(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153670
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】カム研削盤
(51)【国際特許分類】
B24B 19/12 20060101AFI20231011BHJP
B24B 49/02 20060101ALI20231011BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B24B19/12 C
B24B49/02 Z
B24B49/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063069
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 啓大朗
(72)【発明者】
【氏名】吉村 涼
(72)【発明者】
【氏名】阿部田 郷
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034BB92
3C034CA02
3C034CB01
3C034DD20
3C049AA03
3C049AA12
3C049AA16
3C049AB01
3C049AB04
3C049AB06
3C049AC02
3C049BA02
3C049BC02
3C049CA01
3C049CB01
(57)【要約】
【課題】工作物の個々のばらつきにも対応することができ、加工精度を高めることが可能なカム研削盤を提供する。
【解決手段】プロフィルデータ302bに基づいて工作物4の被加工部41~44を非円形のカム形状に研削するカム研削盤1は、工作物4を回転軸線O
1を中心として回転させる工作物駆動モータ141を有する主軸台14と、被加工部41~44を研削する砥石10を回転駆動する砥石駆動モータ161を有する砥石台16と、砥石台16を進退移動させる砥石台送りモータ171を有する砥石台送り装置17と、被加工部41~44の寸法を測定する計測装置2と、NC制御装置3とを備える。計測装置2は、被加工部41~44の研削加工中にその寸法を測定し、NC制御装置3は、計測装置2の測定結果に基づいて、被加工部41~44の形状がプロフィルデータ302bと一致するように砥石台送りモータ171を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相とリフト量からなるプロフィルデータに基づいて軸状の工作物の被加工部を非円形のカム形状に研削するカム研削盤であって、
前記工作物を回転軸線を中心として回転させる工作物駆動モータを有する主軸台と、前記被加工部を研削する砥石を回転駆動する砥石駆動モータを有する砥石台と、前記砥石台を前記工作物の前記回転軸線に対して垂直な方向に進退移動させる砥石台送りモータを有する砥石台送り装置と、前記被加工部の寸法を測定する計測装置と、前記位相に基いて前記工作物駆動モータを制御し、前記砥石駆動モータを制御し、前記リフト量に基づいて前記砥石台送りモータを制御する制御装置とを備え、
前記計測装置は、前記被加工部の研削加工中に当該被加工部の寸法を測定し、
前記制御装置は、前記計測装置の測定結果に基づいて、前記プロフィルデータを補正した位相及びリフト量からなる補正プロフィルデータを作成し、前記被加工部の形状が前記プロフィルデータと一致するように前記補正したリフト量に基づき前記砥石台送りモータを制御する、
カム研削盤。
【請求項2】
前記カム形状は、前記回転軸線から外周面までの距離が一定の円形部分と、前記回転軸線から外周面までの距離が前記円形部分よりも長く、前記位相及び前記リフト量が設定されたカム部分とを有し、
前記工作物駆動モータによる前記工作物の回転に伴って、複数回にわたって前記砥石による前記円形部分及び前記カム部分の研削加工及び前記計測装置による寸法測定を行い、
前記制御装置は、前記カム部分を研削した後の前記計測装置による前記カム部分の寸法の測定結果に応じて次回の前記カム部分の前記リフト量を補正し、前記補正したリフト量に基づき研削時における前記砥石台の位置を調節する、
請求項1に記載のカム研削盤。
【請求項3】
前記計測装置は、
前記被加工部に接触する第1の測定子を有する第1の測定部と、
前記第1の測定子との間に前記工作物の前記回転軸線を挟む位置で前記被加工部に接触する第2の測定子を有する第2の測定部と、
前記第1の測定部と前記第2の測定部との間隔を可変とする移動機構と、
前記プロフィルデータに基づいて前記第1の測定部および前記第2の測定部の位置を制御する計測制御装置とを有する、
請求項1又は2に記載のカム研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロフィルデータに基づいて軸状の工作物の被加工部を非円形のカム形状に研削するカム研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両のエンジンに用いられるカムシャフトを研削加工するカム研削盤は、鋳造により成形されたカムシャフト素材を加工対象の工作物とし、主軸台モータによって工作物をその軸線回りに回転させながら、砥石によって被加工部を非円形のカム形状に研削する。砥石は、砥石台に取り付けられた砥石駆動モータによって回転駆動される。砥石台は、ベッドに固定された砥石台送りモータによって工作物の回転軸線に対して垂直な方向に進退移動する。被加工部であるカム部の外径は、エンジンにおけるピストンのリフト量に直接的に影響するので、高い加工精度が要求される。カムシャフトの研削加工精度を高めるための方法として、例えば特許文献1に記載のものが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の研削盤では、加工用プログラムに基づいて主軸台モータ及び砥石台送りモータを制御して砥石による研削加工を行った後、工作物を加工位置に支持したままの状態で検出器によって被加工部の形状を計測し、計測により求めた誤差データを基にして加工用プログラムの補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カムシャフトの研削加工では、カムシャフトの回転角度に応じて回転中心からカム部の外周面までの距離が変化するので、カムシャフトの回転に同期させて砥石を切り込み方向の前後に動かす必要があり、砥石の位置の追従遅れによって加工誤差が発生しやすい。また、特許文献1に記載された方法では、研削加工の後に機上で被加工部の形状を計測するので、計測を行っている間は次の工作物の加工を行うことができず、時間当たりの生産台数が少なくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、加工精度を高めながらも、時間当たりの生産台数が少なくなってしまうことを抑制できるカム研削盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成すべく、位相とリフト量からなるプロフィルデータに基づいて軸状の工作物の被加工部を非円形のカム形状に研削するカム研削盤であって、前記工作物を回転軸線を中心として回転させる工作物駆動モータを有する主軸台と、前記被加工部を研削する砥石を回転駆動する砥石駆動モータを有する砥石台と、前記砥石台を前記工作物の前記回転軸線に対して垂直な方向に進退移動させる砥石台送りモータを有する砥石台送り装置と、前記被加工部の寸法を測定する計測装置と、前記位相に基いて前記工作物駆動モータを制御し、前記砥石駆動モータを制御し、前記リフト量に基づいて前記砥石台送りモータを制御する制御装置とを備え、前記計測装置は、前記被加工部の研削加工中に当該被加工部の寸法を測定し、前記制御装置は、前記計測装置の測定結果に基づいて、前記プロフィルデータを補正した位相及びリフト量からなる補正プロフィルデータを作成し、前記被加工部の形状が前記プロフィルデータと一致するように前記補正したリフト量に基づき前記砥石台送りモータを制御する、カム研削盤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るカム研削盤によれば、加工精度を高めながらも、時間当たりの生産台数が少なくなってしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るカム研削盤の構成例を示す概略図である。
【
図2】(a)は、工作物の被加工部の形状を示す説明図である。(b)は、工作物の被加工部の研削加工中の形状を砥石の一部と共に示す説明図である。
【
図4】計測装置の第1の測定部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係るカム研削盤の構成例を示す概略図である。このカム研削盤1は、鋳造により成形された軸状のカムシャフト素材を加工対象の工作物4とし、工作物4をその軸線回りに回転させながら、予め記憶されたプロフィルデータに基づいて複数の被加工部41~44を非円形のカム形状に研削する。研削された工作物4は、車両のエンジンのカムシャフトとして用いられる。以下、
図1の左右方向にあたる工作物4の回転軸線O
1に平行な水平方向をZ軸方向とし、
図1の上下方向にあたる回転軸線O
1に垂直な水平方向をX軸方向として説明する。
【0012】
カム研削盤1は、基台であるベッド11と、ベッド11に対してZ軸方向に進退移動可能なテーブル12と、テーブル12を進退移動させるテーブル駆動装置13と、テーブル12に取り付けられた第1主軸台14及び第2主軸台15と、砥石10を回転駆動する砥石駆動モータ161を有する砥石台16と、砥石台16をX軸方向に進退移動させる砥石台送り装置17と、工作物4の被加工部41~44の寸法を測定する計測装置2と、NC制御装置3とを備えている。計測装置2は、油圧シリンダ18により、工作物4の加工を行う際に被加工部41~44の寸法を測定可能な位置に向かってX軸方向に前進し、加工完了後には、工作物4の脱着を妨げない位置に後退する。
【0013】
工作物4は、第1主軸台14と第2主軸台15との間に支持され、第1主軸台14及び第2主軸台15の工作物駆動モータ141,151によって回転軸線O1を中心として回転駆動される。工作物駆動モータ141,151には、固定子に対する回転子の角度位置を検出するエンコーダ等の角度位置検出器141a,151aが設けられている。工作物4には、軸方向の両端部にセンタ穴が形成されており、このセンタ穴に第1主軸台14のセンタ140及び第2主軸台15のセンタ150が嵌入する。工作物駆動モータ141,151は、センタ140,150を介して工作物4を回転させる。以下、センタ140,150の回転速度を主軸回転速度といい、センタ140,150が工作物4と共に1回転することを主軸1回転という。
【0014】
テーブル駆動装置13は、テーブル駆動モータ131と、テーブル駆動モータ131によって回転駆動されるボールねじ軸132とを有している。ボールねじ軸132は、テーブル12に固定された図示しないボールねじナットに螺合しており、ボールねじ軸132が回転することによってテーブル12がベッド11に固定されたガイドレール111にガイドされてZ軸方向に進退移動する。
【0015】
砥石駆動モータ161は、工作物4の回転軸線O1に平行な回転軸線O2を中心として円盤状の砥石10を回転させる。砥石台送り装置17は、砥石台送りモータ171と、砥石台送りモータ171によって回転駆動されるボールねじ軸172とを有しており、ボールねじ軸172が砥石台16に固定された図示しないボールねじナットに螺合している。ボールねじ軸172が回転することにより、砥石台16がベッド11に固定されたガイドレール112,113にガイドされてX軸方向に進退移動する。
【0016】
NC制御装置3は、テーブル駆動モータ131、工作物駆動モータ141,151、砥石駆動モータ161、及び砥石台送りモータ171を制御する。工作物4の加工時には、砥石駆動モータ161によって砥石10を回転させながら、工作物駆動モータ141,151と砥石台送りモータ171とを同期させ、被加工部41~44を砥石10によって研削加工する。被加工部41~44は、工作物4の軸方向に間隔をあけて並んでいる。NC制御装置3は、テーブル駆動モータ131を制御して工作物4をZ軸方向に移動させ、被加工部41~44を順次、砥石10と向かい合う加工位置に位置決めする。テーブル駆動モータ131、工作物駆動モータ141,151、及び砥石台送りモータ171は、高精度な位置決めが可能なサーボモータであり、駆動回路191~194からモータ電流の供給を受ける。
【0017】
NC制御装置3は、記憶部30を有している。記憶部30は、テーブル駆動モータ131、工作物駆動モータ141、砥石駆動モータ161、及び砥石台送りモータ171を制御するための加工プログラム301と、工作物4の情報である工作物情報302と、砥石10の情報である砥石情報303とを記憶している。工作物情報302には、工作物4の円形部分の素材径である素材ベース円径を示す素材ベース円径情報302aと、工作物4の円形部分の外側にあたるカム部分のプロフィルデータ302bと、このプロフィルデータ302bを補正した補正プロフィルデータ302cとが含まれる。プロフィルデータ302b及び補正プロフィルデータ302cには、カム部分の位相とリフト量(後述する
図2参照)がある。プロフィルデータ302cは、カム部分の本来のデータであり、補正プロフィルデータ302cは、被加工部41~44をプロフィルデータ302bの通りに加工するために、砥石台16の追従遅れを考慮したデータである。当初の補正プロフィルデータ302cには、プロフィルデータ302bがそのまま入る。加工プログラム301には、研削時の切り込み量と、切り込み速度、及び主軸回転速度等が記述されている。砥石情報303には、工作物4の加工前の砥石10の直径を示す砥石径の情報が含まれる。
【0018】
NC制御装置3は、ベース円径計算装置31及び砥石位置データ計算装置32を有している。ベース円径計算装置31は、素材ベース円径情報302aに示される素材ベース円径ならびに砥石10の切り込み量及び切り込み速度に基づいて、加工時における被加工部41~44のベース円径である加工時ベース円径を計算する。砥石位置データ計算装置32は、補正プロフィルデータ302c、ベース円径計算装置31が計算した加工時ベース円径、及び砥石情報303に示される砥石径に基づいて、砥石台16のX軸方向の目標位置である砥石台位置データを算出し、この砥石台位置データと工作物4の回転角(位相)の目標値である工作物回転角データを記憶する。
【0019】
NC制御装置3は、砥石位置データ計算装置32が算出した砥石台位置データを砥石台送りモータ171を駆動する駆動回路19に送信する。駆動回路19は、サーボアンプであり、砥石台位置データに示される位置に砥石台16を位置決めするように砥石台送りモータ171にモータ電流を供給する。また、NC制御装置3は、砥石位置データ計算装置32が算出した工作物回転角データを第1主軸台14及び第2主軸台15の工作物駆動モータ141,151を駆動する駆動回路192,193に送信する。駆動回路192,193は、サーボアンプであり、工作物4を工作物回転角データに対応する位置に位置決めするように工作物駆動モータ141,151にモータ電流を供給する。加工時ベース円径は、主軸1回転のたびに、砥石台16の切り込み速度を主軸回転速度で除算して得られる主軸1回転当たりの切り込み量だけ、徐々に小さくなる。主軸1回転のたびに加工時ベース円径が変わり、補正プロフィルデータ302cも変わるので、砥石位置データも同様に変化する。
【0020】
図2(a)は、工作物4の被加工部41の形状を示す説明図である。
図2(a)では、仕上げ面である研削加工後の外周面41aを実線で示し、研削加工前の被加工部41の外形形状を示す加工前外形線41bを二点鎖線で示している。この加工前外形線41bと外周面41aとの間の部分が、研削によって除去すべき研削代410である。なお、他の被加工部42~44も同様の形状を有している。
【0021】
図2(a)に示すように、被加工部41は、加工時における回転中心である回転軸線O
1に沿って見た形状が円形である円形部分411と、非円形のカム形状であるカム部分412とを有する。円形部分411は、回転軸線O
1から外周面41aまでの距離が一定であり、カム部分412は、回転軸線O
1から外周面41aまでの距離が円形部分411よりも長い。円形部分411における回転軸線O
1から外周面41aまでの距離Dはベース円径である。プロフィルデータ302b、補正プロフィルデータ302cには、工作物4の所定角度(例えば5°)ごとに、回転軸線O
1から外周面41aまでの距離とベース円径Dとの差であるリフト量Lが設定されている。
図2(a)では、工作物4の代表的な角度として、0°、90°、180°、及び270°を示している。リフト量Lの最大値は、カムシャフトが用いられるエンジンの排気量等によって異なるが、例えば3~5mmである。
【0022】
図2(b)は、工作物4の被加工部41の研削加工中の形状を砥石10の一部と共に示す説明図である。被加工部41は、第1主軸台14及び第2主軸台15によって複数回にわたって回転しながら砥石10によって研削される。なお、
図2(b)では、主軸1回転あたりの研削量を誇張して示している。
【0023】
工作物4が1回転する間に、被加工部41が主軸1回転当たりの切り込み量だけ切り込まれるので、加工時における被加工部41の外径は、
図2(b)に示すように渦巻き状となる。
図2(b)に示すように、0°の位相で砥石10が当たっている場合には、0°の位相で主軸1回転当たりの切り込み量分だけの段差ができ、90°の位相で4分の3の切り残しができ、270°の位相で4分の1の切り残しができる。加工プログラム301に記載された切り込み量分の切り込みが終わった後、研削加工後の被加工部41の実際の外形形状がプロフィルデータ302bによって示される外周面41aと一致していない場合には、その差が加工誤差となる。
【0024】
本実施の形態では、この加工誤差を小さくして加工精度を高めるため、砥石10による被加工部41~44の研削加工中に、計測装置2がその外径寸法を測定する。つまり、被加工部41の研削加工中には、計測装置2が被加工部41の外径寸法を全周にわたって測定し、被加工部41の加工後に続いて行われる被加工部42の研削加工中には、計測装置2が被加工部42の外径寸法を全周にわたって測定する。他の被加工部43,44についても同様である。
【0025】
ここで、差動トランス方式の一般的な定寸装置では、測定可能な寸法の最大値と最小値との差が例えば1.2mm程度であるため、上記のようにリフト量Lの最大値が3~5mm程度のカム形状を全周にわたって測定することができない。このため、本実施の形態では、被加工部41~44の外径を測定する計測装置2として、従来の一般的な定寸装置よりも広い寸法範囲を測定可能なものを用いる。
【0026】
図3は、計測装置2の構成例を示す構成図である。計測装置2は、計測制御装置20と、上壁211及び下壁212を側壁213によって連結してなるフレーム21と、上壁211と下壁212の間に懸け渡されたガイドレール221,222と、ガイドレール221,222にガイドされてスライドする第1及び第2のスライドブロック231,232と、第1のスライドブロック231に固定された第1の測定部24及びデジタルスケール251と、第2のスライドブロック232に固定された第2の測定部26及びスケールリーダ252と、第1の測定部24を移動させる第1の移動機構27と、第2の測定部26を移動させる第2の移動機構28と、駆動回路291,292とを備えている。
【0027】
第1の移動機構27は、第1のスライドブロック231に螺合する第1のねじ軸271と、第1のねじ軸271を回転させる第1のモータ272とを有して構成されている。第2の移動機構28は、第2のスライドブロック232に螺合する第2のねじ軸281と、第2のねじ軸281を回転させる第2のモータ282とを有して構成されている。第1のモータ272及び第2のモータ282は、サーボモータであり、角度位置検出器272a,282aの検出信号が駆動回路291,292に出力される。駆動回路291,292は、計測制御装置20の指令に基づいて第1及び第2のモータ272,282にモータ電流を供給するサーボアンプである。駆動回路291,292は、角度位置検出器272a,282aの検出信号が計測制御装置20の指令と同じになるように、フィードバック制御を行う。
【0028】
計測装置2は、ガイドレール221,222がX軸方向及びZ軸方向に対して垂直な鉛直方向に延在するように配置される。
図3では、第1のスライドブロック231及び第1の測定部24を断面で示している。第1のスライドブロック231には、一対のガイドレール221,222がそれぞれ挿通される挿通孔231a,231bが形成されている。第2のスライドブロック232は、第1のスライドブロック231と同様に構成されており、第2の測定部26は、第1の測定部24と同様に構成されている。
【0029】
第1のスライドブロック231には、第1のねじ軸271の雄ねじ部271aが螺合しており、第1のねじ軸271が
図3に示すR
1方向に回転すると、第1のスライドブロック231が下壁212側に移動して第1の測定子244が工作物4の回転軸線O
1に接近し、第1のねじ軸271がR
2方向に回転すると、第1のスライドブロック231が上壁211側に移動して第1の測定子244が工作物4の回転軸線O
1から離間する。同様に、第2のスライドブロック232には、第2のねじ軸272の雄ねじ部272aが螺合しており、第2のねじ軸272がR
1方向に回転すると、第2のスライドブロック232が下壁212側に移動して第2の測定子264が工作物4の回転軸線O
1から離間し、第2のねじ軸272がR
2方向に回転すると、第2のスライドブロック232が上壁211側に移動して第2の測定子264が工作物4の回転軸線O
1に接近する。
【0030】
図4は、第1の測定部24を示す拡大断面図である。第1の測定部24は、ケース部材241と、ケース部材241に固定された枢支ピン242と、枢支ピン242に支持されて揺動可能な第1の揺動アーム243と、第1の揺動アーム243の先端部に取り付けられた第1の測定子244と、第1の測定子244が工作物4の被加工部41~44に接するように第1の揺動アーム243を付勢する第1のスプリング245と、第1の揺動アーム243の後端部に連結された鉄心246と、鉄心246を囲むように設けられたコイル247とを備えている。ケース部材241には、第1のスプリング245を収容するスプリング収容孔241a、及びコイル247を収容するコイル収容孔241bが形成されている。スプリング収容孔241aの底部には固定ピン248が固定され、固定ピン248の周囲に第1のスプリング245が配置されている。
【0031】
鉄心246及びコイル247は、第1の測定子244の変位量を検出する第1の変位検出器240を構成する。コイル247は、計測制御装置20から供給される電流によってその内部に磁界を発生させる。鉄心246は、連結部材249によって第1の揺動アーム243の後端部に連結され、コイル247の内側に支持されている。第1の揺動アーム243が揺動すると、コイル247の内部で鉄心246がコイル247の軸方向に移動し、鉄心246の位置に応じてコイル247のインピーダンスが変化して、コイル247に流れる電流が変化する。計測制御装置20は、この電流の変化を第1の変位検出器240の検出信号とする。
【0032】
第2の測定部26は、ケース部材261に固定された枢支ピン262に支持されて揺動する第2の揺動アーム263と、第2の揺動アーム263の先端部に取り付けられた第2の測定子264と、第2の測定子264が工作物4の被加工部41~44に接するように第2の揺動アーム263を付勢する第2のスプリング265と、鉄心266及びコイル267を有して第2の測定子264の変位量を検出する第2の変位検出器260と、を備えている。第2の揺動アーム263が揺動すると、第2の変位検出器260の検出信号が変化する。
【0033】
第1の測定子244と第2の測定子264は、工作物4の回転軸線O1を挟む位置で、それぞれ被加工部41~44に接触するように対をなしている。例えば被加工部41の加工中には、工作物4の回転によって被加工部41のカム部分412が第1の測定子244と第2の測定子264との間隔を押し広げ、第1の揺動アーム243及び第2の揺動アーム263を揺動させる。これにより、第1の変位検出器240及び第2の変位検出器260の検出信号が変化する。
【0034】
第1の変位検出器240及び第2の変位検出器260によって第1の測定子244及び第2の測定子264の変位量を検出可能な範囲は、例えば1.2mm程度の狭い範囲に限られる。このため、本実施の形態では、計測制御装置20が第1及び第2のモータ272,282を制御して、工作物4の回転位置に応じて第1の測定部24及び第2の測定部26を移動させる。
【0035】
具体的には、例えば被加工部41の加工中において、第1の測定子244が円形部分411に接触する際には第1のモータ272によって第1のねじ軸271をR1方向に回転させ、第1の測定子244がカム部分412に接触する際には第1のモータ272によって第1のねじ軸271をR2方向に回転させる。また、第2の測定子264が円形部分411に接触する際には第2のモータ282によって第2のねじ軸272をR2方向に回転させ、第2の測定子264がカム部分412に接触する際には第2のモータ282によって第2のねじ軸272をR1方向に回転させる。
【0036】
計測制御装置20は、第1の測定子244の目標位置を計算する第1の位置計算装置201、及び第2の測定子264の目標位置を計算する第2の位置計算装置202を有する。第1の位置計算装置201及び第2の位置計算装置202は、NC制御装置3から工作物回転角、プロフィルデータ302b、及び加工時ベース円径の信号を受け取る。計測制御装置20は、被加工部41~44の研削時には、第1の測定子244の下端が被加工部41~44に接し、第2の測定子264の上端が被加工部41~44に接する位置に、第1の測定子244及び第2の測定子264を移動させる。
【0037】
図2及び
図3に示すように、工作物4の回転角が0°の場合、計測制御装置20は、第1の測定子244の下端が、270°の位相におけるリフト量と、加工時ベース円径と、主軸1回転当たりの切り込み量の4分の1を足し合わせた位置になるように位置決めすべく、第1のモータ272の駆動回路291に指令を与える。また、計測制御装置20は、第2の測定子264の上端が、90°の位相におけるリフト量と、加工時ベース円径と、主軸1回転当たりの切り込み量の4分の3を足し合わせた位置になるように位置決めすべく、第2のモータ282の駆動回路292に指令を与える。
【0038】
工作物4の回転角が90°の場合、計測制御装置20は、第1の測定子244の下端が、0°の位相におけるリフト量と、加工時ベース円径と、主軸1回転当たりの切り込み量の4分の1を足し合わせた位置になるように位置決めすべく、第1のモータ272の駆動回路291に指令を与える。また、計測制御装置20は、第2の測定子264の上端が、180°の位相におけるリフト量と、加工時ベース円径と、主軸1回転当たりの切り込み量の4分の3を足し合わせた位置になるように位置決めすべく、第2のモータ282の駆動回路292に指令を与える。
【0039】
工作物4の回転角が180°の場合、計測制御装置20は、第1の測定子244の下端が、90°の位相におけるリフト量と、加工時ベース円径と、主軸1回転当たりの切り込み量の4分の1を足し合わせた位置になるように位置決めすべく、第1のモータ272の駆動回路291に指令を与える。また、計測制御装置20は、第2の測定子264の上端が、270°の位相におけるリフト量と、加工時ベース円径と、主軸1回転当たりの切り込み量の4分の3を足し合わせた位置になるように位置決めすべく、第2のモータ282の駆動回路292に指令を与える。
【0040】
工作物4の回転角が270°の場合、計測制御装置20は、第1の測定子244の下端が、180°の位相におけるリフト量と、加工時ベース円径と、主軸1回転当たりの切り込み量の4分の1を足し合わせた位置になるように位置決めすべく、第1のモータ272の駆動回路291に指令を与える。また、計測制御装置20は、第2の測定子264の上端が、0°の位相におけるリフト量と、加工時ベース円径と、主軸1回転当たりの切り込み量の4分の3を足し合わせた位置になるように位置決めすべく、第2のモータ282の駆動回路292に指令を与える。なお、上記のいずれの場合におけるリフト量も、補正プロフィルデータ302cのリフト量でなく、プロフィルデータ302bのリフト量を用いる。
【0041】
第1のスライドブロック231と第2のスライドブロック232との間隔は、第1のスライドブロック231に固定されたデジタルスケール251、及び第2のスライドブロック232に固定されたスケールリーダ252からなるリニアスケール25によって検出可能である。リニアスケール25は、デジタルスケール251に設けられた目盛り等の指標をスケールリーダ252が読み取り、スケールリーダ252の読み取り結果を第1の測定部24と第2の測定部26との間隔を示す情報として計測制御装置20に出力する。
【0042】
計測制御装置20は、被加工部外径値計測装置(実測)203を有し、この被加工部外径値計測装置(実測)203が第1乃至第3の調整器24a,25a,26aに接続されている。第1の調整器24aは、第1の変位検出器240に接続され、ゼロ点とゲインを調整する。第2の調整器25aは、リニアスケール25に接続され、ゼロ点とゲインを調整する。第3の調整器26aは、第2の変位検出器260に接続され、ゼロ点とゲインを調整する。被加工部外径値計測装置(実測)203は、第1の変位検出器240の信号を第1の調整器24aを介して受け、第2の調整器25aを介してリニアスケール25の信号を受け、第3の調整器26aを介して第2の変位検出器260の信号を受け、これらの信号に基づいて第1乃至第4の被加工部41~44の外径の実測値を算出する。
【0043】
また、計測制御装置20は、被加工部外径値計測装置(指令)204を有している。被加工部外径値計測装置(指令)204は、第1の位置計算装置201から第1の測定子244の位置データの信号を受けると共に、第2の位置計算装置202から第2の測定子264の位置データの信号を受け、被加工部外径(指令)を算出する。
【0044】
また、計測制御装置20は、補正計算装置205を有している。補正計算装置205は、被加工部外径値計測装置(実測)203の被加工部外径(実測)の信号を受けると共に、被加工部外径値計測装置(指令)204の被加工部外径(指令)の信号を受け、被加工部外径(指令)から被加工部外径(実測)を引いた値を2で除算し、除算した値を補正データとしてNC制御装置3に送信する。工作物4の回転角が0°の場合には、270°及び90°の位相の補正データがNC制御装置3に送信される。工作物4の回転角とカム部分412の位相とは同じであり、NC制御装置3は、補正プロフィルデータ302cのリフト量にこの補正データを加算した値を新たなリフト量として補正プロフィルデータ302cに記憶する。
【0045】
工作物4の被加工部41の研削加工は、砥石位置データ計算装置32が算出した砥石台位置データとカム部分412の位相を使って行う。砥石台位置データは、砥石台送りモータ171の駆動回路194に指令として与えられ、カム部分412の位相である工作物回転角は、第1主軸台14及び第2主軸台15の工作物駆動モータ141,151の駆動回路192,193に指令として与えられる。ここで、工作物4の回転角とカム部分412の位相は、同じである。つまり、工作物4の回転角が0°のときは、カム部分412の位相が0°となり、カム部分412の位相の0°に対応する砥石台位置データが用いられ、工作物4の回転角が90°のときは、カム部分412の位相が90°となり、カム部分412の位相の90°に対応する砥石台位置データが用いられる。工作物4の被加工部42~44の研削加工も、同様にして行われる。
【0046】
NC制御装置3は、第1主軸台14及び第2主軸台15による工作物4の複数回の回転時のそれぞれおけるカム部分412の研削加工及び寸法測定において、計測装置2の測定結果が想定よりも大きければ(削り足りなければ)次回の回転時におけるカム部分412の研削時における砥石10の切り込み量を大きくし、計測装置2の測定結果が想定よりも小さければ(削り過ぎていれば)次回の回転時におけるカム部分412の研削時における砥石10の切り込み量を小さくする。つまり、NC制御装置3は、カム部分412を研削した後の計測装置2によるカム部分412の寸法の測定結果に応じて、次回のカム部分412の研削時における砥石台16の位置をフィードバック的に調節する。
【0047】
(計測装置の変形例)
図5は、変形例に係る計測装置2Aを示す構成図である。
図3に示す構成例では、第1のスライドブロック231と第2のスライドブロック232との間隔を、第1のスライドブロック231に固定されたデジタルスケール251、及び第2のスライドブロック232に固定されたスケールリーダ252からなるリニアスケール25によって検出する場合について説明したが、
図5に示す変形例では、計測装置2Aがリニアスケール25を有していない。この変形例では、被加工部外径値計測装置(実測)203が、第1のスライドブロック231と第2のスライドブロック232との間隔を、第1の位置計算装置201から受け取る第1の測定子244の位置データ、及び第2の位置計算装置202から受け取る第2の測定子264の位置データの信号に基づいて算出し、第1乃至第4の被加工部41~44の外径の実測値を算出する。計測装置2Aにおけるその他の構成及び処理内容は、
図3を参照して説明したものと同様である。
【0048】
この変形例によっても、
図3に示す計測装置2を用いた場合と同様に、工作物4の被加工部41~44の測定結果を補正プロフィルデータ302cに反映させることができ、カム部分412の研削時における砥石台16の位置をフィードバック的に調節することができる。
【0049】
(実施の形態の効果)
以上説明した実施の形態によれば、NC制御装置3が計測装置2の測定結果に基いて補正プロフィルデータ302cを補正し、砥石位置データ計算装置32は、補正プロフィルデータ302c、ベース円径計算装置31が計算した加工時ベース円径、及び砥石情報303に示される砥石径に基づいて、砥石台16のX軸方向の目標位置である砥石台位置データを算出し、この砥石台位置データと工作物4の回転角(位相)の目標値である工作物回転角データを記憶し、砥石位置データ計算装置32が算出した砥石台位置データで砥石台送りモータ171を駆動し、砥石位置データ計算装置32が算出した工作物回転角データで第1主軸台14及び第2主軸台15の工作物駆動モータ141,151を駆動する。補正プロフィルデータ302cは、被加工部41~44をプロフィルデータ302bの通りに加工するために、砥石台16の追従遅れを考慮したデータであるので、計測装置2の測定結果に基いて補正プロフィルデータ302cを補正すれば、被加工部41~44をプロフィルデータ302bの通りに加工することができる。また、計測装置2による被加工部41~44の寸法測定を研削加工と並行して同時に行うので、研削の完了後に被加工部41~44の寸法測定を行う場合に比較して、一つの工作物4の加工完了後に速やかに次の工作物4の加工を行うことができ、時間当たりの生産台数が少なくなってしまうことを抑制できる。
【0050】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。またさらに、上記した複数の実施の形態の一部の構成を互いに組み合わせることも可能であると共に、例えば下記のように変形することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…カム研削盤 10…砥石
14…主軸台 141…工作物駆動モータ
16…砥石台 161…砥石駆動モータ
17…砥石台送り装置 171…砥石台送りモータ
2…計測装置 24…第1の測定部
240…第1の変位検出器 244…第1の測定子
25…リニアスケール 26…第2の測定部
260…第2の変位検出器 264…第2の測定子
27…第1の移動機構 28…第2の移動機構
302b…プロフィルデータ 4…工作物
41~44…被加工部 411…円形部分
412…カム部分 O1…回転軸線