(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153806
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ウレタン成分及び単官能性反応性希釈剤を含む光重合性組成物、物品、並びに方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/36 20060101AFI20231011BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20231011BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20231011BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20231011BHJP
A61C 7/08 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
C08F220/36
C08F265/06
C08F290/06
C08F2/50
A61C7/08
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023114823
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2020528082の分割
【原出願日】2018-11-09
(31)【優先権主張番号】62/589,707
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】パーカー,ゼバ
(72)【発明者】
【氏名】ジャノスキ,ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,カーラ エス.
(72)【発明者】
【氏名】デヴォー,ロバート ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アブエルヤマン,アーメド エス.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,エリック ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ロス,リチャード ビー.
(72)【発明者】
【氏名】リーゼル,ジョン エム.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高靱性及び耐水性を有し光造形法により歯科矯正用品を製造するのに好適なポリマー型光重合開始剤を含むウレタン成分、歯科矯正物品及び前記ウレタン成分を製造する方法を提供する。
【解決手段】光開始剤を含む少なくとも1つのペンダント基を有するウレタン成分であって、前記ウレタン成分は、光開始剤含有エチルアクリレート(PIEA)と、イソブチルメタクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及び熱開始剤との反応生成物であり、前記PIEAは、下記の式:
を有する、ウレタン成分である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性組成物であって、
a.30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、
b.25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、
c.任意に、存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、
d.0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、
e.存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤と
のブレンドを含む、光重合性組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのウレタンオリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタンアクリルアミド、又はこれらの組み合わせを含み、前記少なくとも1つのウレタン成分が、アルキル、ポリアルキレン、ポリアルキレンオキシド、アリール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、及びこれらの組み合わせから選択される連結基を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、前記少なくとも1つのウレタン成分の量の少なくとも30重量%の量で存在する相溶化剤を含む、請求項1又は2に記載の光重合性組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、25℃以上のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、前記少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤の総量の20重量%~80重量%の量のフェノキシエチルメタクリレートを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤が、存在し、かつポリエステルメタクリレートを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、10未満の親水性-親油性バランス(HLB)値を呈する単官能性反応性希釈剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の開始剤が、光開始剤、熱開始剤、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、プレポリマーの形態で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのウレタン成分が、光開始剤を含む少なくとも1つのペンダント基を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項12】
光重合性組成物の反応生成物を含む物品であって、前記光重合性組成物が、
a.30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、
b.25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、
c.任意に、存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、
d.0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、
e.存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤と
のブレンドを含む、物品。
【請求項13】
複数の層を含む、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
歯科矯正物品を含む、請求項12又は13に記載の物品。
【請求項15】
40%以上の破断伸びを呈する、請求項12~14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
ASTM D638-10に従って測定される場合に、20メガパスカル(MPa)以上の引張強度を呈する、請求項12~15のいずれか一項に記載の物品。
【請求項17】
ASTM D638-10に従って測定される場合に、500MPa以上の弾性率を呈する、請求項12~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項18】
物品の製造方法であって、
a.光重合性組成物を供給することであって、前記光重合性組成物が、
i.30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、
ii.25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、
iii.任意に、存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、
iv.0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、
v.存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤と
のブレンドを含む、供給することと、
b.前記光重合性組成物を選択的に硬化させて物品を形成することと、
c.任意に、ステップ(b)の後に残存する未重合ウレタン成分及び/又は反応性希釈剤を硬化させることと
を含む、方法。
【請求項19】
(d)ステップ(a)及び(b)を繰り返して多層を形成し、ステップ(c)の前に3次元構造を有する物品を作製することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
物品の3次元モデルを表すデータを含み、3Dプリンタとインタフェースする1つ以上のプロセッサによってアクセスされたときに3Dプリンタに物品を作製させる、非一時的機械可読媒体であって、
前記物品が、光重合性組成物の反応生成物を含み、前記光重合性組成物が、
a.30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、
b.25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、
c.任意に、存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、
d.0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、
e.存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤と
のブレンドを含む、非一時的機械可読媒体。
【請求項21】
a.非一時的機械可読媒体から、物品の3Dモデルを表すデータを取得することと、
b.1つ以上のプロセッサによって、前記データを使用して製造デバイスとインタフェースする3Dプリンティングアプリケーションを実行することと、
c.前記製造デバイスによって、前記光重合性組成物の反応生成物を含む前記物品の物理的オブジェクトを生成することと
を含む方法であって、
前記光重合性組成物が、
i.30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、
ii.25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、
iii.任意に、存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、
iv.0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、
v.存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤と
のブレンドを含む、方法。
【請求項22】
a.1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信することと、
b.積層造形プロセスによる前記製造デバイスを用いて、前記デジタルオブジェクトに基づく前記物品を生成することと
を含む方法であって、
前記物品が、光重合性組成物の反応生成物を含み、前記光重合性組成物が、
i.30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、
ii.25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、
iii.任意に、存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、
iv.0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、
v.存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤と
のブレンドを含む、方法。
【請求項23】
a.物品の3Dモデルを表示するディスプレイと、
b.ユーザによって選択された3Dモデルに応じて、物品の物理的オブジェクトを3Dプリンタに作製させる、1つ以上のプロセッサと、
を含むシステムであって、
前記物品が、光重合性組成物の反応生成物を含み、前記光重合性組成物が、
i.30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、
ii.25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、
iii.任意に、存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、
iv.0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、
v.存在する場合は、前記光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤と
のブレンドを含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、ウレタン成分及び少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む物品、並びに物品の製造方法、例えば、積層造形(additive manufacturing)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元物品を製造するための光造形法及びインクジェットプリンティングの使用は比較的長年にわたって知られており、これらのプロセスは概して、いわゆる3Dプリンティング(又は積層造形)方法として知られている。液槽重合技術(光造形は液槽重合技術の1つのタイプである)では、交互に繰り返される連続した2つのステップを用いて液状硬化性組成物から所望の3D物品を作り上げる。第1のステップでは、液状硬化性組成物の層であって、層の1つの境界が組成物の表面となる層を、この層の高さにおいて、形成される成形物品の所望の断面エリアに対応する表面領域内で、適切な放射により硬化させ、第2のステップでは、硬化した層を液状硬化性組成物の新しい層で覆い、所望の形状のいわゆる素地(すなわち、ゲル化物品)が完成するまで、この一連のステップを繰り返す。この素地は、多くの場合、まだ完全に硬化しておらず、通常、後硬化に供される必要がある。硬化直後の素地の機械的強度は、生強度としても知られ、プリントされた物品のその後の処理に関連する。
【0003】
他の3Dプリンティング技術は、プリントヘッドを通して液体として噴射されるインクを使用して、様々な3次元物品を形成する。運転中、プリントヘッドは硬化性フォトポリマーを1層ずつ堆積させてもよい。いくつかのジェットプリンタは、ポリマーを支持材料又は結合剤と共に堆積させる。いくつかの例では、構築材料は室温で固体であり、噴射温度に上昇すると液体に変化する。他の例では、構築材料は室温で液体である。
【0004】
3Dプリンティングにとって特に魅力的な好機の1つは、歯科矯正用の透明トレイアライナーの直接形成である。これらのトレイは、アライナー又はポリマー若しくはシェル装具としても知られ、一組で提供され、所望の目標配置に向けて、漸増的ステップで歯を徐々に動かすために、数ヶ月にわたり、継続的に装着されるように意図されている。透明トレイアライナーのいくつかのタイプは、患者の歯列弓の各歯を受容する歯形受け部の列を有し、この受け部は、ポリマー材料の弾力特性によって各歯を所望の目標位置に向けて漸増的に動かすために、1つの装具から次の装具へとわずかに異なる位置に向けられる。透明トレイアライナー及びその他の弾性装具を製造するために、様々な方法がこれまでに提案されてきた。通常、前述した光造形法などの積層造形方法を使用して、それぞれの歯列弓についてポジ型(positive)の歯列弓モデルを製作する。続いて、各歯列弓モデルの上にポリマー材料のシートを置き、熱、圧力及び/又は負圧を加えて、各モデル歯列弓のモデル歯に適合するように形成する。形成されたシートを洗浄し、必要に応じてトリミングし、得られた歯列弓形状の装具は、所望の数の他の装具と共に治療専門家に発送される。
【0005】
3Dプリンティングによって直接形成されたアライナー又は他の弾性装具は、歯列弓の金型をプリントしてから更に装具を熱形成する必要性を排除していくであろう。更に、新たなアライナー設計が可能となり、治療計画の自由度が増すであろう。透明トレイアライナー及び他の弾性歯科矯正装具を直接プリントする例示的な方法が、PCT公開国際公開第2016/109660号パンフレット(Raby et al.)、同第2016/148960号パンフレット(Cinader et al.)、及び同第2016/149007号パンフレット(Oda et al.)、並びに米国特許公開第2011/0091832号(Kim,et al.)及び同第2013/0095446号(Kitching)に記載されている。
【発明の概要】
【0006】
既存のプリント可能/重合可能樹脂は、アライナーなどの弾性口腔装具のためには、もろすぎる傾向がある(例えば、低い伸び率、短鎖架橋結合、熱硬化性組成物、及び/又は高いガラス転移温度)。そのような樹脂を使って作製されたアライナー又は他の装具は、治療中に患者の口内で容易に破断して、露出した組織を摩損若しくは穿刺するか又は飲み込まれるおそれのある材料片を作り出す可能性がある。こうした破壊は、少なくとも治療を中断させ、患者に健康に関する重大な影響を与えるおそれがある。したがって、3Dプリンティング(例えば、積層造形)方法を使用した弾性物品の形成に適合し、かつふさわしい、硬化性液状樹脂組成物の必要性が存在する。好ましくは、液槽重合3Dプリンティングプロセスで使用される硬化性液状樹脂組成物は、最終的な硬化した物品の両方で、低い粘度、適切な硬化速度、及び優れた機械的特性を有する。対照的に、インクジェットプリンティングプロセス用の組成物は、ノズルを通して噴射することができるように、はるかに低い粘度である必要があるが、この点はほとんどの液槽重合樹脂に当てはまらない。
【0007】
ウレタン(メタ)アクリレートは、興味深い特性、例えば、硬化したときの100%超の伸び及び非常に高い靱性を有する種類の原材料である。しかし、これらの樹脂はまた、非常に高い粘度を有し、室温では基本的に固体である。したがって、ウレタン(メタ)アクリレートは、液槽重合又は光造形のための感光性樹脂調合物において少量が使用されるのみであり、これらの樹脂の特性は他の成分によって影響される。
【0008】
第1の態様では、光重合性組成物が提供される。光重合性組成物は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0009】
第2の態様では、光重合性組成物の反応生成物を含む物品が提供される。光重合性組成物は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0010】
第3の態様では、物品の製造方法が提供される。方法は、(a)光重合性組成物を供給することと、(b)光重合性組成物を選択的に硬化させて物品を形成することとを含む。任意に、方法は、(c)ステップ(b)の後に残存する未重合ウレタン成分及び/又は反応性希釈剤を硬化させることも含む。光重合性組成物は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0011】
第4の態様では、非一時的機械可読媒体が提供される。非一時的機械可読媒体は、物品の3次元モデルを表すデータを有し、3Dプリンタとインタフェースする1つ以上のプロセッサによってアクセスされたときに、3Dプリンタに物品を作製させる。物品は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0012】
第5の態様では、方法が提供される。方法は、(a)非一時的機械可読媒体から、物品の3Dモデルを表すデータを取得することと、(b)1つ以上のプロセッサによって、このデータを使用して製造デバイスとインタフェースする3Dプリンティングアプリケーションを実行することと、(c)製造デバイスによって、物品の物理的オブジェクトを生成することとを含む。物品は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0013】
第6の態様では、別の方法が提供される。方法は、(a)1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信することと、(b)積層造形プロセスによる製造デバイスを用いて、デジタルオブジェクトに基づく物品を生成することとを含む。物品は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0014】
第7の態様では、システムが提供される。システムは、(a)物品の3Dモデルを表示するディスプレイと、(b)ユーザによって選択された3Dモデルに応じて、3Dプリンタに物品の物理的オブジェクトを作製させる、1つ以上のプロセッサと、を含む。物品は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0015】
本開示の少なくとも一定の実施形態に従って作製された透明トレイアライナー及び引張棒は、低い脆性、水に対する良好な耐性、及び良好な靱性を示すことが見出された。
【0016】
本開示の上記の概要は、開示されるそれぞれの実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを意図していない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願にわたるいくつかの箇所では、例を列挙することによって指針が示されるが、それらの例は様々な組み合わせにおいて使用することができる。いずれの場合にも、記載された列挙項目は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本明細書で開示される光重合性組成物を使用して物品を構築するプロセスのフロー図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、プリントされた透明トレイアライナーの等角図である。
【
図4】本開示による、プリントされた歯科矯正装具を製造するプロセスのフロー図である。
【
図5】放射線が容器を通過して方向付けられる装置の一般化された概略図である。
【
図6】物品の積層造形のための一般化されたシステム600のブロック図である。
【
図7】物品のための一般化された製造プロセスのブロック図である。
【
図8】例示的な物品製造プロセスの高レベルフロー図である。
【
図9】例示的な物品積層造形プロセスの高レベルフロー図である。
【
図10】例示的なコンピューティングデバイス1000の概略正面図である。
【0018】
上記で特定された図は、本開示のいくつかの実施形態を説明するものであるが、本明細書で言及されるとおり、他の実施形態もまた企図される。図は必ずしも原寸に比例して描かれているとは限らない。全ての場合において、本開示は、限定ではなく代表例の提示によって、本発明を提示する。当業者によって多数の他の改変及び実施形態が考案され得、それらは、本発明の原理の範囲内及び趣旨内に含まれることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用されるとき、「硬質化可能」という用語は、例えば、加熱して溶媒を除去することや、加熱して重合、化学的架橋、放射線誘起重合又は架橋を生じさせることなどにより、硬化又は凝固され得る材料を指す。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「硬化」とは、例えば、熱、光、放射線、電子ビーム、マイクロ波、化学反応又はこれらの組み合わせなどの何らかの機構による組成物の硬質化又は部分的硬質化を意味する。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「硬化した」は、硬化によって硬質化又は部分的硬質化されている(例えば、重合した又は架橋した)材料又は組成物を指す。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「一体型」とは、同時に作製されること、又は(一体型)部品のうちの1つ以上を損傷することなく分離することが不可能であることを指す。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの組み合わせの略記であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル、又はこれらの組み合わせの略記である。本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート官能性化合物」は、とりわけ(メタ)アクリレート部分を含む化合物である。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「オリゴマー」とは、単一の更なる繰り返し単位の添加時に変化する1つ以上の特性を有する分子を指す。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「ポリマー」とは、単一の更なる繰り返し単位の添加時に変化しない1つ以上の特性を有する分子を指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「重合性組成物」は、開始時(例えば、フリーラジカル重合開始時)に重合化し得る硬化性組成物を意味する。通常、重合(例えば、硬質化)の前に、重合性組成物は、1つ以上の3Dプリンティングシステムの要件及びパラメータと一致する粘度プロファイルを有している。例えば、いくつかの実施形態では、硬質化は、重合又は架橋反応を開始するために十分なエネルギーを有する化学線を照射することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、紫外線(UV)、電子ビーム放射線、又はこれらの両方を使用することができる。熱及び熱開始剤を使用する熱開始もまた、重合性組成物の重合を開始するために利用され得る。化学線と熱放射との組み合わせを使用することができる。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「樹脂」は、硬化性組成物の中に存在する全ての重合性成分(モノマー、オリゴマー及び/又はポリマー)を含有する。樹脂は、ただ1つの重合性成分化合物又は異なる重合性化合物の混合物を含有してもよい。
【0028】
本明細書で使用するとき、「相溶化剤」は、2つの別の不混和性材料相間の界面接着を改善する成分(例えば、重合性組成物中の)を指す。相溶化剤は、少なくとも1つの相全体に存在し、相のうちの少なくとも2つの間の界面に優先的に存在し、システム内の相のうちの少なくとも2つの相の相溶性を増加させる。系中の相溶化剤の重量比が他の相と比較して高すぎる場合、その一部は別個に別個の相を形成し得る。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「混和性」は、ゼロ未満の自由エネルギーを有する任意の(例えば、ポリマー)ブレンドを指し、「不混和性」は、ゼロを超える自由エネルギーを有する任意のブレンドを指す。混和性ポリマーは、第2の材料とのブレンドを形成することができ、このブレンドは、見かけの相分離がない単一相であるように見え、このような能力は、ブレンドの温度に依存し得る。
【0030】
用語「ガラス転移温度」及び「Tg」は、互換可能に使用され、材料又は混合物のガラス転移温度を指す。別段の指定がない限り、ガラス転移温度値は、示差走査熱量計(Differential Scanning calorimetry、DSC)により測定される。モノマー又はオリゴマー
のTgが言及される場合、そのモノマー又はオリゴマーのホモポリマーのTgである。ホモポリマーは、Tgが制限値に達するように十分に高分子量でなければならず、一般的に、ホモポリマーのTgが分子量を増加させて制限値まで増加することが理解される。ホモポリマーはまた、Tgに影響を及ぼし得る水分、残留モノマー、溶媒、及び他の汚染物質を実質的に含まないものと理解される。好適なDSC法及び分析方法は、Matsumoto,A.et.al.,J.Polym.Sci.A.,Polym.Chem.1993,31,2531-2539に記載されているとおりである。
【0031】
本明細書で使用されるとき、用語「親水性-親油性バランス」及び「HLB」は、互換的に使用され、化合物の両親媒性特性の特性評価を指す。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「熱可塑性」とは、そのガラス転移点を十分に超えて加熱されると流動し、冷却されると固体になるポリマーを指す。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「熱硬化性」とは、硬化時に永久的に設定され、その後の加熱時に流動しないポリマーを指す。熱硬化性ポリマーは、通常、架橋ポリマーである。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「咬合側」は、患者の歯の外側先端に向かう方向を意味し、「顔面」は、患者の唇又は頬に向かう方向を意味し、「舌側」は、患者の舌に向かう方向を意味する。
【0035】
言葉「好ましい」及び「好ましくは」は、一定の状況下で一定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0036】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、一般分類を含み、その一般分類の具体例は、例示のために使用し得る。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つの」と互換的に使用される。列挙に後続する「~のうちの少なくとも1つ」及び「~のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0037】
本明細書で使用されるとき、用語「又は」は、内容がそうでない旨を特に明示しない限り、一般的に「及び/又は」を含む通常の意味で用いられる。
【0038】
用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0039】
また、本明細書では、全ての数は「約」という用語で修飾されるものと想定され、好ましくは「厳密に」という用語で修飾されると想定される。測定した量との関連において本明細書で使用されるとき、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。更に本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0040】
特性又は属性に対する修飾語として本明細書で使用されるとき、用語「概して」は、特に定めのない限り、その特性又は属性が、当業者によって容易に認識されるものであるが、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではないこと(例えば、定量化可能な特性に関しては、+/-20%の範囲内)を意味する。用語「実質的に」は、特に定めのない限り、高い近似度(例えば、定量化可能な特性に関しては、+/-10%の範囲内)を意味するが、この場合もまた、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではない。同一の、等しい、均一な、一定の、厳密に、などの用語は、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではなく、特定の状況に適用可能な、通常の許容誤差又は計測誤差の範囲内にあるものと理解される。
【0041】
第1の態様では、本開示は、光重合性組成物を提供する。光重合性組成物は、
a.30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、
b.25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、
c.任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、
d.0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、
e.存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤と、
の(例えば、混和性の)ブレンドを含む。
【0042】
成分(a)~(e)については、以下で詳細に説明する。
【0043】
ウレタン成分
本開示の光重合性組成物は、少なくとも1つのウレタン成分を含む。本明細書で使用されるとき、「ウレタン成分」とは、化合物の主鎖に1つ以上のカルバメート官能基を含む化合物を指す。一定の実施形態では、カルバメート官能基は、式I:
-N(H)-C(O)O- I
のものである。
【0044】
ウレタンは、イソシアネートとアルコールとの反応によって調製され、カルバメート結合を形成する。更に、用語「ポリウレタン」は、ポリイソシアネートと多官能性アルコール、アミン及びメルカプタンを含む任意の多活性水素化合物との反応生成物を指すために、より一般的に使用されてきた。
【0045】
少なくとも1つのウレタン成分は、最終物品に靱性(例えば、少なくとも最小引張強度及び/又は弾性率)並びに可撓性(例えば、少なくとも最小破断伸び)の両方を提供する。いくつかの実施形態では、ウレタン官能基に加えて、ウレタン成分は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びシロキサン基から選択される1つ以上の官能基を更に含む。これらの官能基は、重合中に光重合性組成物の他の成分と反応することができる。少なくとも1つのウレタン成分は、多くの場合、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタンアクリルアミド、又はこれらの組み合わせを含み、少なくとも1つのウレタン成分は、アルキル、ポリアルキレン、ポリアルキレンオキシド、アリール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、及びこれらの組み合わせから選択される連結基を含む。本明細書で使用されるとき、「連結基」とは、2つ以上のウレタン基を接続する官能基を指す。連結基は、二価、三価、又は四価であってもよい。選択される実施形態では、少なくとも1つのウレタン成分は、ポリアルキレンオキシド連結基、ポリアミド連結基、又はこれらの組み合わせを含む、ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0046】
例えば、重合性成分としては、多官能性ウレタンアクリレート又はウレタンメタクリレートを挙げることができる。これらのウレタン(メタ)アクリレートは当業者に公知であり、例えば、ヒドロキシル基末端ポリウレタンと、アクリル酸、メタクリル酸、若しくはイソシアナトエチルメタクリレートを反応させるか、又は、イソシアネート末端プレポリマーと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させてウレタン(メタ)アクリレートを得ることによって、公知の方法で調製することができる。好適なプロセスは、とりわけ、米国特許第8,329,776号(Hecht et al.)及び同第9,295,617号(Cub et al.)に開示されている。好適なウレタンメタクリレートとしては、脂肪族ウレタンメタクリレート、脂肪族ポリエステルウレタンメタクリレート、及び脂肪族ポリエステルトリウレタンアクリレートを挙げることができる。
【0047】
通常、ウレタン成分は、200グラム/モル~5,000グラム/モルの数平均分子量(Mn)を含む。数平均分子量は、マトリックス支援レーザ堆積イオン化質量分析法(matrix assisted laser deposition ionization mass spectrometry、MALDI)によっ
て測定することができる。本明細書で使用されるとき、「ウレタン成分」は、「高Mnウレタン成分」及び「低Mnウレタン成分」のそれぞれを任意に含む。高Mnウレタン成分は、化合物の主鎖に1つ以上のウレタン官能基を含み、1,000グラム/モル(g/mol)以上の数平均分子量を有する化合物を包含するが、化合物の主鎖からの分枝は全て、存在する場合は200g/mol以下のMnを有することを条件とする。言い換えれば、高Mnウレタン成分は、通常、1,000g/mol以上、1,100g/mol以上、1,200g/mol以上、1,300g/mol以上、1,400g/mol以上、1,500g/mol以上、1,600g/mol以上、1,700g/mol以上、1,800g/mol以上、2,000g/mol以上、2,250g/mol以上、2,500g/mol以上、2,750g/mol以上、3,000g/mol以上、3,250g/mol以上、3,500g/mol以上、3,7500g/mol以上、又は更には4,000g/mol以上のMn、かつ5,000g/mol以下、4,800g/mol以下、4,600g/mol以下、4,400g/mol以下、4,100g/mol以下、3,900g/mol以下、3,700g/mol以下、3,400g/mol以下、3,100g/mol以下、2,900g/mol以下、2,700g/mol以下、2,400g/mol以下、又は2,200g/mol以下、又は更には1,900g/mol以下のMnを有する。
【0048】
低Mnウレタン成分は、化合物の主鎖に1つ以上のウレタン官能基を含む化合物を包含し、1)100g/mol以上、かつ1,000g/mol未満の数平均分子量、又は2)2つの反応性基及び/又は分枝間の任意の1つ以上の直鎖状部分の数平均分子量が1,000g/mol未満であることを条件として、100g/mol以上、かつ2,000g/mol以下の数平均分子量のいずれかを有する。例えば、分枝状ウレタン成分は、1,000g/mol超の総Mnを有し得るが、その場合も、1,000g/mol未満のMnを有する2つの分枝点間に線形セグメントを有することにより、低Mnウレタン成分であり得る。換言すれば、1)低Mnウレタン成分のカテゴリーは、通常、100g/mol以上、150g/mol以上、200g/mol以上、250g/mol以上、300g/mol以上、350g/mol以上、400g/mol以上、450g/mol以上、500g/mol以上、550g/mol以上、600g/mol以上、650g/mol以上、700g/mol以上、750g/mol以上、又は800g/mol以上のMn、かつ1,000g/mol未満、975g/mol以下、925g/mol以下、875g/mol以下、825g/mol以下、775g/mol以下、725g/mol以下、675g/mol以下、625g/mol以下、575g/mol以下、525g/mol以下、475g/mol以下、又は425g/mol以下、又は更には375g/mol以下のMnを有する。2)低Mnウレタン成分のカテゴリーは、通常、200g/mol以上、250g/mol以上、300g/mol以上、350g/mol以上、400g/mol以上、450g/mol以上、500g/mol以上、550g/mol以上、600g/mol以上、650g/mol以上、700g/mol以上、750g/mol以上、又は800g/mol以上、かつ1,500g/mol以下、1,400g/mol以下、1,300g/mol以下、1,200g/mol以下、1,100g/mol以下、1,000g/mol以下、975g/mol以下、925g/mol以下、875g/mol以下、825g/mol以下、775g/mol以下、725g/mol以下、675g/mol以下、625g/mol以下、575g/mol以下、525g/mol以下、475g/mol以下、又は425g/mol以下、又は更には375g/mol以下のMnを有する。前述した第2のカテゴリーの低Mnウレタン成分のそれぞれは、2つの反応性基及び/又は分枝間の任意の1つ以上の直鎖状部分の数平均分子量が、1,000g/mol未満、950g/mol以下、900g/mol以下、850g/mol以下、800g/mol以下、又は750g/mol以下であり、かつ2つの反応性基及び/又は分枝間の任意の1つ以上の直鎖状部分の数平均分子量が、100g/mol以上、200g/mol以上、250g/mol以上、300g/mol以上、350g/mol以上、400g/mol以上、450g/mol以上、又は500g/mol以上であるという条件を含む。
【0049】
1,000g/mol以上の数平均分子量を有する高Mnウレタン成分の使用は、少なくとも一定の望ましい最小破断伸び(例えば、25%以上)を有する最終物品をもたらす傾向がある。少なくとも1つのウレタン成分の80重量%以上は、1つ以上の高Mn(例えば、長鎖)ウレタン成分によってもたらされる。より具体的には、低分子量ウレタン成分が存在する実施形態では、高数平均分子量ウレタン成分と低数平均分子量ウレタン成分の典型的な比は、高Mnウレタン成分対低Mnウレタン成分95:5~高Mnウレタン成分対低Mnウレタン成分80:20の範囲となる。換言すれば、本開示の少なくとも一定の態様による光重合性組成物は、ウレタン成分全体の80重量%以上を高Mnウレタン成分として含み、ウレタン成分全体の85重量%以上、87重量%以上、90重量%以上、92重量%以上、95重量%以上、又は更には97重量%以上を高Mnウレタン成分として含み、かつウレタン成分全体の100%以下を高Mnウレタン成分として含み、ウレタン成分全体の98重量%以下、96重量%以下、94重量%以下、91重量%以下、89重量%以下、86重量%以下を高Mnウレタン成分として含む。同様に、本開示の少なくとも一定の態様による光重合性組成物は、ウレタン成分全体の2重量%以上を低Mnウレタン成分として含み、ウレタン成分全体の4重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、又は更には17重量%を低Mnウレタン成分として含み、かつウレタン成分全体の20重量%以下を低Mnウレタン成分として含み、ウレタン成分全体の18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、11重量%以下、9重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、又は3重量%以下を低Mnウレタン成分として含み得る。
【0050】
一定の実施形態によれば、少なくとも1つのウレタン成分は、ウレタン部分を有する少なくとも1つの(メタ)アクリレート成分を含み、これは曲げ強度及び/又は破断伸びのような硬化した組成物の物理的特性を改善するのに役立ち得る。このようなウレタン成分は、以下の特徴を単独で又は組み合わせて特徴付けることができる。
a)少なくとも2つ又は3つ又は4つの(メタ)アクリレート部分を含む。
b)数平均分子量(Mn):1,000~5,000g/mol、又は1,000~2000g/mol。
c)(メタ)アクリレート部分がウレタン部分を介して結合している、C1~C20直鎖又は分枝鎖アルキル部分を含む。
d)粘度:23℃で0.1~100Pa・s又は1~50Pa・s。
【0051】
特徴(a)と(b)、又は(b)と(c)、又は(a)と(d)の組み合わせが好ましい場合があり得る。
【0052】
ウレタン(メタ)アクリレートは、当業者に既知の多くのプロセスによって得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、通常、NCO末端化合物を、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、好ましくはヒドロキシエチル及びヒドロキシプロピルメタクリレートなどの好適な単官能性(メタ)アクリレートモノマーと反応させることによって得られる。例えば、ポリイソシアネートとポリオールを反応させてイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを形成することができ、その後、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートと反応させる。これらの種類の反応は、室温又は高温で、任意に、スズ触媒、三級アミンなどの触媒の存在下で行われてもよい。
【0053】
イソシアネート官能性ウレタンプレポリマーを形成するために使用することができるポリイソシアネートは、少なくとも2つの遊離イソシアネート基を有する任意の有機イソシアネートであり得る。脂肪族脂環式、芳香族、及び芳香脂肪族イソシアネートが含まれる。アルキル及びアルキレンポリイソシアネート、シクロアルキル及びシクロアルキレンポリイソシアネートなどの、既知のポリイソシアネートのいずれか、並びにアルキレン及びシクロアルキレンポリイソシアネートなどの組み合わせを用いることができる。好ましくは、式X(NCO)2を有するジイソシアネートを使用することができ、Xは、2~12個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5~18個のC原子を有する脂環式炭化水素基、6~16個のC原子を有する芳香族炭化水素基、及び/又は7~15個のC原子を有する脂肪族炭化水素基を表す。
【0054】
好適なポリイソシアネートの例としては、2,2,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(HDI)、シクロヘキシル-1,4-ジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,1’-メチレンビス(4-イソシアナト)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、メタ-及びパラ-テトラ-メチルキシレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,6-及び2,4-トルエンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4’及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
例えば、カルボジイミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基、及び/又はビウレット基を含有する、ポリウレタン化学に由来する既知の高官能性ポリイソシアネート又はその他の変性ポリイソシアネートを使用することも可能である。特に好ましいイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソシアヌレート構造を有する高官能性ポリイソシアネートである。
【0056】
イソシアネート末端ウレタン化合物は、(メタ)アクリレートで末端保護されて、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を生成する。一般的に、末端ヒドロキシル基を有し、アクリル部分又はメタクリル部分をも有する、任意の(メタ)アクリレート型末端保護剤を使用することができるが、メタクリル部分が好ましい。好適な末端保護剤の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート及び/又はトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。特に好ましいのは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate、HEMA)及び/又は2-ヒドロキシエチルアクリレー
ト(hydroxyethyl acrylate、HEA)である。
【0057】
イソシアネート基に対して反応性の化合物に対するイソシアネート基の当量比は、1.1:1~8:1、好ましくは1.5:1~4:1である。
【0058】
イソシアネート重付加反応は、ポリウレタン化学による既知の触媒、例えば、ジブチルスズジラウレートなどの有機スズ化合物、又はジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのアミン触媒の存在下で行うことができる。更に、合成は、溶融物中、又はプレポリマー調製前若しくはプレポリマー調製中に添加され得る好適な溶媒中の両方で行うことができる。好適な溶媒は、例えば、アセトン、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone
、NMP)、酢酸エチル、エチレン及びプロピレングリコールのアルキルエーテル、並びに芳香族炭化水素である。溶媒として酢酸エチルを使用することが特に好ましい。
【0059】
選択される実施形態によれば、以下の式I及びIIのウレタンジメタクリレートが好ましい。
【化1】
(式中、nは9又は10である)、
【化2】
【0060】
市販のウレタン成分の例として、Esstech Inc.から商品名EXOTHANE 108(例えば、式IIの構造を含む)、EXOTHANE 8、及びEXOTHANE 10(例えば、式IIIの構造を含む)、並びに3M CompanyのDESMAで入手可能なものが挙げられる。DESMAは、例えば、欧州特許第2167013(B1)号(Hecht et al.)の段落[0135]及び表3に記載されている。
【0061】
一定の実施形態では、ウレタン成分(例えば、オリゴマー又はポリマー)は、ウレタン骨格に結合した1つ以上のペンダント基を含むように調製され得る。好ましくは、少なくとも1つのペンダント基は、光開始剤を含む。例えば、光開始剤含有エチルアクリレート化合物(photoinitiator-containing ethyl acrylate、PIEA)は、以下の反応スキームを介して調製された:
【化3】
【0062】
反応は、以下の実施例において詳細に記載される。次いで、PIEAを、以下の反応スキームに従って、溶液中の1つ以上のモノマー及び熱開始剤と反応させることができる:
【化4】
【0063】
この反応はまた、以下の実施例においても詳細に記載される。このような光開始剤担持ウレタン成分は、本開示の少なくとも一定の実施形態の光重合性組成物に含まれ得る。ウレタン成分に結合した光開始剤を提供する利点は、ウレタン骨格での重合の場所が予め選択され得ることである。
【0064】
ウレタン成分は、光重合性組成物の総重量を基準として、50重量%~90重量%(両端の値を含む)、例えば50重量%~70重量%(両端の値を含む)の量で、光重合性組成物中に含まれる。通常、ウレタン成分は、光重合性組成物の総重量を基準として、50重量%以上、52重量%以上、55重量%以上、57重量%以上、60重量%以上、61重量%以上、62重量%以上、63重量%以上、64重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、又は72重量%以上の量で、かつ90重量%以下、87重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、77重量%以下、又は75重量%以下の量で、光重合性組成物中に含まれる。
【0065】
反応性希釈剤
本開示の光重合性組成物は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。本明細書の参照目的のための「反応性希釈剤」は、少なくとも1つのウレタン成分と共反応することができる(例えば、付加重合を受けることができる)、少なくとも1つのフリーラジカル反応性基(例えば、エチレン性不飽和基)を含有する成分である。反応性希釈剤は、少なくとも1つの(例えば、高Mn)ウレタン成分よりも小さい分子量を有し、多くの場合、400グラム/モル未満であり、ウレタン官能基を含有しない(例えば、任意のウレタン官能基を含まない)。
【0066】
反応性希釈剤は、25℃、20℃、15℃、又は10℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。上記で定義したように、Tgが、単官能性反応性希釈剤のホモポリマーであることを理解されたい。材料、例えば、モノマー又はオリゴマーのTgに関する本開示全体を通しての記述は、その材料のホモポリマー(例えば、モノマー又はオリゴマー)のTgのために省略されるものと理解されるべきである。したがって、換言すれば、反応性希釈剤は、25℃、20℃、15℃、又は10℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。そのホモポリマーは、24℃、23℃、22℃、21℃、20℃、18℃、16℃、14℃、12℃、10℃、又は8℃のTgを有してもよい。低Tg単官能性反応性希釈剤の含有は、光重合性組成物の反応生成物のTgを低下させる傾向がある。
【0067】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、第2の単官能性反応性希釈剤を更に含み、第2の単官能性反応性希釈剤のホモポリマーは、25℃以上、30℃以上、35℃以上、又は40℃以上のTgを有する。Tgは、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下、50℃以下、45℃以下であってもよい。25℃未満のTgを有する単官能性反応性希釈剤、及び25℃以上のTgを有する単官能性反応性希釈剤、及び本開示による一定の光重合性組成物中に、25℃未満のTgを有する単官能性反応性希釈剤、及び25℃以上のTgを有する単官能性反応性希釈剤の両方を含む場合に物理的特性(例えば、強度及び破断伸び)のバランスが光重合性物品中に得られることが予想外に見出された。
【0068】
いくつかの実施形態では、単官能性反応性希釈剤は、第3の単官能性反応性希釈剤と、所望により第4の単官能性反応性希釈剤とを更に含む。一実施形態では、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する1種の単官能性反応性希釈剤と、25℃以上のTgを有する2種の単官能性反応性希釈剤とを含む。代替実施形態では、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する2種の単官能性反応性希釈剤と、25℃以上のTgを有する1種の単官能性反応性希釈剤とを含む。
【0069】
選択された実施形態では、(少なくとも1種の)単官能性反応性希釈剤は、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの好ましい実施形態では、単官能性反応性希釈剤は、例えば全単官能性反応性希釈剤含有量の総量の20重量%~80重量%などの量の、フェノキシエチルメタクリレートを含む。
【0070】
一定の実施形態では、単官能性反応性希釈剤は、(例えば、両親媒性)単官能性反応性希釈剤を含み、10未満の親水性-親油性バランス(HLB)値を示す。両親媒性化合物は、様々な方法によって特徴付けることができる。当該技術分野において既知の1つの一般的な特徴付け方法は、親水性-親油性バランス(「HLB」)である。化合物のHLBを決定するための様々な方法が記載されているが、本明細書で使用される場合、HLBは、Griffinの方法によって得られた値を指す(Griffin WC:「Calculation of HLB Values of Non-Ionic Surfactants」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 5(1954):259を参照されたい)。この計算は、Norgwyn Montgomery Software,Inc.(North Wales,Pa.)のMolecular Modeling Pro Plusソフトウェアプログラムを利用して実行した。Griffinの方法によれば、HLB=20*Mh/M(式中、Mhは、分子の親水性部分の分子質量であり、Mは、分子全体の分子質量である)である。この計算により、0~20のスケールでの数値結果が得られ、「0」は非常に親油性がある。好ましくは、本明細書に記載の光重合性組成物の少なくとも一定の実施形態に有用な両親媒性単官能性反応性希釈剤は、10、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下の親水性-親油性バランス(HLB)値を呈し、かつ0.1以上、0.25以上、0.5以上、0.75以上、又は1以上の親水性-親油性バランス(HLB)値を呈する。
【0071】
好適なフリーラジカル重合性単官能性希釈剤としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、2-ナフチルチオエチルアクリレート、1-ナフチルチオエチルアクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチルアクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチルアクリレート、2-ブロモフェノキシエチルアクリレート、1-ナフチルオキシエチルアクリレート、2-ナフチルオキシエチルアクリレート、フェノキシ2-メチルエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2,4-ジブロモ-6-ブチルフェニルアクリレート、2,4-ジブロモ-6-イソプロピルフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、エトキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、アルコキシル化ラウリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、メタノン(4)ノニルフェノール(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパン形式(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及び2,4,6-トリブロモフェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、単官能性反応性希釈剤は相溶化剤として作用し、これは、2つの別の不混和性材料相(例えば、ウレタン成分及び1種以上の他の反応性希釈剤)間の界面接着を改善する。使用される相溶化剤の量は、ウレタン成分の量に対して相対的である。典型的には、単官能性反応性希釈剤相溶化剤は、少なくとも1つのウレタン成分の量の30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上の量で、光重合性組成物中に存在する。光重合性組成物の一定の実施形態では、相溶化剤の存在により、組成物は、2つ以上の実質的に分離した相の代わりに(混和性の)ブレンドであることを可能にする。相溶化剤として作用することができるいくつかの単官能性反応性希釈剤としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及びn-ビニルピロリドンが挙げられる。
【0073】
好適なフリーラジカル重合性反応体希釈剤としては、ジ、トリ、又は他のポリアクリレート及びメタクリレート、例えば、グリセロールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(D-ゼタクリレート)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(tetraethylene glycol dimethacrylate、TEGDMA)、グリセロールトリア
クリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリメタクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス[1-(2-アクリロキシ)]-p-エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシ-フェニル-ジメチルメタン、及びトリスヒドロキシエチル-イソシアヌレートトリメタクリレート;ポリエステルのビスアクリレート(例えば、メタクリレート末端ポリエステル);分子量200~500のポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビスメタクリレート、アクリル化モノマーの共重合性混合物、例えば、米国特許第4,652,274号(Boettcher et al.)に記載のもの、及びアクリル化オリゴマー、例えば、米国特許第4,642,126号(Zador et al.)に記載のもの;尿素又はアミド基を含む多官能(メタ)アクリレート、例えば、欧州特許第2008636号(Hecht et al.)に記載のものが挙げられる。
【0074】
反応性希釈剤は、1つ以上のポリ(メタ)アクリレート、例えば、二、三、四又は五官能性モノマー又はオリゴマーの脂肪族、脂環式又は芳香族アクリレート又はメタクリレートを含み得る。
【0075】
分子内に3つ以上の(メタ)アクリレート基を有する好適な脂肪族ポリ(メタ)アクリレートの例は、ヘキサン-2,4,6-トリオールのトリアクリレート及びトリメタクリレート;グリセロール又は1,1,1-トリメチロールプロパン;エトキシル化又はプロポキシル化グリセロール又は1,1,1-トリメチロールプロパン;並びに、例えば上記トリオールのトリグリシジルエーテルなどのトリエポキシド化合物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られる、ヒドロキシル含有トリ(メタ)アクリレートである。更に、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート若しくはメタクリレート、又はジペンタエリスリトールモノヒトロキシペンタアクリレート若しくはメタクリレートを使用することも可能である。
【0076】
フリーラジカル重合性化合物の別の好適な分類には、芳香族ジ(メタ)アクリレート化合物及び三官能性又はそれ以上の(メタ)アクリレート化合物が含まれる。三官能性又はそれを超える官能性のメタ(アクリレート)は、三、四又は五官能性のモノマー又はオリゴマーの脂肪族、脂環式又は芳香族のアクリレート又はメタクリレートであり得る。
【0077】
好適な脂肪族三、四及び五官能性(メタ)アクリレートの例は、ヘキサン-2,4,6-トリオールのトリアクリレート及びトリメタクリレート;グリセロール又は1,1,1-トリメチロールプロパン;エトキシル化又はプロポキシル化グリセロール又は1,1,1-トリメチロールプロパン;並びに、例えば上記トリオールのトリグリシジルエーテルなどのトリエポキシド化合物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られる、ヒドロキシル含有トリ(メタ)アクリレートである。更に、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート若しくはメタクリレート、又はジペンタエリスリトールモノヒトロキシペンタアクリレート若しくはメタクリレートを使用することも可能である。いくつかの実施形態では、トリ(メタ)アクリレートは、1,1-トリメチロールプロパントリアクリレート若しくはメタクリレート、エトキシル化若しくはプロポキシル化1,1,1-トリメチロールプロパントリアクリレート若しくはメタクリレート、エトキシル化若しくはプロポキシル化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート若しくはメタクリレート、又はトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを含む。好適な芳香族トリ(メタ)アクリレートの更なる例は、3つのヒドロキシル基を含有するトリヒドロキシベンゼンとフェノール又はクレゾールノボラックのトリグリシジルエーテルと、(メタ)アクリル酸との反応生成物である。
【0078】
いくつかの事例では、反応性希釈剤は、脂肪族、脂環式又は芳香族ジオールのジアクリレートエステル及び/又はジメタクリレートエステルを含み、この例としては、1,3-若しくは1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、エトキシル化若しくはプロポキシル化ネオペンチルグリコール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン若しくはビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、エトキシル化若しくはプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化若しくはプロポキシル化ビスフェノールF、又は、エトキシル化若しくはプロポキシル化ビスフェノールSが挙げられる。いくつかの事例では、本明細書に記載される反応性希釈剤は、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート又はビス(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートなどの1つ以上の高官能性アクリレート又はメタクリレートを含む。
【0079】
多官能性反応性希釈剤を含むいくつかの実施形態では、1種以上の多官能性反応性希釈剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、1重量%~30重量%(両端の値を含む)、例えば5重量%~20重量%の量で存在する。換言すると、少なくとも1つの多官能性反応性希釈剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、又は15重量%以上の量、かつ30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、又は17重量%以下の量で存在し得る。
【0080】
一定の実施形態では、光重合性組成物は、多官能性成分から本質的になるか、又は多官能性成分を含まない。このことは、光重合性組成物が、2重量%以下の多官能性成分を含有することを意味する。意外にも、有意な量の単官能性反応性希釈剤が、光重合中に、光重合性組成物の反応生成物に組み込まれることを発見した。これは、比較的少量の未反応の単官能性反応性希釈剤が反応生成物中に残存し、特に硬化組成物の硬化後工程への浸漬後に、硬化した組成物から抽出され得ることを意味する。一定の実施形態では、未反応の単官能性反応性希釈剤の10%以下が、硬化した物品又は後硬化物品中に存在する。
【0081】
選択された実施形態では、反応性希釈剤の官能基のうちの最大10%、最大15%、又は最大20%が、光重合性組成物中に含める前に反応するように予備重合される。予備重合は、典型的には、反応性希釈剤に少量の光開始剤が添加された開始を介して実施される。1つの代表的な予備重合プロセスは、以下の実施例において詳細に記載される。反応性希釈剤の一部を予備重合する利点は、半貫通性ポリマーネットワークの形成である。また、予備重合は、予備重合されていない同じ組成物と比較して、光重合性組成物の反応生成物中でより高い分子量鎖を生成するのを補助する傾向がある。
【0082】
一定の実施形態において、少なくとも1種の反応性希釈剤は、400グラム/mol以下、375g/mol以下、350g/mol以下、325g/mol以下、300g/mol以下、275g/mol以下、225g/mol以下、又は200g/mol以下の分子量を有する。そのような分子量を有する1種以上の反応性希釈剤を含めることは、液槽重合法での使用にとって十分に低い粘度を有する光重合性組成物を得ることに役立つ。一定の実施形態では、少なくとも1種の反応性希釈剤は、200g/mol~400g/mol(両端の値を含む)の分子量を含む。
【0083】
反応性希釈剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、25重量%~70重量%(両端の値を含む)の量で、例えば30重量%~50重量%(両端の値を含む)の量で、光重合性組成物中に含まれる。通常、反応性希釈剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上の量で、かつ70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、又は40重量%以下の量で、光重合性組成物中に含まれる。
【0084】
添加剤
本明細書に記載の光重合性組成物は、いくつかの例では、1種以上の添加剤、例えば、光開始剤、熱開始剤、阻害剤、安定剤、増感剤、吸収調整剤、フィラー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の添加剤を更に含む。例えば、光重合性組成物は、1種以上の光開始剤、例えば2種の光開始剤を更に含む。好適な例示的光開始剤は、BASF(Ludwigshafen,Germany)から商品名IRGACURE及びDAROCURで入手可能なものであり、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IRGACURE651)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE819)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE2959)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE369)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IRGACURE907)、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]ESACURE ONE(Lamberti S.p.A.,Gallarate,Italy)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR1173)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(IRGACURE TPO)、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(IRGACURE TPO-L)を含む。更なる好適な光開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル、芳香族塩化スルホニル、光活性オキシム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
光開始剤は、本明細書に記載の光重合性組成物中に、積層造形プロセスの特定の制約に従うどのような量でも存在することができる。いくつかの実施形態では、光開始剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、最大約5重量%の量で光重合性組成物中に存在する。いくつかの事例では、光開始剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、約0.1重量%~5重量%の量で存在する。
【0086】
熱開始剤は、本明細書に記載の光重合性組成物中に、積層造形プロセスの特定の制約に従うどのような量でも存在することができる。いくつかの実施形態では、熱開始剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、最大約5重量%の量で光重合性組成物中に存在する。いくつかの事例では、熱開始剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、約0.1重量%~5重量%の量で存在する。好適な熱開始剤としては、例としてかつ限定なしに、過酸化物、例えばベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、シクロヘキサンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、2,2,-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、並びにt-ブチルペルベンゾエートが挙げられる。市販の熱開始剤の例としては、VAZO(商標)67(2,2’-アゾービス(2-メチルブチロニトリル))、VAZO(商標)64(2,2’-アゾービス(イソブチロニトリル))、及びVAZO(商標)52(2,2’-アゾービス(2,2-ジメチルバレロニトリル))を含む、商品名VAZOとしてDuPont Specialty Chemical(Wilmington,DE)から入手可能な反応開始剤、並びにLUCIDOL(商標)70としてElf AtochemNorth America,Philadelphia,Pa.から入手可能な反応開始剤が挙げられる。
【0087】
一定の態様では、1種より多い開始剤の使用は、反応生成物に組み込まれる反応性希釈剤の割合を増加させ、そのため、未硬化のままである反応性希釈剤の百分率を減少させるのを助ける。単官能性反応性希釈剤の反応は、具体的には、重合後の生成物中の未反応希釈剤の存在を最小限に抑えることが望ましい。
【0088】
加えて、本明細書に記載の光重合性材料の組成物は、1種以上の増感剤を更に含んでもよく、同様に存在し得る1つ以上の光開始剤の有効性を増加させ得る。いくつかの実施形態では、増感剤は、イソプロピルチオキサントン(isopropylthioxanthone、ITX)又
は2-クロロチオキサントン(chlorothioxanthone、CTX)を含む。他の増感剤もまた使用されてもよい。光重合性組成物中で使用する場合、増感剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、約0.01重量%の範囲の量で、又は約1重量%の範囲の量で、存在することができる。
【0089】
本明細書に記載の光重合性組成物はまた、任意に1つ以上の重合阻害剤又は安定剤を含む。重合阻害剤は、多くの場合、組成物に更なる熱安定性を加えるために光重合性組成物に含まれる。いくつかの例では、安定剤は1種以上の酸化防止剤を含む。本開示の目的に反しない任意の酸化防止剤が使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、好適な酸化防止剤として様々なアリール化合物が挙げられ、これにはブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)が含まれ、これは、本明細書に記載の実施形態で重合阻害剤としてもまた使用することができる。追加的に又は代替的に、重合阻害剤は、メトキシヒドロキノン(methoxyhydroquinone、MEHQ)を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、重合阻害剤を使用する場合、重合阻害剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、約0.001重量%~2重量%、0.001重量%~1重量%、又は0.01重量%~1重量%の量で存在する。更に、安定剤を使用する場合、安定剤は、本明細書に記載の光重合性組成物中に、光重合性組成物の総重量を基準として、約0.1重量%~5重量%、約0.5重量%~4重量%、又は約1重量%~3重量%の量で存在する。
【0091】
本明細書に記載の光重合性組成物はまた、化学線の透過度を制御するために、1つ以上の吸収調整剤(例えば、染料、光学的増白剤、顔料、微粒子フィラーなど)を含むことができる。特に好適な吸収調整剤の1つは、BASF Corporation(Florham Park,NJ)から入手可能なTinopal OB(ベンゾオキサゾール,2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)])である。吸収調整剤を使用する場合、吸収調整剤は、光重合性組成物の総重量を基準として、約0.001重量%~5重量%、約0.01重量%~1重量%、0.1重量%~3重量%、又は約0.1重量%~1重量%の量で存在し得る。
【0092】
光重合性組成物はフィラーを含んでもよく、これはナノスケールのフィラーを含む。好適なフィラーの例は自然発生又は合成の材料で、これらには、シリカ(SiO2(例えば、石英))、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア、窒化物(例えば、窒化ケイ素)、例えばZr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、及びAlから得られたガラス及びフィラー、長石、ホウケイ酸塩ガラス、カオリン(陶土)、タルク、ジルコニア、チタニア、サブミクロンシリカ粒子(例えば、Degussa Corp.,Akron,OHの「OX50」、「130」、「150」及び「200」シリカ、並びにCabot Corp.,Tuscola,ILのCAB-O-SIL M5及びTS-720シリカを含む、商品名AEROSILで入手可能なものなどの発熱性シリカ)が挙げられるが、これらに限定されない。国際公開第09/045752号(Kalgutkar et al.)に開示されるものなどの、ポリマー材料から製造される有機フィラーもまた可能である。
【0093】
一定の実施形態では、フィラーは、表面改質ナノ粒子を含む。一般的に、「表面改質ナノ粒子」は、コアの表面に付着した表面処理剤を含む。いくつかの実施形態では、コアは、実質的に球状である。いくつかの実施形態では、コアは、少なくとも部分的又は実質的に結晶質である。いくつかの実施形態では、粒子は、実質的に非凝集である。いくつかの実施形態では、粒子は、例えば、ヒュームド又は発熱性シリカとは対照的に、実質的に非凝集である。一般的に、シリカナノ粒子の表面処理剤は、ナノ粒子の表面に共有化学結合することができる第1の官能基を有する有機種であり、付着表面処理剤は、ナノ粒子の1つ以上の特性を変更する。いくつかの実施形態では、表面処理剤は、コアに付着するための3つ以下の官能基を有する。いくつかの実施形態では、表面処理剤は、低分子量、例えば、1000/モル未満の重量平均分子量を有する。
【0094】
いくつかの実施形態では、表面改質ナノ粒子は反応性であり、すなわち、本開示のナノ粒子を表面改質するために使用される表面処理剤の少なくとも1種は、光重合性組成物の、ウレタン成分のうちの1種以上及び/又は反応性希釈剤のうちの1種以上と反応可能な第2の官能基を含んでもよい。明確にするために、ナノ粒子が反応性である場合であっても、それらは、光重合性組成物の樹脂成分の構成成分であるとは見なされない。表面処理剤は、多くの場合、ナノ粒子の表面に付着可能な1つ以上の第1の官能基を含む。例えば、アルコキシ基は、表面処理剤とシリカ表面との間に共有結合を形成するシリカナノ粒子の表面上の遊離シラノール基と反応することができる共通の第1の官能基である。複数のアルコキシ基を有する表面処理剤の例としては、トリアルコキシアルキルシラン(例えば、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)及びトリアルコキシアリールシラン(例えば、トリメトキシフェニルシラン)が挙げられる。
【0095】
組成物は、繊維強化材並びに染料、顔料及び顔料染料などの着色剤を更に含んでもよい。好適な繊維強化材の例としては、PGAミクロフィブリル、コラーゲンミクロフィブリル、及び米国特許第6,183,593号(Narang et al.)に記載されるその他の繊維強化材が挙げられる。米国特許第5,981,621号(Clark et
al.)に記載される好適な着色剤の例としては、1-ヒドロキシ-4-[4-メチルフェニルアミノ]-9,10-アントラセンジオン(FD&C紫色2号)、6-ヒドロキシ-5-[(4-スルホフェニル)オキソ]-2-ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩(FD&C黄色6号)、9-(o-カルボキシフェニル)-6-ヒドロキシ-2,4,5,7-テトラヨード-3H-キサンテン-3-オン、二ナトリウム塩、一水和物(FD&C赤色3号)などが挙げられる。
【0096】
不連続繊維もまた、炭素、セラミック、ガラス、又はこれらの組み合わせを含む繊維などの好適なフィラーでもある。好適な不連続繊維は、セラミック繊維などの様々な組成物を有することができる。セラミック繊維は連続長で製造され得、これらが細断又は剪断されて、不連続なセラミック繊維が得られる。セラミック繊維は、様々な市販のセラミックフィラメントから製造され得る。セラミック繊維を形成するのに有用なフィラメントの例としては、商標NEXTEL(3M Company,St.Paul,MN)で販売されているセラミック酸化物繊維が挙げられる。NEXTELは、操作温度では低い伸び率及び収縮率を有する連続フィラメントセラミック酸化物繊維であり、良好な耐化学薬品性、低い熱伝導率、熱ショック耐性、及び低い空隙率をもたらす。NEXTEL繊維の具体的な例としては、NEXTEL 312、NEXTEL 440、NEXTEL 550、NEXTEL 610及びNEXTEL 720が挙げられる。NEXTEL 312及びNEXTEL 440は、Al2O3、SiO2、及びB2O3を含む耐熱性アルミノホウケイ酸塩である。NEXTEL 550及びNEXTEL 720は、アルミノシリカであり、NEXTEL 610は、アルミナである。製造の際に、NEXTELフィラメントは、有機サイジング剤又は仕上げ剤でコーティングされ、これが繊維加工の補助剤として機能する。サイジングは、保護及び操作補助のためにフィラメントストランドに適用されるデンプン、油、ワックス、又は他の有機成分の使用を含み得る。サイジングは、フィラメント又はセラミック繊維を700℃の温度で1~4時間熱洗浄することによって、セラミックフィラメントから除去することができる。
【0097】
セラミック繊維は、比較的均一な長さを提供するように切断、粉砕、又は細断することができ、これは、セラミック材料の連続フィラメントを、他の切断操作の中でもとりわけ、機械的剪断操作又はレーザ切断操作で切断することによって達成することができる。一定の切断作業の高度に制御された性質を考慮すると、セラミック繊維のサイズ分布は非常に狭く、複合特性を制御することができる。例えば、CCDカメラ(Olympus DP72,Tokyo,Japan)及び分析ソフトウェア(Olympus Stream Essentials,Tokyo,Japan)を搭載した光学顕微鏡(Olympus MX61,Tokyo,Japan)を使用して、セラミック繊維の長さを測定することができる。セラミック繊維の代表サンプルをガラススライド上に広げ、少なくとも200個のセラミック繊維の長さを10倍で測定することによって、サンプルを調製することができる。
【0098】
好適な繊維としては、例えば、NEXTEL 312、440、610及び720などの、商品名NEXTEL(3M Company,St.Paul,MNから入手可能)で入手可能なセラミック繊維が挙げられる。ここで好ましいセラミック繊維の1つは、多結晶α-Al2O3を含む。好適なアルミナ繊維は、例えば、米国特許第4,954,462号(Wood et al.)及び米国特許第5,185,299号(Wood et al.)に記載されている。代表的なアルファアルミナ繊維は、NEXTEL 610(3M Company,St.Paul,MN)の商品名で市販されている。いくつかの実施形態では、アルミナ繊維は、多結晶アルファアルミナ繊維であり、理論上の酸化物ベースで、アルミナ繊維の総重量を基準として、99重量%超のAl2O3及び0.2重量%~0.5重量%のSiO2を含む。他の実施形態では、いくつかの望ましい多結晶アルファアルミナ繊維は、1マイクロメートル未満(又は更には、いくつかの実施形態では、0.5マイクロメートル未満)の平均粒度を有するアルファアルミナを含む。いくつかの実施形態では、多結晶アルファアルミナ繊維は、少なくとも1.6GPa(いくつかの実施形態では、少なくとも2.1GPa、又は更には少なくとも2.8GPa)の平均引張強度を有する。好適なアルミノケイ酸繊維は、例えば、米国特許第4,047,965号(Karst et al.)に記載されている。例示的なアルミノケイ酸繊維は、3M Company(St.Paul,MN)によりNEXTEL 440、及びNEXTEL 720の商品名で市販されている。アルミノホウケイ酸繊維は、例えば、米国特許第3,795,524号(Sowman)に記載されている。例示的なアルミノホウケイ酸繊維は、3M Companyによって商品名NEXTEL 312で市販されている。窒化ホウ素繊維は、例えば、米国特許第3,429,722号(Economy)及び米国特許第5,780,154号(Okano et al.)に記載されているように作製することができる。
【0099】
セラミック繊維はまた、他の好適なセラミック酸化物フィラメントから形成することもできる。そのようなセラミック酸化物フィラメントの例としては、Central Glass Fiber Co.,Ltd.から入手可能なもの(例えば、EFH75-01、EFH150-31)が挙げられる。約2%未満のアルカリを含有するか、又は実質的にアルカリを含まないもの(すなわち、「Eガラス」繊維)である、アルミノホウケイ酸塩ガラス繊維もまた、好ましい。Eガラス繊維は、多数の商業的供給業者から入手可能である。
【0100】
有用な顔料の非限定的な例としては、酸化チタン、リン酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛及びリトポンなどの白色顔料;酸化鉄(栗色、赤色、明るい赤色)、鉄/クロム酸化物、硫セレン化カドミウム及び水銀カドミウム(栗色、赤色、橙色)などの赤色及び赤橙色顔料;ウルトラマリン(青色、ピンク色及び紫色)、クロムスズ(ピンク色)、マンガン(紫色)、コバルト(紫色);チタン酸バリウム、硫化カドミウム(黄色)、クロム(橙色、黄色)、モリブデン酸塩(橙色)、クロム酸亜鉛(黄色)、チタン酸ニッケル(黄色)、酸化鉄(黄色)、ニッケルタングステンチタン、亜鉛フェライト及びチタン酸クロムなどの橙色、黄色及びバフ色の顔料;酸化鉄(バフ色、褐色)、酸化マンガン/酸化アンチモン/酸化チタン、チタン酸マンガン、天然シエナ(アンバー色)、チタンタングステンマンガンなどの褐色顔料;アルミン酸クロム(青色)、クロムコバルトアルミナ(ターコイズ色)、アイアンブルー(青色)、マンガン(青色)、クロム及びクロム酸化物(緑色)及びチタングリーンなどの青緑色顔料;並びに酸化鉄ブラック及びカーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。硬化した組成物で所望の色調を実現するために、一般的に、顔料の組み合わせが使用される。
【0101】
プリントされた組成物を不可視光下で見えるようにするときに、蛍光染料及び顔料の使用が有用な場合もある。特に有用な炭化水素可溶性蛍光染料は、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)1チオフェンである。ローダミンなどの蛍光染料をカチオン性ポリマーに結合させ、樹脂の一部として組み込んでもよい。
【0102】
所望の場合、本開示の組成物は、他の添加剤、例えば、指示薬、促進剤、界面活性剤、湿潤剤、酸化防止剤、酒石酸、キレート化剤、緩衝剤、及び当業者に明らかである他の類似成分を含有してもよい。加えて、医薬又は他の治療用物質を、光重合性組成物に任意で添加することができる。例としては、フッ化物供給源、増白剤類、抗カリエス剤類(例えば、キシリトール)、無機成分補給剤類(例えば、リン酸カルシウム化合物、並びにその他のカルシウム供給源及びホスフェート供給源)、酵素類、口臭清涼剤類、麻酔剤類、凝固剤類、酸中和剤類、化学療法剤類、免疫反応調整剤類、チキソトロープ類、ポリオール類、抗炎症剤類、抗菌剤類、抗カビ剤類、口内乾燥処理剤、減感剤類などの、多くの場合、歯科用組成物に使用されるタイプのものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
上記の添加剤のうちの任意のものの組み合わせを用いてもよい。当業者であれば、所望の結果を達成するために、過度な実験を行うことなく、そのような添加剤のいずれか1種を選び、その量を選択することができる。
【0104】
本明細書に記載の光重合性組成物材料はまた、未硬化で、硬化して、及び後硬化の物品として、様々な望ましい特性を呈することができる。光重合性組成物は、未硬化の時点では、1つ以上の積層造形デバイス(例えば、3Dプリンティングシステム)の要求事項及びパラメータに従う粘度プロファイルを有する。いくつかの事例では、本明細書に記載の光重合性組成物は、40℃及び0.1[1/s]の剪断速度で、40mmコーンプレート測定システムを使用するTA Instruments AR-G2磁気ベアリングレオメーターを用いて、以下の実施例試験方法に記載のASTM D4287に従って測定される場合に、未硬化時に、約0.1~1,000Pa・s、約0.1~100Pa・s、又は約1~10Pa・sの動的粘度を呈する。いくつかの事例では、本明細書に記載の光重合性組成物は、未硬化時に、改変ASTM D4287に従って測定される場合に、約10Pa・s未満の動的粘度を呈する。
【0105】
物品及び方法
第2の態様では、本開示は物品を提供する。物品は、光重合性組成物の反応生成物を含み、光重合性組成物は、
a.30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、
b.25重量%~70重量%の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、
c.任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、
d.0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、
e.存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤と
のブレンドを含む。
【0106】
多くの実施形態では、物品の光重合性組成物は、以下に詳細に記載されるように、液槽重合される。
【0107】
物品の形状は限定されず、フィルム又は成形一体型物品を含んでもよい。例えば、フィルムは、第1の態様による光重合性組成物を鋳造した後、キャスト組成物を化学線にさらして光重合性組成物を重合させることによって、容易に調製することができる。多くの実施形態では、物品は、2つ以上の寸法のバリエーションが、単一の一体型物品によってもたらされる成形一体型物品を含む。例えば、物品は、1つ以上のチャネル、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを含み得る。このような特徴は、通常、従来の成形方法を使用して一体型物品において実現することは不可能である。いくつかの実施形態では、物品は複数の層を含む。選択される実施形態では、物品は歯科矯正物品を含む。歯科矯正物品について、下記に更に詳細に説明する。
【0108】
第3の態様では、本開示は物品の製造方法を提供する。方法は、
(a)光重合性組成物を供給することであって、光重合性組成物が、(i)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(ii)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、(iii)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、(iv)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(v)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とのブレンドを含む、供給することと、
(b)光重合性組成物を選択的に硬化させて物品を形成することと、
(c)任意に、ステップ(b)の後に残存する未重合ウレタン成分及び/又は反応性希釈剤を硬化させることと
を含む。
【0109】
多くの実施形態では、光重合性組成物は、紫外線、電子ビーム放射線、可視放射線、又はこれらの組み合わせを含む化学線を使用して硬化される。更に、方法は、化学線又は熱を使用して物品を後硬化させることを更に含む。
【0110】
積層造形方法において、方法は、(d)ステップ(a)及び(b)を繰り返して多層を形成し、ステップ(c)の前に3次元構造を含む物品を作製することを更に含む。一定の実施形態では、方法は、光重合性組成物の液槽重合を含む。液槽重合が採用される場合、放射線は、側壁又は底壁などの光重合性組成物を保持する容器(例えば、液槽)の壁を通過して方向付けられてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、方法は、(e)物品を、オーブン、例えば真空オーブン内で熱に供することを更に含む。典型的には、オーブンは60℃以上の温度に設定される。段階的加熱プロセスは、任意であり、例えば60℃、次いで80℃での加熱、次いで100℃での加熱などである。物品を熱に供することは、多くの場合、物品中に残存する未反応の反応性希釈剤を追い出すために行われる。
【0112】
硬化した状態の本明細書中に記載の光重合性組成物は、いくつかの実施形態では、1つ以上の所望の特性を示すことができる。「硬化した」状態の光重合性組成物は、少なくとも部分的に重合及び/又は架橋されている重合性成分を含む光重合性組成物を含むことができる。例えば、いくつかの例では、硬化した物品は、少なくとも約10%重合又は架橋されているか、少なくとも約30%重合又は架橋されている。いくつかの事例では、硬化した光重合性組成物は、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%重合又は架橋されている。硬化した光重合性組成物はまた、約10%~約99%重合又は架橋され得る。
【0113】
本開示の光重合性組成物から作られた硬化した物品の適合性及び耐久性は、標準の引張試験、弾性率試験及び/又は伸び試験によってある程度判断することができる。光重合性組成物は通常、硬質化の後に、下記のパラメータの少なくとも1つによって特徴付けることができる。有利には、破断伸びは、通常、25%以上、27%以上、30%以上、32%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、又は60%以上であり、かつ200%以下、100%以下、90%以下、80%以下、又は70%以下である。言い換えれば、硬化した物品の破断伸びは、25%~200%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、破断伸びは、少なくとも30%であり、かつ100%以下である。極限引張強度は、それぞれASTM D638-10に従って測定される場合に、通常、15メガパスカル(MegaPascal、MPa)以上、20MPa以上、25MPa以上、又は30MPa以上であり、通常80MPa以下である。ウレタン成分は物品の破断伸びに対して最大の効果を有するが、光重合性組成物の他の成分もまた破断伸びに影響し、例えば、反応性希釈剤の直鎖又は分枝の長さは、最終物品の破断伸びと正に相関する傾向がある。引張係数は、ASTM D638-10に従って測定される場合に、通常、250MPa以上、500MPa以上、750MPa以上、又は1,000MPa以上である。このような伸び特性は、例えば、試験片タイプVを使用して、ASTM D638-10に概説されている方法によって測定することができる。上記の機械的特性は、適切な摩耗強度及び低い吸湿性と共に、弾力性及び可撓性を必要とする物品に特に適している。
【0114】
本明細書に記載の光重合性組成物は、既知の技術によって混合することができる。いくつかの実施形態では、例えば、本明細書に記載の光重合性組成物を調製するための方法は、光重合性組成物の全て又は実質的に全ての成分を混合するステップと、混合物を加熱するステップと、任意に加熱した混合物を濾過するステップとを含む。混合物を軟化させることは、いくつかの実施形態では、約50℃の温度又は約50℃~約85℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の光重合性組成物は、組成物の全て又は実質的に全ての成分を反応容器に入れて、生じた混合物を約50℃~約85℃の範囲の温度まで、撹拌しながら加熱することによって生産される。加熱及び撹拌は、混合物が実質的に均質化された状態に達するまで継続される。
【0115】
物品の製作
上記のとおりに調製した後は、本開示の光重合性組成物を多様な積層造形プロセスに使用して、上記のようなフィルムのキャスティングを含む様々な物品を作製することができる。3次元物品を作製するための一般化された方法100を
図1に示す。方法の各ステップについて、下記に詳細に説明する。まず、ステップ110では、所望の光重合性組成物(例えば、少なくとも1つのウレタン成分と、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、開始剤とを含む)を供給し、積層造形デバイスによって又は積層造形デバイス内で使用するためのリザーバー、カートリッジ、又は他の好適な容器内に導入する。積層造形デバイスは、ステップ120でコンピュータ化された設計命令のセットに従って、光重合性組成物を選択的に硬化する。ステップ130において、ステップ110及び/又はステップ120を繰り返して多層を形成し、3次元構造を含む物品(例えば、歯科矯正アライナー)を作製する。ステップ140において、任意に未硬化の光重合性組成物を物品から除去し、更に任意に、物品は、ステップ150において物品内の残存する未硬化の光重合性成分を重合させるために追加の硬化を受け、なおも更に任意に、物品は、ステップ160において残存する未反応の反応性希釈剤を追い出すために熱に供される。
【0116】
本明細書に記載の3次元物品又は物体をプリントする方法は、1層ずつ重ねる方式により、本明細書に記載の光重合性組成物の複数の層から物品を形成することを含むことができる。更に、構築される材料組成物の層を、コンピュータ可読形式の3次元物品の画像に従って堆積させることができる。いくつか又は全ての実施形態で、光重合性組成物は、予め選択されたコンピュータ支援設計(computer aided design、CAD)パラメータに従
って堆積される。
【0117】
加えて、本明細書に記載の3D物品を製造する方法は、いわゆる「光造形法/液槽重合」3Dプリンティング方法を含むことができることが理解される。3次元製造のための他の技法が知られており、本明細書に記載の用途で使用するために適切に改変されてもよい。より一般的には、3次元製作技法が次々と利用可能になってきている。そのような技法は全て、指定された物品特性にかなう製作粘度及び分解能を提供する限り、本明細書に記載の光重合性組成物と共に使用するように改変することができる。製作は、本明細書に記載の製作技術のいずれかを、単独で又は様々な組み合わせで使用し、3次元のオブジェクトを表すデータを使用して行われてもよく、このデータは必要に応じて、特定のプリンティング技術又は他の製作技術に合わせてフォーマットし直すか、あるいは他の方法で改変することができる。
【0118】
本明細書に記載の光重合性組成物から液槽重合(例えば、光造形法)を使用して3D物品を形成することは、完全に可能である。例えば、いくつかの事例では、3D物品をプリントする方法は、本明細書に記載の光重合性組成物を流体状態で容器内に保持し、容器内の光重合性組成物に選択的にエネルギーを加えて光重合性組成物の流体層の少なくとも一部分を凝固させ、それによって、3D物品の断面を画定する硬質化された層を形成することを含む。加えて、本明細書に記載の方法は、光重合性組成物の硬質化された層を上昇又は下降させて、未硬質化の光重合性組成物の新たな、つまり第2の流体層を容器内の流体の表面に提供し、続いて、容器内の光重合性組成物に再び選択的にエネルギーを加えて、光重合性組成物の新たな、つまり第2の流体層の少なくとも一部分を凝固させ、3D物品の第2の断面を画定する第2の凝固された層を形成することを更に含むことができる。更に、光重合性組成物を凝固させるためのエネルギーの印加によって、3D物品の第1及び第2の断面をz方向(つまり、上記の上昇又は下降の方向に相当する構築方向)に互いに結合又は接着することができる。更に、容器内の光重合性組成物に選択的にエネルギーを加えることは、光重合性組成物を硬化させるのに十分なエネルギーを有する、紫外線、可視放射線又は電子ビーム放射線などの化学線を加えることを含むことができる。本明細書に記載の方法はまた、昇降機のプラットフォームを昇降させることによって提供される光重合性組成物の流体の新たな層を平坦化することを含むことができる。このような平坦化は、いくつかの事例では、ワイパー又はローラー又はリコータビーズを利用することにより行うことができる。平坦化では、分注された材料を平らにして余分の材料を除去し、プリンタの支持プラットフォーム上に均一かつ滑らかに露出した又は平らな上向きの面を作り出すことによって、1つ以上の層の厚さを、材料を硬化させる前に補正する。
【0119】
3D物品を提供するために前述のプロセスを選択された回数だけ繰り返すことができることが、更に理解される。例えば、いくつかの事例では、このプロセスを「n」回繰り返すことができる。更に、光重合性組成物の層に選択的にエネルギーを加えるステップなどの、本明細書に記載の方法の1つ以上のステップをコンピュータ可読形式の3D物品の画像に従って行うことができると理解される。好適な光造形プリンタには、3D Systems,Rock Hill,SCから入手可能なViper Pro SLA及び、Asiga USA,Anaheim Hills,CAから入手可能なAsiga Pico Plus39が含まれる。
【0120】
図2は、本明細書に記載の光重合性組成物及び方法と共に使用されてもよい光造形装置(「SLA」)の例を示す。一般的に、SLA 200は、レーザ202、光学素子204、ステアリングレンズ206、昇降機208、プラットフォーム210、及び、直線状縁部212を、光重合性組成物で満たされた液槽214内に含んでもよい。動作中、レーザ202が光重合性組成物の表面にわたって操縦されて光重合性組成物の断面が硬化され、その後、昇降機208がプラットフォーム210をわずかに降下させ、別の断面を硬化させる。直線状縁部212が層と層の間の硬化した組成物の表面を掃引して、新しい層を積層する前に表面を平滑化及び正規化してもよい。他の実施形態では、光重合性組成物の上面に1層ずつ物品が描かれる間に、液槽214に、液体の樹脂をゆっくりと満たしてもよい。
【0121】
関連技術である、デジタル光処理(Digital Light Processing、「DLP」)による液槽重合はまた、硬化性ポリマー(例えば、光重合性組成物)の容器を使用する。しかしながら、DLPに基づくシステムでは、硬化性材料の上に2次元の断面を投影して、投影されたビームに直交する平面全体の所望の部分を一度に硬化させる。本明細書に記載の光重合性組成物と共に使用するように改変されてもよい硬化性ポリマー系は全て、本明細書で使用するとき「液槽重合系」という用語の範囲内にあることが意図される。一定の実施形態では、例えば、米国特許第9,205,601号及び同第9,360,757号(両方ともDeSimone et al.)に記載されているように、連続モードでの使用に適合した装置、例えば、Carbon 3D,Inc.(Redwood City,CA)から市販されている装置が用いられてもよい。
【0122】
図5を参照すると、本明細書に記載の光重合性組成物及び方法と共に使用されてもよい別のSLA装置の概略図が提供されている。一般的に、装置500は、レーザ502、光学素子504、ステアリングレンズ506、昇降機508、及びプラットフォーム510を、光重合性組成物519で満たされた液槽514内に含んでもよい。動作中、レーザ502は、液槽514の壁520(例えば、床)を通って光重合性組成物に導かれ、光重合性組成物519の断面を硬化させて、物品517を形成し、その後、昇降機508がプラットフォーム510をわずかに上昇させ、別の断面が硬化される。
【0123】
より一般的には、光重合性組成物は、通常、紫外線、電子ビーム放射線、可視放射線、又はこれらの任意の組み合わせなどの化学線を使用して硬化される。当業者は、過度の実験を行うことなく、特定の用途に好適な放射線源及び波長の範囲を選択することができる。
【0124】
3D物品は、形成された後に、通常、積層造形装置から取り外されて洗浄される(例えば、未硬化光重合性組成物の一部を溶解するが、硬化した固体状態物品(例えば、素地)は溶解しない溶媒中での超音波洗浄、泡沫洗浄又は噴霧洗浄)。また、物品を洗浄し、物品表面の未硬化物を除去するために、任意の他の従来的方法を利用してもよい。この段階で、3次元物品は通常、方法100の残りの任意のステップでの取り扱いのための十分な生強度を有する。
【0125】
本開示の一定の実施形態では、ステップ120で得られる形成物品は収縮し(すなわち、体積が減少し)、(任意の)ステップ150の後の物品の寸法が予想よりも小さくなることが予想される。例えば、硬化した物品は、体積が5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は更には1%未満収縮することがあり、任意の後硬化時に体積が約6~8%収縮する物品をもたらす他の組成物とは対照的である。体積収縮率の量は、通常、最終的な物体の形状に著しい歪みをもたらすことはない。したがって、硬化された最終的な物品のデジタル表現の中の寸法は、この収縮を補償する全体的な倍率に従って拡大されてもよいことが、特に企図される。例えば、いくつかの実施形態では、デジタルの物品表現の少なくとも一部分は、プリントされた装具の所望のサイズの少なくとも101%、いくつかの実施形態では少なくとも102%、いくつかの実施形態では少なくとも104%、いくつかの実施形態では少なくとも105%、いくつかの実施形態では少なくとも110%であり得る。
【0126】
全体的な倍率は、上記ステップ110及び120に従って較正用部品を作製することにより、所与の光重合性組成物調合について計算することができる。較正物品の寸法は、後硬化の前に測定することができる。
【0127】
一般的に、ステップ120の初期積層造形によって形成された3次元物品は、上述したように、完全には硬化しておらず、このことは、洗浄後であっても組成物中の光重合性材料の全てが重合しているわけではないことを意味する。いくつかの未硬化光重合性材料は、通常、洗浄プロセス(例えば、任意のステップ140)中に、プリントされた物品の表面から除去される。物品表面、及びバルク物品そのものが、通常、未硬化光重合性材料を依然として保持しており、更なる硬化を示唆している。残留する未硬化光重合性組成物を除去することは、物品が以降に後硬化されるときに、好ましくなく物品上で直接硬化することによる未硬化の残留する光重合性組成物を最小限に抑える上で特に有用である。
【0128】
更なる硬化は、更なる化学線、加熱、又はその両方によって行うことができる。化学線への曝露は、約10分~60分超の範囲の時間にわたる、任意の好都合な放射線源、一般的に紫外線、可視放射線及び/又は電子ビーム放射線により行われ得る。加熱は概して、不活性雰囲気下で、約10分~60分超の範囲の時間、約75~150℃の範囲の温度で行われる。紫外線と熱エネルギーとを組み合わせる、いわゆる後硬化オーブンは、ステップ150の後硬化プロセスでの使用に特に好適である。一般的に、後硬化は、後硬化されていない同じ3次元物品に比較して、3次元物品の機械的特性及び安定性を向上させる。一定の実施形態では、物品はまた、ステップ160において残存する未反応の反応性希釈剤を追い出すために熱に供される。
【0129】
プリントされた装具300として透明トレイアライナーを作製する一般的な方法を以下に記載する。ただし、類似の技法及び本開示の光重合性組成物を使用して、他の歯科及び歯科矯正物品を作製することができる。代表例としては、国際出願公開第2016/109660号(Raby et al.)に記載の咬合窓を有する取り外し可能な装具、米国特許公開第2014/0356799号(Cinader et al.)に記載の口蓋床を備えた取り外し可能な装具、及び国際出願第2016/148960号及び同第2016/149007号(Oda et al.)、並びに米国特許公開第2008/0248442号(Cinader et al.)に記載の弾性ポリマー歯列弓部材が挙げられるが、これらに限定されない。更に、光重合性組成物は、国際公開第2015/094842号(Paehl et al.)及び米国特許出願公開第2011/0091832号(Kim et al.)に記載のものなどの間接ボンディングトレイの作製、並びに、クラウン、ブリッジ、ベニア、インレー、オンレー、充填材、及びプロテーゼ(例えば、部分義歯又は総義歯)を非限定的に含む他の歯科用物品に使用することができる。他の歯科矯正装具及びデバイスとしては、歯科矯正ブラケット、頬面管、下側リテーナ、歯科矯正バンド、クラスII及びクラスIII矯正器、睡眠時無呼吸症デバイス、開口器、ボタン、クリート、並びにその他の付属デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
一定の実施形態では、(例えば、歯科矯正)物品は、有利には、応力緩和後であっても、一定の平衡弾性率を有し、応力緩和の特定の最大量がもたらされる。応力緩和後の平衡弾性率は、特定の温度(例えば、37℃)及び特定の相対湿度(例えば、相対湿度100%)で一定の歪みから生じる応力を監視することによって測定することができる。少なくとも一定の実施形態では、平衡弾性率は、100%相対湿度及び37℃で2%歪みで24時間後に100MPa以上である。
【0131】
あるいは、光重合性組成物は、航空宇宙、アニメーション及び娯楽、建築及び芸術、自動車、消費財及び包装、教育、エレクトロニクス、補聴器、スポーツ用品、宝飾品、医療、製造などの他の産業において使用することができる。
【0132】
光重合性組成物による歯科矯正装具の製作
物品の特に興味深い1つの実装形態の概要を
図3に示す。積層造形物品300は透明トレイアライナーであり、患者の歯の一部又は全部にわたって取り外し可能な態様で配置することができる。いくつかの実施形態では、装具300は複数の段階的調整装具のうちの1つである。装具300は、内部空洞を有するシェルを含んでもよい。内部空洞は、歯を受け入れ、1つの歯の配列から連続する歯の配列に弾性的に再配置するように形成される。内部空洞は複数の受け部を含んでもよく、その各々は、患者の歯列弓のそれぞれの歯と接続し、受け入れるようになっている。隣接する受け部の付近の領域は互いに連通し得るが、受け部は空洞の長さに沿って互いに離隔される。いくつかの実施形態では、シェルは上顎又は下顎に存在する全ての歯に嵌合する。通常、歯のうちの一定の1つのみが再配置され、他の歯は、その歯又は治療対象の歯に対して弾性的な再配置力を加えながら歯科装具を所定の位置に保持する基部又はアンカーの領域を提供することになる。
【0133】
患者の歯の位置決めを容易にするために、受け部の少なくとも1つは、患者の対応する歯に対して整列していなくてもよい。このように、装具300は、装具300が患者によって装着されているときに患者の対応する歯に回転力及び/又は並進力を加えるように構成されてもよい。いくつかの特定の例では、装具300は、圧縮的又は直線的力のみを付与するように構成されてもよい。同じ例又は異なる例では、装具300は、受け部内の歯の1つ以上に並進力を加えるように構成されてもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、装具300のシェルは上顎又は下顎に存在する一部又は全ての前方歯にわたって嵌合する。通常、歯のうちの一定の1つのみが再配置され、他の歯は、その歯又は再配置される歯に対して弾性的な再配置力を加えながら装具を所定の位置に保持する基部又はアンカーの領域を提供することになる。したがって、装具300は、いずれの受け部も、歯の現在の位置を維持するために、特定の位置での歯の保定を容易にする形状になるように設計することができる。
【0135】
本開示の光重合性組成物を使用して歯科矯正装具を形成する方法400は、
図4に概要を示す全体的な一般的なステップを含み得る。プロセスの個々の態様について、下記で更に詳細に説明する。プロセスは、患者の歯を再配置する治療計画を形成することを含む。簡潔に説明すると、治療計画は、患者の歯の初期配列を表すデータを得ること(ステップ410)を含むことができ、これは通常、治療開始に先立って患者の歯の圧痕又は走査画像を得ることを含む。治療計画はまた、患者の前方歯及び後方歯の所望の最終配列又は目標配列を特定すること(ステップ420)、及び、少なくとも前方歯を初期の配列から治療経路に沿って選択された最終配列又は目標配列に向けて移動させるための、計画された複数の連続的又は中継的な歯の配列を特定すること(ステップ430)を含む。1つ以上の装具を治療計画に基づいて仮想的に設計し(ステップ440)、その装具設計を表す画像データを、STLフォーマット又は他の適切なコンピュータ処理可能フォーマットで積層造形デバイス(例えば、3Dプリンタシステム)にエクスポートすることができる(ステップ450)。積層造形デバイス内に保持された本開示の光重合性組成物を使用して、装具を製造することができる(ステップ460)。
【0136】
いくつかの実施形態では、本開示の少なくとも一定の態様に従って、(例えば、非一時的)機械可読媒体が、物品の積層造形において用いられる。データは、通常、機械可読媒体に保存される。データは、物品の3次元モデルを表し、このモデルには、積層造形機器(例えば、3Dプリンタ、製造デバイスなど)とインタフェースする少なくとも1つのコンピュータプロセッサによってアクセスできる。このデータは、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%の量の、任意の阻害剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む物品を積層造形装置に作製させるために使用される。一定の実施形態では、物品は歯科矯正物品である。好ましくは、物品は25%以上の破断伸びを有する。
【0137】
物品を表すデータは、コンピュータ支援設計(CAD)データなどのコンピュータモデリングを使用して生成されてもよい。(例えば、ポリマー)物品の設計を表す画像データは、STLフォーマットで、又は任意の他の適切なコンピュータ処理可能なフォーマットで、積層造形機器にエクスポートすることができる。3次元オブジェクトを走査するための走査方法も、物品を表すデータの作成に使用することができる。データを取得するための1つの例示的な技法は、デジタル走査である。X線写真、レーザ走査、コンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)、磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging
、MRI)、及び超音波画像診断を含む、任意の他の好適な走査技法を、物品を走査するために使用できる。他の可能な走査方法が、例えば米国特許出願公開第2007/0031791号(Cinader,Jr.,et al.)に記載されている。走査オペレーションからの生データ、及び生データから導出した物品を表すデータの両方を含み得る初期デジタルデータセットを処理して、任意の周囲構造(例えば、物品用支持具)から物品の設計を分割することができる。物品が歯科矯正物品である実施形態では、走査技術は、例えば、患者の口腔を走査して患者の歯科矯正物品をカスタマイズすることを含んでもよい。
【0138】
多くの場合、機械可読媒体は、コンピューティングデバイスの一部として提供される。コンピューティングデバイスは、1つ以上のプロセッサ、揮発性メモリ(RAM)、機械可読媒体を読み取るためのデバイス、並びに、例えば、ディスプレイ、キーボードなどの入力/出力デバイス、及びポインティングデバイスを有し得る。更に、コンピューティングデバイスは、オペレーティングシステム及び他のアプリケーションソフトウェアなどの他のソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせも含み得る。コンピューティングデバイスは、例えば、ワークステーション、ラップトップ、携帯情報端末(PDA)、サーバ、メインフレーム又は任意の他の汎用若しくは特定用途向けコンピューティングデバイスであってもよい。コンピューティングデバイスは、コンピュータ可読媒体(例えば、ハードドライブ、CD-ROM、又はコンピュータメモリなど)から実行可能なソフトウェアの命令を読み出してもよく、又は別のネットワーク化コンピュータなどの、コンピュータに論理的に接続された別のソースからの命令を受信してもよい。
図10を参照すると、コンピューティングデバイス1000は、多くの場合、内部プロセッサ1080、ディスプレイ1100(例えば、モニタ)、並びにキーボード1140及びマウス1120などの1つ以上の入力デバイスを含む。
図10では、アライナー1130が、ディスプレイ1100に表示されている。
【0139】
図6を参照すると、一定の実施形態では、本開示はシステム600を提供する。システム600は、物品(例えば、
図10のディスプレイ1100に表示されているようなアライナー1130)の3Dモデル610を表示するディスプレイ620と、ユーザにより選択された3Dモデル610に応じて、物品660の物理的オブジェクトを3Dプリンタ/積層造形デバイス650に作製させる、1つ以上のプロセッサ630と、を含む。多くの場合、入力デバイス640(例えば、キーボード及び/又はマウス)は、特にユーザが3Dモデル610を選択するために、ディスプレイ620及び少なくとも1つのプロセッサ630と共に使用される。物品660は、光重合性組成物の反応生成物を含み、光重合性組成物は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のT
gを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む。
【0140】
図7を参照すると、プロセッサ720(又は2つ以上のプロセッサ)は、機械可読媒体710(例えば、非一時的媒体)、3Dプリンタ/積層造形デバイス740、及び任意にユーザが見るためのディスプレイ730のそれぞれと通信する。3Dプリンタ/積層造形デバイス740は、機械可読媒体710から、物品750(例えば、
図10のディスプレイ1100に示すようなアライナー1130)の3Dモデルを表すデータを提供するプロセッサ720からの命令に基づいて、1つ以上の物品750を製造するように構成されている。
【0141】
図8を参照すると、例えば、限定するものではないが、積層造形方法は、(例えば、非一時的)機械可読媒体から、本開示の少なくとも1つの実施形態による物品の3Dモデルを表すデータを取得すること810を含む。方法は、1つ以上のプロセッサによって、データを使用して造形デバイスとインタフェースする積層造形アプリケーションを実行するステップ820と、造形デバイスによって、物品の物理的オブジェクトを生成するステップ830とを更に含む。積層造形機器は、光重合性組成物を選択的に硬化して物品を形成することができる。物品は、光重合性組成物の反応生成物を含み、光重合性組成物は、(a)30重量%~70重量%の(両端の値を含む)少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の、25℃未満のT
gを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤と、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の二官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む。1つ以上の様々な任意選択の後処理ステップ840を実行してもよい。通常、残留未重合光重合性成分を硬化させることができる。一定の実施形態では、物品は、歯科矯正物品を含む。好ましくは、物品は25%以上の破断伸びを呈する。更に、
図9を参照すると、物品の製造方法は、1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信すること910と、積層造形プロセスによる製造デバイスを用いて、このデジタルオブジェクトに基づく物品を生成すること920とを含む。再び、物品は、例えば、未重合ウレタン成分及び/又は物品内に残存する反応性希釈剤を硬化させるために、後処理930のうちの1つ以上のステップを受けてもよい。典型的には、製造デバイスは、光重合性組成物を選択的に硬化させて物品を形成する。
【0142】
本開示の選択された実施形態
実施形態1は、光重合性組成物である。光重合性組成物は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0143】
実施形態2は、少なくとも1つのウレタン成分が、光重合性組成物の総重量の50重量%~70重量%(両端の値を含む)の量で存在する、実施形態1に記載の光重合性組成物である。
【0144】
実施形態3は、化合物の主鎖からの全ての分枝が、存在する場合は200g/mol以下のMnを有することを条件として、少なくとも1つのウレタン成分が、化合物の主鎖中に1つ以上のウレタン官能基を有して数平均分子量が1,000グラム/モル(g/mol)以上である高数平均分子量(Mn)ウレタン成分を含む、実施形態1又は2に記載の光重合性組成物である。
【0145】
実施形態4は、少なくとも1つのウレタンオリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタンアクリルアミド、又はこれらの組み合わせを含み、少なくとも1つのウレタン成分が、アルキル、ポリアルキレン、ポリアルキレンオキシド、アリール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、及びこれらの組み合わせから選択される連結基を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0146】
実施形態5は、少なくとも1つのウレタン成分が、ポリアルキレンオキシド連結基、ポリアミド連結基、又はこれらの組み合わせを含むウレタン(メタ)アクリレートを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0147】
実施形態6は、少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤が、光重合性組成物の総重量の30重量%~50重量%(両端の値を含む)の量で存在する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0148】
実施形態7は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、少なくとも1つのウレタン成分の量の少なくとも30重量%の量で存在する相溶化剤を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0149】
実施形態8は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、25℃以上のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を更に含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0150】
実施形態9は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤、及び25℃以上のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤のそれぞれを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0151】
実施形態10は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、2種の単官能性反応性希釈剤を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0152】
実施形態11は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、3種の単官能性反応性希釈剤を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0153】
実施形態12は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、25℃未満のTgを有する1種の単官能性反応性希釈剤と、25℃以上のTgを有する2種の単官能性反応性希釈剤とを含む、実施形態10に記載の光重合性組成物である。
【0154】
実施形態13は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、25℃未満のTgを有する2種の単官能性反応性希釈剤と、25℃以上のTgを有する1種の単官能性反応性希釈剤とを含む、実施形態10に記載の光重合性組成物である。
【0155】
実施形態14は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0156】
実施形態15は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、フェノキシエチルメタクリレートを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0157】
実施形態16は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤の総量の20重量%~80重量%の量のフェノキシエチルメタクリレートを含む、実施形態15に記載の光重合性組成物である。
【0158】
実施形態17は、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤が、光重合性組成物の総重量を基準として、5重量%~20重量%(両端の値を含む)の量で存在する、実施形態1~16のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0159】
実施形態18は、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤が、存在し、かつポリエステルメタクリレートを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0160】
実施形態19は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、10未満の親水性-親油性バランス(HLB)値を呈する単官能性反応性希釈剤を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0161】
実施形態20は、0.01重量%~1重量%(両端の値を含む)の吸収調整剤を更に含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0162】
実施形態21は、0.1[1/s]の剪断速度で40mmコーンプレート測定システムを使用する磁気ベアリングレオメーターを用いて決定して、25℃の温度で10Pa・s以下の粘度を有する、実施形態1~20のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0163】
実施形態22は、少なくとも1種のフィラーを更に含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0164】
実施形態23は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、及び不連続繊維から選択される少なくとも1種のフィラーを更に含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0165】
実施形態24は、シリカが、表面修飾シリカナノ粒子を含む、実施形態23に記載の光重合性組成物である。
【0166】
実施形態25は、不連続繊維が、炭素、セラミック、ガラス、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態22又は23に記載の光重合性組成物である。
【0167】
実施形態26は、少なくとも1種の開始剤が、第1の光開始剤を含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0168】
実施形態27は、少なくとも1種の開始剤が、第2の光開始剤を更に含む、実施形態26に記載の光重合性組成物である。
【0169】
実施形態28は、少なくとも1つの開始剤が、熱開始剤を更に含む、実施形態26又は27に記載の光重合性組成物である。
【0170】
実施形態29は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、プレポリマーの形態で存在する、実施形態1~28のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0171】
実施形態30は、プレポリマーが、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤の官能基のうちの最大10%、最大15%、又は最大20%の重合を含む、実施形態29に記載の光重合性組成物である。
【0172】
実施形態31は、少なくとも1つのウレタン成分が、光開始剤を含む少なくとも1つのペンダント基を含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0173】
実施形態32は、光重合性組成物の反応生成物を含む物品である。光重合性組成物は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0174】
実施形態33は、複数の層を含む、実施形態32に記載の物品である。
【0175】
実施形態34は、フィルム又は成形一体型物品を含む、実施形態32又は33に記載の物品である。
【0176】
実施形態35は、歯科矯正物品を含む、実施形態32~34のいずれか1つに記載の物品である。
【0177】
実施形態36は、1つ以上のチャネル、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態32~35のいずれか1つに記載の物品である。
【0178】
実施形態37は、25%以上の破断伸びを呈する、実施形態32~36のいずれか1つに記載の物品である。
【0179】
実施形態38は、40%以上の破断伸びを呈する、実施形態32~37のいずれか1つに記載の物品である。
【0180】
実施形態39は、ASTM D638-10に従って測定される場合に、20メガパスカル(MPa)以上の引張強度を呈する、実施形態32~38のいずれか1つに記載の物品である。
【0181】
実施形態40は、ASTM D638-10に従って測定される場合に、30MPa以上の引張強度を呈する、実施形態32~39のいずれか1つに記載の物品である。
【0182】
実施形態41は、ASTM D638-10に従って測定される場合に、500MPa以上の弾性率を呈する、実施形態32~40のいずれか1つに記載の物品である。
【0183】
実施形態42は、ASTM D638-10に従って測定される場合に、1,000MPa以上の弾性率を呈する、実施形態32~41のいずれか1つに記載の物品である。
【0184】
実施形態43は、少なくとも1つのウレタン成分が、光重合性組成物の総重量の50重量%~70重量%(両端の値を含む)の量で存在する、実施形態32~42のいずれか1つに記載の物品である。
【0185】
実施形態44は、化合物の主鎖からの全ての分枝が、存在する場合は200g/mol以下のMnを有することを条件として、少なくとも1つのウレタン成分が、化合物の主鎖中に1つ以上のウレタン官能基を有して数平均分子量が1,000グラム/モル(g/mol)以上である高数平均分子量(Mn)ウレタン成分を含む、実施形態32~43のいずれか1つに記載の物品である。
【0186】
実施形態45は、少なくとも1つのウレタンオリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタンアクリルアミド、又はこれらの組み合わせを含み、少なくとも1つのウレタン成分が、アルキル、ポリアルキレン、ポリアルキレンオキシド、アリール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、及びこれらの組み合わせから選択される連結基を含む、実施形態32~44のいずれか1つに記載の物品である。
【0187】
実施形態46は、少なくとも1つのウレタン成分が、ポリアルキレンオキシド連結基、ポリアミド連結基、又はこれらの組み合わせを含むウレタン(メタ)アクリレートを含む、実施形態32~45のいずれか1つに記載の物品である。
【0188】
実施形態47は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、光重合性組成物の総重量の30重量%~50重量%(両端の値を含む)の量で存在する、実施形態32~46のいずれか1つに記載の物品である。
【0189】
実施形態48は、少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤が、少なくとも1つのウレタン成分の量の少なくとも30重量%の量で存在する相溶化剤を含む、実施形態32~47のいずれか1つに記載の物品である。
【0190】
実施形態49は、少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤が、25℃以上のTgを有する少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤を更に含む、実施形態32~48のいずれか1つに記載の物品である。
【0191】
実施形態50は、少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤が、25℃未満のTgを有する少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤と、25℃以上のTgを有する少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤とを更に含む、実施形態32~49のいずれか1つに記載の物品である。
【0192】
実施形態51は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、2種の単官能性反応性希釈剤を含む、実施形態32~50のいずれか1つに記載の物品である。
【0193】
実施形態52は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、3種の単官能性反応性希釈剤を含む、実施形態32~51のいずれか1つに記載の物品である。
【0194】
実施形態53は、少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤が、25℃未満のTgを有する1種の単官能性反応性希釈剤と、25℃以上のTgを有する2種の単官能性反応性希釈剤とを含む、実施形態52に記載の物品である。
【0195】
実施形態54は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、25℃未満のTgを有する2種の単官能性反応性希釈剤と、25℃以上のTgを有する1種の単官能性反応性希釈剤とを含む、実施形態52に記載の物品である。
【0196】
実施形態55は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態32~54のいずれか1つに記載の物品である。
【0197】
実施形態56は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、フェノキシエチルメタクリレートを含む、実施形態32~55のいずれか1つに記載の物品である。
【0198】
実施形態57は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤の総量の20重量%~80重量%の量のフェノキシエチルメタクリレートを含む、実施形態56に記載の物品である。
【0199】
実施形態58は、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤が、光重合性組成物の総重量を基準として、5重量%~20重量%(両端の値を含む)の量で存在する、実施形態32~57のいずれか1つに記載の物品である。
【0200】
実施形態59は、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤が、存在し、かつポリエステルメタクリレートを含む、実施形態32~58のいずれか1つに記載の物品である。
【0201】
実施形態60は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、10未満のHLB値を呈する単官能性反応性希釈剤を含む、実施形態32~58のいずれか1つに記載の物品である。
【0202】
実施形態61は、0.01重量%~1重量%(両端の値を含む)の吸収調整剤を更に含む、実施形態32~60のいずれか1つに記載の物品である。
【0203】
実施形態62は、光重合性組成物が、0.1[1/s]の剪断速度で40mmコーンプレート測定システムを使用する磁気ベアリングレオメーターを用いて決定して、25℃の温度で10Pa・s以下の粘度を有する、実施形態32~61のいずれか1つに記載の物品である。
【0204】
実施形態63は、少なくとも1種のフィラーを更に含む、実施形態32~62のいずれか1つに記載の物品である。
【0205】
実施形態64は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、及び不連続繊維から選択される少なくとも1種のフィラーを更に含む、実施形態32~63のいずれか1つに記載の物品である。
【0206】
実施形態65は、シリカが、表面修飾シリカナノ粒子を含む、実施形態64に記載の物品である。
【0207】
実施形態66は、不連続繊維が、炭素、セラミック、ガラス、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態64又は65に記載の物品である。
【0208】
実施形態67は、少なくとも1種の開始剤が、第1の光開始剤を含む、実施形態32~66のいずれか1つに記載の物品である。
【0209】
実施形態68は、少なくとも1つの開始剤が、第2の光開始剤を更に含む、実施形態67に記載の物品である。
【0210】
実施形態69は、少なくとも1つの開始剤が、熱開始剤を更に含む、実施形態67又は68に記載の物品である。
【0211】
実施形態70は、少なくとも1つのウレタン成分が、光開始剤を含む少なくとも1つのペンダント基を含む、実施形態32~69のいずれか1つに記載の物品である。
【0212】
実施形態71は、物品の製造方法である。方法は、(a)光重合性組成物を供給することと、(b)光重合性組成物を選択的に硬化させて物品を形成することとを含む。任意に、方法は、(c)ステップ(b)の後に残存する未重合ウレタン成分及び/又は反応性希釈剤を硬化させることを更に含む。光重合性組成物は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0213】
実施形態72は、(d)ステップ(a)及び(b)を繰り返して多層を形成し、ステップ(c)の前に3次元構造を有する物品を作製することを更に含む、実施形態71に記載の方法である。
【0214】
実施形態73は、(e)物品をオーブン中で熱に供することを更に含む、実施形態71又は72に記載の方法である。
【0215】
実施形態74は、オーブンが、60℃以上の温度に設定される、実施形態73に記載の方法である。
【0216】
実施形態75は、物品が、60℃、80℃、次いで100℃で段階的に熱に供される、実施形態73又は74に記載の方法である。
【0217】
実施形態76は、オーブンが、真空オーブンを含む、実施形態73~75のいずれか1つに記載の方法である。
【0218】
実施形態77は、光重合性組成物が、UV線、e-ビーム線、可視線、又はこれらの組み合わせを含む化学線を使用して硬化される、実施形態71~76のいずれか1つに記載の方法である。
【0219】
実施形態78は、放射線が、光重合性組成物を保持する容器の壁を通って方向付けられる、実施形態77に記載の方法である。
【0220】
実施形態79は、光重合性組成物が、光重合性組成物を保持する容器の床を通して硬化される、実施形態71~78のいずれか1つに記載の方法である。
【0221】
実施形態80は、化学線又は熱を用いて、物品を後硬化させることを更に含む、実施形態71~79のいずれか1つに記載の方法である。
【0222】
実施形態81は、光重合性組成物の液槽重合を含む、実施形態71~80のいずれか1つに記載の方法である。
【0223】
実施形態82は、少なくとも1種の開始剤が、第1の光開始剤を含む、実施形態71~81のいずれか1つに記載の方法である。
【0224】
実施形態83は、少なくとも1種の開始剤が、第2の光開始剤を更に含む、実施形態82に記載の方法である。
【0225】
実施形態84は、少なくとも1種の開始剤が、熱開始剤を更に含む、実施形態82又は83に記載の方法である。
【0226】
実施形態85は、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、プレポリマーの形態で存在する、実施形態71~84のいずれか1つに記載の方法である。
【0227】
実施形態86は、プレポリマーが、少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤の官能基のうちの最大10%、最大15%、又は最大20%の重合を含む、実施形態85に記載の光重合性組成物である。
【0228】
実施形態87は、少なくとも1つのウレタン成分が、光開始剤を含む少なくとも1つのペンダント基を含む、実施形態71~86のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0229】
実施形態88は、非一時的機械可読媒体である。非一時的機械可読媒体は、物品の3次元モデルを表すデータを有し、3Dプリンタとインタフェースする1つ以上のプロセッサによってアクセスされたときに、3Dプリンタに物品を作製させる。物品は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0230】
実施形態89は、方法である。方法は、(a)非一時的機械可読媒体から、物品の3Dモデルを表すデータを取得することと、(b)1つ以上のプロセッサによって、このデータを使用して製造デバイスとインタフェースする3Dプリンティングアプリケーションを実行することと、(c)製造デバイスによって、物品の物理的オブジェクトを生成することとを含む。物品は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0231】
実施形態90は、実施形態89に記載の方法を用いて生成された物品である。
【0232】
実施形態91は、歯科矯正物品を含む、実施形態90に記載の物品である。
【0233】
実施形態92は、25%以上の破断伸びを呈する、実施形態90又は91に記載の物品である。
【0234】
実施形態93は、方法である。方法は、(a)1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信することと、(b)積層造形プロセスによる製造デバイスを用いて、デジタルオブジェクトに基づく物品を生成することとを含む。物品は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【0235】
実施形態94は、製造デバイスが、光重合性組成物を選択的に硬化させて物品を形成する、実施形態93に記載の方法である。
【0236】
実施形態95は、物品内に残存する未重合ウレタン成分及び/又は反応性希釈剤を硬化させることを更に含む、実施形態94に記載の方法である。
【0237】
実施形態96は、物品が、歯科矯正物品を含む、実施形態93~95のいずれか1つに記載の方法である。
【0238】
実施形態97は、物品が、25%以上の破断伸びを呈する、実施形態93~96のいずれか1つに記載の方法である。
【0239】
実施形態98は、システムである。システムは、(a)物品の3Dモデルを表示するディスプレイと、(b)ユーザによって選択された3Dモデルに応じて、3Dプリンタに物品の物理的オブジェクトを作製させる、1つ以上のプロセッサと、を含む。物品は、(a)30重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1つのウレタン成分と、(b)25重量%~70重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤とのブレンドを含む光重合性組成物の反応生成物を含む。少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤は、25℃未満のTgを有する少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤を含む。光重合性組成物は、(c)任意に、存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として1重量%~30重量%(両端の値を含む)の量の、少なくとも1種の多官能性反応性希釈剤と、(d)0.1重量%~5重量%(両端の値を含む)の少なくとも1種の開始剤と、(e)存在する場合は、光重合性組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%(両端の値を含む)の量の、任意の阻害剤とを更に含む。
【実施例0240】
本開示の目的及び利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例に記載の特定の材料及びそれらの量並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものと解釈してはならない。
【表1】
【0241】
モノマーのHLB値の測定
HLBは、Griffinの方法(Griffin W C:「Calculation of HLB values of Non-ionic surfactants」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 5(1954):259を参照されたい)。この計算は、Norgwyn Montgomery Software,Inc.(North Wales,Pa.)のMolecular Modeling Pro Plusソフトウェアプログラムを利用して実行した。
【表2】
【0242】
実施例1:プレポリマー溶液の調製
99.95部のフリーラジカルモノマー(IBuMA/EHMA/PEMA=1:1:1)を0.05部のフリーラジカル開始剤(Irgacure TPO)と混合することによって、シロップ(S1)を作製するためのプレ重合を実施した。混合物を、電磁撹拌器を用いて連続的に撹拌し、溶液に窒素を少なくとも5分間バブリングすることによって脱気した。次いで、混合物をブラックライトから約3分間、放射線に曝露した。反応物を約10~15%のアクリレート変換に移動させた。
【0243】
実施例2:ペンダント光開始剤を用いたオリゴマー溶液の調製
【化5】
PIEAの調製は、上記の化学反応に従ってIrgacure 2959及び2-イソシアナトエチルアクリレート(isocyanatoethylacrylate、IEA)の生成物として生成
した。Irgacure 2959(50.29g、224.3mmol)をアセトン(150mL、GFS Chemicals Inc.,Powell,OH,USA)に溶解した。ジ-n-ブチルスズジラウレート(0.5g、0.8mmol、Alfa Aesar,Tewksbury,MA,01876,USA)及びBHT(0.2g、0.9mmol)を添加し、続いて、2-イソシアナトエチルアクリレート(IEA、3015g、213.6mmol、Show Denko America Inc.,New York,NY,USA)を連続撹拌しながら20分間かけて増加的添加した。サンプルを採取し、IRスペクトルを記録した。2時間の反応時間後、NCO帯域(約2200~2500cm-1)は消失し、このことは、反応が完了したことを示す。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、続いて真空下で更に乾燥させて、濁った粘稠な液体を得た。反応収率は、99.7%であった。
【0244】
【化6】
光開始剤担持ポリマー(PP1)を、上記化学反応に従って調製した。
【0245】
イソブチルメタクリレート(10g、70.32mmol、TCI America、Portland,OR,USA)、2-エチルヘキシルメタクリレート(PEMA)(10.47g、50.77mmol、Sartomer Americas,Exton,PA,USA)、2-エチルヘキシルメタクリレート(10.65g、53.71mmol、TCI America)、及びPIEA(10.56g、28.9mmol、2-イソシアナトエチルアクリレートとIrgacure-2959との付加物)を、イソプロピルアルコール(75mL、GFS Chemicals Inc.,Powell,OH,USA)に、撹拌棒、凝縮器、熱電対、及び溶液中へのN2発泡の流れを備えた250mL三口フラスコに溶解した。2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)((AIBN)、0.25g、1.5mmol、Sigma Aldrich,St Louis,MO,USA)を添加した。溶液を通してN2を15分間バブリングした後、熱を65℃に上昇させ、一晩撹拌した。翌日、熱をオフにし、溶液を室温まで冷却させた。溶媒を生成物からデカントして湿った製品を得、次いで真空下で乾燥させて、粘着性の半固体を得た。
【0246】
実施例3:ナノ充填されたExothane 10の調製
400.0グラムのNALCO 2327(NALCO,Naperville,IL)、20nmのシリカ水性ナノ分散液を32オンス透明ガラスジャーに入れた。混合物を、テフロン(登録商標)コーティングされた撹拌棒を備えた撹拌プレート上で撹拌した。
450.0グラムの1-メトキシ-2-プロパノール(Dow,Midland,MI)を、ジャーにゆっくりと添加した。この後、11.00グラムの3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Gelest,Morrisville,PA)及び8.39グラムの3-シアノプロピルトリメトキシシラン(Gelest,Morrisville,PA)をジャーに添加した。次いで、ジャー内のナノ分散液を更に20分間混合した。撹拌棒をジャーから取り出し、次いでジャーを80℃の溶媒定格オーブンに24時間移した。次いで、ナノ分散液をオーブンから取り出し、室温まで放冷した。次いで、ナノ分散液を2リットルの単一口フラスコ丸底フラスコに移した。330グラムの量の1-メトキシ-2-プロパノールをフラスコに添加した。フラスコを密封し、ナノ分散液を激しく撹拌して均質な混合物を形成した。次いで、フラスコをROTOVAPに取り付け、溶媒交換を行って水を除去し、1-メトキシ-2-プロパノール中の約41重量%固形分の溶媒系ナノ分散液を作製した。表面処理されたナノシリカ溶液36.5gの量を、30gのExothane 10と混合した。混合物を、50℃のROTOVAP中、連続真空下で2時間加熱して、溶媒を除去した。最終的なナノ充填されたExothane 10混合物(NP1)は、33.33重量%のシリカナノ粒子を有した。
【0247】
実施例4:調合樹脂の調製
完全な混合を確保するために、成分を、一晩、回転混合することによって、以下の表2A~2Dに列挙した調合に従って樹脂を調製した。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0248】
実施例5:樹脂の粘度
40℃にて0.1[1/s]の剪断速度で40mmコーンプレート測定システムを使用するTA Instruments AR-G2磁気ベアリングレオメーターを用いて、実施例の樹脂の絶対的(例えば、動的)粘度を測定した。2つの複製を測定し、平均値を以下の表3の粘度(単位:Pa・s)として報告した。
【表7】
【0249】
実施例6:キャスト樹脂調合物からのポリマーの物理的特性
表2Aに示す実施例1(E-1)調合物をガラスジャー内で混合した。E-1混合物をローリングミキサー上に置き、均質な混合物を作製した。混合物を脱気し、THINKYプラネタリーミキサー(株式会社シンキー、東京、日本)内で、真空下で2000rpmにて90秒間、スピード混合した。次いで、混合物をシリコーンドッグボーン成形型(V型成形型、ASTM D638-10)に注いだ。弾性率測定のために、矩形片の寸法(12mm×63.5mm×1mm)をシリコーン金型に注型した。充填した成形型を2枚のガラス板の間に置き、Asiga Pico Flash後硬化装置内で15分間硬化させた。サンプルを離型し、チャンバ内で更に15分間硬化させた。ドッグボーンを100℃の真空オーブン内に一晩保持して、残留する未反応モノマーを除去した。これらのドッグボーンを、5kNの荷重セルを有するInsight MTS上で5mm/分の速度で試験した。5つの複製サンプルを試験し、平均及び標準偏差を報告する。引張強度をASTM D638-10に従って決定し、以下の表4に示す。破断点伸びは、グリップのクロスヘッド移動から決定され、サンプルは歪みゲージではなかった。弾性率に関して、弾性率矩形サンプルを、5%歪みが達成されるまで、1mm/分の速度で引張状態で引っ張った。応力-歪み曲線の初期勾配を、部分の弾性率として報告する。
【0250】
以降の実施例、E-2~E-15及びCE-1~CE-3を同じ方法で作製して(これらの実施例の調合は上記表2A~2Dに要約している)、試験した。E-16については、殺菌ランプ(GE G30T8、30W電球)の存在下で、10分間の更なるUV硬化を行った。キャストサンプルの試験結果を以下の表4に要約する。
【表8】
【0251】
実施例7:3Dプリント部の積層造形
385nm及び約23mW/cm
2のパワーのLED光源を使用して、Asiga Pico 2プリンタで、E-1、E-2、E-3、E-14及びE-15樹脂の調合物を光重合した。ASTM D638-10に従うV型の引張試験棒を製造した。使用した設定は、スライス厚=50μm、バーンイン層=1、分離速度=10mm/秒、層当たりのスライド数=1、バーンイン露光時間=20.0秒、通常露光時間=3.5秒であった。次いで、試験棒をイソプロパノール中で洗浄して未反応樹脂を除去した。次いで、試験棒を、融合ランプ下で、各側で90分間ずつ後硬化させた。ドッグボーンを80℃の真空オーブン内に一晩保持して、残留する未反応モノマーを除去した。後硬化ドッグボーンを、5kNの荷重セルを有するInsight MTS上で5mm/分の速度で試験した。5つの複製サンプルを試験し、平均及び標準偏差を報告する。サンプルの引張強度をASTM D638-10に従って決定し、以下の表5に示す。破断点伸びは、グリップのクロスヘッド移動から決定され、サンプルは歪みゲージではなかった。
【表9】
【0252】
実施例8:プリント後の残留モノマーの量の定量化
E-3正方形(20mm×20mm×1mm)を、実施例7に記載の方法を用いてプリントした。プリントサンプル(プリントしたもの)をKIMWIPEで拭き取って、過剰な残留モノマーを除去した。部分を、融合ランプ下で、各側で90分間ずつ後硬化させた(後硬化したもの)。次いで、後硬化したサンプルを、真空下、120℃のオーブン内で4時間焼成して、残留する未反応モノマー(焼成したもの)を除去した。未反応モノマーパーセントを重量測定的に定量した。各ステージでの3つの正方形を120℃のオーブン内で4時間加熱し、その後重量損失を%残渣として報告した。
【表10】
【0253】
実施例9:歯科矯正用透明トレイアライナーのプリンティング
385nm及び約16mW/cm2のパワーのLED光源を使用して、Asiga Pico 2HDプリンタで、E-2の調合物を光重合した。アライナーのSTLファイルをソフトウェアにロードし、支持構造を生成した。プリンタの樹脂浴を、光重合の前に35~40℃に加熱し、物品を製造することができるように粘度を低下させた。使用した設定は、スライス厚=50μm、バーンイン層=1、分離速度=10mm/秒、層当たりのスライド数=1、バーンイン露光時間=20.0秒、通常露光時間=3.5秒であった。次いで、光重合アライナーをイソプロパノール中で洗浄し、未反応樹脂を除去し、次いで各側で90分間ずつ融合ランプの下で後硬化させた。アライナーを、真空オーブン内で、60℃で-30分、80℃で1時間、続いて100℃で4時間、段階的に焼成して、未反応モノマーを除去した。光重合アライナーは、積層造形部品の精度を示すモデルに適合する。アライナーはまた、許容される強度及び可撓性を有していた。
【0254】
上記の特許及び特許出願の全てを、参照により本明細書に明示的に援用する。上述の実施形態は本発明を例示するものであり、他の構造もまた可能である。したがって、本発明は、上記に詳細に説明し、添付図面に示した実施形態に限定されるものと見なされるべきではなく、均等物を併せた以下の特許請求の範囲の正当な範囲によってのみ限定されるものである。
前記少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせを含む、請求項4又は5に記載の物品。
前記少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤が、前記少なくとも1種の単官能性反応性希釈剤の総量の20重量%~80重量%の量のフェノキシエチルメタクリレートを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の物品。