特開 2023-153765 バッテリーに使用される導電体

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023153765

(43)【公開日】2023-10-18

(54)【発明の名称】バッテリーに使用される導電体

(51)【国際特許分類】

   H01M 50/526 20210101AFI20231011BHJP

   H01M 50/524 20210101ALI20231011BHJP

   H01M 50/588 20210101ALI20231011BHJP

   H01M 50/591 20210101ALI20231011BHJP

【ＦＩ】

H01M50/526

H01M50/524

H01M50/588

H01M50/591 101

【審査請求】未請求

【請求項の数】6

【出願形態】ＯＬ

【外国語出願】

(21)【出願番号】P 2023060797

(22)【出願日】2023-04-04

(31)【優先権主張番号】10 2022 108 197.4

(32)【優先日】2022-04-05

(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE

(71)【出願人】

【識別番号】518201739

【氏名又は名称】メソード・エレクトロニクス・マルタ・リミテッド

【氏名又は名称原語表記】ＭＥＴＨＯＤＥ ＥＬＥＣＴＲＯＮＩＣＳ ＭＡＬＴＡ ＬＴＤ．

(74)【代理人】

【識別番号】100107766

【弁理士】

【氏名又は名称】伊東 忠重

(74)【代理人】

【識別番号】100070150

【弁理士】

【氏名又は名称】伊東 忠彦

(74)【代理人】

【識別番号】100135079

【弁理士】

【氏名又は名称】宮崎 修

(72)【発明者】

【氏名】アレクサンデル ガレア

(72)【発明者】

【氏名】マシュー スピテリ

【テーマコード（参考）】

5H043

【Ｆターム（参考）】

5H043AA04

5H043FA04

5H043GA25

5H043GA27

5H043HA22F

5H043JA11F

5H043JA15F

5H043JA21F

5H043KA22F

5H043LA21F

(57)【要約】      （修正有）

【課題】熱暴走時に発生する極端な温度から導電体を保護するための断熱体を有する導電体を提供する。
【解決手段】導電体（２）はバスバー（１）である。導電体（２）は第１層（５）によって取り囲まれている。第２層（６）は、導電体（２）から離れる向きの、第１層（５）の面に配置されている。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

電動モータービークルのバッテリーに使用される導電体であって、
－ 前記導電体はバスバーであり、
－ 前記導電体は第１層によって取り囲まれており、
－ 前記導電体から離れる向きの、第１層の面に第２層が配置されている、
導電体。

【請求項2】

前記第１層は電気絶縁層である、
請求項１記載の導電体。

【請求項3】

前記第１層は、前記導電体の周りに、ラッピング及び／又はコーティング及び／又はスリーブされている、
請求項１記載の導電体。

【請求項4】

前記第１層は前記導電体の周りにテーピングされている、
請求項１記載の導電体。

【請求項5】

前記第２層は少なくとも１つの熱可塑性材料を含む、
請求項１記載の導電体。

【請求項6】

前記第２層は前記第１層の上に押し出し加工されている、
請求項１記載の導電体。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、請求項１の特徴による、バッテリーに使用される電気導体に関する。

【背景技術】

【0002】

従来技術
近年、電動モータービークル（Ｅｌｅｃｔｒｉｃａｌｌｙ ｐｏｗｅｒｅｄ ｍｏｔｏｒ ｖｅｈｉｃｌｅｓ）はますます重要となっている。その結果、多くの自動車メーカーは、かかる電気ビークル（ｅｌｅｃｔｒｉｃ ｖｅｈｉｃｌｅｓ）を含めるように製品範囲を拡大している。

【0003】

このような電動ビークル（ｅｌｅｃｔｒｉｃａｌｌｙ ｐｏｗｅｒｅｄ ｖｅｈｉｃｌｅｓ）は、バッテリーから駆動エネルギーを取り出すことが多い。

【0004】

その中で、電気ビークルのスペアパーツ市場もますます重要になっている。

【0005】

電動モータービークルは、その駆動コンセプトから、内燃機関を搭載した自動車とは異なる安全基準を満たす必要がある。

【0006】

電動ビークルの需要の増加に伴い、政府の規制が電気ビークルのメーカーに認証要件を課している。

【0007】

本発明は認証要件を、特定の電動モータービークルが道路使用に適しており、特定の国で製造又は輸入される全ての車両に対して政府によって定められた特定の指定された基準に適合することを証明するプロセスであると理解する。認証要件は、電動モータービークルの乗員の安全を確保するためのものである。

【0008】

発明が解決しようとする課題
規制の中でも特に、認証要件は、電動モータービークルが多くの安全要件を確保するために必要な規制につながる。

【0009】

電動モータービークルのバッテリーコンパートメントで熱暴走が発生した場合、電動モータービークルのサブシステムが、車両の乗客コンパートメント内の乗員が火災にさらされる程度に故障することは、いかなる場合においても防止されなければならない。

【0010】

電動モータービークルのバッテリーの熱暴走による火災の危険性のために、かかる事象の間に発生する熱によって絶縁材料が溶融し、軟化することによって、電動モータービークルのバッテリー内の導電体同士が電気的にショートする危険性を排除し又は少なくとも低減する措置を提供することが電動モータービークルのメーカーに求められる。

【0011】

措置は、バッテリーコンパートメント内部に又はバッテリー自体の内部に配置されることができる。

【0012】

バッテリー内の電気的ショートを回避するための保護システムとして、熱可塑性樹脂で導体を覆うものが知られている。

【0013】

しかしながら、熱暴走時に発生する温度範囲のため、保護システムの熱可塑性樹脂シースでは導電体を短絡から保護することはできない。

【0014】

既知の熱可塑性プラスチックは、溶けたり燃えたりしてバスバーを極端な熱にさらし、短絡を引き起こし得る。

【0015】

その結果、前述の認証規制を満たせなくなる。その結果、車両の乗員が重傷を負ったり、死亡したりする可能性がある。

【発明の概要】

【0016】

本発明の目的は、熱暴走時に発生する極端な温度から導電体を保護するための断熱体を有する導電体、好ましくはバスバーを提供することである。

【0017】

本発明のさらなる目的は、安価に製造できる導電体、好ましくはバスバーを提供することである。同時に、導電体、好ましくは、バスバーは、生産性及び品質の点で改善されることが望ましい。

【0018】

課題を解決する方法
この課題は、電動モータービークルのバッテリーに使用される導電体によって解決される。

【0019】

本発明によれば、導電体はバスバーである。

【0020】

導電体は第１層によって取り囲まれている。

【0021】

第２層は、導電体から離れる向きの、第１層の面（ｔｈｅ ｓｉｄｅ ｏｆ ｔｈｅ ｆｉｒｓｔ ｌａｙｅｒ ｆａｃｉｎｇ ａｗａｙ ｆｒｏｍ ｔｈｅ ｅｌｅｃｔｒｉｃａｌ ｃｏｎｄｕｃｔｏｒ）に配置されている、

【0022】

電動モータービークル
電動モータービークルは、ハイブリッドドライブを備えることができる。ハイブリッドドライブは、電気駆動モータ（ｅｌｅｃｔｒｉｃ ｄｒｉｖｅ ｍｏｔｏｒ）及び燃焼駆動エンジンを１台の車両に組み込む。

【0023】

電動モータービークルは、水素からそれらの推進エネルギーを得ることもできる。

【0024】

しかしながら、以下では本発明は、電動モータービークルがバッテリーからその駆動エネルギーを得ることを前提とする。

【0025】

導電体
本発明によれば、導電体は、電気回路に電荷を容易に流すことができる。

【0026】

導電体が電気を通す性質を「導電性」と称する。

【0027】

導電体は、電荷の流れに対する抵抗が少ない。

【0028】

導電体は、電気回路内で電荷、好ましくは電子の自由な移動を可能にする導電性材料で作られている。以下、本発明では、導電体をバスバーと称する。

【0029】

断熱バスバー
本発明は、バスバーを金属ストリップ又は金属バーと理解する。バスバーは、電気回路に電流を通すことができる。

【0030】

バスバーは、通常、スイッチギヤの内部及び／又はパネルボードの内部に収容されることができる。また、バスバーは、局所的な大電流配電のために設けられたバスウェイ筐体内部に配置されることもできる。本発明によれば、バスバーは、電動ビークルのバッテリー内に配置される。

【0031】

本発明によれば、バスバーは、バッテリー内のコンポーネント又はモジュールを相互に接続することができる。また、バッテリーコンパートメント内のコンポーネント又はモジュールを相互に接続することもできる。

【0032】

好ましくは、バスバーは、矩形状に設計される。また、丸められた断面を有するように設計されることもできる。バスバーはまた、円形の断面を有することができる。あるいは、バスバーは、丸められたエッジを有する矩形断面も有することができる。

【0033】

本発明は、断面が円形バスバーをラウンドバスバーと称し、バスバーはワイヤであり得る。

【0034】

また、バスバーは、他の幾何学的形状や様々な幾何学的形状の組合せを有していてもよいことは言うまでもない。

【0035】

バスバーは、押出し銅（ｅｘｔｒｕｄｅｄ ｃｏｐｐｅｒ）から製造されることができる。また、バスバーは、銅合金やアルミニウムから製造されることもできる。あるいは、アルミニウム合金を使用してもよい。また、他の金属から製造してもよい。

【0036】

バスバーの一般的な製造方法は、同時押出しバスバー（ｃｏ－ｅｘｔｒｕｄｅｄ ｂｕｓｂａｒｓ）を使用することである。本発明によれば、同時押出しとは、複数の層の同時押出しによって製造されることを意味する。好ましくは、正方形又は長方形の形状を有する押し出し銅線又はアルミニウム線は、熱可塑性材料でコーティングされる。熱可塑性材料は、ＰＡ１２（ポリアミド１２）、ＰＡ１１（ポリアミド１１）、ＰＶＣ（ポリ塩化ビニル）、ＰＥＥＫ（ポリエーテルケトンケトン）のうちの少なくとも１つであることができる。また、これらの誘導体（Ｄｅｒｉｖａｔｉｖｅｓ）も使用することができる。

【0037】

バスバーを形成するために、連続した未加工の（ｒａｗ）金属体を所望の幾何学的形態に成形する。この目的のために、コンピュータ支援型及び／又は完全自動型の曲げ又は切断機を使用することができる。連続した未加工の金属体は、直線体であってもよい。また、他の製造方法を使用することもできる。切断工程及び／又は曲げ工程は、熱絶縁バスバーを製造する際の変形工程とも称されることがある。

【0038】

好ましくは、バスバーは電気的に絶縁されている。絶縁は、バスバーと隣接する電気コンポーネントとの間の短絡を防止する。

【0039】

バスバーの断熱性は、熱可塑性材料の助けを借りて確保されている。

【0040】

熱可塑性材料は、以下の材料から選択される少なくとも１つを含むことができる：ＰＡ（ポリアミド）、ＰＢＴ（ポリブチレンテレフタレート）、ＰＰ（ポリプロピレン）、ＰＰＡ（ポリフタルアミド）又はＰＰＳ（ポリフェニレンスルフィド）。もちろん、その他の熱可塑性材料も使用可能である。

【0041】

本発明によれば、バスバーは５００℃から１０００℃の間の周囲温度及び／又は炎にさらされたときに、十分な絶縁抵抗が確保される。絶縁抵抗は１０分以上確保される。

【0042】

本発明は、断熱コーティングを施したバスバーを提供する。

【0043】

以下、断熱コーティングについて、より詳細に説明する。

【0044】

断熱コーティング
断熱コーティングは、多層コーティングであることができる。断熱コーティングは、第１層及び第２層を含む。それらの両方の層は、以下により詳細に言及される。

【0045】

第１層
断熱コーティングは、基材上に堆積された材料層である。好ましくは、基材はバスバーである。

【0046】

断熱コーティングは、バスバーに適用される。断熱コーティングは、バスバーの表面特性を改善し、断熱性を高めるものである。

【0047】

断熱コーティングは、第１層を含み、内層とも称される。

【0048】

第１層は、高温電気絶縁性層である。

【0049】

第１層は、バスバーの周囲をラッピングし又は包む（ｗｒａｐｐｅｄ）。第１層は、導電体の周りを、ラッピング又は包み、及び／又はコーティングし（ｃｏａｔｅｄ）、及び／又はスリーブする（ｓｌｅｅｖｅｄ）。第１層は、別の技術的方法で導電体に取り付けられてもよいことは言うまでもない。

【0050】

第１層は、様々な材料から製造することができる。第１層の製造のための材料の選択は、断熱コーティングが耐えるべき最高温度によって決まる。

【0051】

他の材料の中でも、第１層は、マイカから製造されることができる。

【0052】

第１層は、電池の熱暴走時に極めて高い温度及び／又は炎に耐えることができる。

【0053】

また、第１層により、バッテリーの短絡回路の発生を防止することができる。また、第１層を配置することにより、第２層（熱可塑性樹脂層）の溶融や燃焼を効果的に防止することができる。

【0054】

第２層
さらに、断熱コーティングは、第２層を含む。第２層は、バスバーから離れる向きの、第１層の面に（ｔｈｅ ｓｉｄｅ ｏｆ ｔｈｅ ｆｉｒｓｔ ｌａｙｅｒ ｆａｃｉｎｇ ａｗａｙ ｆｒｏｍ ｔｈｅ ｂｕｓｂａｒ）配置される。

【0055】

第２層は、外層とも称される。

【0056】

第２層は、熱可塑性樹脂層である。熱可塑性樹脂層は、ナイロンであることができる。それは、ＰＥＥＫ（ポリエチレンケトンケトン）から製造されることもできる。第２層は、少なくとも１つの他の材料又はその誘導体から製造することもできることは言うまでもない。

【0057】

第２層は第１層の上に押し出し加工されている。第１層は、バスバーの周囲をラッピングし又は包む。好ましくは、バスバーは、連続した金属ストリップ又はワイヤである。

【0058】

第２層は、断熱層がバスバーに適用される間、第１層が所定の位置に留まることを保証する。

【0059】

さらに、第２層は、バスバーの取り扱い中に、おそらく壊れやすい第１層を保護する。また、バスバーの形成工程中、及び／又は電動モータービークルへのバスバーの設置中に、壊れやすい第１層を保護することができる。

【0060】

第１層を保護するために、第２層はフレキシブル層として設計される。さらに、第２層は、機械的にラフな又は粗い性質を持つように（ｒｏｕｇｈ ｉｎ ｎａｔｕｒｅ）設計されている。

【0061】

第２層は、熱絶縁バスバーを製造する際の変形プロセス中に、バスバー及び／又は第１層の両方を損傷から保護する。

【0062】

バッテリー
本発明によれば、バッテリーは、１つ以上のバッテリーセルの集合体であり得る。バッテリーセルの内部では、少なくとも１つの化学反応によって、電気回路に電子の流れが生じる。

【0063】

バッテリーは、以下のコンポーネントうちの１つ以上を含むことができる。バッテリーは、少なくとも１つの陽極と少なくとも１つの陰極とを備えることができる。バッテリーは、さらに、電解質を備えることができる。電解質は、陽極及び陰極と化学的に反応する物質である。

【0064】

バッテリーの陽極及び陰極を電気回路に接続すると、陽極と電解質との間で化学反応が起こる。

【0065】

この反応により、電子は電気回路を流れて、陰極に戻り、そこで別の化学反応が起こる。

【0066】

バッテリーを使用する際の最も大きな欠点の一つは、バッテリー内に配置されたバッテリーセルが比較的狭い温度範囲で動作することが要求されることである。バッテリーの安全性と安定性は、バッテリーセルの内部温度を特定の温度制限内に維持することに依存する。

【0067】

バッテリーの熱暴走
本発明は、電動モータービークルのバッテリーにおける熱暴走を、少なくとも１つのバッテリーセル内の化学連鎖反応であると理解する。

【0068】

化学連鎖反応は極めて高温を引き起こし、バッテリーセルのガス発生を生じさせる。これにより、消火がほぼ不可能な温度で火災が発生し得る。

【0069】

熱暴走では、バッテリーセル内の温度が数ミリ秒以内に上昇し得る。

【0070】

温度が臨界的な制限を超えると、熱暴走が発生し得る。熱暴走はバッテリーを破壊し、最悪の場合、火災を引き起こし得る。

【0071】

電動モータービークルのバッテリーでは、バッテリーセル内の温度が、バッテリーセル内で化学連鎖反応を起こすポイントに達すると、熱暴走が発生する。

【0072】

バッテリーセル内の化学連鎖反応は、バッテリーセル内でさらに熱を発生させ、バッテリーセルの温度をさらに上昇させる。温度の上昇は、さらなる化学連鎖反応を引き起こし、さらに熱を発生させる。

【0073】

バッテリーセル内の化学連鎖反応により、非常に高い温度（華氏７５２度／摂氏４００度程度）が発生し得る。熱暴走は、一旦始まると止めるのが非常に困難である。

【図面の簡単な説明】

【0074】

本発明の更なる実施例及び有利な実施形態は、図面を参照してより詳細に説明される。

【図1】図１は、細長い導電体２を示す。

【発明を実施するための形態】

【0075】

導電体２は、断熱バスバー１として設計されている。

【0076】

長手方向軸３に沿って、絶縁バスバー１は丸められたエッジ４を有する。

【0077】

第１層５は絶縁バスバー１の周りをラッピングし又は包む。

【0078】

絶縁バスバー１から離れる向きの、第１層５の面には、図１に示すように、第２層６が設けられている。

【符号の説明】

【0079】

１ バスバー
２ 導電体
３ 長手軸
４ エッジ
５ 第１層
６ 第２層

【図1】

【外国語明細書】