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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153794
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】クリック修飾mRNA
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20231011BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20231011BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231011BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20231011BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20231011BHJP
   A61K 38/47 20060101ALN20231011BHJP
   A61K 38/02 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/87 Z
C12N5/10
C12N15/09 110
A61P37/04
A61P35/00
A61K48/00
A61K39/00 H
A61K39/39
A61K49/00
A61K47/54
C07H21/02
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A61K47/46
A61K35/15
A61K38/47
A61K38/02
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023114150
(22)【出願日】2023-07-12
(62)【分割の表示】P 2020534319の分割
【原出願日】2018-12-18
(31)【優先権主張番号】17209585.3
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18157703.2
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18202542.9
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509122120
【氏名又は名称】ベースクリック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリシュムス,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】サルジュコウ,サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,バージット
(72)【発明者】
【氏名】クローセ,ステファノ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】修飾mRNAの製造及び/又は送達用キット、並びに該修飾mRNAを含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】修飾mRNAの製造及び/又は送達用キットであって、該修飾mRNAは、a)ORF及びUTR、b)ORF、UTRおよびpoly(A)テール、又はc)poly(A)テールのみ、の領域内の少なくとも1つのヌクレオチドにおいて、アルキン又はアジドによる修飾を少なくとも1つ含むことを特徴とするキット、並びに該修飾mRNAを含む医薬組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5'-キャップ構造、5'-非翻訳領域(5'-UTR)、オープンリーディングフレーム領域(ORF)、3'-非翻訳領域(3'-UTR)並びにポリ(A)テール領域を含み、ORF、5'-UTR、3'-UTR及びポリ(A)テール領域のうちの少なくとも1つの領域内の少なくとも1つのヌクレオチドにおいて、アルキン又はアジドによる修飾を少なくとも1つ含むことを特徴とする修飾メッセンジャーRNA(mRNA)。
【請求項2】
以下の領域内に修飾されたヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の修飾mRNA:
a)ORF及びUTR、
b)ORF、UTR及びpoly(A)末端、又は
c)poly(A)末端のみ。
【請求項3】
ヌクレオチドの4つの標準型(AMP、CMP、GMP、UMP)のうち少なくとも1つが部分的に又は完全に修飾され、好ましくはウラシル又はアデニンがエチニル又はアジド修飾されている、請求項1又は2に記載の修飾mRNA。
【請求項4】
前記少なくとも1つのヌクレオチドがアルキン修飾されており、少なくとも1つのヌクレオチドがアジド修飾されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項5】
ヌクレオチドの4つの標準型の少なくとも1つが、非修飾形態と比較して1:100~10:1、好ましくは1:10~1:10又は1:1の比率で修飾形態で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項6】
別の方法で修飾された天然又は人工ヌクレオチド、好ましくはプソイドウリジン又はN1-メチルプソイドウリジンを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項7】
前記修飾mRNAが、相応に修飾された、アルキン又はアジドを含む検出可能な標識又は機能性分子と修飾mRNAとのクリック反応によって導入された検出可能な標識及び機能性分子のうち1つ以上を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項8】
前記検出可能な標識が有色の若しくは蛍光発生分子であり、及び/又は、前記機能性分子が組織若しくは細胞特異的な標的化基若しくはリガンド、好ましくは糖部分若しくは脂肪酸部分である、請求項7に記載の修飾mRNA。
【請求項9】
少なくとも1つのヌクレオチドにおいて少なくとも1つのアルキン若しくはアジド修飾を含む修飾RNA又は請求項1~8のいずれか一項に記載の修飾mRNAであって、カチオン性又はポリカチオン性化合物と複合体化されている、前記修飾RNA。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNAの製造方法であって、鋳型DNAからmRNAをin vitro転写すること、又は、代わりに原核生物若しくは真核生物宿主細胞を用いて発酵プロセスを行い、発現ベクターに含まれる鋳型DNAを発現させることを含み、前記方法が、mRNA転写に必要な4つの標準型ヌクレオチドを含むヌクレオチド混合物及びRNAポリメラーゼの存在下で行われ、前記ヌクレオチド混合物において、ヌクレオチドの4つの型のうち少なくとも1つの少なくとも一部が、アルキン若しくはアジド修飾を含むように修飾されている、前記方法。
【請求項11】
ポリ(A)テールにアルキン又はアジド修飾を含む修飾mRNAの製造方法であって、ATPの存在下で、mRNA上のポリ(A)テールにおいてポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を行うことを含み、前記ATPが、アデノシンにおいて少なくとも部分的にアルキン又はアジド修飾されている、前記方法。
【請求項12】
クリック反応を行うための条件下において、相応にアルキン又はアジド修飾された検出可能な標識及び/又は機能性分子を添加して、請求項7又は8に記載の修飾mRNAを製造することをさらに含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
対応するヒト、動物又は植物の親細胞に、請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNAをex vivoトランスフェクションして得られる細胞。
【請求項14】
前記細胞が、ヒト又は動物の免疫系の細胞である、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
活性剤として請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項13若しくは14に記載の細胞を含み、任意に、医薬的に許容可能なアジュバント若しくは賦形剤と組み合わせて含む、及び/又は、医薬的に許容可能な担体に含まれる、医薬組成物。
【請求項16】
mRNAベースの治療的及び/又は予防的用途で使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項15に記載の医薬組成物であって、特に、請求項16に記載の治療的及び/又は予防的用途で使用され、前記治療的及び/又は予防的用途が、前記mRNAによってコードされる特定のエンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9)と組み合わせた標的化遺伝子治療、遺伝子補充治療における、ワクチン接種における、がん治療における、並びに、(遺伝性)疾患及び遺伝的異常の治療のための細胞特異的な遺伝子発現若しくは遺伝子編集のための、標的化送達、又は免疫学的アジュバントとしての使用を含む、前記修飾mRNA又は医薬組成物。
【請求項18】
特に、請求項16又は17に記載の治療的及び/若しくは予防的用途でヒト若しくは動物において使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
植物及び植物細胞へのトランスフェクションのための、請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNAの使用。
【請求項20】
請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNAの製造及び/又は送達用キット。
【請求項21】
細胞、組織又は器官における、請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNAの存在、送達及び/又は分布についてのin vitroスクリーニングのための診断用組成物であって、前記組成物が、検出可能な標識、好ましくはフルオロフォア標識若しくは放射性核種標識を含むmRNAを含む、前記組成物。
【請求項22】
請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNAの存在、送達及び/若しくは分布についてのin vivoスクリーニングに、又は、請求項13若しくは14に記載の細胞の再投与でのin vivoモニタリングに使用するための診断用組成物であって、前記組成物が、フルオロフォア標識若しくは放射性核種標識を含む修飾mRNAを含むか、又は、前記細胞が、フルオロフォア標識若しくは放射性核種標識を含む修飾mRNAによってトランスフェクトされる、前記組成物。
【請求項23】
RNA、特にmRNAの安定化方法であって、ポリ(A)ポリメラーゼ付加反応において、及び/又はRNA合成中に、部分的に又は完全にアルキン及び/又はアジド修飾形態のヌクレオチドの4つの標準型(ATP、CTP、GTP及びUTP)のうち少なくとも1つを含むことによってアルキン及び/又はアジド修飾を導入して修飾(m)RNAを生成し、任意に、相応に修飾された、アルキン又はアジドを含む検出可能な標識又は機能性分子と修飾(m)RNAとのクリック反応によって、検出可能な標識及び機能性分子のうちの1つ以上を導入する、前記方法。
【請求項24】
蛍光活性化細胞スキャン分析によって、標的細胞への請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾mRNAの送達及びトランスフェクションを定性的又は定量的に測定するin vitro方法であって、前記修飾mRNAが、アルキン若しくはアジドを含む相応に修飾された蛍光発生分子とのクリック反応によって修飾mRNAに導入された1つ以上の蛍光発生分子を含み、及び/又は、前記修飾mRNAが蛍光タンパク質をコードする、前記方法。
【請求項25】
蛍光発生分子又は蛍光タンパク質によって発せられる蛍光シグナルが、修飾mRNAをトランスフェクトされた標的細胞について測定され、トランスフェクトされていない標的細胞と比較される、請求項24に記載のin vitro方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキン及び/又はアジド修飾mRNA、そのような修飾mRNAの製造方法、修飾mRNAを含むようにトランスフェクトされた細胞、修飾mRNA又は修飾mRNAを含む細胞を含む医薬組成物、並びに、mRNAベースの治療的及び/又は予防的用途におけるそのようなmRNA、細胞又は医薬組成物の使用に関する。最後に、本発明はさらに、アルキン及び/若しくはアジド修飾ヌクレオチドを導入することによるRNAの安定化方法、並びに/又は修飾mRNAの標的細胞への送達及び/若しくは修飾mRNAによってコードされるタンパク質産物の発現を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メッセンジャーRNA(mRNA)は、細胞のDNAから転写され、生物の細胞内のリボソームでアミノ酸配列、つまりタンパク質に翻訳される鋳型分子である。コードされたタンパク質の発現レベルを制御するために、mRNAは、アミノ酸配列をコードする遺伝情報を含む実際のオープンリーディングフレーム(ORF)に隣接して非翻訳領域(UTR)を有する。このようなUTRは、それぞれ5'-UTR及び3'-UTRと呼ばれ、開始コドンの前及び終止コドンの後に位置するmRNAの部分(section)である。さらにmRNAは、核からのmRNAの輸送、翻訳を促進し、そしてある程度mRNAを分解から保護する、アデニンヌクレオチドの長い配列であるポリ(A)テール領域を含む。
【0003】
mRNAは、その化学的及び生化学的性質によって、通常、細胞内で数分以内に分解されるため、特定のタンパク質の発現は、通常、一過的なプロセスである。さらに、ポリアニオン性のmRNA分子は、細胞膜を通過するのにあまり適しておらず、それによってmRNAの外部送達は極めて困難である。
【0004】
mRNAに関連するこれらの課題にもかかわらず、近年の科学的及び技術的進歩によって、mRNAは新規な薬品クラスの有望な候補となった。Sahin U. et al., Nat.Publ.Gr. 13, 759-780 (2014)にmRNAベースの治療薬及び薬品開発の概要が紹介されている。mRNAは、例えば、抗体や酵素のようなタンパク質のin vivo生成を引き起こすために使用され、又は、例えば特異的なエピトープを発現することによって、若しくは構造的mRNA部分に対する自然免疫応答によって免疫応答を刺激するために使用される。例えば、RIG-1はRNAの5'-三リン酸末端に結合すると共に、シグナルカスケードを引き起こし、その結果、転写因子が活性化すると共に、抗ウイルス応答の一環としてサイトカインが放出される。免疫応答の刺激のためのmRNAの適用は、がん、AIDSを治療し、ほぼあらゆる疾患に対するワクチンを生成するための新規アプローチにおいて使用できる(Pardi, N. et al., Nat.Publ.Gr. 543, 248-251 (2017)及びSchlake T. et al., RNA Biol. 9, 1319-30 (2012)を参照)。これらの興味深い発展の鍵は、翻訳効率の改善された安定化mRNAの頑強なin vitro生成、及び特殊なトランスフェクション製剤を用いた、細胞へのその送達である。
【0005】
mRNAの安定性と翻訳効率はいくつかの因子に依存している。特にmRNAの両端にある非翻訳領域は重要な役割を果たしている。真核生物のタンパク質発現では、5'末端のキャップ構造及び3'末端のポリ(A)テールは、どちらもmRNAの安定性を高め、タンパク質の発現を増強する。さらに、5'-UTRは、翻訳に必要なリボソーム結合部位を含み、3'-UTRは、二次構造をとって安定性を改善し、翻訳に影響を与えるRNA配列を含む。さらに、修飾天然(例えばN1-メチルプソイドウリジン)及び人工ヌクレオチドを組み込んで、mRNAの安定性を改善し、mRNAの翻訳を増強することができる(Svitkin Y.V. et al., Nucleic Acids Research, Vol. 45, No. 10, 6023-6036 (2017))。
【0006】
細胞へのmRNAの送達は、細胞膜との融合のための脂質と、オリゴヌクレオチド骨格の負電荷を中和するためのカチオンとを含む混合物を提供することによって達成することができる。mRNA送達を最適化し、臨床試験のために十分なin vivo安定性を付与するために、特殊な製剤が作製されている。静脈内投与されるmRNA製剤のほとんどは、肝細胞に取り込まれ、肝細胞で発現する。これは肝臓が脂肪酸代謝に主要な役割を果たしているという事実によっており、したがって、mRNA製剤の高脂質含量によって、器官特異的な標的化効果が表れる。しかしながら、ほとんどの場合、肝臓は望ましい標的ではなく、したがって、例えば脾臓のような免疫応答に関与する器官に標的化するために脂質製剤を改変する努力がなされている(Kranz L.M. et al., Nature 534, 396-401 (2016))。あるいは、標的化を可能にするために、免疫系の細胞(例えば、リンパ球)を患者の血液から単離し、mRNAの適用をex vivoで行うこともできる。ごく最近になって、抗体断片修飾脂質製剤を用いたmRNAの組織特異的な標的化が開示された(Moffett H.F. et al., Nat. Commun. 8, 389 (2017))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
mRNAの直接的又は間接的な(つまり、細胞のex vivoトランスフェクション及びそのようなトランスフェクトされた細胞を患者に戻すことによる)治療適用性に関する最近の進歩及び発展にもかかわらず、mRNAの安定性をさらに改善し、治療薬又は薬品としてのその使用において新たな選択肢を開発することが、現在進行中の研究の目的である。さらに、治療用mRNAの合理的かつ効率的な生成を可能にする方法を提供することが望ましい。さらに、特に遺伝性疾患の治療において、タンパク質補充及び遺伝子補充治療のためのmRNAの高度な標的化送達は依然として必要とされている。また、送達及びタンパク質発現のモニタリングを可能にすることが非常に望ましい。最後に、例えばがん治療において、mRNAの免疫刺激効果を活用する(exploiting)ためのさらなる選択肢を探索することは、現在進行中の研究の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的に解決策を提供すること目指し、とりわけ、新しい種類のmRNA修飾に関する。そのような修飾は、ex vivo適用及びその後のヒト患者、動物又は植物への投与のための、目的のmRNAの安定化を可能にするだけでなく、例えば、修飾mRNAの特定の細胞又は組織への標的化送達を可能にする検出可能な標識又は機能性基を簡単に結合させることも、そのような送達をモニターすることも可能にする。
【0009】
第一の態様において、本発明は、5'-キャップ構造、5'-非翻訳領域(5'-UTR)、オープンリーディングフレーム領域(ORF)、3'-非翻訳領域(3'-UTR)及びポリ(A)テール領域を含む修飾mRNAに関し、ここで、このmRNAは、ORF、5'-UTR、3'-UTR及びポリ(A)テール領域のうちの少なくとも1つの領域内のヌクレオチドにおいて、アルキン又はアジド修飾を少なくとも1つ含む。本発明のこの第一の態様の特に好適な実施形態では、修飾mRNAは、相応に修飾された、アルキン又はアジドを含む検出可能な標識又は機能性分子と修飾mRNAとのクリック反応によって導入された検出可能な標識及び/又は機能性分子を1つ以上含む。
【0010】
第二の態様において、本発明は、本発明の修飾mRNAの製造方法に関し、かかる方法は、RNA転写に必要なヌクレオチドを含むヌクレオチド混合物及びRNAポリメラーゼの存在下での、鋳型DNAからのmRNAのin vitro転写法を含み、ここで、このヌクレオチド混合物中のヌクレオチドの少なくとも一部が、ヌクレオチドにおいてアルキン又はアジド修飾を含むように修飾されている。この第二の態様の別の実施形態では、修飾mRNAは発酵プロセスによって生成される。このようなプロセスにおいて、真核又は原核細胞は、所望のmRNAを生成するための遺伝情報(例えば、プラスミド)を含むように形質転換され、増殖培地には、アルキン又はアジド修飾ヌクレオシド、ヌクレオチド又はヌクレオチドプロドラッグが含まれる。この第二の態様の別の代わりの実施形態において、本発明のmRNAは、固相又はホスホロアミダイト合成によって合成的に生成される。
【0011】
本発明の第三の態様は、mRNAの所定の領域、例えば、ポリ(A)テール領域のみにアルキン又はアジド修飾を含む、本発明の部位特異的な修飾mRNAの調製のための酵素的方法に関する。このような方法は、アデノシン三リン酸(ATP)の存在下においてmRNA上でポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を行うことを含み、ここで、ATPは、ヌクレオチドにおいて少なくとも部分的にアルキン又はアジド修飾されている。
【0012】
本発明の第二及び第三の態様の特に好適な実施形態において、クリック反応を行うための条件下において、相応にアルキン又はアジド修飾された検出可能な標識及び/又は機能性分子の1つ以上を添加して、このような検出可能な標識又は機能性分子を含む修飾mRNAを生成する。
【0013】
本発明の第四の態様は、本発明の修飾mRNAを含み、ex vivoトランスフェクションによって得られる細胞調製物、特に免疫系の細胞の調製物に関する。
【0014】
本発明の第五の態様は、活性剤として、又は免疫学的アジュバントとして、本発明の修飾mRNA、又はそのようなmRNAを含むようにex vivoトランスフェクションによって得られた細胞調製物を含む医薬組成物に関する。
【0015】
本発明のさらに別の、第六の態様は、ヒト又は動物においてmRNAベースの治療及び/又は予防的用途で使用するための、本発明の修飾mRNA、このようなmRNAを含む細胞調製物、又は本発明の医薬組成物である。
【0016】
さらなる本発明の第七の態様は、植物又は植物細胞をトランスフェクトするための本発明の修飾mRNAの使用である。
【0017】
本発明の第八の態様は、細胞、組織又は器官における、本発明のmRNAの存在、送達及び/又は分布についてのin vitro又はin vivoスクリーニングのための診断用組成物に関し、そのような組成物は、検出可能な標識、好ましいフルオロフォア若しくは放射性核種を含むか、又は後にそれらによって修飾を受ける本発明の修飾mRNAを含む。
【0018】
本発明の第九の態様は、本発明の修飾mRNAを調製及び/又は送達するための部品のキット(キットオブパーツ)に関する。特に好ましい実施形態において、このようなキットはまた、修飾mRNAと修飾された標識/機能性分子との間のクリック反応を行う際にそのような検出可能な標識及び/又は機能性分子を含む修飾mRNAを得るための、相応にアルキン又はアジド修飾された検出可能な標識又は機能性分子を1つ以上含む。
【0019】
本発明の第十の態様は、RNA、特にmRNAの安定化方法に関し、ここで、アルキン及び/又はアジド修飾が、RNA合成中及び/又はポリ(A)ポリメラーゼ付加反応中に、ヌクレオチドの4つの標準型(ATP、CTP、GTP及びUTP)、及び/又は別の互換性のある、アルキン若しくはアジド修飾ヌクレオチド若しくは偽ヌクレオチド(つまり、標準型のヌクレオチドと比較して、偽の若しくは異常な構造を有するヌクレオチド)の部分的に若しくは完全にアルキン及び/若しくはアジド修飾形態のうち少なくとも1つを含むことによって導入される。さらなる安定化は、対応するアジド及び/又はアルキン修飾分子又は基を、クリック反応によって修飾RNAに共役させることによって得ることができる。
【0020】
本発明の第十一の態様は、蛍光活性化細胞スキャニング(FACS)によって、トランスフェクトされた細胞における本発明のmRNAの送達及び発現のうち少なくとも1つを定性的及び定量的に測定する方法である。
【0021】
(発明の詳細な説明及び好適な実施形態)
本発明は、いわゆる「クリックケミストリー」又はその要素を採用し、この技術をmRNA分子の修飾に適用して、改善された安定性を付与し、及び/又は、とりわけmRNAベースの治療及びmRNAワクチン技術における、このような修飾mRNA分子の使用を提供する。
【0022】
クリックケミストリーは、Sharpless及びMeldalのグループによって2001/2002年に規定された概念である(Sharpless, K.B. et al., Angew. Chem. 2002, 114, 2708、Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 2596、Meldal, M. et al., J. Org. Chem. 2002, 67, 3057)。それ以来、特に1, 2, 3-トリアゾールが得られるアジドとアルキンとの銅触媒反応(1, 3-双極子ヒュスゲン(Huisgen)付加環化のバリエーション(R. Huisgen, 1,3-Dipolar Cycloaddition Chemistry (Ed.: A. Padwa), Wiley, New York, 1984))は、クリック反応を行うために非常に広く用いられる方法となった。その穏やかな条件と高い効率の結果、この反応には、例えば、様々な目的のためのDNA標識など、生物学及び材料科学において、無数の用途が見出された(Gramlich, P.M.A. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 8350)。
【0023】
銅触媒クリック反応に加えて、銅が不要の生体直交型の方法も開発されており、このような方法は全て、本発明においても一般的に採用することができる。例えば、歪み促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)(I.S. Marks et al., Bioconjug Chem. 2011 22(7): 1259-1263)は、本発明において、単独で又は銅触媒クリックケミストリー(CuAAC)との併用で、いずれにおいても使用することができる。特に、細胞培養又は生体内においてin vivoで標識反応を行うことが望ましい場合には、この反応は有毒物質や外部触媒の使用を必要としないため、SPAACを用いてこのような反応を行うのが好ましい。
【0024】
クリックケミストリーは、目的の生体分子にレポーター分子又は標識を結合させるのを容易にすると共に、このような生体分子を同定し、位置を特定し(locating)、特性を明らかにするのに非常に強力なツールとなる。例えば、この方法によって、標的生体分子の分離及び精製を可能にするためのアンカー分子の、又は、分光定量のための蛍光プローブの含有及び結合が可能になる。これまで、クリックケミストリーを基礎原理として使用する多くの用途が開発されてきた。次世代シークエンスは、この技術の恩恵を受けるこのような用途の1つであり、いわゆる「骨格模倣体(backbone mimics)」(つまり、銅触媒アジド-アルキン付加環化(CuACC)によって生成され得るホスホジエステル結合の非天然の代替物)の形成が、例えば、DNA断片とアダプター配列を連結するために使用される。ホスホジエステル結合の代わりにトリアゾール環が存在するにもかかわらず、このような骨格模倣体は、PCR又は逆転写のようなポリメラーゼ駆動型のDNA又はRNA調製方法の許容可能な基質である。細胞増殖の検出は、クリックケミストリーのさらなる応用分野である。通常適用される方法としては、複製中に、細胞にBrdU又は放射性ヌクレオシド類似体のいずれかを添加し、DNAへのそれらの組み込みを検出することが挙げられる。しかしながら、放射能に関係する方法はかなり遅く、迅速でハイスループットな研究には適さず、また、放射能が関係するために不便である。BrdUを検出するには、抗BrdU抗体と変性条件の適用が必要であり、標本の構造の劣化につながる。EdU-clickアッセイの開発は、DNA複製反応においてチミジン類似体である5-エチニル-2'-デオキシウリジンを含むことによって、そのような制限を克服した。抗体の代わりにクリックケミストリーによる検出は、選択的で、単純、生体直交的であり、組み込まれたヌクレオシドの検出にDNAの変性を必要としない。
【0025】
本発明の文脈の中で、mRNAのin vitro転写の間、又はmRNAを生成するための発酵プロセスの間に、アルキン及び/又はアジド修飾ヌクレオチドを導入して、相応に修飾されたmRNAを得ることが可能であることが発見された。アルキン修飾又はアジド修飾は、mRNAに含まれる全てのエレメントに又はいくつかのエレメントにのみ含めることができ、UTR、ORF及びポリ(A)テールのうち少なくとも1つの領域に含める必要がある。キャップ構造の変化はeIF4E、eIF4F及びeIF4Gのような開始因子の効率的な結合を妨害し、したがって翻訳効率を劇的に低下させ得るため、5'キャップ構造は、好ましくは、このようなアルキン又はアジド修飾を含まない。このような修飾の存在は、一方ではmRNAを安定化させ、他方では、クリックケミストリーによる、組織又は細胞特異的なリガンド又は標的化分子の結合のための、又は酵素後標識のための特異的なアンカー部位を提供する。したがって、本発明は、トランスフェクション又は適用の後でmRNAの存在及び位置の検出を可能にするだけでなく、治療用途における特定の器官又は細胞型へのmRNAの標的送達の新たな選択肢も提供する。相応に修飾されたmRNAは、本発明の第一の主題である。
【0026】
in vitro転写法の間、あるいは原核生物若しくは真核生物での発酵によるmRNA生成の間に、どの型のヌクレオチド(1又は複数)がアルキン又はアジド修飾形態で含まれるかによっては、得られる修飾mRNAは5'-UTRや3'-UTR、ORFだけでなくポリ(A)テール領域にも修飾を含むことができる。当業者に明らかなように、例えば、修飾CTP、GTP及びUTPのうちの1つ以上を含むと、UTR及びORF内の修飾が起こり、一方、修飾ATPを追加で含むと、ポリ(A)テール領域にも修飾が起こる。転写の間にアルキン及び/又はアジド修飾ATPのみを含むと、UTR、ORF及びポリ(A)テール領域に修飾が起こる。
【0027】
本発明のmRNA内でのアルキン又はアジド修飾ヌクレオチドの存在によって引き起こされる重大な負の影響は観察されていない。反応に含まれる修飾ヌクレオチドの量に依存して、in vitro及びin vivo転写の効率は、非修飾ヌクレオチドのみが反応混合物中に存在する場合と同程度か、又はわずかに低下し得る。さらに、mRNAの修飾は、リボソームでのタンパク質生成の間、mRNAの翻訳を損なわないようである。状況に応じて、in vitro転写反応又は発酵プロセスに含まれるべき修飾ヌクレオチドの量は、最大のmRNA収率又は最大の修飾のいずれかが提供されるように調整することができる。例えば、色素が、クリック反応によって検出可能な標識としてmRNAに結合される場合、検出を確実に、容易にするために適度に多い量でそれらを含むことが望ましいであろうが、一方、特定の細胞受容体に標的化するためには、所望の効果を達成するためにそれぞれのリガンド分子を1つ又は少数のみ含めば十分であろう。
【0028】
後で詳細に説明するが、アルキン又はアジド修飾ヌクレオチドの含有はmRNAの安定化効果をもつ。本発明の修飾の安定化効果は、そのような修飾が完全長のmRNA分子上に分布している場合に最も顕著であることが期待される。このような場合、続くクリックケミストリーによる検出可能な標識及び/又は機能性分子の結合もまた、mRNA分子全体にわたって一様に起こり、増強された安定化効果を提供することさえできる。
【0029】
しかしながら、場合によっては、標識又は機能性分子の含有を、タンパク質発現の間の続くmRNAの翻訳に関与しないmRNA分子の一部分に制限することが重要であろう。そのような目的のためには、特に長い若しくはかさ高い、標識又は機能性分子(リガンド若しくは標的化分子など)の存在によって、リボソーム活性が損なわれないことが確実であるポリ(A)テール領域にのみ修飾ヌクレオチドを含めることが望ましい可能性がある。
【0030】
したがって、本発明は、ポリ(A)テール領域のみにアルキン又はアジド修飾を含む修飾mRNAも提供する。鋳型DNAのin vitro転写又は発酵プロセスの間にアルキン又はアジド修飾ヌクレオチドを含む代わりに、ポリ(A)ポリメラーゼ及びアルキン又はアジド修飾ATPの存在下で付加反応を行うことにより、任意の所望のmRNAに対してポリ(A)テール領域のみにおける修飾を達成することができる。
【0031】
本発明の修飾mRNAにおけるアルキン又はアジド修飾の量及び型を制御することにより、任意の意図する用途に関して、目的の分子の酵素後の結合のための所要な及び実効可能な選択肢及び安定化を付与するために、得られたmRNAを簡便かつ容易に適用することが可能である。
【0032】
本発明において、アジド又はアルキン修飾は、それぞれのヌクレオチドのリボース単位の2'位又は核酸塩基に含まれ得る。非常に特殊な場合には、リボースの3'位にこの修飾を含むヌクレオチドを含めることも可能である。このような場合、酵素的ポリ(A)付加反応は修飾ヌクレオチドを1つ含むと停止する。本発明のこの態様の一つの好適な実施形態において、修飾mRNAは、UTR、ORF、及び、場合によってはポリ(A)テール領域のうち、少なくとも1つの領域内の少なくとも1つのヌクレオチドにおいて、核酸塩基又は2'リボース位にアルキン及び/又はアジド修飾を含み、さらに並びに、ポリ(A)テールにおいてリボースの3'位にチェーンターミネーションのアルキン又はアジド修飾を含む。別の好ましい実施形態において、本発明のmRNAは、ポリ(A)テール領域に3'リボース位でのチェーンターミネーションのアルキン又はアジド修飾を含まない。
【0033】
本発明のmRNAに含まれる修飾ヌクレオチドは、天然ヌクレオチド、特に、アデニン、シトシン、グアニン若しくはウラシル塩基を持つ標準ヌクレオチドの1つに由来してもよく、又は、別の天然ヌクレオチドの修飾(例えば、プソイドウリジン誘導体)であっても、又は、転写及び/若しくは翻訳、並びに生じた修飾mRNAの機能に負の影響を及ぼさない非天然分子(例えば、F. Eggert, S. Kath-Schorr, Chem. Commun., 2016, 52, 7284-7287)でさえあってもよい。好ましくは、修飾ヌクレオチドは、天然ヌクレオチド又はmRNA内に天然ヌクレオチドに由来する。
【0034】
クリック反応に適したアルキン基及びアジド基は当業者に知られていると共に利用可能であり、そのような全ての基を用いて、本発明における修飾ヌクレオチド及び修飾mRNAを調製することができる。アルキン修飾ヌクレオチドは、好ましくはエチニル修飾ヌクレオチドであり、より好ましくは5-エチニルウリジンリン酸又は7-エチニル-7-デアザアデニンリン酸である。原理的には、より高級のアルキン修飾ヌクレオチド、特にプロピニル又はブチニル修飾ヌクレオチド、さらにはC-C三重結合を含む環系を採用することも可能であるが、適当なアルキン分子を選択する際には、例えば、転写又はポリ(A)ポリメラーゼ反応効率及びタンパク質へのmRNAのさらなる翻訳に対する負の影響の可能性を考慮しなければならないであろう。本発明で有用なヌクレオチドに対するアジド修飾は、例えば、アルキル部分が好ましくは低級アルキル基、特にメチル基、エチル基又はプロピル基であるアジドアルキル基も含むことができる。アジド修飾ヌクレオチドとして、好ましくは5-(3-アジドプロピル)-ウリジンリン酸、又は8-アジドアデニンリン酸が本発明のmRNAに含まれることが考えられる。ポリ(A)付加反応の停止を引き起こすアジド修飾ヌクレオチドの例は、3'-アジド-2', 3'-ジデオキシアデニンリン酸である。
【0035】
原則として、少なくとも1種類の修飾ヌクレオチドの全てのヌクレオチドが、アルキン若しくはアジド修飾されていてもよいし、又は代わりに、そのようなヌクレオチドの一部のみが修飾形態で存在してもよい。本発明の好ましい実施形態において、所望の修飾及び修飾の割合(rate)に依存して、種々のヌクレオチドの修飾形態対非修飾形態の比率は、1:100~10:1、好ましくは1:10~10:1、さらに好ましくは1:4~4:1、また好ましくは1:2~2:1の範囲であり得る。好ましくは、修飾ヌクレオチド対非修飾ヌクレオチドの1:1、1:4又は1:10の組み合わせが本発明のmRNAに含まれる。
【0036】
上述のように、本発明の修飾mRNA中にアルキン又はアジド修飾ヌクレオチド又は核酸塩基が存在すると、安定化効果が付与される。一方では、エンドリボヌクレアーゼの攻撃は内部修飾によってある程度制限されている。ポリ(A)ポリメラーゼに基づく3'末端への修飾ATPの付加の間のポリ(A)テール領域の伸長は、さらなる安定化効果につながる。エキソリボヌクレアーゼによるmRNA分子の攻撃と分解は、RNAの両端で起こる。本発明のmRNAは、5'末端にキャップを含み、その側での分解からの保護を提供する。さらに3'末端に修飾アデノシンヌクレオチドを含むと、3'から5'方向のエキソリボヌクレアーゼの攻撃が妨げられ、分解がコアmRNA、特にORFに到達するのが遅延するため、さらなる防御が付与される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、検出可能な標識及び/又は機能性分子を、相応に修飾されたアルキン又はアジドを含む標識又は機能性分子とのクリック反応によって、修飾mRNAに導入することができる。ヌクレオチド修飾に関して、検出可能な標識又は機能性基(functional group)の修飾に関してもまた、適切なアルキン及びアジド基は当業者に知られており、そのような基のための好ましい例は、上記のように適用可能である。修飾mRNA内のアルキン修飾ヌクレオチドとアジドを含む標識若しくは機能性分子との反応、又は、本発明の修飾mRNA内のアジド修飾ヌクレオチドとアルキンを含む標識若しくは機能性分子との反応は、クリック反応を実施する条件下で行い、すると、mRNAと標識又は機能性分子との間の連結を形成する五員複素環1, 2, 3-トリアゾール部分の形成が起こる。本発明において、アルキンを含む標識又は機能性分子という用語は、SPAAC反応及び生体直交連結反応によるin vivo標識において特に考慮されてきたシクロオクチンのようなC-C三重結合を含む環系も包含する。
【0038】
標識及び機能性分子の種類及び大きさは特に制限されておらず、やはり意図する用途によって決まる。検出可能な標識の好ましい例には、色を付与又は蛍光を付与する標識、例えば、FITCのようなフルオレセイン誘導体、Alexa Fluor色素若しくはDyLight Fluor色素、Cy5及びCy3のようなシアニン色素、又はテキサスレッド及び5-TAMRAのようなローダミン色素、又は他のあらゆる蛍光色素が含まれる。非着色低分子(例えば、ビオチン)であっても、それらが酵素又は結合タンパク質-酵素複合体(例えば、抗体酵素複合体)の基質であり、酵素反応カスケード及びさらなる基質を介して、着色又は発光生成物を生成可能な場合に使用することができる。また、検出可能な標識には放射性核種を含んでもよく、例えば、好ましくは、ポジトロン放出断層撮影スキャンを用いて検出可能なポジトロン放出性核種を含んでもよい。半減期の短い放射性核種、例えば18Fについては、mRNA生成後クリック標識を用いたmRNAの迅速かつ頑強な標識能力が、PETを用いたmRNA生体内分布研究のための材料を得るための唯一実行可能な方法であり得る。意図する用途に応じて、C13又はP33のような重い同位体も、本発明の検出可能な標識として考えることができる。
【0039】
クリック反応によって修飾mRNAに含まれる機能性分子は制限されず、好ましくは、特定の組織若しくは細胞、例えばがん細胞へのmRNAの標的化取り込みを媒介するか、又は、少なくともmRNAをその細胞表面に結合若しくはアンカーすることを可能にする、細胞又は組織特異的なリガンドである。このような細胞又は組織特異的な標的化は、例えば、特異的な抗体若しくは抗体断片、ペプチド、糖部分、低分子(例えば、葉酸)又は脂肪酸部分を、細胞又は組織特異的なリガンドとして用いることによって達成することができる。それぞれの物質は、多数の標的化用途について記載されており、当業者に利用可能である。いくつかの好ましい例示的な標的化分子は、細胞特異的な受容体(例えば、上皮成長因子受容体のような)を標的とする抗体若しくは抗体断片又は受容体リガンド、葉酸受容体を標的とする葉酸、内在性低密度リポタンパク質受容体を標的とするアポリポタンパク質、又は、内在性カンナビノイド受容体を標的とするアラキドン酸である。また、アミノ酸配列RGD又は類似の配列は、細胞接着を媒介することが見出されており、これもまた、本発明において好ましいリガンドと考えられる。
【0040】
mRNAに結合する機能性分子の存在は、ヌクレアーゼ分解に対するmRNAの安定性をさらに高めることができ、mRNA内の天然ヌクレオチドの少なくとも1つの、アルキン又はアジド修飾類似体への部分的な及び完全な置換、並びにそれへの機能性分子の結合によっても、mRNA分子の翻訳が妨害されないことが示されている。
【0041】
アルキン修飾又はアジド修飾ヌクレオチドのいずれかの含有に加えて、本発明の修飾mRNAは、少なくとも1つのヌクレオチドを部分的な又は完全なアルキン修飾形態で含み、少なくとも1つの別のヌクレオチドを部分的な又は完全なアジド修飾形態で含むことも可能である。さらなる選択肢は、少なくとも1種類のヌクレオチドを、部分的な又は完全なアルキン修飾形態で、及び、部分的な又は完全なアジド修飾形態で含むmRNAである。このようなmRNAは2つの異なるアンカー修飾を含み、これには下流の酵素後クリック反応で異なる標識又は機能性分子が結合できる。例えば、このような特定の実施形態に限定するものではないが、続いて、アルキン修飾された細胞特異的な標的化基、及びアジド修飾された検出可能な標識を結合させることができ、結果として、本発明の修飾mRNAの別の好ましい実施形態となる。
【0042】
また、少なくとも、1つのアジド修飾ヌクレオチド及び1つのアルキン修飾ヌクレオチドを含む修飾mRNAを提供することも、本発明において好ましく、また可能であり、ここでは、例えば、アジド修飾ヌクレオチドにおいて、検出可能な標識又は機能性分子が、生体直交反応(例えば、in vitroでのSPAAC)によって結合されているが、アルキン修飾ヌクレオチドは、CuAAC反応による下流のin vitro標識反応に利用可能である。CuAAC反応条件を二重標識mRNA(アルキン及びアジドの官能基(function)を含む)に適用すればmRNAを環化することが可能であり、これは、例えば自己スプライシングイントロン(DOI: 10.1038/s41467-018-05096-6)の使用に代わる貴重な選択肢である。
【0043】
例えば、本発明の修飾mRNAは、UTR及びORFにおいて1種の修飾を含み、ポリ(A)テールにおいてのみ別の修飾を含むことも考えられる。このような修飾は、最初に1つ以上の第1の型の修飾ヌクレオチドを導入する転写反応を行い、次に第2の型の修飾を含むATPを用いたポリ(A)ポリメラーゼ反応を後に行うことで実施することができる。
【0044】
本発明において、数々の修飾及び修飾の組み合わせが可能であることは、当業者には明らかであろう。さらに、mRNA分子上のアルキン及び/又はアジド修飾の存在に基づいて異なる標識又は機能性基を含むことも可能であり、それどころか、異なる適切に修飾された標識又は機能性分子をクリック反応条件下で連続的に付加することによっても可能である。したがって、本発明は、修飾mRNAを最適な方法で意図する用途に適合するための膨大な数の選択肢及び簡便なモジュール性(modularity)を提供する。
【0045】
アルキン及び/又はアジド修飾ヌクレオチドを含むことを除けば、本発明において、一般に、ヌクレオチドにおける他の修飾は、そのような他の修飾がmRNA生成又は結果として生じるmRNAの意図する使用に悪影響を及ぼさない限り、その意図する使用を考えた場合に許容できない(つまり、その修飾が本発明における修飾mRNAと適合する)程度まで許される。mRNAに含めることができるこのような他の修飾ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の例としては、プソイドウリジン-5'-三リン酸(プソイドUTP)が考えられる。プソイドウリジン(又は5'-リボシルウラシル)は、最初に発見された修飾リボヌクレオシドであった。最も豊富に存在する天然修飾RNA塩基であり、しばしばRNAにおける「第5ヌクレオシド」と呼ばれる。それは、トランスファーRNA、リボソームRNA及び核内低分子(small nuclear)RNAのような構造的RNAに見られ得る。プソイドウリジンは塩基スタッキング及び翻訳を増強することが示されている。さらに、プソイドウリジン-5'-三リン酸は、ヌクレアーゼ安定性の上昇及び内在免疫受容体とin vitro転写RNAとの相互作用の変化のような有利なmRNA特性を付与することができる。プソイドUTP及びさらに修飾されたヌクレオチド(N1-メチルプソイドウリジン及び5-メチルシチジン-5'-三リン酸など)のmRNAへの組み込みは、培養下並びにin vivoでの自然免疫活性化を低下させ、同時に翻訳を増強することが示されている(B. Li et al., Bioconjugate Chemistry, 2016, 27, 849-853及びY. Svitkin et al., Nucleic Acid Research, 2017, 45, 6023-6036)。したがって、本明細書で前述したように、これら及び他の適切で適合性のあるヌクレオチド、ヌクレオチド類似体又は非天然分子をアルキン若しくはアジド修飾形態又は非修飾形態で含むことは、本発明のさらなる選択肢であり、好ましい実施形態である。
【0046】
本発明の修飾mRNAの以上の記載から明らであるように、種々の目的に有益に適用可能なmRNA分子を調製又は適用するための、多数の異なる選択肢が存在する。本発明は、特定の型のmRNAに制限されるものではなく、むしろその任意の意図した用途、特に、上の背景技術の項で及び以下に一般的に又は詳細に記載された用途によって選択することができる。アルキン又はアジド修飾の単なる導入によって、タンパク質補充治療のような用途のために遺伝情報を送達するために、又は、免疫刺激を目的として、若しくはmRNAワクチンとしてmRNAを送達するために投与可能なmRNA分子に、増強された安定性がもたらされる。下流の、修飾された標識又は機能性分子それぞれのクリックカップリングによってmRNAをさらに修飾することは、特に、修飾mRNAの送達のスクリーニング及び/又は特定の細胞若しくは組織へのmRNAの標的化送達(例えば、遺伝子補充治療において、若しくは薬物動態を改善する(例えば、PEG標識を加えることにより腎クリアランスを遅くする)ための)のためのさらなる可能性を提供する。
【0047】
本発明において、本発明の修飾mRNAは、目的の機能的なタンパク質をコードすることができる。さらに、本発明の修飾mRNAは、所望の目的に有利に使用できる、タンパク質、ペプチド若しくは、ペプチド及びタンパク質、の任意のさらなる組合せ、又は、キメラタンパク質のような組み換えタンパク質をコードすることができる。特に、組み換え融合タンパク質をコードするmRNA(例えば、第二のタンパク質若しくはペプチドをコードする配列とフレーム内で連結された、第一のタンパク質若しくはペプチドをコードする配列を含むmRNA)は、本発明の文脈の範囲内と考えられる。第二のタンパク質又はペプチドは、例えば、細胞又は組織内の特異的な局在に標的化することができる。特に、標的細胞内における、本発明の修飾mRNAの、又はそのmRNAによってコードされるタンパク質の送達及び局在のモニタリングを考える場合、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)のようなレポータータンパク質と、又はタンパク質若しくはペプチドタグ(例えばスナップタグ)と目的タンパク質との融合タンパク質は、本発明のさらに好ましい実施形態と考えられる。この目的のために、本発明の修飾mRNAを操作して、好ましくは上で例示的に概説したような2つ以上の異なる機能を含む単一のタンパク質として、融合タンパク質を発現させることができる。リンカー、スペーサー又はプロテアーゼの切断部位を含むことにより、2つ以上の分離したタンパク質の生成も同様に考えられる。
【0048】
目的のタンパク質とGFP又はeGFPとの融合タンパク質の発現の好ましい実施形態において、融合タンパク質の局在は、適切なフィルターを用いて蛍光顕微鏡下で容易に検出することができる。さらに、トランスフェクトされた細胞及びタンパク質の生成の検出及び定量は、好ましくはフローサイトメトリー、特に蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)などの他の方法によっても可能である。上記の方法を用いることにより、特に、クリック反応によって導入される標識、又はmRNA自体によって(共に)コードされるペプチド若しくはタンパク質のいずれかである蛍光分子を含む細胞の定性的及び定量的スクリーニングが可能となる。
【0049】
本発明において、本発明の修飾mRNAは、特定の用途において必要な又は存在するのが好ましい物質と一緒に使用することができる。例えば、ex vivo細胞トランスフェクションにおいてだけでなく、in vivo投与においても、細胞によるmRNA取り込みを容易にする物質をmRNAと組み合わせることが好ましい。脂質製剤及びナノキャリア(例えば、前述のMoffett et al.に記載)を、本発明におけるそれぞれの組成物及び製剤に含めることが好ましい。したがって、本発明のさらなる主題は、修飾mRNAと上記の他の物質の少なくとも1つとを含む物質の混合物、又は、修飾mRNA及び他の適当な物質の少なくとも1つが、その後の併用のために異なる容器で提供される部品のキット(キットオブパーツ)である。
【0050】
1つ以上の他の活性物質、特に適応免疫応答を引き起こす1つ以上の物質と組み合わせると、本発明の修飾mRNAは、自然免疫応答、ひいては全体的な免疫原性効果を増強するアジュバントとしても作用することができる。例えば、タンパク質又はペプチドベースの腫瘍ワクチンのような物質の有効性は、RNAアジュバントと一緒に投与することで非常に恩恵を受ける(例えば、Ziegler et al., J. Immunol. January 11, 2107, 1601129; DOI:https://doi.org/10.4049/jimmunol.1601129、又はHeidenreich et al., Int. J. Cancer. 2015 Jul 15; 137(2):372-84, DOI:10.1002/ijc.29402)。分子の安定性が改善されると同時に、上に詳述した本発明の修飾mRNAに固有のさらなる利点によって、本発明の修飾mRNAのアジュバント特性が非修飾RNAと同等、又はさらに顕著であることが保証され、クリック反応による標識の含有又は標的化送達のようなさらなる選択肢によって、さらなる展望が開かれる。
【0051】
上述のアジュバント適用のために、本発明の修飾mRNAは、この文脈において任意の又は必須のものとして当業者に知られている他の物質、好ましくはカチオン性又はポリカチオン性化合物(例えば、WO2010/037408を参照)と組み合わせるか、又は複合体化することができる。このような他の物質との複合体形成又は組み合わせは、改善された免疫刺激特性を付与し、特に、カチオン性エレメントとの複合体形成は、特に強いアジュバント効果を提供し、したがって、本発明の好ましい実施形態と考えられる。
【0052】
アジュバントとして意図される場合、本発明のmRNAは、必ずしも機能的なタンパク質又はペプチドをコードする必要はなく、それどころか、アルキン又はアジド修飾を含み、場合によってはさらにクリック反応によって導入される機能性分子又は検出可能な標識を含むそのようなノンコーディングRNAも、この目的において本発明に含まれる。
【0053】
WO2010/037408には、好ましくは、カチオン性又はポリカチオン性化合物と複合体化した少なくとも1つの(m)RNAを含むアジュバント成分と、治療上活性のあるタンパク質、抗原、アレルゲン及び/又は抗体を少なくとも1つコードする少なくとも1つの遊離(つまり、非複合体化)mRNAとを含む免疫刺激組成物が記載されている。
【0054】
この文脈において、本発明の修飾mRNAは、アジュバント成分としてのみ含めることができ、またアジュバントとして作用する本発明の修飾(m)RNAと、タンパク質、抗原、アレルゲン及び/又は抗体に翻訳される本発明のさらなる修飾mRNAとの組合せもまた、組み合わせることができる。また、そのような使用のためには、本発明によって提供される細胞への特異的な標的化及び送達の可能性を利用することができるだけでなく、本明細書で先に開示されたような修飾によって(m)RNAに付与される安定化も利用することができる。
【0055】
本発明の別の主題は、本発明の修飾mRNAの製造方法である。第一の方法によれば、mRNAは、mRNA転写に必要な少なくとも4つの標準型のヌクレオチド(ATP、CTP、GTP、UTP)を含むヌクレオチド混合物、及び、任意により、例えば、N1-メチルプソイドウリジン三リン酸のような、天然修飾ヌクレオチド、又は適当な人工ヌクレオチドさえも含むヌクレオチド混合物、並びにRNAポリメラーゼ(通常はT3、T7又はSP6 RNAポリメラーゼ)の存在下で、鋳型DNAからin vitroで転写される。さらに、翻訳効率を改善するためには、真核生物においては5'-キャップ構造(例えば7-メチルグアニル酸)を生成することが重要である。標準ヌクレオチド、天然修飾ヌクレオチド類似体又は適当な人工ヌクレオチド類似体のうち少なくとも1つの少なくとも一部は、ヌクレオチドにアルキン又はアジド修飾を含むように修飾される。
【0056】
どの種類のヌクレオチドがその方法に使用されるかによって、UTR及びORFのみにおいて(修飾CTP、GTP若しくはUTP、又はそれらの類似体で)、又は、UTR、ORF及びポリ(A)テールの全てにおいて(修飾ATPを単独で、又は、修飾CTP、GTP若しくはUTP又はそれらの類似体のうち1つ以上との組み合わせで)修飾が行われる。
【0057】
in vitro mRNA転写法(IVT)及びポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を行うための条件及び方法は、当業者によく知られている(例えば、Cao, G.J et al, N. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1992, 89, 10380-10384及びKrieg, P. A. et al,. Nucl. Acids Res. 1984, 12, 7057-7070)。
【0058】
このような条件及び方法は、十分な収量の修飾mRNAが得られる限り、特に重要ではない。この文脈において、最初に記載した方法で使われる鋳型DNAの種類も特に重要ではない。通常、転写されるDNAは、適当なプラスミドに含まれるが、線形形態で使用してもよい。さらに、鋳型DNAは、通常、プロモーター配列、特にT3、T7又はSP6プロモーター配列を含む。
【0059】
本発明の修飾mRNAの製造方法の間に、得られたmRNAが周知の方法を用いてキャップされることが好ましい(Muthukrishnan, S., et al, Nature 1975, 255, 33-37)。キャップするために必要な反応物質は市販されており、例えば、A.R.C.A.(P1-(5'-(3'-O-メチル)-7-メチル-グアノシル)P3-(5'-(グアノシル))三リン酸、キャップ類似体)である(Peng, Z.-H. et al, Org. Lett. 2002, 4(2), 161-164)。アルキン修飾ヌクレオチドとして、好ましくは、エチニル修飾ヌクレオチドが、最も好ましくは、5-エチニルUTP又は7-エチニル-7-デアザATPがこの方法に含まれる。アジド修飾ヌクレオチドとして、好ましくは、5-(3-アジドプロピル)UTP、3'-アジド-2', 3'-ジデオキシATP(3'末端でのみ)又は8-アジドATPが用いられる。
【0060】
本発明において、T7 RNAポリメラーゼを用いて転写プロセスを行い、微生物を用いた効率的な鋳型生成、ベクターの線形化後の続くin vitro転写のために適当なベクター中に鋳型DNAを準備することが好ましい。
【0061】
in vitro転写法の代わりとして、本発明のmRNAを生成するための原核生物又は真核生物系における発酵プロセスも、本発明の文脈に含まれる。この目的のために、通常、適当な発現ベクター(好ましくは、RNAポリメラーゼプロモーターの制御下に目的のDNAを含むプラスミド)に含まれる鋳型DNAを宿主細胞又は微生物に導入し、上記のようなそれぞれのヌクレオシド又はヌクレオチドプロドラッグが(十分な細胞取り込みを可能にするために)培養培地に含まれる。発酵的RNA産生は、当業者に知られている(例えば、Hungaro et al. (J Food Sci Technol. 2013 Oct; 50(5): 958-964)を参照)。
【0062】
このような具体的な方法に制限されるものではないが、例示目的で、発酵によるアルキン、アジド及びクリック修飾mRNAの生成について、細菌系においてより詳細に記載する:RNAポリメラーゼプロモーターの制御下に目的のmRNAをコードする鋳型DNAは、細菌細胞に導入される。これは、プラスミドのトランスフェクションによって行われることが好ましい。配列の設計は重要であり、好ましくは、所望のmRNAの生成に必要ないくつかの要素:RNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7又はSP6プロモーター);目的のオープンリーディングフレーム(ORF);及び、好ましくは、またポリ(A)領域をコードする配列(好ましくは、100~120 ntの長さ)を全て含む。さらに、このプラスミドは、複製起点、並びに細胞培養における制御された増殖及び増幅のための選択マーカーを含む。外部化合物の添加に際してmRNAの発現を選択的に誘導するために、そのオープンリーディングフレームのための遺伝子調節エレメント(例えば、lacオペロン)を有することが好ましい。重要なのはポリ(A)領域であり、精製の際にmRNAを他の全てのRNA(例えば、細菌のmRNA、tRNA及びrRNA)から識別し、またmRNA産物に十分な安定性及び翻訳効率を提供するために必要である。しかしながら、mRNAの発酵的生成の後に、本発明の文脈内で記載されるようなポリメラーゼA付加反応によって、ポリ(A)テール領域を導入してもよく、又は比較的短いポリ(A)テールを伸長、修飾することもまた、可能である。
【0063】
アルキン又はアジド修飾ヌクレオシドは増殖培地に添加され、トランスポーター又は受動的な機構によって細菌細胞に取り込まれる(J. Ye, B. van den Berg, EMBO journal, 2004, 23, 3187-3195)。細胞内でこれらのヌクレオシドは、キナーゼによって対応する三リン酸へとリン酸化され、mRNAに組み込まれ得る。ヌクレオシドの一リン酸化は遅いプロセスであるため、ヌクレオシドの一リン酸プロドラッグを供給して細胞内ヌクレオチド濃度を高めることが可能である(ソホスブビルの場合と同様)。
【0064】
アジド修飾mRNAの場合、生体直交型化学を用いたクリック反応、例えば、歪み促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)を細胞培養において行うことができる。したがって、シクロオクチン修飾タグ/標識又は機能性分子を培地に添加するのが好ましい。
【0065】
その後、配列内に修飾ヌクレオシドを含む新たに合成されたmRNAを、例えば、特定の樹脂及び/又はビーズに結合したポリ(T)オリゴヌクレオチド(例えば、Sigma AldrichのmRNA単離キット(cat No: 000000011741985001)のもの)を使用することにより精製する。
【0066】
原核細胞のmRNAは、ポリ(A)領域を含まないか、含んでいる場合でも20ntより長くないこと、それが、樹脂及び/又はビーズに結合したポリ(T)オリゴヌクレオチドに取り込まれ、したがって、原核生物mRNAから所望のmRNAの効率的な分離を可能にするのに十分ではないことがよく知られている。したがって、ポリ(A)テール領域を持たない、又は十分に長いポリ(a)テール領域を持たない発酵的に生成されたmRNAは、クロロホルムフェノール抽出、沈殿、及び、続くイオン交換クロマトグラフィーによる、粗製の細胞RNAの精製によって、他の公知の方法によって精製される必要がある。
【0067】
細菌株(例えば、大腸菌BL21(DE))は、RNAポリメラーゼ(例えば、T7 RNAポリメラーゼ)をゲノムDNAにインテグレートする(integrate)必要がある(例えば、DE3株)。その後、T7プロモーターを含むプラスミドが形質転換され、細菌細胞内でのin vivo転写中にアルキン又はアジド修飾ヌクレオシドを導入することができる場合には、mRNAの生成が可能である。
【0068】
原核生物のmRNAが5'CAP構造を欠いていることはよく知られている。本発明の修飾mRNAのこの重要な要素は、mRNAの精製後に導入するか、又は、細菌細胞を、真核生物キャッピング酵素を発現する別のプラスミドと共形質転換することによって、同時に導入することができる。
【0069】
さらなる代替策として、固相又はホスホロアミダイト合成によって本発明の修飾mRNAを生成することが可能であり、また、上記のように修飾ヌクレオチドを含むことが可能である。特に、(m)RNAがアジュバントとしての使用を意図しており、そのような目的でより短い分子又は非コード配列が考えられる場合には、合成による調製は簡便かつ効率的であり得る。それぞれの方法は当業者に利用可能であり、例えば、Marshall, W. S. et al. Curr. Opin. Chem. Biol. 2004, Vol. 8, No. 3, 222-229に記載されている。
【0070】
本発明の第二の方法は、まず、任意の適当な方法によって目的のmRNAを準備し、ポリ(A)ポリメラーゼ付加反応において、修飾アルキン又はアジド修飾ATP(又は類似体)を付加することによって、ポリ(A)テール領域のみでの修飾を可能にする。このようなポリ(A)ポリメラーゼ付加反応及び適当な条件は当業者によく知られており、それぞれの反応キットが市販されている。
【0071】
上記の第一及び第二の方法は、本発明の修飾mRNAを提供するために別々に使用することができるが、in vitro転写又は合成的mRNA生成、及びポリ(A)ポリメラーゼ付加反応の組み合わせを用いて、mRNA転写段階の間に、UTR、ORF及びポリ(A)テールに修飾アルキン及び/又はアジド修飾ヌクレオチドを含むことも可能である。第二の方法、つまりポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を追加的に行うことにより、ポリ(A)テールのさらなる伸長を達成することができ、ここで、ATPは、少なくとも部分的には、アルキン又はアジド修飾形態で(場合によっては、第一の方法によって導入される修飾とは異なる修飾形態で)含まれる。
【0072】
ポリ(A)テール領域の有無にかかわらず、原核生物におけるmRNAの発酵的生成の場合には、このようなポリ(A)テールを提供するために、又は既存のポリ(A)テール領域を伸長するために、ポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を含めることも可能である。このような実施形態において、その反応のための修飾されたアデニンヌクレオシド又はアデニンヌクレオチドプロドラッグを栄養培地中に含むことが好ましい選択肢である。あるいは、mRNA発酵プロセスのための修飾ヌクレオシド三リン酸は、ヌクレオチドトランスポータータンパク質の発現を使用して(D. A. Malyshev, K. Dhami, T. Lavergne, T. Chen, N. Dai, J. M. Foster, I. R. Correa, Jr., F. E. Romesberg, Nature 2014, 509, 385-388.)、又は供給培地に人工分子トランスポーターを添加することによって(Zbigniew Zawada et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 9891-9895)、直接内在化され得る。
【0073】
本発明のmRNA製造方法は、1種類の修飾ヌクレオチドのみを用いて、又は所望のアルキン若しくはアジド修飾を含む1つ以上のヌクレオチドを含むことで行うことができる。本発明において、1種類又は2種類の同様に修飾されたヌクレオチド、最も好ましくはアルキン又はアジド修飾されたウラシル又はアデニンを含むことが好ましい。アルキン修飾に関する限りでは、エチニル基は、その大きさにより、転写反応に最も負の影響を与えにくく、これを含むことが最も好ましい。
【0074】
本発明の別の好ましい実施形態では、ヌクレオチド混合物と共に2つの異なる修飾をされたヌクレオチドが転写中に含まれる。このようなプロセスの結果、アルキン及びアジド修飾を含む修飾mRNA分子が生じる。
【0075】
転写若しくは発酵の間に、又はポリ(A)ポリメラーゼ反応によって含まれる修飾ヌクレオチドの量に関して、特に制限は観察されない。理論的には、in vitro転写法で採用される全てのヌクレオチドは、アルキン又はアジド修飾核酸塩基を含むように修飾することができる。しかしながら、1種類又は2種類の修飾ヌクレオチドを使用すること、並びに、そのようなヌクレオチドを修飾形態及び非修飾形態で含めることも好ましい。所望の修飾割合に応じて、種々のヌクレオチドの修飾形態対非修飾形態を、1:100~10:1、好ましくは1:10~10:1、さらに好ましくは1:4~4:1又は1:2~2:1の比率で含むことが好ましい。最も好ましくは、修飾形態でのみ存在することができる修飾ヌクレオチドを1種類のみ採用するか、又は上述の比率で非修飾形態と組み合わせて採用することができる。好ましくは、修飾ヌクレオチド対非修飾ヌクレオチドが1:1、1:2又は1:10の組み合わせで提供される。
【0076】
修飾ヌクレオチド導入の比率は、本発明のmRNAに存在する修飾の数に対応する。したがって、mRNA内の又は様々な部分(つまり、UTR及びORF、若しくは、UTR、ORF及びポリ(A)テール、若しくは、ポリ(A)テール単独)内の修飾ヌクレオシド対非修飾ヌクレオシドの比率も、好ましくは1:100~10:1、より好ましくは1:10~10:1、さらに好ましくは1:4~4:1又は1:2若しくは2:1、並びに、最も好ましくは1:1、1:2又は1:10である。
【0077】
mRNAの安定性を改善し、生成されたmRNAの翻訳を増強するために、異なる修飾をされた天然ヌクレオチド(例えば、プソイドウリジン若しくはN1-メチル-プソイドウリジン)、及び/又は人工ヌクレオチド若しくはヌクレオチド誘導体を含むことがさらに可能であり、望ましいことがある。異なる修飾をされたヌクレオチド、及びin vitro転写の間のそれらのmRNAへの組み込みに関するさらなる情報は、Svitkin, Y.V. et al., Nucleic Acids Research 2017, Vol. 45, No. 10, 6023-6036から得ることができる。
【0078】
in vitro mRNA転写によって、既存の目的のmRNA上でのポリ(A)ポリメラーゼ付加反応によって、発酵プロセスによって、又は完全に合成的に生成された、アルキン又はアジド修飾のうち少なくとも1つを含む本発明の修飾mRNAは、クリック反応によってさらに修飾され、他の目的の分子、特に上で既に説明したような標識及び/又は機能性分子を組み込むことができる。例えば、前述したような非着色分子、又は、蛍光若しくは着色分子のような検出可能な標識を導入することができる。また、上で説明したように、例えばGFP又はeGFPを含む融合タンパク質を生成するための修飾mRNAを提供することは、検出可能なシグナルを含むための別の好ましい選択肢である。結果として、例えば、生成されたmRNAの送達及び/又は発現を、特に細胞培養実験において、蛍光顕微鏡、FACS又は他の検出方法を用いてモニターすることができる。驚くべきことに、ORF内の塩基の比較的大きな修飾でさえ、リボソームでのmRNAの翻訳の間、許容されることが観察されている。例えば、シアニン5(Cy5)修飾ウリジンを含むシアニン5修飾eGFP(高感度緑色蛍光タンパク質)mRNAは市販されている(TRILINK biotechnologies、製品コードLL7701)。このようなmRNAは、細胞培養において機能的なタンパク質に容易に翻訳される。
【0079】
ポリ(A)ポリメラーゼによって、アジド又はアルキン修飾ATP又はATP誘導体がmRNAに付加されたとき、ポリ(A)テール領域のみでの選択的修飾が上記のように達成される。この修飾されたポリ(A)テールのその後のクリック標識は、翻訳にはわずかな影響しか及ぼさず(この配列は翻訳されないため)、例えば、上で説明したように、mRNAの標的化取り込みを媒介する、又はヌクレアーゼ分解に対するmRNA安定性を増加させる組織特異的リガンドに使用することができる。特に、非常に大きな分子又は他の理由により翻訳を損なう分子を結合させたい場合には、ポリ(A)テールによる共役が、好ましいか、又は必須のアプローチでさえあり得る。
【0080】
クリック反応は当業者によく知られており、前掲のSharpless et al.及びMeldal et al.に一般的に言及されている。クリック反応の全体的な条件は、これらの文献に記載されており、Himo F. et al., J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 210-216における開示にさらに言及されており、これは、好ましい銅触媒アジド-アルキン付加環化(CuAAC)に関連する。クリック反応の条件及び反応物質に関して、欧州特許第2 416 878 B1号及び欧州特許出願第17 194 093号にも言及され、ここでは、クリック結合反応において第一の分子を第二の分子に共役させるための好ましい方法が記載されている。この文脈において、銅触媒クリック反応は、反応混合物中に二価金属カチオンの存在下で行うことが好ましく、最も好ましくはMg2+の存在下で行うことが好ましい。
【0081】
上述の文献には、DNA分子の結合におけるクリック反応が記載されているが、一般的に、本発明において同じ条件を適用することができる。したがって、クリック反応は、不均一なCu (I)触媒の存在下で実施することが好ましい。さらに、クリック反応の効率を改善するためのCu (I)の安定化リガンド及び/又は有機溶媒、特にDMSO、及び/又は二価カチオンを含むことが好ましい(例えば、PCT/EP2018/076495号に開示されているように)。
【0082】
さらに好ましい実施形態では、クリック反応は、本発明の修飾mRNAと関連して前述したように、歪み促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)として行われる。CuAAC又はSPAAC反応の厳密な条件は、当業者に公知の基本要件が観察される限り、個々の状況に適合することができる。上述したように、SPAACは細胞の内部で行うこともできる。このような細胞にアルキン又はアジド修飾された標識を導入することは、修飾mRNAを細胞にトランスフェクションした後に、例えば細胞内のmRNAの位置をモニターするために有用であり得る。
【0083】
本発明は、mRNAに安定化効果を付与する修飾を含む修飾mRNA分子を、モジュール式で高効率で生成することを可能にする。修飾はまた、他の物質及び分子がクリック反応によって連結され得るアンカー分子としても有用である。このようなクリック反応は、転写反応とは別に、その下流で行うことが好ましく、特に、転写反応がそれによって完全に途絶されるであろう、大型でかさ高い目的の分子をmRNAに結合する場合に非常に有利である。
【0084】
本発明において、全範囲が高度に修飾されたmRNAの合成を可能にするためには、in vitro mRNA産生の間にアルキン及び/又はアジド修飾ヌクレオチドのわずかなセットを組み込むだけで十分であり得る。これにより、多くの修飾の迅速な準備とスクリーニングが可能になる。さらに、本発明のmRNA及びその製造方法は、mRNA産生の間にはRNAポリメラーゼによって容易には受け入れられないか又は全く受け入れられないものの、転写後にクリック反応によって容易に結合される機能性基の組み込みを可能にする。このような機能性基の組み込みは、従来の方法によっては達成することができない。
【0085】
したがって、本発明のmRNA及びその製造方法は、例えば、ex vivo細胞トランスフェクションにおいてそれらの取り込みを追跡するために標識することができ、また、治療又はワクチン調製における特定の使用のために、改善された細胞又は組織特異的な標的化を提供するように修飾することができる、安定化され、カスタムに(customarily)修飾されたmRNAを生成するための容易で信頼性の高い方法を初めて提供する。
【0086】
本発明のmRNAの好ましい用途の1つは、標的細胞のex vivoでのトランスフェクションである。背景の項で述べたように、全身的に、特に静脈内投与されるmRNA製剤は主に肝細胞に取り込まれるが、免疫刺激効果を引き起こすために、又はmRNAを直接ワクチン接種に用いる場合に、免疫系の細胞が好ましい標的であることが非常に多い。本発明の修飾mRNAを特定の細胞型に組み込むことが望ましい場合には、そのような細胞を患者から、特に患者の血液から単離し、mRNAのトランスフェクションをex vivoで行うことができる。
【0087】
したがって、本発明のさらなる主題は、細胞調製物及び特に免疫系の細胞の調製物であり、これは本発明の修飾mRNAを含み、細胞のex vivoトランスフェクションによって得られる。原則として、本発明の修飾mRNAは、あらゆる種類の細胞(ヒト、動物又は植物細胞も)にトランスフェクトするために使用できる。本発明の一態様において、細胞調製物の細胞は、動物又はヒト由来である。
【0088】
本発明のこの態様は、とりわけ、養子細胞移植(ACT)と、過去数十年以内に開発されたその多様な用途及び使用に関する。自己の及び非自己の細胞は、例えば、免疫の機能性及び他の特徴を改善するために処理することができる。好ましくは、免疫系の細胞は、患者から得られ、操作されて、がん(例えば、B細胞リンパ腫)を含む様々な疾患を処置するのに有用であることが証明されている自己免疫細胞を生成する。CAR-T細胞ベースの治療は、このようなアプローチの1つであり、ここでT細胞は、その表面上に、腫瘍細胞上の特定のタンパク質又は抗原を認識し、結合するキメラ抗体受容体を生成するように遺伝的に操作される。
【0089】
本発明の細胞調製物は、同じ文脈で使用することができる。細胞に導入される修飾mRNAに依存して、続くタンパク質の発現は、患者への(再)投与後のこのような細胞の多様な効果を提供することができる。したがって、本細胞調製物は、少数の用途に制限されるものではなく、それどころか、細胞の(再)投与後のin vivoでのmRNAの発現のための媒体(vehicle)と考えることができ、この細胞はその後、目的のタンパク質を産生し、及び/又はそのタンパク質の発現により患者において一定の(例えば、免疫刺激性若しくは免疫寛容原性の)効果を発揮する。
【0090】
細胞トランスフェクションの方法は、当業者に知られており、目的の特定の細胞型に適合することができる。このような方法の例としては、前掲のMoffett et al.に言及されている。ex vivoトランスフェクションにおいて、免疫細胞は、これらのいくつかのトランスフェクション剤成分によって特に損傷し易いため、トランスフェクション剤なしで細胞へのmRNAの取り込みを容易にする細胞特異的な標的化基を含むように、クリック反応によって修飾される本発明のmRNAを使用することが特に好ましい。
【0091】
細胞のex vivoトランスフェクション及びそのようなトランスフェクトされた細胞を患者に投与することに加えて、本発明の修飾mRNAを患者に直接適用することもできる。いずれの場合も治療的(又は予防的)処置と考えられる。したがって、本発明のさらなる主題は、本発明の修飾mRNA又は細胞調製物を活性剤として含む医薬組成物である。すでに述べたように、mRNAベースの治療薬は最近重要な研究課題となっている。治療剤としてのmRNAの多数の用途が記載されており(例えば、Sahin et al、Schlake et al.及びKranz et al、全て前掲)、本発明の修飾mRNAは、このような用途の全てに使用できるばかりでなく、それらに利点及び改良を提供することさえできる。修飾mRNAの安定性の増強に基づいて、さらに、任意に存在する機能性基に基づいて、様々な問題を解決することができる。安定性の増強に起因して、例えば、非修飾mRNAと比較して、タンパク質への翻訳が延長する。さらに、組織若しくは細胞標的化基の存在は、治療的又は免疫原性処置の高い特異性及び標的化投与を可能にする。
【0092】
修飾mRNAの適当な用途の中で、細胞調製物及びそのようなmRNA又は細胞調製物を含む医薬組成物は、遺伝子又はタンパク質補充治療、標的化一過性遺伝子送達及びゲノム操作/遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas9システム又はその類似物におけるような、標的化エンドヌクレアーゼをコードするmRNA及びガイドRNA)、感染性疾患ワクチン接種、がん免疫治療、並びに遺伝性疾患の処置のための細胞特異的な遺伝子発現である。
【0093】
遺伝子補充治療は、多数の疾患の治療において考えられる。タンパク質又は酵素の欠損又は機能不全が主要な原因又は結果である多くの疾患において、患者への必要な活性タンパク質の投与は、即時的な又は結果的な障害(immediate or consequential damage)を回避するために不可欠である。しかしながら、タンパク質の連続的な投与は、不耐性又は他の負の副作用を引き起こす可能性がある。
【0094】
さらに、患者に特定のタンパク質を十分な量提供するためには、高濃度のこのようなタンパク質を、時には100mg/mlもの高濃度で、1日及び患者当たり20gに及ぶタンパク質を投与する必要がある。タンパク質補充治療におけるさらなる問題として、タンパク質を細胞内に投与することも困難であり得る。一方、いくつかのmRNAについては、患者において十分に高い細胞内タンパク質レベルを達成するために、1用量当たり50~100μgの提供で十分であることが示され得る。したがって、本発明及び特に特定の細胞又は組織への標的化の可能性は、現在のタンパク質補充治療アプローチで直面する問題に対する簡便な解決策を提供する。現在のタンパク質補充治療では、通常、時間がかかり、患者にとって身体的に負担である点滴が必要だが、タンパク質補充治療において本発明の修飾mRNAを使用すれば、例えば、多くの場合、mRNAの注入で十分である。
【0095】
タンパク質補充又は少なくとも定常的なタンパク質補給を必要とする疾患の例としては、タンパク質欠乏性疾患、I型糖尿病のような多くの代謝性疾患、また、遺伝性疾患、特にリソソーム蓄積疾患(ゴーシェ病(Morbus Gaucher)又はハンター症(Morbus Hunter)のような)が挙げられる。
【0096】
遺伝子補充治療において、in vivoと同様にex vivoにおいて細胞に修飾mRNAを含むことを考えることができる。特に、細胞又は組織特異的な標的化基が本発明のmRNAと共に含まれる場合、修飾mRNAの標的細胞へのin vivo挿入(insertion)さえも、非常に効率的であることが期待される。本発明は、mRNAのタンパク質への内因性翻訳を可能にし、したがって、上述のような有害作用を回避する。それでも、標的細胞へのmRNAのex vivo挿入(insertion)及びこのような標的細胞の患者への(再)投与もまた、上述のように、本発明におけるさらなる選択肢である。
【0097】
本発明に係る医薬組成物は、mRNAワクチンとしても適用することができる。ワクチン接種は、免疫応答を誘導するためのin situタンパク質発現に基づいて達成される。本発明の修飾mRNAから任意のタンパク質を発現することができるので、本医薬組成物は、所望の免疫応答に関して最大の柔軟性(flexibility)を提供することができる。また、修飾mRNAを用いることにより、様々なタンパク質成分又は不活性化されたウイルス粒子をも生成することが必要である従来の方法と比較して、非常に迅速な免疫代替策が提供される。従来の方法では通常、異なる製造方法を行うことが必要だが、本発明を用いると、感染性因子に関係する異なるタンパク質又はタンパク質部分をコードする様々なmRNAを、同じ調製方法で製造することができる。mRNAワクチン接種による免疫化は、単回のワクチン接種及び低用量のmRNAのみを用いることによってさえ達成可能である。DNAワクチンとは対照的に、RNAワクチンは核膜を通過する必要はなく、それどころか、細胞膜を通過して細胞質に到達するだけで十分である。mRNAワクチンの開発に関するさらなる情報は、例えば、前掲のSchlake et al.において開示されており、本発明においても適用可能である。本発明の修飾mRNAを含む医薬組成物は、予防的及び治療的ワクチンとして採用することができる。このワクチンは、あらゆる種類の病原体(例えば、最近注目されているジカウイルスのようなウイルス)に対するものとすることができる(Pardi et al.、前掲)。
【0098】
外因性病原体に対するワクチン接種に加えて、本発明の医薬組成物は、がん免疫治療において免疫系を刺激するために、又は抗腫瘍ワクチンとして使用することもできる。特に、樹状細胞又はマクロファージへの全身性RNA送達は、前掲のKranz et al.に記載されているように、がん免疫治療のための抗ウイルス防御機構を活用する可能性を提供する。例えば、マクロファージ又は樹状細胞を、特定の種類のがんにおいて又はそれに特異的なタンパク質を発現するmRNAで標的化することは、MHC分子によるそのようなタンパク質の一部の提示につながり、強力かつ特異的な免疫応答を誘発する。したがって、本発明の修飾mRNAは、抗原をコードするmRNAの薬理学においても使用することができる。
【0099】
RNAベースの免疫治療及びワクチン接種においては、免疫刺激性医薬組成物中に上記のような(m)RNAアジュバントを含むことが特に好ましい。アジュバントは、自然免疫応答の刺激を提供し、したがって、免疫治療効果をさらに増強する。この文脈において、本発明の修飾mRNA及び本発明の(m)RNAアジュバントは、同じ又は類似の配列を有し、同じタンパク質をコードすることさえできる。一方、非コード(m)RNAアジュバント又は異なるタンパク質若しくはペプチドをコードする(m)RNAアジュバントもまた、所望のアジュバント効果を達成するために組み合わせることができる。
【0100】
特定のエンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを用いた標的化遺伝子編集は、本発明の修飾mRNA又は医薬組成物のさらなる用途である。最近開発された画期的なCRISPR/Cas9技術は、特異的な遺伝子編集を可能にし、遺伝子を導入し、欠失させ又はサイレンシングすることを可能にし、ある遺伝子内でヌクレオチドを交換することさえ可能である。CharpentierとDoudnaによって記載された方法は、リボ核タンパク質であるCasタンパク質と、特定の化学的に合成されたCRISPR RNA(crRNA)配列に結合し、そのようなRNA配列の近傍でDNAを切断するエンドヌクレアーゼに関係する。エンドヌクレアーゼ活性を所望の標的DNA配列へと向けるために、標的DNA配列に相補的な、いわゆるガイドRNAが用いられる。ガイドRNAは、化学的に合成された長いトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)とcrRNAとの複合体、又は、単一の構築物としてtracrRNAとcrRNAとの両方からなる、合成され若しくは発現されたシングルガイドRNA(sgRNA)のどちらか、2つの形態をとることができる。この文脈において、本発明の修飾mRNAは、エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAの一方又は両方をコードするために、好ましくは、目的の特定のDNA配列に相補的なsgRNAとして使用することができる。
【0101】
mRNAからの、遺伝子編集エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAの一過的な発現の、現在の技術と比較した大きな利点は、mRNAからのこの遺伝的ツールの遺伝子発現が短期間(数日間)に限られ、組み込まれたゲノムエレメントから定常的に発現するわけではないため、非特異的な遺伝子編集のリスクが低下することである。
【0102】
遺伝子編集の適用は重要性が高く、例えば遺伝子補充治療、がん治療及び遺伝性疾患の処置のような多様な治療用途において適用することができる。このような用途の全てにおける本発明の修飾mRNAの使用は、本発明の範囲内に含まれる。
【0103】
また、先行技術においてmRNAについて記載されているか、又は将来開発される他の潜在的な治療用途についても、本明細書に記載されている修飾を含むそれぞれのmRNAの使用は、その安定性が改善されているために有利である。さらに、下流のクリック反応によってmRNAに組織又は細胞特異的な標的化分子を含むことにより、治療における、より特異的で、したがって、より効果的な使用を可能にする。特に、任意の所望のタンパク質発現は、又は任意の免疫化反応(immunization reaction)も、治療又は免疫化効果を必要とする患者内の場所に正確に標的化することができる。
【0104】
本発明の医薬組成物の好ましい実施形態は、医薬的に許容可能な担体、賦形剤及び/又はアジュバント、好ましくは、修飾mRNAと同じ修飾を含み、カチオン性若しくはポリカチオン性化合物と複合体化された上記のような修飾(m)RNAアジュバントを、修飾mRNAと共に含む。さらに好ましい実施形態において、医薬組成物は、mRNAを分解からさらに保護する複合化剤を含む。複合化剤は、細胞による取り込み及びタンパク質への同時翻訳(concurrent translation)を改善し、増強し得る。複合化剤として、脂質又はポリマーがこの医薬組成物に含まれてもよい。さらに好ましい実施形態において、医薬組成物は、リポソームに封入された修飾mRNAを含んでもよい。
【0105】
さらに好ましい実施形態では、医薬組成物はカチオン性脂質を含む。サイトゾルへの核酸の送達をさらに改善する薬剤もまた、好ましくは、本発明の医薬組成物に含まれ得る。このような薬剤は、特定の送達経路へと合わせることができる。要約すれば、本発明の医薬組成物は、本発明の修飾mRNAを活性剤として含む一方で、活性物質の安定性をさらに改善し、標的細胞の細胞質への送達を増強し、かつ、他の補完的又は相乗的効果を提供するための任意のさらなる物質を含むことができる。
【0106】
本発明において、活性剤として、本発明の修飾mRNAによる細胞のex vivoトランスフェクションによって得られる細胞調製物、特に免疫系の細胞の調製物を含む医薬組成物が含まれる。トランスフェクトされた細胞は、細胞に含まれる修飾RNAの効果による利益を得るために、患者に戻すことができる。また、本発明の医薬組成物のこの好ましい実施形態としては、前に概説したように、医薬的に許容可能なアジュバント又は賦形剤又は担体を含めることができる。
【0107】
本発明のさらなる主題は、細胞、組織又は器官における、本発明のmRNAの存在、送達及び/又は分布についてのin vitro又はin vivoスクリーニングのための、本発明の修飾mRNA又は本発明の修飾mRNAで形質転換された細胞を含む診断用組成物である。そのような目的のために、好ましくは、修飾mRNAは、クリック反応によって導入された検出可能な標識を既に含む。好ましくは、このような標識は、フルオロフォア又は放射性核種、好ましくはポジトロン放出放射性核種である。検出可能な標識を検出し、また場合によっては定量もすることにより、修飾mRNAの細胞、組織若しくは器官への送達、その中での分布を観察し、検出することができ、又は患者への細胞の再投与をモニターすることができる。したがって、本発明の診断用組成物は、本発明の修飾mRNA、好ましくは少なくとも1つの検出可能な標識を含むmRNAを含む。この文脈において、発現の際に検出可能なタンパク質(例えば、蛍光タンパク質を含む融合タンパク質)を産生する修飾mRNAを含むことは、さらに好ましい実施形態である。
【0108】
本発明のさらなる態様において、また前述したように、植物細胞もまた、本発明の修飾mRNAを用いてトランスフェクトすることができる。このようなトランスフェクトされた植物細胞もまた、本発明の範囲内に包含される。修飾mRNAは、例えば、遺伝情報を導入するために、特に、そのような植物細胞において特定のタンパク質を一過的に発現させるために、又は、分析若しくは診断目的で(例えば標識されたプローブとして)、含めることができる。疾患若しくは害虫への抵抗性又は耐性を付与することは、植物細胞又は植物に本発明のmRNAを導入することの可能な用途及び有益な効果のいくつかの例に過ぎない。したがって、植物細胞又は植物のトランスフェクションのための本発明の修飾mRNAの使用もまた、本発明の主題である。
【0109】
本発明のなおさらなる主題は、本発明の修飾mRNAを調製するためのキットである。このようなキットは、in vitro転写法、発酵プロセス、又はポリ(A)ポリメラーゼ付加反応によって修飾mRNAを調製するために必要な様々な物質、つまり、RNAポリメラーゼ及び/又はポリ(A)ポリメラーゼ、アルキン又はアジド修飾ヌクレオチド及び非修飾ヌクレオチド、並びに、場合によって、さらなる緩衝物質及び溶媒、又はこの方法に必要なさらなる物質を含む。好ましい実施形態では、アルキン及び/又はアジド修飾された検出可能な標識又は機能性分子、並びに、修飾mRNAと標識又は機能性分子との間のクリック反応を行うのに必要な物質も含まれる。また、本発明の修飾mRNAを完全に合成的に生成するためのキットは、本発明のさらなる主題である。必要な物質は、別々の容器に入れて提供してもよいし、又は、そのような混合した物質間で有害反応が起こらない限り混合してもよい。このような部分のキット(キットオブパーツ)に含まれる様々な物質に関しては、本発明の修飾mRNA及びそのような修飾mRNAを調製方法に関連して、上記に言及されている。修飾された(m)RNAアジュバントの製造に関する限り、このようなキットは、好ましい実施形態によって(m)RNAと複合体を形成するために使用されるカチオン性又はポリカチオン性化合物も含むことが好ましい。本発明のキットはまた、ex vivo又はin vivoでの、本発明の修飾mRNAの細胞への送達を容易にするさらなる物質を含んでもよい。
【0110】
好ましい実施形態において、キットは、好ましくはクリック反応によって導入される検出可能な標識若しくは機能性分子を含む本発明の修飾mRNAを少なくとも1つを含むか、又は、修飾mRNA及びアルキン若しくはアジド修飾された標識及び/若しくは機能性分子、並びに、任意に他のクリック試薬を別々の容器で提供する。
【0111】
本発明のさらなる実施形態では、修飾mRNAを患者に送達するためのキットは、mRNA、及び好ましくは(m)RNAアジュバントも含み、いずれも本発明に従って修飾される。修飾mRNA及び修飾された(m)RNAアジュバントは、1つの単一容器又は別々の容器に入れることができ、いずれも、場合によっては、クリック反応によって既に結合されているか、又は後でクリック反応を行うために別々の容器に存在する、アルキン若しくはアジド修飾された標識若しくは機能性分子を含んでもよい。キットはさらに、他の医薬的に許容可能な担体及びアジュバントを、これもまた、別々の容器中で、又はキットの少なくとも1つの他の成分と混合して、含んでもよい。
【0112】
キットに、本発明の修飾mRNAの調製又は使用を容易にする物質を、多くの異なる組み合わせで含めることができることは、当業者には明らかであろう。本発明において上述した全ての実施形態及びそのバリエーションは、ここに記載したキットにも適用可能である。本発明の目的のために、物質の全ての適当な組み合せが含まれる。
【0113】
本発明のさらなる主題は、RNA、特にmRNAを安定化する方法に関し、このような方法には、RNA合成の間に及び/又はポリ(A)ポリメラーゼ付加反応中に4つの標準型ヌクレオチド(ATP、CTP、GTP及びUTP)の少なくとも1つを部分的に又は完全にアルキン及び/又はアジド修飾形態で含むことにより、アルキン及び/又はアジド修飾を導入し、修飾(mRNA)を生成することが含まれる。上記のように、アルキン及び/又はアジド修飾ヌクレオチドを含むことによる、並びに、特に、任意により、クリック反応によって1つ以上の検出可能な標識及び機能性分子も含むことによる、RNA、特にmRNAの修飾は、RNA分子に安定化効果をもたらす。したがって、相当する方法は、本発明に含まれるさらなる重要な態様と考えられる。
【0114】
本発明のさらに別の主題は、標的細胞において、本発明のmRNAの存在及び/又は発現を定性的又は定量的に測定するためのin vitro方法である。この文脈において、トランスフェクション効率、mRNA送達及び発現の定量化は、FACS分析によって単一細胞の分解能で測定することができる。蛍光活性化細胞ソーティング/スキャニング(FACS)は、当業者によく知られている。クリック反応によって本発明の修飾mRNAに導入することができる蛍光標識は、この方法に基づいて測定することができる。さらに、mRNA送達及びコードされたタンパク質の発現は、上記のように、好ましい実施形態において、融合タンパク質として、又は2つの別々のタンパク質として、目的のタンパク質と共発現させることができる蛍光タンパク質(例えば、GFPタンパク質又はeGFPタンパク質)を用いて検出することができる。
【0115】
したがって、FACS法を用いると、本発明の修飾mRNAによりコードされるタンパク質の発現レベル及び細胞トランスフェクションに修飾が及ぼす影響を容易に決定することができる。また、発現レベルに対する異なる標識の影響を研究することは、FACS分析によって行うことができる。
【0116】
このようなFACS分析において、例えば、非トランスフェクション細胞とトランスフェクション細胞との比較により、蛍光シグナルを検出することができ、ここで、この蛍光シグナルは、本発明の修飾mRNAに含まれる蛍光標識に起因してもよいし、又は本発明の修飾mRNAの翻訳により発現する蛍光タンパク質に起因してもよい。また、同じ標的細胞のトランスフェクション反応を、本発明の修飾mRNAと、同じヌクレオチド配列を持つ非修飾mRNAとで比較することによって、修飾自体がトランスフェクション効率に負の影響を与えないことを保証することができる。
【0117】
本発明の一つの主題に関連して上に開示された全ての情報は、明示的に繰り返されていなくても、この情報が発明の文脈内で認識可能な関連性を有する他の主題の文脈において、等しく適用されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1図1は、修飾mRNAの生成及び用途の一般的なスキームを示す。例えば、5-エチニルUTP(EUTP)を用いて、5'-UTR、3'-UTR及びORFとのクリック反応に利用可能なアルキン基を挿入することが可能である。ポリ(A)テールの選択的標識は、例えば、7-エチニル7-デアザATP及びポリ(A)ポリメラーゼを用いて可能である。
図2図2は、例えば、T7 RNAポリメラーゼ、及びEUTP(構造式)を含む混合ヌクレオチドを用いた、アルキン修飾mRNAの一般的な生成スキームを示す。
図3図3は、eGFPをコードする、非アルキン(A)、アルキン(B)及び色素(C)修飾mRNAの、HeLa細胞へのトランスフェクションの結果を示す。
図4図4は、例えば、ポリ(A)ポリメラーゼ及びアルキン修飾ヌクレオチドEATP(構造式)を用いた、アルキン修飾mRNAの一般的な生成スキームを示す。
図5図5は、eGFPをコードする、Eterneon red 645修飾mRNA(ポリ(A)テールのみにおけるアルキン修飾)の、HeLa細胞へのトランスフェクションの結果を示す。
図6図6は、実施例においてT7 RNAポリメラーゼ反応中に鋳型DNAとして線形化された形で用いられたプラスミドのマップと完全な配列(T7プロモーターからポリ(A)末端まで)を示す。この配列は、配列番号2とも称する。
図7図7は、実施例3に記載の、RNAのポリ(A)テールへのEATPの組み込みを証明するための実験の結果を示す。
図8図8は、実施例4に記載の、酵母ポリ(A)ポリメラーゼ及びアジド修飾ヌクレオチドAzddATPを用いた、部位特異的なアジド修飾mRNA(ポリ(A)テールの末端のみにおける単一アジド)の生成の一般的なスキームを示す。
図9図9は、eGFPをコードする、3'-ポリ(A)テールCy3修飾mRNAの、HeLa細胞へのトランスフェクションを示す。37℃で24時間のインキュベーションの後、eGFPの緑色蛍光が観察された(eGFPフィルター)。Cy3標識mRNAについては、Cy3フィルター設定を用いてmRNAの局在を観察した。
図10図10は、実施例5にあるように、二重標識アジド/アルキン修飾mRNA(内部アルキン基はT7 RNAポリメラーゼ及びEUTPを用いて、3'末端における1つの末端アジドはAzddATP及び酵母ポリ(A)ポリメラーゼを用いて)の生成のための一般的なスキームを示す。
図11図11は、eGFPをコードする、内部Eterneon Red修飾及び3'-ポリ(A)テールCy3修飾mRNAの、HeLa細胞へのトランスフェクションを示す。37℃で24時間のインキュベーションの後、eGFPの緑色蛍光が観察された(eGFPフィルター)。Cy3標識mRNAについては、Cy3フィルター設定を用いてmRNAの局在を観察し、Eterneon Red標識mRNAについては、Cy5フィルター設定を用いてmRNAの局在を観察した。
図12図12は、トランスフェクトされていないHeLa細胞に対するFACS分析の結果を示す。
図13図13は、eGFPをコードする非修飾mRNAをトランスフェクトしたHeLa細胞に対するFACS分析の結果を示す。
図14図14は、eGFPをコードするアルキン修飾mRNAをトランスフェクトしたHeLa細胞に対するFACS分析の結果を示す。
図15図15は、eGFPをコードする、Eterneon Red/アルキン修飾mRNAをトランスフェクトしたHeLa細胞に対するFACS分析の結果を示しており、色素標識mRNAの修飾及び取り込みに依存したタンパク質発現の定量化が可能になった。
図16図16は、eGFPをコードする、Eterneon Red/アルキン修飾mRNAをトランスフェクトしたHeLa細胞に対するFACS分析の結果を示しており、色素標識mRNAの修飾及び取り込みに依存したタンパク質発現の定量化が可能になった。
図17図17は、本発明の一実施形態の概略図を示す:細菌細胞に、例えば、5-エチニルウリジンを供給し、細胞をmRNAの生成に必要な配列を含むプラスミドで形質転換する。その後、EUを含む新たに合成されたmRNAをポリ(T)樹脂及び/又はポリ(T)オリゴヌクレオチドが結合したビーズによって精製する。
【発明を実施するための形態】
【0119】
以下の実施例は、本発明をさらに例示する:
[実施例]
【0120】
実施例1
高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするアルキン修飾mRNAをインビトロ転写法(IVT)によって鋳型DNAからT7 RNAポリメラーゼ及び混合ヌクレオチドを用いて生成した。ここでHenrietta Lacks不死細胞(HeLa細胞)へのトランスフェクションのために、5-エチニルウリジン-5'-三リン酸(EUTP)を混合ヌクレオチドに含めて、図2に示す通りにアルキン修飾mRNAを生成した。生成されたmRNAは5'キャップ、非翻訳領域(UTR)、タンパク質コード部分(オープンリーディングフレーム、ORF)及びポリ(A)テールを含む。
【0121】
(mRNA生成)
50μLの反応量で、転写反応用緩衝液(40mM Tris-HCl, pH 7.9,、6mM MgCl2、4mMスペルミジン、10mM DTT)に、20ユニットのT7 RNAポリメラーゼ、1μgの鋳型DNA及び適当量(several)のヌクレオチドが混合されている。
【0122】
A)非アルキン修飾mRNA生成用のヌクレオチド終濃度は:1.0mM GTP、4.0mM A.R.C.A.(P1-(5'-(3'-O-メチル)-7-メチル-グアノシル)P3-(5'-(グアノシル))三リン酸、キャップ類似体)、1.25mM CTP、1.25mM UTP、1.25mM ΨUTP(プソイドウリジン三リン酸)、1.5mM ATPであった。
【0123】
B)アルキン修飾mRNA生成用のヌクレオチド終濃度は:1.0mM GTP、4.0mM A.R.C.A.(P1-(5'-(3'-O-メチル)-7-メチル-グアノシル)P3-(5'-(グアノシル))三リン酸、キャップ類似体)、1.25mM CTP、1.25mM EUTP(5-エチニルウリジン三リン酸)、1.25mM ΨUTP(プソイドウリジン三リン酸)、1.5mM ATPであった。
【0124】
C)アルキン修飾mRNA生成及びその後のクリック標識用のヌクレオチド終濃度は:1.0mM GTP、4.0mM A.R.C.A.(P1-(5'-(3'-O-メチル)-7-メチル-グアノシル)P3-(5'-(グアノシル))三リン酸、キャップ類似体)、1.25mM CTP、0.625mM EUTP(5-エチニルウリジン三リン酸)、0.625mM ΨUTP(プソイドウリジン三リン酸)、0.625mM UTP、1.5mM ATPであった。
【0125】
混合液を37℃で2時間インキュベートし、その後、2ユニットのDNAseIを添加し、37℃で15分間インキュベートした。mRNAはPCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法によって精製した。得られたmRNAは、Aからは13.3μg、Bからは12.3μg、そしてCからは14.3μgだった。これらは、クリック標識が不要の場合はそのままトランスフェクションに使用した(A及びB)。クリック標識を行う場合(C)、2μg RNA, 1nmol Eterneon Red 645 Azide(baseclick GmbH)、1つのリアクターペレット及び0.7μL 10x Activator2(baseclick GmbH, Oligo2 Click Kit)を全量7μLの反応量で混合した。反応混合物を45℃で30分間インキュベートし、PCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法を用いて精製した。
【0126】
トランスフェクションはメーカーの説明書に従い、市販のキット(jetMESSENGERTM、POLYPLUS TRANSFECTION(登録商標))、0.5μgのmRNA及びコンフルエントに達した25,000のHeLa細胞(CLS GMBH)を用いて行った。細胞を37℃で24時間インキュベートした後、蛍光顕微鏡での分析を行った。この分析には、GFPフィルター(470/22励起; 510/42発光)及びCy5フィルター(628/40励起; 692/40発光)を用いた。
【0127】
図3は非アルキン(A)、アルキン(B)及び色素(C)で修飾されたeGFPをコードするmRNAをHeLa細胞にトランスフェクションした結果を示している。37℃で24時間インキュベート後、eGFPの緑色蛍光が観察された(GFPフィルター)。Eterneon Red標識mRNA(C)の場合、Cy5フィルター設定を用いてmRNAの局在が観察された。
【0128】
明視野画像では、HeLa細胞の健康な細胞形態が観察された(図3、A~C)。また、GFPフィルターを使用して、eGFPタンパク質の発現を可視できた(A-Bの露光時間120ms、Cの露光時間250ms)。クリック標識されたmRNA(図3、C)においても、顕微鏡のCy5フィルター設定においてmRNAの局在が観察された。
【0129】
(補足情報)
上記のT7 RNAポリメラーゼ反応中に使用された修飾ヌクレオチドの構造。
【化1】
【0130】
上記のT7 RNAポリメラーゼ反応中に鋳型DNAとして線形化された形で使用されるプラスミドのマップと完全な配列(T7プロモーターからポリ(A)末端まで)を図6に示す。配列は配列番号2とも称する。
【0131】
実施例2
高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするアルキン修飾mRNAをインビトロ転写法(IVT)によって鋳型DNA(図6)からT7 RNAポリメラーゼ及びヌクレオチド混合物を用いて生成した。ここで続くクリック修飾及びHenrietta Lacks不死細胞(HeLa細胞)へのトランスフェクションのために、7-エチニルアデニン-5'-三リン酸(EATP)を、ポリ(A)ポリメラーゼによるT7 RNAポリメラーゼ反応後のIVT mRNAに組み込み、図4に示す通りにアルキン修飾mRNAを生成した。生成されたmRNAは5'キャップ、非翻訳領域(UTR)、タンパク質コード部分(オープンリーディングフレーム、ORF)及びアルキン標識されたポリ(A)テールを含む。
【0132】
(mRNA生成)
50μLの反応量で、転写反応用緩衝液(40mM Tris-HCl, pH 7.9、6mM MgCl2、4mMスペルミジン、10mM DTT)に、20ユニットのT7 RNAポリメラーゼ、1μgの線形化鋳型DNA及び適当量(several)のヌクレオチドが混合されている。
【0133】
非アルキン修飾mRNA生成用のヌクレオチド終濃度は:1.0mM GTP、4.0mM A.R.C.A.(P1-(5'-(3'-O-メチル)-7-メチル-グアノシル)P3-(5'-(グアノシル))三リン酸、キャップ類似体)、1.25mM CTP、1.25mM UTP、1.25mM ΨUTP(プソイドウリジン三リン酸)、1.5mM ATPであった。
【0134】
混合液を37℃で2時間インキュベートし、その後、2ユニットのDNAseIを添加し、37℃で15分間インキュベートした。mRNAはPCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法によって精製した。得られたmRNAは12.3μgで、これはそのまま、EATPと共にポリ(A)ポリメラーゼ反応に使用した。
【0135】
20μLの反応量で、反応緩衝液(250mM NaCl、50mM Tris-HCl、10mM MgCl2, pH 7.9)中に、5ユニットの大腸菌ポリ(A)ポリメラーゼ、以前に調製した4.2μgのmRNA及び1mM EATPの溶液を合わせた。
【0136】
混合物を37℃で1時間インキュベートした。mRNAはPCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法によって精製した。得られたmRNAは4μgだった。
【0137】
クリック標識では、1.1μg RNA, 1nmol Eterneon Red 645 Azide(baseclick GmbH)、1つのリアクターペレット及び0.7μL 10x Activator2(baseclick GmbH, Oligo2 Click Kit)を全量7μLの反応量で混合した。反応混合物を45℃で30分間インキュベートし、PCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法を用いて精製した。
【0138】
トランスフェクションはメーカーの説明書に従い、市販のキット(jetMESSENGERTM、POLYPLUS TRANSFECTION(登録商標))、0.5μgのmRNA及びコンフルエントに達した25,000のHeLa細胞(CLS GMBH)を用いて行った。細胞を37℃で24時間インキュベートした後、蛍光顕微鏡での分析を行った。この分析には、GFPフィルター(470/22励起; 510/42発光)及びCy5フィルター(628/40励起; 692/40発光)を用いた。
【0139】
図5は、Eterneon Redで修飾された、eGFPをコードするmRNAをHeLa細胞にトランスフェクションした結果を示している。37℃で24時間インキュベート後、eGFPの緑色蛍光が観察された(GFPフィルター)。Eterneon Red標識mRNAについては、Cy5フィルター設定を用いてmRNAの局在が観察された。
【0140】
明視野画像では、HeLa細胞の健康な細胞形態が観察された(図5)。また、GFPフィルターを使用して、eGFPタンパク質の発現を可視できた(露光時間120ms)。顕微鏡のCy5フィルター設定においてEt-Red標識されたmRNAの局在が観察された。
【0141】
実施例3
ポリ(A)テール内へのEATP(エチニルアデノシン-5'-三リン酸)の組み込みを証明するために、短いRNAオリゴヌクレオチド(31 mer、CUAGUGCAGUACAUGUAAUCGACCAGAUCAA、配列番号2)を鋳型として、以下を用いたポリ(A)ポリメラーゼ反応に使用した:
A) 1mM ATP
B) 1mM EATP
C) 0.5mM ATP及び0.5mM EATP。
20μLの反応量で、反応緩衝液(250mM NaCl、50mM Tris-HCl、10mM MgCl2, pH 7.9)中に、5ユニットの大腸菌ポリ(A)ポリメラーゼ、2μgのRNA(31 mer)及びヌクレオチド(最終濃度がA~C)を合わせた。混合液は37℃で30分又は37℃で16時間インキュベートした。
【0142】
結果は、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(7M尿素、1x TBE、7%ポリアクリルアミドゲル、定電圧100 V、1時間)によって分析した。鋳型RNAオリゴヌクレオチド(図7、レーン2)と比較して、ポリ(A)ポリメラーゼの存在下で、異なるヌクレオチドを使用して異なるインキュベーション時間でインキュベートした全てのサンプル(図7、レーン3~7)において、高分子量の位置にバンド又はスメアが現れた。これは、ATP又はそのアルキン類似体であるEATPの取り込みが成功したことを示している。インキュベーションが30分以内の場合、ATP(図7、レーン3)の組み込みは、EATP(図7、レーン4)又はEATPとATPの混合物(図7、レーン5)と比較してより効率的だった。EATPを組み込むためのインキュベーション時間を16時間に延長することにより、30分間のインキュベーション(図7、レーン4)と比較して、ポリEA付加物の長さが増加した(図7、レーン6)。興味深いことに、ATP及びEATPを含むヌクレオチド混合物について、30分と比較して16時間後に変化は観察されなかった(図7、レーン7)。
【0143】
図7には上記のように、異なるポリアデニル化反応の臭化エチジウム染色した7%変性ポリアクリルアミドゲルを示している。各レーンには500ngのRNAを流した。レーン1:低分子量DNAラダー(New England Biolabs)、レーン2:31mer RNAオリゴヌクレオチド鋳型、レーン3:1mM ATPを使用した30分間のポリアデニル化反応、レーン4:3と同様、ただし1mM EATP、レーン5:3と同様、ただし0.5mM EATPと0.5mM ATP、レーン6:4と同様、ただしインキュベーションは16時間、レーン7:5と同様、ただしインキュベーションは16時間。
【0144】
実施例4
高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするアジド修飾mRNAはin vitro転写法(IVT)によって鋳型DNAからT7 RNAポリメラーゼ及びヌクレオチド混合物を用いて合成された。ここで、酵母ポリ(A)ポリメラーゼを使用してT7 RNAポリメラーゼ反応を行った後、3'-アジド-2',3'-ジデオキシアデノシン(AzddATP)がIVT mRNAに組み込まれ、つまり、伸長が停止し、部位特異的な単一アジド修飾mRNAが生成される。その後、図8に示す通り、Henrietta Lacks不死細胞(HeLa細胞)へとトランスフェクションされた。生成されたmRNAは5'キャップ、非翻訳領域(UTR)、タンパク質コード部分(オープンリーディングフレーム、ORF)及び末端に単一のアジドを持つポリ(A)テールを含む。
【0145】
(mRNA生成)
50μLの反応量で、転写反応用緩衝液(40mM Tris-HCl, pH 7.9、6mM MgCl2、4mMスペルミジン、10mM DTT)に、20ユニットのT7 RNAポリメラーゼ、1μgの鋳型DNA及び適当量(several)のヌクレオチドが混合されている。ヌクレオチドの終濃度は以下の通りとした:1.0mM GTP、4.0mM A.R.C.A.(P1-(5'-(3'-O-メチル)-7-メチル-グアノシル)P3-(5'-(グアノシル))三リン酸、キャップ類似体)、1.25mM CTP、1.25mM UTP、1.25mM ΨUTP (プソイドウリジン三リン酸)、1.5mM ATP。
【0146】
混合液を37℃で2時間インキュベートし、その後、2ユニットのDNAseIを添加し、37℃で15分間インキュベートした。mRNAはPCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法によって精製した。得られたmRNAは13.7μgで、これはそのまま、アジド含有ATP類似体であるAzddATPと共に酵母ポリ(A)付加に使用した。
【0147】
25μLの反応量で、反応用緩衝液(10% (v/v) グリセロール、20mM Tris-HCl、0.6mM MnCl2、20μM EDTA、0.2mM DTT、100μg/mLアセチル化BSA, pH 7.0)に、600ユニットの酵母ポリ(A)ポリメラーゼ、5.8μgの精製されたIVT mRNA及び0.5mM AzddATPが混合されており、この溶液を37℃で20分間インキュベートした。修飾されたmRNAはPCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法によって精製した。得られたmRNAは4.8μgだった。
【0148】
クリック標識は、4.8μgのRNAと2nmolのDBCO-スルホ-Cy3(Jena Bioscience cat. no. CLK-A140-1)を合わせた全反応量30μLを用いて行った。反応混合物は室温で一晩インキュベートし、PCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法を用いて精製した。得られたmRNAは4.0μgだった。
【0149】
修飾mRNAのトランスフェクションのため、メーカーの説明書に従い、市販キット(jetMESSENGERTM、POLYPLUS TRANSFECTION(登録商標))、0.5μgのCy3標識されたmRNA及びコンフルエントに達した25,000のHeLa細胞(CLS GMBH)を用いた。細胞を37℃で24時間インキュベートした後、蛍光顕微鏡での分析を行った。この分析には、GFPフィルター(470/22励起; 510/42発光)及びCy3フィルター(531/40励起; 593/40発光)を用いた。
【0150】
明視野画像では、健康なHeLa細胞の細胞形態が観察された(図9)。また、GFPフィルターを使用して、eGFPタンパク質の発現を可視できた(露光時間120ms)。顕微鏡のCy3フィルター設定を用いてCy3標識されたmRNAの局在が観察された。
【0151】
実施例5
高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするアジド/アルキン修飾mRNAはin vitro転写法(IVT)によって鋳型DNAからT7 RNAポリメラーゼ、ヌクレオチド混合物及び酵母ポリ(A)ポリメラーゼを用いて生成された。ここで5-エチニルウリジン-5'-三リン酸(EUTP)は、ヌクレオチド混合物に含まれており、アルキン修飾mRNAが生成され、続いて3'-アジド-2',3'-ジデオキシアデノシン(AzddATP)が組み込まれて伸長が停止し、単一のアジドが導入される。これは、mRNAの二重標識の最初の実施例である。
【0152】
(mRNA生成)
50μLの反応量で、転写反応用緩衝液(40mM Tris-HCl, pH 7.9、6mM MgCl2、4mMスペルミジン、10mMジチオトレイトール)に、20ユニットのT7 RNAポリメラーゼ、1μgの鋳型DNA及び適当量(several)のヌクレオチドが混合されている。ヌクレオチドの終濃度は以下の通りとした:
1.0mM GTP、4.0mM A.R.C.A.(P1-(5'-(3'-O-メチル)-7-メチル-グアノシル)P3-(5'-(グアノシル))三リン酸、キャップ類似体)、1.25mM CTP、0.625mM EUTP(5-エチニルウリジン三リン酸)、0.625mM ΨUTP (プソイドウリジン三リン酸)、0.625mM UTP、1.5mM ATP。
【0153】
混合液を37℃で2時間インキュベートし、その後、2ユニットのDNAseIを添加し、37℃で15分間インキュベートした。mRNAはPCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法によって精製した。得られたmRNAは13.9μgで、これはそのまま、アジド含有ATP類似体であるAzddATPと共に酵母ポリ(A)付加に使用した。
【0154】
25μLの反応量で、反応用緩衝液(10% (v/v)グリセロール、20mM Tris-HCl、0.6mM MnCl2、20μM EDTA、0.2mM DTT、100μg/mLアセチル化BSA, pH 7.0)に、600ユニットの酵母ポリ(A)ポリメラーゼ、5.8μgの精製されたIVT mRNA及び0.5mM AzddATPが混合されており、溶液を37℃で20分間インキュベートした。修飾されたmRNAはPCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法によって精製した。得られたmRNAは4.35μgだった。
【0155】
最初のクリック標識(歪み促進型アジド-アルキン付加環化、SPAAC)は、4.35μgのRNAと2nmolのDBCO-スルホ-Cy3(Jena Bioscience cat. no. CLK-A140-1)を合わせた全反応量30μLを用いて行った。反応混合物は室温で一晩インキュベートし、PCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法を用いて精製した。得られたmRNAは2.55μgだった。
【0156】
第2のクリック標識(銅触媒アジド-アルキン付加環化、CuAAC)は、2μgのRNAと1nmol Eterneon Red 645 Azide(baseclick GmbH)、1つのリアクターペレット及び0.7μL 10x Activator2(baseclick GmbH, Oligo2 Click Kit)を混合して、全反応量7μLで用いて行った。反応混合物を45℃で30分間インキュベートし、PCR産物用のメーカーの説明書(PCR purification kit、Qiagen)に従い、スピンカラム法を用いて精製した。
【0157】
トランスフェクションのため、メーカーの説明書に従い、市販キット(jetMESSENGERTM、POLYPLUS TRANSFECTION(登録商標))、0.5μgのmRNA及びコンフルエントに達した25,000のHeLa細胞(CLS GMBH)を用いた。細胞を37℃で24時間インキュベートした後、蛍光顕微鏡での分析を行った。この分析には、GFPフィルター(470/22励起; 510/42発光)、Cy5フィルター(628/40励起; 692/40発光)及びCy3フィルター(531/40励起; 593/40発光)を用いた。
【0158】
明視野画像では、健康なHeLa細胞の細胞形態が観察された(図11)。また、GFPフィルターを使用して、eGFPタンパク質の発現を可視できた(露光時間120ms)。顕微鏡のCy3及びCy5フィルター設定を用いてCy3及びEterneon Red標識されたmRNAの局在が観察された。このことは、二つの異なる分子によって二重標識されていることを示している。
【0159】
実施例6
蛍光活性化細胞ソーティング/スキャニング(FACS)によるmRNA発現の相対定量
この実験は、FACSデバイスを使用して、細胞内のin vitro転写(IVT)されたeGFP mRNAの発現レベルを評価することを目的としている。eGFP発現は、475 nmで励起した時の509 nmの蛍光発光を介して直接モニターされ、機能性基、例えば末端アルキン又は色素分子等、のRNAへの導入が発現レベルを変更するかを示し得る。さらに、色素修飾mRNAの取り込みは、第二の蛍光チャネルでモニターできる。これにより培養細胞集団内の発現レベルのばらつきを検出し、mRNA調製の均一性を評価できる。
【0160】
三種類の異なるIVT mRNAは、鋳型DNA、T7 RNAポリメラーゼ及び以下に挙げる異なるヌクレオチド混合物を用いて調製され、必要に応じてその後クリック反応に供された。
A)非修飾ヌクレオチド混合物(=非標識eGFP mRNA)
B)5-エチニルウリジン5’-三リン酸含有ヌクレオチド混合物(=アルキン修飾eGFP mRNA)
C)Bと同様、ただし続けてEterneon Red 645 azide(Cy5類似体、baseclick GmbH)の存在下でのクリック反応を行う(=Eterneon Red eGFP mRNA)
【0161】
それぞれ2μgのmRNA調製物、又は陰性対照としてmRNAを含まない緩衝液を用いてHenrietta Lacks不死細胞(HeLa)へのトランスフェクションを行った。細胞を37℃で24時間インキュベートした後に剥離し、固定し、少なくとも10000個の細胞をFACS(FACS Canto II, BECTON DICKINSON)を用いて分析した。
【0162】
全てのサンプルを2つのチャネル、すなわちタンパク質発現を評価するためのeGFP蛍光用及び色素標識されたmRNAの存在を評価するためのEterneon Red色素蛍光用、を使用して分析した。これにより、以下に示すようなヒストグラムと散布図が、各実験及び蛍光チャネルについて得られた。ヒストグラムは蛍光強度あたりのカウント細胞の数、散布図は蛍光強度(eGFP又はEterneon Red)との相関により細胞内部構成(SSC)を表示している。10000カウント(= 10000細胞)からのデータを各サンプルについて収集した。
【0163】
a)mRNAでトランスフェクトされなかったHeLa細胞を陰性対照として分析し、内因性の蛍光レベルを決定した。これにより、散布図の作成時に細胞がeGFPタンパク質を発現していると見なすレベルを規定するゲート(P1)を設定できた。 P1ゲート内のすべての点は、特定の蛍光強度を持つeGFP発現細胞と考えられる。結果を図12に示す。
【0164】
b)非修飾のeGFP mRNA(A)でトランスフェクトした場合、96.5%に等しいP1を有するほぼすべての細胞が蛍光タンパク質を発現していた(赤色集団)。結果を図13に示す。一方HeLa細胞にアルキン修飾eGFP mRNA(B)をトランスフェクトした場合にはP1値は96.4%であり、非常に類似した結果が得られた。この実験の結果を図14に示す。
【0165】
c)HeLa細胞にEterneon Red eGFP mRNA(C)をトランスフェクトした場合、75%のP1集団が観察された。つまり、eGFP mRNAに立体的にかさ高い色素分子を付けた場合でも、リボソームは、未修飾eGFP mRNAと比較して78%程度の相対発現レベルで機能性タンパク質への翻訳ができると分かった。結果は図15に見られる。
【0166】
d)さらに、mRNAはEterneon Red色素で標識されているため、細胞あたりの相対的なmRNA量を観察できた。eGFPを発現していないと判断された細胞(薄い灰色、ゲートP2)を分析すると、それらすべての細胞が少量のEterneon Red標識mRNAしか内在化していない細胞に相当することが観察された。この推測は、P2(薄い灰色)が蛍光強度の最低値に対応しているEterneon Redチャネルから導かれた。結果を図16に示す。
【0167】
SEQUENCE LISTING

<110> baseclick GmbH

<120> Click-modified mRNA

<130> PA23-323

<140> JP2023-114150
<141> 2018-12-18

<150> EP 17 209 585.3
<151> 2017-12-21

<150> EP 18 157 703.2
<151> 2018-02-20

<150> EP 18 202 542.9
<151> 2018-10-25

<160> 2

<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 31
<212> RNA
<213> Artificial Sequence

<220>
<223> RNA oligonucleotide

<400> 1
cuagugcagu acauguaauc gaccagauca a 31


<210> 2
<211> 1239
<212> DNA
<213> Artificial Sequence

<220>
<223> partial sequence of pSTI-A120-luc+rbs (from T7 promoter to
poly(A))

<400> 2
taatacgact cactataggg cgaactagta agcaaggagg cgtgcagatg gtgagcaagg 60

gcgaggagct gttcaccggg gtggtgccca tcctggtcga gctggacggc gacgtaaacg 120

gccacaagtt cagcgtgtcc ggcgagggcg agggcgatgc cacctacggc aagctgaccc 180

tgaagttcat ctgcaccacc ggcaagctgc ccgtgccctg gcccaccctc gtgaccaccc 240

tgacctacgg cgtgcagtgc ttcagccgct accccgacca catgaagcag cacgacttct 300

tcaagtccgc catgcccgaa ggctacgtcc aggagcgcac catcttcttc aaggacgacg 360

gcaactacaa gacccgcgcc gaggtgaagt tcgagggcga caccctggtg aaccgcatcg 420

agctgaaggg catcgacttc aaggaggacg gcaacatcct ggggcacaag ctggagtaca 480

actacaacag ccacaacgtc tatatcatgg ccgacaagca gaagaacggc atcaaggtga 540

acttcaagat ccgccacaac atcgaggacg gcagcgtgca gctcgccgac cactaccagc 600

agaacacccc catcggcgac ggccccgtgc tgctgcccga caaccactac ctgagcaccc 660

agtccgccct gagcaaagac cccaacgaga agcgcgatca catggtcctg ctggagttcg 720

tgaccgccgc cgggatcact ctcggcatgg acgagctgta caagtccggc cggactcaga 780

tctcgagctc aagcttcgaa ttgatccaga tcttaagtaa gtaagctcga gagctcgctt 840

tcttgctgtc caatttctat taaaggttcc tttgttccct aagtccaact actaaactgg 900

gggatattat gaagggcctt gagcatctgg attctgccta ataaaaaaca tttattttca 960

ttgctgcgtc gagagctcgc tttcttgctg tccaatttct attaaaggtt cctttgttcc 1020

ctaagtccaa ctactaaact gggggatatt atgaagggcc ttgagcatct ggattctgcc 1080

taataaaaaa catttatttt cattgctgcg tcgagagcta aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa 1140

aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa 1200

aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaa 1239
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2023-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾mRNAの製造及び/又は送達用キットであって、前記修飾mRNAは、以下の領域内の少なくとも1つのヌクレオチドにおいて、アルキン又はアジドによる修飾を少なくとも1つ含むことを特徴とするキット:
a)ORF及びUTR、
b)ORF、UTR及びpoly(A)テール、又は
c)poly(A)テールのみ
【請求項2】
前記修飾mRNAが、ポリ(A)テール領域に3'リボース位でのチェーンターミネーションのアルキン又はアジド修飾を含まない、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記修飾mRNAが、ヌクレオチドの4つの標準型(AMP、CMP、GMP、UMP)のうち少なくとも1つが部分的に又は完全に修飾され、好ましくはウラシル又はアデニンがエチニル又はアジド修飾されている、請求項1又は2に記載のキット
【請求項4】
前記修飾mRNAにおいて、少なくとも1つのヌクレオチドがアルキン修飾されており、少なくとも1つのヌクレオチドがアジド修飾されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のキット
【請求項5】
前記修飾mRNAにおけるヌクレオチドの4つの標準型の少なくとも1つが、非修飾形態と比較して1:100~10:1、好ましくは1:10~10:1、1:4~4:1、又は1:1の比率で修飾形態で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット
【請求項6】
前記修飾mRNAが、別の方法で修飾された天然又は人工ヌクレオチド、好ましくはプソイドウリジン又はN1-メチルプソイドウリジンを含む、及び/又はカチオン性又はポリカチオン性化合物と複合体化されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のキット
【請求項7】
前記修飾mRNAが、相応に修飾された、アルキン又はアジドを含む検出可能な標識又は機能性分子と修飾mRNAとのクリック反応によって導入された検出可能な標識及び機能性分子のうち1つ以上を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のキット
【請求項8】
前記検出可能な標識が有色の若しくは蛍光発生分子であり、及び/又は、前記機能性分子が組織若しくは細胞特異的な標的化基若しくはリガンド、好ましくは糖部分若しくは脂肪酸部分である、請求項7に記載のキット
【請求項9】
mRNAの安定化方法であって、ポリ(A)ポリメラーゼ付加反応において、及び/又はRNA合成中に、部分的に又は完全にアルキン及び/又はアジド修飾形態のヌクレオチドの4つの標準型(ATP、CTP、GTP及びUTP)のうち少なくとも1つを含むことによって、前記mRNAにアルキン及び/又はアジド修飾を導入して修飾mRNAを生成し、
前記修飾mRNAは以下における少なくとも1つのヌクレオチドにアルキン又はアジドによる修飾を少なくとも1つ含むことを特徴とし:
a)ORF及びUTR、
b)ORF、UTR及びポリ(A)テール、又は
c)ポリ(A)テールのみ、
任意に、相応に修飾された、アルキン又はアジドを含む検出可能な標識又は機能性分子と修飾mRNAとのクリック反応によって、検出可能な標識及び機能性分子のうちの1つ以上を導入する、前記方法。
【請求項10】
ORF、UTR及びポリ(A)テール内、又はポリ(A)テール内のみの少なくとも1つのヌクレオチドにアルキン又はアジドによる修飾を少なくとも1つ含むことを特徴とする修飾メッセンジャーRNA(mRNA)であって、ポリ(A)テール領域に3'リボース位でのチェーンターミネーションのアルキン又はアジド修飾を含まない、前記修飾mRNA。
【請求項11】
ヌクレオチドの4つの標準型(AMP、CMP、GMP、UMP)のうち少なくとも1つが部分的に又は完全に修飾され、好ましくはウラシル又はアデニンがエチニル又はアジド修飾されている、請求項10に記載の修飾mRNA。
【請求項12】
少なくとも1つのヌクレオチドがアルキン修飾されており、少なくとも1つのヌクレオチドがアジド修飾されている、請求項10又は11に記載の修飾mRNA。
【請求項13】
別の方法で修飾された天然又は人工ヌクレオチド、好ましくはプソイドウリジン又はN1-メチルプソイドウリジンを含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項14】
前記修飾mRNAが、相応に修飾された、アルキン又はアジドを含む検出可能な標識と修飾mRNAとのクリック反応によって導入された検出可能な標識を1つ以上含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項15】
前記検出可能な標識が有色の若しくは蛍光発生分子である、請求項14に記載の修飾mRNA。
【請求項16】
ポリ(A)テールのみにおける少なくとも1つのヌクレオチドにアルキン又はアジドによる修飾を少なくとも1つ含むことを特徴とする修飾メッセンジャーRNA(mRNA)を活性剤として含み、任意に、医薬的に許容可能なアジュバント若しくは賦形剤と組み合わせて含む、及び/又は、医薬的に許容可能な担体に含まれる、医薬組成物であって、前記修飾mRNAは、ポリ(A)テール領域に3'リボース位でのチェーンターミネーションのアルキン又はアジド修飾を含まない、前記医薬組成物。
【請求項17】
前記修飾mRNAが、タンパク質、ペプチド、組換え融合タンパク質、又はタンパク質の組合せ、ペプチドの組合せ若しくはタンパク質及びペプチドの組合せをコードする、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記修飾mRNAにおいて、ヌクレオチドの4つの標準型(AMP、CMP、GMP、UMP)のうち少なくとも1つが部分的に又は完全に修飾され、好ましくはウラシル又はアデニンがエチニル又はアジド修飾されている、請求項16又は17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記修飾mRNAにおいて、少なくとも1つのヌクレオチドがアルキン修飾されており、少なくとも1つのヌクレオチドがアジド修飾されている、請求項16~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記修飾mRNAにおいて、ヌクレオチドの4つの標準型の少なくとも1つが、非修飾形態と比較して1:100~10:1、好ましくは1:10~10:1、1:4~4:1又は1:1の比率で修飾形態で存在する、請求項16~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記修飾mRNAが、別の方法で修飾された天然又は人工ヌクレオチド、好ましくはプソイドウリジン又はN1-メチルプソイドウリジンを含むか、及び/又はカチオン性又はポリカチオン性化合物と複合体化されている、請求項16~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記修飾mRNAが、相応に修飾された、アルキン又はアジドを含む検出可能な標識又は機能性分子と修飾mRNAとのクリック反応によって導入された検出可能な標識及び機能性分子のうち1つ以上を含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記検出可能な標識が有色の若しくは蛍光発生分子であり、及び/又は、前記機能性分子が組織若しくは細胞特異的な標的化基若しくはリガンド、好ましくは糖部分若しくは脂肪酸部分である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
対応するヒト、動物又は植物の親細胞に、前記修飾mRNAをex vivoトランスフェクションして得られる細胞調製物を含む、請求項16~23のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項25】
前記細胞が、ヒト又は動物の免疫系の細胞である、請求項24に記載の医薬組成物
【請求項26】
mRNAベースの治療的及び/又は予防的用途で使用するための、請求項1625のいずれか一項に記載の薬組成物。
【請求項27】
求項26に記載の医薬組成物であって、記治療的及び/又は予防的用途が、前記mRNAによってコードされる特定のエンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9)と組み合わせた標的化遺伝子治療、遺伝子補充治療における、ワクチン接種における、がん治療における、並びに、(遺伝性)疾患及び遺伝的異常の治療のための細胞特異的な遺伝子発現若しくは遺伝子編集のための、標的化送達、又は免疫学的アジュバントとしての使用を含む、前記薬組成物。
【請求項28】
植物及び植物細胞へのトランスフェクションのための飾mRNAの使用であって、前記修飾mRNAはポリ(A)テールのみにおける少なくとも1つのヌクレオチドにアルキン又はアジドによる修飾を少なくとも1つ含むことを特徴とする、前記使用
【請求項29】
蛍光活性化細胞スキャン分析によって、標的細胞への飾mRNAの送達及びトランスフェクションを定性的又は定量的に測定するin vitro方法であって、
前記修飾mRNAはポリ(A)テールのみにおける少なくとも1つのヌクレオチドにアルキン又はアジドによる修飾を少なくとも1つ含むことを特徴とし、
前記修飾mRNAが、アルキン若しくはアジドを含む相応に修飾された蛍光発生分子とのクリック反応によって修飾mRNAに導入された1つ以上の蛍光発生分子を含み、及び/又は、前記修飾mRNAが蛍光タンパク質をコードする、前記方法。
【請求項30】
蛍光発生分子又は蛍光タンパク質によって発せられる蛍光シグナルが、修飾mRNAをトランスフェクトされた標的細胞について測定され、トランスフェクトされていない標的細胞と比較される、請求項29に記載のin vitro方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0117
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0117】
本発明の一つの主題に関連して上に開示された全ての情報は、明示的に繰り返されていなくても、この情報が発明の文脈内で認識可能な関連性を有する他の主題の文脈において、等しく適用されると考えられる。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]5'-キャップ構造、5'-非翻訳領域(5'-UTR)、オープンリーディングフレーム領域(ORF)、3'-非翻訳領域(3'-UTR)並びにポリ(A)テール領域を含み、ORF、5'-UTR、3'-UTR及びポリ(A)テール領域のうちの少なくとも1つの領域内の少なくとも1つのヌクレオチドにおいて、アルキン又はアジドによる修飾を少なくとも1つ含むことを特徴とする修飾メッセンジャーRNA(mRNA)。
[実施形態2]以下の領域内に修飾されたヌクレオチドを含むことを特徴とする、実施形態1に記載の修飾mRNA:
a)ORF及びUTR、
b)ORF、UTR及びポリ(A)テール、又は
c)ポリ(A)テールのみ。
[実施形態3]ヌクレオチドの4つの標準型(AMP、CMP、GMP、UMP)のうち少なくとも1つが部分的に又は完全に修飾され、好ましくはウラシル又はアデニンがエチニル又はアジド修飾されている、実施形態1又は2に記載の修飾mRNA。
[実施形態4]前記少なくとも1つのヌクレオチドがアルキン修飾されており、少なくとも1つのヌクレオチドがアジド修飾されている、実施形態1~3のいずれかに記載の修飾mRNA。
[実施形態5]ヌクレオチドの4つの標準型の少なくとも1つが、非修飾形態と比較して1:100~10:1、好ましくは1:10~1:10又は1:1の比率で修飾形態で存在する、実施形態1~4のいずれかに記載の修飾mRNA。
[実施形態6]別の方法で修飾された天然又は人工ヌクレオチド、好ましくはプソイドウリジン又はN1-メチルプソイドウリジンを含むことを特徴とする、実施形態1~5のいずれかに記載の修飾mRNA。
[実施形態7]前記修飾mRNAが、相応に修飾された、アルキン又はアジドを含む検出可能な標識又は機能性分子と修飾mRNAとのクリック反応によって導入された検出可能な標識及び機能性分子のうち1つ以上を含む、実施形態1~6のいずれかに記載の修飾mRNA。
[実施形態8]前記検出可能な標識が有色の若しくは蛍光発生分子であり、及び/又は、前記機能性分子が組織若しくは細胞特異的な標的化基若しくはリガンド、好ましくは糖部分若しくは脂肪酸部分である、実施形態7に記載の修飾mRNA。
[実施形態9]少なくとも1つのヌクレオチドにおいて少なくとも1つのアルキン若しくはアジド修飾を含む修飾RNA又は実施形態1~8のいずれかに記載の修飾mRNAであって、カチオン性又はポリカチオン性化合物と複合体化されている、前記修飾RNA。
[実施形態10]実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNAの製造方法であって、鋳型DNAからmRNAをin vitro転写すること、又は、代わりに原核生物若しくは真核生物宿主細胞を用いて発酵プロセスを行い、発現ベクターに含まれる鋳型DNAを発現させることを含み、前記方法が、mRNA転写に必要な4つの標準型ヌクレオチドを含むヌクレオチド混合物及びRNAポリメラーゼの存在下で行われ、前記ヌクレオチド混合物において、ヌクレオチドの4つの型のうち少なくとも1つの少なくとも一部が、アルキン若しくはアジド修飾を含むように修飾されている、前記方法。
[実施形態11]ポリ(A)テールにアルキン又はアジド修飾を含む修飾mRNAの製造方法であって、ATPの存在下で、mRNA上のポリ(A)テールにおいてポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を行うことを含み、前記ATPが、アデノシンにおいて少なくとも部分的にアルキン又はアジド修飾されている、前記方法。
[実施形態12]クリック反応を行うための条件下において、相応にアルキン又はアジド修飾された検出可能な標識及び/又は機能性分子を添加して、実施形態7又は8に記載の修飾mRNAを製造することをさらに含む、実施形態10又は11に記載の方法。
[実施形態13]対応するヒト、動物又は植物の親細胞に、実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNAをex vivoトランスフェクションして得られる細胞。
[実施形態14]前記細胞が、ヒト又は動物の免疫系の細胞である、実施形態13に記載の細胞。
[実施形態15]活性剤として実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNA又は実施形態13若しくは14に記載の細胞を含み、任意に、医薬的に許容可能なアジュバント若しくは賦形剤と組み合わせて含む、及び/又は、医薬的に許容可能な担体に含まれる、医薬組成物。
[実施形態16]mRNAベースの治療的及び/又は予防的用途で使用するための、実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNA又は実施形態15に記載の医薬組成物。
[実施形態17]実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNA又は実施形態15に記載の医薬組成物であって、特に、実施形態16に記載の治療的及び/又は予防的用途で使用され、前記治療的及び/又は予防的用途が、前記mRNAによってコードされる特定のエンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9)と組み合わせた標的化遺伝子治療、遺伝子補充治療における、ワクチン接種における、がん治療における、並びに、(遺伝性)疾患及び遺伝的異常の治療のための細胞特異的な遺伝子発現若しくは遺伝子編集のための、標的化送達、又は免疫学的アジュバントとしての使用を含む、前記修飾mRNA又は医薬組成物。
[実施形態18]特に、実施形態16又は17に記載の治療的及び/若しくは予防的用途でヒト若しくは動物において使用するための、実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNA又は実施形態15に記載の医薬組成物。
[実施形態19]植物及び植物細胞へのトランスフェクションのための、実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNAの使用。
[実施形態20]実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNAの製造及び/又は送達用キット。
[実施形態21]細胞、組織又は器官における、実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNAの存在、送達及び/又は分布についてのin vitroスクリーニングのための診断用組成物であって、前記組成物が、検出可能な標識、好ましくはフルオロフォア標識若しくは放射性核種標識を含むmRNAを含む、前記組成物。
[実施形態22]実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNAの存在、送達及び/若しくは分布についてのin vivoスクリーニングに、又は、実施形態13若しくは14に記載の細胞の再投与でのin vivoモニタリングに使用するための診断用組成物であって、前記組成物が、フルオロフォア標識若しくは放射性核種標識を含む修飾mRNAを含むか、又は、前記細胞が、フルオロフォア標識若しくは放射性核種標識を含む修飾mRNAによってトランスフェクトされる、前記組成物。
[実施形態23]RNA、特にmRNAの安定化方法であって、ポリ(A)ポリメラーゼ付加反応において、及び/又はRNA合成中に、部分的に又は完全にアルキン及び/又はアジド修飾形態のヌクレオチドの4つの標準型(ATP、CTP、GTP及びUTP)のうち少なくとも1つを含むことによってアルキン及び/又はアジド修飾を導入して修飾(m)RNAを生成し、任意に、相応に修飾された、アルキン又はアジドを含む検出可能な標識又は機能性分子と修飾(m)RNAとのクリック反応によって、検出可能な標識及び機能性分子のうちの1つ以上を導入する、前記方法。
[実施形態24]蛍光活性化細胞スキャン分析によって、標的細胞への実施形態1~9のいずれかに記載の修飾mRNAの送達及びトランスフェクションを定性的又は定量的に測定するin vitro方法であって、前記修飾mRNAが、アルキン若しくはアジドを含む相応に修飾された蛍光発生分子とのクリック反応によって修飾mRNAに導入された1つ以上の蛍光発生分子を含み、及び/又は、前記修飾mRNAが蛍光タンパク質をコードする、前記方法。
[実施形態25]蛍光発生分子又は蛍光タンパク質によって発せられる蛍光シグナルが、修飾mRNAをトランスフェクトされた標的細胞について測定され、トランスフェクトされていない標的細胞と比較される、実施形態24に記載のin vitro方法。
【外国語明細書】