(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153862
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】医薬組成物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07K 7/16 20060101AFI20231011BHJP
A61K 38/095 20190101ALI20231011BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231011BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C07K7/16
A61K38/095
A61P25/00
A61P15/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118771
(22)【出願日】2023-07-21
(62)【分割の表示】P 2020506873の分割
【原出願日】2018-08-10
(31)【優先権主張番号】17186048.9
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】500297535
【氏名又は名称】フェリング ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】チャベス,エリザベス セラーノ
(72)【発明者】
【氏名】シェーグレン,ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ボル,ジェット
(72)【発明者】
【氏名】リース,ヘイリー
(72)【発明者】
【氏名】ラウリー,ジョナサン ジェームズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カルベトシンの結晶形態、および十分な純度の大量のカルベトシンを生成できるように、製造プロセスから凍結乾燥を除去するためのカルベトシンを単離する改善された方法を提供する。
【解決手段】溶媒和結晶形態Iおよび脱溶媒和結晶形態IIから選択される結晶形態のカルベトシンを提供する。前記結晶形態にあるカルベトシンを製造する方法であって、結晶形態にあるカルベトシンがカルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物から結晶化され、1種または複数の液体がエチレングリコールとアセトニトリルを1:99~50:50(v/v)の比で含む、前記方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態のカルベトシン。
【請求項2】
溶媒和結晶形態のカルベトシン。
【請求項3】
脱溶媒和結晶形態のカルベトシン。
【請求項4】
約4.83、7.43、9.20、17.87、19.60、20.43および21.
34度の2θ(Cu-K)におけるX線粉末回折ピークによって特徴づけられる、請求項
1または請求項2に記載のカルベトシン。
【請求項5】
図1に例示されているX線粉末回折パターンによって実質的に特徴づけられる、請求項
1、2または4のいずれか一項に記載のカルベトシン。
【請求項6】
約4.11、4.39、5.60、7.45、17.75、19.16および19.4
5度の2θ(Cu-K)におけるX線粉末回折ピークによって特徴づけられる、請求項1
または請求項3に記載のカルベトシン。
【請求項7】
図2に例示されているX線粉末回折パターンによって実質的に特徴づけられる、請求項
1、3および6のいずれか一項に記載のカルベトシン。
【請求項8】
約4.34、6.43、8.66、17.37、19.03、および19.39度の2
θ(Cu-Kα1)におけるX線粉末回折ピークによって特徴づけられる、請求項1、2
または3のいずれか一項に記載のカルベトシン。
【請求項9】
結晶形態のカルベトシンを製造する方法であって、カルベトシンを結晶化させるステッ
プを含む、方法。
【請求項10】
結晶形態のカルベトシンが、カルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物か
ら結晶化され、1種または複数の液体が、任意選択で、エチレングリコール、アセトニト
リル、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、1,2-プロパンジ
オールおよびジメチルホルムアミドからなる群の1種または複数、例えばエチレングリコ
ールとアセトニトリルの混合物、例えばエタノール、エチレングリコールおよびアセトニ
トリルの混合物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
結晶形態のカルベトシンが、カルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物か
ら結晶化され、1種または複数の液体が、水および水性酢酸緩衝液の一方または両方を含
む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
結晶形態のカルベトシンが、カルベトシンおよび1種もしくは複数の液体を含む混合物
を、例えば40℃~5℃に冷却することによって、またはカルベトシンおよび1種もしく
は複数の液体を含む混合物の温度を、例えば40℃から5℃に、および5℃から40℃に
サイクルさせることによって得られる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
1種または複数の液体が、エチレングリコールおよびアセトニトリルを1:99~50
:50の比、例えば2:98~40:60の比、例えば3:97~35:65の比、例え
ば5:95~35:65の比、例えば8:92~30:70の比、例えば10:90~3
0:70の比、例えば15:85~25:75の比、例えば17.5:82.5~22.
5:77.5の比、例えば約20:80の比で含む、請求項10または請求項12に記載
の方法。
【請求項14】
貧溶媒をカルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物に加えるさらなるステ
ップを含み、貧溶媒がアセトニトリルであってもよい、請求項10、12または13のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
結晶形態のカルベトシンが、カルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物を
、カルベトシンを結晶化させるために、3~100日、例えば3~60日、例えば7~1
2日間、少なくとも15℃、例えば20℃、例えば30℃、例えば40℃の温度に維持す
ることによって得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
1種または複数の液体が、エチレングリコールとアセトニトリルの混合物を含み、貧溶
媒がアセトニトリルを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
1種または複数の液体が、エチレングリコールおよびアセトニトリルを15:85~2
5:75の比、例えば17.5:82.5~22.5:77.5の比、例えば約20:8
0の比で含み、ここでアセトニトリル貧溶媒を加えると、エチレングリコール対アセトニ
トリルの比が、1:99~30:70の比、例えば2:98~25:75の比、例えば3
:97~20:80の比、例えば5:95~20:80の比、例えば5:95~15:8
5の比、例えば7.5:92.5~12.5:87.5の比、例えば約10:90の比に
変わる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
カルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物に結晶、例えばカルベトシン結
晶をシード添加するさらなるステップを含む、請求項9から17のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項19】
結晶形態のカルベトシンを脱溶媒するさらなるステップを含み、カルベトシンを乾燥さ
せてもよい、請求項9から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
結晶形態のカルベトシンの脱溶媒が、結晶形態のカルベトシンを貧溶媒、例えばアセト
ニトリル中で洗浄することによって実施され、当該脱溶媒が、20℃以下、例えば-30
℃~20℃、例えば-20℃~20℃、例えば-10℃~20℃、例えば-5℃~15℃
、例えば0℃~10℃、例えば約5℃の温度で実施されてもよい、請求項19に記載の方
法。
【請求項21】
請求項1から8のいずれかに記載のカルベトシンまたは請求項9から20のいずれかに
記載の方法に従って作製されたカルベトシンを含む医薬組成物。
【請求項22】
医薬品として使用するための、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
神経障害または生殖障害の治療に使用するため、例えばプラーダー-ヴィリ症候群の治
療に使用するため;あるいは例えば乳児の経腟分娩、帝王切開による乳児の分娩後の例え
ば子宮弛緩症の治療または予防に使用するため;あるいは分娩後出血(PPH)を発症す
る危険性がある患者の子宮弛緩症の治療または予防に使用するため;および/または経腟
分娩後の過度の出血の治療または予防に使用するための、請求項22に記載の医薬組成物
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルベトシンの結晶形態、その製造方法、およびその医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カルベトシン[(別名1-デスアミノ-1-モノカルバ-2-(O-メチル)-チロシ
ン)オキシトシンまたは1-ブタン酸-2-(O-メチル-L-チロシン)-1-カルバ
オキシトシン]は、アゴニスト作用をもつオキシトシンの長時間作用型合成オリゴペプチ
ド類似体である。カルベトシンは、オキシトシンに関連する以下の置き換えを組み込んで
いる:a)水素原子によるシステインのアミノ基(位置1)の置き換え;b)チオエーテ
ル結合によるそのジスルフィド結合の置き換え;およびc)メチルオキシル基によるチロ
シンのヒドロキシル基(位置2)の置き換え。カルベトシン(PABAL(商標)、DU
RATOCIN(商標))は、現在、硬膜外または脊髄麻酔下で帝王切開によって乳児を
出産した後の子宮弛緩症の予防として承認されている。この医療適用に使用される投与量
は比較的少なく、例として100マイクログラム程度が1回に投与される。
【0003】
最近、オキシトシン受容体アゴニスト、特にカルベトシンの必要性が増加している。例
えば、オキシトシン受容体は、最近、プラーダー-ヴィリ症候群の治療に示されている(
WO2016/044131参照)。プラーダー-ヴィリ症候群は、過食症、食糧探索行
動、急速な体重増加、強迫行動および幼児における攻撃性を特徴とする遺伝的障害である
。WO2016/044131に記載されているように、カルベトシンで治療した患者は
、過食症、強迫性障害、食糧探索行動および臨床全般印象度の測定において、15日後に
プラセボ治療患者よりも統計的に有意な改善を示す。使用される投与量は子宮弛緩症の治
療に使用される投与量よりも著しく高く、例として、1日当たり数十ミリグラム程度であ
り、治療はより長期的であるので、この徴候のためには比較的大量のペプチドを製造する
必要がある。そのような徴候のために、高純度の比較的大量のカルベトシンを製造するこ
とが望ましいはずである。
【0004】
ペプチドの合成は、当技術分野でよく知られている固相合成手順を用いて実施すること
ができる。溶液相合成は代替方法であり、少量のペプチドに有用なことがある。ペプチド
生成のこのステップは、「上流プロセス」として知られており、粗製ペプチド生成物の形
成をもたらす。
【0005】
粗製ペプチドの合成の後、通常目的のペプチドを、種々のペプチドおよび非ペプチド不
純物から分離する必要がある。このステップは、精製ステップとして知られている。
【0006】
ペプチドを精製する多くの方法は、当業者に既知である。しかしながら、ペプチド精製
方法には通常、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップ、例えばサイズ排除クロマ
トグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、フ
リーフロー電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー
(HPLC)などが含まれる。最も一般的に使用されるHPLCの形式は、「逆相」HP
LC(別名RP-HPLC)であり、ペプチドは、それらの疎水性に応じて、アセトニト
リルなどの増大した量の有機溶媒で溶出する。
【0007】
精製ステップの後、ペプチドは通常、揮発性溶媒から分離しなければならない。このス
テップは、単離ステップとして知られている。ペプチドを溶媒から分離する既知の方法に
は、限外ろ過および凍結乾燥が含まれる。
【0008】
凍結乾燥(別名フリーズドライ(freeze-drying))は、通常、溶液を保
持する容器を液体窒素に浸漬することによる、ペプチド含有溶液の急速凍結のステップを
含む。その後容器を、冷却コイルを含む真空チャンバー内に置く。揮発性溶媒は、真空中
で昇華する。昇華プロセスは、精製された試料を確実に冷たいまま保つことを保証する。
凍結乾燥は、溶液からペプチドを単離するために当技術分野で最も一般的に使用されて
いる技術である。これは主に、この技術がよく知られており、再現性があり、実施しやす
いからである。さらに、ペプチドの安定性は、通常低温で増大する。
【0009】
カルベトシンおよび関連するペプチドの精製および単離の方法は、当技術分野で既知で
ある:
【0010】
CN104592362は、カルベトシンの液体クロマトグラフィー精製とそれに続く
凍結乾燥のステップについて記載している。ほとんどの場合、液体クロマトグラフィース
テップは、HPLCである。
【0011】
WO2015185584は、カルベトシン以外のオキシトシンアゴニストの精製およ
び凍結乾燥について記載している。
【0012】
CN102977192は、液体クロマトグラフィーとイオン交換クロマトグラフィー
を合わせることによってカルベトシンを精製するプロセスについて記載している。精製後
、生成物は、脱塩および凍結乾燥のステップを経る。
【0013】
CN104744567は、イオン交換クロマトグラフィーによるカルベトシンの精製
とそれに続く凍結乾燥のプロセスについて記載している。
【0014】
CN101531705は、逆相HPLCを使用してカルベトシンを精製し、続いてイ
オン交換法を使用して生成物を酢酸塩に変換するプロセスについて記載している。塩に変
換された後、生成物は続いて凍結乾燥される。
【0015】
WO2009/122285は、HPLCステップとそれに続く凍結乾燥のステップを
含むオキシトシン類似体を精製する方法について開示している。Rudko A Dら「
Crystalline Salts of Oxytocin:X-ray crys
tallographic data」J. Crystal Growth、vol.
10、no.3、1971年、260~262頁は、結晶化したオキシトシン塩の特徴づ
けについて記載している。Bryn Sら「Pharmaceutical Solid
s:A Strategic Approach to Regulatory Con
siderations」Pharmaceutical Research、vol.
12、no.7、1995年、945~954頁は、医薬用固体の特性について記載して
いる。
【0016】
上記の参考文献から、カルベトシンおよび他のオキシトシン受容体アゴニストの合成に
おける単離ステップとして凍結乾燥を使用することに対して当技術分野では強い偏見があ
ることがわかる。
【0017】
しかしながら、凍結乾燥に関連していくつかの問題があり、例えば、ペプチドの処理に
多大な時間を費やす必要があり、冷媒および機器の費用は非常に高い。
【0018】
これらの問題は、少量のペプチドを生産する場合に許容され得る。しかしながら、ペプ
チドを大量生産する場合、凍結乾燥が製造プロセスの「ボトルネック」になる。さらに、
凍結乾燥に費やされる全製造コストの割合は、生産されるペプチドの質量とともに増加す
る。
【0019】
したがって、当技術分野では、プラーダー-ヴィリ症候群の治療などの徴候の必要性を
満たすために十分な純度の大量のカルベトシンを生成できるように、凍結乾燥の「ボトル
ネック」を除去するためのカルベトシンを単離する改善された方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0020】
一態様では、本発明は、結晶形態のカルベトシンに関する。
【0021】
他の態様では、本発明は、カルベトシンを結晶化させるステップを含む、結晶形態のカ
ルベトシンを製造する方法に関する。
【0022】
他の態様では、本発明は、本発明に基づくカルベトシンを含む医薬組成物、または本発
明に従って作製されたカルベトシンに関する。
【0023】
本発明に関連する図面を以下に説明する:
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】溶媒和結晶形態IのカルベトシンのX線回折図(Cu)を示す。
【
図2】脱溶媒和結晶形態IIのカルベトシンのX線回折図(Cu)を示す。
【
図3a】実施例1から単離した固体(
図3a);および実施例4(
図3b)から単離した固体のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図3b】実施例1から単離した固体(
図3a);および実施例4(
図3b)から単離した固体のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図4a】実施例1(
図4a)からの溶媒和結晶形態Iのカルベトシンおよび実施例4(
図4b)からの脱溶媒和結晶形態IIのカルベトシンに関連するTG/DTAデータを示す。
【
図4b】実施例1(
図4a)からの溶媒和結晶形態Iのカルベトシンおよび実施例4(
図4b)からの脱溶媒和結晶形態IIのカルベトシンに関連するTG/DTAデータを示す。
【
図5】実施例5で得られた結晶カルベトシンのX線回折図(Cu-Kα1)を示す。
【
図6】実施例5から単離した固体のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図7】実施例5から単離した結晶カルベトシンに関連する示差走査熱分析(DSC)データを示す。
【
図8a】実施例5から単離した結晶カルベトシンからの重量水収着(GVS)データ:質量変化のプロット(
図8a)および等温プロット(
図8b)を示す。
【
図8b】実施例5から単離した結晶カルベトシンからの重量水収着(GVS)データ:質量変化のプロット(
図8a)および等温プロット(
図8b)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
カルベトシンは、結晶を形成することをこれまで知られていない。本出願人は、驚くべ
きことに、本明細書に記載の通り、カルベトシンの3つの結晶形態を形成することが可能
であることを見出したが、そのうちの2つは、形態Iおよび形態IIと表され得る。形態
Iは、溶媒和(例えば水和)しているが、形態IIは、脱溶媒和している。形態IIは、
安定性が高く(
図4B参照)、エチレングリコール含有量が許容できるほど低く(実施例
3参照)、例えば、医薬品として使用することができる。エチレングリコール含有量が許
容できるほど低いことは、ガスクロマトグラフィーで決定されたように、ICH限界であ
る620ppm未満のエチレングリコール含有量を表す。形態Iは、形態IIの生成にお
ける合成中間体として使用することができる。第3の結晶形態も本明細書に記載されてい
る(実施例5参照)。
【0026】
本発明によれば、第1の態様から、結晶形態のカルベトシンが提供されている。第2の
態様から、溶媒和(例えば水和)した結晶形態のカルベトシンが提供されている。第3の
態様から、脱溶媒和した結晶形態のカルベトシンが提供されている。
【0027】
溶媒和とは、結晶構造が秩序化されたまたは無秩序な溶媒分子を含むことを意味する。
無秩序とは、溶媒分子の位置またはその中の原子の位置が結晶構造内で変わり得ることを
意味する。溶媒分子は、室温および大気圧で液体またはガス状であってよい。溶媒分子は
、1種類のみの分子からなっていてもよい。あるいは、溶媒分子は、2種以上の異なる種
類の分子(そのうちの1種は水でもよい)からなっていてもよい。カルベトシン1分子当
たり少なくとも0.1以上の溶媒分子、例えばカルベトシン1分子当たり少なくとも0.
2溶媒分子、例えばカルベトシン1分子当たり少なくとも0.5溶媒分子、例えばカルベ
トシン1分子当たり少なくとも1溶媒分子、例えばカルベトシン1分子当たり少なくとも
2溶媒分子、例えばカルベトシン1分子当たり少なくとも5溶媒分子があってもよい。し
たがって、溶媒和結晶形態のカルベトシンは、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ
-、またはヘキサ-水和物の溶媒和結晶形態の形態であってもよい。好ましくは、カルベ
トシンが溶媒和結晶形態の場合、溶媒和結晶形態は、一水和物または五水和物である。し
たがって、一態様では、カルベトシンは、一水和物または五水和物結晶形態である。この
ようなカルベトシンは、秩序化されたまたは無秩序な溶媒分子を含んでいてもよい。溶媒
分子の数は、秩序化しているまたは無秩序であるかどうかに影響しないと考えられている
。
【0028】
脱溶媒和とは、結晶構造が、秩序化されたまたは無秩序な溶媒分子をほとんどまたは全
く含まないことを意味する。カルベトシン1分子当たり2溶媒分子以下、例えばカルベト
シン1分子当たり1溶媒分子以下、例えばカルベトシン1分子当たり0.5溶媒分子以下
、例えばカルベトシン1分子当たり0.2溶媒分子以下、例えばカルベトシン1分子当た
り0.1溶媒分子以下、例えばカルベトシン1分子当たり0.05溶媒分子以下、例えば
カルベトシン1分子当たり0.02溶媒分子以下、例えばカルベトシン1分子当たり0.
01溶媒分子以下であってもよい。
【0029】
結晶形態を決定するために、X線粉末回折(XRPD)分析を実施することができる。
本発明では、実施例1にさらに詳しく述べているように、XRPD分析を、PANaly
tical X’pert proでCuK放射線(α
1λ=1.54060Å;α
2=
1.54443Å;β=1.39225Å;α
1:α
2比=0.5)を使用して実施した
。結晶形態のカルベトシンおよび/または溶媒和結晶形態のカルベトシンは、約4.83
、7.43、9.20、17.87、19.60、20.43および21.34度の2θ
(Cu)におけるX線粉末回折ピークによって特徴づけることができ、かつ/または
図1
に例示されているX線粉末回折(Cu)パターンによって実質的に特徴づけることができ
、かつ/または、表1に示される(Cu)X線粉末回折ピークの5以上、6以上、7以上
、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、ま
たは実質的に全てを有することによって特徴づけることができる。したがって、一態様で
は、結晶形態のカルベトシンは、CuK放射線(α
1λ=1.54060Å;α
2=1.
54443Å;β=1.39225Å;α
1:α
2比=0.5)を使用して実施した、約
4.83、7.43、9.20、17.87、19.60、20.43、および21.3
4度の2θにおけるX線粉末回折ピークによって特徴づけられる。
【0030】
結晶形態のカルベトシンおよび/または溶媒和結晶形態のカルベトシンは、約4.11
、4.39、5.60、7.45、17.75、19.16および19.45度の2θ(
Cu)におけるX線粉末回折ピークによって特徴づけることができ、かつ/または
図2に
例示されているX線粉末回折(Cu)パターンによって実質的に特徴づけることができ、
かつ/または表2に示される(Cu)X線粉末回折ピークの5以上、6以上、7以上、8
以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、または
実質的に全てを有することによって特徴づけることができる。したがって、一態様では、
結晶形態のカルベトシンは、CuK放射線(α
1λ=1.54060Å;α
2=1.54
443Å;β=1.39225Å;α
1:α
2比=0.5)を使用して実施した、約4.
11、4.39、5.60、7.45、17.75、19.16および19.454度2
θにおけるX線粉末回折ピークによって特徴づけられる。
【0031】
結晶形態のカルベトシンは、約4.34、6.43、8.66、17.37、19.0
3、および19.39度の2θ(Cu-Kα
1)におけるX線粉末回折ピークによって特
徴づけることができ、かつ/または
図5に例示されているX線粉末回折(Cu-Kα
1)
パターンによって実質的に特徴づけることができ、かつ/または表2に示される(Cu)
X線粉末回折ピークの5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、
12以上、13以上、14以上、15以上、または実質的に全てを有することによって特
徴づけることができる。したがって、一態様では、結晶形態のカルベトシンは、Cu K
α
1放射線(α
1λ=1.54060Å)を使用して実施した、約4.34、6.43、
8.66、17.37、19.03、および19.39度の2θにおけるX線粉末回折ピ
ークによって特徴づけられる。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
表3は、実施例5から得られたデータを示す。表3に報告されている値の放射線源は、
Cu-Kα
1源であるが、表1および2に報告されている値の放射線源は、Cu-K源で
あることに留意されたい。上記XPRDピーク表、表3(
図5、実施例5)は、それにも
かかわらず、実施例1および2(
図1、表1)ならびに実施例3および4(
図2、表2)
と比較した場合、異なる結晶形態または多形のカルベトシンを示す。
【0036】
他の態様における本発明によれば、結晶形態のカルベトシンを製造する方法を提供して
おり、この方法は、カルベトシンを結晶化させるステップを含む。
【0037】
結晶化とは、溶媒に溶解させたカルベトシンからカルベトシンの結晶形態を形成するプ
ロセスを意味する。結晶形態とは、規則正しく繰り返される原子の内部配列と外部平面を
もつ固体材料を意味する。結晶形態は、X線粉末回折分析に基づいて非晶形から区別する
ことができる。結晶形態は、本明細書に記載の通りX線粉末回折ピークによって特徴づけ
られる。非晶質固体形態では、XPRDパターンは、外観が本質的に連続しており、すな
わち明確なピークがない。
【0038】
結晶形態のカルベトシンは、カルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物か
ら結晶化させることができ、1種または複数の液体は、水、水性酢酸緩衝液、エチレング
リコール、アセトニトリル、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール
、1,2-プロパンジオールおよびジメチルホルムアミドからなる群からの1種または複
数の液体、例えばエチレングリコールとアセトニトリルの混合物、例えばエタノール、エ
チレングリコールおよびアセトニトリルの混合物、例えばプロパノール、エチレングリコ
ールおよびアセトンの混合物、例えばイソプロパノール、エチレングリコールおよびアセ
トンの混合物、例えばジメチルホルムアミド、エチレングリコールおよびアセトニトリル
の混合物、例えばジメチルホルムアミドとアセトニトリルの混合物、例えばジメチルホル
ムアミドおよびアセトンの混合物、例えばエタノールとアセトニトリルの混合物、例えば
メタノールとアセトニトリルの混合物、例えば1,2-プロパンジオールとアセトニトリ
ルの混合物、例えば1,2-プロパンジオールとアセトンの混合物を含んでいてもよい。
1種または複数の液体が2種以上の液体を含む場合、2種以上の液体のうちの1種の液体
は、貧溶媒(antisolvent)であってよい(以下に定義する通り)。1種また
は複数の液体は、エチレングリコールおよび貧溶媒を15:85~25:75の比、例え
ば17.5:82.5~22.5:77.5の比、例えば約20:80の比で、含んでい
てもよく、ここで貧溶媒を加えると、エチレングリコール対アセトニトリルの比が、1:
99~30:70の比、例えば2:98~25:75の比、例えば3:97~20:80
の比、例えば5:95~20:80の比、例えば5:95~15:85の比、例えば7.
5:92.5~12.5:87.5の比、例えば約10:90の比、例えば5:95~1
0:90の比、例えば5:95~7.5:92.5の比、例えば約6.7:93.3の比
に変わる。
【0039】
1種または複数の液体は、エチレングリコールとアセトニトリルの混合物を含んでいて
もよい。
【0040】
1種または複数の液体は、エチレングリコールおよびアセトニトリルを1:99~50
:50の比、例えば2:98~40:60の比、例えば3:97~35:65の比、例え
ば5:95~35:65の比、例えば8:92~30:70の比、例えば10:90~3
0:70の比、例えば15:85~25:75の比、例えば17.5:82.5~22.
5:77.5の比、例えば約20:80の比で含んでいてもよい。
【0041】
1種または複数の液体は、水を含んでいてもよい。1種または複数の液体は、水性酢酸
緩衝液を含んでいてもよい。特定の態様では、結晶形態のカルベトシンは、カルベトシン
および1種または複数の液体を含む混合物から結晶化され、1種または複数の液体は、水
および水性酢酸緩衝液の一方または両方を含む。
【0042】
一実施形態では、1種または複数の液体は、水であってもよい。1種または複数の液体
が水の場合、水は、pHが約2~6、好ましくはpHが約3~4、より好ましくはpHが
約3.5であってもよい。
【0043】
一実施形態では、1種または複数の液体は、水性酢酸緩衝液であってもよい。水性酢酸
緩衝液は、酢酸と酢酸塩の水性混合物から形成することができる。酢酸塩は、適当な対イ
オンを有する酢酸塩であってもよい。適当な対イオンは、例として、アルカリ金属イオン
、アルカリ土類金属イオンまたは有機陽イオンであってもよい。対イオンは、リチウム、
ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはアンモニウムであってもよい。
好ましくは、対イオンは、ナトリウムまたはカリウムであってもよく、最も好ましくは、
対イオンはナトリウムであってもよい。好ましくは、水性酢酸緩衝液は、pHが約4~7
、好ましくはpHが約5~6、最も好ましくはpHが約5.5である。好ましくは、水性
酢酸緩衝液は、濃度が20~30mMであり、最も好ましくは濃度が約25mMである。
【0044】
結晶形態のカルベトシンは、カルベトシンおよび1種もしくは複数の液体を含む混合物
を、例えば40℃から5℃に冷却することによって、またはカルベトシンおよび1種もし
くは複数の液体を含む混合物の温度を、例えば40℃と5℃の間でサイクルさせることに
よって得ることができる。温度は、1時間当たり35℃など、1時間当たり5℃~50℃
の速度で変化させることができる。混合物の温度をサイクルさせることは、温度を続いて
下げ、次いで上げ、または逆にしなければならないことを表す。2回以上、例えば3回以
上、例えば4回以上、例えば5回以上、例えば10回以上、温度を下げ、次いで上げ、ま
たは逆にすることもよい。カルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物の冷却
または温度のサイクルに続いて、結晶カルベトシンを形成するのに適当な長さの時間、温
度を5℃などに維持することができる。通常、結晶カルベトシンは、6時間~24時間以
内、例えば約12時間または約18時間に形成および単離され得る。温度の冷却、サイク
ルまたは維持は、混合物の撹拌の有無にかかわらず起こり得る。
【0045】
あるいは、結晶形態のカルベトシンは、意外なことに、カルベトシンと水を含む混合物
またはカルベトシンと水性酢酸緩衝液を含む混合物を、結晶カルベトシンを形成するのに
適当な長さの時間、少なくとも15℃、例えば20℃、例えば30℃、例えば40℃の温
度に維持することによって得られ得る。通常、結晶カルベトシンは、3~100日、より
一般的には3~60日、最も一般的には7~12日で形成する。一代替実施形態では、結
晶形態のカルベトシンは、カルベトシンと水を含む混合物、またはカルベトシンと水性酢
酸緩衝液を含む混合物を、20℃の温度で約3~60日間維持することによって得ること
ができる。別の代替実施形態では、結晶形態のカルベトシンは、カルベトシンと水を含む
混合物、またはカルベトシンと水性酢酸緩衝液を含む混合物を、40℃の温度で約7~1
2日間維持することによって得ることができる。これらの代替実施形態では、後述の他の
全てのステップは、貧溶媒の添加に関連するステップを除いて、行なうことができる。
【0046】
カルベトシンは、少なくとも1種の溶媒および少なくとも1種の貧溶媒を含有する混合
物から結晶化させることができる。溶媒とは、カルベトシンが容易に溶解、または容易に
可溶する液体を表す。溶媒は、カルベトシンが、0.01mg/ml以上、例えば0.0
5mg/ml以上、例えば0.1mg/ml以上、例えば0.5mg/ml以上、例えば
1mg/ml以上、例えば5mg/ml以上、例えば10mg/ml以上、例えば20m
g/ml以上の標準条件の量で可溶である任意の溶媒であってもよい。貧溶媒とは、溶媒
に比べてカルベトシンが溶解しにくい、または溶媒と比較してカルベトシンがより可溶で
はない液体を表す。貧溶媒は、溶媒と比較して選択してもよく、カルベトシンが20mg
/ml未満、例えば10mg/ml未満、例えば5mg/ml未満、例えば1mg/ml
未満、例えば0.5mg/ml未満、例えば0.1mg/ml未満、例えば0.05mg
/ml未満、例えば0.01mg/ml未満の標準条件の量で可溶である任意の溶媒であ
ってもよい。カルベトシンが、例えば、溶媒に10mg/ml以上の量で可溶な場合、貧
溶媒にはより可溶ではないことになり、すなわち10mg/ml未満、例えば5mg/m
l未満、例えば1mg/ml未満、例えば0.5mg/ml未満、例えば0.1mg/m
l未満、例えば0.05mg/ml未満、例えば0.01mg/ml未満の量で可溶であ
ることになることが当業者には理解されたい。特に指定のない限り、溶媒および貧溶媒と
いう用語は、室温および大気圧でのカルベトシン溶解度挙動を意味する。
【0047】
溶媒は、水、水性酢酸緩衝液、エチレングリコール、エタノール、メタノール、プロパ
ノール、イソプロパノール、および1,2-プロパンジオールからなる群から1種または
複数の液体を含んでいてもよい。溶媒は、Christian Reichardt(S
olvents and Solvent Effects in Organic C
hemistry、Wiley-VCH Publishers、第3版、2003年)
によって記載されているように、相対極性指数(RPI)が、0.5超、例えば0.6超
、例えば0.7超、例えば0.8超、例えば0.9超、例えば1.0超であってもよい。
溶媒は、任意の1種または複数の水、酢酸緩衝水溶液、またはアルコール、例えば任意の
1種または複数の、水(RPI=1.000)、酢酸緩衝水溶液、エチレングリコール(
RPI=0.790)、エタノール(RPI=0.654)、メタノール(RPI=0.
762)、プロパノール(RPI=0.803)、イソプロパノール(RPI=0.78
7)、または1,2-プロパンジオール(RPI=0.72)であっても、あるいは含ん
でいてもよい。
【0048】
結晶形態のカルベトシンは、カルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物か
ら結晶化することができ、カルベトシンは、約1mg/ml~200mg/ml、好まし
くは約10mg/ml~150mg/ml、最も好ましくは約20mg/ml~100m
g/mlの濃度で溶媒中に存在している。一実施形態では、溶媒は、水であってもよい。
一実施形態では、溶媒は、水性酢酸緩衝液であってもよい。一実施形態では、溶媒は、エ
チレングリコールであってもよい。
【0049】
方法は、貧溶媒をカルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物に加えるステ
ップ、例えば混合物を冷却する前に貧溶媒を加えるさらなるステップを含んでいてもよい
。
【0050】
貧溶媒は、Christian Reichardt(Solvents and S
olvent Effects in Organic Chemistry、Wile
y-VCH Publishers、第3版、2003年)によって記載されているよう
に、相対極性指数(RPI)が、1未満、例えば0.9未満、例えば0.8未満、例えば
0.75未満、例えば0.7未満、例えば0.6未満、例えば0.5未満であってもよい
。貧溶媒は、任意の1種または複数の、エステル、ケトン、ニトリル、またはエーテル、
例えば任意の1種または複数の、アセトニトリル(RPI=0.460)、酢酸エチル(
RPI=0.228)、アセトン(RPI=0.355)、またはメチルtert-ブチ
ルエーテル(RPI=0.124)であっても、あるいは含んでいてもよい。
【0051】
したがって、方法の一実施形態では、カルベトシンは、カルベトシンおよび1種または
複数の液体を含む混合物から結晶化させることができ、1種または複数の液体は、エチレ
ングリコールおよびアセトニトリルを含む。カルベトシンは、カルベトシンおよび1種ま
たは複数の液体を含む混合物中に10mg/ml~150mg/ml、最も好ましくは約
100mg/mlの濃度で存在していてもよい。エチレングリコールおよびアセトニトリ
ルは、5:95~35:65の比で存在していてもよい。結晶形態のカルベトシンは、カ
ルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物を、毎時35℃の速度で40℃から
5℃に冷却し、結晶カルベトシンを形成するのに適当な長さの時間、例えば約12時間ま
たは約18時間、温度を5℃に維持することによって得ることができる。
【0052】
方法は、カルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物に結晶、例えばカルベ
トシン結晶、例えばカルベトシンの溶媒和結晶形態Iの結晶をシード添加するさらなるス
テップを含んでいてもよい。
【0053】
シード添加とは、均一または不均一な結晶、すなわちシード結晶を混合物に加えて結晶
形態のさらなるカルベトシンを核生成および/または成長させることを意味する。均一な
結晶とは、そのいずれかの形態の結晶カルベトシンを意味する。不均一な結晶とは、別の
材料の結晶を意味する。
【0054】
方法は、カルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物に結晶化を誘導するさ
らなるステップを含んでいてもよい。結晶化は、結晶の核生成および成長を促進するため
の任意の適当な手段によって、例えばカルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混
合物の表面を乱してシード結晶を作成することによって、例えば、カルベトシンおよび1
種または複数の液体を含む混合物の表面から液体を上下にピペッティングするか、あるい
はカルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物の表面が、混合物が保持されて
いる容器の表面に接触するところを引っ掻くことによって、誘導され得る。
【0055】
方法は、結晶形態のカルベトシンを脱溶媒する(さらに乾燥させてもよい)、さらなる
ステップを含んでいてもよい。
【0056】
脱溶媒とは、結晶構造が秩序化されたまたは無秩序な溶媒分子をほとんどまたは全く含
まないように、カルベトシンの結晶構造から一部または実質的に全ての溶媒和分子を除去
することを意味する。好ましい実施形態では、脱溶媒は、カルベトシンを五水和物結晶形
態から一水和物結晶形態に変換することを意味する。
【0057】
結晶形態のカルベトシンの脱溶媒は、結晶形態のカルベトシンを、20℃以下であって
もよく、例えば-30℃~20℃であってもよく、例えば-20℃~20℃であってもよ
く、例えば-10℃~20℃であってもよく、例えば-5℃~15℃であってもよく、例
えば0℃~10℃であってもよく、例えば約5℃であってもよい温度で、貧溶媒、例えば
アセトニトリル中で洗浄し、次いで乾燥、例えば真空乾燥することによって実施すること
ができる。乾燥は、脱溶媒を行なうのに適当な長さの時間、例えば1時間超、例えば約2
4時間、真空下で起こることがある。好ましくは、結晶形態のカルベトシンは、アセトニ
トリル中約5℃の温度で洗浄し、約20℃の温度で約24時間真空下で乾燥させて脱溶媒
を行なうことができる。
【0058】
脱溶媒はまた、結晶形態のカルベトシンを少なくとも40℃~高くても190℃の温度
まで加熱することによって、または結晶形態のカルベトシンを低い相対湿度、例えば相対
湿度40%以下の環境に曝露することによって、実施することができる。
【0059】
したがって、方法の一実施形態では、カルベトシンは、カルベトシンおよび1種または
複数の液体を含む混合物から結晶化させることができ、1種または複数の液体は、エチレ
ングリコールおよびアセトニトリルを含む。カルベトシンは、10mg/ml~150m
g/ml、最も好ましくは約100mg/mlの濃度でカルベトシンおよび1種または複
数の液体を含む混合物中に存在していてもよい。エチレングリコールおよびアセトニトリ
ルは、5:95~35:65の比で存在していてもよい。アセトニトリルなどの追加の貧
溶媒を加えてもよい。結晶形態のカルベトシンは、カルベトシンおよび1種または複数の
液体を含む混合物を、毎時35℃の速度で40℃から5℃に冷却し、結晶カルベトシンを
単離するのに適当な長さの時間、例えば約12時間または約18時間、温度を5℃に維持
することによって得られ得る。結晶形態のカルベトシンは、アセトニトリル中約5℃の温
度で洗浄し、約20℃の温度で約24時間真空下で乾燥させて脱溶媒を行なってもよい。
【0060】
結晶化の前にろ過ステップを実施してもよい。ろ過ステップは、好ましくは遠心分離に
よるろ過を含む。したがって、一態様では、結晶形態のカルベトシンを製造する方法は、
(1)ろ過、好ましくは遠心分離による;および(2)結晶化のステップを含む。
【0061】
結晶化の前に洗浄ステップを実施してもよい。例えば、カルベトシン、例えば粗製カル
ベトシンは、スラリー化、例えばアセトニトリル中でスラリー化、例えばアセトニトリル
中で2時間から1週間スラリー化、例えばアセトニトリル中で約18時間連続的に撹拌し
ながらスラリー化することができる。粗製カルベトシンを洗浄すると、結晶化前の純度が
約1~2%増加し、アッセイ値が約44%から約70%に(アセトニトリル中)著しく増
加する。したがって、一態様では、結晶形態のカルベトシンを製造する方法は、(1)カ
ルベトシン、例えば粗製カルベトシンを、アセトニトリル中で洗浄するステップ;および
(2)結晶化ステップを含む。別の態様では、結晶形態のカルベトシンを製造する方法は
、(1)カルベトシン、例えば粗製カルベトシンを、アセトニトリル中で洗浄するステッ
プ;(2)ろ過、好ましくは遠心分離による、ステップ;および(3)結晶化ステップを
含む。
【0062】
出願人は、有利かつ驚くべきことに、カルベトシンを結晶化すること、例えば溶液から
カルベトシンを結晶化することにより、凍結乾燥を必要とせずにカルベトシンを単離する
ことが可能であることを発見した。
【0063】
方法は、凍結乾燥ステップを必要としないで許容可能な収率で高純度カルベトシンをも
たらす。
【0064】
カルベトシンおよび1種または複数の液体を含む混合物中のカルベトシンは、実質的に
純粋なカルベトシンであっても、あるいは粗製カルベトシンであってもよい。
【0065】
本明細書では、「粗製カルベトシン」にあるような「粗製」という用語は、医薬品とし
て使用するには純度が不十分なカルベトシンを意味する。粗製ペプチドは、UV-HPL
Cで測定したように、純度が95%未満、例えば92.5%未満、例えば90%~93%
、例えば91%~93%であってもよい。粗製ペプチドに見られる不純物は、1種または
複数の無機物、残留溶媒(例えばDMF)、ペプチド関連不純物および残留ペプチドカッ
プリング試薬を含み得る。
【0066】
(生成物)結晶形態のカルベトシン/溶媒和(例えば水和)結晶形態のカルベトシン/
脱溶媒和結晶形態のカルベトシンは、純度が95%以上の場合がある。
【0067】
粗製カルベトシンは、当業者によく知られている方法、例えばFerring B.V
.のWO2009/122285(国際特許出願第PCT/IB2009/005351
号)に記載されているものに類似した方法によって合成することができる。
【0068】
本発明によれば、他の態様では、本発明に基づくカルベトシン、または本発明の方法に
従って作製されたカルベトシンを含む医薬組成物を提供している。本発明の医薬組成物は
、医薬品として使用するためのものであり得る。本発明の医薬組成物は、神経障害または
生殖障害の治療に使用するため、例えばプラーダー-ヴィリ症候群の治療に使用するため
(Ferring B.V.のWO2016/044131(国際特許出願第PCT/U
S2015/04911号)に記載されている);あるいは例えば乳児の経腟分娩、帝王
切開による乳児の分娩後の例えば子宮弛緩症の治療または予防に使用するため;あるいは
分娩後出血(PPH)を発症する危険性がある患者の子宮弛緩症の治療または予防に使用
するため;および/または経腟分娩後の過度の出血の治療または予防に使用するため(F
erring B.V.のWO2009/122285(国際特許出願第PCT/IB2
009/005351号)に記載されている)のものであり得る。
【0069】
本発明を以下に例示する。実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明することもある
が、決して限定的であることを意味しない。
【実施例0070】
溶媒和結晶形態Iカルベトシンの調製
ステップi:合成
Ferring B.V.のWO2009/122285(国際特許出願第PCT/I
B2009/005351号)に記載されているものと類似した合成法によって、純度約
91%の粗製カルベトシンを得た。
【0071】
ステップii:溶液の調製
ステップi)で得た粗製カルベトシン60mgを、エチレングリコール(第1液体):
アセトニトリル(第2液体)の30:70(v/v)混合物0.6mLに40℃で溶解し
た。次いで容器に形態I(溶媒和)カルベトシン結晶を入れた。シード添加は必要ないが
、結晶化を促進する可能性があることが理解されたい。
【0072】
ステップiii:結晶化
ステップii)で得た溶液を、40℃に加熱し、この温度で30分間保持した。次いで
混合物を遠心分離によってろ過して、不溶性不純物を除去した。次いで混合物を40℃で
30分間撹拌し、1時間にわたって5℃まで冷却し、次いで連続的に撹拌しながら5℃で
終夜保持した。
【0073】
沈殿した物質を単離した。
【0074】
XRPD分析をPANalytical X’pert proで実施した。試料を3
~35°2θでスキャンした。物質を穏やかに粉砕して凝集物を離し、試料を支持するた
めのKaptonまたはMylarポリマーフィルムと共にマルチウェルプレートに入れ
た。次いでマルチウェルプレートを回折計の中に配置し、40kV/40mA生成器設定
を用いた透過モード(ステップサイズ0.0130°2θ)で実行してCuK放射線(α
1λ=1.54060Å;α2=1.54443Å;β=1.39225Å;α1:α2
比=0.5)を使用して分析した。
【0075】
実質的に表1および
図1(形態I)に示されるようなX線回折図を有するカルベトシン
が、溶液から結晶化した。
【0076】
固体をTG/DTAによって分析し、質量損失/熱的事象(
図4a)を簡略化した。
【0077】
(溶媒和)結晶形態のカルベトシンの純度は、表4に概説した方法に従ってUV-HP
LC(
図3a)によって96.2%で計算した。
【0078】