(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153665
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】3相誘導電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 17/14 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
H02K17/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063064
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】由良 元澄
【テーマコード(参考)】
5H013
【Fターム(参考)】
5H013GG00
(57)【要約】
【課題】大トルクを要する低速領域を6極動作で実現し、高い回転数を要する高速領域を2極動作で実現する3相誘導電動機を提供する。
【解決手段】3相誘導電動機10において、3相のコイルは、それぞれ、180度対称に配された、第1コイルユニット20fと、第2コイルユニット20sと、を有し、各コイルユニット20f,20sは、第1コイル22と、第2コイル24と、を有し、前記第1コイル22は、2極動作時の電気角で180度の範囲に、巻線を1回巻回して構成され、前記第2コイル24は、第1コイル22を周方向に3等分した際の真ん中1/3の範囲に、前記巻線を2回、前記第1コイル22と逆向きに電流が流れるように巻回して構成され、前記第1コイル22と前記第2コイル24の両方に通電することによって6極で動作し、前記第1コイル22にのみ通電することによって2極で動作する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ鉄芯の内周に設けられた複数のスロットに3相のコイルが巻回された3相誘導電動機であって、
前記3相のコイルは、それぞれ、第1コイルユニット、第2コイルユニットと、で構成されるユニット対を1以上有し、
前記第1コイルユニットおよび前記第2コイルユニットは、2×n極動作時の電気角で180度対称に配置されており、
各コイルユニットは、第1コイルと、第2コイルと、を有し、
前記第1コイルは、2×n極動作時の電気角で180度の範囲に、巻線をm回巻回して構成され、
前記第2コイルは、第1コイルを周方向に3等分した際の真ん中1/3の範囲に、前記巻線を2×m回、前記第1コイルと逆向きに電流が流れるように巻回して構成され、
前記第1コイルと前記第2コイルの両方に通電することによって6×n極で動作し、前記第1コイルにのみ通電することによって2×n極で動作し、
前記m,nは、いずれも、自然数である、
ことを特徴とする、3相誘導電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の3相誘導電動機であって、
前記第1コイルユニットの前記第1コイルと、前記第2コイルユニットの前記第1コイルと、は直列に接続されており、
前記第1コイルユニットの前記第2コイルと、前記第2コイルユニットの前記第2コイルと、は直列に接続されており、
前記第1コイルと前記第2コイルは、互いに接続されていない、
ことを特徴とする3相誘導電動機。
【請求項3】
請求項2に記載の3相誘導電動機であって、
前記ステータ鉄芯は、36個の前記スロットを有しており、
U相の前記第1コイルは、第1スロットから第18スロットに巻回されるコイルと、第36スロットから第19スロットに巻回されるコイルと、を含み、
V相の前記第1コイルは、第22スロットから第6スロットに巻回されるコイルと、第24スロットから第36スロットを経由して第4スロットに巻回されるコイルと、を含み、
W相の前記第1コイルは、第15スロットから第31スロットに巻回されるコイルと、第13スロットから第1スロットを経由して第33スロットに巻回されるコイルと、を含み、
U相の前記第2コイルは、第12スロットから第7スロットに巻回されるコイルと、第14スロットから第5スロットに巻回されるコイルと、第23スロットとから第32スロットに巻回されるコイルと、第25スロットから第30スロットに巻回されるコイルと、を含み、
V相の前記第2コイルは、第10スロットから第17スロットに巻回されるコイルと、第11スロットから第16スロットに巻回されるコイルと、第35スロットとから第28スロットに巻回されるコイルと、第34スロットから第29スロットに巻回されるコイルと、を含み、
W相の前記第2コイルは、第2スロットから第9スロットに巻回されるコイルと、第3スロットから第8スロットに巻回されるコイルと、第27スロットとから第20スロットに巻回されるコイルと、第26スロットから第21スロットに巻回されるコイルと、を含む、
ことを特徴とする3相誘導電動機。
【請求項4】
ステータ鉄芯の内周に設けられた複数のスロットに3相のコイルが巻回された3相誘導電動機であって、
前記3相のコイルは、それぞれ、第1コイルユニット、第2コイルユニットと、で構成されるユニット対を1以上有し、
前記第1コイルユニットおよび前記第2コイルユニットは、2×n極動作時の電気角で180度対称に配置されており、
各コイルユニットは、第1コイルと、第2コイルと、を有し、
前記第1コイルは、2×n極動作時の電気角で180度の範囲に、巻線をm回巻回して構成され、
前記第2コイルは、第1コイルを周方向に3等分した際の真ん中1/3の範囲に、前記巻線を2×m回、前記第1コイルと逆向きに電流が流れるように巻回して構成され、
全ての前記第1コイルと前記第2コイルの両方に通電することによって6×n極で動作し、前記第1コイルユニットの前記第1コイルにのみ通電することによって2×n極で動作し、
前記m,nは、いずれも、自然数である、
ことを特徴とする、3相誘導電動機。
【請求項5】
請求項4に記載の3相誘導電動機であって、
前記第1コイルユニットの前記第1コイルは、前記第2コイル、および、前記第2コイルユニットの前記第1コイルのいずれとも接続されておらず、
前記第1コイルユニットの前記第2コイルと、前記第2コイルユニットの前記第2コイルと、前記第2コイルユニットの前記第1コイルと、は互いに接続されている、
ことを特徴とする3相誘導電動機。
【請求項6】
請求項5に記載の3相誘導電動機であって、
前記ステータ鉄芯は、36個の前記スロットを有しており、
U相の前記第1コイルは、第1スロットから第19スロットに巻回されるコイルと、第36スロットから第18スロットに巻回されるコイルと、を含み、
V相の前記第1コイルは、第6スロットから第24スロットに巻回されるコイルと、第4スロットから第1スロットを経由して第22スロットに巻回されるコイルと、を含み、
W相の前記第1コイルは、第13スロットから第31スロットに巻回されるコイルと、第15スロットから第33スロットに巻回されるコイルと、を含み、
U相の前記第2コイルは、第12スロットから第7スロットに巻回されるコイルと、第14スロットから第5スロットに巻回されるコイルと、第23スロットとから第32スロットに巻回されるコイルと、第25スロットから第30スロットに巻回されるコイルと、を含み、
V相の前記第2コイルは、第17スロットから第10スロットに巻回されるコイルと、第16スロットから第11スロットに巻回されるコイルと、第28スロットとから第35スロットに巻回されるコイルと、第29スロットから第34スロットに巻回されるコイルと、を含み、
W相の前記第2コイルは、第27スロットとから第20スロットに巻回されるコイルと、第26スロットから第21スロットに巻回されるコイルと、第2スロットから第9スロットに巻回されるコイルと、第3スロットから第8スロットに巻回されるコイルと、を含む、
ことを特徴とする3相誘導電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ステータ鉄芯の内周に設けられた複数のスロットに3相のコイルが巻回された3相誘導電動機を開示する。
【背景技術】
【0002】
プレス金型や樹脂モールド金型を加工する工作機械においては、金型の仕上げ加工を行う際に、工具径が数mm程度以下の小径ボールエンドミルを用いて曲面加工を行う。小径であるので適切な周速を得るため、また加工時間を短縮するために数万rpm以上の高い回転数が求められる。このような高速回転を実現するために、主軸に直接、電動機のロータを搭載したビルトインモータ構造が採用される。
【0003】
また、金型の自由曲面を小径工具によって加工するため、長時間の連続運転となるので、電動機の発熱が小さいことが求められる。特に高速回転ではステータの鉄損による発熱、主軸の軸受けの発熱が必然的に大きくなることから、電動機の巻線による発熱は極力小さいことが求められる。なお、ビルトインモータ構造による特質上、発熱が大きいと主軸の熱変位が大きくなり、加工精度が悪化する。
【0004】
一方、プレス加工機または射出成型機に金型を固定する際に用いられる穴を加工する必要があるが、高精度なプレス加工や射出成型を行うために、この固定穴は上記の仕上げ加工と同一の機械上で加工することが望ましい。この穴加工は一般的に数10mm程度のドリル加工で行うことが多く、上記の仕上げ加工とは逆に低速で大きなトルクが求められる。
図2は金型加工に求められる主軸の回転数とトルクを示したものである。すなわち低速領域において大きなトルクが求められ、仕上げ加工には高い回転数の高速領域が求められる。
【0005】
従来、低速と高速の速度範囲を拡大する技術として、3相誘導電動機の巻線をスター接続とデルタ接続に切換えるY△切換が一般的に用いられる。しかしながらY△切換はスター接続に対してデルタ接続の回転数比が理論的には1.73倍(√3倍)であり、十分な速度範囲が確保できない。
【0006】
また、速度範囲を拡大する技術として極数切換がある。一般的には、2極と4極、または4極と8極を切り換えるものが多いが回転数比は2倍であり、これでも十分とは言えない。
【0007】
特許文献1には、2極と6極を切り換えて回転数比3倍を実現する技術が示されている。この技術は、1相あたり6個の分散配置された巻線コイルを持ち、2極で使用するときは6個のコイルの電流方向を同じにし、6極で使用する場合は6個の内、4個のコイル電流を逆方向にする。
【0008】
特許文献2には、2極と6極を切り換えて回転数比3倍を実現する技術が示されている。この技術は、上記昭55-22857と同様に1相あたり6個の巻線コイルを持つが、6極の1極毎に分割配置された6コイルで構成されている点が異なる。6極で使用するときは互いに隣り合うコイルの電流方向を逆方向にし、2極で使用する場合は6個の内、隣り合う3個ずつのコイル電流を同方向にする。
【0009】
特許文献3には2極と8極を切り換えて回転数比4倍を実現する技術が示されている。この技術は、上記特許文献1と同様に1相あたり6個の分散配置された巻線コイルを持ち、2極で使用する時は6個のコイルの電流方向を同じにし、6極で使用する場合は6個の内、4個のコイル電流を逆方向にする。6個のコイルは、電動機ステータの内周を4等分した内の2ヵ所に3個ずつ分けて配置されており、4等分のうち残る2ヶ所には巻線コイルを配置しないことによって6個のコイルで8極を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公昭55-22857号公報
【特許文献2】特開昭55-37877号公報
【特許文献3】特開昭57-43547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に示す技術においては、6極を構成するコイルが互いに離れて配置されているために、6極で使用するときに起磁力が発生しない部分が多く、ステータ鉄芯の約50%の部分が有効利用されていない。そのため、低速領域に求められる十分なトルクを出力できないという課題がある。
【0012】
特許文献2に示す技術においては、2極で使用するときにおいても6個のコイル全てに電流を流しており、6個中4個のコイルは電流が流れても磁束を生じない、すなわち無駄に発熱している。そのため、2極で求められる高速回転領域において電動機の温度上昇が大きくなるという課題がある。
【0013】
特許文献3に示す技術においては、6個のコイルが互いに離れて配置されているために、8極で使用するときに起磁力が発生しない部分が多く、ステータ鉄芯の約50%の部分が有効利用されていない。そのため、低速領域に求められる十分なトルクを出力できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書で開示する3相誘導電動機は、ステータ鉄芯の内周に設けられた複数のスロットに3相のコイルが巻回された3相誘導電動機であって、前記3相のコイルは、それぞれ、第1コイルユニット、第2コイルユニットと、で構成されるユニット対を1以上有し、前記第1コイルユニットおよび前記第2コイルユニットは、2×n極動作時の電気角で180度対称に配置されており、各コイルユニットは、第1コイルと、第2コイルと、を有し、前記第1コイルは、2×n極動作時の電気角で180度の範囲に、巻線をm回巻回して構成され、前記第2コイルは、第1コイルを周方向に3等分した際の真ん中1/3の範囲に、前記巻線を2×m回、前記第1コイルと逆向きに電流が流れるように巻回して構成され、前記第1コイルと前記第2コイルの両方に通電することによって6×n極で動作し、前記第1コイルにのみ通電することによって2×n極で動作し、前記m,nは、いずれも、自然数である、ことを特徴とする。
【0015】
この場合、前記第1コイルユニットの前記第1コイルと、前記第2コイルユニットの前記第1コイルと、は直列に接続されており、前記第1コイルユニットの前記第2コイルと、前記第2コイルユニットの前記第2コイルと、は直列に接続されており、前記第1コイルと前記第2コイルは、互いに接続されていなくてもよい。
【0016】
また、前記ステータ鉄芯は、36個の前記スロットを有しており、U相の前記第1コイルは、第1スロットから第18スロットに巻回されるコイルと、第36スロットから第19スロットに巻回されるコイルと、を含み、V相の前記第1コイルは、第22スロットから第6スロットに巻回されるコイルと、第24スロットから第36スロットを経由して第4スロットに巻回されるコイルと、を含み、W相の前記第1コイルは、第15スロットから第31スロットに巻回されるコイルと、第13スロットから第1スロットを経由して第33スロットに巻回されるコイルと、を含み、U相の前記第2コイルは、第12スロットから第7スロットに巻回されるコイルと、第14スロットから第5スロットに巻回されるコイルと、第23スロットとから第32スロットに巻回されるコイルと、第25スロットから第30スロットに巻回されるコイルと、を含み、V相の前記第2コイルは、第10スロットから第17スロットに巻回されるコイルと、第11スロットから第16スロットに巻回されるコイルと、第35スロットとから第28スロットに巻回されるコイルと、第34スロットから第29スロットに巻回されるコイルと、を含み、W相の前記第2コイルは、第2スロットから第9スロットに巻回されるコイルと、第3スロットから第8スロットに巻回されるコイルと、第27スロットとから第20スロットに巻回されるコイルと、第26スロットから第21スロットに巻回されるコイルと、を含んでもよい。
【0017】
本明細書で開示する他の3相誘導電動機は、ステータ鉄芯の内周に設けられた複数のスロットに3相のコイルが巻回された3相誘導電動機であって、前記3相のコイルは、それぞれ、第1コイルユニット、第2コイルユニットと、で構成されるユニット対を1以上有し、前記第1コイルユニットおよび前記第2コイルユニットは、2×n極動作時の電気角で180度対称に配置されており、各コイルユニットは、第1コイルと、第2コイルと、を有し、前記第1コイルは、2×n極動作時の電気角で180度の範囲に、巻線をm回巻回して構成され、前記第2コイルは、第1コイルを周方向に3等分した際の真ん中1/3の範囲に、前記巻線を2×m回、前記第1コイルと逆向きに電流が流れるように巻回して構成され、全ての前記第1コイルと前記第2コイルの両方に通電することによって6×n極で動作し、前記第1コイルユニットの前記第1コイルにのみ通電することによって2×n極で動作し、前記m,nは、いずれも、自然数である、ことを特徴とする。
【0018】
この場合、前記第1コイルユニットの前記第1コイルは、前記第2コイル、および、前記第2コイルユニットの前記第1コイルのいずれとも接続されておらず、前記第1コイルユニットの前記第2コイルと、前記第2コイルユニットの前記第2コイルと、前記第2コイルユニットの前記第1コイルと、は互いに接続されていてもよい。
【0019】
また、前記ステータ鉄芯は、36個の前記スロットを有しており、U相の前記第1コイルは、第1スロットから第19スロットに巻回されるコイルと、第36スロットから第18スロットに巻回されるコイルと、を含み、V相の前記第1コイルは、第6スロットから第24スロットに巻回されるコイルと、第4スロットから第1スロットを経由して第22スロットに巻回されるコイルと、を含み、W相の前記第1コイルは、第13スロットから第31スロットに巻回されるコイルと、第15スロットから第33スロットに巻回されるコイルと、を含み、U相の前記第2コイルは、第12スロットから第7スロットに巻回されるコイルと、第14スロットから第5スロットに巻回されるコイルと、第23スロットとから第32スロットに巻回されるコイルと、第25スロットから第30スロットに巻回されるコイルと、を含み、V相の前記第2コイルは、第17スロットから第10スロットに巻回されるコイルと、第16スロットから第11スロットに巻回されるコイルと、第28スロットとから第35スロットに巻回されるコイルと、第29スロットから第34スロットに巻回されるコイルと、を含み、W相の前記第2コイルは、第27スロットとから第20スロットに巻回されるコイルと、第26スロットから第21スロットに巻回されるコイルと、第2スロットから第9スロットに巻回されるコイルと、第3スロットから第8スロットに巻回されるコイルと、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本明細書で開示する3相誘導電動機によれば、6×n極で運転する場合は、ステータ1周中で起磁力を発生しない部分が少なく鉄芯の利用率が高いのでモータ体積当たりのトルクを増大することができ、大トルクを発生することができる。また、2×n極で運転する場合は、磁界を発生するための無駄な電流を必要としないので低発熱であり、高速回転でも電動機の温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】3相誘導電動機の断面図に1相分の巻線、および、2極運転時、6極運転時それぞれの電流方向と磁束方向を示す図である。
【
図2】工作機械用主軸の、回転数-トルク特性を示す図である。
【
図3】3相誘導電動機の断面に3相分の巻線を示す図である。
【
図5】
図4の巻線図を採用した場合における、2極運転時の固定子内周の起磁力分布を示す図である。
【
図6】
図4の巻線図を採用した場合における、6極運転時の固定子内周の起磁力分布を示す図である。
【
図8】
図7の巻線図を採用した場合における、2極運転時の固定子内周の起磁力分布を示す図である。
【
図9】他の例の3相誘導電動機の断面図に1相分の巻線、および、4極運転時、12極運転時それぞれの電流方向と磁束方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に3相誘導電動機10の断面構造と1相分の巻線および動作原理を示す。ステータ12(ステータ鉄芯)には、36個のスロット16が設けられており。それぞれのスロット16には、巻線コイルが納められる。
図1において、巻線は、1相分のみ図示している。一つの相コイルは、第1コイルユニット20fと、第2コイルユニット20sと、を有している。第1コイルユニット20fおよび第2コイルユニット20sは、2極運転時における電気角で180度対称に配置されている。各コイルユニット20f,20sは、第1コイル22と第2コイル24とを含む。第1コイル22は、2極運転時における電気角で約180度の範囲に巻回されている。第2コイル24は、第1コイル22を周方向に3等分した際の真ん中約1/3の範囲に、第1コイル22の2倍の回数、前記第1コイル22と逆向きに電流が流れるように巻回されている。なお、ロータ14については、説明を省くが、一般的なかご型誘導巻線を備えたものである。
【0023】
図1(A)は、2極運転時の動作を示すもので、第1コイル22にのみ通電し、その結果、太線矢印のように2極の磁束が発生する。
図1(B)は、6極運転時の動作を示すもので、第1コイル22と第2コイル24の両方に通電することによって、太線矢印のように6極の磁束が発生する。
【0024】
図3は、3相巻線のそれぞれの配置を図示したものである。
図4は、3相巻線の結線およびスロットへの挿入位置を示すものである。U1はU相第1コイルの接続端子、V1はV相第1コイルの接続端子、W1はW相第1コイルの接続端子を示す。各相の第1コイル22は、本図の例ではスター結線としており、コイル他方はそれぞれ中性点に接続する。なお、本図の例はスター結線としているが、コイル他方を外部に引き出して接続端子を設けることによりデルタ結線とすることができる。U2およびU3はU相第2コイルの接続端子、V2およびV3はV相第2コイルの接続端子、W2およびW3はW相第2コイルの接続端子である。
【0025】
図4の例では、U相の第1コイル22は、第1スロットから第18スロットに巻回されるコイルと、第36スロットから第19スロットに巻回されるコイルと、を含み、この二つのコイルは、直列接続されている。また、U相の第2コイル24は、第12スロットから第7スロットに巻回されるコイルと、第14スロットから第5スロットに巻回されるコイルと、第23スロットとから第32スロットに巻回されるコイルと、第25スロットから第30スロットに巻回されるコイルと、を含み、これら4つのコイルは、直列接続されている。
【0026】
V相の第1コイル22は、第22スロットから第6スロットに巻回されるコイルと、第24スロットから第36スロットを経由して第4スロットに巻回されるコイルと、を含み、この二つのコイルは、直列接続されている。V相の第2コイル24は、第10スロットから第17スロットに巻回されるコイルと、第11スロットから第16スロットに巻回されるコイルと、第35スロットとから第28スロットに巻回されるコイルと、第34スロットから第29スロットに巻回されるコイルと、を含み、これら4つのコイルは、直列接続されている。
【0027】
W相の第1コイル22は、第15スロットから第31スロットに巻回されるコイルと、第13スロットから第1スロットを経由して第33スロットに巻回されるコイルと、を含み、この2つのコイルは、直列接続されている。W相の第2コイル24は、第2スロットから第9スロットに巻回されるコイルと、第3スロットから第8スロットに巻回されるコイルと、第27スロットとから第20スロットに巻回されるコイルと、第26スロットから第21スロットに巻回されるコイルと、を含み、これら4つのコイルは、直列接続されている。
【0028】
図5は、
図4の巻線図を採用した3相誘導電動機10を、2極で運転する場合の起磁力分布を示すものであり、横軸は電気角、縦軸は起磁力を示す。
図6は、
図4の巻線図を採用した3相誘導電動機10を、6極で運転する場合の起磁力分布を示す。
【0029】
図7は、他の3相誘導電動機10の一例を示す図である。
図4に示した巻線の結線では、2極で使用する際に起磁力の3相位相差が電気角120度に対して誤差がある。そこで、
図7に示す3相誘導電動機10では、第1コイルユニット20fの第1コイル22を、第2コイルユニット20sの第1コイル22に接続せず、独立させている。より具体的に説明すると、U相の第1コイルユニット20fの第1コイル22は、第1スロットから第19スロットに巻回されるコイルを有する。このコイルは、同じ相に属する他のコイルと接続されていない。U相の第2コイルユニット20sの第1コイル22は、第36スロットから第18スロットに巻回されるコイルを含む。このコイルは、U相の第2コイル24と、直列接続されている。U相の第2コイル24は、第12スロットから第7スロットに巻回されるコイルと、第14スロットから第5スロットに巻回されるコイルと、第23スロットとから第32スロットに巻回されるコイルと、第25スロットから第30スロットに巻回されるコイルと、を含み、これら4つのコイルは、直列接続されている。
【0030】
V相の第1コイルユニット20fの第1コイル22は、第6スロットから第24スロットに巻回されるコイルを有する。このコイルは、同じ相に属する他のコイルと接続されていない。V相の第2コイルユニット20sの第1コイル22は、第4スロットから第1スロットを経由して第22スロットに巻回されるコイルを含む。このコイルは、V相の第2コイル24と、直列接続されている。V相の第2コイル24は、V相の第2コイル24は、第17スロットから第10スロットに巻回されるコイルと、第16スロットから第11スロットに巻回されるコイルと、第28スロットとから第35スロットに巻回されるコイルと、第29スロットから第34スロットに巻回されるコイルと、を含み、これら4つのコイルは、直列接続されている。
【0031】
W相の第1コイルユニット20fの第1コイル22は、第13スロットから第31スロットに巻回されるコイルを含む。このコイルは、同じ相に属する他のコイルと接続されていない。W相の第2コイルユニット20sの第1コイル22は、第15スロットから第33スロットに巻回されるコイルを含む。このコイルは、W相の第2コイル24と、直列接続されている。W相の第2コイル24は、第27スロットとから第20スロットに巻回されるコイルと、第26スロットから第21スロットに巻回されるコイルと、第2スロットから第9スロットに巻回されるコイルと、第3スロットから第8スロットに巻回されるコイルと、を含み、これら4つのコイルは、直列接続されている。
【0032】
そして、2極で使用するときは、第1コイルユニット20fの第1コイル22にのみ通電する。第2コイルユニット20sの第1コイル22は、第2コイル24と直列に接続し、6極で使用するときに通電する。この場合、2極で使用する際の巻線量が半分になるので、2極時に十分なトルクを出力できないという課題はある。しかし、2極では高速での制御安定性が求められるので、3相位相差が正確であることのメリットが大きい。
【0033】
図8は、
図7の巻線図を採用した3相誘導電動機10を2極で運転する場合の起磁力分布を示すものである。
図5と
図8の比較から明らかな通り、
図7の巻線図によれば、起磁力分布の3相位相差を120度により近づけることができる。
【0034】
図9は、他の3相誘導電動機10の、半周分の断面構造と1相分の巻線配置を示す図である。
図9の3相誘導電動機10は、4極と、12極と、に切り替え可能である。この場合、ステータ12には72個のスロット16が設けられており、第1スロットから第36スロットの巻線配置は、
図1に示した2極6極を切換える3相誘導電動機10と同じである。図示せぬ第37スロットから第72スロットは、第1スロットから第36スロットと対称の構造および配置となっている。また、
図9に示した巻線配置はU相巻線を示している。図示せぬV相とW相については、
図3に示したV相、W相の36スロット分の巻線配置を2周に拡張して72スロットに配置している。つまり、
図9の3相誘導電動機10において、一つの相コイルは、第1コイルユニット20fと、第2コイルユニット20sと、で構成されるユニット対を、2対有している。
【0035】
また、これまでの説明は、一例であり、各相コイルは、第1コイルユニット20fと、第2コイルユニット20sと、で構成されるユニット対を、3対以上、有してもよい。また、これまでは、一つのコイルユニットにおいて、第2コイル24の巻回数が、第1コイル22の巻回数の2倍となるのであれば、これらの巻回数は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0036】
10 3相誘導電動機、12 ステータ、14 ロータ、16 スロット、20f 第1コイルユニット、20s 第2コイルユニット、22 第1コイル、24 第2コイル。