(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153882
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】新規脂質
(51)【国際特許分類】
A61K 31/683 20060101AFI20231011BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231011BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231011BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231011BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20231011BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231011BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20231011BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231011BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20231011BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20231011BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231011BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231011BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231011BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20231011BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231011BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231011BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231011BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/553 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/473 20060101ALI20231011BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
A61K31/683
A61P9/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P9/06
A61K31/685
A61K9/06
A61K9/02
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/70
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/46
A61K31/137
A61K31/517
A61K31/343
A61K31/40
A61K31/553
A61K31/519
A61K31/473
A61K31/13
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121064
(22)【出願日】2023-07-25
(62)【分割の表示】P 2020569849の分割
【原出願日】2019-06-26
(31)【優先権主張番号】16/452,858
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/690,196
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514306065
【氏名又は名称】サインパス ファルマ,インク.
【氏名又は名称原語表記】SIGNPATH PHARMA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】マッチェスニー ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ブシャール アニー
(72)【発明者】
【氏名】カプサミー サラバナン
(72)【発明者】
【氏名】アンガスティン ジョン カリカット
(72)【発明者】
【氏名】レヴィー ダニエル エミル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一般に薬物誘発性である又は疾患若しくは状態によって引き起こされる、QT延長、心筋損傷、又はAVブロックなどの心疾患を低減又は除去するための新規脂質の使用を提供する。
【解決手段】心疾患の治療のための、例えば下記化合物の使用を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心疾患の治療のための式Iの化合物の使用。
【化1】
I
[式中、
R
1は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC
1-C
20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R
2は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC
1-C
20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R
3は、
【化2】
であり、
R
4は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組込みは塩を生じさせ、
R
5は、OH、OAc、OMe、NH
2、NHAc、NHMe、N(Me)
2、SH、CN、COOH、CONH
2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC
1-C
10の分枝又は非分枝飽和炭化水素であり、
R
6は、OH、OAc、OMe、NH
2、NHAc、NHMe、N(Me)
2、SH、CN、COOH、CONH
2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC
1-C
10の分枝又は非分枝飽和炭化水素であり、
R
7は、H、又は0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC
1-C
20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R
8は、H、又は0~10の二重結合、0~10の三重結合若しくは0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC
1-C
20の分枝若しくは非分枝炭化水素であり、
R
7及びR
8は、同時にHではなく、また同時に0~10の二重結合、0~10の三重結合若しくは0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC
1-C
20の分枝若しくは非分枝炭化水素ではなく、
Xは、直接結合、CH
2、O又はNHであり、
Yは、直接結合、CH
2、O又はNHであり、
各不斉中心は独立に、R、S又はラセミである]
【請求項2】
R4が、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム又はテトラアルキルアンモニウムである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
少なくとも以下の1つから選択される構造を有する、請求項1に記載の使用。
【化3】
【請求項4】
化合物が、単一体、溶媒和物、水和物、結晶、非晶質固体、液体又は油として存在する、請求項1~3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
R4が、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム又はテトラアルキルアンモニウムである、請求項1~4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
化合物が下記化合物である、請求項1~5のいずれかに記載の使用。
【化4】
【請求項7】
化合物が、薬学的に許容される希釈剤又は担体を用いて製剤化される、請求項1~6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
医薬組成物が、心疾患を副作用として誘発する1又は2以上の薬剤をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
心疾患を副作用として誘発する薬剤が、アルブテロール、アルフゾシン、アマンタジン、アミオダロン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモキサピン、アンフェタミン、アナグレリド、アポモルフィン、アルフォルモテロール、アリピプラゾール、三酸化ヒ素、アステミゾール、アタザナビル、アトモキセチン、アジスロマイシン、ベダキリン、ベプリジル、ボルテゾミブ、ボスチニブ、抱水クロラール、クロロキン、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、クルクミン、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デシプラミン、デクスメデトミジン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、アンフェタミン、ジヒドロアルテミシニン及びピペラキン、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドブタミン、ドフェチリド、ドラセトロン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキセピン、ドロネダロン、ドロペリドール、エフェドリン、エピネフリン、アドレナリン、エリブリン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェルバマート、フェンフルラミン、フィンゴリモド、フレカイニド、フルコナゾール、フルオキセチン、ホルモテロール、ホスカルネット、ホスフェニトイン、フロセミド、フルセミド、ガランタミン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、グラニセトロン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、イブチリド、イロペリドン、イミプラミン、メリプラミン、インダパミド、イソプロテレノール、イスラジピン、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ラパチニブ、レバルブテロール、レボフロキサシン、レボメタジル、リスデキサンフェタミン、リチウム、メソリダジン、メタプロテレノール、メサドン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、ミドドリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル/HCTZ、モキシフロキサシン、ネルフィナビル、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルエピネフリン、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランザピン、オンダンセトロン、オキシトシン、パリペリドン、パロキセチン、パシレオチド、パゾパニブ、ペンタミジン、ペルフルトレン脂肪ミクロスフェア、フェンテルミン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピモジド、ポサコナゾール、プロブコール、プロカインアミド、プロメタジン、プロトリプチリン、プソイドエフェドリン、クエチアピン、キニジン、硫酸キニーネ、ラノラジン、リルピビリン、リスペリドン、リトドリン、リトナビル、ロキシスロマイシン、サルブタモール、サルメテロール、サキナビル、セルチンドール、セルトラリン、セボフルラン、シブトラミン、ソリフェナシン、ソラフェニブ、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラプレビル、テラバンシン、テリスロマイシン、テルブタリン、テルフェナジン、テトラベナジン、チオリダジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラゾドン、トリメトプリム-スルファ、トリミプラミン、バンデタニブ、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリコナゾール、ボリノスタット、又はジプラシドンを含む、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
医薬組成物が、1又は2以上の賦形剤、結合剤、粘着防止剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤、香料、染料、着色剤、流動化剤、滑沢剤、保存剤、収着剤、甘味剤、それらの誘導体、又はそれらの組合せをさらに含む、又は
結合剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポビドン、アクリル酸及びメタクリル酸コポリマー、薬学的グレーズ、ガム、並びにミルク誘導体からなる群から選択される、又は
医薬組成物が、式Iの化合物を単位用量当たり約1mg~約1グラムの単位用量当たりの量で含む、又は
医薬組成物が、経口、舌下、経皮、坐剤、髄腔内、経腸、非経口、静脈内、腹腔内、皮膚、皮下、局所、経肺、直腸、腟内、又は筋肉内投与用の製剤である、又は
経口投与用の製剤が、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、散剤、トローチ剤、薬用キャンディー剤、スラリー剤、液体溶液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤又は経口フィルム剤(OTF)である、又は
製剤が、固体形態、溶液剤、懸濁剤、又は軟質ゲル形態である、
請求項1~9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
治療される心疾患が、ヒト又は動物対象において、心臓パターンの不規則性又は変化に起因する心臓チャネル病、心筋損傷、又は状態のうちの1又は2以上を低減又は除去することから選択され、前記ヒト又は動物対象に投与するステップを含む、請求項1~9のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月26日に出願された米国特許仮出願第62/690,196号に基づく優先権を主張するもので、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
米国連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述
なし
【0003】
本発明は、一般に薬物誘発性である又は疾患若しくは状態によって引き起こされる、QT延長、心筋損傷、又はAVブロックなどの心疾患を低減又は除去する新規脂質の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明の範囲を限定することなく、本発明の背景を薬物誘発性QT延長並びに他の心疾患及び心毒性と関連させて説明する。
【0005】
様々な疾患の治療用に設計された多数の薬剤が、患者の心臓に有害作用を及ぼすことが知られている又は疑われるにもかかわらずよく処方される。QT延長、上室性頻脈(SVT)、及び心房細動(AF)を含めて心不整脈以外に、心筋損傷、心筋症、うっ血性心不全、及び左室肥大(LVH)を含めていくつかの他の心毒性が薬剤の副作用として生じうる。
【0006】
薬剤の心毒性は、増殖性悪性腫瘍など様々な疾患を治療中の患者に影響を及ぼしうる著しい合併症を導くおそれがある。そのような毒性の重症度は、即時及び累積用量、投与方法、いかなる基礎心臓疾患の存在、並びに特定の患者に特有の様々な先天的又は後天的心危険因子などの多くの因子によって決まる。さらに、毒性は、他の薬剤による現在又は以前の治療によって影響されるおそれがある。心毒性作用は、薬物の投与時に直ちに生じることがあり、又は患者が治療されてから何か月若しくは何年か後まで現れない可能性がある。
【0007】
高用量化学療法が、依然として侵攻性悪性腫瘍のために選択される療法のままである。無数の臨床研究から、高用量化学療法は患者生存を大幅に延ばすことができるが、その使用及び有効性は、著しい副作用、特に心毒性によって限定されることが示された。中期~後期の心毒性において、心不全は化学療法が終了して多年後に出現しうる。化学療法剤での治療により、心膜及び心内膜心筋線維症、心不全、心筋炎、又は心外膜炎が生じることが知られている。化学療法は、出血性心筋壊死及び心筋症にも関連している。
【0008】
さらに、抗悪性腫瘍性モノクローナル抗体も心毒性に関連づけられる。左室機能不全、うっ血性心不全、及び他の心機能不全などの輸注関連心毒性作用が生じうる。そのような合併症の危険は、患者が先行心疾患、加齢、以前の心毒性療法、又は胸部への放射線療法を有する場合に増加する。
【0009】
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は周知の心毒性作用がある。アントラサイクリン類(antracyclins)、トラスツズマブ、メシル酸イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、及びラパチニブはすべて、様々な機械的及び電気的機能不全に関連している。
【0010】
TKIに関連している毒性作用のうちには、QT延長、突然心臓死(両方とも、リズム機能不全とみなされる)、並びに左室駆出率の低下(LVEF)、うっ血性心不全(CHF)、急性冠疾患、高血圧、及び心筋梗塞(MI)などの収縮力の問題がある。チロシンキナーゼ阻害剤などの薬物の治療可能性を考慮して、がん治療の心毒性の軽減を試みるための様々な戦略が使用された。心毒性を予防する第一の方法は、心毒性薬の用量を限定することである。薬物投与の方法が心毒性の危険に影響する可能性があるという証拠もいくらかある。心毒性剤の急速投与によって、血中レベルが高くなり、同量の薬物をより長い時間にわたって投与した場合より大きい心臓損傷を引き起こすことがある。より低用量の薬物をより頻繁に投与すると、高用量の薬物をより長い間隔で投与した場合と比べて毒性を低下させることもできる。
【0011】
ある種の化学療法剤による心毒性の危険は、これらの薬物をリポソーム内にカプセル封入することによって低減されてきた。例えば、諸研究により、心毒性は、リポソームドキソルビシン製剤を用いると、通常のドキソルビシンを用いた場合よりかなり低くなることが示される。
【0012】
デクスラゾキサンは、ドキソルビシンによって引き起こされる心臓損傷の重症度を予防又は低減するということが示されたアミノポリカルボン酸である。デクスラゾキサンは、酸素フリーラジカルの形成を遮断することによって心筋を保護すると考えられている。放射線及び化学療法薬が細胞を損傷する方式の1つは、フリーラジカルを形成することによるものである。フリーラジカルは、エネルギーを得るために燃料を燃やすことなど酸素を必要とする多くの正常な細胞プロセスの間に形成される不安定な分子である。それらは、タバコ煙、放射線及び化学療法薬のような環境中の要因への曝露によっても形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、薬物誘発性の心疾患であれ、疾患又は状態の結果としての心疾患であれ、心疾患を低減する新規組成物及び方法が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、心疾患を低減する、式I
【0015】
【0016】
[式中、
R1は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R2は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R3は、
【0017】
【0018】
であり、
R4は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、薬学的に許容されるカチオンの組込みは、塩、例えばモノマー塩、ダイマー塩、トリマー塩、又はマルチマー塩を生じさせ、R5は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R6は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R7は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R8は、H、又は0~10の二重結合、0~10の三重結合若しくは0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝若しくは非分枝炭化水素であり、
Xは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
Yは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
各不斉中心(stereogenic center)は独立に、R、S又はラセミである]
の新規脂質に関する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、式I
【0020】
【0021】
[式中、
R1は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R2は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組
合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R3は、
【0022】
【0023】
であり、
R4は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、薬学的に許容されるカチオンの組込みは、塩、例えばモノマー塩、ダイマー塩、トリマー塩、又はマルチマー塩を生じさせ、R5は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R6は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R7は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R8は、H、又は0~10の二重結合、0~10の三重結合若しくは0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝若しくは非分枝炭化水素であり、
Xは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
Yは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
各不斉中心は独立に、R、S又はラセミである]
の化合物を調製する方法であって、
(1)式II
【0024】
【0025】
[式中、すべての置換基は、前記のように定義される]
の化合物のヒドロキシル基をエステル、カーボネート、カルバメート、又はまとめてアセタール若しくはケタールに変換するステップと、
(2)リンに結合したOH基をO-R4[式中、R4はHでない]に変換するステップとを含む;あるいは
(1)式IIIの化合物を、リン酸ジエステル架橋の作製を通して式IVの化合物又は式Vの
化合物に連結するステップ
【0026】
【0027】
[式中、すべての置換基は、前記のように定義される]
と、
(2)リンに結合したOH基をO-R4[式中、R4はHでない]に変換するステップとを含む、方法に関する。
【0028】
一態様において、R4は、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム又はテトラアルキルアンモニウムである。別の態様において、化合物は、化合物1~30から選択される。
【0029】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物と薬学的に許容される希釈剤又は担体とを含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、心疾患を副作用として誘発する1又は2以上の薬剤も含んでよく、化合物が心疾患を低減又は除去する。さらに、医薬組成物は、1又は2以上の賦形剤、結合剤、粘着防止剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤、香料、染料、着色剤、流動化剤、滑沢剤、保存剤、収着剤、甘味剤、それらの誘導体、又はそれらの組合せも含んでもよい。一態様において、R4は、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム又はテトラアルキルアンモニウムである。一態様において、化合物は、
【0030】
【0031】
のうちの少なくとも1種から選択される。
【0032】
別の態様において、化合物は、単一体(single entity)、溶媒和物、水和物、結晶、
非晶質固体(amorphous solid)、液体又は油として存在する。別の態様において、組成
物は医薬組成物に含まれており、その医薬組成物は、心疾患を副作用として誘発する1又は2以上の薬剤をさらに含んでもよい。別の態様において、心疾患を副作用として誘発する薬剤は、アルブテロール、アルフゾシン、アマンタジン、アミオダロン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモキサピン、アンフェタミン、アナグレリド、アポモルフィン、アルフォルモテロール、アリピプラゾール、三酸化ヒ素、アステミゾール、アタザナビル、アトモキセチン、アジスロマイシン、ベダキリン、ベプリジル、ボルテゾミブ、ボスチニブ、抱水クロラール、クロロキン、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、クルクミン、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デシプラミン、デクスメデトミジン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、アンフェタミン、ジヒドロアルテミシニン及びピペラキン、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドブタミン、ドフェチリド、ドラセトロン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキセピン、ドロネダロン、ドロペリドール、エフェドリン、エピネフリン、アドレナリン、エリブリン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェルバマート、フェンフルラミン、フィンゴリモド、フレカイニド、フルコナゾール、フルオキセチン、ホルモテロール、ホスカルネ
ット、ホスフェニトイン、フロセミド、フルセミド、ガランタミン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、グラニセトロン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、イブチリド、イロペリドン、イミプラミン、メリプラミン、インダパミド、イソプロテレノール、イスラジピン、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ラパチニブ、レバルブテロール、レボフロキサシン、レボメタジル、リスデキサンフェタミン、リチウム、メソリダジン、メタプロテレノール、メサドン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、ミドドリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル/HCTZ、モキシフロキサシン、ネルフィナビル、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルエピネフリン、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランザピン、オンダンセトロン、オキシトシン、パリペリドン、パロキセチン、パシレオチド、パゾパニブ、ペンタミジン、ペルフルトレン脂肪ミクロスフェア、フェンテルミン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピモジド、ポサコナゾール、プロブコール、プロカインアミド、プロメタジン、プロトリプチリン、プソイドエフェドリン、クエチアピン、キニジン、硫酸キニーネ、ラノラジン、リルピビリン、リスペリドン、リトドリン、リトナビル、ロキシスロマイシン、サルブタモール、サルメテロール、サキナビル、セルチンドール、セルトラリン、セボフルラン、シブトラミン、ソリフェナシン、ソラフェニブ、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラプレビル、テラバンシン、テリスロマイシン、テルブタリン、テルフェナジン、テトラベナジン、チオリダジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラゾドン、トリメトプリム-スルファ、トリミプラミン、バンデタニブ、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリコナゾール、ボリノスタット、又はジプラシドンのうちの少なくとも1種から選択される。別の態様において、医薬組成物は、1又は2以上の賦形剤、結合剤、粘着防止剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤、香料、染料、着色剤、流動化剤、滑沢剤、保存剤、収着剤、甘味剤、それらの誘導体、又はそれらの組合せをさらに含む。別の態様において、結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポビドン、アクリル酸及びメタクリル酸コポリマー、薬学的グレーズ、ガム、並びにミルク誘導体からなる群から選択される。別の態様において、医薬組成物は、式Iの化合物を単位用量当たり約1mg~約1グラムの単位用量当たりの量を含む。別の態様において、医薬組成物は、経口、舌下、経皮、坐剤、髄腔内、経腸、非経口、静脈内、腹腔内、皮膚、皮下、局所、経肺、直腸、腟内、又は筋肉内投与用の製剤である。別の態様において、経口投与用の製剤は、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、散剤、トローチ剤、薬用キャンディー剤、スラリー剤、液体溶液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤又は経口フィルム剤(OTF)である。別の態様において、製剤は、固体形態、溶液剤、懸濁剤、又は軟質ゲル形態である。医薬品剤形は、経口、舌下、経皮、坐剤、髄腔内、経腸、非経口、静脈内、腹腔内、皮膚、皮下、局所、経肺、直腸、腟内、又は筋肉内投与から選択することができる。
【0033】
本発明の別の実施形態は、ヒト又は動物対象において、心臓パターンの不規則性又は変化に起因する心臓チャネル病、心筋損傷、又は状態のうちの1又は2以上を低減又は除去する方法であって、ヒト又は動物対象に式Iの化合物、又は化合物1~30のうちのいずれか1種を投与するステップを含み、化合物が、疾患を治療するために使用される活性薬剤によって引き起こされる心臓パターンの不規則性又は変化に起因する心臓チャネル病又は状態のうちの1又は2以上を低減又は除去する、方法を提供する。組成物は、本明細書に記載されるように、ヒト又は動物対象において、心臓パターンの不規則性又は変化に起因するチャネル病、心筋損傷、又は状態を引き起こす化合物を用いて製剤化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の特徴及び利点をさらに完全に理解するために、次に本発明の詳細な説明を添付の図面と共に参照する。
【
図1】モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物1と同時投与した場合と比べて示すグラフである。
【
図2】モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物6と同時投与した場合と比べて示すグラフである。
【
図3】モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物4と同時投与した場合と比べて示すグラフである。
【
図4】モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物2と同時投与した場合と比べて示すグラフである。
【
図5】モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物5と同時投与した場合と比べて示すグラフである。
【
図6】モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物1、化合物2、化合物4、化合物5、化合物6、化合物7、化合物8、化合物9、化合物10及び化合物11と同時投与した場合と比べて示す複合グラフである。
【
図7】本発明の実施形態である例示的化学構造を描写する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
1.本発明の少なくとも一部の実施形態における化合物の概要
本発明の少なくとも一実施形態は、式I
【0036】
【0037】
[式中、
R1は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R2は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R3は、
【0038】
【0039】
であり、
R4は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、薬学的に許容されるカチオンの組込みは、塩、例えばモノマー塩、ダイマー塩、トリマー塩、又はマルチマー塩を生じさせ、R5は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R6は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R7は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R8は、H、又は0~10の二重結合、0~10の三重結合若しくは0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝若しくは非分枝炭化水素であり、
Xは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
Yは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
各不斉中心は独立に、R、S又はラセミである]
の構造を提供する。
【0040】
2.化合物及び定義
本発明の様々な実施形態の作製及び使用を以下に詳細に述べるが、本発明は、多種多様な具体的状況の中で具現化することができる多くの適用可能な発明概念を提供することが理解されよう。本明細書において述べられている具体的な実施形態は、本発明を作製及び使用する具体的な方式の例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0041】
本発明の化合物としては、以上に一般的に記載され、本明細書に開示されているクラス、下位クラス、及び種によってさらに図示されているものが挙げられる。本明細書で用いられているように、以下の定義は、別段の指示がない限り適用されるものとする。少なくとも一部の実施形態において、化学元素は、the Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook ofChemistry and Physics, 75th Edに従って確認される。さらに、
有機化学の一般原則については、“Organic Chemistry”, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999、及び“March’s Advanced Organic Chemistry”, 5th
Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001に記載さ
れており、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書において定義される用語は、本発明に関連する領域の当業者によって通常理解されている意味を有する。
【0043】
「a」、「an」及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図せず、説明するのに具体例を使用することができる一般クラスを含む。本明細書における用語法を使
用して、本発明の具体的な実施形態を説明するが、それらの用法は、特許請求の範囲に概要を記載している場合を除いて本発明を限定するものではない。具体的には、特許請求の範囲及び/又は本明細書において「~を含む(comprising)」という用語と組み合わせて使用されているときの「1つの(a)」又は「1つの(an)」という単語の使用は、「1
つの」を意味することができるが、「1又は2以上の」、「少なくとも1つの」、及び「1又は1より多い」の意味とも一致する。本開示は、二者択一のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持するが、特許請求の範囲における「又は(or)」という用語は、二者択一のみを指すように明瞭に指示されていない限りあるいは二者択一が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用される。本出願全体にわたって、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために使用されているデバイス、方法に固有の誤差変動、又は研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0044】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されているように、「~を含む(comprising)」(及び「~を含む(comprise)」や「~を含む(comprises)」など含む(comprising)のいかなる形)、「~を有する(having)」(及び「~を有する(have)」や「~を
有する(has)」など有する(having)のいかなる形)、「~を含む(including)」(及び「~を含む(includes)や「~を含む(include)」など含む(including)のいかなる形)又は「~を含む(containing)」(及び「~を含む(contains)」や「~を含む(contain)」など含む(containing)のいかなる形)という単語は、包括的又はオープンエ
ンドであり、追加の、記載されていない要素又は方法ステップを排除しない。本明細書で提供されているいかなる組成物及び方法の実施形態において、「~を含む(comprising)」を「~から本質的になる(consistingessentially of)」又は「~からなる(consisting of)」で置換してもよい。本明細書で用いられているように、「~から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、指定された整数又はステップ及び特許
請求した発明の特質又は機能に実質的に影響しないものを必要とする。本明細書で用いられているように、「~からなる(consisting)」という用語は、記載された整数(例えば、特徴、要素、特色、特性、方法/プロセスステップ又は限界)又は整数群(例えば、特徴、要素、特色、特性、方法/プロセスステップ又は限界)のみの存在を指示するために使用される。本明細書で用いられているように、化合物のそれぞれを、1又は2以上の成分又はステップを含む製剤又は方法において使用することができるが、列挙された成分から本質的になる組成物若しくは方法において、又は列挙された成分からなる組成物若しくは方法においてさえも使用することができる。
【0045】
本明細書で用いられている「又はその組合せ」という用語は、用語に先行する列挙されたアイテムのすべての並べ替え及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、さらに特定の状況の中で順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことを意図している。この例を続けると、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど、1又は2以上のアイテム又は用語の反復を含む組合せが明白に含まれる。異なる解釈が文脈上から明らかでない限り、典型的にはいかなる組合せのアイテム又は用語の数にも制限はないことを当業者は理解するであろう。
【0046】
本明細書で用いられているように、限定されることなく「約」、「実質的な」又は「実質的に」などの近似の単語は、このように修飾されたとき、必ずしも絶対的又は完璧であるというわけではないことが理解されるが、存在しているとして状態を指定することを正当化するのに十分な程度に近いと当業者にとってみなされる状態を指す。記載が変わりうる程度は、いかに大きな変化を起こすことができるかによって決まり、修正された特徴が未修正の特徴の必要とされる特色及び能力を依然として有すると当業者にやはり認識させる。一般的に、ただし直前の考察に従って、「約」などの近似の単語によって修正される
本明細書の数値は、記載された値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%変わりうる。
【0047】
「アルキル」基は、一実施形態において、直鎖、分枝鎖及び環式のアルキル基を含めて飽和脂肪族炭化水素を指す。一実施形態において、アルキル基は、1~20の炭素を有する。別の実施形態において、アルキル基は、1~15の炭素を有する。別の実施形態において、アルキル基は、1~10の炭素を有する。別の実施形態において、アルキル基は、11~20の炭素を有する。別の実施形態において、アルキル基は、5~15の炭素を有する。さらにもう一つの実施形態において、アルキル基は、1~5の炭素を有する。アルキル基は、置換されていなくてもよく、あるいはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボン酸、アルデヒド、カルボニル、アミド、シアノ、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオ及びチオアルキルから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよい。
【0048】
「アルケニル」基は、一実施形態において、1又は2以上の二重結合を有する直鎖、分枝鎖及び環式の基を含めて不飽和炭化水素を指す。アルケニル基は、1の二重結合、2の二重結合、3の二重結合などを有してもよい。別の実施形態において、アルケニル基は、2~20の炭素を有する。別の実施形態において、アルケニル基は、11~20の炭素を有する。別の実施形態において、アルケニル基は、5~15の炭素を有する。別の実施形態において、アルケニル基は、2~5の炭素を有する。別の実施形態において、アルケニル基は、2~10の炭素を有する。別の実施形態において、アルケニル基はエテニル(-CH=CH2)である。含めることができるアルケニル基の例は、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロヘキセニルなどである。アルケニル基は、置換されていなくてもよく、あるいはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、シアノ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオ及び/又はチオアルキルによって置換されていてもよい。
【0049】
「アルキニル」基は、一実施形態において、1又は2以上の三重結合を有する直鎖、分枝鎖及び環式の基を含めて不飽和炭化水素を指す。アルキニル基は、1の三重結合、2の三重結合、3の三重結合などを有してもよい。別の実施形態において、アルキニル基は、2~20の炭素を有する。別の実施形態において、アルキニル基は、11~20の炭素を有する。別の実施形態において、アルキニル基は、5~15の炭素を有する。別の実施形態において、アルキニル基は、2~15の炭素を有する。別の実施形態において、アルキニル基は、2~10の炭素を有する。別の実施形態において、アルキニル基はエチニルである。アルケニル基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、シクロヘキシニルなどである。アルキニル基は、置換されていなくてもよく、あるいはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、シアノ、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオ及び/又はチオアルキルによって置換されていてもよい。
【0050】
一実施形態において、「ハロゲン」という用語は、一実施形態においてFを指し、別の実施形態においてClを指し、別の実施形態においてBrを指し、別の実施形態においてIを指す。
【0051】
「薬学的に許容されるカチオン」は、一実施形態において、哺乳類における使用のために薬学的に許容され、当技術分野において周知である有機カチオン又は無機カチオンを指す。例えば、無機カチオン又は有機カチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、セシウム、及びアミンカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。アミンカチオンとしては、アンモニア、トリエチルアミン、トロメタミン(TRIS)、トリエタノールアミン、エチレンジアミ
ン、グルカミン、N-メチルグルカミン、グリシン、リシン、オルニチン、アルギニン、エタノールアミン、コリンなどに由来するカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、アミンカチオンはカチオンであり、X+は式YH+であり、式中、Yは、アンモニア、トリエチルアミン、トリメチルアミン(TRIS)、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、グルカミン、N-メチルグルカミン、グリシン、リシン、オルニチン、アルギニン、エタノールアミン、コリンなどである。一実施形態において、使用することができる適切な有機又は無機カチオン塩は、化合物のO部分とイオン会合を形成することができ、本発明の目的の化合物の所望の特性、例えば増加した溶解度、安定性などに悪影響を著しく及ぼすことはないカチオン部分を含む。式I[式中、R4は、有機カチオン又は無機カチオンである]の化合物を異なる1又は2以上の有機又は無機カチオンを含む式Iの化合物に変換することができるということが当業者によって認識される。
【0052】
別段の記載がない限り、本明細書に描かれている構造は、構造のすべての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何(又は立体配座)異性体);例えば、各不斉中心についてR及びS立体配置、Z及びE二重結合異性体、並びにZ及びE配座異性体を含むことも意図する。したがって、本化合物の単一の立体化学的異性体並びにエナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何異性体(又は立体配座)異性体の混合物は、本発明の範囲内である。別段の記載がない限り、本発明の化合物の互変異性体はすべて、本発明の範囲内である。さらに、別段の記載がない限り、本明細書に描かれている構造は、1又は2以上の同位体濃縮された原子の存在下でのみ異なる化合物を含むことも意図する。例えば、水素のジュウテリウム又はトリチウムによる置換又は炭素の13C-若しくは14C-濃縮された炭素による置換を含めて本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば生物学的アッセイにおける分析ツール、プローブとして、又は本発明による治療剤として有用である。
【0053】
本明細書で用いられているように、「インビボ」という用語は、体内であることを指す。本出願において使用される「インビトロ」という用語は、非生体系において実施される操作を示すものとして理解されるものとする。
【0054】
本明細書で用いられているように、「治療」という用語は、本明細書に記載されている状態、特に疾患又は障害の症状をはっきり示す患者における状態の治療を指す。
【0055】
本明細書で用いられているように、「治療」又は「治療する」という用語は、本発明の化合物のいかなる投与も指し、(i)罹患体の病理又は総体症状を経験している又は示している動物における疾患を阻害する(すなわち、病理及び/又は総体症状のさらなる展開を阻止する)こと;あるいは(ii)罹患体の病理又は総体症状を経験している又は示している動物における疾患を改善する(すなわち、病理及び/又は総体症状を回復させる)ことを含む。「制御する」という用語は、制御されている状態を予防する、治療する、根絶する、改善する、又は制御されている状態の重症度をその他の方法で低減することを含む。
【0056】
本明細書で用いられているように、本明細書に記載されている「有効量」又は「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医学博士又は他の臨床医によって探求されつつある、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する主題化合物の量を意味する。
【0057】
本明細書で用いられているように、本明細書で使用されている化合物「の投与」又は「を投与する」という用語は、治療を必要とする個体に本発明の化合物をその個体の身体に治療上有用な形及び治療上有用な量で導入することができる形で提供することを意味する
と理解されるべきである。その形としては、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁剤などの経口剤形;IV、IM、又はIPなどの注射可能な剤形;クリーム剤、ゼリー剤、散剤、又はパッチを含む経皮剤形;バッカル剤形;吸入散剤、噴霧剤、懸濁剤など;及び肛門坐剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書で用いられているように、「静脈内投与」という用語としては、注射及び他の静脈内投与様式が挙げられる。
【0059】
本明細書で用いられているように、担体、希釈剤又は賦形剤を記載するために本明細書で用いられている「薬学的に許容される」という用語は、製剤の他の成分と相溶性がなければならず、そのレシピエントに有害であってはならない。
【0060】
3.例示的実施形態の説明
一実施形態において、本発明は、式I
【0061】
【0062】
[式中、
R1は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R2は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R3は、
【0063】
【0064】
であり、
R4は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、薬学的に許容されるカチオンの組込みは、塩、例えばモノマー塩、ダイマー塩、トリマー塩、又はマルチマー塩を生じさせ、R5は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換さ
れていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R6は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R7は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R8は、H、又は0~10の二重結合、0~10の三重結合若しくは0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝若しくは非分枝炭化水素であり、
Xは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
Yは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
各不斉中心は独立に、R、S又はラセミである]
の化合物に関する。
【0065】
一実施形態において、本発明は、式I
【0066】
【0067】
[式中、
R1は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R2は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R3は、
【0068】
【0069】
であり、
R4は、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム又はテトラアルキルアンモニウムであり、Li、Na及びKは、モノマー塩を形成し、Mg、Ca、Zn及びCsは、塩、例えばモノマー塩、ダイマー塩、トリマー塩、又はマルチマー塩を形成し
、
R5は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R6は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R7は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R8は、H、又は0~10の二重結合、0~10の三重結合若しくは0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝若しくは非分枝炭化水素であり、
Xは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
Yは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
各不斉中心は独立に、R、S又はラセミである]
の化合物に関する。
【0070】
一実施形態において、本発明は、式I
【0071】
【0072】
[式中、
R1は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R2は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R3は、
【0073】
【0074】
であり、
R4は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、薬学的に許容されるカチオンの組込
みは、塩、例えばモノマー塩、ダイマー塩、トリマー塩、又はマルチマー塩を生じさせ、R5は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R6は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R7は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R8は、H、又は0~10の二重結合、0~10の三重結合若しくは0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝若しくは非分枝炭化水素であり、
Xは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
Yは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
各不斉中心は独立に、R、S又はラセミである]
の化合物を調製する方法であって、
(1)式II
【0075】
【0076】
[式中、すべての置換基は、前記のように定義される]
の化合物のヒドロキシル基をエステル、カーボネート、カルバメート、又はまとめてアセタール若しくはケタールに変換するステップと、
(2)リンに結合したOH基をO-R4[式中、R4はHでない]に変換するステップとを含む;あるいは
(1)式IIIの化合物を、リン酸ジエステル架橋の作製を通して式IVの化合物又は式Vの
化合物に連結するステップ
【0077】
【0078】
[式中、すべての置換基は、前記のように定義される]
と、
(2)リンに結合したOH基をO-R4[式中、R4はHでない]に変換するステップとを含む、方法に関する。
【0079】
好ましい実施形態において、本発明は、式I
【0080】
【0081】
[式中、
R1は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R2は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R3は、
【0082】
【0083】
であり、
R4は、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム又はテトラアルキルアンモニウムであり、Li、Na及びKは、モノマー塩を形成し、Mg、Ca、Zn及びCsは、塩、例えばモノマー塩、ダイマー塩、トリマー塩、又はマルチマー塩を形成し、
R5は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R6は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R7は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝又は非分枝炭化水素であり、
R8は、H、又は0~10の二重結合、0~10の三重結合若しくは0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝若しくは非分枝炭化水素であり、
Xは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
Yは、直接結合、CH2、O又はNHであり、
各不斉中心は独立に、R、S又はラセミである]
の化合物を調製する方法であって、
(1)式II
【0084】
【0085】
[式中、すべての置換基は、前記のように定義される]
の化合物のヒドロキシル基をエステル、カーボネート、カルバメート、又はまとめてアセタール若しくはケタールに変換するステップと、
(3)リンに結合したOH基をO-R4[式中、R4はHでない]に変換するステップとを含む;あるいは
(1)式IIIの化合物を、リン酸ジエステル架橋の作製を通して式IVの化合物又は式Vの
化合物に連結するステップ
【0086】
【0087】
[式中、すべての置換基は、前記のように定義される]
と、
(2)リンに結合したOH基をO-R4[式中、R4はHでない]に変換するステップとを含む、方法に関する。
【0088】
以上に一般的に定義されたように、R1は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R1は、0~7の二重結合、0~7の三重結合又は0~7の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C15の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R1は、0~5の二重結合、0~5の三重結合又は0~5の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R1は、0~5の二重結合、0~5の三重結合又は0~5の二重及び三重結合の組合せを有するC11-C20の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の
実施形態において、R1は、0~5の二重結合、0~5の三重結合又は0~5の二重及び三重結合の組合せを有するC5-C15の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R1は、0~2の二重結合、0~2の三重結合又は0~2の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C5の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R1は、C10-C15の分枝又は非分枝炭化水素である。
【0089】
以上に一般的に定義されたように、R2は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R2は、0~7の二重結合、0~7の三重結合又は0~7の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C15の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R2は、0~5の二重結合、0~5の三重結合又は0~5の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R2は、0~5の二重結合、0~5の三重結合又は0~5の二重及び三重結合の組合せを有するC11-C20の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R2は、0~5の二重結合、0~5の三重結合又は0~5の二重及び三重結合の組合せを有するC5-C15の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R2は、0~2の二重結合、0~2の三重結合又は0~2の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C5の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R2は、C10-C15の分枝又は非分枝炭化水素である。
【0090】
以上に一般的に定義されたように、R1及びR2は両方とも、同じ定義を有する。一部の実施形態において、R1及びR2は同じである。一部の実施形態において、R1及びR2は異なる。
【0091】
以上に一般的に定義されたように、R3は、
【0092】
【0093】
である。一部の実施形態において、R3は、
【0094】
【0095】
である。一部の実施形態において、R3は、
【0096】
【0097】
である。
【0098】
以上に一般的に定義されたように、R4は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、薬学的に許容されるカチオンの組込みは、塩、例えばモノマー塩、ダイマー塩、トリマー塩、又はさらにはマルチマー塩を生じさせる。好ましい実施形態において、R4は、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム及びテトラアルキルアンモニウムである。一部の実施形態において、R4はHである。一部の実施形態において、R4はLiである。一部の実施形態において、R4はNaである。一部の実施形態において、R4はKである。一部の実施形態において、R4はMgである。一部の実施形態において、R4はCaである。一部の実施形態において、R4はZnである。一部の実施形態において、R4はCsである。一部の実施形態において、R4はアンモニウムである。一部の実施形態において、R4はテトラアルキルアンモニウムである。
【0099】
以上に一般的に定義されたように、R5は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素である。
【0100】
以上に一般的に定義されたように、R6は、OH、OAc、OMe、NH2、NHAc、NHMe、N(Me)2、SH、CN、COOH、CONH2、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素である。
【0101】
以上に一般的に定義されたように、R5及びR6は両方とも、同じ定義を有する。一部の実施形態において、R5及びR6は同じである。一部の実施形態において、R5及びR6は異なる。
【0102】
以上に一般的に定義されたように、R7は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C20の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R7は、0~7の二重結合、0~7の三重結合又は0~7の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C15の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R7は、0~5の二重結合、0~5の三重結合又は0~5の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C10の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R7は、0~5の二重結合、0~5の三重結合又は0~5の二重及び三重結合の組合せを有するC11-C20の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R7は、0~5の二重結合、0~5の三重結合又は0~5の二重及び三重結合の組合せを有するC5-C15の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R7は、0~2の二重結合、0~2の三重結合又は0~2の二重及び三重結合の組合せを有するC1-C5の分枝又は非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R7は、C10-C15の分枝又は非分枝炭化水素である。
【0103】
以上に一般的に定義されたように、R8は、H、又は0~10の二重結合、0~10の三重結合若しくは0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝若しくは非分枝炭化水素である。一部の実施形態において、R8はHである。一部の実施形態において、R8は、0~10の二重結合、0~10の三重結合又は0~10の二重及び三重結合の組合せを有するC0-C20の分枝又は非分枝炭化水素である。
【0104】
以上に一般的に定義されたように、R7及びR8は同様である。一部の実施形態において、R7及びR8は同じである。一部の実施形態において、R7及びR8は異なる。
【0105】
以上に一般的に定義されたように、Xは、直接結合、CH2、O又はNHである。一部の実施形態において、Xは直接結合である。一部の実施形態において、XはCH2である。一部の実施形態において、XはOである。一部の実施形態において、XはNHである。
【0106】
以上に一般的に定義されたように、Yは、直接結合、CH2、O又はNHである。一部の実施形態において、Yは直接結合である。一部の実施形態において、YはCH2である。一部の実施形態において、YはOである。一部の実施形態において、YはNHである。
【0107】
以上に一般的に定義されたように、X及びYは両方とも、同じ定義を有する。一部の実施形態において、X及びYは同じである。一部の実施形態において、X及びYは異なる。
【0108】
以上に一般的に定義されたように、各不斉中心は独立に、R、S又はラセミである。
【0109】
異なる実施形態において、本発明は、化合物1~30の構造を有する。
【0110】
【0111】
本発明の一実施形態は、式Iの化合物と薬学的に許容される希釈剤又は担体とを含む医薬組成物に関する。一実施形態において、医薬組成物は、式Iの化合物を約1mg~約1グラムの単位用量当たりの量で含む。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約1mg~約500mgである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約500mg~約1グラムである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約250mg~約750mgである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約50
mg~約450mgである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約100mg~約300mgである。
【0112】
一部の実施形態において、医薬組成物は、心疾患を副作用として誘発する1又は2以上の薬剤をさらに含み、式Iの化合物が心疾患を低減又は除去する。一部の実施形態において、心疾患を副作用として誘発する1又は2以上の薬剤は、アルブテロール、アルフゾシン、アマンタジン、アミオダロン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモキサピン、アンフェタミン、アナグレリド、アポモルフィン、アルフォルモテロール、アリピプラゾール、三酸化ヒ素、アステミゾール、アタザナビル、アトモキセチン、アジスロマイシン、ベダキリン、ベプリジル、ボルテゾミブ、ボスチニブ、抱水クロラール、クロロキン、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、クルクミン、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デシプラミン、デクスメデトミジン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、アンフェタミン、ジヒドロアルテミシニン及びピペラキン、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドブタミン、ドフェチリド、ドラセトロン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキセピン、ドロネダロン、ドロペリドール、エフェドリン、エピネフリン、アドレナリン、エリブリン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェルバマート、フェンフルラミン、フィンゴリモド、フレカイニド、フルコナゾール、フルオキセチン、ホルモテロール、ホスカルネット、ホスフェニトイン、フロセミド、フルセミド、ガランタミン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、グラニセトロン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、イブチリド、イロペリドン、イミプラミン、メリプラミン、インダパミド、イソプロテレノール、イスラジピン、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ラパチニブ、レバルブテロール、レボフロキサシン、レボメタジル、リスデキサンフェタミン、リチウム、メソリダジン、メタプロテレノール、メサドン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、ミドドリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル/HCTZ、モキシフロキサシン、ネルフィナビル、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルエピネフリン、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランザピン、オンダンセトロン、オキシトシン、パリペリドン、パロキセチン、パシレオチド、パゾパニブ、ペンタミジン、ペルフルトレン脂肪ミクロスフェア、フェンテルミン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピモジド、ポサコナゾール、プロブコール、プロカインアミド、プロメタジン、プロトリプチリン、プソイドエフェドリン、クエチアピン、キニジン、硫酸キニーネ、ラノラジン、リルピビリン、リスペリドン、リトドリン、リトナビル、ロキシスロマイシン、サルブタモール、サルメテロール、サキナビル、セルチンドール、セルトラリン、セボフルラン、シブトラミン、ソリフェナシン、ソラフェニブ、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラプレビル、テラバンシン、テリスロマイシン、テルブタリン、テルフェナジン、テトラベナジン、チオリダジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラゾドン、トリメトプリム-スルファ、トリミプラミン、バンデタニブ、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリコナゾール、ボリノスタット、又はジプラシドンのうちの少なくとも1種から選択される。当業者は、心疾患を誘発するさらなる薬剤が存在することを認識し、本発明の製剤に含めることによって利益を得ることができる。
【0113】
一部の実施形態において、本発明は、心疾患を引き起こす活性薬剤と、式Iの1又は2以上の化合物、例えば以上に記載された化合物1~30で表わされる式Iの化合物とを含む組成物を含む。
【0114】
本発明の一実施形態は、経口、舌下、経皮、坐剤、髄腔内、経腸、非経口、静脈内、腹腔内、皮膚、皮下、局所、経肺、直腸、腟内、又は筋肉内投与用に製剤化されている、式Iの構造、例えば以上に記載された化合物1~30を含む医薬組成物を提供する。一部の
実施形態において、経口投与用に製剤化されている組成物は、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、散剤、トローチ剤、薬用キャンディー剤、スラリー剤、液体溶液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤又は経口フィルム剤(OTF)である。一部の実施形態において、組成物は、固体形態、溶液剤、懸濁剤、又は軟質ゲル形態である。
【0115】
本発明の一実施形態は、心疾患を副作用として引き起こす活性薬剤と、式Iの化合物、例えば以上に記載された化合物1~30とを含む医薬組成物を提供する。
【0116】
本発明の一実施形態は、ヒト又は動物対象において、疾患を治療するために使用される活性薬剤によって引き起こされる心臓パターンの不規則性又は変化に起因する心臓チャネル病、心筋損傷、又は状態のうちの1又は2以上を低減又は除去する方法であって、ヒト又は動物対象に、式Iの化合物、例えば以上に記載された化合物1~30を含む医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0117】
一部の実施形態において、医薬組成物は、1又は2以上の賦形剤、結合剤、粘着防止剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤、香料、染料、着色剤、流動化剤、滑沢剤、保存剤、収着剤、甘味剤、それらの誘導体、又はそれらの組合せをさらに含む。一部の実施形態において、結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポビドン、アクリル酸及びメタクリル酸コポリマー、薬学的グレーズ、ガム、並びにミルク誘導体からなる群から選択される。
【0118】
一実施形態において、医薬組成物は、式Iの化合物を約1mg~約1グラムの単位用量当たりの量で含む。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約1mg~約500mgである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約500mg~約1グラムである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約250mg~約750mgである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約50mg~約450mgである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約100mg~約300mgである。
【0119】
一部の実施形態において、医薬組成物は、1又は2以上の賦形剤、結合剤、粘着防止剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤、香料、染料、着色剤、流動化剤、滑沢剤、保存剤、収着剤、甘味剤、それらの誘導体、又はそれらの組合せをさらに含む。一部の実施形態において、結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポビドン、アクリル酸及びメタクリル酸コポリマー、薬学的グレーズ、ガム、並びにミルク誘導体からなる群から選択される。
【0120】
一実施形態において、本発明は、心疾患を副作用として引き起こす活性薬剤が、アルブテロール、アルフゾシン、アマンタジン、アミオダロン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモキサピン、アンフェタミン、アナグレリド、アポモルフィン、アルフォルモテロール、アリピプラゾール、三酸化ヒ素、アステミゾール、アタザナビル、アトモキセチン、アジスロマイシン、ベダキリン、ベプリジル、ボルテゾミブ、ボスチニブ、抱水クロラール、クロロキン、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、クルクミン、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デシプラミン、デクスメデトミジン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、アンフェタミン、ジヒドロアルテミシニン及びピペラキン、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドブタミン、ドフェチリド、ドラセトロン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキセピン、ドロネダロン、ドロペリドール、エフェドリン、エピネフリン、アドレナリン、エリブリン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェルバマート、フェンフルラミン、フィンゴリモド、フレカイニド、フルコナゾール、フルオキセチン、ホルモテロール、ホスカルネット、ホスフェニ
トイン、フロセミド、フルセミド、ガランタミン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、グラニセトロン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、イブチリド、イロペリドン、イミプラミン、メリプラミン、インダパミド、イソプロテレノール、イスラジピン、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ラパチニブ、レバルブテロール、レボフロキサシン、レボメタジル、リスデキサンフェタミン、リチウム、メソリダジン、メタプロテレノール、メサドン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、ミドドリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル/HCTZ、モキシフロキサシン、ネルフィナビル、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルエピネフリン、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランザピン、オンダンセトロン、オキシトシン、パリペリドン、パロキセチン、パシレオチド、パゾパニブ、ペンタミジン、ペルフルトレン脂肪ミクロスフェア、フェンテルミン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピモジド、ポサコナゾール、プロブコール、プロカインアミド、プロメタジン、プロトリプチリン、プソイドエフェドリン、クエチアピン、キニジン、硫酸キニーネ、ラノラジン、リルピビリン、リスペリドン、リトドリン、リトナビル、ロキシスロマイシン、サルブタモール、サルメテロール、サキナビル、セルチンドール、セルトラリン、セボフルラン、シブトラミン、ソリフェナシン、ソラフェニブ、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラプレビル、テラバンシン、テリスロマイシン、テルブタリン、テルフェナジン、テトラベナジン、チオリダジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラゾドン、トリメトプリム-スルファ、トリミプラミン、バンデタニブ、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリコナゾール、ボリノスタット、又はジプラシドンのうちの少なくとも1種から選択される、組成物、医薬組成物、及び方法を含む。当業者は、心疾患を誘発するさらなる薬剤が存在することを認識し、本発明の製剤に含めることによって利益を得ることができる。
【0121】
一部の実施形態において、医薬組成物は、経口、舌下、経皮、坐剤、髄腔内、経腸、非経口、静脈内、腹腔内、皮膚、皮下、局所、経肺、直腸、腟内、又は筋肉内投与用に製剤化されている。一部の実施形態において、経口投与用に製剤化されている医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、散剤、トローチ剤、薬用キャンディー剤、スラリー剤、液体溶液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤又は経口フィルム剤(OTF)である。一部の実施形態において、組成物は、固体形態、溶液剤、懸濁剤、又は軟質ゲル形態である。一部の実施形態において、固体形態は、1又は2以上の賦形剤、結合剤、粘着防止剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤、香料、染料、着色剤、流動化剤、滑沢剤、保存剤、収着剤、甘味剤、それらの誘導体、又はそれらの組合せをさらに含む。一部の実施形態において、結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポビドン、アクリル酸及びメタクリル酸コポリマー、薬学的グレーズ、ガム、並びにミルク誘導体からなる群から選択される。
【0122】
一実施形態において、方法は、式Iの化合物を約1mg~約1グラムの単位用量当たりの量で含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約1mg~約500mgである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約500mg~約1グラムである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約250mg~約750mgである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約50mg~約450mgである。一部の実施形態において、単位用量当たりの量は、約100mg~約300mgである。
【0123】
一実施形態において、方法は、経口、舌下、経皮、坐剤、髄腔内、経腸、非経口、静脈内、腹腔内、皮膚、皮下、局所、経肺、直腸、腟内、又は筋肉内投与用に製剤化されている医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、経口投与用に製剤化されている医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、散剤、トローチ剤、薬用キャンディ
ー剤、スラリー剤、液体溶液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤又は経口フィルム剤(OTF)である。一部の実施形態において、組成物は、固体形態、溶液剤、懸濁剤、又は軟質ゲル形態である。一部の実施形態において、固体形態は、1又は2以上の賦形剤、結合剤、粘着防止剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤、香料、染料、着色剤、流動化剤、滑沢剤、保存剤、収着剤、甘味剤、それらの誘導体、又はそれらの組合せをさらに含む。一部の実施形態において、結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポビドン、アクリル酸及びメタクリル酸コポリマー、薬学的グレーズ、ガム、並びにミルク誘導体からなる群から選択される。
【0124】
一実施形態において、方法は、医薬組成物を提供する。本発明の一実施形態は、式Iの化合物の投与方法であって、化合物が、薬物誘発性である又は疾患若しくは状態によって引き起こされる、QT延長、心筋損傷、又はAVブロックなどの心疾患を低減又は除去する脂質である、方法を提供する。
【0125】
市販薬物の使用の中止又は制限の唯一の最大の原因は、多形性心室性頻脈、又は致命的でありうる状態であるトルサードドポワントに関連しているQT間隔延長であった。
【0126】
5-HT3アンタゴニストは、セロトニン結合を遮断する。アロキシ(又はパロノセトロン(palonasitron)HCL)は、化学療法誘導悪心及び嘔吐のための制吐薬5-HT3アンタゴニストであり、5-HT3へのセロトニン結合を遮断する。ある研究では、0.075mgのパロノセトロンがセボフルラン麻酔の前に投与されようと後に投与されようと、周術期中においてQTc間隔に有意差がなかった。パロノセトロンは、セボフルラン麻酔中におけるQTc間隔の観点から安全でありうる。
【0127】
5-HT4受容体アゴニスト。シサプリドは、上部胃腸管における運動性を高める薬物である消化管運動促進剤である。それは、セロトニン5-HT4受容体アゴニストとして直接的に作用し、副交感神経刺激薬として間接的に作用する。シサプリドは、QT間隔を用量依存的に延長する。33名の患者をより高い用量の段階にモニタリングしたときトルサードドポワントも心室性頻脈も認められなかった。
【0128】
ヒスタミンアンタゴニスト。アレルギーの治療において使用される抗ヒスタミン薬は、エフェクター細胞のH1-受容体部位をめざしてヒスタミンと競合することによって作用する。それらは、そのために、ヒスタミン単独によって媒介される応答を予防するが、回復させない。
【0129】
痛み及び月経前症状緩和H1アンタゴニストは、鼻炎、蕁麻疹、及び結膜炎の症状を呈する急性滲出性型アレルギーにおいて最も有用である。しかし、それらの効果は、純粋に対症的であり、ヒスタミン抗体反応に起因しうる症状の抑制に限定される。
【0130】
ピリラミンは、利尿薬の第一世代ヒスタミンH1アンタゴニストである。ピリラミンの過量投与後にQT間隔が延長された青年の症例がある。心室性頻拍性不整脈に起因する死亡について報告されてきた。
【0131】
テルフェナジン(Terfenidine)は、アレルギー、じんま疹(蕁麻疹)、及び他のアレ
ルギー性炎症性状態を治療するために使用される抗ヒスタミン薬である。商品名Seldaneは、米国で中止されている。重度の心血管系有害作用についての報告はまれにしか受け取られていない。そのような有害作用としては、心室性頻脈性不整脈(トルサードドポワント、心室性頻脈、心室性細動、及び心停止)、低血圧、動悸、又は失神が挙げられる。
【0132】
ロラチジンは、第一選択の抗ヒスタミン薬であり、第二世代末梢ヒスタミンH1受容体遮断薬である。それは、構造において、イミプラミンなどの三環式抗うつ薬と近い関係があり、非定型抗精神病薬クエチアピンと遠い関係がある。ミゾラスチンやエバスチンなどいくつかの抗ヒスタミン薬は、QT間隔を延長し、重度心不整脈を誘発することができる。2009年半ば現在で、ロラタジンによるQT延長の危険に関する臨床データはほとんど公表されていなかった。ロラタジンに関連づけられているトルサードドポワントの極めて稀な報告症例は、主に薬物相互作用、特にアミオダロン及び酵素阻害剤との薬物相互作用を伴うように見える。ロラタジンの主な代謝産物であるデスロラタジンに起因するQT延長の報告はない。トルサードドポワントの危険因子を有する患者又はいくつかの酵素阻害剤を服用している患者は、ロラタジンを使用するのを避けるべきである。
【0133】
アステミゾールは、ヒスタミンH-1受容体及びH-3受容体に作用する、長時間作用型で高選択的なH1アンタゴニストである。それは、鎮痒及び抗コリン効果を及ぼす。それは、酸性スフィンゴミエリナーゼの機能阻害剤でもある。過量のアステミゾールは、心筋を、トルサードドポワントを含めて心室リズム障害にさせる。しかし、リズム障害は、補正QT間隔が500msより長い患者においてのみ発症した。
【0134】
カルシウムチャネル遮断薬。プレニラミンは、狭心症の治療における血管拡張薬として使用されるアンフェタミン化学クラスのカルシウムチャネル遮断薬である。29名の狭心症患者において、プレニラミンの1日180mgで治療する前、中、及び後に安静時ECGを記録した。1週間治療した後、QT間隔は有意に延長された。延長は、療法が継続されている限り持続し、その療法は最長で6か月であった。治療の中止後に、QT間隔は2週間以内に正常に戻った。
【0135】
リドフラジンは、ピペラジンカルシウムチャネル遮断薬であり、若干の抗不整脈作用をもつ冠血管拡張薬である。三環式抗ヒスタミン薬として、それは、末梢ヒスタミンH1-受容体の選択的インバースアゴニストとして作用する。それは、QT間隔延長及び心室性不整脈の著しい危険を伴う。リドフラジンは、野生型HERGを安定に発現させるHEK
293細胞から記録されたHERG電流(I(HERG))を強力に阻害する(約16nMのIC(50))。それは、活性化された/開口HERGチャネルを優先的に阻害する際に同様な条件下でHERGに対してベラパミルより約13倍強力である。リドフラジンは、チャネルポア内の芳香族アミノ酸残基に結合することによってHERGチャネルのアルファサブユニットの高親和性遮断を生じ、第二に、これは、この薬物によるQT間隔延長の分子機構を表す可能性が高い。
【0136】
ベプリジルは、カルシウムチャネルを通じたカルシウム(Ca2+)の移動を混乱させる抗高血圧薬である。同時に、ベプリジルはQT間隔を延長する。QT及び不応状態を延長し、QTcの変化(%)と不応期延長の間に線形相関が示される可能性がある。1名の患者においてベプリジルは、VTを誘発するのに必要とされた刺激の数を1つ低減したが、自発性不整脈は認められなかった。それは、抗不整脈特性を最小催不整脈効果と共に有する。
【0137】
抗マラリア薬。クロロキン-クロルフェニラミン(クロロキン+クロロフェニラミン)は、インビトロで熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)においてクロロキン非
感受性を回復させるヒスタミンH1受容体遮断薬であり、クロロキン/クロロフェニラミンは、クロロキン単独より高い治癒率を生じる。QT短縮症候群(SQTS)は、著しく促進された心再分極、心室性不整脈及び突然心臓死によって特徴づけられる散発性又は常染色体優性障害である。現在までに、異なる5つのイオンチャネル遺伝子(KCNH2、KCNQ1、KCNJ2、CACNA1C及びCACNB2)における変異がSQTSを引き起こすと特定された。心室性不整脈及び突然死の危険は、SQTSにおいて極めて高
く、心停止がSQTS対象の31%において主症状として報告されている。クロロキンは、QT短縮症候群の原因となる変異体Kir2.1チャネルを遮断し、再分極特性をインシリコで正規化する。
【0138】
ハロファントリンは、置換フェナントレンを含む抗マラリア剤であり、抗マラリア薬キニーネ及びルメファントリンと関係がある。それは、心毒性に関連しているおそれがある。最も危険な副作用は心不整脈である。ハロファントリンは、著しいQT延長を引き起こし、この効果は標準用量でさえ見られる。したがって、この薬物を心伝導障害の患者に与えるべきではなく、メフロキンと併用すべきでもない。ハロファントリンの作用機序は不明である。
【0139】
キニジンは、心臓においてクラスI抗不整脈剤(Ia)として作用する抗マラリア薬である。それは、キニーネの立体異性体である。このアルカロイドは、細胞性膜を通るナトリウム及びカリウム電流を遮断することによって心筋及び骨格筋の興奮性を弱める。それは、細胞活動電位を延長し、自動性を低下させる。キニジンは、ムスカリン性及びアルファ-アドレナリン作動性神経伝達も遮断する。キニジンが引き起こす女性のQT延長は、等価な血清中濃度で引き起こす男性のQT延長より長い。この差は、キニジンを服用している女性において認められる薬物誘発性トルサードドポワントの発生率を増大させる要因になる可能性があり、QTc間隔を延長する他の心臓及び非心臓病薬にとって意味がある。
【0140】
抗精神病薬。典型的な抗精神病薬として知られている第一世代の抗精神病薬は、1950年代に発見された。非典型的な抗精神病薬として知られている第二世代の薬物の大半は、さらに最近になって開発されたが、最初の非典型的な抗精神病薬クロザピンは1960年代に発見され、1970年代に臨床的に導入された。両世代の医薬品は、脳のドーパミン経路における受容体を遮断する傾向があるが、非典型な医薬品は、同様にセロトニン受容体に作用する傾向がある。QTc間隔延長は、通常の抗精神病医薬品と新規の抗精神病医薬品の両方での治療の結果として起こることがあり、潜在的に致死性の心室性不整脈、トルサードドポワントと結びついているため臨床上の関心事である。
【0141】
ピモジドは、ジフェニルブチルピペリジンクラスの抗精神病薬であり、QT間隔の延長を誘発するおそれがある。ピモジドの投与は、後天性、先天性QT間隔延長又はQT間隔延長の家族歴を有する個体において禁忌である。ピモジドは、不整脈又はトルサードドポワントの個人歴又は家族歴を有する人には、その使用が勧められず、ピモジドは、D2、D3、及びD4受容体並びに5-HT7受容体のアンタゴニストとして作用する。それは、hERG遮断薬でもある。
【0142】
セルチンドールは、抗精神病医薬品である。他の非典型的な抗精神病薬のように、脳のドーパミン及びセロトニン受容体において活性を示す。Abbott Labs社が、1996年に
セルチンドールのための米国食品医薬品局(FDA)承認を初めて申請したが、QTc延長による突然死の危険の増加に関する懸念に続いて1998年にこの申請を取り下げた。セルチンドールを服用した2000名の患者の治験において、13名の突然死を含めて27名の患者が予想外なことに死亡した。この薬物は、米国における使用のためのFDAによる承認は得られなかった。欧州において、セルチンドールは1996年から19の諸国で承認及び市販されたが、その販売承認は1998年に欧州医薬品庁により保留され、この薬物は市場から取り下げられた。2002年に、新しいデータに基づいて、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)は、心臓リズム障害の危険がある患者に対する広範な禁忌及び警告を含めて強い保護、例外的な症例を除くすべての症例における最高用量の24mgから20mgへの推奨低減、及び治療前及び中における広範なECGモニタリング要件を伴って、セルチンドールを臨床試験において制限使用するために再導入でき
ることを示唆した。
【0143】
Thorazine及びLargactilとして市販されているクロルプロマジンは、典型的な抗精神病薬クラス中の抗精神病医薬品である。その作用機序は完全に明らかというわけではないが、そのドーパミンアンタゴニストとしての能力と関係づけられると考えられている。クロルプロマジンは、抗セロトニン作動性及び抗ヒスタミン作動性も有する。クロルプロマジンは、D2ドーパミン受容体及びD3やD5などの同様な受容体の非常に効果的なアンタゴニストである。このジャンルの他の大半の薬物とは異なって、クロルプロマジンはD1受容体に対して高親和性も有する。Thorazineを服用する数人によってのみ、延長された
補正QT間隔の心電図が報告されている。FDA及びソーシャルメディアからThorazine
を服用しながら副作用を示す2,633名の研究において、5名が延長された補正QT間隔の心電図を示す。
【0144】
チオリダジンは、フェノチアジン薬物に属するピペリジン定型抗精神病薬である。ブランド製品が重度心不整脈を引き起こしたので、2005年に世界中から引き揚げられた。しかし、米国においてジェネリック製品が入手可能である。この薬物は重度心不整脈を引き起こしたので、その製造業者Novartis社によって自発的に世界中で中止された。チオリダジンは、QTc間隔を用量依存的に延長する。5-HT2AとD2の受容体結合の比は、大半の抗精神病薬が非典型又は典型的であるか否かを決定すると思われる。チオリダジンの場合、5-HT2AとD2の受容体結合の比は、実践現場における錐体外路系副作用傾向が比較的低いにもかかわらず、非典型性に必要とされると思われるレベル未満である。
【0145】
ハルドール、ハロペリドール。典型的な抗精神病医薬品のQT間隔延長はメペリジンである。それは、WHO必須医薬品モデルリストに記載されている。それは、最もよく使用される典型的な抗精神病薬である。特別な警告:QT延長の発症の特別な危険がある患者(低カリウム血症、QTアミオダロンを引き起こす他の薬物の同時使用:Q-Tc間隔延長(心調律延長の潜在的に危険な変化))。
【0146】
メソリダジン(Mesoridazone)は、統合失調症の治療において使用されるフェノチアジンと呼ばれる薬物のクラスに属するピペリジン神経遮断薬である。それは、チオリダジンの代謝産物である。メソリダジンは、危険な副作用、すなわち不規則な心拍動及び心電図のQT延長のために2004年に米国市場から引き揚げられた。
【0147】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤。セレクサ(シタロプラム)は、選択的なセロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)と呼ばれる薬物群の抗うつ薬である。(±)-1-(3-ジメチルアミノプロピル)-1-(4-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボニトリルと名付けられたラセミ二環式フタラン誘導体の化学構造は、他のSSRI又は他の入手可能な抗うつ剤の化学構造と関係がない。シタロプラムは、心調律(QT延長)に影響する状態を引き起こす可能性がある。
【0148】
抗生物質。モキシフロキサシンは、第四世代の合成フルオロキノロン抗細菌剤である。それは、II型のトポイソメラーゼであるDNAジャイレースを阻害することによって機能し、トポイソメラーゼIV(細菌DNAを分離し、それによって細胞複製を阻害するのに必要な酵素)はトルサードドポワントを引き起こす可能性がある。モキシフロキサシンとQT間隔を延長する又は徐脈を誘発する他の薬物(例えば、ベータ-遮断薬、アミオダロン)との共投与は回避されるべきである。伝導異常患者を含めて心血管疾患患者におけるモキシフロキサシンの使用において熟考されるべきである。QT間隔を延長する薬物は、QT延長に相加作用を及ぼし、心室性不整脈の危険を増加させる可能性がある。
【0149】
ペンタミジン(Pentamadine)は、ニューモシスチス肺炎を予防及び治療するために投
与される抗微生物医薬品である。その正確な抗原虫作用機序は、(ユビキチンとの反応及びミトコンドリア機能を必要とする可能性があるものの)不明である。重度又は致死的な不整脈及び心不全は、かなり頻繁である。この芳香族ジアミジンのペンタミジンは、hERGチャネルトラフィッキングの阻害を介して作用する。ペンタミジンは、hERG、KvLQT1/mink、Kv4.3、又はSCNA5によって生じる電流に急性の効果を及ぼさない。しかし、終夜曝露した後、ペンタミジンは、hERG電流を低減し、治療濃度と同様なIC50値5~8μMのhERGのトラフィッキング及び成熟を阻害した。
【0150】
クラリスロマイシンは、エリスロマイシンから作製された抗生物質であり、化学的には6-O-メチルエリスロマイシンとして知られている。それは、マクロライドクラスにあり、一部の細菌によりタンパク質の作製を止めることによって働く。それは、トルサードドポワントを含めてQT延長又は心室不整脈(ventricular cardiac arrhythmia)を引き起こす。
【0151】
エリスロマイシンは、トルサードドポワントを含めてQT間隔が延長された不整脈という重篤な副作用を含むよく見られる副作用のある抗生物質である。
【0152】
グレパフロキサシンは、細菌感染症を治療するために使用される経口フルオロキノロン広域スペクトル抗細菌剤である。グレパフロキサシンは、心電図のQT間隔を長期化し、心イベント及び突然死を導く副作用のために、1999年に世界の市場から引き揚げられた。
【0153】
スパルフロキサシンは、細菌感染症の治療において使用されるフルオロキノロン広域スペクトル抗生物質である。それは、議論の余地がある安全性プロファイルを有する。スパルフロキサシンの使用は、既知のQTc延長を示す患者及びクラスIA又はIII抗不整脈薬で同時治療された患者において禁忌である。ある研究において、1200mg及び1600mgを投与後の最大血漿中濃度(Cmax)は、直線用量関係で予想されるはずの最大血漿中濃度より低かった。これは、QTc間隔の平均増加及び平均最大増加についても事実であった。QTc間隔の増加は、Cmaxとよく相関したが、AUC0-無限大とは相関しなかった。
【0154】
クルクミン(ジフェルロイルメタン)は、いくつかの植物によって産生される明黄色化学物質である。それは、ウコン(Curcumalonga)の主要なクルクミノイドであり、抗酸
化活性、抗炎症活性、抗ウイルス活性、抗細菌活性、抗真菌活性、及び抗腫瘍活性を発揮する。ホールセルパッチクランプ実験において、クルクミンは、IC50値5.55μMで、hERGチャネルを用量依存的に安定に発現させるHEK293細胞におけるhERG K+電流を阻害した。hERG チャネルの非活性化、不活性化及び不活性化からの回復時間は、10μMのクルクミンの急性期治療により著しく変化した。
【0155】
抗不整脈薬。抗不整脈薬は、心房細動、心室性頻脈、及び心室性細動など心臓の異常な調律(心不整脈)を抑制するために使用される。プロカインアミドは、心不整脈の治療に使用される抗不整脈薬クラスである。それは、Vaughan Williams分類体系によりクラスIaとして分類され、上室性不整脈及び心室性不整脈の両方に使用される。抗不整脈薬プロカインアミドがペースメーカーに干渉することも認められた。なせなら、プロカインアミドの毒性レベルが、心室伝導速度の低下及び心室不応期の増加を導くからである。これによって、人工膜電位における撹乱が生じ、上室性頻脈を導き、ペースメーカーの故障及び死亡が誘発される。それは、心筋のバトラコトキシン(BTX)活性化ナトリウムチャネルの急速な遮断を誘発し、長期ゲーティング閉鎖に対してアンタゴニストとして作用する。プロカインアミドは、アミノベンズアミドに属し、キニジンとして同様な心臓効果を有
し、キニジンと同じ毒性プロファイルを有する。
【0156】
プロパフェノンは、クラス1C抗不整脈医薬品であり、心房性及び心室性不整脈などの速い心拍に関連している体調不良を治療し、心筋細胞へのナトリウムイオンの流入を遅らせ、細胞の興奮性の低下を引き起こすことによって働く。プロパフェノンは、クラスIa又はIbより、高速の細胞に対して選択性が高いが、正常細胞を多く遮断する。プロパフェノンは、ベータ-アドレナリン遮断薬としての追加の活性を有し、徐脈を引き起こすおそれがあるという点で、プロトタイプのクラスIc抗不整脈薬とは異なる。
【0157】
メタンスルホンアニリド(E-4031)は、クラスIII抗不整脈薬のカリウムチャネルを遮断する実験的クラスIII抗不整脈薬である。E-4031は、hERGチャネルである心臓において主に見られる電位開口型カリウムチャネルの特定クラスに作用する。hERGチャネル(Kv11.1)は、IKr電流を媒介し、心筋細胞を再分極する。hERGチャネルは、エーテル-a-go-go関連遺伝子(hERG)によってコードされる。E-4031は、開口チャネルに結合することによってhERG型カリウムチャネルを遮断する。hERG-チャネル内のその構造標的は、不明瞭であるが、一部の他のメタンスルホンアニリドクラスIII抗不整脈薬は、hERG-チャネルのS6ドメイン又はC末端に結合することが知られている。E-4031は、QT間隔を延長することができるので、致死的不整脈を引き起こすおそれがある。これまでに、E-4031のQT間隔の延長に及ぼす効果を試験するために1つの臨床試験が実施された。
【0158】
アミオダロンは、心室性細動又は頻脈のクラスIII抗不整脈薬であり、心筋活動電位の3相を延長する。アミオダロンは、心電図にQTの延長として反映される活動電位持続時間の延長を引き起こすことが知られている抗不整脈剤である。アミオダロンは、心筋の脱分極及び再分極に複数の効果を及ぼし、極めて効果的な抗不整脈薬となる。その第一の効果は、カリウムチャネルを遮断することであるが、ナトリウム及びカルシウムチャネル並びにベータ及びアルファアドレナリン受容体を遮断することもできる。アミオダロンは、QT間隔及びQTc値を著しく延長する。
【0159】
ドロネダロンは、アミオダロンと関係があるベンゾフラン誘導体であり、心不整脈に主に使用される薬物である(2009年にFDAにより承認)。それは「マルチチャネル遮断薬」であるが、効を奏する中でどのチャネルが中枢的な役割を果たすのかは不明瞭である。細胞レベルにおけるドロネダロンの作用は、急速な遅延整流、遅い遅延整流及びACh活性化内向き整流を含めて複数の外向きカリウム電流における阻害を示唆する大半の研究で議論の余地がある。急速な内向きNa電流及びL型Caチャネルを低減することも考えられている。一部の研究におけるK電流の低減は、K-AChチャネル又は関連GTP結合タンパク質の阻害が原因であることが示された。K+電流の69%低減が、AP時間の増加及び効果的な不応期の増加を引き起こした。ドロネダロンは、アミオダロン様クラスIII抗不整脈活性をインビトロ及び臨床試験で示す。この薬物は、4つのVaughan-Williams抗不整脈薬クラスのそれぞれにおいても活性を示すように見える。QT間隔を延長し、トルサードドポワントを誘発する可能性がある薬物又は薬草製品の同時使用、QTc
Bazett間隔≧500ms、あるいはQT間隔を延長し、又はトルサードドポワントの危険を増加させる薬物又は薬草サプリメント(クラスI又はIII抗不整脈剤、フェノチアジン、三環式抗うつ薬、いくつかの経口マクロライド、マオウ)との使用においては禁忌である。
【0160】
ジソピラミドは、心室性頻脈の治療において使用される抗不整脈医薬品である。それは、ナトリウムチャネル遮断薬であり、したがってクラス1a抗不整脈剤と分類される。ジソピラミドのクラス1a活性は、ナトリウムチャネルを標的にして、伝導を阻害するという点で、キニジンのクラス1a活性と似ている。ジソピラミドは、心筋活動電位の0相に
おいて心筋細胞のナトリウム透過性の増加を抑制し、内向きナトリウム電流が低下する。これによって、興奮の閾値が増加し、立ち上がり速度が低下する。ジソピラミドは、QRS及びP波時間の両方を長期化することによってPR間隔を延長する。ジソピラミドについての懸念は、その1型抗不整脈効果により突然死を誘発する仮想の可能性であった。
【0161】
ドフェチリドは、クラスIII抗不整脈剤である。ドフェチリドの催不整脈可能性のために、ドフェチリドでの治療の危険の特別な訓練を受けた医師の処方によりのみ入手可能である。さらに、ドフェチリドは、メールオーダーにより又は特別に訓練された地元の薬局を通してのみ入手可能である。ドフェチリドは、遅延整流性外向きカリウム電流の急速成分を選択的に遮断することによって働く。QT間隔及び補正QT間隔(QTc)の用量依存的増加がある。このため、多くの開業医は、テレメトリ監視下又はQT及びQTcの一連のEKG測定を行うことができる場合の個体においてのみドフェチリド療法を開始する。
【0162】
ソタロールは、クラスIII抗不整脈特性も示す非選択的競合的ベータ-アドレナリン受容体遮断薬である。米国食品医薬品局により、ソタロールは、そのQT間隔の延長が生命を脅かすようなトルサードドポワントの小さな危険を伴うので重篤な不整脈にのみに使用されることが勧告される。ソタロールは、カリウムチャネルにも働き、心室の弛緩の遅延を引き起こす。これらのカリウムチャネルを遮断することによって、ソタロールは、K+イオンの流出を阻害し、それによって、別の電気信号を心室筋細胞において発生させることができる前の時間の増加が生じる。新しい収縮の信号の前のこの時間の増加が起こる。
【0163】
イブチリドは、適応症が心房細動及び心房粗動の急性心臓除細動(cardioconversion)であり、心筋細胞の活動電位及び不応期を延長するクラスIII抗不整脈剤である。そのクラスIII抗不整脈活性のため、クラスIa剤とクラスIII剤の同時投与をすべきではない。大半の他のクラスIII抗不整脈薬とは異なって、イブチリドは、カリウム電流の心臓遅延整流の遮断を介した活動電位の延長を生じず、他のクラスIII剤が有するナトリウム遮断性、抗アドレナリン作動性、及びカルシウム遮断活性も有しない。したがって、「純粋な」クラスIII抗不整脈薬と呼ばれることが多い。イブチリドは、他のクラスIII抗不整脈薬のように、遅延整流カリウム電流を遮断する。それは、スローナトリウムチャネルに対する作用を及ぼし、これらのスローチャネルを通したナトリウムの流入を促進する。他の抗不整脈薬のように、イブチリドは、QT間隔を延長するその能力のために異常心調律を導くおそれがあり、トルサードドポワントとして知られている潜在的に致命的な異常心調律を導くおそれがある。この薬物の投与は、異常心調律を発症する可能性が高い患者;過去に多形性心室性頻脈を有し、現在とりわけ長いQT間隔、洞不全症候群、又は亜急性心筋梗塞を有するヒトにおいて禁忌である。
【0164】
ドーパミン受容体アンタゴニスト。ドーパミンアンタゴニスト(抗ドーパミン作動薬)は、受容体拮抗作用によりドーパミン受容体を遮断する薬物の1つのタイプである。大半の抗精神病薬は、ドーパミンアンタゴニストであり、したがって統合失調症、双極性障害、及び覚醒剤精神病を治療する際に使用された。いくつかの他のドーパミンアンタゴニストは、悪心及び嘔吐の治療において使用される制吐薬である。
【0165】
ドロペリドールは、制吐薬及び抗精神病薬として使用される抗ドーパミン作動性ブチロフェノンであり、一部のヒスタミン及びセロトニンアンタゴニスト活性を有する強力なD2(ドーパミン受容体)アンタゴニストである。QT延長及びトルサードドポワントについての懸念がある。この証拠について議論されており、5mgを超える用量を受けたヒトのすべてにおいてトルサードの症例が30年で9件報告された。QT延長は、用量依存的効果であり、ドロペリドールは、低用量において著しい危険ではないが、しかし、QT間
隔の延長がトルサードドポワントを導くと思われる。
【0166】
ドンペリドンは、パーキンソン病において有用である薬物である末梢選択性ドーパミンD2受容体アンタゴニストであるが、特に高齢者に高用量(1日当たり30mgを超える)で静脈内投与したときドンペリドンの心毒性副作用のために、注意を要する。心臓に対するドンペリドンの潜在毒性の臨床徴候は、QT間隔(心臓の電気的パターンのセグメント)の延長(長期化)である。ドンペリドンの使用は、おそらく心臓のQT間隔及び心室性不整脈の延長効果を通して突然心臓死の危険の(70%)増加に関連している。原因は、hERG電位開口型カリウムチャネルの遮断であると考えられている。この危険は用量依存的であり、高齢者において高用量/非常に高用量を静脈内投与した場合、及びドンペリドンと相互作用し、その血中濃度を増加させる薬物(すなわち、CYP3A4阻害剤)の場合に最大であるようである。しかし、相反する報告が存在する。新生児及び乳児において、QT延長は、議論の余地があり、不確かである。
【0167】
抗がん剤。ドキソルビシン及びアントラサイクリンによるQTcの延長、QT分散の増加及び遅延電位の発生は、ドキソルビシン誘発性の異常心室脱分極及び再分極を示唆する。QT分散及び遅延電位はともに、様々な心疾患における重篤な心室リズム障害及び突然死の危険の増加に関連していることが知られている。
【0168】
三酸化ヒ素は抗白血病薬であり、QTc間隔を延長することができる。心伝導異常:療法を開始する前に、12誘導ECGを行い、血清電解質及びクレアチニンを評価し、既存の電解質異常を補正し、QT間隔を延長することが知られている薬物を中止することを考えてみる。三酸化ヒ素は、QT間隔延長及び完全な房室遮断を引き起こすおそれがある。QT延長は、致命的でありうるトルサードドポワント型心室性不整脈を導くおそれがある。トルサードドポワントの危険は、QT延長の程度、QT延長薬物の同時投与、トルサードドポワントの歴史、既存のQT間隔延長、うっ血性心不全、カリウム消耗利尿薬の投与、又は低カリウム血症若しくは低マグネシウム血症になる他の状態と関係がある。1名の患者(アムホテリシンBも受けている)は、三酸化ヒ素を用いた再発性APLのための導入療法時にトルサードドポワントに罹った。急性前骨髄球性白血病の治療において使用される三酸化ヒ素(As2O3)は、直接遮断によってではなく、小胞体(ER)におけるhERGタンパク質のプロセシングを阻害し、それによってhERGの表面発現が低下することによって、hERG/IKr電流を低減した。
【0169】
オピオイド。レボメタジルは、構造がメサドンと同様な酢酸α-メタジル合成オピオイドの左旋性異性体である。それは、その活性代謝産物のために作用持続時間が長い。2001年に、レバセチルメサドールは、生命を脅かすような心室調律障害の報告が原因で欧州市場から取り除かれた。
【0170】
メサドンは、痛み及び薬物嗜癖を治療するために使用されるオピオイドである。重篤な危険としては、オピオイド乱用が挙げられ、心臓不整脈も、延長されたQTを含めて発生する可能性がある。米国においてメサドン中毒に関係する死亡者数は、2011年に4,418名であり、オピオイド中毒による全死亡者数の26%であった。
【0171】
脂質低下剤。ロバスタチン(Lovostatin)は、コレステロールを低下させるために使用される薬物であり、HMG-CoAのメバロネートへの変換を触媒する酵素である3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素Aレダクターゼ(HMG-CoA還元酵素)の阻害剤である。メバロネートは、コレステロール生合成に必要とされる建築ブロックであり、ロバスタチンは、HMG-CoAのための可逆的競合的阻害剤として作用し、HMG-CoA還元酵素に結合することによってその産生に干渉する。抗精神病医薬品に関連しているQTc延長は、用量依存的に生じる。ロバスタチンの添加は、シトクロムP(45
0)(CYP)アイソザイム3A4の競合的阻害を通して血漿中クエチアピンレベルの増加を引き起こす。これは、統合失調症患者における脂質異常症(dysipidemia)の管理時
にQTc延長を導く、クエチアピンとロバスタチンとの薬物相互作用への可能性を強調する。
【0172】
プロブコールは、冠動脈疾患の治療において最初に開発された抗高脂血症薬である。プロブコールは、QT間隔延長に関連している。プロブコールは、HERGのN末端における新規ミスセンス変異M124Tに関連している長いQT症候群を悪化させる。
【0173】
チャネル病。ヒトether-a-go-go遺伝子関連心臓四量体カリウムチャネルが変異を起こしたとき、患者を163より多い薬物に感受性とすることができ、イオン伝導を阻害し、活動電位を調節解除する。活動電位の延長は、カリウムチャネルにおける効果に次いで起こる。イオンチャネル活性薬物は、QTc間隔を直接的に増加させる可能性があり、トルサードドポアント及び突然心臓死の危険を増加させる。薬物に対する心筋細胞カリウムチャネル感受性の悪化は、糖尿病を含む代謝病的状態にも関連している可能性があり、又は特発性の起源を有する可能性がある。
【0174】
本明細書で用いられているように、「リポソーム」という用語は、本発明の新規脂質のうちの1又は2以上でその壁又は膜が形成されているカプセルを指す。本発明の脂質は、単独で又は他の既知の脂質と一緒に使用することができる。1つの特定の非限定的な例において、新規脂質は、空のリポソームであり、リン脂質の単一型又はリン脂質の組合せから製剤化することができる、リポソームを形成し、又はリポソームにおいて使用される。空のリポソームは、1又は2以上の表面改質、例えば、タンパク質、炭水化物、糖脂質若しくは糖タンパク質、さらには核酸、例えば、アプタマー、チオ修飾核酸、タンパク質核酸模倣物などの核酸、タンパク質模倣物、ステルス剤などをさらに含むことができる。一実施形態において、新規リポソーム又は新規リポソーム前駆体は、リゾホスファチジル化合物、モノグリセリド、及び遊離脂肪酸を含む共融物など、新規脂質-モノグリセリド-脂肪酸の共融物を含み、いくつかの態様において、新規脂質:モノグリセリド:遊離脂肪酸の組成物の比が1:4:2、1:3:3、2:4:2、又は1:2:4モルパーセントである。組成物は、新規脂質、ミリストイルモノグリセリド、及びミリスチン酸を含む共融混合物を含んでもよい。1つの特定の非限定的な例において、組成物は、空のリポソームとすることができる新規脂質リポソーム中に又は付近に活性薬剤も含み、リン脂質と活性薬剤の比が3:1、1:1、0.3:1、及び0.1:1である。
【0175】
本発明者らの一部による先行研究は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、12-ミステロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(グリセロール)]、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(LysoPG)、12-ミステロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(グリセロール)]、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(LysoPG)、又は1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoPC)、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンを含むリポソームを有する製剤が、様々なQT延長剤によるhERGチャネル阻害を予防したことを示した。
【0176】
20より多いQTc延長薬が、上記の脂質を使用した様々なレギュラトリー検証済み前臨床モデルにおいて除去されたQTc延長を有するものであった。
【0177】
本発明は、モルモットモデル系においてQT延長を低減又は除去する際に増強された効果を示す。本明細書で使用されるモルモットモデル系は、ヒト心臓が機能することに最も近いモデル系であり、QT延長剤の試験に十分受け入れられている。簡潔に言えば、モルモットにECGリード線を取り付け、モキシフロキサシンの経口用量を高めながら投与した。モルモットは、ヒトの補体と最も似ている心臓イオンチャネルの補体を有し、催不整脈薬に精巧に感受性があるので欧州及びカナダにおいてQT延長試験に好ましい種である。薬物の側では、モキシフロキサシンは、すべての種において用量依存的QTc延長を引き起こし、非常に線形性の薬物動態を示し、それによって投与しやすくなり、毒性水準下曝露レベルにおいて比較的安全になるので、Thorough QT(TQT)臨床研究において好ましいQTc延長陽性対照薬物である。
【0178】
モキシフロキサシンのみ投与されたモルモットは、重度(+10ms)で生命を脅かすような(+30ms)QTc延長を示した。対照的に、一例として、14:0 lyso PGの同時投与を受けていた動物は、QTcにおいて変化を全く又は非常にわずかしか示さなかった。モキシフロキサシンのQTc-用量反応において、統計学的にみて有意な右方シフトが発生し、実際にはQTc延長が用量制限性になるのを妨げる。
【0179】
AVブロックは、心臓病学における興味深い難問を表す。薬物誘発性AVブロック患者は、疾患誘発性AVブロックに苦しむ患者とは異なって、ペースメーカー植え込みによる治療を受けていない。しかるに、症例の56%において薬物を中止した後に薬物誘発性AVブロックは不可逆的であるという証拠がある(Zeltser D, JustoD, Halkin A, et al.
Drug-induced atrioventricular block: prognosis after discontinuation of theculprit drug. J Am Coll Cardiol. 2004; 44(1):105-108)。現在の実務は、効果を発見す
るとAVブロック薬を直ちに中止することである。これは、診療所における薬物採用に直接的に影響を与えながら、有用で効率的な薬物を腫瘍学者が利用可能な薬局方から引き揚げさせる。
【0180】
AVブロック及びQTc延長に関与するイオンチャネルは、完全に異なる。ナトリウム(Na+)及びカルシウム(Ca2+)チャネル阻害がAVブロックの発生の原因となり、カリウム(K+)阻害による再分極における遅延がQTc延長を導く。しかるに、脂質がK+電流を救出する仮定の機序によって、Na+及びCa2+電流にも利益を与えることができる。
【0181】
この仮説を試験するために、モルモットに取り付け(皮下ECGリード線)、14:0
lyso PGの経口投与を行わずまた行って、フィンゴリモド及び/又はベラパミルの静注用量を高めながら曝露した。AVブロック薬のフィンゴリモド及びベラパミルを投与後2時間、ECG信号を連続的に記録した。フィンゴリモドの輸注後にPR間隔を測定した。P波がQRS群から分離し、3度AVブロックが示されると、PRの測定を止めた。
【0182】
フィンゴリモド単独の静脈内注入に曝露されたモルモットは、用量15μg/kgの時点で1度AVブロックに移行し、20μg/kgでMobitz 1型、2度AVブロックに急速に進行し、最後に用量23μg/kgの時点で3度AVブロックに進行した。AVブロックの進行は急速で不可逆的であった。輸注を止めることによって、P-QRS解離の発生は妨げられなかった。
【0183】
ベラパミルに曝露されたモルモットのコホートは、フィンゴリモド0.5mg/kgの
静脈内注射を受け、60分後に続いてフィンゴリモドの静脈内注入を受けた。1度AVブロックが、用量7μg/kgで出現し、10μg/kgでMobitz-1型、2度AVブロックに変化し、45μg/kgの時点でP波とQRS群との3度解離に移行した。
【0184】
動物の第3のコホートは、1.0mg/kgの14:0 lysoPGの初期強制経口投与を受け、60分後に続いて0.5mg/kgのベラパミルの静注投与量を受けた。ベラパミルの60分後に、フィンゴリモドを動物に上記のように輸注した。動物は、用量200μ/kgまでにPR間隔における穏やかな変化を示し、その時点で1度AVブロックが出現した。Mobitz-2型AVブロックが動物6匹中2匹において出現し、P-QRS解離が、2匹の動物において用量51μg/kgで観察され、コホート中の残りの動物において300μg/kgで観察された。
【0185】
ヒト患者において、Mobitz II型、2度又は3度AVブロック又は洞不全症候群の歴史を提示する患者に対するフィンゴリモドの投与は禁忌である。この薬物は、最初の用量からAVブロックを生じるということが示され、フィンゴリモド及びAVブロック薬での治療を回避することが勧められる(Fingolimod (Fingolimod) Full Prescribing Information. Novartis:T2016-22, February 2016)。モルモット心血管系データのヒトを
含めて他の種への翻訳可能性の歴史を考慮すると、これらの結果は、14:0 lysoPGが、フィンゴリモド使用に関連しているAVブロックの危険を軽減することができ、したがって薬物の安全性プロファイルを増強し、AVブロック問題のためにフィンゴリモドを普通なら受けることができない患者の治療を可能にすることを示唆する。
【0186】
図1は、モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物1と同時投与した場合と比べて示すグラフである。
【0187】
図2は、モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物6と同時投与した場合と比べて示すグラフである。
【0188】
図3は、モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物4と同時投与した場合と比べて示すグラフである。
【0189】
図4は、モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物2と同時投与した場合と比べて示すグラフである。
【0190】
図5は、モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物5と同時投与した場合と比べて示すグラフである。
【0191】
図6は、モルモットのQTc間隔に及ぼす経口単回用量(20mg/kg)のモキシフロキサシンの効果を、同じ経口単回用量のモキシフロキサシンを経口単回用量の化合物1、化合物2、化合物4、化合物5、化合物6、化合物7、化合物8、化合物9、化合物10及び化合物11と同時投与した場合と比べて示す複合グラフである。
【0192】
図7は、本発明の実施形態である例示的化学構造の描写である。
【0193】
本発明の新規脂質は、天然の形、又は塩、その塩の水和物若しくは溶媒和物の形で製造
されてもよい。塩としては、例示にすぎないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどがさらに挙げられる。
【0194】
本発明の少なくとも一部の実施形態において、式Iの化合物は、以下のスキームに従って調製される。参考のため、以下のスキームに含まれるすべての可変基は、以上に一般的に定義された対応する可変要素に関する。当業者は、代替の試薬及び反応物を使用して、同じ標的化合物及び中間体を生成できることを認識する。
【0195】
スキーム1に示すように、式VIの化合物を無水物と反応させた後、続いて塩形成を行い、式VIIの化合物を得る。当業者は、無水物の代替物が同様な結果を生じることを認識す
る。そのような代替物としては、酸クロリド、アシルイミダゾール、アシルスクシンイミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、活性化剤の存在下におけるカルボン酸が同様な結果を生じることを認識する。好適な活性化剤としては、DCC、EDC、HBTU、BOP、PyBOP、カルボニルジイミダゾール、ジスクシンイミジルカーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、塩形成用のDOWEX Na+樹脂の代替物が有用であることを認識する。そのような代替物としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、式VIIの化合物が化合物1、7、8及び9を含むことを認識する。
【0196】
【0197】
スキーム2に示すように、式VIの化合物をクロロホルメートと反応させた後、続いて塩形成を行い、式VIIIの化合物を得る。当業者は、クロロホルメートの代替物が同様な結果を生じることを認識する。そのような代替物としては、ピロカーボネートなどが挙げられるが、これに限定されない。当業者は、トリエチルアミン以外の塩基がカーボネート形成反応において有用であることを認識する。そのような塩基としては、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、N-メチルモルホリン、N-メチルピリジン、N,N-ジメチルピペラジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、DMAP以外のアシル転移触媒がカーボネート形成反応において有用であることを認識する。そのようなアシル転移触媒としては、ピリジン、2-メチルピリジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、ルイス酸触媒の導入により、カーボネート形成を促進できることを認識する。そのようなルイス酸触媒としては、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、三塩化アルミニウム、三塩化チタン、チタンイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、塩化スズ、アルミナ、シリカゲルなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、塩形成用の重炭酸ナトリウムの代替物が有用であることを認識する。そのような代替物としては、DOWEX Na+樹脂、炭酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、式VIIIの化合物が化合物2及び3を含むことを認識する。
【0198】
【0199】
スキーム3に示すように、式VIの化合物をイソシアネートと反応させた後、続いて塩形成を行い、式IXの化合物を得る。当業者は、イソシアネートの代替物が同様な結果を生じることを認識する。当業者は、塩基がカルバメート形成を促進できることを認識する。そのような塩基としては、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、N-メチルモルホリン、N-メチルピリジン、N,N-ジメチルピペラジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、アシル転移触媒がカルバメート形成を促進できることを認識する。そのようなアシル転移触媒としては、DMAP、ピリジン、2-メチルピリジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、ルイス酸触媒の導入により、カルバメート形成を促進できることを認識する。そのようなルイス酸触媒としては、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、三塩化アルミニウム、三塩化チタン、チタンイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、塩化スズ、アルミナ、シリカゲルなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、塩形成用の重炭酸ナトリウムの代替物が有用であることを認識する。そのような代替物としては、DOWEX Na+樹脂、炭酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
【0201】
スキーム4に示すように、式Xの化合物を無水物、クロロホルメート又はイソシアネートと反応させた後、続いてベンジルエーテル保護基の切断を行い、式XIの化合物を得る。ホスホリパーゼDを使用した式XIの化合物と式XIIの化合物のカップリングにより、式XIIIの化合物が生成する。当業者は、式IXの化合物について、無水物の代替物が同様な結果
を生じることを認識する。そのような代替物としては、酸クロリド、アシルイミダゾール、アシルスクシンイミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、式IXの化合物について、活性化剤の存在下におけるカルボン酸が同様な結果を生じることを認識する。好適な活性化剤としては、DCC、EDC、HBTU、BOP、PyBOP、カルボニルジイミダゾール、ジスクシンイミジルカーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、式IXの化合物について、クロロホルメートの代替物が同様な結果を生じることを認識する。そのような代替物としては、ピロカーボネートなどが挙げられるが、これに限定されない。当業者は、式IXの化合物について、イソシアネートの代替物が同様な結果を生じることを認識する。当業者は、塩基がエステル、カーボネート及びカルバメート形成を促進できることを認識する。そのような塩基としては、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、N-メチルモルホリン、N-メチルピリジン、N,N-ジメチルピペラジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、アシル転移触媒がエステル、カーボネート及びカルバメート形成を促進できることを認識する。そのようなアシル転移触媒としては、DMAP、ピリジン、2-メチルピリジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、ルイス酸触媒の導入により、エステル、カーボネート及びカルバメート形成を促進できることを認識する。そのようなルイス酸触媒としては、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、三塩化アルミニウム、三塩化チタン、チタンイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、塩化スズ、アルミナ、シリカゲルなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、ベンジルエーテル保護基の代替物及びそれを切断するための関連反応条件が有用であることを認識する。様々な適切なアルコール保護基が「Green’s Protective Groups in OrganicSynthesis」に広範に記載されている。そのようなベンジルエーテル代替物と
しては、トリメチルシリルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、tert-ブチルジフェニルシリルエーテル、アセテート、ベンゾエート、4-ニトロベンゾエート、tert-ブチルエーテル、4-メトキシベンジルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、代替酵素及び代替酵素反応条件がホスホジエステルの酵素形成において有用であることを認識する。当業者は、式XIIIの化合物が化合物1、2、3、7、8及び9を含むことを認識する。
【0202】
【0203】
スキーム5に示すように、式VIの化合物を酸触媒の存在下でアセタール、ケタール、アルデヒド又はケトンと反応させた後、続いて塩形成を行い、式XIVの化合物を得る。当業
者は、アセタール、ケタール、アルデヒド又はケトンの代替物が同様な結果を生じることを認識する。そのような代替物としては、ビニルエーテルなどが挙げられるが、これに限定されない。さらに、当業者は、p-トルエンスルホン酸がアセタール及びケタールの形成に適切な酸触媒であるが、代替酸触媒も有用であることを認識する。そのようなp-トルエンスルホン酸の代替物としては、PPTS、硫酸、メタンスルホン酸、Amberlyst樹脂、DOWEX酸樹脂、シリカゲルなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、式XIVの化合物を、酸触媒の存在下で代替のアセタール、ケタール
、アルデヒド又はケトンと反応させることにより代替の式XIVの化合物に変換できること
を認識する。当業者は、塩形成用のDOWEX Na+樹脂の代替物が有用であることを認識する。そのような代替物としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、式XIVの化合物が化合物4、5、6及び12を含むこ
とを認識する。
【0204】
【0205】
スキーム6に示すように、式Xの化合物を酸触媒の存在下でアセタール、ケタール、アルデヒド又はケトンと反応させた後、続いてベンジルエーテル保護基の切断を行い、式XVの化合物を得る。ホスホリパーゼDを使用した式XVの化合物と式XIIの化合物のカップリ
ングにより、式XVIの化合物が生成する。当業者は、式XVの化合物について、アセタール
、ケタール、アルデヒド又はケトンの代替物が同様な結果を生じることを認識する。そのような代替物としては、ビニルエーテルなどが挙げられるが、これに限定されない。さらに、当業者は、p-トルエンスルホン酸がアセタール及びケタールの形成に適切な酸触媒であるが、代替酸触媒も有用であることを認識する。そのようなp-トルエンスルホン酸の代替物としては、PPTS、硫酸、メタンスルホン酸、Amberlyst樹脂、DOWEX酸樹脂、シリカゲルなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、式XVの化合物を、酸触媒の存在下で代替のアセタール、ケタール、アルデヒド又はケトンと反応させることにより代替の式XVの化合物に変換できることを認識する。当業者は、ベンジルエーテル保護基の代替物及びそれを切断するための関連反応条件が有用であることを認識する。様々な適切なアルコール保護基が「Green’s Protective Groups in OrganicSynthesis」に広範に記載されている。そのようなベンジルエーテル代替物として
は、トリメチルシリルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、tert-ブチルジフェニルシリルエーテル、アセテート、ベンゾエート、4-ニトロベンゾエート、tert-ブチルエーテル、4-メトキシベンジルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、代替酵素及び代替酵素反応条件がホスホジエステルの酵素形成において有用であることを認識する。当業者は、式XVIの化合物が化合物4、5、6及び12を含むことを認識する。
【0206】
【0207】
スキーム7、スキーム8、スキーム9、スキーム10及びスキーム11はまとまって、式XXVIIの化合物の調製を図示する。スキーム7に示すように、式XVIIの化合物をベンジ
ルエーテルに変換し、式XVIIIの化合物を得る。次いで、式XVIIIの化合物のケタールを切断し、式XIXの化合物を得る。1又は2以上のカルボン酸及び適切な活性化試薬との反応で、式XIXの化合物が式XXの化合物に変換される。続いて、式XXの化合物のベンジルエーテルの切断により、式XXIの化合物が得られる。当業者は、代替の試薬及び反応条件がベ
ンジルエーテルの形成に有用であることを認識する。当業者は、ベンジルエーテル保護基の代替物及びそれを形成するための関連反応条件が有用であることも認識する。様々な適切なアルコール保護基が「Green’s Protective Groups in OrganicSynthesis」に広範
に記載されている。そのようなベンジルエーテル代替物としては、トリメチルシリルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、tert-ブチルジフェニルシリルエーテル、アセテート、ベンゾエート、4-ニトロベンゾエート、tert-ブチルエーテル、4-メトキシベンジルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、当業者は、代替反応条件がアセタール及びケタールの切断に有用であることを認識する。そのような条件が、「Green’s Protective Groups
in Organic Synthesis」に一般的に記載されている。当業者は、カルボン酸及び関連活
性化剤がエステルの形成に有用であることを認識する。当業者は、DCCが、エステルを形成するためのアルコールとカルボン酸のカップリングに適切な活性化剤であることを認識する。当業者は、代替活性化剤も、エステルを形成するためのアルコールとカルボン酸のカップリングに有用であることを認識する。そのような代替活性化剤としては、EDC、HBTU、BOP、PyBOP、カルボニルジイミダゾール、ジスクシンイミジルカーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、カルボン酸の代替物と活性化剤がアルコールからエステルを形成するのに有用であることをさらに認識する。そのような代替物は機能性試薬を含み、機能性試薬としては、無水物、酸クロリド、アシルイミダゾール、アシルスクシンイミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、ベンジルエーテル保護基の代替物及びそれを切断するための関連反応条件が有用で
あることを認識する。様々な適切なアルコール保護基が「Green’s Protective Groups in Organic Synthesis」に広範に記載されている。そのようなベンジルエーテル代替物と
しては、トリメチルシリルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、tert-ブチルジフェニルシリルエーテル、アセテート、ベンゾエート、4-ニトロベンゾエート、tert-ブチルエーテル、4-メトキシベンジルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0208】
【0209】
スキーム8に示すように、式XXIIの化合物をベンジルエーテルに変換し、式XXIIIの化
合物を得る。次いで、式XXIIIの化合物のケタールを切断し、式Xの化合物を得る。当業
者は、代替の試薬及び反応条件がベンジルエーテルの形成に有用であることを認識する。当業者は、ベンジルエーテル保護基の代替物及びそれを形成するための関連反応条件が有用であることも認識する。様々な適切なアルコール保護基が「Green’s Protective Groups in OrganicSynthesis」に広範に記載されている。そのようなベンジルエーテル代替
物としては、トリメチルシリルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、tert-ブチルジフェニルシリルエーテル、アセテート、ベンゾエート、4-ニトロベンゾエート、tert-ブチルエーテル、4-メトキシベンジルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、当業者は、代替反応条件がアセタール及びケタールの切断に有用であることを認識する。そのような条件が、「Green’s Protective Groups in OrganicSynthesis」に一般的に記載されている
。
【0210】
【0211】
スキーム9に示すように、式Xの化合物を式XXIVの化合物に変換する。式XXIVの化合物は、ビス-カーボネート、ビス-エステル又はビス-カルバメートである。水素化時に、化合物XXIVのベンジルエーテルを切断し、式XXVの化合物を得る。
【0212】
当業者は、式Xの化合物と、クロロホルメート、ピロカーボネートなどを含むがこれらに限定されない機能性試薬とを反応させることによって、式XXIVの化合物のビス-カーボネート体を調製できることを認識する。当業者は、カーボネート形成には、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、N-メチルモルホリン、N-メチルピリジン、N,N-ジメチルピペラジンなどであるが、これらに限定されない塩基の使用が含まれうることを認識する。当業者は、カーボネート形成には、DMAP、ピリジン、2-メチルピリジンなどであるが、これらに限定されないアシル転移触媒の使用が含まれうることを認識する。当業者は、カーボネート形成には、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、三塩化アルミニウム、三塩化チタン、チタンイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、塩化スズ、アルミナ、シリカゲルなどであるが、これらに限定されないルイス酸触媒の使用が含まれうることを認識する。
【0213】
当業者は、式Xの化合物と、無水物、酸クロリド、アシルイミダゾール、アシルスクシンイミドなどを含むがこれらに限定されない機能性試薬とを反応させることによって、式XXIVの化合物のビス-アセテート体を調製できることを認識する。さらに、当業者は、活性化剤の存在下におけるカルボン酸が同様な結果を生じることを認識する。好適な活性化剤としては、DCC、EDC、HBTU、BOP、PyBOP、カルボニルジイミダゾール、ジスクシンイミジルカーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0214】
当業者は、式Xの化合物と、イソシアネートなどを含むがこれに限定されない機能性試薬とを反応させることによって、式XXIVの化合物のビス-カルバメート体を調製できることを認識する。当業者は、塩基がカルバメート形成を促進できることを認識する。そのような塩基としては、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、N-メチルモルホリン、N-メチルピリジン、N,N-ジメチルピペラジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、アシル転移触媒がカルバメート形成を促進できることを認識する。そのようなアシル転移触媒としては、DMAP、ピリジン、2-メチルピリジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、ルイス酸触媒の導入により、カルバメート形成を促進できることを認識する。そのようなルイス酸触媒としては、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、三塩化アルミニウム、三塩化チタン、チタンイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、塩化スズ、アルミナ、シリカゲルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
当業者は、ベンジルエーテル保護基の代替物及びそれを切断するための関連反応条件が有用であることも認識する。様々な適切なアルコール保護基が「Green’s Protective Groups in OrganicSynthesis」に広範に記載されている。そのようなベンジルエーテル代
替物としては、トリメチルシリルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、tert-ブチルジフェニルシリルエーテル、アセテート、ベンゾエート、4-ニトロベンゾエート、tert-ブチルエーテル、4-メトキシベンジルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
【0217】
スキーム10に示すように、式Xの化合物を酸触媒の存在下でアセタール、ケタール、アルデヒド又はケトンと反応させ、式XXVIの化合物を生成する。続いて、ベンジルエーテル保護基の切断により、式XVの化合物が得られる。当業者は、式XXVIの化合物の調製について、アセタール、ケタール、アルデヒド又はケトンの代替物が同様な結果を生じることを認識する。そのような代替物としては、ビニルエーテルなどが挙げられるが、これに限定されない。さらに、当業者は、p-トルエンスルホン酸がアセタール及びケタールの形成に適切な酸触媒であるが、代替酸触媒も有用であることを認識する。そのようなp-トルエンスルホン酸の代替物としては、PPTS、硫酸、メタンスルホン酸、Amberlyst樹脂、DOWEX酸樹脂、シリカゲルなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、式XXVIの化合物を、酸触媒の存在下で代替のアセタール、ケタール、アルデヒド又はケトンと反応させることにより代替の式XXVIの化合物に変換できることを認識する。当業者は、ベンジルエーテル保護基の代替物及びそれを切断するための関連反応条件が有用であることを認識する。様々な適切なアルコール保護基が「Green’s Protective Groups in OrganicSynthesis」に広範に記載されている。そのようなベンジル
エーテル代替物としては、トリメチルシリルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、tert-ブチルジフェニルシリルエーテル、アセテート、ベンゾエート、4-ニトロベンゾエート、tert-ブチルエーテル、4-メトキシベンジルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、式XVの化合物が式XXIIの化合物を含むことを認識する。
【0218】
【0219】
スキーム11に示すように、式XXIの化合物が、ホスホジエステル結合を通して式XVの
化合物又は式XXVの化合物に結合する。続いて、ホスホジエステルの塩形成により、式XXVIIの化合物が得られる。当業者は、式XXIの化合物、式XVの化合物及び式XXVの化合物はすべて、第一級ヒドロキシル基を含むことを認識する。当業者は、様々なリン試薬及び反応条件の使用により、異なる2つのアルコール間でホスホジエステルの形成が達成可能であることも認識する。ホスホジエステルの生成に有用なリン試薬としては、POCl3、
【0220】
【0221】
などが挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、2つのアルコールをリン試薬と同時に化合させる。場合によっては、2つのヒドロキシル基をリン試薬と連続して反応させる。場合によっては、ホスホジエステル形成は、単一の追加のステップ又は複数の追加のステップとして実行される酸化、脱保護又はその組合せを含むがこれらに限定されない追加のステップを必要とする。当業者は、塩基がホスホジエステル形成に有用なリン試薬との反応を促進できることを認識する。そのような塩基としては、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、N-メチルモルホリン、N-メチルピリジン、N,N-ジメチルピペラジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、アシル転移触媒がホスホジエステル形成に有用なリン試薬との反応を促進できることを認識する。そのようなアシル転移触媒としては、DMAP、ピリジン、2-メチルピリジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、ホスホジエステル塩形成に有用な試薬としては、DOWEX Na+樹脂、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されないことを認識する。当業者は、式XXVIIの化合物が、化合物1、2、3、4、5、6、7、8、9及び12を含むことを認識す
る。
【0222】
【0223】
スキーム1~11を参照して、当業者は、スキーム一括により、式Iの化合物の様々な立体異性体の調製が可能になることを認識する。さらに、当業者は、本発明の化合物の様々な形には、Na以外の塩の形が含まれることを認識する。異なる塩の形を参照して、式I[式中、R4は一般的に定義される通りである]の化合物をOHの形又は所与の塩の形から代替の塩の形に変換することができる。そのような形の相互変換に有用な試薬としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、R4変換を含めて、式XXVIIの化合物が化合物10、11、13、14、15、
16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29及び30を含むことを認識する。
【0224】
本明細書において論じられるいかなる実施形態も、本発明のいかなる方法、キット、試薬、又は組成物に関して実行することができ、逆も同様であると考えられる。さらに、本発明の組成物を使用して、本発明の方法を実現することができる。
【0225】
[実施例]
本発明のいくつかの特徴を本明細書に図示及び説明してきたが、多くの修正、置換、変更、及び等価形態がここで当業者に思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内に入るような修正及び変更形態すべてを包含するように意図されていることを理解すべきである。
【0226】
以下の例示的な合成プロトコルを実行する際に、以下は、装置及び分析プロトコルに関連している項目に関する。HPLC分析は、XBridge C8カラム(50×4.6mm、
3.5μ)を利用して以下の方法で実施した。溶媒A=水中25%アンモニア、B=アセトニトリル;流速:1ml/分。
【実施例0227】
(R)-2,3-ビス(テトラデカノイルオキシ)プロピル(2,3-ジアセトキシプロピル)リン酸ナトリウム(化合物1)の調製。
【0228】
【0229】
無水酢酸(3.5ml、36.3mmol、10当量)を、窒素雰囲気中、室温(25℃)でDMPGナトリウム塩(2.5g、3.63mmol)の乾燥ピリジン(50ml、20体積)溶液に添加した。DMAP(88mg、0.725mmol、0.2当量)を混合物に添加し、100℃に48時間加熱した。反応が(DCM中20%MeOH、Rf約0.6、リンモリブデン酸染色によって同定されるTLC分析で確認して)完結すると、溶媒を蒸発させ、粗生成物を、中性シリカゲル(230~400メッシュ)を充填したカラムクロマトグラフィーに通した。(注記:シリカゲルは、メタノール中10%アンモニアで洗浄することによって中和した)。生成物を、10%メタノールを含むジクロロメタンで溶離して、(R)-2,3-ビス(テトラデカノイルオキシ)プロピル(2,3-ジアセトキシプロピル)ホスフェートをそのアンモニウム塩として得た。得られたアンモニウム塩を、10%メタノールを含むジクロロメタン中でDowex(登録商標)50WX8Na
+樹脂のパッドに通すことによってNa塩に交換した。生成物画分を集め、濃縮した。生成物をアセトニトリルと水(5ml:15ml)の混合物に溶解し、凍結乾燥して、(R)-2,3-ビス(テトラデカノイルオキシ)プロピル(2,3-ジアセトキシプロピル)リン酸ナトリウム塩を淡褐色固体として得た。収量:1.2g(44%)。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δH 4.99~5.05(m,2H)、4.20~4.29(m,2H)、4.07(m,2H)、3.67(m,4H)、2.26(t,J=4.49Hz,4H)、2.01(s,6H)、1.49(m,4H)、1.23(m,40H)、及び0.85(t,J=4.04Hz,6H)ppm。13C-NMR(100MHz,DMSO-d6):δH 172.63、172.45、170.37、170.08、71.07、70.99、70.89、63.85、62.98、62.81、33.99、33.83、31.85、29.68、29.62、29.56、29.39、29.35、29.30、29.07、29.00、及び24.94ppm。LCMS(ELSD):749.1(M-23)。
2,2-ジメトキシプロパン(7.54g、72.5mmol、10当量)及びp-トルエンスルホン酸(72mg、0.378mmol、0.052当量)を、DMPGナトリウム塩(5g、7.25mmol)のトルエン(200ml、40体積)溶液に添加した。混合物を140℃に16時間加熱した。溶媒を蒸発させ、粗生成物(5.6g)をさらに精製することなく次のステップのために供した。