(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015361
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ポータブルなアクティブ温度制御装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/06 20060101AFI20230124BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
H05B6/06 393
H05B6/10 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186185
(22)【出願日】2022-11-22
(62)【分割の表示】P 2021068158の分割
【原出願日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】32020005911.3
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HK
(71)【出願人】
【識別番号】521161048
【氏名又は名称】カイ ホン マク
【氏名又は名称原語表記】Kai Hong MAK
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】カイ ホン マク
(72)【発明者】
【氏名】マン ワー リウ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低消費電力で、環境に優しく、安全性が高く、断熱性が維持される、非AC駆動のアクティブ温度制御装置を提供する。
【解決手段】アクティブ温度制御装置は、絶縁ハウジング、真空断熱層、貯蔵容器、トップカバー、及び加熱モジュールを含んでいる。絶縁ハウジングには、メインコントロールユニットが設けられている。貯蔵容器は、絶縁ハウジング内に配置されている。加熱モジュールは、伝導コイル及び熱電対を含んでいる。伝導コイルは、メインコントロールユニットから高周波ACを受け取り、交流磁場を連続的に生成する。熱電対は、導電性コイル及びメインコントロールユニットに接続されており、メインコントロールユニットに温度をフィードバックするために使用される。メインコントロールユニットは、フィードバック温度と伝導コイルの直径とに基づいて動作電圧を調節し、必要とされる高周波ACを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインコントロールユニットを備えた絶縁ハウジングであって、前記メインコントロールユニットは高周波ACを供給する絶縁ハウジングと;
金属で構成され、前記断熱ハウジング内に配置された真空断熱層と;
前記絶縁ハウジング内に配置された貯蔵容器と;
前記絶縁ハウジングを覆うトップカバーと;
前記メインコントロールユニットに電気的に接続された加熱モジュールであって、前記加熱モジュールは、
前記メインコントロールユニットから前記高周波ACを受け取り、交流磁場を連続的に生成する伝導コイルと、
前記伝導コイル及び前記メインコントロールユニットに接続され、前記メインコントロールユニットに対して温度をフィードバックし、動作電圧を調節して、前記高周波ACを変更するために使用される熱電対と、
を備えた加熱モジュールと;
を具備し、
前記伝導コイルによって生成される前記交流磁場は、前記真空断熱層の金属が熱を生成し、前記貯蔵容器との熱交換を実行することを可能にする、
ポータブルなアクティブ温度制御装置。
【請求項2】
内部絶縁ハウジングを更に具備し、前記加熱モジュールは、前記内部絶縁ハウジングと前記真空断熱層との間に位置している、請求項1に記載のポータブルなアクティブ温度制御装置。
【請求項3】
前記絶縁ハウジング、前記メインコントロールユニット、前記真空断熱層、前記内部絶縁ハウジング、及び前記加熱モジュールは、閉鎖系の空間内に配置されている、請求項2に記載のポータブルなアクティブ温度制御装置。
【請求項4】
前記伝導コイルの形状設計は、2次元平面円形形状設計を含んでいる、請求項1に記載のポータブルなアクティブ温度制御装置。
【請求項5】
前記伝導コイルの形状設計は、3次元対称形状設計を含んでいる、請求項1に記載のポータブルなアクティブ温度制御装置。
【請求項6】
前記伝導コイルは、
本体部分と;
前記本体部分に接続され、前記本体部分上に立っている複数の突出部分であって、前記複数の突出部分は、前記ポータブルなアクティブ温度制御装置の中心軸に対して対称的に配置されている、複数の突出部分と;
を更に備えている、請求項5に記載のポータブルなアクティブ温度制御装置。
【請求項7】
前記本体部分の形状は、円形形状を含んでいる、請求項6に記載のポータブルなアクティブ温度制御装置。
【請求項8】
前記突出部分の形状は、菱形形状、円形形状、砂時計形状、又は四辺形形状を含んでいる、請求項6に記載のポータブルなアクティブ温度制御装置。
【請求項9】
前記メインコントロールユニットは、電力源に接続され、前記メインコントロールユニットは、高周波AC/DC変換回路を備え、前記高周波AC/DC変換回路は、前記電力源からのDCを前記高周波ACへと変換するために使用される、請求項1に記載のポータブルなアクティブ温度制御装置。
【請求項10】
前記電力源は、モバイル電源、USB電源、又は、前記ポータブルなアクティブ温度制御装置に埋め込まれたバッテリーを含んでいる、請求項9に記載のポータブルなアクティブ温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御装置、特には、アクティブな加熱又は断熱が可能で容易に携帯可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な種類の携帯型断熱容器が入手可能である。しかしながら、これらの断熱容器は、効率が不十分である。2021年1月14日に香港消費者委員会が発行したChoiceMagazineのレポート(https://echoice.consumer.org.hk/article/531-thermal-food-flasks)によると、温かい食品の安全な保管温度は、摂氏60度より高い必要がある。断熱容器が安全な貯蔵温度として60℃以上で長時間維持する必要がある場合、通常、外部交流(AC)電源が動力断熱のために必要である。このタイプの携帯型断熱容器は、電力を消費し、AC電源コンセントが利用可能な状況に使用が限定される。したがって、現在入手可能な断熱容器は、実用的には、容易に携帯可能ではない。
【発明の概要】
【0003】
このような欠点に対処するために、本発明の目的の1つは、低消費電力で、環境に優しく、安全性が高く、断熱性が維持される、非AC駆動のアクティブ温度制御装置を提供することである。
【0004】
本発明の一実施形態によると、ポータブルなアクティブ温度制御装置は、絶縁ハウジング、真空断熱層、貯蔵容器、トップカバー、及び加熱モジュールを含んでいる。絶縁ハウジングには、メインコントロールユニットが設けられている。メインコントロールユニットは、高周波ACを供給する。真空断熱層は、金属で構成され、断熱ハウジング内に配置されている。貯蔵容器は、絶縁ハウジング内に配置されている。トップカバーは、絶縁ハウジングを覆っている。加熱モジュールは、メインコントロールユニットに電気的に接続されている。加熱モジュールは、伝導コイル及び熱電対を含んでいる。伝導コイルは、メインコントロールユニットから高周波ACを受け取り、交流磁場を連続的に生成する。熱電対は、伝導コイル及び前記メインコントロールユニットに接続され、メインコントロールユニットに対して温度をフィードバックし、動作電圧を調節して、高周波ACを変更するために使用される。伝導コイルによって生成される交流磁場は、真空断熱層の金属が熱を発生し、貯蔵容器との熱交換を実行することを可能にする。
【0005】
本発明の一実施形態によると、ポータブルなアクティブ温度制御装置は、内部絶縁ハウジングを更に含み、加熱モジュールは、内部絶縁ハウジングと真空断熱層との間に位置している。
【0006】
本発明の一態様において、絶縁ハウジング、メインコントロールユニット、真空断熱層、内部絶縁ハウジング、及び加熱モジュールは、閉鎖系の空間内に配置されている。
【0007】
本発明の一実施形態によると、伝導コイルの形状設計は、2次元平面円形形状設計を含んでいる。
【0008】
本発明の一実施形態によると、伝導コイルの形状設計は、3次元対称形状設計を含んでいる。
【0009】
本発明の一実施形態によると、伝導コイルは、本体部分と複数の突出部分とを更に含み、これらの突出部分は、本体部分に接続され、本体部分上に立っており、これらの突出部分は、ポータブルなアクティブ温度制御装置の中心軸に対して対称的に配置されている。
【0010】
本発明の一実施形態によると、本体部分の形状は、円形形状を含んでいる。
【0011】
本発明の一実施形態によると、突出部分の形状は、菱形形状、円形形状、砂時計形状、又は四辺形形状を含んでいる。
【0012】
本発明の一実施形態によると、メインコントロールユニットは、電力源に接続され、メインコントロールユニットは、高周波AC/直流(DC)変換回路を備え、高周波AC/DC変換回路は、電力源からのDCを高周波ACへと変換するために使用される。
【0013】
本発明の一態様おいて、電力源は、モバイル電源、USB電源、又は、ポータブルなアクティブ温度制御装置に埋め込まれたバッテリーを含んでいる。
【0014】
上述したように、本発明の実施形態に係るポータブルなアクティブ温度制御装置では、真空断熱層内の金属と伝導コイルとの間に交流磁場を発生させて電磁誘導により熱を発生させ、金属と貯蔵容器とで熱交換を行って、貯蔵容器内の内容物の加熱又は断熱を実行する。熱電対は、温度をフィードバックして発熱量を調節し、操作上の安全性を改善する。加えて、伝導コイルの形状設計が3次元対称形状設計である場合、発熱領域の加熱均一性を効果的に向上させることができる。また、メインコントロールユニットには、DCを高周波ACに変換するための高周波AC/DC変換回路が設けられている。したがって、本発明の実施形態に係るポータブルなアクティブ温度制御装置は、ACを供給することができる状況での使用に限定される必要がなくなり、ユーザが種々の加熱又は持続的断熱の要求の状況に応じて装置を便利に運ぶことができるようになり、低消費電力で安全性の高いポータブルなアクティブ温度制御装置を実現することが可能となる。
【0015】
本発明に関連する発明の貢献について、ポータブル断熱容器は、先行技術の技術的手段において提案されているが、ポータブル断熱容器の冷却/加熱の構成要素/システムは、本発明の誘導加熱のために提供される特定の用途及び構成を有していない。例えば、本特許出願において提供される少なくとも幾つかの技術的特徴について:「メインコントロールユニットに電気的に接続された加熱モジュールであって、加熱モジュールは、メインコントロールユニットから高周波ACを受け取り、交流磁場を連続的に生成する伝導コイルと;伝導コイル及びメインコントロールユニットに接続され、メインコントロールユニットに対して温度をフィードバックし、動作電圧を調節して、高周波ACを変更するために使用される熱電対と;を備え、伝導コイルによって生成される交流磁場は、真空断熱層の金属が熱を発生し、貯蔵容器との熱交換を実行することを可能にする」において、技術的特徴によって達成される技術的効果は、「伝導コイルによって生成される交流磁場は、真空断熱層の金属が熱を発生し、貯蔵容器との熱交換を実行することを可能にする」ことである。しかしながら、本発明における誘導発熱の代わりに、従来技術の技術的手段では、加熱フィラメント、抵抗ヒータ、又は、1つ若しくは複数のペルチェ素子を含む熱電システムが通常使用される。構造的には、本特許出願では、内部絶縁ハウジング又は真空断熱層の全体に誘導加熱が実行されるが、従来技術では、冷却/加熱の構成要素/システム自体が加熱/冷却され、部品から熱エネルギーが放射又は吸収される。したがって、従来の技術的手段と比較して、本特許出願によれば、ポータブルなアクティブ温度制御装置の低消費電力化及び安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の態様は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を行うことにより、より理解しやすくなるであろう。なお、様々な特徴は、縮尺通りに描かれていないことがある。実際、様々な特徴のサイズは、説明を容易にするために任意に増減されている可能性がある。
【0017】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、以下で更に詳細に説明される。
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1によるポータブルなアクティブ温度制御装置の分解図である。
【0019】
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1によるポータブルなアクティブ温度制御装置の部分概略構造図である。
【0020】
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1に係る包囲方式で製造される二次元伝導コイルを示す図である。
【0021】
【
図4】
図4は、比較実施形態によるポータブルなアクティブ温度制御装置の加熱条件下での温度変化グラフである。
【0022】
【
図5】
図5は、
図4に示す比較実施形態と同じ加熱条件下における本発明の実施形態1の温度変化グラフである。
【0023】
【
図6】
図6は、本発明の実施形態1における、赤外線温度計を用いて測定した真空断熱層の温度分布図である。
【0024】
【
図7】
図7は、本発明の実施形態2によるポータブルなアクティブ温度制御装置の分解図である。
【0025】
【
図8】
図8は、本発明の実施形態2による3次元伝導コイルの異なる実施態様の概略展開図である。
【0026】
【
図9】
図9は、本発明の実施形態2における、赤外線温度計を用いて測定した真空断熱層の温度分布図である。
【0027】
【
図10】
図10は、従来の抵抗加熱法を用いて加熱した後に、赤外線温度計を用いて測定した真空断熱層の温度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本発明によって提供される多くの応用可能な概念は、複数の特定の環境において実施され得ることを理解されたい。説明された特定の実施形態は、例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0029】
空間記述において、「上(up)」、「下(down)」、「の上(above)」、「左側(left side)」、「右側(right side)」、「の下(below)」、「頂(top)」、「底(bottom)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「側(side)」、「比較的高い(relatively high)」、「比較的低い(relatively low)」、「上方(upper)」、「上に(on)」、「下に(under)」などの用語は、構成要素の平面、又は複数の構成要素によって形成されるグループによって定義される。構成要素の向きは、構成要素に対応する図に表示される場合がある。本明細書で使用される空間的記述は、単に記述のために使用され、実際には、記述された構造の発現は、任意の方向又は方法で空間に配置され得ることを理解されたい。
【0030】
以下の説明では、幾つかの好ましい例を使用して、ポータブルなアクティブ温度制御装置を説明する。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、追加及び/又は置換を含む修正を行うことができることは、当業者にとって理解可能である。明確化ために、特定の詳細は省略され得る。しかしながら、本発明の実施形態は、当業者が過度の実験なしに本発明の実施形態の教示を実施することを可能にするものである。
【0031】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態1において、ポータブルなアクティブ温度制御装置100は、絶縁ハウジング10と、真空断熱層20と、内部絶縁ハウジング30と、貯蔵容器40と、トップカバー50と、加熱モジュール60とを含んでいる。
【0032】
絶縁ハウジング10には、メインコントロールユニット12が設けられている。メインコントロールユニット12は、電源(図示せず)に接続されている。電源は、例えば、DCを供給するために使用される。メインコントロールユニット12は、高周波AC/DC変換回路を備えており、電源からDCを受け取るのに適している。高周波AC/DC変換回路は、DCを高周波ACに変換する。幾つかの実施形態では、電源は、例えば、外部電源又は内部電源であり得る。外部電源は、例えば、外部モバイル電源又はUSB電源であり、内部電源は、例えば、ポータブルなアクティブ温度制御装置100に埋め込まれた電池である。しかしながら、本発明は、それに限定されない。絶縁ハウジング10の材料は、例えば、絶縁材料である。
【0033】
真空断熱層20は、金属で構成され、断熱ハウジング10内に配置されている。
【0034】
内部絶縁ハウジング30は、真空断熱層20内に配置されている。内部絶縁ハウジング30の材料は、例えば、絶縁材料である。内部絶縁ハウジング30は、主に加熱モジュール60の伝導コイルを覆っており、主要な加熱又は断熱構造の1つではない。
【0035】
貯蔵容器40は、内部絶縁ハウジング30内に配置され、貯蔵容器40は、内容物(図示せず)を収容するために使用される。内容物は、液体、固形食品、又は収容される他の異なる物質であり得る。本発明は、それに限定されない。
【0036】
トップカバー50は、絶縁ハウジング10を覆っており、貯蔵容器40内の内容物を外部から隔離するために使用される。
【0037】
加熱モジュール60は、内部断熱ハウジング30と真空断熱層20との間に配置されており(
図1参照)、メインコントロールユニット12に電気的に接続されている(
図2参照)。加熱モジュール60は、伝導コイル62及び熱電対64を含んでいる。
図1及び
図3を参照して、本発明の実施形態1では、伝導コイル62の形状設計は、2次元平面円形形状設計を含んでいる。具体的には、伝導コイル62は、同心包囲様式の導電性ワイヤによって形成される。
図2及び
図3に示すように、伝導コイル62の直径、電線径、及び巻数を算出した後 (メインコントロールユニット12に設定) 、伝導コイル62は、メインコントロールユニット12から高周波ACを受け取って、定常的に変化する交流磁場を連続的に発生させる。交流磁場は、真空断熱層20の金属が熱を発生することを可能にする。
【0038】
別の態様では、熱電対64は、伝導コイル62及びメインコントロールユニット12に接続され、メインコントロールユニット12に対して温度をフィードバックし、動作電圧を調節して、伝導コイルにおける高周波ACを変更して、温度制御を行うために使用される。幾つかの実施形態では、メインコントロールユニット12の動作電圧は、3ボルトから12ボルトの範囲内にある。高周波ACは、1アンペアから3.5アンペアの範囲内にある。メインコントロールユニット12全体の出力の消費電力は、30ワット未満の範囲内で制御することができる。
【0039】
伝導コイル62は、真空断熱層20、熱電対64、及び内部断熱ハウジング30の間に配置されているため、電磁誘導加熱の原理によって、真空断熱層20の金属は、伝導コイル62によって生成される交流磁場と相互作用して、熱エネルギーを発生することができる。この熱エネルギーにより、貯蔵容器40との熱交換を効果的に行うことができ、貯蔵容器40内の内容物の加熱や断熱性の向上を図ることができるため、能動的な放熱を用いることなく、低消費電力、低電圧、低電流、高安全性の温度制御を実現することができる。
【0040】
更には、絶縁ハウジング10、メインコントロールユニット12、真空断熱層20、内部絶縁ハウジング30、及び加熱モジュール60は、閉鎖系の空間内に配置されて、防水機能を実現することもできる。
【0041】
本発明の実施形態1の技術的効果をより明確に説明するために、比較実施形態がここで提供される。比較例のポータブルなアクティブ温度制御装置は、
図1のポータブルなアクティブ温度制御装置100とほぼ同様であるが、
図1に示す真空断熱層20を備えていない点が大きな相違点である。
【0042】
図4に示すように、比較例が8ワットの電源環境である場合、熱平衡温度(例えば約50度)に達するまでには、通常3時間を要する。
図5の実施形態では、8ワットの電源を備えた同じ環境において、
図1に示す実施形態では、熱平衡温度(例えば約90度)に達するまでには、通常1~2時間を要する。これにより、同じ加熱条件下において、比較実施形態の加熱速度は高くなく、高温にも到達できないことが分かる。
図1の実施形態では、熱損失の程度が比較的小さいため、加熱速度が速く、比較的高温の環境を維持することができる。
【0043】
図6は、本発明の実施形態1における、赤外線温度計を用いて測定した真空断熱層の温度分布図である。
図6に示すように、真空断熱層の下部とやや上部との間の温度差は比較的大きく、加熱があまり均一ではないことが分かる。
【0044】
図7及び
図8を参照して、
図7は、本発明の実施形態2によるポータブルなアクティブ温度制御装置の分解図である。
図8は、本発明の実施形態2による3次元伝導コイルの異なる実施態様の概略展開図である。
【0045】
図7に示されるように、本発明の実施形態2において、ポータブルなアクティブ温度制御装置100’は、
図1に示されるポータブルなアクティブ温度制御装置100とほぼ同様である。主な違いは、ポータブルなアクティブ温度制御装置100’が、
図8(a)の設計において、絶縁ハウジング10、真空断熱層20、貯蔵容器40、トップカバー50、加熱モジュール60’、及び伝導コイル62’を含んでいることである。伝導コイル62’は、
図1における内部絶縁ハウジング30及び伝導コイル62(60)の代わりに使用される。加えて、伝導コイル62’の外観設計は、
図1及び
図3の伝導コイル62の外観設計とは異なっている。
【0046】
具体的には、伝導コイル62’の形状設計は、3次元対称形状設計を含んでいる。
図7を参照すると、伝導コイル62’は、本体部分62a’及び複数の突出部分62b’を含んでいる。これらの突出部分62b’は接続されて、本体部分62a’の上に立っている(
図7参照)。これらの突出部分62b’は、ポータブルなアクティブ温度制御装置100’の中心軸Iに対して対称的に配置されている。本体部分62a’は、真空断熱層20の底に配置されており、2次元平面円形形状設計である。これらの突出部分62b’は、真空断熱層20の内面に沿って配置されている。この構成では、真空断熱層20上において、電磁誘導加熱領域がより広く分布している。
【0047】
更に、
図7及び
図8(a)に示す実施態様において、突出部分62b’の形状は、菱形形状である。別の実施形態では、
図7の伝導コイル62’の突出部分62b’の形状は、
図8(b)に示されている円形形状である。一実施形態では、
図7の伝導コイル62’の突出部分62b’の形状は、
図8(c)に示されている砂時計形状である。更に別の実施形態では、
図7の伝導コイル62’の突出部分62b’の形状は、
図8(d)に示されている四辺形形状であり、例えば、台形形状である。本発明は、それに限定されない。図示されていない他の実施態様では、突出部分62b’は、他の異なる形状設計であり得る。本発明は、それに限定されない。3次元対称形状設計を有する伝導コイル62’は、真空断熱層20の形状に限定されない。異なる形状の上記突出部分62b’を使用して、突出部分62b’の周囲の発熱範囲を制御し、伝導コイル62’が真空断熱層20の異なる領域に温度分布を更に実行できるようにして、加熱効果を更に最適化することができる。本発明は、それに限定されない。
【0048】
図9は、本発明の実施形態2における、真空断熱層の温度分布図である。8ワットの電源を有する環境において、赤外線温度計を使用して、
図7の真空断熱層20内の金属の異なる位置の温度を検出した。
図9に示すように、底層、中層、及び高層の間の温度差は摂氏12度以内である。
図6の本発明の実施形態1の真空断熱層20において、底層、中層、及び高層の間の温度差は、摂氏約20度である。ポータブルなアクティブ温度制御装置100の伝導コイル62’は、3次元対称形状設計を採用しているため、真空断熱層20の金属に対して伝導コイル62’によって生成される熱収支が効果的に改善され、底層、中層、及び高層において、ほぼ一定の温度を達成することができる。
【0049】
加えて、伝導コイル62’は、
図3に示される2次元平面円形形状設計から
図7に示されるような3次元対称設計に変更されている。そのようなデザインは、これまで報告されていない。なお、伝導コイル62が2次元平面円形設計から3次元円形設計に変更される場合、必要な電力消費は非常に高く、12ワットの範囲を超える可能性があることに留意されたい。別の側面において、
図3に示すような設計が3次元円形設計に変更されると、
図8に示すような設計と比較して、伝導ワイヤ材料の消費は、30%を超えて増加する可能性がある。更に、
図8(a)及び
図7に示す設計において、伝導ワイヤ材料は、真空断熱層20の金属の底部及びその付近に巻かれる入口から始まり、(
図7の点線で示すように)同じ平面位置から離れてもよく、配線を隠すスペースを減らし、メインコントロールユニット12との接続を容易にする。
【0050】
図10は、本発明の電磁誘導加熱が従来の抵抗加熱方式に比べて優れていることを示すために、従来の抵抗加熱方式を用いた後に赤外線温度計を用いて測定した真空断熱層の温度分布図である。測定後、
図10は、真空断熱層20の金属によって発生する熱が均一ではなく、真空断熱層20の金属の温度差が30℃を超えることを示している。言い換えれば、真空断熱層は、異なる位置で非常に不均一な加熱温度を有し、必要な電力消費も比較的高い。
図9において、
図10の抵抗加熱法と比較して、
図2の実施形態では、真空断熱層は均一に加熱され、比較的低消費電力である。
【0051】
要約すると、本発明の実施形態では、ポータブルなアクティブ温度制御装置は、伝導コイルに印加される高周波ACを供給して、伝導コイルが交流磁場を生成できるようにし、交流磁場は、更に、真空断熱層の金属と相互作用して熱エネルギーを生成し、熱エネルギーの熱交換は、貯蔵容器を用いて効果的に実施され、貯蔵容器内の内容物の加熱又は断熱を実行することができる。更に、熱電対が温度をフィードバックして、メインコントロールユニットが電流の大きさを調整し、発熱電力を更に調節することを可能にしている。本発明の実施形態では、3次元対称伝導コイル設計が更に提案され、発熱の均一性を更に最適化している。また、メインコントロールユニットには高周波AC/DC変換回路を搭載しているため、DCを高周波ACに変換することができる。したがって、本発明は、ACを供給することができる状況での使用に限定される必要がなくなり、ユーザが種々の加熱又は持続的断熱の要求の状況に応じて装置を便利に運ぶことができるようになり、低消費電力で安全性の高いポータブルなアクティブ温度制御装置を実現することが可能となる。
【0052】
上で選択され説明された実施形態は、本発明の実施形態の原理及び実際の適用を明確に説明するために使用されるものである。当業者であれば、本発明の実施形態の様々な実施形態及び特定の目的に適した様々な修正を理解することができる。
【0053】
上述した本発明の実施形態は、本発明の原理及び概念を説明するためのものであり、本発明を網羅的に説明したり、本発明をここに記載された詳細に限定したりすることを意図するものではない。当業者は、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、均等物による種々の修正及び置換が可能であることを理解すべきである。添付の図面は、必ずしも原寸に比例して描かれているわけではない。製造プロセス及び公差の要因により、本発明の実施形態で提示されるプロセスと実際の装置との間には違いがあり得る。本発明の実施形態の他の実行については、ここでは詳細に説明されていないこともある。本明細書の記載及び添付の図面は、限定的なものではなく、記述的なものと見なす必要がある。特定の状況、材料、物質の組成、方法、又はプロセスに関して、本発明の目的、精神、及び範囲に適合させるために変更を加えることができる。これらの変更はすべて、本明細書の添付の特許請求の範囲に含まれる。本明細書に開示される方法は、特定の操作を特定の順序で実行することによって説明されている。しかしながら、これらの操作は、同等の方法を形成するために組み合わされ、細分され、又は再配置され得ることを理解されるべきであり、これは、本発明の教示から逸脱しない。したがって、特に明記されていない限り、これらの操作の順序及びグループは制限されない。