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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153898
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】核酸の検知
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20231011BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20231011BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20231011BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
C12N15/115 Z ZNA
G01N33/543 501A
G01N33/543 575
G01N33/53 D
G01N33/53 V
G01N33/53 M
G01N33/543 595
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122566
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2021087225の分割
【原出願日】2017-02-08
(31)【優先権主張番号】62/293,589
(32)【優先日】2016-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】テヴァリ,ムニーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン-バック,アレクサンダー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】サンプル中の検体の検出方法を提供する。
【解決手段】a)サンプル由来の単一の検体を固体担体の別々の領域に固定化すること、および、上記単一の検体と結合および解離する、検知可能に標識された問合せプローブを提供すること、b)上記別々の領域内で検出される複数の時間分離されたシグナル強度変化を数えること、および、上記別々の領域内で検出されるシグナル強度変化の数が閾値よりも大きいときに、上記シグナル強度変化を、上記検知可能に標識された問合せプローブと上記固定化された単一の検体との繰り返される結合および解離によって生成される候補シグナルとして同定すること、および、c)上記候補シグナルが検出されたときに、または、上記時間分離されたシグナル強度変化を特徴づけるパラメータの値が上記別々の領域内における上記検体の存在を示したときに、上記サンプル中の上記検体を検出すること、を含む、検出方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のa)~c)を含む、サンプル中の検体の検出方法:
a)上記サンプル由来の単一の検体を固体担体の別々の領域に固定化すること、および、上記単一の検体と結合および解離する、検知可能に標識された問合せプローブを提供すること、
b)上記別々の領域内で検出される複数の時間分離されたシグナル強度変化を数えること、および、上記別々の領域内で検出されるシグナル強度変化の数が閾値よりも大きいときに、上記シグナル強度変化を、上記検知可能に標識された問合せプローブと上記固定化された単一の検体との繰り返される結合および解離によって生成される候補シグナルとして同定すること、および、
c)上記候補シグナルが検出されたときに、または、上記時間分離されたシグナル強度変化を特徴づけるパラメータの値が上記別々の領域内における上記検体の存在を示したときに、上記サンプル中の上記検体を検出すること。
【請求項2】
上記検体は、タンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記検体は、糖化タンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記検体は、脂質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記検知可能に標識された問合せプローブは、アプタマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記検知可能に標識された問合せプローブは、レクチンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記検知可能に標識された問合せプローブは、タンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記検知可能に標識された問合せプローブは、抗体、または、抗体断片を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記検知可能に標識された問合せプローブは、転写因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記検知可能に標識された問合せプローブは、上記検体への結合を弱くしたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記固体担体の別々の領域は、捕獲プローブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記捕獲プローブは、以下の1つを含む、請求項11に記載の方法:
i)抗体、または、抗体断片、
ii)転写因子、
iii)アプタマー、
iv)レクチン、
v)タンパク質。
【請求項13】
複数の時間分離されたシグナル強度変化を数えることが、単一分子の分解能技術を用いて上記別々の領域を観察することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記検知可能に標識された問合せプローブは、蛍光標識を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記別々の領域内で複数の時間分離されたシグナル強度変化を数えることが、上記タンパク質に対する上記検知可能に標識された問合せプローブの結合および放出の動的解析を含む、請求項1に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2016年2月10日に出願された米国仮出願第62/293589号に基づく優先権を主張する。該米国仮出願は参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0002】
(連邦政府支援下の研究または開発に関する宣言)
本発明は、米国国立衛生研究所から与えられた助成番号GM062357、および、米国海軍省の海軍研究局から与えられた助成番号W911NF-12-1-0420の下、米国政府の支援を受けて成されたものである。政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本願は、核酸の検知および同定に関する技術であり、特に、単一分子の分解能において高い信頼度で標的核酸を検出、同定、定量するための組成、方法、キットおよびシステム(但しこれらに限らない)に関する。
【0004】
(背景技術)
多くの疾患、特に癌の効果的治療には早期発見が重要である。早期段階の疾患に関連する検知可能なバイオマーカーの同定に関する研究によると、核酸は、癌およびその他の病気に関する高度に特異的なバイオマーカーとなることが明らかになっている。例えば、近年では、ヒトの未処理の生物体液(血液、尿および唾液等)中の、癌およびその他の疾患に関する高感度の特異的バイオマーカーとして、癌細胞由来の二本鎖DNA(dsDNA)および二次構造化長鎖非コードRNA(lncRNA)が共に取り上げられている。
【0005】
しかし、上記バイオマーカーは、診断用バイオマーカーとして有望であるにもかかわらず、核酸バイオマーカーを高感度かつ特異的に検知するのは困難だと判明している。特に、核酸の検知に関する既存手法では、標的分子とともに熱力学的に安定した複合体を形成するプローブが利用されるため、バックグラウンド信号、偽標的、または、関連性が近い変異核酸に対して、弱く、しばしば信頼できない熱力学的識別能しか持たない。また、標的配列へのアクセス可能性は、サンプル中の相補的なDNAまたはRNA鎖の存在によって大きく制限される。
【0006】
したがって、核酸バイオマーカーの迅速かつ確実な同定および/または定量化を実現するためには、最小限に処理された生物体液中の核酸を増幅することなしに検知する高感度、かつ特異的な分析が必要となる。
【0007】
(概要)
したがって、本明細書で提供されるのは、短鎖標識プローブの標的核酸への一時的な結合に基づいて、単一の核酸(例えば、dsDNA、lncRNA、メチル化DNAなど)の標的分子の特異的かつ超高感度な検知および計数を行う技術である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、プローブ‐標的相互作用によって生成される動的「フィンガープリント」によって検知される。この平衡ポアソンサンプリングによる一分子認識(SiMREPS)技術は、一本鎖核酸(例えば、米国特許出願第14/589,467号を参照のこと。参照によりその全文が本明細書に援用される)および二本鎖核酸の両方を高感度で検知する。いくつかの実施形態では、二本鎖核酸の検知は、dCas9誘導捕獲およびDNA融解の使用を含む。いくつかの実施形態では、本技術は、ガラスまたは溶融シリカ表面上の未標識の標的を、ガイドRNA(gRNA)を積んだ触媒不活性(「無効型」)dCas9酵素または標的核酸の1つ以上の部分に高い特異性をもって結合する酵素を用いて捕獲することを含む。いくつかの(例えば、lncRNAを検知する)実施形態では、本技術は、さらに、プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)オリゴヌクレオチドを用いて、dCas9による核酸標的(例えば、lncRNA)の標的化を行うことを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本技術は、分子内SiMREPSプロービング、例えば、結合して分子内プローブ機構(例えば、図5aおよび5bを参照のこと。下記参照)を提供する捕獲プローブと問合せプローブを用いることを含む。
【0009】
より広くは、いくつかの実施形態では、1つ以上の複合体(例えば、1つ以上のdCas9/gRNA複合体)が標的核酸中の特定の部分(例えば、ヌクレオチド配列)を認識して、当該標的核酸を表面に固定化する。さらに、実施形態では、これらの同一のまたは他の複合体および/または相補的オリゴヌクレオチドは、標的核酸の二本鎖領域を融解して、標識化問合せプローブの結合のための(例えば、問合せプローブが第2の部分、例えば問合せ領域に結合するための)アクセスを提供する。表面での捕獲(および、いくつかの実施形態では、1つ以上の二本鎖領域の融解)に続いて、短鎖蛍光標識化DNA問合せプローブが、標的核酸のうち、dCas9媒介融解によってアクセス可能にされた第2の部分(例えば、問合せ領域)に繰り返し一時的に結合するのが観察される。
【0010】
さらに、dCas9/gRNAを用いて標的配列(例えば、1つ以上の問合せ領域)を固定化および/または曝露するのに加えて、実施形態では、標識化(例えば、蛍光標識化)dCas9/gRNA複合体が標的核酸の検知を行う技術も提供される。特に、dCas9/gRNA複合体はSiMREPS用の問合せプローブを提供する。dCas9/gRNAのDNA配列上での滞留時間は、gRNAと標的DNA配列とのあいだに形成される塩基対の数に影響されるからである。本技術の実施形態では、gRNAと標的DNAとのあいだに形成される塩基対の数は、変異配列からの解離を迅速に、しかし野生型配列からの解離はゆっくりと行うように、あるいはその反対となるように、調整される。さらに、設計されたdCas9タンパク質は、適切な反応速度および配列特異性を提供する(例えば、Kleinstiver et al. (2016) “High-fidelity CRISPR-Cas9 nucleases with no detectable genome-wide off-target effects” Nature 529: 490-495; Slaymaker et al. (2015) “Rationally engineered Cas9 nucleases with improved specificity” Science 351: 84-8を参照のこと)。設計されたCas9タンパク質は、ネイティブのCas9に比べてDNA骨格との相互作用が弱く、このためオフターゲット効果が減少する。
【0011】
本明細書に記載された特定の実施形態では、SiMREPSプローブは、dCas9/gRNAが標的領域に隣接する1つ以上の核酸領域(例えば、「隣接領域」)に結合することで、特異的にアクセス可能となった標的配列(例えば、問合せ領域)に繰り返し結合する。問合せプローブが問合せ領域に繰り返し結合することで、唯一の連続的な動的「フィンガープリント」ができ、観察された標的分子毎に多数の独立した測定値が与えられる。この繰り返される動的サンプリングには、2つの主なメリットがある。(1)サンプリング時間が増すにつれてバックグラウンド信号に対する識別性が任意に高くなり、偽陽性信号を本質的に排除する。(2)分子標的の同一性のわずかな違いに対して鋭い感度を有し、それにより、わずかに異なるバイオマーカー同士(例えば、疾患関連の変異、メチル化パターン、または他の化学的指標のたった1つのDNA/RNA塩基が異なるバイオマーカー同士)を、極めて高い信頼度で識別できる。さらに、単一分子技術として、この方法は、密接に関連しているが偽の(例えば、変異した)標的が大量に存在する中で、少量の標的分子(例えば、単一の細胞由来のもの)を検知する。PCR増幅(少量の標的に対する現在の標準的手法)を必要とする技術とは対照的に、本技術は標的増幅を用いず、そのため、生体サンプルに対して必要な前処理は、例えば、標的検知前に周辺温度で行うdCas9/gRNAによる前処理だけでよく、これにより、サンプリングバイアスの導入を避けられる。さらに、直接的な検知手段として、本技術は、標的上のいかなる化学的指標も失うことがなく、これは、増幅に基づく検知方法がしばしば標的上の化学的指標を失うのと対照的である。本技術は、例えば、ヒトの血清中を循環する腫瘍DNAおよびlncRNAから癌を診断するのに用いられる。本技術はまた、病原体およびヒト腫瘍細胞中で、薬物および抗生剤に対して耐性を有する遺伝子を検知するのにも用いられる。
【0012】
したがって、本明細書で提供されるのは、二本鎖標的核酸の検知可能なフィンガープリントを提示するための複合体であって、第1領域およびそれに隣接する第2領域を有する二本鎖標的核酸(例えば、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド)と、前記第1領域と相互に作用して熱力学的に安定した複合体を形成し、前記第2領域を一本鎖形態とする融解要素(例えば、固定化された融解要素)と、前記第2領域と繰り返し結合して、前記二本鎖標的核酸と関連した検知可能なフィンガープリントを提供する問合せプローブと、を含む、複合体の実施形態である。いくつかの実施形態では、前記二本鎖核酸は、二本鎖二次構造を有する領域を含む一本鎖核酸である。いくつかの実施形態では、前記融解要素はdCas9を含む。いくつかの実施形態では、前記融解要素は一本鎖結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、前記融解要素はタンパク質であり、いくつかの実施形態では、前記融解要素は核酸である。実施形態では、二本鎖核酸(例えば、二本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA/RNAハイブリッド)に結合するタンパク質および/または融解要素(例えば、タンパク質または核酸)を用いて、二本鎖核酸(例えば、核酸の領域)を解離して、一本鎖核酸を提供する。特定の実施形態では、前記融解要素は、前記第1領域にハイブリダイズしたgRNAを含むdCas9/gRNA複合体を含む。いくつかの実施形態では、前記融解要素は、(例えば、標的核酸に対してトランスで配置された)PAMmerを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記問合せプローブは、0.1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または0.1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返しハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、前記問合せプローブは、1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返しハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、前記問合せプローブは、0.1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または0.1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返しハイブリダイズする蛍光標識化核酸である。いくつかの実施形態では、前記問合せプローブは、1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返しハイブリダイズする蛍光標識化核酸である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記融解要素は、基材に固定化されたdCas9を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、データが分析される。例えば、いくつかの実施形態では、前記フィンガープリントはパターン認識分析によって検知可能である。
【0016】
さらなる実施形態は、前記標的核酸の前記第2領域に隣接する前記標的核酸の第3領域と相互に作用する第2融解要素を含む。いくつかの実施形態では、前記第2融解要素はdCas9を含む。いくつかの実施形態では、前記第2融解要素は一本鎖結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、前記第2融解要素はタンパク質であり、いくつかの実施形態では、前記第2融解要素は核酸である。特定の実施形態では、前記第2融解要素は、前記第3領域にハイブリダイズしたgRNAを含むdCas9/gRNA複合体を含む。いくつかの実施形態では、前記融解要素は、(例えば、標的核酸に対してトランスで配置された)PAMmerを含む。いくつかの実施形態では、前記第1融解要素および前記第2融解要素は、約5から15ヌクレオチド離れて、前記標的核酸に結合し、例えば、問合せプローブが前記問合せ領域にアクセスできるようにする。
【0017】
本技術は、核酸の検知、同定、および/または定量に用いられる。例えば、いくつかの実施形態では、前記標的核酸は、変異、単一ヌクレオチド多型、または修飾塩基を有する。
【0018】
さらなる実施形態は、サンプル中の二本鎖標的核酸の検知可能なフィンガープリントを提示する方法であって、二本鎖標的核酸を固体担体の別々の領域に固定化するステップであって、前記二本鎖標的核酸は、第1領域およびそれに隣接する第2領域を有し、前記固体担体の前記別々の領域は前記第1領域と相互に作用する固定化された融解要素を含む、ステップと、前記第2領域に繰り返し結合する問合せプローブを提示して、検知可能なフィンガープリントを提示するステップと、前記検知可能なフィンガープリントを前記二本鎖核酸と関連させて、前記二本鎖核酸を特定するステップと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、パターン認識または類似の分析(例えば、機械学習、ニューラルネットワーク、教師あり学習および/または教師なし学習など)を用いてデータを分析し、前記二本鎖核酸の前記検知可能なフィンガープリントを生成または同定する。
【0019】
方法のいくつかの実施形態では、前記融解要素はdCas9を含む。方法のいくつかの実施形態では、前記融解要素は一本鎖結合タンパク質を含む。方法のいくつかの実施形態では、前記融解要素はタンパク質であり、いくつかの実施形態では、前記融解要素は核酸である。方法の特定の実施形態では、前記融解要素は、前記第1領域にハイブリダイズしたgRNAを含むdCas9/gRNA複合体を含む。方法のいくつかの実施形態では、前記融解要素は、(例えば、標的核酸に対してトランスで配置された)PAMmerを含む。
【0020】
さらなる実施形態は、前記標的核酸の第3領域と相互に作用する第2融解要素を提示するステップであって、当該第3標的領域は前記第2領域と隣接している、ステップを含む。例えば、いくつかの実施形態は、前記標的核酸の前記第2領域と隣接する前記標的核酸の第3領域と相補的なgRNAを含むdCas9/gRNA複合体を提示するステップを含む。関連する実施形態は、前記融解要素が前記第2領域を二本鎖形態にするのに十分な条件(例えば、バッファpH条件、温度制御、溶液成分(例えば、塩、対イオン、補因子など))を提供するステップを含む 。
【0021】
いくつかの実施形態は、前記問合せプローブが、0.1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または0.1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返し結合するのを検知するステップを含む。いくつかの実施形態は、前記問合せプローブが、1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返し結合するのを検知するステップを含む。いくつかの実施形態は、蛍光標識化核酸が、0.1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または0.1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返し結合するのを検知するステップを含む。いくつかの実施形態は、蛍光標識化核酸が、1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返し結合するのを検知するステップを含む。
【0022】
いくつかの実施形態は、前記サンプル中の前記二本鎖標的核酸の量または濃度を、前記検知可能なフィンガープリントから計算するステップを含む。
【0023】
本技術の実施形態は、二本鎖核酸を検知するためのシステムを提供する。いくつかの実施形態では、前記システムは、固定化された融解要素を含む固体担体と、前記二本鎖核酸に繰り返し結合する検知可能に標識された問合せプローブと、蛍光検知器と、問合せプローブの結合データをパターン認識分析するよう構成されたソフトウェア要素と、を備える。システムの実施形態は、本明細書に記載した組成を有し、かつ/または要素(例えば、コンピュータ、プロセッサなど)を有して、本明細書に記載した方法を実行する。
【0024】
本技術は、対象が癌にかかっている、あるいは癌にかかるリスクがあるという予測値を計算する方法の実施形態で用いられる。例えば、前記方法の実施形態は、マイクロRNAバイオマーカーの存在を判定するステップ、変異の存在を判定するステップ、およびゲノムDNA中の修飾塩基の存在を判定するステップを含む。いくつかの実施形態では、前記予測値は、マイクロRNAバイオマーカーの存在、変異の存在、およびゲノムDNA中の修飾塩基の存在と関連する変数から計算される値である。
【0025】
関連する実施形態は、標的核酸を検知するための複合体であって、第1領域およびそれに隣接する第2領域を有する標的核酸と、前記第1領域とハイブリダイズした検知可能に標識された捕獲プローブと、前記捕獲プローブの標識と親和性の消光剤またはアクセプター蛍光物質で標識された問合せプローブと、を含み、前記問合せプローブは、0.1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または0.1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返しハイブリダイズする、複合体を提供する。
【0026】
さらなる実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づけば当業者には明らかであろう。
【0027】
(図面の簡単な説明)
本願技術の上記および他の特徴、態様および利点は、添付の図面を参照することでよりよく理解されるであろう。
【0028】
図1aは、本明細書に記載した核酸検知技術の一実施形態の模式図である。
【0029】
図1bは、スライド表面に非特異的に一時連結する蛍光標識化問合せプローブに関する例示的なSiMREPSデータを示す。
【0030】
図1cは、標的核酸と一時結合する蛍光標識化問合せプローブに関する例示的なSiMREPSデータを示す。図1cおよび図1bの動的フィンガープリントが異なるため、問合せプローブの特異的結合および非特異的結合に関する異なる動的サインの例が示されている。
【0031】
図1dは、1pMの標的核酸(例えばmiR-141というマイクロRNA)の非存在(灰色の太線)または存在(細線)下で問合せプローブの数をカウントして得られた一定数の強度変化(Nb+d)を示す一連のヒストグラムである。4つのヒストグラムのプロットデータの取得にはそれぞれ1、2、5、10分間の取得時間を要した。
【0032】
図1eは、5つのmiRNAに関するSiMREPS分析から得た、R値>0.99の標準カーブのプロット図である。SiMREPS技術により、高い信頼度の核酸検知が実現されている。
【0033】
図2aは、let-7a用の蛍光性問合せプローブが、let-7aとは長い存続時間(τon=23.3±8.3s)の結合を示す一方、当該let-7c配列がlet-7aに対して一塩基ミスマッチ(下線付きの「G」)であることから、let-7cとは結合がずっと一時的(τon=4.7±3.0s)であることを示すプロット図である。
【0034】
図2bは、let-7a(塗りつぶした丸点)とlet-7c(塗りつぶしていない丸点)とで、単複製レベルにおける高い信頼度の区別を示した滞留時間分析結果である。
【0035】
図2cは、let-7aとlet-7cとを区別するために、τon閾値を変更して作成した受信者動作特性(ROC)のプロットである。
【0036】
図2dは、miRCURYlet-7阻害因子の存在または非存在下における、未処理のHela細胞抽出物中のlet-7の検出結果に関するNb+dヒストグラムである。内因性hsa-let-7aに関するNb+dヒストグラムは、明確な輪郭を有するピーク(細線)を示した。当該ピークは、let-7ファミリーメンバーに結合し隔離するよう設計されたlet-7阻害因子の存在下では消失した(太い灰色のバー)。
【0037】
図2eは、let-7a用の蛍光プローブおよび捕獲プローブを用いて未処理のHela抽出物から検出した分子に関する滞留時間を示す。塗りつぶした丸点および塗りつぶしていない丸点は、τon値のk-meansクラスタ分析によって分類された2つの標的分子クラスタを表し、単ヌクレオチド変異型hsa-let-7aおよびhsa-let-7cについて予想されたτon分布に一致している。
【0038】
図2fは、ヒト血清中に加えた人工miR-141の定量結果を示す。
【0039】
図3は、dCas9/gRNAを含む本願技術の実施形態を示す模式図である。ゲノム標的DNAをdCas9/gRNAで短時間、下処理する。このあいだ、dCas9/gRNA複合体のガイドRNA(gRNA)は、問合せ領域(例えば問合せプローブに相補的な領域)に隣接する領域において標的核酸(例えばゲノムDNA)とハイブリダイズする。dCas9/gRNAは、標的核酸中の特定のDNA配列(例えば問合せ領域)を融解する。ビオチン化dCas9をスライド表面上に(例えばビオチンとアビジンとの相互作用によって)捕獲した後、SiMREPSを用い、標的核酸中の現在アクセス可能な問合せ領域と問合せプローブとの結合を検知する。なお、該アクセス可能な問合せ領域は、標的核酸のうちgRNAにハイブリダイズした部位に隣接している。
【0040】
図4は、互いに側面に位置する2つのdCas9/gRNA複合体の標的核酸へのハイブリダイゼーションを含む、本願技術の実施形態を示す模式図である。いくつかの実施形態において、2つのdCas9/gRNA複合体を問合せ領域の側面に位置するようにハイブリダイズさせることで、標的核酸(例えば問合せ領域)から、SiMREPSに基づく検知用の問合せプローブへのアクセス可能性がさらに向上し、一部の実施形態では特異性がさらに増強される。図示される実施形態では、一方のdCas9は、表面上への捕獲のためにビオチン化されており、他方のdCas9はビオチン化されていない。但し、いくつかの実施形態では、当該他方のdCas9は修飾、例えばビオチン化される。
【0041】
図5aは、問合せプローブおよび捕獲プローブが連続的なオリゴヌクレオチドと連結してなる分子内SiMREPSのプロービングの実施形態を示す模式図である。
【0042】
図5bは、非連続的な問合せプローブおよび捕獲プローブがアドレスオリゴヌクレオチドによって共局在化してなる分子内SiMREPSのプロービングの実施形態を示す模式図である。
【0043】
本願の図面は必ずしも縮尺通りに描かれておらず、図中の各部材は必ずしも縮尺通りの関係で描かれていない。図面は、本明細書に開示の装置、システム、方法に関する各実施形態を明確にし理解することを意図したものである。可能な場合には、各図面に亘って同じ参照番号を同じまたは類似の部材に付す。また、図面は、本発明の教示範囲をいかなるかたちでも限定するものではないと認識されるべきである。
【0044】
(詳細な説明)
本願は、核酸の検知および同定に関する技術であり、特に、単分子の分解能において高い信頼度で標的核酸を検知、同定、定量するための組成、方法、キットおよびシステム(但しこれらに限らない)に関する。
【0045】
様々な実施形態の詳細な説明において、説明の目的で、多数の特定細部を示して、開示される実施形態が完全に理解されるようにしている。但し、当業者であれば、こうした様々な実施形態は、これらの特定細部とともに実施してもよいし、これらの特定細部なしに実施してもよいことがわかるであろう。別の例において、構造および装置はブロック図の形式で示される。さらに、当業者ならば容易にわかるように、各方法が提示され実行される特定の順序は例示的なものに過ぎず、そのような順序は変えることができ、その場合でも依然として、本明細書に開示した様々な実施形態の精神および範囲内に含まれる。
【0046】
本願で引用された全ての文献および同様の資料(特許、特許出願、記事、書籍、論文、インターネット上のウェブページが挙げられるが、これらに限らない)は、いかなる目的であれ、参照によりその全文が本明細書に明確に援用されるものとする。断りのない限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本明細書に記載の様々な実施形態が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を持つ。援用された文献における用語の定義が本教示での定義と異なっていると思われる場合は、本教示での定義に従うものとする。本明細書中の見出しは系統立てるためのものに過ぎず、記載された構成をいかなるかたちでも限定するものと解釈されるべきではない。
【0047】
<定義>
本発明の技術に対する理解を容易にするために、多くの用語およびフレーズを以下に定義する。さらなる定義は「詳細な説明」全体を通して示す。
【0048】
本明細書および請求項全体を通して、下記の用語は、文脈から明らかにそうではないと示される場合を除き、本欄に明示的に対応付けられた意味を持つ。明細書中の「一実施形態において」のようなフレーズは、同じ実施形態を指しうるが、必ずしもそうではない。また、明細書中の「別の実施形態において」というフレーズは、異なる実施形態を指しうるが、必ずしもそうではない。したがって、以下に示すように、本発明の様々な実施形態を、本発明の範囲または精神から逸脱しない範囲で組み合わせることは容易である。
【0049】
加えて、文脈から明らかにそうではないと示される場合を除き、明細書中の用語「または」は、包含的な選択性機能語であり、用語「および/または」と同等である。また、文脈から明らかにそうではないと示される場合を除き、用語「~に基づく」は、排他的な表現ではなく、未記載のそれ以外の要素に基づくという意味も許容される。さらに、本明細書を通して、単数形の表現(「a」、「an」および「the」)は複数形の意味を含む。また、「~において(in)」は、「~において(in)」および「~の上において(on)」の意味を含む。
【0050】
本明細書中の「核酸」または「核酸配列」は、ピリミジン塩基および/またはプリン塩基のポリマーもしくはオリゴマーを指し、好ましくはそれぞれシトシン、チミンおよびウラシルおよびアデニンおよびグアニンを指す(Albert L. Lehninger, Principles of Biochemistry, 793-800 (Worth Pub. 1982)を参照のこと)。本願技術は、任意のデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドもしくはペプチド核酸成分、および、その化学的変異体(例えば、これら塩基をメチル化、ヒドロキシメチル化、またはグリコシル化させた形態など)を考慮に入れる。ポリマーまたはオリゴマーは、組成として異種でも同種でもよく、天然発生源から単離されたものであってもよく、または人為的もしくは人工的に作られたものであってもよい。また、核酸は、DNA、RNAまたはそれらの混合体であってもよく、一本鎖または二本鎖形態(ホモ二重鎖、ヘテロ二本鎖およびハイブリッドを含む)として不変にもしくは一時的に存在してもよい。いくつかの実施形態において、核酸または核酸配列は、例えばDNA-RNAへリックス、ペプチド核酸(PNA)、モルフォリノ、ロックド核酸(LNA)、および/または、リボザイムのような他種類の核酸構造を含む。ゆえに、用語「核酸」または「核酸配列」は、非天然型ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、および/または、天然型ヌクレオチドと同じ機能を示しうる非ヌクレオチド構成ブロック(例えば「ヌクレオチド類縁体」)を含む鎖も、包含し得る。また、本明細書中の用語「核酸配列」は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド、それらの断片や部分、ならびに、ゲノム由来または人工由来のDNAもしくはRNAを指し、一本鎖でも二本鎖でもよく、センス鎖を表わしてもよくアンチセンス鎖を表わしてもよい。
【0051】
本明細書中の用語「ヌクレオチド類縁体」は、修飾ヌクレオチドまたは非天然発生型ヌクレオチドを指す。当該類縁体としては、改変スタッキング相互作用を有する類縁体、例えば7-deazaプリン(すなわち、7-deaza-dATP、および7-deaza-dGTP)や、代替の水素結合構造を有する塩基類縁体(例えば、S. Bennerによる米国特許第6001983号(参照により本明細書に援用される)に開示のIso-C塩基対、Iso-G塩基対、およびその他の非標準塩基対)や、非水素結合型類縁体(例えば、B. A. Schweitzer and E. T. Kool、J. Org. Chem., 1994、59、7238-7242およびB. A. Schweitzer and E. T. Kool, J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 1863-1872(何れの文献も参照により本明細書に援用される)に開示の2,4-ジフルオロトルエンのような非極性芳香族ヌクレオシド類縁体)や、5-ニトロ基インドール、3-ニトロ基ピロールのような「汎用」塩基や、汎用プリンとピリミジン(例えば、それぞれ、「K」ヌクレオチドと「P」ヌクレオチド。P. Kong et al., Nucleic Acids Res., 1989, 17, 10373-10383と、P. Kong et al., Nucleic Acids Res., 1992, 20, 5149-5152)が挙げられる。ヌクレオチド類縁体は、ジデオキシヌクレオチドや2’-O-メチルヌクレオチドのような糖残基修飾ヌクレオチドを含む。また、ヌクレオチド類縁体は、デオキシリボヌクレオチドやリボヌクレオチドの修飾形態を含む。
【0052】
「ペプチド核酸」は、ペプチド様ポリアミド骨格を組み込んでなるDNA疑似物を意味する。
【0053】
本明細書中の用語「%配列同一性」とは、核酸配列と基準配列とを整列させ、必要ならばギャップを導入して最大パーセントの同一性を達成するようにした後における、核酸配列中のヌクレオチドまたはヌクレオチド類縁体と、基準配列中の対応するヌクレオチドとの同一性を示す百分率である。ゆえに、本願技術に係る核酸が基準配列よりも長い場合には、当該核酸のうち、基準配列と整列しない余分のヌクレオチドは、配列同一性を決定する際に考慮しない。なお、整列の方法およびコンピュータプログラムは、本技術分野において公知であり、blastn、Align2およびFASTAが挙げられる。
【0054】
用語「相同」または「相同的」は同一性の程度を指し、部分的相同であってもよく、完全相同であってもよい。また、部分的相同配列とは、他方の配列との同一性が100%未満の配列である。
【0055】
本明細書中の用語「配列変化」とは、2つの核酸同士間での核酸配列の違いを指す。例えば、野生型構造遺伝子と該野生型構造遺伝子の変異形態とで、その配列は、一塩基置換、および/または、1以上のヌクレオチドの欠失もしくは挿入によって異なりうる。つまり、構造遺伝子のこの2つの形態は、一方の配列が他方と異なると考えられる。また、構造遺伝子には第2の変異形態も存在し得る。この第2の変異形態は、その配列が、野生型遺伝子および該遺伝子の上記第1の突然変異形態の両方と異なる。
【0056】
本明細書中の用語「相補的」または「相補性」は、塩基対合則によって関連するポリヌクレオチド同士(例えば、オリゴヌクレオチドのようなヌクレオチド配列、または標的核酸)について使用する用語である。例えば、「5’-A-G-T-3’」配列は、「3’-T-C-A-5’」配列に相補的である。相補性は「部分的」な相補性であってもよく、すなわち、一部の核酸塩基のみが塩基対合則に従ってマッチしてもよい。あるいは、相補性は、核酸同士間での「完全な」または「全体的な」相補性であってもよい。核酸鎖同士間の相補性の程度は、核酸鎖同士間のハイブリダイゼーションの効率および強さに大きく影響する。これは、増幅反応、および、核酸同士間の結合に依存する検知法においては、特に重要なことである。また、どちらの用語も、個別のヌクレオチドに対して使用してよく、特にポリヌクレオチドに係る文脈に使用してもよい。例えば、オリゴヌクレオチド中の特定のヌクレオチドの、他の核酸鎖中のヌクレオチドに対する相補性または相補性の欠如に、当該オリゴヌクレオチドの残りおよび当該核酸鎖の残りのあいだの相補性と対比または比較するかたちで注目してもよい。
【0057】
一部の文脈では、用語「相補性」およびその関連用語(例えば「相補的」、「相補体」)は、核酸配列のうち水素結合を介して他の核酸配列に結合できるヌクレオチド、例えば、ワトソン-クリック塩基対合またはその他の塩基対合によって塩基対合可能なヌクレオチドを指す。塩基対を構成可能なヌクレオチド(例えば、互いに相補的であるヌクレオチド)としては、シトシン-グアニン塩基対、チミン-アデニン塩基対、アデニン-ウラシル塩基対、およびグアニン-ウラシル塩基対が挙げられる。相補性の百分率は必ずしも核酸配列の全長について計算する必要はない。また、相補性の百分率は、塩基対合された核酸配列中の特定領域(例えば、最初の塩基対合ヌクレオチドから開始し、最後の塩基対合ヌクレオチドで終了する)の当該百分率に限定されてもよい。本明細書中の核酸配列の相補体とは、一方の配列の5’末端が他方の配列の3’末端と対合するように該核酸配列へ整列されるとき、「アンチパラレル結合」状態となるオリゴヌクレオチドを指す。本発明における核酸は、天然の核酸に通常では存在しない何らかの塩基を含んでもよく、当該塩基としては、例えばイノシンや7-deazaグアニンが挙げられる。相補性は、必ずしも完璧である必要はない。安定した二重鎖は、ミスマッチ塩基対、または非マッチ塩基を含有してもよい。核酸の技術分野の当業者ならば、その経験から、多数の変化要因、例えばオリゴヌクレオチド長、オリゴヌクレオチドの塩基組成および配列、イオン化強度、ミスマッチ塩基対の発生率などを考慮し、二重鎖の安定性を決定することができる。
【0058】
したがって、いくつかの実施形態において、「相補的」とは、第1の核酸塩基配列が、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個またはそれ以上の数の核酸塩基からなる領域において、第2の核酸塩基配列の相補体と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%同一であること、または、当該2つの配列が厳格なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを意味する。また、「完全相補的」とは、第1核酸中の各核酸塩基が、第2核酸中の対応する位置の各核酸塩基にそれぞれ対合可能であることを意味する。例えば、ある実施形態では、全ての核酸塩基が核酸との相補性を有するオリゴヌクレオチドは、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個またはそれ以上の数の核酸塩基からなる領域において前記核酸の相補体と同一である核酸塩基配列を有する。
【0059】
「ミスマッチ」とは、第1核酸中の核酸塩基が、第2核酸中の対応する位置の核酸塩基に対合できないことを意味する。
【0060】
本明細書中の用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的な核酸同士の対合について使用する用語である。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション強さ(すなわち、核酸間の結合の強さ)は、核酸間の相補性の程度、関係する条件の厳格度、形成されるハイブリッドのTなどの要因に左右される。また、「ハイブリダイゼーション」の方法には、一方の核酸と、他方の相補的核酸(すなわち、相補的ヌクレオチド配列を有する核酸)とのアニーリングが伴う。相補的配列を含む核酸の2つのポリマーが互いを探し出し塩基対合の相互作用を介してアニールできることは周知の現象である。Marmur and Lane, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 46:453 (1960)およびDoty et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 46:461 (1960)による「ハイブリダイゼーション」処理に関する最初の所見に続いて、当該処理は改良され、現代の生物学に必要不可欠な手段となっている。
【0061】
本明細書中の用語「T」は、「融解温度」について使用する。融解温度とは、二本鎖核酸分子の集団が二分されて一本鎖になる温度である。本分野では、核酸のTを計算するいくつかの公知の計算式が存在する。標準的な参考文献に示されているように、1MのNaCl水溶液中に核酸が存在する場合には、等式:T=81.5+0.41(%G+C)を用いてTの簡単な推定値を計算することができる(例えば、Anderson and Young, Quantitative Filter Hybridization, in Nucleic Acid Hybridization (1985)を参照のこと)。他の参考文献(例えばAllawi and SantaLucia、Biochemistry 36: 10581-94 (1997))には、構造的特性、環境学的特性および配列特性を考慮してTを計算するより高度な演算が挙げられている。例えば、いくつかの実施形態では、上記演算により、短鎖核酸型プローブおよび標的(例えば、実施例で用いられたもの)のTのよりよい推定値が計算される。
【0062】
本明細書中の用語「融解」は、核酸に対して使用する場合には、二本鎖核酸または核酸領域を解離して一本鎖核酸または核酸領域にすることを指す。
【0063】
本明細書中の用語「融解要素」とは、核酸と相互作用して該核酸を融解して(例えば二本鎖領域(一本鎖核酸の二次構造、DNAの二重構造、または、RNA/DNAハイブリッドの二重構造など)を解離して)一本鎖領域にする(例えば、問合せプローブが結合する問合せ領域にアクセスできるようにする)物質、分子(例えば生体分子)、または、複数の分子からなる複合体(例えば、複数の生体分子からなる複合体)を指す。例示的な実施形態において、融解要素は、dCas9/gRNA複合体(例えば、ある実施形態では、ビオチン化されたdCas9を含み、ある実施形態ではビオチン化されていないdCas9を含む)である。但し、本願技術において、dCas9を含む融解要素に限らない。また、本願技術は、問合せプローブによる問合せ領域へのアクセスを提供し、標的核酸のSiMREPS分析を実現する任意の実体の使用を含む。
【0064】
本明細書中の「二本鎖核酸」は、核酸の一部、長鎖核酸における領域、または、核酸全体であってもよい。また、「二本鎖核酸」は、例えば二本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA/RNAハイブリッド等であってもよく、これらに限定されない。なお、二次構造(例えば、塩基対合した二次構造)および/またはさらなる高次的構造を有する一本鎖核酸は「二本鎖核酸」を含む。例えば、三重構造は「二本鎖」と見做す。いくつかの実施形態では、塩基対合したいかなる核酸も「二本鎖核酸」である。
【0065】
本明細書中の「非コードRNA」または「ncRNA」とは、タンパク質へ翻訳されない機能性RNA分子である。それほど頻繁に使用されない同義語としては、非タンパク質コードRNA(npcRNA)、非伝令RNA(nmRNA)、低分子非伝令RNA(snmRNA)、および機能性RNA(fRNA)がある。また、「低分子RNA」(sRNA)とは、細菌のncRNAに対してよく使われる用語である。非コードRNAが最終産物として転写されるDNA配列は、しばしばRNA遺伝子または非コードRNA遺伝子と呼ばれる。非コードRNA遺伝子には、非常に豊富かつ機能的に重要なRNA(例えば、転移RNA(tRNA)およびリボソームRNA(rRNA))や、snoRNA、マイクロRNA、siRNAおよびpiRNAのようなRNAが含まれる。ヒトゲノム内にコードされるncRNAの数はまだ解明されていないが、最近の転写学および生物情報学の研究によれば、数千のncRNAが存在することが示唆されている。新たに同定されたncRNAの大半は、その機能がまだ確認されていないため、その多くは非機能的なものであるかもしれない。
【0066】
本明細書中の用語「長鎖非コードRNA」、「lncRNA」または「長鎖ncRNA」とは、約200ヌクレオチドよりも長い非タンパク質コードRNAを指す。なお、本明細書中のこれらの用語は、lncRNAを、例えばマイクロRNA(miRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)および低分子核小体RNA(snoRNA)などのような低分子調節RNA、および、その他の短鎖RNAから区別するために使用される。
【0067】
本明細書中の用語「miRNA」はマイクロRNAを指す。また、本明細書中の用語「miRNA標的配列」は、(例えば、他の核酸の存在下での)検知対象のmiRNAを指す。いくつかの実施形態において、miRNA標的配列は、miRNA変異体である。
【0068】
用語「siRNA」は短鎖干渉RNAを指す。いくつかの実施形態では、siRNAは二重鎖領域または二本鎖領域を含み、当該二本鎖領域のそれぞれの鎖は約18~25ヌクレオチド長である。前記二本鎖領域は、最短で16塩基対、最長で29塩基対であってもよく、その長さはアンチセンス鎖により決まる。siRNAは、その各鎖の3’末端において、しばしば約2個乃至4個の非対合ヌクレオチドを含む。siRNAは、無脊椎動物体および脊椎動物体内のRNA干渉を誘発したり、植物中の転写後の遺伝子抑制のあいだに配列特異的RNAの分解を誘発したりする際、中心的媒介として機能すると思われる。siRNAの二重鎖領域または二本鎖領域における少なくとも一本の鎖が、標的RNA分子と実質相同または実質相補的である。なお、標的RNA分子に相補的な鎖は「アンチセンス」鎖であり、標的RNA分子に相同的な鎖は「センス」鎖であって、siRNAのアンチセンス鎖と相補的でもある。また、前記二本鎖領域における一方の鎖は、その対向鎖と厳密に同じ長さである必要はない。したがって、一方の鎖は、対向する相補的鎖に比べて少なくとも1ヌクレオチド少ないことで「バブル」が形成されてもよく、マッチしない少なくとも1つの塩基を対向鎖に有してもよい。また、二本鎖領域における一方の鎖は、必ずしも対向鎖と厳密に相補的である必要はない。したがって、当該鎖(好ましくはセンス鎖)は、少なくとも1つのミスマッチ塩基対を有してもよい。
【0069】
siRNAは付加配列を含んでもよい。このような付加配列は、例えば、前記二重鎖領域の2つの鎖を連結するリンキング配列またはループが挙げられるが、これに限らない。siRNAのこのような形態は「si様RNA」、「短鎖ヘアピンsiRNA」または「ヘアピンsiRNA」と呼んでもよい。なお、ここで言う短鎖とは、siRNAの二重鎖領域を指す。siRNA中に存在する付加配列の非限定的な例として、ステム構造または他の折り曲げ構造が挙げられる。上記付加配列は、既知の機能を有してもよく、有さなくてもよい。当該既知の機能の例としては、siRNA分子の安定性を向上させる機能、または、細胞へのシグナル(cellular destination signal)を形成する機能が挙げられるが、これらに限らない。
【0070】
「pre-miRNA」または「pre-miR」とは、ヘアピン構造を有する非コードRNAを指し、Droshaとして知られている二本鎖RNA特異的リボヌクレアーゼを用いてpri-miRを切断して得た産物である。
【0071】
「ステムループ型配列」は、ヘアピン構造を持ち、成熟miRNA配列を有するRNAを意味する。Pre-miRNA配列およびステムループ型配列は重複してもよい。ステムループ型配列の例は、miR Baseとして知られているmiRNAデータベースにある(ウェブサイトmicroma.sanger.ac.ukで参照可能)。
【0072】
「pri-miRNA」または「pri-miR」とは、ヘアピン構造を有する非コードRNAを指し、二本鎖RNA特異的リボヌクレアーゼDroshaの基質である。
【0073】
「miRNA前駆体」は、1つ以上のmiRNA配列を含む非コード構造化RNAを含むゲノムDNA由来転写物を意味する。例えば、ある実施形態では、miRNA前駆体はpre-miRNAである。また、ある実施形態では、miRNA前駆体はpri-miRNAである。
【0074】
用語「遺伝子」は、非コード機能を有するRNA(例えばリボソームまたは転移RNA)、ポリペプチドまたは前駆体を産出するのに必要なコントロール配列もしくはコード配列を含むDNA配列を指す。当該RNAまたはポリペプチドは、所望の活性や機能が維持されるのであれば、コーディング配列の全長、または当該コーディング配列の任意の部分によってコードされてもよい。
【0075】
用語「野生型」とは、天然発生源から単離された際の遺伝子または遺伝子産物の特性を持つ遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型の遺伝子は、個体群の中で最も頻繁に観察されるため、当該遺伝子の「正常型」または「野生型」と恣意的に指定される。それと対照的に、用語「修飾型」、「変異型」または「多型性」とは、野生型の遺伝子もしくは遺伝子産物に比べ、配列および/または機能的特徴に変化(すなわち、改変特性)が現れている遺伝子もしくは遺伝子産物を意味する。なお、天然発生の変異型は単離され得る。その存在は、野生型の遺伝子もしくは遺伝子産物に比べて改変特性を有するという事実により確認することができる。
【0076】
本明細書中の用語「オリゴヌクレオチド」は、2以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、好ましくは少なくとも5ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10~15ヌクレオチド、更に好ましくは少なくとも約15~30ヌクレオチドを含む分子であると定義される。なお、その実際のサイズは多くの要因に依存し、そうした多くの要因が今度は、オリゴヌクレオチドの最終的な機能または用途に依存する。オリゴヌクレオチドは任意の方法で生成されてよく、その例として、化学合成、DNA複製、逆転写、PCR、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
モノヌクレオチドは、1つのモノヌクレオチド五炭糖環の5’リン酸塩がリン酸ジエステル結合を介して隣の五炭糖環の3’酸素と一方向に連結するという方式により反応し、オリゴヌクレオチドが作られる。そのため、オリゴヌクレオチドの末端は、該オリコヌクレオチドの5’リン酸塩がモノヌクレオチド五炭糖環の3’酸素と結合していない場合には「5’末端」と称し、前記3’酸素が以降のモノヌクレオチド五炭糖環の5’リン酸塩と結合していない場合には「3’末端」と称する。本明細書中の核酸配列は、たとえより大きなオリゴヌクレオチドの内部にあっても、5’末端および3’末端を有すると称し得る。核酸鎖上の第1領域は、該核酸の鎖の5’末端から3’末端へ向かって見て該第1領域の3’末端が第2領域の5’末端の手前に存在する場合には、他領域の上流に位置すると言う。
【0078】
互いに異なり重複していない2つのオリゴヌクレオチドを同じ直鎖状の相補的な核酸配列上の異なる領域にアニールし、一方のオリゴヌクレオチドの3’末端が他方のオリゴヌクレオチドの5’末端の方を向いている場合、前記一方のオリゴヌクレオチドを「上流側」オリゴヌクレオチドと呼び、前記他方のオリゴヌクレオチドを「下流側」オリゴヌクレオチドと呼んでよい。同様に、互いに重複している2つのオリゴヌクレオチドを同じ直鎖状の相補的な核酸配列にハイブリダイズし、第1のオリゴヌクレオチドが、その5’末端が第2のオリゴヌクレオチドの5’末端の上流にあり、且つ第1のオリゴヌクレオチドの3’末端が第2のオリゴヌクレオチドの3’末端の上流にあるように位置している場合、当該第1のオリゴヌクレオチドを「上流側」オリゴヌクレオチドと呼び、当該第2のオリゴヌクレオチドを「下流側」オリゴヌクレオチドと呼んでよい。
【0079】
本明細書中の用語「対象」および「患者」は、植物、微生物、動物(例えば、イヌ、ネコ、家畜およびヒトなどの哺乳類動物)を含む任意の有機体を指す。
【0080】
本願の明細書および請求項中の用語「サンプル」は、その最も広い意味において用いられる。当該用語は、試料または培養物(例えば微生物学上の培養物)の意味を包含する一方、生体サンプルおよび環境サンプルの意味も包含する。サンプルは合成由来の試料を含んでもよい。
【0081】
本明細書中の「生体サンプル」とは、生体組織または体液のサンプルを指す。例えば、生体サンプルは、動物(ヒトを含む)から採取したサンプルや、体液サンプル、固体サンプルまたは組織サンプルや、流動食、固形食、飼料や、乳製品、野菜、食肉、食肉副産物のような材料や、排泄物であってもよい。また、生体サンプルは、様々な家畜物全般、および野生または自然界の動物から採取してもよい。当該野生または自然界の動物として、有蹄類、クマ、魚類、ウサギ目、齧歯類などの動物が挙げられるが、これらに限らない。生体サンプルの例としては、組織切片、血液、血液画分、血漿、血清、尿、または、その他の末梢源または細胞培養物、細胞コロニー、単一細胞、単一細胞集合から得られるサンプルを含む。さらに、生体サンプルは、上述したサンプルのプールまたは混合物を含む。また、生体サンプルは、対象から細胞サンプルを切除して調達してもよいが、予め単離されたサンプルを用いて調達してもよい。一例として、疾患にかかっていると疑われる対象から、従来の生検手法を用いて、組織サンプルを切除してもよい。いくつかの実施形態では、対象から血液サンプルを採取する。患者からの生体サンプルは、疾患に侵されていると疑われる対象からのサンプルを意味する。
【0082】
また、環境サンプルは、環境学上の材料、例えば地表物質、土壌、水、産業上のサンプル、ならびに、食品加工および酪農加工における器具、装置、設備、用具、使い捨て品や非使い捨て品から採取されるサンプルを含む。なお、上記の例は、本発明に適用可能なサンプル種類への限定と解釈されるべきではない。
【0083】
本明細書中の用語「標識」とは、検知可能(好ましくは定量化可能)という効果を実現するために利用可能かつ核酸またはタンパク質と連結可能な、任意の原子または分子を指す。標識として、色素(例えば、蛍光性色素または蛍光性部分)、放射性標識(例えば、32P)、結合部分(例えば、ビオチン)、ハプテン(例えば、ジゴキシゲニン)、発光性部分、燐光性部分または蛍光性部分、マスタグ(mass tag)、および、蛍光性色素単独、または該蛍光性色素と、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって発光スペクトルを抑制またはシフトできる部分との結合体が挙げられるが、これらに限定されない。標識は、蛍光、放射能、比色分析、重力測定、X線の回折や吸収、磁性、酵素活性、質量特性や質量に影響される性質(例えばMALDI飛行時間型質量分析法、蛍光偏光法)等によって検知可能な信号を発してもよい。また、標識は、帯電部分(正電荷または負電荷)であってもよく、代わりに電荷中性であってもよい。標識は、当該標識を含む配列が検知可能である限り、核酸またはタンパク質配列を含むか、核酸またはタンパク質配列から成ってよい。
【0084】
本明細書中の「担体」または「固体担体」とは、その上またはその中に核酸分子、微粒子等が固定化されうる基材を指す。例えば、当該核酸分子、微粒子等は、該基材に共有結合的または非共有結合的に付着してもよく、あるいは、当該核酸分子、微粒子等は、該基材内または該基材上に部分的もしくは完全に埋入され、それによって、自由に拡散したり互いに動いたりするのをほとんどまたは完全に防いでもよい。
【0085】
本明細書中の「部分(moiety)」とは、解離しうる物体中の2以上の部分要素のうちの1つ、例えばオリゴヌクレオチド、分子、化学基、ドメイン、プローブ等の様々な部分要素を指す。
【0086】
本明細書中の「問合せプローブ」または「読取プローブ」とは、核酸を認識する(例えば、核酸と結合する、例えば、核酸と特異的に結合する)任意の実体(例えば、分子、生体分子など)を指す。例示的な実施形態において、問合せプローブは、核酸を認識するタンパク質(例えば、核酸結合型タンパク質、抗体、抗体断片、転写因子、または、核酸内の特定配列と結合するその他の任意のタンパク質)である。他のいくつかの例示的な実施形態において、問合せプローブは、核酸(例えば、DNA、RNA、DNAおよびRNAを含む核酸、修飾塩基および/または塩基同士間の修飾された連結を有する核酸。例としては、前述した核酸、核酸アプタマー、または、核酸内の特定配列と結合する他の任意の核酸が挙げられる)である。いくつかの実施形態において、問合せプローブは、例えば、検知可能な標識(例えば、上述した蛍光性部分)で標識されている。いくつかの実施形態において、問合せプローブは、2種類以上の分子(例えば、タンパク質、核酸、化学的リンカーおよび化学的部分のうち、2つ以上)を含む。
【0087】
本明細書中の「捕獲プローブ」とは、核酸を認識する(例えば、核酸と結合する、例えば、核酸と特異的に結合する)任意の実体(例えば、分子、生体分子など)を指す。例示的な実施形態において、捕獲プローブは核酸を認識するタンパク質(例えば、核酸結合型タンパク質、抗体、抗体断片、転写因子、または、核酸内の特定配列と結合するその他の任意のタンパク質)である。他のいくつかの例示的な実施形態において、捕獲プローブは核酸(例えば、DNA、RNA、DNAおよびRNAを含む核酸、修飾塩基および/または塩基同士間の修飾された連結を有する核酸。例としては、前述した核酸が挙げられる)である。いくつかの実施形態において、捕獲プローブは、例えば、検知可能な標識(例えば、上述した蛍光性部分)で標識されている。いくつかの実施形態において、捕獲プローブは、2種類以上の分子(例えば、タンパク質、核酸、化学的リンカーおよび化学的部分のうち、2つ以上)を含む。
【0088】
<説明>
単一の核酸の特異的超高感度検知に関する技法の実施形態を説明する。前述したように(例えば、米国特許出願第14/589467号を参照のこと。参照によりその全文が本明細書に援用される)、SiMREPSでは、全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡、単分子可視化、および、蛍光標識プローブの標的分子への結合および当該標的分子からの放出の動的分析(例えば、図1aを参照のこと)が用いられている。なお、標的分子は、簡単かつ増幅のない、直接カウントによる動的フィンガープリント同定により定量化される。この同定は、過去にマイクロRNAの検知で実証されたように、単一のヌクレオチド変異体同士を鋭敏に識別する(例えば、米国特許出願第14/589467号を参照のこと。参照によりその全文が本明細書に援用される)。本明細書に記載の技術によれば、核酸のその他の形態の検知、例えば、多量の野生型を背景として、例えば、DNA、変異DNA、メチル化DNAの検知が実現される。
【0089】
核酸の検知に関する既存手法は、標的分子とともに熱力学的に安定した複合体を形成するプローブを用いるため、バックグラウンド信号または偽標的に対して、弱く、しばしば信頼できない熱力学的識別能しか持たない。これに対して、本明細書に記載の技術は、問合せ領域において標的分子と繰り返し結合するプローブと、観測される各標的分子に発生する独立した結合事象を大量に記録する関連方法と、を用いている。このような動的なサンプリングを繰り返すことにより、標的に関する唯一の動的「フィンガープリント」が提供され、高度に特異的かつ高感度の核酸の検知が行われる。いくつかの実施形態において、本願技術によれば、最少1つのヌクレオチドが異なる2つの核酸分子の識別が行われる。また、いくつかの実施形態において、本願技術によれば、2つの核酸分子のうち一方の核酸分子が過剰(例えば10倍、100倍、1000倍、10000倍、1000000倍またはそれ以上)である場合に、当該2つの核酸分子の識別が行われる。例えば、米国特許出願第14/589467号を参照のこと(参照によりその全文が本明細書に援用される)。
【0090】
いくつかの実施形態において、標識化された核酸を、例えば当該標識から発生する信号を検知するための計器で検知する。例えば、いくつかの実施形態は、検知可能に標識化された(例えば蛍光標識化された)問合せプローブの使用と、蛍光顕微鏡法のような蛍光発光の検出器の使用とを含む。いくつかの実施形態において、本願技術は、生体サンプル中の、変異または異型発現核酸標的を同定するための診断用ツールとして用いられる。例えば、米国特許出願第14/589467号を参照のこと(参照によりその全文が本明細書に援用される)。
【0091】
いくつかの実施形態において、本アプローチでは、固体担体(例えば、ガラスまたは溶融シリカ)に連結したdCas9/gRNA複合体で未標識の核酸を捕獲し、問合せ領域を融解した後に、検知可能に標識化された(例えば、蛍光標識化された)短鎖核酸(例えば、DNA)問合せプローブが当該問合せ領域に対して繰り返し一時的に結合するのを観察する。
【0092】
いくつかの実施形態において、dCas9/gRNA複合体は、固体担体に付着または固定化される。いくつかの実施形態において、dCas9/gRNA複合体は、該dCas9/gRNA複合体を固体担体に固定化するための部分を含み、当該固定化は、該部分と、該固体担体上に付着した第2の部分との相互作用によって実現される。dCas9/gRNA複合体は、固体担体に直接的または間接的に固定化されてもよい。
【0093】
dCas9/gRNA複合体の担体として、様々な材料の任意の一つを用いてよく、例えば、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、ポリアクリレート、混合ポリマー、ポリスチレン、シランポリプロピレン、磁性吸着可能な材料から作られた基材または粒子を用いてよい。本明細書に記載の顕微鏡法で画像化するためには、担体は二次元の平面であることが好ましい。dCas9/gRNA複合体は、例えば、様々な共有結合型連結、キレート化、またはイオン相互作用によって固体担体に直接結合することで固定化されてもよく、当該担体に接合された1つ以上のリンカーを介して当該担体に間接結合することで固定化されてもよい。いくつかの実施形態において、前記リンカーは核酸である。いくつかの実施形態において、前記リンカーは、標的核酸の捕獲領域とのハイブリダイズが意図されていない(例えば、ハイブリダイズしない)ものの、dCas9/gRNA複合体とその固体担体との間のスペーサとして機能するように意図された1つ以上のヌクレオチドを含む、核酸である。
【0094】
いくつかの実施形態において、dCas9/gRNA複合体はビオチン基を備え(例えば、dCas9/gRNA複合体がビオチン化されている)、固体担体はストレプトアビジン基(例えば、リンカー部分(ポリエチレングリコール(PEG)リンカー等)を介して固体担体に付着している)を含む。したがって、ビオチンとストレプトアビジンとの特異的相互作用により、捕獲プローブが固体担体上に固定化される(図1a、図3および図4)。
【0095】
様々な他の化学的方法を用いて、dCas9/gRNA複合体を固体担体に固定化させてもよい。このような方法の一例としては、マレイミド基とチオール(-SH)基との組合せを用いる方法が挙げられる。当該方法では、チオール(-SH)基はdCas9/gRNA複合体と結合しており、固体担体はマレイミド基を含んでいる。そのため、dCas9/gRNA複合体のチオール基が固体担体上のマレイミド基と反応して共有結合を形成し、dCas9/gRNA複合体はこの共有結合によって固定化される。マレイミド基の導入は、ガラス基材とアミノシランカップリング剤とを反応させた後、アミノ基とEMCS試薬(N-(6-マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド;同仁化学研究所から入手可能)との反応によってマレイミド基をガラス基材上に導入する工程を用いてもよい。また、DNAへのチオール基の導入は、当該DNAがDNA合成装置によって自動的に合成される場合には、5’-チオール修飾因子C6(Glen Research社から入手可能)を用いて行ってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、固定化を行うための官能基同士の組み合わせとして、上述のチオール基とマレイミド基との組み合わせの代わりに、例えばエポキシ基(固体担体上に存在する)とアミノ基(dCas9/gRNA複合体)との組み合わせを用いる。なお、様々な種類のシランカップリング剤を用いる表面処理も有効である。また、タンパク質を固体担体および固体表面上に付着させるその他の技法は本分野では公知である。
【0097】
<ポアソン過程>
本願技術の実施形態は、プローブ(例えば問合せプローブ)が標的(例えば問合せ領域)と結合する際の特徴的な運動を記録することによる単分子認識に関する。特定の実施形態では、このプロセスはポアソン過程である。ポアソン過程とは、所定の時間間隔内に事象(例えば、検知可能に標識化された(例えば、蛍光性)問合せプローブと固定化された標的との一時的結合)が発生する回数および時間をカウントする連続時間確率過程である。連続する事象各ペア間の時間間隔は指数分布を持ち、それぞれの間隔は他の間隔から独立していると見なされる。ポアソン分布とは、所定の数の事象が、既知の平均割合で、前回の事象からの時間と独立して生じる場合に、所定の時間間隔内に発生する確率を示す離散確率分布である。ポアソン分布は、他の特定の間隔、例えば距離、面積、体積等における事象の回数にも適用できる。
【0098】
ポアソン分布は、通常の二項分布に関する特別なケースであり、試行数nが大きく、当たり確率pが低く、かつ、積np=λが中程度である。ポアソン過程では、任意の時間tにおいて事象数Nがjになる確率は下式のポアソン確率分布P(t)に従う。
【0099】
【数1】
【0100】
すなわち、時間tまでに発生する事象の数Nは、パラメータλtを伴うポアソン分布を有する。ポアソン過程およびポアソン分布に関連する統計学および数学的方法は当該分野において公知である。例えば、“Stochastic Processes (i): Poisson Processes and Markov Chains” in Statistics for Biology and Health - Stastistical Methods in Bioinformatics (Ewans and Grant, eds.), Springer (New York, 2001);page 129 et seq.を参照のこと(参照によりその全文が本明細書に援用される)。また、例えばMatlabおよびRのようなソフトウェアパッケージを使用し、ポアソン過程、ポアソン確率およびポアソン分布と関連する数学的および統計学的方法を実行してもよい。
【0101】
<検出の動力学>
本願技術の特定の実施形態は、問合せプローブと、検知される標的核酸の問合せ領域との相互作用の動力学を分析することで核酸を検知する構成に関する。(例えば平衡濃度[Q]の)問合せプローブQと(例えば平衡濃度[T]の)標的核酸Tとの相互作用に関しては、標的核酸Tの問合せ領域にハイブリダイズした問合せプローブQを含む複合体QTの、時間に依存したフォーメーションは、運動速度定数konで記述される。特定の実施形態では、QT複合体のフォーメーションは、問合せプローブの濃度に依存する二次速度定数(単位:M-1min-1;または同様な単位)と関連付けられるものであるが、当該QT複合体のフォーメーションを、QT複合体のフォーメーションと関連付けられた疑似的な一次速度定数konで記述する。したがって、本明細書中のkonは見かけ(「疑似」)の一次速度定数である。
【0102】
同様に、複合体QTから問合せプローブQおよび標的核酸Tへの時間に依存した解離は、運動速度定数koffで記述される。本明細書中の運動速度の典型的な単位はmin-1またはs-1である。結合状態の問合せプローブQの「滞留時間(τon)」とは、問合せプローブQが標的核酸Tの問合せ領域に結合してQT複合体を形成する各場合において、プローブQが標的核酸Tの問合せ領域にハイブリダイズされる時間間隔(例えば、期間)を指す。また、非結合状態の問合せプローブQの「滞留時間(τoff)」とは、問合せプローブQが標的核酸Tの問合せ領域に結合してQT複合体を形成する各場合同士の間において、プローブQが標的核酸Tの問合せ領域にハイブリダイズされていない時間間隔(例えば、期間)を指す(例えば、問合せプローブQと標的核酸Tとの連続的な結合事象同士の間に、問合せプローブQが標的核酸Tから解離している時間)。なお、滞留時間は、多数の結合事象および不結合事象を統合した平均値もしくは加重平均値であってもよい。
【0103】
また、いくつかの実施形態において、問合せプローブ(例えば、検知可能に標識化された問合せプローブ(例えば、蛍光プローブ)、例えば、DNAプローブもしくはRNAプローブのような核酸プローブ)と固定化された標的との、反復された確率論的結合は、単位時間あたり一定の確率で発生するポアソン過程であって単位時間あたりの結合事象および解離事象の数量の標準偏差(Nb+d)が「(Nb+d1/2」として増加するポアソン過程として、モデル化される。ゆえに、観測時間が増加すれば、統計的なノイズは、Nb+dのより小さな一部となる。したがって、いくつかの実施形態では、標的結合とオフターゲット結合との識別を達成するために、必要に応じて観測時間を延ばす。そして、取得時間が増えるため、Nb+dヒストグラム中の信号ピークおよびバックグラウンドピークがますます分離され、信号分布の幅が倍率「Nb+dの平方根」で増加する。これは動的モンテカルロシミュレーションに一致している。取得時間が約10分間(例えば約1~100分間。例えば1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、16分間、17分間、18分間、19分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、80分間、90分間または100分間)であれば、信号をNb+dの背景分布から十分に(例えば完全に)分離することができ、標的を実質的に背景無しで定量化できる。例えば、米国特許出願第14/589467号を参照のこと(参照によりその全文が本明細書に援用される)。
【0104】
また、いくつかの実施形態では、好都合な実験タイムスケールにおいて信号ピークとバックグラウンドピークとを十分に分離することが可能なプローブ長を選択する。特に、問合せプローブの置換の動力学は、問合せプローブと標的核酸との相補的塩基の数量に関係する。例えば、いくつかの実施形態では、短鎖DNA問合せプローブとその相補体との相互作用は、形成される塩基対の数量のほぼ指数関数として増加するが、一方、結合速度定数は、少なくとも6~7塩基を有する相互作用に対して弱く影響されるだけである。このように、問合せプローブの長さを変化させることで動力学上の挙動を調節することにより、問合せプローブと標的との結合事象を背景結合から識別する効果が向上する。特に、長さ9nt~10nt(17.5℃~25℃の理論T値を実現する)の問合せ(例えば蛍光性の)プローブを用いれば、標的の存在および非存在下での候補分子ごとの強度変化ヒストグラムに示されるように、バックグラウンド信号から区別される迅速な標的結合が実現可能である。例えば、米国特許出願第14/589467号を参照のこと(参照によりその全文が本明細書に援用される)。さらに、いくつかの実施形態において、結合および解離の動力学は、二重鎖の融解温度よりも、プローブ長の方とより密接に相関している。いくつかの実施形態では長さ9nt~10ntのプローブの使用が含まれるが、本願技術は上記長さに限定されない。実際、例えば、本明細書を通して論じるように、本願技術では9nt~10ntよりも長い、または短いプローブの使用も考えられる。
【0105】
本開示は特定の例示的な実施形態を説明しているが、これらの実施形態は例として提示されたのであり限定として提示されたのではないと理解されるべきである。
【0106】
<二本鎖核酸の検知>
本技術の実施形態は二本鎖核酸の検知を提供する。いくつかの実施形態は、1つ以上の核酸を検知するための複数の分子を含む組成、反応混合物および複合体を提供する。当該組成、反応混合物および複合体のいくつかの実施形態は、検知、同定、定量化および/または特徴付けされる核酸(例えば標的核酸)と、dCas9/gRNA複合体を有する固体基材であって、当該dCas9/gRNA複合体は固体表面に連結されて高特異性によって標的の1つ以上の領域と結合する、固体基材と、検知可能に標識化された(例えば蛍光性の)問合せプローブと、を備える。いくつかの実施形態は、プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)型DNAオリゴヌクレオチドをさらに含む。
【0107】
SiMREPS技術は、短鎖(6~12ヌクレオチド)蛍光標識化DNAプローブと、ガラス表面上に固定化された未標識の核酸標的(例えばmiRNA)との直接結合を活用する(図1a)(例えば、米国特許出願第14/589467号を参照のこと。参照によりその全文が本明細書に援用される)。TIRF顕微鏡法(Walter et al (2008) “Do-it-yourself guide: how to use the modern single-molecule toolkit” Nat Methods 5: 475-89)を用いて、固定化された標的との非特異的な表面結合(図1b)および特異的結合(図1c)の両方を検知した。但し、プローブと標的との平衡結合は、特有の動的サインもしくはフィンガープリントをもたらすため、バックグラウンド結合に対して極めてはっきりと識別することが達成可能である(図1bと図1cを比較せよ)。プローブと固定化された標的との一時的結合はポアソン過程に似ているため、結合事象数および解離事象数の標準偏差(Nb+d)は、
【0108】
【数2】
【0109】
という倍率で増加する。実験上の取得時間が増加するため、Nb+dヒストグラム中の信号ピークおよびバックグラウンドピークが次第に好適に分離していき(図1d)(例えば、Johnson-Buck al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids” Nat Biotechnol 33: 730-2を参照のこと)、標的結合とオフターゲット結合との任意に高い識別が可能となる。
【0110】
SiMREPSをRNAの定量に用いる(例えば、米国特許出願第14/589467号を参照のこと。参照によりその全文が本明細書に援用される)。特に、過去の実験で、癌および他の疾患では調節不良となる4つのヒトmiRNAの定量化がなされた。標的とプローブとからなる全てのペアについての識別(例えば特異性=1)が達成され、標準カーブは標的の濃度に対して一次従属を示した(図1e)。1ヌクレオチドのみ異なる2つのマイクロRNAを、最も高い特異性をもって、1つの蛍光性プローブで識別する(図2a~c)。SiMREPSでは、複雑な生体マトリックス中の標的が検知される(図2d、2e)。また、種々の標的濃度をスパイクインしたあとの血清サンプルから、前立腺癌バイオマーカーhsa-miR-1418も検知された。測定された濃度は、見かけのスパイクイン濃度と強い相関性を持っていた(図2f。R>0.999、傾き=1.07)。
【0111】
二本鎖核酸の検知にSiMREPS技術を適用する際に困難な点の一つは、問合せプローブと標的核酸との(例えば問合せ領域における)一時的結合が、相補鎖と問合せ領域(例えばdsDNA)との標的部位における結合と競合することである。したがって、本願技術は二本鎖DNAの検知にSiMREPSを用いる。この困難を克服するために、本技術に係るいくつかの実施形態は、特異的ガイドRNA(gRNA)を積んだ触媒作用不活性(「無効型」)dCas9酵素を使用することでdsDNAの構造を局所的に配列特異的に融解し、SiMREPSプローブのためのアクセスを実現する(図3)。関連する実施形態では、二本鎖核酸(例えば、二本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA/RNAハイブリッド)と結合するタンパク質、および/または、二本鎖核酸(例えば核酸の領域)を解離して一本鎖核酸にする融解要素(例えばタンパク質または核酸)を使用する。
【0112】
<dCas9/gRNA複合体>
本技術は、配列特異的な核酸結合成分(例えば分子、生体分子、あるいは1つ以上の分子および/または生体分子の複合体)を使用することにより、核酸を固定化、および/または、二本鎖核酸(例えば二本鎖核酸の領域)を変換して一本鎖領域にする。例示的な実施形態において、配列特異的な核酸結合成分は、酵素不活性の、または「無効型」のCas9タンパク質(「dCas9」)と、ガイドRNA(gRNA)とを含む。様々な類型および種類の細胞に対するゲノム編集のために、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)およびCRISPR関連タンパク質(Cas)(CRISPR/Cas)システムのような核酸結合分子が幅広く採用されているが、本願技術では、遺伝子組換および遺伝子操作された核酸結合タンパク質を用い、二本鎖核酸を融解してプローブ結合用の一本鎖核酸にする。
【0113】
Cas9タンパク質は、細菌順応性免疫システムの一成分として発見された(例えばBarrangou et al., (2007) “CRISPR provides acquired resistance against viruses in prokaryotes” Science 315: 1709-1712を参照のこと)。Cas9は、RNAに誘導されるエンドヌクレアーゼであり、gRNAと外来DNAとの間で配列特異性を実現するRNA:DNA塩基対合を利用して細菌内で外来DNAを標的として破壊する。最近では、Cas9/gRNA複合体をゲノム編集に用いる事例が報告されている(例えばDoudna et al., (2014) “The new frontier of genome engineering with CRISPR-Cas9” Science 346: 6213を参照のこと)。
【0114】
したがって、一部のCas9/RNA複合体は、(1)標的ヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を持つCRISPR-RNA(crRNA)および(2)トランス-活性化crRNA(tracrRNA)、という2つのRNA分子を備える。この場合、Cas9は、crRNAおよびtracrRNAの両方を利用して標的配列を認識し切断するRNA誘導ヌクレアーゼとして機能する。近年、crRNA/tracrRNAよりも、アニールされるcrRNA/tracrRNAの構造を模倣するシングルキメラ型ガイドRNA(sgRNA)の利用が広がりつつある。理由は、そのgRNAアプローチにより、2つの成分(例えばCas9およびsgRNA)のみを有する簡略なシステムが実現されるためである。このように、核酸への配列特異的結合は、天然のデュアルRNA複合体(例えば、crRNAとtracrRNAとCas9とを含む)またはキメラ型シングルガイドRNA(例えば、sgRNAとCas9)による誘導が可能である(例えばJinek et al., (2012) “A Programmable Dual-RNA-Guided DNA Endonuclease in Adaptive Bacterial Immunity” Science 337:816-821を参照のこと)。
【0115】
本明細書では、crRNA(2-RNAシステム)またはsgRNA(シングルガイドシステム)の標的領域を「ガイドRNA」(gRNA)と称する。いくつかの実施形態において、gRNAは、10~50塩基、例えば15~40塩基、例えば15~30塩基、例えば15~25塩基(例えば、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個または50個の塩基)を含む、または、それらから成る、または実質的にそれらから成る。なお、Cas9に関する最も効率的な標的認識を実現するgRNA長を決定する方法は、本分野において公知である。例えばLeeet al. (2016) “The Neisseria meningitidis CRISPR-Cas9 System Enables Specific Genome Edithing in Mammalian Cells” Molecular Therapy, 19 January 2016; doi:10.1038/mtを参照のこと。
【0116】
したがって、いくつかの実施形態において、gRNAは、Cas9と結合するための「足場」配列と、核酸標的に相補的である、ユーザに定義された約20ヌクレオチドの「標的」配列と、を含む短鎖人工RNAである。
【0117】
いくつかの実施形態において、DNA標的特異性は、2つの要因、すなわち、1)gRNA標的配列にマッチするDNA配列と、当該標的配列の直接下流に位置するプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)と、によって決定される。一部のCas9/gRNA複合体は、プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)配列と、それに隣接し、gRNAに相補的な約20塩基とを含むDNA配列を認識する。標準的なPAM配列としては、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のCas9に対するNGGもしくはNAG、および、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来のCas9に対するNNNNGATTがある。gRNAのDNA標的配列へのハイブリダイゼーションによるDNA認識の後、Cas9は、固有のヌクレアーゼ活性を利用してDNA配列を切断する。なお、ゲノム編集やその他の目的で最も利用されているのは、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCRISPR/Casシステムである。このシステムを利用すれば、5’にてPAMに隣接する約20塩基のDNA配列に相補的であるヌクレオチド配列を有するgRNAを設計して、特定の標的核酸を(例えば編集またはその他の操作目的で)標的にすることができる。Cas9に関する最も効率的な標的認識を実現するPAM配列を決定する方法は、本分野において公知である。例えばZhang et al. (2013) “Processing-independent CRISPR RNAs limit natural transformation in Neisseria meningitidis” Molecular Cell 50: 488-503、および、Lee et al.による前記の文献を参照のこと。
【0118】
本技術は、Cas9の触媒作用不活性形態(「無効型Cas9」または「dCas9」)、すなわち、点変異を導入してヌクレアーゼ活性を無くした形態を利用する。いくつかの実施形態において、dCas9タンパク質は化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)に由来する。また、いくつかの実施形態において、dCas9タンパク質は、例えば、D10、E762、H983および/またはD986、ならびに、H840および/またはN863における変異(例えば、D10およびH840における変異、例えばD10AもしくはD10N、および、H840AもしくはH840NもしくはH840Yにおける変異)を含む。いくつかの実施形態において、dCas9は、dCas9を固体表面に付着させるための機能的ドメイン(例えばエピトープ標識、リンカーペプチドなど)を有する融合タンパク質である。
【0119】
dCas9/gRNA複合体は、gRNAが持つ配列特異性を利用して標的核酸と結合するが、該核酸を切断しない。この構成では、dCas9/gRNAは、配列特異的に標的配列を「融解」することで、該標的核酸の一本鎖領域を作る(例えばQi et al. (2013) “Repurposing CRISPR as an RNA-guided platform for sequence-specific control of gene expression” Cell 152(5): 1173-83)を参照のこと)。
【0120】
さらに、Cas9/gRNAシステムおよびdCas9/gRNAシステムは、もともとはPAMに隣接する配列を標的にしたが、本発明におけるdCas9/gRNAシステムは、結合用に任意のヌクレオチド配列を標的化するよう設計されている。また、コンパクト遺伝子によってコードされたCas9オルソログおよびdCas9オルソログ(例えば黄色ブドウ球菌由来のCas9)が知られている(例えばRan et al. (2015) “In vivo genome editing using Staphylococcus aureus Cas9” Nature 520: 186-191を参照のこと)。これらは、インビトロにおけるCas9成分のクローニングおよび操作を向上させる。
【0121】
Cas9タンパク質変異体を発現する細菌は数多く存在する。現在、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9が最も一般的に用いられているが、他にも、化膿性連鎖球菌Cas9と高度な配列同一性を有し同じガイドRNAを用いたCas9タンパク質がある。また、他のCas9タンパク質はさらに多様で、別のgRNAを用いて別のPAM配列(RNAで特定される配列に隣接するタンパク質で特定される2~5ヌクレオチド配列)を同様に認識する。Chylinskiらは、多数の細菌群のCas9タンパク質を分類し(RNA Biology 10:5, 1-12; 2013)、多数のCas9タンパク質をその補足図1および補足表1に例示している。これらは参照により本明細書に援用される。なお、上記以外のCas9タンパク質としては、Esvelt et al., Nat Methods. 2013 November; 10(11):1116-21およびFonfara et al., “Phylogeny of Cas9 determines functional exchangeability of dual-RNA and Cas9 among orthologous type II CRISPR-Cas systems.” Nucleic Acids Res. 2013 Nov. 22;[出版前の電子公開] doi:10.1093/nar/gkt1074に記載されている。
【0122】
本明細書に記載の技術は、様々な種のCas9分子、したがってdCas9分子を用いている。化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9分子およびサーモフィルス菌(S.thermophilus)Cas9分子が幅広く使用されているが、本技術の実施形態は、本明細書に挙げる他の種類のCas9タンパク質のCas9分子、該Cas9タンパク質由来のCas9分子、または、該Cas9タンパク質に基づくCas9分子を用いている。したがって、本技術によれば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)およびサーモフィルス菌(S.thermophilus)由来のCas9分子およびdCas9分子を、別種の菌由来の置換可能なCas9分子およびdCas9分子(例えば以下に挙げているもの)で置換することが実現される。
【0123】
【表1】


【0124】
本明細書に記載の技術は、任意のCas9タンパク質(例えば上記挙げたもの)に由来するdCas9、および、該dCas9に対応するガイドRNAまたは互換性のある他のガイドRNAの使用を含む。なお、サーモフィルス菌LMD-9のCRISPR1システムから得られるCas9がヒト細胞内で機能することが開示されている(例えばCong et al. (2013) Science 339: 819を参照のこと)。また、Jinekによれば、サーモフィルス菌(S.thermophilus)およびリステリアイノキュア(L.innocua)由来のCas9オルソログが、インビトロで、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)二重gRNAに誘導されて標的プラスミドDNAを切断しうることが開示されている。
【0125】
いくつかの実施形態において、本願技術は、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9タンパク質を含む。当該Cas9タンパク質は、細菌内でコードされているか、または哺乳類動物細胞内での発現のためにコドン最適化されており、D10、E762、H983、または、D986およびH840もしくはN863での変異(例えばD10A/D10N、および、H840A/H840N/H840Y)を有し、タンパク質のヌクレアーゼ部分の触媒作用を不活性化する。これらの位置における置換部は、いくつかの実施形態ではアラニンであり(Nishimasu (2014) Cell 156: 935-949)、いくつかの実施形態では例えばグルタミン、アスパラギン、チロシン、セリンまたはアスパルテートのような他の残基(例えばE762Q、H983N、H983Y、D986N、N863D、N863SまたはN863H)である。特許文献US20160010076には、本明細書に記載の技術で用いられる1つの化膿性連鎖球菌dCas9タンパク質の配列が記載されている。当該文献は参照により、その全文が本明細書に援用される。
【0126】
例えば、いくつかの実施形態において、本明細書で用いられるdCas9は、化膿性連鎖球菌Cas9の配列と少なくとも約50%同一であり、例えば、D10A置換部およびH840A置換部を含む下記のdCas9配列(配列番号1)と少なくとも50%同一である。
【0127】
【化1】



【0128】
いくつかの実施形態において、本願技術は、配列番号1で記述されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列と約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%同一であるヌクレオチド配列の使用を含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、本明細書で用いられるdCas9は、触媒作用不活性の化膿性連鎖球菌Cas9の配列と少なくとも約50%同一、すなわち、配列番号1と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%同一であり、D10およびH840における変異、例えばD10A/D10N、および、H840A/H840N/H840Yが保持されている。
【0130】
いくつかの実施形態では、配列番号1とのいかなる差分も非保存領域に含まれる。当該差分は、Chylinski et al., RNA Biology 10:5, 1-12; 2013 (例えばその補足図1および補足表1)、Esvelt et al., Nat Methods. 2013 November; 10(11):1116-21、およびFonfara et al., Nucl. Acids Res. (2014) 42 (4): 2577-2590. [出版前の電子公開;2013 Nov. 22] doi:10.1093/nar/gkt1074に規定された配列との配列整列により、確認される。但し、D10およびH840における変異、例えばD10A/D10NおよびH840A/H840N/H840Yは保持される。
【0131】
2つの配列のパーセント同一性を特定するために、最適比較目的で当該配列を整列する(最適な整列が要求されるため、第1および第2のアミノ酸配列もしくは核酸配列の一方または両方にギャップを導入する。非相同配列は、比較目的のため無視することができる)。なお、比較目的で整列される基準配列は、その長さの少なくとも50%(いくつかの実施形態では、基準配列長の約50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%または100%)が整列される。続いて、対応する位置のヌクレオチドまたは残基を比較する。第1配列中の或る位置に、第2配列中の対応位置と同じヌクレオチドまたは残基が存在していれば、当該分子は前記位置にて同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列間に共通する同一位置の数に関する関数であって、2つの配列の最適な整列のために導入すべきギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた関数である。
【0132】
配列同士の比較、および、2つの配列間のパーセント同一性の特定は、数学的アルゴリズムを用いて実行することができる。本願の目的のため、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれたNeedlemanおよびWunsch((1970) J. Mol. Biol. 48:444-453)アルゴリズムを使用し、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を特定する。なお、該アルゴリズムには、ギャップペナルティが12、ギャップ伸長ペナルティが4、フレームシフトギャップペナルティが5であるBlosum62スコア行列が用いられている。
【0133】
したがって、本明細書で提供されているのは、dCas9/gRNAに基づき、SiMREPSプローブを用いて二本鎖核酸(例えば二本鎖ゲノムDNA)を検知するアプローチである。本願技術の実施形態は、gRNAを積んだ酵素無効型dCas9酵素、または、標的の1つ以上のセグメントと高度に特異的に安定結合する(例えば、gRNAに相補的である部位において約20塩基対を構成する;図3)酵素を用いて、未標識のゲノムDNA標的をガラスまたは溶融シリカの表面上に捕獲する構成を含む。ビオチン化dCas9によって核酸標的を表面上に捕獲した後、SiMREPSプローブが標的の第2セグメントに反復的かつ一時的に結合するのが観測される。なお、第2セグメントは、dCas9/gRNAによって融解され、既にアクセス可能状態となっている。
【0134】
このように、いくつかの実施形態において、標的核酸は、適切な配列を含むガイドRNA(gRNA)を有するビオチン化dCas9によって捕獲される。また、dCas9は、gRNAの協力の下でDNAを融解することにより、問合せプローブがアクセス可能な一本鎖である相補的な非鋳型DNA鎖を作り出す。いくつかの実施形態において、本願技術は、標的核酸と結合する第2のgRNAを含む第2の非ビオチン化dCas9の使用(図4)を含む。第2のdCas9/gRNAは、第1のdCas9/gRNAから距離を取って標的核酸と結合する。当該距離は、問合せプローブのサイズにほぼ相当し、例えば5~30ヌクレオチド分である。つまり、ビオチン化dCas9/gRNA(捕獲型dCas9/gRNA)および第2のdCas9/gRNAは、標的核酸のうち、問合せプローブが結合する領域に隣接する領域と結合する。この2つのdCas9/gRNA複合体は、それらの間における核酸領域を融解することにより、問合せプローブが結合するアクセス可能な一本鎖問合せ領域を提供する。ゆえに、2つのdCas9/gRNA複合体の間の間隔は、問合せプローブが該2つのdCas9/gRNA複合体の間で結合するのに適している。
【0135】
<方法>
いくつかの実施形態では、本技術は、二本鎖核酸を検知する方法である。例えば、いくつかの実施形態では、核酸(例えば、ゲノムDNA)標的DNAは、dCas9/gRNAにより(例えば、周辺温度(「室温」)でまたはその近くで)簡単に前処理される。次に、dCas9/gRNA複合体のガイドRNA(gRNA)は、問合せ領域(例えば、標的核酸のうち、問合せプローブに相補的な領域)に隣接する領域において、標的核酸(例えば、ゲノムDNA)にハイブリダイズする。dCas9/gRNAは、標的核酸中の特定のDNA配列(例えば、問合せ領域)を融解する。該方法は、スライド表面上に、dCas9(例えば、ビオチン化dCas9)を(例えば、ビオチンーアビジン相互作用によって)捕獲することを含む。dCas9/gRNA‐標的核酸を該表面上に捕獲し固定化した後、標的核酸のうちgRNAにハイブリダイズした位置に隣接する、標的核酸中の問合せ領域に、問合せプローブが結合することを、SiMREPSにより検知する。例えば、図3を参照のこと。
【0136】
いくつかの実施形態では、2つのdCas9/gRNA複合体を用いることにより、問合せプローブが標的核酸の問合せ領域に近づきやすくなる。いくつかの実施形態では、問合せ領域の両側に位置するように、2つのdCas9/gRNA複合体をハイブリダイズすることにより、SiMREPSに基づく検知のための問合せプローブが標的核酸(例えば、問合せ領域)により近づきやすくなる。表面上に捕獲するために、1つのdCas9はビオチン化されるが、もう1つの(例えば、第2)dCas9は任意にビオチン化される(好適な実施形態では、第2のdCas9はビオチン化されない)。例えば、図4を参照のこと。標的核酸に結合した2つのdCas9/gRNA複合体が結合する領域間の空間は、問合せプローブが標的核酸の問合せ領域に結合するのに適当な空間である。
【0137】
いくつかの実施形態では、検知可能な(例えば、蛍光)問合せプローブが固体担体の表面に近づく(例えば、固体担体の表面から約100nm以内にある)と、該問合せプローブは蛍光発光信号を生成する。未結合の場合、問合せプローブは素早く拡散し、個別に検出されない。よって、未結合の状態である場合、問合せプローブは、低レベルの拡散バックグラウンド蛍光を発する。したがって、いくつかの実施形態では、結合した問合せプローブの検出は、全反射照明蛍光顕微鏡(TIRF)、HiLo顕微鏡(例えば、US20090084980、EP2300983B1、WO2014018584A1、WO2014018584A1を参照のこと。これらは参照により本明細書に援用される)、共焦点走査顕微鏡、または、固体担体の表面近くまたは表面上の問合せプローブ分子のみを照明する(例えば、励起する)照明スキームを含む他の技術を用いる。このように、いくつかの実施形態では、表面近くまたは表面上に固定化された標的に結合した問合せプローブのみが、単一分子に由来することを確認できる点状の発光信号(例えば、「スポット」)を発する。
【0138】
おおまかに言えば、観測は、標的核酸が(例えば、表面に付着したdCas9/gRNAに特異的に結合することにより)固定化された、固体担体上の多数の離散位置において、例えば、明滅する(例えば、「オン」および「オフ」状態となりうる)複数の蛍光「スポット」において、蛍光発光を観測することを含む。それぞれの離散位置(例えば、固体担体上のそれぞれの「スポット」)において蛍光発光があること(スポットが「オン」である)および蛍光発光がないこと(スポットが「オフ」である)が記録される。各スポットは、問合せプローブがそのスポットにおいて固定化された標的核酸に結合するとき、および、問合せプローブがそのスポットにおいて固定化された標的核酸から解離するとき、「明滅」する、例えば、スポットが「オン」状態および「オフ」状態間で交替する。
【0139】
集められたデータにより、問合せプローブがそれぞれの固定化された標的に結合する回数(例えば、それぞれのスポットが「明るくなる」回数)が測定され、また、問合せプローブが結合している合計時間(例えば、「消える」まで、スポットが「明るい」ままでいる時間の長さ)が測定される。
【0140】
いくつかの実施形態では、問合せプローブは、発光波長を有する蛍光標識を含む。蛍光標識の発光波長での蛍光発光を検出したことは、問合せプローブが固定化された標的核酸に結合したことを示す。問合せプローブが標的核酸に結合することは、「結合事象」である。本技術のいくつかの実施形態では、結合事象は、蛍光発光の測定強度が規定閾値よりも高い。例えば、いくつかの実施形態では、結合事象は、蛍光強度がバックグラウンド蛍光強度(例えば、標的核酸の非存在下で観察された蛍光強度)よりも高い。いくつかの実施形態では、結合事象は、蛍光強度がバックグラウンド蛍光強度(例えば、標的核酸の非存在下で観察された蛍光強度)よりも、少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上、標準偏差が高い。いくつかの実施形態では、結合事象は、蛍光強度がバックグラウンド蛍光強度(例えば、標的核酸の非存在下で観察された蛍光強度)よりも、少なくとも2標準偏差が高い。いくつかの実施形態では、結合事象は、蛍光強度が背景蛍光強度(例えば、標的核酸の非存在下で観察された平均蛍光強度)の少なくとも1.5、2、3、4、または5倍である。
【0141】
よって、いくつかの実施形態では、規定閾値よりも強度が高い(例えば、バックグラウンド強度よりも少なくとも2標準偏差が高い)蛍光プローブの発光波長での蛍光を検出したことは、(例えば、標的核酸が固定化された、固体担体上の離散位置において)結合事象が発生したことを示す。また、いくつかの実施形態では、規定閾値よりも強度が高い(例えば、背景強度よりも少なくとも2標準偏差が高い)蛍光プローブの発光波長での蛍光を検出したことは、結合事象が開始したことを示す。よって、いくつかの実施形態では、規定閾値よりも強度が高い(例えば、背景強度よりも少なくとも2標準偏差が高い)蛍光プローブの発光波長での蛍光の不存在を検出したことは、結合事象が終了したこと(例えば、問合せプローブは標的核酸から解離したこと)を示す。結合事象の開始から結合事象の終了までの時間の長さ(例えば、規定閾値よりも強度が高い(例えば、背景強度よりも少なくとも2標準偏差が高い)蛍光プローブの発光波長である蛍光が検出される時間の長さ)が、結合事象の滞留時間である。「遷移」は、問合せプローブが標的核酸に結合し標的核酸から解離すること(例えば、オン/オフ事象)を指す。
【0142】
本技術の方法は、規定の時間間隔内で固体担体上のそれぞれの離散位置において発生する問合せプローブ結合事象の回数を数えることを含む。規定の時間間隔は「取得時間」(例えば、数十~数百~数千秒の時間間隔、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または、60秒、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または、0分間、例えば、1、1.5、2、2.5、または、3時間)である。いくつかの実施形態では、取得時間は、約1~10秒から1~10分間(例えば、約1~100秒、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、または、100秒、例えば、1~100分間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、または、100分間)である。
【0143】
さらに、結合事象中に問合せプローブが標的核酸に結合している時間の長さは、結合事象の「滞留時間」である。取得時間中に検出された結合事象の回数、および/または、記録された結合事象の滞留時間の長さは、標的核酸への問合せプローブの結合の特徴である。これにより、標的核酸が上記の離散位置に固定化されたこと、したがって、標的核酸がサンプル中に存在することが示される。
【0144】
問合せプローブが固定化された標的核酸に結合すること、および/または、問合せプローブが固定化された標的核酸から解離することは、規定時間間隔中(例えば、取得時間中)に、(例えば、光源を用いて蛍光プローブを励起し、例えば、蛍光顕微鏡を用いて、結合された問合せプローブからの蛍光発光を検出することによって)観測および/または記録される。取得時間中に問合せプローブが核酸に結合する回数、および/または、それぞれの結合事象中に問合せプローブが核酸に結合している時間の長さと、それぞれの結合事象の間に問合せプローブが核酸に結合していない時間の長さ(例えば、それぞれ、結合状態での「滞留時間」と未結合状態での「滞留時間」)は、例えば、コンピュータおよびソフトウェアを用いて(例えば、隠れマルコフモデルおよびポアソン統計を用いてデータを分析して)判定される。
【0145】
いくつかの実施形態では、コントロール用のサンプルが(例えば、標的の非存在下で)計測される。コントロール用のサンプルで検出される蛍光は、「バックグラウンド蛍光」、または、「バックグラウンド(蛍光)強度」または「基準値」である。
【0146】
いくつかの実施形態では、問合せプローブの発光波長での蛍光強度の測定値を含むデータが、時間の関数として記録される。いくつかの実施形態では、(例えば、固定化された核酸毎の)結合事象の回数および結合事象の滞留時間が、(例えば、蛍光強度が閾値背景蛍光の強度以上である回数および時間の長さを測定することによって)データから判定される。いくつかの実施形態では、標的核酸が固定化された固体担体上の離散位置毎の遷移(例えば、問合せプローブの結合および解離)が数えられる。いくつかの実施形態では、遷移回数の閾値を用いて、固体担体上の離散位置に標的核酸が存在することを、バックグラウンド信号、非標的核酸、および/または、問合せプローブの疑似結合から識別する。いくつかの実施形態では、取得時間中に、10を超える複数の遷移が記録されたことは、固体担体上の離散位置に標的核酸が存在することを示す。
【0147】
いくつかの実施形態では、固定化された標的毎の遷移回数の分布が判定される。例えば、観察された固定化された核酸標的毎の遷移回数が数えられる。いくつかの実施形態では、ヒストグラムを作成する。いくつかの実施形態では、分布の特性パラメータが判定され、例えば、分布の平均値、中央値、ピーク、形状などが判定される。いくつかの実施形態では、例えば、人工知能、パターン認識、機械学習、統計推論、ニューラルネットなどを用いて、データのパターンおよび規則性を認識するアルゴリズムにより、データおよび/またはパラメータ(例えば、蛍光データ(例えば、時間領域にある蛍光データ)、運動データ、分布の特性パラメータなど)を分析する。いくつかの実施形態では、上記の分析には頻度論的分析を用いるが、いくつかの実施形態では、ベイズ分析を用いる。いくつかの実施形態では、既知の「トレーニング」データを用いて(例えば、教師あり学習を用いて)、パターン認識システムがトレーニングされるが、いくつかの実施形態では、アルゴリズムを用いて、これまで知られていないパターンを発見する(例えば、教師なし学習)。例えば、Duda, et al. (2001) Pattern classification (2nd edition), Wiley, New York; Bishop (2006) Pattern Recognition and Machine Learning, Springerを参照のこと。
【0148】
パターン認識は(例えば、トレーニングセット、教師あり学習、教師なし学習、および未知のサンプルの分析を用いて)、識別されたパターンを核酸と関連させて、特定のパターンが特定の核酸の「フィンガープリント」となるようにする。当該「フィンガープリント」は、核酸の検出、定量化、および識別に役立つ。
【0149】
いくつかの実施形態では、標的核酸から生成した分布は、非標的核酸から生成した分布、または、標的核酸の非存在下で生成した分布とは大きく異なる。いくつかの実施形態では、複数の固定化された標的核酸の平均遷移回数が判定される。いくつかの実施形態では、標的核酸を含むサンプルについて観察された平均遷移回数は、時間の関数として、ほぼ直線状に関連し、正の傾斜を有する(例えば、平均遷移回数は、時間の関数として、ほぼ直線状に増加する)。
【0150】
いくつかの実施形態では、データは、統計(例えば、ポアソン統計)処理され、固体担体上のそれぞれの離散位置において、時間の関数として、遷移が発生する確率を判定する。いくつかの特定の実施形態では、固体担体上の離散位置において時間の関数として遷移事象が比較的一定の確率で発生することは、上記固体担体上の離散位置において標的核酸が存在することを示す。いくつかの実施形態では、事象回数および経過時間に関する相関係数は、固体担体上の離散位置において時間の関数として遷移事象が発生する確率から算出される。いくつかの実施形態では、固体担体上の離散位置において時間の関数として遷移事象が発生する確率から算出されたとき、事象回数および経過時間に関する相関係数が0.95より大きいことは、上記固体担体上の離散位置において標的核酸が存在することを示す。
【0151】
いくつかの実施形態では、結合問合せプローブの滞留時間(τon)および未結合問合せプローブの滞留時間(τoff)を用いて、サンプル中に標的核酸が存在することを識別し、かつ/または、標的核酸を含むサンプルを、非標的核酸を含み、かつ/または、当該標的核酸を含まないサンプルから区別する。例えば、標的核酸のτonは、非標的核酸のτonよりも大きく、標的核酸のτoffは、非標的核酸のτoffよりも小さい。いくつかの実施形態では、ネガティブコントロールのτonおよびτoffと、サンプルのτonおよびτoffとを計測することで、サンプル中に標的核酸が存在するかしないかが示される。いくつかの実施形態では、例えば、コントロール(例えば、ポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロール)、および、標的核酸を含む疑いのあるサンプルについて、固体担体上に結像された複数のスポットのそれぞれの、複数のτonおよびτoff値が判定される。いくつかの実施形態では、例えば、コントロール(例えば、ポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロール)、および、標的核酸を含む疑いのあるサンプルについて、固体担体上に結像された複数の点のそれぞれの、平均τonおよび/または平均τoffが判定される。いくつかの実施形態では、結像されたすべてのスポットのτon対τoff(例えば、平均τonおよびτoff、時間平均τonおよびτoffなど)のプロットは、サンプル中に標的核酸が存在するかしないかを示す。
【0152】
<応用>
本技術は、核酸、例えば、一本鎖および二本鎖核酸の検出に用いられる。よって、本技術は、DNAの様々な形態(例えば、修飾塩基を含むDNA、例えば、メチル化DNA、非メチル化DNA)、および、RNA(例えば、lncRNA、miRNAなど)を検出し、例えば、共通プラットホーム上でマルチ核酸検出を行う。よって、本技術の例示的な応用として、例えば、マイクロRNA、RNA、変異型DNA対立遺伝子、野生型DNA対立遺伝子、および、遺伝子座特異的メチル化DNAの1つ以上を、すべてSiMREPSプラットホーム上で検知することが挙げられる。いくつかの実施形態では、これらの種類の核酸検出は、同じサンプルで行われる。
【0153】
例えば、本技術は、メチル化DNAの検知に用いられる。メチル化DNAは、健康および疾患の多数の状態の標識である。そうした標識の例として、特定のメチル化遺伝子座の存在に基づいて、大腸癌のリスクが高い患者を識別することが挙げられる。メチル化DNAは、大腸癌の早期検出、前癌性腺腫および異形成病変の診断テストの基礎を提供する。現在、特定の遺伝子座でのメチル化DNAの検出は、DNAの重亜硫酸ナトリウム処理によって行われる。該処理は、非メチル化シトシンを脱アミノ化してDNA中にウラシルを生成し、その後、メチル化DNA断片(例えば、重亜硫酸ナトリウムによる変換から保護される5-mCまたは5-hmC)、または、(シトシンのかわりにウラシルを含む、予想される変換配列にプライマーが結合するよう設計されている)非メチル化断片を選択的に増幅する別個のプライマーセットを用いるPCRを行う。別の方法は、重亜硫酸塩処理され、および/または、重亜硫酸塩処理されていないDNAの次世代シーケンシングをし、メチル化塩基を推測することである。
【0154】
重亜硫酸塩変換後にPCRまたは次世代シーケンシングをする方法は一般的に用いられるが、これらの方法には深刻な限界がある。驚くべきことに、重亜硫酸塩に基づく技術のいくつかのこうした限界のため、SiMREPS技術を用いてメチル化DNAを検出する本発明は好都合である。まず、重亜硫酸塩処理は、シトシンを脱アミノ化するのみならず、DNAを短い断片にランダムに断片化するため、特に配列長がとても短くなった場合にPCRプライマーを設計することは難しくなる。さらに、重亜硫酸塩変換後、シトシンの脱アミノ化を受けたDNAの領域が相補的でなくなり、したがって二本鎖でもなくなるため、PCRがいくぶんかより難しくなる。任意のPCRプライマーセットにより、一本鎖のみを増幅できるからである。一方、SiMREPS方法は、二本鎖核酸を一本鎖核酸に変換すること、および、核酸を短い断片に断片化することから、根本的な利点を得ている。
【0155】
いくつかの実施形態では、核酸修飾の存在または不存在(例えば、修飾塩基、ヌクレオチド類縁体など)を検出する。例えば、いくつかの実施形態では、遺伝子発現に影響する核酸のエピジェネティック修飾が検出される。いくつかの実施形態では、DNAのメチル化が検出される。いくつかの実施形態では、本技術は、ヌクレオチド類縁体、ヌクレオチド塩基、または、アデニン、チミン、グアノシン、シトシンおよびウラシル以外の塩基を含むヌクレオシドおよび/またはヌクレオチドの検知(例えば、その存在または不存在を識別する)に用いられる。例えば、いくつかの実施形態では、本技術は、ヌクレオチド、ヌクレオシド、および/または、塩基(例えば、5-メチルシトシン(5mC)、5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)、5-ホルミルシトシン(5fC)、5-カルボキシシトシン(5caC)、N(6)-メチルアデノシン(m(6)A)、プソイドウリジン(Ψ)、ジヒドロウリジン(D)、イノシン(I)、7-メチルグアノシン(m7G)、ヒポキサンチン、キサンチン、2,6-ジアミノプリンおよび6,8-ジアミノプリンを含むがこれらに限定されない)の検知、同定、および/または定量に用いられる。
【0156】
例示的な実施形態では、本技術は、重亜硫酸塩で処理されたサンプル、および、重亜硫酸塩で処理されていないサンプルを分析することを含むSiMREPSにより、メチル化DNAを検知することを含む。実施形態は、非メチル化シトシンからウラシルへの変換から予期される配列と、特定の遺伝子座におけるシトシンが(メチル化の結果)ウラシルに変換されない場合に予期される配列とを区別するSiMREPS問合せプローブを用いることを提供する。いくつかの実施形態では、サンプルチャンバで同時に両方の問合せプローブを提供するが、それぞれのプローブは異なる蛍光物質を含む。いくつかの実施形態では、両方の問合せプローブ(例えば、メチル化配列に結合する1つのプローブと、ウラシル変換された配列に結合する第2のプローブで、それぞれ異なる蛍光物質を有する)が存在するSiMREPS実験の画像化をしながら、重亜硫酸塩試薬をリアルタイムで提供する。このとき、変換に基づいて、ある色で明滅するDNA断片が別の色で明滅するように変化する。このような分析は、(現在のPCRまたは次世代シーケンシングに基づく方法で必要とされる)重亜硫酸塩処理された一定分量のサンプルと処理されていない一定分量のサンプルとを比べることよりも、測定上の高度な正確さおよび精度を有する。いくつかの実施形態では、本技術は、例えば、マイクロ流体力学および/またはマルチスペクトル画像化を用いる多重分析である。重硫酸塩修飾(bislfate modification)に加えて、本技術は、DNAまたはRNA上の追加の化学マーカーを、SiMREPSにより簡単に検出できる修飾に変換させる他の試薬を用いることを含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、本技術は、同一のプラットホーム上において、変異型DNA、メチル化DNAおよびマイクロRNAバイオマーカーの組み合わせを検出するのに用いられる。例えば、このような技術は、例えば便サンプルの分析によって、大腸癌および進行性腺腫を検出するのに用いられる。本技術は、変異型DNAを検出する(例えば、1,000,000個の野生型分子の背景の中で、1個の変異型分子を検出したり、例えば、野生型DNAの背景の中で、KRAS変異型DNAを検知したりする)。さらに、本技術は、3種類のマーカー(メチル化DNA、miRNA、および/または、変異型DNA)すべてを計測する技術も提供する。本技術は、緩衝液中の核酸を分析するのに用いられ、本技術は、便から抽出されたマトリックス中の核酸を分析するのに用いられる。平均的な便は、重量が200gで、ヒトDNAに相当する2倍体ゲノムを約1千万個含む。1:1,000,000の感度により、典型的な便全体から抽出されたDNAの中のわずか10個の変異型分子を検出することができる。これは、現在臨床で用いられているKRAS分析よりも10,000倍感度が高く、最も優れた研究レベルの方法よりも100倍感度が高い。例えば、Domagala et al. (2012) “KRAS mutation testing in colorectal cancer as an example of the pathologist's role in personalized targeted therapy: a practical approach” Pol J Pathol 63(3): 145-64; Gerecke et al. (2013) “Ultrasensitive detection of unknown colon cancer-initiating mutations using the example of the Adenomatous polyposis coli gene” Cancer Prev Res (Phila). 6(9): 898-907を参照のこと。この劇的な性能の進歩は、SiMREPS技術の動的フィンガープリント固有の、対立遺伝子識別の任意の特異性によりもたらされたものである。
【0158】
<癌のバイオマーカーの検出>
米国では、大腸内視鏡検査は大腸癌(CRC)の最も主要なスクリーニング方法であるが、該方法は、侵襲性があり、コストが高く、患者コンプライアンスが低く、さらに、合併症のリスクがある。例えば、便に基づく大腸癌スクリーニングなどの新しい診断は、進行性腺腫(AA)(これを取り除くことでCRCが防げる)の検知が低感度であるなどの限界がある。現在最も性能のよい、便に基づくテストは、便DNA(変異型DNAおよびメチル化)および潜血を分析するが、技術的に複雑で高価(500ドル/検査1回)であり、野生型DNAの高背景の中で数少ない変異型DNA対立遺伝子を検出する能力に限界があるという課題がある。
【0159】
本明細書に記載の検出技術は、低コストで迅速に便の中の数少ない変異型DNA対立遺伝子を測定する新技術である。当該技術は、すぐれた分析特異性を有し、1つのプラットホーム上で、潜血(例えば、潜血のマイクロRNAマーカーを用いる)およびメチル化DNAを同時に測定する。本技術は、現在の最先端技術と比べて10倍を上回るほど低いコストで、進行性腺腫の検知の感度を向上させる。
【0160】
本技術は、数少ない変異型DNA対立遺伝子の定量化を、現在の方法よりはるかに高い特異性で行い、AA検出の感度を著しく高める。いくつかの実施形態では、APC遺伝子にあるような、腺腫で定義されている変異が検出される。
【0161】
本技術は、多種類の便バイオマーカーを、すべて1つのプラットホーム上で測定する。いくつかの実施形態では、変異型DNAに加えて、プラットホーム上で検出されるマーカーは、マイクロRNA(例えば、米国特許出願第14/589,467号を参照のこと。参照によりその全文が本明細書に援用される)、便潜血マーカー(例えば、便潜血のマイクロRNAマーカー)、およびメチル化DNAを含む。
【0162】
<RNAの検出>
いくつかの実施形態では、検出、特徴づけ、定量、および/または、同定される核酸(例えば、標的核酸)は、RNA(例えば、lncRNA、例えば、約200ヌクレオチドより長い非タンパク質コードRNA)である。実施形態では、核酸(例えば、RNA、例えば、lncRNA)の二次構造が融解され、SiMREPS検出の問合せプローブが問合せ領域にアクセスすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、本技術は、補助的なPAMオリゴヌクレオチド(例えば、PAMmer)を用いることにより、RNAの中の二次構造標的を認識し融解させるdCas9/gRNAを用いる。いくつかの実施形態では、本技術は、補助的なPAMオリゴヌクレオチド(例えば、PAMmer)を用いることにより、RNAの中の二次構造標的を認識し融解させる2つのdCas9/gRNA複合体を用いる。
【0163】
いくつかの実施形態では、PAMが別のDNAオリゴヌクレオチド(「PAM提示オリゴヌクレオチド」または「PAMmer」)としてトランスに存在する場合、dCas9は、gRNA配列にマッチする一本鎖RNA標的に結合する。よって、いくつかの実施形態では、PAMmerにより、dCas9/gRNAが一本鎖RNA標的(例えば、lncRNA)に部位特異的に結合する。さらに、本技術では、PAMmerを用いて、dCas9を誘導して特定のRNA標的に結合させ、二次構造を融解させて、SiMREPS分析において、問合せプローブの結合に問合せ領域が使用可能となるようにする。例えば、O’Connell et al. 2014 “Programmable RNA recognition and cleavage by CRISPR/Cas9” Nature 516: 263-6を参照のこと。このように、実施形態では、dCas9、gRNA(例えば、dCas9/gRNA複合体)、およびPAMmerを含む組成を提供する。
【0164】
<マイクロRNAの検出>
いくつかの実施形態では、検出、特徴づけ、定量、および/または、同定される核酸(例えば、標的核酸)は、マイクロRNAである。マイクロRNA(miRNAまたはμRNA)は、遺伝子発現を調節する、長さ約21~23ヌクレオチドの一本鎖RNA分子である。miRNAは遺伝子でコードされる。該遺伝子のDNAからmiRNAが転写される。しかし、miRNAはタンパク質に翻訳されない(例えば、Carrington et al, 2003を参照のこと。当該文献は参照により本明細書に援用される)。miRNAをコードする遺伝子は、処理された成熟miRNA分子よりもかなり長い。例えば、米国特許出願第14/589,467号を参照のこと。当該文献は参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0165】
<ゲノム異常の検出>
いくつかの実施形態では、SiMREPS技術は、比較ゲノムのハイブリダイゼーション後に、無対領域の検知に基づき、DNAサンプルの中のゲノム異常(例えば、単純な点変異以外のゲノム異常)を同定および/または計測する。いくつかの実施形態では、SiMREPSは、サンプルの中のゲノム不安定性の全体的な程度を判定するのに用いられる。例えば、参照用の通常のDNAサンプルと比較して、欠失および挿入が存在することにより、ゲノムの不安定性が証明される。例示的な実施形態は、通常のDNA(例えば、肺癌などの固形腫瘍を有する患者の通常の血液細胞由来の野生型DNA)を提供し、この通常のDNAを、マッチした腫瘍DNA(または循環無細胞DNA)と混合し、当該DNAを断片化させ、それによって当該DNAを断片として存在させ、表面上に、おそらくは末端修飾(例えば、ビオチン化)または他の方法によって固定化する。大部分のDNAは、ハイブリダイズDNA断片を構成するが、欠失または挿入が存在する領域は、一本鎖が膨出する二本鎖として存在する。いくつかの実施形態では、効率的な検出のために、通常のDNAおよび腫瘍DNAを適切な比率で提供する。実施形態では、SiMREPSに基づく親和性試薬を提供し、該試薬はこれらのマッチしていない領域を検知するのに用いられ、当該マッチしていない領域を数えることで、ゲノム不安定性の尺度が提供される。当該尺度は、例えば、いくつかの実施形態では、癌のリスクのバイオマーカーとして用いられる。いくつかの実施形態では、本技術は、染色体異常の出生前スクリーニングに用いられる。いくつかの実施形態では、例えば、バランスのとれた染色体転写の識別などのために、親和性試薬は、一本鎖DNA結合タンパク質であり、(例えば、バランスの取れた染色体転座などの同定のために)核酸を切断しないように修飾されたホリディ構造リコンビナーゼである。
【0166】
いくつかの実施形態では、本技術は、例えば、マイクロサテライトが不安定な大腸癌患者のマイクロサテライト反復異常を検出するのに用いられる。よって、実施形態は、サンプルの中でマイクロサテライト反復が拡大したかどうかに応じて区別される動的結合特性を示す異なるマイクロサテライト遺伝子座に対応する、SiMREPSプローブの一団を提供する。いくつかの実施形態では、本技術は、拡大したマイクロサテライト反復配列が拡大していないマイクロサテライト反復配列にハイブリダイゼーションすることにより、無対断片が生成され、当該無対断片が、SiMREPSに基づく方法を用いて、DNAプローブまたは他の有効な親和性SiMREPSリーダー試薬を用いて、検出される、比較DNAハイブリダイゼーション方法を含む。
【0167】
<二機能性親和性試薬>
いくつかの実施形態では、本技術は、標的検体に結合し、SiMREPSリーダープローブを用いて数えることができる核酸を含む二機能性親和性試薬を組み込むことにより、SiMREPSでタンパク質および他の検体を検出することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、短いDNAオリゴヌクレオチドに結合した抗体を用いて、標的タンパク質検体がスライドの表面上に(例えば、単純に表面上で乾燥させ、あるいは、他の非特異的または特異的な捕獲方法で)固定化された場合に、当該抗体の当該標的タンパク質検体への結合を、共役DNAのSiMREPSに基づく読み取りで計測することを含む。これにより、多数の抗体が多重化され、様々な抗体に結合した異なるDNA配列「バーコード」により区別される。実施形態では、サンプルには、均等な細胞または細胞溶解液を含む様々な種類がある。親和性試薬は、DNAまたはRNA結合タンパク質、アプタマー、DNAバーコードに結合した抗体および抗体断片を含む。
【0168】
<非核酸SiMREPSプローブ>
実施形態は、核酸でないプローブを提供する。例えば、実施形態は、SiMREPSが安定的に処理できる標的検体に、結合的相互作用する抗体または他の親和性試薬を提供する。例えば、関連した一時的変動により、「明滅する」信号が提供され、いくつかの実施形態では、動的結合フィンガープリントが提供される。いくつかの実施形態では、非核酸問合せプローブを操作して、その結合を非操作プローブに比べて弱くし、例えば、結合および/または連結の熱力学的安定性を低くする。抗体に加えて、実施形態は、標的検体、および、タンパク質である問合せプローブを含み、例えば、結合する一方は親和性試薬であり、もう一方は計測される標的検体である。実施形態は、任意のリガンドに結合するアプタマー、糖化タンパク質に結合するレクチン、脂質に結合するタンパク質または他の分子などを用いる。本技術は、SiMREPSプラットホーム上の検出に適した一時的結合作用を有する任意の結合対(例えば、動的フィンガープリントを生成する結合対)を用いる。
【0169】
<分子内SiMREPSプロービング>
いくつかの実施形態では、本技術は、結合して分子内のプロービングメカニズムを提供する捕獲プローブおよび問合せプローブを提供する(例えば、図5aおよびbを参照のこと)。プローブは非対称であり、標的核酸が(例えば、熱力学安定性を有し、例えば、不可逆的に)捕獲配列に結合するときに、当該標的核酸は問合せプローブと一時的に結合する。問合せプローブの一時的な結合および解離により、ドナー蛍光物質の強度またはFRET(その反応速度は標的核酸の配列の影響を受ける)に時間依存性の変化が生じる。いくつかの実施形態では、アドレス鎖により、問合せ/捕獲複合体が表面に結合され、一時的結合運動を制御する剛性が生じ、多数の異なる問合せ/捕獲配列を、結像面の異なる領域(例えば、DNAマイクロアレイにおけるように)に固定化する手段が提供される。
【0170】
いくつかの実施形態では、分子内SiMREPSプロービングにより、取得がより速くなる。特に、結合が、標的核酸が捕獲プローブに結合した後の分子内のハイブリダイゼーション反応であるため、問合せプローブの結合が迅速である。さらに、いくつかの実施形態では、SiMREPS技術の他の実施形態に比べ、画像化する時間が短縮される。例えば、SiMREPS技術の他の実施形態で10分間に発生する結合および解離事象と同じ回数の結合および解離事象が、分子内SiMREPS実験のいくつかの実施形態では1~10秒に発生する。分子内SiMREPS技術により、空間的分離による実験の並列化ができるようになる。いくつかの実施形態では、分子内SiMREPS技術により、問合せプローブの濃度が低減され、効率的に検出することができる。分子内SiMREPS技術が提供するプラットホームは、いくつかの実施形態では、アドレス鎖によって指定された方法で結像面の異なる領域内に固定化された、多数の異なる捕獲/問合せプローブを含む。例えば、何千もの異なる配列を含む標準マイクロアレイチップを用いることができる。これらの配列は、SiMREPS捕獲/問合せプローブを固定化するアドレス鎖として機能することができ、1つのチップ上で、何千もの標的配列(マイクロRNA、lncRNA、一本鎖形態に変換されたDNA)のSiMREPS分析を可能にする。
【0171】
特に、いくつかの実施形態では、アドレス鎖はどの標的とも配列の点で関連がない。相互作用は、問合せおよび捕獲プローブを介して間接的に生じるからである。実際、アドレス鎖は、標的に関連する必要がない。さらに、実施形態では、問合せおよび捕獲プローブは、DNA配列以外の親和性試薬、例えば、本出願の他の部分で説明されたdCas9/gRNA複合体を含む。
【0172】
実施形態では、蛍光物質の励起源への露出を制御して、例えば分析前の光退色を減少または最小化させることを提供する。いくつかの実施形態では、動的サインは、例えば、結像面の間違った部分(結像面のアドレス領域の外側)に捕獲/問合せプローブを置くことによる偽陽性検出を同定し補正する補正メカニズムを提供する。実施形態では、問合せおよび捕獲プローブを、アドレス配列に結合する際に同一場所に存在する2つの非接触のプローブに分割する(例えば、図5bを参照)ことにより、偽陽性を最小化するまたは減少させる技術も提供する。
【0173】
<蛍光部分>
いくつかの実施形態では、核酸は、蛍光部分(例えば、蛍光原色素、あるいは、「蛍光物質」または「蛍石」とも呼ばれる)を含む。多種多様な蛍光部分が当技術分野で知られ、オリゴヌクレオチドにヌクレオチドを組み込む前に、蛍光部分を当該ヌクレオチドに結合させる方法、オリゴヌクレオチドの合成後に、当該オリゴヌクレオチドに蛍光部分を添加する方法も知られている。
【0174】
蛍光部分として用いられる化合物の例として、キサンテン、アントラセン、シアニン、ポルフィリンおよびクマリン色素が挙げられるが、これらに限定されない。本技術で用いられるキサンテン色素の例として、フルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)、5-または6-カルボキシ-4,7,2’,7’-テトラクロロフルオレセイン(TET)、5-または6-カルボキシ-4’5’2’4’5’7’ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5’または6’-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、5-カルボキシ-2’,4’,5’,7’-テトラクロロフルオレセイン(ZOE)、ロドール、ローダミン、テトラメチルローダミン(TAMRA)、4,7-ジクロロテトラメチルローダミン(DTAMRA)、ローダミンX(ROX)およびテキサスレッドが挙げられるが、これらに限定されない。本発明で用いられるシアニン色素の例として、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7およびCy7.5が挙げられるが、これらに限定されない。本技術で用いられる他の蛍光部分および/または色素として、エネルギー移動色素、合成色素、および蛍光信号を発する他の芳香族化合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、蛍光部分は量子ドットを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、蛍光部分は、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP))、GFPの修飾された誘導体(例えば、S65Tを含むGFP、(例えば、F64Lを含む)高感度GFP)、または、当技術分野で知られている他の蛍光部分、例えば、青色蛍光タンパク質(例えば、EBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、Cerulean、CyPet、mTurquoise2)および黄色蛍光タンパク質誘導体(例えば、YFP、Citrine、Venus、YPet)を含む。実施形態では、蛍光タンパク質は、1つ以上の問合せおよび/または捕獲プローブに共有結合または非共有結合されてよい。
【0176】
蛍光色素として、Cy5、ジクロロ「R110」、ジクロロ「R6G」、ジクロロ「TAMRA」、ジクロロ「ROX」等を含むd-ローダミンアクセプタ色素や、フルオレセイン、6-FAM、5-FAM等を含むフルオレセインドナー色素や、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、プロフラビン、pH7等を含むアクリジンや、2-メチルベンゾオキサゾール、エチルp-ジメチルアミノベンゾアート、フェノール、ピロール、ベンゼン、トルエン等を含む芳香族炭化水素や、オーラミンO、クリスタルバイオレット、クリスタルバイオレット、グリセロール、マラカイドグリーン等を含むアリールメチン色素や、7-メトキシクマリン-4-酢酸、クマリン1、クマリン30、クマリン314、クマリン343、クマリン6等を含むクマリン色素や、1,1’-ジエチル-2,2’-シアニンヨウ化物、クリプトシアニン、インドカルボシアニン(C3)色素、インドジカルボシアニン(C5)色素、インドトリカルボシアニン(C7)色素、オキサカルボシアニン(C3)色素、オキサジカルボシアニン(C5)色素、オキサトリカルボシアニン(C7)色素、ピナシアノールヨウ化物、すべての染色液(Stains all)、チアカルボシアニン(C3)色素、エタノール、チアカルボシアニン(C3)色素、n-プロパノール、チアジカルボシアニン(C5)色素、チアトリカルボシアニン(C7)色素等を含むシアニン色素や、N,N’-ジフルオロボリル-1,9-ジメチル-5-(4-ヨードフェニル)-ジピリン、N,N’-ジフルオロボリル-1,9-ジメチル-5-[(4-(2-トリメチルシリルエチニル)、N,N’-ジフルオロボリル-1,9-ジメチル-5-フェニルジピリン等を含むジピリン色素や、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)、アセトニトリル、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)、メタノール、4-ジメチルアミノ-4’-ニトロスチルベン、メロシアニン540等を含むメロシアニンや、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ジメチルスルホキシド、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾ-ル、ダンシルグリジン、ダンシルグリジン、ジオキサン、Hoechst33258、DMF、Hoechst33258、ルシファーイエローCH、ピロキシカム、キニーネ硫酸塩、キニーネ硫酸塩、スクアリリウム色素III等を含むその他の色素や、2,5-ジフェニルオキサゾール(PPO)、ビフェニル、POPOP、p-クアテルフェニル、p-テルフェニル等を含むオリゴフェニレンや、クレシルバイオレット過塩素酸塩、ナイルブルー、メタノール、ナイルレッド、エタノール、オキサジン1、オキサジン170等を含むオキサジンや、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、アントラセン、ナフタリン、ペリレン、ピレン等を含む多環芳香族炭化水素や、1,2-ジフェニルアセチレン、1,4-ジフェニルブタジエン、1,4-ジフェニルブタジイン、1,6-ジフェニルヘキサトリエン、β-カロチン、スチルベン等を含むポリエン/ポリインや、アントラキノン、アゾベンゼン、ベンゾキノン、フェロセン、リボフラビン、トリス(2,2’-ビピリジルルテニウム(II)、テトラピロール、ビリルビン、クロロフィルa、ジエチルエーテル、クロロフィルa、メタノール、クロロフィルb、ジプロトン化テトラフェニルポルフィリン、ヘマチン、マグネシウムオクタエチルポルフィリン、マグネシウムオクタエチルポルフィリン(MgOEP)、マグネシウムフタロシアニン(MgPc)、PrOH、マグネシウムフタロシアニン(MgPc)、ピリジン、マグネシウムテトラメシチルポルフィリン(MgTMP)、マグネシウムテトラフェニルポルフィリン(MgTPP)、オクタルエチルポルフィリン、フタロシアニン(Pc)、ポルフィン、ROX、TAMRA、テトラ-t-ブチルアザポルフィン、テトラ-t-ブチルナフタロシアニン、テトラキス(2,6-ジクロロフェニル)ポルフィリン、テトラキス(o-アミノフェニル)ポルフィリン、テトラメシチルポルフィリン(TMP)、テトラフェニルポルフィリン(TPP)、ビタミンB12、亜鉛オクタエチルポルフィリン(ZnOEP)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、ピリジン、亜鉛テトラメシチルポルフィリン(ZnTMP)、亜鉛テトラメシチルポルフィリンラジカルカチオン、亜鉛テトラフェニルポルフィリン(ZnTPP)等を含む酸化還元活性発色団や、エオシンY、フルオレセイン、基本エタノール、フルオレセイン、エタノール、ローダミン123、ローダミン6G、ローダミンB、ローズベンガル、スルホローダミン101等を含むキサンテンや、これらの混合物、またはこれらの組み合わせ、またはこれらの合成誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0177】
本技術の特定の実施形態に適切ないくつかの種類の蛍光原色素および特定の化合物が知られている。フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、エオシンおよびテキサスレッドなどのキサンテン誘導体や、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニンおよびメロシアニンなどのシアニン誘導体や、ナフタリン誘導体(ダンシルおよびプロダン誘導体)や、クマリン誘導体や、ピリジルオキサゾール、ニトロベンズオキサジアゾールおよびベンズオキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体や、カスケードブルーなどのピレン誘導体や、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレットおよびオキサジン170などのオキサジン誘導体や、プロフラビン、アクリジンオレンジおよびアクリジンイエローなどのアクリジン誘導体や、オーラミン、クリスタルバイオレットおよびマラカイドグリーンなどのアリールメチン誘導体や、ポルフィン、フタロシアニン(phtalocyanine)、ビリルビンなどのテトラピロール誘導体である。いくつかの実施形態では、蛍光部分色素は、キサンテン、フルオレセイン、ローダミン、BODIPY、シアニン、クマリン、ピレン、フタロシアニン、フィコビリタンパク質、ALEXA FLUOR(登録商標)350、ALEXA FLUOR(登録商標)405、ALEXA FLUOR(登録商標)430、ALEXA FLUOR(登録商標)488、ALEXA FLUOR(登録商標)514、ALEXA FLUOR(登録商標)532、ALEXA FLUOR(登録商標)546、ALEXA FLUOR(登録商標)555、ALEXA FLUOR(登録商標)568、ALEXA FLUOR(登録商標)568、ALEXA FLUOR(登録商標)594、ALEXA FLUOR(登録商標)610、ALEXA FLUOR(登録商標)633、ALEXA FLUOR(登録商標)647、ALEXA FLUOR(登録商標)660、ALEXA FLUOR(登録商標)680、ALEXA FLUOR(登録商標)700、ALEXA FLUOR(登録商標)750、または、スクアライン色素である。いくつかの実施形態では、標識は、蛍光検知可能な部分であり、例えば、Haugland (September 2005) MOLECULAR PROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH CHEMICALS (10th ed.)に記載されている。当該文献は、参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0178】
いくつかの実施形態では、標識(例えば、蛍光検知可能な標識)は、ATTO-TEC GmbH (Am Eichenhang 50, 57076 Siegen, Germany)から入手可能であり、例えば、米国特許出願公報第20110223677号、第20110190486号、第20110172420号、第20060179585号、および第20030003486号、および米国特許第7,935,822号に記載されている。これらの文献はすべて、参照により本明細書に援用される(例えば、ATTO 390、ATTO 425、ATTO 465、ATTO 488、ATTO 495、ATTO 514、ATTO 520、ATTO 532、ATTO Rho6G、ATTO 542、ATTO 550、ATTO 565、ATTO Rho3B、ATTO Rho11、ATTO Rho12、ATTO Thio12、ATTO Rho101、ATTO 590、ATTO 594、ATTO Rho13、ATTO 610、ATTO 620、ATTO Rho14、ATTO 633、ATTO 647、ATTO 647N、ATTO 655、ATTO Oxa12、ATTO 665、ATTO 680、ATTO 700、ATTO 725、ATTO 740)。
【0179】
発光最大値がこれらの範囲外である色素も使用できることは、当業者ならわかるであろう。場合によっては、500nm~700nm範囲の色素は、可視スペクトル内であり、既存の光電子増倍管により検出できるという利点がある。いくつかの実施形態では、使用可能な色素の範囲が広いため、検出範囲全域にわたる発光波長を有する色素セットを選択することができる。多数の色素を区別することのできる検出システムが当技術分野で知られている。
【0180】
<サンプル>
いくつかの実施形態では、核酸(例えば、DNAまたはRNA)は、様々な他の成分(例えば、タンパク質、脂質、非テンプレート核酸など)を含む生体サンプルから単離される。核酸テンプレート分子は、任意の物質(例えば、(生または死)細胞物質、細胞外物質、ウイルス物質、環境サンプル(例えば、メタゲノムサンプル)、合成物質(例えば、PCRまたはその他の増幅技術により提供されるアンプリコン))から得られ、動物、植物、細菌、古細菌、真菌または任意の他の生物から得られる。本技術で使用される生体サンプルは、ウイルス粒子またはその調製物を含む。核酸分子は、生物、または、生物から得られた生体サンプル、例えば、血液、尿、脳脊髄液、精液、唾液、痰、便、髪、汗、涙、皮膚、および組織から直接に得られる。例示的なサンプルとして、全血、リンパ液、血清、血漿、口腔細胞、汗、涙、唾液、痰、髪、皮膚、生検、脳脊髄液(CSF)、羊水、精液、膣分泌物、漿液、滑液、心膜液、胸膜液、濾出液、滲出液、嚢胞液、胆汁、尿、胃液、腸液、便サンプルおよび綿棒、(例えば、骨髄、細針などの)吸引物、(例えば、口腔の、鼻咽腔の、気管支の、気管支肺胞の、目の、直腸の、腸の、膣の、表皮などの)洗浄液、および/または他の標本が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
本技術では、核酸の出所として任意の組織または体液標本を用いてよく、法医学標本、アーカイブされた標本、保存標本、および/または、長時間保存された標本が挙げられ、例えば、新鮮凍結、メタノール/酢酸固定またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本およびサンプルが挙げられる。核酸テンプレート分子は、初代細胞培養または細胞株などの培養細胞から単離されてもよい。テンプレート核酸が得られる細胞または組織は、ウイルスまたは他の細胞内病原体に感染してもよい。サンプルは、生体標本、cDNAライブラリー、ウイルスまたはゲノムDNAから抽出されたトータルRNAであってもよい。サンプルは、非細胞源から単離されたDNA、例えば、冷凍庫で保存された増幅/単離DNAであってもよい。
【0182】
核酸分子は、例えば、Maniatis, et al. (1982) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載された様々な手法(例えば、pp. 280-281を参照のこと)により、例えば生体サンプルから抽出して得ることができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、本技術は、核酸のサイズを選択して、例えば、非常に短い断片または非常に長い断片を取り除く。
【0184】
いくつかの実施形態では、本技術は、その場で(in situで)核酸を同定するために用いられる。特に、本技術の実施形態は、組織、細胞などから核酸を抽出せずに、(例えば、組織、細胞などの透過処理後に)組織、細胞などの中で直接に核酸を同定する。in situでの検出に関連する本技術のいくつかの実施形態では、本技術は、インビトロ、エクスビボ、および/または、インビトロで適用される。いくつかの実施形態では、サンプルは、未精製のサンプルであり、最小限に処理された細胞溶解液または生体液溶解液である。いくつかの実施形態では、核酸は、核酸精製せずに、未精製の溶解液の中で検出される。
【0185】
<キット>
いくつかの実施形態は、核酸を検出するためのキットに関する。例えば、いくつかの実施形態では、キットは、固体担体(例えば、顕微鏡スライド、ビーズ、カバースリップ、アビジン(例えば、ストレプトアビジン)‐共役型顕微鏡スライドまたはカバースリップ、ゼロモード導波路アレイ等を含む固体担体)、dCas9/gRNA(例えば、ビオチン化dCas9を含む)、および、本明細書に記載の問合せプローブを含む。いくつかの実施形態は、さらに非ビオチン化dCas9/gRNAを提供する。
【0186】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の問合せプローブ結合事象および滞留時間を収集し分析するための、コンピュータで読み取り可能な様式である、または、インターネットからダウンロードできるソフトウェアをさらに提供する。いくつかの実施形態では、多重検出のキットは2つ以上の問合せプローブを有し、各問合せプローブは、1つ以上の標的核酸の異なる問合せ領域に相補的な配列を含み、かつ、各問合せプローブは、異なる蛍光部分を含む。いくつかの実施形態では、問合せプローブは、1つ以上の核酸標的の問合せ領域に相補的である。キットのいくつかの実施形態は、1つ以上のポジティブコントロールおよび/または1つ以上のネガティブコントロールを含む。いくつかの実施形態は、既知の濃度を有する一連のコントロールを含み、例えば、それによって、標準濃度曲線を作る。
【0187】
<システム>
本技術のいくつかの実施形態は、標的核酸を検出し定量化するためのシステムを提供する。本技術に係るシステムは、例えば、固体担体(例えば、顕微鏡スライド、カバースリップ、アビジン(例えば、ストレプトアビジン)-共役型顕微鏡スライドまたはカバースリップ、ゼロモード導波路アレイ等を含む固体担体)、dCas9/gRNA(例えば、ビオチン化dCas9を含む)、および、本明細書に記載の問合せプローブを含む。いくつかの実施形態では、さらに非ビオチン化dCas9/gRNAを提供する。
【0188】
いくつかの実施形態は、結合した問合せプローブを励起する照明構成(例えば、プリズム型全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡、対物型TIRF顕微鏡、近TIRFまたはHiLo顕微鏡、共焦点レーザー走査顕微鏡、ゼロモード導波路、および/または、照明を表面付近の空間の小さな領域に制限しつつ、スライドまたはカバースリップの広い領域(>100μm)を並列に監視することができる照明構成)を含む蛍光顕微鏡をさらに含む。いくつかの実施形態は、蛍光検出器、例えば、インテンシファイア電荷結合素子(ICCD)、電子倍増電荷結合素子(EM-CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、光電子増倍管(PMT)、アバランシェフォトダイオード(APD)を含む検出器、および/または、1つの発色団から蛍光発光を検知することができる他の検出器を含む。いくつかの実施形態は、コンピュータ、および、コンピュータが実行する命令を符号化するソフトウェアを含む。
【0189】
いくつかの実施形態は、レンズ、ミラー、ダイクロイックミラー、光学フィルタなどの光学系を含み、例えば、それによって、特定の範囲の波長または複数の範囲の波長内で選択的に蛍光を検知する。
【0190】
例えば、いくつかの実施形態では、コンピュータに基づく分析ソフトウェアを用いて、検出分析により生成された生データ(例えば、1つ以上の核酸(例えば、1つ以上のバイオマーカー)の存在、不存在、または、量)を、臨床医のための予測値データに翻訳する。臨床医は、任意の適切な手段で予測データにアクセスできる。
【0191】
例えば、いくつかの実施形態は、本技術の実施形態を実施できるコンピュータシステムを含む。様々な実施形態において、コンピュータシステムは、バスまたは他の情報伝達用通信メカニズム、および、バスに結合された情報処理用プロセッサを含む。様々な実施形態において、コンピュータシステムは、バスに結合されたメモリ(ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶装置であってもよい)と、プロセッサにより実行される命令とを含む。プロセッサにより実行される命令が実行されている間に、メモリも用いられ、一時変数または他の中間情報を記憶する。様々な実施形態において、コンピュータシステムは、読み出し専用メモリ(ROM)、または、バスに結合されて静的情報およびプロセッサへの命令を記憶する他の静的記憶装置をさらに含むことができる。磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶装置は、バスに結合され、情報および命令を記憶する。
【0192】
様々な実施形態において、コンピュータユーザへ情報を表示するために、コンピュータシステムは、バスを介して、ブラウン管(CRT)または液晶表示装置(LCD)などのディスプレイに結合される。英数字および他のキーを含む入力素子は、バスに結合され、プロセッサへ情報およびコマンドの選択を伝達することができる。別の種類のユーザ入力素子は、方向情報およびコマンドの選択をプロセッサに伝達し、ディスプレイ上のカーソルの動作を制御する、マウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御である。この入力素子は、典型的には、第1軸(例えば、x)および第2軸(例えば、y)の2つの軸に2つの自由度を有し、これにより、素子が平面上の位置を指定することができる。
【0193】
コンピュータシステムは、本技術の実施形態を実行することができる。本技術のある実施と一致するように、プロセッサがメモリに含まれる1つ以上の命令の1つ以上の配列を実行することに応答して、コンピュータシステムは、結果を提供することができる。このような命令は、コンピュータで読み取り可能な記憶装置などの別の媒体から、メモリに読み込まれることができる。メモリに含まれている命令の配列が実行されたことにより、プロセッサは、本明細書に記載の方法を実行する。あるいは、本発明の教示を実施するために、プログラムがハードウェアに組み込まれている回路を、ソフトウェア命令の代わりに用いる、または、ソフトウェア命令と併用することができる。このように、本技術の実施は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の特定の組み合わせに限定されない。
【0194】
本明細書で使用される場合、用語「コンピュータで読み取り可能な媒体」は、プロセッサに命令を提供して実行させることに参加する任意の媒体を指す。このような媒体は様々な形態を取ることができ、不揮発性媒体、揮発性媒体および伝送媒体が挙げられるが、これらに限定されない。不揮発性媒体の例として、記憶装置のような光または磁気ディスクが挙げられるが、これらに限定されない。揮発性媒体の例として、動的メモリが挙げられるが、これらに限定されない。伝送媒体の例として、同軸ケーブル、銅線、および、光ファイバー(バスを含むワイヤを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
コンピュータで読み取り可能な媒体の一般の形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープまたは任意の他の磁気媒体、CD-ROM、任意の他の光媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROMおよびEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、または、コンピュータが読み取り可能な任意の他の有形媒体を含む。
【0196】
様々な形態のコンピュータで読み取り可能な媒体が、1つ以上の命令の1つ以上の配列をプロセッサへ運んで実行させることに関与できる。例えば、命令は最初に遠隔コンピュータの磁気ディスクへ運ばれる。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリにロードし、ネットワーク接続(例えば、LAN、WAN、インターネット、電話線)を介して命令を送る。ローカルコンピュータシステムは、データを受け入れ、それをバスに伝えることができる。バスは、データをメモリへ運び、プロセッサはメモリから命令を取得し実行することができる。メモリに受け入れられた命令は、プロセッサにより実行される前に、または、実行された後に、任意で記憶装置に記憶してよい。
【0197】
様々な実施形態によれば、プロセッサにより実行されて方法を実施する命令は、コンピュータで読み取り可能な媒体に記憶される。コンピュータで読み取り可能な媒体は、デジタル情報を記憶する装置であってもよい。例えば、コンピュータで読み取り可能な媒体は、当技術分野で知られている、ソフトウェアを記憶するための、CDによる読み出し専用メモリ(CD-ROM)を含む。コンピュータで読み取り可能な媒体は、実行されるよう構成された命令を実行するのに適したプロセッサによってアクセスされる。
【0198】
このようなコンピュータシステムによれば、本明細書で提供される本技術のいくつかの実施形態は、データ(例えば、核酸の存在、不存在、濃度)を収集、記憶、および/または、分析する機能をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態は、例えば、命令を記憶して実行し、蛍光、画像データを分析し、データを用いる計算を実行し、データを変換し、データを記憶するために、プロセッサ、メモリ、および/または、データベースを含むシステムを意図する。いくつかの実施形態では、アルゴリズムにより、データに統計モデル(例えば、ポアソンモデルまたは隠れマルコフモデル)が適用される。
【0199】
多くの診断は、1つ以上の核酸(例えば、核酸バイオマーカー)の存在またはヌクレオチド配列を判定することを含む。このように、いくつかの実施形態では、多数の核酸の存在、不存在、濃度、量または配列特性を表す変数を含む方程式は、核酸の存在または特性を診断または評価するために用いられる値を生成する。したがって、いくつかの実施形態では、該値は、デバイスによって、例えば、結果に関連する表示器(例えば、LED、ディスプレイ上のアイコン、音等)などによって、提示される。いくつかの実施形態では、デバイスは、前記値を記憶して伝え、または、追加の計算のために前記値を使用する。いくつかの実施形態では、方程式は、ゲノムDNA、マイクロRNA、変異型遺伝子バイオマーカー、または、染色体変異の中の1つ以上のメチル化遺伝子座の存在、不存在、濃度、量または配列特性を表す変数を含む。
【0200】
このように、いくつかの実施形態では、本技術のさらなる利点は、遺伝学または分子生物学の訓練を受けた可能性が少ない臨床医が、生のデータを理解する必要がないということである。データは、その最も有用な形態で臨床医に直接に提示される。臨床医は、その後、該情報を利用して、対象の治療を最適化することができる。本発明は、分析を行う実験室、情報提供者、医療関係者、および/または、対象へ/から情報を受け取り、処理し、伝えることができる任意の方法を意図する。例えば、本技術のいくつかの実施形態では、サンプルが対象から得られると、世界の任意の地域(例えば、対象がいる国または情報が最終的に使用される国と異なる国)に位置する、プロファイリングサービス(例えば、医療施設の臨床検査室、ゲノムプロファイリング会社など)に送信され、生のデータを生成する。サンプルが組織または他の生体サンプルを含む場合、対象は、医療センターを訪問し、そこでサンプルを採取してもらいプロファイリングセンターに送ってもらってもよく、あるいは、対象自らがサンプルを収集し直接プロファイリングセンターに送ってもよい。サンプルが以前に判定された生体情報を含む場合、該情報は、対象により直接にプロファイリングサービスに送られてもよい(例えば、該情報を含む情報カードが、コンピュータによりスキャンされ、電子通信システムによりデータがプロファイリングセンターのコンピュータに伝えられてもよい)。プロファイリングサービスは、サンプルを受け取った後、サンプルを処理し、対象に望まれる診断情報また予後の情報に特有のプロファイルを作成する。プロファイルデータは、その後、担当臨床医の解釈に適切な様式で用意される。例えば、用意された様式は、生の発現データを提供するのではなく、対象に対する診断またはリスク評価を、特定の治療の選択肢の推奨とともに示してよい。該データは、任意の適切な方法により、臨床医に表示されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、プロファイリングサービスは、臨床医のために(例えば、治療の地点で)印刷可能な、または、コンピュータモニタ上で臨床医に表示可能な報告を生成する。いくつかの実施形態では、該情報はまず治療の地点または地域施設で分析される。生のデータは、その後、中央処理施設に送られ、さらに分析され、および/または、生のデータが臨床医または対象に有用な情報に変換される。中央処理施設は、プライバシー(すべてのデータは、統一されたセキュリティプロトコルで中央施設に保存される)、速さ、および、データ分析の均一性の面でメリットがある。中央処理施設は、その後、対象の治療後のデータの処理を制御することができる。例えば、中央施設は、電子通信システムを使用して、データを臨床医、対象、または、研究者に提供できる。いくつかの実施形態では、対象は、電子通信システムを用いて、データにアクセスできる。対象は、結果に基づいて、さらなる介入またはカウンセリングを選択することができる。いくつかの実施形態では、データは研究目的に使用される。例えば、データを用いて、病気に関連した特定の条件の有用な指標としてのマーカーの包含または除外をさらに最適化してよい。
【0201】
上記の明細書で言及されたすべての刊行物および特許は、参照によりその全文が本明細書であらゆる目的のために援用される。本技術の記載された組成、方法および用途の様々な変更および変化は、本技術の上記技術範囲および精神から逸脱することなく、当業者にとって明らかであろう。本技術は、特定の例示的な実施形態に関連して記載されたが、本発明はこれらの特定の実施形態に不当に限定されないことを理解されたい。実際、本発明を実施するための上記方法に対する様々な変更が以下の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図しているのは、当業者にとって明らかである。
【0202】
本発明は、以下のように構成することも可能である。
[1]二本鎖標的核酸の検知可能なフィンガープリントを提示するための複合体であって、
a)第1領域およびそれに隣接する第2領域を有する二本鎖標的核酸と、
b)前記第1領域と相互に作用して熱力学的に安定した複合体を形成し、前記第2領域を一本鎖形態とする固定化された融解要素と、
c)前記第2領域と繰り返し結合して、前記二本鎖標的核酸と関連した検知可能なフィンガープリントを提供する問合せプローブと、を含む、複合体。
[2]前記融解要素はdCas9を含む、[1]に記載の複合体。
[3]前記融解要素は、前記第1領域にハイブリダイズしたgRNAを含むdCas9/gRNA複合体を含む、[1]に記載の複合体。
[4]前記融解要素はPAMmerを含む、[1]に記載の複合体。
[5]前記問合せプローブは、0.1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または0.1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返しハイブリダイズする蛍光標識化核酸である、[1]に記載の複合体。
[6]前記dCas9は基材に固定化されている、[2]に記載の複合体。
[7]前記フィンガープリントはパターン認識分析によって検知可能である、[1]に記載の複合体。
[8]前記標的核酸の前記第2領域に隣接する前記標的核酸の第3領域と相互に作用する第2融解要素をさらに含む、[1]に記載の複合体。
[9]前記標的核酸は、変異、単一ヌクレオチド多型、または修飾塩基を有する、[1]に記載の複合体。
[10]前記第1融解要素および前記第2融解要素は、約5から15ヌクレオチド離れて、前記標的核酸に結合している、[8]に記載の複合体。
[11]サンプル中の二本鎖標的核酸の検知可能なフィンガープリントを提示する方法であって、
a)二本鎖標的核酸を固体担体の別々の領域に固定化するステップであって、前記二本鎖標的核酸は、第1領域およびそれに隣接する第2領域を有し、前記固体担体の前記別々の領域は前記第1領域と相互に作用する固定化された融解要素を含む、ステップと、
b)前記第2領域に繰り返し結合する問合せプローブを提示して、検知可能なフィンガープリントを提示するステップと、
c)前記検知可能なフィンガープリントを前記二本鎖核酸と関連させて、前記二本鎖核酸を特定するステップと、を含む、方法。
[12]パターン認識を用いてデータを分析し、前記二本鎖核酸の前記検知可能なフィンガープリントを生成または同定する、[11]に記載の方法。
[13]前記融解要素はdCas9を含む、[11]に記載の方法。
[14]第2dCas9/gRNA複合体を提供するステップをさらに含み、当該第2dCas9/gRNA複合体は、前記標的核酸の前記第2領域に隣接する前記標的核酸の第3領域に相補的なgRNAを含む、[11]に記載の方法。
[15]前記融解要素が前記第2領域を一本鎖形態にするのに十分な条件を提供するステップを含む、[11]に記載の方法。
[16]前記検知可能に標識された問合せプローブが前記標的核酸の前記第2領域に繰り返し結合するのを検知するステップを含み、運動速度定数koffは1min-1より大きく、かつ/または運動速度定数konは1min-1より大きい、[11]に記載の方法。
[17]前記サンプル中の前記二本鎖標的核酸の量または濃度を、前記検知可能なフィンガープリントから計算するステップをさらに含む、[16]に記載の方法。
[18]二本鎖核酸を検知するためのシステムであって、
固定化された融解要素を含む固体担体と、
前記二本鎖核酸に繰り返し結合する検知可能に標識された問合せプローブと、
蛍光検知器と、
問合せプローブの結合データをパターン認識分析するよう構成されたソフトウェア要素と、を備える、システム。
[19]対象が癌にかかっている、あるいは癌にかかるリスクがあるという予測値を計算する方法であって、
マイクロRNAバイオマーカーの存在を判定するステップ、変異の存在を判定するステップ、および/またはゲノムDNA中の修飾塩基の存在を判定するステップのうち一つまたは複数を含む、方法。
[20]前記予測値は、前記マイクロRNAバイオマーカーの存在、前記変異の存在、および/または前記ゲノムDNA中の修飾塩基の存在のうち1つ又は複数と関連する変数から計算される値である、[19]の方法。
[21]標的核酸を検知するための複合体であって、
1)第1領域およびそれに隣接する第2領域を有する標的核酸と、
2)前記第1領域とハイブリダイズした検知可能に標識された捕獲プローブと、
3)前記捕獲プローブの標識と親和性の消光剤または蛍光受容体で標識された問合せプローブと、を含み、
前記問合せプローブは、0.1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または0.1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返しハイブリダイズする、複合体。
[22]二本鎖標的核酸の検知可能なフィンガープリントを提示するためのシステムであって、
a)前記二本鎖標的核酸の第1領域と相互に作用して、熱力学的に安定した複合体を形成し、前記二本鎖標的核酸の第2領域を一本鎖形態にすることができる、固定化された融解要素と、
b)前記第2領域と繰り返し結合して、前記二本鎖標的核酸と関連する検知可能なフィンガープリントを提示する問合せプローブと、を備える、システム。
[23]前記融解要素はdCas9を含む、[22]に記載のシステム。
[24]前記融解要素は、前記第1領域に相補的なgRNAを含むdCas9/gRNA複合体を含む、[22]に記載のシステム。
[25]前記融解要素はPAMmerを含む、[22]に記載のシステム。
[26]前記問合せプローブは、0.1min-1より大きな運動速度定数koffおよび/または0.1min-1より大きな運動速度定数konで前記第2領域に繰り返しハイブリダイズする蛍光標識化核酸である、[22]に記載のシステム。
[27]前記dCas9は基材に固定化されている、[23]に記載のシステム。
[28]前記フィンガープリントはパターン認識分析によって検知可能である、[22]に記載のシステム。
[29]前記標的核酸の前記第2領域に隣接する前記標的核酸の第3領域と相互に作用する第2融解要素をさらに含む、[22]に記載のシステム。
[30]前記標的核酸は、変異、単一ヌクレオチド多型、または修飾塩基を有する、[22]に記載のシステム。
[31]前記第1融解要素および前記第2融解要素は、約5から15ヌクレオチド離れて、前記標的核酸に結合している、[29]に記載のシステム。
[32]蛍光検知器をさらに備える、[22]に記載のシステム。
[33]問合せプローブの結合データをパターン認識分析するよう構成されたソフトウェア要素をさらに備える、[22]に記載のシステム。
[34]前記サンプル中の前記二本鎖標的核酸の量または濃度を、前記検知可能なフィンガープリントから計算するよう構成されたソフトウェア要素をさらに備える、[22]に記載のシステム。
[35]前記標的核酸の存在、不存在、濃度、量、または配列特性に関する結果を提示するための指示器またはディスプレイをさらに備える、[22]に記載のシステム。
[36]標的核酸の存在、不存在、濃度、量、または配列特性に関する結果を提示するためのキットであって、固体担体、dCas9/gRNA、および問合せプローブを備える、キット。
[37]問合せプローブの結合事象および/または滞留時間を収集し分析する、コンピュータで読み取り可能なフォーマットのソフトウェアをさらに備える、[36]に記載のキット。
[38]1つまたは複数のポジティブコントロール、および/または、一つまたは複数のネガティブコントロールをさらに備える、[36]に記載のキット。
[39]前記固体担体は、顕微鏡スライド、ビーズ、またはカバースリップを含む、[36]に記載のキット。
[40]前記固体担体は、アビジンまたはストレプトアビジンを含む、[36]に記載のキット。
[41]前記固体担体は、ゼロモード導波路アレイを含む、[36]に記載のキット。
[42]二本鎖標的核酸の検知可能なフィンガープリントを提示するためのシステムの使用であって、前記システムは、
a)前記二本鎖標的核酸の第1領域と相互に作用して、熱力学的に安定した複合体を形成し、前記二本鎖標的核酸の第2領域を一本鎖形態にすることができる、固定化された融解要素と、
b)前記第2領域と繰り返し結合して、前記二本鎖標的核酸と関連する検知可能なフィンガープリントを提示する問合せプローブと、を備える、使用。
[43]サンプル中の二本鎖標的核酸の検知可能なフィンガープリントを提示する方法の使用であって、前記方法は、
a)二本鎖標的核酸を固体担体の別々の領域に固定化するステップであって、前記二本鎖標的核酸は、第1領域およびそれに隣接する第2領域を有し、前記固体担体の前記別々の領域は前記第1領域と相互に作用する固定化された融解要素を含む、ステップと、
b)前記第2領域に繰り返し結合する問合せプローブを提示して、検知可能なフィンガープリントを提示するステップと、
c)前記検知可能なフィンガープリントを前記二本鎖核酸と関連させて、前記二本鎖核酸を特定するステップと、を含む、使用。
[44]サンプル中の二本鎖標的核酸の検知可能なフィンガープリントを提示するための複合体の使用であって、前記複合体は、
a)第1領域およびそれに隣接する第2領域を有する二本鎖標的核酸と、
b)前記第1領域と相互に作用して熱力学的に安定した複合体を形成し、前記第2領域を一本鎖形態とする固定化された融解要素と、
c)前記第2領域と繰り返し結合して、前記二本鎖標的核酸と関連した検知可能なフィンガープリントを提供する問合せプローブと、を含む、使用。
[45]標的核酸の存在、不存在、濃度、量、または配列特性に関する結果を提示するためのキットの使用であって、前記キットは、固体担体、dCas9/gRNA、および問合せプローブを備える、使用。
[46]以下の方法に従って作られたサンプル中の二本鎖標的核酸のフィンガープリントを含むデータ構造であって、当該方法は、
a)二本鎖標的核酸を固体担体の別々の領域に固定化するステップであって、前記二本鎖標的核酸は、第1領域およびそれに隣接する第2領域を有し、前記固体担体の前記別々の領域は前記第1領域と相互に作用する固定化された融解要素を含む、ステップと、
b)前記第2領域に繰り返し結合する問合せプローブを提示して、検知可能なフィンガープリントを提示するステップと、
c)前記検知可能なフィンガープリントを前記二本鎖核酸と関連させて、前記二本鎖核酸を特定するステップと、を含む、データ構造。
[47]以下のシステムを用いて作られたサンプル中の二本鎖標的核酸のフィンガープリントを含むデータ構造であって、当該システムは、
a)前記二本鎖標的核酸の第1領域と相互に作用して、熱力学的に安定した複合体を形成し、前記二本鎖標的核酸の第2領域を一本鎖形態にすることができる、固定化された融解要素と、
b)前記第2領域と繰り返し結合して、前記二本鎖標的核酸と関連する検知可能なフィンガープリントを提示する問合せプローブと、を備える、データ構造。
[48]以下の複合体を用いて作られたサンプル中の二本鎖標的核酸のフィンガープリントを含むデータ構造であって、当該複合体は、
a)第1領域およびそれに隣接する第2領域を有する二本鎖標的核酸と、
b)前記第1領域と相互に作用して熱力学的に安定した複合体を形成し、前記第2領域を一本鎖形態とする固定化された融解要素と、を含む、データ構造。
【図面の簡単な説明】
【0203】
図1a図1aは、本明細書に記載した核酸検知技術の一実施形態の模式図である。
図1b図1bは、スライド表面に非特異的に一時連結する蛍光標識化問合せプローブに関する例示的なSiMREPSデータを示す。
図1c図1cは、標的核酸と一時結合する蛍光標識化問合せプローブに関する例示的なSiMREPSデータを示す。図1cおよび図1bの動的フィンガープリントが異なるため、問合せプローブの特異的結合および非特異的結合に関する異なる動的サインの例が示されている。
図1d図1dは、1pMの標的核酸(例えばmiR-141というマイクロRNA)の非存在(灰色の太線)または存在(細線)下で問合せプローブの数をカウントして得られた一定数の強度変化(Nb+d)を示す一連のヒストグラムである。4つのヒストグラムのプロットデータの取得にはそれぞれ1、2、5、10分間の取得時間を要した。
図1e図1eは、5つのmiRNAに関するSiMREPS分析から得た、R値>0.99の標準カーブのプロット図である。SiMREPS技術により、高い信頼度の核酸検知が実現されている。
図2a図2aは、let-7a用の蛍光性問合せプローブが、let-7aとは長い存続時間(τon=23.3±8.3s)の結合を示す一方、当該let-7c配列がlet-7aに対して一塩基ミスマッチ(下線付きの「G」)であることから、let-7cとは結合がずっと一時的(τon=4.7±3.0s)であることを示すプロット図である。
図2b図2bは、let-7a(塗りつぶした丸点)とlet-7c(塗りつぶしていない丸点)とで、単複製レベルにおける高い信頼度の区別を示した滞留時間分析結果である。
図2c図2cは、let-7aとlet-7cとを区別するために、τon閾値を変更して作成した受信者動作特性(ROC)のプロットである。
図2d図2dは、miRCURYlet-7阻害因子の存在または非存在下における、未処理のHela細胞抽出物中のlet-7の検出結果に関するNb+dヒストグラムである。内因性hsa-let-7aに関するNb+dヒストグラムは、明確な輪郭を有するピーク(細線)を示した。当該ピークは、let-7ファミリーメンバーに結合し隔離するよう設計されたlet-7阻害因子の存在下では消失した(太い灰色のバー)。
図2e図2eは、let-7a用の蛍光プローブおよび捕獲プローブを用いて未処理のHela抽出物から検出した分子に関する滞留時間を示す。塗りつぶした丸点および塗りつぶしていない丸点は、τon値のk-meansクラスタ分析によって分類された2つの標的分子クラスタを表し、単ヌクレオチド変異型hsa-let-7aおよびhsa-let-7cについて予想されたτon分布に一致している。
図2f図2fは、ヒト血清中に加えた人工miR-141の定量結果を示す。
図3図3は、dCas9/gRNAを含む本願技術の実施形態を示す模式図である。ゲノム標的DNAをdCas9/gRNAで短時間、下処理する。このあいだ、dCas9/gRNA複合体のガイドRNA(gRNA)は、問合せ領域(例えば問合せプローブに相補的な領域)に隣接する領域において標的核酸(例えばゲノムDNA)とハイブリダイズする。dCas9/gRNAは、標的核酸中の特定のDNA配列(例えば問合せ領域)を融解する。ビオチン化dCas9をスライド表面上に(例えばビオチンとアビジンとの相互作用によって)捕獲した後、SiMREPSを用い、標的核酸中の現在アクセス可能な問合せ領域と問合せプローブとの結合を検知する。なお、該アクセス可能な問合せ領域は、標的核酸のうちgRNAにハイブリダイズした部位に隣接している。
図4図4は、互いに側面に位置する2つのdCas9/gRNA複合体の標的核酸へのハイブリダイゼーションを含む、本願技術の実施形態を示す模式図である。いくつかの実施形態において、2つのdCas9/gRNA複合体を問合せ領域の側面に位置するようにハイブリダイズさせることで、標的核酸(例えば問合せ領域)から、SiMREPSに基づく検知用の問合せプローブへのアクセス可能性がさらに向上し、一部の実施形態では特異性がさらに増強される。図示される実施形態では、一方のdCas9は、表面上への捕獲のためにビオチン化されており、他方のdCas9はビオチン化されていない。但し、いくつかの実施形態では、当該他方のdCas9は修飾、例えばビオチン化される。
図5a図5aは、問合せプローブおよび捕獲プローブが連続的なオリゴヌクレオチドと連結してなる分子内SiMREPSのプロービングの実施形態を示す模式図である。
図5b図5bは、非連続的な問合せプローブおよび捕獲プローブがアドレスオリゴヌクレオチドによって共局在化してなる分子内SiMREPSのプロービングの実施形態を示す模式図である。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3
図4
図5a
図5b
【配列表】
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