IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-粉塵回収方法および粉塵回収装置 図1
  • 特開-粉塵回収方法および粉塵回収装置 図2
  • 特開-粉塵回収方法および粉塵回収装置 図3
  • 特開-粉塵回収方法および粉塵回収装置 図4
  • 特開-粉塵回収方法および粉塵回収装置 図5
  • 特開-粉塵回収方法および粉塵回収装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153671
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】粉塵回収方法および粉塵回収装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20231011BHJP
   B28D 1/14 20060101ALI20231011BHJP
   B28D 7/02 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01N1/04 F
B28D1/14
B28D7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063071
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 彰久
(72)【発明者】
【氏名】磯 さち恵
(72)【発明者】
【氏名】壇 英恵
【テーマコード(参考)】
2G052
3C069
【Fターム(参考)】
2G052AA04
2G052AA16
2G052AB28
2G052AC26
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA14
2G052BA15
2G052BA22
2G052EC07
2G052EC23
2G052FD08
2G052GA18
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069BB03
3C069CA07
3C069DA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】試料の粒子径のばらつきを抑制するとともに、コンクリートの所定深さの層ごとに試料を採取する。
【解決手段】先端部にビット11を備えた中空ドリル10によりコンクリート2の表面を回転削孔する削孔工程と、回転削孔により生じた削孔粉を中空ドリル10の中空部12を通して集塵装置50で回収する回収工程と、を備え、削孔工程と回収工程とは、コンクリートの表面から所定の深度で区分した層ごとにそれぞれ行い、層ごとに削孔した削孔粉をそれぞれ別個に回収することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にビットを備えた中空ドリルによりコンクリートの表面を回転削孔する削孔工程と、
前記回転削孔により生じた削孔粉を前記中空ドリルの中空部を通して集塵装置で回収する回収工程と、を備え、
前記削孔工程と前記回収工程とは、前記コンクリートの表面から所定の深度で区分した層ごとにそれぞれ行い、前記層ごとに削孔した前記削孔粉をそれぞれ別個に回収する
ことを特徴とする粉塵回収方法。
【請求項2】
先端部にビットを備えた中空ドリルと、
前記中空ドリルに装着されたスイベルジョイントと、
前記スイベルジョイントの固定側に接続された集塵装置と、を備えた
ことを特徴とする粉塵回収装置。
【請求項3】
前記中空ドリルを含む削孔手段を削孔対象のコンクリートに固定する固定手段を、さらに備えた
ことを特徴とする請求項2に記載の粉塵回収装置。
【請求項4】
前記集塵装置は、サイクロン式集塵機と、前記サイクロン式集塵機に繋がる真空エジェクタと、前記真空エジェクタを作動させるコンプレッサとを備えている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の粉塵回収装置。
【請求項5】
前記集塵装置は、フィルタ式集塵機と、前記フィルタ式集塵機に繋がる真空エジェクタと、前記真空エジェクタを作動させるコンプレッサとを備えている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の粉塵回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵回収方法および粉塵回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の表面から試料を採取し、汚染度判定等の各種試験を行う場合がある。試料を採取する方法や装置としては、例えば特許文献1または2に開示されたものがあった。
特許文献1の試料採取方法は、ドリルハンマーに設けられた中空のドリルビットでコンクリート構造物を削孔し、削孔により生じた削孔粉を、ドリルビットの中空部および吸引ホースを介して集塵容器に吸い込むようになっている。
特許文献2の試料採取方法は、削孔装置の削孔個所を覆うように集塵カバーを設け、削孔時にバキューム装置にて集塵カバー内の粉塵を吸引するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-37146号公報
【特許文献2】特開平11-138526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンクリート構造物の表面の放射線量測定を行う場合、採取した粉塵の粒子径がある程度揃っている必要がある。また、コンクリート構造物の表面は所定の深度ごとに複数層採取する必要がある。
特許文献1の試料採取方法では、ドリルハンマーでコンクリートを砕きながら削孔しているので、破片が混ざり、試料の粒子径にばらつきが生じてしまう。そのため、大きい破片を取り除く手間が必要となるが、放射線量測定においては、放射線の性質上、試料の扱い回数を最小にすることが要求されている。
特許文献2の試料採取方法では、コンクリート構造物の表面に集塵カバーを設けて粉塵を吸引しているので、削孔が複数層に跨ると各層の粉塵が混濁してしまう問題があった。
このような観点から、本発明は、試料の粒子径のばらつきを抑制できるとともに、コンクリートの所定深さの層ごとに試料を採取できる粉塵回収方法および粉塵回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための第一の本発明は、先端部にビットを備えた中空ドリルによりコンクリートの表面を回転削孔する削孔工程と、前記回転削孔により生じた削孔粉を前記中空ドリルの中空部を通して集塵装置で回収する回収工程と、を備えた粉塵回収方法である。前記削孔工程と前記回収工程とは、前記コンクリートの表面から所定の深度で区分した層ごとにそれぞれ行い、前記層ごとに削孔した前記削孔粉をそれぞれ別個に回収することを特徴とする。
本発明の粉塵回収方法によれば、コンクリートの表面を中空ドリルにより回転削孔しているので、試料を細かい粒子形状の削孔粉とすることができる。したがって、試料の粒子径のばらつきを抑制することができる。また、削孔粉を中空ドリルの中空部を通して集塵装置で回収するので、削孔粉は中空ドリルの先端部から削孔と同時に回収される。つまり、所定深さの層ごとに削孔工程を行えば、異なる層の削孔粉が混濁することなく、層ごとに資料を採取することができる。
【0006】
前記課題を解決するための第二の本発明は、先端部にビットを備えた中空ドリルと、前記中空ドリルに装着されたスイベルジョイントと、前記スイベルジョイントの固定側に接続された集塵装置と、を備えたことを特徴とする粉塵回収装置である。
本発明の粉塵回収装置によれば、中空ドリルによりコンクリートの表面を回転削孔するので、試料を細かい粒子形状の削孔粉とすることができる。したがって、試料の粒子径のばらつきを抑制することができる。また、削孔粉は、削孔粉を中空ドリルの中空部を通して集塵装置で回収するので、削孔粉は中空ドリルの先端部から削孔と同時に回収される。つまり、所定深さの層ごとに削孔工程を行えば、異なる層の削孔粉が混濁することなく、層ごとに資料を採取することができる。さらに、スイベルジョイントを介して中空ドリルと集塵装置とを接続しているので、回転する中空ドリルを集塵装置に適宜接続できる。
【0007】
本発明の粉塵回収装置においては、前記中空ドリルを含む削孔手段を削孔対象のコンクリートに固定する固定手段を、さらに備えたものが好ましい。このような構成によれば、中空ドリルの重量が大きい場合や、削孔方向が横方向や上方向の場合であっても、安定した状態で正確な削孔を行うことができる。
本発明の粉塵回収装置においては、前記集塵装置は、サイクロン式集塵機と、前記サイクロン式集塵機に繋がる真空エジェクタと、前記真空エジェクタを作動させるコンプレッサとを備えているものが好ましい。また、前記集塵装置は、フィルタ式集塵機と、前記フィルタ式集塵機に繋がる真空エジェクタと、前記真空エジェクタを作動させるコンプレッサとを備えているものであってもよい。このような構成によれば、集塵装置の集塵効率が高く、削孔粉を好適に集塵することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粉塵回収方法および粉塵回収装置によれば、試料の粒子径のばらつきを抑制できるとともに、コンクリートの所定深さの層ごとに試料を採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る粉塵回収装置の中空ドリルとスイベルジョイントを示した断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る粉塵回収装置のスイベルジョイントを示した拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る粉塵回収装置の集塵装置を示した概略構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る粉塵回収装置の集塵装置の変形例を示した概略構成図である。
図5】本発明の実施形態に係る粉塵回収装置にてコンクリートを削孔する状態を示した図であって、(a)は1層目を削孔する状態を示した側面図、(b)は2層目を削孔する状態を示した側面図、(c)は3層目を削孔する状態を示した側面図、である。
図6】本発明の実施形態に係る粉塵回収装置の変形例を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る粉塵回収方法および粉塵回収装置について、添付した図面を参照しながら説明する。まず、粉塵回収装置の構成を説明する。かかる粉塵回収装置は、例えば原子力施設のクリアランス制度に基づき、コンクリート構造物の汚染度の測定を行うための装置である。
図1は、粉塵回収装置の中空ドリルとスイベルジョイントを示した断面図、図2は粉塵回収装置のスイベルジョイントを示した拡大断面図、図3は粉塵回収装置の集塵装置を示した概略構成図である。
図1乃至図3に示すように、粉塵回収装置1は、中空ドリル10と、スイベルジョイント20と、集塵装置50と、を備えている。
中空ドリル10は、コンクリート構造物を削孔する部位であって、先端部にビット11が設けられている。中空ドリル10は、例えば30mm程度またはそれ以下の外径を備えている。中空ドリル10の中空部12は、中空ドリル10の全長に亘って形成されており、先端部および基端部において開口している。中空部12の基端部は、スイベルジョイント20に接続されている。中空部12は、中空ドリル10でコンクリートを削孔した際に発生する削孔粉を運搬する流路となる。ビット11は、例えばダイヤモンドビットにて構成されており、中空ドリル10の先端面において、中空部12の開口部13を囲うように周設されている。中空ドリル10は、ドリル駆動部14に接続されている。本実施形態では、ドリル駆動部14は、手持ちの電動ドリルにて構成されている。ドリル駆動部14の回転軸15には、スイベルジョイント20を介して、中空ドリル10が接続されている。
【0011】
スイベルジョイント20は、中空ドリル10と集塵装置50とを接続する部位であり、中空ドリル10の基端部に装着されている。スイベルジョイント20は、回転部21と固定部22とを備えている。回転部21は、固定部22の内側に回転可能に支持される部位であり、円柱状を呈している。回転部21は、中空ドリル10および回転軸15の軸方向に延在し、中空ドリル10および回転軸15と同軸に配置されている。回転部21の先端部には、中空ドリル10が連結されており、回転部21と中空ドリル10は共回りする。回転部21の先端側には、凹部23が形成されている。本実施形態の凹部23は、中空ドリル10の中空部12と同軸の有底孔からなり、中空ドリル10の中空部12と連通している。図2に示すように、凹部23の底部付近には、凹部23から回転部21の外周面に至る貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、回転部21の直径方向に延在している、貫通孔24は、複数形成されており、回転部21の軸方向に見て所定角度ピッチで放射状に配置されている。回転部21の外周面には、外周凹溝25が形成されている。外周凹溝25は、外側に向かって広がる断面を備え、周方向に延在して無端状に形成されている。外周凹溝25は、貫通孔24の開口位置に形成されている。つまり、外周凹溝25の底面に貫通孔24が開口している。回転部21の基端部は、回転軸15に連結されており、回転部21は、回転軸15と共に回転する。
【0012】
固定部22は、回転部21を囲う円筒状の部材であり、中央部に挿通孔26を備えている。挿通孔26には、回転部21が挿通されている。挿通孔26の内周面にはベアリング27が設けられており、回転部21を回転可能に支持している。ベアリング27は、挿通孔26の軸方向の基端部と先端部の二か所に設けられている。基端部と先端部のベアリング27,27の間には、シール部材28が周設されている。シール部材28は、回転部21の外周部を覆うリング状を呈し、挿通孔26の軸方向の基端部と先端部の二か所に設けられている。基端部と先端部のシール部材28,28の間に、回転部21の貫通孔24と外周凹溝25が位置するように、回転部21が配置されている。貫通孔24の内周面には、内周凹溝29が形成されている。内周凹溝29は、内側に向かって広がる断面を備え、周方向に延在して無端状に形成されている。内周凹溝29は、外周凹溝25に対向する位置に形成されており、外周凹溝25と合わさることで削孔粉を運搬するための環状空間31を区画している。内周凹溝29の底部には、固定部22の外周面に貫通する貫通孔32が開口している。貫通孔32は、環状空間31内の削孔粉を集塵装置50に運搬するための流路であって、径方向に延在し、例えば一か所に形成されている。貫通孔32の外側端部には、後記する吸引チューブ54が接続される(図1参照)。
固定部22の軸方向の基端部と先端部には、ベアリング27を固定するための蓋部材33がそれぞれ固定されている。蓋部材33は、貫通孔24と連通する孔部34を備えている。孔部34には、回転部21が挿通されている。蓋部材33は、ベアリング27を固定部22に押え付けており、固定部22と蓋部材33とでベアリング27を挟持している。蓋部材33は、固定部22の端面にボルト止めされている。
【0013】
図3に示す集塵装置50は、中空ドリル10でコンクリートを削孔した際に発生する削孔粉を集める装置であって、スイベルジョイント20の固定部22(固定側)に接続されている。図3に示すように、集塵装置50は、サイクロン式集塵機51と、サイクロン式集塵機51に繋がる真空エジェクタ52と、真空エジェクタ52を作動させるコンプレッサ53とを備えている。サイクロン式集塵機51は、図2に示すように、吸引チューブ54を介して、スイベルジョイント20に接続されている。吸引チューブ54は、スイベルジョイント20の固定部22の貫通孔32に接続されている。中空ドリル10による削孔で発生した削孔粉は、回転部21の凹部23、貫通孔24、環状空間31、貫通孔32および吸引チューブ54を介して、サイクロン式集塵機51に運搬される。サイクロン式集塵機51では、真空エジェクタ52によって空気が吸引されて、渦流が発生し、削孔粉と空気が分離される。削孔粉は、サイクロン式集塵機51の下部の集塵部51aに収容される。
【0014】
集塵装置50の構成は、前記構成に限定されるものではない。図4に示すような構成の集塵装置50aであってもよい。変形例に係る集塵装置50aは、フィルタ式集塵機55と、フィルタ式集塵機55に繋がる真空エジェクタ52と、真空エジェクタ52を作動させるコンプレッサ53とを備えている。つまり、集塵装置50aは、前記集塵装置50のサイクロン式集塵機51に代えて、フィルタ式集塵機55を備えている。フィルタ式集塵機55は、吸引チューブ54を介して、スイベルジョイント20に接続されている。フィルタ式集塵機55は、フィルタ55aによって容器55b内が上下に分割されている。容器55b内のフィルタ55aの上方が上室55cとなり、フィルタ55aの下方が下室55dとなる。フィルタ55aは、削孔粉は通過させず、空気は通過させる孔径を備えている。吸引チューブ54の下流側端部は、フィルタ55aを通過して下室55dに開口している。真空エジェクタ52の接続チューブ52aは、上室55cに接続され、容器55b内の空気を吸引する。下室55d内に吸引された削孔粉は、フィルタ55aにて堰き止められ、空気のみがフィルタ55aを通過して、真空エジェクタ52に吸引される。これによって、削孔粉が下室55d内に収容される。
また、図3および図4の集塵装置50において、吸引を行う吸引装置は、真空エジェクタ52に限定されるものではない。例えば、掃除機などの吸引装置を真空エジェクタに変えて粉塵回収を行うこともできる。
【0015】
次に、前記構成の粉塵回収装置1を用いて、コンクリート構造物の表面の汚染度の測定を行うためにコンクリート2の表面を削孔し、削孔粉(粉塵)を回収する粉塵回収方法を説明する。かかる粉塵回収方法は、削孔工程と回収工程と洗浄工程とを備えており、削孔工程と回収工程とは、コンクリートの表面から所定の深度で区分した層ごとにそれぞれ行い、層ごとに削孔した削孔粉をそれぞれ別個に回収する。
図5は、粉塵回収装置にてコンクリートを削孔する状態を示した図であって、(a)は1層目を削孔する状態を示した側面図、(b)は2層目を削孔する状態を示した側面図、(c)は3層目を削孔する状態を示した側面図である。
削孔工程は、中空ドリル10によりコンクリート2の表面を回転削孔する工程である。削孔工程では、手持ちの電動ドリル(ドリル駆動部14)を用いて中空ドリル10を回転させ、先端部のビット11でコンクリート2の表面を削孔する。このとき、スイベルジョイント20の固定部22は、特に固定されていないが、吸引チューブ54が接続されているので回転せずに、中空ドリル10と回転部21が回転する。最初の削孔工程では、図5の(a)に示すように、所定深さの1層目を削孔する。
回収工程は、回転削孔により生じたコンクリート2の削孔粉を中空ドリル10の中空部12を通して集塵装置50で回収する工程である。回収工程は、掘削工程と同時に行う。回収工程では、集塵装置50を作動させ、中空ドリル10の先端部の開口部13から削孔粉を中空部12に吸引する。そして、中空部12に吸引された削孔粉は、スイベルジョイント20の回転部21の凹部23、貫通孔24を通り、環状空間31、固定部22の貫通孔32を通過する。そして、削孔粉は、吸引チューブ54を通って、サイクロン式集塵機51に運搬される。サイクロン式集塵機51では、渦流により削孔粉と空気が分離され、削孔粉は、サイクロン式集塵機51の下部の集塵部51aに落下して収容される。
【0016】
1層目の削孔が完了したら、ドリル駆動部14および集塵装置50を停止させ、削孔工程と回収工程とを一旦中断し、洗浄工程を行う。洗浄工程は、削孔粉が通過した部位を洗浄する工程である。洗浄工程では、中空ドリル10の開口部から高圧空気または水を注入して、内部を洗浄し、削孔粉を取り除く。
洗浄工程が終了したら、2層目について、掘削工程と回収工程を行い、さらに洗浄工程を行う。各工程の手順は1層目と同等である(図5の(b)参照)。2層目の各工程が終了すると、3層目(図5の(c)参照)、4層目・・・と必要な層まで順次各工程を行う。
【0017】
以上説明した本実施形態の粉塵回収装置1および粉塵回収方法によれば、コンクリート2の表面を先端部にビット11を備えた中空ドリル10により回転削孔しているので、試料を細かい粒子形状の削孔粉とすることができる。つまり、ドリルハンマーを用いたときに発生する大きいコンクリート片は発生しないので、試料の粒子径のばらつきを抑制することができる。そして、回収した試料は、放射線量測定にそのまま回すことができるので、放射性物質を含む試料の取り扱いの回数を最小限に抑えることができる。特に放射線量測定においては、取り扱いの回数を低減できることで作業環境を大幅に向上することができる。
また、削孔粉は、中空ドリル10の中空部12を通して集塵装置50で回収するので、中空ドリル10の先端部の開口部13から削孔と同時に回収される。つまり、削孔粉は異なる層を通過しないので、異なる層の削孔粉と混濁することなく、層ごとに試料を採取することができる。これによって、精度の高い放射線量測定を行うことができる。さらに、各層の削孔工程と回収工程を行った後に洗浄工程を行うことで、削孔粉の流路に残る削孔粉を除去できるので、異なる層の削孔粉の混濁をより一層排除できる。
【0018】
本実施形態の粉塵回収装置1によれば、中空ドリル10を、スイベルジョイント20を介して集塵装置50に接続しているので、回転する中空ドリル10を集塵装置50に適宜接続できる。そして、回転削孔した削孔粉を、中空ドリル10の内側を通して回収することができる。
集塵装置50は、サイクロン式集塵機51と、サイクロン式集塵機51に繋がる真空エジェクタ52と、真空エジェクタ52を作動させるコンプレッサ53とを備えているので、集塵装置50の集塵効率が高く、削孔粉を好適に集塵することができる。また、サイクロン式集塵機51に代えてフィルタ式集塵機55を用いても、同様の作用効果を得られる。
【0019】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明を前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、ドリル駆動部14は、手持ちの電動ドリルにて構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、中空ドリル10の径が大きく重量が大きい場合や、ドリル駆動部14の把持が困難な場合などでは、図6に示すように、中空ドリル10を含む削孔手段を、固定手段60を介して、コンクリート2に固定するものであってもよい。つまり、かかる粉塵回収装置1aは、中空ドリル10とスイベルジョイント20と集塵装置50に合わせて、固定手段60をさらに備えている。
【0020】
固定手段60は、中空ドリルを含む削孔手段を削孔対象のコンクリートに固定する手段である。固定手段60は、中空ドリル10をコンクリート2の表面の削孔位置に対向するように固定するとともに、中空ドリル10を削孔方向に移動させる。固定手段60は、ベース部61と支柱部62と移動把持部63とを備えている。ベース部61は、コンクリート2の表面に削孔手段を固定する板状の部位である。ベース部61は、コンクリート2にアンカーボルトBにて固定されている。ベース部61には、支柱部62が立設されている。
支柱部62は、移動把持部63の移動をガイドする部位であって、中空ドリル10の移動方向(掘削方向)に沿って延在している。移動把持部63は、削孔手段を削孔方向に移動可能に支持する部位であって、中空ドリル10をコンクリート2に押し付ける。移動把持部63は、電動ドリル14aを把持し、削孔手段をコンクリート2に向けて近接・離反する方向に移動させる。移動把持部63は、駆動部64と把持部65とを備えている。駆動部64は、支柱部62に沿って移動する。把持部65は、駆動部64から張り出して電動ドリル14aを把持する。
このような構成の固定手段60を設けたことによって、中空ドリル10の重量が大きい場合や、削孔方向が横方向や上方向となりドリル駆動部の把持が困難な場合であっても、安定した状態で正確なコンクリート2の削孔を行うことができる。
【符号の説明】
【0021】
1 粉塵回収装置
1a 粉塵回収装置
10 中空ドリル
11 ビット
12 中空部
20 スイベルジョイント
21 回転部
22 固定部
50 集塵装置
50a 集塵装置
51 サイクロン式集塵機
52 真空エジェクタ
53 コンプレッサ
55 フィルタ式集塵機
60 固定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6