(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153648
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】電源装置、電気泳動装置、電源装置を制御する方法、電気泳動装置を制御する方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20231011BHJP
G01N 27/447 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H02M3/28 H
G01N27/447 301C
G01N27/447 331E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063037
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 千明
(72)【発明者】
【氏名】井美 椋太
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730BB21
5H730DD02
5H730DD04
5H730EE06
5H730EE59
5H730EE60
5H730FD01
5H730FD31
(57)【要約】
【課題】電気泳動電圧の極性に関して一方向及びその逆方向の双方を選択可能な電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置は、キャピラリーを有する測定具を用いる電気泳動装置のための高電圧生成回路であって、電源装置は、電気泳動電圧を生成するように構成された高電圧生成回路と、キャピラリーに電気泳動電圧を印加するように構成された第1外側端子及び第2外側端子と、高電圧生成回路に接続された第1内側導電体、及び第2内側導電体を有すると共に、第2内側導電体及び第1内側導電体の間の電位差を第1外側端子及び第2外側端子の間における順方向極性で又は逆方向極性で印加することを選択可能な極性スイッチング回路と、極性スイッチング回路の極性切り替えを制御して順方向極性の印加及び逆方向極性の印加のいずれか一方を選択するように構成されたスイッチング制御回路と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリーを有する測定具を用いる電気泳動装置のために構成された電源装置であって、
電気泳動のための電圧を生成するように構成された高電圧生成回路と、
前記キャピラリーに電気泳動電圧を印加するように構成された第1外側端子及び第2外側端子と、
前記高電圧生成回路に接続された第1内側導電体、及び第2内側導電体を有すると共に、前記第2内側導電体及び前記第1内側導電体の間の電位差を前記第1外側端子及び前記第2外側端子の間における順方向極性で又は逆方向極性で印加することを選択可能な極性スイッチング回路と、
前記極性スイッチング回路の極性切り替えを制御して前記順方向極性の印加及び前記逆方向極性の印加のいずれか一方を選択するように構成されたスイッチング制御回路と、
を備える電源装置。
【請求項2】
前記極性スイッチング回路は、第1順方向スイッチ及び第2順方向スイッチの順方向スイッチペア、並びに第1逆方向スイッチ及び第2逆方向スイッチの逆方向スイッチペアを含み、
前記第1順方向スイッチは、前記第1内側導電体と前記第1外側端子との間に接続され、
前記第2順方向スイッチは、前記第2内側導電体と前記第2外側端子との間に接続され、
前記第1逆方向スイッチは、前記第1内側導電体と前記第2外側端子との間に接続され、
前記第2逆方向スイッチは、前記第2内側導電体と前記第1外側端子との間に接続され、
前記スイッチング制御回路は、前記順方向スイッチペア及び前記逆方向スイッチペアのいずれか一方を排他的に導通させるように極性スイッチング回路を制御する、
請求項1に記載された電源装置。
【請求項3】
前記第1順方向スイッチ、前記第2順方向スイッチ、前記第1逆方向スイッチ、及び前記第2逆方向スイッチの各々は、前記順方向極性又は前記逆方向極性に係る切り替え信号を受ける入力側及び前記切り替え信号に応答して動作可能な出力側を含み、
前記出力側は、前記入力側から電気的に絶縁される、
請求項2に記載された電源装置。
【請求項4】
前記スイッチング制御回路は、前記順方向スイッチペア及び前記逆方向スイッチペアの一方から他方への切り替えに際して前記順方向スイッチペア及び前記逆方向スイッチペアの両方が非導通であるインターバル期間を設けるように、前記順方向スイッチペア及び前記逆方向スイッチペアを切り替える信号を生成するインターバル生成回路を含む、
請求項2又は請求項3に記載された電源装置。
【請求項5】
前記スイッチング制御回路は、前記順方向極性及び前記逆方向極性を規定する極性信号を受ける入力を有し、
前記スイッチング制御回路は、前記極性信号によって示された極性状態を保持する保持回路を含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された電源装置。
【請求項6】
前記極性信号は、前記電気泳動装置の入力デバイスを介して入力された動作モード指定に基づいて生成される、
請求項5に記載された電源装置。
【請求項7】
前記高電圧生成回路の出力に接続されると共に前記高電圧生成回路の電圧生成の有無を示す検知信号を生成する電圧検出回路を更に備え、
前記スイッチング制御回路は、前記検知信号及び前記極性信号を受ける禁止回路を含み、
前記保持回路は、前記禁止回路の出力に接続され、
前記禁止回路は、前記高電圧生成回路が電圧生成の動作を行っていることを前記検知信号が示す場合、前記極性信号に係わらず前記保持回路の前記極性状態を保持する出力値を生成すると共に、前記高電圧生成回路が電圧生成の動作を行っていないことを前記検知信号が示す場合、前記極性信号の値に従った出力値を生成する、
請求項5又は請求項6に記載された電源装置。
【請求項8】
前記高電圧生成回路は、
電圧を生成する生成回路と、
前記生成回路で生成された電圧を増幅して前記電気泳動電圧を出力する増幅回路と、
を含み、
前記増幅回路は、コッククロフトウォルトン回路を含む、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載された電源装置。
【請求項9】
前記極性スイッチング回路を介して前記キャピラリーからの電流を受ける電流検出回路を更に備え、
前記電流検出回路は、前記第2内側導電体に接続される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載された電源装置。
【請求項10】
キャピラリーを有する測定具を用いる電気泳動装置であって、
電気泳動電圧を生成するように構成された電源装置であって、前記電源装置は、前記電気泳動電圧を前記キャピラリーに印加するように構成された第1外側端子及び第2外側端子を含むと共に、前記電気泳動電圧を前記第1外側端子及び前記第2外側端子の間における順方向極性で又は逆方向極性で印加することを選択可能である、電源装置と、
前記順方向極性及び前記逆方向極性のいずれかを示す動作モードの指定を受けるように構成された入力デバイスと、
を備える、
電気泳動装置。
【請求項11】
キャピラリーを有する測定具を用いる電気泳動装置の電源装置を制御する方法であって、
前記電源装置において選択可能な順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方を示す電圧極性に従って前記電源装置の第1外側端子及び第2外側端子のいずれか一方に前記電源装置の高電圧生成回路の出力を接続することと、
前記第1外側端子及び前記第2外側端子のいずれか一方に前記高電圧生成回路の前記出力を接続した後に前記高電圧生成回路を動作させて、前記電気泳動装置にセットアップされた測定具のキャピラリーに前記高電圧生成回路からの電気泳動電圧を前記第1外側端子又は前記第2外側端子を介して印加することと、
を備える、電源装置を制御する方法。
【請求項12】
電気泳動装置を制御する方法であって、
キャピラリーを有する測定具を用いる電気泳動装置を準備することであって、前記電気泳動装置は、電源装置及び入力デバイスを含む、電気泳動装置を準備することと、
前記電源装置において選択可能な順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方を示す電圧極性を指定する指示を前記入力デバイスを介して受けることと、
前記指示に従って前記電源装置において前記電圧極性の設定を行うと共に、前記電気泳動装置にセットアップされた測定具のキャピラリーに、前記電圧極性の前記設定に従って電気泳動電圧を印加することと、
を備える、電気泳動装置を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置、電気泳動装置、電源装置を制御する方法、及び電気泳動装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気泳動装置を開示する。電気泳動装置は、電源装置を含み、電源装置は、電気泳動のための電圧(以下、「電気泳動電圧」と記す)を生成し、電気泳動装置において、電気泳動電圧はキャピラリーに印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電源装置は、電源装置の内部接続により規定された向きに電気泳動電圧を印加する。単一の電源装置において、電気泳動電圧の極性(電圧印加の向き)を、一方向及びその逆方向の双方を選択できる技術が求められる。
【0005】
本開示は、電気泳動電圧の極性に関して一方向及びその逆方向の双方を選択可能な電源装置、この電源装置を含む電気泳動装置、電源装置を制御する方法、及び電気泳動装置を制御する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る電気泳動装置用の電源装置は、キャピラリーを有する測定具を用いる電気泳動装置のために構成された電源装置であって、電気泳動のための電圧を生成するように構成された高電圧生成回路と、前記キャピラリーに電気泳動電圧を印加するように構成された第1外側端子及び第2外側端子と、前記高電圧生成回路に接続された第1内側導電体、及び第2内側導電体を有すると共に、前記第2内側導電体及び前記第1内側導電体の間の電位差を前記第1外側端子及び前記第2外側端子の間における順方向極性で又は逆方向極性で印加することを選択可能な極性スイッチング回路と、前記極性スイッチング回路の極性切り替えを制御して前記順方向極性の印加及び前記逆方向極性の印加のいずれか一方を選択するように構成されたスイッチング制御回路と、を備える。
【0007】
本開示の第2態様に係る電源装置は、第1態様に従う電源装置であって、前記極性スイッチング回路は、第1順方向スイッチ及び第2順方向スイッチの順方向スイッチペア、並びに第1逆方向スイッチ及び第2逆方向スイッチの逆方向スイッチペアを含み、前記第1順方向スイッチは、前記第2内側導電体と前記第1外側端子との間に接続され、前記第2順方向スイッチは、前記第1内側導電体と前記第2外側端子との間に接続され、前記第1逆方向スイッチは、前記第2内側導電体と前記第2外側端子との間に接続され、前記第2逆方向スイッチは、前記第1内側導電体と前記第1外側端子との間に接続され、前記スイッチング制御回路は、前記順方向スイッチペア及び前記逆方向スイッチペアのいずれか一方を排他的に導通させるように極性スイッチング回路を制御する。
【0008】
本開示の第3態様に係る電源装置は、第2態様に従う電源装置であって、前記第1順方向スイッチ、前記第2順方向スイッチ、前記第1逆方向スイッチ、及び前記第2逆方向スイッチの各々は、前記順方向極性又は前記逆方向極性に係る切り替え信号を受ける入力側及び前記切り替え信号に応答して動作可能な出力側を含み、前記出力側は、前記入力側から電気的に絶縁される。
【0009】
本開示の第4態様に係る電源装置は、第2態様又は第3態様に従う電源装置であって、前記スイッチング制御回路は、前記順方向スイッチペア及び前記逆方向スイッチペアの一方から他方への切り替えに際して前記順方向スイッチペア及び前記逆方向スイッチペアの両方が非導通であるインターバル期間を設けるように、前記順方向スイッチペア及び前記逆方向スイッチペアを切り替える信号を生成するインターバル生成回路を含む。
【0010】
本開示の第5態様に係る電源装置は、第1態様から第4態様のいずれか一態様に従う電源装置であって、前記スイッチング制御回路は、前記順方向極性及び前記逆方向極性を規定する極性信号を受ける入力を有し、前記スイッチング制御回路は、前記極性信号によって示された極性状態を保持する保持回路を含む。
【0011】
本開示の第6態様に係る電源装置は、第5態様に従う電源装置であって、前記極性信号は、前記電気泳動装置の入力デバイスを介して入力された動作モード指定に基づいて生成される。
【0012】
本開示の第7態様に係る電源装置は、第5態様又は第6態様に従う電源装置であって、前記高電圧生成回路の出力に接続されると共に前記高電圧生成回路の電圧生成の有無を示す検知信号を生成する電圧検出回路を更に備え、前記スイッチング制御回路は、前記検知信号及び前記極性信号を受ける禁止回路を含み、前記保持回路は、前記禁止回路の出力に接続され、前記禁止回路は、前記高電圧生成回路が電圧生成の動作を行っていることを前記検知信号が示す場合、前記極性信号に係わらず前記保持回路の前記極性状態を保持する出力値を生成すると共に、前記高電圧生成回路が電圧生成の動作を行っていないことを前記検知信号が示す場合、前記極性信号の値に従った出力値を生成する。
【0013】
本開示の第8態様に係る電源装置は、第1態様から第7態様のいずれか一態様に従う電源装置であって、前記高電圧生成回路は、電圧を生成する生成回路と、前記生成回路で生成された電圧を増幅して前記電気泳動電圧を出力する増幅回路と、を含み、前記増幅回路は、コッククロフトウォルトン回路を含む。
【0014】
本開示の第9態様に係る電源装置は、第1態様から第8態様のいずれか一態様に従う電源装置であって、前記極性スイッチング回路を介して前記キャピラリーからの電流を受ける電流検出回路を更に備え、前記電流検出回路は、前記第2内側導電体に接続される。
【0015】
本開示の第10態様に係る電気泳動装置は、キャピラリーを有する測定具を用いる電気泳動装置であって、電気泳動電圧を生成するように構成された電源装置であって、前記電源装置は、前記電気泳動電圧を前記キャピラリーに印加するように構成された第1外側端子及び第2外側端子を含むと共に、前記電気泳動電圧を前記第1外側端子及び前記第2外側端子の間における順方向極性で又は逆方向極性で印加することを選択可能である、電源装置と、前記順方向極性及び前記逆方向極性のいずれかを示す動作モードの指定を受けるように構成された入力デバイスと、を備える。
【0016】
本開示の第11態様に係る電源装置を制御する方法は、キャピラリーを有する測定具を用いる電気泳動装置の電源装置を制御する方法であって、前記電源装置において選択可能な順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方を示す電圧極性に従って前記電源装置の第1外側端子及び第2外側端子のいずれか一方に前記電源装置の高電圧生成回路の出力を接続することと、前記第1外側端子及び前記第2外側端子のいずれか一方に前記高電圧生成回路の前記出力を接続した後に前記高電圧生成回路を動作させて、前記電気泳動装置にセットアップされた測定具のキャピラリーに前記高電圧生成回路からの電気泳動電圧を前記第1外側端子又は前記第2外側端子を介して印加することと、を備える。
【0017】
本開示の第12態様に係る電気泳動装置を制御する方法は、キャピラリーを有する測定具を用いる電気泳動装置を準備することであって、前記電気泳動装置は、電源装置及び入力デバイスを含む、電気泳動装置を準備することと、前記電源装置において選択可能な順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方を示す電圧極性を指定する指示を前記入力デバイスを介して受けることと、前記指示に従って前記電源装置において前記電圧極性の設定を行うと共に、前記電気泳動装置にセットアップされた測定具のキャピラリーに、前記電圧極性の前記設定に従って電気泳動電圧を印加することと、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、電気泳動電圧の極性に関して一方向及びその逆方向の双方を選択可能な電源装置、この電源装置を制御する方法、この電源装置を含む電気泳動装置、及びこの電気泳動装置を制御する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1(a)は、本実施の形態に係る電気泳動装置の例示的な構成を概略的に示す図面であり、
図1(b)は、本実施の形態に係る電気泳動装置に関連する細部の例示的な構成を概略的に示す図面である。
【
図2】
図2は、電源装置の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、電源装置の構成の一例を示す回路図である。
【
図4】
図4(a)は、例示的な極性スイッチング回路を示す回路図であり、
図4(b)は、
図3に示された極性スイッチング回路のための例示的なスイッチデバイスを示す図面である。
【
図5】
図5は、
図3に示された電圧切替セクションのためのインターバル生成回路の一例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、
図5に示されたインターバル生成回路の動作波形を示す図面である。
【
図7】
図7は、スイッチング制御回路の一例を説明する回路図である。
【
図8】
図8は、禁止信号を生成する禁止信号生成回路を示す回路図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、それぞれの極性信号における電圧生成セクションと、測定具との接続を示す図面である。
【
図10】
図10は、スイッチ選択信号S1
SEL及びスイッチ選択信号S2
SELと、順方向印加及び逆方向印加に係る電気泳動電圧の波形を示す。
【
図11】
図11は、本実施の形態に係る電気泳動装置を制御する方法の主要な手順を示す図面である。
【
図12】
図12は、本実施の形態に係る電気泳動装置の電源装置を制御する方法の主要な手順を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。
【0021】
図1(a)は、本実施の形態に係る電気泳動装置の例示的な構成を概略的に示す図面である。
図1(b)は、本実施の形態に係る電気泳動装置に関連する細部の例示的な構成を概略的に示す図面である。
【0022】
図1(a)及び
図1(b)を参照すると、電気泳動装置1は、制御装置10、電源装置20、第1電極22、第2電極24、及び分析装置26を備える。
【0023】
電気泳動装置1は、キャピラリー電気泳動法を実施できる分析装置であって、この分析装置は、測定具の試料、例えばマイクロチップ2のキャピラリー4を泳動する試料40の測定又は分析をキャピラリー電気泳動法を用いて行うことができる。より具体的には、試料40が、マイクロチップ2のキャピラリー4内に電気泳動される。本開示の測定具の一例として、マイクロチップ2が示されている。マイクロチップ2は、泳動体44を含み十分に電流が流れる状態にある試料40を含む。試料40は、泳動体44を含む試料40、又は希釈液によって希釈された泳動液(液体状の泳動体44)の溶液を含む試料40を包含する。分析のために、試料40の希釈が必要な場合、試料40は、希釈されることができる。
【0024】
マイクロチップ2は、流路として働くキャピラリー4、導入槽6、及び排出槽8を有する。分析対象の試料40及び泳動体44は、導入槽6に導入される。泳動液(泳動体44)は、キャピラリー電気泳動法においてバッファとして機能する。泳動液(泳動体44)の一例は、100mMりんご酸-アルギニンバッファ(pH5.0)+1.5%コンドロイチン硫酸Cナトリウムであり、試料40の一例は、血液である。マイクロチップ2は、ディスポーザブルタイプのチップであり、例えば1回又は特定の回数の分析を終えた後に廃棄されることが意図されている。マイクロチップ2は、例えば、シリカといった材料で形成される。
【0025】
キャピラリー4は、キャピラリー電気泳動法を用いた分析のための電気泳動を生じさせる試料を含む。キャピラリー電気泳動法の実現のために、キャピラリー4は、一方向に延在する管状の形状を有し、その寸法の一例を以下に示す。管状形状の断面は、例えば25μm~100μmの直径を有する円形、又は25μm~100μmの辺を有する矩形であることが好ましく、管状形状の長さは、例えば30mm程度であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0026】
排出槽8は、キャピラリー4に対して、キャピラリー電気泳動の泳動方向における下流側に位置している。キャピラリー4を電気泳動した試料40及び泳動体44は、分析が終了したものとして、排出槽8に溜まる。排出槽8の分析済み試料40及び泳動体44は、例えば、排出ノズル(図示を省略した)及び吸引ポンプ(図示を省略した)を用いて排出槽8から排出される。排出ノズル(図示を省略した)は、排出槽8に取り付けら、また吸引ポンプ(図示を省略した)は、排出ノズル(図示を省略した)を介する排出のために用いられる。
【0027】
第1外側端子70a及び第2外側端子70bは、それぞれ、第1電極22及び第2電極24に接続されている。第1電極22及び第2電極24は、例えば、断面の直径が0.8mm~1.0mmの銅材(Cu)からなる棒状の電極である。第1電極22は、導入槽6に浸漬されると共に第2電極24は、排出槽8に浸漬されて、これによってキャピラリー4に対して電圧を印加することを可能にする。この例示的な配置では、第1電極22及び第2電極24は、キャピラリー4に対して電圧を印加でき、試料40がマイクロチップ2のキャピラリー4に充填されて泳動できるように、導入槽6及び排出槽8は、それぞれ、キャピラリー4の一端及び他端に位置する。しかしながら、第1電極22及び第2電極24の配置は、これに限定されない。
【0028】
分析装置26は、例えば、吸光度の測定を実行するものであり、
図1に示すように、光源装置30(発光デバイス28a、照射デバイス28b)、及び検出装置34(受光デバイス32a、光電変換デバイス32b)を含む。
【0029】
光源装置30は、分析対象に応じた波長の光を発生するように構成される。照射デバイス28bは、例えば、光ファイバーといった導波路デバイスを介して発光デバイス28aに結合されており、導波路デバイスは、発光デバイス28aからの光をキャピラリー4の一部に向けて照射光を照射する。発光デバイス28aは、吸光度測定に用いられる光を発生するように構成され、例えば、レーザ素子を含むことができる。発光デバイス28aは、例えば血液中のヘモグロビンA1cといったヘモグロビン種の濃度を分析する場合に、415nmの波長の光を発生することができ、しかしながら、発光デバイス28aの波長は、これに限定されない。検出装置34は、キャピラリー4からの光を受光して電気信号を生成する。受光デバイス32aは、例えば光ファイバーといった導波路デバイスを介して光電変換デバイス32bに接続される。検出装置34は、光電変換デバイス32bからの電気信号を処理する。
【0030】
制御装置10は、電気泳動装置1の各部の動作を制御して、電気泳動装置1による分析を実現するための一連の制御を行う。
図2に示されるように、制御装置10は、CPU401(Central Processing Unit)、主記憶装置402、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)といった記憶装置403、インターフェース404、及び出力デバイス405、及びバス406を含む。このような制御装置10は、例えば、マイクロプロセッサといった処理装置を含むことができる。例えば、制御装置10は、装置外部の電源(例えば、家庭用コンセント)から電圧供給を受けるための電源ポートを備えることができる。
【0031】
図1を参照すると、電気泳動装置1により測定又は分析を行う場合、まず、導入ノズル46から導入槽6へと泳動体44(泳動液)が導入される。この泳動液(泳動体44)は、導入槽6、キャピラリー4、及び排出槽8を満たす。試料容器42内の試料40(例えば、血液)が、導入ノズル46に、所定量だけ導入される。電源装置20を用いて第1電極22及び第2電極24に電圧を印加すると、この電圧に起因する電気泳動によって、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンA2といった特定成分がその電荷に応じて分離分画され始める。試料40に電圧が印加されている時間の経過に従って、例えば、特定成分が他の成分から明確に分離分画される。この分離分画された特定成分は、キャピラリー4を移動して、排出槽8に向かって移動する。キャピラリー4の一部分は、光源装置30と検出装置34との間に位置するので、電気泳動によりキャピラリー4を移動する特定成分は、キャピラリー4の一部分を通過する。
【0032】
照射デバイス28bが、照射光をキャピラリー4の一部分に照射すると、照射された光の一部が特定成分によって吸収される。受光デバイス32aは、吸収されなかった光を透過光として検出する。検出装置34は、光電変換デバイス32bによって検知された光量(透過量の量)を示す信号を受け、照射光の光量及び透過光の光量に基づく吸光度測定の原理によって、試料40の特定成分の濃度が検出される。
【0033】
電気泳動装置1は、電気泳動電圧を生成するように構成された電源装置20と、順方向極性及び逆方向極性のいずれかを示す動作モードの指定を受けるように構成される入力デバイス90とを含む。電源装置20は、電気泳動電圧をキャピラリー4に印加するように構成された第1外側端子70a及び第2外側端子70bを含む。電源装置20は、第1外側端子70a及び第2外側端子70bの間に順方向極性(例えば、第1外側端子70aを電位が高い正極にし、第2外側端子70bを電位が低い負極にする)又は逆方向極性(例えば、第1外側端子70aを電位が低い負極にし、第2外側端子70bを電位が高い正極にする)で電気泳動電圧を印加することを選択可能である。この電気泳動装置1によれば、順方向極性及び逆方向極性を規定する動作モードを指定して、電気泳動の測定を行うことができる。すなわち、試料40に対して、順方向極性と逆方向極性の二つ極性方向の電圧印加のうちの一つの動作モードを指定した電気泳動を行うことができる。電気泳動装置1は、更に、キャピラリー4に光を照射するように設けられた光源装置30と、光源装置30に光学的に結合された検出装置34とを備える。
【0034】
電源装置20は、概略的には、キャピラリー4を有する測定具を用いる電気泳動装置1のために構成されており、キャピラリー電気泳動法に必要な電圧を発生するために数キロボルト、例えば1.5kV程度の電圧を生成する。電源装置20は、出力端子として第1外側端子70a及び入力端子として第2外側端子70bを備える。
【0035】
電源装置20の詳細を説明する。
図2は、電源装置20の構成の一例を概略的に示すブロック図である。また、
図3は、電源装置20の構成の一例を示す回路図である。
【0036】
図2及び
図3を参照すると、電源装置20は、電圧生成セクション50a及び電圧切替セクション50bを含み、電圧生成セクション50aは、電圧切替セクション50bに接続される。電圧切替セクション50bは、極性信号S
POLを受けるように構成された入力電極66、及び電圧検出回路64から電圧モニタ信号S
VMONを受けるように構成された入力電極67を有する。
【0037】
電圧生成セクション50aは、高電圧生成回路53を含み、さらに、例えば、入力制御回路50、イネーブル回路52、出力保護回路58、出力電圧制御回路60、電流検出回路62、及び電圧検出回路64を含むことができる。高電圧生成回路53は、電気泳動のための電圧(以下、「電気泳動電圧」として参照する)を生成するように構成され、また本実施例では、生成回路としてインバータトランス回路54、及び増幅回路としてコッククロフトウォルトン回路56(Cockcroft-Walton circuit:CCW、以下、「CCW回路」と記す)を含むことができる。この電源装置20によれば、高電圧生成回路53は、電圧を生成する生成回路から提供された電圧を増幅回路において増幅することを可能にして、電気泳動測定用の電圧を生成する。
【0038】
第1外側端子70a及び第2外側端子70bは、キャピラリー4に電気泳動電圧を印加するように構成されて、電源装置20に提供される。具体的には、電圧切替セクション50bは、第1外側端子70a及び第2外側端子70bを介してマイクロチップ2に接続される。また、電源装置20の電圧生成セクション50aは、第2出力電極68、第3出力電極74、第2入力電極82、第3入力電極84、及び第4入力電極86を備えており、これらを介して、制御装置10に接続される。
【0039】
また、電圧切替セクション50bは、極性スイッチング回路51及びスイッチング制御回路55を含み、極性スイッチング回路51は、第1内側導電体80a(出力)及び第2内側導電体80b(入力)を有する。第1内側導電体80aは、高電圧生成回路53に接続され、第2内側導電体80bは、極性スイッチング回路51を介してキャピラリー4からの電流を受けるように構成された電流検出回路62に接続される。この電源装置20によれば、極性スイッチング回路51は、順方向極性及び逆方向極性のいずれにおいても電流検出回路62にキャピラリー4からの電流を提供できる。
【0040】
スイッチング制御回路55(電圧切替セクション50b)は、制御入力80eへの切替信号を提供して極性スイッチング回路51の切り替えを行う。極性スイッチング回路51は、第1内側導電体80a(出力)及び第2内側導電体80b(入力)の電位差を第1外側端子70a及び第2外側端子70bの間において順方向極性で又は逆方向極性で印加することを選択可能にする。スイッチング制御回路55は、極性スイッチング回路51の極性切り替えを制御して、電気泳動電圧の印加における順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方を選択する。
【0041】
この電源装置20によれば、極性スイッチング回路51の切り替えは、高電圧生成回路53からの電気泳動電圧が第1内側導電体80aを介して第1外側端子70aに提供されること(例えば、順方向極性の印加)、或いは高電圧生成回路53からの電圧が第1内側導電体80aを介して第2外側端子70bに提供されること(例えば、順方向極性と逆向きの逆方向極性の印加)の切り替えを可能にする。スイッチング制御回路55は、順方向極性の印加及び逆方向極性の印加のうちのいずれか一方を選択するように、極性スイッチング回路51を制御する。この切り替えに対応して、第2内側導電体80bは、第1外側端子70a又は第2外側端子70bを介してキャピラリー4からの電流を受ける。第1外側端子70a及び第2外側端子70bは、高電圧生成回路53からの電気泳動電圧に対する絶縁耐力を維持するように隔置される。極性スイッチング回路51は、第1外側端子70a及び第2外側端子70bにそれぞれ接続された第1外側導電体80c及び第2外側導電体80dを含む。
【0042】
図3に示されるように、極性スイッチング回路51は、第1順方向スイッチ71a及び第2順方向スイッチ71bの順方向スイッチペア71、並びに第1逆方向スイッチ72a及び第2逆方向スイッチ72bの逆方向スイッチペア72を含む。第1順方向スイッチ71aは、第1内側導電体80aと第1外側導電体80c(第1外側端子70a)との間に接続される。第2順方向スイッチ71bは、第2内側導電体80bと第2外側導電体80d(第2外側端子70b)との間に接続される。第1逆方向スイッチ72aは、第1内側導電体80aと第2外側導電体80d(第2外側端子70b)との間に接続される。第2逆方向スイッチ72bは、第2内側導電体80bと第1外側導電体80c(第1外側端子70a)との間に接続される。スイッチング制御回路55は、順方向スイッチペア71及び逆方向スイッチペア72のいずれか一方を排他的に導通させるように極性スイッチング回路51を制御する。
【0043】
この電源装置20によれば、極性スイッチング回路51は、順方向スイッチペア71及び逆方向スイッチペア72のいずれか一方の導通が、順方向極性の印加及び逆方向極性の印加を排他的に切り替えることを可能にする。排他的な導通によれば、順方向スイッチペア71及び逆方向スイッチペア72が、順方向スイッチペア71及び逆方向スイッチペア72の切り替え遷移期間に過渡的に同時に導通することを防ぐことができる。
【0044】
図4(a)は、
図3に示された極性スイッチング回路51のための例示的なスイッチデバイスを示す。このようなスイッチデバイスの一例は、リレー回路61を含み、リレー回路61は、高電圧生成回路53から第1内側導電体80aを介して与えられる電気泳動電圧を第1外側端子70a又は第2外側端子70bに供給することを可能にする。リレー回路の切り替えは、高電圧生成回路53からの電気泳動電圧といった高電圧ではない低い電圧レベルの信号により可能である。リレー回路61は、切り替え信号S
SWに応答して入力側61inの駆動部材61eを制御するための電極61a、61bと、スイッチ本体61fによって接続又は切り離しされる出力側61outの電極61c、61dとを含む。入力側61inは、出力側61outから電気的に絶縁される一方で、出力側61outと磁気的及び/又は機械的に結合される。
【0045】
図4(b)は、例示的な極性スイッチング回路51の回路図を示す。極性スイッチング回路51において、第1順方向スイッチ71a、第2順方向スイッチ71b、第1逆方向スイッチ72a及び第2逆方向スイッチ72bの各々は、
図4(a)で示したスイッチデバイス73を含み、スイッチデバイス73は、入力側73a及び出力側73bを含むスイッチ73cを備える。スイッチ73cが開放状態であることで、出力側73bは、入力側73aから電気的に分離される。
【0046】
この電源装置20によれば、第1順方向スイッチ71a、第2順方向スイッチ71b、第1逆方向スイッチ72a及び第2逆方向スイッチ72bの各々において、入力側73a及び出力側73bは、互いに電気的に絶縁される。この絶縁によれば、出力側73bの高電圧が、該高電圧より低い電圧レベルを有する信号を受ける入力側73aから絶縁分離される。
【0047】
入力側73aは、順方向極性又は逆方向極性に係る切り替え信号を受けると共に、出力側73bは、この切り替え信号に応答してスイッチ73cを切り替え可能である。具体的には、スイッチデバイス73は、切り替え信号に応答して入力側73aを駆動する駆動素子73d(例えば、トランジスタ)を含む。また、入力側73aの電極間には、駆動電流の逆流防止のためのダイオード73eが接続される。出力側73bは、入力側73aから電気的に絶縁されると共に、例えば機械的及び/又は磁気的に入力側73aに結合される。
【0048】
スイッチデバイス73は、リレーデバイスに限定されることなく、電圧制御型デバイス又は電流制御型デバイスのいずれでもあることができる。
【0049】
図5は、
図4(b)に示された電圧切替セクションのためのインターバル生成回路の一例を示す回路図である。スイッチング制御回路55(電圧切替セクション50b)は、順方向極性の印加及び逆方向極性の印加における排他的な切り替えを可能にするために、インターバル生成回路75を備える。インターバル生成回路75は、順方向スイッチペア71及び逆方向スイッチペア72の一方から他方への切り替えに際して順方向スイッチペア71及び逆方向スイッチペア72の両方が非導通であるインターバル期間を設けるように、順方向スイッチペア71及び逆方向スイッチペア72を切り替える信号を生成する。
【0050】
この電源装置20によれば、順方向スイッチペア71及び逆方向スイッチペア72の両方が非導通である期間は、印加電圧の極性の安全な切り替えを可能にする。インターバル生成回路75は、入力75aと、第1出力75bと、第2出力75cと、を有する。入力75aは、順方向スイッチペア71及び逆方向スイッチペア72のいずれか一方を導通(閉状態)にすると共に他方を非導通(開状態)にする選択信号S
SELを受ける。第1出力75bは、極性スイッチング回路51の順方向スイッチペア71を選択するスイッチ選択信号S1
SELを提供する。第2出力75cは、極性スイッチング回路51の逆方向スイッチペア72を選択するスイッチ選択信号S2
SELを提供する。第1出力75bと第2出力75cは、
図3及び
図4(b)に示す制御入力80eに該当する。
【0051】
具体的には、インターバル生成回路75は、複数の論理ゲート、例えば4つの論理ゲート(本実施例では、第1論理ゲート76、第2論理ゲート77、第3論理ゲート78、及び第4論理ゲート79)を含む。
【0052】
第1論理ゲート76は、選択信号SSEL(「H」又は「L」の論理値を有する)を受けて、選択的遅延回路DELを駆動する。第2論理ゲート77は、選択信号SSELを受けて、選択的遅延回路DELを駆動する。第1論理ゲート76の出力76aは、選択的遅延回路DELを介して第4論理ゲート79の入力79bに接続される。第2論理ゲート77の出力77aは、選択的遅延回路DELを介して第3論理ゲート78の入力78bに接続される。選択的遅延回路DELは、信号の2つ遷移(HからL、又はLからH)のうち一方の遷移に選択的に遅延を生成することができ、抵抗素子Res1、抵抗素子Res1に並列に接続されたダイオードDD1、並びに並列接続された抵抗素子Res1及びダイオードDD1の一端に接続された容量素子CP1、を含むCR遅延回路を構成する。
【0053】
本実施例では、第1論理ゲート76は、例えば排他的論理和ゲートを含み、この排他的論理和ケートには、出力76a、入力76b、及び入力76cが提供される。入力76cは、抵抗素子Res0を介してインターバル生成回路75の入力75aに接続される。出力76aは、選択的遅延回路DELに接続される。入力76bは、インターバル生成回路75の入力75aに接続されて、選択信号SSELが論理値「H」及び「L」のいずれでも「L」レベルの信号を受けることになる。入力76cは、低電位電源線LVに接続される。また、インターバル生成回路75の入力75aは、抵抗素子Res0を介して低電位電源線LVに接続される。
【0054】
第2論理ゲート77は、例えば排他的論理和ゲートを含み、この排他的論理和ゲートには、出力77a、入力77b、及び入力77cが提供される。出力77aは、選択的遅延回路DELに接続される。入力77bは、インターバル生成回路75の入力75aに接続される(直接に接続される)。入力77cは、高電位電源線HVに接続される。
【0055】
第3論理ゲート78は、例えば排他的論理和ゲートを含み、この排他的論理和ゲートには、出力78a、入力78b、及び入力78cが提供される。出力78aは、インターバル生成回路75の第1出力75bに接続される。入力78bは、選択的遅延回路DELを介して第2論理ゲート77の出力77aに接続され、また出力77aからの選択的遅延信号を受ける。入力78cは、低電位電源線LVに接続される。
【0056】
第4論理ゲート79は、例えば排他的論理和ゲートを含み、この排他的論理和ゲートには、出力79a、入力79b、及び入力79cが提供される。出力79aは、インターバル生成回路75の第2出力75cに接続される。入力79bは、選択的遅延回路DELを介して第1論理ゲート76の出力76aに接続され、また出力76aからの選択的遅延信号を受ける。入力79cは、低電位電源線LVに接続される。
【0057】
図6は、
図5に示されたインターバル生成回路の動作波形を示す図面である。選択信号S
SELが上がり遷移(LからH)エッジにおいて、第1論理ゲート76(出力76a)の出力信号が遅延する。選択信号S
SELが下がる遷移(HからL)エッジにおいて、第2論理ゲート77(出力77a)の出力信号が遅延する。第3論理ゲート78が、出力78aにおいてスイッチ選択信号S1
SELの値「H」を有するときに、インターバル生成回路75は、順方向スイッチペア71を導通させる信号を生成する。第4論理ゲート79が、出力79aにおいてスイッチ選択信号S2
SELの値「H」を有するときに、インターバル生成回路75は、逆方向スイッチペア72を導通させる信号を生成する。
【0058】
図7は、スイッチング制御回路の一例を説明する回路図である。スイッチング制御回路55(電圧切替セクション50b)は、モード制御回路81を含むことができる。モード制御回路81は、順方向極性及び逆方向極性を規定する極性信号S
POLを受ける入力81aと、高電圧生成回路53における高電圧の生成の有無を示す禁止信号S
FBDを受ける入力81bと、インターバル生成回路75に選択信号S
SELを提供する出力81cとを有する。モード制御回路81は、高電圧生成回路53の動作中(高電圧の生成中)において、極性信号S
POLの遷移に応じた選択信号S
SELの変化を禁止すると共に、高電圧生成回路53の停止中において、極性信号S
POLの遷移に応じた選択信号S
SELの変化を可能にする。
【0059】
具体的には、モード制御回路81は、保持回路83及び禁止回路85を含む。保持回路83は、極性信号SPOLによって示された極性状態を保持する。禁止回路85は、高電圧生成回路53の動作中において極性信号SPOLの遷移に応じて保持回路83を変化させることを禁止する。また、禁止回路85は、高電圧生成回路53の停止中において極性信号SPOLの遷移に応じて保持回路83を変化させることを許可にする。高電圧生成回路53の停止中では、禁止回路85は、極性信号SPOLの変化に応じて保持回路83の極性状態を変更するためのセットリセット動作を保持回路83に引き起こす信号を生成するセットリセット回路として動作する。
【0060】
本実施例では、保持回路83は、2入力及び2出力のRS型ラッチ回路を含み、このラッチ回路は、2つのNANDゲート83a、83bを含み、否定セット信号及び否定リセット信号に応じて、保持内容を変更する。
【0061】
禁止回路85は、2つの論理ゲート、例えば第1NANDゲート85a及び第2NANDゲート85bを含む。第1NANDゲート85aは、少なくとも2つの入力、具体的には、極性信号SPOLを受ける第1入力、及びモード遷移を禁止する禁止信号SFBDを受ける第2入力を有する。第2NANDゲート85bは、少なくとも2つの入力、具体的には、モード遷移を禁止する禁止信号SFBDを受ける第1入力、及び第1NANDゲート85aの出力からの信号を受ける第2入力を有する。第1NANDゲート85a及び第2NANDゲート83bの出力は、RS型ラッチ回路のそれぞれの入力に接続される。
【0062】
この電源装置20によれば、禁止回路85は、保持回路83における極性状態の意図しない変化の可能性を低減できる。NANDゲート83a、83bの各々は、個々の入力においてヒステリシス特性を有することができる。また、NANDゲート85a、85bの各々は、個々の入力においてヒステリシス特性を有することができる。
【0063】
極性信号S
POLは、電気泳動装置1の入力デバイス90(
図1及び
図2を参照)を介して入力された動作モード指定に基づいて生成される、この電源装置20によれば、順方向極性及び逆方向極性の指定を電気泳動装置1の動作モードとして設定できる。入力デバイス90は、例えば、機械的スイッチ、ボタン式スイッチ、キーボード、マウス、入力ペン、音声入力デバイス、タッチ入力デバイス、ネットワークを介して接続されるI/F、等を含むことができ、しかしながら、これらに限定されない。
【0064】
図8は、禁止信号を生成する禁止信号生成回路を示す回路図である。電圧切替セクション50bは、禁止信号生成回路87を含むことができる。禁止信号生成回路87は、制御装置10を介して電圧検出回路64から電圧モニタ信号S
VMONを受ける入力87a、及びモード制御回路81の入力81aに禁止信号S
FBDを提供する出力87bを含む。本実施例では、禁止信号生成回路87は、ヒステリシス付きコンパレータ89a及びシュミット型論理ゲート89bを含む。ヒステリシス付きコンパレータ89a及びシュミット型論理ゲート89bは、共にヒステリシス特性を有し、電気泳動電圧の生成の有無に関して高いノイズ耐性を可能にする。
【0065】
コンパレータ89aは、オペアンプAMP1、抵抗素子Res2、Res3、Res4、Res5、Res6を含む。抵抗素子Res2は、入力87aとオペアンプAMP1の反転入力との間に接続される。抵抗素子Res3は、オペアンプAMP1の非反転入力と出力との間に接続される。抵抗素子Res4は、オペアンプAMP1の非反転入力と低電位電源線(接地)との間に接続されると共に、抵抗素子Res5は、オペアンプAMP1の非反転入力と高電位電源線との間に接続される。抵抗素子Res5は、オペアンプAMP1の出力とシュミット型論理ゲート89bの入力との間に接続される。シュミット型論理ゲート89bの出力は、出力87b及び容量素子CAPに接続される。
【0066】
禁止信号生成回路87の初段にヒステリシス付きコンパレータ89aを提供すると、出力の発振を防ぐことを可能にする。また、禁止信号生成回路87の後段にシュミット型論理ゲート89bを提供する。
【0067】
図9(a)及び
図9(b)は、それぞれの極性信号における電圧生成セクション50aと、マイクロチップ2との接続を示す図面である。破線の矢印は、電気泳動電圧の伝搬を示す。
図9(a)を参照すると、順方向スイッチペア71が導通になると共に逆方向スイッチペア72が非導通になる。
図9(b)を参照すると、逆方向スイッチペア72が導通になると共に順方向スイッチペア71が非導通になる。
【0068】
図10は、倫理レベル「H」及び「L」を有するスイッチ選択信号S1
SEL及びスイッチ選択信号S2
SELと、順方向印加及び逆方向印加に係る電気泳動電圧の波形を示す。
図10において、逆方向印加に係る電気泳動電圧の波形に引き続き順方向印加に係る電気泳動電圧の波形が示されているけれども、逆方向に係る電気泳動電圧の印加に先立って順方向に係る電気泳動電圧の印加を行うことができる。任意の回数の逆方向に係る電気泳動電圧の印加の繰り返し、或いは任意の回数の順方向に係る電気泳動電圧の印加の繰り返しも可能である。
【0069】
図11は、本実施の形態に係る電気泳動装置を制御する方法の主要な手順を示すフローチャートである。引き続く説明において、理解を容易にするために、既に参照された図面における参照符号を用いる。電気泳動装置1を制御する方法100は、例えば以下の手順を備えることができる。
【0070】
手順S101では、キャピラリー4を有する測定具を用いる電気泳動装置1を準備する。電気泳動装置1は、電源装置20及び入力デバイス90を含む。電気泳動装置1の準備は、例えば電気泳動装置1の譲受、電気泳動装置1の製造、及び電気泳動装置1の借用、等を包含する。
【0071】
手順S102では、電源装置20において選択可能な順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方を示す電圧極性を指定する指示を入力デバイス90を介して受ける。
【0072】
手順S103では、受けた指示に従って電源装置20において電圧極性の設定を行うと共に、電気泳動装置1にセットアップされた測定具のキャピラリー4に、電圧極性の設定に従って電気泳動電圧を第1外側端子70a及び第2外側端子70bを介して印加する。受けた指示に従う電圧極性の設定は、順方向極性を示すことができ、或いは、逆方向極性を示すことができる。
【0073】
この方法100によれば、電源装置20において選択可能な順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方を示す電圧極性の設定に従って、電気泳動電圧を印加することができる。高電圧生成回路53を動作させる前に、高電圧生成回路53の出力が、キャピラリー4への印加電圧に関して選択可能な電圧極性に従って、第1外側端子70a及び第2外側端子70bのいずれか一方に接続される。電気泳動装置1にセットアップされたキャピラリー4は、第1外側端子70a及び第2外側端子70bを介して電気泳動電圧を受ける。
【0074】
電気泳動装置1を制御する方法100は、例えば、更に以下の手順を備えることができる。
【0075】
手順S104では、キャピラリー4に高電圧生成回路53からの電圧を印加した後に、高電圧生成回路53の動作を停止させる。
【0076】
手順S105では、高電圧生成回路53の動作を停止させた後に、入力デバイス90を介して電圧極性に係る別の指示を受ける。
【0077】
手順S106では、別の指示に従って電源装置20において電圧極性の設定を行う。電圧極性の設定に従って、電気泳動装置1にセットアップされた測定具のキャピラリー4に電気泳動電圧を電源装置20の第1外側端子70a及び第2外側端子70bを介して印加する。受けた指示に従う電圧極性の設定は、順方向極性を示すことができ、或いは、逆方向極性を示すことができる。
【0078】
この方法100によれば、電圧極性に係る別の指示を受ける際には、高電圧生成回路53の動作を停止させる。別の指示は、先の指示と同じであることができ、また異なることができる。
【0079】
図12は、本実施の形態に係る電気泳動装置1の電源装置20を制御する方法の主要な手順を示すフローチャートである。電源装置20を制御する方法110は、例えば以下の手順を備えることができる。
【0080】
手順S111では、電源装置20において選択可能な順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方を示す電圧極性に従って電源装置20の第1外側端子70a及び第2外側端子70bのいずれか一方に電源装置20の高電圧生成回路53の出力を接続する。
【0081】
手順S112では、第1外側端子70a及び第2外側端子70bのいずれか一方に高電圧生成回路53の出力を接続した後に高電圧生成回路53を動作させる。高電圧生成回路53からの電気泳動電圧を、電気泳動装置1にセットアップされた測定具のキャピラリー4に第1外側端子70a又は第2外側端子70bを介して印加する。
【0082】
この方法110によれば、高電圧生成回路53を動作させる前に、高電圧生成回路53の出力が、キャピラリー4への印加電圧において選択可能な電圧極性に従って第1外側端子70a及び第2外側端子70bのいずれか一方に接続される。電気泳動装置1にセットアップされたキャピラリー4は、第1外側端子70a及び第2外側端子70bを介して電気泳動電圧を受ける。
【0083】
図2及び
図3を再び参照しながら、電源装置20の詳細を説明する。
【0084】
図2及び
図3に示すように、電源装置20は、入力制御回路50、イネーブル回路52、高電圧生成回路53(インバータトランス回路54及びCCW回路56を含む)、出力保護回路58、出力電圧制御回路60、電流検出回路62、及び電圧検出回路64を備える。また、電源装置20には、第1外側端子70a及び第2外側端子70bが提供されており、第1外側端子70a及び第2外側端子70bを介して、マイクロチップ2が接続される。また、電源装置20は、第2出力電極68、第3出力電極74、第2入力電極82、第3入力電極84、及び第4入力電極86を備えており、これらの導電体を介して、制御装置10に接続される。
【0085】
電源装置20は、制御装置10から第2入力電極82を介して受けるイネーブル信号SENBに応じて、マイクロチップ2に、測定に必要な所定の大きさの電流を流すための印加電圧を生成する機能を有する。電源装置20は、マイクロチップ2に印加したと想定される想定電圧の大きさに応じた電流制御信号SICNTの大きさに基づきインバータトランス回路54への入力電圧を変更する機能を有する。入力電圧の変更は、試料40をキャピラリー4で電気泳動させるための電圧印加の初期過程において行われる。
【0086】
図3に示すように、イネーブル回路52は、抵抗素子R1~R3、トランジスタTr1、及びトランジスタTr2を有する。トランジスタTr1は、例えばnpn型バイポーラトランジスタであることができ、トランジスタTr2は、Pチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)であることができる。イネーブル回路52は、第2入力電極82において受けたイネーブル信号S
ENBに応じて、インバータトランス回路54の一次側への電圧の入力状態(オン/オフ)を制御する。
【0087】
イネーブル回路52において、エミッタ接地型回路のトランジスタTr1のベースは、第2入力電極82に抵抗素子R1を介して接続されており、またトランジスタTr1のエミッタに抵抗素子R2を介して接続される。トランジスタTr1のコレクタは、抵抗素子R3を介して駆動電圧Vddの電源線に接続される。トランジスタTr2のゲートは、また、トランジスタTr1のコレクタと抵抗素子R3の共有ノードに接続されており、この結果、トランジスタTr2のゲートは、抵抗素子R3を介してトランジスタTr2のソースに接続される。
【0088】
入力制御回路50は、第3入力電極84を介して入力される電流モニタ信号SIMONの大きさと、第4入力電極86を介して入力される電流制御信号SICNTとを比較する。次いで、入力制御回路50は、電流モニタ信号SIMONの大きさと電流制御信号SICNTの大きさとが一致するように、インバータトランス回路54に入力される入力電圧の大きさを制御する。この制御に応答して、電流モニタ信号SIMONが変化する。
【0089】
具体的には、入力制御回路50は、オペアンプAp1、Ap2、抵抗素子R4~R13、容量素子C1、C2、及びトランジスタTr3、Tr4、Tr5を有する。トランジスタTr3、Tr5の各々は、npn型バイポーラトランジスタであることができ、トランジスタTr4は、Nチャネル型のMOSFETであることができる。
【0090】
オペアンプAp1の非反転入力は、第4入力電極86に接続されており、第4入力電極86を介して電流制御信号SICNTを受ける。オペアンプAp1の反転入力と出力とは互いに接続されて、ボルテージフォロアを構成する。オペアンプAp1の出力は、抵抗素子R9を介してオペアンプAp2の非反転入力に接続される。
【0091】
オペアンプAp2の反転入力は、抵抗素子R8を介して第3入力電極84と接続されており、第3入力電極84を介して電流モニタ信号SIMONを受ける。オペアンプAp2の出力は、並列に接続された抵抗素子R10及び容量素子C1を介してオペアンプAp2の反転入力に接続される。これらの接続によれば、オペアンプAp2は、反転増幅回路として構成されることができる。反転増幅回路の出力、具体的にはオペアンプAp2の出力は、抵抗素子R11を介してトランジスタTr5のベースに接続される。トランジスタTr5のエミッタは、直列に接続された容量素子C2及び抵抗素子R13を介して低電位電源線(接地)に接続される。また、トランジスタTr5のベースは、トランジスタTr5のエミッタに抵抗素子R12を介して接続される。トランジスタTr5のコレクタは、イネーブル回路52のトランジスタTr2のドレインに接続される。
【0092】
エミッタ接地型回路のトランジスタTr3のベースは、第2入力電極82に抵抗素子R4を介して接続されており、またトランジスタTr3のベースは、抵抗素子R5を介してトランジスタTr3のエミッタに接続される。トランジスタTr3のコレクタは、抵抗素子R6を介して高電位電源線Vccに接続され、また、トランジスタTr4のゲートに接続される。トランジスタTr4のドレインは、抵抗素子R9を介してオペアンプAp1の出力、及び直接にオペアンプAp2の非反転入力に接続される。オペアンプAp2の非反転入力は、抵抗素子R7を介して低電位電源線(接地)に接続される。トランジスタTr4のソースは、低電位電源線(接地)に接続される。
【0093】
インバータトランス回路54の一次側の電圧の入力は、入力制御回路50の出力に接続されており、インバータトランス回路54は、入力制御回路50から入力された直流(DC)の入力電圧を昇圧すると共に、昇圧された交流(AC)の電圧を生成してCCW回路56に出力する。
【0094】
CCW回路56は、インバータトランス回路54から出力された電圧を増幅すると共に、直流電圧に整流して出力する。CCW回路56は、複数の容量素子(例えば、容量素子C3からC8)及び複数のダイオード(例えば、ダイオードD1からD6)を有する、具体的には、このような接続は、3段のCCW回路を構成して、入力された電圧のピーク入力電圧の6倍の大きさの電圧を出力する。この電圧は、実印加電圧である。
【0095】
CCW回路56では、
図3を参照すると、容量素子C3、C5、C7は直列に接続されており、容量素子C4、C6、C8も直列に接続されている。ダイオードD1のアノードは容量素子C4とインバータトランス回路54との間のノードに接続されており、カソードは容量素子C3と容量素子C5との間の共有ノードに接続されている。ダイオードD2のアノードは、容量素子C4と容量素子C6との間の共有ノードに接続されており、カソードは、容量素子C3と容量素子C5との間の共有ノードに接続されている。ダイオードD3のアノードは、容量素子C4と容量素子C6との間の共有ノードに接続されており、カソードは、容量素子C5と容量素子C7との間の共有ノードに接続されている。ダイオードD4のアノードは、容量素子C5と容量素子C7との間の共有ノードに接続されており、カソードは、容量素子C6と容量素子C8との間の共有ノードに接続されている。ダイオードD5のアノードは、容量素子C6と容量素子C8との間の共有ノードに接続されており、カソードは、容量素子C7に接続されている。ダイオードD6のアノードは容量素子C7に接続されており、カソードは容量素子C8に接続されている。
【0096】
図3に示すように、出力保護回路58は、直列に接続された抵抗素子R20~R23を備える。出力保護回路58は、CCW回路56からのリップルを低減するためのローパスフィルタとしても機能する。そのため、出力保護回路58は、RCローパスフィルタを構成するように接続された抵抗素子R20~R23及び容量素子C12を備える。また、出力保護回路58は、マイクロチップ2を経由することなく第1内側導電体80aと第2内側導電体80bとの接続が生成された場合に、出力保護回路58の出力の電圧を本来の高電圧に比べて大きく低下させることができる。
【0097】
出力保護回路58から出力された電圧がマイクロチップ2に印加される。出力電圧制御回路60は、CCW回路56の出力電圧をモニタし、その出力電圧の大きさが所定の大きさ以上になった場合に、インバータトランス回路54の一次側に入力される電流を遮断することにより、出力電圧が過電圧となることを抑制する。
【0098】
出力電圧制御回路60は、オペアンプAp3、抵抗素子R14~R17、容量素子C9、及びトランジスタTr6、Tr7を有する。トランジスタTr6は、npn型のバイポーラトランジスタであることができ、トランジスタTr7はNチャネル型のMOSFETであることができる。
【0099】
オペアンプAp3の反転入力は、逆方向のダイオードDI1と、CCW回路56と低電位電源線(接地)との間に接続された分圧回路、具体的には、直列接続の抵抗素子R18、R19によって分圧された分圧電圧(CCW回路56の出力電圧の分圧)を提供する分圧回路と、に接続される。本実施例では、抵抗素子R18の抵抗値を高く、抵抗素子R19の抵抗値を低く(少なくとも抵抗素子R18より低く)することによって、オペアンプAp3の非反転入力に入力される電圧の電圧値をより低くしている。具体例として、抵抗素子R18の抵抗値としては100MΩであり、抵抗素子R19の抵抗値としては100kΩであることができる。
【0100】
オペアンプAp3の非反転入力は、基準電圧源に接続される。この基準電圧源は、高電位電源線Vccを分圧した電圧を提供する分圧回路、例えば直列に接続された抵抗素子R14及びR15と、分圧回路の出力に接続された容量素子C9を含む。高電位電源線Vccの電圧を分圧した電圧の大きさは、CCW回路56と低電位電源線(接地)との間に接続された分圧回路に出力電圧に合わされる。
【0101】
オペアンプAp3の出力は、抵抗素子R16を介して、エミッタ接地型回路のトランジスタTr6のコレクタ及びトランジスタTr7のゲートに接続される。トランジスタTr7のソースは、抵抗素子R17を介して低電位電源線(接地)に接続される。トランジスタTr6のベースは、トランジスタTr7のソースに接続される。この接続によれば、トランジスタTr6及び抵抗素子R17は、インバータトランス回路54の一次側に入力される電流を制御する電流制御回路として機能する。また、トランジスタTr7のドレインは、インバータトランス回路54の一次側の低電位側ラインに接続される。
【0102】
電流検出回路62は、第1外側端子70aを介して印加電圧を印加した際に、マイクロチップ2に流れた電流を第2内側導電体80bを介して受ける。電流検出回路62は、流れた電流を監視して、該電流の大きさに対応した電流モニタ信号SIMONを第2出力電極68に提供する。電流モニタ信号SIMONは、第2出力電極68から制御装置10及び第3入力電極84を介して入力制御回路50に入力される。電流検出回路62では、電流モニタ信号SIMONが実印加電圧の大きさに応じた信号である。
【0103】
具体的には、電流検出回路62は、オペアンプAp4、抵抗素子R24~R26、及び容量素子C13を有する。オペアンプAp4の非反転入力は、第2外側端子70bに接続されており、また抵抗素子R24を介して低電位電源線(接地)に接続される。オペアンプAp4の非反転入力への入力電圧の大きさは、マイクロチップ2を流れた電流の大きさと、抵抗素子R24の抵抗値とによって定まる。抵抗素子R24の抵抗値は、例えば、マイクロチップ2に想定される負荷の大きさに応じて定められる。
【0104】
また、オペアンプAp4の出力は、並列に接続された抵抗素子R26及び容量素子C13を介して反転入力に接続される。オペアンプAp4の反転入力は、抵抗素子25を介して接地される。この接続によれば、オペアンプAp4を反転増幅回路として動作させる。オペアンプAp4の出力は第2出力電極68に接続されて、電流モニタ信号SIMONを提供する。
【0105】
電圧検出回路64は、出力保護回路58から出力された印加電圧を監視して、出力保護回路58の出力電圧の大きさに応じた電圧モニタ信号SVMONを生成し、電圧モニタ信号SVMONは、第3出力電極74に提供される。電圧モニタ信号SVMONは、第3出力電極74から出力されて、制御装置10に入力される。電圧検出回路64では、電圧モニタ信号SVMONが実印加電圧の大きさに応じた信号である。
【0106】
電圧検出回路64は、オペアンプAp5、抵抗素子R27~R30、及び容量素子C14を有する。オペアンプAp5の非反転入力は、分圧回路(直列に接続された抵抗素子R27及び抵抗素子R28)及び逆方向のダイオードDI2に接続される。この分圧回路は、低電位電源線(接地)と出力保護回路58の出力(第1内側導電体80a)との間に接続される。オペアンプAp5の非反転入力は、CCW回路56から出力された電圧が抵抗素子R20~R27とR28とによって分圧された電圧を受ける。オペアンプAp5の出力は、並列に接続された抵抗素子R30及び容量素子C14を介してオペアンプAp5の反転入力に接続される。また、オペアンプAp5の反転入力は、抵抗素子29を介して低電位電源線(接地)に接続される。このような接続により、オペアンプAp5は、反転増幅回路として動作する。オペアンプAp5の出力は、第3出力電極74に接続されて、電圧モニタ信号SVMONを第3出力電極74に提供する。
【0107】
出力電圧制御回路60及び電圧検出回路64は、いずれもCCW回路56から出力された電圧をモニタする機能を有する一方で、電圧検出回路64は、出力保護回路58を介してCCW回路56に接続される。これ故に、出力電圧制御回路60及び電圧検出回路64の各々に印加される電圧の大きさが異なるので、出力電圧制御回路60及び電圧検出回路64の回路構成は、互いに異なる。
【0108】
電源装置20の動作を説明する。電気泳動装置1は、試料40をキャピラリー4で電気泳動させるための電圧印加の初期過程において以下のような制御を行う。マイクロチップ2(試料40)の測定を行う場合に、制御装置10が、電源装置20を動作させるためのイネーブル信号SENBを出力する。制御装置10の記憶装置403は、マイクロチップ2に所定の大きさの電流が流れたと想定した場合に生じる電圧(以下、「想定電圧」という)のデータを格納しており、制御装置10は、想定電圧に応じた電流制御信号SICNTを出力する。
【0109】
電源装置20は、イネーブル信号SENBが制御装置10からイネーブル回路52に入力されると、電気泳動電圧を生成する動作を行う。具体的には、イネーブル信号SENBに応じて、イネーブル回路52のトランジスタTr1がオン状態となる。このオン状態に応答して、イネーブル回路52のトランジスタTr2がオン状態となり、駆動電圧Vddが、入力制御回路50に供給される。
【0110】
駆動電圧Vddを受けて、入力制御回路50は、インバータトランス回路54へ入力電圧を提供する。具体的には、トランジスタTr3が、第2入力電極82からのイネーブル信号SENBに応答して、オン状態となり、トランジスタTr3の導通は、トランジスタTr4をオフ状態にする。オペアンプAp1は、第4入力電極86を介して電流制御信号SICNTを受ける。オペアンプAp2は、オペアンプAp1からの電流制御信号SICNTを非反転入力に受けると共に、第3入力電極84を介して電流モニタ信号SIMONを反転入力に受ける。これに応答して、オペアンプAp2は、電流制御信号SICNTの大きさ及び電流モニタ信号SIMONの大きさに応じた電圧信号を生成する。この電圧信号は、トランジスタTr5のベースに提供される。この信号に応答して、トランジスタTr5がオン状態となり、インバータトランス回路54への入力電圧がトランジスタTr5を介して提供される。
【0111】
制御ループの始まり。
インバータトランス回路54は、トランジスタTr5を介して入力電圧を受ける。インバータトランス回路54は、入力電圧を昇圧した交流電圧を出力する。
【0112】
CCW回路56は、インバータトランス回路54から出力された昇圧電圧を電圧増幅(例えば、6倍)して出力する。CCW回路56から出力された出力電圧の大きさが、印加電圧の大きさに応じた所定の大きさ以上の値になった場合に、インバータトランス回路54の一次側に入力される電流が遮断される。
【0113】
CCW回路56からの出力電圧は、出力保護回路58を介して、第1外側端子70aから印加電圧として出力される。
【0114】
CCW回路56からの出力電圧は、出力保護回路58を介して、抵抗素子R27とR28との直列接続を含む分圧回路に提供され、分圧回路は、分圧値を電圧検出回路64に提供する。電圧検出回路64は、出力保護回路58から出力された電圧(分圧値)に応じた電圧モニタ信号SVMONを生成し、電圧モニタ信号SVMONは、第3出力電極74を介して制御装置10へ提供される。
【0115】
一方、マイクロチップ2は、その両端に、第1外側端子70aに接続された第1電極22と、第2外側端子70bに接続された第2電極24とからの印加電圧を受けて、試料40の測定が可能になる。測定の際には、マイクロチップ2(試料40)には、実印加電圧に応じた電流が流れる。
【0116】
この電流は、電流検出回路62に入力されて、電流検出回路62は、マイクロチップ2を流れた電流の大きさに応じた電流モニタ信号SIMONを生成し、電流モニタ信号SIMONは、第2出力電極68を介して制御装置10に提供される。電流モニタ信号SIMONは、制御装置10及び第1入力電極84を介して入力制御回路50に提供される。
【0117】
入力制御回路50では、オペアンプAp2は、電流モニタ信号SIMONの大きさと、電流制御信号SICNTの大きさとを比較し、比較結果に基づいてインバータトランス回路54の入力電圧を変更する信号を生成する。具体的には、オペアンプAp2は、電流モニタ信号SIMONの大きさと電流制御信号SICNTの大きさとの差に応じた大きさの信号をトランジスタTr5のベースに提供する。これに応じて、トランジスタTr5ではベース-エミッタ間電圧VBEの大きさが変わる。その変化に応じて、入力制御回路50からインバータトランス回路54への出力が変化する。従って、電流モニタ信号SIMONの大きさと電流制御信号SICNTの大きさとの差が実質的にあるときは、インバータトランス回路54に入力される入力電圧の大きさは、その差に応じて更新されていく。電流モニタ信号SIMONの大きさと電流制御信号SICNTの大きさとの差が実質的になくなると、インバータトランス回路54に入力される入力電圧の大きさは、維持される。
【0118】
一巡の更新が説明された。「制御ループの始まり」に戻って、更新の動作が繰り返される。
【0119】
これらの処理を繰り返して行う際には、記憶装置403に格納される想定電圧がループの度に更新されていき、更新された想定電圧に応じた電流制御信号が次のループで出力される。このように、ループ内の動作を繰り返し行うことにより、マイクロチップ2に想定電圧に応じた所定の大きさの電流が流れることになれば、電流の設定が完了する。その後、この所定の大きさの電流に対応した電圧がマイクロチップ2に印加される。試料40がキャピラリー4で電気泳動することによって、例えば、血液中のヘモグロビンA1c等の特定の成分を分析することを可能にする。この電気泳動中においても上記のループ内の各動作を繰り返し行っていてもよい。
【0120】
測定具としてディスポーザブルタイプのマイクロチップ2を用いると、負荷が一定ではないので、従来の電源装置を用いた場合、想定電圧の大きさと、実際にマイクロチップ2を流れた電流に基づいた実印加電圧の大きさとが一致しない場合がある。すなわち、測定具がディスポーザブルタイプのマイクロチップ2の場合、所定の大きさの電流がマイクロチップ2に流れない場合がある。このような場合に対しても、電源装置20では、上述のように、マイクロチップ2によらず、所定の大きさの電流を流すことを可能にしながら、高電圧の順極性印加及び逆極性印加を提供できる。
【0121】
また、電源装置20では、インバータトランス回路54から出力された昇圧電圧をCCW回路56により増幅するので、大電流を要さず比較的小電流で、高電圧の順極性印加及び逆極性印加を提供できる。
【0122】
電源装置20によれば、小電流であって印加する電圧の大きさの精度を高精度に維持しながら、高電圧の順極性印加及び逆極性印加を可能にする。また、電源装置20によれば、上記のようにインバータトランス回路54及びCCW回路56を用いているので、電源装置20が大型化することを抑制すると共にコストも抑制しながら、高電圧の順極性印加及び逆極性印加を可能にする。
【0123】
また、例えば、電源装置20は、電気泳動装置1以外の測定装置や分析装置に適用してもよい。なお、電源装置20は、測定具の負荷におけるばらつきに関係なく、高電圧の順極性印加及び逆極性印加を可能にする。
【0124】
また、電流検出回路62は、想定電圧の大きさと、想定電圧に応じた電流の大きさとに基づき調整することで、より高精度に電流の大きさの制御を行うことを可能とする。
【0125】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。
【0126】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電気泳動電圧の極性を一方向及びその逆方向の双方を選択可能な電源装置、この電源装置を含む電気泳動装置、及びこの電気泳動装置を制御する方法が提供される。
【0127】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0128】
1・・・電気泳動装置
10・・・制御装置
20・・・電源装置
50・・・入力制御回路
50a・・・電圧生成セクション
50b・・・電圧切替セクション
51・・・極性スイッチング回路
53・・・高電圧生成回路
54・・・インバータトランス回路
55・・・スイッチング制御回路
56・・・CCW回路
58・・・出力保護回路
60・・・出力電圧制御回路
61・・・リレー回路
61in・・・入力側
61out・・・出力側
62・・・電流検出回路
64・・・電圧検出回路
70a・・・外側端子
70b・・・外側端子
71・・・順方向スイッチペア
71a・・・順方向スイッチ
71b・・・順方向スイッチ
72・・・逆方向スイッチペア
72a・・・逆方向スイッチ
72b・・・逆方向スイッチ
73・・・スイッチデバイス
73a・・・入力側
73b・・・出力側
75・・・インターバル生成回路
80a・・・内側導電体
80b・・・内側導電体
80c・・・外側導電体
80d・・・外側導電体
80e・・・制御入力
81・・・モード制御回路
83・・・保持回路
85・・・禁止回路
87・・・禁止信号生成回路
R1~R30・・・抵抗素子