(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153684
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】機器収容ケース
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20231011BHJP
E05D 7/084 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H05K5/03 C
H05K5/03 D
E05D7/084
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063092
(22)【出願日】2022-04-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和3年11月19日~令和4年3月30日、別紙一覧表にある店舗等へ納品 2.令和3年12月13日から、自社ウェブサイトにて公開 3.令和3年12月13日、株式会社PRTIMESのウェブサイトPRTIMESの記事にて公開 4.令和4年2月15日から18日、第50回国際ホテル・レストラン・ショーに出展し公開 5.令和4年2月16日から18日、スーパーマーケットトレードショー2022に出展し公開
(71)【出願人】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】新家 宏明
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB08
4E360BA04
4E360BA11
4E360BB05
4E360BB14
4E360BB17
4E360BB20
4E360BB28
4E360BC03
4E360BC06
4E360BD02
4E360BD05
4E360EA18
4E360EA21
4E360EB02
4E360EC04
4E360EC05
4E360EC11
4E360EC14
4E360EC15
4E360ED02
4E360ED04
4E360ED28
4E360GA08
4E360GA22
4E360GA47
4E360GA51
4E360GB99
(57)【要約】
【課題】開口を開閉するカバーをヒンジで支持する形態の機器収容ケースにおいて、当該ケースの外観のデザイン性を向上することと、カバー解放時に開口を大きく開放することという、相反する2つの課題を同時に解決する。
【解決手段】ヒンジ4は、ケース本体1に設けられる長穴状のヒンジ穴29と、ヒンジ穴29で回転可能かつ前後方向にスライド可能に支持されるヒンジピン30とを含む。ヒンジ穴29は、前端保持部45と後端保持部47とを備え、これら保持部45・47に保持された状態において、ヒンジピン30は前後スライド不能に、しかし回転可能である。ヒンジピン30をヒンジ穴29の後端保持部47に保持させることで、カバー3を閉塞姿勢とすることができる。ヒンジピン30をヒンジ穴29の前端保持部45に保持させた状態で、該ヒンジピン30を揺動中心としてカバー3を上方へと揺動させることで、カバー3を開放姿勢とすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口(2)を有する四角箱状のケース本体(1)と、開口(2)を開閉するカバー(3)と、カバー(3)を支持する左右一対のヒンジ(4・4)とを備え、
カバー(3)が、ヒンジ(4・4)により、開口(2)を閉塞する閉塞姿勢と、開口(2)を開放する開放姿勢との間で姿勢変更可能に支持されている機器収容ケースであって、
各ヒンジ(4)は、ケース本体(1)の内側面の上部に設けられ、前後方向に長い長穴状に形成されるヒンジ穴(29)と、ヒンジ穴(29)で回転可能かつ前後方向にスライド可能に支持される左右方向に伸びるヒンジピン(30)と、カバー(3)の後面に設けられ、ヒンジピン(30)を備えるピンブラケット(31)とを含み、
ヒンジ穴(29)は、前方側に形成された前端保持部(45)と、後方側に形成された後端保持部(47)とを備え、これら前後端の保持部(45・47)に保持された状態において、ヒンジピン(30)は前後スライド不能に、しかし回転可能とされており、
ヒンジピン(30)をヒンジ穴(29)の後端保持部(47)に保持させることで、カバー(3)は閉塞姿勢となり、
ヒンジピン(30)をヒンジ穴(29)の前端保持部(45)に保持させた状態で、該ヒンジピン(30)を揺動中心としてカバー(3)を上方へと揺動させることにより、カバー(3)が開放姿勢となるように構成されていることを特徴とする機器収容ケース。
【請求項2】
ピンブラケット(31)は前後に長い垂直な板状体からなり、カバー(3)から離隔したピンブラケット(31)の後端寄りにヒンジピン(30)が設けられており、
ピンブラケット(31)の移動軌跡は、ヒンジピン(30)を揺動中心とするカバー(3)の揺動時に、ケース本体(1)の上壁(8)と交差するように構成されており、
ケース本体(1)の上壁(8)には、カバー(3)が揺動する際のピンブラケット(31)の移動軌跡と干渉する部分に、前端から後方に向かって切欠き形成されるスリット(56)が設けられており、
カバー(3)が閉塞姿勢にあるとき、ピンブラケット(31)がスリット(56)の内部に侵入している請求項1に記載の機器収容ケース。
【請求項3】
ヒンジ(4)は、カバー(3)が開放姿勢にあるとき、スリット(56)を画成するケース本体(1)の上壁(8)の内面側に係合して、カバー(3)を開放姿勢に保持するロック体(32)を備え、
ロック体(32)が、ピンブラケット(31)に開口されたコ字状の貫通孔(61)で画成される、片持ち状のロック腕(59)と、ロック腕(59)の先端寄りにおいて左右いずれかの方向に突設されるロック爪(60)とで構成される請求項2に記載の機器収容ケース。
【請求項4】
カバー(3)の下端に、ケース本体(1)の下壁(9)の外面に被さる重畳片(20)が設けられており、
下壁(9)と重畳片(20)との間に、カバー(3)が閉塞姿勢にあるときに係合して、ケース本体(1)に対するカバー(3)の前方移動を規制するロック部(65)が設けられており、
ロック部(65)が、下壁(9)と重畳片(20)のいずれか一方に設けられ、他方側に向かって突設される係合突部(66)と、他方に設けられ、係合突部(66)が係合する係合凹部(67)とで構成されている請求項1に記載の機器収容ケース。
【請求項5】
ヒンジ穴(29)は、後端保持部(47)を構成する後側の穴内面である半円弧状の後円弧面(37)を有し、
ヒンジ穴(29)の穴下面(39)に、後円弧面(37)に連続して前方に向かって下り傾斜する後ガイド面(41)が形成されている請求項1から4のいずれかひとつに記載の機器収容ケース。
【請求項6】
ヒンジ穴(29)は、前端保持部(45)を構成する前側の穴内面である半円弧状の前円弧面(36)を有し、
前後の円弧面(36・37)は同一の円弧半径に形成されて、その円弧中心が同一高さ位置に形成されており、
ヒンジ穴(29)の穴下面(39)に、前円弧面(36)に連続して後ガイド面(41)の傾斜下端に向かって下り傾斜する前ガイド面(40)が形成されている請求項5に記載の機器収容ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面に開口を有するケース本体と、前記開口を開閉するカバーとを備え、内部に電気機器等を収容する機器収容ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の機器収容ケースは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1(発明の名称:配電盤のインタロック装置)では、機器収容ケースは、前面に開口を有する配電盤(ケース本体)と、開口を揺動開閉するドア(カバー)と、ドアを揺動可能に支持する上下一対の平蝶番(ヒンジ)とを備える。平蝶番は、機器収容ケースの右側面において配電盤とドアとが隣接する外面側に設けられている。このように機器収容ケースの外部に設けられた平蝶番によれば、開口を開放するとき、その揺動基端側が配電盤と干渉することがなく、配電盤に対してドアを大きく揺動させて、開口前方からドアを遠ざけることができるので、ドアが障害となることなく収容された機器の操作やメンテナンスを行うことができる。しかし、外面に平蝶番が露出するため見栄えが損なわれることが避けられず、機器収容ケースのデザイン性を高めたい場合には不利がある。
【0003】
例えば特許文献2(発明の名称:蓋開閉機構および電子機器)では、筐体(機器収容ケース)は、開口部(開口)を有する筐体本体(ケース本体)と、開口部を開閉する蓋部材(カバー)と、軸体と軸受穴からなるヒンジとで構成されている。ヒンジは、筐体本体と蓋部材とが隣接する部分において筐体の内部側に設けられている。このように内部に設けられたヒンジによれば、ヒンジが露出することなく、筐体本体のデザイン性を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-32619号公報
【特許文献2】特開2014-239156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のように、筐体の内部に設けられたヒンジにおいては、特許文献1に比べて筐体のデザイン性を向上できる点で優位性はあるものの、その構造上、筐体本体と蓋部材とが常に近接しているため、蓋部材を揺動させて開口部を開放するとき、蓋部材の揺動基端側が筐体本体と干渉し、開口を大きく開放するに足る十分な揺動量を確保することが困難となりやすい。そのため、蓋部材を揺動させた場合でも、開口の前方側投影領域内に蓋部材が存在し、開口を大きく開放することができず、この種の機器収容ケースとしては、蓋部材が邪魔になって収容された機器の操作やメンテナンスの障害となる点で利便性に欠ける。
【0006】
本発明は、開口を開閉するカバーをヒンジで支持する形態の機器収容ケースにおいて、当該ケースの外観のデザイン性を向上することと、カバー解放時に開口を大きく開放することという、相反する2つの課題を同時に解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前面に開口2を有する四角箱状のケース本体1と、開口2を開閉するカバー3と、カバー3を支持する左右一対のヒンジ4・4とを備え、カバー3が、ヒンジ4・4により、開口2を閉塞する閉塞姿勢と、開口2を開放する開放姿勢との間で姿勢変更可能に支持されている機器収容ケースを対象とする。各ヒンジ4は、ケース本体1の内側面の上部に設けられ、前後方向に長い長穴状に形成されるヒンジ穴29と、ヒンジ穴29で回転自在かつ前後方向にスライド可能に支持される左右方向に伸びるヒンジピン30と、カバー3の後面に設けられ、ヒンジピン30を備えるピンブラケット31とを含む。ヒンジ穴29は、前方側に形成された前端保持部45と、後方側に形成された後端保持部47とを備え、これら前後端の保持部45・47に保持された状態において、ヒンジピン30は前後スライド不能に、しかし回転可能とされている。そして、ヒンジピン30をヒンジ穴29の後端保持部47に保持させることで、カバー3は閉塞姿勢となり、ヒンジピン30をヒンジ穴29の前端保持部45に保持させた状態で、該ヒンジピン30を揺動中心としてカバー3を上方へと揺動させることにより、カバー3が開放姿勢となるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
ピンブラケット31は前後に長い垂直な板状体からなり、カバー3から離隔したピンブラケット31の後端寄りにヒンジピン30が設けられている。ピンブラケット31の移動軌跡は、ヒンジピン30を揺動中心とするカバー3の揺動時に、ケース本体1の上壁8と交差するように構成されている。ケース本体1の上壁8には、カバー3が揺動する際のピンブラケット31の移動軌跡と干渉する部分に、前端から後方に向かって切欠き形成されるスリット56が設けられている。カバー3が閉塞姿勢にあるとき、ピンブラケット31はスリット56の内部に侵入している。
【0009】
ヒンジ4は、カバー3が開放姿勢にあるとき、スリット56を画成するケース本体1の上壁8の内面側に係合して、カバー3を開放姿勢で位置保持するロック体32を備える。ロック体32は、ピンブラケット31に開口されたコ字状の貫通孔61で画成される、片持ち状のロック腕59と、ロック腕59の先端寄りにおいて左右いずれかの方向に突設されるロック爪60とで構成される。
【0010】
カバー3の下端に、ケース本体1の下壁9の外面に被さる重畳片20が設けられている。下壁9と重畳片20との間に、カバー3が閉塞姿勢にあるときに係合して、ケース本体1に対するカバー3の前方移動を規制するロック部65が設けられている。ロック部65は、下壁9と重畳片20のいずれか一方に設けられ、他方側に向かって突設される係合突部66と、他方に設けられ、係合突部66が係合する係合凹部67とで構成されている。
【0011】
ヒンジ穴29は、後端保持部47を構成する後側の穴内面である半円弧状の後円弧面37を有し、ヒンジ穴29の穴下面39に、後円弧面37に連続して前方に向かって下り傾斜する後ガイド面41が形成されている。
【0012】
ヒンジ穴29は、前端保持部45を構成する前側の穴内面である半円弧状の前円弧面36を有し、前後の円弧面36・37は同一の円弧半径に形成されて、その円弧中心が同一高さ位置に形成されている。ヒンジ穴29の穴下面39に、前円弧面36に連続して後ガイド面41の傾斜下端に向かって下り傾斜する前ガイド面40が形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、開口2を有するケース本体1と、開口2を開閉するカバー3とを備え、カバー3が、ヒンジ4・4により、開口2を閉塞する閉塞姿勢と、開口2を開放する開放姿勢との間で姿勢変更可能に支持されている機器収容ケースにおいて、ヒンジ4を構成するヒンジピン30を、ケース本体1の内側面の上部に設けられるヒンジ穴29で回転自在かつ前後方向にスライド可能に支持しつつ、ヒンジ穴29の前端保持部45および後端保持部47において前後スライド不能に保持できるようにした。そのうえで、ヒンジピン30をヒンジ穴29の後端保持部47に保持させることで、カバー3は閉塞姿勢となり、ヒンジピン30をヒンジ穴29の前端保持部45に保持させた状態で、該ヒンジピン30を揺動中心としてカバー3を上方へと揺動させることにより、カバー3が開放姿勢となるように構成する。以上のような構成からなる機器収容ケースによれば、閉塞姿勢にあるカバー3を前方に引出してヒンジピン30を後端保持部47から前端保持部45へ移動させたのち、カバー3をヒンジピン30を揺動中心として上方へと揺動させることにより、当該カバー3を閉塞姿勢から開放姿勢へと姿勢変更させることができる。また、逆の手順で、ヒンジピン30が前端保持部45に保持された状態でカバー3を下方へと揺動させ、次いでヒンジピン30が前端保持部45から後端保持部47に移動するように、カバー3を後方に押し込むことで、当該カバー3を開放姿勢から閉塞姿勢へと姿勢変更させることができる。
【0014】
以上より、本発明によれば、カバー3が閉塞姿勢にあるときには、一対のヒンジ4・4は、ケース本体1とカバー3とで囲まれる空間の内部に収納されているので、ヒンジ4が外部に露出することによって機器収容ケースの外観の見栄えが損なわれることを防ぐことができる。また、開口2を開放する際には、カバー3は閉塞姿勢から前方へと変位されて、ケース本体1に対してカバー3が離隔した状態となり、このケース本体1に対して離隔した状態でカバー3は揺動されるので、カバー3の揺動時においてケース本体1にカバー3が干渉することを抑えて、ケース本体1に対するカバー3の揺動量を大きくすることができる。以上のように、本発明によれば、開口2を開閉するカバー3をヒンジ4で支持する形態の機器収容ケースにおいて、当該ケースの外観のデザイン性を向上することと、カバー解放時に開口2を前方に向かって大きく開放することという、相反する2つの課題を同時に解決することができる。
【0015】
ピンブラケット31は前後に長い垂直な板状体からなり、カバー3から離隔したピンブラケット31の後端寄りにヒンジピン30が設けられており、ピンブラケット31の移動軌跡は、ヒンジピン30を揺動中心とするカバー3の揺動時に、ケース本体1の上壁8と交差するように構成されており、ケース本体1の上壁8には、カバー3が揺動する際のピンブラケット31の移動軌跡と干渉する部分に、前端から後方に向かって切欠き形成されるスリット56が設けられている形態を採ることができる。これによれば、ピンブラケット31をコンパクトに構成しながらも、カバー3の揺動時におけるピンブラケット31と上壁8との干渉を防ぐことができるので、ピンブラケット31の上下方向の占有空間が大きくなることを解消して、機器収容ケースの収容空間の大容積化に寄与できる。スリット56の左右幅寸法はピンブラケット31の厚み程度であるため、スリット56によってケースのデザイン性が大きく損なわれることもない。また、カバー3が閉塞姿勢にあるとき、ピンブラケット31がスリット56の内部に侵入していると、ケース本体1の上壁8に機器収容ケースの内部に連通する通孔が形成されることを防ぐことができるので、機器収容ケースの内部に塵埃等が侵入することを阻止して、収容された機器に塵埃等による不具合が生じることを防ぐことができる。
【0016】
ヒンジ4が、カバー3を開放姿勢へと姿勢変更したときに、スリット56を画成するケース本体1の上壁8の内面側に係合して、カバー3を開放姿勢で位置保持するロック体32を備えていると、カバー3の姿勢を開放姿勢で保持できるので、収容された機器の操作やメンテナンスを簡便に行うことができる。また、ロック体32が、ピンブラケット31に開口されたコ字状の貫通孔61で画成される、片持ち状のロック腕59と、ロック腕59の先端寄りにおいて左右いずれかの方向に突設されるロック爪60とで構成されていると、ピンブラケット31の一部をロック腕59として利用して、該ロック腕59にロック爪60を設けることにより、別途専用の部材を設ける必要もなく、ヒンジ4の構造を簡素化できる。
【0017】
カバー3の下端に、ケース本体1の下壁9の外面に被さる重畳片20が設けられており、下壁9と重畳片20との間に、カバー3が閉塞姿勢にあるときに係合して、ケース本体1に対するカバー3の前方移動を規制するロック部65が設けられており、ロック部65が、下壁9と重畳片20のいずれか一方に設けられ、他方側に向かって突設される係合突部66と、他方に設けられ、係合突部66が係合する係合凹部67とで構成されている形態を採ることができる。これによれば、閉塞姿勢にあるカバー3はケース本体1に対して、その上側が後端保持部47で保持され、下側がロック部65で保持されるので、地震の揺れや他物の接触等によってカバー3が不用意に前方にずれ動くことを防いで、常に適正に開口2をカバー3で閉塞することができる。
【0018】
ヒンジ穴29は、後端保持部47を構成する後側の穴内面である半円弧状の後円弧面37を有し、ヒンジ穴29の穴下面39に、後円弧面37に連続して前方に向かって下り傾斜する後ガイド面41が形成されていると、カバー3を前方に引き出し後端保持部47によるヒンジピン30の保持が解除されたとき、ヒンジピン30は後ガイド面41を滑り落ちて、カバー3が手前斜め下側に移動するので、この間はカバー3の引き出し操作を軽い操作力で行うことができる。また、凹凸係合からなるロック部65の場合、カバー3が手前斜め下側に移動する際に、下壁9の外面に被さる重畳片20が下壁9から離隔して、ロック部65の係合状態が解除される。従って、閉塞姿勢にあるカバー3の上側の位置保持を解除すると自動的に下側の位置保持が解除されるので、上下の位置保持を個別に解除する手間を省いて、カバー3の開放操作を簡略化できる。
【0019】
ヒンジ穴29は、前端保持部45を構成する前側の穴内面である半円弧状の前円弧面36を有し、前後の円弧面36・37は同一の円弧半径に形成されて、その円弧中心が同一高さ位置に形成されており、ヒンジ穴29の穴下面39に、前円弧面36に連続して後ガイド面41の傾斜下端に向かって下り傾斜する前ガイド面40が形成されていると、カバー3を後方に押し込み前端保持部45によるヒンジピン30の保持が解除されたとき、ヒンジピン30は前ガイド面40を滑り降りて、カバー3が後側斜め下側に移動しようとするので、閉塞姿勢側への姿勢変更を軽い操作力で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る機器収容ケースの要部を示しており、カバーが開放姿勢にあるときの
図5におけるA―A線断面図である。
【
図2】同機器収容ケースの全体を示す斜視図である。
【
図4】カバーが閉塞姿勢にあるときの
図5におけるA―A線断面図である。
【
図5】カバーが閉塞姿勢にあるときのヒンジ構造の横断平面図である。
【
図7】カバーの開放手順においてカバーを引き出す操作を示す説明図である。
【
図8】カバーの開放手順においてカバーを揺動させる操作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態)
図1から
図9に本発明に係る機器収容ケースの実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図2、
図3および
図5に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2において機器収容ケースは、内部に収容空間を有する箱体からなり、横長で前後に扁平な四角箱状のケース本体1と、ケース本体1の前面に形成される開口2を開閉するカバー3とを備えており、
図3に示すようにカバー3は、機器収容ケースの内部に配される左右一対のヒンジ4・4で姿勢変更可能に支持される。
【0022】
図2においてケース本体1は、横長長方形状の後壁7と、後壁7の四周縁から前向きに延設される上壁8、下壁9、左側壁10、および右側壁11を備えており、上壁8および左右の側壁10・11は略同一の前後寸法に形成され、左右の側壁10・11の前下隅部は丸められている。
図3に示すように下壁9は、上壁8に比べて略半分の前後寸法に形成されており、本実施形態の開口2は、ケース本体1の前面全体と下面前半部にわたって形成されている。下壁9の左右中央の前端部には、上向きに凹み形成されて後述する重畳片20を受け入れる凹部12が設けられている(
図9参照)。
【0023】
図3に示すようにカバー3は、側面視においてケース本体1の前縁から下縁前半部に合致する略L字状の板で構成されており、ケース本体1の前面に対応する開口2を塞ぐ前蓋壁14と、ケース本体1の下面に対応する開口2を塞ぐ下蓋壁15とを備える。両蓋壁14・15の境界部分は、左右の側壁10・11の前下隅部に合致するように丸められている。開口2は、一対のヒンジ4・4で支持されるカバー3が、
図3に示す開口2を閉塞する閉塞姿勢と、
図8(b)に示す閉塞姿勢から水平軸まわりに揺動された開放姿勢とに姿勢が変更されることにより開閉される。
【0024】
図2および
図3に示すように前蓋壁14には、同壁14の左右の幅寸法に対して半分以上の幅寸法を有し、後向きに凹み形成された段付き面16が形成されている。段付き面16は、機器収容ケースの意匠性を高めるため、およびカバー3の補強として設けられている。段付き面16には、その中央部分に横長長方形状の露出通孔17が形成されており、露出通孔17の下側には、丸孔からなる装着通孔18が形成されている。段付き面16は前蓋壁14の上端に至っており、ケース本体1の上壁8には、段付き面16部分の前蓋壁14を受け入れる受凹み19が設けられている。開口2がカバー3で閉塞されているとき、上壁8、下壁9、および左右の側壁10・11のそれぞれの前端縁が、カバー3の四周縁の後面と接触している。下蓋壁15の後縁(カバー3の下端)には、カバー3が閉塞姿勢にあるとき、下壁9の外面に被さる重畳片20を備えている。閉塞姿勢にあるカバー3の重畳片20は、先の凹部12に収容されて下壁9の外側に突出することはなく、ケース本体1の下面側はフラットな印象に形成されている。
【0025】
例えばスーパーマーケットにおける店内装置(冷凍庫、冷蔵庫、ショーケースなど)を監視・操作する機器の収容ケースとして、本実施形態の機器収容ケースを利用する場合、ケース本体1とカバー3とで囲まれる収容空間には、
図3に示すように、店内装置に搭載された通信機器との通信を担う通信装置22と、タッチパネル式の表示部を有する制御装置23などが収容される。制御装置23は、表示部が露出通孔17に臨む状態でカバー3の裏面に固定される。符号24は、装着通孔18に取付けられ、制御装置23が発報する異常等を発光で報知する報知ランプである。これら各機器22~24は不図示のケーブルで電気的に接続される。
【0026】
一対のヒンジ4・4は、左右で勝手違いの構成であり、ここでは右側壁11とカバー3との間に配される右側のヒンジ4について説明し、左側壁10とカバー3との間に配される左側のヒンジ4については説明を省略する。
図4および
図5に示すように、ヒンジ4は、右側壁11の内面上部(ケース本体1の内側面上部)に設けられ、前後方向に長い長穴状に形成されるヒンジ穴29と、ヒンジ穴29で回転自在かつ前後方向にスライド可能に支持される左右方向に伸びるヒンジピン30と、カバー3の後面に設けられ、カバー3から離隔した後端寄りにヒンジピン30が設けられるピンブラケット31と、開放されたカバー3を位置保持するロック体32などを備える。ヒンジピン30はピンブラケット31の右側面から右向きに突設される丸軸で構成される。
【0027】
図5に示すように右側壁11の内面側には、ヒンジ穴29よりもひとまわり大きな外形形状の穴ブロック35が左向きに突設されており、穴ブロック35の左側面から右向きにヒンジ穴29が凹み形成されている。
図4においてヒンジ穴29は、前側の穴内面を構成する半円弧状の前円弧面36と、後側の穴内面を構成する半円弧状の後円弧面37と、前円弧面36と後円弧面37とを上側で連続させる穴上面38と、前円弧面36と後円弧面37とを下側で連続させる穴下面39とで構成される。前円弧面36と後円弧面37とは、ヒンジピン30の直径よりも僅かに大きな直径を持つ半円弧面で形成されている。
【0028】
図4に示すように、前後の円弧面36・37の円弧中心は、同一高さ位置に形成されており、穴上面38は水平な面として形成される。穴下面39は、前円弧面36に連続して後方に向かって下り傾斜する前ガイド面40と、後円弧面37に連続して前方に向かって下り傾斜する後ガイド面41とで構成され、前後のガイド面40・41の傾斜下端どうしは滑らかに連続している。前ガイド面40と後ガイド面41との境界部分は後円弧面37の近傍にあり、ヒンジ穴29の上下寸法は、前ガイド面40と後ガイド面41との境界部分が最も大きく形成されている。前ガイド面40は水平に対して約5度傾斜しており、後ガイド面41は水平に対して約45度傾斜している。
【0029】
前円弧面36と前ガイド面40との境界部分には、前規制突起44が上向きに突設されている。前規制突起44と穴上面38との上下方向の間隙は、ヒンジピン30の直径よりも小さく形成されており、ヒンジ穴29を前方向に移動して前規制突起44を乗り越え前円弧面36で受け止められたヒンジピン30は、前規制突起44で後方向への移動が規制され、前円弧面36と前規制突起44とで位置保持される(
図1参照)。これら前円弧面36と前規制突起44とが、ヒンジピン30をヒンジ穴29の前端部で位置保持する前端保持部45を構成する。
【0030】
後円弧面37と後ガイド面41との境界部分には、後規制突起46が上向きに突設されている。後規制突起46と穴上面38との上下方向の間隙は、ヒンジピン30の直径よりも小さく形成されており、ヒンジ穴29を後方向に移動して後規制突起46を乗り越え後円弧面37で受け止められたヒンジピン30は、後規制突起46で前方向への移動が規制され、後円弧面37と後規制突起46とで位置保持される(
図4参照)。これら後円弧面37と後規制突起46とが、ヒンジピン30をヒンジ穴29の後端部で位置保持する後端保持部47を構成する。
【0031】
図5に示すようにピンブラケット31は、前後方向に長い垂直な板状体からなり、ピンブラケット31の後端つまりカバー3から離隔した位置においてヒンジピン30が右向きに突設されている。ピンブラケット31はカバー3と一体的に形成することも可能であるが、本実施形態では、ピンブラケット31はカバー3とは別体で構成されている。ピンブラケット31は、カバー3に固定するための固定枠51を一体に有しており、固定枠51は、カバー3に対するピンブラケット31の位置決め用のガイドピン52を備えている。固定枠51は断面がコ字状に形成されてピンブラケット31の前端左側に設けられており、ガイドピン52は固定枠51の枠内面に前向きに突設されている。
【0032】
カバー3の後面には、ピンブラケット31を固定するためのねじボス53と、先のガイドピン52が内嵌するガイドボス54とが後ろ向きに突設されている。カバー3に対するピンブラケット31の固定は、ガイドボス54にガイドピン52を嵌め込み、固定枠51を介してねじボス53に固定ねじ55をねじ込んで締結する。これにて、固定枠51の上下の両端縁がカバー3の後面に密着し(
図3参照)、ガイドピン52がガイドボス54で位置決めされた状態で、固定ねじ55によりカバー3とピンブラケット31とが一体的に固定される。
【0033】
一対のヒンジ4・4で支持されたカバー3の揺動時におけるピンブラケット31の移動軌跡は、ケース本体1の上壁8と交差するように構成されており、ピンブラケット31の揺動軌跡が上壁8に干渉する部分にスリット56が設けられている。スリット56は、上壁8の前縁から後ろ向きに切欠き形成されており、スリット56の左右幅寸法は、ピンブラケット31の厚み寸法よりも僅かに大きく形成されている。カバー3が閉塞姿勢にあるとき、ピンブラケット31はその上端縁がスリット56に侵入して、該スリット56を塞いでいる。また、ピンブラケット31は上壁8の厚み寸法内でスリット56に侵入しており、上壁8の上面よりもピンブラケット31が上側に突出することはない。本実施形態では、上壁8の上面とピンブラケット31の上端面とが略面一状になるように構成しており、ケース本体1の上面がスリット56部分で凹んでいるような印象を与えることを回避している。なお、スリット56は、左側のヒンジ4においても形成されており、上壁8には左右一対のスリット56・56が形成される。
【0034】
開放姿勢へと姿勢変更されたカバー3の姿勢を保持するために、ロック体32が設けられている。
図1に示すようにロック体32は、左右方向に弾性変形可能なロック腕59と、ロック腕59の先端に右向きに突設されるロック爪60とで構成されている。ロック腕59はピンブラケット31に一体に形成されている。具体的には、ピンブラケット31にはコ字状の貫通孔61が設けられており、該貫通孔61によりピンブラケット31の一部が、片持ち状のロック腕59として画成される。
図6に示すようにロック腕59は、その左面側が削り取られてピンブラケット31よりも薄肉化されており、ロック腕59が左方(貫通孔61への退入方向)に弾性変形したときに、ロック腕59がピンブラケット31の左面から突出しないまま、ロック爪60の突出先端がピンブラケット31の右面と面一状になるまで変形できるようになっている。カバー3が開放姿勢へと姿勢変更されたとき、スリット56を画成する上壁8の右側内面にロック爪60が引っ掛かる(係合する)ことで姿勢保持される。ロック爪60には、開放姿勢へのカバー3の揺動時に、スリット56と当接してロック腕59を退入方向に弾性変形させるガイド面62が設けられている。
【0035】
図3に示すように、ケース本体1の下壁9とカバー3の重畳片20との間に、カバー3が閉塞姿勢にあるときに係合して、ケース本体1に対するカバー3の前方移動を規制するロック部65が設けられている。ロック部65は、重畳片20に設けられ、下壁9に向かって突設される係合突部66と、下壁9に設けられ、係合突部66が係合する係合凹部67とで構成されている。カバー3が閉塞姿勢にあるとき、ヒンジピン30はヒンジ穴29の後端保持部47で保持されており、さらに、ロック部65の係合突部66と係合凹部67とが凹凸係合している。これにより、カバー3は、上側の一対のヒンジ4・4と下側のロック部65とで閉塞姿勢に保持される。上記ロック部65は、下壁9に重畳片20に向かって突設される係合突部66を設け、重畳片20に係合突部66が係合する係合凹部67を設ける形態であってもよい。
【0036】
図7および
図8を用いてカバー3の開放手順を説明する。まず、指先をカバー3の上端に引っ掛け手前側に引くと、カバー3の下端と下壁9との接触部分を支点に、カバー3の上側が前方に倒れ込むように揺動される(
図7(a)参照)。カバー3の揺動によりヒンジピン30が後規制突起46を乗り越えると、カバー3は自重によりヒンジピン30が後ガイド面41を滑り降りることで手前下側に動き、この動きに連動して係合凹部67に対して係合突部66が下向きに移動することで凹凸係合が解除される。後端保持部47の位置保持およびロック部65の係合状態が解除されたカバー3は、ヒンジピン30が前後のガイド面40・41の境界部分で受け止められた状態で一旦保持される(
図7(b)参照)。
【0037】
次に、前蓋壁14の左右を両手で保持し、カバー3の全体を手前に引出すようにすると、ヒンジピン30がヒンジ穴29でガイドされつつ、カバー3が前方に引き出され、最終的に、ヒンジピン30が前規制突起44を乗り越えて、前端保持部45で位置保持される(
図7(c)参照)。この状態から、ヒンジピン30を揺動中心として、カバー3の下端を上方に揺動操作し(
図8(a)参照)、さらに揺動操作すると、ロック腕59が弾性変形してロック爪60がスリット56を画成する上壁8を乗り越える。このとき、ロック爪60に形成されたガイド面62が上壁8に接触することでロック腕59は強制的に弾性変形され、ロック爪60が上壁8を乗り越えた時点で、ロック腕59は弾性変形が解除され復帰する。なお、カバー3は、ロック爪60が上壁8を乗り越えたのちも、カバー3の上端が上壁8に当接するまでは揺動操作可能である。
【0038】
次に、カバー3の揺動操作力を解除すると、カバー3の自重で先とは逆の方向に揺動しようとするが、ロック爪60が上壁8の内面で受け止められることで揺動は停止され、カバー3は開放姿勢で姿勢保持される(
図8(b)参照)。これにて開口2は開放され、この状態で収容された各機器22~24のメンテナンス等を行うことができる。本実施形態におけるカバー3は、右側面視において、手前に引き出されてヒンジピン30が前端保持部45で保持された状態から時計回り方向に約135度揺動できるように構成されている。カバー3を開放姿勢とすると、
図9に示すように、正面視から見たとき開口2の全体が露出される。
図9において符号70は機器収容ケースを壁面に固定する際に、後壁7を壁面に取り付けるためのビスである。ビス70は後壁7の四隅に設けられる。
【0039】
メンテナンス等が完了し、カバー3を閉塞姿勢へと戻すときには、まず、両ロック爪60・60が上壁8を乗り越えることができるよう、カバー3を支えた状態で両ロック腕59・59を指先で弾性変形させ、貫通孔61内へと退入させる。これにて、ロック爪60は上壁8との係合が解除され、カバー3を手前側へと揺動させることができ、カバー3の前蓋壁14が垂直になるまで下方に揺動操作する(
図7(c)参照)。なお、ロック爪60がスリット56を通過したのちは、ロック腕59の弾性変形を解除しても問題はない。続いて、前蓋壁14の左右を両手で保持し、カバー3の全体を後方に押し込んで前端保持部45によるヒンジピン30の位置保持を解除し、カバー3を後方へと移動させる(
図7(b)参照)。このとき、ヒンジピン30は後方に向かって下り傾斜する前ガイド面40で受け止められて後方へスライドされるので、カバー3は比較的軽い力でスライド移動させることができる。
【0040】
ヒンジピン30が、前後のガイド面40・41の境界部分までスライド移動されたのち、カバー3の全体をさらに後方へ押し込むと、ヒンジピン30が後ガイド面41で案内されながら、カバー3は上昇しつつ後方へ斜めに移動する。このカバー3の斜めの移動途中において、係合突部66は係合凹部67へ近づくので、まず、両者66・67の係合状態を確立させる。ロック部65の係合ののち、前蓋壁14の上端側を後方に押し込むことにより、ヒンジピン30は後規制突起46を乗り越え、後端保持部47で位置保持される。これにて、カバー3は閉塞姿勢で保持される。
【0041】
以上のように、本実施形態の機器収容ケースによれば、カバー3が閉塞姿勢にあるときには、一対のヒンジ4・4は、ケース本体1とカバー3とで囲まれる空間の内部に収納されているので、ヒンジ4が外部に露出することによって機器収容ケースの外観の見栄えが損なわれることを防ぐことができる。また、開口2を開放する際のカバー3は、閉塞姿勢から一旦前方へと変位され、ケース本体1に対してカバー3を離隔させた状態で揺動させるので、カバー3の揺動時においてケース本体1にカバー3が干渉することを可及的に回避することができ、ケース本体1に対するカバー3の揺動量を大きく確保することができる。従って、本実施形態によれば、開口2を開閉するカバー3をヒンジ4で支持する形態の機器収容ケースにおいて、当該ケースの外観のデザイン性を向上することと、カバー解放時に開口2を前方に向かって大きく開放することという、相反する2つの課題を同時に解決することができる。
【0042】
ピンブラケット31を前後に長い垂直な板状体で構成し、ヒンジピン30を揺動中心とするカバー3の揺動時にピンブラケット31の移動軌跡と干渉する上壁8部分に、前端から後方に向かって切欠き形成されるスリット56を設けたので、ピンブラケット31をコンパクトに構成しながらも、カバー3の揺動時におけるピンブラケット31と上壁8との干渉を防ぐことができる。従って、ピンブラケット31の上下方向の占有空間が大きくなることを解消して、機器収容ケースの収容空間の大容積化に寄与できる。スリット56の左右幅寸法はピンブラケット31の厚み程度であるため、スリット56によってケースのデザイン性が大きく損なわれることもない。また、カバー3が閉塞姿勢にあるとき、ピンブラケット31はスリット56の内部に侵入するように構成したので、ケース本体1の上壁8に機器収容ケースの内部に連通する通孔が形成されることを防ぐことができ、機器収容ケースの内部に塵埃等が侵入することを阻止して、収容された機器に塵埃等による不具合が生じることを防ぐことができる。
【0043】
ヒンジ4を、カバー3を開放姿勢へと姿勢変更したときに、スリット56を画成するケース本体1の上壁8の内面側に係合して、カバー3を開放姿勢で姿勢保持するロック体32を備えるものとしたので、カバー3の姿勢を開放姿勢で保持でき、収容された機器の操作やメンテナンスを簡便に行うことができる。また、ロック体32を、ピンブラケット31に開口されたコ字状の貫通孔61で画成される、片持ち状のロック腕59と、ロック腕59の先端寄りにおいて左右いずれかの方向に突設されるロック爪60とで構成したので、ピンブラケット31の一部をロック腕59として利用して、該ロック腕59にロック爪60を設けることにより、別途専用の部材を設ける必要もなく、ヒンジ4の構造を簡素化できる。
【0044】
ケース本体1の下壁9の外面に被さる重畳片20を設け、重畳片20に設けられる係合突部66と、下壁9に設けられる係合凹部67とで構成されたロック部65で、ケース本体1に対するカバー3の前方移動を規制したので、閉塞姿勢にあるカバー3はケース本体1に対して、その上側が後端保持部47で保持され、下側がロック部65で保持される。従って、地震の揺れや他物の接触等によってカバー3が不用意に前方にずれ動くことを防いで、常に適正に開口2をカバー3で閉塞することができる。
【0045】
ヒンジ穴29の穴下面39に、後円弧面37に連続して前方に向かって下り傾斜する後ガイド面41を形成したので、カバー3を前方に引き出し後端保持部47によるヒンジピン30の保持が解除されたとき、ヒンジピン30は後ガイド面41を滑り落ちて、カバー3が手前斜め下側に移動する。これにより、ヒンジピン30が後ガイド面41を滑り落ちる間はカバー3の引き出し操作を軽い操作力で行うことができる。また、カバー3が手前斜め下側に移動する際に、下壁9の外面に被さる重畳片20が下壁9から離隔して、凹凸係合からなるロック部65の係合状態が解除される。従って、閉塞姿勢にあるカバー3の上側の位置保持を解除すると自動的に下側の位置保持が解除されるので、上下の位置保持を個別に解除する手間を省いて、カバー3の開放操作を簡略化できる。
【0046】
前後の円弧面36・37は同一の円弧半径に形成されて、その円弧中心を同一高さ位置に形成し、ヒンジ穴29の穴下面39に、前円弧面36に連続して後ガイド面41の傾斜下端に向かって下り傾斜する前ガイド面40を形成した。これによれば、カバー3を後方に押し込み前端保持部45によるヒンジピン30の保持が解除されたとき、ヒンジピン30は前ガイド面40を滑り降りて、カバー3が後側斜め下側に移動しようとするので、閉塞姿勢側への姿勢変更を軽い操作力で行うことができる。
【0047】
本発明におけるケース本体1やカバー3の形状は、実施形態に示したものに限られない。内部に収容される機器も実施形態に示したものに限られない。タッチパネル式の制御装置23や報知ランプ24が必要ない場合には、露出通孔17および装着通孔18が開口されていないカバー3を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 ケース本体
2 開口
3 カバー
4 ヒンジ
8 上壁
9 下壁
20 重畳片
29 ヒンジ穴
30 ヒンジピン
31 ピンブラケット
32 ロック体
36 前円弧面
37 後円弧面
40 前ガイド面
41 後ガイド面
45 前端保持部
47 後端保持部
56 スリット
59 ロック腕
60 ロック爪
61 貫通孔
65 ロック部
66 係合突部
67 係合凹部