(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153869
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ペプチドコンジュゲート粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20231011BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20231011BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231011BHJP
C07K 17/02 20060101ALI20231011BHJP
A61P 25/00 20060101ALN20231011BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20231011BHJP
A61P 11/00 20060101ALN20231011BHJP
A61P 37/08 20060101ALN20231011BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
A61K39/00 G ZNA
A61K39/00 Z
A61K47/59
A61K47/34
C07K17/02
A61P25/00
A61P37/02
A61P11/00
A61P37/08
A61P3/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118971
(22)【出願日】2023-07-21
(62)【分割の表示】P 2021095735の分割
【原出願日】2013-06-21
(31)【優先権主張番号】61/662,687
(32)【優先日】2012-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シー,ロニー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,スティーブン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤップ,ジョナサン ウーン テック
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ,ダニエル アール.
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー,デリック
(57)【要約】
【課題】大きなペプチドパネルを合成および結合させる必要性を排除する治療薬の必要性が存在する。
【解決手段】本発明は、ペプチドを結合させた生分解性ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)粒子を含む組成物を提供する。特に、粒子の表面にペプチド分子を結合させるためにPLG粒子が表面官能化される(例えば、免疫学的寛容の誘発において使用するため)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負のゼータ電位を有する担体粒子に結合した抗原を含む、組成物。
【請求項2】
前記粒子の前記ゼータ電位は、約-100mV~約0mVである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粒子の前記ゼータ電位は、約-50mV~約-40mVである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粒子は、約80:20~約100:0のモル比を有するコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記粒子は、ポリスチレン粒子、カルボキシル化ポリスチレン粒子、またはポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記粒子は、約0.1μm~約10μmの直径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子は、約0.3μm~約5μmの直径を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記粒子は、約0.5μm~約3μmの直径を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記粒子は、約0.5μm~約1μmの直径を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記粒子は、約0.5μmの直径を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗原は、前記担体粒子の表面に結合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原は、前記担体粒子内に封入される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗原は、自己免疫抗原、対象に移植される組織上に発現される抗原、またはアレルゲンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原は、ミエリン塩基性タンパク質、アセチルコリン受容体、内在性抗原、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、膵β細胞抗原、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、11型コラーゲン、ヒト軟骨gp39、fp130-RAPS、プロテオリピドタンパク質、フィブリラリン、低分子核小体タンパク質、甲状腺刺激因子受容体、ヒストン、糖タンパク質gp70、ピルビン酸脱水素酵素ジヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ(PCD-E2)、毛包抗原、A-グリアジン、およびヒトトロポミオシンアイソフォーム5、バヒアグラス花粉(BaGP)、モモアレルゲンPru p 3、αs-1カゼイン牛乳アレルゲン、Apig1セロリアレルゲン、Bere1ブラジルナッツアレルゲン、B-ラクトグロブリン牛乳アレルゲン、ウシ血清アルブミン、Cor a 1.04ヘーゼルナッツアレルゲン、または卵白アルブミン卵アレルゲンからなる群から選択されるタンパク質の少なくとも一部を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗原は、ミエリン塩基性タンパク質、アセチルコリン受容体、内在性抗原、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、膵β細胞抗原、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、11型コラーゲン、ヒト軟骨gp39、fp130-RAPS、プロテオリピドタンパク質、フィブリラリン、低分子核小体タンパク質、甲状腺刺激因子受容体、ヒストン、糖タンパク質gp70、ピルビン酸脱水素酵素ジヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ(PCD-E2)、毛包抗原,A-グリアジン、またはヒトトロポミオシンアイソフォーム5、バヒアグラス花粉(BaGP)、モモアレルゲンPru p 3、αs-1カゼイン牛乳アレルゲン、Apig1セロリアレルゲン、Bere1ブラジルナッツアレルゲン、B-ラクトグロブリン牛乳アレルゲン、ウシ血清アルブミン、Cor a 1.04ヘーゼルナッツアレルゲン、または卵白アルブミン卵アレルゲンを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記抗原は、コンジュゲート分子によって前記粒子に結合される、請求項1に記載の組
成物。
【請求項17】
前記コンジュゲート分子は、エチレンカルボジイミド(ECDI)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記粒子は、生分解性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記粒子は、表面官能化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記粒子は、カルボン酸で表面官能化される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
対象において抗原特異的寛容を誘導する方法であって、前記対象に抗原結合粒子を含む有効量の組成物を前記対象に投与することを含み、前記粒子は、負のゼータ電位を有する、方法。
【請求項23】
前記投与は、疾患または状態を治療または予防するために行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患または状態は、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー、移植拒絶反応、および過免疫応答からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患または状態は、多発性硬化症、1型糖尿病、喘息、食物アレルギー、環境アレルギー、セリアック病、および前記抗原に対する過剰反応を低減するために前記対象において前記抗原によって引き起こされる状態からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記粒子は、ポリスチレン粒子、カルボキシル化ポリスチレン粒子、またはポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記粒子は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子の投与は、ポリスチレン粒子の投与と比較して少ないアナフィラキシーをもたらす、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物は、静脈内投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
負のゼータ電位を有する免疫修飾粒子を調製するためのプロセスであって、
前記プロセスは、前記負のゼータ電位を有する免疫修飾粒子を形成するのに有効な条件下で免疫修飾粒子前駆体と緩衝液とを接触させることを含む、プロセス。
【請求項31】
前記免疫修飾粒子前駆体は、共重合によって形成される、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記緩衝液は、塩基性pHを有する、請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
前記緩衝液は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸二水素リチウムである、請求項30に記載のプロセス。
【請求項34】
表面官能化リポソームのコア内に封入された抗原を含む、組成物。
【請求項35】
リポソームは、30:30:40の比率のホスファチジルコリン:ホスファチジルグリセロール:コレステロールからなる、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記抗原は、自己免疫抗原、対象に移植される組織上に発現される抗原、またはアレルゲンを含む、請求項34に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の記載
本出願は、2012年6月21日出願の米国仮特許出願第61/662,687号の利益を主張するものであり、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の支援
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)から授与されたR01 EB013198の下、政府の支援を受けてなされたものである。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
炎症性疾患および障害は、異常なまたはさもなければ無秩序な炎症性応答が疾患の病因または重症度の原因となる状態である。例として、1型糖尿病およびセリアック病等の自己免疫疾患が挙げられる。
【0004】
これらの疾患の多くは、組織損傷または他の傷害の部位における単核細胞の浸潤によって特徴づけられる。これらの浸潤において観察されている単核細胞の例として、リンパ球、特にTリンパ球、ならびに単球、マクロファージ、樹状細胞、ミクログリア細胞、および他の細胞等の単核食細胞系の細胞(MPS細胞)が挙げられる。
【0005】
単核細胞浸潤物に観察される細胞の多くは、これらの異常な炎症性応答において役割を有することが疑われる。例えば、多発性硬化症等の疾患において、CD4+ T細胞が、病理学的自己免疫応答における中心的役割を果たすことが分かっている。T細胞活性化のより早い時点では、樹状細胞および他のMPS細胞が、CD4+ T細胞の活性化に寄与し得る。MPS細胞はまた、食作用を通して炎症の原因となり得るが、少なくともいくつかの炎症性疾患では、CD4+ T細胞の非存在下で、そのような細胞にそれが可能かどうかは明確ではない。
【0006】
末梢血液単球は、特定の細胞表面分子の発現の有無によって2つの群のうちの1つに分類され得る。具体的には、ヒト「常在単球」または「成熟単球」は、CD14loCD16+表現型を有すると考えられている(マウスの対照物は、CX3CR1hiCCR2-Gr1-)。別の細胞の群である「炎症性単球」または「未成熟単球」は、CD14+CD16-表現型を有すると考えられている(マウス対照物は、CX3CR1loCCR2+Gr1+)。(Geissmann F.et al.2003 Immunity 19:71-82)
【0007】
重要なのは、それらが骨髄由来の末梢血液細胞から炎症組織内に遊走することが観察されるという意味では、後者は「炎症性」であると理解されるが、これらの細胞は、直接的にまたは他の細胞の作用を通してのいずれかで炎症を引き起こすことが示されていないということである。さらに、これらの細胞が分化するときに形成され得る種々のMPS細胞も、炎症を引き起こすことは示されていない。
【0008】
望ましくない免疫応答に関連する障害における一般的な長期免疫抑制のための従来の臨床的戦略は、広く作用する免疫抑制薬、例えば、シクロスポリンA(CsA)、FK506(タクロリムス)、およびコルチコステロイド等のシグナル1阻害薬の長期投与に基づいている。これらの薬物を高用量で長期間使用すると、毒性の副作用を有する可能性がある。さらに、これらの薬物に耐容性を示し得る患者であっても、生涯にわたって免疫抑制薬療法が必要になると、腫瘍、重度の感染、腎毒性、および代謝障害を含む重篤な副作用の重大なリスクを伴う。
【0009】
抗原またはペプチドの細胞結合を含む、抗原特異的寛容を誘導する方法が開発されてきた。例えば、ある方法において、ペプチドによって誘導される細胞結合による寛容は、末梢血液細胞の収集、分離、ならびに無菌条件下での疾患特異的自己抗原およびエチレンカルボジイミド(ECDI)結合試薬を用いた処理、そして、その後のドナー/患者への再注入を伴うものであった。このプロセスは、費用が高く、当業者によって厳密に監視された条件下で行われなければならず、この手技を行うことができる施設の数が限られている。ドナー細胞型として赤血球を使用すると、同種異系ドナーを含むように潜在的な供給源が拡大され、源となる細胞の供給が劇的に増加し、輸血が認められている任意の環境へのこの治療薬の送達が潜在的に拡大される。これらの手法は、源となる細胞の供給、およびドナー細胞に対する免疫応答を最小限に抑えるための組織型一致の必要性といった点において著しい限界がある。また、EDCIを介して自己抗原を結合する細胞の局所的処理は、重大な品質管理上の問題を提示する。さらに、これらの手法は、免疫寛容が求められる病理学的抗原の少なくともある程度の知識を必要とする。
【0010】
最近、源となる細胞の供給に関する要件を排除し、従来手法の組織型要件を回避する、ペプチドを結合させた粒子が記載された。参照により、その全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO 2010/085509号を参照のこと。しかしながら、これらの手法は、依然として抗原特異的免疫寛容に依存している。
【0011】
特異的抗原/エピトープは、ヒト疾患において一般的に知られていないため、抗原特異的寛容は、一般的には理想的ではない。さらに、抗原特異的手法を有効にするために、対象ごとに抗原が異なる可能性があるため、各個々の患者がどの抗原を認識するかを判定する必要性があるか、または投与前に、可能性のあるペプチドライブラリを粒子に結合させる必要がある。これらのペプチドの合成および個々の結合は、どちらも時間がかかり、かつ高価である。したがって、これらの問題を両方とも解決し、それによって、組織が一致する細胞の源の必要性を排除し、それと同時に、大きなペプチドパネルを合成および結合させる必要性を排除する治療薬の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、抗原ペプチドに付着した担体粒子(例えば、PLG粒子)を含む(例えば、抗原特異的寛容を誘導するための)組成物を提供する。特定の実施形態において、担体粒子は、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)粒子である。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、負のゼータ電位を有する担体粒子に結合した抗原を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、粒子のゼータ電位は、約-100mV~約0mVである。いくつかの実施形態において、粒子のゼータ電位は、約-50mV~約-40mVである。いくつかの実施形態において、粒子は、約80:20~約100:0のモル比を有するコポリマーである。いくつかの実施形態において、コポリマーの比率は、限定されないが、ポリスチレン:ポリ(カルボン酸ビニル)/80:20、ポリスチレン:ポリ(カルボン酸ビニル)/90:10、ポリ(カルボン酸ビニル):ポリスチレン/80:20、ポリ(カルボン酸ビニル):ポリスチレン/90:10、ポリ乳酸:ポリグリコール酸/80:20、またはポリ乳酸:ポリグリコール酸/90:10であってもよい。さらに他の実施形態において、粒子は、ポリスチレン粒子、カルボキシル化ポリスチレン粒子、またはポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である。いくつかの実施形態において、粒子は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である。
【0014】
いくつかの実施形態において、粒子は、約0.1μm~約10μmの直径を有する。いくつかの実施形態において、粒子は、約0.3μm~約5μmの直径を有する。いくつかの実施形態において、粒子は、約0.5μm~約3μmの直径を有する。いくつかの実施形態において、粒子は、約0.5μm~約1μmの直径を有する。いくつかの実施形態において、粒子は、約0.5μmの直径を有する。
【0015】
さらなる実施形態において、抗原は、自己免疫抗原、対象に移植される組織上に発現される抗原、またはアレルゲンの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、抗原は、ミエリン塩基性タンパク質、アセチルコリン受容体、内在性抗原、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、膵β細胞抗原、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、11型コラーゲン、ヒト軟骨gp39、fp130-RAPS、プロテオリピドタンパク質、フィブリラリン、低分子核小体タンパク質、甲状腺刺激因子受容体、ヒストン、糖タンパク質gp70、ピルビン酸脱水素酵素ジヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ(PCD-E2)、毛包抗原、A-グリアジン、およびヒトトロポミオシンアイソフォーム5、バヒアグラス花粉(BaGP)、モモアレルゲンPru p 3、αs-1カゼイン牛乳アレルゲン、Apig1セロリアレルゲン、Bere1ブラジルナッツアレルゲン、B-ラクトグロブリン牛乳アレルゲン、ウシ血清アルブミン、Cor a 1.04ヘーゼルナッツアレルゲン、または卵白アルブミン卵アレルゲンの少なくとも一部を含む。
【0016】
さらなる実施形態において、抗原は、自己免疫抗原、対象に移植される組織上に発現される抗原、またはアレルゲンを含む。非限定的な実施形態において、抗原は、例えば、ミエリン塩基性タンパク質、アセチルコリン受容体、内在性抗原、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、膵β細胞抗原、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、11型コラーゲン、ヒト軟骨gp39、fp130-RAPS、プロテオリピドタンパク質、フィブリラリン、低分子核小体タンパク質、甲状腺刺激因子受容体、ヒストン、糖タンパク質gp70、ピルビン酸脱水素酵素ジヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ(PCD-E2)、毛包抗原、A-グリアジン、またはヒトトロポミオシンアイソフォーム5、バヒアグラス花粉(BaGP)、モモアレルゲンPru p 3、αs-1カゼイン牛乳アレルゲン、Apig1セロリアレルゲン、Bere1ブラジルナッツアレルゲン、B-ラクトグロブリン牛乳アレルゲン、ウシ血清アルブミン、Cor a 1.04ヘーゼルナッツアレルゲン、または卵白アルブミン卵アレルゲンを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、抗原は、コンジュゲート分子によって前記粒子に結合される。いくつかの実施形態において、抗原は、リンカーによって前記粒子に結合される。いくつかの実施形態において、コンジュゲート分子は、エチレンカルボジイミド(ECDI)である。いくつかの実施形態において、抗原は、負のゼータ電位を有する粒子の外側に結合する。いくつかの実施形態において、抗原は、負の表面ゼータ電位を有する粒子内に封入される。
【0018】
いくつかの実施形態において、粒子は、生分解性である。いくつかの実施形態において、粒子は、表面官能化される。いくつかの実施形態において、粒子は、カルボン酸で表面官能化される。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象において抗原特異的寛容を誘導する方法を提供し、該方法は、前記対象に抗原結合粒子を含む有効量の組成物を前記対象に投与することを含み、前記粒子は、負のゼータ電位を有し、前記粒子および抗原は、前記対象において前記抗原の寛容を誘導する。いくつかの実施形態において、投与は、疾患または状態を治療または予防するために行われる。いくつかの実施形態において、投与は、前記抗原によって引き起こされる疾患または状態の発症の前または後に行われる。いくつかの実施形態において、疾患または状態は、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー、移植拒絶反応、および過免疫応答からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、疾患または状態は、多発性硬化症、1型糖尿病、喘息、食物アレルギー、環境アレルギー、セリアック病、および前記抗原に対する過剰反応を低減するために前記対象において前記抗原によって引き起こされる状態からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、方法は、前記対象への前記組成物の前記投与を繰り返すことをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、組成物は、静脈内投与される。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明は、負のゼータ電位を有する免疫修飾粒子を調製するためのプロセスをさらに提供し、前記プロセスは、負のゼータ電位を有する免疫修飾粒子を形成するのに有効な条件下で免疫修飾粒子前駆体と緩衝液とを接触させることを含む。いくつかの実施形態において、免疫修飾粒子前駆体は、共重合によって形成される。いくつかの実施形態において、緩衝液は、塩基性pHを有する。いくつかの実施形態において、緩衝液は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸二水素リチウムである。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明は、表面官能化リポソームのコア内に封入された抗原を含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、リポソームは、30:30:40の比率のホスファチジルコリン:ホスファチジルグリセロール:コレステロールからなる。さらなる実施形態において、前記抗原は、自己免疫抗原、対象に移植される組織上に発現される抗原、またはアレルゲンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(A)ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)粒子の顕微鏡写真を示す。BおよびCは、表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の動的光散乱分析による特徴を示す。Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Westborough,MA)上で、18.2MΩの水中、1秒当たり2.5×105カウントの計数率で表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を分析した。表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の集団は、バッチ当たり5~15%の変動が見られたものの、概して、Z-平均粒径567nm、ピーク直径670nm、および多分散指数0.209を有していた。
【
図2】PLGナノ粒子が抗原特異的寛容を誘導することを示す。免疫優性プロテオリピドタンパク質PLP139~151エピトープ(PLG-PLP139~151)を用いて、再発性実験的自己免疫性脳炎(R-EAE)の予防のために寛容を誘導した。免疫時(0日目)に対して-7日目に、PLP139~151-PLGA(N=5)、OVA323~339-PLGA(N=5)、または非コンジュゲートPLGA(N=5)のいずれかでマウスを処理した。ピーク疾患は、典型的には12~14日目辺りに観察され、マウスの臨床疾患をスコア化した。ペプチドを含まない粒子、または対照ペプチドOVA323~339で修飾した粒子は、疾患の誘導を防止しなかった。しかしながら、PLP139~151で修飾したPLGA粒子は、20~30日目に1未満の低い臨床スコアを呈した以外は、全て臨床スコア0(疾患が認められない)を示した。
【
図3A】投与された粒子の種類が、マウスモデルにおけるEAEの発症に影響を及ぼすことを示す。A)は、EAE動物の平均臨床スコアを示し、B)は、平均累積スコアを示す。免疫時(0日目)に対して-7日目に、OVA323~339-PLS(N=5)、OVA323~339-PLGAPHOSPOREX(N=5)、OVA323~339-PLGAPEMA(N=5)、PLP139~151-PLA(N=5)、PLP139~151-PLGAPHOSPOREX(N=5)、またはPLP139~151-PLGPEMA(N=5)のいずれかでマウスを処理した。ピーク疾患は、典型的には12~14日目辺りに観察され、マウスの臨床疾患をスコア化した。対照ペプチドOVA323~339で修飾したいずれの組成物の粒子も、疾患の誘導を防止しなかった。しかしながら、PLP139~151を結合させたPLGビーズは、PLP139~151を結合させた市販の(Phosphorex)PLGまたはポリスチレンよりも、R-EAEの誘導を下方制御する上でより効果的であった。
【
図4】28日目に可溶性OVAで処理したマウスは、OVA-PLG粒子で処理した動物と比較して体温の低下を呈したことを示す。粒子送達の1時間以内には体温低下は観察されなかった。
【
図5】寛解中のPLP-PLGの投与は、いずれのアナフィラキシー関連死も引き起こさないことを示す。CFA中のPLP139~151の皮下注射により6~8週齢のメスSJL/JマウスにEAEを誘導し、臨床疾患の発症を監視および記録した(B)。疾患誘導から21日目に、可溶性PLP139~151(白抜き四角)、可溶性OVA323~339(白抜き丸)、またはPLGナノ粒子に結合した同じペプチド(塗りつぶし)をマウスに静脈内注射した。注射後1時間、10分ごとに動物の体温を監視および記録した(A)。
【
図6】疾患誘導の7日前に静脈内投与されたPLP139~151-PLGの最適用量を示す。臨床疾患の発症をOVA323~339-PLGで処理したSJL/Jマウスと比較して測定した(A)。6~8週齢のメスSJL/Jマウスに、PLP139~151(四角)またはOVA323~339(丸)のいずれかを結合させたPLGナノ粒子を静脈内注射した。7日後(B)、25日後(C)、または50日後(D)に、CFA中のPLP139~151の皮下注射によりEAEを誘導した。パネルBの動物を臨床疾患について100日間追跡した。疾患誘導から8日目に、パネルBに示すマウスのサブセットにおいて遅延型過敏反応(DTH)を行った(E)。パネルBのPLP139~151/CFA予備刺激群から選択された代表の動物(OVA323~339-PLGおよびPLP139~151-PLG)の耳を、予備刺激用のPLP139~151エピトープおよびOVA323~339対照ペプチドに曝露した。24時間後にDTHの尺度として耳の腫脹を判定し、曝露前の応答を差し引いた。6~8週齢のメスSJL/Jマウスに、PLP178~191(三角)、OVA323~339(丸)、もしくはPLP139~151(四角)を結合させたPLGナノ粒子、または未結合粒子のみ(縁取りのある丸)を静脈内注射した(F)。7日後、CFA中のPLP178~191の皮下注射によりEAEを誘導し、示される時点で疾患を監視した。
【
図7】A~Dは、PLG-PLP139~151粒子が静脈内または腹腔内のいずれかで投与された場合に、予防的寛容が最も効率的であることを示す。静脈内投与したPLP139~151-PLGで処理した動物は、疾患を発症せず、ほとんどの時点で平均臨床スコア0を有していた。
【
図8】A~Fは、OVA323~339-PLG粒子の投与が、処理した動物においてTh1およびTh17応答を阻害したことを示す。
【
図9】A~Cは、OVA323~339-PLGで処理した動物の組織よりも天然組織に類似するPLP139~151-PLGで処理した動物の脊髄内の免疫細胞浸潤の低下を示す。OVA323~339-PLGで処理した動物は、CD45、CD4、およびCD11bに陽性染色を示したのに対し、PLP139~151-PLGで処理した動物は、これらの因子に最小限の染色を示した。
【
図10】A~Cは、PLP139~151-PLG粒子の投与が、処理マウスの血液脳関門(BBB)の破壊および脊髄中のマクロファージ活性化を阻害することを示す。フロイント完全アジュバント(CFA)、OVA323~339PLG粒子、またはPLP139~151-PLG粒子のいずれかで動物を処理した。臨床スコアおよびEAEの発生率を決定し(B)、生体内撮像により脊髄を観察した(AおよびC)。
【
図11A】生体内撮像による処理マウスの脊髄を示す。
【
図11B】生体内撮像による処理マウスの脊髄を示す。
【
図11C】画像データの定量化を示すグラフである。
【
図11D】画像データの定量化を示すグラフである。
【
図11E】画像データの定量化を示すグラフである。
【
図11F】画像データの定量化を示すグラフである。
【
図12】PLP139~151が封入されたPLG粒子の投与が、マウスにおけるR-EAEの誘導を阻害することを示す。自己抗原を封入する能力は、表面結合では不可能なタンパク質またはさらには臓器ホモジネートの複合混合物の使用を可能にするため、より多くの抗原被覆を可能にし、したがって、より効果的にエピトープスプレディングに対応することができる。
【
図13】PLP139~151-PLG粒子および抗CD25抗体で処理した動物が、時折、PLP139~151-PLG粒子および対照IgG抗体で処理した動物よりも高い平均臨床スコアを示したことを示す。
【
図14】活性および養子性EAEにおいてPLP139~151-PLG粒子によって誘導された治療的寛容を示す。2.5×106 PLP139~151で活性化した芽球の養子移入により、6~8週齢のメスSJL/Jマウスに養子性EAEを誘導した。疾患誘導から2日後(A)および14日後(C)に、500nmのPLGナノ粒子に結合したPLP139~151(四角)またはOVA323~339(丸)ペプチドをマウスに腹腔内注射した。臨床疾患スコアを、抗原を結合させた脾細胞による処理後のスコアと比較した(A)。42日目に、PLP139~151またはOVA323~339寛容化マウスから、組織学的分析のために能および脊髄を採取した。パネルAのマウスの切片を、PLPタンパク質およびCD45について染色した(B)。パネル(C)のマウスの脊髄切片をLuxol Fast Blueで染色した(D)。脱髄および細胞浸潤の領域を矢印で示す。
【
図15】OVA323~339またはPLP139~151にコンジュゲートしたSPまたはPLG粒子のいずれかを用いた処理後の、活性EAEおよび養子性EAEを有するマウスの 平均臨床スコアを表すグラフを示す。疾患誘導から10日後(A)および2日後(B)に、500nmナノ粒子に結合したPLP139~151-SP、PLP139~151-PLG、またはOVA323~339-SP、またはOVA323~339-PLGペプチドをマウスに腹腔内注射し、平均臨床スコアを決定した。どちらの場合もPLP139~151-PLG粒子の投与がマウスにおいて寛容を誘導する。
【
図16】PLP-PLG寛容マウスにおいて、中枢神経系免疫細胞の浸潤も劇的に低下したことを示す。養子移入によるEAE誘導の2日後、PLP139~151(四角)またはOVA323~339(円形)と結合した500nm PLGナノ粒子をSJL/Jマウスに腹腔内注射した。疾患のピーク(14日目)に、脳および脊髄を除去し、フローサイトメトリーにより、リンパ球(B)、APC(C)、ミクログリア(D)、末梢樹状細胞(E)、骨髄樹状細胞(F)、およびマクロファージ(G)の数を数えた。これらの集団のためのゲーティング戦略を(A)に示す。IL-17AおよびIFN-γの細胞内染色の前に、PMAおよびイオノマイシンでCNS細胞調製物を5時間刺激した(H)。
【
図17】PLG粒子内に封入されたPLP139~151ペプチドの投与は、PBSとともに粒子が投与された場合に寛容を誘導することを示す。しかしながら、抗PD-1抗体の投与は、この寛容を低下させる。
【
図18】PLG粒子内に封入されたPLP139~151ペプチドの投与は、PBSとともに粒子が投与された場合に寛容を誘導することを示す。抗CD40抗体の投与は、この寛容を低下させるが、この寛容の低下は、抗IL-12抗体の添加により逆転される。
【
図19】A~Gは、OVA-PLGの予防的投与は、IL-4、IL-5、IL-13、およびIL-10の分泌を減少させ、血清OVA IgEおよび肺内好酸球のレベルを減少させたことを示す。
【
図20】PLG粒子内に封入されたOVAが、縦隔リンパ節からのOVA特異的な生体外リコール応答を予防的に阻害することを示す。OVA-PLGで処理した動物において、25μgのOVAを用いた再刺激後に観察されたリンパ節増殖が減少した(A)。さらに、OVA-PLGを用いた処理は、OVAを用いた再刺激後のサイトカインの放出を減少させる。OVA-PLGで処理したマウスにおいて、IL-4、IL-5、IL-13、およびIL-10のレベルが減少した(B)。
【
図21】OVA-PLGの治療的投与は、IL-4、IL-5、IL-13、およびIL-10の分泌を減少させ、血清OVA IgEおよび肺内好酸球のレベルを減少させたことを示す。
【
図22】PLG粒子に封入されたOVAが、気管支肺胞洗浄液中のOVA特異的Th2 サイトカインを、OVAを結合させたPLG粒子よりも良好に治療的に下方制御することを示す。0日目および14日目に、10μg/マウスの用量のOVA/ミョウバンでマウスを腹腔内処理した。28日目および42日目に、PLG粒子に結合したOVAまたはPLG粒子内に封入されたOVAのいずれかをマウスに静脈内投与した。56日目~58日目に、エアロゾル化したOVAでマウスを3回処理した。グラフは、PLG粒子に結合したOVA(A)またはPLG粒子内に封入されたOVA(B)のいずれかで動物を処理した場合のサイトカイン分泌を示す。
【
図23】p31-PLG粒子による処理後の1型糖尿病動物の血糖レベルを示す。p31ペプチドを結合させたPLGの投与は、MOG35~55ペプチドを結合させた粒子を用いた投与後に見られたものと比較してより低い血糖レベルをもたらした(AおよびB)。動物において観察されたIFNγ分泌細胞の割合も、MOG35~55ペプチド-PLGで処理したマウスと比較して、p31-PLGで処理したマウスにおいて減少した(C)。
【
図24】A~Bは、p31-PLGによって誘導される寛容がTregを必要とすることを示す。養子移入によりマウスに1型糖尿病を誘導した。活性化細胞をNOD SCIDマウスに移入してから2時間後、p31-PLGまたはMOG35~55PLG粒子のいずれかでマウスを寛容化した。Tregの枯渇は、p31-PLG粒子の投与によって誘導される寛容を抑制する。
【
図25】インスリンを結合させたPLG粒子の投与が、300日にわたって糖尿病を発症しなかったマウスの割合を有意に増加させたことを示す(22.7%と比較して69.6%;p=0.0027)。NODマウスを、6、8、および10週齢で、静脈内投与によりBSA(N=22)またはインスリン(N=23)を結合させたPLG粒子のいずれかで処理した。次いで、糖尿病の発症についてマウスをアッセイした。
【
図26】レシピエントマウスに観察されたCD45.1ドナー細胞の割合を示す。-7日目に、OVA-PLGまたはDby-PLGのいずれかでメスCD45.2マウスを寛容化した。-1日目に、マウスを200ラドで照射し、次いで、0日目に、オスCD45.1マウスの1×106、5×106、または1×107骨髄細胞を移植した。次いで、1日目に、OVA-PLG、Dby-SP、またはDby-PLGのいずれかでレシピエントマウスを寛容化し、キメラ化のFACS分析のために血液を採取した。
【
図27】1日目にOVA-PLG、Dby-SP、またはDby-PLGのいずれかを用いて寛容化した後の、レシピエントマウスにおけるドナーCD45.1細胞の割合を示す。1匹の陽性対照マウスが、有意な生着を示さなかった(約10%)。全ての陰性対照マウスは、ドナー細胞を生着しなかった。1匹のDby-SPマウスが、有意な生着を示さなかった(約10%)。2匹のOVA-PLGマウスがドナー細胞を生着し(約10%)、1匹は、16週目までには完全に拒絶反応を示した。1匹のDby-PLGマウスは、12週目に拒絶反応を示し始め、16週目までには10%となった。Dby-PLG群は、16週目までに10%~56%の生着の範囲であった。OVA-PLGマウスは、1)自然の生着、2)OVA323とDbyの間の配列相同性、または3)粒子の免疫原性特性を示した。Dby-PLGは、Dby-SPおよびOVA-PLGよりも多くの生着が可能である。
【
図28】寛容が、レシピエントマウスのCD45.1細胞の割合に影響を及ぼすタイミングを示す。陽性対照は、予想された(約10%)よりも少ない生着(約4%)を示す。1匹の陰性対照マウスが、3つ全てのOVA-PLG群で5%の生着を有し、-7日目、+1日目群の1匹のマウスが生着を示した(12%)。1日目の寛容は、-7日目の寛容よりも臨床的に意義がある。
【
図29】抗原に結合しているかまたは抗原を含まないかのいずれかであるクマリン-6 PLGA粒子が、投与後3時間には検出可能であったが、投与後24時間には検出不可能で合ったことを示す。粒子は、投与後3時間には検出可能であったが、投与後24時間には検出不可能であった。DAPIで対比染色した、注射後3時間(中央の行)および注射後24時間(下の行)の、腹腔内蛍光PLGA/PEMA微粒子を注射したマウス脾臓(左の列)、肝臓(中央の列)、および肺(左の列)切片と比較した非注射ナイーブマウス(上の行)。
【
図30】PLGA粒子が、投与後6時間および15時間に肝臓内でF4/80+細胞と共局在化していたことを示す。
【
図31】静脈内注入の24時間後、辺縁帯マクロファージが、TAMRA標識PLP139~151を結合させた粒子を優先的に取り込むことを示す。PLP139~151+細胞の割合が最も高いのは辺縁帯マクロファージである。
【
図32】PLP139~151/CFAによる予備刺激の日数に対する1日平均臨床スコアを示す。コア内に可溶性PLP139~151を含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を使用した免疫学的寛容の誘導により、SJL/Jマウスにおいて PLP139~151/CFAで誘導したR-EAEが阻害された。
【
図33】封入OVA-PLGで処理したマウスが、好酸球の蓄積における大幅な減少を示したことを示す。
【
図34】封入OVA-PLGで処理したマウスが、未処理動物または対照で処理した動物と比較して、血清IgEレベルにおける大幅な減少を示したことを示す。
【
図35】コア内に可溶性PLP139~151を含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の動的光散乱分析による特徴を示す。Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Westborough,MA)上で、18.2MΩの水中、1秒当たり1.792×105カウントの計数率で表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を分析した。表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の集団は、Z-平均粒径584nm、ピーク直径679nm、および多分散指数0.162を有していた。これらの結果は、上述のプロトコルに従って合成した6つのバッチの代表値である。
【
図36】ζ電位の測定により、コア内に可溶性PLP139~151を含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の特徴を示す。Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Westborough,MA)上で、18.2MΩの水中、1秒当たり6.67×104カウントの計数率で表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を分析した。表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の集団は、-48.9mVのピークζ電位および5.14mVのζ偏差を有していた。これらの結果は、上述のプロトコルに従って合成した6つのバッチの代表値である。
【
図37】コア内に可溶性卵白アルブミンを含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の動的光散乱分析による特徴を示す。Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Westborough,MA)上で、18.2MΩの水中、1秒当たり1.822×105カウントの計数率で表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を分析した。表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の集団は、Z-平均粒径569.7nm、ピーク直径700.3nm、および多分散指数0.230を有していた。これらの結果は、上述のプロトコルに従って合成した3つのバッチの代表値である。
【
図38】ζ電位の測定により、コア内に可溶性卵白アルブミンを含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の特徴を示す。Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Westborough,MA)上で、18.2MΩの水中、1秒当たり2.67×104カウントの計数率で表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を分析した。表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の集団は、-52.2mVのピークζ電位および5.38mVのζ偏差を有していた。これらの結果は、上述のプロトコルに従って合成した3つのバッチの代表値である。
【
図39】コア内に可溶性PLP139~151ペプチドを含有する表面官能化リポソームが、多発性硬化症のマウスモデルにおいて免疫学的寛容を誘導することを実証するグラフを示す。コア内に可溶性PLP139~151ペプチドを含有する表面官能化リポソーム(丸)または可溶性OVA323~339ペプチドを含有する表面官能化リポソーム(四角)のいずれかで動物を処理した。PLP139~151ペプチドリポソームを投与されたこれらの動物の平均臨床スコアは、OVA323~339ペプチドリポソームを投与された動物のスコアよりも低かった。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者は、抗原に結合したナノ粒子が、自己免疫疾患に対する寛容を誘導し、免疫応答を低下させることが可能であることを発見した。これらの粒子は、それらが粒子の表面に結合しているか、またはその中に封入されているかにかかわらず、寛容を誘導することができる。したがって、これらの粒子は、自己免疫疾患等の過剰な炎症性免疫応答によって特徴づけられる任意の疾患または状態の治療に有用であり得る。
【0025】
本明細書において使用される「粒子」は、組織以外に由来する任意の組成物を指し、それは、球体もしくは球状の実体、ビーズ、またはリポソームであり得る。「粒子」という用語、「免疫修飾性粒子」という用語、「担体粒子」という用語、および「ビーズ」という用語は、文脈に応じて同義に使用されてもよい。さらに、「粒子」という用語は、ビーズおよび球体を包含するために使用されてもよい。
【0026】
本明細書において使用される「負電荷を帯びた粒子」は、ゼロ未満の正味表面電荷を有するように修飾された粒子を指す。
【0027】
「カルボキシル化粒子」または「カルボキシル化ビーズ」または「カルボキシル化球体」は、その表面上にカルボキシル基を含有するように修飾された任意の粒子を含む。いくつかの実施形態において、カルボキシル基の付加は、例えば、MARCO等のスカベンジャー受容体との相互作用を通して、循環からの粒子の食細胞/単球による取り込みを増強する。粒子のカルボキシル化は、限定されないが、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)(PEMA)を含む、カルボキシル基を付加する任意の化合物を用いて達成することができる。
【0028】
本明細書において使用される「抗原部分」は、任意の部分を指し、例えば、宿主の免疫系によって認識されるペプチドを指す。抗原部分の例として、限定されないが、自己抗原および/または細菌性もしくはウイルス性のタンパク質、ペプチド、または成分が挙げられる。理論に束縛されるものではないが、カルボキシル化ビーズ自体は、免疫系によって認識され得るが、そこに何も付着していないカルボキシル化ビーズは、本発明の目的のために、「抗原部分」とは見なされない。
【0029】
本明細書において使用される「裸ビーズ」または「裸粒子」または「裸球体」は、カルボキシル化されていないビーズ、粒子、または球体を指す。
【0030】
本明細書において使用される「炎症促進性メディエーター」または「炎症促進性ポリペプチド」は、対象における炎症を含むか、維持するか、または長引かせるポリペプチドまたはその断片を指す。炎症促進性メディエーターの例として、限定されないが、サイトカインおよびケモカインが挙げられる。
【0031】
粒子は、任意の粒子形状または立体構造を有し得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、生体内で凝集する可能性がより低い粒子を使用することが好ましい。これらの実施形態内の粒子の例は、球体形状を有するものである。
【0032】
本発明の別の態様は、負のゼータ電位を有し、抗原部分を含まない免疫修飾粒子を含む組成物に関する。さらなる実施形態において、本発明は、抗原に結合した負のゼータ電位を有する免疫修飾粒子を含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、抗原は、粒子の外側に結合する。さらなる実施形態において、抗原は、粒子内に封入される。
【0033】
本発明の別の態様は、負のゼータ電位を有し、抗原部分を含まない免疫修飾粒子を調製するためのプロセスに関する。プロセスは、負のゼータ電位を有する免疫修飾粒子を形成するのに有効な条件下で免疫修飾粒子前駆体と緩衝液とを接触させることを含む。本発明のいくつかの実施形態において、免疫修飾粒子前駆体は、共重合を介して形成される。粒子の微細構造は、共重合の方法に依存し得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、抗原ペプチド分子は、コンジュゲート分子および/またはリンカー基によって担体粒子(例えば、免疫修飾粒子)に結合される。いくつかの実施形態において、抗原ペプチドおよび/またはアポトーシスシグナル伝達分子を担体(例えば、PLG粒子)に結合することは、1つ以上の共有結合的および/または非共有結合的な相互作用を含む。いくつかの実施形態において、抗原ペプチドは、負のゼータ電位を有する担体粒子の表面に付着する。いくつかの実施形態において、抗原ペプチドは、負のゼータ電位を有する担体粒子内に封入される。
【0035】
一実施形態において、免疫修飾粒子と接触する緩衝液は、塩基性pHを有し得る。塩基性溶液に好適な塩基性pHは、7.1、7.5、8.0、8.5、9.5、10.0 10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、および13.5を含む。緩衝液はまた、任意の好適な塩基およびそのコンジュゲートで作製されてもよい。本発明のいくつかの実施形態において、緩衝液は、限定されないが、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸二水素リチウム、およびそのコンジュゲートを含んでもよい。
【0036】
本発明の一実施形態において、免疫修飾粒子は、コポリマーを含有する。これらのコポリマーは、様々なモル比を有し得る。本発明の免疫修飾粒子の好適なコポリマーの比率は、80:20、81:19、82:18、83:17、84:16、85:15、86:14、87:13、88:12、89:11、90:10、91;:9、92:8、93:7、94:6、95:5、96:4、97:3、98:2、99:1、または100:0であり得る。別の実施形態において、コポリマーは、周期的、統計的、直線状、分岐状(星形、ブラシ型、または櫛形コポリマーを含む)コポリマーであってもよい。いくつかの実施形態において、コポリマーの比率は、限定されないが、ポリスチレン:ポリ(カルボン酸ビニル)/80:20、ポリスチレン:ポリ(カルボン酸ビニル)/90:10、ポリ(カルボン酸ビニル):ポリスチレン/80:20、ポリ(カルボン酸ビニル):ポリスチレン/90:10、ポリ乳酸:ポリグリコール酸/80:20、またはポリ乳酸:ポリグリコール酸/90:10であってもよい。
【0037】
一実施形態において、粒子は、リポソームである。さらなる実施形態において、粒子は、以下のモル比で以下の脂質からなるリポソームである-30:30:40 ホスファチジルコリン:ホスファチジルグリセロール:コレステロール。さらなる実施形態において、粒子は、リポソーム内に封入される。
【0038】
各粒子は、均一なサイズである必要はないが、粒子は、一般的に、抗原提示細胞または他のMPS細胞において食作用を引き起こすのに十分なサイズでなければならない。好ましくは、粒子は、溶解性を高め、生体内での凝集によって引き起こされる可能性のある合併症を回避し、飲作用を促進するために、顕微鏡レベルまたはナノスケールのサイズである。粒径は、間質腔からリンパ球成熟の領域への取り込みの要因であり得る。約0.1μm~約10μmの直径を有する粒子は、食作用を引き起こすことができる。したがって、一実施形態において、粒子は、これらの限度内の直径を有する。別の実施形態において、粒子は、約0.3μm~約5μmの直径を有する。さらに別の実施形態において、粒子は、約0.5μm~約3μmの直径を有する。さらなる実施形態において、粒子は、約0.1μm、または約0.2μm、または約0.3μm、または約0.4μm、または約0.5μm、または約1.0μm、または約1.5μm、または約2.0μm、または約2.5μm、または約3.0μm、または約3.5μm、または約4.0μm、または約4.5μm、または約5.0μmのサイズを有する。特定の実施形態において、粒子は、約0.5μmのサイズを有する。いくつかの実施形態において、粒子の全重量は、約10,000kDa未満、約5,000kDa未満、または約1,000kDa未満、500kDa、400kDa、300kDa、200kDa、100kDa、50kDa、20kDa、10kDaである。組成物中の粒子は、均一な直径である必要はない。例として、薬学的製剤は、複数の粒子を含有してもよく、それらのうちのあるものは約0.5μmであり、あるものは約1.0μmである。これらの所与の範囲内の粒径のいずれの混合物も有用であろう。
【0039】
本発明の粒子は、特定のゼータ電位を有することができる。特定の実施形態において、ゼータ電位は負である。一実施形態において、ゼータ電位は、約-100mV未満である。一実施形態において、ゼータ電位は、約-50mV未満である。特定の実施形態において、粒子は、-100mV~0mVのゼータ電位を有する。さらなる実施形態において、粒子は、-75mV~0mVのゼータ電位を有する。さらなる実施形態において、粒子は、-60mV~0mVのゼータ電位を有する。さらなる実施形態において、粒子は、-50mV~0mVのゼータ電位を有する。さらなる実施形態において、粒子は、-40mV~0mVのゼータ電位を有する。さらなる実施形態において、粒子は、-30mV~0mVのゼータ電位を有する。さらなる実施形態において、粒子は、-20mV~+0mVのゼータ電位を有する。さらなる実施形態において、粒子は、-10mV~-0mVのゼータ電位を有する。特定の実施形態において、粒子は、-50mV~-40mVのゼータ電位を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、担体の電荷(例えば、正、負、中性)は、用途に固有の利益(例えば、生理的適合性、有益な表面-ペプチドの相互作用等)を付与するように選択される。いくつかの実施形態において、担体は、正味の中性電荷または負電荷を有する(例えば、概して正味の負電荷を帯びた細胞表面への非特異的結合を低減するため)。特定の実施形態において、担体は、寛容が所望される抗原(本明細書において、抗原特異的ペプチド、抗原ペプチド、自己抗原、誘導性抗原、または寛容化抗原とも称される)に、直接的または間接的のいずれかでコンジュゲートすることができる。いくつかの場合、担体は、抗原特異的ペプチドの複数コピーまたは複数の異なるペプチドを表面上で曝露させるために、複数の結合部位(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10…20…50…100、またはそれ以上)を有する(例えば、寛容応答の可能性を増加させるため)。いくつかの実施形態において、担体は、一種類の抗原ペプチドを提示する。いくつかの実施形態において、担体は、表面上に複数の異なる抗原ペプチドを提示する。いくつかの実施形態において、担体表面は、選択された部分(例えば、抗原ペプチド)の共有結合的付着のために官能基を提示する。いくつかの実施形態において、担体表面の官能基は、選択された部分(例えば、抗原ペプチド)との非共有結合的相互作用のための部位を提供する。いくつかの実施形態において、担体は、コンジュゲートする部分が化学結合を形成せずに吸着され得る表面を有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、粒子は、非金属性である。これらの実施形態において、粒子は、ポリマーから形成されてもよい。好ましい実施形態において、粒子は、個体内で生分解性である。この実施形態では、個体内で粒子が蓄積することなく、複数回投与にわたって粒子を個体に提供することができる。好適な粒子の例として、ポリスチレン粒子、PLGA粒子、およびダイヤモンド粒子が挙げられる。
【0042】
好ましくは、粒子表面は、非特異的なまたは望ましくない生物学的相互作用を最小限に抑える材料からなる。粒子表面と間質との間の相互作用は、リンパの取り込みにおいて役割を果たす要因であり得る。粒子表面は、非特異的相互作用を防止するかまたは減少させるための材料でコーティングされてもよい。皮下注射後の改善されたリンパの取り込みによって証明されるように、ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびそのコポリマー、例えば、PLURONICS(ポリ(エチレングリコール)-bl-ポリ(プロピレングリコール)-bl-ポリ(エチレングリコール)のコポリマーを含む)等の親水性層を用いて粒子をコーティングすることによる立体安定化は、間質のタンパク質との非特異的相互作用を低減し得る。これらの事実の全てが、リンパの取り込みに関して、粒子の物理的特性の有意性を示している。生分解性ポリマーは、ポリマーおよび/または粒子および/または層の全てまたは一部を作製するために使用されてもよい。生分解性ポリマーは、例えば、溶液中で官能基が水と反応する結果として、分解を受け得る。本明細書において使用される「分解」という用語は、分子量の減少、または疎水性基の親水性基への変換のいずれかによって、可溶性になることを指す。エステル基を有するポリマー、例えば、ポリラクチドおよびポリグリコリドは、概して自発的加水分解に供される。
【0043】
本発明の粒子は、追加の成分を含有してもよい。例えば、担体は、担体に組み込まれたまたはコンジュゲートされた造影剤を有してもよい。現在市販されている造影剤を有する担体ナノ球体の例は、Kodak X-sightナノ球体である。量子ドット(QD)として知られる無機量子を閉じ込めた発光ナノ結晶が、FRETの適用における理想的なドナーとして浮上してきた:それらの高い量子収量および調整可能なサイズ依存性のストークスシフトにより、単一の紫外線波長で励起されたときに、青色から赤外領域まで異なるサイズが放出することが可能となる。(Bruchez,et al.,Science,1998,281,2013;Niemeyer,C.M Angew.Chem.Int.Ed.2003,42,5796;Waggoner,A.Methods Enzymol.1995,246,362;Brus,L.E.J.Chem.Phys.1993,79,5566)。デンドリマーとして知られるポリマーのクラスに基づく、ハイブリッド有機/無機量子ドット等の量子ドットは、生物学的標識、撮像、および光学的バイオセンシング系において使用することができる。(Lemon,et al.,J.Am.Chem.Soc.2000,122,12886)。従来の無機量子ドットの合成とは異なり、これらのハイブリッド量子ドットナノ粒子の合成は、高温、または高度に毒性である不安定な試薬を必要としない。(Etienne,et al.,Appl.Phys.Lett.87,181913,2005)。
【0044】
粒子は、広範囲の材料から形成することができる。粒子は、好ましくは、生物学的使用に好適な材料からなる。例えば、粒子は、ガラス、シリカ、ヒドロキシカルボン酸のポリエステル、ジカルボン酸のポリ無水物、またはヒドロキシカルボン酸およびジカルボン酸のコポリマーからなってもよい。より一般的には、担体粒子は、直鎖もしくは分岐鎖、置換もしくは非置換、飽和もしくは不飽和、直線状もしくは架橋された、アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アラルケニル、ヘテロアリール、またはアルコキシヒドロキシ酸のポリエステル、あるいは直鎖もしくは分岐、置換もしくは非置換、飽和もしくは不飽和、線状もしくは架橋された、アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アラルケニル、ヘテロアリール、またはアルコキシジカルボン酸のポリ無水物からなってもよい。さらに、担体粒子は、量子ドットであってもよいか、または量子ドットポリスチレン粒子等の量子ドットからなってもよい(Joumaa et al.(2006)Langmuir 22:1810-6)。エステルおよび無水物結合の混合物を含む担体粒子(例えば、グリコール酸およびセバシン酸のコポリマー)もまた用いられ得る。例えば、担体粒子は、ポリグリコール酸ポリマー(PGA)、ポリ乳酸ポリマー(PLA)、ポリセバシン酸ポリマー(PSA)、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸コポリマー(PLGAまたはPLG:これらの用語は同義である)、[rho]oly(乳酸-co-セバシン)酸コポリマー(PLSA)、ポリ(グリコール-co-セバシン)酸コポリマー(PGSA)等を含む材料を含んでもよい。本発明において有用な他の生体適合性、生分解性ポリマーは、カプロラクトン、カーボネート、アミド、アミノ酸、オルトエステル、アセタール、シアノアクリレート、および分解性ウレタンのポリマーまたはコポリマー、ならびに直鎖または分岐、置換または非置換の、アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アルケニル、または芳香族ヒドロキシ-もしくはジ-カルボン酸とのこれらのコポリマーを含む。さらに、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、チロシン、およびシステイン、またはそれらのエナンチオマー等の反応側鎖基を有する生物学的に重要なアミノ酸が、抗原ペプチドおよびタンパク質またはコンジュゲート部分にコンジュゲートするための反応基を提供するように、上記材料のうちのいずれかとのコポリマーに含まれてもよい。本発明に好適な生分解性材料は、ダイヤモンド、PLA、PGA、およびPLGAポリマーを含む。生体適合性であるが非生分解性である材料も、本発明の担体粒子において使用することができる。例えば、アクリレート、エチレン-酢酸ビニル、アシル置換酢酸セルロース、非分解性ウレタン、スチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルイミダゾール、クロロスルホン化オレフィン、酸化エチレン、ビニルアルコール、TEFLON(登録商標)(DuPont,Wilmington,Del.)、およびナイロンの非生分解性ポリマーが用いられてもよい。
【0045】
現在市販されている好適なビーズは、FluoSpheres(Molecular Probes、Eugene,Oreg.)等のポリスチレンビーズを含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、本発明は、(a)対象への化学薬剤および/または生物学的薬剤の送達のために構成される送達用の足場と、(b)抗原特異的寛容を誘導するために抗原を結合させたポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子とを含むシステムを提供する。いくつかの実施形態において、前記送達用の足場の少なくとも一部は微孔性である。いくつかの実施形態において、抗原を結合させたポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子は、前記足場内に封入される。いくつかの実施形態において、化学薬剤および/または生物学的薬剤は、タンパク質、ペプチド、小分子、核酸、細胞、および粒子からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、化学薬剤および/または生物学的薬剤は細胞を含み、前記細胞は膵島細胞を含む。
【0047】
物理的特性は、未成熟なリンパ球を有する領域における取り込みおよび滞留後のナノ粒子の有用性にも関連する。これらは、剛性またはゴム性等の機械的特性を含む。いくつかの実施形態は、最近、(標的または免疫ではないが)全身送達のために開発され、特徴づけされたPPS-PEG系におけるように、上層、例えば、PEGにおけるような親水性上層を有するゴム状コア、例えば、ポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)コアに基づいている。ゴム状コアは、ポリスチレンまたは金属ナノ粒子系におけるような実質的に剛性のコアとは対照的である。ゴム状という用語は、天然または合成のゴム以外の特定の弾力性のある材料を指し、ゴム状は、ポリマー技術分野の当業者には馴染みのある用語である。例えば、架橋されたPPSは、疎水性ゴム状コアを形成するために使用することができる。PPSは、酸化条件下で分解して、ポリスルホキシド、そして最終的にはポリスルホンになり、疎水性ゴムから親水性、水溶性ポリマーへと転移するポリマーである。他の硫化物ポリマーを使用のために適合させてもよく、硫化物ポリマーという用語は、ポリマーの骨格に硫黄を含むポリマーを指す。使用され得る他のゴム状ポリマーは、約37℃未満の水和条件下のガラス転移温度を有するポリエステルである。コアおよび上層は、混合する傾向がなく、上層がコアから離れて立体的に拡大する傾向があるため、疎水性コアは、親水性上層とともに有利に使用することができる。コアは、その上に層を有する粒子を指す。層は、コアの少なくとも一部分を覆う材料を指す。層は、吸着されてもよいか、または共有結合されてもよい。粒子またはコアは、中実または中空であってもよい。ゴム状疎水性コアは、ゴム状疎水性コアを有する粒子によってより多くの疎水性薬物の充填を行うことができるという点において、結晶性またはガラス状(ポリスチレンの場合のように)コア等の剛性疎水性コアよりも有利である。
【0048】
別の物理的特性は、表面の親水性である。親水性材料は、架橋されていないとき、1リットル当たり少なくとも1グラムの水溶性を有し得る。親水性ポリマーによる粒子の立体安定化は、非特異的相互作用を低減することによって間質からの取り込みを改善することができる:しかしながら、粒子のステルス性の増大が、未成熟なリンパ球を有する領域における食細胞による内部移行を減少させる可能性もある。これらの競合する特性のバランスを保つという課題は対応されてきているが、本出願は、リンパ節におけるDCおよび他のAPCへの効果的なリンパ送達のためのナノ粒子の作製を実証する。いくつかの実施形態は、親水性成分、例えば、親水性材料の層を含む。好適な親水性材料の例は、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリサッカリド、ポリアクリル酸、およびポリエーテルのうちの1つ以上である。層中のポリマーの分子量は、生体内で有用な程度の立体障害を提供するように、例えば、約1,000から約100,000またはさらにそれ以上に調節することができる:当業者は、明示的に記載される範囲内の全ての範囲および値、例えば、10,000~50,000が企図されることを直ちに理解するであろう。
【0049】
ナノ粒子には、さらなる反応のために官能基を組み込んでもよい。さらなる反応のための官能基は、求電子剤または求核剤を含む:これらは、他の分子との反応に好都合である。求核剤の例は、第1級アミン、チオール、およびヒドロキシルである。求電子剤の例は、スクシンイミジルエステル、アルデヒド、イソシアネート、およびマレイミドである。
【0050】
当該技術分野で周知の多様な手段が、抗原ペプチドおよびタンパク質を担体にコンジュゲートさせるために用いられ得る。これらの方法は、抗原ペプチドおよびタンパク質の生物学的活性を破壊しないかもしくは大幅に限定せず、かつ、抗原ペプチドまたはタンパク質と同族のT細胞受容体との相互作用を可能にする配向で十分な数の抗原ペプチドおよびタンパク質を担体とコンジュゲートさせることができる、任意の標準的な化学を含む。一般的に、抗原ペプチドもしくはタンパク質のC末端領域、または抗原ペプチドもしくはタンパク質融合タンパク質のC末端領域を、担体とコンジュゲートさせる方法が好ましい。正確な化学は、当然のことながら、担体材料の性質、抗原ペプチドもしくはタンパク質へのC末端融合の有無、および/またはコンジュゲート部分の有無に依存する。
【0051】
利用可能性のために、必要に応じて、官能基が粒子上に位置してもよい。1つの位置は、コアポリマー、またはコア上の層であるポリマー、または別様に粒子に繋ぎ止められたポリマー上の、側基または終端であってもよい。例えば、特定の細胞標的化、またはタンパク質およびペプチド薬物送達のために容易に官能化することができるナノ粒子のPEG安定化について記載する例が、本明細書に含まれる。
【0052】
エチレンカルボジイミド(ECDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、2つのエポキシ残基を含有するプロピレングリコールジ-グリシジルエーテル、およびエピクロルヒドリン等のコンジュゲートが、ペプチドまたはタンパク質を担体表面に固定するために用いられ得る。理論に束縛されるものではないが、ECDIは、寛容を誘導するための2つの主要な機能を果たすと考えられる:(a)それらは、遊離アミノ基と遊離カルボキシル基との間のペプチド結合形成の触媒作用を介してタンパク質/ペプチドを細胞表面に化学的に結合させる、また(b)それらは、アポトーシス細胞死を模倣するように担体を誘導し、そのため、脾臓内の宿主抗原提示細胞によって選択され、寛容を誘導する。自己反応性細胞におけるアネルギーの直接的な誘導をもたらすのは、この非免疫原性的な様式における宿主T細胞への提示である。また、ECDIは、特異的制御性T細胞を誘導するための強力な刺激としての役割を果たす。
【0053】
一連の実施形態において、抗原ペプチドおよびタンパク質は、共有化学結合を介して担体に結合する。例えば、抗原のC末端近くの反応基または部分(例えば、C末端カルボキシル基、またはアミノ酸側鎖のヒドロキシル基、チオール基、もしくはアミン基)を、直接的な化学反応によって担体の表面上の反応基または部分(例えば、PLAもしくはPGAのヒドロキシルもしくはカルボキシル基、デンドリマーの末端アミンもしくはカルボキシル基、またはリン脂質のヒドロキシル基、カルボキシル基、もしくはリン酸基)に直接コンジュゲートさせてもよい。代替として、抗原ペプチドおよびタンパク質の両方を担体と共有結合的にコンジュゲートし、それによってそれらを一緒に結合するコンジュゲート部分が存在してもよい。
【0054】
担体の表面上の反応性カルボキシル基は、例えば、1-エチル-3-[3,9-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)またはヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)と反応させることによって、抗原ペプチドまたはタンパク質上の(例えば、Lys残基からの)遊離アミンに結合させてもよい。同様に、同じ化学を用いて、担体の表面上の遊離アミンを抗原ペプチドまたはタンパク質上の(例えば、C末端、またはAspもしくはGIu残基からの)遊離カルボキシルとコンジュゲートさせてもよい。代替として、Arano et al.(1991)Chem.2:71-6に本質的に記載されるようなSulfo-SIAB化学を用いて、担体の表面上の遊離アミンを、抗原ペプチドおよびタンパク質、または抗原ペプチドもしくはタンパク質融合タンパク質と共有結合させてもよい。
【0055】
別の実施形態において、抗原ペプチドまたはタンパク質に結合したリガンドと、担体に付着した抗リガンドとの間の非共有結合によって抗原を担体にコンジュゲートさせてもよい。例えば、ビオチンリガーゼ認識配列タグが、抗原ペプチドまたはタンパク質のC末端に結合されてもよく、このタグは、ビオチンリガーゼによってビオチン化されてもよい。ビオチンは、その後、抗原ペプチドまたはタンパク質を、抗リガンドとして担体の表面に吸着しているかまたは別様に結合しているアビジンまたはストレプトアビジンと非共有結合的にコンジュゲートさせるリガンドとして機能し得る。代替として、抗原ペプチドおよびタンパク質が、Fc領域を有する免疫グロブリンドメインと融合している場合、上述のように、Fcドメインはリガンドとして作用することができ、担体の表面に共有結合または非共有結合したプロテインAは、抗原ペプチドまたはタンパク質を担体に非共有結合的にコンジュゲートさせる抗リガンドとして機能し得る。金属イオンキレート化技術(例えば、抗原ペプチドもしくはタンパク質または抗原ペプチドもしくはタンパク質融合タンパク質のC末端のポリ-Hisタグ、およびNi+でコーティングした担体を使用する)を含む、抗原ペプチドおよびタンパク質を担体に非共有結合的にコンジュゲートさせるために用いられ得る他の手段は、当該技術分野で周知であり、これらの方法は、本明細書に記載の方法と置き換えられてもよい。
【0056】
核酸部分のプラットホーム分子へのコンジュゲーションは、任意の数の方法で達成することができるが、典型的には、1つ以上の架橋剤ならびに核酸部分およびプラットホーム分子上の官能基を必要とする。結合基は、標準的な合成化学技術を用いてプラットホームに付加される。結合基は、標準的な合成技術を用いて核酸部分に付加することができる。実施者は、本発明の組み合わせに使用される抗原について多くの選択肢を有する。該組み合せに存在する誘導性抗原は、誘導される寛容原性応答の特異性に寄与する。それは、望ましくない免疫学的応答の標的であり、かつ寛容が所望される、治療を受ける対象に存在するかまたは与えられる抗原である、標的抗原と同じであってもまたは同じでなくでもよい。
【0057】
本発明の誘導性抗原は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、糖脂質、もしくは生物学的源から単離された他の分子であってもよいか、または化学合成された小分子、ポリマー、もしくは生物学的物質の誘導体であってもよいが、但し、粘膜結合性成分と組み合わせたときに、本明細書に従って寛容を誘導する能力を有するものとする。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明は、1つ以上のペプチド、ポリペプチド、および/またはタンパク質に結合した担体(例えば、免疫修飾性粒子)を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるもの等の担体(例えば、PLG担体)は、抗原特異的寛容を誘導し、かつ/または免疫関連疾患(マウスモデルにおけるEAE等)の発症を予防し、かつ/または既存の免疫関連疾患の重症度を低減するのに有効である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、T細胞にT細胞活性化に関連する初期事象を開始させることができるが、T細胞にエフェクター機能を獲得させることはできない。例えば、本発明の組成物の投与は、CD69および/またはCD44の上方制御等の準活性化(quasi-activated)表現型を有するT細胞を生じ得るが、IFN-γまたはIL-17の合成の欠如によって示されるように、エフェクター機能を示さない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物の投与は、ナイーブな抗原特異的T細胞からCD25+/Foxp3+表現型を有するもの等の制御性表現型への転換を有しない、準活性化表現型を有するT細胞を生じる。
【0059】
いくつかの実施形態において、担体(例えば、粒子)の表面は、抗原ペプチドおよび/または他の機能的要素の担体への付着(例えば、共有結合的、非共有結合的)を可能にする化学部分および/または官能基を含む。いくつかの実施形態において、担体(例えば、粒子)上の化学部分および/または官能基の数、配向、間隔等は、担体の化学、所望の用途等に応じて異なる。
【0060】
いくつかの実施形態において、担体は、担体に接着された、吸着された、封入された、かつ/またはその全体に含有された、1つ以上の生物学的薬剤または化学薬剤を含む。いくつかの実施形態において、化学薬剤または生物学的薬剤は、粒子内に封入され、かつ/またはその全体に含有される。本発明は、化学薬剤または生物学的薬剤の性質によって制限されない。そのような薬剤は、限定されないが、タンパク質、核酸分子、低分子薬、脂質、炭水化物、細胞、細胞成分等を含む。いくつかの実施形態において、2つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ等)の異なる化学薬剤または生物学的薬剤が、担体の上または中に含まれる。いくつかの実施形態において、薬剤は、特定の放出速度のために構成される。いくつかの実施形態において、複数の異なる薬剤が、異なる放出速度のために構成される。例えば、第1の薬剤は、数時間の期間にわたって放出し、第2の薬剤は、より長い期間(例えば、数日、数週間、数カ月等)にわたって放出してもよい。いくつかの実施形態において、担体またはその一部は、生物学的薬剤または化学薬剤の持続放出のために構成される。いくつかの実施形態において、持続放出は、少なくとも30日(例えば、40日、50日、60日、70日、80日、90日、100日、180日等)の期間にわたって生物学的に活性な量の薬剤の放出を提供する。いくつかの実施形態において、担体またはその一部は、細孔内への細胞の内部成長を許容するのに十分多孔性であるように構成される。細孔のサイズは、対象とする特定の細胞型および/または所望の内部成長の量のために選択されてもよい。
【0061】
本発明の粒子への抗原、生物学的薬剤、および/または化学薬剤の封入は、驚くべきことに免疫寛容を誘導することが分かっており、いくつかの利点を有する。第1に、封入された粒子は、より緩徐なサイトカイン応答を有する。第2に、複数の抗原、生物学的薬剤、および/または化学薬剤を使用する場合、封入により、薬剤を粒子の表面に付着させた場合に起こり得るこれらの種々の分子間の競合が排除される。第3に、封入により、より多くの抗原、生物学的薬剤、および/または化学薬剤を粒子に組み込むことができる。第4に、封入は、複合タンパク質抗原または臓器ホモジネート(例えば、1型糖尿病の場合の膵臓ホモジネートまたはピーナッツアレルギーにおけるピーナッツ抽出物)のより容易な使用を可能にする。最後に、粒子の表面へのコンジュゲーションに代わる抗原、生物学的薬剤、および/または化学薬剤の粒子内への封入は、粒子の表面上の正味の負電荷を維持する。
【0062】
特定の実施形態において、本発明は、その上に(またはその中に)細胞または他の生物学的薬剤もしくは化学薬剤を有する担体を提供する。細胞が用いられる場合、担体は、特定の種類の細胞に限定されない。いくつかの実施形態において、担体は、その上に膵島細胞を有する。いくつかの実施形態において、微孔性担体は、その上にECMタンパク質および/またはエキセンディン-4をさらに有する。担体は、特定の種類に限定されない。いくつかの実施形態において、担体は、多孔度(例えば、細孔サイズ、細孔深さ、および/または細孔密度)の異なる領域を有する。いくつかの実施形態において、担体は、その上に(またはその中に)薬学的製剤、DNA、RNA、細胞外マトリックスタンパク質、エキセンディン-4等を有する。特定の実施形態において、本発明は、そのような担体を用いて膵島細胞を移植するための方法を提供する。本発明の特定の実施形態において、誘導性抗原は、単一の単離された分子または組み換えによって生成された分子である。標的抗原が宿主内の種々の場所に散在する状態を治療するためには、一般的に、誘導性抗原が標的抗原と同一であるか、または免疫学的に関連していることが必要である。そのような抗原の例は、ほとんどのポリヌクレオチド抗原と、特定の炭水化物抗原(血液型抗原等)である。
【0063】
いずれの好適な抗原も、本発明の範囲内で用途を見出し得る。いくつかの実施形態において、誘導性抗原は、誘導される寛容原性応答の特異性に寄与する。誘導性抗原は、望ましくない免疫学的応答の標的であり、かつ寛容が所望される、治療を受ける対象に存在するかまたは与えられる抗原である、標的抗原と同じであってもまたは同じでなくでもよい。
【0064】
標的抗原が特定の臓器、細胞、または組織型で選択的に発現される場合、この場合も同様に、実施者は、標的抗原と同一であるか、または免疫学的に関連している誘導性抗原を使用するという選択肢を有する。しかしながら、標的のバイスタンダーである抗原を使用するというさらなる選択肢もある。これは、標的抗原と免疫学的に関連していない可能性があるが、標的抗原が発現される組織に選択的に発現される抗原である。バイスタンダー抑制の有効性に関する作業理論は、抑制が、標的細胞における免疫応答のエフェクターアームを下方制御する、活性な細胞媒介性のプロセスであるということである。サプレッサー細胞は、粘膜表面でインデューサー抗原によって特異的に刺激され、バイスタンダー抗原が選択的に発現される組織部位を目指して進む。次いで、相互作用機構またはサイトカイン媒介性機構を介して、局在するサプレッサー細胞が、それらが何に対して反応するかに関係なく、近隣のエフェクター細胞(またはエフェクター細胞のインデューサー)を下方制御する。エフェクター細胞が誘導性抗原とは異なる標的に特異的である場合、その結果はバイスタンダー効果である。バイスタンダー反応のさらなる詳細、およびこの効果を有する寛容原性ペプチドの一覧については、読者は国際特許公開WO 93/16724号を参照されたい。バイスタンダー理論が意味するところは、当業者が、本発明を実施するために寛容が所望される特定の標的抗原を同定または単離する必要がないということである。実施者は、誘導性抗原として使用される標的部位で選択的に発現される少なくとも1つの分子を得ることができることを必要とするのみである。
【0065】
本発明の特定の実施形態において、誘導性抗原は、治療を受ける個体に発現されるものと同じ形態ではないが、その断片または誘導体である。本発明の誘導性抗原は、適切な特異性の分子に基づいているが、断片化、残基置換、標識、コンジュゲーション、および/または他の機能特性を有するペプチドとの融合によって適合されるペプチドを含む。適合化は、限定されないが、毒性もしくは免疫原性等の任意の望ましくない特性の排除、または粘膜結合、粘膜浸透、もしくは、免疫応答の寛容原性アームの刺激等の任意の望ましい特性を増強することを含む、任意の望ましい目的のために行われてもよい。インスリンペプチド、コラーゲンペプチド、およびミエリン塩基性タンパク質ペプチド等の用語は、本明細書において使用される場合、完全なサブユニットを指すだけではなく、アロタイプおよび合成変異体、断片、融合ペプチド、コンジュゲート、ならびに類似体であるそれぞれの分子の少なくとも10個、好ましくは20個の連続したアミノ酸と相同な領域(アミノ酸レベルでは、好ましくは70%同一、より好ましくは80%同一、さらにより好ましくは90%同一である)を含有する他の誘導体も指し、誘導体の相同性領域は、標的抗原に対する寛容を誘導する能力をそれぞれの親分子と共有する。
【0066】
誘導性抗原の寛容原性領域は、抗体応答を刺激する免疫優勢エピトープとは異なることが多いことを認識されたい。寛容原性領域は、一般的に、T細胞に関与する特定の細胞相互作用において提示され得る領域である。寛容原性領域が存在してもよく、完全な抗原が提示されると、寛容を誘導することができる。天然抗原のプロセシングおよび提示は、通常、寛容を誘発しないという点において、特定の抗原は、潜伏性の寛容原性領域を含有する。潜伏性抗原の詳細およびそれらの同定については、国際特許公開WO 94/27634号に見出される。
【0067】
本発明の特定の実施形態において、2つ、3つ、またはそれより多くの複数の誘導性抗原が用いられる。複数の標的抗原が存在する場合にこれらの実施形態を実行すること、または標的の複数のバイスタンダーを提供することが、望ましいかもしれない。例えば、インスリンおよびグルカゴンのどちらも、糖尿病の治療において粘膜結合性成分と混合することができる。いくつかの考えられる代替の標的を網羅する抗原のカクテルを提供することも望ましい場合がある。例えば、組織適合抗原断片のカクテルを用いて、未知の表現型の同種移植片を用いた将来的な移植が見込まれる対象を寛容化することができる。ヒト白血球抗原の同種変異体(allovariant)領域は、当技術分野で周知である(例えば、Immunogenetics 29:231,1989)。別の例において、アレルゲンの混合物が、アトピーの治療のための誘導性抗原として機能し得る。
【0068】
分子の性質に応じて、当該技術分野で既知の多くの技術によって誘導性抗原を調製することができる。治療を受ける種の細胞から、濃縮されたポリヌクレオチド、ポリペプチド、および炭水化物抗原を単離することができる。短いペプチドは、アミノ酸合成によって都合よく調製される。既知の配列のより長いタンパク質は、コード配列を合成するか、または天然の源もしくはベクターからコード配列をPCR増幅し、次いで、好適な細菌または真核生物宿主細胞中でコード配列を発現させることによって調製することができる。
【0069】
本発明の特定の実施形態において、組み合せは、細胞または組織から得られた抗原の複合混合物を含み、そのうちの1つ以上が誘導性抗原の役割を果たす。抗原は、完全であるか、またはホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、もしくはアルコール等の固定液で処理されているかのいずれかである、全細胞の形態であってもよい。抗原は、細胞または組織を界面活性剤で可溶化するか、または機械的に破裂した後に清澄化することによって作製される、細胞可溶化物の形態であってもよい。抗原はまた、細胞成分分画、特に分画遠心法等の技術によって形質膜を濃縮した後、任意選択的に界面活性剤で可溶化し、透析することによって得ることもできる。可溶化した膜タンパク質のアフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィー等の他の分離技術も好適である。
【0070】
一実施形態において、抗原ペプチドまたはタンパク質は、自己抗原、同種抗原、または移植抗原である。さらに別の特定の実施形態において、自己抗原は、ミエリン塩基性タンパク質、コラーゲンまたはその断片、DNA、核および核小体タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、ならびに膵β細胞タンパク質からなる群から選択される。
【0071】
本発明は、寛容が所望される抗原を投与することにより、自己免疫疾患の治療のための自己抗原に対する寛容の誘導を提供する。例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)に対する自己抗体は、多発性硬化症に罹患する患者に観察される:したがって、MBP抗原ペプチドまたはタンパク質を本発明の組成物を用いて送達されるように本発明において使用して、多発性硬化症を治療および予防することができる。
【0072】
別の非限定的な例として、二卵性双生児からの移植の候補である個体は、移植される抗原がレシピエントにとって外来性であるため、移植された細胞、組織または臓器の拒絶反応に苦しむ可能性がある。意図される移植片に対するレシピエント個体の事前の寛容が、後の拒絶反応を抑制または低減する。本発明の実施によって、長期にわたる抗拒絶反応療法の低減または排除が達成され得る。別の例において、多くの自己免疫疾患が、内因性抗原または自己抗原に対する細胞の免疫応答によって特徴づけられる。内因性抗原に対する免疫系の寛容は、疾患の制御に望ましい。
【0073】
さらなる例において、職場で遭遇し得るような産業汚染物質または化学物質に対する個体の感作が、免疫応答の危険性を示す。特に、個体の内因性タンパク質と反応する化学物質の形態である化学物質に対する個体の免疫系の事前の寛容は、後の免疫応答の職業的な発症を予防するのに望ましい場合がある。
【0074】
アレルゲンとは、それに対する免疫応答の寛容が同様に望ましい他の抗原である。一実施形態において、抗原は、グリアジンである。さらなる実施形態において、抗原は、A-グリアジンである。
【0075】
特に、病原性自己抗原が不明である疾患であっても、解剖学的に近接して存在する抗原を用いてバイスタンダー抑制を誘導することができる。例えば、関節リウマチにおいてコラーゲンに対する自己抗体が観察されており、したがって、関節リウマチを治療するために、コラーゲンをコードする遺伝子が、抗原を発現する遺伝子モジュールとして用いられてもよい(例えば、Choy(2000)Curr Opin Investig Drugs 1:58-62を参照のこと)。さらに、β細胞自己抗原に対する寛容を用いて、1型糖尿病の発症を予防することができる(例えば、Bach and Chatenoud(2001)Ann Rev Immunol 19:131-161を参照のこと)。
【0076】
別の例として、自己免疫性脳脊髄炎において、また多くの他のCNS疾患、さらには多発性硬化症において、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)に対する自己抗体が観察されている(例えば、Iglesias et al.(2001)Glia 36:22-34を参照のこと)。したがって、本発明においてMOG抗原を発現する構築物を使用することにより、多発性硬化症、さらには関連する中枢神経系の自己免疫障害の治療が可能となる。
【0077】
自己免疫疾患を治療する際に使用される候補自己抗原のさらに他の例として、インスリン依存性糖尿病を治療するための膵β細胞抗原、インスリン、およびGAD;関節リウマチを治療する際に使用される11型コラーゲン、ヒト軟骨gp 39(HCgp39)およびgpl30-RAPS;多発性硬化症を治療するためのミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、およびミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG、上記参照);強皮症を治療するためのフィブリラリン、および低分子核小体タンパク質(snoRNP);グレーブス病を治療するさいに使用される甲状腺刺激因子受容体(TSH-R);全身性エリテマトーデスを治療する際に使用される核抗原、ヒストン、糖タンパク質gp70、およびリボソームタンパク質;原発性胆汁性肝硬変を治療する際に使用されるピルビン酸脱水素酵素ジヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ(PCD-E2);円形脱毛症を治療するために使用される毛包抗原;ならびに潰瘍性大腸炎を治療する際に使用されるヒトトロポミオシンアイソフォーム5(hTM5)が挙げられる。
【0078】
単離細胞を用いた実験または動物モデルにおける実験を行うことにより、それらの寛容を促進する能力について組み合せを試験することができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、本発明の寛容誘導性組成物は、(例えば、抗原ペプチドまたは他の抗原分子に加えて)アポトーシスシグナル伝達分子を含有する。いくつかの実施形態において、アポトーシスシグナル伝達分子は、担体の表面と結合および/または会合する。いくつかの実施形態において、アポトーシスシグナル伝達分子は、担体が、宿主の抗原提示細胞(宿主の細網内皮系の細胞等)によってアポトーシス小体として認識されるようにする:これは、会合したペプチドエピトープの寛容を誘導する様式での提示を可能にする。理論に束縛されるものではないが、これは、MHCクラスI/II、および共刺激分子等の免疫細胞刺激に関与する分子の上方制御を防止すると推定される。これらのアポトーシスシグナル伝達分子は、食作用マーカーとしても機能し得る。例えば、本発明に好適なアポトーシスシグナル伝達分子は、米国特許出願第20050113297号に記載されており、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。本発明に好適な分子は、食細胞を標的とする分子を含み、それらは、マクロファージ、樹状細胞、単球、および好中球を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、アポトーシスシグナル伝達分子として好適な分子は、会合したペプチドの寛容を増強するように作用する。さらに、アポトーシスシグナル伝達分子に結合した担体は、アポトーシス細胞の認識においてClqによって結合されてもよい(Paidassi et al.,(2008)J.Immunol.180:2329-2338;参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)。例えば、アポトーシスシグナル伝達分子として有用であり得る分子は、ホスファチジルセリン、アネキシン-1、アネキシン-5、乳脂肪球-EGF-因子8(MFG-E8)、またはトロンボスポンジンのファミリー(例えば、トロンボスポンジン-1(TSP-1))を含む。本発明とともにアポトーシスシグナル伝達分子として使用するのに好適な種々の分子は、例えば、米国特許出願第2012/0076831号に論じられており、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)。
【0081】
いくつかの実施形態において、アポトーシスシグナル伝達分子を、抗原特異的ペプチドとコンジュゲートしてもよい。いくつかの場合、アポトーシスシグナル伝達分子と抗原特異的ペプチドは、融合タンパク質の作製によってコンジュゲートされる。例えば、融合タンパク質は、アポトーシスシグナル伝達分子の少なくとも1つの分子(またはその断片もしくは変異体)に結合した少なくとも1つの抗原特異的ペプチド(またはその断片もしく変異体)を含んでもよい。融合タンパク質の作製に関して、「融合タンパク質」、「融合ペプチド」、「融合ポリペプチド」、および「キメラペプチド」という用語は、同義で使用される。抗原特異的ペプチドの好適な断片は、本発明の所望の抗原特異的寛容機能を生じさせる機能を保持する完全長ペプチドの任意の断片を含む。融合タンパク質は、当該技術分野で理解されている種々の手段(例えば、遺伝子融合、化学的なコンジュゲーション等)によって作製されてもよい。2つのタンパク質は、直接的に、またはアミノ酸リンカーを介してのいずれかで融合させてもよい。融合タンパク質を形成するポリペプチドは、典型的にはC末端とN末端の結合であるが、それらは、C末端とC末端、N末端とN末端、またはN末端とC末端で結合することもできる。融合タンパク質のポリペプチドは、いずれの順序であってもよい。ペプチドリンカー配列を用いて、各ポリペプチドが確実に二次および三次構造に折り畳まれるようにするのに十分な距離で第1のポリペプチド成分と第2のポリペプチド成分とを分離することができる。リンカーとして有用に利用され得るアミノ酸配列は、Maratea et.al.,Gene 40:39-46(1985);Murphy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258-8262(1986);米国特許第4,935,233号および第4,751,180号に開示されるものを含み、参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる。リンカー配列は、一般的に、1~約50アミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態において、例えば、第1および第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離して立体障害を防止するために使用され得る非必須N末端アミノ酸領域を有する場合、リンカー配列は必要ではなく、かつ/または用いられない。
【0082】
寛容原性活性の代理となるものは、完全な抗原または断片が、標的部位における適切なサイトカインの産生を刺激する能力である。標的部位でTサプレッサー細胞によって放出される免疫制御性サイトカインは、TGF-βであると考えられる(Miller et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:421,1992)。寛容の間に産生され得る他の因子は、サイトカインIL4およびIL-10、ならびにメディエーターPGEである。対照的に、活発な免疫破壊を受けている組織中のリンパ球は、IL-I、IL-2、IL-6、およびγ-IFN等のサイトカインを分泌する。したがって、候補誘導性抗原の有効性は、適切な種類のサイトカインを刺激する能力を測定することによって評価することができる。
【0083】
これを考慮に入れて、生体外細胞アッセイのドナーとして同系動物を使用して、誘導性抗原の寛容原性エピトープ、有効な粘膜結合成分、有効な組み合せ、または粘膜投与の有効な様式およびスケジュールについて迅速なスクリーニング試験を行うことができる。動物は、試験組成物で粘膜表面を処理し、ある時点でフロイント完全アジュバント中の標的抗原の非経口投与により曝露する。脾細胞を単離し、約50μg/mLの濃度で、標的抗原の存在下において生体外で培養する。寛容原性エピトープの位置をマッピングするために、標的抗原を候補タンパク質または細断片に置き換えてもよい。培地中へのサイトカインの分泌は、標準的なイムノアッセイによって定量化することができる。
【0084】
細胞が他の細胞の活性を抑制する能力は、標的抗原で免疫した動物から単離した細胞を用いて、または標的抗原に反応性の細胞系統を作製することによって、決定することができる(Ben-Nun et al.,Eur.J.Immunol.11:195,1981;参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)。この実験の1つの変形例において、サプレッサー細胞集団を穏やかに照射して(約1000~1250ラド)増殖を防止し、該サプレッサーをレスポンダー細胞と共培養し、次いで、トリチウム化チミジン取込み(またはMTT)を用いてレスポンダーの増殖活性を定量化する。別の変形例において、サプレッサー細胞集団およびレスポンダー細胞集団をデュアルチャンバー式トランスウェル培養系(Costar,Cambridge Mass.)の上段および下段で培養する:これにより、集団を互いの1mm以内で共インキュベートし、ポリカーボネート膜で分離することが可能となる(WO 93/16724)。この手法では、レスポンダーの増殖活性を別個に測定できるため、サプレッサー細胞集団の照射は必要ではない。
【0085】
本発明の実施形態において、標的抗原がすでに個体に存在する場合、抗原を単離する必要性、またはそれを粘膜結合成分と予め組み合わせる必要性がない。例えば、抗原は、病態(炎症性腸疾患もしくはセリアック病等)の結果として、または食物アレルゲンの消化によって、特定の様式で個体において発現され得る。1つ以上の用量または製剤で粘膜結合成分を投与し、それがインサイツで抗原に対する寛容化を促進する能力を判定することにより、試験を行う。
【0086】
特定の疾患の治療のための組成物および投与様式の有効性は、対応する動物疾患モデルにおいて詳細に説明することもできる。用いられるモデルに応じて、疾患の循環する生化学的および顕著な免疫学的特徴、罹患組織の免疫組織学、ならびに肉眼的な臨床特性といったレベルで、疾患の症状を軽減または遅延する治療能力を監視する。試験に使用することができる動物モデルの非限定的な例は、以下の項に含まれる。
【0087】
本発明は、THl応答、TH2応答、TH17応答、またはこれらの応答の組み合わせを調節することによる寛容の調節を企図する。THl応答を調節することは、例えば、インターフェロン-ガンマの発現を変化させることを包含する。TH2応答を調節することは、例えば、IL-4、IL-5、IL-10、およびIL-13の任意の組み合わせの発現を変化させることを包含する。典型的には、TH2応答の増加(減少)は、IL-4、IL-5、IL-10、またはIL-13のうちの少なくとも1つの発現の増加(減少)を含む:より典型的には、TH2応答の増加(減少)は、IL-4、IL-5、IL-10、またはEL-13のうちの少なくとも2つの発現の増加を含み、最も典型的には、TH2応答の増加(減少)は、DL-4、IL-5、IL-10、またはIL-13のうちの少なくとも3つの増加を含むが、理想的には、TH2応答の増加(減少)は、IL-4、IL-5、IL-10、およびIL-13の全ての発現の増加(減少)を含む。TH17を調節することは、例えば、TGF-β、IL-6、IL-21、およびIL23の発現を変化させることを包含し、IL-17、IL-21、およびIL-22のレベルに影響を及ぼす。
【0088】
例えば、米国特許出願第2012/0076831号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、本発明の組成物および方法の有効性を評価するための他の好適な方法が、当該技術分野で理解されている。
【0089】
本発明の特定の実施形態は、治療的介入によって以前に寛容化されていない個体における免疫寛容を予備刺激することに関する。これらの実施形態は、一般的に、抗原と粘膜結合成分の組み合せの複数回の投与を含む。長期持続する結果を達成するために、予備刺激中、典型的には少なくとも3回の投与、高い頻度で少なくとも4回の投与、そして時折少なくとも6回の投与が行われるが、対象は、治療過程の早い段階で寛容の徴候を示す場合がある。ほとんどの場合、各用量がボーラス投与として投与されるが、粘膜放出が可能な持続性製剤も好適である。複数回の投与が行われる場合、投与の間隔は、一般的には1日~3週間、典型的には約3日~2週間である。一般的に、同じ抗原および粘膜結合成分は、同じ濃度で存在し、投与は同じ粘膜表面に行われるが、治療過程の間には、これらの変数のいずれかの変動に対応することができる。
【0090】
本発明の他の実施形態は、追加免疫、または以前に確立された免疫寛容の持続性の延長に関する。これらの実施形態は、一般的に、確立された寛容が低下するか、また低下するリスクがある時点で、1回の投与または短期間の治療を必要とする。追加免疫は、一般的には、予備刺激または以前の追加免疫の1ヶ月~1年後、典型的には、2~6ヶ月後に行われる。本発明はまた、週2回、毎週、隔週、または任意の他の規則的なスケジュールで行われる投与スケジュールで、寛容を規則的に維持することを含む実施形態も含む。
【0091】
本発明の粒子は、それを必要とする対象において炎症性免疫応答を低下させるのに、またはそれを必要とする対象において細菌もしくはウイルス感染を治療するのに有効ないずれの用量で投与されてもよい。特定の実施形態において、約102~約1020個の粒子が個体に提供される。さらなる実施形態において、約103~約1015個の粒子が提供される。さらなる実施形態において、約106~約1012個の粒子が提供される。さらなる実施形態において、約108~約1010個の粒子が提供される。好ましい実施形態において、好ましい用量は、0.1%固体/mlである。したがって、0.5μmのビーズでは、好ましい用量は約4×109個のビーズであり、0.05μmのビーズでは、好ましい用量は約4×1012個のビーズであり、3μmのビーズでは、好ましい用量は、2×107個のビーズである。しかしながら、治療されるべき特定の状態を治療する上で有効ないかなる用量も、本発明に包含される。
【0092】
本発明は、自己免疫疾患、移植拒絶反応、およびアレルギー反応等の免疫関連障害の治療に有用である。免疫寛容を誘導するための合成の生体適合性粒子系の置換は、製造の容易性、治療剤の幅広い利用可能性をもたらし、試料間の均一性を増加させ、潜在的な治療部位の数を増加させ、担体細胞へのアレルギー性応答に対する潜在性を劇的に低減することができる。
【0093】
本明細書において使用される場合、「免疫応答」という用語は、T細胞媒介性および/またはB細胞媒介性の免疫応答を含む。例示的な免疫応答として、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生および細胞毒性が挙げられる。さらに、免疫応答という用語は、T細胞活性化、例えば、抗体産生(体液性応答)、およびサイトカイン応答性細胞、例えば、マクロファージの活性化によって、間接的に影響を受ける免疫応答を含む。免疫応答に関与する免疫細胞は、B細胞ならびにT細胞(CD4+、CD8+、Th1およびTh2細胞)等のリンパ球;抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球、ランゲルハンス細胞等のプロフェッショナル抗原提示細胞、およびケラチノサイト、内皮細胞、星状膠細胞、線維芽細胞、乏突起膠細胞等の非プロフェッショナル抗原提示細胞);ナチュラルキラー細胞;マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、および顆粒球等の骨髄性細胞を含む。いくつかの実施形態において、本発明の修飾粒子は、炎症性細胞の炎症部位への輸送を減少させるのに効果的である。
【0094】
本明細書において使用される場合、「アネルギー」、「寛容」、または「抗原特異的寛容」という用語は、T細胞受容体媒介性の刺激に対するT細胞の非感受性を指す。そのような非感受性は、一般的に、抗原特異的であり、抗原ペプチドへの曝露が終了した後も存続する。例えば、T細胞におけるアネルギーは、サイトカイン、例えば、IL-2の産生の欠如によって特徴づけられる。T細胞が、抗原に曝露され、第2のシグナル(共刺激シグナル)の非存在下で第1のシグナル(T細胞受容体またはCD-3媒介性シグナル)を受信するときに、T細胞アネルギーが生じる。これらの条件下では、同じ抗原に細胞を再曝露すると(たとえ、共刺激分子の存在下で再曝露が起こる場合であっても)、サイトカインを産生することができず、その後、増殖することができない。したがって、サイトカインを産生できないことにより、増殖が阻止される。しかしながら、アネルギーT細胞は、サイトカイン(例えば、IL-2)とともに培養されると、増殖することができる。例えば、T細胞アネルギーは、ELISAによって、または指標細胞株を用いた増殖アッセイによって測定されるように、Tリンパ球によるIL-2産生の欠如によっても観察され得る。代替として、レポーター遺伝子構築物が用いられてもよい。例えば、アネルギーT細胞は、5’IL-2遺伝子エンハンサーの制御下で異種プロモータによって、またはエンハンサー内に見出すことができるAPI配列のマルチマーによって誘導される、DL-2遺伝子の転写を開始することができない(Kang et al.1992 Science.257:1134)。
【0095】
本明細書において使用される場合、「免疫学的寛容」という用語は、未処理の対象と比較して、ある割合の治療済みの対象に対して行われる方法を指す:a)特異的な免疫学的応答(少なくとも一部、抗原特異的エフェクターTリンパ球、Bリンパ球、抗体、もしくはそれらの均等物によって媒介されると考えられる)のレベルの減少;b)特異的な免疫学的応答の開始もしくは進行の遅延;またはc)特異的な免疫学的応答の開始もしくは進行のリスクの低減。「特異的な」免疫学的寛容は、他と比較して特定の抗原に対して免疫学的寛容が選択的に引き起こされる場合に生じる。「非特異的な」免疫学的寛容は、炎症性免疫応答を引き起こす抗原に対して無差別に免疫学的寛容が引き起こされる場合に生じる。「準特異的な」免疫学的寛容は、免疫学的寛容が、保護免疫応答を引き起こす他の抗原ではなく、病原性免疫応答を引き起こす抗原に対して半差別的(semi-discriminately)に引き起こされる場合に生じる。
【0096】
自己抗原および自己免疫疾患に対する寛容は、胸腺における自己反応性T細胞の陰性選択、および胸腺欠失を免れ、末梢に認められる自己反応性T細胞の末梢寛容の機構を含む、様々な機構によって達成される。末梢T細胞寛容を提供する機構の例として、自己の抗原の「無視」、自己抗原に対するアネルギーまたは不応答性、サイトカインの免疫偏向、および自己反応性T細胞の活性誘導細胞死が挙げられる。さらに、制御性T細胞は、末梢寛容の媒介に関与することが示されている。例えば、Walker et al.(2002)Nat.Rev.Immunol.2:11-19;Shevach et al.(2001)Immunol.Rev.182:58-67を参照のこと。ある状況において、自己抗原に対する末梢寛容が消失し(または破壊され)、結果として自己免疫応答が生じる。例えば、EAEの動物モデルにおいて、TLR自然免疫受容体による抗原提示細胞(APC)の活性化が、自己寛容を破壊し、結果的にEAEを誘導することが示されている(Waldner et al.(2004)J.Clin.Invest.113:990-997)。
【0097】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、TLR7/8、TLR9、および/またはTLR7/8/9依存性細胞刺激を抑制または低減する一方で、抗原提示を増加させる方法を提供する。本明細書に記載されるように、特定の修飾粒子の投与により、免疫刺激性ポリヌクレオチドと関連するTLR7/8、TLR9、および/またはTLR7/8/9依存性細胞応答を抑制する一方で、DCまたはAPCによる抗原提示をもたらす。そのような抑制は、1つ以上のTLR関連サイトカインのレベルの低下を含み得る。
【0098】
上述のように、本発明は、Mac-1およびLFA-1によって媒介される障害の治療に有用な生物学的特性を有する新規化合物を提供する。
【0099】
したがって、本発明の別の態様において、免疫修飾性粒子を含み、任意選択的に薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物が提供される。特定の実施形態において、これらの組成物は、任意選択的に1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。代替として、本発明の修飾粒子は、1つ以上の他の治療剤の投与と併用して、それを必要とする患者に投与されてもよい。例えば、本発明の化合物との共同投与のため、または本発明の化合物を含む薬学的組成物に包含するための追加の治療剤は、承認された抗炎症剤であってもよいか、あるいは無制御な炎症性免疫応答、または細菌もしくはウイルス感染によって特徴づけられる任意の障害の治療のために最終的に承認を得る、米国食品医薬品局で承認段階にある多くの薬剤のうちのいずれか1つであってもよい。また、本発明の修飾粒子のうちのあるものは、治療のために遊離形態で、または必要に応じて、その薬学的に許容される誘導体として、存在し得ることも理解されたい。
【0100】
本発明の薬学的組成物は、本明細書において使用される場合、所望される特定の用量形態に好適な、あらゆる溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散液もしくは懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤等を含む、薬学的に許容される担体をさらに含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、薬学的組成物を製剤化する際に用いられる種々の担体、およびその調製のための既知の技術を開示している。任意の従来の担体媒体が、例えば、任意の望ましくない生物学的効果をもたらすことによって、または別様に薬学的組成物の任意の他の成分(複数可)と有害に相互作用すること等によって、本発明の化合物と適合しない場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内であることが企図される。薬学的に許容される担体として機能することができる材料のいくつかの例として、限定されないが、ラクトース、グルコース、およびスクロース等の糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン等のデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、およびセルロースアセテート等のセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐剤ワックス等の賦形剤;ピーナッツ油、綿実油;ベニバナ油、ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油および大豆油等の油;プロピレングリコール等のグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等のエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝剤溶液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム等の他の非毒性、適合性潤滑剤が挙げられ、それだけではなく、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤もまた、処方者の判断に従って、組成物中に存在することができる。
【0101】
経口投与用の液体剤形は、限定されないが、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルション、溶剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含む。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物等の、当該技術分野において一般的に使用される不活性の希釈剤を含有してもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、ならびに芳香剤等のアジュバントも含むことができる。
【0102】
本発明の粒子は、経口的に、経鼻的に、静脈内に、筋肉内に、経眼的に、経皮的に、または皮下に投与されてもよい。一実施形態において、本発明の粒子は、静脈内投与される。
【0103】
免疫応答を調節するための本発明の有効量および投与方法は、個体、どんな状態が治療されるのか、および当業者には明らかな他の要因に基づいて異なり得る。考慮されるべき要因は、投与経路および実施される投与回数を含む。そのような因子は、当該技術分野で既知であり、過度の実験を行わずにそのような決定を行うことは、十分に当業者の技術の範囲内である。好適な投与量範囲は、免疫の所望の調整を提供する範囲である。送達される担体の量で示される担体の有用な投与量範囲は、例えば、およそ、0.5~10mg/kg、1~9mg/kg、2~8mg/kg、3~7mg/kg、4~6mg/kg、5mg/kg、1~10mg/kg、5~10mg/kgのうちのいずれであってもよい。代替として、投与量は、粒子の数に基づいて投与されてもよい。例えば、送達される担体の量で示される担体の有用な投与量は、例えば、1回用量当たり、約106個、107個、108個、109個、1010個、またはそれよりも大きな数の粒子であってもよい。各患者に投与される絶対量は、バイオアベイラビリティー、クリアランス速度および投与経路等の薬理学的特性に依存する。薬学的に許容される担体、希釈液および賦形剤、ならびに薬学的組成物および製剤を調製する方法の詳細は、Remmingtons Pharmaceutical Sciences 18th Edition,1990,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,USA.(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に提供される。
【0104】
特定の担体製剤の有効量および投与方法は、個々の患者、所望される結果および/または障害の種類、疾患の段階、ならびに当業者には明らかな他の要因に基づいて異なり得る。特定の用途において有用な投与経路(複数可)は、当業者には明らかである。投与経路は、限定されないが、局所、皮膚、経皮、経粘膜、表皮、非経口、消化管、ならびに鼻咽頭および肺(経気管支および経肺胞を含む)を含む。好適な投与量範囲は、血液レベルで測定される約1~50μMの組織濃度に達するのに十分なIRP含有組成物を提供する範囲である。各患者に投与される絶対量は、バイオアベイラビリティー、クリアランス速度および投与経路等の薬理学的特性に依存する。
【0105】
本発明は、限定されないが、生理的に許容されるインプラント、軟膏、クリーム、リンス、およびゲルを含む、局所用途に好適な担体製剤を提供する。皮膚投与の例示的な経路は、経皮透過、表皮投与、および皮下注射等の、最も侵襲性の低い経路である。
【0106】
経皮投与は、担体を皮膚に浸透させ、血流に進入させることができるクリーム、リンス、ゲル等の塗布によって達成される。経皮投与に好適な組成物は、限定されないが、皮膚に直接塗布されるか、または経皮デバイス(いわゆる「パッチ」)等の保護的担体に組み込まれる、薬学的に許容される懸濁液、油、クリームおよび軟膏を含む。好適なクリーム、軟膏等の例は、例えば、Physician’s Desk Referenceに見出すことができる。経皮透過は、例えば、数日以上の期間、無傷の皮膚を通して連続的に生成物を送達する市販のパッチを使用して、イオン導入によって達成されてもよい。この方法の使用は、比較的高い濃度での薬学的組成物の制御された透過を可能にし、併用薬の注入を許容し、吸収促進剤の同時使用を可能にする。
【0107】
非経口投与経路は、限定されないが、電気的(イオン導入)または直接注射、例えば中心静脈ラインへの直接注射、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、または皮下注射を含む。非経口投与に好適な担体製剤は、一般的に、USP水または注射用水中で製剤化され、pH緩衝液、塩増量剤、保存剤、および他の薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。非経口注射用の免疫制御性ポリヌクレオチドは、注射用の生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水等の薬学的に許容される無菌等張溶液中で製剤化されてもよい。
【0108】
消化管投与経路は、限定されないが、摂取および直腸経路を含み、例えば、薬学的に許容される摂取用の散剤、丸剤、または液剤、および直腸投与用の坐剤の使用を含むことができる。
【0109】
鼻咽頭および肺投与は、吸入によって達成され、鼻内、経気管支、および経肺胞経路等の送達経路を含む。本発明は、限定されないが、エアロゾルを形成するための液体懸濁液、ならびに乾燥粉末吸入送達系のための粉末形態を含む、吸入による投与に好適な担体の製剤を含む。担体製剤の吸入による投与に好適なデバイスは、限定されないが、噴霧器、気化器、ネブライザー、および乾燥粉末吸入送達デバイスを含む。
【0110】
注射用調製物、例えば、無菌の注射用水性または油性懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、既知の技術に従って製剤化されてもよい。無菌の注射用調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射用溶液、懸濁液、またはエマルションであってもよい。用いられ得る許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンガー溶液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として慣例的に用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の不揮発性油を用いることができる。また、オレイン酸等の脂肪酸も、注射液の調製に使用される。
【0111】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルタを通した濾過によって、または使用前に、滅菌水もしくは他の滅菌注射媒体に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0112】
薬物の効果を長引かせるために、しばしば、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を緩徐にすることが望ましい。これは、液体懸濁液、または難水溶性の結晶性材料もしくは非晶質材料の使用によって達成され得る。その結果、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、同様に、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。代替として、非経口投与される薬物形態の遅延吸収は、油性ビヒクルに薬物を溶解または懸濁することによって達成される。注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコライド等の生分解性ポリマー中に、薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する薬物の比率、および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例として、(ポリ(オルソエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポーの注射用製剤は、身体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルションに薬物を封入することによっても調製することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、本発明の合成生分解性粒子は、製造の容易性、治療剤の幅広い利用可能性、および治療部位の増加を提供する。特定の実施形態において、界面活性剤ポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸)を用いて合成した高密度の表面カルボキシレート基を有する表面官能化生分解性 ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子は、他の担体粒子および/または表面に勝る数多くの利点をもたらす担体を提供する。本発明の実施形態の開発中に実施された実験により、これらの粒子へのペプチド(例えば、PLP139~151ペプチド)のコンジュゲーションを実証した。そのようなペプチドを結合させた粒子は、それらが疾患発症の防止および免疫学的寛容の誘導に効果的であることを示した(例えば、多発性硬化症のSJL/J PLP139~151/CFAで誘導したR-EAEマウスモデルにおいて)。本発明のペプチド結合担体は、他の寛容誘導構造に勝る数多くの利点を提供する。いくつかの実施形態において、粒子は生分解性であり、従って、体内で長期間存続しない。完全分解の時間は制御することができる。いくつかの実施形態において、粒子は、細胞を活性化することなく内部移行を促進するように官能化される(例えば、PLGミクロスフェアに充填したホスファチジルセリン)。いくつかの実施形態において、粒子には、特定の細胞集団に対する標的リガンドを組み込まれる。いくつかの実施形態において、粒子を内部移行させる細胞型の活性化を制限するために、かつ、エネルギーならびに/または制御性T細胞の欠失および活性化を介して寛容の誘導を促進するために、IL-10およびTGF-β等の抗炎症性サイトカインが粒子の上または中に含まれる。
【0114】
経口投与のための固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤を含む。そのような固体剤形において、修飾粒子は、少なくとも1つの不活性の、薬学的に許容される、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウム等の賦形剤または担体、ならびに/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸等の充填剤もしくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア等の結合剤、c)グリセロール等の保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩シリカ、および炭酸ナトリウム等の崩壊剤、e)パラフィン等の溶液遅延剤、f)第4級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコール、およびモノステアリン酸グリセロール等の湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土等の吸収剤、ならびにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物等の潤滑剤と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤も含むことができる。
【0115】
また、同様の種類の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコール等のそのような賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中に充填剤としても用いられ得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、製剤処方の技術分野において周知の腸溶性コーティングおよび他のコーティング等のコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。それらは、任意選択的に乳白剤を含有してもよく、また、それらが、任意選択的に遅延様式で、活性成分(複数可)のみを放出するか、または選択的に消化管の特定の部分において放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。また、同様の種類の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコール等のそのような賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中に充填剤としても用いられ得る。
【0116】
修飾粒子はまた、上記のような1つ以上の賦形剤とともにマイクロカプセル化された形態であってもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、製剤処方の技術分野において周知の腸溶性コーティング、放出制御コーティング、および他のコーティング等のコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。そのような固体剤形において、活性化合物は、スクロース、ラクトース、およびデンプン等の少なくとも1つの不活性希釈剤と混合されてもよい。また、そのような剤形は、通常の実践におけるように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース等の錠剤化潤滑剤および他の錠剤化助剤も含むことができる。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤も含むことができる。それらは、任意選択的に乳白剤を含有してもよく、また、それらが、任意選択的に遅延様式で、修飾粒子のみを放出するか、または選択的に消化管の特定の部分において放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0117】
本発明は、本発明の修飾粒子の薬学的に許容される局所製剤を包含する。「薬学的に許容される局所製剤」という用語は、本明細書において使用される場合、表皮への製剤の塗布による本発明の修飾された微粒子の皮内投与のために薬学的に許容される任意の製剤を意味する。本発明の特定の実施形態において、局所製剤は担体系を含む。薬学的に有効な担体は、限定されないが、局所投与用医薬品のための当該技術分野で既知の溶媒(例えば、アルコール、ポリアルコール、水)、クリーム、ローション、軟膏、油、硬膏、リポソーム、粉末、エマルション、マイクロエマルション、および緩衝溶液(例えば、低張もしくは緩衝生理食塩水)、または任意の他の担体を含む。当該技術分野において既知の担体に関するより完全なリストは、当該技術分野における標準である参考テキスト、例えば、いずれもMack Publishing Company,Easton,Pa.によって出版されたRemington’s Pharmaceutical Sciences,16th Edition,1980および17th Edition,1985によって提供され、その開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。特定の他の実施形態において、本発明の局所製剤は、賦形剤を含んでもよい。当該技術分野で既知のいずれの薬学的に許容される賦形剤が、本発明の薬学的に許容される局所製剤を調製するために使用されてもよい。本発明の局所製剤に含めることができる賦形剤の例として、限定されないが、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、緩衝剤、可溶化剤、他の浸透剤、皮膚保護剤、界面活性剤、および推進剤、ならびに/または修飾粒子と組み合わせて使用される追加の治療剤が挙げられる。好適な防腐剤は、限定されないが、アルコール、第4級アミン、有機酸、パラベン、およびフェノールを含む。好適な抗酸化剤は、限定されないが、アスコルビン酸およびそのエステル、重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、ならびにEDTAおよびクエン酸等のキレート剤を含む。好適な保湿剤は、限定されないが、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素、およびプロピレングリコールを含む。本発明とともに使用するのに好適な緩衝剤は、限定されないが、クエン酸、塩酸、および乳酸緩衝剤を含む。好適な可溶化剤は、限定されないが、第4級塩化アンモニウム、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、レシチン、およびポリソルベートを含む。本発明の局所製剤に使用することができる好適な皮膚保護剤は、限定されないが、ビタミンE油、アラントイン、ジメチコン、グリセリン、ワセリン、および酸化亜鉛を含む。
【0118】
特定の実施形態において、本発明の薬学的に許容される局所製剤は、少なくとも、本発明の修飾粒子および浸透促進剤を含む。局所製剤の選択は、治療される状態、本発明の化合物および存在する他の賦形剤の物理化学的特徴、それらの製剤中での安定性、利用可能な製造機器、ならびに費用上の制約を含む、いくつかの要因に依存する。本明細書において使用される場合、「浸透促進剤」という用語は、好ましくは、全身吸収をほとんどまたは全く伴わずに、角質層を通して表皮または真皮内に薬理学的に活性な化合物を輸送することができる薬剤を意味する。多様な化合物が、皮膚を通る薬物の浸透速度を促進する際のそれらの有効性について評価されている。例えば、種々の皮膚浸透促進剤の使用および試験について調査したPercutaneous Penetration Enhancers,Maibach H.I.and Smith H.E.(eds.),CRC Press,Inc.,Boca Raton,Fla.(1995)、およびBuyuktimkin et al.,Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Gosh T.K.,Pfister W.R.,Yum S.I.(Eds.),Interpharm Press Inc.,Buffalo Grove,Ill.(1997)を参照のこと。特定の例示的な実施形態において、本発明とともに使用される浸透剤は、限定されないが、トリグリセリド(例えば、大豆油)、アロエ組成物(例えば、アロエベラゲル)、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクチルフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N-デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、モノオレイン酸グリセロール、およびプロピレングリコールモノオレエート)、ならびにN-メチルピロリドンを含む。
【0119】
特定の実施形態において、組成物は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、またはパッチの形態であってもよい。特定の例示的な実施形態において、本発明による組成物の製剤は、クリームであり、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミート-オレイン酸、セチルアルコールまたはオレイルアルコール等の飽和または不飽和脂肪酸をさらに含有してもよいが、ステアリン酸が特に好ましい。本発明のクリームは、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシ-40-ステアラートも含有し得る。特定の実施形態において、活性成分は、必要であり得る場合、無菌状態下で、薬学的に許容される担体および任意の必要な防腐剤または緩衝剤と混合される。眼科製剤、点耳剤、および点眼剤もまた、本発明の範囲内であることが企図される。さらに、本発明は、身体への化合物の制御送達を提供するという付加的利点を有する経皮パッチの使用を企図する。そのような剤形は、適切な媒体に化合物を溶解または分散することによって作製される。上述のように、皮膚全体にわたる化合物の流動を増加させるためにも、浸透促進剤を使用することができる。速度は、速度制御膜を提供すること、またはポリマーマトリックスもしくはゲルに化合物を分散することのいずれかによって、制御することができる。
【0120】
修飾粒子は、エアロゾルによって投与することができる。これは、修飾粒子を含有する水性エアロゾル、リポソーム調製物、または固体粒子を調製することによって達成される。非水性(例えば、フッ化炭素推進剤)懸濁液が使用されてもよい。
【0121】
通常、水性エアロゾルは、薬剤の水溶液または懸濁液を、従来の薬学的に許容される担体および安定剤と一緒に製剤化することによって作製される。担体および安定剤は、特定の化合物の要件によって異なるが、典型的には、非イオン性界面活性剤(Tween、Pluronic、もしくはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害タンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシン等のアミノ酸、緩衝剤、塩、糖、または糖アルコールを含む。エアロゾルは、一般的に、等張溶液から調製される。
【0122】
本発明の修飾粒子および薬学的組成物は、併用療法において製剤化されて用いられ得ること、すなわち、化合物および薬学的組成物は、1つ以上の他の所望の治療薬または医学的手技を用いて製剤化され得るか、またはそれと同時に、その前に、もしくはその後に投与され得ることも理解されたい。併用投与計画に用いるための治療法(治療薬または手技)の特定の組み合わせは、所望の治療薬および/または手技、ならびに達成されるべき所望の治療効果の適合性を考慮する。また、用いられる治療法は、同じ障害に対して所望の効果を達成する場合がある(例えば、本発明の化合物は、別の抗炎症剤と同時に投与されてもよい)か、または異なる効果を達成する場合がある(例えば、任意の有害作用の制御)ことも理解されたい。
【0123】
特定の実施形態において、本発明の修飾粒子を含有する薬学的組成物は、1つ以上の追加の治療上活性な成分(例えば、抗炎症性および/または緩和性)をさらに含む。本発明の目的のために、「緩和」という用語は、疾患の症状および/または治療計画の副作用の軽減に焦点を当てた治療を指すが、それは治癒的ではない。例えば、緩和治療は、鎮痛剤、嘔吐抑制薬、および制吐薬を包含する。
【0124】
本発明は、個体、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおいて、免疫応答を調整する方法を提供し、本明細書に記載される修飾粒子を個体に投与することを含む。本発明によって提供される免疫調整の方法は、限定されないが、免疫刺激性ポリペプチドまたはウイルスもしくは細菌成分によって刺激される免疫応答を含む自然免疫応答または獲得免疫応答を抑制および/または阻害するものを含む。
【0125】
修飾粒子は、免疫応答を調整するのに十分な量で投与される。本明細書に記載されるように、免疫応答の調整は、体液性および/または細胞性であり得、当該技術分野における、および本明細書に記載される、標準的技術を使用して測定される。
【0126】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、それらと関連する免疫応答を媒介する、無効にする、調製する、かつ/または軽減するために、インプラント(例えば、デバイス)および/または移植片(例えば、組織、細胞、臓器)と一緒(例えば、それと同時に、その前に、もしくはその後に)に投与される。
【0127】
特定の実施形態において、個体は、アレルギー性疾患または状態、アレルギーおよび喘息等の望ましくない免疫活性化に関連する障害に罹患する。アレルギー性疾患または喘息を有する個体は、既存のアレルギー性疾患または喘息の認識可能な症状を有する個体である。例えば、アレルギー反応を誘発する特定の食物(例えば、ピーナッツタンパク質等)、注入される物質(例えば、ハチ毒タンパク質等)、または吸入される物質(例えば、ブタクサ花粉タンパク質、ペットのフケタンパク質等)と複合化させた粒子によって、そのような個体において寛容を誘導することができる。
【0128】
特定の実施形態において、個体は、自己免疫疾患および炎症性疾患等の望ましくない免疫活性化に関連する障害に罹患する。自己免疫疾患または炎症性疾患を有する個体は、既存の自己免疫疾患または炎症性疾患の認識可能な症状を有する個体である。例えば、特定の自己免疫疾患を駆動する関連自己抗原と複合化させた粒子によって、そのような個体において寛容を誘導することができる。
【0129】
特定の実施形態において、個体は、酵素補充療法に関連する疾患に罹患する。例えば、患者が、特定の欠陥を治療するために投与される組み換え的に生成された酵素に対する中和抗体応答を形成するのを防止するために、遺伝的欠陥を有する患者が産生することができない酵素と複合化させた粒子によって、そのような個体において寛容を誘導することができる(例えば、第VIII因子を作製する能力における遺伝的欠陥に起因する血友病に罹患する患者におけるヒト第VIII因子に対する寛容)。
【0130】
特定の実施形態において、個体は、疾患の治療に関連する障害に罹患する。組換え抗体の場合、例えば、患者が抗体治療薬に対する中和抗体を形成するのを防止するために治療状況において用いられるヒト化抗体に対する寛容が誘導される(自己免疫疾患の治療薬として用いられるヒト化免疫サブセット枯渇抗体または抗サイトカイン抗体に対する寛容)。
【0131】
自己免疫疾患は、臓器特異的および全身性の2つの広義のカテゴリーに分類することができる。自己免疫疾患は、限定されないが、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、II型糖尿病、多発性硬化症(MS)、早発閉経等の免疫媒介不妊症、強皮症、シェーグレン病、白斑、脱毛症(禿頭症)、多腺性不全、グレーブス病、甲状腺機能低下症、多発性筋炎、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)に関連するものを含む自己免疫肝炎、下垂体機能低下症、移植片対宿主疾患(GvHD)、心筋炎、アジソン病、自己免疫皮膚疾患、ブドウ膜炎、悪性貧血、セリアック病、ならびに副甲状腺機能低下症を含む。
【0132】
また、自己免疫疾患は、限定されないが、橋本甲状腺炎、I型およびII型自己免疫多腺性症候群、腫瘍随伴性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、線状IgA病、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、妊娠性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、小児慢性水疱性疾患、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、自己免疫好中球減少症、重症筋無力症、イートン・ランバート筋無力症症候群、全身硬直症候群、急性播種性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、伝導ブロックを伴う多巣性運動ニューロパチー、単クローングロブリン血症を伴う慢性ニューロパチー、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、小脳変性症、脳脊髄炎、網膜症、原発性胆管硬化症、硬化性胆管炎、グルテン過敏性腸疾患、強直性脊椎炎、反応性関節炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、混合性結合組織疾患、ベチェット症候群、乾癬、結節性多発動脈炎、アレルギー性脈管炎および肉芽腫症(チャーグ・ストラウス病)、多発性血管炎重複症候群、過敏性血管炎、ウェーゲナー肉芽腫症、側頭動脈炎、高安動脈炎、川崎病、中枢神経系統孤立性血管炎、閉塞性血栓血管炎、サルコイドーシス、糸球体腎炎、ならびに寒冷症も含む。これらの状態は、医学の技術分野において周知であり、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine,14th ed.,Fauci A S et al.,eds.,New York:McGraw-Hill,1998に記載されている。
【0133】
自己免疫疾患の研究のための動物モデルは、当該技術分野において既知である。例えば、ヒト自己免疫疾患に最も類似すると考えられる動物モデルは、高発生率の特定の疾患を自然に発症する動物株を含む。そのようなモデルの例として、限定されないが、1型糖尿病に類似する疾患を発症する非肥満糖尿病(NOD)マウス、ならびにニュージーランドハイブリッド、MRL-FaslprおよびBXSBマウス等の狼瘡様疾患になりやすい動物が挙げられる。自己免疫疾患が誘導されている動物モデルは、限定されないが、多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)、関節リウマチのモデルであるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)、およびブドウ膜炎のモデルである実験的自己免疫ブドウ膜炎(EAU)を含む。自己免疫疾患の動物モデルは、遺伝子操作によっても作製されており、例えば、炎症性腸疾患のIL-2/IL-10ノックアウトマウス、SLEのFasまたはFasリガンドノックアウト、および関節リウマチのIL-I受容体拮抗薬ノックアウトを含む。
【0134】
特定の実施形態において、個体は、細菌またはウイルス感染に罹患する。細菌またはウイルス感染を有する個体は、既存の細菌またはウイルス感染の認識可能な症状を有する個体である。
【0135】
本発明の修飾粒子を用いて治療可能なウイルス感染の非限定的なリストは、ヘルペスウイルス感染、肝炎ウイルス感染、西ナイルウイルス感染、フラビウイルス感染、インフルエンザウイルス感染、ライノウイルス感染、パピローマウイルス感染、パラミクソウイルス感染、パラインフルエンザウイルス感染、およびレトロウイルス感染を含む。好ましいウイルスは、対象の中枢神経系に感染するウイルスである。最も好ましいウイルスは、脳炎または髄膜炎を引き起こすウイルスである。
【0136】
本発明の修飾粒子を用いて治療可能な細菌感染の非限定的なリストは、ブドウ球菌感染、連鎖球菌感染、マイコバクテリア感染、バチルス感染、サルモネラ感染、ビブリオ感染、スピロヘータ感染、およびナイセリア感染を含む。好ましいのは、対象の中枢神経系に感染する細菌である。最も好ましいのは、脳炎または髄膜炎を引き起こす細菌である。
【0137】
いくつかの実施形態において、本発明は、疾患が発症する前の本発明の組成物の使用に関する。他の実施形態において、本発明は、進行する疾患を阻害するための本発明の組成物の使用に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、対象における疾患の改善に関する。対象において疾患を改善するとは、対象における疾患の治療、予防、または抑制を意味する。
【0138】
いくつかの実施形態において、本発明は、疾患の再発を予防することに関する。例えば、望ましくない免疫応答は、ペプチドの1つの領域(抗原決定基等)で生じ得る。望ましくない免疫応答と関連する疾患の再発は、ペプチドの異なる領域において免疫応答攻撃を受けることによって生じる可能性がある。本発明の免疫修飾性粒子は、付着するペプチドまたは抗原部分を含まないため、粒子は、複数のエピトープに対して有効である。MSおよび他のThI/17媒介性自己免疫疾患を含むいくつかの免疫応答障害におけるT細胞応答は、動的であり得、再発寛解型疾患および/または慢性進行性疾患の経過中に進展する。疾患が進行するにつれて標的が変化し得るため、T細胞レパートリーの動的性質は、特定の疾患の治療に影響を与える。以前は、疾患の進行を予測するために、応答のパターンについての既存の知識が必要であった。本発明は、動的に変化する疾患の影響である「エピトープスプレディング」の機能を妨げることができる組成物を提供する。再発の既知のモデルは、多発性硬化症(MS)のモデルとしての、プロテオリピドタンパク質(PLP)に対する免疫反応である。初期免疫応答は、PLP139-15への応答によって生じ得る。その後の疾患の発症は、PLP[pi]s-iβiへの再発免疫応答によって生じ得る。
【0139】
本発明の他の実施形態は、移植に関する。これは、ドナー個体からレシピエント個体への組織試料または移植片の移動を指し、組織によって提供される生理学的機能を回復するために組織を必要とするヒトレシピエントに対して頻繁に実施される。移植される組織は、(限定されないが)腎臓、肝臓、心臓、肺等の全臓器;植皮および目の角膜等の臓器の構成要素;ならびに骨髄細胞および骨髄または循環血液から選択および展開される細胞の培養物等の細胞懸濁液、そして全血輸血を含む。
【0140】
任意の移植の重篤な潜在的合併症は、宿主レシピエントと移植された組織との間の抗原性の相違から生じる。相違の性質および程度に応じて、宿主による移植片の、または移植片による宿主の、または両方の、免疫学的攻撃のリスクが存在する場合がある。リスクの程度は、同様の表現型を有する、同様の治療を受けた対象の集団における応答パターンを追跡し、十分に許容された臨床手技に従って種々の考えられる寄与因子を相関させることによって決定される。免疫学的攻撃は、既存の免疫学的応答(事前に形成された抗体等)、またはおよその移植時期に開始されるもの(TH細胞の産生等)の結果であり得る。抗体、TH細胞、またはTc細胞は、互いとの、ならびに種々のエフェクター分子およびエフェクター細胞との任意の組み合わせにおいて関与し得る。しかしながら、免疫応答に関与する抗原は、概して未知であり、したがって、抗原特異的療法を設計する上で、または抗原特異的寛容を誘導する上で困難を提示する。
【0141】
本発明の特定の実施形態は、レシピエントによる組織移植片の拒絶反応を引き起こす宿主対移植片疾患のリスクを低減することに関する。超急性、急性、または慢性の拒絶応答の影響を予防または低減するために処理が行われ得る。処理は、移植片が設置されるときに寛容が導入されているように、移植の十分前に優先的に開始されるが、これが可能ではない場合、処理は、移植と同時にまたは移植後に開始されてもよい。開始の時間にかかわらず、処理は、一般的に、少なくとも移植後の最初の1ヶ月間は一定の間隔で継続する。移植片の十分な適応化が起こる場合、追跡投与は必要ないかもしれないが、移植片の拒絶反応または炎症のいずれかの証拠が存在する場合、再開することができる。当然のことながら、さらにより低いレベルのリスクを達成するために、本発明の寛容化手技を他の形態の免疫抑制と組み合わせてもよい。
【0142】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、抗原分子に結合したPLG担体)は、1つ以上の足場、マトリックス、および/または送達系とともに使用される(例えば、米国特許出願第2009/0238879号;米国特許第7,846,466号;米国特許第No.7,427,602号;米国特許第7,029,697号;米国特許第6,890,556号;米国特許第6,797,738号;米国特許第6,281,256号(参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。いくつかの実施形態において、粒子(例えば、抗原を結合させたPLG粒子)は、足場、マトリックス、および/または送達系(例えば、対象への化学/生物学的材料、細胞、組織、および/または臓器の送達のための)に関連するか、吸着されるか、包埋されるか、コンジュゲートされる等である。いくつかの実施形態において、足場、マトリックス、および/または送達系(例えば、対象への化学/生物学的材料、細胞、組織、および/または臓器の送達のため)は、本明細書に記載の材料(例えば、1つ以上の抗原ペプチドにコンジュゲートされたPLG)を含み、かつ/またはそれからなる。
【0143】
いくつかの実施形態において、微孔性足場(例えば、生物学的材料(例えば、細胞、組織等)を対象に移植するため)が提供される。いくつかの実施形態において、その上に薬剤を有する微孔性足場(例えば、細胞外マトリックスタンパク質、エキセンディン-4)および生物学的材料を有する微孔性足場(例えば、膵島細胞)が提供される。いくつかの実施形態において、足場は、疾患(例えば、1型糖尿病)の治療、または関連する方法(例えば、診断方法、研究方法、薬物スクリーニング)において使用される。いくつかの実施形態において、足場は、足場の上および/または中にある本明細書に記載の抗原とコンジュゲートした担体とともに提供される。いくつかの実施形態において、足場は、抗原とコンジュゲートした材料(例えば、抗原とコンジュゲートしたPLG)から生成される。
【0144】
いくつかの実施形態において、足場および/または送達系は、1つ以上の層を含み、かつ/または1つ以上の化学的および/もしくは生物学的な実体/薬剤(例えば、タンパク質、ペプチドとコンジュゲートした粒子、小分子、細胞、組織等)を有する(例えば、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第2009/0238879号を参照のこと)。いくつかの実施形態において、足場および関連材料に対する免疫学的寛容の誘導を誘発するために、抗原結合粒子は、足場送達系とともに共投与される。いくつかの実施形態において、微孔性足場は、足場の上または中にある本明細書に記載の粒子とともに対象に投与される。いくつかの実施形態において、抗原結合粒子は、足場送達系と結合している。いくつかの実施形態において、足場送達系は、抗原結合粒子を含む。
【0145】
当業者には、本発明の範囲および種子から逸脱することなく、記載される特徴および実施形態の種々の修正、組み換え、および変更が明白であろう。特定の実施形態について記載してきたが、請求される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるものではないことを理解されたい。実際に、関連分野の技術者に明らかである記載される様式および実施形態の種々の修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。例えば、米国特許出願第2012/0076831号、同第2002/0045672号、同第2005/0090008号、同第2006/0002978号、および同第2009/0238879号(これらの各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)、ならびに米国特許第7,846,466号;同第7,427,602号;同第7,029,697号;同第6,890,556号;同第6,797,738号;および同第6,281,256号(これらの各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)は、本明細書に記載の種々の実施形態に使用される詳細、修正、および変更を提供する。
【0146】
本出願に記載される、および/または以下に列挙される全ての刊行物および特許は、参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例0147】
以下の実施例は、本発明の利点および特徴をさらに例示するために提供されるが、本開示の範囲を限定することは意図しない。
【0148】
材料および方法
キメラマウスの生成
6~8週齢のB6.SJL-PtprcaPep3b/BoyJ(CD45.1)マウスを950ラドの1回線量で照射した。12時間後、C57BL/6-7.2fms-EGFPドナーからの107骨髄細胞でマウスを再構成した。照射後10日間は、飲料水中のスルファメトキサゾール(Sigma Aldrich)およびトリメトプリム(Sigma Aldrich)をマウスに与えた。上述のように、照射の6週間後にマウスをWNVに感染させた。フローサイトメトリーを使用してキメラ化を確認したところ、以前に実証されたように、常にドナー起源の96~99%であることが分かった。(Getts et al.,J Neurochem.103:1019,2007)。
【0149】
免疫組織学
マウスを麻酔し、50mLの滅菌PBSで灌流した。パラフィンブロックに処理した心臓を除いて(Getts et al.,J.Neurochem 103:10919-1030,2007)、全ての臓器を単離し、Optimum Cutting Temperatureコンパウンド(OCT;Tissue-Tek、日本、東京都)中で瞬間凍結させた。8ミクロンの組織切片を、クリオスタットミクロトーム上で切断し、一晩空気乾燥させた後、必要になるまで-80℃で保存した。凍結切片を解凍し、組織学的検査(標準的なヘマトキシリン およびエオシン染色)または免疫組織化学的検査を行った(Getts et al.,J.Exp Med 205:2319-2337,2008)。MARCO、SIGN-R1およびSIGLEC-1(R&D Systems,MN,USA)、CD68(Abcam,MA,USA)、ならびにKi67(Abcam)に対する抗体を示される通りに使用した。DP-70カメラおよびDPマネージャー2.2.1ソフトウェア(Olympus、日本、東京)を使用して、Olympus BX-51顕微鏡上で画像を取得した。
【0150】
顕微鏡および画像取得
DP-70カメラおよびDPマネージャー2.2.1ソフトウェア(Olympus)を使用して、Olympus BX-51顕微鏡(Olympus、日本)上で画像を取得した。
【0151】
脳および肝臓からの白血球の単離
以前に記載されているように(Getts et al,J Exp Med.29:2319,2007)、デオキシ-リボヌクレアーゼ(0.005 g/ml;Sigma Aldrich)およびコラゲナーゼ IV(0.05 g/ml;Sigma Aldrich)を含むPBS中、37℃で60分間脳を消化することにより、PBSで灌流したマウスの脳から白血球を得た。10%FCSで消化を停止し、70μmナイロン製細胞濾過器にホモジネートを通過させた(Becton Dickinson、NJ,USA)。340xgで10分間遠心分離した後に得られたペレットを、30% Percoll(Amersham,Norway)中に再懸濁し、80% Percollに重層した。1140xgで25分間室温で遠心分離した後、30%/80% 界面から白血球を回収した。同じプロトコルは、肝臓から白血球を得るためにも用いられ、処理前に組織の重量が計測される。
【0152】
脾臓、血液、および骨髄からの白血球の単離
フローサイトメトリー分析のために、右大腿を切除し、PBSを充填した注射器を使用して骨髄細胞を洗い流した。骨髄前駆体の単離のために、少なくとも4匹のマウスからの大腿および脛骨を用いた。洗い流した後に得られた細胞懸濁液を、70μmの細胞濾過器を通して濾過し、340gで5分間遠心分離した。得られたペレット中の赤血球を、NH4Clベースの赤血球溶解緩衝剤(BD Pharm Lyse(商標);BD Pharmingen)中に溶解した後、340xgで5分間遠心分離した。末梢血の場合、心穿刺により血液を採取し、直ちにクエン酸緩衝液(mMol、Sigma Alrich)中に移した。得られた懸濁液を70% Percoll に重層し、ブレーキをオフにして、室温で20分間1140xgで遠心分離した。界面を回収し、PBS中で細胞を1回洗浄し、340xgで遠心分離した。脾臓の白血球を単離するために、7070μm細胞濾過機に脾臓を通過させ、340gで5分間遠心分離した。得られたペレット中の赤血球を、NH4Clベースの赤血球溶解緩衝剤(BD Pharm Lyse(商標);BD Pharmingen)中に溶解した後、340xgで5分間遠心分離した。
【0153】
フローサイトメトリー
脳、肝臓、血液、および骨髄から(上述のように)採取した細胞を、PBSで洗浄し、抗CD16/CD32 抗体(Biolegend)でブロックした。トリパンブルー排除法を用いて生存細胞を計数したところ、常に>95%の細胞生存率を示していた。
【0154】
細胞表面分子の発現を測定し、アルゴンイオンおよびHeNeレーザを装備したFACS ARIA(Becton Dickinson)上で細胞分別を行った。前方および側方散乱によって生存集団にゲートをかけ、その後、前方ゲートにより決定された蛍光集団を同定した。対象となる集団を同定する特定の蛍光および散乱パラメータを用いて分別を行った。分別の厳密性は、骨髄集団で>98%の純度を達成するための純度に設定した。
【0155】
フローサイトメトリープログラムFlow Jo(FlowJo、Ashland,OR,USA)を使用して、取得したFACSデータファイルを分析した。対象となる細胞集団の定量化は、分析時のフローサイトメトリーの割合、および各臓器からの絶対細胞数に基づいて計算した。
【0156】
養子移入
養子移入と称される活性疾患の第2のモデルを調査するために、本発明の実施形態の開発中に実験を行った。動物をペプチドで免疫する代わりに、活性疾患を有するマウスの脾臓からのリンパ球をレシピエントに移植し、その後疾患を発症させた。PLGナノ粒子が、養子性に移植した活性化エフェクター細胞を不活性化する能力を特徴づけるために、本発明の実施形態の開発中に実験を行った。対照ペプチドと結合した粒子または脾細胞で処理したマウスには、4日目に始まって臨床スコアの増加が見られた。PLG-PLP139~151粒子で処理したマウスは、2日目に、2つの時点を除く全ての時点で40日目までずっと平均臨床スコア0を有し、それらの他の時点での平均臨床スコアは0.25であった。
【0157】
多重ELISA
製造者の指示(Quansys Biosciences、Logan,Utah,USA)に従って多重化プレートELISAを行った。端的に述べると、脳、脾臓、および肝臓組織をPBS中でホモジナイズし、1000xgで回転させて清澄させ、アッセイを行うまで-20℃で保存した。血清試料も使用した。提供された緩衝液中で解凍した試料および標準物質を希釈し、各々30μlを、それぞれが特定の可溶性タンパク質に対する捕捉抗体を含有する16個のスポットを含む各ウェルに播種した。次いで、軌道振盪器上で、プレートを120rpmで1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、30μlの検出抗体を各ウェルに加え、さらに1時間インキュベートした。3回洗浄した後、ストレプアビジン-HRPを加え、さらに15分間インキュベートした。次いで、プレートを6回洗浄し、基質混合物を加えた。CCDイメージャ(Kodak、Rochester NY,USA)上でプレートを直ちに読み取った。Quansys Q-viewソフトウェア(Quansys Biosciences)を使用してプレートの画像を分析した。
【0158】
実験的自己免疫脳炎(EAE)の誘導および評価
0.1mgのMOGペプチド(MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK(配列番号1);Auspep、Parkville,Victoria,Australia;>95%HPLC精製)を含有するエマルション、および2mg/mLの結核菌(Sigma Aldrich)を含有するフロイント完全アジュバントをマウスに皮下注射した。2日後、マウスに、500μlの百日咳毒素(Sigma Aldrich)を腹腔内投与した。マウスを疾患進行について監視し、以下のスケールで等級分けした:1、尾の弛緩および/または片後肢の脱力;2、複数肢の脱力、歩行障害;3、単一肢の麻痺;4、複数肢の麻痺、失禁;5、瀕死。
【0159】
統計
グラフを作成し、GraphPad PrismおよびInStatにおいてそれぞれコンピュータ統計的分析を行った(どちらのプログラムもGraphPad software、San Diego,CA,USAから)。データに応じて、対応のない両側スチューデントt検定、またはTukey-Kramerの事後検定を用いた一元配置ANOVA ANOVAを行い、P<0.05を有意と見なした。
【0160】
体重減少、浸潤、およびウイルス力価等のパラメータ間の相関分析には、二次多項式(Y=A+B*X+C*X^2)を用いた非線形回帰(曲線適合)を使用した。
【0161】
実施例1
負電荷を帯びた免疫修飾性粒子(IMP)の調製
D2O中のポリ(エチレン-無水マレイン酸)(PEMA)の溶液(4mL、1% w/v)に、ジクロロメタン(DCM)中のポリ(ラクチド-co-グリコール酸)(PLG)の溶液(2mL、20% w/v)を滴下で加えた。VC 30 Ultrasonic Processorを使用して、氷上で30秒間16ワットで混合物を超音波処理した。得られたホモジナイズされた粗生成物を、次いで、D2Oの溶液(0.5% w/vのPEMAを含有する200mL)に注ぎ入れた。Bellco Glass,Inc.のBellstir Multi-stir 9 磁気攪拌機を使用して、3.5の速度設定で、ホモジナイズされたスラリを一晩撹拌させた(10Wで10秒間、16Wで10秒間、16Wで30秒間)。
【0162】
結果
3時間の撹拌後、使い捨てポリスチレン製キュベット中で動的光散乱法を用いて粒径分析を行った。
a.10W、10秒-Z-平均=499.9nm-PdI=0.23、ピーク=634.5nm
b.16W、10秒-Z-平均=528.9nm-PdI=0.227、ピーク=657.5nm
c.16W、30秒-Z-平均=471.6nm-PdI=0.228、ピーク=580.5nm
d.16W、60秒-Z-平均=491.1nm-PdI=0.275、ピーク=600.8nm
【0163】
反応が終了してから、得られた粗懸濁液を精製した。
【0164】
精製
新しいD2Oおよび10x炭酸水素ナトリウム緩衝液を一晩4℃で冷却した。40μm細胞濾過器を使用して、各バッチから36mLの粒子懸濁液を濾過し、冷10x炭酸水素ナトリウム緩衝液4mLを含む適切に標示した50mL遠心管内に入れた。各ビーカーから、そのような管を約6本作り出した。全ての管を4℃で15分間7000gで遠心分離し、上清を吸引した。上記手順を用いて懸濁液の調製を繰り返し、できる限り多くの粒子ペレットを1mLの冷D2Oに懸濁した。
【0165】
再懸濁した粒子を、4mLの冷10x炭酸水素ナトリウム緩衝液を含む新しい管に移した。(ステップ1)
【0166】
全ての粒子ペレットが成功裡に再懸濁されるまで粒子の再懸濁を繰り返した。(ステップ2)
【0167】
次いで、6本の遠心管を合わせて1本の遠心管(50mL管)に入れ、冷D2Oの残りの量で40mLまで管を充填した(洗浄1)。
【0168】
管を4℃で20分間7000gで遠心分離し、上清を吸引した。
【0169】
毎回、少なくともさらに2回、得られた粒子のステップ1および2ならびに洗浄1を繰り返した。最後に、得られた粒子ペレットを液体窒素中で瞬間凍結に供し、マニホールド内で凍結乾燥させて負電荷を帯びたIMPを得た。
【0170】
図1は、表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の動的光散乱分析による特徴を示す。Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Westborough,MA)上で、18.2MΩの水中、1秒当たり2.5×105カウントの計数率で表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を分析した。表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の集団は、Z-平均粒径567nm、ピーク直径670nm、および多分散指数0.209を有していた。
【0171】
表1は、表面官能化PLG-PEMA粒子の測定値を示す。各バッチは若干異なるため、表中のデータは代表値である。しかしながら、表中の数値は、いくつかの粒子のバッチを合わせたものに基づいている。二重エマルション粒子の測定値は、表1の測定値に類似する。
【表1】
【0172】
実施例2
抗原を結合させたPLGAビーズの投与は、再発性実験的自己免疫性脳炎を予防する
再発性実験的自己免疫性脳炎(R-EAE)の予防のための寛容を誘導するために、免疫優性プロテオリピドタンパク質PLP139~151エピトープ(PLG-PLP139~151)を用いてPLGナノ粒子を調べた。上述のようにR-EAEマウスを作製した。
【0173】
動物に投与されたペプチドは、平均直径500nmの粒子に結合した。免疫時(0日目)に対して-7日目に、PLP139~151-PLGA(N=5)、OVA323~339-PLGA(N=5)、または非コンジュゲートPLGA(N=5)のいずれかでマウスを処理した。ピーク疾患は、典型的には12~14日目辺りに観察され、マウスの臨床疾患をスコア化した。ペプチドを含まない粒子、または対照ペプチドOVA323~339で修飾した粒子は、疾患の誘導を防止しなかった。しかしながら、PLP139~151で修飾したPLGA粒子は、20~30日目に1未満の低い臨床スコアを呈した以外は、全て臨床スコア0(疾患が認められない)を示した(
図2)。非修飾PLGを用いた、またはポリスチレン粒子を使用した以前の研究では、この効果的な疾患の低減は示されず、ポリスチレンが結合した粒子がアナフィラキシーを引き起こすことが多かった。
【0174】
さらに、両方の免疫化PLP139~151エピトープに対する遅延型過敏反応(DTH)の欠如によって、ミエリン特異的CD4+T細胞の特異的不活性化が証明された。総合すると、7日目のPLG-PLP139~151を用いた予防的投与は、EAEの発症を特異的に予防したことから、疾患を予防する粒子の能力の改善を意味している。粒子で得られたスコアは、抗原を結合させた脾細胞で得られるスコアと同じくらい良好であり、おそらくはそれよりも良好である。
【0175】
投与される粒子の種類も、マウスモデルにおけるEAEの発症に影響を及ぼす。免疫時(0日目)に対して-7日目に、OVA323~339-PLS(N=5)、OVA323~339-PLGAPHOSPOREX(N=5)、OVA323~339-PLGAPEMA(N=5)、PLP139~151-PLA(N=5)、PLP139~151-PLGAPHOSPOREX(N=5)、またはPLP139~151-PLGPEMA(N=5)のいずれかでマウスを処理した。ピーク疾患は、典型的には12~14日目辺りに観察され、マウスの臨床疾患をスコア化した。対照ペプチドOVA323~339で修飾したいずれの組成物の粒子も、疾患の誘導を防止しなかった。しかしながら、PLP139~151を結合させたPLGビーズは、PLP139~151を結合させた市販の(Phosphorex)PLGまたはポリスチレンよりも、R-EAEの誘導を下方制御する上でより効果的であった(
図3Aおよび3B)。
【0176】
実施例3
抗原を結合させたPLG粒子の静脈内注入は、OVA/ミョウバンで事前に感作させた動物においてアナフィラキシー誘導性の体温低下を誘発しない
活性疾患の存在のために、抗原に対するアナフィラキシーが懸念される:これは、即死を引き起こす可能性があり、ポリスチレン結合粒子とともに記載されている。アナフィラキシーは、体温の著しい低下と関連している。OVA-PLGの静脈内投与が、事前に感作させた動物においてアナフィラキシー誘導性の体温低下を誘導するかどうかを調べるために、0日目に、腹腔内注射により10μgのOVA/ミョウバンでマウスを免疫した。14日目に、腹腔内注射により10μgのOVA/ミョウバンでマウスを再び免疫し、次いで、21日目に静脈内投与したOVA-PLGで寛容化した。次いで、28日目に、静脈内投与によりOVA-PLG粒子またはOVAのいずれかでマウスを寛容化した。
【0177】
図4に示すように、28日目に可溶性OVAで処理したマウスは、OVA-PLG粒子で処理した動物と比較して体温の低下を呈した。粒子送達の1時間以内には体温低下は観察されなかった。
【0178】
図5は、寛解中のPLP-PLGの投与は、いずれのアナフィラキシー関連死も引き起こさないことを示す。CFA中のPLP139~151の皮下注射により6~8週齢のメスSJL/JマウスにEAEを誘導し、臨床疾患の発症を監視および記録した(
図5B)。疾患誘導から21日目に、可溶性PLP139~151(白抜き四角)、可溶性OVA323~339(白抜き丸)、またはPLGナノ粒子に結合した同じペプチド(塗りつぶし)をマウスに静脈内注射した。注射後1時間、10分ごとに動物の体温を監視および記録した(
図5A)。
【0179】
実施例4
PLP-PLG粒子による予防的投与は、長期の抗原特異的寛容を誘導する
疾患誘発の7日前に、濃度を上昇させたPLP139~151-PLGの静脈内投与によって最適用量を決定し、OVA323~339-PLGで処理したSJL/Jマウスと比較して臨床疾患の発症について監視した(
図6A)。6~8週齢のメスSJL/Jマウスに、PLP139~151(四角)またはOVA323~339(丸)のいずれかを結合させたPLGナノ粒子を静脈内注射した。7日後(
図6B)、25日後(
図6C)、または50日後(
図6D)に、CFA中のPLP139~151の皮下注射によりEAEを誘導した。パネルBの動物を臨床疾患について100日間追跡した。
図6Eは、疾患誘導から8日目に、パネルBに示すマウスのサブセットにおいて遅延型過敏反応(DTH)を行ったことを示す。パネルBのPLP139~151/CFA予備刺激群から選択された代表の動物(OVA323~339-PLGおよびPLP139~151-PLG)の耳を、予備刺激用のPLP139~151エピトープおよびOVA323~339対照ペプチドに曝露した。24時間後にDTHの尺度として耳の腫脹を判定し、曝露前の応答を差し引いた。
図6Fは、6~8週齢のメスSJL/Jマウスに、PLP178~191(三角)、OVA323~339(丸)、もしくはPLP139~151(四角)を結合させたPLGナノ粒子、または未結合粒子のみ(縁取りのある丸)を静脈内注射したことを示す。7日後、CFA中のPLP178~191の皮下注射によりEAEを誘導し、示される時点で疾患を監視した。
【0180】
実施例5
抗原結合粒子を用いた再発性実験的自己免疫性脳炎の治療
PLG-PLP139~151粒子が、疾患を予防するのではなく、むしろ疾患を治療する能力を調査するために、かつ、投与経路が疾患の発症に影響を及ぼしたかどうかを判定するために、本発明の実施形態の開発中に実験を行った。0日目に、PLP139~151およびアジュバントでマウスを免疫した。マウスは、通常、12~14日目に最大臨床スコアを有する。このモデルでは、10日目に、静脈内(iv)投与、腹腔内(ip)投与、皮下(sc)投与、または経口的のいずれかにより、PLG-PLP139~151粒子または対照PLG-OVA323~339粒子のいずれかでマウスを処理した。
図7に示すように、予防的寛容は、PLG-PLP139~151粒子が静脈内または腹腔内のいずれかで投与された場合に最も効率的である。静脈内投与したPLP139~151-PLGで処理した動物は、疾患を発症せず、ほとんどの時点で平均臨床スコア0を有していた。これは、70%を超える動物がアナフィラキシーによって死亡したことが観察された、PLP139~151ポリスチレン粒子を用いて処理した動物とは対称的である。
【0181】
実施例6
抗原結合粒子の寛容は、活性な再発性実験的自己免疫性脳炎における抗原特異的Th1およびTh17応答の誘導を阻害する
抗原結合粒子の投与がTヘルパー細胞の誘導を阻害するかどうかを判定するために、-7日目に、MOG35~55-PLGまたはOVA323~339-PLG粒子のいずれかをBALB/cマウスに静脈内投与した。0日目に、OVA323~339-PLG粒子およびフロイント完全アジュバント(CFA)をマウスに皮下投与した。10日目に、MOG35~55-PLGまたはOVA323~339-PLG粒子のいずれかで動物を再刺激し、流入領域リンパ節細胞を単離した。10日目に、CPM、ならびにIL-17、GM-CSF、IFN-γ、IL-10、およびIL-4のレベルを測定した。
図8に示すように、OVA323~339-PLG粒子の投与は、処理した動物においてTh1およびTh17応答を阻害した。
【0182】
実施例7
PLP-
139~151を結合させたPLGA粒子により寛容を誘導した。
PLP139~151-PLGまたはOVA323~339PLGをマウスに送達することにより、さらなる治療的寛容戦略を行った。組織学的分析は、PLP139~151-PLG粒子の投与が頸髄の炎症および脱髄を阻害することを示した。マウスをPLP-PLGまたはOVA323~339-PLGで処理し、40日目に組織を回収した。頸髄を単離し、切片化して、R-EAEおよび多発性硬化症の病態の根底にあるCNSにおける免疫応答を調査した。
図9は、OVA323~339-PLGで処理した動物の組織よりも天然組織に類似するPLP139~151-PLGで処理した動物の脊髄内の免疫細胞浸潤の低下を示す。OVA323~339-PLGで処理した動物は、CD45、CD4、およびCD11bに陽性染色を示したのに対し、PLP139~151-PLGで処理した動物は、これらの因子に最小限の染色を示した。
【0183】
PLP139~151-PLG粒子の投与も、処理マウスの血液脳関門(BBB)の破壊および脊髄中のマクロファージ活性化を阻害する。フロイント完全アジュバント(CFA)、OVA323~339PLG粒子、またはPLP139~151-PLG粒子のいずれかで動物を処理した。臨床スコアおよびEAEの発生率を決定し(
図10B)、生体内撮像により脊髄を観察した(
図10Aおよび11)。AngioSenseは、CNS内の血液漏出を測定し、ProSenseは、活性化されたマクロファージを報告する(カテプシンの活性化は、蛍光シグナルを明らかにするレポーターを切断する)。棒グラフは、脳内およびSCスキャンで示されるシグナル強度に対する数値を示す。
【0184】
抗原が封入された粒子によっても寛容を誘導することができる。
図12は、PLP139~151が封入されたPLG粒子の投与が、マウスにおけるR-EAEの誘導を阻害することを示す。自己抗原を封入する能力は、より大きな抗原適用範囲を達成し、ひいてはエピトープスプレディングにより効果的に対応するように、タンパク質またはさらには臓器ホモジネートの複合混合物の使用を可能にする。
【0185】
実施例8
PLP-139~151を結合させたPLGA粒子によって誘導される寛容は、制御性T細胞の増加/活性化に一部依存する。
-9日目に、制御性T細胞の一般的なマーカーである抗CD25抗体(Tregs)でSJL/Jマウスを処理し、次いで、-7日目に、OVA323~339PLG粒子および抗CD25抗体、OVA323~339PLG粒子および対照IgG抗体、PLP139~151-PLG粒子および抗CD25抗体、またはPLP139~151-PLG粒子および対照IgG抗体のいずれかで処理した。
図13に示すように、PLP139~151-PLG粒子および抗CD25抗体で処理した動物は、時折、PLP139~151-PLG粒子および対照IgG抗体で処理した動物よりも高い平均臨床スコアを示した。これは、Treg、または少なくともCD25を発現するT細胞が、寛容の誘導において役割を果たすことを裏付けるものである。
【0186】
実施例9
活性および養子性EAEにおいて、PLP
139~151-PLG粒子によって治療的寛容を誘導した。
PLP139~151-PLG粒子によって誘導された治療的寛容を、活性および養子性EAEにおいて比較した。2.5×106 PLP139~151で活性化した芽球の養子移入により、6~8週齢のメスSJL/Jマウスに養子性EAEを誘導した。疾患誘導から2日後(
図14A)および14日後(
図14C)に、500nmのPLGナノ粒子に結合したPLP139~151(四角)またはOVA323~339(丸)ペプチドをマウスに腹腔内注射した。臨床疾患スコアを、抗原を結合させた脾細胞による処理後のスコアと比較した(
図14A)。42日目に、PLP139~151またはOVA323~339寛容化マウスから、組織学的分析のために脳および脊髄を採取した。パネルAのマウスの切片を、PLPタンパク質およびCD45について染色した(
図14B)。パネル(C)のマウスの脊髄切片をLuxol Fast Blueで染色した(
図14D)。脱髄および細胞浸潤の領域を矢印で示す。結果は、養子性EAEを有するマウスにおいて、PLP139~151-PLG粒子によって寛容が誘導されることを示す。
【0187】
図15は、OVA323~339またはPLP139~151にコンジュゲートしたSPまたはPLG粒子のいずれかを用いた処理後の、活性EAEおよび養子性EAEを有するマウスの平均臨床スコアを表すグラフを示す。疾患誘導から10日後(
図15A)および2日後(
図15B)に、500nmナノ粒子に結合したPLP139~151-SP、PLP139~151-PLG、またはOVA323~339-SP、またはOVA323~339-PLGペプチドをマウスに腹腔内注射し、平均臨床スコアを決定した。どちらの場合も、PLP139~151-PLG粒子の投与が疾患を軽減したことから、寛容の誘導が示唆される。
【0188】
PLP-PLG寛容マウスにおいて、中枢神経系免疫細胞の浸潤も劇的に低下した。養子移入によるEAE誘導の2日後、PLP139~151(四角)またはOVA323~339(円形)と結合した500nm PLGナノ粒子をSJL/Jマウスに腹腔内注射した。疾患のピーク(14日目)に、脳および脊髄を除去し、フローサイトメトリーにより、リンパ球(
図16B)、APC(
図16C)、ミクログリア(
図16D)、末梢樹状細胞(
図16E)、骨髄樹状細胞(
図16F)、およびマクロファージ(
図16G)の数を数えた。これらの集団のためのゲーティング戦略を(
図16A)に示す。IL-17AおよびIFN-γの細胞内染色の前に、PMAおよびイオノマイシンでCNS細胞調製物を5時間刺激した(
図16H)。
【0189】
実施例10
養子移入EAEにおいて、抗PD-1モノクローナル抗体を用いた処理は、PLP139~151を封入したPLGナノ粒子による寛容誘導を抑制する
養子性EAEを有するマウスにおいて、抗PD-1抗体を用いた処理がPLP139~151が誘導した寛容に及ぼす影響を調べるために、0日目に、3×106 PLP139~151で活性化したT細胞芽球を静脈内投与によりマウスに投与した。2日目に、PLG粒子中に封入されたPLP139~151またはOVA323~339を、PBSまたは抗PD-1抗体のいずれかとともに静脈内投与により投与した。4日目、6日目、8日目、10日目、および12日目に、全ての動物に250μgの抗PD-1抗体またはPBSを投与した。
【0190】
図17に示すように、PLG粒子内に封入されたPLP139~151ペプチドの投与は、PBSとともに粒子が投与された場合に寛容を誘導する。しかしながら、抗PD-1抗体の投与は、この寛容を低下させる。
【0191】
実施例11
養子移入EAEにおいて、作動性抗CD40モノクローナル抗体を用いた処理は、PLP139~151が封入されたPLGナノ粒子による寛容誘導をIL-12依存性様式で抑制する
養子性EAEを有するマウスにおいて、作動性抗CD40抗体がPLP139~151が誘導した寛容に及ぼす影響を調べるために、0日目に、3×106 PLP139~151で活性化したT細胞芽球を静脈内投与によりマウスに投与した。2日目に、PLG粒子内に封入されたPLP139~151またはOVA323~339を静脈内投与によりマウスに投与した。3日目に、対照IgG2a抗体、抗CD40抗体、または抗CD40抗体のいずれか、および抗Il-12抗体を動物に投与した。
【0192】
図18に示すように、PLG粒子内に封入されたPLP139~151ペプチドの投与は、PBSとともに粒子が投与された場合に寛容を誘導する。作動性抗CD40抗体の投与は、この寛容を低下させるが、この寛容の低下は、抗IL-12抗体の添加により逆転される。
【0193】
実施例12
PLG粒子内に封入されたOVAは、アレルギー性気道炎症および生体内OVA特異的Th2応答を予防的に阻害する。
PLG粒子内に封入されたOVAが気道炎症に及ぼす予防効果を調べるために、-7日目に、マウスをOVA-PLGで静脈内処理した。0日目に、10μg/マウスの用量のOVA/ミョウバンをマウスに腹腔内注射した。7日目に、マウスを再びOVA-PLGで静脈内処理し、14日目に、さらに10μg/マウスのOVA/ミョウバンを腹腔内注射した。28日目~30日目に、エアロゾル化したOVAでマウスを3回処理した。
【0194】
図19に示すように、OVA-PLGの予防的投与は、IL-4、IL-5、IL-13、およびIL-10の分泌を減少させ、血清OVA IgEおよび肺内好酸球のレベルを減少させた。
【0195】
PLG粒子内に封入されたOVAは、縦隔リンパ節からのOVA特異的な生体外リコール応答を予防的に阻害する。
図20Aに示すように、OVA-PLGで処理した動物において、25μgのOVAを用いた再刺激後に観察されたリンパ節増殖が減少した。さらに、OVA-PLGを用いた処理は、OVAを用いた再刺激後のサイトカインの放出を減少させる。
図20Bは、OVA-PLGで処理したマウスにおいて、IL-4、IL-5、IL-13、およびIL-10のレベルが減少したことを示す。
【0196】
実施例13
PLG粒子内に封入されたOVAは、アレルギー性気道炎症および生体内OVA特異的Th2応答を治療的に阻害する
PLG粒子内に封入されたOVAが気道炎症に及ぼす治療効果を調べるために、0日目および14日目に、10μg/マウスの用量のOVA/ミョウバンでマウスを腹腔内処理した。28日目および42日目に、OVA-PLGをマウスに静脈内投与した。56日目~58日目に、エアロゾル化したOVAでマウスを3回処理した。
【0197】
図21に示すように、OVA-PLGの治療的投与は、IL-4、IL-5、IL-13、およびIL-10の分泌を減少させ、血清OVA IgEおよび肺内好酸球のレベルを減少させた。
【0198】
図22は、PLG粒子に封入されたOVAが、気管支肺胞洗浄液中のOVA特異的Th2サイトカインを、OVAを結合させたPLG粒子よりも良好に治療的に下方制御することを示す。28日目および42日目に、PLG粒子内に封入されたOVAまたはPLG粒子に結合したOVAのいずれかでマウスを処理したことを除いて、上述のように動物を処理した。驚くべきことに、封入されたOVAは、Th2サイトカインの分泌を、PLG粒子の表面に結合したOVAペプチドよりも多く阻害した。
【0199】
実施例14
クロモグラニンA p31ペプチド-PLG粒子によって誘導される寛容は、1型糖尿病を阻害する
3週齢マウスから脾臓、腋窩、上腕、鼠径部、および膵臓のリンパ節細胞を単離することにより、BDC2.5マウスにおいて1型糖尿病を誘導した。単離細胞を培養し、2×106細胞/mLを0.5μMのp31ペプチドとともに96時間インキュベートすることにより生体外で活性化した。0時に、静脈内投与により、5×106細胞をNOD.SCIDマウス(6~8週)に移入した。3日後、SPまたはPLG2に結合したp31またはMOG35~55ペプチドの静脈内投与によりマウスを寛容化した。
【0200】
図23Aおよび23Bは、処理後の動物の血糖レベルを示す。p31ペプチドを結合させたPLGの投与は、MOG35~55ペプチドを結合させた粒子による投与後に見られたものと比較して、より低い血糖レベルをもたらした。
図23Cは、動物において観察されたIFNγ分泌細胞の割合も、MOG35~55ペプチド-PLGで処理したマウスと比較して、p31-PLGで処理したマウスにおいて減少したことを示す。
【0201】
p31-PLGによって誘導される寛容は、Tregを必要とする。上述のようにマウスにおいて1型糖尿病を誘導し、活性化細胞をNOD SCIDマウスに移入してから2時間後、p31-PLGまたはMOG35~55PLG粒子のいずれかでマウスを寛容化した。
図24に示すように、Tregの枯渇は、p31-PLG粒子の投与によって誘発された寛容を抑制する。
【0202】
実施例15
インスリンを結合させたPLG粒子によって誘導される寛容は、NODマウスにおける自然発症性1型糖尿病の発症を阻害する
NODマウスを、6、8、および10週齢で、静脈内投与によりBSA(N=22)またはインスリン(N=23)を結合させたPLG粒子のいずれかで処理した。次いで、>250mg/dLの血糖として定義される糖尿病の発症についてマウスをアッセイした。
図25に示すように、インスリンを結合させたPLG粒子の投与は、300日にわたって糖尿病を発症しなかったマウスの割合を有意に増加させた(22.7%と比較して69.6%;p=0.0027)。
【0203】
実施例16
生着動態
-7日目に、OVA-PLGまたは対照ペプチドDby-PLG(オスC57BL/6マウスによって発現される主要なH-Y抗原)のいずれかでメスCD45.2マウスを寛容化した。-1日目に、マウスを200ラドで照射し、次いで、0日目に、オスCD45.1マウスの1×106、5×106、または1×107骨髄細胞を移植した。次いで、1日目に、OVA-PLG、Dby-SP、またはDby-PLGのいずれかでレシピエントマウスを寛容化し、キメラ化のFACS分析のために血液を採取した。
図26は、レシピエントマウスに観察されたCD45.1ドナー細胞の割合を示す。
【0204】
図27は、1日目にOVA-PLG、Dby-SP、またはDby-PLGのいずれかを用いて寛容化した後の、レシピエントマウスにおけるドナーCD45.1細胞の割合を示す。1匹の陽性対照マウスが、有意な生着を示さなかった(約10%)。全ての陰性対照マウスは、ドナー細胞を生着しなかった。1匹のDby-SPマウスが、有意な生着を示さなかった(約10%)。2匹のOVA-PLGマウスがドナー細胞を生着し(約10%)、1匹は、16週目までには完全に拒絶反応を示した。1匹のDby-PLGマウスは、12週目に拒絶反応を示し始め、16週目までには10%となった。Dby-PLG群は、16週目までに10%~56%の生着の範囲であった。OVA-PLGマウスは、1)自然の生着、2)OVA323とDbyの間の配列相同性、または3)粒子の免疫原性特性を示した。Dby-PLGは、Dby-SPおよびOVA-PLGよりも多くの生着が可能である。
【0205】
図28は、寛容が、レシピエントマウスのCD45.1細胞の割合に影響を及ぼすタイミングを示す。陽性対照は、予想された(約10%)よりも少ない生着(約4%)を示す。1匹の陰性対照マウスが、3つ全てのOVA-PLG群で5%の生着を有し、-7日目、+1日目群の1匹のマウスが生着を示した(12%)。1日目の寛容は、-7日目の寛容よりも臨床的に意義がある。
【0206】
実施例17
クマリン-6 PLGA粒子は、投与の24時間後には検出不可能である。
抗原に結合しているかまたは抗原を含まないかのいずれかであるクマリン-6 PLGA粒子でマウスを処理した。
図29に示すように、粒子は、投与後3時間には検出可能であったが、投与後24時間には検出不可能であった。DAPIで対比染色した、注射後3時間(中央の行)および注射後24時間(下の行)の、腹腔内蛍光PLGA/PEMA微粒子を注射したマウス脾臓(左の列)、肝臓(中央の列)、および肺(左の列)切片と比較した非注射ナイーブマウス(上の行)。
【0207】
実施例18
ナノ粒子は生体内でマクロファージと会合する
投与後6時間および15時間の肝臓の分析は、PLGA粒子が肝臓内でF4/80+細胞と共局在化していたことを示す(
図30)。
【0208】
静脈内注入の24時間後、辺縁帯マクロファージは、TAMRA標識PLP139~151を結合させた粒子を優先的に取り込む。
図31に示すように、PLP139~151+細胞の割合が最も高いのは辺縁帯マクロファージである。
【0209】
実施例19
コア内に可溶性PLP139~151を含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を使用したSJL/JマウスにおけるR-EAEの阻害
0日目のPLP139~151/CFAによる予備刺激前の-7日目および-1日目に、コア内に可溶性PLP139~151ペプチドを含む2.5mgの500nm~700nm表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子をSJL/Jマウスの群に腹腔内注射した。0日目に対照マウスを予備刺激したが、-7日目または-1日目には粒子処理を行わなかった。さらに20日間、R-EAEの臨床徴候についてマウスを観察した。
【0210】
図32に示す結果は、PLP139~151/CFAによる予備刺激の日数に対する1日の平均臨床スコアを示す。コア内に可溶性PLP139~151を含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を使用した免疫学的寛容の誘導により、SJL/JマウスにおいてPLP139~151/CFAで誘導したR-EAEが阻害された。
【0211】
実施例20
可溶性卵白アルブミンを含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子によるアレルギー性気道炎症の阻害
マウスにアレルギー性気道炎症(AIA)を誘導した。0日目および+14日目の卵白アルブミン/ミョウバンによる予備刺激前の-7日目および+7日目に、コア内に可溶性卵白アルブミンまたは可溶性ウシ血清アルブミン(対照)を含む2.5mgの500nm~700nm表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子をBalb/cマウスの群に静脈内注射した。+28-30日目に、エアロゾル化した卵白アルブミンにマウスを曝露した。次いで、マウスを屠殺し、気管支肺胞洗浄液を得た。卵白アルブミン特異的IgEの血清レベルも測定した。
【0212】
気管支肺胞洗浄液中の好酸球数は、アレルギー性気道炎症(AAI)の重症度を示す:数が多いほど、疾患の悪化を示していた。IgEの血清レベルは、AAIの重症度を示す:レベルが高いほど、疾患の悪化を示していた。
【0213】
図33は、封入OVA-PLGで処理したマウスが、好酸球の蓄積における大幅な減少を示したことを示す。
図34は、封入OVA-PLGで処理したマウスが、未処理動物または対照で処理した動物と比較して、血清IgEレベルにおける大幅な減少を示したことを示す。
【0214】
コア内に可溶性卵白アルブミンを含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を使用した免疫学的寛容の誘導により、Balb/cマウスにおいて卵白アルブミン/ミョウバンで誘導したアレルギー性気道炎症が阻害された。
【0215】
実施例21
抗原が封入された表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の合成
本実施例は、自己免疫疾患における免疫誘導およびアレルギーの治療のための、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)のシェルに取り囲まれた、高密度のカルボキシレート基で表面官能化され、コア内に可溶性抗原を含有する生分解性ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の製剤化および部分的特徴について詳述する。
【0216】
乳化プロセスのための界面活性剤として、その骨格内にカルボキシレート基を組み込んだポリマーであるポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸(PEMA))の使用により高密度のカルボキシレート基を実現した。
【0217】
上述のように、コア内に可溶性PLP139~151を含有し、高密度のカルボキシレート基で表面官能化された生分解性ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子は、SJL/J PLP139~151/CFAで誘導した多発性硬化症のR-EAEマウスモデルにおける免疫学的寛容の誘導に効果的である。さらに、コア内に可溶性卵白アルブミンを含有し、高密度のカルボキシレート基で表面官能化された生分解性ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子は、卵白アルブミン/ミョウバンで誘導したアレルギー性喘息のAAIマウスモデルにおける免疫学的寛容の誘導に効果的である。
【0218】
以下のように二重エマルション-溶媒蒸発法を用いて、コア内に可溶性卵白アルブミンまたはウシ血清アルブミンを含有し、高密度のカルボキシレート基で表面官能化されたポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を合成した:
1.エンドトキシン不含水中の150μLの200mg/mL卵白アルブミンまたはウシ血清アルブミンを、20mLシンチレーションバイアル中のジクロロメタン中の2mLの20% w/vポリ(ラクチド-co-グリコリド)に滴下で加えた。
2.得られた混合物を氷上に置き、プローブ超音波処理器を使用して10ワットで30秒間超音波処理した。
3.10mLの水中1% w/v ポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸)を加えた。
4.得られた混合物を氷上に置き、プローブ超音波処理器を使用して16ワットで30秒間超音波処理した。
5.得られた混合物を600mLビーカー中の200mLの0.5% w/v ポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸に注ぎ入れ、一晩撹拌して粒子を硬化させた。
6.次いで、硬化した粒子を遠心分離して精製し、炭酸水素緩衝液pH9.6で3回洗浄した。
7.精製した粒子を、水中4% w/vスクロースおよび3% w/v D-マンニトールに再懸濁し、液体窒素中で瞬間凍結し、凍結乾燥させた。
【0219】
図35は、コア内に可溶性PLP139~151を含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の動的光散乱分析による特徴を示す。Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Westborough,MA)上で、18.2MΩの水中、1秒当たり1.792×105カウントの計数率で表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を分析した。表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の集団は、Z-平均粒径584nm、ピーク直径679nm、および多分散指数0.162を有していた。これらの結果は、上述のプロトコルに従って合成した6つのバッチの代表値である。
【0220】
図36は、ζ電位の測定により、コア内に可溶性PLP139~151を含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の特徴を示す。Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Westborough,MA)上で、18.2MΩの水中、1秒当たり6.67×104カウントの計数率で表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を分析した。表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の集団は、-48.9mVのピークζ電位および5.14mVのζ偏差を有していた。これらの結果は、上述のプロトコルに従って合成した6つのバッチの代表値である。
【0221】
図37は、コア内に可溶性卵白アルブミンを含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の動的光散乱分析による特徴を示す。Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Westborough,MA)上で、18.2MΩの水中、1秒当たり1.822×105 カウントの計数率で表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を分析した。表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の集団は、Z-平均粒径569.7nm、ピーク直径700.3nm、および多分散指数0.230を有していた。これらの結果は、上述のプロトコルに従って合成した3つのバッチの代表値である。
【0222】
図38は、ζ電位の測定により、コア内に可溶性卵白アルブミンを含有する表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の特徴を示す。Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Westborough,MA)上で、18.2MΩの水中、1秒当たり2.67×104カウントの計数率で表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を分析した。表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子の集団は、-52.2mVのピークζ電位および5.38mVのζ偏差を有していた。これらの結果は、上述のプロトコルに従って合成した3つのバッチの代表値である。
【0223】
実施例22
コア内に可溶性PLP139~151を含有する表面官能化リポソームは、多発性硬化症のマウスR-EAEモデルにおいて免疫学的寛容を誘導する
本発明はまた、高密度の負電荷を帯びた基で表面官能化され、コア内に可溶性抗原を含有する生分解性リポソーム送達ビヒクルが、多発性硬化症のR-EAEマウスモデルにおいて免疫学的寛容を誘導することも発見した。
【0224】
本試験に使用されたリポソームは、以下のモル比で以下の脂質からなっていた:30:30:40 ホスファチジルコリン:ホスファチジルグリセロール:コレステロール。0日目のPLP139~151/CFAによる予備刺激に対して-7日目に、コア内に可溶性PLP139~151ペプチドを含む200nm nm表面官能化リポソーム(マウス1匹当たり10μmolの総脂質)をSJL/Jマウスの群に腹腔内注射した。0日目に対照マウスを予備刺激し、-7日目に、コア内に可溶性OVA323~339ペプチドを含む500nm~700nm表面官能化リポソーム(マウス1匹当たり10μmolの総脂質)を投与した。さらに17日間、R-EAEの臨床徴候についてマウスを観察した。
【0225】
結果は、PLP139~151/CFAによる予備刺激の日数に対する1日の平均臨床スコアを示す。
図39に示すように、コア内に可溶性PLP139~151ペプチドを含む表面官能化リポソームで処理した動物は、可溶性OVA323~339ペプチドを含有する表面官能化リポソームで処理した動物よりも低い臨床スコアを有していた。
【0226】
本試験の結果は、コア内に可溶性PLP139~151を含有し、高密度の負電荷を帯びた基で表面官能化された生分解性リポソームが、SJL/J PLP139~151/CFAで誘導した多発性硬化症のR-EAEマウスモデルにおける免疫学的寛容の誘導に効果的であることを実証している。
【0227】
抗原を結合させた粒子または抗原が封入された粒子によって誘導される寛容は、抗原特異的、用量依存性、および持続性(>150日)である。寛容は、直径500nm~1μm、ゼータ電位≦-5-mVの結合粒子の静脈内投与によって最も良好に誘導される。寛容の誘導は、ポリアニオン表面を有するMARCOスカベンジャー受容体による粒子の取り込みに依存する(例えば、カルボキシル化PS/PLG粒子)。寛容を誘導し、アネルギー(抗PD-1および作動性抗CD40抗体によって部分的に逆転)およびiTreg(抗CD25抗体によって部分的に逆転)の組み合わせによって維持する。本発明の粒子は、主として肝臓および脾臓の辺縁帯マクロファージに蓄積する(CD11bhi CD11clo MARCO+ Sign-R1+ Siglec-1-)。
【0228】
抗原刺激性もしくは抗原指向性の未成熟な免疫原性樹状細胞、または遺伝子操作した抗原特異的Tregの使用と比較して、自己免疫疾患の治療のために抗原結合粒子を使用することには数多くの利点がある。GMPに従って製造可能であり、容易に入手可能な汎用免疫原性担体を使用した寛容原の調製および誘導の迅速性および単純性;未成熟な樹状細胞またはTregを生体外で単離および増殖する必要性がない;未成熟な樹状細胞が生体外操作時に活性化され、免疫原性ではなくむしろ刺激性になる、またはTregが移入後にTh1/17に変換することを心配する必要がない;これらの未成熟な宿主細胞の辺縁帯APCは、免疫原性的な様式で抗原を処理して提示するため、宿主APCは、完全な自己抗原または組織抽出物を封入するPLG粒子から関連する免疫優性自己エピトープを選択することができる(例えば、OVAが封入されたPLG粒子は、OVA/ミョウバンによって誘導されるAADを防止する);そして、プロトコルは、バイスタンダー抑制を用いず抗原特異的であり、安全であり、非常に効率的であり、エピトープスプレディングに関与するエフェクターT細胞(Th1、Th2、Th17、およびCD8)ならびにナイーブT細胞の両方に無応答性を誘導することができる。
【0229】
合成の生分解性粒子およびリポソームは、製造の容易性、治療剤の幅広い利用可能性、および潜在的な治療部位の増加をもたらし得る。この目的を達成するために、我々は、界面活性剤ポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸)を使用して、高密度の表面カルボキシレート基を有する表面官能化生分解性ポリ(ラクチドco-グリコリド)粒子を特別に設計した。
【0230】
また、我々は、30:30:40の比率のホスファチジルコリン:ホスファチジルグリセロール:コレステロールを使用して、表面官能化リポソームも開発した。
【0231】
我々は、化学的汚染およびペプチドまたはタンパク質の表面コンジュゲーションを取り巻く純度の課題を回避するために、これらの粒子がコア内に可溶性卵白アルブミンを含有するようにさらに遺伝子操作した。コア内に可溶性卵白アルブミンを含有するこれらの表面官能化ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子は、疾患発症の予防に効果的であり、したがって、Balb/c卵白アルブミン/ミョウバンで誘導したアレルギー性喘息のAAIマウスモデルにおける免疫学的寛容の誘導に効果的である。EDCを用いてカルボン酸塩で官能化したポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子にコンジュゲートしたペプチドまたはタンパク質は、無差別な様式で付着しており、その結果、特徴づけることおよび均質な集団精製することが困難である抗原凝集および粒子-抗原-粒子凝集をもたらす。
【0232】
我々は、抗原の表面コンジュゲーションを必要としない、コア内に可溶性卵白アルブミンを含有する表面官能化ポリ(ラクチドco-グリコリド)粒子の均質な集団を精製した。
【0233】
我々はさらに、コア内に可溶性PLP139~151を含有し、高密度の負電荷を帯びた基で表面官能化された生分解性リポソームが、SJL/J PLP139~151/CFAで誘導した多発性硬化症のR-EAEマウスモデルにおける免疫学的寛容の誘導に効果的であることを実証した。
【0234】
本発明のリポソームおよびポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子は、数多くの利点を提供する。利点には以下が含まれる:
1)生分解性粒子は、体内に長時間残留せず、完全分解の時間を制御することができる。
2)粒子およびリポソームは、細胞を活性化せずに内部移行を促進するように官能化することができる。この目的のために、我々は、PLGミクロスフェアにホスファチジルセリンを充填した。
3)粒子およびリポソームは、特定の細胞集団のための標的リガンドを組み込むように設計することもできる。
4)粒子内に内部移行する細胞型の活性化を制限し、アネルギーならびに/または制御性T細胞の欠失および活性化を介して寛容の誘発を促進するように、IL-10およびTGF-β等の抗炎症性サイトカインも誘導することができる。
【0235】
この粒子またはリポソームの組み合わせ機能は、複数の観点から寛容誘導を標的とすることができるため、デザイナー粒子は、ポリスチレン粒子に対する大幅な進歩である。この寛容誘導技術の潜在的な臨床用途は以下を含む:
(1)T細胞および抗体媒介性の自己免疫疾患(多発性硬化症、1型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス等)-寛容は、特定の自己免疫疾患を駆動する関連自己抗原と複合化させた粒子を用いて誘導される。
(2)食物および肺アレルギー、皮膚アレルギー、ならびに喘息-寛容は、アレルギー反応を誘発する特定の食物(例えば、ピーナツタンパク質等)、注入される物質(ハチ毒タンパク質等)、または吸入される物質(例えば、ブタクサ花粉タンパク質、ペットのフケタンパク質等)と複合化させた粒子を用いて誘導される。
(3)移植拒絶反応-寛容は、レシピエントによる拒絶反応を予防するために、臓器移植の前にドナー臓器またはドナー細胞上の移植抗原に対して誘導される。
(4)酵素補充療法-患者が、特定の欠陥を治療するために投与される組み換え的に生成された酵素に対する中和抗体応答を形成するのを防止するために、遺伝的欠陥を有する患者が産生することができない酵素に対して寛容が誘導される。
【0236】
本発明の特定の実施形態について説明および例示してきたが、そのような実施形態は、本発明の例示に過ぎないと見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲に従って解釈される本発明を限定すると見なされるべきではない。
【0237】
本明細書に引用される全ての特許、出願、および他の参考文は、参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる。