(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153793
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】がん療法において使用するためのデオキシシチジン誘導体又はデオキシウリジン誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7068 20060101AFI20231011BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231011BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231011BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20231011BHJP
C07H 19/073 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
A61K31/7068
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K31/513
A61K31/4188
C07H19/073
【審査請求】有
【請求項の数】38
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023113931
(22)【出願日】2023-07-11
(62)【分割の表示】P 2021544852の分割
【原出願日】2020-02-03
(31)【優先権主張番号】1901427.3
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】521339120
【氏名又は名称】ヘミスフィリアン・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ブライアン・ロベルトソン
(72)【発明者】
【氏名】テレジア・プリクリュロヴァ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象においてヒトタンパク質シチジンデアミナーゼ(CDA)が過剰発現していない癌の処置または予防のための薬剤を提供する。
【解決手段】式(IIa):
の化合物、またはその薬学的に許容される塩からなる薬剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
療法において使用するための、式(I):
【化1】
[式中、
Xは、アルデヒド、アルコール、保護されたアルコール、エーテル、エステル及びカルボン酸から選択される少なくとも1つの官能基を含有する、1から20個までの非水素原子を含有する基であり、但し、Xは、-COOHではなく、
W
1及びW
2は、それぞれ独立して、O、S又はNHであり、
Yは、H、又は1から15個までの非水素原子を含有する基であり、
Zは、-OPG、-OR
z又は-N(R
xR
y)であり、ここで、R
x、R
y及びR
zは、独立して、H、又は1から10個までの非水素原子を含有する基であり、
R
1は、H、又は1から15個までの非水素原子を含有する基であり、
R
2は、H、-OH、-OPG、-F、-Cl、-Br、-I又は-N
3であり、
R
3は、H、-F、-Cl、-Br、-I又は-N
3であり、
ここで、PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)又はベンゾイル(Bz)等のアルコール保護基である]
の化合物、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がんの処置又は予防において使用するための、式(I):
【化2】
[式中、
Xは、アルデヒド、アルコール、保護されたアルコール、エーテル、エステル及びカルボン酸から選択される少なくとも1つの官能基を含有する、1から20個までの非水素原子を含有する基であり、但し、Xは、-COOHではなく、
W
1及びW
2は、それぞれ独立して、O、S又はNHであり、
Yは、H、又は1から15個までの非水素原子を含有する基であり、
Zは、-OPG、-OR
z又は-N(R
xR
y)であり、ここで、R
x、R
y及びR
zは、独立して、H、又は1から10個までの非水素原子を含有する基であり、
R
1は、H、又は1から15個までの非水素原子を含有する基であり、
R
2は、H、-OH、-OPG、-F、-Cl、-Br、-I又は-N
3であり、
R
3は、H、-F、-Cl、-Br、-I又は-N
3であり、
ここで、PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)又はベンゾイル(Bz)等のアルコール保護基である]
の化合物、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項3】
式(IIa)若しくは式(IIb)、好ましくは式(IIa):
【化3】
[式中、X、R
1及びR
2は、請求項1又は請求項2に規定の通りである]
の化合物、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である、請求項1又は請求項2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)若しくは(IIId)、好ましくは式(IIIa)若しくは(IIIc):
【化4】
[式中、Xは、請求項1又は請求項2に規定の通りである]
の化合物、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
Xが、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6までであり、X'は、-CHO、-OH、-OR又は-OC(=O)Rであり、ここで、Rは、メチルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
Xが、2から20個までの非水素原子を含有する基である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
Xが、-COOHでも-OHでもない、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
Xが、
a)-CHO若しくは-CH2OH、又は
b)-CH2OCH3若しくは-CH2OC(=O)CH3
である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
Xが、-CHO又は-CH2OHである、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
Xが、CH2OHである、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
Zが、-NH2である、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
5-ホルミル-2'-デオキシシチジン、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン、5-メトキシメチル-2'-デオキシウリジン、5-アセトキシメチル-2'-デオキシウリジン、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸若しくは5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
5-ホルミル-2'-デオキシシチジン若しくは5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である、請求項12に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である、請求項13に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
がんが、外胚葉、沿軸中胚葉又は側板中胚葉に、好ましくは外胚葉に由来する組織のがんである、請求項2から14のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
がんが、中枢神経系のがん、好ましくは脳がんである、請求項2から15のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
がんが、神経膠腫、好ましくは膠芽細胞腫である、請求項2から16のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項18】
がんが、CDAが過剰発現されていないがんであり、好ましくは、前記がんが、100万あたりの転写産物(TPM)140以下のレベルでCDAを発現する、請求項2から17のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項19】
がんにおけるCDA発現レベルが、同じ条件下で同じ方法を使用して決定した際に、参照がん細胞株におけるCDA発現レベルの90%以下であり、ここで、前記参照がん細胞株は、MDA-MB-231である、請求項2から18のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項20】
がんが、ゲムシタビン、シタラビン、テモゾロミド又は5-フルオロウラシルによる処置に対して抵抗性である、請求項2から19のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項21】
前記処置が、前記化合物を10mg/kgから405mg/kgの間の用量で投与することを含む、請求項2から20のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項22】
前記処置が、更なる抗がん剤の投与を更に含む、請求項2から21のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項23】
がんの処置又は予防において使用するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物と、更なる抗がん剤とを含む、キット。
【請求項24】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物と、場合により更なる抗がん剤とを、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む、医薬組成物。
【請求項25】
更なる抗がん剤が、ゲムシタビン、シタラビン、テモゾロミド、5-フルオロウラシル及びギリアデル(gliadel)(登録商標)からなる群から選択される、請求項22に記載の使用のための化合物、請求項23に記載のキット、又は請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
対象においてがんを処置する又は予防する方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物を、前記対象に投与する工程を含み、前記がんが、請求項2又は15から17のいずれか一項に規定の通りであり、前記処置が、請求項2、21、22又は25のいずれか一項に規定の通りである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、療法において、特にがんの処置又は予防において使用するための化合物に関する。本発明は、そのような化合物を含む医薬製剤、及び療法における、特にがんの処置又は予防におけるそのような医薬製剤の使用にも関する。本発明は、公知の抗がん剤との組合せ処置のためのそのような化合物にも関する。故に、本発明は、単独及び1つ又は複数の追加の又は更なる抗がん剤と組み合わせたもの両方の、本発明の化合物のがん処置又は予防における使用に関する。本発明は、本発明の化合物を、単独で又は1つ若しくは複数の更なる抗がん剤と組み合わせてのいずれかで使用して、がんを処置又は予防する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、細胞成長及び増殖の適切な制御の喪失を特徴とする疾患である。米国がん協会は、2010年にはアメリカ合衆国内において150万を上回るがんの新たな症例があったと推定しており、その年のおよそ570,000人の死亡ががんに起因すると推定される。世界保健機構は、2010年においてがんが地球規模で死因の第1位であり、がんによって引き起こされる死者数は2030年までに年間1200万人になると推定している。
【0003】
利用可能な多数の療法があるが、公知の抗がん薬に対する抵抗性は、患者におけるがんの処置成功において問題となりうる。更なるがん療法が依然として必要である。
【0004】
一部の文脈において、広範囲のがん細胞型を死滅させることができる抗がん剤が望ましい。フルオロウラシル(5-FU)は、広範囲のがんの処置のために日常的に投与されるそのような抗がん剤の一つである。
【0005】
しかしながら、広範囲のがん細胞型を死滅させることができる多くの抗がん剤は、非がん性細胞、例えば分裂している正常で健康な細胞も死滅させる。これは一部の文脈において問題であり、そのため、非がん性細胞に対して細胞毒性ではない、広く細胞毒性の抗がん剤も必要である。加えて、より特異的な細胞毒性を持つ、すなわち、より狭い範囲のがん細胞型を死滅させる、抗がん剤が必要である。そのようなより特異的な抗がん剤は、望ましくないオフターゲット効果を有する可能性が低い。
【0006】
多形性膠芽腫は、中枢神経系の最も一般的且つ侵襲性のがんである。多形性膠芽腫は、小児において二番目に多いがんである。多形性膠芽腫と診断された成人には、腫瘍学において最も満たされていないニーズが幾つか存在する。現在利用可能な処置を用いると、診断からの平均生存は、14.6か月である。多形性膠芽腫と診断された患者のうち、5年より長く生存するのは5%未満である。多形性膠芽腫診断後の長期生存は希少であり、小児においてより一般的である。
【0007】
現在の療法は、大部分は緩和的であり、生活の質を改善するように設計される。診断後、現在の多形性膠芽腫処置は、類似の経過をたどる:患者が手術を切り抜けると期待される罹患した脳領域の外科的切除、続いて、放射線及び化学療法。多形性膠芽腫は、罹患した脳内に触手様構造を形成し、したがって、指示された場合であっても、完全な外科的切除が困難な及び多くの場合不可能である。外科的介入及び放射線療法の他には、3つの薬物が多形性膠芽腫処置のために承認されている:
1)アバスチン(Avastin)(登録商標)(ベバシズマブ)-複数の腫瘍学適応症を持つ血管新生阻害剤。アバスチン(Avastin)(登録商標)は、腫瘍内の新たな血管の発生を阻害し、腫瘍を効果的に飢えさせることにより、腫瘍成長を阻害すると考えられている。アバスチン(Avastin)(登録商標)は米国及び日本において承認されているが、アバスチン(Avastin)(登録商標)は欧州連合におけるGBM処置には承認されていない。実際に、第II相試験は、アバスチン(Avastin)(登録商標)が全生存利益をもたらさないことを指し示した(NCI 06-C-0064E)。アバスチン(Avastin)(登録商標)は一部の試験において無増悪生存期間をわずかに改善するが、患者の利益は多くの場合ごくわずかであり、再発性多形性膠芽腫患者においてアバスチン(Avastin)(登録商標)処置によって与えられる利益はない。
2)テモゾロミド(Temodal(登録商標)/Temodar(登録商標))(4-メチル-5-オキソ-2,3,4,6,8-ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ-2,7,9-トリエン-9-カルボキサミド)-変異原性DNAアルキル化剤;ジェネリック製剤も利用可能である。テモゾロミドは、細胞死を誘発する腫瘍DNAを著しく突然変異させることにより、多形性膠芽腫成長を阻害すると考えられる。作用機序により、DNA修復タンパク質MGMTを発現する細胞は、テモゾロミド処置に対してほぼ例外なく抵抗性である。テモゾロミド処置は、全生存を2.5か月だけ改善する。同時に、テモゾロミド処置は、多くの場合、有意な副作用を引き起こす。テモゾロミドは、多形性膠芽腫のための一次処置である。
3)ギリアデル(gliadel)(登録商標)(カルムスチンウエハー)(1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソ尿素)-細胞毒性ナイトロジェンマスタード。これは、外科的切除後、脳に直接的に移植された生分解性ディスクとして送達される。無作為化試験は、ギリアデル(gliadel)(登録商標)が生存期間の中央値を2.1か月だけ改善することを実証した。ギリアデル(gliadel)(登録商標)で処置した患者は、テモゾロミド処置患者よりも少なく重症度の低い副作用を報告するが、テモゾロミドと比較して全生存が低減する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R. A. Irizarryら、Exploration, normalization, and summaries of high density oligonucleotide array probe level data. Biostatistics 4, 249~264(2003)
【非特許文献2】Wagnerら、(2012) Theory Biosci 131(4):281~285
【非特許文献3】Mortazavi Aら、(2008)「Mapping and quantifying mammalian transcriptomes by RNA-Seq.」、Nature methods 5(7):621~8
【非特許文献4】Trapnellら、(2010) Nature Biotechnology 28、511~515
【非特許文献5】Creelan (2014) Cancer Control 21:80~89
【非特許文献6】Nairら、(2016) Basic Clin Pharm. 7(2): 27~31
【非特許文献7】「Comprehensive Organic Synthesis」、B. M. Trost及びI. Fleming著、Pergamon Press、1991
【非特許文献8】「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、T.W. Greene及びP.G.M. Wutz、Wiley-Interscience (1999)
【非特許文献9】Guide for the Care and Use of Laboratory Animals:第8版(National Academy Press, Washington, D. C.、2011)
【非特許文献10】Towbinら、1979. Biotechnology、24、145~149
【非特許文献11】Barretina, Jら、(2012) The Cancer Cell Line Encyclopedia enables predictive modelling of anticancer drug sensitivity. Nature. 483:603~7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多形性膠芽腫及び他のがんの処置のための更なる抗がん剤が依然として必要である。特に、テモゾロミドによる処置に対して抵抗性である、がんを効果的に処置する抗がん剤が依然として必要である。
【0010】
ヒトタンパク質シチジンデアミナーゼ(CDA)は、シチジン及びデオキシシチジンの、それぞれウリジン及びデオキシウリジンへの加水分解的脱アミノ化を触媒する。一部の公知の抗がん剤は、ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体、例えば、ゲムシタビン(2,2-ジフルオロデオキシシチジン)及びシタラビン(Ara-C、シトシンアラビノシド)である。CDAは、ゲムシタビン及びシタラビンを含むそのような抗がん剤を、問題を生じるような方法で不活性化する。CDAによって不活性化されない更なる抗がん剤が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、多形性膠芽腫及び広範囲の他のがんを処置する際に活性を呈する、選択されたクラスの化合物を見出した。そのような化合物は、概して腫瘍細胞の増殖、及び特に脳のがん、特に多形性膠芽腫に関連するものを阻害するために好適である。
【0012】
第一の態様では、本発明は、療法において使用するための、式(I):
【0013】
【0014】
[式中、
Xは、アルデヒド、アルコール、保護されたアルコール、エーテル、エステル及びカルボン酸から選択される少なくとも1つの官能基を含有する、1から20個までの非水素原子を含有する基であり、但し、Xは、-COOHではなく、
W1及びW2は、それぞれ独立して、O、S又はNHであり、
Yは、H、又は1から15個までの非水素原子を含有する基であり、
Zは、-OPG、-ORz又は-N(RxRy)であり、ここで、Rx、Ry及びRzは、独立して、H、又は1から10個までの非水素原子を含有する基であり、
R1は、H、又は1から15個までの非水素原子を含有する基であり、
R2は、H、-OH、-OPG、-F、-Cl、-Br、-I又は-N3であり、
R3は、H、-F、-Cl、-Br、-I又は-N3であり、
ここで、PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)又はベンゾイル(Bz)等のアルコール保護基である]
の化合物、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩
を提供する。
【0015】
本発明の化合物は、特に、がんの処置又は予防において使用するためのものである。故に、更なる態様では、本発明は、がんの処置又は予防において使用するための、式(I):
【0016】
【0017】
[式中、
Xは、アルデヒド、アルコール、保護されたアルコール、エーテル、エステル及びカルボン酸から選択される少なくとも1つの官能基を含有する、1から20個までの非水素原子を含有する基であり、但し、Xは、-COOHではなく、
W1及びW2は、それぞれ独立して、O、S又はNHであり、
Yは、H、又は1から15個までの非水素原子を含有する基であり、
Zは、-OPG、-ORz又は-N(RxRy)であり、ここで、Rx、Ry及びRzは、独立して、H、又は1から10個までの非水素原子を含有する基であり、
R1は、H、又は1から15個までの非水素原子を含有する基であり、
R2は、H、-OH、-OPG、-F、-Cl、-Br、-I又は-N3であり、
R3は、H、-F、-Cl、-Br、-I又は-N3であり、
ここで、PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)又はベンゾイル(Bz)等のアルコール保護基である]
の化合物、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩
を提供する。
【0018】
本発明は、あらゆるがんに適用可能である。がんは、本明細書では、あらゆる新生物状態を含むように広く定義され、特に悪性又は前悪性状態を含む。がんは、固形腫瘍を引き起こす又はもたらす又は生じることができるが、それらに限定されず、造血(haempoietic)系のがんも含む。全体を通して、用語「がん」及び「がん細胞」は、交換可能に使用される。全体を通して、用語「腫瘍」及び「腫瘍細胞」は、交換可能に使用される。良性腫瘍及び悪性腫瘍も、本明細書において使用される場合、がんという用語に含まれる、すなわち、がん及び腫瘍という用語は、交換可能に使用される。悪性腫瘍の処置が好ましい。
【0019】
故に、代替的見解では、本発明は、腫瘍の処置又は予防において使用するための、式(I)の化合物を提供する。
【0020】
代替的見解では、本発明は、抗がん剤として使用するための、式(I)の化合物を提供する。代替的見解では、本発明は、がんを処置する又は予防するための、式(I)の化合物の使用を提供する。
【0021】
代替的見解では、本発明は、抗腫瘍剤として使用するための、式(I)の化合物を提供する。代替的見解では、本発明は、腫瘍を処置する又は予防するための、式(I)の化合物の使用を提供する。
【0022】
代替的見解では、本発明のこの態様は、抗がん治療製品(すなわち、調製物又は医薬、例えば、医薬組成物、製剤、複合製品、共製剤化製品又はキット)の製造における式(I)の化合物の使用を提供する、或いは、代替として、抗がん剤として又はがんの処置若しくは予防において使用するための医薬の製造のための式(I)の化合物の使用を提供する。
【0023】
代替的見解では、本発明のこの態様は、抗腫瘍治療製品(すなわち、調製物又は医薬、例えば、医薬組成物、製剤、複合製品、共製剤化製品又はキット)の製造における式(I)の化合物の使用を提供する、或いは、代替として、抗腫瘍剤として又は腫瘍の処置若しくは予防において使用するための医薬の製造のための式(I)の化合物の使用を提供する。
【0024】
更なる態様では、本発明は、対象においてがんを処置する又は予防する方法であって、式(I)の化合物を前記対象に投与する工程を含む方法も提供する。
【0025】
更なる態様では、本発明は、対象において腫瘍を処置する又は予防する方法であって、式(I)の化合物を前記対象に投与する工程を含む方法も提供する。
【0026】
本発明の一部の好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、唯一の活性剤(処置レジメンにおける唯一の活性剤)として使用される。故に、一部の好ましい実施形態では、処置は、単剤療法である。単剤療法は、このがん(すなわち、腫瘍)において、疾患又は状態を処置するための単一の薬物の使用を指す。故に、一部の好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、単独で使用される。「唯一の活性剤」(又は唯一の活性成分)は、治療的に活性(又は生物学的に活性)である唯一の作用物質又は成分を意味している。故に、保存剤若しくは賦形剤又は処置されている疾患に関係のない作用物質等の成分は、活性剤であるとはみなされない。
【0027】
がん(すなわち腫瘍)の処置又は予防において、式(I)の化合物は、単独で、又は更なる、すなわち1つ又は複数の他の抗がん剤(すなわち、追加の又は第二の抗がん剤)と場合により組み合わせて、使用されうる。
【0028】
式(I)の化合物は、単独で又は更なる抗がん剤と組み合わせてのいずれかで、本発明に従って、対象におけるがんの(すなわち腫瘍の)処置又は予防の任意の方法において使用されうる。
【0029】
実施例で実証される通り、1つ又は複数の更なる抗がん剤と組み合わせた式(I)の化合物の使用は、相乗的な細胞毒性効果をもたらす。
【0030】
したがって、更なる態様では、本発明は、がん(すなわち腫瘍)を処置する又は予防する際に使用するための更なる抗がん剤と一緒にした式(I)の化合物を提供する、或いは、代替として、がん(すなわち腫瘍)を処置する又は予防するための更なる抗がん剤と一緒に使用するための式(I)の化合物を提供する。
【0031】
代替的見解では、本発明のこの態様は、抗がん(すなわち抗腫瘍)治療製品(すなわち、調製物又は医薬、例えば、医薬組成物、製剤、複合製品又はキット)の製造における式(I)の化合物の使用を提供する、或いは、代替として、抗がん剤(すなわち抗腫瘍剤)として又はがんの(すなわち腫瘍の)処置若しくは予防において使用するための医薬の製造のための式(I)の化合物の使用を提供し、前記処置は、更なる抗がん剤の投与を更に含む。
【0032】
更なる態様では、本発明は、対象においてがん(すなわち腫瘍)を処置する又は予防する方法であって、式(I)の化合物を、場合により更なる(すなわち第二の)抗がん剤と一緒に、前記対象に投与する工程を含む方法も提供する。特に、この態様では、方法は、有効量の前記式(I)の化合物及び任意選択の更なる抗がん剤を投与する工程を含む。
【0033】
式(I)の化合物及び更なる抗がん剤は、単一組成物に共製剤化されうる。しかしながら、これは必要ではない。医薬は、組合せ調製物、組成物又はキット等であってよく、本発明の態様のいずれかにおいて、式(I)の化合物及び更なる抗がん剤が単一組成物に共製剤化されることは必要ではない-それらは別個に製剤化されてよく、順次に又は同時にを含め別個に投与されてよい。
【0034】
したがって、本発明は、がんの(すなわち腫瘍の)処置又は予防において使用するための、式(I)の化合物及び更なる(すなわち1つ又は複数の更なる又は第二の)抗がん剤を含むキットも提供する。
【0035】
より特定すれば、本発明は、がんの(すなわち腫瘍の)処置又は予防において、別個に、順次に又は同時に使用するための組合せ調製物としての、式(I)の化合物及び更なる(すなわち1つ又は複数の更なる又は第二の)抗がん剤を含む製品(特に医薬製品)を提供する。
【0036】
加えて、本発明は、更なる(すなわち1つ又は複数の更なる又は第二の)抗がん剤と共製剤化された式(I)の化合物を含む製品(特に医薬製品)を提供する。
【0037】
本発明は、式(I)の化合物と1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含み、場合により更なる抗がん剤を更に含む、医薬組成物を提供する。
【0038】
本発明のすべての態様に関して、本発明の化合物は、本明細書の他の箇所で記述されている通りの式(I)の化合物であり、本発明の一態様に関して記述された化合物についての好ましい及び任意選択の実施形態を、本発明のありとあらゆる他の態様に準用する。
【0039】
本発明のすべての態様及び実施形態では、悪性腫瘍の処置が好ましい。
【0040】
X
Xは、アルデヒド、アルコール、保護されたアルコール、エーテル、エステル及びカルボン酸から選択される少なくとも1つの官能基を含有する、1から20個までの非水素原子を含有する基であり、但し、Xは、-COOHではない。
【0041】
好ましくは、Xは、1から10個までの非水素原子、より好ましくは1から5個までの非水素原子、更に一層好ましくは1から3個までの非水素原子、最も好ましくは2個の非水素原子を含有する基である。
【0042】
より好ましくは、Xは、少なくとも2個の非水素原子を含有する基、すなわち、2から20個の非水素原子を含有する基である。故に、好ましくは、Xは、2から10個の非水素原子、更に一層好ましくは2から5個の非水素原子、更に一層好ましくは2から3個の非水素原子、最も好ましくは2個の非水素原子を含有する基である。
【0043】
好ましくは、Xは、アルデヒド、アルコール、保護されたアルコール、エーテル及びエステルから選択される少なくとも1つの官能基を含有する。より好ましくは、Xは、アルデヒド、アルコール、エーテル及びエステルから選択される少なくとも1つの官能基を含有する。最も好ましくは、Xは、アルデヒド及びアルコールから選択される少なくとも1つの官能基を含有する。例えば、Xは、アルデヒド官能基を好ましくは含有する。例えば、Xは、アルコール官能基を好ましくは含有する。
【0044】
好ましくは、Xは、わずか1つの官能基を含有する。
【0045】
好ましくは、Xは、本明細書で定義される通りの基であり、但し、Xは、-COOHでも-OHでもない。
【0046】
Xは、-L-X'として定義されてよく、ここで、
Lは、結合、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシであり、
X'は、-CHO、-OH、-OPG、-COOH、-OR、-OC(=O)R又は-C(=O)ORであり、ここで、PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)又はベンゾイル(Bz)等のアルコール保護基であり、ここで、Rは、アルキル基、好ましくはメチルである。
【0047】
用語「アルキル」は、直鎖状及び分枝鎖状飽和脂肪族炭化水素鎖を指す。好ましくは、アルキルは、C1~10アルキルを指す。アルキル基の例は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピル及びイソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)、及びペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)を含むが、これらに限定されない。
【0048】
Rは、上記で例示したもののような任意のアルキル基でありうる。例えば、Rは、-(CH2)nHであってよく、ここで、nは、1から10まで、好ましくは1から5まで、より好ましくは1から3まで、最も好ましくは1である。nが1である場合、Rは、CH3である。
【0049】
用語「アルケニル」は、1つ又は複数、好ましくは1つ又は2つの、炭素-炭素二重結合を有する直鎖状及び分枝鎖状炭化水素鎖を指す。好ましくは、アルケニルは、C2~10アルケニルを指す。アルケニル基の例は、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-メチル-2-プロペニル及び4-メチル-3-ペンテニルを含むが、これらに限定されない。
【0050】
用語「アルキニル」は、1つ又は複数、好ましくは1つ又は2つの、炭素-炭素三重結合を有する直鎖状及び分枝鎖状炭化水素鎖を指す。好ましくは、アルキニルは、C2~10アルキニルを指す。アルキニル基の例は、エチニル、プロピニル及びプロパルギルを含むがこれらに限定されない。
【0051】
用語「ハロアルキル」は、1個又は複数のハロゲン(フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及びヨード(I))で置換されている直鎖状及び分枝鎖状飽和脂肪族炭化水素鎖を指す。好ましくは、ハロアルキルは、C1~10ハロアルキルを指す。ハロアルキル基の例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル及びヘプタクロロプロピルを含むが、これらに限定されない。
【0052】
用語「アルコキシ」は、-O-アルキル基を指す。好ましくは、アルコキシは、C1~10アルコキシを指す。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば、n-プロポキシ及びイソプロポキシ)及びt-ブトキシを含むがこれらに限定されない。
【0053】
用語「ハロアルコキシ」は、酸素橋を介して結合している上記で定義された通りのハロアルキル基を指す。好ましくは、ハロアルコキシは、C1~10ハロアルコキシを指す。ハロアルコキシ基の例は、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ及びペンタフルオロトキシ(pentafluorothoxy)を含むがこれらに限定されない。
【0054】
Xが-L-X'である場合、X基は、所要数の非水素原子を依然として含有しなくてはならない。
【0055】
好ましくは、Lは、結合、アルキル、アルケニル又はアルキニル、より好ましくは結合又はアルキルである。例えば、Lは、結合又はC1~6アルキルでありうる。より好ましくは、Lは、結合又はC1~4アルキルである。最も好ましくは、Lは、結合又はC1アルキル(-CH2-)である。
【0056】
X'は、好ましくは-CHO、-OH、-OPG、-OR、-OC(=O)R又は-C(=O)OR、より好ましくは-CHO、-OH、-OR、-OC(=O)R又は-C(=O)OR、最も好ましくは-CHO、-OH、-OR又は-OC(=O)Rである。
【0057】
故に、好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6まで、好ましくは0から4まで、より好ましくは0又は1であり、X'は、上記で定義された通り、好ましくは-CHO、-OH、-OR又は-OC(=O)Rであり、ここで、Rは、上記で定義された通りである。
【0058】
好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6までであり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6までであり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6までであり、X'は、-CHOである。
【0059】
より好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から4までであり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から4までであり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から4までであり、X'は、-CHOである。
【0060】
より好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から2までであり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から2までであり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から2までであり、X'は、-CHOである。
【0061】
より好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0又は1であり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0又は1であり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0又は1であり、X'は、-CHOである。
【0062】
より好ましくは、Xは、-CHO、-CH2OH、-CH2OCH3又は-CH2OC(=O)CH3である。
【0063】
より好ましくは、Xは、a)-CHO若しくは-CH2OH;又はb)-CH2OCH3若しくは-CH2OC(=O)CH3である。
【0064】
より好ましくは、Xは、-CHO又は-CH2OH、最も好ましくはCH2OHである。
【0065】
Xの上記の定義のすべてにおいて、Xは-OHではないことが好ましい。故に、X'が-OHである場合、Lは結合ではない(すなわち、nは0ではない)ことが好ましい。この場合、nは、1から6まで、好ましくは1から4まで、より好ましくは1から2まで、最も好ましくは1でありうる。
【0066】
W1及びW2
W1及びW2は、それぞれ独立して、O、S又はNH、好ましくはO又はS、より好ましくはOである。
【0067】
故に、好ましくは、W1は、O又はSであり、W2は、O、S又はNHであるか;或いはW2は、O又はSであり、W1は、O、S又はNHである。
【0068】
より好ましくは、W1及びW2は、いずれもO又はSであり、更に一層好ましくは、W1は、Oであり、W2は、O又はSであるか;或いはW2は、Oであり、W1は、O又はSである。
【0069】
最も好ましくは、W1及びW2は、いずれもOである。
【0070】
Y
Yは、H、又は1から15個の非水素原子を含有する基である。好ましくは、Yは、H、又は1から10個の非水素原子を含有する基である。より好ましくは、Yは、H、又は1から5個の非水素原子を含有する基である。
【0071】
例えば、Yは、H、-OH、-OPG、-F、-Cl、-Br、-I又は-N3であってよく、ここで、PGは、アセチル、ベンジル又はベンゾイル等のアルコール保護基である。
【0072】
Yが、H、又は1から5個までの非水素原子を含有する基である場合、Yは、H、-OH、-OAc、-F、-Cl、-Br、-I又は-N3でありうる。
【0073】
最も好ましくは、Yは、Hである。
【0074】
Z
Zは、-OPG、-ORz又は-N(RxRy)であり、ここで、Rx、Ry及びRzは、独立して、H、又は1から10個の非水素原子を含有する基であり、ここで、PGは、アセチル、ベンジル又はベンゾイル等のアルコール保護基である。
【0075】
好ましくは、Zは、-ORz又は-N(RxRy)である。
【0076】
好ましくは、Rzは、H、又は1から5個の非水素原子を含有する基、より好ましくは、H、又は1から3個の非水素原子を含有する基、最も好ましくはHである。
【0077】
好ましくは、Rx及びRyは、独立して、H又はC1~8エステルである。より好ましくは、Rx及びRyは、独立して、H又は-C(O)O(CH2)nCH3であり、ここで、nは、1から4まで、好ましくは4である。
【0078】
好ましくは、Rx及びRyの少なくとも1つは、Hである。例えば、好ましくは、Rxは、Hであり、Ryは、独立して、H又は-C(O)O(CH2)nCH3であり、ここで、nは、1から4まで、好ましくは4である。より好ましくは、Rx及びRyは、いずれもHである。
【0079】
したがって、Zは、好ましくは-NH2又は-OHである。より好ましくは、Xが、-CHO又は-CH2OH、最も好ましくは-CH2OHである場合、Zは-NH2であり;Xが、-CH2OCH3又は-CH2OC(=O)CH3である場合、Zは-OHである。
【0080】
Zが-OHである場合、式(I)の化合物は、以下に示す通りに互変異性形態で描かれうる。
【0081】
【0082】
代替として、Zは、好ましくは-OPG、-ORz又は-N(RxRy)であり、ここで、PG、Rx及びRyは、上記で定義された通りであり、Rzは、1から10個の非水素原子を含有する基である。
【0083】
この場合、Rzは、好ましくは1から5個の非水素原子を含有する基、より好ましくは1から3個の非水素原子を含有する基である。
【0084】
この場合、Zは、好ましくは-OPG又は-N(RxRy)であり、ここで、PG、Rx及びRyは、上記で定義された通りである。
【0085】
最も好ましくは、Zは、-N(RxRy)であり、ここで、Rx及びRyは、上記で定義された通りである。
【0086】
したがって、Zは、好ましくは-NH2である。
【0087】
R1
R1は、H、又は1から15個の非水素原子を含有する基、好ましくはH、又は1から13個の非水素原子を含有する基である。
【0088】
好ましくは、R1は、H、-OH、-OPG、-F、-Cl、-Br、-I、-N3又は-O(P(=O)(OH)O)nHであり、ここで、nは、1から3までであり、ここで、PGは、アセチル、ベンジル又はベンゾイル等のアルコール保護基である。
【0089】
好ましくは、R1は、H、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-N3又は-O(P(=O)(OH)O)nHであり、ここで、nは、1から3まで、好ましくは3である。より好ましくは、R1は、H、-OH又は-O(P(=O)(OH)O)nHであり、ここで、nは、1から3まで、好ましくは3である。更に一層好ましくは、R1は、-OH又は-O(P(=O)(OH)O)nHであり、ここで、nは、1から3まで、好ましくは3である。最も好ましくは、R1は、-OHである。
【0090】
R2
R2は、H、-OH、-OPG、-F、-Cl、-Br、-I又は-N3であり、ここで、PGは、アセチル、ベンジル又はベンゾイル等のアルコール保護基である。
【0091】
好ましくは、R2は、H、-OH、-F、-Cl、-Br、-I又は-N3である。より好ましくは、R2は、H又は-OHであり、最も好ましくは、R2は、-OHである。
【0092】
R3
R3は、H、-F、-Cl、-Br、-I又は-N3、好ましくはHである。
【0093】
最も好ましくは、R1は、-OH又は-O(P(=O)(OH)O)nHであり、ここで、nは、1から3まで、好ましくは3であり;R2は、-OHであり;R3は、Hである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1A】5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチルシチジンがマウスにおいて耐性良好であり、マウス異種移植片モデルにおいてヒト多形性膠芽腫腫瘍を低減させることを示す図である。単回投与最大耐量プロトコール。マウスに、単回腹腔内注射により指示された用量で投薬した。関連群内のすべてのマウスが指示された用量に耐性を示した場合、用量を指示通りに漸増させた。
【
図1B】5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチルシチジンがマウスにおいて耐性良好であり、マウス異種移植片モデルにおいてヒト多形性膠芽腫腫瘍を低減させることを示す図である。マウスに、指示された用量及び指示された化合物を3日ごとに合計5回投与にわたって腹腔内に注射した後、指示された時点で、マウスの体重(weigh)を測定した。
【
図1H】5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチルシチジンがマウスにおいて耐性良好であり、マウス異種移植片モデルにおいてヒト多形性膠芽腫腫瘍を低減させることを示す図である。32匹の免疫不全マウスの脇腹に、U87-MG細胞を移植した。腫瘍が129~131mm
3に到達した後、マウスを8匹ずつ4つの群に分けた。陰性対照群をビヒクルで処置し、陽性対照群を40mg/kgのテモゾロミドで1日に1回、5日間にわたって処置し、処置群を2000mg/kgの5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は2000mg/kgの5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンで3日に1回、合計5回投与にわたって処置した。腫瘍体積を3日ごとに測定し(
図1C)、マウスの体重を3日ごとに測定した(
図1D)。研究の完了時に、腫瘍成長阻害パーセント(TGI(%))を算出し(
図1E)、腫瘍を切除し、撮影し(
図1F)、測定し(
図1G)、切開し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した(
図1H)。
【
図2】5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンが、現在のヌクレオチド類似体とは無関係の機序によって多形性膠芽腫を死滅させることを示す図である。
図2A:アネキシンV及び7AADで染色した、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5'-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン処理細胞のフローサイトメトリー。
図2B:5-ホルミルシトシン、5-ホルミルシチジン又は5-ホルミル-2'-デオキシシチジンの滴定により処理したHeLa細胞の生存曲線。
図2C:5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンの漸増処理によるU87-MG細胞の生存曲線。
【
図3】哺乳動物の細胞において5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンによって誘発されたヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子における突然変異の定量化を示す図である。5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンは、変異原性ではないことが示されている。
【
図4】処置の3日後のHeLa細胞に対する5-ホルミル-2'-デオキシシチジン、5-ホルミルシチジン及び5-クロロ-2'-デオキシシチジンの細胞毒性のレベル(生存%)を示す図である。
【
図5】5-ホルミル-2'-デオキシシチジン(d5fC)、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン(d5hmC)、5-クロロ-2'-デオキシシチジン(5CldC)、5-ブロモ-2'-デオキシシチジン(5BrdC)、5-ヨード-2'デオキシシチジン(5IdC)及びチミジン対U87-MG細胞の細胞毒性のレベル(生存%)を示す図である。
【
図6】5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンの細胞毒性効果(生存%)が、U87-MG細胞におけるチミジンの添加によって救済されないことを示し、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンが、チミジンシンターゼを阻害することによって作用しないことを指し示す図である。
【
図7】U87-MG細胞におけるテモゾロミドと組み合わせた5-ホルミル-2'-デオキシシチジンの細胞毒性効果(生存%)を示す図である。
【
図8】U87-MG細胞におけるテモゾロミドと組み合わせた5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンの細胞毒性効果(生存%)を示す図である。
【
図9】U87-MG細胞に対する5-メトキシメチル-2'-デオキシウリジン及び5-アセトキシメチル-2'-デオキシウリジンの細胞毒性効果を示す図である。72時間にわたる処理。MTTアッセイを使用して、生存を定量化した。
【
図10】d5fCTP又はd5hmCTPによる処理後の種々の細胞の生存%を示す図である。
図10A:5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸(d5fCTP)による72時間にわたる処理後のHeLaの生存%。MTTアッセイを使用して、生存を定量化した。
図10B:5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸のいずれかによる72時間にわたる処理後のU87-MG細胞(神経膠腫、グレードIV)の生存%。MTTアッセイを使用して、生存を定量化した。
【
図11】種々の細胞株におけるCDA発現レベルを示す図である。値は正規化Log2 CDA発現レベルである。Affymetrix社Human Genome U133 Plus 2.0アレイプラットフォーム及びGenevestigatorデータベース(https://genevestigator.com/gv/)を使用して、発現レベルを決定した。
【
図12】種々の細胞株における線形CDA発現レベルを示す図である。Affymetrix社Human Genome U133 Plus 2.0アレイプラットフォーム及びGenevestigatorデータベース(https://genevestigator.com/gv/)を使用して、発現レベルを決定した。
【
図13A】種々のヒト脳腫瘍におけるCDA発現レベルを示す図である。値は正規化Log2 CDA発現レベルである。Affymetrix社Human Genome U133 Plus 2.0アレイプラットフォーム及びGenevestigatorデータベース(https://genevestigator.com/gv/)を使用して、発現レベルを決定した。
【
図13B】種々のヒト脳腫瘍におけるCDA発現レベルを示す図である。値は正規化Log2 CDA発現レベルである。Affymetrix社Human Genome U133 Plus 2.0アレイプラットフォーム及びGenevestigatorデータベース(https://genevestigator.com/gv/)を使用して、発現レベルを決定した。
【
図14A】種々のヒト脳腫瘍における線形CDA発現レベルを示す図である。Affymetrix社Human Genome U133 Plus 2.0アレイプラットフォーム及びGENEVESTIGATOR(登録商標)データベース(https://genevestigator.com/gv/)を使用して、発現レベルを決定した。
【
図14B】種々のヒト脳腫瘍における線形CDA発現レベルを示す図である。Affymetrix社Human Genome U133 Plus 2.0アレイプラットフォーム及びGENEVESTIGATOR(登録商標)データベース(https://genevestigator.com/gv/)を使用して、発現レベルを決定した。
【
図15】2d5hmC及び2d5fCが血液脳関門を通過することができることを実証する、PAMPAアッセイの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
好ましくは、式(I)の化合物は、式(IIa)若しくは式(IIb):
【0096】
【0097】
[式中、X、R1及びR2は、上記で定義された通りである]
の化合物、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である。
【0098】
より好ましくは、式(I)の化合物は、式(IIa)の化合物、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である。
【0099】
これらの好ましい実施形態では、特に式(IIa)中、好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6までであり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6までであり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6までであり、X'は、-CHOである。
【0100】
より好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から4までであり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から4までであり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から4までであり、X'は、-CHOである。
【0101】
より好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から2までであり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から2までであり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から2までであり、X'は、-CHOである。
【0102】
より好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0又は1であり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0又は1であり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0又は1であり、X'は、-CHOである。
【0103】
より好ましくは、Xは、-CHO、-CH2OH、-CH2OCH3又は-CH2OC(=O)CH3である。より好ましくは、Xは、a)-CHO若しくは-CH2OH;又はb)-CH2OCH3若しくは-CH2OC(=O)CH3である。より好ましくは、Xは、-CHO又は-CH2OH、最も好ましくはCH2OHである。
【0104】
式(IIa)中、好ましくは、Xは、-CHO又は-CH2OH、最も好ましくは-CH2OHである。式(IIb)中、好ましくは、Xは、-CH2OCH3又は-CH2OC(=O)CH3である。
【0105】
これらの好ましい実施形態のすべてにおいて、Xは-OHではないことが好ましい。故に、X'が-OHである場合、nは0ではないことが好ましい。この場合、nは、1から6まで、好ましくは1から4まで、より好ましくは1から2まで、最も好ましくは1でありうる。
【0106】
式(IIa)及び(IIb)中、好ましくは、R1は、-OH又は-O(P(=O)(OH)O)nHであり、ここで、nは、1から3まで、好ましくは3であり;R2は、-OHである。
【0107】
より好ましくは、式(I)の化合物は、式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)若しくは(IIId):
【0108】
【0109】
[式中、Xは、上記で定義された通りである]
の化合物又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である。
【0110】
より好ましくは、式(I)の化合物は、式(IIIa)、(IIIb)若しくは(IIIc)の化合物又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である。
【0111】
更に一層好ましくは、式(I)の化合物は、式(IIIa)若しくは(IIIc)の化合物又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である。
【0112】
式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)及び(IIId)中、特に式(IIIa)及び(IIIc)中、好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6までであり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6までであり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から6までであり、X'は、-CHOである。
【0113】
より好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から4までであり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から4までであり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から4までであり、X'は、-CHOである。
【0114】
より好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から2までであり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から2までであり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0から2までであり、X'は、-CHOである。
【0115】
より好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0又は1であり、X'は、-OH又は-CHOである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0又は1であり、X'は、-OHである。好ましくは、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、nは、0又は1であり、X'は、-CHOである。
【0116】
より好ましくは、Xは、-CHO、-CH2OH、-CH2OCH3又は-CH2OC(=O)CH3である。より好ましくは、Xは、a)-CHO若しくは-CH2OH;又はb)-CH2OCH3若しくは-CH2OC(=O)CH3である。より好ましくは、Xは、-CHO又は-CH2OH、最も好ましくはCH2OHである。
【0117】
式(IIIa)及び式(IIIc)中、好ましくは、Xは、-CHO又は-CH2OH、最も好ましくは-CH2OHである。式(IIIb)及び式(IIId)中、好ましくは、Xは、-CH2OCH3又は-CH2OC(=O)CH3である。
【0118】
これらの好ましい実施形態のすべてにおいて、Xは-OHではないことが好ましい。故に、X'が-OHである場合、nは0ではないことが好ましい。この場合、nは、1から6まで、好ましくは1から4まで、より好ましくは1から2まで、最も好ましくは1でありうる。
【0119】
最も好ましくは、式(I)の化合物は、式(IVa)、(IVb)、(IVc)、(IVd)、(IVe)若しくは(IVf):
【0120】
【0121】
の化合物、又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である。
【0122】
式(IVa)は、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン(本明細書では、5f2dC、5fdC、2d5fC及びd5fCとも称される)である。式(IVb)は、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン(本明細書では、5hm2dC、5hmdC、2d5hmC及びd5hmCとも称される)である。式(IVc)は、5-メトキシメチル-2'-デオキシウリジンである。式(IVd)は、5-アセトキシメチル-2'-デオキシウリジンである。式(IVe)は、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸である。式(IVf)は、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸である。
【0123】
故に、好ましくは、本発明で使用する化合物は、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン、5-メトキシメチル-2'-デオキシウリジン、5-アセトキシメチル-2'-デオキシウリジン、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩から選択される。より好ましくは、化合物は、a)5-ホルミル-2'-デオキシシチジン若しくは5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩;或いはb)5-メトキシメチル-2'-デオキシウリジン若しくは5-アセトキシメチル-2'-デオキシウリジン又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である。
【0124】
代替として、本発明で使用する化合物は、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩から好ましくは選択される。
【0125】
最も好ましくは、化合物は、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン若しくは5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩、最も好ましくは5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン又はその立体異性体、溶媒和物、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩である。
【0126】
用語「処置」又は「療法」は、患者の健康若しくは状態における、又は患者が患っているがんの症状の、改善をもたらす任意の処置又は療法を含む。「処置」は、根治療法(例えば、患者からのがん細胞若しくは腫瘍又は転移の排除をもたらすもの)に限定されず、患者のがんに対して有益な効果を有する任意の療法、例えば、腫瘍退縮又は低減、転移能の低減、全生存の増大、寿命又は緩解の延長若しくは長期化、緩解の誘導、疾患進行又は疾患進行若しくは腫瘍発生の速度の減速又は低減、生活の質の主観的な改善、疼痛又は疾患に関係する他の症状の低減、食欲改善、悪心低減、或いはがんの任意の症状の軽減を含む。
【0127】
故に、本明細書において使用される場合、「処置」は、処置前のがん又は症状と比べて、処置されているがん又はその1つ若しくは複数の症状を、低減させること、軽減させること、寛解させること又は排除することを指しうる。処置は、例えば腫瘍における、例えば固形腫瘍における、がん細胞の低減又は排除を含みうる。処置は、対象、すなわちそれを必要とする対象の処置である。故に、処置は、腫瘍サイズの低減、又は腫瘍成長若しくは更なる腫瘍成長の防止、すなわち腫瘍サイズの安定化を含みうる。
【0128】
「予防」は、例えば腫瘍の発生において、がんの症状の発症を遅延させること又は予防することを指す。
【0129】
好ましくは、本発明の化合物は、がん/腫瘍細胞に対して直接効果を有する。「直接効果」は、本明細書において使用される場合、本発明の化合物が、それらの抗がん/抗腫瘍効果を発揮するために、がん/腫瘍細胞と直接的に相互作用することを意味する。換言すれば、好ましくは、本発明の化合物、すなわち式(I)の化合物は、がん/腫瘍細胞に対して細胞毒性である。好ましくは、本発明の化合物は、がん/腫瘍細胞に対する直接効果を発揮するために、対象に投与される。
【0130】
好ましくは、本発明の方法は、細胞ベースの療法の一部として投与された細胞集団を枯渇させるための本発明の化合物の投与を含まない。細胞ベースの療法は、特定の治療効果を引き出すために細胞集団が対象に投与される療法として周知である。周知の細胞ベースの療法は、T細胞療法、例えば、CAR T細胞療法を含む。
【0131】
好ましくは、本発明の方法は、細胞ベースの療法の一部として投与された細胞集団の投与後の、本発明の化合物の投与を含まない。
【0132】
好ましくは、本発明の方法は、CAR T細胞療法を含まない。好ましくは、本発明の方法は、T細胞療法を含まない。好ましくは、本発明の方法は、細胞ベースの療法を含まない。
【0133】
好ましくは、本発明の方法は、CAR T細胞療法、好ましくはT細胞療法、好ましくは細胞ベースの療法を経験していない対象への、本発明の化合物の投与を含む。換言すれば、好ましくは、対象は、その処置の一部として、CAR-T細胞療法、好ましくはT細胞療法、好ましくは細胞ベースの療法を受けたことがなく、受ける予定がない。
【0134】
本明細書において言及される場合、対象は、任意のヒト又は非ヒト動物、好ましくは哺乳類動物、例えば、雌ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ネコ、イヌ、とりわけ好ましくはヒトでありうる。故に、好ましくは、本明細書において言及されるがんは、ヒトがんであり、本明細書において言及される腫瘍は、好ましくはヒト対象において存在する。
【0135】
一部の実施形態では、本発明に従う処置は、がんの再燃又は再発又は転移のリスクがある対象において使用されうる。故に、代替的見解では、式(I)の化合物は、がんの再燃又は再発又は転移の予防において使用されうる。
【0136】
特定の実施形態では、本発明は、処置される対象ががん(すなわち腫瘍)を有すること又はがんに感受性である若しくはそれを発生するリスクがあることを最初に同定すること又は決定することを伴いうる。
【0137】
代替的に又は付加的に、本発明は、対象に対する、又はより特定すればがん(腫瘍)に対する、又はがん(腫瘍)の発生若しくは進行に対する、式(I)の化合物及び/又は他の抗がん剤の投与の効果を評価すること又はモニターすることを包含する。例えば、症状、臨床状態、腫瘍サイズ若しくは広がり(例えば撮像技術によって)又は他のがん若しくは腫瘍インジケーター、例えばがん/腫瘍マーカー等を決定する又はモニターすることによる、抗がん効果を評価する及び/又はモニターするための手順及び手段は、当技術分野において周知である。
【0138】
上記で言及した通り、本発明は、あらゆるがんに適用可能である。がんは、本明細書では、あらゆる新生物状態を含むように広く定義され、特に悪性又は前悪性状態を含む。がんは、固形腫瘍を引き起こす又はもたらす又は生じることができるが、それらに限定されず、造血系のがんも含む。良性腫瘍及び悪性腫瘍も、本明細書において使用される場合のがんという用語に含まれる、すなわち、がん及び腫瘍という用語は、交換可能に使用される。悪性腫瘍の処置が好ましい。
【0139】
がんは、身体の任意の組織又は臓器で出現しうる。例えば、本発明は、患者又は対象における下記のがんのいずれかの処置又は予防において使用されうる。
【0140】
中枢神経系のがん、好ましくは脳がん、好ましくは神経膠腫;急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);副腎皮質癌;エイズ関連がん(例えば、カポジ肉腫及びリンパ腫);肛門がん;虫垂がん;基底細胞癌;胆管がん;肝外膀胱がん(Extrahepatic Bladder Cancer);骨がん(例えば、ユーイング肉腫;骨肉腫及び悪性線維性組織球腫);乳がん;気管支腫瘍;バーキットリンパ腫;カルチノイド腫瘍;心性(心臓)腫瘍;子宮頸がん(子宮頸部腺癌);脊索腫;急性前骨髄球性白血病;慢性リンパ性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(CML);慢性骨髄増殖性障害;結腸がん;大腸癌;皮膚T細胞性リンパ腫;胆管がん;肝外胆管上皮内癌(DCIS);胎児性腫瘍;子宮内膜がん;食道がん;鼻腔神経芽細胞腫;ユーイング肉腫;頭蓋外胚細胞腫瘍;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管癌;眼がん(眼内黒色腫及び網膜芽細胞腫を含む);骨の線維性組織球腫;胆嚢がん;胃(Gastric)(胃(Stomach))がん;消化管カルチノイド腫瘍;消化管間質腫瘍(GIST);胚細胞腫瘍;妊娠性絨毛性疾患;有毛細胞白血病;頭頸部がん;心臓がん;肝細胞(肝臓)がん;組織球増加症;ランゲルハンス細胞;ホジキンリンパ腫;下咽頭がん;眼内黒色腫;島細胞腫瘍;膵神経内分泌腫瘍;カポジ肉腫;腎臓がん(腎細胞及びウィルムス腫瘍を含む);ランゲルハンス細胞組織球増加症;喉頭がん;白血病(急性リンパ芽球性(ALL);急性骨髄性(AML);慢性リンパ球性(CLL);慢性骨髄性(CML)を含む);唇及び口腔がん;肝臓がん(原発性);上皮内小葉癌(LCIS);肺がん;リンパ腫;マクログロブリン血症;ワルデンストレーム;黒色腫(悪性黒色腫);メルケル細胞癌;中皮腫;原発不明の転移性頸部扁平上皮がん;NUT遺伝子が関与する正中管癌(Midline Tract Carcinoma Involving NUT Gene);口がん;多発性内分泌腫瘍症候群;小児;多発性骨髄腫/形質細胞新生物;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性新生物;多発性骨髄腫;骨髄増殖性障害;鼻腔及び副鼻腔がん;鼻咽腔癌;神経芽細胞腫;非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺がん;口のがん;口腔がん;口腔咽頭がん;骨肉腫;卵巣がん(卵巣腺癌);膵臓がん;膵神経内分泌腫瘍(島細胞腫瘍);乳頭腫症;傍神経節腫;副鼻腔及び鼻腔がん;副甲状腺がん;陰茎がん;咽頭がん;褐色細胞腫;上皮腺癌;形質細胞新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠及び乳がん;前立腺がん;直腸がん;腎細胞(腎臓)がん;腎盂及び尿管;移行細胞がん;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;唾液腺がん;肉腫;セザリー症候群;皮膚がん;小細胞肺がん;小腸がん;軟部組織肉腫;扁平上皮細胞癌;原発不明の頸部扁平上皮がん;転移性;胃(Stomach)(胃(Gastric))がん;T細胞性リンパ腫;精巣がん;喉のがん;胸腺腫及び胸腺癌;甲状腺がん;腎盂及び尿管の移行細胞がん;尿道がん;子宮がん;子宮内膜;子宮肉腫;膣がん;外陰がん;ワルデンストレームマクログロブリン血症;並びにウィルムス腫瘍。
【0141】
ヒト胚の細胞は、異なった胚葉:外側の外胚葉、内側の内胚葉、及び外胚葉と内胚葉との間に発生する中胚葉中に配置される。身体のすべての臓器は、これらの3つの一次胚葉から秩序正しい方式で発生する又は分化する。
【0142】
本発明では、好ましくは、がん/腫瘍は、外胚葉、沿軸中胚葉又は側板中胚葉に、好ましくは外胚葉に由来する組織のがん/腫瘍である。
【0143】
好ましくは、がんは、中枢神経系のがん、好ましくは脳がんである。疑義を避けるために、脳がんは、当技術分野及び本明細書において、中枢神経系のがんであるとみなされる。中枢神経系は、脳及び脊髄を含む。故に、好ましくは、腫瘍は、中枢神経系の腫瘍、好ましくは脳腫瘍である。好ましくは、CNSのがん/腫瘍は、CNSリンパ腫、ラブドイド腫瘍、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍及び脊索腫からなる群から選択されるか、又は脳がん/腫瘍である。好ましくは、脳がん/腫瘍は、神経膠腫、聴神経腫、CNSリンパ腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、下垂体腫瘍、原始神経外胚葉(PNET)、神経鞘腫、松果体腫瘍、三側性網膜芽細胞腫及びラブドイド腫瘍からなる群から選択される。
【0144】
最も好ましくは、がん/腫瘍は、脳がん/脳腫瘍、より好ましくは神経膠腫である。神経膠腫は、あらゆる種類の神経膠腫、例えば、星細胞腫、上衣腫、上衣下腫、乏突起膠腫、脳幹神経膠腫、視神経膠腫又は混合性神経膠腫でありうる。
【0145】
好ましくは、神経膠腫は、星細胞腫である。星細胞腫は、グレードI星細胞腫(好ましくは、毛様細胞性星細胞腫又は上衣下巨細胞星細胞腫)、グレードII(好ましくは、低グレード星細胞腫、多形黄色星細胞腫又は混合性乏突起星細胞腫)、グレードIII(未分化星細胞腫)又は最も好ましくはグレードIV(膠芽細胞腫)でありうる。
【0146】
中枢神経系の腫瘍の分類のためのグレーディングシステムは、当業者に周知である。好ましくは、世界保健機関(WHO)グレーディングシステムが使用される。WHOグレーディングスキームは、当技術分野において周知であり、ある特定の特徴:異型、有糸分裂、内皮増殖及び壊死の出現に基づくもので、これらの特徴は、浸潤及び成長速度の観点から腫瘍の悪性度を反映するものである。
【0147】
神経膠腫は、小脳から大脳を分離する膜である小脳テントより、それらが上又は下のいずれにあるかによっても分類されうる。小脳テント上神経膠腫は大脳中の小脳テントの上方に見られるのに対し、小脳テント下神経膠腫は小脳中の小脳テントの下方に見られる。本発明に従い処置される神経膠腫は、小脳テント上神経膠腫又は小脳テント下神経膠腫でありうる。
【0148】
故に、本発明の文脈において特に好ましくは、がん/腫瘍は、神経膠腫、最も好ましくは神経膠腫、グレードIV、すなわち、多形性膠芽腫である。多形性膠芽腫は、悪性星細胞腫であり、成人の間で最も一般的な原発性脳腫瘍である。多形性膠芽腫は、神経膠腫、グレードIV、膠芽細胞腫及びGBMとしても知られている。
【0149】
好ましくは、がん/腫瘍は、脳がん(上記で定義された通り、好ましくは神経膠腫、より好ましくは膠芽細胞腫)、胃がん、膵臓がん、リンパ腫、肺がん、皮膚がん、急性前骨髄球性白血病、卵巣がん、乳がん、骨がん及び子宮頸がんからなる群から選択される。
【0150】
より好ましくは、がん/腫瘍は、脳がん(上記で定義された通り、好ましくは神経膠腫、より好ましくは膠芽細胞腫)、胃がん、リンパ腫、乳がん及び子宮頸がんからなる群から選択される。
【0151】
好ましくは、がん/腫瘍は、脳がん(上記で定義された通り、好ましくは神経膠腫、より好ましくは膠芽細胞腫)、胃がん、膵臓がん、皮膚がん、急性前骨髄球性白血病、乳がん及び子宮頸がんからなる群から選択される。
【0152】
好ましくは、がん/腫瘍は、脳がん(上記で定義された通り、好ましくは神経膠腫、より好ましくは膠芽細胞腫)、皮膚がん及び乳がん、より好ましくは脳がん(上記で定義された通り、好ましくは神経膠腫、より好ましくは膠芽細胞腫)及び皮膚がんからなる群から選択される。
【0153】
これらの実施形態では、本発明の好ましい化合物は、Xがアルデヒド官能基を含有し、好ましくは、ここで、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、X'は、-CHOであり、nは、0から6まで、より好ましくは0から4まで、より好ましくは0から2まで、より好ましくは0又は1であるもの、最も好ましくはXが-CHOであり、好ましくはZが-NH2であるものである。本発明の実施例で実証される通り、本発明のそのような化合物は、広範囲のがん型に対して有利に広い細胞毒性を有し、非がん性細胞に対する細胞毒性は限定される。
【0154】
代替として、好ましくは、がん/腫瘍は、脳がん(上記で定義された通り、好ましくは神経膠腫、より好ましくは膠芽細胞腫)及び慢性骨髄性白血病からなる群から選択される。これらの実施形態では、本発明の好ましい化合物は、Xがアルコール官能基を含有し、好ましくは、ここで、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、X'は、-OHであり、nは、0から6まで、より好ましくは0から4まで、より好ましくは0から2まで、より好ましくは0又は1であるもの、最も好ましくはXが-CH2OHであり、好ましくはZが-NH2であるものである。本発明の実施例で実証される通り、本発明のそのような化合物は、これらの好ましいがん型に対して有利に特異的な細胞毒性を有し、オフターゲットのがん性及び非がん性細胞に対する細胞毒性は限定される。
【0155】
好ましくは、胃腫瘍は、胃癌である。好ましくは、膵臓腫瘍は、膵臓癌である。好ましくは、皮膚がんは、悪性黒色腫である。好ましくは、卵巣がんは、卵巣腺癌である。好ましくは、乳がんは、上皮腺癌である。好ましくは、骨がんは、骨肉腫である。好ましくは、肺がんは、転移性腺癌、好ましくは転移性非小細胞腺癌である。好ましくは、子宮頸がんは、子宮頸部腺癌である。
【0156】
しかしながら、好ましくは、がんは、肺がんでも乳がんでもない。好ましくは、がんは、膵臓がん、胃がん、精巣がん又は膣がんでもない。好ましくは、がんは、腎臓がんでも腸のがんでもない。
【0157】
好ましくは、がんは、肺がんではない。好ましくは、がんは、前立腺がん、腎臓がん、肝臓がん、乳がん、結腸がん、卵巣がん又は子宮頸がんでもない。
【0158】
好ましくは、がん/腫瘍は、結腸がん、肺がん、前立腺がん又は腎臓がんではない。好ましくは、がん/腫瘍は、膵臓がんではない。
【0159】
好ましくは、がん/腫瘍は、慢性骨髄性白血病でもなく、この事例では、本発明の好ましい化合物(すなわち、式(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、(Iva)、(IVb)、(IVc)、(IVd)、(IVe)及び(IVf)の化合物)は、Xがアルデヒド官能基を含有し、好ましくは、ここで、Xは、-(CH2)n-X'であり、ここで、X'は、-CHOであり、nは、0から6まで、より好ましくは0から4まで、より好ましくは0から2まで、より好ましくは0又は1であるもの、最も好ましくは、Xが-CHOであり、好ましくはZが-NH2であるものである。
【0160】
更に、好ましくは、がんは、
i)乳がんではなく、好ましくは膵臓がん、胃がん、精巣がん若しくは膣がんでもなく、より好ましくは腸のがんでもなく;及び/又は
ii)肝臓がん、乳がん、卵巣がん若しくは子宮頸がんでもない。
【0161】
好ましくは、がんは、肺がん、前立腺がん、腎臓がん、肝臓がん、乳がん、結腸がん、卵巣がん、子宮頸がん、慢性骨髄性白血病、膵臓がん、胃がん、精巣がん、膣がん及び腸のがんからなる群から選択されるがんではない。好ましくは、がんは、これらのがんのいずれでもない。
【0162】
好ましくは、本発明に従い処置される乳がんは、
i)浸潤性乳管癌であり、且つ/又は
ii)野生型p53を発現し、且つ/又は
iii)トリプルネガティブではない、すなわち、エストロゲン受容体(ER+)、プロゲステロン受容体(PR+)及びHER2(HER2+)のうちの1つ又は複数を発現し、好ましくはER+及びPR+であり、且つ/又は
iv)p53に対してヘテロ接合性である。
【0163】
本発明に従い好ましくは処置されない乳がんは、好ましくは、
i)腺癌であり、且つ/又は
ii)トリプルネガティブである、すなわち、エストロゲン受容体(ER-)、プロゲステロン受容体(PR-)又はHER2(HER2-)を発現せず、且つ/又は
iii)p53の突然変異バリアントを発現し、且つ/又は
iv)p53に対してホモ接合性である
乳がんのみである。
【0164】
ヒトタンパク質シチジンデアミナーゼ(CDA)は、シチジン及びデオキシシチジンの、それぞれウリジン及びデオキシウリジンへの加水分解的脱アミノ化を触媒する。一部の公知の抗がん剤は、ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体、例えば、ゲムシタビン(2,2-ジフルオロデオキシシチジン)及びシタラビン(Ara-C、シトシンアラビノシド)である。CDAは、ゲムシタビン及びシタラビンを含むそのような抗がん剤を、問題を生じるような方法で不活性化する。本発明の実施例で実証される通り、本発明の化合物は、CDAの発現とは無関係に、それらの細胞毒性効果を発揮する。
【0165】
したがって、好ましい実施形態では、がん/腫瘍は、CDAが発現されているもの、好ましくは、CDAが、
i)過剰発現されている、
ii)過剰発現されていない、
iii)過少発現されている、
iv)過少発現されていない、
v)過剰発現若しくは過少発現されている、又は
vi)過剰発現も過少発現もされていない
ものである。
【0166】
上記のがん/腫瘍型i)からvi)のそれぞれは、本発明の好ましい実施形態を表す。特に好ましい実施形態では、本発明に従い処置されるがん/腫瘍は、CDAが過剰発現されていないものである。
【0167】
がん/腫瘍細胞遺伝子発現の文脈において、用語「過剰発現されている」及び「過少発現されている」は、明確な且つ広く理解されている意味を有し、すなわち、それぞれ増大した/より高い又は減少した/より低いレベルである。
【0168】
過剰発現(又は増大した若しくは高いレベル)又は過少発現(又は減少した若しくはより低いレベル)は、任意の適切な対照(例えば、対照レベル又は対照試料若しくは生検)と比較して決定される通りでありうる。例えば、対照レベルは、健康な対象(例えば、がんを有さない対象)由来の試料(例えば、血液若しくは血清試料又は組織試料若しくは生検)中におけるレベルでありうる。適切な対照レベル(又は対照試料若しくは値)は、当業者により容易に選択されうる。適切な対照「値」も、例えば健常対象の範囲を参照することによりすべての試験で対照「試料」を実行することなく、容易に決定されうる。
【0169】
好ましくは、過剰発現されている及び過少発現されているという用語は、がん性細胞中における問題の遺伝子由来のRNA転写産物のレベルが、両方の場合で同じ方法及び条件を使用して評価した際に、がん性細胞と同じ組織由来の非がん性細胞中におけるレベルよりも高い(過剰発現されている)又は低い(過少発現されている)ことを意味する。遺伝子発現、例えばCDA発現のレベルを評価するための好ましい方法及び条件は、本明細書のいずれか他の箇所で開示される通りである。
【0170】
好ましくは、過剰発現又は過少発現は有意である。有意に過剰発現されている/過少発現されている、すなわち有意により高い/より低いは、統計的に有意に過剰/過少発現されている(統計的に有意により高い/より低い)を意味している。統計的に有意とは、観察されるレベルの増大又は減少が、単独で偶然起こることが期待されるかもしれないものよりも大きいことを意味している。統計的有意性は、当技術分野において公知である任意の方法によって決定される。例えば、統計的有意性は、確率値(p値)によって決定される。p値は、実験中に群間における差異が偶然起こった確率の尺度である。例えば、0.01のp値は、その結果が偶然出現した100分の1の可能性があることを意味する。p値が低くなるほど、群間における差異が処置により引き起こされたものである可能性が大きくなる。好ましくは、確率値は、0.05未満又は0.01未満である。
【0171】
一部の実施形態では、レベルの増大(すなわち過剰発現)は、(例えば対照レベルと比較して)少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%の増大でありうる。一部の実施形態では、レベルの減少(すなわち過少発現)は、(例えば対照レベルと比較して)少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%の減少でありうる。
【0172】
好ましくは、目的の細胞における遺伝子発現のレベルは、そのような情報を含有するデータベースを参照することによって決定される。がんゲノムアトラス(TCGA、https://cancergenome.nih.gov/)、EMBL-EBI発現アトラス(https://www.ebi.ac.uk/gxa/home)、ヒトタンパク質アトラス(https://www.proteinatlas.org/)、GENEVESTIGATOR(登録商標)(https://genevestigator.com/gv/)、がん細胞株百科事典(https://portals.broadinstitute.org/ccle)及びその他等の情報源が、がんを含む広範囲の細胞型における遺伝子発現レベルについての情報を含有し、特定のがん型における遺伝子発現のレベルが、同じ組織由来の非がん性細胞におけるものよりも有意に高い又は低いのいずれであるか(すなわち、その遺伝子がそのがん型において過剰発現されている又は過少発現されているのいずれであるか)についての統計的データも提供している。これらのデータベースが好ましい。故に、目的の遺伝子の統計的に有意な過剰又は過少発現を伴うがん型は、容易に同定されうる。この目的のためにそのような情報源を利用することは、当業者の能力内である。
【0173】
故に、好ましくは、がん/腫瘍は、本明細書のいずれかの箇所で定義される通りであり、ここで、前記がん/腫瘍内のCDA発現は、EMBL-EBI発現アトラスデータベース(https://www.ebi.ac.uk/gxa/home)、GENEVESTIGATOR(登録商標)データベース(https://genevestigator.com/gv/)、がん細胞株百科事典(https://portals.broadinstitute.org/ccle)及びヒトタンパク質アトラス(https://www.proteinatlas.org/)から選択されるデータベースを参照することにより決定される。
【0174】
好ましくは、がん/腫瘍は、がん/腫瘍と同じ組織由来の非がん性細胞における発現レベルよりも高いレベルまではCDAを発現せず、ここで、前記過剰発現は、EMBL-EBI発現アトラスデータベース(https://www.ebi.ac.uk/gxa/home)、GENEVESTIGATOR(登録商標)データベース(https://genevestigator.com/gv/)、がん細胞株百科事典(https://portals.broadinstitute.org/ccle)及びヒトタンパク質アトラス(https://www.proteinatlas.org/)から選択されるデータベースを参照することにより決定される。
【0175】
好ましくは、がん/腫瘍は、CDA発現レベルが、同じ方法を同じ条件下で使用して決定された際の参照がん細胞株におけるCDA発現レベルの90%を超えないものであり、ここで、前記参照がん細胞株は、MDA-MB-231である。
【0176】
MDA-MB-231は、広く市販されている、よく特徴付けられた細胞株である。MDA-MB-231細胞株は、転移性乳腺癌を持つ51歳の白人女性の胸水から確立された上皮のヒト乳がん細胞株であり、医学研究室において最も一般的に使用される乳がん細胞株の1つである。これは、例えば、欧州認証細胞培養株保存機関(ECACC)からカタログ番号92020424として入手することができる。Table 4A(表5)に示す通り、MDA-MB-231細胞株におけるCDAの発現レベルは、153TPMである。
【0177】
MDA-MB-231は、エストロゲン受容体(ER)及びプロゲステロン受容体(PR)発現並びにHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)増幅を欠いているため、高度に侵襲性の、浸潤性且つ分化の乏しいトリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞株である。細胞株は、クローディン-3及びクローディン(claudinin)-4の下方調節、Ki-67増殖マーカーの低発現、上皮間葉転換に関連するマーカーのための富化並びにCD44+CD24-/低表現型等の乳がん幹細胞(CSC)に関連する特色の発現を呈することから、クローディン-低分子サブタイプに属すると認識されている。3次元培養において、細胞株は内皮様形態を呈し、多くの場合複数の細胞コロニーを架橋する星状突起を有するその浸潤性表現型によって区別される。この細胞株の培養のための標準条件は周知である。好ましい培養条件は、2mMのグルタミン及び15%ウシ胎児血清(FBS)を補充したライボビッツL-15培地中、37℃で成長させられる。この培地は、CO2平衡のない環境における細胞の成長を支持する。MDA-MB-231細胞は、好ましくは、1~3×104細胞/cm2の間の密度で播種され、70~80%集密のときに継代培養される。
【0178】
好ましくは、がん/腫瘍は、CDA発現レベルが、同じ方法を同じ条件下で使用して決定された際の参照がん細胞株におけるCDA発現レベルの80%を超えない、好ましくは70%を超えない、好ましくは60%を超えない、好ましくは50%を超えない、好ましくは40%を超えない、好ましくは30%を超えない、好ましくは25%を超えないものであり、ここで、前記参照がん細胞株は、MDA-MB-231である。
【0179】
好ましくは、がん/腫瘍は、CDA発現レベルが、同じ方法を同じ条件下で使用して決定された際の参照がん細胞株におけるCDA発現レベルの少なくとも2分の1、好ましくは少なくとも2.5分の1、好ましくは少なくとも3分の1、好ましくは少なくとも3.5分の1、好ましくは少なくとも4分の1、好ましくは少なくとも4.5分の1であるものであり、ここで、前記参照がん細胞株は、MDA-MB-231である。この文脈における「少なくともX分の1」は、がん/腫瘍における最大CDA発現レベルが、参照がん細胞株における発現レベルの正確にX分の1である値であることを意味する。
【0180】
がん/腫瘍における及び参照がん細胞株におけるCDA発現レベルを決定するために使用される方法及び条件は、任意の好適な方法及び条件であってよく、但し、参照がん細胞株におけるCDA発現のレベルを決定するために使用されるものと同じ方法及び条件が、がん/腫瘍におけるCDA発現のレベルを決定するために使用される。参照がん細胞株は、故に、対照である。当業者は、がん性及び非がん性細胞における目的の遺伝子、例えばCDAの発現レベルを同様に、容易に決定することができる。そのような方法は、当技術分野における普遍的な一般知識の一部であり、本発明の文脈において任意の好適な方法が使用されうる。
【0181】
例えば、発現レベルは、タンパク質レベルで測定されうる。タンパク質発現レベルを測定するための方法は、当技術分野において周知である。それらの方法は、概して、目的の生体試料を、抗体等のタンパク質の発現レベルを測定し、その後、好ましくは正規化後に、検出された試薬のレベルに基づいてタンパク質発現レベルを決定するために好適な、1つ又は複数の検出可能な試薬と接触させることを伴う。抗体の使用を概して伴う方法の例は、限定されないが、ウエスタンブロット、イムノブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫スポット(ELISPOT)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫組織化学及び免疫沈降を含む。限定されないが、蛍光活性化細胞分類(FACS)、原子間力顕微鏡法等の顕微鏡法、フローサイトメトリー、マイクロサイトメトリー(microcytometry)、タンパク質結合アッセイ、リガンド結合アッセイ、マイクロアレイ、SDS-PAGE等のポリアクリルアミドゲル電気泳動、表面プラズモン共鳴(SPR)、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、化学発光、蛍光偏光、リン光、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)又は液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析(LC-MS-MS)等の質量分析、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間(SELDI-TOF)及び磁気共鳴撮像(MRI)を含む、抗体の使用を必ずしも伴うとは限らない、タンパク質発現レベルを測定するために好適な他の方法が使用されうる。
【0182】
しかしながら、好ましくは、遺伝子発現レベル、例えばCDA発現レベルは、RNAレベルで測定されうる。RNAレベルを測定するための方法は、当技術分野において周知であり、本発明の文脈において任意の好適な方法が使用されうる。例えば、マイクロアレイ、RT-PCR、定量的リアルタイムPCR、RNAシーケンシング、ノーザンブロット、プライマー伸長法、RNアーゼ保護及びRNA発現プロファイリング法が使用されうる。好ましくは、使用される方法は、RNA-seq又はマイクロアレイである。RNA-seqは、周知の方法であり、これは、次世代シーケンシング(NGS)を使用して、所与の瞬間における生体試料中のRNAの存在及び分量を決定する。
【0183】
好ましくは、参照がん細胞株におけるCDA発現レベルと比較して目的のがん/腫瘍におけるCDA発現レベルを決定するために使用される方法(ここで、前記参照がん細胞株は、MDA-MB-231である)は、以下で言及する「マイクロアレイ法A」である。
【0184】
マイクロアレイ法Aは、下記のステップを含む。
1)目的のがん/腫瘍細胞からRNAを抽出するステップであって、前記抽出が、好ましくは、Norgen全RNA精製キット(Norgen Biotek社カタログ番号17200)を使用して実施されるステップ、
2)好ましくはMEGAピュアキットを製造業者の説明書(Ambion社)に従って使用して、抽出されたRNAからポリ(A)+RNAを調製するステップ、
3)逆転写酵素による処理によりポリ(A)+RNAから相補的DNA(cDNA)を調製するステップ、すなわち逆転写を実施するステップ、
4)TdT(末端デオキシヌクレオチド転移酵素)を使用してcDNAをフラグメント化するステップ、
5)GeneChipWT末端標識キット(Affymetrix社)を使用してcDNAフラグメントをビオチン化するステップ、
6)参照細胞株を用いてステップ1から5を繰り返すステップであって、前記参照細胞株がMDA-MB-231であるステップ、
7)ステップ5で取得された5.5μgのビオチン化cDNAフラグメントを、45℃で16時間にわたって第一のDNAマイクロアレイにハイブリダイズし、ステップ6で取得された5.5μgのビオチン化cDNAフラグメントを、45℃で16時間にわたってDNAマイクロアレイにハイブリダイズするステップであって、好ましくは、前記マイクロアレイがAffymetrix社GeneChipヒト遺伝子2.0STアレイ(Applied Biosystems社)であるステップ、
8)ハイブリダイズされたマイクロアレイを、好ましくはAffymetrix社GeneChipフルイディクスステーション450(Applied Biosystems社)中で洗浄及び染色するステップ、
9)前記染色されたマイクロアレイを、Affymetrix GeneChip Command Console(登録商標)ソフトウェアを利用するAffymetrix社GeneChipスキャナー3000 7Gを用いてスキャンして、生データシグナル値をCELファイルの形態で生成するステップ、
10)Affymetrix社ソフトウェアパッケージ(バージョン1.36.1)においてロバストマルチアレイアベレージ(RMA)の実装を使用して、好ましくはR. A. Irizarryら、Exploration, normalization, and summaries of high density oligonucleotide array probe level data. Biostatistics 4, 249~264(2003)において記述されている通りに、CELファイルを正規化して、遺伝子レベル発現値を生成するステップ、
11)affyPLMパッケージ(バージョン1.34.0)を使用して、相対対数発現(RLE)及び正規化非スケール化標準誤差(NUSE)を計算することにより、アレイの品質を評価するステップ。affyPLMパッケージからの出力は、RLE及びNUSE分布両方の箱ひげ図である。RLE箱ひげ図が0を中心として展開していないアレイ及びNUSE箱ひげ図が1を中心として展開していないアレイは、低品質としてフラグ付けされ、その後の分析から除外される。アレイが除外された場合、方法の前ステップが繰り返される。
12)ゼロの平均及び1の標準偏差まですべての試料にわたって正規化された発現値を持つPrcomp R関数を使用して主成分分析(PCA)を実施するステップ。PCAは、データにおける変動のほとんどを保持しながら遺伝子発現データセットの高次元性を削減するための次元削減法として使用される。故に、PCAの性能は、ダウンストリーム分析及び視覚化についてのデータのより低次元の表現を実現する。
13)limmaパッケージ(バージョン3.14.4、http://bioinf.wehi.edu.au/limma)で実装されるモデレート(経験的ベイズ法)t検定を使用して、目的のがん/腫瘍細胞における及び参照細胞株MDA-MB-231におけるCDAの差次的発現を評価するステップ、
ここで、マイクロアレイ分析ステップ10から13は、統計的計算のためのR環境(バージョン2.15.1)を使用して実施される。
【0185】
好ましくは、参照がん細胞株におけるCDA発現レベルと比較した目的のがん/腫瘍におけるCDA発現レベル(ここで、前記参照がん細胞株はMDA-MB-231である)は、EMBL-EBI発現アトラスデータベース(https://www.ebi.ac.uk/gxa/home)、GENEVESTIGATOR(登録商標)データベース(https://genevestigator.com/gv/)、がん細胞株百科事典(https://portals.broadinstitute.org/ccle)及びヒトタンパク質アトラス(https://www.proteinatlas.org/)から選択されるデータベースを参照することにより決定される。
【0186】
遺伝子の発現レベルは、典型的には、関連する細胞/組織におけるRNA転写産物の総量と比較した当該遺伝子についてのRNA転写産物の相対量の観点から提示される。発現レベルは、典型的には、100万あたりの転写産物(TPM)の単位、すなわち、目的の細胞/組織内の100万個のRNA分子あたり、目的の遺伝子からは何個[x]が生じたかで提示される。ここでも、TPMの観点でのRNA転写産物のレベルは、当業者により、定量的リアルタイムPCR又はRNAシーケンシング法等の日常的方法によって取得することができ、そのような情報は、数ある中でも、TCGA、EMBL-EBI発現アトラス、GENEVESTIGATOR(登録商標)データベース(https://genevestigator.com/gv/)、がん細胞株百科事典(https://portals.broadinstitute.org/ccle)及びヒトタンパク質アトラス(https://www.proteinatlas.org/)等の情報源から入手可能である。そのような方法が本明細書では好ましい。TPMでの遺伝子発現レベルの決定のための方法論は、文献、例えば、Wagnerら、(2012) Theory Biosci 131(4):281~285又はMortazavi Aら、(2008)「Mapping and quantifying mammalian transcriptomes by RNA-Seq.」、Nature methods 5(7):621~8において記述されている。
【0187】
好ましくは、CDAを過剰発現しているがん性細胞/腫瘍は、CDA RNA転写産物を140TPMより大きいレベルで含有する。逆に、CDAを過剰発現していないがん性細胞/腫瘍は、好ましくは、CDA RNA転写産物を140TPM以下の(140TPM未満又はそれに等しい)レベルで含有する。代替的見解では、本発明の好ましいがん性細胞/腫瘍は、140TPM以下のCDA発現レベルを有する。故に、本発明に従い処置される特に好ましいがん/腫瘍は、CDAを、140TPM以下、より好ましくは100TPM以下、より好ましくは50TPM以下のレベルまで発現するものである。
【0188】
好ましくは、TPMの単位での、目的のがん/腫瘍におけるCDAの発現レベルは、EMBL-EBI発現アトラスデータベース(https://www.ebi.ac.uk/gxa/home)、GENEVESTIGATOR(登録商標)データベース(https://genevestigator.com/gv/)、がん細胞株百科事典(https://portals.broadinstitute.org/ccle)及びヒトタンパク質アトラス(https://www.proteinatlas.org/)から選択されるデータベースを参照することにより取得される。
【0189】
好ましくは、TPMの単位での、目的のがん/腫瘍におけるCDAのレベルは、前記がん/腫瘍に由来する細胞を使用し、定量的リアルタイムPCR、又はRNAシーケンシング(RNA-seq)及び定量化によって決定される。好ましくは、使用される方法は、RNAシーケンシングである。好ましくは、使用される方法は、以下で言及する「RNA-seq法A」である。
【0190】
TPMの単位での遺伝子の発現レベルは、任意の公知の方法を使用して決定されうるが、好ましくはRNA-seqを使用して決定される。RNA-seq法は、当技術分野において周知であり、広く市販されている。TPMの単位での目的のがんにおけるCDA発現レベルを決定するために、任意の好適なRNA-seq法が使用されうる。RNA-seq法Aと称される下記の方法が好ましく、下記のステップを含む。
1.目的のがん/腫瘍細胞から全RNAを抽出するステップ。これは、標準的なRNA抽出キット、好ましくはQIAGEN AllPrep DNA/RNA Miniキット(Hilden社、Germany)を製造業者の説明書に従って使用して実施されうる。
2.抽出されたRNAを、好ましくは自動電気泳動ツール、好ましくは2100バイオアナライザー(Agilent Technologies社)により、純度について場合により定量化及び評価するステップ。Agilent社バイオアナライザーは、RNA(及びDNA/タンパク質)の定寸、定量化及び品質管理に使用されるマイクロ流体プラットフォームであり、RNA試料のフラグメント化を定量化する「RNAインテグリティーナンバー」(RIN)を提供する。好ましくは、試料は、少なくとも7、好ましくは少なくとも8のRINを有する場合にのみ、プロセスにおいて更に使用される。
3.好ましくはIllumina TruSeq(商標)RNA試料調製キット(Illumina社、San Diego、CA、USA)及び関連プロトコールを使用して、RNAシーケンシングライブラリーを調製するステップ。このプロセスにおいて、好ましくは1試料あたり500~1000μgの全RNAを使用する。このキット及びプロトコールは、当技術分野において周知である。このステップは、下記のステップを含む。
3a.好ましくはRibo-Zero rRNA除去キット(Epicentre社、Madison、WI、USA)を、製造業者の説明書に準拠して使用して、抽出されたRNAを処理して、細菌及び真核生物リボソームRNAを枯渇させるステップ。
3b.残りのRNAを逆転写酵素及びランダムヘキサマーで処理して、長さ100~150塩基、又は好ましくは長さ200~300塩基の一本鎖cDNAフラグメントを作成するステップ。
3c.一本鎖cDNAフラグメントをDNAポリメラーゼI及びRNアーゼHで処理して、二本鎖相補的DNAフラグメント(cDNA)を生成するステップ、並びに
3d.RNA-seqアダプターをcDNAフラグメントの末端にライゲーションして、RNA-seqによって分析することができるアダプター-cDNA配列のライブラリーを生成するステップ。RNA-seqアダプターは、当技術分野において周知であり、任意の好適なアダプターが使用されうる。アダプターは、シーケンシングを可能にする機能エレメント、例えば、増幅エレメント及び一次シーケンシング部位を含有する。好ましくは、アダプターは、Illumina社インデックスアダプターである。アダプターを各cDNAフラグメントの一端にライゲーションして、シングルエンドライブラリーを生成することができ(これはシーケンシングすると1フラグメントあたり1つの「リード」をもたらすことになる)、この場合、ステップ3bにおけるcDNAフラグメント長さは、100~150塩基である。しかしながら、好ましくは、アダプターを各cDNAフラグメントの両端にライゲーションして、ペアエンドライブラリーを生成し(これはシーケンシングすると1フラグメントあたり2つの「リード」、いわゆる「メイトリード」又は「ペアリード」をもたらすことになる)、この場合、ステップ3bにおけるcDNAフラグメント長さは、200~300塩基である。
4.PCRによりアダプター-cDNA配列を場合により増幅するステップ。このステップは、DNAの量が配列分析ステップ5を実施するために不十分である場合に実施されうる。配列分析に必要とされるDNAの量は、当業者に周知である(好ましくは70~135μl、より好ましくは125μlのDNAの20pM溶液が、ステップ5においてシーケンサーのフローセルに充填される)。試料中のDNAの量を評価する方法は日常的であり、任意の好適な方法が使用されうる。好ましくは、使用される方法は、蛍光光度法であり、好ましくはQubit(登録商標)蛍光光度計が使用される。
5.好ましくはIllumina社フローセルシーケンサー、好ましくはIllumina社フローセルHiSeq 2500シーケンサー又はIllumina社フローセルNovaSeq 6000シーケンサーを使用し、好ましくはシングルエンドライブラリーがステップ3において生成される場合には100~150塩基対のシーケンシングサイクルを使用して、より好ましくはペアエンドライブラリーがステップ3において生成される場合には200~300塩基対のシーケンシングサイクルを使用して、アダプター-cDNA配列をシーケンシングするステップ。好ましくは70~135μl、より好ましくは125μlのDNAの20pM溶液が、フローセルに充填される。取得される生データセットは、分析された各フラグメントのユニーク配列識別子、その配列(いわゆる「リード」)、及びリード内の各塩基位置での配列のシーケンサーによる決定における信頼性の指示(いわゆるフレッド品質スコア)を提供するであろう。
6.決定された配列のデータセットから以下を除去することにより、リードの品質フィルタリングしたデータセットを調製するステップ:
i)10未満のフレッド品質スコアを有するリード内の塩基、
ii)10未満のフレッド品質スコアを有する同じリード内の塩基のダウンストリーム(すなわちシーケンシングの方向に続く)である、リード内の塩基、
iii)任意の未決定の(「未定の」)塩基(「N」)を含有するリード、
iv)汚染物質参照ゲノムにマッピングするリードであって、前記汚染物質参照ゲノムがエシェリキア・コリ(E. coli)ゲノムである、リード、及び
v)使用されるRNA-seqライブラリーがペアエンドライブラリーである場合、その「メイトリード」がステップ6(iii)から6(iv)の1つにおいて廃棄されるリード。
7.品質フィルタリングしたリードを、対象種のゲノム、すなわち好ましくはヒトゲノムに整列させるステップ。好ましくは、品質フィルタリングしたリードを、Ensemblデータベースバージョン98、好ましくはゲノムヒトGRCh38及びEnsembl遺伝子参照特色データベース(バージョンEnsemblゲノム45、GENCODE 32)由来のヒト参照ゲノムに整列させる。このステップに好適な整列ツールは、周知であり、広く入手可能であり、任意の好適な整列ツールが使用されうる。好ましくは、整列ツールは、TopHat2(バージョン2.1.1)[Trapnellら、(2010) Nature Biotechnology 28、511~515]である。
8.CDA遺伝子、及び場合により任意の他の目的の遺伝子についてのリードカウントの数を決定するステップ。このステップのためのバイオインフォマティクスツールは、周知であり、広く入手可能であり、任意の好適なツールが使用されうる。好ましくは、1遺伝子あたりのリードカウントは、HTSeqパッケージ(htseqカウント)を使用して決定される。それにより、このステップは、生リードカウントデータを提供する。
9.ステップ8で取得された生リードカウントデータを、100万あたりの転写産物(TPM)の単位に変換するステップ。これは、当技術分野において日常的に使用される、標準的な数学操作である。TPM値の決定は、i)遺伝子長及びii)シーケンシング深度についての生データを正規化することを伴うため、カウントデータをTPMの単位で提供することにより、遺伝子発現レベルの意味のある評価が可能になる。
i)生データにおける遺伝子長正規化に関して、単に遺伝子がより長く、そのためより多くのフラグメントが当該遺伝子と整列することから、より長い遺伝子ではより高いリードカウントが観察されうる。遺伝子長の正規化は、各遺伝子についてのリードカウントを遺伝子長(単位キロベース)で割ることを含む。
ii)シーケンシング深度は、異なる試料における同じ遺伝子間でのリードカウントの比較を改変する、試料間効果である。これを正規化するために、ステップ9i)で取得された1キロベースあたりのリードカウントを、「100万あたりのスケーリング係数」で割り、それ自体は、試料におけるリードの総数を100万で割ることによって取得されるものである。
【0191】
RNA-seqを使用して取得された遺伝子発現データは、RPKM(100万リードあたりの1キロベースあたりのリード)の単位で提示されうる。これは、
i.試料におけるリードの総数を、1,000,000で割って、「100万あたりのスケーリング係数」を提供すること、
ii.1遺伝子あたりのリードカウントを、シーケンシング深度について正規化する「100万あたりの」スケーリング係数によって割り、それにより、100万あたりのリード(RPM)の単位を提供すること、及び
iii.RPM値を、遺伝子長について正規化するキロベースでの遺伝子の長さで割り、それにより、RPKMの単位を提供すること
によって計算される。
【0192】
遺伝子発現の別の単位は、100万リードあたりの1キロベースあたりのフラグメント(FPKM)であり、これは、RPKMと酷似している。RPKMは、シングルエンドRNA-seqが使用される場合に適用可能であり、ここで、すべてのリードはシーケンシングされた単一フラグメントに対応する。FPKMは、ペアエンドRNA-seqに適用可能であり、ここで、2つのリードが単一フラグメントに対応しうるか、又はペアにおける1つのリードがマッピングしなかった場合、1つのリードが単一フラグメントに対応しうる。RPKMとFPKMとの間の唯一の差異は、FPKMが、2つのリードが1つのフラグメントマッピングすることができること(及びそれにより、このフラグメントを2回カウントしないこと)を考慮することである。
【0193】
TPMは、RPKM及びFPKMと酷似している。唯一の差異は、上記の操作(i)から(iii)の順序である。故に、TPMは、次の通りに決定される。
i.1遺伝子あたりのリードカウントを、遺伝子長について正規化するキロベースでの遺伝子の長さで割り、それにより、1キロベースあたりのリード(RPK)の単位を提供すること、
ii.試料における総RPK値を、1,000,000で割って、「100万あたりのスケーリング係数」を提供すること、及び
iii.ステップ(i)で取得されたRPK値を、ステップ(ii)で取得された、シーケンシング深度について正規化する「100万あたりの」スケーリング係数によって割り、それにより、TPMの単位を提供すること。
【0194】
RPKM又はFPKMと比較したTPMを計算する場合の唯一の差異は、TPMを計算する場合は遺伝子長についての正規化が最初に実施されることである。しかしながら、結果は、TPMの単位を使用する場合、各試料におけるすべてのTPMの和が同じ100万ということである。これは、各試料における遺伝子にマッピングされたリードの割合のより意味のある比較を可能にする。
【0195】
TPMの単位でのCDAの発現レベルを決定する、上述したRNA-seq法Aを使用して、上記で定義された通りの対照、すなわち対照細胞又は参照細胞株と比較した、TPMの単位での目的のがん/腫瘍におけるCDAの発現レベルを決定することもでき、ここで、前記参照細胞株は、MDA-MB-231である。これらの実施形態では、RNA-seq法Aは、目的のがん/腫瘍細胞を使用して実施されてよく、対照又は参照細胞を用いて繰り返されてよく、ここで、決定されたTPM値が次いで比較される。代替として、RNA-seq法Aは、目的のがん/腫瘍細胞を使用して実施されてよく、TPMの単位で決定されたCDA発現レベルは、対照又は参照細胞株を使用し、同じ方法を使用して以前に取得された、TPMの単位でのCDA発現レベルについての値と比較される。
【0196】
代替として、遺伝子の発現のレベルは、マイクロアレイを介して決定することができ、これは、当技術分野において標準的な技術である。本発明の文脈において任意の好適なマイクロアレイ技術が使用されうる。マイクロアレイは、何千もの遺伝子の発現の検出を同時に可能にする。
【0197】
マイクロアレイによって決定された遺伝子発現のレベルは、任意のスケール、例えば線形スケールで表現されうる。マイクロアレイからのデータを、好ましくは対数基数2変換によって変換してもよく、これは、値の連続スペクトルを生成し、上方及び下方調節された遺伝子を類似の方式で処理するという利点を有する。係数2によって上方調節された遺伝子は、1のlog2変換値を有する。
【0198】
好ましくは、がん/腫瘍は、対数基数2変換CDA発現レベルが、11.75未満であるものである。そのようながん/腫瘍は、過剰発現されていないCDAとして記述される。好ましくは、がん/腫瘍は、対数基数2変換CDA発現レベルが、11.5未満、より好ましくは11未満、より好ましくは10.5未満、より好ましくは10未満、より好ましくは9.5未満であるものである。
【0199】
好ましくは、がん/腫瘍は、線形CDA発現レベルが6500未満であるものである。そのようながん/腫瘍は、過剰発現されていないCDAとして記述される。好ましくは、がん/腫瘍は、線形CDA発現レベルが、6000未満、より好ましくは5000未満、より好ましくは4000未満、より好ましくは3000未満、より好ましくは2000未満、より好ましくは1500未満であるものである。
【0200】
好ましくは、目的のがん/腫瘍におけるCDAの線形又は対数基数2変換発現レベルは、EMBL-EBI発現アトラスデータベース(https://www.ebi.ac.uk/gxa/home)、GENEVESTIGATOR(登録商標)データベース(https://genevestigator.com/gv/)、がん細胞株百科事典(https://portals.broadinstitute.org/ccle)及びヒトタンパク質アトラス(https://www.proteinatlas.org/)から選択されるデータベースを参照することにより取得される。
【0201】
当業者は、同じがん型の腫瘍間には一部の遺伝子の発現レベルにおいて変動がありうることに気付いている。例えば、一部の乳がんはCDAを過剰発現しうるが、他のものはCDAを過剰発現しない場合がある。故に、好ましくは、本明細書のいずれか他の箇所で好ましいものとして記述されているがん/腫瘍は、好ましくは、CDAが発現されている種類のがん/腫瘍であり、好ましくは、CDAが、
i)過剰発現されている、
ii)過剰発現されていない、
iii)過少発現されている、
iv)過少発現されていない、
v)過剰発現若しくは過少発現されている、又は
vi)過剰発現も過少発現もされていない
ものである。
【0202】
好ましくは、がん/腫瘍は、CDAが過剰発現されていないものである。好ましくは、がん/腫瘍は、CDAが過剰発現されているものである。CDA過剰発現は、上記で定義された通りである。
【0203】
逆に、本明細書のいずれか他の箇所で好ましくないものとして記述されているがんは、好ましくは、それらの種類のがん/腫瘍のみ、好ましくは、CDAが、
i)過剰発現されている、
ii)過剰発現されていない、
iii)過少発現されている、
iv)過少発現されていない、
v)過剰発現若しくは過少発現されている、又は
vi)過剰発現も過少発現もされていない
ものである。
【0204】
好ましくは、がん/腫瘍は、CDAが過剰発現されているものである。CDA過剰発現は、上記で定義された通りである。
【0205】
好ましい実施形態では、がん/腫瘍は、ゲムシタビン及び/又はシタラビン処置に対して抵抗性である。故に、本明細書のいずれか他の箇所で好ましいものとして記述されているがん/腫瘍は、好ましくは、ゲムシタビン及び/又はシタラビン処置に対して抵抗性である種類のがん/腫瘍である。好ましくは、ゲムシタビン及び/又はシタラビン抵抗性がん/腫瘍は、脳がん、好ましくは神経膠腫、より好ましくは多形性膠芽腫である。
【0206】
ヒトタンパク質O-6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)は、アルキル化DNA損傷を除去する。MGMTの発現は、膠芽細胞腫細胞等のがん細胞を、テモゾロミドの細胞毒性効果に対してほぼ完全に抵抗性であるようにし、これは、腫瘍細胞が死滅するように腫瘍細胞を激しく突然変異させることによって、そのがん化学療法活性を発揮する。テモゾロミドは、DNAをアルキル化する(alkalyting)ことによって作用し、それにより、突然変異を引き起こす。
【0207】
本発明の実施例に示す通り、式(I)の化合物は、HPRTアッセイにおいて変異原性ではない。したがって、式(I)の化合物は、MGMTが発現されている、好ましくは過剰発現されているがんを処置する際に、特に役立つ(of use particular use)。故に、本明細書のいずれか他の箇所で好ましいとして記述されているがん/腫瘍は、好ましくは、MGMTが発現されている、好ましくは過剰発現されている種類のがん/腫瘍である。
【0208】
テモゾロミド(4-メチル-5-オキソ-2,3,4,6,8-ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ-2,7,9-トリエン-9-カルボキサミド)は、多形性膠芽腫のための第一選択処置であり、一部の他の脳がんの処置においても使用される。しかしながら、本発明の実施例に示す通り、テモゾロミドは、評価した膠芽細胞腫細胞株の半分未満を有効に死滅させ、テモゾロミド抵抗性細胞株は、本発明の化合物によって有効に死滅した。故に、好ましい実施形態では、がん/腫瘍は、テモゾロミド抵抗性がん/腫瘍である。
【0209】
故に、本明細書のいずれか他の箇所で好ましいとして記述されているがん/腫瘍は、好ましくは、テモゾロミド処置に対して抵抗性である種類のがん/腫瘍である。好ましくは、テモゾロミド抵抗性がん/腫瘍は、脳がん、好ましくは神経膠腫、より好ましくは多形性膠芽腫である。
【0210】
本発明の実施例に示す通り、5-フルオロウラシル抵抗性細胞株は、本発明の化合物によって有効に死滅する。故に、好ましい実施形態では、がんは、フルオロピリミジン抵抗性がんである。故に、本明細書のいずれか他の箇所で好ましいとして記述されているがん/腫瘍は、好ましくは、フルオロピリミジン処置に対して抵抗性である種類のがん/腫瘍である。好ましくは、フルオロピリミジン抵抗性がん/腫瘍は、脳がん、好ましくは神経膠腫、より好ましくは多形性膠芽腫である。好ましくは、フルオロピリミジンは、5-フルオロウラシルである。
【0211】
好ましくは、がん/腫瘍は、テモゾロミド及びフルオロピリミジン処置の両方に対して抵抗性である。
【0212】
がん/腫瘍療法の文脈において、用語「抵抗性」は、当技術分野において明確な且つ十分に理解されている意味を有する。「抵抗性」は、がん/腫瘍が、関連する抗がん剤による処置に積極的に応答しないこと、すなわち、抗がん剤による処置が、がん又はその1つ若しくは複数の症状を低減させる、軽減させる、寛解させる又は排除するのいずれもしない、或いは、処置前のがん、腫瘍又は症状と比べて、腫瘍内のがん細胞を低減させる又は排除するのいずれもしないことを意味している。がん/腫瘍は、処置の始めに抵抗性であってもよく、又は処置中に抵抗性になってもよい。
【0213】
上記で言及した通り、がんの処置又は予防において、式(I)の化合物は、単独で、又は場合により更なる、すなわち1つ若しくは複数の更なる抗がん剤と組み合わせて使用されうる。本発明のすべての態様及び実施形態では、更なる抗がん剤は、当技術分野において公知である任意の好適な抗がん剤でありうる。広範囲の異なる種類の作用物質が、がんの処置において使用するために公知又は提案されており、化学的性質又は作用モードにかかわらず、これらのいずれを使用してもよい。
【0214】
故に、抗がん剤は、自然に又は合成的に誘導又は調製されたかにかかわらず化学分子(例えば、有機小化学分子)、並びにタンパク質及びペプチド等の生体分子(例えば、以下で論じる通りの免疫療法剤)を含んだ。故に、抗がん薬は、化学療法剤又は薬物を含み、これは、広範囲の異なる化学又は機能クラス、及び抗体又は抗体誘導体、並びに、例えば、体内における種々の生理学的プロセス又は細胞、例えば免疫及び/又は抗炎症応答又は細胞等を刺激する、活性化する又は増強するように作用する他の生体分子であってよい。
【0215】
「化学療法」クラス内の抗がん剤の代表例は、フルダラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、メトトレキサート、タキソール、タキソテール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロフォスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン等の白金錯体類、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルバジン、エトポシド、テニポシド、カンパテシン(campathecins)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、L-アスパラギナーゼ、エピムビシン(epimbicm)、5-フルオロウラシル、ドセタキセル及びパクリタキセル等のタキサン類、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、ナイトロジェンマスタード、BCNU、カルムスチン(carmustme)及びロムスチン等のニトロソ尿素類、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン等のビンカアルカロイド類、イマチニブ(imatimb)メシル酸塩、ヘキサメチルメラミン(hexamethyhnelamine)、又はトポテカンを含むがこれらに限定されない。
【0216】
抗がん剤は、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、ATPアーゼ阻害剤、チロホスチン、プロテアーゼ阻害剤、ハービマイシンA、ゲニステイン、エルブスタチン、及びラベンダスチンAを含みうる。
【0217】
一実施形態では、抗がん剤は、下記の作用物質のクラス:アルキル化剤、植物アルカロイド、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、抗葉酸薬、ピリミジン類似体、プリン類似体、DNA代謝拮抗物質、タキサン類、エピポドフィロトキシン、ホルモン療法、レチノイド類、光増感剤又は光線力学的療法において使用するための作用物質、血管新生阻害剤、抗有糸分裂剤、イソプレニル化阻害剤、細胞周期阻害剤、アクチノマイシン、ブレオマイシン、アントラサイクリン、MDR阻害剤及びCa2+ATPアーゼ阻害剤の1つ又は組合せから選択されうるがこれらに限定されない。
【0218】
更なる抗がん剤は、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、成長阻害因子、ホルモン、可溶性受容体、デコイ受容体、モノクローナル又はポリクローナル抗体、単一特異性、二重特異性又は多重特異性抗体、モノボディ、ポリボディから選択されうるがこれらに限定されない。
【0219】
代替的な抗がん剤は、エリスロポエチン及びトロンボポエチン等の成長又は造血因子、並びにその成長因子模倣物から選択されうるがこれらに限定されない。
【0220】
1つの代表的な実施形態では、薬物は、小分子、より特定すれば、小分子化学療法剤である。小分子剤は、2000Da未満、より特定すれば1800、1500、1200、1000、900、800又は700Da未満、典型的には1000Da未満の分子量を有するとして定義されうる。例えば、小分子剤は、100~1000Da、例えば100~800Da又は300~700Daの範囲内のサイズを有しうる。
【0221】
代替的な実施形態では、更なる抗がん剤は、免疫療法剤である。がんを処置するための免疫応答の誘発は、がん「免疫療法」として公知である。免疫療法は、例えば、細胞ベースの療法、抗体療法又はサイトカイン療法を伴いうる。3つのアプローチはいずれも、がん細胞が多くの場合に異なる細胞表面マーカー又はがん抗原を有し、これらが免疫系によって検出可能であるという事実を活かすものである。これらの抗原は、最も一般的にはタンパク質であるが、炭水化物等の他の分子も含みうる。免疫療法の別の例は、チェックポイント阻害によるものであり、それによりチェックポイントタンパク質が阻害される。これについて以下で更に論じる。
【0222】
故に、免疫療法は、がん細胞を攻撃するように免疫系を促すために使用され、以下で更に論じる通り、種々の分子が免疫療法ベースのアプローチの標的となりうる。例えば、がんにおける免疫療法の介入のための標的は、CD52、CD30、CD33、CD20、CD152(CTLA4としても公知)及びCD279(プログラム細胞死1タンパク質PD-1としても公知)等の「CD」(「分化抗原群」)タンパク質;血管内皮成長因子(VEGF)等の成長因子;上皮成長因子受容体(EGFR)又はヒト上皮成長因子受容体2(HER2)等の成長因子受容体;リンパ球活性化遺伝子3(LAG3);並びにB7-H3及びB7-H4等のB7ファミリータンパク質を含む。しかしながら、これらは代表例にすぎず、他の分子ががんにおける免疫療法の介入の標的となりうる。
【0223】
免疫療法剤は、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質でありうる。免疫療法剤は、抗体、サイトカイン及びチェックポイント阻害剤から選択されうる。上記で注記した通り、治療用抗がん抗体は、チェックポイントタンパク質を含むある範囲の標的を有しうる。故に、抗体は、チェックポイント阻害剤でありうる。
【0224】
故に、第一の例では、免疫療法剤は抗体である。抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体、単一特異性、二重特異性又は多重特異性抗体、モノボディ及びポリボディから、又は実際には当技術分野において現在公知である多くの抗体様又は抗体誘導体分子のいずれかから選択されうる。したがって、用語「抗体」は、本明細書において広く使用され、任意のそのような抗体及び当技術分野で公知のように任意の抗体フラグメント、誘導体又はバリアントを含む。抗体は、任意の好都合な又は所望の種、クラス又はサブタイプのものであってよい。更に、抗体は、天然、誘導体化又は合成であってよい。
【0225】
したがって、抗体は、以下のものでありうる。
(a)任意の動物、例えば、慣例的に使用される動物、例えば、ヒツジ、ウサギ、ヤギ若しくはマウスのいずれか、又は卵黄に由来する、免疫グロブリンの種々のクラス又はサブクラス、例えば、IgG、IgA、IgM、IgD又はIgEのいずれか、
(b)モノクローナル又はポリクローナル抗体、
(c)インタクト抗体、又は、モノクローナル若しくはポリクローナルの抗体のフラグメント、該フラグメントは、抗体の結合領域、例えばFc部を欠いているフラグメント(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv)、インタクト抗体において重鎖成分を接続するジスルフィド結合の還元的開裂によって取得されたいわゆる「半分子」フラグメントを含有するものである。Fvは、2本の鎖として発現される軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含有するフラグメントとして定義されうる、
(d)モノクローナル抗体、抗体のフラグメント、ヒト化抗体、キメラ抗体、又は合成的に作製された若しくは改変された抗体様構造を含む、組換えDNA又は他の合成技術によって生成又は修飾された抗体。
【0226】
抗体の機能的誘導体又は「同等物」、例えば、一本鎖抗体も含まれる。一本鎖抗体は、融合した一本鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子として定義されうる。抗体並びに抗体のフラグメント及び誘導体を生成するための方法は、当技術分野において周知である。
【0227】
好ましい実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0228】
多くの場合、モノクローナル抗体は、修飾のない抗体であり、現在使用されている治療用抗体のほとんどは、このカテゴリーに該当する。しかしながら、本発明の一実施形態では、抗体、例えばモノクローナル抗体は、更なる追加の分子、例えば有毒物質又は放射性物質とコンジュゲート又は融合される。故に、コンジュゲート又は融合された抗体は、別の分子に接合し、これは、細胞にとって毒性(例えば薬物)又は放射性のいずれかである。抗体は、がん細胞の表面上の特異的抗原と結合し、毒素又は放射線を腫瘍に向ける。
【0229】
公知の及び承認された抗体は、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタン、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ及びトラスツズマブを含む。
【0230】
第二の例では、免疫療法剤は、サイトカインである。サイトカインは、インターロイキン(IL)及びインターフェロン(IFN)等の免疫修飾剤、並びに刺激因子、腫瘍壊死因子(TNF)及び他の調節分子も含む。サイトカインは、それらの機能、分泌細胞又は作用の標的に基づき、リンホカイン、インターロイキン及びケモカインとして分類されてきた。各サイトカインは、細胞機能を改変する細胞内シグナル伝達のカスケードを開始する、適合する細胞表面受容体を有する。がんの文脈において、サイトカインは、腫瘍内に存在する多くの細胞型によって生成される。サイトカインは当技術分野において周知であり、すべてのそのようなサイトカインは、本発明に従う使用のために網羅される。そのため、一実施形態では、免疫療法剤は、サイトカインである。好ましい実施形態では、サイトカインは、インターロイキン又はインターフェロンである。
【0231】
インターロイキンは、免疫系に対して幅広い効果を持つサイトカインの群である。インターロイキン(IL)の例は、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15及びIL-17である。
【0232】
インターフェロンは、抗ウイルス応答に通常関与する免疫系によって生成されるサイトカインであるが、がんの処置においても用途を有する。インターフェロン(IFN)には、3つの群:I型(IFNα及びIFNβ)、2型(IFNγ)及び比較的新しく発見されたIII型(IFNλ)がある。
【0233】
その機能的に同等のバリアント、誘導体及びフラグメントも含む上記で論じたサイトカインのすべての公知の形態も、本発明において使用されうる。故に、用語「サイトカイン」は、本明細書において使用される場合、公知のサイトカインポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、及びサイトカインポリペプチドのフラグメント、又はその誘導体を、そのようなフラグメント、バリアント又は誘導体が活性又は「機能的」である限り、すなわち、関連性のあるサイトカインの少なくとも1つの機能又は活性(例えば生物活性)を保持する限り、含む。サイトカインは、組換えポリペプチド、合成ポリペプチドであってよく、又は天然源から単離されてよい。好適なサイトカインは、市販されており、当業者に公知であろう、例えば、ヒトサイトカインは、GenScript社(Piscataway、NJ、USA)から入手可能である。
【0234】
第三の例では、免疫療法剤は、免疫チェックポイントを標的とする作用物質である、すなわち、チェックポイント阻害剤である。チェックポイントタンパク質は、どの細胞が健康であり、どの細胞を破壊すべきであるかを免疫系に指し示すことによって、免疫系を抑制する。チェックポイントタンパク質は、T細胞活性化を防止することにより、免疫系に対する「ブレーキ」として作用する。細胞がその表面上に十分なチェックポイントタンパク質を有さない場合、該細胞は免疫系によって破壊されうる。がん細胞の場合、細胞ががん性であるというシグナルを伝達している分子がありうるが、細胞表面上に十分なチェックポイントタンパク質があれば、細胞は免疫応答を回避することができ、チェックポイントタンパク質は一部のがん免疫療法において不成功に寄与すると推測されてきた。
【0235】
幾つかのチェックポイント阻害剤、例えばCreelan (2014) Cancer Control 21:80~89において記述されている阻害剤が公知であり、本発明において使用されうる。
【0236】
チェックポイント阻害剤の例は、トレメリムマブ(CP-675,206)、イピリムマブ(MDX-010)、ニボルマブ(BMS-936558)、MK-3475(以前はランブロリズマブ)、ウレルマブ(BMS-663513)、抗LAG-3モノクローナル抗体(BMS-986016)、及びバビツキシマブ(キメラ3G4)を含む。これらのチェックポイント阻害剤のすべてが、本発明において使用されうる。
【0237】
免疫療法のための代替的な選択肢は、免疫細胞療法に関し、本発明を、そのような療法、例えば養子細胞移入と組み合わせて使用することもできる。がんを処置するための若干数のT細胞ベースの療法が開発されており、養子細胞移入(ACT)として公知であるこれらの処置は、近年の間にますます魅力的になってきている。3つの主要なACT戦略がこれまでに活用されてきた。これらのうち第一の、最も開発が進んだものは、末梢又は腫瘍部位からの、患者自身の腫瘍反応性T細胞(腫瘍浸潤リンパ球(TIL)として公知)の単離を伴う。これらの細胞をエクスビボで拡張し、患者に再注入する。
【0238】
2つの代替療法が利用可能であり、これらは、腫瘍を認識することができる受容体による、患者自身のT細胞の修飾を伴う。1つの選択肢では、がん抗原に向けて活性を有するTcRを単離及び特徴付けることができ、TcRをコードしている遺伝子をT細胞に挿入し、患者に再注入することができる。この療法は、一部の患者において固形腫瘍を縮小させることが示されてきたが、有意な欠陥に関連する:使用されるTcRは、患者の免疫型と適合しなくてはならない。したがって、TcRの使用の代替として、T細胞におけるキメラ抗原受容体(CAR)の発現を伴う療法も示唆されてきた。CARは、TcR複合体のシグナル伝達ドメインに連結された抗体を含む融合タンパク質であり、好適な抗体が選択されると、腫瘍に対してT細胞を向けるために使用されうる。TCRとは異なり、CARは、レシピエントとMHC適合している必要はない。
【0239】
代替として、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞であってよく、これは、場合により、CARを発現するように修飾されうる。
【0240】
そのため、本発明によれば、免疫療法剤は、細胞、特にリンパ球等の免疫細胞、特に上述した通りのT細胞又はNK細胞等であってよく、例えば、T細胞は、TILであってよく、又はTcR若しくはCARを発現するように修飾されうる。NKは、CARを発現するように修飾されうる。
【0241】
更なる抗がん剤のための代替的な選択肢は、マイクロRNA(miRNA)である。マイクロRNAは、植物、動物及び一部のウイルスにおいて見られる小さなノンコーディングRNA分子(約22個のヌクレオチドを含有する)であり、これは、RNAサイレンシング及び遺伝子発現の転写後調節において機能する。miRNAは、mRNA分子内の相補配列との塩基対合を介して機能する。結果として、これらのmRNA分子は、mRNA鎖の2片への開裂、そのポリ(A)尾部の短縮によるmRNAの不安定化、又はmRNAのタンパク質への非効率的な翻訳によってサイレンシングされる。miRNAは、miRNAが、折り重なって短ヘアピンを形成するRNA転写産物の領域に由来するのに対し、siRNAが二本鎖RNAのより長い領域に由来することを除いて、上記で言及したsiRNAと似ている。多くのmiRNAは、種々の種類のがんとの連結を有することが分かっており、したがって、時に「オンコミア(oncomir)」と称される。
【0242】
マイクロRNAは、がんの処置におけるマイクロRNAベースの腫瘍学治療薬において使用されうる。miRNA治療薬を開発するための論理的根拠は、異常に発現されたmiRNAががんの発生において主要な役割を果たす、及び、例えばmiRNA置きかえ療法により、miRNA機能をアンタゴナイズするか又は修復するかのいずれかによりこれらのmiRNA欠損を補正することが、治療的利益を提供しうるという前提に基づく。
【0243】
任意の好適なmiRNAが、本発明に従う更なる抗がん剤として使用されうる。miRNAは、遊離形態であってよい、すなわち、別の分子と結合していなくてよい。代替として、miRNAは、別の分子、例えば本明細書において論じられる通りの抗体とコンジュゲート又は結合していてよい。
【0244】
最も好ましくは、更なる抗がん剤は、テモゾロミド、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、シタラビン及びギリアデル(gliadel)(登録商標)からなる群から選択される。好ましくは、更なる抗がん剤は、テモゾロミドである。好ましくは、更なる抗がん剤は、5-フルオロウラシルである。好ましくは、更なる抗がん剤は、ゲムシタビンである。好ましくは、更なる抗がん剤は、シタラビンである。好ましくは、更なる抗がん剤は、ギリアデル(gliadel)(登録商標)である。
【0245】
式(I)の化合物及び更なる抗がん剤は、組成物、すなわち医薬組成物の形態で、本発明に従い使用されうる。本発明は、式(I)の化合物と1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤とを含み、場合により更なる抗がん剤を更に含む、医薬組成物を提供する。
【0246】
式(I)の化合物及び更なる(すなわち1つ又は複数の更なる又は第二の)抗がん剤を含む製品(特に医薬製品)は、がんの(すなわち腫瘍の)処置又は予防において、別個に、順次に又は同時に使用するための組合せ調製物であってよく、又は式(I)の化合物が更なる抗がん剤と共製剤化された製品であってよい。
【0247】
故に、式(I)の化合物及び更なる抗がん剤は、単一組成物で一緒に又は別個投与のために別個の組成物で製剤化されうる。これは、更なる抗がん剤の性質及びその選択される又は必要とされる投与モードによって決まることになる。
【0248】
本発明において使用するための組成物は、薬学分野において公知である技術及び手順に従い任意の好都合な様式で、例えば、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤、担体又は添加剤を使用して、製剤化されうる。そのような製剤は、薬学又は獣医学への使用のためのものであってよい。そのような製剤において使用するための好適な賦形剤、添加剤及び担体は、当業者に公知である。
【0249】
「薬学的に許容される」は、本明細書において言及される場合、組成物の他の成分と適合性であり、且つレシピエントに生理学的に許容される成分を指す。組成物及び担体又は添加剤材料の性質、投薬量等は、選択及び所望の投与ルート、処置の目的等に従い、日常的様式で選択されうる。
【0250】
故に、「薬学的に」又は「薬学的に許容される」は、適宜哺乳動物、とりわけヒトに投与された場合に、有害な、アレルギー性又は他の不都合な反応を生成しない、分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容される担体又は添加剤は、任意の種類の非毒性の固体、半固体若しくは液体充填剤、賦形剤、封入材料又は製剤化助剤を指す。
【0251】
医薬組成物は、製剤化のために薬学的に許容されるビヒクルを含有する。これらは、特に、等張滅菌生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウム又は二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウム又はマグネシウム等又はそのような塩の混合物)、又は、場合に応じて、滅菌水若しくは生理食塩水の添加時に、溶液の投与を可能にする、乾燥、フリーズドライ組成物であってよい。
【0252】
本発明の化合物は、錠剤、コーティング錠、鼻腔用スプレー剤、液剤、乳剤、リポソーム剤、散剤、カプセル剤又は持続放出形態等、従来の薬理学的投与形態で提示されうる。従来の医薬添加剤及び通常の生成方法が、これらの形態の調製に用いられうる。
【0253】
医薬組成物を調製するために、有効量の式(I)の化合物又は本発明に従う更なる抗がん薬を、薬学的に許容される担体又は水性媒体に溶解又は分散することができる。組成物は、任意の公知の担体、賦形剤又は添加剤を含みうる。例えば、非経口投与に好適な製剤は、好都合なことに、概して塩化ナトリウム、グリセリン、グルコース、マンニトール、ソルビトール等を使用して好ましくはレシピエントの血液と等張にされた、薬学的活性成分の滅菌水溶液及び/又は懸濁液を含む。
【0254】
任意の医薬組成物に含まれうる添加剤は、数ある中でも、保存剤(p-ヒドロキシベンゾエート等)、キレート化剤(EDTA等)、安定化剤、張性調整剤、抗菌剤、凝集/懸濁化剤、湿潤剤、溶媒及び溶媒系、抗酸化剤並びに緩衝化剤を含む。特定の所要の目的のために医薬組成物を製剤化する場合に、そのような添加剤及びそれらの量を選択及び最適化することは、当業者の能力内である。
【0255】
組成物は、好ましくは、水溶液の形態である。そのような溶液は、当技術分野において公知の方法に従って調製され、次いで、注射バイアル又はアンプルに充填される。
【0256】
医薬組成物の形態、投与ルート、投薬量及びレジメンは、処置されるがんの性質、疾病の重症度、患者の年齢、体重及び性別等、又は代替として所望の処置持続時間によって必然的に決まる。
【0257】
処置は、場合により更なる抗がん剤とともに、式(I)の化合物の投与を伴う。
【0258】
本発明に従って使用するための式(I)の化合物は、任意の適切なルートを介して対象に投与されうる。式(I)の化合物を含む組成物又は製剤にも同じことがあてはまる。
【0259】
式(I)の化合物、したがってそれを含む組成物及び製剤は、例えば、経口、経鼻、非経口、静脈内(intravenal)、局所、直腸又はくも膜下腔内投与に好適な形態で提示されうる。好ましくは、化合物は、全身(例えば、静脈内)投与に好適な形態で提示される。
【0260】
当技術分野において一般的な又は標準的な任意の投与モード、例えば、医薬分野において公知である任意の好適な方法による、身体の内表面及び外表面の両方への、注射、注入、局所投与、吸入、経皮投与等が使用されうる。故に、投与モードは、経口、経鼻、腸内、直腸、膣内、経粘膜、局所若しくは非経口投与、又は吸入によるものを含む。投与は、腫瘍に直接的(腫瘍内投与)であってよい。
【0261】
経口又は非経口投与が好ましい。好ましい非経口の投与手段は、静脈内、筋肉内、腹腔内、頭蓋内及び皮下投与、並びに脳脊髄液への投与(くも膜下腔内投与)である。より好ましくは、投与は、腹腔内又は静脈内投与、最も好ましくは静脈内投与である。
【0262】
好ましくは、投与は、経口又は静脈内である。
【0263】
静脈内投与は、静脈内注射又は静脈内注入、最も好ましくは静脈内注入(例えば、注入ポンプによる)でありうる。
【0264】
式(I)の化合物及び更なる抗がん剤は、同じ又は異なるルートによって投与されうる。
【0265】
上記で注記した通り、式(I)の化合物及び更なる抗がん剤は、同時に、別個に又は順次に投与されうる。好ましい実施形態では、式(I)の化合物及び更なる抗がん剤は、順次に、例えば別々の時間に、すなわち、同じ組成物中で一緒にせずに投与される。代替的な実施形態では、式(I)の化合物及び更なる抗がん剤は、同じ時間に、例えば同じ組成物中又は別個の組成物中で一緒に投与される。別個投与のタイミングは、特定の式(I)の化合物又は使用される特定の更なる抗がん剤、製剤及び/若しくは投与モードに従って決定されうる。故に、式(I)の化合物は、更なる抗がん剤の前又は後に投与されうる。
【0266】
例えば、更なる抗がん剤が最初に投与されてよく、式(I)の化合物は、更なる抗がん剤送達の最適時間を標的部位に合わせるように好適な時間間隔で後に投与されてよい、又は逆も然りである。そのような決定は、完全に臨床医の日常的技量内である。故に、例えば、式(I)の化合物は、更なる抗がん剤の少なくとも又は最大20、30、40、50、60、70若しくは90分又は2、3、4、5若しくは6時間前又は後に、好ましくは非経口的に、より好ましくは静脈内に投与されうる。
【0267】
用量及び投薬量は、日常的様式で決定されてよく、分子の性質、処置の目的、患者の年齢、投与モード等によって決まりうる。上述した通りの本発明の任意の治療剤を、薬学的に許容される添加剤と組み合わせて、治療用組成物を形成することができる。用量は、一度に摂取される薬剤の指定量を指す、すなわち、用語「単回用量」及び用量は、交換可能に使用される。処置経過は、ある期間にわたって、複数回用量、すなわち、複数の単回用量を含みうる。
【0268】
本発明の方法及び使用において、好ましくは有効量の式(I)の化合物及び存在するならば任意選択の更なる抗がん剤が投与される。換言すれば、用量は、好ましくは、有効量の式(I)の化合物及び存在するならば任意選択の更なる抗がん剤を含む。
【0269】
実施例に示す通り、式(I)の化合物は、腫瘍を死滅させるために必要とされる用量と比較して高い用量に耐性を示す。この特性は、多くの化学療法化合物とは異なり、実際に、ほとんどの化学療法化合物は、がんを死滅させるために必要とされる用量で実質的な副作用を有する。本発明の実施例は、有利なことに、式(I)の化合物が、腫瘍を死滅させるために必要な用量をはるかに超える用量で投与されうることを指し示す。
【0270】
実施例に示す通り、マウスは、300mg/kg及び2000mg/kgの式(I)の化合物の単回用量に耐性を示したが、8000mg/kgの単回用量には耐性を示さなかった。これらのデータは、マウスにおいて、式(I)の化合物の最大耐量が少なくとも2000mg/kgであるが8000mg/kg未満であることを示唆している。マウス用量とヒト用量との間の変換は、係数0.081である(Nairら、(2016) Basic Clin Pharm. 7(2): 27~31)。したがって、実施例中のデータは、ヒトにおいて、式(I)の化合物の最大耐量が少なくとも162mg/kgであるが648mg/kg未満であることを指し示す。
【0271】
故に、好ましくは、式(I)の化合物は、405mg/kg以下、好ましくは324mg/kg以下、より好ましくは243mg/kg以下、より好ましくは162mg/kg以下、より好ましくは81mg/kg以下、より好ましくは40.5mg/kg以下、より好ましくは24.3mg/kg以下の用量で投与される。好ましくは、式(I)の化合物は、少なくとも10mg/kg、より好ましくは少なくとも20mg/kg、より好ましくは少なくとも30mg/kg、より好ましくは少なくとも40mg/kg、より好ましくは少なくとも500mg/kg、より好ましくは少なくとも100mg/kgの用量で投与される。
【0272】
好ましくは、式(I)の化合物は、10mg/kgから405mg/kgの間、好ましくは20mg/kgから324mg/kgの間、より好ましくは20mg/kgから243mg/kgの間、より好ましくは30mg/kgから162mg/kgの間、より好ましくは40mg/kgから81mg/kgの間の用量で投与される。
【0273】
これらの用量は、ヒト対象への好ましい用量である。
【0274】
投薬量及び投薬量レジメンは、対象の年齢、体重、状態及び性別、処置の目的、処置されている疾患、患者の年齢及び/又は状態、投与モード等のパラメーターに基づいて変動しうる。
【0275】
適切な投薬量及びレジメンは、容易に確立されうる。適切な投薬量単位は、容易に調製されうる。投薬レジメンは、日常的様式で決定されうる。
【0276】
処置は、場合により更なる抗がん剤とともに、式(I)の化合物の単回投与を含みうるか、又は、場合により更なる抗がん剤とともに、式(I)の化合物の繰り返し投与を含みうる。式(I)の化合物及び存在するならば更なる抗がん剤の投薬レジメンは、同一である必要はない。代替として、処置は、式(I)の化合物の単回投与及び更なる抗がん剤の繰り返し投与を含みうる、又は逆も然りである。
【0277】
好ましくは、式(I)の化合物は、好ましくは上述した用量のいずれか1つで、1、2、3、4、5又は6日ごと、より好ましくは2、3又は4日ごと、より好ましくは3日ごとに、合計2から10回、より好ましくは3から8回、より好ましくは4から6回、より好ましくは5回の投与にわたって、投与される。
【0278】
しかしながら、化合物の性質、処置の目的、処置されている疾患、患者の年齢及び/又は状態、投与モード等に基づいて、適切な投薬レジメン及びその中の関連性のある用量を決定することは、当業者の能力内であろう。
【0279】
本発明は、式(I)の化合物及び更なる抗がん剤を含む製品又はキットも提供する。キット又は製品は、本明細書において記述されている使用又は方法のいずれかにおいて使用されうる、すなわち、がんを処置する又は予防する際に使用するためのものでありうる。特に、キット又は製品は、同時に、別個に又は順次に使用するためのものである。好ましくは、式(I)の化合物は、及び場合により更なる抗がん剤も、非経口投与、好ましくは静脈内投与のために製剤化される。
【0280】
本発明のキットの各成分(すなわち、各抗がん剤)は、別個のコンパートメント又はベッセル内に提供されうる。好都合且つ実践的である場合、成分の混合物が提供されうる。成分は、乾燥、例えば結晶化、フリーズドライ若しくは凍結乾燥形態で又は溶液中で提供されてよく、典型的には、そのような液体組成物は、水性であり、トリス、HEPES等の標準的な緩衝液で緩衝化されているであろう。
【0281】
好ましくは、キットは、がんを処置する際に使用するためのものであり、例えば、本明細書において記述されている通りの本発明の方法又は使用において使用するためのものである。
【0282】
本発明の化合物(すなわち、式(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、(Iva)、(IVb)、(IVc)、(IVd)、(IVe)及び(IVf)の化合物)は、市販されているか、文献において公知であるか、又は、従来の合成手順によって、標準的な技術に従い、入手可能な出発材料から、適切な試薬及び反応条件を使用して取得されうるかのいずれかである。この点において、当業者は、とりわけ「Comprehensive Organic Synthesis」、B. M. Trost及びI. Fleming著、Pergamon Press、1991及び「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、T.W. Greene及びP.G.M. Wutz、Wiley-Interscience (1999)を参照しうる。
【0283】
本発明の化合物は、例えば、Berry and Associates社、Toronto Research Chemicals社、Sigma Aldrich社、Carbosynth社、Trilink Biotech社及び他の周知の商業的供給業者から市販されている。
【0284】
本発明について、下記の非限定的な例を参照して更に記述する。
【実施例0285】
材料及び方法
動物
動物の収容、実験及び処分を含むこの作業のすべての態様は、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals:第8版(National Academy Press, Washington, D. C.、2011)に概して従い、AAALAC認定実験動物施設内で実施した。動物のケア及び使用プロトコールは、Pharmacology Discovery Services Taiwan, Ltd社においてIACUCによって審査及び承認された。
【0286】
細胞培養
原発性神経膠腫神経幹(GNS)細胞(G7、G14、G144、G166)を、神経幹細胞培地(50%DMEM-F12(Thermofisher社、カタログ番号21041025)、50%ニューロベーサル培地(Thermofisher社、カタログ番号10888-022)、N2(Life Technologies社、カタログ番号A-003-E)及びB27補給剤(Life Technologies社、カタログ番号12587010)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Life Technologies社、カタログ番号11360-039)、2mMのグルタマックス(Life Technologies社、カタログ番号35050038)、1mMのHEPES(Fisher Scientific社、カタログ番号BP299-1)、0.1mMのβ-メルカプトエタノール(Life Technologies社、カタログ番号31350010)、1×非必須アミノ酸(Life Technologies社、カタログ番号11140-035)、0.006%ウシ血清アルブミン(Sigma社、カタログ番号A8577-10ML)、4μg/mlのヘパリン(Sigma社、カタログ番号H3149-25KU)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、20ng/mlのhEGF(R&D Systems社、カタログ番号236-EG-200)、10ng/mlのbFGF(Peprotech社、カタログ番号100-18B))中、ポリ-D-リジン(Merck Millipore社、カタログ番号A-003-E)及びラミニン(R&D Systems社、カタログ番号3446-005-01)コーティングされたプレート上で培養した。
【0287】
HCT116は、10%ウシ胎児血清及び100U/mlのペニシリン100U/mlのストレプトマイシンを補充したMcCoy 5a変法培地(Life Technologies社、カタログ番号36600021)中で成長させた。
【0288】
Arpe 19は、10%ウシ胎児血清及び100U/mlのペニシリン100U/mlのストレプトマイシンを補充したDMEM:F12培地(Life Technologies社、21331-020)中で成長させた。
【0289】
HAP1は、10%ウシ胎児血清及び100U/mlのペニシリン100U/mlのストレプトマイシンを補充したIMDM(Gibco社、カタログ番号12440-05)中で成長させた。
【0290】
上記で言及しなかった細胞株は、10%ウシ胎児血清及び100U/mlのペニシリン100U/mlのストレプトマイシンを補充したDMEM(Sigma社、カタログ番号D6429)中で成長させた。すべての細胞を、5%CO2の加湿ウォータージャケットインキュベーター内、37℃で維持した。細胞は、70から90%の間の集密で継代した。
【0291】
薬物
本発明の実施例で使用される化合物は、次の通りに取得した(CAT番号=カタログ番号)。
【0292】
【0293】
生存アッセイ
96ウェルプレート中、100μlの対応する培地中4000個の細胞を播種した。翌日、DMSO中で希釈した薬物を、8つの濃度で三連で添加した。薬物を、100μMから出発し、4倍希釈系列として添加した。細胞を薬物とともに72時間にわたってインキュベートした。細胞増殖を、MTTアッセイにより、製造業者のプロトコールに従って評価した(ATCC、カタログ番号30-1010K)。細胞生存を、DMSOのみにより処理された細胞の生存に対して正規化した。実験は3回実施したものであり、データは9つのウェルの平均±SEMを表す。
【0294】
MTD(最大耐量)
5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン及び5-ホルミル-2'-デオキシシチジン(Berry and Associates社)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)/Solutol(登録商標)R HS15/リン酸緩衝溶液(PBS)(5/5/90、v/v/v)中、30及び200及び400mg/mLの濃度で、5mL/kgの投薬体積での腹腔内投与用に製剤化した。10又は20mL/kgの投薬体積を適用した。
【0295】
体重23±3gの雄ICRマウスは、BioLasco Taiwan社(Charles River Laboratories社ライセンシー下)から提供を受けた。動物を、使用前3日間にわたって馴化させ、良好な健康状態を確認した。すべての動物を、温度(20~24℃)、湿度(30%~70%)及び12時間の明/暗サイクルが制御された衛生環境に維持した。滅菌された標準的な実験食[MFG(オリエンタル酵母工業株式会社、日本)]及びオートクレーブ処理された水道水への自由なアクセスを与えた。
【0296】
5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン及び5-ホルミル-2'-デオキシシチジンを、体重23±3gの雄ICRマウス3匹の群に腹腔内投与した。動物に、300mg/kgの初期用量を受けさせた。動物が72時間にわたって生存したら、次のコホートのための用量を増大させた。1匹又は複数の動物が死亡したら、次のコホートのための用量を減少させた。すべての動物が上限で生存した場合、又は3つの用量レベルを試験してしまった場合、又は上限若しくは下限に到達した場合は、試験を停止した。各用量レベルで、動物を、急性毒性症状(死亡率、けいれん、振戦、筋弛緩、鎮静等)及び自律神経効果(下痢、唾液分泌、流涙、血管拡張、立毛等)の存在について、最初の30分間、1、24、48及び72時間で再度、観察した。体重を投薬前及び72時間で記録した。動物を観察し、化合物投与後毎日、死亡率を注記した。組織収集なしにすべての動物に対して肉眼的剖検を実施し、研究設計表に基づいて次の用量レベルを決定した。
【0297】
複数MTD
5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン及び5-ホルミル-2'-デオキシシチジン(Berry and Associates社)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)/Solutol(登録商標)R HS15/リン酸緩衝溶液(PBS)(5/5/90、v/v/v)中、15、50及び100mg/mLの濃度で、20mL/kgの投薬体積での腹腔内投与用に製剤化した。試験化合物を3日ごとに合計5回用量にわたって(q3d×5)投薬した。
【0298】
体重23±3gの雄ICRマウスは、BioLasco Taiwan社(Charles River Laboratories社ライセンシー下)から提供を受けた。動物を、使用前3日間にわたって馴化させ、良好な健康状態を確認した。すべての動物を、温度(20~24℃)、湿度(30%~70%)及び12時間の明/暗サイクルが制御された衛生環境に維持した。滅菌された標準的な実験食[MFG(オリエンタル酵母工業株式会社、日本)]及びオートクレーブ処理された水道水への自由なアクセスを与えた。
【0299】
動物を、急性毒性症状(死亡率、けいれん、振戦、筋弛緩、鎮静等)及び自律神経効果(下痢、唾液分泌、流涙、血管拡張、立毛等)の存在について、各処置(1、4、7、10及び13日目)後の最初の30分間、並びに最終用量(13日目)後1、24、48及び72時間で再度、観察した。死亡率を同じスキームで注記した。加えて、体重を、各処置前並びに最終投与の24、48及び72時間後に記録した。組織収集なしにすべての動物に対して肉眼的剖検を実施した。
【0300】
異種移植片
最初に適切な体積のDMSOを予め秤量した化合物に添加し、次いで、適切な体積のSolutol(登録商標)及びPBS(5%DMSO/5%Solutol(登録商標)/90%PBS)を添加することによって、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン及び5-ホルミル-2'-デオキシシチジン(Berry and Associates社)投薬溶液を、各用量投与の前に新しく調製した。標準作用物質、テモゾロミドは、オスロ大学病院から粉末形態で提供を受け、最初に適切な体積のDMSOを予め秤量した化合物に添加し、次いで、適切な体積のSolutol(登録商標)及びPBS(5%DMSO/5%Solutol(登録商標)/90%PBS)を添加することによって、各用量の前に新しく製剤化した。5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン及び5-ホルミル-2'-デオキシシチジンを、20mL/kgの用量体積で投与した。標準作用物質、テモゾロミドを、10mL/kgの用量体積で投与した。
【0301】
ヒト脳悪性神経膠腫細胞株、U87-MG(ATCC HTB-14、上皮膠芽細胞腫)を、米国タイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手した。細胞を、インキュベーター内、5%ウシ胎児血清(FBS)を含有する最小必須培地中、37℃、5%CO2で培養した。
【0302】
BioLasco Taiwan社(Charles River Laboratories社ライセンシー下)から入手した6~7週齢の雌(nu/nu)ヌードマウスを使用した。動物を換気されたケージ(IVC、36ミニアイソレーターシステム)内に個々に収容した。5匹の動物への割り当ては、27×20×14(単位cm)であった。すべての動物を、温度(20~24℃)、湿度(30%~70%)及び12時間の明/暗サイクルが制御された衛生環境に維持した。標準的な実験食[MFG(オリエンタル酵母工業株式会社、日本)]及びオートクレーブ処理された水道水への自由なアクセスを与えた。
【0303】
生存可能なU87-MG(ATCC HTB-14)細胞を、雌nu/nuマウスの右脇腹に皮下(SC)移植した(0.2mL/マウスのPBS中5×106細胞/マウス)。群平均腫瘍体積がおよそ129mm3から131mm3に到達したら、腫瘍移植マウスを、各群が8匹の動物を含有する4つの処置群に分け、用量投与を開始した(1日目として表示される)。
【0304】
2000mg/kgの5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び対応するビヒクル(5%DMSO/5%Solutol(登録商標)/90%PBS)を、3日に1回、合計5回投与にわたって腹腔内に(IP)投与した。40mg/kgのテモゾロミドを、1日に1回、合計5回投与にわたって経口的に(PO)投与した。
【0305】
腫瘍体積、体重、死亡率及び明白な毒性の兆候をモニターし、週に2回、29日間にわたって記録した。腫瘍体積(mm3)を、楕円体の公式:長さ×(幅)2×0.5に従って推定した。腫瘍成長阻害(T/C)を下記の式によって計算した:
%T/C=(Tn/Cn)×100%
Cn:対照群においてn日目に測定された腫瘍質量
Tn:処置群においてn日目に測定された腫瘍質量
%T/C値≦42%は、有意な抗腫瘍活性(#)とみなした。
【0306】
腫瘍成長阻害パーセント(TGI)も下記の式によって計算した:
%TGI=(1-(Tn/Cn))×100%
%TGI値≧58%は、有意な抗腫瘍活性(#)とみなした。
【0307】
二元ANOVA(登録商標)、続いて、ボンフェローニ検定も使用して、研究中;1日目から29日目の陰性対照群と比較した統計的に有意な差異を解明した。差異はp<0.05(*)で有意とみなした。
【0308】
研究完了時に、実験におけるすべての動物から腫瘍を切除し、写真を撮影した。
【0309】
HPRTアッセイ
HPRT変異原性アッセイは、V79細胞中で実施した。50,000個のV79細胞を、6枚のウェルプレート中、3つの異なる濃度のd5hmC又はd5fCのいずれか(1、10、100μM)で24時間にわたって処理した。DMSOを陰性対照として使用した。処理後、細胞を必要に応じてT75フラスコ中で9日間にわたって二次培養して、HPRT突然変異体の発現を可能にした。10,000個の細胞を、選択培地(2.5μg/mlの6TG)を加えた10枚のレプリカペトリ皿(100×15mm)に再平板培養した。
【0310】
生存(相対的平板効率)は、200個の細胞を、選択培地を加えない4枚のレプリカペトリ皿(60×15mm)に平板培養することによって決定した。コロニーを固定し、ギムザ染色し、7日後にカウントした。突然変異頻度は、すべてのプレート上でカウントされた突然変異体の総数を、平板効率を再播種することによって補正した播種された細胞の数で割ったものとして表現される。実験は3回実施したものであり、データは三連の平均±SEMを表す。
【0311】
アポトーシスフローサイトメトリー
100,000個の細胞を6ウェルプレート中に播種し、100μMのテモゾロミド、2'-デオキシ-5-ヒドロキシメチルシチジン、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又はDMSOとともに72時間にわたってインキュベートした。アポトーシス細胞の検出は、アネキシンV-7-アミノ-アクチノマイシンD(7-AAD)アポトーシス検出キット(Nordic Biosite AS社、カタログ番号640922)を製造業者のプロトコールに従って使用して評価した。
【0312】
蛍光活性化セルソーティング分析をLSRフォルテッサ(BD Biosciences社)で実施し、データをFlowJo社ソフトウェアで分析した。すべての実験を三連で実施した。
【0313】
ウエスタンブロット
ウエスタンブロットを、先に記述した通りに(Towbinら、1979. Biotechnology、24、145~149)実施した。抗CDA抗血清(Abcam社、カタログ番号Ab82346)を製造業者の推奨濃度に従って使用した。二次抗体にコンジュゲートされたホースラディッシュペルオキシダーゼによるルミノールの酸化によって産生されたシグナルによって、タンパク質を定量化した。
【0314】
(実施例1)
腫瘍細胞に対する細胞毒性
上述した通りに(材料及び方法)成長させたHeLa細胞を、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン及び5-ホルミル-2'-デオキシシチジンで処理した。これらの化合物による3日間の処理後、細胞生存を上述した通りに(材料及び方法)評価した。5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンによる処理後の生存はDMSO処理細胞と異なっていなかったが、驚くべきことに、5-ホルミル-2'-デオキシシチジンはHeLa細胞に対して細胞毒性であることが分かった。
【0315】
その5-ホルミル-2'-デオキシシチジンの細胞毒性効果を、2つのよく説明されている細胞毒性化合物、5-フルオロウラシル及びテモゾロミド(temozolamide)と比較した。5-ホルミル-2'-デオキシシチジンは、5-フルオロウラシル(IC50>25μM)及びテモゾロミド(IC50>25μM)の両方よりもHeLa(IC50=0.76μM)細胞に対して細胞毒性であることが決定された。
【0316】
5-ホルミル-2'-デオキシシチジンは子宮頸癌(HeLa)細胞に対して細胞毒性であるという知識により、研究を二方向に拡張した:(i)更なる化合物を評価した:5-カルボキシル-2'-デオキシシチジン;及び(ii)広範囲のヒトがん細胞株に対するそれらの細胞毒性効果を評価した(Table 1(表2))。
【0317】
【0318】
Table 1(表2)に示す通り、5-カルボキシル-2'-デオキシシチジンは、評価したがん細胞株のいずれにおいても細胞毒性特性を有さなかった。興味深いことに、5-ホルミル-2'-デオキシシチジンは、広範囲のヒトがん細胞に対して細胞毒性であり、広範囲のがんの処置におけるその潜在的使用を指し示している。5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンは、より狭い細胞毒性プロファイルを有し、実際に、このシチジン誘導体は、評価した2つの細胞株:U87-MG、グレードIV神経膠腫細胞(IC50>0.3340μM)及びHAP1慢性骨髄性白血病(Lukemia)細胞(IC50>3.027μM)に対してのみ細胞毒性であった。これは、この化合物が患者により耐性良好でありうることを示唆している。5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンは、多形性膠芽腫細胞(U87-MG)株に対して最も細胞毒性であるとして観察された。
【0319】
5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンの最も大きい細胞毒性効果は神経膠腫グレードIV(U87-MG)細胞において観察されたことから、これらの化合物の細胞毒性活性を、より広範囲の患者由来のグレードIV、神経膠腫細胞において評価した(Table 2(表3))。前アッセイにおける活性の欠如により、5-カルボキシル-2'-デオキシシチジンは、このより厳密な分析には含まれなかった。
【0320】
【0321】
Table 2(表3)に示す通り、関連化合物による処理後、12のうち5つのグレードIV、神経膠腫細胞株が5-ホルミル-2'-デオキシシチジンによって死滅し、12のうち6つのグレードIV、神経膠腫細胞株が5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンによって死滅した。これは、広い範囲の神経膠腫に対するこれらの化合物の能力を指し示している。これらの結果を、グレードIV、神経膠腫のための現在の最前線の処置であるテモゾロミド及び広く使用される抗がん薬である5-フルオロウラシルの両方に対してベンチマークした。テモゾロミドは、12のうち5つの神経膠腫、グレードIV細胞株を有効に死滅させ、5-フルオロウラシルは、12のうち11の神経膠腫、グレードIV細胞株を死滅させた。故に、データは、5-ホルミル-2'-デオキシシチジンが、グレードIV、神経膠腫のための現在の最前線の処置と同程度有効であること、及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンが、グレードIV、神経膠腫のための現在の最前線の処置よりも有効であることを実証する。
【0322】
更に、Table 2(表3)は、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンの両方が、現在の最前線の処置(テモゾロミド)に対して抵抗性である細胞株に対して細胞毒性であることを実証する。これは、これらの化合物がそのようなテモゾロミド抵抗性腫瘍のための現在の処置よりも良好な性能を示しうるという証拠を提供する。代替として、Table 2(表3)は、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び/又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンと組み合わせたテモゾロミドが最適処置であろうことを指し示す。
【0323】
(実施例2)
正常細胞に対する細胞毒性
実施例1で実証される通り、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンは、がん、特にグレードIV神経膠腫の処置のための有用な治療薬、特にテモゾロミド処置に対して抵抗性であるものである。
【0324】
本発明者らは、これらの化合物が正常ヒト細胞をどの程度まで死滅させるかを更に調査した;正常ヒト細胞に対する低い細胞毒性は、抗がん剤にとって有利な特性である。したがって、種々の正常ヒト細胞株におけるこれらの化合物の細胞毒性を調査した(Table 3(表4))。細胞を成長させ、生存アッセイを上述した通りに(材料及び方法)実施した。
【0325】
【0326】
Table 3(表4)に示す通り、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン(dexycytidine)は、評価した正常細胞株のいずれに対しても細胞毒性ではなかった。5-ホルミル-2'-デオキシシチジンは、1つの正常ヒト細胞株(HaCat、ケラチノサイト)のみに対して細胞毒性であった。これらの結果は、これらの化合物が有効ながん化学療法薬であるだけでなく、ヒトによって耐性良好でもありうることを指し示す。
【0327】
(実施例3)
最大耐量
5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン及び5-ホルミル-2'-デオキシシチジンは、正常細胞に対して限定された効果を有することから、本発明者らは、がん化学療法に通常は関連する副作用を引き起こすことなく、化合物を比較的高用量で与えることができると考えた。マウスにおけるこれらの化合物の最大耐量(MTD)は、上述した通りに(材料及び方法)決定した。MTDスキームを開発した(
図1A)。研究のエンドポイントは72時間後の生存であったが、動物における急性毒性症状(死亡率、けいれん、振戦、筋弛緩、鎮静等)及び自律神経効果(下痢、唾液分泌、流涙、血管拡張、立毛等)の存在を、最初の30分間、並びに1、24、48及び72時間で再度、モニターした。体重を投薬前及び72時間で記録した。
【0328】
結果は、マウスが、300mg/kg及び2000mg/kgの5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンの単回用量に耐性を示しうることを指し示した。マウスは、8000mg/kgの5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンの単回用量に耐性を示すことはできなかった(示されていない)。これらの結果は、マウスにおいて、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン両方の最大耐容単回用量が少なくとも2000mg/kgであるが8000mg/kg未満であることを示唆している。
【0329】
マウス用量とヒト用量との間の変換は、係数0.081である(Nairら、(2016) Basic Clin Pharm. 7(2): 27~31)。したがって、データは、ヒトにおいて、式(I)の化合物の最大耐容単回用量が少なくとも162mg/kgであるが648mg/kg未満であることを指し示す。
【0330】
幾日にもわたる複数回の反復投与後に耐容されうるがん化学療法薬は、有利である。したがって、本発明者らは、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンの両方についての繰り返し最大耐量評価を、上述した通りに(材料及び方法)行った。両方の処置群における単回用量として耐性良好であったことから、300mg/kg、1000mg/kg及び2000mg/kgの用量が繰り返し複数回耐量評価に選択された。
【0331】
マウスに、指示された化合物を、指示された用量で3日に1回、合計5回用量にわたって腹腔内に注射した。生存がこの研究のエンドポイントであり、研究の主要エンドポイントは体重であったが、動物における急性毒性症状(死亡率、けいれん、振戦、筋弛緩、鎮静等)及び自律神経効果(下痢、唾液分泌、流涙、血管拡張、立毛等)の存在も、最初の30分間、並びに1、24、48及び72時間で再度、モニターした。体重を投薬前及び72時間で記録した。
【0332】
未処置の動物における体重は、評価したいずれかの用量の5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンのいずれかで処置した動物と統計的に異なっていなかった(
図1B)。これらの結果は、これらの化合物が指示された用量で長期間にわたって耐性良好であることを指し示す。
【0333】
(実施例4)
インビボ細胞毒性
5-ホルミル-2'デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンを、多形性膠芽腫マウス異種移植片モデルにおいて、上述した通りに(材料及び方法)評価した。U87-MG細胞を、ヌードマウスの脇腹に皮下注射した。腫瘍を上述した通りに(材料及び方法)形成させた。腫瘍が129mm3から131mm3の間に到達した後、動物を4つの群-2つの処置群、陰性対照群及び陽性対照群に分けた。2つの処置群は、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンであった。処置群のマウスに、1回2000mg/kg用量の5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンのいずれかを、3日ごとに合計5回用量にわたって受けさせた。陰性対照群は、IP注射がビヒクルを含有し化合物を含有しなかったことを除いて、処置群と同一に処置した。陽性対照群を、5回の日用量の40mg/kgのテモゾロミドで処置した。
【0334】
腫瘍体積(
図1C)、体重(
図1D)、死亡率、及び明白な毒性の兆候をモニターし、週に2回、29日間にわたって記録した。腫瘍体積(mm
3)を、楕円体の公式:長さ×(幅)
2×0.5に従って推定した。腫瘍成長阻害パーセント(%TGI)を、下記の式を使用して決定した:%TGI=(1-[(Tn)/(Cn)])×100、式中、Tn=「n」日目における処置群の平均腫瘍体積であり、Cn=「n」日目における対照群の平均腫瘍体積である。陰性対照群のものと比較して、%T/C値≦42%又はTGIパーセント値≧58%は、有意な抗腫瘍活性とみなした。二元ANOVA(登録商標)、続いて、ボンフェローニ検定も使用して、研究中;1日目から29日目の陰性対照群と比較した統計的に有意な差異を解明した(*p<0.05)。
【0335】
図1Cは、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンによる処置が、すべての時点で、テモゾロミドで実現されたものに匹敵する、腫瘍体積における著しい減少をもたらしたことを指し示す。
【0336】
研究の終わりに、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンの両方が、有意な抗腫瘍活性、それぞれ83%及び93%TGIを示した(
図1E)。テモゾロミドで処置した陽性対照群は、94%TGIを示した。すべての化合物は、マウスによって耐性良好であり、処置の結果として体重における有意な変化は観察されなかった(
図1D)。この研究の完了時に、腫瘍をマウスから切断し、撮影(
図1F)及び測定し(
図1G)、処置群の両方で著しい細胞毒性効果が観察された。
【0337】
対照群の1匹のマウスがこの実験中に死亡し、このマウスの腫瘍体積は29日目に報告しなかったが、それ以前の日々についてはこのマウスの腫瘍体積が含まれる。
【0338】
まとめると、これらの驚くべき結果は、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンが、多形性膠芽腫細胞(神経膠腫、グレードIV)を効率的に死滅させ、正常細胞に対して強細胞毒性ではないことを実証する。更に、これらの化合物は、マウスにおいて耐性良好であり、マウスにおいて最小限の副作用での腫瘍体積における著しい低減を実現する。結果は、本発明の化合物を使用してヒトがんを処置することができ、該化合物は、非がん性細胞を死滅させることなく腫瘍細胞を死滅させる高用量で使用されうることを実証する。故に、抗がん薬としてのこれらの化合物の使用には広い治療域がある。
【0339】
(実施例5)
細胞毒性対細胞静止作用
上記の細胞株アッセイは、代謝活性を測定するものであり、そのため、細胞分裂及び細胞死の阻害の間を区別しない。したがって、5-ホルミル-2'デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンが、感受性細胞を死滅させているか又はそれらの細胞周期を遅延させているかを評価した。SF-188グレードIV神経膠腫細胞を、指示された濃度の、DMSO、テモゾロミド、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンのいずれかで処理した。細胞を収穫し、アネキシンV(ホスファチジルセリンと結合するその能力によってアポトーシス細胞を検出する)及び7AAD(インタクトな細胞膜を容易に通過しないDNA染色;したがって、損なわれた膜を持つ細胞が選択的に染色されることになる)で染色し、フローサイトメトリー(cytometery)によって上述した通りに(材料及び方法)分析した。DMSO又はテモゾロミドで処理したSF-188細胞は、類似のサイトメトリープロファイルを産出し、テモゾロミド処理対照における死細胞の量がわずかに増大した。フローサイトメトリープロファイルによれば、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンで処理したSF-188細胞の大部分が死滅した(
図2A)。5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンに曝露したSF188細胞は死滅し、細胞周期チェックポイントで停止しないことが明確である。
【0340】
(実施例6)
2'-デオキシ糖誘導体の要件
広く使用されているがん化学療法薬である5-フルオロウラシルは、細胞毒性である複数のバリアントを有し、これらのバリアントは、ヌクレオシド(5-フルオロウリジン(flurouridine)及び5-フルオロ(fluro)-2'-デオキシウリジン)及び核酸塩基5-フルオロウラシルを含む。本発明者らは、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンのリボヌクレオシド及び核酸塩基バリアントも細胞毒性であるか否かを評価した。
【0341】
Table 1(表2)に示す通り、5-ホルミル-2'-デオキシシチジンは、HeLa細胞に対して細胞毒性である。HeLa細胞における5-ホルミルシチジン及び5-ホルミルシトシンの細胞毒性を、上述した通りの生存アッセイにおいて評価した。驚くべきことに、5-フルオロウリジン及び5-フルオロウラシルとは対照的に、5-ホルミルシチジンも5-ホルミルシトシンもHeLa細胞に対して細胞毒性ではなかった(
図2B)。
【0342】
Table 1(表2)は、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンがU87-MG細胞に対して細胞毒性であることを示す。U87-MG細胞における5-ヒドロキシメチルシチジン及び5-ヒドロキシメチルシトシンの細胞毒性を、上述した通りの生存アッセイにおいて評価した。驚くべきことに、5-フルオロウリジン及び5-フルオロウラシルとは対照的に、5-ヒドロキシメチルシチジン及び5-ヒドロキシメチルシトシンは、U87-MG細胞に対して細胞毒性ではないことが示された(
図2C)。
【0343】
これらの結果は、本発明の化合物の細胞毒性に2'-デオキシリボース糖が必要であることを指し示す。今度はこの結果が、驚くべきことに、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンがフルオロピリミジン類(fluropyrimidines)とは根本的に異なる細胞経路を活用することを指し示す。
【0344】
(実施例7)
シチジンデアミナーゼの非効果
変異ヌクレオシド及びヌクレオチド類似体は、多くの場合、シチジンデアミナーゼ(CDA)によりヌクレオチドプールから取り出される。CDAは、ゲムシタビン及びシトシンアラビノシドという2つの一般的なヌクレオチド類似体抗がん剤を不活性化する。CDAによって不活性化されない抗がん剤が望ましいであろう。5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンはシチジン誘導体であるため、本発明者らは、CDAを発現している細胞が5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンによる処理に対して抵抗性であろうと仮定した。
【0345】
しかしながら、驚くべきことに、実際には、Table 4A(表5)に示す通り、CDA発現と、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンのいずれかに対する抵抗性又は感受性との間に、相関は観察されなかった。Table 4(表5及び表6)におけるIC50データは、Table 1(表2)におけるものと同一である。指定された細胞株におけるCDA発現レベルを、EMBL発現アトラス(https://www.ebi.ac.uk/gxa/home、検索語CDAを使用)を使用して同定した。CDA発現は、Wagnerら、(2012) Theory Biosci 131(4):281~285及びMortazavi Aら、(2008)「Mapping and quantifying mammalian transcriptomes by RNA-Seq.」、Nature methods 5(7):621~8において記述されている通り、100万あたりのRNA転写産物(TPM)として報告される。1つを超える値が報告された場合、最低値を使用した。
【0346】
【0347】
細胞毒性と薬物曝露との間の線形相関は、不十分なフィット(2d5fcについての線形モデル、Rz=0.00173;2d5hmCについての線形モデル、Rz=0.02262)を示した。データは、EMBLからのデータと一緒に、CDA発現が、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンの感受性又は抵抗性のいずれにも関係がないことを示唆している。
【0348】
加えて、種々の神経膠腫細胞株のCDA発現レベル(TPM)を決定し、Table 4B(表6)に示す。指定された細胞株におけるCDA発現レベルを、Barretina, Jら、(2012) The Cancer Cell Line Encyclopedia enables predictive modelling of anticancer drug sensitivity. Nature. 483:603~7において記述されているがん細胞株百科事典(https://portals.broadinstitute.org/ccle)を使用して同定した。CDA発現は、Wagnerら、(2012) Theory Biosci 131(4):281~285において記述されている通り、100万あたりのRNA転写産物(TPM)として報告される。1つを超える値が報告された場合、最高値を使用した。
【0349】
【0350】
(実施例8)
変異原性作用欠如
多形性(Glibolastoma)膠芽腫のための現在の最前線の処置-テモゾロミドは、強力な突然変異原である。実際に、テモゾロミドは、突然変異している腫瘍細胞によりそのがん化学療法活性を非常に激しく発揮するため、腫瘍細胞は死滅する。テモゾロミドは、DNAをアルキル化(alkalyate)して突然変異を引き起こすことによって作用する。MGMT-アルキル化DNA損傷を除去することを司るタンパク質-の発現は、膠芽細胞腫細胞を、テモゾロミドの細胞毒性効果に対してほぼ完全に抵抗性にする。
【0351】
したがって、本発明者らは、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンが、類似の作用機序を有するか否かを調査した。これらの化合物の変異原性を、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)アッセイにおいて上述した通りに(材料及び方法)評価した。HPRTアッセイに示す通り、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンも5-ホルミル-2'-デオキシシチジンも、評価されたいずれの濃度においても哺乳動物の細胞に対して遺伝毒性ではなかった(
図3)。これらの結果は、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン及び5-ホルミル-2'-デオキシシチジンが突然変異原ではないこと、すなわち、それらの細胞毒性効果が変異原性活性によるものではないことを指し示す。
【0352】
(実施例9)
他の化合物の細胞毒性対HeLa細胞
HeLa細胞を、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン、5-ホルミルシチジン又は5-クロロ-2'-デオキシシチジンのいずれかで処理した。100、25、6.25、1.56、0.39、0.1、0.02又は0.006μMの濃度のこれらの化合物による3日間の処理後、細胞生存をMTTアッセイによって上述した通りに(材料及び方法)評価した。
【0353】
図4に示す通り、5-ホルミル-2'-デオキシシチジンによる処理後、5-ホルミルシチジン又は5-クロロ-2'-デオキシシチジンのいずれかによる処理後よりも著しく大きい細胞毒性効果が観察される。
【0354】
(実施例10)
他の化合物の細胞毒性対神経膠腫細胞
U87-MG細胞(神経膠腫、グレードIV)を、100、25、6.25、1.56、0.39、0.1、0.02又は0.006μMの濃度の、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン、5-カルボキシ-2'-デオキシシチジン、テモゾロミド、5-フルオロウラシル、5-ブロモ-2'-デオキシシチジン、5-ヨード-2'-デオキシシチジン又は5-クロロ-2'-デオキシシチジンのいずれかで処理した。これらの化合物による3日間の処理後、細胞生存をMTTアッセイによって上述した通りに(材料及び方法)評価した。
【0355】
細胞培養
U87-MG細胞株を、10%ウシ胎児血清を補充したDMEM(Sigma社、カタログ番号D6429)中で成長させた。すべての細胞を、5%CO2の加湿ウォータージャケットインキュベーター内、37℃で維持した。細胞は、70から90%の間の集密で継代した。
【0356】
生存アッセイ
96ウェルプレート中、100μlの対応する培地中4000個の細胞を播種した。翌日、DMSO中で希釈した薬物を、100、25、6.25、1.56、0.39、0.1、0.02又は0.006μMの濃度で三連で添加した。細胞を薬物とともに72時間にわたってインキュベートした。細胞増殖を、MTTアッセイにより、製造業者のプロトコールに従って評価した(ATCC、カタログ番号30-1010K)。細胞生存を、DMSOのみにより処理された細胞の生存に対して正規化した。実験は3回実施したものであり、データは9つのウェルの平均±SEMを表す。
【0357】
Table 5(表7)に示す通り、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンはいずれも、細胞毒性対U87-MG細胞の観点から、5-ブロモ-2'-デオキシシチジン、5-ヨード-2'-デオキシシチジン及び5-クロロ-2'-デオキシシチジンを含む試験した他の化合物よりも驚くほど良好に性能を示した。
【0358】
【0359】
加えて、U87-MG細胞を、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン(d5fC)、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン(d5hmC)、5-クロロ-2'-デオキシシチジン(5CldC)、5-ブロモ-2'-デオキシシチジン(5BrdC)、5-ヨード-2'デオキシシチジン(5IdC)及びチミジンで処理した。結果を
図5に示す。d5hmC及びd5fCは、神経膠腫細胞に対して、5CldC、5BrdC、5IdC及びチミジンよりも著しく細胞毒性である。
【0360】
96ウェルプレート中、100μlの対応する培地中4000個の細胞を播種した。翌日、DMSO中で希釈した薬物を、100、25、6.25、1.56、0.39、0.1、0.02又は0.006μMの濃度で三連で添加した。細胞を薬物とともに72時間にわたってインキュベートした。細胞増殖を、MTTアッセイにより、製造業者のプロトコールに従って評価した(ATCC、カタログ番号30-1010K)。細胞生存を、DMSOのみにより処理された細胞の生存に対して正規化した。実験は3回実施したものであり、データは平均±SDを表す。
【0361】
(実施例11)
チミジンシンターゼを介して媒介されない効果
細胞培養
U87-MG細胞株を、10%ウシ胎児血清を補充したDMEM(Sigma社、カタログ番号D6429)中で成長させた。すべての細胞を、5%CO2の加湿ウォータージャケットインキュベーター内、37℃で維持した。細胞は、70から90%の間の集密で継代した。
【0362】
生存アッセイ
96ウェルプレート中、100μlの対応する培地中4000個の細胞を播種した。翌日、DMSO中で希釈した薬物を、8つの濃度で三連で添加した。薬物を、100μMから出発し、4倍希釈系列として添加した。細胞を薬物とともに72時間にわたってインキュベートした。細胞増殖を、MTTアッセイにより、製造業者のプロトコールに従って評価した(ATCC、カタログ番号30-1010K)。細胞生存を、DMSOのみにより処理された細胞の生存に対して正規化した。実験は3回実施したものであり、データは3つのウェルの平均±SDを表す
【0363】
結果を
図6に示す。5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンによる細胞毒性は、U87-MG細胞におけるチミジンの添加によって救済されない。この結果は、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンが、チミジンシンターゼを阻害することによって作用しないことを指し示す。
【0364】
(実施例12)
テモゾロミドとの組合せ療法
細胞培養
多形性膠芽腫細胞株(U87-MG)を、10%ウシ胎児血清を補充したDMEM(Sigma社、カタログ番号D6429)中で成長させた。すべての細胞を、5%CO2の加湿ウォータージャケットインキュベーター内、37℃で維持した。細胞は、70から90%の間の集密で継代した。
【0365】
生存アッセイ
96ウェルプレート中、100μlの対応する培地中4000個の細胞を播種した。翌日、DMSO中で希釈した薬物を、8つの濃度で三連で添加した。薬物を、100μMから出発し、4倍希釈系列として添加した。細胞を薬物とともに72時間にわたってインキュベートした。細胞増殖を、MTTアッセイにより、製造業者のプロトコールに従って評価した(ATCC、カタログ番号30-1010K)。細胞生存を、DMSOのみにより処理された細胞の生存に対して正規化した。実験は3回実施したものであり、データはこれらの実験の平均を表す。
【0366】
図7に示す通り、テモゾロミドに対して抵抗性であるヒト多形性膠芽腫細胞株を、テモゾロミド単独、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン(d5fC)、又はd5fC及びテモゾロミドの組合せで処理した。テモゾロミド及びd5fCの組合せは、いずれかの化学物質単独よりも、ヒト多形性膠芽腫を処置する際に有効であった。
【0367】
図8に示す通り、テモゾロミドに対して抵抗性であるヒト多形性膠芽腫細胞株を、テモゾロミド単独、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン(d5hmC)、又はd5hmC及びテモゾロミドの組合せで処理した。テモゾロミド及びd5hmCの組合せは、いずれかの化学物質単独よりも、ヒト多形性膠芽腫を処置する際に有効であった。
【0368】
故に、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン及び5-ホルミル-2'-デオキシシチジンは、テモゾロミドと相乗的に作用する。
【0369】
(実施例13)
ウリジン類似体
5-メトキシメチル-2'-デオキシウリジン及び5-アセトキシメチル-2'-デオキシウリジンの細胞毒性効果を評価した。
【0370】
細胞培養
U87-MG細胞株を、10%ウシ胎児血清を補充したDMEM(Sigma社、カタログ番号D6429)中で成長させた。すべての細胞を、5%CO2の加湿ウォータージャケットインキュベーター内、37℃で維持した。細胞は、70から90%の間の集密で継代した。
【0371】
生存アッセイ
96ウェルプレート中、100μlの対応する培地中4000個の細胞を播種した。翌日、DMSO中で希釈した薬物を、8つの濃度で三連で添加した。薬物を、100μMから出発し、4倍希釈系列として添加した。細胞を薬物とともに72時間にわたってインキュベートした。細胞増殖を、MTTアッセイにより、製造業者のプロトコールに従って評価した(ATCC、カタログ番号30-1010K)。細胞生存を、DMSOのみにより処理された細胞の生存に対して正規化した。実験は3回実施したものであり、データは9つのウェルの平均±SEMを表す。
【0372】
図9に示す通り、U87-MG多形性膠芽腫細胞株は、漸増濃度の5-メトキシメチル-2-デオキシウリジン又は5-アセトキシメチル-2'-デオキシウリジンによる処理を切り抜けることができない。したがって、5-メトキシメチル-2-デオキシウリジン及び5-アセトキシメチル-2'-デオキシウリジンは、特に多形性膠芽腫に対して有効な抗がん剤である。
【0373】
(実施例14)
5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸の細胞毒性(HeLa)
細胞培養
HeLa細胞株を、10%ウシ胎児血清を補充したDMEM(Sigma社、カタログ番号D6429)中で成長させた。すべての細胞を、5%CO2の加湿ウォータージャケットインキュベーター内、37℃で維持した。細胞は、70から90%の間の集密で継代した。
【0374】
生存アッセイ
96ウェルプレート中、100μlの対応する培地中4000個の細胞を播種した。翌日、DMSO中で希釈した薬物を、8つの濃度で三連で添加した。薬物を、100μMから出発し、4倍希釈系列として添加した。細胞を薬物とともに72時間にわたってインキュベートした。細胞増殖を、MTTアッセイにより、製造業者のプロトコールに従って評価した(ATCC、カタログ番号30-1010K)。細胞生存を、DMSOのみにより処理された細胞の生存に対して正規化した。実験は3回実施したものであり、データは9つのウェルの平均±SEMを表す。
【0375】
図10Aに示す通り、HeLa子宮頸癌細胞は、漸増濃度の5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸による処理を切り抜けることができない。これは、ヒトがん、例えば子宮頸癌の処置における5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸の有用性を実証している。
【0376】
(実施例15)
5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸の細胞毒性(神経膠腫)
U87-MG細胞(神経膠腫、グレードIV)を、100、25、6.25、1.56、0.39、0.1、0.02又は0.006μMの濃度の、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸のいずれかで処理した。これらの化合物による3日間の処理後、細胞生存をMTTアッセイによって上述した通りに(材料及び方法)評価した。
【0377】
細胞培養
U87-MG細胞株を、10%ウシ胎児血清を補充したDMEM(Sigma社、カタログ番号D6429)中で成長させた。すべての細胞を、5%CO2の加湿ウォータージャケットインキュベーター内、37℃で維持した。細胞は、70から90%の間の集密で継代した。
【0378】
生存アッセイ
96ウェルプレート中、100μlの対応する培地中4000個の細胞を播種した。翌日、DMSO中で希釈した薬物を、100、25、6.25、1.56、0.39、0.1、0.02又は0.006μMの濃度で三連で添加した。細胞を薬物とともに72時間にわたってインキュベートした。細胞増殖を、MTTアッセイにより、製造業者のプロトコールに従って評価した(ATCC、カタログ番号30-1010K)。細胞生存を、DMSOのみにより処理された細胞の生存に対して正規化した。実験は3回実施したものであり、データは少なくとも3つのウェルの平均±SDを表す。
【0379】
図10Bに示す通り、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸及び5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸はいずれも、U87-MG神経膠腫細胞に対して細胞毒性であった。
【0380】
(実施例16)
CDA発現
種々の神経膠腫細胞株の線形及び対数基数2変換CDA発現レベルを決定した。指定された細胞株におけるCDA発現レベルを、GENEVESTIGATOR(登録商標)データベース(https://genevestigator.com/gv/)を使用し、CDA、生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)、プラットフォーム:Affymetrix社Human Genome U133 2.0アレイを検索することによって同定した。結果を、
図11から
図13及びTable 6(表8)に示す。
【0381】
図11は、種々のがんについて決定されたCDA正規化Log2 CDA発現レベルを示す。
図12は、種々のがんについて決定された線形CDA発現レベルを示す。
図13A及び
図13Bは、種々のヒト脳腫瘍におけるCDA正規化Log2発現レベルを示す。
図14A及び
図14Bは、種々のヒト脳腫瘍における線形CDA発現レベルを示す。
【0382】
以下のTable 6(表8)は、種々の細胞株のCDA発現レベル並びにそれらの細胞株における2d5hmC及び/又は2d5fcについてのIC50値を示す。IC50値は、上述した通りに(材料及び方法及び実施例1)取得した。
【0383】
【0384】
以下のTable 7(表9)は、種々の細胞株の線形CDA発現レベル並びにそれらの細胞株における2d5hmC及び/又は2d5fcについてのIC50値を示す。IC50値は、上述した通りに(材料及び方法及び実施例1)取得した。
【0385】
【0386】
まとめると、これらの結果は、中枢神経系のすべての試験したがんを含む多くのがんが、CDAを過剰発現せず、むしろ低レベルのCDAを発現することを実証する。結果は、CDA発現と、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン又は5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジンのいずれかに対する感受性との間に、相関がないことも実証する。
【0387】
(実施例17)
血液脳関門透過性
血液脳関門透過性は、BioAssay systems社製の並行人工膜透過性アッセイキット(PAMPA)を使用して測定した。製造業者の説明書に準拠して、透過性を決定した。
【0388】
製造業者の説明書:1. 別個の遠心管中、500μLの500μM試験化合物を調製する:25μLのDMSO中10mM試験化合物+475μLのPBSを混合する。透過性対照を使用する場合、それらも500μMに希釈する:25μLの透過性対照+475μLのPBSを混合する。2. 別個のチューブ中、各試験化合物及び対照について200μM平衡基準を調製する:80μLの500μM試験化合物又は対照を、120μLのPBSと混合する。化合物が膜を透過化し、完全に平衡(equibilibrium)に到達することができる場合、200μMがドナー及びアクセプターウェル中溶液の最終濃度となる。次に、別個のチューブ中、5μLのDMSO+245μLのPBSを混合して、ブランク対照を調製する。平衡基準及びブランク対照を翌日の分析のために取っておく。3. 300μLのPBSを、アクセプタープレート中のウェルに添加する。4. ドナープレートをそのトレイ内に置いたまま、5μLのドデカン中4%レシチンをドナープレートのウェル膜に直接的に添加する。ピペットチップで膜を穿刺しないように注意する。5. 200μLの各500μM試験化合物及び500μM透過性対照を、ドナープレートの二連ウェルに添加する。注記:本発明者らは、すべての実験変数を少なくとも二連で実行することを推奨する。ドナープレートをアクセプタープレートウェルに注意深く入れる。室温又は37℃で18時間又は所望のインキュベーション期間(例えば16~24時間)にわたってインキュベートする。6. ドナープレートを注意深く取り出し、アクセプタープレートウェル中の液体を分析のために収集する。これをアクセプター溶液と称する。7. 各試験化合物及び透過性対照について100μLのアクセプター溶液及び平衡基準を添加する。100μLのブランク対照もUVプレートのウェル(カタログ番号P96UV)に添加する。8. 200nmから500nmまでの吸光度スペクトルを10nm間隔で読み取って、試験化合物のピーク吸光度を決定する。ブランク対照は、ピークが試験化合物によるものであり溶液中のDMSOによるものではないことを確認するためのものである。高透過性、中透過性及び低透過性対照についてのピーク吸光度は、それぞれ280nm、270nm及び270nmである。
【0389】
図15に示す通り、2d5hmC及び2d5fCは血液脳関門を通過する。
前記化合物が、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-トリホスフェートもしくは5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン-5'-トリホスフェート、またはこれらの薬学的に許容される塩である、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤。
前記化合物が、5-ホルミル-2'-デオキシシチジンもしくは5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項6に記載の薬剤。
前記癌におけるCDA発現レベルが、同一方法を同一条件下で使用して決定される、参照がん細胞株におけるCDA発現レベルの90%以下であり、ここで、前記参照がん細胞株は、MDA-MB-231である、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬剤。
前記癌が、CNSの癌、胃癌、膵臓癌、リンパ腫、肺癌、皮膚癌、血液癌、卵巣癌、乳癌、骨癌、及び子宮頸癌からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の薬剤。
前記さらなる抗癌剤が、ゲムシタビン、シタラビン、テモゾロミド、5-フルオロウラシル、及びカルムスチンウエハーからなる群より選択される、請求項16に記載の薬剤。
前記さらなる抗癌剤が、ゲムシタビン、シタラビン、テモゾロミド、5-フルオロウラシル、及びカルムスチンウエハーからなる群より選択される、請求項18に記載のキット。
前記さらなる抗癌剤が、ゲムシタビン、シタラビン、テモゾロミド、5-フルオロウラシル、及びカルムスチンウエハースからなる群より選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
前記化合物が、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン、5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン、5-ホルミル-2'-デオキシシチジン-5'-トリホスフェートもしくは5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン-5'-トリホスフェート、またはこれらの薬学的に許容される塩である、請求項22~26のいずれか一項に記載の使用。
前記化合物が、5-ホルミル-2'-デオキシシチジンもしくは5-ヒドロキシメチル-2'-デオキシシチジン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項27に記載の使用。
前記癌におけるCDA発現レベルが、同一方法を同一条件下で使用して決定される、参照がん細胞株におけるCDA発現レベルの90%以下であり、ここで、前記参照がん細胞株は、MDA-MB-231である、請求項22~30のいずれか一項に記載の使用。
前記癌が、CNSの癌、胃癌、膵臓癌、リンパ腫、肺癌、皮膚癌、血液癌、卵巣癌、乳癌、骨癌、及び子宮頸癌からなる群から選択される、請求項22~32のいずれか一項に記載の使用。
前記さらなる抗癌剤が、ゲムシタビン、シタラビン、テモゾロミド、5-フルオロウラシル、及びカルムスチンウエハーからなる群より選択される、請求項37に記載の使用。