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特開2023-153789エチレン性不飽和カルボン酸又はエステルを製造するための触媒及びプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153789
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】エチレン性不飽和カルボン酸又はエステルを製造するための触媒及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/04 20060101AFI20231011BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20231011BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20231011BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B01J23/04 Z
B01J37/02 101A
B01J32/00
B01J37/08
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023113389
(22)【出願日】2023-07-11
(62)【分割の表示】P 2020514951の分割
【原出願日】2018-09-13
(31)【優先権主張番号】1714756.2
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】500460209
【氏名又は名称】ミツビシ ケミカル ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI CHEMICAL UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】カレン、アダム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、デイビッド ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヨーク、イアン アンドリュー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エチレン性不飽和カルボン酸又はエステルを製造するための触媒に使用される修飾されたシリカ担体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】シリカ担体及び修飾金属を含む触媒のための修飾されたシリカ担体であって、修飾金属は、ジルコニウム及びハフニウムのうちの少なくとも1つから選択される、修飾されたシリカ担体において、修飾金属の少なくとも一部は、単量体及び/又は二量体の金属酸化物の残基として存在し、又は、修飾の開始時に単量体及び/又は二量体の修飾金属のカチオン発生源から誘導されることを特徴とする、修飾されたシリカ担体である。前記修飾金属の少なくとも25%は、単量体及び/又は二量体の金属酸化物の残基として存在し、又は、修飾の開始時に単量体及び/又は二量体の修飾金属のカチオン発生源から誘導される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾されたシリカ担体であって、修飾金属を含む修飾されたシリカ担体及び前記修飾されたシリカ担体上の触媒金属を含む触媒であって、前記修飾金属は、ジルコニウム及びハフニウムのうちの少なくとも1つから選択される、触媒において、前記修飾金属の少なくとも一部、典型的には少なくとも25%は、合計して2個までの修飾金属原子を有する修飾金属残基において存在することを特徴とする、触媒。
【請求項2】
修飾されたシリカ担体であって、修飾金属を含む修飾されたシリカ担体及び前記修飾されたシリカ担体上の触媒金属を含む触媒であって、前記修飾金属は、ジルコニウム及びハフニウムのうちの少なくとも1つから選択される、触媒において、前記修飾金属の少なくとも一部、典型的には少なくとも25%は、修飾の開始時、単量体及び二量体のうちの少なくとも1つの修飾金属のカチオン発生源から誘導される修飾金属残基において存在することを特徴とする、触媒。
【請求項3】
シリカ担体及び修飾金属を含む触媒のための修飾されたシリカ担体であって、前記修飾金属は、ジルコニウム及びハフニウムのうちの少なくとも1つから選択される、修飾されたシリカ担体において、前記修飾金属の少なくとも一部、典型的には少なくとも25%は、合計して2個までの修飾金属原子を有する修飾金属の残基において存在することを特徴とする、修飾されたシリカ担体。
【請求項4】
シリカ担体及び修飾金属を含む触媒のための修飾されたシリカ担体であって、前記修飾金属は、ジルコニウム及びハフニウムのうちの少なくとも1つから選択される、修飾されたシリカ担体において、前記修飾金属の少なくとも一部、典型的には少なくとも25%は、修飾の開始時、単量体及び二量体のうちの少なくとも1つの修飾金属のカチオン発生源から誘導される修飾金属の残基において存在することを特徴とする、修飾されたシリカ担体。
【請求項5】
前記修飾金属は、シリカ担体表面上に吸着されている、好ましくはその上に化学吸着されている吸着質である、請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体又は触媒。
【請求項6】
前記修飾金属残基は、修飾金属酸化物の残基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体又は触媒。
【請求項7】
前記シリカ担体は、シリカゲル、より典型的にはキセロゲル又はヒドロゲルの形態である、請求項1~6のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体又は触媒。
【請求項8】
前記修飾金属は、共ゲルの形態で前記担体中に存在する、請求項1~4、6又は7のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体又は触媒。
【請求項9】
前記修飾金属は、前記修飾されたシリカ担体中において、焼結を低減し、且つ前記触媒の選択率を改良するのに有効な量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体又は触媒。
【請求項10】
前記修飾されたシリカ担体中の前記修飾金属の少なくとも30%、例えば少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、例えば少なくとも45%、最も好適には少なくとも50%、例えば少なくとも55%、例えば少なくとも60%又は65%及び最も好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも75%又は80%、より典型的には少なくとも85%、最も典型的には少なくとも90%、特に少なくとも95%は、合計して1個及び/又は2個の金属原子を有する残基、特に合計して1個の金属原子を有する残基におけるものであるか、又は修飾されたシリカの形成の開始時、単量体及び二量体のうちの少なくとも1つの化合物、特に単量体の修飾金属化合物としての修飾金属のそのようなレベルにおいて、単量体及び二量体のうちの少なくとも1つの修飾金属化合物から誘導される、請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体又は触媒。
【請求項11】
存在する修飾金属のレベルは、シリカの7.6×10-2mol/molまで、より好ましくはシリカの5.9×10-2mol/molまで、最も好ましくはシリカの3.5×10-2mol/molまでである、請求項1~10のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体又は触媒。
【請求項12】
修飾金属のレベルは、シリカの0.067×10-2~7.3×10-2mol/mol、より好ましくはシリカの0.13×10-2~5.7×10-2mol/mol及び最も好ましくはシリカの0.2×10-2~3.5×10-2mol/molである、請求項1~11のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体又は触媒。
【請求項13】
存在する修飾金属のレベルは、シリカの少なくとも0.1×10-2mol/mol、より好ましくはシリカの少なくとも0.15×10-2mol/mol及び最も好ましくはシリカの少なくとも0.25×10-2mol/molである、請求項1~12のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体又は触媒。
【請求項14】
か焼された修飾されたシリカ担体である、請求項3~13のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体。
【請求項15】
前記触媒金属は、1つ又は複数のアルカリ金属であり、且つ好ましくはカリウム、ルビジウム及びセシウム、好適にはルビジウム及びセシウムから選択され、セシウムが最も好ましい、請求項1、2又は5~14のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項16】
単量体及び二量体のうちの少なくとも1つの修飾金属カチオンは、前記修飾の開始時、前記修飾金属カチオンに結合された1つ又は複数の化学変化を起こしにくいリガンドを有する化合物中にあり、前記化学変化を起こしにくいリガンドは、ジルコニウム原子又はハフニウム原子と共に5員環又は6員環を形成することが可能な酸素原子又は窒素原子を含有する孤立電子対を有する分子、例えばジオン、ジイミン、ジアミン、ジオール、ジカルボン酸若しくはその誘導体、例えばエステル、又は2個の異なるそのような官能基を有し、且ついずれの場合にも前記それぞれのN若しくはO及び2個若しくは3個の原子によって分離されたN若しくはO原子と一緒になって、それにより前記5員環若しくは6員環を形成する分子、例えばペンタン-2,4-ジオン、3-オキソブタン酸と、1~4個の炭素原子を含有する脂肪族アルコールとのエステル、例えば3-オキソブタン酸エチル、3-オキソブタン酸プロピル、3-オキソブタン酸イソプロピル、3-オキソブタン酸n-ブチル、3-オキソブタン酸t-ブチル、ヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ジアミノエタン、エタノールアミン、1,2-ジアミノ-1,1,2,2-テトラカルボキシレート、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ブタンジオエート、2,4-ジヒドロキシ-1,5-ペンタンジオエート、1,2-ジヒドロキシルベンゼン-3-5-ジスルホネート、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトロロ三酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸の塩、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、シュウ酸及びその塩から選択され、より典型的には、前記化学変化を起こしにくいリガンドは、ペンタン-2,4-ジオン、2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、3-オキソブタン酸エチル、3-オキソブタン酸t-ブチル及びヘプタン-3,5-ジオンの1つ又は複数から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒又は修飾されたシリカ担体。
【請求項17】
前記化学変化を起こしにくいリガンドは、前記修飾元素と共に錯体、例えば四量体の錯体を形成し、且つ典型的には、溶液中において、前記単量体の修飾元素と共に、化学変化を起こしにくいリガンド/アルコール錯体として可溶化される、請求項16に記載の触媒又は修飾されたシリカ担体。
【請求項18】
触媒金属は、0.5~7.0mol/molの修飾金属、より好ましくは1.0~6.0mol/mol、最も好ましくは1.5~5.0mol/molの修飾金属の範囲で存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体を製造する方法であって、
シラノール基を有するシリカ担体を提供する工程;
前記シリカ担体を単量体及び二量体のうちの少なくとも1つの修飾金属化合物で処理する工程であって、それにより、修飾金属は、シラノール基との反応を通して前記シリカ担体の表面上に吸着される、工程
を含み、前記吸着された修飾金属原子は、相互に十分に離間されて、近隣の修飾金属原子とのそのオリゴマー化を実質的に防止し、より好ましくは相互に十分に離間されて、近隣の修飾金属原子とのその三量化を実質的に防止する、方法。
【請求項20】
前記修飾金属原子の前記離間は、
a)前記シリカ担体上のシラノール基の濃度を低下させること、及び/又は
b)前記シリカ担体を処理する前に、十分なサイズの化学変化を起こしにくいリガンドを前記修飾金属に結合させること
によって実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
触媒を製造する方法であって、
i.単離されたシラノール基を有するシリカ担体を提供し、且つ任意選択的に前記担体を処理して、1nm2あたり2.5個未満の基のレベルの単離されたシラノール基(-SiOH)を提供する工程;
ii.前記任意選択的に処理されたシリカ担体を単量体のジルコニウム修飾金属化合物又はハフニウム修飾金属化合物と接触させて、前記担体上において、典型的には前記単離されたシラノール基の少なくとも25%までの前記修飾金属の吸着を実施する工程;
iii.任意選択的に、前記修飾金属化合物のためのいかなる溶媒又は液状キャリヤも除去する工程;
iv.修飾されたシリカを十分な時間及び温度でか焼して、表面上に吸着された前記単量体のジルコニウム化合物又はハフニウム化合物をジルコニウム又はハフニウムの酸化物又は水酸化物に転化させる工程;
v.前記か焼された修飾されたシリカを触媒のためのアルカリ金属で処理して、前記修飾されたシリカを触媒金属で含浸して前記触媒を形成し、且つ任意選択的に前記触媒をか焼する工程
を含む方法。
【請求項22】
触媒のための修飾されたシリカ担体を製造する方法であって、
i.単離されたシラノール基を有するシリカ担体を提供し、且つ任意選択的に前記担体を処理して、1nm2あたり2.5個未満の基のレベルの単離されたシラノール基(-SiOH)を提供する工程;
ii.前記任意選択的に処理されたシリカ担体を単量体のジルコニウム修飾金属化合物又はハフニウム修飾金属化合物と接触させて、前記担体上において、前記単離されたシラノール基の少なくとも25%までの前記修飾金属の吸着を実施する工程;
iii.任意選択的に、前記修飾金属化合物のためのいかなる溶媒又は液状キャリヤも除去する工程;
iv.任意選択的に、触媒含浸のための調製において、前記修飾された担体を十分な時間及び温度でか焼して、表面上に吸着された前記単量体のジルコニウム化合物又はハフニウム化合物をジルコニウム又はハフニウムの酸化物又は水酸化物に転化させる工程
を含む方法。
【請求項23】
前記シラノール基濃度は、前記修飾金属化合物での処理前にか焼処理、化学的脱水又は他の適切な方法によって低下される、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記修飾金属のカチオン発生源は、前記化合物の溶液であり、それにより、前記化合物は、前記担体上への吸着を実施するために前記担体と接触されるときに溶液中にある、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記溶液のための溶媒は、水以外のものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒は、典型的にはC1~C6アルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノール、より典型的にはメタノール、エタノール又はプロパノールから選択される脂肪族アルコールである、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項27】
1つ又は複数の化学変化を起こしにくいリガンドは、前記修飾金属カチオンに結合されて、少なくとも部分的に前記化合物を形成し、且つジルコニウム原子又はハフニウム原子と共に5員環又は6員環を形成することが可能な酸素原子又は窒素原子を含有する孤立電子対を有する分子、例えばジオン、ジイミン、ジアミン、ジオール、ジカルボン酸若しくはその誘導体、例えばエステル、又は2個の異なるそのような官能基を有し、且ついずれの場合にも前記それぞれのN若しくはO及び2個若しくは3個の原子によって分離されたN若しくはO原子と一緒になって、それにより前記5員環若しくは6員環を形成する分子、例えばペンタン-2,4-ジオン、3-オキソブタン酸と、1~4個の炭素原子を含有する脂肪族アルコールとのエステル、例えば3-オキソブタン酸エチル、3-オキソブタン酸プロピル、3-オキソブタン酸イソプロピル、3-オキソブタン酸n-ブチル、3-オキソブタン酸t-ブチル、ヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ジアミノエタン、エタノールアミン、1,2-ジアミノ-1,1,2,2-テトラカルボキシレート、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ブタンジオエート、2,4-ジヒドロキシ-1,5-ペンタンジオエート、1,2-ジヒドロキシルベンゼン-3-5-ジスルホネート、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトロロ三酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸の塩、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、シュウ酸及びその塩から選択され、より典型的には、前記化学変化を起こしにくいリガンドは、ペンタン-2,4-ジオン、2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、3-オキソブタン酸エチル、3-オキソブタン酸t-ブチル及びヘプタン-3,5-ジオンの1つ又は複数から選択される、請求項19~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記化学変化を起こしにくいリガンドは、前記単量体の修飾元素と共に錯体、例えば四量体の錯体を形成し、且つ典型的には、溶液中において、前記単量体の修飾元素と共に、化学変化を起こしにくいリガンド/アルコール錯体として可溶化される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記修飾金属化合物と接触されるときの前記シリカ担体上の前記シラノール濃度は、1nm2あたり0.1~2.5個のシラノール基、より好ましくは1nm2あたり0.15~1.0個のシラノール基、最も好ましくは1nm2あたり0.2~0.7個のシラノール基である、請求項19~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記その発生源が、前記担体上への前記化合物の吸着を実施するために前記担体と接触される場合、前記修飾金属化合物中の前記修飾金属の少なくとも30%、例えば少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、例えば少なくとも45%、最も好適には少なくとも50%、例えば少なくとも55%、例えば少なくとも60%又は65%及び最も好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも75%又は80%、より典型的には少なくとも85%、最も典型的には少なくとも90%、特に少なくとも95%は、単量体の修飾金属化合物におけるものである、請求項19~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾されたシリカを形成する工程と、前記修飾されたシリカ担体を、触媒金属を含有する溶液と接触させて、前記修飾されたシリカを前記触媒金属で含浸する工程とを含む、請求項1、2又は5~18のいずれか一項に記載の触媒を製造する方法。
【請求項32】
前記シリカ担体は、前記修飾金属化合物での処理前に乾燥又はか焼される、請求項19~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記修飾金属化合物と接触させることによって形成された前記修飾されたシリカは、前記触媒金属の添加前に乾燥又はか焼される、請求項19、20又は22~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記シリカは、前記修飾金属化合物での処理前にゲルの形態であり、前記ゲルは、典型的には前記修飾金属化合物との接触の開始時、ヒドロゲル、キセロゲル又はエーロゲルの形態である、請求項19~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記修飾金属は、吸着、好ましくは化学吸着により、前記シリカ担体の内部表面及び外部表面上に分散される、請求項19~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記修飾金属化合物は、有機金属錯体、例えばジルコニウム(ペンタン-2,4-ジオン)4、ジルコニウム(3-オキソブタン酸エチル)4、ジルコニウム(ヘプタン-3,5-ジオン)4、ジルコニウム(2、2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン)4、ジルコニウム(プロポキシド)(ペンタン-2-3-ジオン)3、ジルコニウム(プロポキシド)3(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)、ジルコニウム(ブチル)3(3-オキソブタン酸t-ブチル)、ジルコニウム(Ot-ブチル)2(3-オキソブタン酸t-ブチル)2並びに金属塩、例えば過塩素酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム及びオキシ塩化ジルコニウム、より典型的には有機金属錯体から選択される形態である、請求項19~35のいずれか一項に記載の方法又は請求項16若しくは17に記載の触媒若しくはシリカ担体。
【請求項37】
前記修飾金属化合物は、任意選択的に20容積%の水と共に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール又は2-ブタノールの1つにおけるジルコニウム(IV)アセチルアセトネート(ジルコニウム、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト-0,0’))、ジルコニウム(ヘプタン-3,5-ジオン)4、ジルコニウム(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)4、ジルコニウム(IV)3-オキソブタン酸エチル、ジルコニウム(IV)3-オキソブタン酸t-ブチル又はジルコニウム(IV)3-オキソブタン酸i-プロピルから選択される形態である、請求項36に記載の方法又は請求項16~18のいずれか一項に記載の触媒若しくは担体。
【請求項38】
前記触媒金属は、1つ又は複数のアルカリ金属であり、且つ好ましくはカリウム、ルビジウム及びセシウム、好適にはルビジウム及びセシウムから選択され、セシウムが最も好ましい、請求項19~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
形成された前記触媒は、その後、か焼される、請求項19~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
エチレン性不飽和カルボン酸又はエステル、典型的にはα,β-エチレン性不飽和カルボン酸又はエステルを製造する方法であって、触媒の存在下及び任意選択的にアルコールの存在下において、ホルムアルデヒド又はその適切な発生源をカルボン酸又はエステルと接触させる工程を含み、前記触媒は、請求項1、2又は5~39のいずれか一項に記載のものである、方法。
【請求項41】
エチレン性不飽和酸又はエステルを調製するためのプロセスであって、式R1-CH2-COOR3(式中、R1は、水素又は1~12個、より好適には1~8個、最も好適には1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、及びR3も、独立して、水素又は1~12個、より好適には1~8個、最も好適には1~4個の炭素原子を有するアルキル基である)のアルカン酸又はエステルを、ホルムアルデヒド若しくは以下で定義される式(I):
【化1】

(式中、R5は、メチルであり、且つR6は、Hであり;
Xは、Oであり;
mは1であり;及び
nは、1~20の任意の値である)
のホルムアルデヒドの好適な発生源又はそれらの任意の混合物と、請求項1、2又は5~40のいずれか一項に記載の触媒の存在下及び任意選択的にアルカノールの存在下において接触させることを含む、プロセス。
【請求項42】
前記カルボン酸若しくはエステル又は式R1-CH2-COOR3のエステル若しくは酸は、それぞれプロピオン酸メチル又はプロピオン酸であり、及び典型的には、前記任意選択的なアルカノールは、メタノールであり、且つ前記エチレン性不飽和カルボン酸又はエステルは、メタクリル酸メチル又はメタクリル酸である、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
修飾されたシリカ担体を製造する方法であって、
シラノール基を有するシリカ担体を提供する工程;
前記シリカ担体を単量体及び二量体のうちの少なくとも1つの修飾金属化合物で処理する工程であって、それにより、修飾金属は、シラノール基との反応を通して前記シリカ担体の表面上に吸着される、工程
を含み、吸着された修飾金属原子は、相互に十分に離間されて、近隣の修飾金属原子とのそのオリゴマー化を実質的に防止し、より好ましくは相互に十分に離間されて、近隣の修飾金属原子とのその三量化を実質的に防止する、方法。
【請求項44】
前記修飾金属原子の前記離間は、
a)前記シリカ担体上のシラノール基の濃度を低下させること、及び/又は
b)十分なサイズの化学変化を起こしにくいリガンドを修飾金属カチオンに結合させること
よって実施される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項19~42のいずれか一項に記載の特徴のいずれか1つ又は複数を含む、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
前記担体及び/又は触媒は、請求項1~18のいずれか一項に記載のものである、請求項19~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
単離シラノール基(-SiOH)を1nm2あたり2.5個未満の基のレベルで含む、請求項3~14、16又は17のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体。
【請求項48】
前記担体は、1nm2あたり2.5個未満の残基のレベルで存在する前記ジルコニウム修飾金属残基又はハフニウム修飾金属残基を含む、請求項1~47のいずれか一項に記載の触媒又は修飾されたシリカ担体。
【請求項49】
単離シラノール基(-SiOH)を1nm2あたり0.1個超且つ2.5個未満の基のレベル、より好ましくは0.2~2.2個のレベル、最も好ましくは1nm2あたり0.4~2.0個の基のレベルで含む、請求項3~14、16、17、47又は48のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体。
【請求項50】
前記担体は、前記ジルコニウム修飾金属残基又はハフニウム修飾金属残基を1nm2あたり0.025個超且つ2.5個未満の基のレベル、より好ましくは0.05~1.5個のレベル、最も好ましくは1nm2あたり0.1~1.0個の残基のレベルで含む、請求項1~49のいずれか一項に記載の触媒又は修飾されたシリカ担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾されたシリカ触媒担体と、修飾されたシリカ担体を組み入れた触媒と、そのような触媒の存在下において、カルボン酸又はエステルをホルムアルデヒド又はその発生源、例えばジメトキシメタンと縮合させることによる、特にそのような修飾されたシリカ担持の触媒金属触媒の存在下において、プロピオン酸又はそのアルキルエステル、例えばプロピオン酸メチルをホルムアルデヒド又はその発生源と縮合させることによる、エチレン性不飽和カルボン酸又はエステル、具体的にはα,β-不飽和カルボン酸又はエステル、より具体的にアクリル酸又はエステル、例えば(アルク)アクリル酸又は(アルク)アクリル酸アルキル、特に具体的には(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキル、例えばメタクリル酸(MA)及びメタクリル酸メチル(MMA)を製造するためのプロセスとに関する。従って、本発明は、特にメタクリル酸(MAA)及びメタクリル酸メチル(MMA)の製造に関連する。
【背景技術】
【0002】
上に述べたように、そのような不飽和酸又はエステルは、カルボン酸又はエステルの反応により作製することが可能であり、適切なカルボン酸又はエステルは、式R-CH-COORのアルカン酸(又はエステル)であり、ここで、R及びRは、それぞれ独立して、アクリル化合物の技術分野で公知の適切な置換基、例えば水素又はアルキル基、特に例えば1~4個の炭素原子を含む低級アルキル基である。従って、例えば、メタクリル酸又はそのアルキルエステル、特にメタクリル酸メチルは、プロピオン酸又は対応するアルキルエステル、例えばプロピオン酸メチルを、メチレン起源物質としてのホルムアルデヒドと、反応シーケンス1に従って触媒反応させることによって製造することができる。
-CH-COOR+HCHO→R-CH(CHOH)-COOR
及び
-CH(CHOH)-COOR→R-C(:CH)-COOR+H
(シーケンス1)
反応シーケンス1の一例が反応シーケンス2である。
CH-CH-COOR+HCHO→CH-CH(CHOH)-COORCH-CH(CHOH)-COOR→CH-C(:CH)-COOR+H
(シーケンス2)
上述の反応シーケンスは、典型的には、酸/塩基触媒を使用し、高温下、通常、250~400℃の範囲で実施される。所望の反応生成物がエステルである場合、エステルの加水分解によって対応する酸が生成することを最小限にとどめるために、典型的には、該当するアルコールの存在下でその反応を実施する。さらに、便宜上、ホルムアルデヒドをホルムアルデヒドとメタノールとの錯体の形態で導入することが望ましいことが多い。従って、メタクリル酸メチルを製造するために、その触媒にフィードされる反応混合物は、一般的に、プロピオン酸メチル、メタノール、ホルムアルデヒド及び水からなる。
【0003】
MMAのための公知の製造方法は、ホルムアルデヒドを使用してプロピオン酸メチル(MEP)をMMAとする触媒的転化反応である。このための既知の触媒は、担体、例えばシリカを組み入れたセシウム触媒である。
【0004】
特許文献1は、プロピオン酸又は対応するアルキルエステルを縮合させることによるα,β-不飽和カルボン酸又はエステルの製造において使用するための触媒を開示しており、その触媒は、アルカリ金属をドープした、少なくとも1つの修飾元素を用いて含浸させたシリカが含み、ここで、その修飾元素は、ホウ素、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム及びハフニウム、好ましくはジルコニウム、及び/又はアルミニウム、及び/又はホウ素からなる群から選択され、そのアルカリ金属は、カリウム、ルビジウム又はセシウムから選択され、好ましくはセシウムである。
【0005】
特許文献2は、プロピオン酸又はプロピオン酸エステルの縮合によるα,β-不飽和カルボン酸の製造を含めたアルドール縮合、オレフィンの重合、脱水、ヒドロキシル化及び異性化において使用するための触媒を開示しており、そこで、その触媒は、触媒金属を用いて含浸されたシリカ-金属ヒドロゲルを含み、そのヒドロゲルの金属は、ジルコニウム、チタン、アルミニウム及び鉄からなる群から選択され、好ましくはジルコニウムであり、その触媒金属は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択され、好ましくはセシウムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第1999/52628号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/026795号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ここで、ある種の金属で修飾されたシリカ担体を含み、且つ触媒金属を含む触媒が、その修飾金属の少なくとも一部が、合計して2個までのジルコニウム原子及び/又はハフニウム原子を有する金属種の形態でその担体中に組み込まれるか又は存在する場合、メチレン発生源、例えばホルムアルデヒドとカルボン酸又はアルキルエステル、例えばプロピオン酸メチルとの縮合において高いレベルの選択率を与えることを発見した。
【0008】
Yung-Jin Hu et al.,J.Am.Chem.Soc.,Volume 135、2013、p.14240から、ジルコニウムは、溶液中で大きいクラスターを形成することができることが公知である。Zr-18クラスターが典型的である。
【0009】
しかしながら、驚くべきことに、本発明者らは、修飾されたシリカ担体が、修飾の開始時、クラスターのような大きいものではなく、単量体及び/又は二量体の修飾金属のカチオン発生源、例えばそれらの化合物から誘導された酸化ジルコニウム及び/又は酸化ハフニウム残基を含む場合、その修飾された担体に対する触媒金属の結合性が改良され、その結果、対応する酸又はエステルとメチレン発生源、例えばホルムアルデヒドとを縮合させることによる不飽和カルボン酸又はエステルの製造の場合の選択率がより高くなることが観察されることを見出した。さらに、本発明者らは、それらの高い選択率を与える修飾されたシリカ担体が、シリカの表面上に析出/吸着させた後、単量体又は二量体の修飾金属原子を含むことを見出した。
【0010】
本発明者らは、そのような修飾されたシリカ担体を使用すると、触媒表面の焼結速度が抑制され、縮合反応時にその上で触媒反応が起きる表面積の損失が抑制されることが見出されることをさらに見出した。
【0011】
従って、そのような修飾されたシリカ担体を含み、且つ触媒金属を含む触媒は、対応する酸又はエステルとメチレン発生源、例えばホルムアルデヒドとの縮合により、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸又はエステルを製造するための顕著に高性能の触媒であり、例えば高レベルの選択率及び/又は触媒表面の焼結の抑制のようないくつかのメリットが得られる。
【0012】
従って、本発明の第一の態様では、
修飾されたシリカ担体、
修飾金属を含む修飾されたシリカ担体、及び
その修飾されたシリカ担体上の触媒金属
を含む触媒であって、その修飾金属は、ジルコニウム及び/又はハフニウムの1つ又は複数から選択される、触媒において、前記修飾金属の少なくとも一部、典型的には少なくとも25%は、合計して2個までの修飾金属原子を有する修飾金属残基の形態において存在することを特徴とする、触媒が提供される。
【0013】
本発明のさらなる態様では、
修飾されたシリカ担体、
修飾金属を含む修飾されたシリカ担体、及び
その修飾されたシリカ担体上の触媒金属
を含む触媒であって、その修飾金属は、ジルコニウム及び/又はハフニウムの1つ又は複数から選択される、触媒において、前記修飾金属の少なくとも一部、典型的には少なくとも25%は、単量体及び/又は二量体の修飾金属のカチオン発生源から誘導された修飾金属残基の形態において存在することを特徴とする、触媒が提供される。
【0014】
その単量体及び二量体のうちの少なくとも1つの修飾金属は、溶液中における単量体及び二量体のうちの少なくとも1つのジルコニウム又はハフニウムの修飾金属のカチオン発生源、例えばそれらの化合物としてシリカ担体と接触して、その担体上への前記修飾金属の吸着を実施し、それにより修飾金属残基を形成する。好適な発生源は、溶液中の修飾金属の錯体、より典型的にはリガンド錯体であり得る。
【0015】
本発明の第二の態様では、
シリカ担体、及び
修飾金属
を含む触媒のための修飾されたシリカ担体であって、その修飾金属は、ジルコニウム及び/又はハフニウムの1つ又は複数から選択される、修飾されたシリカ担体において、前記修飾金属の少なくとも一部、典型的には少なくとも25%は、合計して2個までの修飾金属原子を有する修飾金属残基の形態において存在することを特徴とする、修飾されたシリカ担体が提供される。
【0016】
本発明の第三の態様では、
シリカ担体、及び
修飾金属
を含む触媒のための修飾されたシリカ担体であって、その修飾金属は、ジルコニウム及び/又はハフニウムの1つ又は複数から選択される、修飾されたシリカ担体において、前記修飾金属の少なくとも一部、典型的には少なくとも25%は、修飾の開始時、単量体及び/又は二量体の修飾金属のカチオン発生源から誘導された修飾金属残基の形態において存在することを特徴とする、修飾されたシリカ担体が提供される。
【0017】
本明細書では、修飾されたシリカ担体は、修飾金属によって修飾されている。典型的には、その修飾金属は、シリカ担体の表面上に吸着されている吸着質である。その吸着質は、シリカ担体の表面上に化学吸着又は物理吸着され得、典型的にはその上に化学吸着されている。その修飾金属残基は、一般的には、修飾金属酸化物の残基である。
【0018】
シリカ担体は、一般的にはシリカゲル、より典型的にはキセロゲル又はヒドロゲルの形態である。
典型的には、その修飾金属は、シリカゲルの担体の表面上に吸着されている。従って、典型的には、前記修飾金属は、修飾されたシリカゲル担体の表面上において金属酸化物残基の形態で存在する。
【0019】
代わりに、修飾金属は、共ゲルの形態で担体上に存在し得る。そのような場合、その修飾されたシリカ担体は、シリカ-金属酸化物ゲルであり、典型的には酸化ジルコニウム及び/又は酸化ハフニウム残基を含む。
【0020】
典型的には、修飾金属は、修飾されたシリカ担体中において、焼結を低減し、且つ触媒の選択率を改良するのに有効な量で存在する。修飾されたシリカ担体中の修飾金属の典型的には少なくとも30%、例えば少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、例えば少なくとも45%、最も好適には少なくとも50%、例えば少なくとも55%、例えば少なくとも60%又は65%及び最も好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも75%又は80%、より典型的には少なくとも85%、最も典型的には少なくとも90%、特に少なくとも95%は、合計して1個及び/又は2個の金属原子を有する残基中、特に合計して1個の金属原子を有する残基中に存在するか、又は修飾されたシリカを形成させる開始時、そのようなレベルにおいて単量体及び/又は二量体の金属化合物から誘導される。
【0021】
疑義を避けるために、合計して1個の金属原子を有する修飾金属残基が単量体と呼ばれ、合計して2個の金属原子を有するものが二量体である。特に好ましい実施形態では、修飾金属の例えば少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、例えば少なくとも45%、最も好適には少なくとも50%、例えば少なくとも55%、例えば少なくとも60%又は65%及び最も好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも75%又は80%、より典型的には少なくとも85%、最も典型的には少なくとも90%、特に少なくとも95%は、単量体の金属残基において存在するか、又はいずれの場合にも、典型的には、修飾の開始時、単量体の化合物としてそのようなレベルの修飾金属を有するジルコニウム及び/又はハフニウム化合物から誘導される。一般的には、シリカ上の修飾金属残基は、修飾金属酸化物の残基である。
【0022】
担体、例えばヒドロゲル担体の全体に分散された3個以上の金属原子のジルコニウム及び/又はハフニウムのクラスターは、驚くべきことに、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸又はエステルを、対応する酸又はエステルをメチレン発生源、例えばホルムアルデヒドと縮合させることによって製造するための反応選択率を低下させることが見出された。そのように大きいクラスターは、さらに、驚くべきことに、2個又は1個の金属原子を有する修飾金属のクラスターと比較して、修飾されたシリカ粒子の焼結性を上昇させ、それにより表面積を低下させ、そのことが強度を低下させ、活性が受容不能な程度に低くなるまでの触媒の寿命を減少させることが見出された。さらに、多くの場合、修飾金属のクラスターの性質に依存して選択率も低下する。
【0023】
典型的には、その修飾金属は、担体全体にわたって実施的に均質な方式で分散される。
典型的には、修飾されたシリカ担体は、キセロゲルである。そのゲルは、ヒドロゲル又はエーロゲルであり得る。
【0024】
そのゲルは、シリカ-ジルコニア及び/又はシリカ-ハフニアの共ゲルであり得る。それらのシリカゲルは、例えば、本明細書に記載したような当業者に公知の各種のゲル作製法によって作製することができる。典型的には、修飾されたシリカゲルは、適切な吸着反応によって作製される。関連する金属化合物、例えばジルコニウム及び/又はハフニウム化合物をシリカゲル、例えばシリカキセロゲルに吸着させて、関連する修飾金属残基を含む修飾されたシリカゲルを形成させることは、1つの適切な技術である。
【0025】
シリカゲルを調製するための方法は、当技術分野で公知であり、そのような方法のいくつかは、次の文献に記載されている:The Chemistry of Silica:Solubility,Polymerisation,Colloid and Surface Properties and Biochemistry of Silica,by Ralph K Iler,1979,John Wiley and Sons Inc.(ISBN 0-471-02404-X)及びその中の引用文献。
【0026】
シリカ-ジルコニア共ゲルを調製するための方法も当技術分野で公知であり、そのような方法のいくつかは、次の文献に記載されている:米国特許第5,069,816号明細書、Bosman et al.,J.Catalysis,Vol.148(1994),p.660及びMonros et al.,J.Materials Science,Vol.28(1993),p.5832。
【0027】
好ましい実施形態では、その修飾されたシリカ担体は、共ゲル化法で形成されず、すなわちケイ酸ナトリウム溶液と硫酸溶液中の修飾金属の錯体とを混合する共ゲル化法により、シリカ-ジルコニア、シリカ-ハフニア又はシリカ-ジルコニア/ハフニアが形成されない。そのような実施形態では、ジルコニウム及び/又はハフニウムは、典型的には、シリカ担体表面上の吸着質として組み込まれる。
【0028】
好ましくは、本発明の任意の態様による修飾されたシリカ担持触媒及び修飾されたシリカ担体は、実質的に、又は本質的に、又は完全にフルオリドフリーであり得る。環境からの避け得ない混入を理由として、フルオリドが微量で存在する可能性がある。「実質的にフリー」という語句は、1000パーツパーミリオン(ppm)未満のフルオリドを含む触媒及び担体を指すことを意味する。「本質的にフリー」という語句は、約100ppm未満のフルオリドを含む触媒及び担体を指し、「完全にフリー」という語句は、200パーツパービリオン(ppb)未満のフルオリドを含む触媒を指すことを意味する。
【0029】
本発明の上述の態様の修飾されたシリカ中に組み込まれた修飾金属の少なくとも一部は、修飾されたシリカの形成の開始時、単量体及び/又は二量体の修飾金属のカチオン発生源から誘導されることが有利であり、それらは、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸又はエステルの製造時に反応選択率を改良し、且つ/又は触媒表面の焼結速度を低下させることが見出された。
【0030】
本発明における修飾されたシリカ担体中の金属及び金属酸化物残基は、ジルコニウム及び/又はハフニウム並びにジルコニア及び/又はハフニアに関するものであり、シリカに関係しない。
【0031】
修飾されたシリカ又は触媒中に存在する修飾金属のレベルは、好ましくは、シリカの7.6×10-2mol/molまで、より好ましくはシリカの5.9×10-2mol/molまで、最も好ましくはシリカの3.5×10-2mol/molまでである。そのような金属のレベルは、典型的には、シリカの0.067×10-2~7.3×10-2mol/mol、より好ましくはシリカの0.13×10-2~5.7×10-2mol/mol、最も好ましくはシリカの0.2×10-2~3.5×10-2mol/molである。存在する修飾金属のレベルは、典型的には、シリカの少なくとも0.1×10-2mol/mol、より好ましくはシリカの少なくとも0.15×10-2mol/mol、最も好ましくはシリカの少なくとも0.25×10-2mol/molである。
【0032】
ジルコニウムが修飾金属である場合、ジルコニウム金属のレベルは、修飾されたシリカ担体の好ましくは10%(w/w)まで、より好ましくは8%(w/w)まで、最も好ましくは5.5%(w/w)までであり得る。ジルコニウム金属のレベルは、修飾されたシリカ担体の典型的には0.1~10%(w/w)、より好ましくは0.2~8%(w/w)、最も好ましくは0.3~5%(w/w)である。ジルコニウム金属のレベルは、修飾されたシリカ担体の典型的には少なくとも0.5%(w/w)、例えば0.8%(w/w)、より典型的には少なくとも1.0%(w/w)、最も典型的には少なくとも1.5%(w/w)である。
【0033】
ハフニウム金属のレベルは、修飾されたシリカ担体の好ましくは20%(w/w)まで、より好ましくは16%(w/w)まで、最も好ましくは10%(w/w)までであり得る。ハフニウム金属のレベルは、修飾されたシリカ担体の典型的には0.2~20%(w/w)、より好ましくは0.4~16%(w/w)、最も好ましくは0.6~10%(w/w)である。ハフニウム金属のレベルは、修飾されたシリカ担体の典型的には少なくとも1.0%(w/w)、より典型的には2.0%(w/w)、最も典型的には少なくとも3.0%(w/w)である。
【0034】
シリカ-酸化ジルコニウム担体のシリカ成分は、修飾された担体の典型的には86.5~99.9重量%、より典型的には89.2~99.7重量%、最も典型的にはその93.2~99.6重量%を占めている。
【0035】
シリカ-酸化ハフニウム担体のシリカ成分は、修飾された担体の典型的には76.4~99.8重量%、より典型的には81.1~99.5重量%、最も典型的にはその88.2~99.3重量%を占めている。
【0036】
本明細書で使用するとき、「2個までの金属原子」などの用語は、1個及び/又は2個の金属原子を意味する。本発明の任意の態様における修飾されたシリカ担体及び触媒は、金属残基、典型的には、好ましくは2個までの金属原子、最も好ましくは1個の金属原子を有する金属酸化物残基を含む。従って、そのような残基は、単量体又は二量体の金属残基であることが理解されるであろう。
【0037】
好ましくは、その触媒金属は、1つ又は複数のアルカリ金属であり得る。その触媒金属は、ジルコニウム又はハフニウム以外の金属である。適切なアルカリ金属は、カリウム、ルビジウム及びセシウム、好適にはルビジウム及びセシウムから選択することができる。セシウムが最も好ましい触媒金属である。
【0038】
触媒金属、例えばセシウムは、触媒中において、好適には少なくとも1mol/100(ケイ素+金属(ジルコニウム及び/又はハフニウム))mol、より好ましくは少なくとも1.5mol/100(ケイ素+金属)mol、最も好ましくは少なくとも2mol/100(ケイ素+金属)molのレベルで存在し得る。触媒金属のレベルは、触媒中において、10mol/100(ケイ素+金属)molまで、より好ましくは7.5mol/100(ケイ素+金属)molまで、最も好ましくは触媒中に5mol/100(ケイ素+金属)molまでであり得る。
【0039】
触媒中の触媒金属のレベルは、触媒中において、好ましくは1~10mol/100(ケイ素+金属)mol、より好ましくは2~8mol/100(ケイ素+金属)mol、最も好ましくは2.5~6mol/100(ケイ素+金属)molである。
【0040】
特に断らない限り、アルカリ金属の量又は触媒中のアルカリ金属は、アルカリ金属のイオンに関連し、塩に関連しない。
代わりに、その触媒は、触媒中において、1~22重量%、より好ましくは4~18重量%、最も好ましくは5~13重量%の範囲の触媒金属重量%を有し得る。その量は、すべてのアルカリ金属、特にセシウムにて適用されるであろう。
【0041】
触媒は、触媒のアルカリ金属対ジルコニウム及び/又はハフニウム金属を任意の適切な重量比で含み得る。しかしながら、典型的には、重量比は、セシウム:ジルコニウムの場合、触媒中において、2:1~10:1、より好ましくは2.5:1~9:1、最も好ましくは3:1~8:1の範囲であり、セシウム:ハフニウムの場合、触媒中において、1:1~5:1、より好ましくは1.25:1~4.5:1、最も好ましくは1.5:1~4:1の範囲であり、ルビジウム:ジルコニウムの場合、触媒中において、1.2:1~8:1、より好ましくは1.5:1~6:1、最も好ましくは2:1~5:1の範囲であり、ルビジウム:ハフニウムの場合、触媒中において、0.6:1~4:1、より好ましくは0.75:1~3:1、最も好ましくは1:1~2.5:1の範囲である。従って、触媒中の触媒金属:修飾金属のモル比は、典型的には少なくとも1.4又は1.5:1であり、好ましくは、その範囲は、1.4~2.7:1、例えば1.5~2.1:1、特に1.5~2.0:1であり、この点に関して、典型的には、その修飾金属がジルコニウムであり、その触媒金属がセシウムである。一般的には、本明細書では、触媒金属を、修飾金属を中和させるのに必要であろう量より過剰に存在する。
【0042】
好ましくは、触媒金属は、0.5~7.0mol/mol(修飾金属)、より好ましくは1.0~6.0mol/mol、最も好ましくは1.5~5.0mol/mol(修飾金属)の範囲で存在する。
【0043】
好ましくは、触媒金属は、当業者に公知の任意の方法、例えば含浸法、共ゲル化法又は触媒金属を用いた析出法などにより、修飾されたシリカ担体中に組み入れることができる。
【0044】
「含浸させた」という用語に含まれるのは、本明細書で使用するとき、触媒金属を添加して溶媒中に溶解させて溶液を作製し、それをキセロゲル又はエーロゲルに添加することにより、その溶液を前記キセロゲル又はエーロゲルの内部の空隙内に取り込ませることである。
【0045】
典型的には、本発明の触媒は、任意の適切な形態であり得る。典型的な実施形態は、ばらばらな粒子の形態におけるものである。典型的には、使用時、その触媒は、触媒の固定床の形態である。代わりに、その触媒は、触媒の流動床の形態であり得る。さらなる代替法は、モノリス反応器である。
【0046】
触媒を固定床の形態で使用する場合、その担持触媒は、ペレット化又は押出成形によって調製された顆粒、凝集物又は成形単位、例えば球、円筒、環、サドル、星形、ポリローブの形状とされ、典型的には最大寸法及び最小寸法が1~10mmの範囲、より好ましくは平均寸法が2mm超、例えば2.5又は3mm超であることが望ましい。触媒は、さらに、他の形態、例えば先に述べたのと同じ寸法の粉末又は小ビーズ状物でも有用である。触媒を流動床の形態で使用する場合、その触媒粒子は、10~500μm、好ましくは20~200μm、最も好ましくは20~100μmの範囲の最大寸法及び最小寸法を有することが望ましい。
【0047】
触媒中の触媒金属のレベルが100原子(ケイ素+ジルコニウム及び/又はハフニウム)あたり何原子であるか又は何重量%であるかは、適切にサンプリングし、そのようなサンプルの平均をとることにより求めることができる。典型的には、所定の触媒バッチの5~10サンプルを取り出し、アルカリ金属のレベルを例えば以下の方法で求めて、平均をとることになるであろう:XRF法、原子吸光分光法、中性子放射化分析法、イオン結合プラズマ質量分析法(ICPMS)又はイオン結合プラズマ原子発光分光法(ICPAES)。
【0048】
触媒/担体中の特定のタイプの金属酸化物のレベルは、XRF、原子吸光分光法、中性子放射化分析法又はイオン結合プラズマ質量分析法(ICPMS)によって求める。
本発明の任意の態様における、修飾されたシリカ担持触媒の典型的な平均表面積は、Micromeritics Tristar 3000 Surface Area and porosity analyserを使用し、多点B.E.T.法で測定して、20~600m/g、より好ましくは30~450m/g、最も好ましくは35~350m/gの範囲である。装置の性能をチェックするために使用する標準物質は、30.6m/g(±0.75m/g)の表面積を有するMicromeriticsから供給されるカーボンブラック粉体(部品番号004-16833-00)であり得る。
【0049】
その触媒物質が多孔質である場合、それは、典型的には、2~1000nm、より好ましくは3~500nm、最も好ましくは5~250nmの平均細孔径を有するメソ多孔質とマクロ多孔質を組み合わせたものである。マクロ細孔径(50nm超)は、NIST標準を仕様した水銀圧入ポロシメーター法によって測定することが可能である一方、77Kの液体窒素を使用するBarrett-Joyner-Halenda(BJH)分析法を使用してメソ細孔(2~50nm)の細孔径を求める。平均細孔径は、細孔容積対細孔径分布を重量平均した細孔容積である。
【0050】
触媒粒子の平均細孔容積は、流体、例えば水の取込量で測定して0.1cm/g未満であるが、一般的には0.1~5cm/gの範囲であり得る。しかしながら、極めて低い多孔性を有する微孔質の触媒は、それらが触媒内部での反応物質の移動を妨害する可能性があるために最適ではなく、0.2~2.0cm/gの平均細孔容積がより好ましい。細孔容積は、代わりに、77Kでの窒素吸着法と水銀ポロシメーター法とを組み合わせて測定することもできる。Micromeritics TriStar Surface Area and Porosity Analyserを使用して、表面積測定の場合と同様に、同一の標準を採用して細孔容積を測定する。
【0051】
本発明では、驚くべきことに、修飾金属残基のサイズを調節すると有利であることが見出された。しかしながら、最大のメリットを得るために、隣接している修飾金属残基との近傍度を調節する必要があり、なぜなら、そうしないと修飾金属残基が互いに繋がり合い、それにより修飾金属残基のサイズが大きくなる可能性があるからである。
【0052】
従って、本発明の第四の態様では、
シラノール基を有するシリカ担体を提供する工程;
そのシリカ担体を単量体及び/又は二量体の修飾金属化合物と接触させる工程であって、修飾金属は、前記シラノール基との反応を通してそのシリカの表面担体上に吸着される、工程
を含む、修飾されたシリカ担体を製造するための方法が提供される。
【0053】
典型的には、修飾金属は、ジルコニウム又はハフニウムから選択される。
吸着された修飾金属カチオンは、相互に十分に離間されて、近隣の修飾金属カチオンとのそのオリゴマー化、より好ましくはその三量化を実質的に防止することが好ましい。
【0054】
その接触工程において、シリカ担体と接触している前記修飾金属の典型的には少なくとも25%、より典型的には少なくとも30%、例えば少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、例えば少なくとも45%、最も好適には少なくとも50%、例えば少なくとも55%、例えば少なくとも60%又は65%及び最も好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも75%又は80%、より典型的には少なくとも85%、最も典型的には少なくとも90%、特に少なくとも95%は、単量体又は二量体の修飾金属である。従って、シリカ担体上に吸着された修飾金属の少なくとも25%、より典型的には少なくとも30%、例えば少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、例えば少なくとも45%、最も好適には少なくとも50%、例えば少なくとも55%、例えば少なくとも60%又は65%、最も好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも75%又は80%、より典型的には少なくとも85%、最も典型的には少なくとも90%、特に少なくとも95%は、合計して2個までの修飾金属原子を有する修飾金属残基の形態において存在する。
【0055】
本発明のさらなる態様では、
シラノール基を有するシリカ担体を提供する工程;
シリカ担体を単量体及び/又は二量体の修飾金属化合物で処理する工程であって、修飾金属は、シラノール基との反応を通してシリカの表面担体上に吸着される、工程
を含む、本明細書における任意の態様における、修飾されたシリカ担体を製造するための方法が提供され、ここで、その吸着された修飾金属原子は、相互に十分に離間されて、近隣の修飾金属原子とのそのオリゴマー化を実質的に防止し、より好ましくは相互に十分に離間されて、近隣の修飾金属原子とのその三量化を実質的に防止する。
【0056】
好ましくは、修飾金属原子の離間は、
a)シリカ担体上のシラノール基の濃度を低下させること、及び/又は
b)シリカ担体を処理する前に、十分なサイズの化学変化を起こしにくいリガンドをその修飾金属に結合させること
によって実施される。
【0057】
なおもさらなる態様では、
i.単離されたシラノール基を有するシリカ担体を提供し、且つ任意選択的に前記担体を処理して、1nmあたり2.5個未満の基のレベルの単離されたシラノール基(-SiOH)を提供する工程;
ii.任意選択的に処理されたシリカ担体を単量体のジルコニウム修飾金属化合物又はハフニウム修飾金属化合物と接触させて、担体上において、典型的には前記単離されたシラノール基の少なくとも25%までの前記修飾金属の吸着を実施する工程;
iii.任意選択的に、修飾金属化合物のためのいかなる溶媒又は液状キャリヤも除去する工程;
iv.その修飾されたシリカを十分な時間及び温度でか焼して、その表面上に吸着された単量体のジルコニウム化合物又はハフニウム化合物をジルコニウム又はハフニウムの酸化物又は水酸化物に転化させる工程;
v.前記か焼された修飾されたシリカを触媒のためのアルカリ金属で処理して、修飾されたシリカを触媒金属で含浸して触媒を形成させ、且つ任意選択的にその触媒をか焼する工程
を含む、触媒を製造する方法が提供される。
【0058】
本発明のさらなる態様では、
i.単離されたシラノール基を有するシリカ担体を提供し、且つ任意選択的に前記担体を処理して、1nmあたり2.5個未満の基のレベルの単離されたシラノール基(-SiOH)を提供する工程;
ii.任意選択的に処理されたシリカ担体を単量体のジルコニウム修飾金属化合物又はハフニウム修飾金属化合物と接触させて、担体上において、典型的には前記単離されたシラノール基の少なくとも25%までの前記修飾金属の吸着を実施する工程;
iii.任意選択的に、修飾金属化合物のためのいかなる溶媒又は液状キャリヤも除去する工程;
iv.任意選択的に、触媒含浸のための調製において、その修飾された担体を十分な時間及び温度でか焼して、その表面上に吸着された単量体のジルコニウム化合物又はハフニウム化合物をジルコニウム又はハフニウムの酸化物又は水酸化物に転化させる工程
を含む、触媒のための修飾されたシリカ担体を製造する方法が提供される。
【0059】
シラノール基の濃度は、修飾金属化合物での処理前にか焼処理、化学的脱水又は他の適切な方法によって低下されることが好ましい。
好ましくは、この場合における修飾金属のカチオン発生源は、前記修飾金属の化合物の溶液であり、それにより、その化合物は、担体上への吸着を実施するために担体と接触されるときに溶液中にある。
【0060】
典型的には、前記溶液のための溶媒は、水以外のものである。
典型的には、その溶媒は、典型的にはC1~C6アルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノール、より典型的にはメタノール、エタノール又はプロパノールから選択される脂肪族アルコールである。
【0061】
有利には、吸着された修飾金属の、近傍の修飾金属カチオンまでの近接度は、接触工程における前記修飾金属の濃度及び下記によって調節することが可能である:
a)シリカ担体上のシラノール基の濃度、及び/又は
b)修飾金属カチオンに結合させた任意の化学変化を起こしにくいリガンドのサイズ。
【0062】
吸着前のシリカ担体上でのシラノール基濃度は、か焼又は当業者に公知の他の適切な方法によって調節することが好ましい。同定方法は、例えば、L.T.Zhuravlev,Colloids and Surfaces:Physicochemical and Engineering Aspects,vol.173,pp.1~38,2000に記載されており、そこには、4つのシラノールの形態、すなわち単離シラノール、ジェミナルシラノール、近接シラノール及び内部シラノールが記述されており、それらは、シリカ表面上で共存することができる。単離シラノール基が最も好ましい。これは、赤外分光法により、3730~3750cm-1の鋭い吸収ピークとして同定することができるのに対して、他のシラノールは、3460~3715cm-1にブロードなピークを示す(The Surface Properties of Silicas、Edited by Andre P.Legrand,John Wiley and Sons,1998(ISBN 0-471-95332-6),pp.147~234を参照されたい)。
【0063】
「化学変化を起こしにくいリガンド」という用語は、修飾金属に配位していて、その金属がシリカ表面上に吸着しても除去されないリガンドを意味する。従って、その化学変化を起こしにくいリガンドは、典型的には、シリカ表面を修飾金属で処理する前に溶液中の修飾金属に配位結合している。疑義を避けるために、その化学変化を起こしにくいリガンドは、典型的には、修飾金属を吸着させた後にシリカ表面を処理することによって除去される。
【0064】
化学変化を起こしにくいリガンドのサイズは、修飾金属が繋がり合うことを防止する目的で修飾金属を離間させるのに効果がある。
本発明のさらなる態様では、触媒又は請求項に記載の単一又は複数の触媒のための修飾されたシリカ担体を製造する方法が提供される。
【0065】
本発明は、本明細書に記載の任意の態様における修飾されたシリカ担体に拡張され、ここで、その担体は、単離シラノール基(-SiOH)を1nmあたり2.5個未満の基のレベルで含む。典型的には、その担体は、1nmあたり0.1個超且つ2.5個未満の基のレベル、より好ましくは0.2~2.2個のレベル、最も好ましくは1nmあたり0.4~2.0個の基のレベルで単離シラノール基(-SiOH)を含む。
【0066】
本発明は、本明細書の任意の態様に従った触媒又は修飾されたシリカ担体にさらに拡張され、ここで、その担体は、合計して2個までの修飾金属原子を有し、且つ/又は担体上に存在し、1nmあたり2.5個未満の基の残基のレベルで存在する、単量体及び/又は二量体の修飾金属のカチオン発生源から誘導された前記ジルコニウム修飾金属残基又はハフニウム修飾金属残基を含む。
【0067】
その担体は、前記ジルコニウム修飾金属残基又はハフニウム修飾金属残基を典型的には1nmあたり0.025個超且つ2.5個未満の基のレベル、より好ましくは0.05~1.5個のレベル、最も好ましくは1nmあたり0.1~1.0個の残基のレベルで含む。
【0068】
ここで、好適なリガンドは、任意選択的に、ジルコニウム原子又はハフニウム原子と共に5員環又は6員環を形成することが可能な酸素原子又は窒素原子を含有する孤立電子対を有する分子から選択される、化学変化を起こしにくいリガンドであり得る。例としては、以下のものが挙げられる:ジオン、ジイミン、ジアミン、ジオール、ジカルボン酸若しくはその誘導体、例えばエステル又は2個の異なるそのような官能基を有し、且ついずれの場合にもそれぞれのN若しくはO原子及び2個若しくは3個の原子によって分断されたN若しくはO原子と一緒になって、それにより5員環若しくは6員環を形成する分子。例としては、以下のものが挙げられる:ペンタン-2,4-ジオン、3-オキソブタン酸と、1~4個の炭素原子を含む脂肪族アルコールとのエステル、例えば3-オキソブタン酸エチル、3-オキソブタン酸プロピル、3-オキソブタン酸イソプロピル、3-オキソブタン酸n-ブチル、3-オキソブタン酸t-ブチル、ヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ジアミノエタン、エタノールアミン、1,2-ジアミノ-1,1,2,2-テトラカルボキシレート、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ブタンジオエート、2,4-ジヒドロキシ-1,5-ペンタンジオエート、1,2-ジヒドロキシルベンゼン-3-5-ジスルホン酸の塩、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトロロ三酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、シュウ酸及びその塩。ペンタン-2,4-ジオン、ヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、3-オキソブタン酸エチル及び3-オキソブタン酸t-ブチルが最も好ましい。例えば、合計して10個未満の炭素及び/又はヘテロ原子を有するより小さい二座のリガンドは、小さい錯体を形成することが可能であり、それは、より大きいリガンドと比較して、シリカの表面上により高い濃度で析出することが可能となる。従って、本明細書における修飾金属のカチオン発生源は、そのようなより小さいリガンドを有する、好ましくは少なくとも1つのそのようなリガンドを有するジルコニウム及び/又はハフニウムの錯体の形態であり得る。そのような化合物としては、化学変化を起こしやすいリガンド、例えば、例としてアルコール溶媒中の溶媒リガンド、アルコキシドリガンド、例えばエトキシド又はプロポキシドなどが挙げられる。
【0069】
好ましくは、単離のシラノール基の濃度が修飾金属吸着のためのサイトの最大数を決定する。濃度を調節することにより、吸着された修飾金属の近傍度を効果的に決めることができ、なぜなら、シラノールサイトの分布は、一般的には、均質になるであろうからである。本発明における修飾されたシリカ担体を製造するためのシラノール濃度は、1nmあたり2.5個未満の基、より典型的には1nmあたり1.5個未満の基、最も典型的には1nmあたり0.8個未満の基であり得る。修飾されたシリカ担体を製造するためのシラノール濃度の好適な範囲は、1nmあたり0.1~2.5個のシラノール基、より好ましくは1nmあたり0.15~1.0個のシラノール基、最も好ましくは1nmあたり0.2~0.7個のシラノール基であり得る。
【0070】
一般的にはカチオンの形態である修飾金属の濃度は、担体の表面上において、修飾金属対金属の相互作用を招き得る二分子層などの顕著な形成を防止するレベルに設定するべきである。加えて、シラノールサイトから修飾金属を遠ざける弱い吸着を招き得る初期の単分子層中のギャップを充満することも、隣り合った強く吸着された修飾金属の相互作用を防止するために避けるべきである。本発明の修飾金属についての典型的な濃度範囲は、本明細書に記載した通りであり得る。
【0071】
担体上に前記化合物、より典型的には単量体を吸着させるためにその発生源を担体と接触させる場合、修飾金属化合物中の修飾金属の典型的には少なくとも30%、例えば少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、例えば少なくとも45%、最も好適には少なくとも50%、例えば少なくとも55%、例えば少なくとも60%又は65%及び最も好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも75%又は80%、より典型的には少なくとも85%、最も典型的には少なくとも90%、特に少なくとも95%は、二量体及び/又は単量体の修飾金属化合物である。
【0072】
本発明のさらなる態様では、
修飾されたシリカ担体、
修飾金属を含む修飾されたシリカ担体、及び
その修飾されたシリカ担体上の触媒金属
を含む触媒を製造する方法であって、その修飾金属は、ジルコニウム及び/又はハフニウムの1つ又は複数から選択される、方法において、前記修飾金属の少なくとも一部、典型的には少なくとも25%は、単量体の修飾金属残基の形態で存在し、前記方法は、
シリカ担体を処理して、1nmあたり2.5個基未満の基のレベルの単離シラノール基(-SiOH)を提供する工程;
その処理された担体を単量体のジルコニウム又はハフニウム単量体の修飾金属化合物と反応させて、前記単離シラノール基の少なくとも25%に対するそれらの結合を実施する工程;
任意選択的に、溶媒又は液状キャリヤを除去する工程;
その修飾されたシリカを十分な時間及び温度でか焼して、その表面上に吸着された単量体のジルコニウム化合物又はハフニウム化合物をジルコニウム又はハフニウムの酸化物又は水酸化物に転化させる工程;
前記か焼された修飾されたシリカを触媒のアルカリ金属で処理して、その修飾されたシリカを触媒金属で含浸する工程
を含むことを特徴とする、方法が提供される。
【0073】
有利には、単離されたシラノールサイトの数を少なくし、それらのサイトに単量体のジルコニウム又はハフニウム化学種を結合させることにより、触媒の選択率が改良され、焼結速度が遅くなり、触媒のエージングが改良された触媒担体が得られる。
【0074】
シリカに所定のレベルで単離シラノール基を与えるために好適な処理方法は、か焼による方法である。しかしながら、他の処理、例えば水熱処理又は化学的脱水も可能である。米国特許第5583085号明細書は、アミン塩基の存在下におけるジメチルカーボネート又はエチレンジカーボネートを用いたシリカの化学的脱水法を教示している。米国特許第4357451号明細書及び米国特許第4308172号明細書は、SOClを用いて塩素化し、次いでH又はROHを用いて脱塩素化し、次いで乾燥雰囲気中酸素による化学的脱水法を教示している。化学的脱水法では、シラノールの最高100%が除去できるのに対して、熱処理では、わずか0.7/nmである。従って、任意選択的に、化学的脱水法は、シラノール基の制御のさらなる範囲を提供し得る。
【0075】
「単離されたシラノール」(単独シラノールとも呼ばれる)という用語は、当業者に周知であり、近接シラノール、又はジェミナルシラノール、又は内部シラノールと区別されている。単離されたシラノール存在率を求める適切な方法としては、表面高感度赤外分光法及びH NMR又は31Si NMRが挙げられる。
【0076】
本発明の第五の態様では、本発明の任意の上記の態様に従った触媒を製造する方法が提供され、それは、任意の上記の態様に従った修飾されたシリカを形成する工程と、その修飾されたシリカ担体を、触媒金属を含む溶液と接触させて、その修飾されたシリカを触媒金属で含浸する工程とを含む。
【0077】
そのシリカ担体は、修飾金属のカチオン発生源を用いる処理にかける前に乾燥させるか又はか焼することが好ましい。形成された修飾されたシリカは、事前の乾燥又はか焼の有無とは無関係に、触媒金属を添加する前に乾燥又はか焼され得る。
【0078】
修飾金属での処理前のシリカは、ゲルの形態であり得る。修飾の開始時点において、そのゲルは、ヒドロゲル、キセロゲル又はエーロゲルの形態であり得る。
そのシリカ担体は、キセロゲル、ヒドロゲル又はエーロゲルであり得る。そのシリカ担体は、キセロゲルであることが好ましい。
【0079】
そのシリカ担体は、担体形成における当業者に公知の各種の方法のいずれかを使用して、金属カチオン発生源により処理され得る。シリカ担体は、シリカ担体全体に修飾金属が分散されるような方法で金属カチオン発生源と接触され得る。典型的には、ジルコニウム及び/又はハフニウムがシリカ担体全体に均質に分散され得る。吸着法によって修飾金属をシリカ担体全体に分散させることが好ましい。
【0080】
本明細書で使用するとき、修飾金属に関連した「吸着」などの用語は、金属カチオン発生源とシリカ担体との相互作用、典型的には化学吸着により、シリカ担体の表面上に修飾金属を組み入れることを意味する。典型的には、シリカ担体に修飾剤を添加することには、シリカ担体上に金属カチオン発生源を吸着させて有機金属錯体を形成させ、その錯体をか焼して、その有機金属錯体を金属酸化物残基に転化させる工程が含まれる。従って、典型的には、シリカ担体全体にわたる修飾金属の均質な分散が存在する。典型的には、ジルコニウム及び/又はハフニウムがシリカ担体全体にわたって分散される。
【0081】
本明細書において適切な金属カチオン発生源の例としては、例えば、以下のような有機錯体が挙げられる:ジルコニウム(ペンタン-2,4-ジオン)、ジルコニウム(3-オキソブタン酸エチル)、ジルコニウム(ヘプタン-3,5-ジオン)、ジルコニウム(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン)、ジルコニウム(プロポキシド)(ペンタン-2-3-ジオン)、ジルコニウム(プロポキシド)(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)、ジルコニウム(Ot-ブチル)(3-オキソブタン酸t-ブチル)、ジルコニウム(Ot-ブチル)(3-オキソブタン酸t-ブチル)並びに金属塩、例えば過塩素酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム及びオキシ塩化ジルコニウム(典型的には、その金属カチオン発生源は、有機錯体として供給される)。
【0082】
典型的には、修飾金属を溶液中のシリカ担体と接触させる。
金属カチオン発生源は、その中に金属カチオン発生源が溶解する任意の溶媒中で供給されることが好ましい。好適な溶媒の例としては、水又はアルコールが挙げられる。好ましい溶媒は、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール類、ペンタノール類及びヘキサノール類である。
【0083】
そのようなアルコール性溶液中の金属塩として、金属カチオン発生源をシリカに添加することが好ましい。
1つの実施形態では、その金属カチオン発生源は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール又は2-ブタノールの1つにおけるジルコニウム(IV)アセチルアセトネート(ジルコニウム,テトラキス(2,4-ペンタンジオナト-O,O’))、ジルコニウム(ヘプタン-3,5-ジオン)、ジルコニウム(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)、ジルコニウム(IV)3-オキソブタン酸エチル、ジルコニウム(IV)3-オキソブタン酸t-ブチル又はジルコニウム(IV)i-3-オキソブタン酸プロピルの1つ又は複数の溶液として提供される。
【0084】
シリカ担体上に修飾金属を吸着させた後、溶媒を蒸発により除去することが好ましい。
任意選択的に、修飾されたシリカ担体をか焼して、その修飾された担体からすべてのリガンド又は他の有機物を除去する。
【0085】
任意の好適な手段により、修飾されたシリカに触媒金属を添加できることが当業者によって理解される。典型的には、修飾されたシリカ触媒を製造するために、修飾されたシリカを触媒金属と接触させる。
【0086】
典型的には、触媒を製造するために、修飾されたシリカ担体を、触媒金属及び塩基の塩の形態における触媒金属、例えばセシウムを含む酸性、中性又はアルカリ性の水性溶液と接触させる。代わりに、担体と、有機溶媒中の触媒金属塩の水混和性溶液とを接触させることもできる。好ましい溶媒は、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール、好ましくはメタノールである。最も好ましい溶媒は、メタノールである。触媒金属をメタノール中の塩溶液として添加することが最も好ましい。その溶液中には、低レベル、典型的には20容積%までの水が含まれ得る。
【0087】
典型的には、その触媒製造プロセスの段階時の温度、接触時間及びpHの条件は、触媒金属を用いて修飾されたシリカ担体を含浸させて、修飾されたシリカ担持触媒が形成されることを可能とするような条件である。
【0088】
この工程のための温度条件は、典型的には5~95℃、より典型的には10~80℃、最も典型的には20~70℃である。この工程のための温度は、低くとも5℃、より典型的には低くとも10℃、最も典型的には低くとも20℃であり得る。
【0089】
この工程のための、修飾された担体と、触媒金属を含む溶液との接触時間は、典型的には0.05~48時間、より典型的には0.1~24時間、最も典型的には0.5~18時間であり得る。その接触時間は、少なくとも0.05時間、より典型的には少なくとも0.1時間、最も典型的には少なくとも0.5時間であり得る。
【0090】
この工程のための触媒金属塩溶液の濃度は、多くの因子に依存し、そのような因子としては、以下のものが挙げられる:触媒金属化合物の溶解限界、修飾されたシリカ担体の多孔性、担体上への触媒金属の所望担持量並びに担体を含浸させるために使用する液体の量、pH及び触媒金属化合物の選択も含めた添加方法。溶液中の濃度は、実験によって決めることが最良である。
【0091】
触媒金属を組み入れるために好適な触媒金属の塩は、一般的には、以下のものからなる群の1つ又は複数から選択され得る:ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、炭酸水素塩、塩酸塩、硝酸塩、水酸化物及び炭酸塩、より典型的には水酸化物、酢酸塩又は炭酸塩、最も典型的には水酸化物及び/又は炭酸塩。含浸時のpHは、金属化合物と共にアンモニアを添加するか、又は適切な触媒金属化合物、例えばギ酸塩、炭酸塩、酢酸塩若しくは水酸化物、より好ましくは水酸化物若しくは炭酸塩(すべての場合において単独若しくは組合せ又は適切なカルボン酸と共に使用)を使用することにより、調節することができる。好ましい範囲にpHを調節することは、含浸の最後に満足のいく吸着をさせるために最も重要である。最も典型的には、それらの塩は、塩のアルカリ性溶液を使用して組み入れられ得る。塩自体がアルカリ性でない場合、水酸化アンモニウムのような適切な塩基を加え得る。水酸化物の塩は、本来的に塩基性であるため、1つ又は複数の上述の塩と、特定の触媒金属、例えばセシウムの水酸化物塩との混合物は、都合良く調製することができる。
【0092】
本発明の触媒金属は、任意の適切な手段により、修飾されたシリカ担体に添加できることが当業者によって理解される。任意選択的に、適切な水性塩を使用し、次いでその表面コーティングした担体を乾燥させて、担体上に化合物を析出させた後、典型的にはか焼することにより、その担体上に触媒を固定することができる。
【0093】
一般的には、修飾されたシリカ担体の乾燥は、当業者に公知の適切な方法、例えば乾燥ユニット又はオーブンによって達成される。
触媒には、典型的には0.01~25%(w/w)の水、より典型的には0.1~15%(w/w)の水、最も典型的には0.5%~5.0(w/w)の水が含まれる。
【0094】
任意選択的に、触媒金属を含む修飾されたシリカ担持触媒を乾燥又はか焼し得、か焼のプロセスは、当業者に公知である。
いくつかの場合、触媒金属を添加する前に、修飾工程で形成された担体を200~1000℃、より典型的には300~800℃、最も典型的には350~600℃でか焼する必要があり得る。修飾工程で形成された担体の好ましいか焼では、その温度は、少なくとも375℃、例えば400℃又は450℃である。か焼雰囲気は、有機残留物を二酸化炭素及び水として除去するために、典型的にはいくぶんの酸素、好適には1~30%の酸素、最も好適には2~20%の酸素を含むようにするべきである。か焼時間は、典型的には0.01~100時間、好適には0.5~40時間、最も好適には1~24時間であり得る。か焼された担体、例えばキセロゲル物質は、含浸に適した温度まで冷却するべきである。触媒活性を有する金属の添加は、か焼されていない物質について記述した方法によって実施することができるか、又は触媒担体、例えばキセロゲル担体を含浸させるために使用される他の任意の通常の方法、例えば水以外の溶媒、例えばアルコール、好適にはメタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールを使用するか、又は十分となるだけの溶液をキセロゲル担体に添加して、キセロゲル担体の細孔を充満させる初期湿潤方法によって実施することができる。この場合、触媒活性を有する金属の濃度は、先に述べた方法により、より低い濃度の溶液を過剰に使用するよりも、キセロゲル支持材に対して目標量の触媒活性を有する金属を導入するように計算する方がよい。触媒活性を有する金属の添加には、当業者に公知の任意の好ましい方法を使用することができる。ジルコニウム及び/又はハフニウムの発生源として有機錯体を使用する場合、か焼法が特に有利であり、なぜなら、セシウムを含浸させる前に有機錯化塩の少なくとも一部を除去するために、それに続く触媒調製手順を修正することが必要となる可能性があるからである。有利には、修飾された担体をか焼することにより、触媒金属:修飾金属の比率、従って必要とされる触媒金属を少なくすることができることが見出された。これは、予想外であり、本発明に対してさらなる改良を与える。
【0095】
本発明の第六の態様では、エチレン性不飽和カルボン酸又はエステル、典型的にはα,β-エチレン性不飽和カルボン酸又はエステルを製造する方法が提供され、その方法は、ホルムアルデヒド又はその適切な発生源をカルボン酸又はエステルと触媒の存在下及び任意選択的にアルコールの存在下において接触させる工程を含み、その触媒は、本明細書において定義される本発明の第一又は任意の他の態様に従うものである。
【0096】
有利には、本明細書において定義されたような修飾されたシリカを含み、且つ触媒金属を含む触媒は、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸又はエステルを、対応する酸又はエステルとメチレン発生源、例えばホルムアルデヒドとを縮合させることによって製造するための顕著に高性能の触媒であり、触媒表面の焼結を低減し、選択率を改良し、且つ高い触媒表面積を与えることも見出された。具体的には、単量体及び/又は二量体の修飾金属残基を使用したとき及び/又は修飾されたシリカ担体を触媒金属での処理前にか焼したときに高い性能が見出される。さらに、吸着法により担体上に修飾金属を組み入れるためにある種の金属錯体を使用すると、単量体及び/又は二量体の修飾金属残基の好都合な発生源が得られる。そのような発生源により、さらに修飾金属の性質を調節することが可能となり、修飾金属残基のより均質な分散が得られる。
【0097】
本発明の第四の態様のホルムアルデヒドに関連して、「その適切な発生源」という用語は、遊離のホルムアルデヒドが反応条件下でその発生源からインサイチューで生成できるか、又はその発生源が反応条件下で遊離のホルムアルデヒドと均等なものとして作用することができる、例えばホルムアルデヒドと同じ反応性の中間体を形成することが可能であり、均等な反応が起きるかのいずれかを意味する。
ホルムアルデヒドの適切な起源物質は、式(I):
【0098】
【化1】
【0099】
(式中、R及びRは、独立して、C~C12炭化水素又はHから選択され、Xは、Oであり、nは、1~100の整数であり、及びmは、1である)の化合物であり得る。
【0100】
典型的には、R及びRは、独立して、本明細書において定義されるようなC~C12アルキル、アルケニル若しくはアリール、またHから、より好適にはC~C10アルキル又はHから、最も好適にはC~Cアルキル又はHから、特にメチル又はHから選択される。典型的には、nは、好ましくは、1~10、より好適には1~5、特に1~3の整数である。
【0101】
しかしながら、トリオキサンを含めて他のホルムアルデヒドの起源物質を使用し得る。
従って、適切なホルムアルデヒドの起源物質としては、ホルムアルデヒドの起源物質を与えることが可能な各種の平衡組成物も挙げられる。そのようなものの例としては、ジメトキシメタン、トリオキサン、ポリオキシメチレンR-O-(CH-O)-R(式中、R及び/又はRは、アルキル基又は水素であり、i=1~100である)、パラホルムアルデヒド、ホルマリン(ホルムアルデヒド、メタノール、水)並びに他の平衡組成物、例えばホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0102】
ポリオキシメチレンは、ホルムアルデヒドとメタノールとの高級ホルマール又はヘミホルマールで、CH-O-(CH-O)-CH(「ホルマール-i」)又はCH-O-(CH-O)-H(「ヘミホルマール-i」)(ここで、i=1~100、好適には1~5、特に1~3である)であるか、又は少なくとも1個の非メチルの末端基を有する他のポリオキシメチレンである。従って、ホルムアルデヒドの起源物質は、式R31-O-(CH-O-)32のポリオキシメチレンであり得る(ここで、R31及びR32は、同一の基又は異なる基であり得、少なくとも1つは、C~C10アルキル基から選択され、例えばR31=イソブチル、R32=メチルである)。
【0103】
一般的には、ホルムアルデヒドの適切な起源物質は、以下のものから選択される:ジメトキシメタン、ホルムアルデヒドとメタノールとの低級ヘミホルマール、CH-O-(CH-O)-H(ここで、i=1~3である)、ホルマリン又はホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物。
【0104】
典型的には、「ホルマリン」という用語は、ホルムアルデヒド:メタノール:水の比率が25~65重量%:0.01~25重量%:25~70重量%である混合物を意味する。より典型的には、「ホルマリン」という用語は、ホルムアルデヒド:メタノール:水の比率が30~60重量%:0.03~20重量%:35~60重量%である混合物を意味する。最も典型的には、「ホルマリン」という用語は、ホルムアルデヒド:メタノール:水の比率が35~55重量%:0.05~18重量%:42~53重量%である混合物を意味する。
【0105】
典型的には、そのホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物は、重量で5%未満の水のみを含む。より好適には、そのホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物は、重量で1%未満の水のみを含む。最も好適には、そのホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物は、重量で0.1~0.5%の水のみを含む。
【0106】
本発明の第七の態様では、エチレン性不飽和酸又はエステルを調製するためのプロセスが提供され、そのプロセスは、式R-CH-COOR(式中、R1は、水素又は1~12個、より好適には1~8個、最も好適には1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、及びR3も、独立して、水素又は1~12個、より好適には1~8個、最も好適には1~4個の炭素原子を有するアルキル基である)のアルカン酸又はエステルを、ホルムアルデヒド又は以下で定義される式(I):
【0107】
【化2】
【0108】
(式中、R5は、メチルであり、且つR6は、Hであり;
Xは、Oであり;
mは、1であり;及び
nは、1~20の任意の値である)
のホルムアルデヒドの適切な発生源又はそれらの任意の混合物と、本発明の任意の態様に記載の触媒の存在下及び任意選択的にアルカノールの存在下において接触させることを含む。
【0109】
従って、本発明者らは、本発明において金属酸化物残基の形態であるジルコニウム及び/又はハフニウムを有することにより、エチレン性不飽和カルボン酸を形成させるための、メチレン発生源、例えばホルムアルデヒドとカルボン酸又はアルキルエステル、例えばプロピオン酸メチルとの縮合のための選択率に驚くべき改良をもたらすことが可能となることを発見した。加えて、縮合反応時の触媒表面の焼結速度が顕著に且つ驚くほど低下する。
【0110】
従って、本発明の触媒が特に有利であることが判明した1つの具体的なプロセスが、MMAを製造するための、メタノールの存在下におけるホルムアルデヒドとプロピオン酸メチルとの縮合反応である。
【0111】
MMAの製造の場合、その触媒は、典型的には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物と接触する。
本発明の第六又は第七の態様のプロセスは、アクリル酸及びアルクアクリル酸並びにそれらのアルキルエステル並びにさらにメチレン置換されたラクトンを製造するのに特に好適である。好適なメチレン置換されたラクトンとしては、それぞれバレロラクトン及びブチロラクトンからの2-メチレンバレロラクトン及び2-メチレンブチロラクトンが挙げられる。好適な(アルク)アクリル酸及びそれらのエステルは、典型的には、触媒の存在下での対応するアルカン酸又はそれらのエステルとメチレン発生源、例えばホルムアルデヒドとの反応からの(C0~8アルク)アクリル酸又は(C0~8アルク)アクリル酸アルキル、好適にはメタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル又はアクリル酸ブチル、より好適には特にそれぞれプロパン酸又はプロピオン酸メチルからのメタクリル酸又はメタクリル酸メチル(MMA)の製造である。従って、メタクリル酸メチル又はメタクリル酸の製造において、好ましい式R-CH-COORのエステル又は酸は、それぞれプロピオン酸メチル又はプロピオン酸であり、従って好ましいアルカノールは、メタノールである。しかしながら、他のエチレン性不飽和酸又はエステルの製造では、その好ましいアルカノール又は酸は、別のものであろうことが理解されるであろう。
【0112】
本発明の反応は、バッチ反応又は連続反応であり得る。
本発明の第六又は第七の態様のプロセスにおける温度及びゲージ圧の典型的な条件は、100℃~400℃、より好ましくは200℃~375℃、最も好ましくは275℃~360℃;並びに/又は0.001MPa~1MPa、より好ましくは0.03MPa~0.5MPa、最も好ましくは0.03MPa~0.3MPaである。触媒の存在下における反応剤の典型的な滞留時間は、0.1~300秒、より好ましくは1~100秒、最も好ましくは2~50秒、特に3~30秒である。
【0113】
本発明において製品を製造するためのプロセスにおいて使用する触媒の量を厳密に規定する必要はないが、それを採用したプロセスの実用性から決まるであろう。しかしながら、触媒の量は、一般的には、最適の選択率、製品収量及び受容可能な操作温度が得られるように選択される。それにも関わらず、当業者であれば、触媒表面に対して反応剤の効果的な接触がもたらされるのに十分な最小限の触媒の量とするべきであることを理解するであろう。加えて、当業者であれば、反応剤に対する触媒の量に実質的に上限がないであろうこと、しかし、実際には、これは、必要とされる接触時間及び/又は経済的観点にも支配される可能性があることも理解するであろう。
【0114】
本発明の第六又は第七のプロセスにおける反応物質の相対的な量は、広い限度内で変化させることが可能であるが、一般的には、ホルムアルデヒド又は適切なその発生源のカルボン酸又はエステルに対するモル比は、20:1~1:20、より好適には5:1~1:15の範囲内である。その最も好ましい比率は、ホルムアルデヒドの形態と、ホルムアルデヒド性化学種からホルムアルデヒドを放出させる触媒の能力とに依存するであろう。従って、R31O-(CH-O)32におけるR31及びR32の一方又は両方がHであるような高い反応性を有するホルムアルデヒド性物質は、比較的低い比率のみを必要とし、典型的には、この場合、ホルムアルデヒド又は適切なその発生源のカルボン酸又はエステル対するモル比は、1:1~1:9の範囲内である。例えば、CHO-CH-OCH又はトリオキサンにおけるように、R31及びR32のいずれもHでない場合、より高い比率、典型的には6:1~1:3が最も好ましい。
【0115】
上述のように、ホルムアルデヒドの発生源が原因でその反応混合物中に水も存在する可能性がある。ホルムアルデヒドの発生源に依存して、触媒反応前にそれから水を部分的又は全面的に除去する必要がある可能性もある。ホルムアルデヒドの発生源における水のレベルよりも低いレベルに維持すると、触媒効率及び/又はそれに続く反応生成物の精製に有利となる可能性がある。反応器中における水が10モル%未満である場合に好ましく、より好適には5モル%未満、最も好適には2モル%未満である。
【0116】
アルコールの酸又はエステルに対するモル比は、典型的には20:1~1:20の範囲内、好ましくは10:1~1:10、最も好ましくは5:1~1:5、例えば1:1.5である。しかしながら、最も好ましい比率は、触媒にフィードされる反応剤中の水の量に反応によって生成する量を加えたものに依存するであろうため、反応におけるアルコールの全部の水に対する好ましいモル比は、少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも2:1となるであろう。
【0117】
第六又は第七の態様の反応物質は、独立して又は予備混合後に反応器にフィードされ得、またその反応のプロセスは、連続法又はバッチ法であり得る。典型的には、しかしながら、連続プロセスが使用される。
【0118】
典型的には、本発明の第六又は第七の態様の方法は、反応剤が気相状態にあるときに実施される。
さらなる態様では、本発明は、本明細書における関連態様のいずれかに従って最初に触媒を製造する工程を含む、本明細書における関連態様のいずれかに従ったエチレン性不飽和カルボン酸又はエステルを製造するプロセスに拡張される。
定義
本明細書において使用する場合、「アルキル」という用語は、特に断らない限り、C~C12アルキルを意味し、メチル、エチル、エテニル、プロピル、プロペニル、ブチル、ブテニル、ペンチル、ペンテニル、ヘキシル、ヘキセニル、ヘプチル基が含まれ、典型的には、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル、より典型的にはメチルから選択される。特に断らない限り、アルキル基は、十分な炭素数が存在する場合、直鎖状又は分岐状であり得、環状、非環状又は部分的に環状/非環状であり得、非置換であるか、置換されているか、又はハロ、シアノ、ニトロ、-OR19、-OC(O)R20、-C(O)R21、-C(O)OR22、-NR2324、-C(O)NR2526、-SR29、-C(O)SR30、-C(S)NR2728、非置換若しくは置換アリール又は非置換若しくは置換Hetから選択される1個又は複数の置換基の末端を有し得(ここで、R19~R30は、ここで及び一般的には本明細書において、それぞれ独立して、水素、ハロ、非置換若しくは置換アリール又は非置換若しくは置換アルキルを表すか、又はR21の場合、ハロ、ニトロ、シアノ及びアミノを表す)及び/又は1個又は複数(典型的には4個未満)の酸素、硫黄、ケイ素原子又はシラノ若しくはジアルキルシリコン基によって中断されているか、又はそれらの混合物である。典型的には、アルキル基は、非置換であり、典型的には直鎖状であり、且つ典型的には飽和である。
【0119】
「アルケニル」という用語は、上述の「アルキル」と理解するべきであるが、ただし、その中の少なくとも1つの炭素-炭素結合が不飽和であり、従って、この用語は、C~C12アルケニル基に関する。
【0120】
「アルク」又はこれと類似の用語は、相反する情報がない限り、上述の「アルキル」の定義に従うものとするが、ただし、「Cアルク」は、アルキルで置換されていないことを意味する。
【0121】
本明細書において使用する場合、「アリール」という用語には、5員~10員、典型的には5員~8員の、炭素環芳香族又はプソイド芳香族基、例えばフェニル、シクロペンタジエニル及びインデニルアニオン及びナフチルが含まれるが、それらの基は、非置換であり得るか、又は以下のものから選択される1個又は複数の置換基によって置換され得る:非置換若しくは置換アリール、アルキル(その基自体が非置換であるか、置換されるか、又は本明細書において定義されるような末端基を有し得る)、Het(その基自体が非置換であるか、置換されるか、又は本明細書において定義されるような末端基を有し得る)、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR29、C(O)SR30又はC(S)NR2728(ここで、R19~R30は、それぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換アリール若しくはアルキル(そのアルキル基自体が非置換であるか、置換されるか、又は本明細書において定義されるような末端基を有し得る)であるか、又はR21の場合、ハロ、ニトロ、シアノ又はアミノである)。
【0122】
本明細書において使用する場合、「ハロ」という用語は、クロロ、ブロモ、ヨード又はフルオロ基、典型的にはクロロフルオロを意味する。
本明細書において使用する場合、「Het」という用語には、4員~12員、典型的には4員~10員の環構造が含まれるが、それらの環には、窒素、酸素、硫黄及びそれらの混合物から選択される1個又は複数のヘテロ原子が含まれ、またその環には、1個又は複数の二重結合をまったく含まないか、又は性質として非芳香族、部分的に芳香族又は全面的に芳香族であり得る。その環構造は、単環、2環又は縮合環であり得る。本明細書において特定されるそれぞれの「Het」基は、非置換であり得るか、又は以下のものから選択される1個又は複数の置換基によって置換され得る:ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アルキル(そのアルキル基自体が非置換であるか、置換されるか、又は本明細書において定義されるような末端基を有し得る)、-OR19、-OC(O)R20、-C(O)R21、-C(O)OR22、-N(R23)R24、-C(O)N(R25)R26、-SR29、-C(O)SR30又は-C(S)N(R27)R28(ここで、R19~R30は、それぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換アリール若しくはアルキル(そのアルキル基自体が非置換であるか、置換されるか、又は本明細書において定義されるような末端基を有し得る)であるか、又はR21の場合、ハロ、ニトロ、アミノ又はシアノである)。従って、「Het」という用語には、例えば任意選択的に置換された以下の基が含まれる:アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリル、インドリル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリダジニル、モルホリニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、ピペリジニル、ピラゾリル及びピペラジニル。Hetにおける置換は、Het環の炭素原子、適切である場合、1個又は複数のヘテロ原子のところであり得る。
【0123】
「Het」基は、さらに、Nオキシドの形態であり得る。
本発明の第四及び第五の態様の触媒反応において使用される任意選択的に好適なアルコールは、C~C30アルカノール(アリールアルコールを含む)から選択され得、それらは、任意選択的に、以下のものから選択される1個又は複数の置換基によって置換され得る:本明細書において定義されるようなアルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)NR2728、SR29又はC(O)SR30。特に好ましいアルカノールは、C~Cアルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブチルアルコール、フェノール、n-ブタノール及びクロロカプリルアルコール、特にメタノールである。モノアルカノールが最も好ましいが、典型的には、ジオール~オクタオール、例えばジオール、トリオール、テトラオールから選択されるポリアルカノール並びに糖類を使用し得る。典型的には、そのようなポリアルカノールは、以下のものから選択される:1、2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、グリセロール、1,2,4-ブタントリオール、2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、ペンタエリスリトール、1,1,1-トリ(ヒドロキシメチル)エタン、ナノース、ソルベース、ガラクトース及び他の糖類。好ましい糖類としては、スクロース、フルクトース及びグルコースが挙げられる。特に好ましいアルカノールは、メタノール及びエタノールである。最も好ましいアルカノールは、メタノールである。アルコールの量は、厳密なものではない。一般的には、エステル化される基質の量よりも過剰な量が使用される。従って、アルコールは、反応溶媒としても役立ち得るが、必要に応じて別の溶媒又はさらなる溶媒を使用し得る。
【0124】
「エージング」という用語は、例えば、特許出願国際公開第2009/003722号パンフレットに記載されている。エージングの一般的な原理は、次の文献に記載されている:The Chemistry of Silica:Solubility,Polymerisation,Colloid and Surface Properties and Biochemistry of Silica,by Ralph K Iler,1979,John Wiley and Sons Inc.(ISBN 0-471-02404-X),pages 358~364。この工程を採用する場合、次いでそのヒドロゲルをもう一度洗浄して、エージングプロセスで使用された物質を除去し、その溶液を、触媒活性を有する金属を添加するための正しいpH(これは、触媒活性を有する金属のための塩の選択に依存する)にする。
【0125】
本発明の任意の態様又はその任意の好ましい若しくは任意の特徴の金属、金属酸化物及び金属酸化物残基は、それぞれジルコニウム又はハフニウム及びジルコニア又はハフニアであり得るが、それらは、典型的には、ジルコニウム及びジルコニア並びにジルコニアの残基である。
【0126】
本明細書で使用するとき、「ゲル」という用語も当業者に公知であるが、疑念を抱くのであれば、その内部に流体が分散されている固形のネットワークであると受け取り得る。一般的には、ゲルは、その中に流体が分散されているポリマーのネットワークである。「共ゲル」は、ポリマー性ネットワーク、通常、シリカ及び金属酸化物又は塩、例えばジルコニア中に2つ以上の元々の化合物/残基が組み入れられていることを示すために使用される用語である。従って、共ゲル化は、本明細書では、共ゲルの生成を意味する。
【0127】
従って、ゲルは、「セット」を有するゾルである。従って、ヒドロゲルは、その流体が水である、本明細書において定義されたゲルである。キセロゲルは、乾燥させて流体を除去したゲルである。エーロゲルは、その流体をガスで置き換えたゲルであり、従ってキセロゲルと同じような収縮を示さない。
【0128】
本明細書において、「開始」という用語は、修飾されたシリカの生成が始まることを意味する。
「残基」という用語は、金属に関連して本明細書で使用するとき、修飾された担体上の修飾金属の形態を指すのに使用される。修飾金属は、一般的には、ネットワークの一部を構成し、その修飾金属は、シリカ基材上でばらばらの残留物の形態であろう。「合計して2個までの金属原子」又はそれと類似の言及をした場合、その残留物の単量体及び/又は二量体の形態を指していると受け取るべきである。本明細書における本発明の態様において、好適には、単量体の残留物の形態である残基を有することが有利であることが見出された。従って、「2個までの修飾金属原子」又はそれと類似の言及は、本明細書では、合計して1個及び/又は2個の修飾金属原子を意味する。本明細書では、2個の修飾金属原子より1個が好ましく、特に好ましいのは、前記残基中の合計して1個及び/又は2個のジルコニウム原子であり、最も特にその残基中の1個のジルコニウム原子である。
【0129】
「単量体又は二量体の」という用語は、シリカ上の残留物の場合、単量体状又は二量体状の形態を有し、すなわち単量体又は二量体の残留物の形態を有することを意味する。
修飾金属の%は、本明細書では、単位を有しておらず、なぜなら、それは、金属原子の総数あたりのある金属原子の数を指しているからである。残基は、非単量体又は非二量体のクラスターの形態を取り得るが、それらのクラスターは、依然として修飾金属原子で作られていることが理解されるであろう。
【0130】
ここで、本発明の実施形態を、添付の例及び以下の図面を参照することによって定義する。
【図面の簡単な説明】
【0131】
図1】Zr修飾されたシリカ(実施例5)についてのHRTEM画像を示す。
図2】Zr修飾されたシリカ(実施例7)についてのHRTEM画像を示す。
図3】Zr修飾されたシリカ(実施例14)についてのHRTEM画像を示す。
図4】Zr修飾されたシリカ(実施15)についてのHRTEM画像を示す。
図5】Zr修飾されたシリカ(実施17)についてのHRTEM画像を示す。
図6】Zr修飾されたシリカ(実施18)についてのHRTEM画像を示す。
図7】実施例20~実施例74で調製した触媒についての(MMA+MAA)選択率(%)対触媒活性を示す。
図8】実施例75~実施例79で調製した混合単量体/三量体触媒についての触媒選択率を示す。
図9】実施例81に記載の加速エージング試験によって求めた触媒焼結定数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0132】
実験
シリカ担体の説明
実施例1
Fuji Silysia CARiACT Q10シリカ(Q10)を実験室用オーブン中、160℃で16時間かけて乾燥させ、その後、それをオーブンから取り出し、それをデシケーター中において密閉フラスコ内で室温まで冷却した。このシリカは、窒素の吸着/脱着等温分析(Micromeretics Tristar II)で求めて、333m/gの表面積、1.0mL/gの細孔容積及び10nmの平均細孔直径を有していた。TGA分析から0.8OH/nmのシラノール数であることが見出された。このシリカは、主として、2~4mmの直径範囲にある球状のシリカのビーズ状成形物からなる。
実施例2
Fuji Silysia CARiACT Q30シリカ(Q30)を管状炉内において、窒素気流下、5℃/分の昇温速度を用い、900℃で5時間かけてか焼した。次いで、それを冷却して室温として、デシケーター中の密閉フラスコ内で貯蔵した。このシリカは、112m/gの表面積、1.0mL/gの細孔容積、30nmの平均細孔直径を有していたが、主として、2~4mmの直径範囲にある球状のシリカのビーズ状成形物からなる。
シリカ担体のZr修飾
実施例3(0.92重量%Zr、Q10上、単量体のZr)
0.542gのZr(acac)(97%、Sigma Aldrich)を11mLのMeOH(99%、Sigma Aldrich)中に溶解させた。分離フラスコ内で実施例1からのシリカ10gを秤込んだ。次いで、その秤込んだシリカをZr(acac)溶液に撹拌しながら添加した。全部のZr(acac)溶液がシリカの細孔容積中に完全に取り込まれるまで撹拌を続けた。細孔への充填が完了したら、そのZr修飾されたシリカを定期的に撹拌しながら密閉フラスコ内に16時間放置した。その時間が過ぎたら、濾過により、過剰多孔質溶液を除去した。それに続けて乾燥工程を実施したが、その場合、濡れているZr修飾されたシリカ上に室温で窒素ガス気流を通すことにより、多孔質内の有機溶媒を除去した。代わりに、減圧下、ロータリーエバポレーター上で多孔質内の溶媒を除去した。溶媒がすべて除去されたら、そのZr修飾されたシリカ担体を管状炉内において流通空気下(1L/分)、500℃でか焼したが、昇温速度は、5℃/分であり、最終的な保持時間は、5時間であった。冷却すると、Zrグラフトされたシリカ担体が100%のZr使用効率で得られた。Zr修飾された担体上へのZr担持量(重量%)は、粉末エネルギー分散X線蛍光分析(Oxford Instruments X-Supreme8000)により求めた。
実施例4(1.5重量%Zr、Q10上、単量体のZr)
実施例3に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、0.874gのZr(acac)を使用した。
実施例5(2.3重量%Zr、Q10上、単量体のZr)
実施例3に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、1.38gのZr(acac)を使用し、MeOHに代えて20mLの1-PrOH(99%、Sigma Aldrich)を使用した。加えて、16時間のエージング工程にわたって撹拌を続けた後、溶媒を除去した。これにより、90%のZr使用効率が得られた。
実施例6(2.7重量%Zr、Q10上、単量体のZr)
実施例5に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、1.67gのZr(acac)を使用し、1-PrOHに代えて20mLのMeOH(99%、Sigma Aldrich)を使用した。これにより、89%のZr使用効率が得られた。
実施例7(4.2重量%Zr、Q10上、単量体のZr)
実施例5に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、2.56gのZr(acac)を使用し、1-PrOHに代えて20mLのトルエン(99%、Sigma Aldrich)を使用した。これにより、93%のZr使用効率が得られた。
実施例8(0.7重量%Zr、Q30上、単量体のZr)
実施例6に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、0.43gのZr(acac)を使用し、実施例2からのシリカを使用した。これにより、93%のZr使用効率が得られた。
実施例9(1.1重量%Zr、Q10上、単量体のZr)
実施例5に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、2.15gのZr(thd)を使用し、1-PrOHに代えて20mLのMeOHを使用した。これにより、47%のZr使用効率が得られた。
実施例10(2.2重量%Zr、Q10上、単量体のZr)
実施例9に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、MeOHに代えて、20mLのトルエンを使用した。これにより、93%のZr使用効率が得られた。
実施例11(3.9重量%Zr、Q10上、単量体のZr)
実施例5に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、3.19gのZr(EtOAc)を使用し、1-PrOHに代えて20mLのヘプタン(99%、Sigma Aldrich)を使用した。これにより、86%のZr使用効率が得られた。
実施例12(6.7重量%Zr、Q10上、二量体のZr)
実施例5に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、3.12gの[Zr(OPr)(acac)]2を使用し、1-PrOHに代えて20mLのヘプタンを使用した。これにより、95%のZr使用効率が得られた。
実施例13(2.2重量%Zr、Q30上、三量体のZr)(比較例)
1.16gのZr(nOPr)(1-プロパノール中70重量%、Sigma Aldrich)を使用した。さらに、実施例1からのシリカに代わる10gの実施例2からのシリカを除いて、実施例5に記載したようにして担体修飾を実施した。これにより、100%のZr使用効率が得られた。
実施例14(6.0重量%Zr、Q10上、三量体のZr)(比較例)
3.35gのZr(nOPr)(1-プロパノール中70重量%、Sigma Aldrich)を除いて、実施例5に記載したようにして担体修飾を実施した。これにより、100%のZr使用効率が得られた。
実施例15(8.0重量%Zr、Q10上、五量体のZr)(比較例)
実施例5に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、2.67gのジルコニウム(IV)エトキシド(97%、Sigma Aldrich)を、1.77gの酢酸(氷酢酸、Sigma Aldrich)と共に、1-PrOHに代えて20mLのエタノール(無水、Sigma Aldrich)に溶解させた。これにより、100%のZr使用効率が得られた。
シリカ担体のHf修飾
実施例16(5.4重量%Hf、Q10上、単量体のHf)
実施例5に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、1.37gのHf(iOPr)(99%、Sigma Aldrich)を、1.32gのアセチルアセトン(99%、Sigma Aldrich)と共に20mLの1-PrOH中に溶解させ、30分間混合させてから、10gの実施例1からのシリカを導入した。これにより、98%のHf使用効率が得られた。
実施例17(7.8重量%Hf、Q10上、単量体のHf)
実施例5に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、2.00gのHf(iOPr)を、1.93gのアセチルアセトンと共に20mLのトルエン中に溶解させ、30分間混合させてから、10gの実施例1からのシリカを導入した。これにより、100%のHf使用効率が得られた。
実施例18(11.8重量%Hf、Q10上、三量体のHf)(比較例)
実施例5に記載したようにして担体修飾を実施したが、ただし、3.19gのHf(iOPr)を1-PrOHに代えて20mLのトルエン中に溶解させた。これにより、100%のHf使用効率が得られた。
修飾された担体のHRTEM分析
実施例19(単量体のZrのHRTEM分析)
選択された修飾されたシリカの例について、高分解能透過型電子顕微鏡法(HRTEM)分析を実施した。このために、ミクロトームを使用して、その修飾されたシリカを薄片化して、厚み100~200nmの粒子とした。それらの薄片化した粒子を銅の金網上に載せ、帯電防止のオスミウム蒸着を適用した。次いで、その搭載したサンプルを、Tecnaql G2 F20(FEI製)を使用し、透過モードで分析した。電子ビームは、加速電圧が100~300kVとなり、空間解像度が1nmになるように設定した。30μmのダイヤフラムにより、電子ビームの焦点を合わせた。HRTEM画像は、2500万倍の倍率において、1画像中に50~200個の金属ナノ粒子が含まれるようにして記録した。この分析は、修飾されたシリカ実施例5、実施例7、実施例14、実施例15、実施例17及び実施例18について実施した。それらのHRTEM画像を図1~6に示す。
修飾された担体のCs修飾
実施例20(3.2重量%Cs、0.9重量%Zr、単量体のZr)
グローブボックス内で0.458gのCsOH・HO(99.5%、Sigma Aldrich)を秤出し、20mLのMeOH:HO(9:1v/v)溶媒混合物中に溶解させた。撹拌しながら、10gの実施例3からの修飾されたシリカをそのCsOH溶液に添加した。撹拌をさらに15分続け、その後、定期的に撹拌しながら、密閉フラスコ内にサンプルを16時間放置した。その時間が過ぎたら、濾過により、過剰多孔質溶液を除去した。それに続けて乾燥工程を実施したが、その場合、濡れているZr修飾されたシリカ上に室温で窒素ガス気流を通すことにより、多孔質内の溶媒を除去した。代わりに、減圧下、ロータリーエバポレーター上で多孔質内の溶媒を除去した。この工程に続けて、触媒のビーズ状成形物を110~120℃の乾燥オーブン内に入れ、16時間放置して乾燥させた。冷却させると、これにより90%のCs使用効率でCs/Zr/SiO触媒が得られた。その触媒上へのCs担持量(重量%)は、粉末エネルギー分散X線蛍光分析(Oxford Instruments X-Supreme8000)により求めた。
実施例21(3.7重量%Cs、0.9重量%Zr、単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.534gのCsOH・HOを使用した。
実施例22(4.0重量%Cs、0.9重量%Zr、単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.588gのCsOH・HOを使用した。
実施例23(4.8重量%Cs、0.9重量%Zr、単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.716gのCsOH・HOを使用した。
実施例24(5.1重量%Cs、1.5重量%Zr、単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.754gのCsOH・HOを使用し、実施例4からの修飾されたシリカを使用した。
実施例25(5.7重量%Cs、1.5重量%Zr、単量体のZr)
実施例24に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.852gのCsOH・HOを使用した。
実施例26(6.7重量%Cs、1.4重量%Zr、単量体のZr)
実施例24に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.00gのCsOH・HOを使用した。
実施例27(7.7重量%Cs、1.4重量%Zr、単量体のZr)
実施例24に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.17gのCsOH・HOを使用した。
実施例28(9.7重量%Cs、2.0重量%Zr、単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.37gのCsOH・HOを使用し、実施例5からの修飾されたシリカを使用した。加えて、Cs吸着時間を16時間から2時間に短縮し、濾過工程を省いた。過剰の有機溶媒を、修飾されたシリカ担体の細孔容積中に乾燥させると、Cs使用効率が100%となった。
実施例29(10.2重量%Cs、2.0重量%Zr、単量体のZr)
実施例28に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.45gのCsOH・HOを使用した。
実施例30(10.8重量%Cs、2.0重量%Zr、単量体のZr)
実施例28に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.54gのCsOH・HOを使用した。
実施例31(11.3重量%Cs、2.0重量%Zr、単量体のZr)
実施例28に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.62gのCsOH・HOを使用した。
実施例32(9.2重量%Cs、2.4重量%Zr、単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.44gのCsOH・HOを使用し、実施例6からの修飾されたシリカを使用した。
実施例33(10.9重量%Cs、2.4重量%Zr、単量体のZr)
実施例32に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.74gのCsOH・HOを使用した。
実施例34(13.0重量%Cs、2.3重量%Zr、単量体のZr)
実施例32に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.12gのCsOH・HOを使用した。
実施例35(14.0重量%Cs、2.3重量%Zr、単量体のZr)
実施例32に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.30gのCsOH・HOを使用した。
実施例36(12.3重量%Cs、3.7重量%Zr、単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.00gのCsOH・HOを使用し、実施例7からの修飾されたシリカを使用した。
実施例37(12.6重量%Cs、3.7重量%Zr、単量体のZr)
実施例36に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.05gのCsOH・HOを使用した。
実施例38(13.9重量%Cs、3.6重量%Zr、単量体のZr)
実施例36に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.30gのCsOH・HOを使用した。
実施例39(15.4重量%Cs、3.6重量%Zr、単量体のZr)
実施例36に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.60gのCsOH・HOを使用した。
実施例40(2.8重量%Cs、0.7重量%Zr、単量体のZr)
実施例28に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.37gのCsOH・HOを使用し、実施例8からの修飾されたシリカを使用した。
実施例41(3.4重量%Cs、0.7重量%Zr、単量体のZr)
実施例40に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.45gのCsOH・HOを使用した。
実施例42(3.9重量%Cs、0.7重量%Zr、単量体のZr)
実施例40に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.51gのCsOH・HOを使用した。
実施例43(4.1重量%Cs、1.0重量%Zr、単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.60gのCsOH・HOを使用し、実施例9からの修飾されたシリカを使用した。
実施例44(4.6重量%Cs、1.0重量%Zr、単量体のZr)
実施例43に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.68gのCsOH・HOを使用した。
実施例45(5.5重量%Cs、1.0重量%Zr、単量体のZr)
実施例43に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.82gのCsOH・HOを使用した。
実施例46(9.1重量%Cs、2.0重量%Zr、単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.42gのCsOH・HOを使用し、実施例10からの修飾されたシリカを使用した。
実施例47(9.9重量%Cs、1.9重量%Zr、単量体のZr)
実施例46に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.55gのCsOH・HOを使用した。
実施例48(13.8重量%Cs、3.3重量%Zr、単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.28gのCsOH・HOを使用し、実施例11からの修飾されたシリカを使用した。
実施例49(15.0重量%Cs、3.3重量%Zr、単量体のZr)
実施例48に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.51gのCsOH・HOを使用した。
実施例50(14.0重量%Cs、5.7重量%Zr、二量体のZr)(比較例)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.34gのCsOH・HOを使用し、実施例12からの修飾されたシリカを使用した。
実施例51(15.0重量%Cs、5.7重量%Zr、二量体のZr)(比較例)
実施例50に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.54gのCsOH・HOを使用した。
実施例52(16.1重量%Cs、5.6重量%Zr、二量体のZr)(比較例)
実施例50に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.76gのCsOH・HOを使用した。
実施例53(17.3重量%Cs、5.5重量%Zr、二量体のZr)(比較例)
実施例50に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、3.01gのCsOH・HOを使用した。
実施例54(6.0重量%Cs、2.1重量%Zr、三量体のZr)(比較例)
実施例28に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、0.81gのCsOH・HOを使用し、実施例13からの修飾されたシリカを使用した。
実施例55(7.7重量%Cs、2.0重量%Zr、三量体のZr)(比較例)
実施例54に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.06gのCsOH・HOを使用した。
実施例56(13.6重量%Cs、5.2重量%Zr、三量体のZr)(比較例)
実施例28に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.03gのCsOH・HOを使用し、実施例14からの修飾されたシリカを使用した。
実施例57(14.9重量%Cs、5.1重量%Zr、三量体のZr)(比較例)
実施例56に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.26gのCsOH・HOを使用した。
実施例58(16.1重量%Cs、5.0重量%Zr、三量体のZr)(比較例)
実施例56に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.48gのCsOH・HOを使用した。
実施例59(17.3重量%Cs、5.0重量%Zr、三量体のZr)(比較例)
実施例56に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.70gのCsOH・HOを使用した。
実施例60(12.3重量%Cs、7.0重量%Zr、五量体のZr)(比較例)
実施例28に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.82gのCsOH・HOを使用し、実施例15からの修飾されたシリカを使用した。
実施例61(14.0重量%Cs、6.9重量%Zr、五量体のZr)(比較例)
実施例60に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.12gのCsOH・HOを使用した。
実施例62(15.7重量%Cs、6.7重量%Zr、五量体のZr)(比較例)
実施例60に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.42gのCsOH・HOを使用した。
実施例63(18.9重量%Cs、6.5重量%Zr、五量体のZr)(比較例)
実施例60に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.99gのCsOH・HOを使用した。
実施例64(8.8重量%Cs、4.9重量%Hf、単量体のHf)
実施例28に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.23gのCsOH・HOを使用し、実施例16からの修飾されたシリカを使用した。
実施例65(10.1重量%Cs、4.9重量%Hf、単量体のHf)
実施例64に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.43gのCsOH・HOを使用した。
実施例66(11.4重量%Cs、4.8重量%Hf、単量体のHf)
実施例64に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.64gのCsOH・HOを使用した。
実施例67(12.6重量%Cs、4.7重量%Hf、単量体のHf)
実施例64に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.84gのCsOH・HOを使用した。
実施例68(11.1重量%Cs、6.9重量%Hf、単量体のHf)
実施例28に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.60gのCsOH・HOを使用し、実施例17からの修飾されたシリカを使用した。
実施例69(12.7重量%Cs、6.8重量%Hf、単量体のHf)
実施例68に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、1.86gのCsOH・HOを使用した。
実施例70(14.3重量%Cs、6.7wt 5Hf、単量体のHf)
実施例68に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.14gのCsOH・HOを使用した。
実施例71(15.8重量%Cs、6.6重量%Hf、単量体のHf)
実施例68に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.41gのCsOH・HOを使用した。
実施例72(13.7重量%Cs、10.2重量%Hf、三量体のHf)(比較例)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.28gのCsOH・HOを使用し、実施例18からの修飾されたシリカを使用した。
実施例73(14.9重量%Cs、10.0重量%Hf、三量体のHf)(比較例)
実施例72に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.51gのCsOH・HOを使用した。
実施例74(16.2重量%Cs、9.9重量%Hf、三量体のHf)(比較例)
実施例72に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.77gのCsOH・HOを使用した。
実施例75(16.0重量%Cs、3.4重量%Zr、100%単量体のZr)
実施例20に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.71gのCsOH・HOを使用し、10gの実施例7からの修飾されたシリカを使用した。さらに、触媒を乾燥させた後、乳鉢と乳棒を使用してそれを摩砕し、篩別して、0.1~1.0mmのサイズ画分とした。これにより、重量%Zrを基準にして100%単量体の触媒が得られた。
実施例76(15.8重量%Cs、3.6重量%Zr、79%単量体のZr)(比較例)
実施例75に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.67gのCsOH・HOを使用した。さらに、8.5gの実施例7からの修飾されたシリカ及び1.5gの実施例14からの修飾されたシリカを触媒担体として使用した。これにより、重量%Zrを基準にして79%単量体の触媒が得られた。
実施例77(15.4重量%Cs、3.9重量%Zr、61%単量体のZr)(比較例)
実施例75に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.60gのCsOH・HOを使用した。さらに、7gの実施例7からの修飾されたシリカ及び3gの実施例14からの修飾されたシリカを触媒担体として使用した。これにより、重量%Zrを基準にして61%単量体の触媒が得られた。
実施例78(15.7重量%Cs、4.4重量%Zr、31%単量体のZr)(比較例)
実施例75に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.66gのCsOH・HOを使用した。さらに、4gの実施例7からの修飾されたシリカ及び6gの実施例14からの修飾されたシリカを触媒担体として使用した。これにより、重量%Zrを基準にして31%単量体の触媒が得られた。
実施例79(16.9重量%Cs、5.0重量%Zr、0%単量体のZr)(比較例)
実施例75に記載したようにして触媒を調製したが、ただし、2.92gのCsOH・HOを使用した。さらに、10gの実施例14からの修飾されたシリカを触媒担体として使用した。これにより、重量%Zrを基準にして0%単量体の触媒が得られた。
実施例80(触媒性能試験)
実施例20~実施例79からの触媒をプロピオン酸メチルとホルムアルデヒドとの反応について実験室規模のマイクロリアクター中で試験した。このために、3gの触媒をチューブ内径10mmの固定床反応器内に担持させた。その反応器を加熱して330℃とし、70重量%プロピオン酸メチル、20重量%メタノール、6重量%水及び4重量%ホルムアルデヒドを含む、Gilsonポンプから0.032mL/分の速度でフィードした蒸発器から蒸発させたストリームをフィードすることにより、前処理を実施した。この前処理を一夜続けた。前処理が済んでから、75.6重量%プロピオン酸メチル、18.1重量%メタノール、5.7重量%ホルムアルデヒド及び0.6重量%水を含むフィードストリームを、330℃に設定した蒸発器にGilsonポンプによってポンプ輸送してから、触媒を含む330℃に設定した加熱反応器にフィードした。反応器の出口蒸気を冷却し、凝縮させ、5つの異なる液体フィード速度(0.64~0.032mL/分)でサンプルを集めて、異なる蒸気/触媒接触時間での転化率を求めた。液体フィード物及び凝縮させた反応器出口の液状生成物について、DB1701カラムを取り付けたShimadzu 2010 Gas Chromatographによって分析した。サンプルの組成をそれぞれのクロマトグラムから求め、接触時間を変えたときの収率及び選択率を求めた。活性を、フィードしたプロピオン酸メチルに対して10%の(MMA+MAA)収率を得るのに必要となる接触時間(単位、秒)の逆数と定義し、接触時間対(MMA+MAA)収率のグラフを補間することにより求めた。次いで、この補間した接触時間を使用して、10%(MMA+MAA)収率での(MMA+MAA)選択率を得た。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
実施例81(加速エージング試験)
加速エージング試験で触媒の焼結抵抗性を評価した。このために、1gの触媒をU字管ステンレス鋼反応器内に担持させ、オーブン内に入れた。そのオーブンを加熱して385℃とし、窒素ストリーム(10mL/分)を、92℃に加熱した水を含む飽和蒸発器を通過させた。これにより、0.75barの水の分圧を有するフィードストリームが、385℃に加熱した触媒上を通過できるようになった。定期的に、窒素吸着/脱着等温分析(Micromeretics Tristar II)を使用して、触媒サンプルの表面積をエクスサイチューで求めた。測定した表面積の値を使用して、それぞれの触媒についての焼結速度定数を求め、g・m-6・d-1の単位で表した。焼結定数が高いほど、触媒の焼結抵抗性が低い。この試験は、実施例32、実施例38、実施例57及び実施例63について実施した。
【0138】
【表5】
【0139】
比較例82及び83
欧州特許第1233330号明細書に記載の実験例に従って実施例を調製した。これらの実施例において採用されたシリカは、2~4mmの範囲の直径の球の形態であるゲルシリカであり、99%を越える純度、約300~350m/gの全表面積及び1.04cm/gの細孔容積を有し、その細孔容積の76%は、7~23nmの範囲の直径を有する細孔で占められている。
【0140】
担体の細孔を充満させるのに十分な硝酸ジルコニウムの水性溶液を用いてシリカに含浸させることにより、2つの触媒を調製し、ロータリーエバポレーター中、次いで空気オーブン中、120℃で2時間かけて乾燥させた。1つの場合(実施例82)、溶液を添加する前に担体の細孔を真空引きすることにより、ジルコニウム溶液の含浸を助けた。別の場合(実施例83)、大気圧空気の下でジルコニウム溶液の含浸を実施した。次いで、炭酸セシウムの水性溶液を使用する同様の手順によってセシウムを組み入れ、(金属として表して)4重量%のセシウム含量を得た。次いで、それらの触媒を空気中、450℃で3時間かけてか焼した。
【0141】
触媒について、実施例80に記載したのと同じ条件で試験した。1つの触媒(実施例82)は、10%収率を達成することができなかったが、選択率は、得られる最高の収率(9.6%)を示している。
【0142】
【表6】
【0143】
Zr及びHfで修飾されたシリカ担体についてのHRTEM結果
Zr及びHfで修飾されたシリカの例(実施例5、実施例7、実施例14、実施例15、実施例17及び実施例18)についてのHRTEM画像(実施例19)を図1図6に示す。単量体のZr及びHfのHRTEM画像の場合、Zr又はHf粒子を明確に区別することは困難であるが、これは、修飾されたシリカ表面に存在するのが極めて細かいZr/Hfナノ粒子であることを示唆している。これは、Zr又はHfが単原子原子として存在するためである。三量体のZr及びHf並びに五量体のZrの例の場合、修飾された担体のHRTEM画像上に明瞭なZr又はHfのクラスターを区別することができる。このデータは、Zr又はHf種の溶液相の多核度が溶液から最終的な触媒配合に持ち越されていることを示している。
グラフデータ
表1及び表2から構築した活性及び選択率のデータ。
【0144】
実施例20~実施例74で調製した触媒についての(MMA+MAA)選択率(%)対触媒活性を図7に示す。このグラフから、三量体のZr及びHf、さらに五量体のZrは、検討した活性範囲全体にわたってより低い(MMA+MAA)選択率を与えることが明らかである。二量体のZr触媒は、三量体のZr触媒と比較して、同等のZr及びCs担持率で改良された選択率を示している。表3から構築した活性及び選択率のデータ。
【0145】
実施例75~実施例79で調製した混合単量体/三量体触媒についての触媒選択率を図8に示す。Zr単量体含量は、単量体として存在するZr含量の%として計算している。これらの例では、サンプルの均質性を向上させる目的で触媒を摩砕し、篩別して0.1~1.0mmの粒子とした。このグラフから、配合物中のZr単量体の量を減らすと、(MMA+MAA)選択率が低下するという結果になるであろうことが明らかである。表4から構築した焼結抵抗性のデータ。
【0146】
実施例81で述べた加速エージング試験によって求めた触媒焼結定数を図9に示す。図9から、同等の触媒活性では、単量体のZr触媒がより低い焼結速度を示すことが明らかである。
【0147】
本出願に関連する、本明細書と同時又は本明細書より前に提出され、本明細書と共に公共の閲覧に公開されているすべての論文及び文書に注意を払い、すべてのそのような論文及び文書の内容は、参考として引用され且つ本明細書に組み込まれる。
【0148】
本明細書(添付の請求項、要約書及び図面を含む)に開示されたすべての特徴及び/又はそのようにして開示された各種の方法若しくはプロセスのすべてのステップは、いかなる組合せ方法でも組み合わされ得るが、ただし、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に相容れないような組合せを除く。
【0149】
本明細書(添付の請求項、要約書及び図面を含む)に開示されたそれぞれの特徴は、同一の、均等な又は類似の目的に役立つ代替の特徴によって置き換えられ得るが、ただし、明白にそうではないと表明されている場合を除く。従って、明白にそうではないと表明されていなければ、開示されたそれぞれの特徴は、均等な又は類似の特徴の一般的な系列のみの1つの例である。
【0150】
本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の請求項、要約書若しくは図面も含む)に開示された好ましい、典型的な若しくは任意の本発明の特徴の任意の新規なもの若しくは任意の新規な組合せまで、又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスの好ましい、典型的な若しくは任意の本発明の工程の任意の新規なもの若しくは任意の新規な組合せまで拡張される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ担体及び修飾金属を含む触媒のための修飾されたシリカ担体であって、前記修飾金属は、ジルコニウム及びハフニウムのうちの少なくとも1つから選択される、修飾されたシリカ担体において、前記修飾金属の少なくとも一部は、単量体及び/又は二量体の金属酸化物の残基として存在し、又は、修飾の開始時に単量体及び/又は二量体の修飾金属のカチオン発生源から誘導されることを特徴とする、修飾されたシリカ担体。
【請求項2】
前記修飾金属の少なくとも25%は、単量体及び/又は二量体の金属酸化物の残基として存在し、又は、修飾の開始時に単量体及び/又は二量体の修飾金属のカチオン発生源から誘導される、請求項1に記載の修飾されたシリカ担体。
【請求項3】
前記修飾金属は、シリカ担体表面上に吸着されている吸着質であること、
前記修飾金属残基は、修飾金属酸化物の残基であること、
前記シリカ担体は、シリカゲルの形態であること、
前記修飾金属は、共ゲルの形態で前記担体中に存在すること、
前記修飾金属は、前記修飾されたシリカ担体中において、焼結を低減し、且つ前記触媒の選択率を改良するのに有効な量で存在すること、
存在する修飾金属のレベルは、シリカの7.6×10 -2 mol/molまでであること、
修飾金属のレベルは、シリカの0.067×10 -2 ~7.3×10 -2 mol/molであること、
存在する修飾金属のレベルは、シリカの少なくとも0.1×10 -2 mol/molであること、
前記修飾されたシリカ担体はか焼された修飾されたシリカ担体であること、
前記触媒金属は、1つ又は複数のアルカリ金属であること、
前記触媒金属は、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択されること、及び
前記担体は単離シラノール基(-SiOH)を1nm あたり2.5個未満の基のレベルで含むこと、
のうちの少なくとも1つを要件とする、請求項1又は2に記載の修飾されたシリカ担体。
【請求項4】
単量体及び/又は二量体の修飾金属カチオンは、前記修飾の開始時、前記修飾金属カチオンに結合された1つ又は複数の化学変化を起こしにくいリガンドを有する化合物中にあり、
前記化学変化を起こしにくいリガンドは、ジルコニウム原子又はハフニウム原子と共に5員環又は6員環を形成することが可能な酸素原子又は窒素原子を含有する孤立電子対を有する分子、例えばジオン、ジイミン、ジアミン、ジオール、ジカルボン酸若しくはその誘導体、又は2個の異なるそのような官能基を有し、且ついずれの場合にも前記それぞれのN若しくはO及び2個若しくは3個の原子によって分離されたN若しくはO原子と一緒になって、それにより前記5員環若しくは6員環を形成する分子から選択されること、及び
前記化学変化を起こしにくいリガンドは、前記修飾元素と共に錯体を形成すること、
のうちの少なくとも一方を要件とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体を製造する方法であって、
シラノール基を有するシリカ担体を提供する工程と、
前記シリカ担体を単量体及び/又は二量体の修飾金属化合物で処理する工程であって、それにより、修飾金属は、シラノール基との反応を通して前記シリカ担体の表面上に吸着され、前記吸着された修飾金属原子は、相互に十分に離間されて、近隣の修飾金属原子とのそのオリゴマー化を実質的に防止する、前記シリカ担体を単量体及び/又は二量体の修飾金属化合物で処理する工程と、
を備えること、及び、
前記修飾金属原子の前記離間は、
a)前記シリカ担体上のシラノール基の濃度を低下させること、及び
b)前記シリカ担体を処理する前に、十分なサイズの化学変化を起こしにくいリガンドを前記修飾金属に結合させること、のうちの少なくとも一方によって実施されること、のうちの少なくとも一方を要件とする、方法。
【請求項6】
触媒のための請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体を製造する方法であって、
i.単離されたシラノール基を有するシリカ担体を提供する工程;
ii.前記シリカ担体を単量体のジルコニウム修飾金属化合物又はハフニウム修飾金属化合物と接触させて、前記担体上において、前記単離されたシラノール基の少なくとも25%までの前記修飾金属の吸着を実施する工程を含む方法。
【請求項7】
前記シラノール基濃度は、前記修飾金属化合物での処理前にか焼処理、化学的脱水又は他の適切な方法によって低下されること、及び
前記修飾金属のカチオン発生源は、前記化合物の溶液であり、それにより、前記化合物は、前記担体上への吸着を実施するために前記担体と接触されるときに溶液中にあること、
のうちの少なくとも一方を要件とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
1つ又は複数の化学変化を起こしにくいリガンドは、前記修飾金属カチオンに結合されて、少なくとも部分的に前記化合物を形成し、且つジルコニウム原子又はハフニウム原子と共に5員環又は6員環を形成することが可能な酸素原子又は窒素原子を含有する孤立電子対を有する分子、例えばジオン、ジイミン、ジアミン、ジオール、ジカルボン酸若しくはその誘導体、又は2個の異なるそのような官能基を有し、且ついずれの場合にも前記それぞれのN若しくはO及び2個若しくは3個の原子によって分離されたN若しくはO原子と一緒になって、それにより前記5員環若しくは6員環を形成する分子から選択されること、
前記修飾金属化合物と接触されるときの前記シリカ担体上の前記シラノール濃度は、1nm あたり0.1~2.5個のシラノール基であること、及び、
前記その発生源が、前記担体上への前記化合物の吸着を実施するために前記担体と接触される場合、前記修飾金属化合物中の前記修飾金属の少なくとも30%は、単量体の修飾金属化合物におけるものであること、
のうちの少なくとも1つを要件とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記シリカ担体は、前記修飾金属化合物での処理前に乾燥又はか焼されること、
前記修飾金属化合物と接触させることによって形成された前記修飾されたシリカは、前記触媒金属の添加前に乾燥又はか焼されること、
前記シリカは、前記修飾金属化合物での処理前にゲルの形態であること、及び
前記修飾金属は、吸着により、前記シリカ担体の内部表面及び外部表面上に分散されること、
のうちの少なくとも1つを要件とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記修飾金属化合物は、有機金属錯体、例えばジルコニウム(ペンタン-2,4-ジオン) 、ジルコニウム(3-オキソブタン酸エチル) 、ジルコニウム(ヘプタン-3,5-ジオン) 、ジルコニウム(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン) 、ジルコニウム(プロポキシド)(ペンタン-2-3-ジオン) 、ジルコニウム(プロポキシド) (2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)、ジルコニウム(ブチル) (3-オキソブタン酸t-ブチル)、ジルコニウム(Ot-ブチル) (3-オキソブタン酸t-ブチル) 並びに金属塩から選択される形態であること、
前記触媒金属は、1つ又は複数のアルカリ金属であること、
前記触媒金属は、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択されること、及び
形成された前記触媒は、その後、か焼されること、
のうちの少なくとも1つを要件とする、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記修飾金属化合物は、有機金属錯体、例えばジルコニウム(ペンタン-2,4-ジオン) 、ジルコニウム(3-オキソブタン酸エチル) 、ジルコニウム(ヘプタン-3,5-ジオン) 、ジルコニウム(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン) 、ジルコニウム(プロポキシド)(ペンタン-2-3-ジオン) 、ジルコニウム(プロポキシド) (2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)、ジルコニウム(ブチル) (3-オキソブタン酸t-ブチル)、ジルコニウム(Ot-ブチル) (3-オキソブタン酸t-ブチル) 並びに金属塩から選択される形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体。
【請求項12】
修飾されたシリカ担体を製造する方法であって、
シラノール基を有するシリカ担体を提供する工程;
前記シリカ担体を単量体及び/又は二量体の修飾金属化合物で処理する工程であって、それにより、修飾金属は、シラノール基との反応を通して前記シリカ担体の表面上に吸着される、工程を含み、吸着された修飾金属原子は、相互に十分に離間されて、近隣の修飾金属原子とのそのオリゴマー化を実質的に防止する、方法。
【請求項13】
前記担体は、単離シラノール基(-SiOH)を1nm あたり2.5個未満の基のレベルで含むこと、
前記担体は、1nm あたり2.5個未満の残基のレベルで存在する前記ジルコニウム修飾金属残基又はハフニウム修飾金属残基を含むこと、
前記担体は、単離シラノール基(-SiOH)を1nm あたり0.1個超且つ2.5個未満の基のレベルで含むこと、及び
前記担体は、前記ジルコニウム修飾金属残基又はハフニウム修飾金属残基を1nm あたり0.025個超且つ2.5個未満の基のレベルで含むこと、
のうちの少なくとも1つを要件とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾されたシリカ担体。
【外国語明細書】