以降においても同様である)。また、図3では、可動通路3が伸長動作の終端(以下「伸長位置」という)に達する前の伸長途中の状態を図示している。
【0029】
図2に示すように、後部レール24及び前部レール31は、上下に離隔して配置され、短縮位置では、後部レール24の前端が前部レール31の後端よりも前方側に位置している。即ち、短縮位置では、側面視において後部レール24の前端側の一部と前部レール31の後端側の一部とが上下に並ぶ(オーバーラップする)ようにして配置される。これにより、前後方向における後部レール24及び前部レール31の配置スペースを低減できる。
【0030】
また、前部レール31は、可動通路3(筒部30)の前端から後方側に延びており、短縮位置では、前部レール31の前端部分に前部ブロック22が係合される。即ち、短縮位置では、可動通路3の前端側が前部ブロック22によって支持される。
【0031】
一方、後部レール24に係合する後部ブロック33は、可動通路3の後端部分(張出部32)に取り付けられるので、短縮位置では、後部ブロック33によって可動通路3の後端側が支持される。
【0032】
つまり、短縮位置における前部ブロック22による可動通路3の支持位置は、可動通路3の前後方向中央よりも前方側に位置し、後部ブロック33による可動通路3の支持位置は、可動通路3の前後方向中央よりも後方側に位置している。
【0033】
よって、図3に示すように、短縮位置から可動通路3が伸長する際には、前部ブロック22及び後部ブロック33によって可動通路3を前後に離隔した2点で支持できる。これにより、可動通路3が片持ち状態になることを抑制できるので、短縮位置付近における可動通路3の伸縮をスムーズにできる。
【0034】
特に、短縮位置から可動通路3を伸長させる際には、各レール及びブロックの係合部分の静止摩擦力に抗して可動通路3をスライドさせる必要がある。よって、短縮位置で極力前後に離れた2点で可動通路3を支持することにより、短縮位置から伸長位置に向けた可動通路3のスライドをスムーズにできる。
【0035】
ここで、例えば前部ブロック22を可動通路3側に取り付ける一方、前部レール31を固定通路2側に取り付け、前部レール31に沿って前部ブロック22をスライドさせる構成の場合、前部ブロック22を前方側にスライドさせるためには、前部レール31を短縮位置(図2の状態)の可動通路3よりも前方側に突出させる必要がある。よって、前部レール31の配置スペースが増大する。
【0036】
これに対して本実施形態では、固定通路2に取り付けられる前部ブロック22に対し、可動通路3に取り付けられる前部レール31を前方側にスライドさせる構成である。よって、上記のように前部ブロック22を可動通路3に取り付ける(前部レール31を固定通路2に取り付ける)構成とは異なり、前部レール31を短縮位置(図2の状態)の可動通路3よりも前方側に突出させる必要がない。よって、前部レール31の配置スペースを低減できる。
【0037】
また、短縮位置では、可動通路3の後部ブロック33が後部レール24の後端側に係合しているため、後部レール24についても、短縮位置(図2の状態)の可動通路3よりも後方側に突出させる必要がない。よって、後部レール24の配置スペースを低減できる。
【0038】
図2及び図3に示すように、短縮位置から可動通路3が伸長する際には、可動通路3に固定された後部ブロック33が後部レール24に沿ってスライドするため、後部ブロック33による可動通路3の支持位置は、可動通路3の後端部分のまま不変である。一方、可動通路3の前端側に固定される前部レール31は、前部ブロック22に沿ってスライドするため、前部ブロック22による可動通路3の支持位置は、可動通路3の伸長量が増えるに連れて可動通路3の後端側に移動する。
【0039】
即ち、可動通路3の伸長量が増えるに連れて、前部ブロック22による可動通路3の支持位置が後部ブロック33側に徐々に接近し、可動通路3が片持ち状態に近づいていく。これに対して本実施形態の可動式通路1は、片持ち状態に近づいた可動通路3を支えるための車輪34を備えている。
【0040】
車輪34は、左右方向(矢印L-R方向)に沿う軸回りに回転する車輪であり、前後方向に並ぶ複数(本実施形態では、3個)の車輪34が可動通路3の下端部に取り付けられる。なお、図示は省略するが、この複数の車輪34を1組とすると、可動通路3の左右の両端部に合計2組の車輪34が取り付けられている。
【0041】
短縮位置では固定通路2の床25から車輪34が浮く一方(図2参照)、床25よりも前方側には、車輪34を支持するための支持台26が設けられる。支持台26は、短縮状態(図2の状態)の可動通路3の最も前方側に設けられた車輪34よりも前方側であって、短縮状態の可動通路3の前端よりも前方側に配置され、支持台26の上面は、固定通路2の床25よりも高くなっている。また、支持台26の上面は、左右一対の後部レール24(前部レール31)の各々の軸線を含む平面と平行な水平面である。よって、短縮位置から可動通路3が所定量伸長した時に車輪34が支持台26の上面を転動するように構成されている(図3参照)。
【0042】
これにより、可動通路3が短縮位置から所定量伸長して片持ち状態に近づいた時に、支持台26上で転動する車輪34によって可動通路3を支持できる。即ち、片持ち状態に近づいた可動通路3が自重によって前傾することを抑制できるので、各レール及びブロックの係合部分に加わる負荷を低減できる。よって、各レール及びブロックのスライド時の抵抗(以下「摺動抵抗」という)が増大することを抑制できるので、可動通路3の伸縮をスムーズにできる。
【0043】
また、上記の通り、支持台26の上面(車輪34を支持する支持面)は、左右一対の後部レール24の各々に沿う平面と平行である。よって、支持台26上を車輪34が転動する際には、後部レール24及び後部ブロック33に摺動抵抗が生じない程度に可動通路3を支えることができる。
【0044】
このように、可動通路3が片持ち状態に近づくことに起因する各レール及びブロックの摺動抵抗の増大は、車輪34によって抑制できるものの、可動式通路1の各部品の寸法誤差や、可動通路3の組み付け誤差等によるガタつきによって上記の摺動抵抗が増大することもある。また、この組み付け誤差等によるガタつきは、支持台26上における車輪34の転がり抵抗を増大させることもあり、これらの可動通路3の支持点における抵抗の増大は、いずれも可動通路3のスムーズな伸縮を阻害する。つまり、可動通路3の支持点が多ければ多いほど、上記の抵抗の増大が積み重なった時に可動通路3がスムーズに伸縮し難くなる。
【0045】
これに対して本実施形態では、車輪34による可動通路3の支持は、短縮位置から伸長位置に向けた可動通路3の変位途中で開始される。これにより、短縮位置付近では、車輪34に支持されていない状態で可動通路3を伸縮させることができる。即ち、各レール及びブロックと車輪34との3点で可動通路3を支持する場合に比べ、短縮位置付近における可動通路3の支持点を低減できる。可動通路3の支持点を低減させることにより、上記の抵抗の増大が積み重なることを抑制できるので、可動通路3の伸縮をスムーズにできる。
【0046】
また、車輪34は、前部ブロック22よりも後方側、且つ後部ブロック33よりも前方側で可動通路3の支持を開始する。これにより、車輪34による可動通路3の支持の開始時には、前部ブロック22、後部ブロック33、及び車輪34により、前後方向で離隔する3点で可動通路3を支持できる。よって、車輪34による支持の開始時に可動通路3をスムーズに伸長させることができる。
【0047】
ここで、本実施形態では、可動通路3が短縮位置から所定量伸長した時に、車輪34が支持台26の上面に接するように(ゼロタッチに)構成されているものの、上記の組み付け誤差等によるガタつきが生じている場合、車輪34が支持台26を乗り上げるようにして転動することがある。この車輪34の乗り上げによって可動通路3が上方に持ち上がると、前部ブロック22及び前部レール31の係合部分に負荷が生じ易い。これは、後部ブロック33よりも前部ブロック22側に偏った(前部ブロック22に近い)位置で車輪34が可動通路3の支持を開始するためである。
【0048】
これに対して本実施形態では、上記のような車輪34の乗り上げ時に、前部ブロック22による可動通路3の支持状態を解除できるように構成されている。この構成について、図4を参照して説明する。
【0049】
図4(a)は、図3のIVa部分を拡大した可動式通路1の部分拡大断面図であり、図4(b)は、図4(a)の状態から可動通路3が持ち上がった状態を示す可動式通路1の部分拡大断面図である。
【0050】
図4(a)に示すように、可動式通路1には、前部ブロック22を吊り下げ状態で支持する支持部材4が設けられる。支持部材4は、固定通路2の突出部21の下面に固定されるブラケット40と、そのブラケット40の内部の空洞40a内に挿入される略直方体状の固定部材41と、を備える。
【0051】
ブラケット40の空洞40aの内面のうち、左右方向(矢印L-R方向)を向く内面40bには軸40cが固定される。軸40cは、左右方向に延びる円柱状に形成され、この軸40cを挿入するための長穴41aが固定部材41に形成される。
【0052】
固定部材41の長穴41aは、上下に延びる長円形の穴であり、長穴41aの幅寸法(矢印F-B方向における寸法)は軸40cの外径と同一または僅かに大きく形成される一方、長穴41aの長手方向寸法(矢印U-D方向における寸法)は軸40cの外径よりも大きく形成される。よって、軸40cに沿う長穴41aのスライドにより、ブラケット40の空洞40a内で固定部材41が上下に変位可能に構成される。
【0053】
なお、空洞40aの内面40bと、その内面40bに左右方向(矢印L-R方向)で対面する空洞40aの内面(図4の紙面垂直方向手前側に位置する図示しない内面)とに固定部材41が挟まれている。よって、軸40cの軸方向(矢印L-R方向)においては、固定部材41の変位が不能になっている。
【0054】
この固定部材41に前部ブロック22が固定されるので、長穴41aに挿入された軸40cに固定部材41が吊り下げられる(前部ブロック22の下方への変位が規制される)ことにより、前部ブロック22によって可動通路3を支持する支持状態を形成できる。一方、その支持状態から軸40cに沿って固定部材41が上方に変位する(前部ブロック22の上方への変位が許容される)ことにより、前部ブロック22による可動通路3の支持を解除する非支持状態を形成できる。
【0055】
よって、例えば上記の組み付け誤差等のガタつきによって車輪34が支持台26の上面を乗り上げ、可動通路3が上方に持ち上げられた場合には、前部ブロック22による可動通路3の支持状態を解除し、後部ブロック33及び車輪34(共に図3参照)のみによって可動通路3を支持できる。これにより、車輪34が支持台26を乗り上げた時に、前部ブロック22及び前部レール31の係合部分に加わる負荷を低減できるので、可動通路3の伸縮をスムーズにできる。
【0056】
また、左右方向(可動通路3の伸縮方向と直交する水平方向)に延びる円柱状の軸40cが固定部材41の長円形の長穴41aに挿入されるので、軸40c回りの固定部材41の回転を許容できる。なお、この固定部材41の回転を許容するために、ブラケット40の内面40d,40e(空洞40a内の前後の両面)と固定部材41との間には隙間が形成されている。これにより、前後方向の負荷が固定部材41に作用した場合に、固定部材41を軸40c回りに回転させることができる。よって、軸40cと固定部材41の長穴41aとの嵌合部分に加わる負荷を低減できる。
【0057】
このように、前部ブロック22が固定される固定部材41は、軸40cに沿う上下方向の変位と、軸40c回りの回転とが可能になっている。よって、例えば前部ブロック22(固定部材41)が固定通路2に剛結されている場合に比べ、前部ブロック22(固定部材41)の取り付け部分に加わる負荷を低減できると共に、可動通路3の伸縮をスムーズにできる。
【0058】
次いで、図5を参照して、可動通路3が伸長位置まで伸長した状態について説明する。図5は、図3の状態から可動通路3が伸長位置まで伸長した状態を示す可動式通路1の断面図である。
【0059】
図5に示すように、可動通路3が伸長位置まで伸長した状態では、固定通路2の前部ブロック22が可動通路3の前後方向略中央部分で前部レール31に係合するため、可動通路3が片持ちに近い状態になる。しかし、伸長位置においても、可動通路3が車輪34を介して支持台26に支持されるので、可動通路3の前傾を車輪34で支えることができる。よって、各レール及びブロックの係合部分に加わる負荷を低減できるので、伸長位置付近における可動通路3のスライドをスムーズにできる。
【0060】
伸長位置では、前後に並ぶ複数の車輪34のうち、最前に位置する車輪34が前部ブロック22及び支持台26よりも前方側に変位する。即ち、最前の車輪34が支持台26から前方側にはみ出るように構成されているが、例えば、支持台26を前方側に延長し、最前の車輪34によって可動通路3を支持する構成でも良い。この構成であれば、前部ブロック22よりも前方側に位置する車輪34によって伸長状態の可動通路3を支持できるので、片持ち状態に近づいた可動通路3の前傾を車輪34によって効果的に支えることができる。
【0061】
ホーム100と車両(図示せず)との間の乗客の乗降は、可動通路3が伸長位置まで伸長した状態(図5の状態)で行われるが、乗客の通路の壁面となる側壁23には後部レール24が露出する。これに対して本実施形態では、後部レール24を可動通路3の上下方向中央よりも上方側に配置している。これにより、可動通路3の伸長時に乗降客の通路に後部レール24が露出しても、その後部レール24に乗降客が触れることを抑制できる。
【0062】
伸長位置(図5の状態)から可動通路3が固定通路2側に短縮する際には、以上に説明した可動通路3の伸長動作とは逆の動作になる。よって、伸長位置から短縮する際にも、支持台26上で転動する車輪34によって可動通路3が支持されるので、可動通路3をスムーズに短縮させることができる。
【0063】
また、伸長位置から短縮位置に向けた可動通路3の変位途中に車輪34による可動通路3の支持が解除されるので、短縮位置付近における可動通路3の支持点を低減できる。よって、可動通路3をスムーズに短縮させることができる。
【0064】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0065】
上記実施形態では、可動通路3(筒部30)の後端部に張出部32が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、張出部32を省略し、筒部30の側面に後部ブロック33を固定する構成でも良い。この構成の場合には、後部ブロック33に後部レール24が係合する位置まで一対の側壁23を可動通路3側に近付ければ良い。
【0066】
なお、張出部32を省略する(筒部30の側面に後部ブロック33を固定する)構成の場合、後部レール24が前部レール31と同一平面上に配置されことになるため、上記実施形態のように後部レール24及び前部レール31を上下に離隔させることが好ましい。これにより、後部レール24及び前部レール31が干渉することを抑制しつつ、側面視において後部レール24の前端側の一部と前部レール31の後端側の一部とを上下に並べる(オーバーラップさせる)ことができる。よって、後部レール24及び前部レール31が同一平面上に配置される場合であっても、それらの各レール24,31の前後方向における配置スペースを低減できる。
【0067】
上記実施形態では、車輪34による可動通路3の支持が、短縮位置から伸長位置に向けた可動通路3の変位途中で開始される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、短縮位置から伸長位置にかけて(可動通路3の全ての変位領域で)車輪34によって可動通路3が支持される構成でも良い。このような構成においても、上記実施形態のように前部ブロック22の上方への変位を許容することが好ましい。これにより、車輪34の転動時に可動通路3が上下に変位するようなガタつきが生じた場合に、前部ブロック22による可動通路3の支持状態を解除できるので、前部ブロック22及び前部レール31の係合部分に加わる負荷を低減できる。
【0068】
なお、車輪34を省略する構成でも良いが、可動通路3の伸長に伴う荷重の変化を好適に補助するためには、上記実施形態のように車輪34を設けることが好ましい。
【0069】
また、上記実施形態では説明を省略したが、可動通路3の「変位途中」とは、短縮位置から伸長位置までを可動通路3の変位領域の全長とした場合に、該全長の1/5以上短縮位置から伸長した位置、且つ、該全長の1/5以上伸長位置から短縮した位置である。
【0070】
上記実施形態では、伸長時に片持ち状態に近づいた可動通路3を車輪34で支持する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、伸長位置の可動通路3の下面側で昇降可能な支持台(例えば、シリンダ等によって上下動するもの)を設け、可動通路3が伸長位置に達した時に支持台を上昇させて可動通路3を支える構成でも良い。
【0071】
このような構成においても、上記実施形態のように前部ブロック22の上方への変位を許容することが好ましい。これにより、支持台によって可動通路3が持ち上げられた(可動通路3が上下に変位するようなガタつきが生じた)場合に、前部ブロック22による可動通路3の支持状態を解除できるので、前部ブロック22及び前部レール31の係合部分に加わる負荷を低減できる。
【0072】
上記実施形態では、軸40cに沿って固定部材41(前部ブロック22)が上下に変位する構成や、軸40c回りに固定部材41(前部ブロック22)が回転する構成を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、固定部材41が固定通路2に剛結される(前部ブロック22が固定通路2に変位不能に固定される)構成でも良い。
【0073】
また、上記実施形態では、軸40cに沿う長穴41aのスライドによって固定部材41が上下に変位する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、上下に延びる軸を固定通路2(突出部21)の下面に固定する一方、その軸を挿入可能な(上下に延びる)貫通孔を固定部材41に形成することにより、軸に沿って固定部材41(前部ブロック22)を上下方向のみに変位させる(固定部材41の回転が不能である)構成でも良い。この構成の場合には、固定部材41の下方への変位を規制するストッパを設ける(例えば、軸の下端に固定部材41を引っ掛ける部位を設ける)ことにより、そのストッパに固定部材41が引っ掛かって可動通路3を支持する支持状態と、ストッパから固定部材41が上昇して可動通路3の支持を解除する非支持状態とを形成できる。
【0074】
また、軸に沿って固定部材41を上下動させるのではなく、例えば上記のLMガイド(登録商標)のようなレール及びブロックを用いて固定部材41(前部ブロック22)を上下動させる構成でも良い。このようなレール及びブロックを用いる場合においても、固定部材41(前部ブロック22)の下方への変位を規制するストッパを設けることにより、上記の可動通路3の支持状態と非支持状態とを形成できる。
【0075】
即ち、前部ブロック22の下方への変位を規制して可動通路3を支持する支持状態と、その支持状態から前部ブロック22の上方への変位を許容して可動通路3の支持を解除する非支持状態とを形成できる構成であれば、上記の形態に限定されるものではない。
【0076】
上記実施形態では、前部ブロック22及び前部レール31を1組の前部ガイドレールとした場合に、可動通路3の左右の両面に一対の前部ガイドレールが設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、可動通路3の上面に1又は複数組の前部ガイドレールを設けても良いし、可動通路3の上面や左右の両面に3組以上の前部ガイドレールを設けても良い。また、後部レール24及び後部ブロック33を1組の後部ガイドレールとした場合も同様に、可動通路3の上面に1又は複数組の後部ガイドレールを設けても良いし、可動通路3の上面や左右の両面に3組以上の後部ガイドレールを設けても良い。
【0077】
上記実施形態では、各レール及びブロックが可動通路3の上下方向中央よりも上方側に配置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、各レール及びブロックを可動通路3の上下方向中央よりも下方側に配置しても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 可動式通路
2 固定通路
22 前部ブロック(ブロック)
23 側壁
24 後部レール(レール)
3 可動通路
31 前部レール(レール)
33 後部ブロック(ブロック)
34 車輪
4 支持部材
40c 軸
41 固定部材
41a 長穴
100 ホーム

図1
図2
図3
図4
図5