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特開2023-153622ヒータへの樹脂侵入阻害構造、射出装置、および射出成形機
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  • 特開-ヒータへの樹脂侵入阻害構造、射出装置、および射出成形機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153622
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ヒータへの樹脂侵入阻害構造、射出装置、および射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062999
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】下赤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 正彦
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM09
4F206AM19
4F206AP14
4F206AP18
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM01
4F206JP12
4F206JP14
4F206JP30
4F206JQ55
4F206JQ63
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】シャットオフノズルにおいてヒータへの樹脂の侵入を阻害する構造を提供する。
【解決手段】シャットオフノズル(5)は、射出流路(33)が形成されているノズル本体(25)と、射出流路(33)を開閉するシャットオフ弁(26)とを備えている。ノズル本体(25)には、シャットオフ弁を駆動する摺動箇所があり摺動露出部(39)が形成されている。ヒータへの樹脂侵入阻害構造(6)を摺動露出部(39)の近傍に設け、摺動露出部(39)から漏れる樹脂がシャットオフノズル(5)に設けられているヒータ(38)へ侵入するのを阻害するとして構成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル本体と、前記射出流路を開閉するシャットオフ弁とを備えたシャットオフノズルにおいて、
前記シャットオフ弁を駆動する駆動部材と前記ノズル本体との摺動箇所のうち前記ノズル本体の外周面に露出している摺動露出部の近傍に設けられ、前記摺動露出部から漏れる樹脂が前記シャットオフノズルに設けられているヒータへ侵入するのを阻害する、ヒータへの樹脂侵入阻害構造。
【請求項2】
前記シャットオフ弁はニードル弁である、請求項1に記載のヒータへの樹脂侵入阻害構造。
【請求項3】
前記ニードル弁は前記ノズル本体の外周面から前記射出流路に達するように開けられているニードル孔に摺動自在に設けられ、前記駆動部材は前記ニードル弁であり、前記摺動露出部は前記ニードル孔の開口部分である、請求項2に記載のヒータへの樹脂侵入阻害構造。
【請求項4】
前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造は、前記摺動露出部から漏れた樹脂を堰き止める樹脂流出防止壁を備えている、請求項1または2に記載のヒータへの樹脂侵入阻害構造。
【請求項5】
前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造は、前記摺動露出部を覆う摺動露出部カバーからなり、前記摺動露出部から漏れた樹脂を前記摺動露出部カバー内に留めるようになっている、請求項1または2に記載のヒータへの樹脂侵入阻害構造。
【請求項6】
前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造は、前記ヒータを覆うヒータカバーからなる、請求項1または2に記載のヒータへの樹脂侵入阻害構造。
【請求項7】
前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造は、前記摺動露出部から漏れた樹脂の重量を検出する検出機構を備えている、請求項1または2に記載のヒータへの樹脂侵入阻害構造。
【請求項8】
制御装置と、
加熱シリンダと、
前記加熱シリンダに入れられたスクリュと、
前記加熱シリンダに設けられているシャットオフノズルと、
前記シャットオフノズルに設けられているヒータと、
前記シャットオフノズルに設けられているヒータへの樹脂侵入阻害構造と、を備え、
前記シャットオフノズルは、樹脂を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル本体と、前記射出流路を開閉するシャットオフ弁と、を備え、
前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造は、前記シャットオフ弁を駆動する駆動部材と前記ノズル本体との摺動箇所のうち前記ノズル本体の外周面に露出している摺動露出部の近傍に設けられ、前記摺動露出部から漏れる樹脂が前記ヒータへ侵入するのを阻害するようになっている、射出装置。
【請求項9】
前記シャットオフ弁はニードル弁である、請求項8に記載の射出装置。
【請求項10】
前記ニードル弁は前記ノズル本体の外周面から前記射出流路に達するように開けられているニードル孔に摺動自在に設けられ、前記駆動部材は前記ニードル弁であり、前記摺動露出部は前記ニードル孔の開口部分である、請求項9に記載の射出装置。
【請求項11】
前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造は、前記摺動露出部から漏れた樹脂を堰き止める樹脂流出防止壁を備えている、請求項8または9に記載の射出装置。
【請求項12】
前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造は、前記摺動露出部を覆う摺動露出部カバーからなり、前記摺動露出部から漏れた樹脂を前記摺動露出部カバー内に留めるようになっている、請求項8または9に記載の射出装置。
【請求項13】
前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造は、前記ヒータを覆うヒータカバーからなる、請求項8または9に記載の射出装置。
【請求項14】
前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造は、前記摺動露出部から漏れた樹脂の重量を検出する検出機構を備えている、請求項8または9に記載の射出装置。
【請求項15】
前記射出装置は、前記シャットオフノズル近傍にカメラを備え、前記制御装置は前記カメラの画像から前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造に溜まった樹脂の量を監視するようになっている、請求項8または9に記載の射出装置。
【請求項16】
前記制御装置は、前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造に溜まった樹脂の量が許容量を超えたと判断したら清掃すべき旨の警報を出力する、請求項15に記載の射出装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記射出装置において実施されるショット数の累計である累計ショット数を得るようになっており、前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造に溜まった樹脂の量が許容量を超えたとき、前記累計ショット数が許容ショット数を超えていたら前記シャットオフ弁の交換を促す警報を出力する、請求項15または16に記載の射出装置。
【請求項18】
樹脂を射出する射出装置と、
金型を型締めする型締装置と、
制御装置と、を備え、
前記射出装置は加熱シリンダと、
前記加熱シリンダに設けられているシャットオフノズルと、
前記加熱シリンダに入れられたスクリュと、
前記シャットオフノズルに設けられているヒータと、
前記シャットオフノズルに設けられているヒータへの樹脂侵入阻害構造と、を備え、
前記シャットオフノズルは、樹脂を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル本体と、前記射出流路を開閉するシャットオフ弁と、を備え、
前記ヒータへの樹脂侵入阻害構造は、前記シャットオフ弁を駆動する駆動部材と前記ノズル本体との摺動箇所のうち前記ノズル本体の外周面に露出している摺動露出部の近傍に設けられ、前記摺動露出部から漏れる樹脂が前記ヒータへ侵入するのを阻害するようになっている、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャットオフノズルにおいてヒータに樹脂が侵入するのを防止する構造、およびその構造を備えた射出装置、ならびに射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の射出装置に設けられるシャットオフノズルは、射出ノズルの樹脂が流れる射出流路を開閉していわゆるハナタレを防止することができるようになっている。シャットオフノズルは色々なタイプがあり、例えば特許文献1に記載されているようなタイプがある。このタイプのシャットオフノズルは、ノズル本体と、このノズル本体に対して斜めに設けられたニードル弁とからなる。ノズル本体には、その外周面からノズル本体内の射出流路に達する斜めの孔、つまりニードル孔が開けられている。このニードル孔にニードル弁が進退自在に挿入されている。ニードル弁を前進させると射出流路が閉鎖され、後退させると射出流路が開くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-274125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニードル孔に対してニードル弁は摺動するようになっているので、この摺動箇所からの樹脂漏れがわずかに生じることがある。摺動箇所から漏れる樹脂の量はわずかであるが、長期間運転すると漏れの量は大きくなる。漏れた樹脂がノズル本体に設けられているヒータに流れ込むことがある。ノズル本体は型盤に挿入された状態で使用されるので、漏れ出た樹脂がヒータに達しているか否かを外部から視認できない。樹脂がヒータに達すると、ヒータの故障の原因になるおそれや、ヒータを取り外せなくなるおそれがある。
【0005】
本開示において、シャットオフノズルにおいてヒータへの樹脂の侵入を阻害する構造を提供する。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
シャットオフノズルは、樹脂を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル本体と、射出流路を開閉するシャットオフ弁とを備えている。ノズル本体には、シャットオフ弁を駆動する駆動部材とノズル本体との摺動箇所のうちノズル本体の外周面に露出している摺動露出部がある。本開示は、摺動露出部の近傍に設けられ、摺動露出部から漏れる樹脂がシャットオフノズルに設けられているヒータへ侵入するのを阻害するヒータへの樹脂侵入阻害構造として構成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、シャットオフノズルにおいて摺動露出部から漏れ出る樹脂がヒータに達するのを阻害することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
図2】本実施の形態に係るシャットオフノズルと射出装置の一部を示す正面断面図である。
図3】本実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造を示す斜視図である。
図4】本実施の形態に係るシャットオフノズル清掃時期・交換時期の判断方法を示すフローチャートである。
図5A】第2の実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造を示す斜視図である。
図5B】第3の実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造と、シャットオフノズルの一部とを示す正面断面図である。
図5C】第4の実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造と、シャットオフノズルの一部とを示す側面断面図である。
図5D】射出装置の一部と、他の形態に係るシャットオフノズルと、このシャットオフノズルに設けられている、第5の実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造と、を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0011】
本実施の形態を説明する。
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、図1に示されているように、竪型射出成形機からなる。後で説明する本実施の形態に係るシャットオフノズル5や、ヒータへの樹脂侵入阻害構造6が設けられているが、これらは横置き型の射出成形機であっても採用することができる。つまり本発明を実施する上で、射出成形機の種類は問わず、いずれのタイプの射出成形機であっても同等の効果を奏することができる。以下では、竪型射出成形機によって本実施の形態を説明する。
【0012】
本実施の形態に係る射出成形機1は、トグル式の型締装置2と、射出装置3と、を備えている。射出装置3には本実施の形態に係るシャットオフノズル5が設けられ、シャットオフノズル5には本実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6が設けられている。そして、シャットオフノズル5の近傍にカメラ7が設けられている。射出成形機1には制御装置4が設けられ、型締装置2、射出装置3、シャットオフノズル5、カメラ7等、は制御装置4に接続されて制御されるようになっている。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は、筐体8と、この筐体8に固定されている固定盤9と、固定盤9の上方に設けられている上可動盤11と、固定盤9の下方に設けられている下可動盤12と、を備えている。上可動盤11と下可動盤12は複数本、例えば3本のタイバー13、13、…により連結されており、固定盤9はタイバー13、13、…に貫通されている。そして、下可動盤12と固定盤9の間に型締機構が、すなわち本実施の形態においてはトグル機構15が設けられている。固定盤9と上可動盤11には、それぞれ下側金型16と上側金型17とが設けられている。従って、トグル機構15を駆動すると金型16、17が型開閉される。
【0014】
<射出装置>
射出装置3は、上可動盤11に支持されていて、型開閉により上可動盤11が上下するとき上可動盤11と一体的に上下するようになっている。しかしながら図1において支持構造は図示が省略されている。射出装置3は、加熱シリンダ18と、加熱シリンダ18内に設けられているスクリュ19と、を備えている。スクリュ19は図1に示されていないスクリュ駆動装置によって回転方向と軸方向とに駆動されるようになっている。加熱シリンダ18には、ヒータ21、21が設けられていると共に、その先端に次に説明する本実施の形態に係るシャットオフノズル5が設けられている。加熱シリンダ18を加熱して、樹脂を供給してスクリュ19を回転すると、樹脂が溶融し、計量される。スクリュ19を軸方向に駆動すると樹脂を金型16、17に射出することができる。
【0015】
<本実施の形態に係るシャットオフノズル>
本実施の形態に係るシャットオフノズル5は、図2に示されているように、ノズル本体25と、シャットオフ弁であるニードル弁26と、ニードル弁26を駆動するニードル弁駆動手段28と、から構成されている。ノズル本体25は加熱シリンダ18に対して、アダプタ30を介して設けられている。またニードル弁駆動手段28は、加熱シリンダ18に固定されているブラケット31に支持されている。
【0016】
ノズル本体25には、内部に樹脂が流れる流路すなわち射出流路33が形成されている。射出流路33はノズル本体25の軸心に形成されている。つまり射出流路33はノズル本体25の内部に軸方向に形成されている。ノズル本体25には、その外周面から射出流路33に達する斜めの孔、つまりニードル孔35が形成されている。このニードル孔35にニードル弁26が進退自在に挿入されている。
【0017】
ニードル弁駆動手段28によりニードル弁26は前後進する。ニードル弁26が前進するとその頭部36が射出流路33を閉鎖する。つまりシャットオフノズル5が閉鎖されて樹脂は流れない。一方、ニードル弁26が後退すると頭部36が射出流路33から後退する。つまり射出流路33が開放されて樹脂が流れるようになっている。このように、シャットオフ弁であるニードル弁26は、その頭部36が弁体になっており、ニードル弁26自体が弁体である頭部36を駆動する駆動部材ということができる。
【0018】
ノズル本体25には、ヒータ38、38が設けられている。これによって射出流路33内の樹脂が所望の温度になるように制御されている。
【0019】
ところで、ノズル本体25に対し、ニードル弁26は摺動する。つまりノズル本体25においてニードル孔35は摺動箇所になっている。このような摺動箇所のうち外部に露出している部分を、本明細書において摺動露出部39と呼ぶ。摺動箇所における隙間はわずかであるが、射出流路33を流れる樹脂の一部はこの隙間を通って摺動露出部39から外部に漏れることがある。特にニードル弁26の前後進の駆動時にニードル弁26に伴って漏れが生じ易い。本実施の形態においては、摺動露出部39から漏れる樹脂がヒータ38、38に侵入しないように、本実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6が設けられている。図2においてヒータへの樹脂侵入阻害構造6は、二点鎖線で示されている。
【0020】
<ヒータへの樹脂侵入阻害構造>
本実施の第1の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6が、図3に示されている。ヒータへの樹脂侵入阻害構造6は、金属板から形成されており、摺動露出部39を両側から囲っている一対の壁つまり第1、第2の樹脂流出防止壁41、42と、これら第1、第2の樹脂流出防止壁41、42を接続している第3の樹脂流出防止壁43とを備えている。第1~3の樹脂流出防止壁41、42、43は、三方から摺動露出部39を囲んでいると共に、それらの端部がノズル本体25の外周面に密着している。
【0021】
第1、第2の樹脂流出防止壁41、42には、それぞれ外方に曲げられた固定部46、47が設けられている。第1の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6は専用の部材である金属製の固定用バンド48によってノズル本体25に固定されている。つまり固定用バンド48には図には示されていないが両端部に雄ネジが取り付けられており、この雄ネジが固定部46、47に接続され、ナット49、49により固定されている。第3の樹脂流出防止壁43には、中央部に所定幅で所定長さの切抜部50が形成されており、ニードル弁26はこの切抜部50に入れられている。
【0022】
前記したように、第1~3の樹脂流出防止壁41、42、43はその端部がノズル本体25の外周面に密着している。したがって、摺動露出部39から樹脂52が漏れても樹脂52は、第1~第3の樹脂流出防止壁41、42、43によって堰き止められる。つまり樹脂52はヒータ38への侵入が阻害される。これによってヒータ38が保護されることになる。
【0023】
ヒータへの樹脂侵入阻害構造6は、長時間の運転により摺動露出部39から漏れる樹脂52の量が大きくなってくる。本実施の形態では、カメラ7(図1図2参照)がヒータへの樹脂侵入阻害構造6を監視するようになっている。
【0024】
<本実施の形態に係るシャットオフノズル清掃時期・交換時期の判断方法>
本実施の形態に係るシャットオフノズル清掃時期・交換時期の判断方法を説明する。制御装置4(図1参照)は、成形サイクルが完了する毎に図4に示されている処理を実行する。まずステップS01を実施してカメラ7により本実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6を撮影する。そして撮影した画像からヒータへの樹脂侵入阻害構造6に溜まっている樹脂量を推定する。樹脂量の推定方法は色々あるが、例えば、制御装置4(図1)は樹脂漏れがなかったときの画像と今回の画像を比較して輝度が変化している部分を探す。変化している部分の大きさにより樹脂量を推定する。
【0025】
制御装置4は、ステップS02を実行する。すなわちヒータへの樹脂侵入阻害構造6に溜まっている樹脂量が許容値を超えたか否かを判断する。許容値は制御装置4において設定されており、これと樹脂量との大小を比較する。樹脂量が許容量を超えていなければステップS03に移行する。一方、樹脂量が許容量を超えていればステップS04に移行する。
【0026】
ステップS03では、制御装置4はショット回数をチェックする。ショット回数は射出装置3において実施した射出の累積の回数であり、累積の成形サイクル数になっている。ショット回数が制御装置4において予め設定されている許容ショット回数を超えていない場合は処理を完了する。一方、ショット回数が許容ショット回数を超えている場合、ステップS06に移行する。制御装置4はシャットオフノズル5とヒータへの樹脂侵入阻害構造6の清掃を促す警報を出力する。警報出力後、完了する。オペレータは、シャットオフノズル5とヒータへの樹脂侵入阻害構造6の清掃を実施する。清掃後、オペレータの操作により制御装置4に記録されているショット回数をゼロにリセットする。
【0027】
ステップS02において樹脂量が許容値を超えていると判断したら、前記したようにステップS04に移行する。制御装置4はショット回数が最低ショット回数に達しているか否かをチェックする。最低ショット回数は制御装置4に予め設定されている。ステップS04においてショット回数が最低ショット回数に達していれば、ステップS06に移行する。一方、ショット回数が最低ショット回数に達していなければ、制御装置4はステップS05を実行して、シャットオフノズル5の交換について検討するよう、警報を出力する。シャットオフノズル5の摩耗が疑われるからである。オペレータは、シャットオフノズル5について交換すべきか否かを判断する。警報出力後、ステップS06に移行する。ステップS06における処理はすでに説明した通りであり、オペレータが清掃を実施したら、前記したように制御装置4に記録されているショット回数をゼロにリセットする。処理を完了する。
【0028】
<本実施の形態の変形例>
本実施の形態は色々な変形が可能である。図5Aには第2の実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6Aが示されている。この実施の形態では、ヒータへの樹脂侵入阻害構造6Aは本体部54と、蓋55とから構成されている。本体部54は、第1の実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6Aと若干形状が異なっており、第1~3の樹脂流出防止壁41A、42A、43Aの高さが若干高くなっている。つまり比較的大量の樹脂52を溜めることができるようになっている。また、第1、第2の樹脂流出防止壁41A、42Aを接続する第4の樹脂流出防止壁56も備えている。蓋55は、これら第1~4の樹脂流出防止壁41A、42A、43A、56によって形成される開口部を完全に閉鎖するようになっている。つまり、ヒータへの樹脂侵入阻害構造6Aは摺動露出部39を実質的に完全に覆う、摺動露出部カバーということもでき、樹脂52が外部に飛散することが防止される。
【0029】
図5Bには第3の実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6Bが示されている。このヒータへの樹脂侵入阻害構造6Bは、樹脂を溜める本体部58と、ノズル本体25に固定されている固定部59と、固定部59と本体部58とを連結しているバネ61とから構成されている。本体部58は本体部58に樹脂が溜まると下方にスライドするようになっており、樹脂量に応じてバネ61が伸びる。この実施の形態においてはリミットスイッチ62が設けられており、本体部58に溜まった樹脂量が一定の大きさ以上になると検出されるようになっている。つまり樹脂の重量を検出する検出機構になっている。リミットスイッチ62は制御装置4に接続されており、制御装置4はこれにより、シャットオフノズル5とヒータへの樹脂侵入阻害構造6を清掃すべきか否かを判断することができるようになっている。
【0030】
図5Cには第4の実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6Cが示されている。このヒータへの樹脂侵入阻害構造6Cは、ヒータ38を覆うヒータカバーになっている。この実施の形態においてもヒータへの樹脂侵入阻害構造6Cは摺動露出部39から漏れる樹脂52がヒータ38に侵入するのを阻害している。
【0031】
図5Dには、異なる形態に係るシャットオフノズル70と、このシャットオフノズル70に設けられている第5の実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6Dが示されている。このシャットオフノズル70も、ノズル本体71と、ニードル弁72と、ニードル弁駆動手段73とから構成されている。しかしながら、第1の実施の形態に係るシャットオフノズル5と相違し、ニードル弁72はノズル本体71と同軸に設けられている。
【0032】
ニードル弁駆動手段73は、エアで駆動されるシリンダ構造75と、このシリンダ構造75に接続されているバネ受け76とを備えている。バネ受け76はニードル弁72の後端部に接続されている。シリンダ構造75にエアを供給するとバネ受け76が押され、これによってニードル弁72が前方に駆動される。つまりノズル本体71内の射出流路77を閉鎖する。一方、シリンダ構造75へのエア供給を停止するとバネ受け76が後退する。つまりニードル弁72が後退して射出流路77が開放する。
【0033】
このシャットオフノズル70において摺動露出部78は、バネ受け76の周囲の隙間になる。第5の実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6Dは、摺動露出部78を覆うカバーになっている。したがって摺動露出部78から樹脂が漏れても、樹脂はヒータへの樹脂侵入阻害構造6Dから漏れることはなく、ヒータ38、38への樹脂の侵入を阻害することができる。
【0034】
本実施の形態に係るヒータへの樹脂侵入阻害構造6は、シャットオフ弁がロータリ弁からなるシャットオフノズルであっても実施することができる。ロータリ弁を備えているシャットオフノズルであってもロータリ弁を駆動するときにその駆動部材とノズル本体と間に摺動箇所があるはずであり、摺動箇所が外部に露出している部分は摺動露出部になる。このような摺動露出部の近傍にヒータへの樹脂侵入阻害構造を設けるようにすればよい。そうすればノズル本体に設けられているヒータを樹脂の侵入から保護することができるからである。
【0035】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
5 シャットオフノズル 6 ヒータへの樹脂侵入阻害構造
7 カメラ 8 筐体
9 固定盤 11 上可動盤
12 下可動盤 13 タイバー
15 トグル機構 16 下側金型
17 上側金型 18 加熱シリンダ
19 スクリュ 21 ヒータ
25 ノズル本体 26 ニードル弁
28 ニードル弁駆動手段 30 アダプタ
31 ブラケット 33 射出流路
35 ニードル孔 36 頭部
38 ヒータ 39 摺動露出部
41 第1の樹脂流出防止壁 42 第2の樹脂流出防止壁
43 第3の樹脂流出防止壁 46 固定部
47 固定部 48 固定用バンド
49 ナット 50 切抜部
52 樹脂 54 本体部
55 蓋 56 第4の樹脂流出防止壁
58 本体部 59 固定部
61 バネ 62 リミットスイッチ
70 シャットオフノズル 71 ノズル本体
72 ニードル弁 73 ニードル弁駆動手段
75 シリンダ構造 76 バネ受け
77 射出流路 78 摺動露出部


図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D