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特開2023-153805内視鏡装置、手術システムおよび内視鏡装置の作動方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153805
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】内視鏡装置、手術システムおよび内視鏡装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20231011BHJP
   A61B 1/317 20060101ALI20231011BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20231011BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231011BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61B 17/32 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
A61B1/00 550
A61B1/317
G06T1/00 290Z
G06T7/00 612
G06T5/00 710
A61B17/32 510
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114822
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2022510176の分割
【原出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺山 一真
(72)【発明者】
【氏名】八道 剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 美里
(57)【要約】
【課題】灌流液中の濁りを検知し、所定の制御を行うことによって患者・術者にとって負担を軽減する内視鏡装置、手術システムおよび内視鏡装置の作動方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る内視鏡装置は、処置対象を撮像する内視鏡と、内視鏡から得られる撮像データを画像データに変換する第1の制御装置とを有する内視鏡装置であって、第1の制御装置は、撮像データから、処置装置によって発生した液中の濁りに関する情報を検知する検知部と、検知部の検知結果に基づいて、撮像データのエッジを強調する制御を行う制御部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置対象を撮像する内視鏡と、前記内視鏡から得られる撮像データを画像データに変換する第1の制御装置とを有する内視鏡装置であって、
前記第1の制御装置は、
前記撮像データから、処置装置によって発生した液中の濁りに関する情報を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記撮像データのエッジを強調する制御を行う制御部と、
を有する内視鏡装置。
【請求項2】
前記濁りに関する情報とは、濁り発生と相関して増減する値である、
請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記濁りに関する情報とは、生体組織に起因する情報である、
請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記内視鏡装置の撮像データを記憶するストレージをさらに備え、
前記検知部は、
前記内視鏡装置から第1撮像データを取得し、
前記ストレージから第2撮像データを取得し、
前記第1撮像データと前記第2撮像データの同一座標の画素の値の変化量を算出し、
前記変化量に応じて前記濁りを検知する、
請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記内視鏡装置の撮像データを記憶するストレージをさらに備え、
前記検知部は、
前記内視鏡装置から第1撮像データを取得し、
前記ストレージから第2撮像データを取得し、
前記第1撮像データと前記第2撮像データのコントラストの変化量を算出し、
前記変化量によって前記濁りを検知する、
請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記内視鏡装置の撮像データを記憶するストレージをさらに備え、
前記検知部は、
前記内視鏡装置から第1撮像データを取得し、
前記ストレージから第2撮像データを取得し、
前記第1撮像データと前記第2撮像データのエッジの変化量を算出し、
前記変化量によって前記濁りを検知する、
請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記内視鏡装置の撮像データを記憶するストレージをさらに備え、
前記検知部は、
前記内視鏡装置から第1撮像データを取得し、
前記ストレージから第2撮像データを取得し、
前記第1撮像データと前記第2撮像データの輝度の変化量を算出し、
前記変化量によって前記濁りを検知する、
請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記検知部は、前記濁りに関する情報を前記液から検知する、
請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記検知部は、前記液のpHを検知するセンサーを有し、
前記センサーから取得した前記pHの値に基づいて前記濁りを検出する、
請求項8に記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記検知部は、所定値よりも前記センサーで検出した前記pHが大きい場合、前記濁りを検知する、
請求項9に記載の内視鏡装置。
【請求項11】
請求項1に記載の内視鏡装置と、
前記液を送水する灌流液装置と、
を備える手術システムであって、
前記制御部は、前記液の送水速度を強める信号を前記灌流液装置に送る、
手術システム。
【請求項12】
前記液を吸引する灌流液装置と、を有し、
前記制御部は、前記液の吸引量を増加させる信号を前記灌流液装置に送る、
請求項11に記載の手術システム。
【請求項13】
前記液を送水吸引する灌流液装置と、を有し、
前記制御部は、前記液の送水量を増加させる信号を前記灌流液装置に送り、
前記制御部は、前記液の吸引量を増加させる信号を前記灌流液装置に送る、
請求項11に記載の手術システム。
【請求項14】
前記処置対象を処置具装置は、超音波処置具である、
請求項11に記載の手術システム。
【請求項15】
前記濁りに関する情報は、超音波によって骨を切削した際に発生した濁りに関するものである、
請求項14に記載の手術システム。
【請求項16】
前記濁りに関する情報とは、生体組織に起因する情報であり、
前記生体組織に起因する情報は、超音波によって骨を切削した際に発生した骨粉に起因するものである、
請求項15に記載の手術システム。
【請求項17】
前記濁りに関する情報は、濁りの色に関し、白色である、
請求項11に記載の手術システム。
【請求項18】
前記濁りに関する情報は、前記液の物性値に関するものである、
請求項11に記載の手術システム。
【請求項19】
処置対象を撮像する内視鏡と、前記内視鏡から得られる撮像データを画像データに変換する第1の制御装置とを有する内視鏡装置の作動方法であって、
前記第1の制御装置が、
前記撮像データから、処置装置によって発生した液中の濁りに関する情報を検知し、検知結果に基づいて、前記撮像データのエッジを強調する制御を行う、
内視鏡装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術システム、制御装置および手術システムの作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節鏡下手術は、処置対象の関節にポータルを開け、ポータルから処置対象の関節の中に関節鏡や処置具を挿入し、関節腔の中を灌流液で満たした状況下で関節鏡を用いて関節腔の中を観察しながら処置を行う手術である。
【0003】
関節鏡下手術に用いる関節鏡下手術システムとして、国際公開第2018/078830号(特許文献1)が開示されている。また、特許文献1には、骨に孔を形成するための超音波処置具が開示されている。この超音波処置具は、処置具の先端が超音波振動するように構成されている。術者が処置具の先端を骨に当接させて処置具に超音波振動を与えるスイッチを押すと、処置具の先端が骨を切削し、骨に孔が形成される。処置具の先端が骨を切削するときに骨の削りカス(骨粉)が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/078830号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、切削時に発生した骨粉は灌流液中に一時的に分散され、灌流液が濁り、処置対象を観察する関節鏡の視野が阻害されてしまう場合がある。その場合、術者は手を止めなければならず、患者・術者にとって負担がかかる場合がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、灌流液中の濁りを検知し、所定の制御を行うことによって患者・術者にとって負担を軽減する手術システム、制御装置および手術システムの作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る手術システムは、液中で生体組織を処置する処置具装置と、前記処置具装置によって発生した前記液中の濁りに関する情報を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に基づいて、前記手術システムの制御を行う制御部と、が設けられている。
【0008】
また、本発明に係る制御装置は、処置対象に灌流液を供給し、前記灌流液中で生体組織を処置する手術システムの制御装置であって、内視鏡装置または処置具装置に接続可能な表示装置と、少なくとも1以上の制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記表示装置を介して前記内視鏡装置または前記処置具装置から情報を受信し、前記情報に基づいて、前記灌流液が濁っているか否かを検知し、前記灌流液が濁っている場合、第1の制御に移行し、前記灌流液が濁っていない場合、第2の制御に移行する。
【0009】
また、本発明に係る手術システムの作動方法は、内視鏡装置と、処置対象に灌流液を供給する灌流装置と、前記処置対象にある前記灌流液中で生体組織を処置する処置具装置と、を備える手術システムの作動方法であって、前記灌流液が濁っているか否かを検知し、前記灌流液が濁っている場合、第1の制御に移行し、前記灌流液が濁っていない場合、第2の制御に移行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る手術システム、制御装置、作動方法によれば、患者・術者にとって負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る手術システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る手術システムを用いた処置フローを示す図である。
図3図3は、実施の形態に係る手術システムを用いた切削処置フローを示す図である。
図4A図4Aは、実施の形態に係る手術システムを用いた濁り検知フローの一例を示す図である。
図4B図4Bは、実施の形態に係る手術システムを用いた濁り検知フローの一例を示す図である。
図5A図5Aは、濁り検知の第1実施形態に係る内視鏡視野とコントラストの値の関係を示す図である。
図5B図5Bは、濁り検知の第1実施形態に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図5C図5Cは、濁り検知の第1実施形態に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図6A図6Aは、濁り検知の第1実施形態の第1変形例に係る内視鏡視野とエッジの関係を示す図である。
図6B図6Bは、濁り検知の第1実施形態の第1変形例に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図6C図6Cは、濁り検知の第1実施形態の第1変形例に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図7A図7Aは、濁り検知の第1実施形態の第2変形例に係る内視鏡視野と輝度の関係を示す図である。
図7B図7Bは、濁り検知の第1実施形態の第2変形例に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図7C図7Cは、濁り検知の第1実施形態の第2変形例に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図8A図8Aは、濁り検知の第1実施形態の第3変形例に係る内視鏡視野と画像差分の関係を示す図である。
図8B図8Bは、濁り検知の第1実施形態の第3変形例に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図9A図9Aは、濁り検知の第2実施形態に係る手術システムを用いた濁り検知フローの一例を示す図である。
図9B図9Bは、濁り検知の第2実施形態に係る手術システムを用いた濁り検知フローの一例を示す図である。
図9C図9Cは、濁り検知の第2実施形態に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図9D図9Dは、濁り検知の第2実施形態に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図10A図10Aは、濁り検知の第3実施形態に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図10B図10Bは、濁り検知の第3実施形態に係る濁り検知の条件の一例を示す図である。
図11図11は、濁り対応制御の第1実施形態に係る内視鏡表示の一例を示す図である。
図12図12は、濁り対応制御の第3実施形態に係る手術システムを示す図である。
図13図13は、濁り対応制御の第3実施形態の第1変形例に係る手術システムを示す図である。
図14図14は、濁り対応制御の第3実施形態の第2変形例に係る手術システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0013】
[手術システム概要]
前記本実施形態の手術システム1は、処置具装置3を備える(図1)。
さらに、手術システム1は、内視鏡装置2と、処置具装置3と、灌流装置6と、を備える。術者は、当該手術システム1によって、前十字靱帯再建術を行うことができる。
【0014】
内視鏡装置2は、内視鏡21と、第1の制御装置22と、表示装置23と、を備える(図1)。
内視鏡21は、膝関節J1の関節腔C1内と皮膚外とを連通する第1のポータルP1から、挿入部211の一部が当該関節腔C1内に挿入される。そして、内視鏡21は、関節腔C1内に照射し、当該関節腔C1内で反射された照明光(被写体像)を取り込み、当該被写体像を撮像する。
第1の制御装置22は、内視鏡21と表示装置23に有線または無線で接続されている。第1の制御装置22は、内視鏡21によって撮像された撮像データに対して種々の画像処理を実行するとともに、当該画像処理後の撮像画像を表示装置23に表示させる。
【0015】
処置具装置3は、処置具31と、第2の制御装置32と、フットスイッチ33とを備える(図1)。
処置具31は、本体311と、超音波プローブ(不図示)と、シース313とを備える(図1)。処置具31は、膝関節J1の関節腔C1内と皮膚外とを連通する第2のポータルP2から、シース313と超音波プローブの一部が当該関節腔C1内に挿入される。
本体311は、円筒状に形成されている。そして、本体311の内部には、ボルト締めランジュバン型振動子(Bolt-clamped Langevin-type transducer)によって構成され、供給された駆動電力に応じて超音波振動を発生する超音波振動子311aが収納されている。
第2の制御装置32は、術者によるフットスイッチ33等への操作に応じて、超音波振動子311aに対して当該駆動電力を供給する。
【0016】
灌流装置6は、液体源61と、送液チューブ62と、排液ボトル64と、排液チューブ65と、を備える(図1)。
液体源61は、灌流液を収容する。例えば、生理食塩水の滅菌パックなどがある。送液チューブ62は、一端が液体源61に対して接続され、他端が内視鏡21に接続されている。さらに、液体源61を内視鏡21より高い場所に固定することにより、灌流液が送液チューブ62を介して、関節腔C1内に送出される。このことによって、関節腔C1内は、灌流液によって満たすことができる。
一方、関節腔C1内にある灌流液を排出するために排液チューブ65および排液ボトル64がある。排液ボトル64は、排液チューブ65に接続しており、排液チューブ65を介して排出された関節腔C1内にある灌流液等を収容する。さらに、排液ボトル64を関節腔C1より低い場所に固定することにより、排液チューブ65を介して、関節腔C1外に排出される。
【0017】
なお、図1で示す実施形態は、第1の制御装置22と第2の制御装置32で構成されているが、別の実施形態として、内視鏡21および処置具31に接続可能に設けられ、それぞれ制御可能な1つの制御装置で構成されていてもよい。
【0018】
[処置フロー]
図2を参照して手術システム1を用いて術者が行う処置フローを説明する。
術者は、膝関節J1の関節腔C1内と皮膚外とを連通する第1のポータルP1と第2のポータルP2を形成する(S1)。次に、術者は内視鏡21と処置具31をそれぞれ第1のポータルP1と第2のポータルP2から関節腔内C1に挿入する(S2)。
上記においては、2つのポータルを形成してから内視鏡21と処置具31を挿入すると記載したが、第1のポータルP1を形成し内視鏡21を挿入してから、第2のポータルP2を形成し処置具31を挿入してもよい。
【0019】
次に、術者は内視鏡21よって撮像された関節腔C1内の様子を表示装置23で確認しながら処置具31の超音波プローブを処置対象に当接させる(S3)。
処置具31を処置対象に当接させた後、切削処置を行う(S4)。
【0020】
移植腱が挿入可能な骨孔を作成する。作成した骨孔に移植腱を挿入し、固定する(S5)。
【0021】
その後、内視鏡21と処置具31をそれぞれ第1のポータルP1と第2のポータルP2から抜去し(S6)、第1のポータルP1と第2のポータルP2を縫合し(S7)、手術システム1を用いて術者が行う処置フローが終了する。
「術者」は、医師一人の場合で説明したが、医師と助手で適宜分担してもよい。
【0022】
[切削処置フロー]
次に、図3を参照して切削処置(S4)の詳細なフローを説明する。
第2の制御装置32は、本体311に取り付けられた超音波プローブに基づいて設定を読み込む(S41)。設定を読み込むタイミングは、切削処置の初めであってもよいし、第2の制御装置32の主電源が入り本体311に超音波プローブが取り付けられた後すぐであってもよい。また、当該設定は、術者や助手によって、予め入力されていたものでもよい。
【0023】
次に、通常制御を開始する(S42)。この通常制御は、従来行っていた手術システムの制御である。
【0024】
次に、第1の制御装置22は濁りに関する情報に基づいて濁り検知を行う(S43)。 第1の制御装置22は、濁りの検知結果を第2の制御装置32に送信する。第2の制御装置32は、濁りが検知された場合(「濁り検知=1」)には、濁り対応制御(S44)に進み、濁りが検知されていない場合(「濁り検知=0」)には、通常制御(S45)が行われる。例外として、濁りを検知していなくても術者や助手が濁り対応制御を選択した場合には濁りが検知された場合(「濁り検知」=1)と同様に、濁り対応制御S44に遷移する。具体的な濁り検知と濁り対応制御については後述する。後述した濁り検知と濁り対応制御はどの組み合わせを用いてよい。
【0025】
濁り対応制御S44と通常制御S45の後に処置具31の電源がオフになっているかを確認する(S46)。電源がオフになっていない場合(「No」)は、濁り検知S43に戻る。電源がオフになっている場合(「Yes」)は、切削処置が終了する。
【0026】
[濁り検知]
次に、具体的に濁りに関する情報に基づいて濁り検知するいくつかの方法について、以下に説明する。ここで、濁りに関する情報とは、内視鏡装置2で生成される撮像データから得られる値や、灌流液の物性値、処置具装置3から取得されたインピーダンス等である。
【0027】
[濁り検知の第1実施形態:コントラスト]
濁り検知の第1実施形態は、内視鏡装置2で生成される撮像データから濁りに関する情報を取得し、濁りを検知する実施形態である。実施形態は、内視鏡装置2で生成される撮像データを記憶するストレージ(不図示)を備える第1の制御装置22によって実装される。当該ストレージは外部装置でもよい。また、濁り検知の第1実施形態において、検知部は第1の制御装置22に設けられる。
【0028】
次に、濁り検知の第1実施形態の検知方法を具体的に示す。濁り検知の第1実施形態は、内視鏡装置2で生成される撮像データのコントラストで濁りを検知する方法である。
【0029】
コントラストで濁り検知する方法の一例を、図4Aを用いて説明する。
第1の制御装置22は、内視鏡装置2からの第1撮像データを読み込み、第1の制御装置22に設けられるストレージに記憶する(S431)。その後、第1の制御装置22は、第1撮像データのコントラストc0(第1の値)を公知の技術を用いて算出する(S432)。次に、第1の制御装置22に設けられる検知部は、内視鏡装置2から出力された第2撮像データを読み込み(S433)、第2撮像データのコントラストc1(第2の値)を公知の技術を用いて算出する(S434)。次に、第1の制御装置22に設けられる検知部は、c0とc1の大小を比較する(S435)。c1の方が小さい場合は、濁りを検知したと判断して、濁り検知=1とする(S436:図5B参照)。c1とc0が等しい、または、c1の方が大きい場合は、濁りを検知していないとして濁り検知=0とする(S437:図5B参照)。検出結果を出したら、濁り検知のフローは終了する。
【0030】
なお、第1撮像データは第2撮像データより数秒前、または数フレーム前に撮像されている撮像データである。
【0031】
また、図5Bの条件と異なる条件を用いる濁り検知の方法を、図4Bを用いて説明する。
第1の制御装置22に設けられる検知部は、あらかじめ設定された閾値を読み込む(S430)。その後、第1の制御装置22に設けられる検知部は、前述のとおりS431からS434まで行う。その後、第1の制御装置22に設けられる検知部は、c0とc1の差分をとって変化量を算出し、算出された変化量に基づいて、濁りが生じているか否かを判定する(S438:図5C参照)。
ここで、閾値とは、あらかじめ数値を設定してもよいし、濁りが発生している画像と濁りが発生していない画像を集めて機械学習を行い算出した閾値を用いてもよい。
【0032】
濁りの原因は、例えば骨粉や乳化した髄液等によるものである。よって、濁りの色自体は白色である。よって、通常時と濁り発生時の内視鏡視野を比べるとコントラスト値が低くなる(図5A参照)。これにより、内視鏡21の照明の色に依存せず濁りを検知することができる。
【0033】
[濁り検知の第1実施形態の第1変形例:エッジ]
次に、濁り検知の第1実施形態の第1変形例を示す。濁り検知の第1実施形態の第1変形例は、第1の制御装置22に設けられる検知部が、第1撮像データと第2撮像データのエッジを比較し、エッジの変化量に基づいて濁りを検知する方法である。
ここで、第1撮像データは第2撮像データより数秒前、または数フレーム前に撮像されている撮像データである。
【0034】
濁りが発生すると生体組織(例えば骨)や処置具31が見えなくなる。すなわち、生体組織のエッジや処置具31のエッジが撮像できなくなる(図6A参照)。よって、エッジの減少を検知することで濁りを検知する。これにより、内視鏡の照明の色に依存せず濁りを検知することができる。
【0035】
濁り検知の具体的な流れは、図4Aと同様である。第1の制御装置22に設けられる検知部は、S432におけるc0の算出に替えて、第1撮像データから公知の技術を用いてエッジe0を算出する。その後、S435で用いられる濁り検知の条件(c0≦c1)の判断に変えて算出された、エッジe0と、同様に、第2撮像データから公知の技術を用いて算出されるエッジe1とを用いて濁り検知の条件を説明する。
e1がe0より小さければ、関節腔C1内に濁りが発生したとして、S436と同様に濁りを検知する(図6B参照)。逆にe1がe0と等しい、または、e0より大きければ、関節腔C1内の濁りは発生していない、または、減っているとして、S437と同様に濁りを検知しない(図6B参照)。
【0036】
前述では、単純にe0とe1の値を比較したが、図4Bのように閾値を設けて、e0とe1の差分と閾値の比較により濁りを検出してもよい(図6C参照)。
ここで、閾値とは、あらかじめ数値を設定してもよいし、濁りが発生している画像と濁りが発生していない画像を集めて機械学習を行い算出した閾値を用いてもよい。
【0037】
[濁り検知の第1実施形態の第2変形例:輝度]
次に、濁り検知の第1実施形態の第2変形例を示す。濁り検知の第1実施形態の第2変形例は、第1撮像データと第2撮像データの輝度を比較し、輝度の変化量に基づいて濁りを検知する方法である。
ここで、第1撮像データは第2撮像データより数秒前、または数フレーム前に撮像されている撮像データである。
【0038】
濁りは、前述したように白色である。よって、通常時と濁り発生時を比べると輝度が高くなる(図7A参照)。これにより、内視鏡の照明の色に依存せず濁りを検出することができる。
【0039】
濁り検知の具体的な流れは、図4Aと同様である。第1の制御装置22に設けられる検知部は、S432におけるc0の算出に替えて、第1撮像データから公知の技術を用いて輝度r0を算出する。その後、S435で用いられる濁り検知の条件(c0≦c1)の判断に替えて算出された、輝度r0と、同様に、第2撮像データから公知の技術を用いて算出される輝度r1とを用いて濁り検知の条件を説明する。
r1がr0より大きければ関節腔C1内に濁りが発生したとして、S436と同様に濁りを検知する。逆にr1がr0と等しい、または、r0より小さければ、関節腔C1内の濁りは発生していない、または、減っているとして、S437と同様に濁りを検知しない(図7B参照)。
【0040】
前述では、単純にr0とr1の値を比較したが、図4Bのように閾値を設けて、r0とr1の差分(変化量)と閾値の比較により濁りを検知してもよい(図7C参照)。
ここで、閾値とは、あらかじめ数値を設定してもよいし、濁りが発生している画像と濁りが発生していない画像を集めて機械学習を行い算出した閾値を用いてもよい。
【0041】
[濁り検知の第1実施形態の第3変形例:画像差分]
次に、濁り検知の第1実施形態の第3変形例を示す。濁り検知の第1実施形態の第3変形例は、第1撮像データと第2撮像データの画素を比較し、画素の変化量を算出し、画素の変化量と閾値を比較して濁りを検知する方法である。
ここで、第1撮像データは第2撮像データより数秒前、または数フレーム前に撮像されている撮像データである。
【0042】
濁り検知の具体的な流れは、S432とS434を除き図4Bと同様である。第1の制御装置22に設けられる検知部は、S432におけるc1の算出を行わず、S434におけるc1の算出に替えて第1撮像データと第2の撮像データの同一の座標の画素を取得し差分をとり、各座標の画素の変化量の絶対値和nを算出する。その後、S438の濁り条件で用いられる濁り検知の条件(c1-c0≧閾値)の判断に替えて算出された、絶対値和nとS430で読み込まれた閾値とを用いて濁り検知の条件を説明する。nが閾値より大きければ関節腔C1内に濁りが発生したとして、S436と同様に、濁りを検知する。逆にnと閾値が等しい、または、nが閾値より小さければ、関節腔C1内の濁りは発生していない、または、減っているとして、S437と同様に、濁りを検知しない(図8B参照)。
【0043】
濁りが発生すると、撮像データの画素に変化が現れる(図8A参照)。その変化を検出することにより濁りが検知できる。
【0044】
[濁り検知の第2実施形態:灌流液のpHから濁り検知]
第2実施形態は、灌流液の物性値から濁りを検知する手段である。
【0045】
排液ボトル64または内視鏡21の挿入部211は、灌流液のpHを検出するpHセンサー(不図示)を備える。当該ストレージは外部装置でもよい。排液ボトル64または内視鏡21の挿入部211に設けられるpHセンサーは、灌流液に接触可能な位置に配置されている。検知部が設けられる第1の制御装置22は、排液ボトル64または内視鏡21の挿入部211に設けられるpHセンサーからの検出値を受信可能なように、有線または無線でpHセンサーと接続している。
【0046】
濁りは、例えば処置具31の処置によって発生した骨や髄液等が原因である。よって、濁りが発生していない状態と濁り発生している状態を比べると灌流液のpHが変化する。この灌流液のpHの変化を検出することにより、骨や髄液による濁りを検知することができる。
【0047】
濁り検知の具体的な流れの一例を図9A説明する。
まず、第1制御装置22に設けられる検出部は、あらかじめ設定されている第1pHw0を読み込む(S4310)。次に、第1制御装置22に設けられる検知部は、排液ボトル64または内視鏡21の挿入部211に設けられるpHセンサーから検出される第2pHw1を受信する(S4311)。その後、第1制御装置22に設けられる検知部に記憶されている第1pHw0と排液ボトル64または内視鏡21の挿入部211に設けられるpHセンサーから取得したpHw1を比較する(S4312)。w1がw0より大きければ(「No」)、関節腔C1内に濁りが発生したとして濁りを検知する(S4313:図9C参照)。逆にw1がw0と等しい、または、w0より小さい(「Yes」)であれば、関節腔C1内の濁りは発生していない、または、減っているとして、濁りを検出しない(S4314)。
【0048】
また、図9Aの条件と異なる条件を用いる濁り検知の方法を、図9Bを用いて説明する。
第1制御装置22に設けられる検知部は、あらかじめ設定された閾値を読み込む(S439)。その後、前述のとおり第1制御装置22に設けられる検知部は、S4310からS4311まで行う。その後、第1制御装置22に設けられる検知部は、w0とw1の差分をとって変化量を算出し、算出された変化量に基づいて、濁りが生じているか否かを判定する(S4315:図9D参照)。
ここで、閾値とは、あらかじめ数値を設定してもよいし、濁り発生時の灌流液のpHと通常時の灌流液のpHを集めて機械学習を行い算出した閾値を用いてもよい。
【0049】
[濁り検知の第3実施形態:処置具のインピーダンス(粘性)から濁り検知]
濁り検知の第3実施形態は、処置具31から取得されるインピーダンスに基づいて濁りを検知する方法である。当該方法は、ストレージ(不図示)を備える第2の制御装置32によって実装され、検知部は第2の制御装置32に設けられる。当該ストレージは外部装置でもよい。
【0050】
濁り検知の第3実施形態は、第2の制御装置32に設けられる未図示の検知部が、処置具31を定電圧制御或いは定電流制御をするために供給される電流及び電圧を基にインピーダンスを算出し、算出したインピーダンスから濁りを検出する方法である。
【0051】
濁りは、例えば処置具31の処置によって発生した骨や髄液等が原因である。灌流液に骨や髄液といった生体組織が混ざると灌流液の粘性が変化する。灌流液の粘性が変化すると、処置具31のインピーダンスが変化する。よって、濁りが発生していない状態と濁り発生している状態を比べると処置具31から取得されるインピーダンスが変化する。これより、インピーダンスの変化から粘性を予測し、濁りを検出することができる。
【0052】
濁り検知の具体的な流れは、図9Aと同様である。
第2の制御装置32に設けられる検知部は、S4310のw0に替えてあらかじめ設定される第1インピーダンスi0を読み込む。その後、S4311のw1に替えて任意のタイミングで算出される第2インピーダンスi1を算出する。S4312における濁り検知(w0≧w1)に替えて、読み込まれた第1インピーダンスi0と算出された第2インピーダンスi1を用いて濁り検知の条件を説明する。
i1がi0より大きければ(「No」)、関節腔C1内に濁りが発生したとして、S4313と同様に、濁りを検知する(「濁り検知」=1:図10A参照)。逆にi1がi0と等しい、または、i0より小さければ(「Yes」)、関節腔C1内の濁りは発生していない、または、減っているとして、S4314と同様に、濁りを検知しない(「濁り検知」=0)。
【0053】
前述では、単純にi0とi1の値を比較したが、図9Bのように閾値を設けて、i0とi1の差分と閾値の比較により濁りを検出してもよい(図10B参照)。
ここで、閾値とは、あらかじめ数値を設定してもよいし、濁り発生時のインピーダンスと通常時のインピーダンスを集めて機械学習を行い算出した閾値を用いてもよい。
【0054】
[濁り検知のその他の応用例]
上記記載した濁り検知の方法は、組み合わせて使用してもよい。
2つの濁り検知を組み合わせて使う場合は、両方の検知方法でも濁りを検知した時に濁り検知=1としてもよい。この場合は、どちらかが誤作動で濁りを検知してしまっても、両方が濁りを検知しないと濁り検知=1とならないので、慎重に濁り検知を行うことができる。
また、どちらか一方の検知方法が濁りを検出した時に濁り検知=1としてもよい。この場合は、小さい変化でも濁りを検知することができる。
【0055】
複数の濁り検知方法を組み合わせて使う場合は、検知方法ごとに重みづけをしたうえで、濁り検知を行ってもよい。
【0056】
[濁り対応制御]
次に、図3に示す濁り対応制御S44の具体例を示す。以下に記載する濁り対応制御の実施形態は上記の濁り検知と組み合わせることができる。
ここで、制御部は、第1の制御装置22または第2の制御装置32の少なくとも1つに設けられ、検知部での検知結果を無線または有線を介して送受信を行えるように構成されている。制御部は、取得した検知結果を基に、濁り対応制御を行う。このように、検知部での検知結果を制御部に伝えることができる構成としたことによって、検知部の配置に関わらず、制御部が濁り対応制御を行うことを可能にした。
【0057】
[濁り対応制御の第1実施形態:エッジ重畳画像表示]
初めに、濁り対応制御の第1実施形態を示す。濁り対応制御の第1実施形態は、第1の制御装置22または第2の制御装置32の少なくとも1つに設けられる検知部から濁り検知結果=1を受信すると、表示装置23に出力される内視鏡視野の映像に処置具31や生体組織のエッジが強調された画像が重畳される(図11参照)濁り対応制御である。
本実施形態において、制御部は第1の制御装置22に設けられる。
一方、本実施形態における通常制御は、エッジが強調された画像が重畳されていない内視鏡視野の映像を表示装置23に出力する制御を行う。
【0058】
表示装置23に出力される内視鏡視野の映像に処置具31や生体組織のエッジが強調された画像が重畳されることで、濁りがある状態でも処置具31の位置や生体組織の場所を視認できるので、術者は手技を続行することができる。
【0059】
次に、濁り対応制御の第1実施形態の流れを具体的に説明する。
第1の制御装置22または第2の制御装置32の少なくとも1つに設けられる検知部から第1の制御装置22に設けられる制御部に対して濁りを検知する信号が送られると、第1の制御装置22に設けられる制御部が撮像データを取得し、公知の方法でエッジを抽出する。その後、第1の制御装置22に設けられる制御部がエッジを抽出して生成したエッジ強調画像データと撮像データから生成した通常の画像データを重畳し、表示装置23で表示を行う。
【0060】
[濁り対応制御の第2実施形態:処置具31の駆動電力調整]
次に、濁り対応制御の第2実施形態を示す。濁り対応制御の第2実施形態は、第1の制御装置22または第2の制御装置32の少なくとも1つに設けられる検知部から濁り検知結果=1を制御部が受信すると、処置具31の駆動電力を低くして第2の駆動電力とする濁り対応制御である。
本実施形態において、制御部は第2の制御装置32に設けられる。
一方、本実施形態における通常制御は、第2の駆動電力より大きい駆動電力である第1の駆動電力で処置具31を駆動させる制御である。
【0061】
濁り対応制御の第2実施形態の流れを具体的に説明する。
第1の制御装置22または第2の制御装置32の少なくとも1つに設けられる検知部から第2の制御装置32に設けられる制御部に対して濁りを検知する信号が送られると、第2の制御装置32に設けられた制御部が処置具31に供給する駆動電力を調整する。その結果、処置具31は第1の駆動電力より低い第2の駆動電力で超音波振動を行う。
【0062】
処置具31の駆動電力を落とすことで切削速度を落とし、切削によって発生する生体組織を減らすことができる。その結果として、灌流の速度が濁り発生時と通常時で変化しないので、内視鏡視野内の濁りが減少する。
これにより、処置具31の超音波振動を止めることなく、術者は手技を中断せず継続して行うことができる。
【0063】
[濁り対応制御の第2実施形態の第1変形例:処置具31の駆動電力調整]
次に、濁り対応制御の第2実施形態の第1変形例を示す。濁り対応制御の第2実施形態の第1変形例は、濁りを検知すると第1の駆動電力より大きい第3の駆動電力で処置具31を駆動させる濁り対応制御である。
また、本実施形態の本変形例における通常制御は、第3の駆動電力より小さい駆動電力である第1の駆動電力で処置具31を駆動させる制御である。
【0064】
濁り対応制御の第2実施形態の第1変形例を示す。流れを具体的に説明する。
第1の制御装置22または第2の制御装置32の少なくとも1つに設けられる検知部から第2の制御装置32に設けられる制御部に対して濁りを検知する信号が送られると、第2の制御装置32に設けられる制御部が処置具31に供給する駆動電力を調整する。その結果、処置具31は第1の駆動電力より大きい第3の駆動電力で超音波振動を行う。
【0065】
切削処置具の駆動電力を上げることで切削速度を上昇させ、短時間で処置を済ませることができる。この方法では、骨粉の発生量も増えるため、灌流速度を速く設定するとより効果的である。
【0066】
[濁り対応制御の第2実施形態の第2変形例:処置具31の駆動電力調整]
次に、濁り対応制御の第2実施形態の第2変形例を示す。濁り対応制御の第2実施形態の第2変形例は、濁りを検知すると処置具31の駆動が停止と発信を繰り返す濁り対応制御である。
また、本実施形態の本変形例における通常制御は、断続的に処置具31を駆動させる制御である。
【0067】
濁り対応制御の第2実施形態の第2変形例の流れを具体的に説明する。
第1の制御装置22または第2の制御装置32の少なくとも1つに設けられる検知部から第2の制御装置32に設けられる制御部に対して濁りを検知する信号が送られると、第2の制御装置32に設けられる制御部が処置具31に供給する駆動電力を停止したり供給したりを繰り返す制御を行う。
【0068】
処置具31を発振させたり停止させたりを繰り返すことによって、連続的に発振させた場合より切削時の骨粉の量は少なくなる。よって、内視鏡視野の濁りを解消しつつ、術者の手技を続行することができる。
【0069】
[濁り対応制御の第3実施形態:灌流制御]
次に、濁り対応制御の第3実施形態を示す。濁り対応制御の第3実施形態は、濁りを検知すると灌流装置6の送水量が増加する(送水速度を強める)対応制御である。
【0070】
本実施形態の手術システム1Aの構成は、図12に示す。
手術システム1との相違点のみを説明する。灌流装置6に送水ポンプ63が設けられる。
本実施形態において、制御部は送水ポンプ63または第1の制御装置22に設けられる。
制御部が第1の制御装置22に設けられる場合は、第1の制御装置22と送水ポンプ63が無線または有線で信号が送受信できるように構成されている。
送水ポンプ63または第1の制御装置22に設けられる制御部は、取得した検知結果をもとに、液体源61から内視鏡21に向けて流れる灌流液の送水量を増加させて第2の送水量とする信号を生成し、送水ポンプ63に対して制御を行う。
一方、本実施形態における通常制御は、第2の送水量より小さい第1の送水量で送水を行う制御である。
【0071】
濁り対応制御の第3実施形態の流れを具体的に説明する。第1の制御装置22または第2の制御装置32の少なくとも1つに設けられる検知部から送水ポンプ63または第1の制御装置22に設けられる制御部に対して濁りを検知する信号が送られると、送水ポンプ63または第1の制御装置22制御部が第1の送水量より大きい第2の送水量で灌流液を送水する制御を行う。
【0072】
第1の送水量より大きい第2の送水量で灌流液を送水することによって、濁りの原因の一例である骨や髄液などの生体組織が関節腔C1から排液チューブ65を通して排液ボトル64により排出されやすくなる。これにより、内視鏡視野の濁りが解消され術者の手技が続行できる。
【0073】
[濁り対応制御の第3実施形態の第1変形例:灌流制御]
次に、濁り対応制御の第3実施形態の第1変形例を示す。濁り対応制御の第3実施形態の第1変形例は、濁りを検知すると灌流装置6の灌流液の吸引量が増加する対応制御である。
【0074】
本実施形態の本変形例の手術システム1Bの構成を図13に示す。手術システム1との相違点のみを説明する。灌流装置6に吸引ポンプ66が設けられる。吸引ポンプ66は、灌流液を排液チューブ65の流路を辿って、関節腔C1内の灌流液を排液ボトル64に排出するための吸引量を第1の吸引量より大きい第2の吸引量に増加させる制御を行う。
本実施形態の本変形例において、制御部は吸引ポンプ66または第1の制御装置22に設けられる。
制御部が第1の制御装置22に設けられる場合は、第1の制御装置22と吸引ポンプ66が無線または有線で信号が送受信できるように構成されている。
吸引ポンプ66または第1の制御装置22に設けられる制御部は、取得した検知結果をもとに、関節腔C1内の灌流液を排液ボトル64に排出するための吸引量を増加させて第2の吸引量とする信号を生成し、吸引ポンプ66に対して制御を行う。
一方、本実施形態の本変形例における通常制御は、第2の吸引量より小さい第1の吸引量で吸引を行う制御である。
【0075】
濁り対応制御の第3実施形態の流れを具体的に説明する。第1の制御装置22または第2の制御装置32の少なくとも1つに設けられる検知部から吸引ポンプ66または第1の制御装置22に設けられる制御部に対して濁りを検知する信号が送られると、吸引ポンプ66または第1の制御装置22に設けられる制御部が灌流液の吸引量を第2の吸引量に増加させる制御を行う。
【0076】
灌流液の吸引量を第2の吸引量に増加させることによって、濁りの原因の一例である骨や髄液などの生体組織が関節腔C1から排液チューブ65を通して排液ボトル64により排出されやすくなる。これにより、内視鏡視野の濁りが解消され術者の手技が続行できる。
【0077】
[濁り対応制御の第3実施形態の第2変形例:灌流制御]
次に、濁り対応制御の第3実施形態の第2変形例を示す。濁り対応制御の第3実施形態の第2変形例は、濁りを検知すると灌流装置6の灌流液の吸引量と送水量が増加する対応制御である。
【0078】
本実施形態の本変形例の手術システム1Cの構成は、図14に示す。手術システム1との相違点のみを説明する。灌流装置6に送水ポンプ63と吸引ポンプ66が設けられる。
本実施形態において、制御部は送水ポンプ63と吸引ポンプ66の両方、または、第1の制御装置22に設けられる。
制御部が第1の制御装置22に設けられる場合は、第1の制御装置22と送水ポンプ63と吸引ポンプ66が無線または有線で信号が送受信できるように構成されている。
送水ポンプ63と吸引ポンプ66の両方または第1の制御装置22に設けられる制御部は、取得した検知結果をもとに、液体源61から内視鏡21に向けて流れる灌流液の送水量を増加させて第2の送水量とする信号を生成し、送水ポンプ63に対して制御を行い、また、関節腔C1内の灌流液を排液ボトル64に排出するための吸引量を増加させて第2の吸引量とする信号を生成し、吸引ポンプ66に対して制御を行う。
【0079】
濁り対応制御の第3実施形態の流れを具体的に説明する。第1の制御装置22または第2の制御装置32の少なくとも1つに設けられる検知部から送水ポンプ63と吸引ポンプ66の両方、または、第1の制御装置22に設けられる制御部に対して濁りを検知する信号が送られると、送水ポンプ63と吸引ポンプ66の両方、または、第1の制御装置22に設けられる制御部が灌流液の送水量を第2の送水量に増加させる制御を行い、さらに、灌流液の吸引量を第2の吸引量に増加させる制御を行う。
また、本実施形態の本変形例における通常制御は、第2の送水量より小さい第1の送水量で送水を行う制御かつ、第2の吸引量より小さい第1の吸引量で吸引を行う制御である。
【0080】
灌流液の送水量と吸引量を増加させることによって、濁りの一例である骨や髄液などの生体組織が関節腔C1から排液チューブ65を通して排液ボトル64により排出されやすくなる。これにより、内視鏡視野の濁りが解消され術者の手技が続行できる。
【0081】
灌流液の送水量と吸引量の増加量が同じになるように制御を行ってもよい。これにより、関節腔C1内の灌流液の量が一定に保たれ、患者への負担が少なくなる。
【0082】
灌流液の送水量を第2の送水量に増加させた後、灌流液の吸引量を第2の吸引量に増加させるように、灌流液の送水量と吸引量を増加させるタイミングをずらしてもよい。これにより、関節腔C1内の灌流液の量が一時的に少なくなることがなくなり手技が続行しやすくなる。
【0083】
灌流液の吸引量を第2の吸引量に増加させた後、灌流液の送水量を第2の送水量に増加させるように増加させるタイミングをずらしてもよい。これにより、関節腔C1内の灌流液の量が一時的に多くなることがなくなり患者への負担が少なくなる。
【0084】
[濁り対応制御のその他の応用例]
上記記載した濁り対応制御は、濁り対応制御同士を組み合わせて使うこともできる。これにより、より術者が中断しにくい状況を作ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明にかかる手術システム、制御装置および手術システムの作動方法は、灌流液中の濁りを検知し、所定の制御を行うことによって患者・術者にとって負担を軽減するのに有用である。
【符号の説明】
【0086】
1、1A~1C 手術システム
2 内視鏡装置
3 処置具装置
6 灌流装置
21 内視鏡
22 第1の制御装置
23 表示装置
31 処置具
32 第2の制御装置
33 フットスイッチ
61 液体源
62 送液チューブ
63 送水ポンプ
64 排液ボトル
65 排液チューブ
66 吸引ポンプ
211 挿入部
311 本体
311a 超音波振動子
313 シース
C1 関節腔
J1 膝関節
P1 第1のポータル
P2 第2のポータル
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14