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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153757
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】連続生産システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20231011BHJP
   G01N 30/04 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
B01J19/00 321
G01N30/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060477
(22)【出願日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2022063135
(32)【優先日】2022-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】長井 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】岩田 庸助
(72)【発明者】
【氏名】坂本 勝正
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 拓哉
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA61
4G075AA65
4G075BA10
4G075BB05
4G075BB10
4G075BD01
4G075DA01
4G075DA12
(57)【要約】
【課題】生産物を連続的に安定して回収し続けることが可能な連続生産システムを提供する。
【解決手段】連続生産システム500は、生産部100と、異なる種別の複数の監視部230,240と、回収部300、制御部400とを備える。生産部100は、液体原料から生産物を連続的に生成する。複数の監視部230,240は、生産部100により生成された生産物を監視する。回収部300は、生産部100により生成された生産物を回収し、後処理を行う。制御部400は、回収制御部を含む。回収制御部は、複数の監視部230,240による生産物の監視結果に基づいて、回収部300による後処理の動作を変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体原料から生産物を連続的に生成する生産部と、
前記生産部により生成された生産物を監視する、異なる種別の複数の第1の監視部と、
前記生産部により生成された生産物を回収し、後処理を行う回収部と、
前記複数の第1の監視部による生産物の監視結果に基づいて、前記回収部による後処理の動作を変化させる回収制御部を含む制御部とを備える、連続生産システム。
【請求項2】
前記第1の監視部は分析装置を有し、
前記制御部は、前記複数の第1の監視部による生産物の監視結果に基づいて、前記分析装置による分析条件を変更する分析制御部を含む、請求項1記載の連続生産システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記生産部による生産物の生成条件と、前記複数の第1の監視部による生産物の監視結果とを対応付けて履歴データを生成する履歴データ生成部を含む、請求項1または2記載の連続生産システム。
【請求項4】
前記制御部は、生産物の生成時の液体原料の流量、生産物の生成時の温度および生産物の生成時の圧力のうち、前記生産部による生産物の生成条件として変化されるべき制御対象を決定する制御対象決定部を含む、請求項1または2記載の連続生産システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の第1の監視部による生産物の監視結果と、生産物の生成時の液体原料の流量、生産物の生成時の温度および生産物の生成時の圧力の組み合わせとの関係を示すデザインスペースを探索する探索部をさらに含み、
前記制御対象決定部は、前記探索部により探索された前記デザインスペースにおいて示された関係に基づいて制御対象を決定する、請求項4記載の連続生産システム。
【請求項6】
前記制御部は、生産物についての過去の監視結果を取得する結果取得部をさらに含み、
前記制御対象決定部は、前記結果取得部により取得された監視結果に基づいて制御対象を決定する、請求項4記載の連続生産システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記生産部の使用状態を示す状態情報を取得する状態情報取得部をさらに含み、
前記制御対象決定部は、前記状態情報取得部により取得された状態情報に基づいて制御対象を決定する、請求項4記載の連続生産システム。
【請求項8】
前記複数の第1の監視部は、生産物に照射された光を監視する異なる種別の複数の分光監視部と、生産物から分離された成分を監視する異なる種別の複数の分離監視部とからなる群から選択された複数種を含む、請求項1または2記載の連続生産システム。
【請求項9】
前記複数の分光監視部は、原子吸光分光光度計、粒子径分布測定装置、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置、フーリエ変換赤外分光光度計、ラマン分光計、核磁気共鳴分光計または紫外可視分光検出器を含む、請求項8記載の連続生産システム。
【請求項10】
前記複数の分離監視部は、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、質量分析装置または高周波誘導結合プラズマ質量分析装置を含む、請求項8記載の連続生産システム。
【請求項11】
前記回収部は、回収された生産物を観測する第2の監視部を含み、
前記回収制御部は、前記第2の監視部による生産物の監視結果にさらに基づいて、前記回収部による後処理の動作を変化させる、請求項1または2記載の連続生産システム。
【請求項12】
前記第2の監視部は、前記複数の第1の監視部のいずれかと共用される、請求項11記載の連続生産システム。
【請求項13】
前記第1の監視部は、液体クロマトグラフを含み、
前記液体クロマトグラフは、
分析カラムと、
試料が供給されるフローバイアルと、
前記フローバイアルに供給された試料を採取し、採取された試料を前記分析カラムに注入するサンプリングニードルと、
試料を前記フローバイアルに供給する供給流路と、
前記フローバイアルに供給された試料を排出する排出流路と
超音波、低周波数の振動、熱、電場および磁場の少なくとも1つを用いて、監視されるべき試料の溶解を促進する1以上の溶解装置とを含み、
前記1以上の溶解装置は、前記供給流路および前記排出流路の少なくとも1つに取り付けられる、請求項1または2記載の連続生産システム。
【請求項14】
液体原料から生産物を連続的に生成する生産部と、
前記生産部により生成された生産物を監視する監視部とを備え、
前記監視部は、
試料の成分を分析する分析部と、
前記分析部の上流に設けられ、前記生産部により生成された生産物の液体成分と気体成分とを分離する脱気装置と、
前記分析部と前記脱気装置との間に設けられ、前記脱気装置に背圧を加える背圧機構とを含む、連続生産システム。
【請求項15】
前記背圧機構は、前記脱気装置の背圧を一定に制御する背圧制御弁を含む、請求項14記載の連続生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モニタリングシステムにおいては、合成等により生成された薬品、食品または化学物質等の生産物の一部が試料として生産ライン等から抽出される。抽出された試料は、分析室に移送され、例えば液体クロマトグラフにより分析される。これにより、生産物について所定の品質が担保されているか否かを確認することが可能になる。近年、生産物の品質を管理するために、上記の工程を自動化する研究が行われている。
【0003】
例えば、非特許文献1に記載されたマイクロ流体システムにおいては、マイクロリアクタにより複数の試薬が反応される。反応により生成された試料は、HPLC(高速液体クロマトグラフ)に注入され、分析されることにより、試料中の所定の成分の収率が評価される。最適化アルゴリズムに従って、収率が最大になるように試薬の滞留時間および濃度等のパラメータが変化されつつ、同様の分析が繰り返される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jonathan P. McMullen and Klavs F. Jansen, "An Automated Microfluidic System for Online Optimization in Chemical Synthesis", Organic Process Research & Development, 2010, Volume 14, pp. 1169-1176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研究段階では、非特許文献1に記載されたシステムを用いることにより、比較的短い期間の間、最適化された生産物を生成することが可能であると考えられる。しかしながら、生産物の生成のメカニズムでは単純ではなく、最適な生成条件は種々の現象に起因して変化する。そのため、パイロット段階または実用段階において、生産物を連続的に安定して回収し続けることは困難である。
【0006】
本発明の目的は、生産物を連続的に安定して回収し続けることが可能な連続生産システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、液体原料から生産物を連続的に生成する生産部と、前記生産部により生成された生産物を監視する、異なる種別の複数の第1の監視部と、前記生産部により生成された生産物を回収し、後処理を行う回収部と、前記複数の第1の監視部による生産物の監視結果に基づいて、前記回収部による後処理の動作を変化させる回収制御部を含む制御部とを備える、連続生産システムに関する。
【0008】
本発明の他の態様は、液体原料から生産物を連続的に生成する生産部と、前記生産部により生成された生産物を監視する監視部とを備え、前記監視部は、試料の成分を分析する分析部と、前記分析部の上流に設けられ、前記生産部により生成された生産物の液体成分と気体成分とを分離する脱気装置と、前記分析部と前記脱気装置との間に設けられ、前記脱気装置に背圧を加える背圧機構とを含む、連続生産システムに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産物を連続的に安定して回収し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る連続生産システムの構成を示す図である。
図2図1の分析部の概略構成を示すブロック図である。
図3】HPLCの一例を示す模式図である。
図4図1の回収部の概略構成を示すブロック図である。
図5図1の制御部の構成を示すブロック図である。
図6図5の制御部により実行される連続生産処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る連続生産システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1の実施の形態
(1)連続生産システムの構成
以下、本発明の実施の形態に係る連続生産システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る連続生産システムの構成を示す図である。図1に示すように、連続生産システム500は、生産部100、分析部200、回収部300および制御部400を備える。生産部100、分析部200、回収部300および制御部400は、同一の施設に設けられてもよいし、工場または研究所等の別個の施設に設けられてもよい。
【0012】
生産部100は、液体原料を合成、反応または培養することにより、製品または製造途中の半製品となる生産物を試料として生成する。液体原料は、化学物質であってもよいし、微生物等のバイオ系原料であってもよい。また、生産部100においては、試料の生成環境を示す温度または圧力等を示すパラメータが検出される。生産部100により生成された試料は、分析部200に導入される。
【0013】
分析部200は、生産部100により生成された試料に前処理または脱気等の処理を行う。また、分析部200は、処理後の試料の少なくとも一部を分析する。連続生産システム500には、直列に配置された複数の分析部200が設けられてもよい。この場合、複数の分析部200において、試料が段階的に分析される。分析部200を通過した試料は、回収部300に導入される。回収部300は、導入された試料を回収し、試料を所定の形状および量に調製する。また、回収部300は、調製後の試料の一部を検査する。
【0014】
制御部400は、例えばコンピュータにより構成され、CPU(中央演算処理装置)およびメモリを含む。制御部400は、生産部100から各種の検出結果を取得し、分析部200から監視結果を取得し、回収部300から監視結果を取得する。また、制御部400は、取得された結果に基づいて生産部100の動作を制御する。以下、連続生産システム500の各部の詳細を説明する。
【0015】
(2)生産部
生産部100は、フロー合成装置110を含む。生産部100は、フロー合成装置110に代えて、またはフロー合成装置110に加えて、CSTR(連続槽型反応器)120およびバッチ生産装置130の一方または両方を含んでもよい。生産部100がCSTR120またはバッチ生産装置130を含む場合には、送液装置140をさらに含む。
【0016】
フロー合成装置110は、送液装置111,112、滅菌装置113、反応器114および背圧制御装置115を含む。送液装置111,112は、例えば送液ポンプであり、ボトル101,102に貯留された液体原料を反応器114にそれぞれ圧送する。送液装置111,112の各々には、液体原料の送液量を検出する流量センサが設けられる。
【0017】
必要に応じて、反応器114には、ボトル103に封入された水素等の気体を供給することも可能である。図1の例では、液体原料を供給するための2つの流路と、気体を供給するための1つの流路が設けられるが、流路の数および種類はこれに限定されない。また、バイオ系原料が使用される場合、滅菌装置113は、流路の汚染を防止するために、流路に滅菌処理を行う。滅菌装置113は、オートクレーブを含んでもよい。
【0018】
反応器114は、例えばプラグフロー反応器を含み、導入された液体原料を反応させることにより所定の生産物を試料として生成する。反応器114には、内部の温度を調整する温調装置が設けられるとともに、内部の圧力を調整する圧力調整弁が設けられる。また、反応器114には、内部の温度および圧力をそれぞれ検出する温度センサおよび圧力センサが設けられる。
【0019】
背圧制御装置115は、反応器114の下流に配置される。背圧制御装置115は、反応器114における反応が促進されるように、反応器114の背圧を制御する。反応器114により生成された生産物は、背圧制御装置115を通して分析部200に導入される。
【0020】
CSTR120は、導入された2以上の液体原料を反応させることにより所定の生産物を試料として連続的に生成する。バッチ生産装置130は、予め生成されたバッチファイルに従って液体原料の合成または培養等を行うことにより、薬品または食品等の生産物を試料として生成する。CSTR120およびバッチ生産装置130の各々には、試料の生成環境における温度または圧力をそれぞれ検出する温度センサまたは圧力センサが設けられる。送液装置140は、例えばスラリーポンプを含み、CSTR120またはバッチ生産装置130により生成された試料を分析部200に圧送する。
【0021】
また、生産部100には、生産部100の使用状態を示す状態情報を検出するセンサが設けられる。状態情報は、生産物の生成時の液体原料の流量、生産物の生成時の温度および生産物の生成時の圧力等のパラメータに加えて、時刻、生産部100の設置施設内の室温または設置施設内の湿度等を含む。生産部100は、検出された種々の状態情報を制御部400に与える。
【0022】
(3)分析部
図2は、図1の分析部200の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、分析部200は、前処理装置210および脱気装置220を含む。前処理装置210は、生産部100により生成された試料に所定の前処理を行う。前処理装置210は、種々の前処理を行う装置として、脱塩装置211、気液分離装置212、フィルタリング装置213、再溶解装置214およびサンプリング装置215の一部または全部を含む。
【0023】
脱塩装置211は、試料に含まれる塩を除去する。気液分離装置212は、試料における気体成分と液体成分とを分離する。フィルタリング装置213は、試料に含まれる不純物を除去する。再溶解装置214は、スラリー状の試料を再溶解する。再溶解装置214の例として、超音波、低周波数の振動、熱、電場または磁場を発生させる装置が挙げられる。サンプリング装置215は、例えばロボットハンドにより試料を分析に適したサイズに調整する。
【0024】
脱気装置220は、前処理装置210により前処理が行われた試料から気泡を除去する。脱気装置220により気泡が除去された試料は、下流に接続された流路(以下、主流路201と呼ぶ。)を通して回収部300に導入される。主流路201からは、試料の一部を分析するための複数の流路(以下、分析流路202と呼ぶ。)が並列的に分岐する。
【0025】
分析部200は、異なる種別の複数の監視部をさらに含む。複数の監視部は、試料に照射された光を監視する分光系の監視部230と、試料から分離された成分を監視する分離系の監視部240とに大別される。監視部230,240は、分析流路202に設けられる。
【0026】
図2の例では、複数の監視部230は、AA(原子吸光分光光度計)231、粒子径分布測定装置232、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析装置233、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)234、ラマン分光計235、NMR(核磁気共鳴)分光計236またはUV(紫外可視分光)検出器237である。監視部230は、他の分光系の監視部であってもよい。
【0027】
図2の例では、複数の監視部240は、HPLC(高速液体クロマトグラフ)241、GC(ガスクロマトグラフ)242、MS243(質量分析装置)またはICP-MS244である。監視部240は、他の分離系の監視部であってもよい。また、監視部240は、UV検出器、吸光度検出器、RI(示差屈折率)検出器、熱伝導度検出器または電子増倍管等の検出器を含んでもよい。
【0028】
HPLC241に試料を導入する方法としては、後述する図3のフローバイアルを用いてもよい。これにより、分析流路202をHPLC241に接続することができる。また、生産ライン等で用いられる試料の濃度は比較的高いため、試料がHPLC241の流路内で析出または再結晶してHPLC241が損傷することがあるため、超音波、低周波数の振動、熱、電場または磁場を発生させる溶解装置をフローバイアル、フローバイアルの入口流路または出口流路に設けてもよい。
【0029】
ここで、超音波とは、人間の耳では聞くことができない20kHz以上の高い周波数を有する音波を意味する。一方、低周波数の振動とは、20kHzより低い周波数を有する音波を意味する。低周波数の振動を発生させる溶解装置としてボルテックスミキサまたは振動素子が挙げられる。溶解装置は分析中、常に動作してもよいし、試料が流入する特定の期間のみ動作してもよい。
【0030】
各監視部230,240は、試料を監視することにより試料を分析し、監視結果を制御部400に与える。各監視部230,240の構成についてはよく知られているので、ここでは詳細な説明を省略する。各監視部230,240による監視結果は、ベンゼン環の特定、C=O結合の特定または芳香族の構造の特定等、試料の同定に用いられる。
【0031】
監視部230による監視結果は、即時的な試料の同定に使用可能である。また、監視部240による監視結果は、詳細な試料の同定および定量に使用可能である。各監視部230,240による分析条件は、各監視部230,240の分析結果に基づいて変更されてもよい。例えば、HPLC241、GC242またはMS243について、希釈等の前処理工程を追加したり、流速またはオーブン温度等を設定するメソッドファイルを修正したりしてもよい。
【0032】
図2の例では、監視部230が監視部240の上流に配置されるが、実施の形態はこれに限定されない。監視部240が監視部230の上流に配置されてもよい。あるいは、一部の監視部230が監視部240の上流に配置され、他の監視部230が監視部240の下流に配置されてもよい。同様に、一部の監視部240が監視部230の上流に配置され、他の監視部240が監視部230の下流に配置されてもよい。すなわち、監視部230と監視部240とは、交互に配置されてもよい。
【0033】
また、図2の例では、全部の監視部230,240が互いに異なる分析流路202に設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。監視部230,240のうち、試料の組成に影響を与えない非破壊分析を行う監視部は、主流路201に設けられてもよいし、他の監視部と同じ分析流路202において、当該監視部の上流に設けられてもよい。
【0034】
本実施の形態において、分析部200は監視部230,240の両方を含むが、実施の形態はこれに限定されない。分析部200が異なる種別の複数の監視部230を含む場合、監視部240を含まなくてもよい。同様に、分析部200が異なる種別の複数の監視部240を含む場合、監視部230を含まなくてもよい。
【0035】
(4)試料注入装置の構成
図3は、HPLC241の一例を示す模式図である。図3に示すように、HPLC241は、試料注入装置10および分析カラム20を含む。試料注入装置10は、支持部11、フローバイアル12、希釈用バイアル13、供給流路14、排出流路15、バルブ16およびサンプリングニードル17(以下、ニードル17と呼ぶ。)を含む。支持部11は、フローバイアル12および希釈用バイアル13を支持する。
【0036】
供給流路14は、フローバイアル12と主流路201とを接続する。排出流路15は、フローバイアル12と図示しない廃液部とを接続する。バルブ16は、供給流路14に介挿される。バルブ16が開放されることにより、主流路201を流れる試料の一部は、供給流路14を通してフローバイアル12に供給される。その後、バルブ16が閉止されることにより、供給された試料が一時的にフローバイアル12に貯留されてもよい。フローバイアル12に供給された試料は、排出流路15を通して廃液部へ廃棄される。
【0037】
ニードル17は、フローバイアル12内の試料を吸引し、希釈用バイアル13に吐出する。試料は、希釈用バイアル13内で希釈液と混合されることにより希釈される。ニードル17は、希釈された希釈用バイアル13内の試料を吸引し、分析流路202に注入する。これにより、試料が分析カラム20に供給される。分析カラム20を通過した試料は、UV検出器または吸光度検出器等の検出器により検出される。試料を希釈する必要がない場合には、試料注入装置10は希釈用バイアル13を含まなくてもよい。この場合、ニードル17は、フローバイアル12内の試料を吸引し、分析流路202に注入する。
【0038】
また、試料注入装置10は、1つ以上(本例では4つ)の溶解装置1をさらに含む。4つの溶解装置1は、フローバイアル12、希釈用バイアル13、供給流路14および排出流路15にそれぞれ取り付けられる。図3の例では、各溶解装置1は、超音波素子2および超音波伝達部材3を含む。各超音波素子2は、対応する超音波伝達部材3を介して取り付け対象(フローバイアル12、希釈用バイアル13、供給流路14または排出流路15)に取り付けられる。
【0039】
超音波素子2は、所定の周波数で駆動することにより、超音波を発生する。超音波素子2は、連続的に駆動してもよいし、断続的に駆動してもよい。超音波伝達部材3は、例えばシリコーンゴムにより形成される。超音波伝達部材3は、他の弾性体により形成されてもよいし、ゲルまたはグリス等により形成されてもよい。
【0040】
超音波素子2により発生された超音波は、超音波伝達部材3を介して上記の取り付け対象に伝達される。この場合、取り付け対象内の溶液にキャビテーションが発生することにより、試料の溶解が促進される。これにより、試料の濃度が高い場合でも、試料の析出または再結晶を防止することができる。
【0041】
本例では、4つの取り付け対象の全部に溶解装置1が取り付けられるが、実施の形態はこれに限定されない。1つの取り付け対象のみに溶解装置1が取り付けられてもよく、2つ以上の取り付け対象に溶解装置1が取り付けられることが好ましく、3つ以上の取り付け対象に溶解装置1が取り付けられることがより好ましい。
【0042】
特に、フローバイアル12または供給流路14に溶解装置1が取り付けられる場合には、フローバイアル12内の試料の析出または再結晶を効率よく防止することができる。希釈用バイアル13に溶解装置1が取り付けられる場合には、希釈用バイアル13内の試料の析出または再結晶をより効率よく防止することができる。排出流路15に溶解装置1が取り付けられる場合には、試料の析出または再結晶による排出流路15の詰まりを防止し、効率よく廃液を行うことができる。
【0043】
なお、図3の例では、溶解装置1は、フローバイアル12および希釈用バイアル13の各々の側面に取り付けられるが、実施の形態はこれに限定されない。溶解装置1は、フローバイアル12の側面ではなく、底面に取り付けられてもよいし、フローバイアル12の底面および側面の両方に取り付けられてもよい。同様に、溶解装置1は、希釈用バイアル13の側面ではなく、底面に取り付けられてもよいし、希釈用バイアル13の底面および側面の両方に取り付けられてもよい。
【0044】
(5)回収部
図4は、図1の回収部300の概略構成を示すブロック図である。図4に示すように、回収部300は、分注装置310、後処理装置320および監視部330を含む。分注装置310は、例えばリキッドハンドラを含む。分注装置310は、分析部200から導入される試料を吸引し、後処理装置320に分注する。後処理装置320においては、一連の後処理が行われる。分注装置310の上流に蛍光検出器等を設け、後処理装置320は、試料が流れてきた場合のみ分注してもよい。
【0045】
後処理装置320は、フィルタリング装置321、乾燥機322、秤量計323、サンプリング装置324、打錠機325および充填装置326を含む。フィルタリング装置321は、試料に含まれる不純物を除去する。乾燥機322は、試料を乾燥させる。秤量計323は、試料の重量を計測する。サンプリング装置324は、例えばロボットハンドにより試料を所定の分量に調整する。打錠機325は、試料を所定の形状に調整する。充填装置326は、試料をブリスターパック等の包装シートに製品として封入する。
【0046】
監視部330は、図2の監視部230または監視部240と同様の構成を有する。監視部330は、後処理装置320により後処理が行われた一部の試料を監視することにより試料を検査し、監視結果を制御部400に与える。監視部330においては、試料の含水率または溶媒濃度等がさらに測定されてもよい。
【0047】
回収部300には、異なる種別の複数の監視部330が設けられてもよい。あるいは、図2の各種監視部230,240が監視部330として共用されてもよい。この場合、分注装置310は、後処理後の試料の一部を吸引し、監視部230,240に分注する。この構成においては、複数の監視部230,240と別個に監視部330を設ける必要がない。これにより、連続生産システム500のコストを低減させることができる。
【0048】
後処理装置320の動作は、監視部230,240の監視結果に基づいて変更されてもよい。例えば、分析部200で特定の成分が検出されたときのみ後処理が行われてもよい。あるいは、分析部200で検出したピーク面積またはピーク高さに基づいて、乾燥時間が変更されてもよい。この場合、成分量に最適な乾燥時間を設定することができる。
【0049】
また、目的成分のピーク面積またはピーク高さの合計値が一定を超えた際に、秤量計323、サンプリング装置324、打錠機325または充填装置326による後処理が行われてもよい。この場合、重量の計測またはサンプリングの回数を削減することができる。あるいは、所望の分量の錠剤生成または製品としての封入工程を自動化または最適化することができる。後処理装置320の動作は、監視部230,240に代えて、監視部330の監視結果に基づいて変化されてもよい。
【0050】
(6)制御部
図5は、図1の制御部400の構成を示すブロック図である。図5に示すように、制御部400は、データベース記憶装置401を含む。また、制御部400は、機能部として、生産制御部410、分析制御部420、回収制御部430、状態情報取得部440、履歴データ生成部450、評価値決定部460、結果取得部470、探索部480および制御対象決定部490を含む。制御部400のCPUがメモリに記憶された連続生産プログラムを実行することにより、制御部400の機能部が実現される。制御部400の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0051】
データベース記憶装置401は、データベースを記憶する大容量のデータサーバ等を含む。データベースは、生産物についての過去の監視結果を含んでもよい。過去の監視結果は、分析部200または回収部300により得られた過去の監視結果を含んでもよいし、他の分析装置により得られ、文献に掲載された過去の監視結果を含んでもよい。
【0052】
また、データベースは、生産物についての品質を示す評価値と状態情報の組み合わせとの関係を示すデザインスペースを含んでもよい。状態情報は、主として液体原料の流量、生成環境における温度または圧力であるが、時刻、室温または湿度等をさらに含んでもよい。この場合、後述する制御対象をより正確に決定することができる。デザインスペースとは、状態情報と生成結果との関係を表したグラフであり、例えば2つの生成条件パラメータと生成結果とを2次元のヒートマップで表すことができる。
【0053】
生産制御部410は、後述する制御対象決定部490により決定された制御対象を変化させつつ、生産部100の動作の制御を繰り返す。制御対象の変化は、例えば図1の送液装置111,112、温調装置または圧力調整弁の制御により行われる。分析制御部420は、分析部200の動作を制御するとともに、分析部200試料の監視結果を取得する。回収制御部430は、回収部300の動作を制御するとともに、回収部300から試料の監視結果を取得する。
【0054】
状態情報取得部440は、生産物の生成環境における流量、温度、圧力、時刻、室温または湿度等の状態情報を所定の時間間隔で生産部100から繰り返し取得する。制御部400がインターネット等に接続されている場合には、状態情報は、外部のサーバ等から取得してもよい。あるいは、状態情報の少なくとも一部は、使用者により状態情報取得部440に入力されてもよい。
【0055】
履歴データ生成部450は、状態情報取得部440により取得された状態情報と、分析制御部420または回収制御部430により取得された監視結果とを応付けて履歴データを生成する。履歴データは、連続生産システム500の動作の履歴を示す。履歴データ生成部450は、生成された履歴データをデータベース記憶装置401に記憶させてもよい。
【0056】
評価値決定部460は、分析制御部420または回収制御部430により取得された監視結果の組み合わせに基づいて、試料についての品質を示す評価値を決定する。評価値は、例えば生成された試料における特定成分の収率または収量であってもよいし、生成された試料の純度であってもよい。
【0057】
結果取得部470は、生成された試料についての過去の監視結果をデータベース記憶装置401から取得する。使用者は、生成された試料を結果取得部470に指定することができる。制御部400がインターネット等に接続されている場合には、結果取得部470は、生成された試料についての過去の監視結果を外部のサーバ等から取得してもよい。
【0058】
探索部480は、生成された試料に関するデザインスペースをデータベース記憶装置401上で探索する。使用者は、生成された試料を探索部480に指定することができる。制御部400がインターネット等に接続されている場合には、探索部480は、生成された試料に関するデザインスペースを外部のサーバ等上で探索してもよい。
【0059】
制御対象決定部490は、状態情報取得部440により取得された状態情報のうち、評価値が所定値以上になるように生産部100により変化されるべき少なくとも1つの制御対象を決定する。変化されるべき少なくとも1つの制御対象は、主として液体原料の流量、生成環境における温度または圧力である。制御対象は、結果取得部470により取得された監視結果と、探索部480により探索されたデザインスペースとの少なくとも一方に基づいて自動的に決定されてもよい。
【0060】
あるいは、制御対象は、使用者による指定に基づいて決定されてもよい。この場合において、制御対象決定部490は、結果取得部470により取得された監視結果と、探索部480により探索されたデザインスペースとの少なくとも一方に基づいて、変化されるべき少なくとも1つの制御対象を使用者に提案してもよい。この場合、使用者は、変化されるべき少なくとも1つの制御対象を容易に指定することができる。
【0061】
また、状態情報取得部440により取得された状態情報に基づいて、フィルタリング、再溶解、相分離または気液分離処理が行われてもよい。これにより、試料または夾雑物が増加したり、不要な溶媒または気体が生成される可能性がある場合でも、これらを生産や分析へ影響を与えないようにすることができる。
【0062】
(7)連続生産処理
図6は、図5の制御部400により実行される連続生産処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。以下、図5の制御部400および図6のフローチャートを用いて連続生産処理を説明する。まず、生産制御部410は、生産部100の動作を制御する(ステップS1)。状態情報取得部440は、ステップS1において検出された状態情報を生産部100から取得する(ステップS2)。
【0063】
分析制御部420は、分析部200の動作を制御する(ステップS3)。また、分析制御部420は、ステップS3における監視結果を分析部200から取得する(ステップS4)。回収制御部430は、回収部300の動作を制御する(ステップS5)。また、回収制御部430は、ステップS5における監視結果を回収部300から取得する(ステップS6)。ステップS1,S2と、ステップS3,S4と、ステップS5,S6とは、適宜並列的に実行される。
【0064】
履歴データ生成部450は、ステップS2で取得された状態情報と、ステップS4で取得された監視結果と、ステップS6で取得された監視結果とを対応付けて履歴データを生成する(ステップS7)。履歴データ生成部450は、生成された履歴データをデータベース記憶装置401に記憶させてもよい。
【0065】
次に、評価値決定部460は、ステップS4,S6で取得された監視結果の組み合わせに基づいて評価値を決定する(ステップS8)。また、結果取得部470は、試料についての過去の監視結果を取得する(ステップS9)。さらに、探索部480は、試料に関するデザインスペースを探索する(ステップS10)。ステップS7~S10は、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0066】
続いて、制御対象決定部490は、変化されるべき少なくとも1つの制御対象を決定する(ステップS11)。当該決定は、ステップS2で取得された状態情報と、ステップS8で決定された評価値と、ステップS9で取得された監視結果およびステップS10で探索されたデザインスペースの少なくとも一方とに基づいて行われる。その後、生産制御部410は、ステップS11で決定された制御対象を変化させ(ステップS12)、ステップS1に戻る。これにより、制御対象が変化されつつ、試料の連続生産が続行される。
【0067】
(8)効果
本実施の形態に係る連続生産システム500においては、種々の現象に起因して試料の最適な生成条件が変動する場合でも、複数の監視部230,240により取得された試料の監視結果に基づいて、回収部300による後処理の動作を最適に近づけることが容易になる。これにより、試料を連続的に安定して回収し続けることが可能になる。
【0068】
複数の監視部230は、試料に照射された光を監視する異なる種別の複数の分光監視部を含む。本例では、複数の監視部230は、AA231、粒子径分布測定装置232、ICP発光分光分析装置233、FTIR234、ラマン分光計235、NMR分光計236またはUV検出器237を含む。この場合、試料の即時的な監視結果に基づいて、生産部100による試料の生成条件が変化される。これにより、試料を連続的に安定して生成し続けることがより容易になる。
【0069】
複数の監視部240は、試料から分離された成分を監視する異なる種別の複数の分離監視部を含む。本例では、複数の監視部240は、HPLC241、GC242、MS243またはICP-MS244を含む。この場合、試料の詳細的な監視結果に基づいて、生産部100による試料の生成条件が変化される。これにより、試料を連続的に安定して生成し続けることがより容易になる。
【0070】
制御部400は、生産部100による試料の生成条件と、複数の監視部230,240による生産物の監視結果とを対応付けて履歴データを生成する履歴データ生成部450を含む。履歴データには、回収部300の監視部330による生産物の監視結果がさらに対応付けられてもよい。この場合、試料の生成条件と、試料の監視結果とが一元管理されることにより、データインテグリティが保証される。
【0071】
生成された履歴データを参照することにより、試料の生成の終始を容易に追跡することができる。また、試料の品質的なバックアップデータを容易に生成することができる。使用者は、試料の生成条件と、試料の監視結果との対応付けを行う必要がない。そのため、使用者の労力および作業時間を低減することができる。また、対応付けの作業誤りが発生することを防止することができる。
【0072】
回収部300においては、生産部100により生成された試料が回収され、所定の分量に調整される。この場合、生成された試料を製品または半製品として回収することができる。また、回収された試料の監視結果にさらに基づいて、生産部100による試料の生成条件が変化される。この場合、回収された試料の監視結果にさらに基づいて試料の生成条件が変化される。これにより、生産部100による試料の生成条件を最適に近づけることがより容易になる。
【0073】
2.第2の実施の形態
(1)連続生産システム
以下、第2の実施の形態に係る連続生産システム500について、第1の実施の形態に係る連続生産システム500と異なる点を説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態に係る連続生産システム500の構成を示す図である。図7に示すように、本実施の形態における分析部200は、背圧機構250、圧力センサ260および制御部270をさらに含む。
【0074】
本実施の形態では、生産部100は、液体原料と気体とを反応させることにより試料を生成する。この場合、試料は、主として液体成分からなるが、未反応の気体成分を含むことがある。例えば、生産部100は、液体原料を水素添加反応させることにより試料を生成してもよい。この場合、生成された液体状の試料は未反応の水素ガスを含む。
【0075】
生産部100により生成された試料は、分析部200の前処理装置210を通過し、脱気装置220に導入される。脱気装置220において、導入された試料の液体成分と気体成分とが分離される。本例では、脱気装置220は、例えば多孔質性のポリテトラフルオロエチレンからなる管部材である。脱気装置220に導入された試料の気体成分は、管部材の試料が通る内部と管部材の外部との圧力差により孔から外部に排出され、試料の液体成分のみが下流から導出される。脱気装置220内の管部材の外部は真空に近い圧力まで下げられている。
【0076】
背圧機構250は、例えばオリフィスを含む背圧制御弁である。背圧機構250は、脱気装置220の下流に設けられ、脱気装置220に背圧を加える。圧力センサ260は、脱気装置220の背圧を検出する。制御部270は、圧力センサ260により検出される脱気装置220の背圧に基づいて、脱気装置220の背圧が一定になるように背圧機構250の動作を制御する。本例では、オリフィスの開閉が制御されることにより、脱気装置220の背圧が一定に維持される。
【0077】
背圧機構250を通過した試料は、監視部230,240により監視および分析される。ここで、背圧機構250を通過した試料からは気体成分が除去されているので、監視部230,240において、試料を適切に分析することができる。また、脱気装置220および背圧機構250は、監視部230,240と回収部300との分岐部の上流に設けられていてもよいし、当該分岐部と監視部230,240との間に設けられていてもよい。当該分岐部を通過した試料は、回収部300に導入され、試料の回収が行われる。
【0078】
(2)効果
本実施の形態に係る連続生産システム500においては、生産部100により連続的に生成される試料が、分析部200により分析され、回収部300により回収される。試料に気体成分が含まれる場合でも、分析部200において、脱気装置220により試料の液体成分と気体成分とが分離される。脱気装置220には、その下流に設けられた背圧機構250により背圧が加えられる。
【0079】
この構成によれば、脱気装置220における管部材内部の圧力と管部材外部の圧力との差が大きくなるため、脱気装置220による気体の分離効率が向上し、試料からより多くの気体成分が除去されるので、分析部200による正常な分析が気体成分により妨げられることがない。これにより、正常に分析された試料を連続的に安定して回収し続けることができる。脱気装置220および背圧機構250が監視部230,240と回収部300との分岐部の上流に設けられている場合には、さらに試料から気体成分が除去された状態で回収部300に回収されるため、余分な成分を含まない試料を回収することができる。
【0080】
また、脱気装置220の背圧は、背圧機構250により一定に制限されるので、連続生産システム500の立ち上がり後、連続生産システム500を短時間で安定状態にすることができる。そのため、回収部300による試料の回収効率がより向上する。また、連続生産システム500の立ち上がり直後にも、脱気装置220に過大な背圧が加わることがない。これにより、脱気装置220が破損することを確実に防止することができる。
【0081】
(3)変形例
本実施の形態において、分析部200に背圧機構250の動作を制御するための制御部270が設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。制御部400が背圧機構250の動作を制御する場合には、分析部200に制御部270が設けられなくてもよい。
【0082】
また、背圧機構250はオリフィスを含む背圧制御弁であり、圧力センサ260の検出値に基づいてオリフィスの開閉がフィードバック制御されるが、実施の形態はこれに限定されない。例えば、背圧機構250は、ダイアフラムおよびスプリングを含む背圧制御弁であってもよい。この場合、スプリングがダイアフラムを押圧する圧力に対応して、脱気装置220の背圧が一定に制御される。この構成においては、分析部200は、圧力センサ260および制御部270を含まなくてもよい。
【0083】
あるいは、連続生産システム500の動作条件に適合する適切な背圧機構250が脱気装置220の下流に設けられる場合には、背圧機構250は抵抗管であってもよい。この場合でも、連続生産システム500の安定状態には脱気装置220に適切な背圧が加えられる。そのため、正常に分析された生産物を連続的に安定して回収し続けることができる。
【0084】
3.他の実施の形態
(1)上記実施の形態において、状態情報は、天気、生産部100の使用者、生産部100の稼働率、生産部100の使用期間または生産部100による直前の生産物等をさらに含んでもよい。これらの状態情報を参照することにより、評価値が所定値以上になるように生産部100により変化されるべき制御対象をさらに正確に決定することができる。
【0085】
これらの状態情報は、データベース記憶装置401から取得されてもよいし、制御部400がインターネット等に接続されている場合には、外部のサーバ等から取得されてもよい。あるいは、状態情報は、使用者により状態情報取得部440に入力されてもよい。
【0086】
(2)上記実施の形態において、複数の監視部230,240は、バーチャルセンサ(ソフトセンサ)を含んでもよい。バーチャルセンサは、温度計、pH計、圧力計または振動計等を組み合わせることにより、疑似的に監視部230,240と同様の試料の監視結果を取得する。この場合、制御部400は、バーチャルセンサにより取得された監視結果に基づいて、生産部100による生産物の生成条件または回収部300による後処理の動作を変化させる。
【0087】
(3)上記実施の形態において、制御部400は結果取得部470および探索部480を含むが、実施の形態はこれに限定されない。生産物についての過去の分析結果に基づかずに制御対象が決定される場合には、制御部400は結果取得部470を含まなくてもよい。また、生産物に関するデザインスペースに基づかずに制御対象が決定される場合には、制御部400は探索部480を含まなくてもよい。また、メソッドスカウティングと同様に、生産物の生成条件の組み合わせが網羅的に変化されるように制御対象が順次決定される場合には、制御部400は、結果取得部470および探索部480の両方を含まなくてもよい。
【0088】
4.態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0089】
(第1項)一態様に係る連続生産システムは、
液体原料から生産物を連続的に生成する生産部と、
前記生産部により生成された生産物を監視する、異なる種別の複数の第1の監視部と、
前記生産部により生成された生産物を回収し、後処理を行う回収部と、
前記複数の第1の監視部による生産物の監視結果に基づいて、前記回収部による後処理の動作を変化させる回収制御部を含む制御部とを備えてもよい。
【0090】
この連続生産システムにおいては、種々の現象に起因して生産物の最適な生成条件が変動する場合でも、複数の第1の監視部により取得された生産物の監視結果に基づいて、回収部による後処理の動作を最適に近づけることが容易になる。これにより、生産物を連続的に安定して回収し続けることが可能になる。
【0091】
(第2項)第1項に記載の連続生産システムは、
前記第1の監視部は分析装置を有し、
前記制御部は、前記複数の第1の監視部による生産物の監視結果に基づいて、前記分析装置による分析条件を変更する分析制御部を含んでもよい。
【0092】
この構成によれば、種々の現象に起因して生産物の最適な生成条件が変動する場合でも、複数の第1の監視部により取得された生産物の監視結果に基づいて、試料を適切に分析することができる。
【0093】
(第3項)第1項または第2項に記載の連続生産システムにおいて、
前記制御部は、前記生産部による生産物の生成条件と、前記複数の第1の監視部による生産物の監視結果とを対応付けて履歴データを生成する履歴データ生成部を含んでもよい。
【0094】
この場合、生産物の生成条件と、生産物の監視結果とが一元管理されることにより、データインテグリティが保証される。これにより、生産物の生成の終始を容易に追跡することができる。また、使用者は、生産物の生成条件と、生産物の監視結果との対応付けを行う必要がない。そのため、使用者の労力および作業時間を低減することができる。また、対応付けの作業誤りが発生することを防止することができる。
【0095】
(第4項)第1項または第2項に記載の連続生産システムにおいて、
前記制御部は、生産物の生成時の液体原料の流量、生産物の生成時の温度および生産物の生成時の圧力のうち、前記生産部による生産物の生成条件として変化されるべき制御対象を決定する制御対象決定部を含んでもよい。
【0096】
この場合、生産物の生成時の液体原料の流量、生産物の生成時の温度および生産物の生成時の圧力のいずれかを変化させることにより、最適な生成条件で生産物を生成することが容易になる。
【0097】
(第5項)第4項に記載の連続生産システムにおいて、
前記制御部は、前記複数の第1の監視部による生産物の監視結果と、生産物の生成時の液体原料の流量、生産物の生成時の温度および生産物の生成時の圧力の組み合わせとの関係を示すデザインスペースを探索する探索部をさらに含み、
前記制御対象決定部は、前記探索部により探索された前記デザインスペースにおいて示された関係に基づいて制御対象を決定してもよい。
【0098】
この場合、デザインスペースにおいて示された関係に基づいて、変化されるべき適切な制御対象を容易に決定することができる。
【0099】
(第6項)第4項に記載の連続生産システムにおいて、
前記制御部は、生産物についての過去の監視結果を取得する結果取得部をさらに含み、
前記制御対象決定部は、前記結果取得部により取得された監視結果に基づいて制御対象を決定してもよい。
【0100】
この場合、生産物についての過去の監視結果に基づいて、変化されるべき適切な制御対象を容易に決定することができる。
【0101】
(第7項)第4項に記載の連続生産システムにおいて、
前記制御部は、前記生産部の使用状態を示す状態情報を取得する状態情報取得部をさらに含み、
前記制御対象決定部は、前記状態情報取得部により取得された状態情報に基づいて制御対象を決定してもよい。
【0102】
この場合、生産部の使用状態に基づいて、変化されるべき制御対象をより正確に決定することができる。
【0103】
(第8項)第1項または第2項に記載の連続生産システムにおいて、
前記複数の第1の監視部は、生産物に照射された光を監視する異なる種別の複数の分光監視部と、生産物から分離された成分を監視する異なる種別の複数の分離監視部とからなる群から選択された複数種を含んでもよい。
【0104】
この場合、生産物の詳細な監視結果が取得される。これにより、種々の現象に起因して生産物の最適な生成条件が変動する場合でも、生産物を連続的に安定して生成し続けることがより容易になる。
【0105】
(第9項)第8項に記載の連続生産システムにおいて、
前記複数の分光監視部は、原子吸光分光光度計、粒子径分布測定装置、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置、フーリエ変換赤外分光光度計、ラマン分光計、核磁気共鳴分光計または紫外可視分光検出器を含んでもよい。
【0106】
この場合、生産物の即時的な監視結果に基づいて、生産部による生産物の生成条件が変化される。これにより、生産物を連続的に安定して生成し続けることがより容易になる。
【0107】
(第10項)第8項に記載の連続生産システムにおいて、
前記複数の分離監視部は、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、質量分析装置または高周波誘導結合プラズマ質量分析装置を含んでもよい。
【0108】
この場合、生産物の詳細的な監視結果に基づいて、生産部による生産物の生成条件が変化される。これにより、生産物を連続的に安定して生成し続けることがより容易になる。
【0109】
(第11項)第10項に記載の連続生産システムにおいて、
前記回収部は、回収された生産物を観測する第2の監視部を含み、
前記回収制御部は、前記第2の監視部による生産物の監視結果にさらに基づいて、前記回収部による後処理の動作を変化させてもよい。
【0110】
この場合、回収された生産物の監視結果にさらに基づいて生産物の生成条件が変化される。これにより、生産部による生産物の生成条件を最適に近づけることがより容易になる。
【0111】
(第12項)第11項に記載の連続生産システムにおいて、
前記第2の監視部は、前記複数の第1の監視部のいずれかと共用されてもよい。
【0112】
この場合、複数の第1の監視部と別個に第2の監視部を設ける必要がない。これにより、連続生産システムのコストを低減させることができる。
【0113】
(第13項)第1項または第2項に記載の連続生産システムにおいて、
前記第1の監視部は、液体クロマトグラフを含み、
前記液体クロマトグラフは、
分析カラムと、
試料が供給されるフローバイアルと、
前記フローバイアルに供給された試料を採取し、採取された試料を前記分析カラムに注入するサンプリングニードルと、
試料を前記フローバイアルに供給する供給流路と、
前記フローバイアルに供給された試料を排出する排出流路と
超音波、低周波数の振動、熱、電場および磁場の少なくとも1つを用いて、監視されるべき試料の溶解を促進する1以上の溶解装置とを含み、
前記1以上の溶解装置は、前記供給流路および前記排出流路の少なくとも1つに取り付けられてもよい。
【0114】
この場合、監視されるべき試料の溶解が溶解装置により促進される。これにより、試料の濃度が高い場合でも、試料の析出または再結晶を防止することができる。
【0115】
(第14項)他の態様に係る連続生産システムは、
液体原料から生産物を連続的に生成する生産部と、
前記生産部により生成された生産物を監視する監視部と
を備え、
前記監視部は、
試料の成分を分析する分析部と、
前記分析部の上流に設けられ、前記生産部により生成された生産物の液体成分と気体成分とを分離する脱気装置と、
前記分析部と前記脱気装置との間に設けられ、前記脱気装置に背圧を加える背圧機構とを含んでもよい。
【0116】
この連続生産システムにおいては、生産部により連続的に生成される生産物が、分析部により分析され、回収部により回収される。生産物に気体成分が含まれる場合でも、分析部において、脱気装置により生産物の液体成分と気体成分とが分離される。脱気装置には、その下流に設けられた背圧機構により背圧が加えられる。
【0117】
この構成によれば、脱気装置における管部材内部の圧力と管部材外部の圧力との差が大きくなるため、脱気装置による気体の分離効率が向上し、生産物からより多くの気体成分が除去されるので、分析部による正常な分析が気体成分により妨げられることがない。これにより、正常に分析された生産物を連続的に安定して回収し続けることができる。
【0118】
(第15項)第14項に記載の連続生産システムにおいて、
前記背圧機構は、前記脱気装置の背圧を一定に制御する背圧制御弁を含んでもよい。
【0119】
この場合、脱気装置の背圧が背圧制御弁により一定に制限されるので、連続生産システムの立ち上がり後、連続生産システムを短時間で安定状態にすることができる。そのため、回収部による生産物の回収効率がより向上する。また、連続生産システムの立ち上がり直後にも、脱気装置に過大な背圧が加わることがない。これにより、脱気装置が破損することを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0120】
1…溶解装置,2…超音波素子,3…超音波伝達部材,10…試料注入装置,11…支持部,12…フローバイアル,13…希釈用バイアル,14…供給流路,15…排出流路,16…バルブ,17…ニードル,20…分析カラム,100…生産部,101~103…ボトル,110…フロー合成装置,111,112,140…送液装置,113…滅菌装置,114…反応器,115…背圧制御装置,120…CSTR,130…バッチ生産装置,200…分析部,201…主流路,202…分析流路,210…前処理装置,211…脱塩装置,212…気液分離装置,213,321…フィルタリング装置,214…再溶解装置,215,324…サンプリング装置,220…脱気装置,230,240,330…監視部,231…AA,232…粒子径分布測定装置,233…ICP発光分光分析装置,234…FTIR,235…ラマン分光計,236…NMR分光計,237…UV検出器,241…HPLC,242…GC,243…MS,244…ICP-MS,250…背圧機構,260…圧力センサ,270,400…制御部,300…回収部,310…分注装置,320…後処理装置,322…乾燥機,323…秤量計,325…打錠機,326…充填装置,401…データベース記憶装置,410…生産制御部,420…分析制御部,430…回収制御部,440…状態情報取得部,450…履歴データ生成部,460…評価値決定部,470…探索部,480…決定部,490…制御対象決定部,500…連続生産システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7