(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153655
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】除塵装置
(51)【国際特許分類】
E02B 5/08 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
E02B5/08 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063048
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】522137161
【氏名又は名称】株式会社筒井
(74)【代理人】
【識別番号】100188248
【弁理士】
【氏名又は名称】丹生 哲治
(72)【発明者】
【氏名】筒井 信悟
(57)【要約】
【課題】除塵作業後のスクリーンを水上で視認でき、また、一般的にスクリーンに比べて強度が劣るスクレーパの破損やサビなどが発生しにくく、高い除塵作業性が得られてメンテナンスも容易な除塵装置を提供する。
【解決手段】除塵作業時、電動ウインチ16により水路11の水面から両ガイドレール15に沿ってスクリーン14を上昇させ、その後、カム機構19によりスクレーパ18を移動して、各掻き取り爪17を塵掻き取り位置Pに配する。次にスクリーン14の下降中、塵が各掻き取り爪17で掻き取られる。よって、除塵作業をスクリーン14の自重を利用しながら地上でできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路に配置されて、複数本の除塵格子が左右平行な離間状態で組まれた格子枠状のスクリーンと、
前記水路に付設されて、該水路を流れる水の中から塵を捕捉する降下位置と前記水路の水面より上方の上昇位置との間で、前記スクリーンが昇降するのをガイドする左右一対のガイドレールと、
前記スクリーンを、前記両ガイドレールに沿って昇降させるスクリーン昇降手段と、
隣り合う前記各除塵格子の間に、左右平行に離間した複数本の掻き取り爪をそれぞれ差し込んで、前記スクリーンに捕捉された前記塵を掻き取るスクレーパと、
前記スクリーンの上昇時には、前記各掻き取り爪を前記スクリーンから離反させる一方、前記スクリーンの下降時には、前記スクリーンに捕捉された塵の掻き取りが可能な塵掻き取り位置まで前記各掻き取り爪をこのスクリーンに近接させるスクレーパ移動手段とを備えたことを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
前記スクレーパ移動手段は、
前記スクリーンに設けられて、このスクリーンの昇降方向へ長い直進カムと、前記両ガイドレールが固定される架台に設けられて、この直進カムの当接・離反により作動する従動節とを有したカム機構で、
前記従動節は、
前記スクリーンの上昇時で前記直進カムが当接している間は、前記スクレーパの各掻き取り爪を前記スクリーンから離反させる一方、前記スクリーンの下降時で少なくとも前記直進カムが当接している間は、前記スクレーパの各掻き取り爪を前記塵掻き取り位置まで近接させるリンク構造を有したものであることを特徴とする請求項1に記載の除塵装置。
【請求項3】
前記スクレーパは、その基端部が、水平軸を介して、前記架台の前記両ガイドレールより水路上流側の部分に軸支され、
前記従動節は、
前記架台の前記両ガイドレールより水路下流側の部分に、第1の水平ピンを介して、上部が軸支された第1のリンクと、
該第1のリンクの上端部に、第2の水平ピンを介して、長さ方向の中間部が軸支された第2のリンクと、
前記第1のリンクの下端部に、第3の水平ピンを介して、長さ方向の一端部が軸支されるとともに、その長さ方向の他端部が、第4の水平ピンを介して、前記スクレーパの上部に軸支された第3のリンクとを有し、
前記第2のリンクの長さ方向の水路上流側の端部には、昇降中の前記直進カムに当接されるカム当接ローラが軸支され、
前記第2のリンクの長さ方向の水路下流側の端部には、前記第2の水平ピンを中心として、前記第2のリンクのカム当接ローラ側の端部を、常時上方へ回動させようとするウエイトが連結され、
前記第1のリンクの上部には、前記スクリーンの昇降時において、前記ウエイトの作用により、前記カム当接ローラが昇降中の前記直進カムから離反する角度まで、前記第2の水平ピンを中心として、前記第2のリンクが回動するのを規制する第2のリンク用回動規制ストッパが突設され、
前記架台の前記両ガイドレールより水路下流側の部分には、前記スクリーンの下降時に、前記第3のリンクを介して、前記第1のリンクの回動に連動して回動する前記スクレーパの各掻き取り爪が、前記塵掻き取り位置を維持するように、前記第1のリンクの回動を規制する第1のリンク用回動規制ストッパが突設されたことを特徴とする請求項2に記載の除塵装置。
【請求項4】
前記スクレーパの表面には、前記各掻き取り爪により掻き取られた前記塵を、前記スクレーパの基端へ向かって滑落させるシュートが設けられ、
該シュートの基端の直下には、このシュートから落下した前記塵を外部へ排出するための傾斜した塵排出路が配されたことを特徴とする請求項1~請求項3のうち、何れか1項に記載の除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路の流水中に混入した枯葉やビニール等の塵を除去する除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、小水力発電の取水設備としての水路などを流れる水中に混ざり込んだ塵を取り除くものとして、従来、特許文献1の除塵装置などが知られている。
この除塵装置は、水路に配置されて、複数本の除塵格子が左右平行な離間状態で組まれた格子枠状の固定式スクリーンと、スクリーンに捕捉された塵を爪で掻き上げるレーキ(スクレーパ)と、レーキを昇降させる電動ウインチ(昇降手段)とを備えたものである。
【0003】
除塵作業時、所定量の塵がスクリーンに捕捉されると、電動ウインチを駆動してスクリーンの下部に待機されたレーキをスクリーンの表面に沿って上昇させ、スクリーンに付着した塵をレーキの爪で掻き上げて除去する。これにより、スクリーンに捕捉された塵を自動的に取り除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の除塵装置にあっては、スクリーンに付着した塵の除去作業が水中で行われていたため、以下のような課題があった。
(1)従来装置では、除塵作業が困難な水面下で行われていたため、水流の影響を受けてスクリーンに捕捉された塵を十分に除去できなかった。
(2)また、従来装置では、レーキを水路の水面下に配されたスクリーンの下部で待機させておく必要がある。そのため、金属製のレーキがサビ易いとともに、例えば豪雨時、水路に流れ込んだ瓦礫等が衝突して、レーキが破損するおそれもあった。
【0006】
(3)さらに、例えば流れの速い水路などでの除塵作業では、電動ウインチにより没水したレーキを上昇させて行われるスクリーン表面の塵の掻き上げ作業に想定外の負荷がかかり易く、塵の除去をスムーズにできないおそれがあった。
(3)さらにまた、水面下でのレーキによる除塵作業にあっては、掻き上げ途中の塵が水中に拡散し易く、掻き取ったはずの塵が、スクリーンに再び捕捉されてしまうおそれもあった。
(4)また、例えば、ビニールシートや枝などがレーキに絡まったり、サビや瓦礫の衝突などによってレーキが損傷した際には、その修復作業を水路の水面下で行わなければならならず、衣服の濡れを伴う重労働となっていた。
【0007】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、塵を捕捉したスクリーンが、スクリーンの昇降によって水路の水面から引き上げ、その後、スクレーパ移動手段によりスクレーパを移動させて、スクレーパに配設された複数の掻き取り爪(レーキ)をスクリーンの塵掻き取り位置に配置し、この状態でスクリーン昇降手段によりスクリーンを水面下に戻すようにすれば、スクリーンに捕捉された塵の除去作業を、スクリーンの自重を利用して地上で行うことができ、これにより上述した課題はすべて解消されることを知見し、この発明を完成させた。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであって、除塵作業後のスクリーンを水上で視認することができ、また、一般的にスクリーンに比べて強度が劣るスクレーパの破損やサビなどが発生しにくく、さらには高い除塵作業性が得られるとともに、メンテナンスも容易な除塵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、水路に配置されて、複数本の除塵格子が左右平行な離間状態で組まれた格子枠状のスクリーンと、前記水路に付設されて、該水路を流れる水の中から塵を捕捉する降下位置と前記水路の水面より上方の上昇位置との間で、前記スクリーンが昇降するのをガイドする左右一対のガイドレールと、前記スクリーンを、前記両ガイドレールに沿って昇降させるスクリーン昇降手段と、隣り合う前記各除塵格子の間に、左右平行に離間した複数本の掻き取り爪をそれぞれ差し込んで、前記スクリーンに捕捉された前記塵を掻き取るスクレーパと、前記スクリーンの上昇時には、前記各掻き取り爪を前記スクリーンから離反させる一方、前記スクリーンの下降時には、前記スクリーンに捕捉された塵の掻き取りが可能な塵掻き取り位置まで前記各掻き取り爪をこのスクリーンに近接させるスクレーパ移動手段とを備えたことを特徴とする除塵装置である。
【0010】
水路の種類は限定されない。例えば、小水力発電の取水設備としての水路の他、各種の農業用水路、各種の工業用水路、各種の上水道用の水路などを採用することができる。
スクリーンの素材は任意である。例えば、鉄、鋼、アルミニウム合金などの各種の金属を採用することができる。
スクリーンの形状は、上下方向に延びた複数本の除塵格子が、左右平行な離間状態で組まれた格子枠状のものであれば任意である。
スクリーンのサイズは、水路の幅方向(左右方向)の全域を被えるサイズが好ましい。
【0011】
ガイドレールの本数は、通常、水路の幅方向の両側に配置可能な2本であるが、スクリーンを昇降可能であれば、3本以上でもよい。
スクリーン昇降手段の種類は任意である。例えば、ハンドウインチや手動ラックジャッキといった手動式のものでも、電動ウインチやモータ駆動型のねじ送り装置などの自動式のものでもよい。
スクレーパの素材は任意である。例えば、鉄、鋼、アルミニウム合金などの各種の金属を採用することができる。
スクレーパの形状は、上下方向に延びて左右平行に離間した複数本の掻き取り爪を有するものであれば任意である。
【0012】
スクレーパ移動手段の構造は、スクリーン上昇時に、各掻き取り爪をスクリーンから離反させることができるとともに、スクリーン下降時には、スクリーンに捕捉された塵の掻き取りが可能な塵掻き取り位置まで各掻き取り爪をスクリーンに近接できれば任意である。例えば、各種のカム機構、各種のジャッキ機構、各種のモータによる移動機構などを採用することができる。このうち、特にスクリーンの昇降力を利用して作動可能なカム機構が好ましい。
また、スクレーパ移動手段によるスクレーパの移動方向は任意である。例えば、回転方向、直線方向、曲線方向でもよい。
ここでいう“塵の塵掻き取り位置”とは、スクリーンの表面(水路の上流を向いた面)側であって、スクリーンに捕捉された塵を各掻き取り爪によって掻き取ることができる位置をいう。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記スクレーパ移動手段は、前記スクリーンに設けられて、このスクリーンの昇降方向へ長い直進カムと、前記両ガイドレールが固定される架台に設けられて、この直進カムの当接・離反により作動する従動節とを有したカム機構で、前記従動節は、前記スクリーンの上昇時で前記直進カムが当接している間は、前記スクレーパの各掻き取り爪を前記スクリーンから離反させる一方、前記スクリーンの下降時で少なくとも前記直進カムが当接している間は、前記スクレーパの各掻き取り爪を前記塵掻き取り位置まで近接させるリンク構造を有したものであることを特徴とする請求項1に記載の除塵装置である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記スクレーパは、その基端部が、水平軸を介して、前記架台の前記両ガイドレールより水路上流側の部分に軸支され、前記従動節は、前記架台の前記両ガイドレールより水路下流側の部分に、第1の水平ピンを介して、上部が軸支された第1のリンクと、該第1のリンクの上端部に、第2の水平ピンを介して、長さ方向の中間部が軸支された第2のリンクと、前記第1のリンクの下端部に、第3の水平ピンを介して、長さ方向の一端部が軸支されるとともに、その長さ方向の他端部が、第4の水平ピンを介して、前記スクレーパの上部に軸支された第3のリンクとを有し、前記第2のリンクの長さ方向の水路上流側の端部には、昇降中の前記直進カムに当接されるカム当接ローラが軸支され、前記第2のリンクの長さ方向の水路下流側の端部には、前記第2の水平ピンを中心として、前記第2のリンクのカム当接ローラ側の端部を、常時上方へ回動させようとするウエイトが連結され、前記第1のリンクの上部には、前記スクリーンの昇降時において、前記ウエイトの作用により、前記カム当接ローラが昇降中の前記直進カムから離反する角度まで、前記第2の水平ピンを中心として、前記第2のリンクが回動するのを規制する第2のリンク用回動規制ストッパが突設され、前記架台の前記両ガイドレールより水路下流側の部分には、前記スクリーンの下降時に、前記第3のリンクを介して、前記第1のリンクの回動に連動して回動する前記スクレーパの各掻き取り爪が、前記塵掻き取り位置を維持するように、前記第1のリンクの回動を規制する第1のリンク用回動規制ストッパが突設されたことを特徴とする請求項2に記載の除塵装置である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記スクレーパの表面には、前記各掻き取り爪により掻き取られた前記塵を、前記スクレーパの基端へ向かって滑落させるシュートが設けられ、該シュートの基端の直下には、このシュートから落下した前記塵を外部へ排出するための傾斜した塵排出路が配されたことを特徴とする請求項1~請求項3のうち、何れか1項に記載の除塵装置である。
塵排出路の形状は任意である。また、塵排出路の引き回しも任意である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、スクリーンの除塵作業時には、まず、塵が捕捉されたスクリーンを、スクリーン昇降手段を利用して、水路の水面から左右一対のガイドレールに沿って上昇させ、その後、スクレーパ移動手段によりスクレーパを移動して、各掻き取り爪をスクリーンの塵掻き取り位置に配する。
【0017】
次いで、この状態のまま、スクリーンの自重を利用しながらスクリーン昇降手段によりスクリーンを水面下まで戻して行くと、その下降途中で、スクリーンに捕捉された塵がスクレーパの各掻き取り爪によって掻き取られる。
これにより、スクリーンに捕捉された塵の除去作業を、スクリーンの自重を利用して地上で行うことができる。
【0018】
その結果、水面下で除塵作業を行う従来装置では行えなかった除塵作業後のスクリーンの水上での視認(確認)が可能となり、また、一般的にスクリーンと比較して強度が劣るスクレーパの破損やサビなどが発生しにくく、さらには高い除塵作業性が得られるとともに、メンテナンスも容易となる。
【0019】
特に、請求項2に記載の発明によれば、スクレーパ移動手段として、スクリーンに設けられた直進カムと、ガイドレールを支持する架台に設けられたリンク式の従動節とを具備するカム機構を採用したため、スクレーパ移動手段、ひいては除塵装置の簡素化が図れ、装置コストが廉価となるとともに部品点数も少なくなって、故障もしにくくなる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明によれば、スクリーンの除塵作業時には、まず、塵が捕捉されたスクリーンを、スクリーン昇降手段により、左右一対のガイドレールに沿って水路の水面から徐々に上昇させる。
その途中で、スクリーンの直進カムがカム当接ローラに当接し、カム当接ローラと第2のリンクとを、第2の水平ピンを中心にして上方回動させる。
【0021】
その後、第2のリンクの水路下流側の部分が第2のリンク用回動規制ストッパに当接して、これらの回動は規制されるものの、その後もスクリーンが上昇することで、直進カムによるカム当接ローラ(第2のリンク)への押し上げは進行し、第1の水平ピンを中心として、第1のリンクが、そのリンク下部を水路上流へ向かうように回動する。
これにより、第3のリンクを介して、スクレーパが水平軸を中心として上方へ回動し、その結果、スクレーパに配設された各掻き取り爪が、予め設定された塵掻き取り位置から外方(水路上流の方向)へ離反する。この離反状態は、スクリーンの直進カムがカム当接ローラに当接している間だけ継続される。
【0022】
その後、直進カムがカム当接ローラを通過した時、直進カムを含むスクリーンが、自重により水平軸を中心にして水路下流方向へ傾倒する。
これに伴い、第3のリンクを介して、第1のリンクが、第1の水平ピンを中心にして先ほどとは反対方向へ回動し、その回動は、第1のリンクの下部が第1のリンク用回動規制ストッパに当接することで停止する。このとき、スクレーパの各掻き取り爪は、塵掻き取り位置にそれぞれ戻る。
【0023】
次に、スクリーンの自重を利用しながらスクリーン昇降手段により、両ガイドレールに沿ってスクリーンを徐々に水面下まで戻して行くと、その下降途中で、直進カムの下端部がカム当接ローラに当接し、これを押し下げることで、第2の水平ピンを中心にして、第2のリンクが、先ほどとは反対に第2のリンク用回動規制ストッパから離反する方向へ回動する。
【0024】
このような状態は、少なくとも直進カムがカム当接ローラを通過するまで維持されるため、スクリーンの下降に伴い、これに捕捉された塵がスクレーパの各掻き取り爪によって掻き取られる。
その結果、スクリーンの昇降を利用してカム機構を作動させることで、スクリーンに捕捉された塵を、確実に自動除去することができる。
【0025】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、スクレーパの各掻き取り爪によって掻き取られたスクリーンの塵は、シュートの表面を滑落して、シュートの基端から直下に配される傾斜した塵排出路に落下する。その後、この落下した塵は、塵排出路を滑落して除塵装置の外に排出される。
これにより、スクレーパよって掻き取られた塵を、無動力で装置外へ排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例1に係る除塵装置の使用状態の側面図である。
【
図3】
図1の除塵装置に使用されるスクリーンの拡大正面図である。
【
図5】
図1の除塵装置に使用されるスクレーパの拡大正面図である。
【
図7】
図1に示す除塵装置において、スクリーンの昇降に伴ったカム機構の作動を示す要部拡大側面図である。
【
図8】
図1に示す除塵装置において、スクリーンがガイドレールの中間部に達した状態を示す側面図である。
【
図10】
図1に示す除塵装置において、スクリーンがガイドレールの上部に達した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して具体的に説明する。ここでは、除塵装置として小水力発電の取水設備としての水路を流れる水中に混入した塵を除去するものを例に説明する。
【実施例0028】
図1および
図2において、10は本発明の実施例1に係る除塵装置である。この除塵装置10は、小水力発電の取水設備として水路11を跨ぐように立設された架台12と、水路11に配置されて、複数本の除塵格子13が左右平行な離間状態で組まれた格子枠状のスクリーン14と、下部が水路11内に配置されて、水路11を流れる水の中から塵を捕捉する降下位置と水路11の水面より上方の上昇位置との間で、スクリーン14が昇降するのをガイドする左右一対のガイドレール15と、両ガイドレール15に沿って、スクリーン14を昇降させる電動ウインチ(スクリーン昇降手段)16と、隣り合う各除塵格子13の間に、左右平行に離間した複数本の掻き取り爪17をそれぞれ差し込んで、スクリーン14に捕捉された塵を掻き取るスクレーパ18と、スクリーン14の上昇時には、各掻き取り爪17をスクリーン14から離反させる一方、スクリーン14の下降時には、スクリーン14に捕捉された塵の掻き取りが可能な塵掻き取り位置Pまで各掻き取り爪17をこのスクリーン14に近接させるカム機構(スクレーパ移動手段)19とを備えている。
【0029】
以下、
図1~
図7を参照して、これらの構成部品を具体的に説明する。
図1および
図2に示すように、架台12は、側面視して縦長な略直角台形状を有した金属製の枠体である。
この架台12は、前後方向に延びた長尺な左,右下枠20と、上下方向に延びた左,右後枠21と、前後方向に延びた短尺な左,右上枠23と、前記左,右後枠21と対応するガイドレール15の長さ方向の中間部とを連結する、前後方向に延びた左,右中間枠22と、左,右上枠23の上端部間を連結する左右方向に延びた上後枠24と、左,右上枠23の下端部間を連結する左右方向に延びた下後枠25とを有している。
【0030】
このうち、左,右下枠20は、対応するガイドレール15を通過して水路上流方向へ延長している。これらの延長部分の基部と、対応するガイドレール15の長さ方向の中間より若干下方部分との間には、架台12の両ガイドレール15より水路上流側の部分を構成する、左右一対の略逆L字状を有した軸受支持枠26が各連結されている(
図7も参照)。
【0031】
図3および
図4に示すように、スクリーン14は、左,右側板となる後述の2枚の直進カム27の間に、所定ピッチで複数本の除塵格子13が平行に配置されるとともに、これらの板材を左右方向へ延びた細長い上下一対の連結ロッド28と、左右方向へ延びた4本の横枠ロッド29とによって、細格子状に連結したものである。電動ウインチ16のチェーン30は、上側の連結ロッド28の長さ方向の中間部に図示しないフックを介して掛止される。
【0032】
各除塵格子13の表側の縁には、水中の塵を引っ掛ける複数の掛止爪31が、その長さ方向に所定ピッチで突設されている。また、各横枠ロッド29のうち、直進カム27から突出した各端部には、各ガイドレール15を走行する左右対配置された複数のガイドローラ32が軸支されている。
【0033】
図1および
図2に示すように、両ガイドレール15は、上方へ向かうほど水路下流へ傾斜した一対の溝形鋼からなる。これらのガイドレール15は、その長さ方向の両端部を除く部分が、架台12の水路上流側の左,右枠材を構成している。このうち、両ガイドレール15の下端部は水路11内に配置され、また両ガイドレール15の上端部は、架台12より上方に突出している。
【0034】
図1および
図2に示すように、電動ウインチ16は、チェーン巻き上げ式のもので、両ガイドレール15の上端間を連結する横長な上枠材33の長さ方向の中間部に、保護カバー34を介して連結されている。電動ウインチ16の電源としては、バッテリなどの他、図示しない太陽光パネルにより得られた電気を利用してもよい。これにより、送電線がない山奥の僻地の水路でも、除塵装置10を使用することができる。
【0035】
図5および
図6に示すように、スクレーパ18は、上向きの爪先部17aを有した各掻き取り爪17の基端部に、左右方向へ長尺な1本の水平軸35がそれぞれ嵌入されている。この水平軸35の長さ方向の両端部が、各軸受支持枠26の上側に配設された左右一対の軸受36に軸支されている。
また、スクレーパ18の表面には、各掻き取り爪17により掻き取られた塵を、スクレーパ18の基端へ向かって滑落させる横長矩形状のシュート37が設けられている。
【0036】
このシュート37は薄肉な鉄板で、その幅方向の両端部に左右一対のサイドガイド38が屈曲形成されている。また、シュート37の上辺部の略全域には、各掻き取り爪17により掻き取った塵がシュート37に流れ込み易いように、段差状の切欠部37aが形成されている。
さらに、各掻き取り爪17の先部には、左右方向へ1本の長尺な操作ロッド(第4の水平ピン)39が一連に嵌入されている。この操作ロッド39の長さ方向の両端部には、後述する左右一対の第3のリンク40の他端部が軸支される(
図7を参照)。
【0037】
シュート37の基端の直下には、固定シュート41を介して、このシュート37から落下した塵を外部へ排出するための、右下方向へ傾斜した樋状の塵排出部(塵排出路)42が配されている。塵排出部42は、その上端部が、架台12の左下枠20に立設された小型の枠台43によって支持されている。
【0038】
図1、
図2および
図7に示す前記カム機構19は、スクリーン14の左,右側板を構成して、このスクリーン14の昇降方向へ長い左右一対の直進カム27と、両ガイドレール15が固定される架台12に設けられて、各直進カム27の当接・離反により作動する左右一対の従動節44とを有している。
【0039】
このうち、各直進カム27は、スクリーン14の両ガイドレール15に沿った昇降時に、各ガイドレール15の水路下流側より外方(後方)に突出した幅を有している。その突出幅は、直進カム27の全長にわたり一定であって、これらの突出部分が、実質的な板状のカム部を構成している。
また、これらのカム部は、先端部27aが上方へ延長されている。各先端部27aの先端部分は、後述するカム当接ローラ45の乗り上げがスムーズとなるように、傾斜カットされている。
【0040】
一方、各従動節44は、スクリーン14の上昇時で直進カム27が当接している間は、スクレーパ18の各掻き取り爪17をスクリーン14から離反させる一方、スクリーン14の下降時で、少なくとも直進カム27が当接している間は、各掻き取り爪17を塵掻き取り位置Pまで近接させるリンク構造を有している。
【0041】
ここで、
図1および
図7を参照して、リンク式の各従動節44を詳細に説明する。
この各従動節44は、架台12の両ガイドレール15より水路下流側の部分(ここでは、左,右中間枠22の各ガイドレール15側の端部付近)に、それぞれ第1の水平軸(第1の水平ピン)46を介して、上部が軸支された左右一対の第1のリンク47と、各第1のリンク47の上端部に、各第2の水平ピン48を介して、長さ方向の中間部が軸支された左右一対の第2のリンク49と、各第1のリンク47の下端部に、それぞれ第3の水平ピン50を介して、長さ方向の一端部が軸支されるとともに、その長さ方向の他端部が、操作ロッド39を介して、スクレーパ18の左,右上部に軸支された左右一対の第3のリンク40とを有している。
【0042】
このうち、各第1のリンク47は、それぞれの上端部が水路上流方向に“への字”に屈曲している。
また、各第2のリンク49の長さ方向の水路上流側の端部には、昇降中の直進カム27に当接される左右一対のカム当接ローラ45が軸支されている。
一方、各第2のリンク49の長さ方向の水路下流側の端部には、各第2の水平ピン48を中心として、各第2のリンク49のカム当接ローラ45側の端部を、常時上方へ回動させようとする左右一対のウエイト51が連結されている。
【0043】
さらに、各第1のリンク47の上部の水路下流側には、スクリーン14の昇降時において、対応するウエイト51の作用により、各カム当接ローラ45が昇降中の各直進カム27から離反する角度まで、各第2の水平ピン48を中心として、各第2のリンク49が回動するのを規制する左右一対の第2のリンク用回動規制ストッパ52が、連結棒61を介して突設されている。
【0044】
また、左,右中間枠22の各ガイドレール15側の端部付近の下部には、傾斜した短尺なアングル鋼60を介して、スクリーン14の下降時に、各第3のリンク40を介して、各第1のリンク47の回動に連動して回動するスクレーパ18の各掻き取り爪17の先端部が、塵掻き取り位置Pを維持するように、各第1のリンク47の回動を規制する左右一対の第1のリンク用回動規制ストッパ53が突設されている。
【0045】
ここでは、各第1のリンク用回動規制ストッパ53として、それぞれ長尺なねじ式ストッパを採用している。これにより、各カム当接ローラ45を、昇降中の各直進カム27に対する各カム当接ローラ45の当接状態を調整することができる。
一方、各第2のリンク用回動規制ストッパ52にも、長尺なねじ式ストッパを採用している。そのため、各掻き取り爪17の先端部を、塵掻き取り位置Pに正確に配置することができる。
【0046】
次に、
図1~
図11を参照して、本発明の実施例1に係る除塵装置10による、スクリーン14に捕捉された塵の除去作業を説明する。なお、ここでは、数時間毎にスクリーン14の除塵作業が行われるものとする。
図1、
図2および
図7に示すように、この除塵作業時には、まず、水路11を流れる水中の塵が捕捉されたスクリーン14を、電動ウインチ16のチェーン30を巻き上げて、矢印aのように左右一対のガイドレール15に沿って水路11内の水面から徐々に上昇させる。
【0047】
その途中で、スクリーン14の各直進カム27が対応するカム当接ローラ45に当接して乗り上げることで、各カム当接ローラ45および各第2のリンク49が、対応する第2の水平ピン48を中心にして上方へ回動して行く(矢印bを参照)。その際、各第2のリンク49の水路下流側の部分が各第2のリンク用回動規制ストッパ52に当接することで、これらの回動が規制される。
【0048】
その後もスクリーン14の上昇が継続することで、各直進カム27による各カム当接ローラ45の押し上げ(上方回動)が進行し、各第1の水平軸46を中心として、各第1のリンク47が、各々のリンク下部を水路上流へ向かわせるように回動する。
これにより、各第3のリンク40を介して、スクレーパ18が水平軸35を中心として上方へ回動し、その結果、スクレーパ18に配設された各掻き取り爪17が、予め設定された塵掻き取り位置Pから外方(水路上流の方向)へ離反する(同じく矢印bを参照)。この離反状態は、スクリーン14の各直進カム27が各カム当接ローラ45に当接している間だけ継続される。
【0049】
その後、各直進カム27が各カム当接ローラ45を通過した時、矢印cに示すように各スクレーパ18が、自重により各水平軸35を中心にして水路下流方向へ傾倒する。
これに伴い、各第3のリンク40を介して、各第1のリンク47が、各第1の水平軸46を中心にして先ほどとは反対方向へ回動し、それらの回動は、各第1のリンク47の下部が各第1のリンク用回動規制ストッパ53に当接することで停止される。このとき、スクレーパ18の各掻き取り爪17の先端部が、塵掻き取り位置Pにそれぞれ戻る。
【0050】
次に、スクリーン14の自重を利用しながら電動ウインチ16のチェーン30を徐々に繰り出すことで、矢印dに示すように、両ガイドレール15に沿ってスクリーン14をゆっくり水面下まで戻して行く。
その下降途中で、各直進カム27の下端部が各カム当接ローラ45に当接し、さらにこれを押し下げることで、矢印eに示すように、各第2の水平ピン48を中心にして、各第2のリンク49が、先ほどとは反対に各第2のリンク用回動規制ストッパ52から離反する方向へ回動する。
【0051】
このような状態は、少なくとも直進カム27がカム当接ローラ45を通過するまで(ここでは、次回(数時間後)、スクリーン14が上昇して各直進カム27の先端部が各カム当接ローラ45に当接するまで)維持される。そのため、このスクリーン14の下降に伴って、その表面に捕捉された塵が、スクレーパ18の各掻き取り爪17によって徐々に掻き取られて行く。
その後、こうして掻き取られた塵は、シュート37の表面を滑落して、シュート37の基端から固定シュート41を経て、その直下に配された塵排出部42に落下する。この落下した塵は、右下方向へ傾斜した塵排出部42を滑落しながら除塵装置10の外に排出される。
【0052】
このように構成したため、スクリーン14に捕捉された塵の除去作業を、スクリーン14の自重を利用して地上で行うことができる。その結果、水面下で除塵作業を行う従来装置では行えなかった除塵作業後のスクリーン14の水上での視認(確認)が可能となる。また、一般的にスクリーン14と比較して強度が劣るスクレーパ18の破損やサビなどが発生しにくくなる。さらには、高い除塵作業性が得られるとともに、メンテナンスも容易となる。
【0053】
また、ここでは、スクレーパ移動手段として、スクリーン14に設けられた直進カム27と、ガイドレール15を支持する架台12に設けられたリンク式の従動節44とを具備したカム機構19を採用している。そのため、スクレーパ移動手段、ひいては除塵装置10の簡素化が図れ、装置コストが廉価となるとともに、部品点数も減少し、故障もしにくくなる。
【0054】
しかも、スクレーパ移動手段として、上述した第3のリンク40、カム当接ローラ45、第1のリンク47、第2のリンク49、ウエイト51、第2のリンク用回動規制ストッパ52、および、第1のリンク用回動規制ストッパ53を有する各リンク式の従動節44と、各直進カム27とを具備したカム機構19を採用したため、スクリーン14の昇降を利用してカム機構19を作動させることができ、これによりスクリーン14に捕捉された塵を確実に自動除去することができる。
また、ここではスクレーパ18の各掻き取り爪17によって掻き取ったスクリーン14の塵を、シュート37および塵排出部42を介して外部排出するようにしたため、スクレーパ18よりスクリーン14から掻き取られた塵を、無動力で装置外へ排出することができる。