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特開2023-153906疎水性薬剤の効能を改善するための配合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153906
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】疎水性薬剤の効能を改善するための配合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20231011BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20231011BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231011BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
A61K9/107
A61K47/42
A61K47/24
A61K47/64
A61K31/4745
A61K31/475
A61K31/436
A61K31/337
A61K31/704
A61K31/7068
A61K31/513
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123206
(22)【出願日】2023-07-28
(62)【分割の表示】P 2021137990の分割
【原出願日】2016-07-08
(31)【優先権主張番号】62/190,909
(32)【優先日】2015-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518007418
【氏名又は名称】ペプティノボ・バイオファーマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Peptinovo Biopharma Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221578
【弁理士】
【氏名又は名称】林 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】レイノルド・ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・エル・エリオット
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規の両親媒性ペプチド;ペプチド両親媒性脂質ミセル;両親媒性ペプチドとリン脂質を含み、所望によりカーゴ分子を含むペプチド両親媒性脂質ミセルの作製プロセス;並びに、使用方法を提供する。
【解決手段】特定の配列群から選択されるアミノ酸配列を含み、且つN末端又はC末端またはその両方に全体で1~4個の追加のアミノ酸を含み得る、両親媒性ペプチドを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:3;配列番号:4;配列番号:5;配列番号:6;配列番号:7;配列番号:8;配列番号:9;配列番号:10;配列番号:11;配列番号:12;配列番号:13;配列番号:14;配列番号:15;配列番号:16;配列番号:17;配列番号:18;配列番号:19;配列番号:20;配列番号:21;配列番号:22;及び配列番号:23から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつN末端またはC末端またはその両方に全体で1~4個の追加のアミノ酸を含み得る、両親媒性ペプチド。
【請求項2】
配列番号:25;配列番号:26;配列番号:27;配列番号:28;配列番号:29;配列番号:30;配列番号:31;配列番号:32;配列番号:33;配列番号:34;及び配列番号:35から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつN末端またはC末端またはその両方に全体で1~4個の追加のアミノ酸を含み得る、両親媒性ペプチド。
【請求項3】
配列番号:3;配列番号:4;配列番号:5;配列番号:6;配列番号:7;配列番号:8;配列番号:9;配列番号:10;配列番号:11;配列番号:12;配列番号:13;配列番号:14;配列番号:15;配列番号:16;配列番号:17;配列番号:18;配列番号:19;配列番号:20;配列番号:21;配列番号:22;及び配列番号:23からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の両親媒性ペプチド。
【請求項4】
配列番号:25;配列番号:26;配列番号:27;配列番号:28;配列番号:29;配列番号:30;配列番号:31;配列番号:32;配列番号:33;配列番号:34;及び配列番号:35からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項2に記載の両親媒性ペプチド。
【請求項5】
N末端がアシル化されているか、C末端がアミド化されているか、または共にN末端がアシル化されC末端がアミド化されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の両親媒性ペプチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチド、及び、スフィンゴミエリンと1種以上の追加のリン脂質を含む脂質成分を含むペプチド両親媒性脂質ミセル(PALM)であって、前記1種以上の追加のリン脂質がホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロ-ル、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、PALM。
【請求項7】
前記1種以上の追加のリン脂質がホスファチジルコリンを含む、請求項6に記載のPALM。
【請求項8】
前記ホスファチジルコリンが1-パルミトイル-2-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)である、請求項7に記載のPALM。
【請求項9】
スフィンゴミエリンに対するリン脂質のモル比が90:10~5:95である、請求項6~8のいずれか一項に記載のPALM。
【請求項10】
スフィンゴミエリンに対するリン脂質のモル比が80:20~60:40である、請求項6~8のいずれか一項に記載のPALM。
【請求項11】
スフィンゴミエリンに対するリン脂質のモル比が70:30である、請求項10に記載のPALM。
【請求項12】
ペプチドに対する脂質成分のモル比が10:1~2:1である、請求項6~11のいずれか一項に記載のPALM。
【請求項13】
請求項6~12のいずれか一項に記載のPALM、及び薬学的、治療的または診断上の性質を有する少なくとも1種のカーゴ分子を含むPALM-カーゴ組成物であって、前記少なくとも1種のカーゴ分子が、式(I)を有する化合物コンジュゲートである、組成物。
A-R-L-X (式I)
(式中、Aはヒドロキシルまたはアミン基を有する作用物質であり、Rは作用物質のヒドロキシルまたはアミン基であり、Lはリンカーであり、Xはコレステロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール及びδ-トコトリエノールからなる群から選択されるアンカー部位である。)
【請求項14】
Rがヒドロキシル基であり、前記アンカー部位がカーボネートエステル結合により作用物質に共有結合している、請求項13に記載のPALM-カーゴ組成物。
【請求項15】
Rがアミン基であり、前記アンカー部位がカルバメートエステル結合により作用物質に共有結合している、請求項13に記載のPALM-カーゴ組成物。
【請求項16】
前記アンカー部位がコレステロールである、請求項13~15のいずれか一項に記載のPALM-カーゴ組成物。
【請求項17】
前記アンカー部位がδ-トコトリエノールである、請求項13~15のいずれか一項に記載のPALM-カーゴ組成物。
【請求項18】
前記作用物質が抗癌薬である、請求項13~17のいずれか一項に記載のPALM-カーゴ組成物。
【請求項19】
前記PALM-カーゴ組成物が造影剤を更に含む、請求項13~18のいずれか一項に記載のPALM-カーゴ組成物。
【請求項20】
前記造影剤が1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ジエチレントリアミンペンタ酢酸(ガドリニウム塩)(PE-DTPA(Gd))、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ジエチレントリアミンペンタ酢酸(マンガン塩)(PE-DTPA(Mn))、111In-DTPA-Aである、請求項19に記載のPALM-カーゴ組成物。
【請求項21】
前記抗癌薬がヒドロキシカンプトテシン、トロキサシタビン、ビンクリスチン、シロリムス、トゥブリシンA、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ゲムシタビン、シタラビン及びトロキサシタビンから選択される、請求項18または19に記載のPALM-カーゴ組成物。
【請求項22】
前記抗癌薬がヒドロキシカンプトテシン、ダウノルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセルまたはドセタキセルである、請求項20に記載のPALM-カーゴ組成物。
【請求項23】
請求項18~22のいずれか一項に記載のPALM-カーゴ組成物を含む、医薬組成物。
【請求項24】
前記抗癌薬がヒドロキシカンプトテシン、トロキサシタビン、ビンクリスチン、シロリムス、トゥブリシンA、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ゲムシタビン、シタラビン及びトロキサシタビンから選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
PALM-カーゴ組成物中のPALMが配列番号:25、配列番号:28、配列番号:34、及び配列番号:35からなる群から選択されるペプチドを含む、請求項23または24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記抗癌薬がヒドロキシカンプトテシン、ダウノルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセルまたはドセタキセルである、請求項24または25に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2015年7月10日に出願された米国仮出願番号第62/190,909号の利益を主張する。その開示全体が参照として本明細書に組み込まれている。
配列表
【0002】
本出願には、2015年7月1日、午後1時17分に作成された29KBの、本明細書と共に電子的に出願された、“236603-371638_Sequence_Listing_ST25.txt”という題の配列表全体が参照として組み込まれている。
【0003】
本発明は、非経口的投与による、治療用分子のそれらの作用部位への運搬及び送達に関する。より具体的には、本発明は、組み込まれた薬剤の治療標的への安全で効率的な送達のための、速やかに非経口投与可能な薬剤の、ナノ粒子への組み込みを可能にする配合技術に関する。
【背景技術】
【0004】
全身に作用する多くの治療用物質は、相対的に簡便な経口投薬に適しておらず、代わりに非経口投与される必要がある。しかし、多くの場合、経口投薬を複雑にする同一の因子が、非経口投薬プロセスを妨げる。このような因子としては、疎水性または他の性質による不十分な水溶性、消化管での薬剤の不安定性、不十分な吸収または吸収後のクリアランスの増加が挙げられ、不十分な血漿濃度及び/または暴露時間をもたらす。
【0005】
非経口投薬に必要な疎水性薬剤を処理するための選択肢は通常、種々の賦形剤を添加して、注射に好適な安定した懸濁液、分散液または溶液を得ることを伴う。使用する賦形剤の種類としては、洗剤、種々の種類のポリマー、油エマルション、リン脂質及びアルブミンが挙げられる。多くの場合、必要な薬剤を可溶化するために使用する賦形剤は、界面活性剤のような物質である。これらには、デオキシコレート;ヒマシ油のポリエチルオキセート化誘導体であるCremophor EL(登録商標);及びポリソルベート80が含まれる。後者2つは通常、エタノールと共に使用される。これらの作用物質は可溶化についての課題を解決するものの、高リスクの過敏性反応をもたらす有害の性質を有する。Cremophore EL(登録商標)またはポリソルベート80を含有する溶液を注射する患者は、配合物依存性の炎症を抑制するために抗炎症性薬剤で前処理されることが、一般的な必要条件である。過敏性反応の最も深刻な結果は、治療に対する耐性の低下と、死のリスクの増加である。
【0006】
可溶化のためにCremophore EL(登録商標)またはポリソルベート80を含有する、認可された薬剤配合物の例としては、疎水性抗癌剤であるパクリタキセル(Taxol(登録商標)、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、カバジタキセル(Jevtana(登録商標))及びイキサベピロン(Ixempra(登録商標))が挙げられる。免疫抑制剤であるシクロスポリン(Sandimmune(登録商標))、タクロリムス(Prograf(登録商標))及びテムシロリムス(Torisel(登録商標))もまた、これらの配合物用作用物質に依存している。パクリタキセルの場合、Cremophore EL(登録商標)をアルブミンで置き換え、エタノールを分散剤として置き換えることにより、いくらかの進展がもたらされている(即ちAbraxane(登録商標))。抗真菌薬剤であるアンホテリシンBもまた非常に疎水性であり、注射用の安定した懸濁液を得るための方法を必要としている。
【0007】
多くの薬剤が直面する、投薬についての他のハードルとしては、代謝経路による急速なクリアランスと失活が挙げられる。例えば、治療用レベルを得るために、抗癌剤のゲムシタビンは高用量で注射され、シチジンデアミナーゼによるその分解を克服しなければならない。薬剤投与を制限する更なる課題は、非標的組織が意図せずこれらの薬剤の効果にさらされることである。これは特に、細胞毒性抗癌剤において著しい。
【0008】
エマルション、ミセル、リポソーム製剤、ポリマー、及び固体-脂質ナノ粒子を含む、優れた非経口用配合物を発見する試みについての記載は数多くあるが、閉じ込め効率の低さ、薬剤の不安定性、ペイロードの漏れ、及び不十分な保存安定性という問題により、多くの努力が妨げられてきた。リポソーム製剤を用いて、いくらかの成功がもたらされている。例としては、クリアランス率を低下させるためのリポソーム中のシタラビン(DepoCyt(登録商標))、心毒性を低下させるためのリポソーム中のドキソルビシン(Doxil(登録商標)、Myocet(登録商標))、及び、可溶化を向上させるためのリポソーム中のアムホテリシンB(例えばAmBisome(登録商標))が挙げられる。
【0009】
現在の治療の数が限定されていることと、選択肢の不十分さを考慮すると、向上した安全性プロファイルと治療指数を有する、非経口投与薬剤の代替配合物;及び/または、少なくとも一般利用者に有用な選択肢をもたらす治療法を提供する明確なニーズが存在する。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、脂質及びペプチドの新規のナノ粒子配合物、並びに、分子(例えば薬剤)の取り込みを可能にし、注入または注射溶液で安定するナノ粒子配合物を形成する方法を提供することにより、このニーズに取り組む。本発明の配合物は、改善した薬物動態パラメーター、半減期の増加、送達の標的化、毒性の低下、または、非経口投与薬剤、特に抗癌剤の治療指数の改善を含むがこれらに限定されない1つ以上の改善をもたらす。本開示は、配列番号:1、配列番号:24、配列番号:36または配列番号:59のアミノ酸配列を含む、両親媒性αヘリックスペプチドを提供する。
【0011】
更に本開示は、本開示のアミノ酸配列を含むペプチド、スフィンゴミエリン及び1種以上の追加のリン脂質を含むペプチド両親媒性脂質ミセル(PALM)を提供する。本開示のPALMは所望により、1種以上のカーゴ分子(例えば造影剤及び薬剤)を含む。
【0012】
本開示は更に、PALM、及びカーゴ分子と共に配合されたPALM組成物の調製プロセスを提供する。
【0013】
更に本開示は、化合物コンジュゲート、及びPALMとの使用に好適な化合物コンジュゲートの調製方法を提供する。
【0014】
更に本開示は、PALM-薬剤コンジュゲートを投与することによる疾患の治療方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1A及び1Bは、両親媒性コンフォーメーションをそれぞれ示す、配列番号:3及び25のペプチドのEdmundsonホイール描写である。図1A及び1Bは更に、αヘリックスの長軸の周りの、構成成分であるアミノ酸(標準的な1文字の略語で表される)の軸位置を示す。文字「B」は、2-アミノ-イソ酪酸を表す。破線は、ペプチドの極性面を形成する親水性アミノ酸(色が濃い)と、非極性面を形成する疎水性アミノ酸のおおよその境界を示す。図1C及び1Dはそれぞれ、配列番号:3及び25のペプチドのヘリックスネットの描写である。
図2】ヒトHDL(破線)と比較した、ミリプラチン(実線)を含有するPALMのサイズ排除クロマトグラムである。PALMは、配列番号:25のペプチドとPOPC、SM、及びミリプラチンが2.5:3:7:0.75のモル比で構成された。
図3】XCを含有し、配列番号:25のペプチドを、ペプチド:リン脂質:XC=1:4:0.4のモル比で調製したPALMのサイズ排除クロマトグラフを示す。タンパク質基準の種々のストークス径の溶出位置をマークした。
図4】XT3を含有し、配列番号:25のペプチド(破線)またはR4Fペプチド(実線)で調製したPALMについてのサイズ排除クロマトグラムの比較である。組成物は共に、ペプチド:POPC:SM:XT3が1:2.8:1.2:0.4のモル当量比であった。
図5】配列番号:25のペプチドで調製し、フェンレチニドを含有するPALMのサイズ排除クロマトグラムを示す。PALM組成物は、ペプチド:POPC:SM:フェンレチニドが2.5:3:7:2のモル当量比であった。
図6】シスプラチンによる阻害と比較した、PALM(MP)によるPC3前立腺癌細胞増殖の阻害を示す。
図7】PALM(MP)によるPC3前立腺癌細胞増殖の阻害における、SR-BI抗体の効果を示す。線は、データのロジスティック方程式への一致を示す。
図8】パクリタキセル(円、破線)による阻害と比較した、PALM/(XC)(正方形、点線)またはPALM(XT3)(菱形、実線)によるSKOV3卵巣癌細胞増殖の阻害を示す。線は、データのロジスティック方程式への一致を示す。
図9】示した種々のペプチドで調製し、DiIを含有するPALMを、ミフェプリストン誘発性のヒトSR-BI遺伝子で安定的にトランスフェクションしたBHK(SR-BI)細胞を用いてインキュベーションした。非誘発(対照)または誘発細胞を用いてインキュベーションを行った。DiIで標識したヒトHDLを比較のために試験した。4時間のインキュベーション後に細胞から取り出したDiIの量を蛍光により検出した。
図10】誘発(SR-BI+)または非誘発(対照)のいずれかであった、ミフェプリストン誘発性ヒトSR-BI遺伝子を含むBHK(SR-BI)細胞を、示した濃度のPTXまたはPALM(XT3)で12時間インキュベーションした。試験作用物質の不存在下で細胞を更に、追加で36時間インキュベーションした後、MTTアッセイにより増殖割合を検出した。
図11】SR-BI抗体は、PALM(XT3)からのXT3の取り込みをブロックした(矢印)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
「ナノ粒子」とは、100nmを超える寸法を有しない粒子を意味する。
【0017】
本明細書で使用する場合、文脈で明確に別様が示されない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数形を含む。
【0018】
本開示において、「含む(comprises)」「含んだ(comprised)」「含む(comprising)」「含有する(contains)」、「含有する(containing)」等の用語は、米国特許法に属する意味を有し、これらは包含的またはオープンエンドであり、引用されていない追加の要素または方法の工程を除外しないことに留意されたい。「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」等の用語は、米国特許法に属する意味を有し、これらは、特許請求された発明の基本的及び新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の成分または工程の包含を可能にする。用語「からなる(consists of)」及び「からなる(consisting of)」は、米国特許法においてこれらに属する意味を有する、即ち、これらの用語はクローズドエンドである。
【0019】
前に付く「約」は、値がおよそのものであることを示す。例えば、「約1mg~約50mg」の範囲は、値がおよその値であることを示す。「約1mg~約50mg」の範囲はおよそであり、特定の値を含む。例えば、この範囲は約1mg、1mg、約50mg及び50mgを含む。
【0020】
範囲が記載されている場合、その範囲は、範囲の両端点と、その間の全ての数値の両方を含む。例えば、「1mg~10mgの間」は、1mg、10mg、及び1mgと10mgの間の全ての量を含む。同様に、「1mgから10mg」は、1mg、10mg、及び1mgと10mgの間の全ての量を含む。
【0021】
本明細書で使用する場合、「アルキル」とは、7~21個の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を意味する。本明細書で使用する場合、用語「(C-Cn)アルキル」とは、1~n個の炭素原子を含有するアルキル基を意味する。例えば、(C-C12)アルキルとは、8、9、10、11、または12個の炭素原子を含有するアルキル基を意味する。アルキル基は分枝または非分枝であることができる。
【0022】
本明細書で使用する場合、「アルケニル」とは、7~21個の炭素原子と、少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族炭素基を意味する。本明細書で使用する場合、用語「(C-C)アルケニル」とは、1~n個の炭素原子を含有するアルケニル基を意味する。アルケニル基は分枝または非分枝であることができる。
【0023】
脂質成分を記述する場合に用いられる「から本質的になる」とは、脂質成分が、明記されるもの以外の任意の追加の脂質を0.1mol%未満含むことを意味する。
【0024】
「XC」とは、パクリタキセル2’-コレステリルカーボネートの略語である。
【0025】
XT3は、パクリタキセル2’-δ-トコトリエニルカーボネートの略語である。
【0026】
「MP」はミリプラチンの略語である。
【0027】
「PTX」はパクリタキセルの略語である。
【0028】
「POPC」は1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリンの略語である。
【0029】
「SM」はスフィンゴミエリンの略語である。
【0030】
「HDL」は高密度リポタンパク質の略語である。
【0031】
「SR-BI」は1型スカベンジャ受容体クラスBの略語である。
【0032】
「BHK」はベビーハムスター腎臓の略語である。
【0033】
「DiI」は1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’テトラメチルインドカルボシアニンの略語である。
【0034】
「PALM」は、リン脂質を含む両親媒性ペプチドと、所望により他の疎水性分子との水性懸濁液中での混合により形成されたペプチド両親媒性脂質ミセルを識別するために用いられる頭字語である。
【0035】
「両親媒性」とは、分子またはポリマー中の親水性(求水性(water seeking))置換基と疎水性(水回避性)置換基が構造的に、互いに分離しているコンフォーメーションにより、脂質と水相の両方に対して親和性を有する分子またはポリマー(例えばペプチド)を示す。
【0036】
「親油性」とは、水性懸濁液中の脂質リッチな粒子の脂質ドメインに優先的に分布している物質を示す。脂質リッチな粒子としては、脂質ミセル、リポソーム、リポタンパク質、細胞膜及び脂質エマルションが挙げられる。
【0037】
「ペプチド」とは、ポリマー中の1つのアミノ酸のカルボン酸基と、次のアミノ酸のαアミン基との間に形成したアミド結合により互いに結合した、αアミノ酸モノマーから生成したポリマーである。「ペプチド」は、互いに結合したアミノ酸モノマーのポリマーもまた含む。アミノ酸のL-光学異性体とD-光学異性体の両方を使用することができる。ポリマーを構成するアミノ酸は、自然で見出されるもの(即ち天然アミノ酸)、または非天然アミノ酸のいずれかであってよい。用語「残基」または「アミノ酸残基」は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の中に組み込まれるアミノ酸への言及を含む。
【0038】
慣習に従った、そして本明細書で使用するペプチド配列は、N末端からC末端へ、左から右に記述される。
【0039】
「ミセル」とは、水相中の非共有相互作用により組織される多分子構造である。ミセルは、分子の疎水性ドメインが水から遮断され、親水性成分がミセル-水界面に位置するように凝集する両親媒性及び疎水性分子で構成される。
【0040】
「カーゴ分子」とは、PALM内に安定して組み込まれ、PALMの安定性を妨げない薬学的、治療的または診断上の性質を有する疎水性または両親媒性分子である。
【0041】
「siRNA」は、RNAが誘発する遺伝子サイレンシング複合体の一部として、細胞遺伝子発現を制御するために作製された小型の、干渉性リボ核酸である。
【0042】
「Aib」は、アミノ酸であるαアミノイソ酪酸の3文字コードである。
【0043】
「Aba」は、アミノ酸であるαアミノ酪酸の3文字コードである。
【0044】
「Amv」は、非天然アミノ酸であるαメチルバリンの3文字コードである。
【0045】
「Orn」は、アミノ酸であるオルニチンの3文字コードである。
【0046】
「SEC」とは、サイズ排除クロマトグラフィーである。
【0047】
「DLS」とは動的光散乱法である。
【0048】
本開示の第1の態様は、「両親媒性ペプチド」を提供する。両親媒性ペプチドは、ヘリックスが、ヘリックスの長軸に沿って配向される、対向する極性及び非極性面を有するαヘリックスのコンフォーメーションを取り入れることが可能である。ペプチドの合成技術は、当該技術分野において周知である。本開示のペプチドは、当該技術分野において既知の任意の技術により合成することができる。
【0049】
表1は、いくつかの先行技術の配列と比較した、本開示の特定の両親媒性ペプチドの電荷分布を示す。本発明のペプチドの電荷分布は、以下に示す先行技術に鑑みて新規である。
【表1】
【0050】
本開示の第1の態様の一実施形態は、アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20を含むペプチドを提供し、Xはアミノ酸Dであり、X及びX20はそれぞれアミノ酸Vであり、X、X、X10及びX13はそれぞれ、L及びFからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X12及びX19はそれぞれアミノ酸Qであり、Xはアミノ酸AまたはAibであり、X、X16及びX18はそれぞれアミノ酸Kであり、X及びX15はそれぞれアミノ酸Eであり、X及びX14はそれぞれ、A、L、F及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X11はA、Aib及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X17はW、F及びLからなる群から選択されるアミノ酸であり(配列番号:1)、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。
【0051】
第1の態様の別の実施形態は、アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20から本質的になるペプチドを提供し、Xはアミノ酸Dであり、X及びX20はそれぞれアミノ酸Vであり、X、X、X10及びX13はそれぞれ、L及びFからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X12及びX19はそれぞれアミノ酸Qであり、Xはアミノ酸AまたはAibであり、X、X16及びX18はそれぞれアミノ酸Kであり、X及びX15はそれぞれアミノ酸Eであり、X及びX14はそれぞれ、A、L、F及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X11はA、Aib及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X17はW、F及びLからなる群から選択されるアミノ酸であり(配列番号:1)、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。
【0052】
第1の態様の更に別の実施形態は、アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20からなるペプチドを提供し、Xはアミノ酸Dであり、X及びX20はそれぞれアミノ酸Vであり、X、X、X10及びX13はそれぞれ、L及びFからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X12及びX19はそれぞれアミノ酸Qであり、Xはアミノ酸AまたはAibであり、X、X16及びX18はそれぞれアミノ酸Kであり、X及びX15はそれぞれアミノ酸Eであり、X及びX14はそれぞれ、A、L、F及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X11はA、Aib及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X17はW、F及びLからなる群から選択されるアミノ酸である(配列番号:1)。
【0053】
第1の態様のまた別の実施形態は、アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20を含むペプチドを提供し、X、X及びX15は、アミノ酸D及びEからなる群から独立して選択され、X及びX20はそれぞれ、V、Y及びLからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X10及びX17は、L、I、V、W、Y及びFからなる群から選択されるアミノ酸であり、X、X11、X12及びX19はそれぞれ、Q及びNからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X16及びX18はそれぞれ、K、R、H及びOrnからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X、X、X13及びX14はそれぞれ、A、L、F、V、Amv及びAibであり(配列番号:24)、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。
【0054】
第1の態様の別の実施形態は、アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20から本質的になるペプチドを提供し、XはD及びEからなる群から選択されるアミノ酸であり、X及びX20はそれぞれ、V、I及びLからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X、X10及びX13はそれぞれ、L、I、V、W、Y及びFからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X12及びX19はそれぞれ、Q及びNからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X16及びX18はそれぞれ、K、R、H及びOrnからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、XはA、G、S、V、Aib及びAmvからなる群から選択され、X及びX15はアミノ酸E及びDからなる群から独立して選択され、X及びX14は、A、G、S、L、F、V、Amv及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X11はA、G、S、Aib、Amv、V及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X17はW、F、Y、I、V及びLからなる群から選択されるアミノ酸であり(配列番号:24)、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。
【0055】
第1の態様の更に別の実施形態は、アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20からなるペプチドを提供し、XはD及びEからなる群から選択されるアミノ酸であり、X及びX20はそれぞれ、V、I及びLからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X、X10及びX13はそれぞれ、L、I、V、W、Y及びFからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X12及びX19はそれぞれ、Q及びNからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X16及びX18はそれぞれ、K、R、H及びOrnからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、XはA、G、S、V、Aib及びAmvからなる群から選択され、X及びX15はアミノ酸E及びDからなる群から独立して選択され、X及びX14は、A、G、S、L、F、V、Amv及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X11はA、G、S、Aib、Amv、V及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X17はW、F、Y、I、V及びLからなる群から選択されるアミノ酸である(配列番号:24)。
【0056】
第1の態様に従った、開示した実施形態ペプチドのいずれかは、ペプチドのN末端アミノ酸のαアミンが所望によりアシル化されているか、ペプチドの末端カルボキシル基が所望によりアミド化されているか、または、所望によりペプチドのN末端アミノ酸のαアミンがアシル化されており、末端カルボキシル基がアミド化されていることが想到されている。当該技術分野において既知の方法により、ペプチドをアシル化またはアミド化することができる。
【0057】
本発明の特定のペプチドを下表2に示す。
【表2-1】

【表2-2】

【0058】
本開示の第1の態様の一実施形態は、配列番号:1~23のアミノ酸配列のいずれか1つを含むペプチドであり、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。更に別の実施形態は、配列番号:1~23のアミノ酸配列から本質的になるペプチドであり、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。更に別の実施形態は、配列番号:1~23のアミノ酸配列のいずれか1つからなるペプチドである。上記実施形態の開示したペプチドのいずれかにおいて、所望により、ペプチドのN末端アミノ酸のαアミンはアシル化されているか、末端カルボキシル基はアミド化されているか、または、ペプチドのN末端アミノ酸のαアミンがアシル化されており、ペプチドの末端カルボキシル基がアミド化されている。
【0059】
本開示の第1の態様の一実施形態は、配列番号:25~35のアミノ酸配列のいずれか1つを含むペプチドであり、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。更に別の実施形態は、配列番号:25~35のアミノ酸配列のいずれか1つから本質的になるペプチドであり、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。別の実施形態は、配列番号:25~35のアミノ酸配列のいずれか1つからなるペプチドである。上記実施形態のペプチドのいずれかにおいて、所望により、ペプチドのN末端アミノ酸のαアミンはアシル化されているか、末端カルボキシル基はアミド化されているか、または、ペプチドのN末端アミノ酸のαアミンがアシル化されており、ペプチドの末端カルボキシル基がアミド化されている。
【0060】
本開示の実施形態は、配列番号:1及び24によって通常規定されるペプチドの逆配列を有するペプチドを更に含む。
【0061】
本開示の第1の態様の一実施形態は、配列番号:1の逆であるペプチドを提供し、ペプチドはアミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20を含み、式中、X及びX19はそれぞれアミノ酸Vであり、X、X及びX17はそれぞれアミノ酸Qであり、X、X及びX14はそれぞれアミノ酸Kであり、XはW、F及びLからなる群から選択されるアミノ酸であり、X及びX13はそれぞれアミノ酸Eであり、X及びX12はそれぞれ、A、L、F及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X11、X15及びX18はそれぞれ、L及びFからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X10はA、Aib及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X16はA及びAibからなる群から選択されるアミノ酸であり、X20はアミノ酸Dであり(配列番号:36)、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。
【0062】
本開示の第1の態様の別の実施形態は、配列番号:1の逆であるペプチドを提供し、ペプチドはアミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20を含み、式中、X及びX19はそれぞれアミノ酸Vであり、X、X及びX17はそれぞれアミノ酸Qであり、X、X及びX14はそれぞれアミノ酸Kであり、XはW、F及びLからなる群から選択されるアミノ酸であり、X及びX13はそれぞれアミノ酸Eであり、X及びX12はそれぞれ、A、L、F及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X11、X15及びX18はそれぞれ、L及びFからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X10はA、Aib及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X16はA及びAibからなる群から選択されるアミノ酸であり、X20はアミノ酸Dであり(配列番号:36)、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。
【0063】
本開示の第1の態様の一実施形態は、配列番号:1の逆であるペプチドを提供し、ペプチドは、アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20からなり、式中、X及びX19はそれぞれアミノ酸Vであり、X、X及びX17はそれぞれアミノ酸Qであり、X、X及びX14はそれぞれアミノ酸Kであり、XはW、F及びLからなる群から選択されるアミノ酸であり、X及びX13はそれぞれアミノ酸Eであり、X及びX12はそれぞれ、A、L、F及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X11、X15及びX18はそれぞれ、L及びFからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X10はA、Aib及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X16はA及びAibからなる群から選択されるアミノ酸であり、X20はアミノ酸Dである(配列番号:36)。
【0064】
本開示の第1の態様の別の実施形態は、配列番号:24の逆であるペプチドを提供し、逆ペプチドは、アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20を含み、式中、X及びX19はそれぞれ、V、I及びLからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X及びX17はそれぞれ、Q及びNからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X及びX16はそれぞれ、K、R、H及びOrnからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、XはW、F、Y、I、V及びLからなる群から選択されるアミノ酸であり、X、X13及びX20はそれぞれ、E及びDからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X及びX12はそれぞれ、A、G、S、L、F、V、Amv及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X11、X15及びX18はアミノ酸L、I、V、W及びFからなる群から独立して選択され、X10はA、G、S、Aib、Amv、V及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X14はA、G、S、V、Aib及びAmvからなる群から選択されるアミノ酸であり(配列番号:59)、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。
【0065】
本開示の第1の態様の別の実施形態は、配列番号:24の逆であるペプチドを提供し、逆ペプチドは、アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20から本質的になり、式中、X及びX19はそれぞれ、V、I及びLからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X及びX17はそれぞれ、Q及びNからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X及びX16はそれぞれ、K、R、H及びOrnからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、XはW、F、Y、I、V及びLからなる群から選択されるアミノ酸であり、X、X13及びX20はそれぞれ、E及びDからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X及びX12はそれぞれ、A、G、S、L、F、V、Amv及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X11、X15及びX18はアミノ酸L、I、V、W及びFからなる群から独立して選択され、X10はA、G、S、Aib、Amv、V及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X14はA、G、S、V、Aib及びAmvからなる群から選択されるアミノ酸であり(配列番号:59)、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。
【0066】
本開示の第1の態様の別の実施形態は、配列番号:24の逆であるペプチドを提供し、逆ペプチドは、アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20からなり、式中、X及びX19はそれぞれ、V、I及びLからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X及びX17はそれぞれ、Q及びNからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X及びX16はそれぞれ、K、R、H及びOrnからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、XはW、F、Y、I、V及びLからなる群から選択されるアミノ酸であり、X、X13及びX20はそれぞれ、E及びDからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X及びX12はそれぞれ、A、G、S、L、F、V、Amv及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X11、X15及びX18はアミノ酸L、I、V、W及びFからなる群から独立して選択され、X10はA、G、S、Aib、Amv、V及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X14はA、G、S、V、Aib及びAmvからなる群から選択されるアミノ酸である(配列番号:59)。
【0067】
表3には、本発明の追加のペプチドを示す。これらのペプチド内のアミノ酸配列は、配列番号:2~23、及び25~35のアミノ酸配列の逆である。
【表3】

【0068】
本開示の第1の態様の一実施形態は、配列番号:36~58のアミノ酸配列のいずれか1つを含むペプチドであり、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。更に別の実施形態は、配列番号:36~58のアミノ酸配列のいずれか1つから本質的になるペプチドである。更に別の実施形態は、配列番号:36~58のアミノ酸配列のいずれか1つからなるペプチドである。上記実施形態のペプチドのいずれかにおいて、所望により、ペプチドのN末端アミノ酸のαアミンはアシル化されているか、末端カルボキシル基はアミド化されているか、または、ペプチドのN末端アミノ酸のαアミンがアシル化されており、ペプチドの末端カルボキシル基がアミド化されている。
【0069】
本開示の第1の態様の一実施形態は、配列番号:59~70のアミノ酸配列のいずれか1つを含むペプチドであり、ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。更に別の実施形態は、配列番号:59~70のアミノ酸配列のいずれか1つから本質的になるペプチドである。更に別の実施形態は、配列番号:59~70のアミノ酸配列のいずれか1つからなるペプチドである。上記実施形態のペプチドのいずれかにおいて、所望により、ペプチドのN末端アミノ酸のαアミンはアシル化されているか、末端カルボキシル基はアミド化されているか、または、ペプチドのN末端アミノ酸のαアミンがアシル化されており、ペプチドの末端カルボキシル基がアミド化されている。
【0070】
本開示のペプチドが、配列番号:1~70のいずれか1つのアミノ酸配列、及び、該アミノ酸配列のN末端またはC末端のいずれかに独立して付加した1~4個の追加のアミノ酸を含む場合、追加のアミノ酸は、アミノ酸の付加がペプチドの両親媒性(amphilicity)に負の影響を及ぼさないように選択される。
【0071】
本開示の第2の態様は、両親媒性ペプチドとリン脂質との組み合わせから形成したペプチド両親媒性脂質ミセル(PALM)を提供する。本開示の第2の態様のPALMは、脂質成分と複合体を形成した本開示の第1の態様の1種以上のペプチドを含み、脂質成分は、スフィンゴミエリンと1種以上の追加のリン脂質を含む。本開示に従ったPALMは、標的細胞集団に受動的に、または能動的に送達されてよい。本開示の第2の態様の一実施形態において、PALMは本開示の1種以上のペプチドを含み、脂質成分は、スフィンゴミエリンと1種以上の追加のリン脂質から本質的になる。一実施形態において、PALMは本開示のペプチドと脂質成分を含み、脂質成分はスフィンゴミエリンと1種以上の追加のリン脂質を含み、追加のリン脂質はホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロ-ル、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態において、PALMは本開示のペプチドを含み、脂質成分はスフィンゴミエリンとホスファチジルコリンを含む。別の実施形態において、PALMは本開示のペプチド、スフィンゴミエリン、及び1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)を含む。更に他の実施形態において、PALMは本開示のペプチドを含み、脂質成分はスフィンゴミエリンとホスファチジルエタノールアミンを含む。更に他の実施形態において、PALMは本開示のペプチドを含み、脂質成分はスフィンゴミエリンとポリ(エチレングリコール)ホスファチジルエタノールアミンを含む。更に別の実施形態において、PALMは本開示のペプチドを含み、脂質成分はスフィンゴミエリンとホスファチジルセリンを含む。別の実施形態において、PALMは本開示のペプチドを含み、脂質成分はスフィンゴミエリンとカルジオリピンを含む。
【0072】
本開示の第2の態様の更に別の実施形態において、PALMは本開示のペプチドを含み、脂質成分はスフィンゴミエリンと1種以上の追加のリン脂質から本質的になり、1種以上の追加のリン脂質は、ホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロ-ル、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。更に別の実施形態において、PALMは本開示のペプチドを含み、脂質成分はスフィンゴミエリンとホスファチジルコリンから本質的になる。別の実施形態において、PALMは本開示のペプチドを含み、脂質成分はスフィンゴミエリンと1-パルミトイル-2-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)から本質的になる。
【0073】
本開示の第2の態様のいくつかの実施形態において、PALMは本開示のペプチドを含み、脂質成分はスフィンゴミエリンと1種以上の追加のリン脂質から本質的になり、1種以上の追加のリン脂質はホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロ-ル、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、スフィンゴミエリンに対するリン脂質のモル比は約95:5~約10:90である。別の実施形態において、スフィンゴミエリンに対するリン脂質のモル比は約90:10~約20:80である。更に別の実施形態において、スフィンゴミエリンに対するリン脂質のモル比は、約25:75~約35:65である。別の実施形態において、スフィンゴミエリンに対するリン脂質のモル比は約30:70である。別の実施形態において、スフィンゴミエリンに対するリン脂質のモル比は約80:20~約60:40である。更に他の実施形態では、スフィンゴミエリンに対するリン脂質のモル比は約75:25~約65:35である。更に別の実施形態において、スフィンゴミエリンに対するリン脂質のモル比は約70:30である。
【0074】
リン脂質の脂肪酸成分としては、式:R-COOHの脂肪酸が挙げられ、式中、Rは(C-C21)アルキル基または(C-C21)アルケニル基であり、アルケニル基は1~6個の二重結合を有することができる。好適な脂肪酸の例としては、フィタン酸、リノレン酸、リノール酸、ドコサテトラエン酸(docosatetraenoic acid)、オレイン酸、カプリル酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定のリン脂質のグリセロール骨格にエステル化された一対の脂肪酸は同一であっても、またはそれぞれ異なる種類の脂肪酸であってもよい。
【0075】
ペプチドに対する脂質成分のモル比は約10:1~約2:1である。一実施形態において、比(ration)は約9:1~約2:1である。一実施形態において、ペプチドに対する脂質成分のモル比は約8:1~約2:1である。更に別の実施形態において、ペプチドに対する脂質成分のモル比は約7:1~約3:1である。別の実施形態において、ペプチドに対する脂質成分のモル比は約6:1~約4:1である。
【0076】
両親媒性ペプチドとホスファチジルコリンの複合体が知られている。これらの複合体を生成するための一方法は、一般的な溶媒相から最初に同時凍結乾燥を行い、続いて乾燥した凍結乾燥物を再水和させて、水性懸濁液中で複合物を形成させることである。
【0077】
粒径はDLSにより測定され、流体力学的平均直径(「平均直径」)として表される。本開示の第2の態様に従ったPALMは、30nm以下の平均直径を有するナノメートル径の粒子である。一実施形態において、平均粒径は約5nm~約30nmである。更に別の実施形態において、平均粒径は約7.5nm~約30nmである。更に別の実施形態において、平均粒径は約10nm~約30nmである。別の実施形態において、平均粒径は約5nm~約25nmである。別の実施形態において、平均粒径は約7.5nm~約25nmである。更に別の実施形態において、平均粒径は約10nm~約25nmである。別の実施形態において、平均粒径は約5nm~約20nmである。別の実施形態において、平均粒径は約7.5nm~約20nmである。更に別の実施形態において、平均粒径は約10nm~約20nmである。更に別の実施形態において、平均粒径は約5nm~約15nmである。別の実施形態において、平均粒径は約7.5nm~約15nmである。更に別の実施形態において、平均粒径は約10nm~約15nmである。更に別の実施形態において、平均粒径は約7.5nm~約10nmである。
【0078】
本開示の第3の態様は、本開示の第2の態様の実施形態のPALMのいずれか1つとカーゴ分子を含むPALM-カーゴ分子組成物を提供する。カーゴ分子としては、薬学的または治療的性質を有する分子が挙げられるが、これらに限定されない。カーゴ分子の非限定例としては、一括してまたは個別に、全トランスレチノイン酸、全トランスレチノイン酸のアルコールエステル(例えばレチノイン酸のメチル、エチル及び長鎖脂肪族アルキル鎖アルコールエステル)、並びにレチノイン酸のコレステリルエステル等の抗癌化合物;フェンレチニド等のレチノイン酸アミド;レチノイン酸のメチル、エチル及び長鎖脂肪属アルキル鎖アルコールエステル等の、レチノール及びレチノールのカルボン酸エステル;アンホテリシンBまたはナイスタチン等の親油性抗真菌薬;プロゲステロン、テストステロン、プレドニゾロン、ハイドロコルチゾン、デキサメタゾン及びエストラジオール等のステロイド;プロポフォール及びハロペリドール等の鎮痛薬;フルフェナジンデカノエート及びアリピプラゾール等の抗精神病薬;ビタミンD類似体であるコレカルシフェロール及びエルゴカルシフェロール;並びにビタミンEの異性体が挙げられる。
【0079】
カーゴ分子としては、診断またはイメージング操作を可能にする分子、例えば蛍光造影剤、放射性標識造影剤、並びにMRI、PET、CT、SPECT/CT及びX線調査に使用される作用物質も更に挙げられる。MRI造影剤としては、ガドリニウムイオンもしくは同様のランタニドイオン、またはインジウム111もしくはガリウム67もしくはルテチウム177もしくはサマリウム153とキレート化したジエチレントリアミンペンタ酢酸部位を有する、ホスファチジルエタノールアミン等の造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
カーゴ分子はまた、既知の方法により、コレステロールまたは他の多環式脂肪族アルコールに結合した、種々の種類及び長さのRNAまたはDNAであってもよい。
【0081】
第3の態様の一実施形態において、カーゴ分子は、シス[((1R、2R)-1,2-シクロヘキサンジアミン-N,N’)ビス(ミリスタト)]白金(II)の化学名を有するミリプラチンである。
【化1】
【0082】
本開示の第3の態様の更に別の実施形態は、カーゴ分子が式Iの化合物コンジュゲートであるPALM-カーゴ分子複合体であり、
【0083】
A-R-L-X (式I)
式中、Aはヒドロキシまたはアミン基を有する作用物質であり、Rは作用物質のヒドロキシルまたはアミン基であり、Lはリンカーであり、Xはアンカー部位である。
【0084】
本開示の第3の態様の別の実施形態は、カーゴ分子が式Iの化合物コンジュゲートであるPALM-カーゴ分子複合体であり、
【0085】
A-R-L-X (式I)
式中、Aはヒドロキシまたはアミン基を有する作用物質であり、Rは作用物質のヒドロキシルまたはアミン基であり、Lは炭酸、コハク酸またはジグリコール酸であり、Xは、コレステロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール、コレステロール、コプロスタノール、植物ステロール(β-シトステロール、シトスタノール、スティグマステロール、スティグマスタノール、カンペステロール、ブラシカステロール)、エルゴステロール、レチノール、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、トコフェロールまたはトコトリエノールである。
【0086】
本開示の第3の態様の別の実施形態は、カーゴ分子が式Iの化合物コンジュゲートであるPALM-カーゴ分子複合体であり、
式中、Aはヒドロキシまたはアミン基を有する作用物質であり、Rは作用物質のヒドロキシルまたはアミン基であり、Lは炭酸、コハク酸またはジグリコール酸からなる群から選択され、Xはコレステロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール、コレステロール、コプロスタノール、植物ステロール(β-シトステロール、シトスタノール、スティグマステロール、スティグマスタノール、カンペステロール、ブラシカステロール)、エルゴステロール、レチノール、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びδ-トコフェロールからなる群から選択される。
【0087】
本開示の第3の態様の別の実施形態は、カーゴ分子が式Iの化合物コンジュゲートであるPALM-カーゴ分子複合体であり、
式中、Aはヒドロキシまたはアミン基を有する作用物質であり、Rは作用物質のヒドロキシルまたはアミン基であり、Lはリンカーであり、Xはコレステロール、コレカルシフェロール及びδ-トコトリエノールからなる群から選択されるアンカー部位である。
【0088】
式(1)の化合物コンジュゲートの一実施形態において、Rは作用物質のヒドロキシ基であり、アンカー部位はカーボネートエステル結合により、作用物質に共有結合している。式(1)の化合物コンジュゲートの別の実施形態において、Rは作用物質のアミン基であり、アンカー部位はカルバメートエステル結合により作用物質に共有結合している。
【0089】
式(1)の化合物コンジュゲートの別の実施形態において、アンカー部位はコレステロールである。式(1)の化合物コンジュゲートの更に別の実施形態において、アンカー部位はコレステロールであり、アンカー部位がコレステロールであるならば、化合物はパクリタキセルではない。
【0090】
式(1)の化合物コンジュゲートの更に他の実施形態において、アンカー部位はα-トコトリエノールである。式(1)の化合物コンジュゲートの別の実施形態において、アンカー部位はβ-トコトリエノールである。式(1)の化合物コンジュゲートの更に別の実施形態において、アンカー部位はγ-トコトリエノールである。式(1)の化合物コンジュゲートの更に他の実施形態において、アンカー部位はδ-トコトリエノールである。
【0091】
式(1)の化合物コンジュゲートのいくつかの実施形態において、作用物質は薬剤である。
【0092】
式(1)の化合物コンジュゲートのいくつかの実施形態において、作用物質は抗癌薬である。式(1)の化合物コンジュゲートの一実施形態において、作用物質は抗癌薬であり、抗癌薬はカーボネートエステル結合により、アンカーに共有結合している。
式(1)の化合物コンジュゲートの一実施形態において、作用物質は抗癌薬であり、抗癌薬はカルバメートエステル結合により、アンカーに共有結合している。
【0093】
カーボネートエステル結合を形成するのに利用可能な、ヒドロキシル基を有する抗癌薬の非限定例としては、AZD2811、ヒドロキシカンプトテシン、ドキソルビシン、トロキサシタビン、ビンクリスチン、シロリムス、トゥブリシンA、ドセタキセルまたはパクリタキセルが挙げられる。
【0094】
カルバメートエステル結合を形成するのに利用可能な、アミンを有する抗癌薬の非限定例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ゲムシタビン、シタラビン及びトロキサシタビンが挙げられる。
【0095】
本開示の第3の態様のPALM-カーゴ分子組成物のいくつかの実施形態において、カーゴ分子はパクリタキセル2’-コレステリルカーボネートである。別の実施形態において、カーゴ分子はパクリタキセル2’-δ-トコトリエニルカーボネートである。
【0096】
更に他の実施形態では、カーゴ分子はドセタキセル2’-コレステリルカーボネートである。別の実施形態では、カーゴ分子は10-ヒドロキシカンプトセシンのコレステリルカーボネートエステルである。更に別の実施形態では、カーゴ分子は、イリノテカンの活性化代謝物である7-エチル-10-ヒドロキシカンプトセシンの、コレステリルカーボネートエステルである。別の実施形態において、カーゴ分子はシロリムスのコレステリルカーボネートエステルである。別の実施形態において、カーゴ分子はゲムシタビンのコレステリルカーボネートエステルである。別の実施形態において、カーゴ分子はトゥブリシンAのコレステリルカーボネートエステルである。別の実施形態において、カーゴ分子はモルヒネのコレステリルカーボネートエステル、ヒドロモルフォンのコレステリルカーボネートエステル、またはコデインのコレステリルカーボネートエステルである。
【0097】
本開示の第3の態様のPALM-カーゴ分子組成物の別の実施形態において、カーゴ分子はゲムシタビンのコレステリルカルバメートエステル(コレステリル(N)-ゲムシタビンカルバメート)である。更に他の実施形態において、カーゴ分子はアデノシンのコレステリルカルバメートエステルである。更に他の実施形態において、カーゴ分子はドキソルビシンのコレステリルカーボネートエステルであり、この構造は、
【化2】
である。
【0098】
更に別の実施形態において、カーゴ分子はビンクリスチンのコレステリルカーボネートエステルであり、この構造は、
【化3】
である。
【0099】
更に別の実施形態において、カーゴ分子はパクリタキセルのδ-トコトリエニルカルバメートエステルであり、この構造は、
【化4】
である。
更に別の実施形態において、カーゴ分子はゲムシタビンのδ-トコトリエニルカーボネートエステルであり、この構造は、
【化5】
である。
【0100】
更に別の実施形態において、カーゴ分子はドキソルビシンのδ-トコトリエニルカーボネートエステルであり、この構造は、
【化6】
である。
【0101】
表4は、矢印により示されるヒドロキシルまたはアミン基(R)を有する、本発明において有用な作用物質(A)の非限定的実施例の構造を示す。
【表4】
【0102】
表5は、式A-R-L-XのPALM-カーゴ組成物の非限定的実施例を示す。
【表5-1】

【表5-2】

【表5-3】

【表5-4】

【表5-5】

【表5-6】
【0103】
本開示の第4の態様は、tert-ブチルアルコールと水で構成される均一溶媒相からPALMまたはPALM-カーゴ分子組成物を生成するための、驚異的に効率的な同時凍結乾燥技術を提供する。本手法の利点は、1)ペプチド、リン脂質(phosphopholipid)及び任意の親油性カーゴ(例えばパクリタキセル-2’-コレステリルカーボネート)を含む全てのPALM成分が、単一溶媒相に共に可溶化され、2)溶媒成分が完全に混和性であり、標準的な凍結乾燥操作による除去に十分適しており、3)この操作は、tert-ブチルアルコールが低毒性(クラス3溶媒)であるために毒性物質を潜在的に回避し、4)得られる乾燥凍結乾燥物が、水性調製物を用いて可能なものよりも、保管期間中の安定性をより高くする機会を可能にすることである。
【0104】
PALMを調製するために使用した溶媒混合液は、tert-ブチルアルコール(TBA)と水の混合液であることが好ましい。一実施形態において、水に対するTBAの割合比(percent ration)は、約70%:30%~約90%:10%である。別の実施形態において、比は約75%:25%~約85%:15%である。更に他の実施形態において、比は80%:20%である。
【0105】
第4の態様の一実施形態は、
i)第1の溶媒混合液に両親媒性ペプチドを可溶化させてペプチド溶液をもたらす工程と、
ii)第2の溶媒混合液にスフィンゴミエリンを可溶化させてスフィンゴミエリン溶液をもたらす工程と、
iii)第3の溶媒混合液に追加のリン脂質を可溶化させてリン脂質溶液をもたらす工程と、
iv)前記ペプチド溶液、前記スフィンゴミエリン溶液及び前記リン脂質溶液を混合してペプチド/スフィンゴミエリン/リン脂質溶液を形成する工程と、
v)前記ペプチド/スフィンゴミエリン/リン脂質溶液を凍結乾燥させる工程と、
を含む、PALMの調製プロセスを提供し、工程i)、ii)及びiii)は任意の順序で実施されてよく、前記第1、第2、及び第3の溶媒混合液は、tert-ブチルアルコールと水を含む。
【0106】
本開示の第4の態様の別の実施形態は、
i)両親媒性ペプチド、スフィンゴミエリン及び追加のリン脂質を混合してペプチド/スフィンゴミエリン/リン脂質混合物を形成する工程と、
ii)前記ペプチド/スフィンゴミエリン/リン脂質混合物を溶媒混合液に可溶化して、ペプチド/スフィンゴミエリン/リン脂質溶液を形成する工程と、
iii)ペプチド/リン脂質溶液を凍結乾燥ささえる工程と、
を含むPALMの調製プロセスを提供し、前記溶媒混合液はtert-ブチルアルコールと水を含む。
【0107】
本開示の第4の態様は更に、カーゴ分子を含むPALMを調製してPALM-カーゴ分子複合体を形成するプロセスを提供する。PALM-カーゴ分子複合体を調製するためには、ペプチド、スフィンゴミエリン、1種以上の追加のリン脂質及びカーゴ分子をそれぞれ、個別に溶媒混合液中で調製し、所望の配合物に応じて、特定のモル比で混合する。あるいは、ペプチド、スフィンゴミエリン、1種以上の追加のリン脂質及びカーゴ分子を、事前に可溶化することなく直接混合し、その後凍結乾燥の前に所望の溶媒混合液を用いて溶液にすることができる。
【0108】
本開示の第4の態様の一実施形態は、
i)第1の溶媒混合液に両親媒性ペプチドを可溶化させてペプチド溶液をもたらす工程と、
ii)第2の溶媒混合液にスフィンゴミエリンを可溶化させてスフィンゴミエリン溶液をもたらす工程と、
iii)第3の溶媒混合液に追加のリン脂質を可溶化させてリン脂質溶液をもたらす工程と、
iv)第4の溶媒混合液にカーゴ分子を可溶化させてカーゴ分子溶液をもたらす工程と、
v)前記ペプチド溶液、前記スフィンゴミエリン溶液、前記リン脂質溶液及び前記カーゴ分子溶液を混合してペプチド/スフィンゴミエリン/リン脂質/カーゴ分子溶液を形成する工程と、
vi)ペプチド/スフィンゴミエリン/リン脂質/カーゴ分子溶液を凍結乾燥させる工程と、
の工程を含む、PALM-カーゴ分子複合体の調製プロセスを提供し、工程i)、ii)、iii)及びiv)は任意の順序で実施されてよく、前記第1、第2、第3及び第4の溶媒混合液は、tert-ブチルアルコールと水を含む。
【0109】
PALM-カーゴ分子複合体を調製する別の実施形態は、
i)両親媒性ペプチド、スフィンゴミエリン、追加のリン脂質及びカーゴ分子を混合してペプチド/スフィンゴミエリン/リン脂質/カーゴ分子混合物を形成する工程と、
ii)前記ペプチド/スフィンゴミエリン/リン脂質/カーゴ分子混合物を溶媒混合液に可溶化させてペプチド/リン脂質溶液を形成する工程と、
iii)ペプチド/スフィンゴミエリン/リン脂質/カーゴ分子溶液を凍結乾燥させる工程と、
を含み、前記溶媒混合液はtert-ブチルアルコールと水を含む。
【0110】
得られる凍結乾燥ケークはより長時間保管可能であり、安定したまま残る。任意の好適な水溶液(例えば水または生理食塩水)を加えた後、内容物を穏やかに攪拌することで、凍結乾燥生成物を再水和する。5~30分間、50℃でPALM溶液をインキュベーションすることにより、PALM凍結乾燥物の再形成を高めることができる。次に、溶液を濾過滅菌し(0.2μm)、4℃で保管する。あるいは、ペプチド、リン脂質及びカーゴ分子を含む溶媒混合液を、凍結乾燥の前に濾過滅菌する。
【0111】
本開示の第5の態様は、疾患の治療を必要とする対象に、本開示の第3の態様の実施形態のいずれか1つに従った有効量のPALM-カーゴ組成物を投与することを含む、疾患の治療方法を提供する。
【0112】
スカベンジャ受容体B-1(SR-B1)は、HDLの本来のタンパク質成分であるアポリポタンパク質A-Iを結合し、コレステロールの細胞輸送を促進する膜受容体である。コレステロールは、悪性腫瘍で発見されるもの等の、細胞を増殖させるための必須栄養素である。SR-B1は、胸、前立腺、結腸、膵臓、副腎、皮膚、鼻咽頭及び卵巣癌を含むがこれらに限定されない多くの腫瘍細胞で高く発現する。両親媒性ペプチドの中には、SR-BIにより認識され結合されるものもある。PALMは、SR-BIに結合し、それによりカーゴ分子をSR-BI陽性細胞に選択的に送達するように設計された、リン脂質と両親媒性ペプチドの組み合わせから形成される。
【0113】
したがって、本開示の第5の態様の一実施形態は、疾患の治療を必要とする対象にPALM-薬剤を投与することを含む、SR-B1受容体の過剰発現に関係する疾患の治療方法を提供する。一実施形態において、本方法は、癌の治療を必要とする対象にPALM-カーゴ分子組成物を投与することによる、癌の治療方法である。
【0114】
薬学的使用のために、凍結乾燥したPALMを、注射用滅菌水、通常の滅菌生理食塩水または滅菌5%デキストロース溶液等の通常の希釈液を用いて、使用の時点、例えば、病院または医者の事務所で便利に再構成可能な単回用量または複数回用量容器内に提供してよい。好適な容器に次に、滅菌した混合物を無菌状態で充填し、凍結乾燥して、適切に密封して凍結乾燥物質の滅菌性を維持する。好適な容器としては、再構成のために、例えばシリンジによる希釈剤の導入を可能にする、ゴムシールを含むバイアル瓶または等価物が挙げられるが、これらに限定されない。このようなPALM調製物は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内注射等の非経口的投与に好適である。
【実施例0115】
実施例1 ペプチド合成及び精製
GenScript USA,Inc.(Piscataway,NJ)の標準的なFmoc固相合成技術によりペプチドを生成した。標準的な操作を用いたN末端のアセチル化、及びC末端のアミド化により、特定のペプチドの末端アミノ酸を修飾した。ペプチド精製のための標準的な高性能液体クロマトグラフィー法により、ペプチドを、クロマトグラフィーを用いて90%を超える純度まで精製した。HPLCと質量分光分析により純度を確認した。
【0116】
実施例2 パクリタキセル2’-コレステリルカーボネート(XC)の合成
50mgのパクリタキセルを2mLのクロロホルムに溶解させた後、2mLのクロロホルム中のコレステロールクロロホルメート(1.5モル過剰)、加えて4mLのN,N-ジイソプロピルエチルアミン及び2mLのアセトニトリルと混合した。混合物を周囲温度にて一晩攪拌した後、ロータリーエバポレーターで乾燥させた。次に、得られたオフホワイトの沈殿物を酢酸エチル/ヘキサン(3:1)中に溶解させて水で抽出し、乾燥させた後でクロロホルムに再度溶解させた。移動相として酢酸エチル/ヘキサン(3:1)を使用した薄層クロマトグラフィーにより、生成物の形成を確認した(パクリタキセルのRfは0.4、TaxーCholのRfは0.92)。次に、移動相として酢酸エチル/ヘキサン(3:1)を用いたシリカゲルカラム上で生成物を更に精製し、表題の化合物(1)を得た。質量分析及びNMR分析により構造を確認した。
【化7】
【0117】
実施例3 パクリタキセル2’-δ-トコトリエノールカーボネート(XT3)の合成
工程1。δ-トコトリエノールのp-ニトロフェニルカーボネートの合成
【化8】
【0118】
δ-トコトリエノール(25mg、0.0629mmol)の無水塩化メチレン(1.5mL)溶液に4-ニトロフェニルクロロホルメート(51mg、0.25mmol)、及びトリエチルアミン(triethylmine)(35μL、0.25mmol)を室温で添加した。反応混合物を24時間室温で攪拌した後濃縮し、その後、所望の生成物(2)を、酢酸エチル/ヘプタン(10:90)を溶出液として使用する分取TLCを用いて得た。所望の生成物を黄色粉末(18mg)として得た。H NMR(CDCl):δ 8.30 (d, 2H), 7.45 (d, 2H), 6.80 (dd, 2H), 5.05-5.20 (m, 3H), 2.72-2.78 (t, 2H), 2.18 (s, 4H), 1.95-2.15 (m, 4H), 1.72-1.85 (m, 4H), 1.68 (s, 3H), 1.55-1.62 (br s, 12 H), 1.30 (br s, 5H)。
【0119】
工程2。パクリタキセル(3)のδ-トコトリエノールカーボネートの合成
【化9】
【0120】
化合物(2)(18mg、工程1の生成物)の塩化メチレン(2mL)溶液、パクリタキセル(28mg)及びDMAP(10mg)を室温で混合する。混合物を室温で24時間攪拌した。混合物を濃縮し、酢酸エチル/ヘプタン(50:50)を溶出液として用いる分取TLCを用いて精製した。所望の生成物(3)(17mg)を無色固体として得た。TLC分析(Rf 0.25、EA/ヘキサン 1:1)。H NMR(CDCl): δ 8.20 (d, 2H), 7.75 (d, 2H), 7.60-7.62 (m, 1H), 7.30-7.52 (m, 9H), 6.90-6.95 (d, 1H), 6.60-6.75 (dd, 2H), 6.20-6.30 (m, 2H), 6.00-6.05 (m, 1H), 5.70 -5.75 (d, 1H), 5.50 (s, 1H), 5.10-5.20 (br s, 2H), 4.95-5.00 (d, 1H), 4.30-4.35 (br s, 1H), 4.20-4.30 (dd, 2H), 3.75-3.80 (d, 1H), 2.70-2.75 (m, 2H), 2.30-2.60 (m, 7H), 2.23-2.27 (m, 11H), 1.50-2.20 (m, 26H), 1.25 (m, 9H), 1.15 (s, 3H)
【0121】
実施例4 ペプチド両親媒性脂質ミセル(PALM)の調製
80%のtert-ブチルアルコール(TBA)と20%の水で構成される溶媒混合液中で、ペプチドとリン脂質の個別の原液を調製し、10mMのペプチド、20mMの1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、または20mMの1-パルミトイル-2-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)及び20mMの卵SMの個別の溶液を得た。原液のアリコートを混合して、10モル当量のペプチド、42モル当量のホスファチジルコリン、及び18モル当量のSMを含有する最終溶液を得た。溶液を1.5mLのガラス瓶の中で混合して冷凍し(-70℃)、一晩-5℃~-10℃で凍結乾燥した。得られた凍結乾燥ケークに、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を添加して再水和し、続いて内容物を穏やかに攪拌した。PALM溶液を50℃で10分間インキュベーションすることにより、PALMの形成を完了させた。ペプチド複合体の中には、加熱時に濁ったままだったものもあり、透明溶液を得るためにこれらはまた、-80℃への冷凍(1サイクル)に通した後、室温まで解凍させた。PALM調製物の質は、外観より明らかであった。形成した任意のナノ粒子により示される、外観上透明な調製物は、直径が約20nm未満であった。表5に結果を示す。
【表6】
【0122】
実施例5 蛍光染料DiIを含有するPALMの調製
10mMのペプチド(40μLアリコート)を、小型ガラス瓶の中で20mMのPOPC(56μL)、20mMのSM(卵)(24μL)、及び2.5mMのDiI(16μL)と混合した。ペプチドと脂質溶液を、80%TBA/20%水の中で調製した。DiI原液を92%TBA/8%水の中で調製した。溶液を凍結乾燥させ、0.2mLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を添加して、得られたケークを再水和した。溶液を手短に攪拌し、水浴で音波処理をし(約15秒間)、20分間、50℃に加熱しているブロックに配置した。
【0123】
実施例6 ミリプラチン(Miraplatin)含有PALMの調製
2.5モル当量のペプチドに対応する、80%TBA/20%水中の、10mMの配列番号:25(50μLアリコート)をそれぞれ、40mMと20mM原液からの、POPC(3モル当量)及び卵SM(7モル当量)と混合し、同一の溶媒混合液を作製した。この混合液に、100%TBAを用いて調製した1mM原液からの0.75モル当量のミリプラチン(MedKoo Biosciences,Raleigh,NC)を添加した。溶液を凍結乾燥させ、5%デキストロースの水溶液(0.4mL)を添加することにより、得られたケークを再水和した。溶液を手短に攪拌し、水浴で音波処理をし(約15秒間)、20分間、50℃に加熱しているブロックに配置した。得られた透明溶液を、0.2μm孔径のポリエーテルスルホン滅菌フィルターを通過させて4℃で保管した。DLSによる粒径分析(実施例11)は、8nmの流体力学的平均直径を示した。SECは、サイズがHDLに相当する単一粒子の集団を確認した。SECクロマトグラムを図2に示す(ミリプラチン(実線)、ヒトHDL(破線))。
【0124】
実施例7 パクリタキセルコレステリルカーボネート(XC)含有PALMの調製
XC含有PALMの調製は、以下の点を除外して基本的に、実施例6に記載したとおりである。92%TBA/8%水中の10mM原液からの、合計で1.5モル当量のXCを、他のPALM構成成分と混合した。溶液を凍結乾燥させ、0.4mLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を用いて得られたケークを再水和した。DLSにより測定した、この調製物の流体力学的平均直径は9nmであった(実施例11)。SECによるサイズ分析は、直径が主に10nmの単一粒子集団を示した(図3)。
【0125】
実施例8 パクリタキセルδ-トコトリエニルカーボネート(XT3)含有PALMの調製
2.5モル当量のペプチドに対応する、80%/TBA20%水中の、10mMの配列番号:25のペプチド(50μLアリコート)を、20mM原液からのPOPC(7モル当量)及び卵SM(3モル当量)と混合し、同一の溶媒混合液を作製した。この混合液に、92%TBA/8%水中の10mM原液からのXT3(1モル当量)を加えた。0.4mLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を用いて凍結乾燥ケークを再水和した。
【0126】
実施例9 R4Fは、パクリタキセルδ-トコトリエニルカーボネート(XT3)含有PALMの調製に不適である
配列番号:25及びR4F(表1)を用いて、実施例9のとおりにPALM調製を行った。室温及び4℃で透明溶液のままであった、配列番号:25のペプチドを用いて作製したPALMとは異なり、R4F含有PALMは室温で透明溶液だったが、4℃では濁ったゲルに変化した。室温まで温めると、ゲルは透明液体に戻った。PALM調製物のサイズを分析した(実施例11)。動的光散乱法は、配列番号:25のペプチドを用いたPALMは、8nmの平均流体力学的直径(容積強度)を有することを示した。R4Fを用いたPALMについての同一の分析は、粒子集団の94%は11nmの平均流体力学的直径であり、残りは32nmであることを示した。SECは、配列番号:25のペプチドを用いたPALMの均一なサイズ分布を確認した(図4)。対照的に、R4Fを用いたPALMは、配列番号:25のPALMより大きいサイズ、及び8nmより小さいサイズでの溶出ピーク範囲を示した。7nm未満の粒子の感度は極めて弱いために、より小さな粒子がDLSにより検出できなかったことは、驚くことではない。これらの結果は、R4FはPALM調製用の好適なペプチドではないことを示す。
【0127】
実施例10 配列番号:25のペプチドを用いて調製したPALMにフェンレチニドを加える
2.5モル当量のペプチドに対応する、80%TBA/20%水中の、10mMの配列番号:25のペプチド(35μL)をそれぞれ、40mMと20mM原液からの、POPC(3モル当量)及び卵SM(7モル当量)と混合し、同一の溶媒混合液を作製した。同一の溶媒混合液中に、20mMのフェンレチニド(2モル当量)もまた添加した。溶液を凍結乾燥させ、0.325mLのリン酸緩衝生理食塩水を用いて得られたケークを再水和した。50℃にて、20分以内に溶液は透明になった。SECによる分析(実施例11)は、全ての構成成分がシングルピークとして、8nm~10nmの直径範囲で溶出したことを示した(図5)。
【0128】
実施例11 PALMサイズの測定
PALM調製物のサイズとサイズの均一性を、DLS及びSECにより測定した。流体力学的平均直径に基づくサイズを、Nicomp 370粒径分析器を用いたDLSにより測定した。分析器をラテックス規格で較正した。本明細書、及び特許請求の範囲で言及される粒径は、明確に別様に示されない限り、上述のとおりにDLSを用いて計算される。
【0129】
PALM粒子の相対的な流体力学的サイズもまた、Beckman/Coulter Model 126ポンプとModel 128ダイオードアレイ検出器に接続した、GE Superose 6 Increaseカラム(10×300mm)を含むSECにより測定した。移動相(150mMのNaCl、6mMのNaPO4(pH7.4))の流速は、0.5mL/分であった。溶出液を215及び280nmの波長で監視した。タンパク質分子量基準を注射することにより、システム性能を確認した(図3)。
【0130】
実施例12 BHK(SR-BI)細胞内での、PALMのSR-BI選択性
NIHから入手したBHK(SR-BI)細胞を用いて、SR-BI相互作用調査を行う。GeneSwitch(商標)システム(Invitrogen)により、誘発性ヒトSR-BI遺伝子を用いて、細胞を安定的にトランスフェクションした。細胞を、それぞれ200ug/mLのゼオシン及びハイグロマイシンを含有する増殖培地(10%ウシ胎児血清を含有するダルベッコ改変イーグル培地)に配置した(96ウェルプレート)(8000細胞/ウェル)。24時間のインキュベーション後、ダルベッコ改変イーグル培地内の増殖培地を除去し、0.2%ウシ血清アルブミンで交換した。SR-BI発現用に誘発される細胞の培地は、DMSO原液から添加した10nMのミフェプリストンもまた含有した。DMSOのみを、非誘発細胞の培地に添加した。誘発培地を24時間後に除去し、DiI標識PALM(32μgペプチド/mL)またはDiI標識HDL(19μgタンパク質/mL)含有培地(Kalen Biomedical,Montgomery Village,MD)で置き換えた。ダルベッコ改変イーグル培地中の0.2%ウシ血清アルブミン内の、DiI標識PALM(実施例5)またはDiI標識HDLのアリコートを希釈することにより、試験培地を調製した。使用前に、溶液を0.2μm孔径のポリエーテルスルホン滅菌フィルターに通した。細胞を4時間インキュベーションした。次に、(カルシウムとマグネシウムを含む)ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水中の0.1%アルブミンを用いて、細胞を3回洗浄した。最後の洗浄は、200uL/ウェルのt-ブタノール/水(95%/5%)で交換した。覆ったプレートを室温で30分間静置したままにし、時折振盪させた。各ウェルの蛍光は、Molecular Dynamics Gemini蛍光プレートリーダーで550nmカットオフフィルターを用いて、520nm励起及び580nm発光で検出された(図9)。
【表7】
【0131】
実施例13 パクリタキセルの定量化
1体積の水性サンプルを4体積の酢酸エチル/アセトン/メタノール(70/30/5(体積/体積))と混合することにより、パクリタキセル、XT3及びXCを水性サンプルから抽出した。振盪及び遠心分離後に得た上の有機層を回収し、溶媒蒸発及び減圧により乾燥させ、HPLC移動相(メタノール/水(65/35(体積/体積))に再溶解させた。再構成したサンプルのアリコート(20μL)を、Macherey-Nagelカラム(Nucleosil 10-5 C18を有し、4×250mm)を通して1.2mL/分の流速でHPLCに注入し、紫外検出器を230nm波長で検出した。
【0132】
実施例14 ミリプラチン含有PALMは、シスプラチン同様にPC-3細胞増殖を阻害する
PC-3細胞(アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関、CRL-1435)を、1ウェル(100μL)あたり5×10細胞の密度で96ウェルプレートに播種し、10%ウシ胎児血清で補充したF-12K培地で構成される増殖培地の中で、約70%コンフルエンスとなるまで増殖させた(24時間)。次に、100μLの新鮮な増殖培地(対照)、または、5%デキストロース内で調製した、もしくは実施例6で調製したように、PALM内の当量のMPを用いて調製した、100倍濃縮原液から添加した種々の濃度のシスプラチン(例えば、培地内で0μM、及び0.1~100μMの終濃度)で補充した増殖培地のいずれかにより増殖培地を交換した。各条件を3通りで試験した。プレートを48時間インキュベーションした。(カルシウムとマグネシウムを含む)ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水に20μLのMTT(5mg/mL)を添加し、3時間インキュベーションすることより、チアゾリルブルーテトラゾリウムブロマイド(MTT)アッセイを用いて細胞生存能をアッセイした。次に、培地を注意深く取り除き、200μLのジメチルスルホキシド(DMSO)で交換した。プレートを15分間、オービタルシェーカー上で穏やかに攪拌した。各ウェルの吸光度は570nmで読み取られた。50%増殖抑制(IC50)をもたらす濃度を、データをロジスティック方程式に非線形回帰により当てはめることで測定した。対照ウェルの平均対照ウェルは100%増殖を示した(図6)。
【0133】
実施例15 SR-BI抗体は、ミリプラチン含有PALMによるPC-3細胞増殖阻害を弱める
実施例14の通りにPC-3細胞を増殖させた。SR-BI抗体(Novus Biologics,NB400-113)の存在下で試験する細胞を、1/400に希釈した抗体原液を含有する増殖培地内で1時間プレインキュベーションした。次に、全ての培地を取り除き、実施例13の通りに調製した表示量の白金化合物を含有する増殖培地で交換した。抗体で治療した細胞用の、PALM(MP)を含む増殖培地は、抗体原液を1/400に希釈した抗体を含有した。細胞を5時間インキュベーションした。次に、全ての培地を取り除き、培地で細胞を1回洗浄した後、増殖培地中で更に43時間インキュベーションした。実施例14のとおりに、MTTアッセイにより細胞の生残を測定した(図7)。
【0134】
実施例16 PALM内のXT3は、SKOV-3細胞増殖XCのブロックにおいて、PALM内のXCよりも活性であった
SKOV-3卵巣癌細胞(アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関、HTB-77)を、1ウェル(100μL)あたり5×10細胞の密度で96ウェルプレートに播種し、10%ウシ胎児血清を補充したマッコイ培地で構成される増殖培地の中で、約70%コンフルエンスとなるまで増殖させた(24時間)。次に増殖培地を、100μLの新鮮な増殖培地(対照)、または種々の濃度のパクリタキセル、PALM(XC)もしくはPALM(XT3)を補充した増殖培地で交換した。DMSO内のパクリタキセルの5mM原液を増殖培地に希釈した後、濾過滅菌(0.2μmフィルター)することにより、20μMのパクリタキセル試験液を調製した。20μM溶液のアリコートを増殖培地中で5倍に希釈し、4μMのパクリタキセルを得た。4μMのパクリタキセルを用いて5倍希釈プロセスを継続し、800nMのパクリタキセル溶液を得た。増殖培地中で、パクリタキセルの濃度が0.051nMとなるまで、このプロセスを継続した。このようにして得た9種類の溶液のそれぞれについて、4つの100μLアリコートを、細胞を含有する個別のウェルに加えた。PALM(XC)及びPALM(XT3)試験溶液の調製のために、類似ではあるが、修正を加えたプロセスを使用した。試験した最大濃度は50μMであり、これは、PALM(XC)及びPALM(XT3)の1mM調製物(実施例7、8)を増殖培地内で希釈した後濾過滅菌することにより、調製した。最も新しい各希釈液の5倍希釈プロセスを8回繰り返して得た最低濃度は、0.13nMであった。試験溶液を用いて72時間、細胞をインキュベーションした。この期間の終わりに、実施例14のとおりに、MTTアッセイにより細胞生存能を測定した(図8)。
【0135】
実施例17 PALM(XT3)によるBHK(SR-BI)細胞増殖の阻害はSR-BI依存性である
増殖培地(10%ウシ胎児血清、並びにゼオシン及びハイグロマイシンをそれぞれ200ug/mL含有するダルベッコ改変イーグル培地)を用いて、96ウェルプレート内にBHK(SR-BI)細胞を配置し(3000細胞/ウェル)、24時間インキュベーションした。DMSO原液から添加した10nMのミフェプリストン(誘発)、または当量のDMSOのみ(対照)のいずれかを含有するダルベッコ改変イーグル培地の中で、増殖培地を0.2%ウシ血清アルブミンで交換した。細胞を24時間インキュベーションした。次に培地を、ダルベッコ改変イーグル培地の中の0.2%ウシ血清アルブミン内のPTXまたはPALM(XT3)で、示した濃度で交換し、細胞を12時間インキュベーションした。次に、それらの培地を通常の増殖培地で交換し、細胞を更に36時間インキュベーションした。試験作用物質非含有の細胞に対する細胞増殖割合を、MTTアッセイにより測定した(図10)。
【0136】
実施例18 ヌードマウスにおけるSKOV-3卵巣細胞異種移植片抑制
最大耐性用量を、市販の業者から入手したメスマウス(Foxn1nu)で測定する。クレモフォアEL及びエタノールを用いて配合したパクリタキセルからなるTaxol(登録商標)との比較で、PALM(XT3)の効能を試験する。レベル毎に8匹のマウスを使用して3回用量レベルで各作用物質を試験する。試験するTaxol(登録商標)のレベルは9、15、25mg/kgである。マウスに2日毎×4回、静脈内投与を行う。別のビヒクル対照群を、適切な体積の生理食塩水またはクレモフォアEL/エタノールビヒクルで治療する。全てのマウスの重さを毎日量り、臨床的徴候を観察する。最後の投薬後、あらゆる遅延毒性を検出するために、全てのマウスを14日間管理した。
【0137】
効能試験のために、ドナー動物から回収した30~60mgの腫瘍断片を、マウスに皮下移植した。明らかな消耗が見られた、または瀕死状態であるため、1gを超える腫瘍を有する、または潰瘍を生じたマウスを安楽死させる。実験での全群に関して、推定の平均腫瘍質量が100~150mgであるときに、投薬(1日2回×4)を開始する。2つのビヒクルのそれぞれについて、ビヒクル対照群を含む10個の治療群(1群あたり8匹のマウス)、Taxol(登録商標)に対して、0.6X、1X及び1.67Xの最大耐性用量の3つの治療群、並びに、PALM(XT3)に対して、0.3X、0.6X、1X、1.7X及び2.8Xの最大耐性用量の5つの群が存在する。全てのマウスの臨床的徴候を、少なくとも1日1回観察する。体重と腫瘍測定を、週に3回記録する。最後の投薬後も60日間にわたり、腫瘍増殖の遅延データを入手するために、マウスの評価を継続する。
【0138】
単位密度を推定する、扁長楕円の体積の式:腫瘍量(mg)=(L×W2)/2(式中、LとWは、厚さを有する、対応する矩形腫瘍長さ及び幅の測定(mm)である)により、腫瘍量(mg)を推定する。効能を評価するために使用した一次エンドポイントは、1)(対照群の中央腫瘍質量で除した、治療群の中央腫瘍質量)×100として定義される、%T/C、2)完全、及び部分的腫瘍応答、3)腫瘍増殖の遅延、並びに4)調査の終わりにおける、腫瘍がない生存者の数である。ログランク検定(カプランマイヤー)により、全ての調査群における、評価サイズに対する中央時間を分析し、群の間に任意の有意差が存在するか否かを測定する。
【0139】
実施例19 δ-トコトリエニル(N)-ゲムシタビンカルバメート
Guo及びGallo(J.Org.Chem.1999,64,8319)の手順に従い、ジ-tert-ブチルジカーボネートを用いてtert-ブトキシカルボニル(BOC)エステルに転換することにより、ゲムシタビンのヒドロキシル基を保護し、(1)を得る。
【化10】
【0140】
化合物4を無水ジクロロメタンに溶解させ、終濃度が0.2Mの化合物(4)にする。溶液中の化合物(4)の各モルに対して、1.2モル当量の化合物(2)(塩化メチレン中で濃度0.5M)、及び3モル当量のDMAPを、室温で混合する。混合物を室温で24時間攪拌する。言及したとおり、得られた生成物をトリフルオロ酢酸で脱保護する。100%ジクロロメタンから開始し、徐々に濃度を10%メタノールまで増加させる、ジクロロメタン及びメタノール溶出液を使用したフラッシュカラムクロマトグラフィーにより純粋な化合物を得、表題の化合物(5)を得る。
【化11】
【0141】
実施例20 α、βまたはγ-トコトリエノールを用いる(N)-ゲムシタビンカルバメートの合成を、実施例19同様に行う
【0142】
実施例21 コレステリル(N)-ゲムシタビンカルバメート
化合物(4)をコレステロールクロロホルメート(市販)と反応させて、実施例19のとおりに脱保護し、表題の化合物(6)を得るという点を除いて、実施例19に記載のものと同様の方法で、コレステリル(N)-ゲムシタビンカルバメート(6)の合成を行う。
【化12】
【0143】
実施例22 コハク酸及びジグリコール酸を介して脂肪族アルコールに結合したパクリタキセル
無水ピリジンの中で、脂肪族アルコールを4-(ジメチルアミノ)ピリジン、及び無水コハク酸またはジグリコール酸無水物と、室温で24時間一定に攪拌することにより、サクシネートまたはジグリコレートジエステル結合を介して脂肪族アルコールに結合したパクリタキセルの合成を達成する。ジクロロメタン中の0.1N HCLにより、反応をクエンチする。石油エーテル中の酢酸エチルを用いた分取TLCまたはフラッシュカラムクロマトグラフィーにより、生成物を入手する。アルコール-コハク酸、またはアルコール-ジグリコール酸コンジュゲートを、乾燥ジクロロメタンの中で4-(ジメチルアミノ)ピリジン及びN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドと混合する。パクリタキセルを反応混合物に添加する。24時間後、水で反応をクエンチし、ジクロロメタンを用いて抽出する。酢酸エチル/ヘプタン(50:50)を溶出液として用いる分取TLCにより、生成物を得る。
【0144】
実施例23 SKOV-3細胞内での、PALM(XT3)毒性へのSR-BI抗体の効果
SKOV-3を配置し、実施例16のとおりに24時間インキュベーションする。次に増殖培地を、抗-SRBI(1/250希釈)(NB400-113,Novus Biologicals)を用いて、または用いずに、0.5%アルブミン含有無血清培地、及び示した濃度の試験作用物質と交換する。細胞を12時間インキュベーションした。次に、0.5%アルブミン含有無血清培地で細胞を洗浄し、増殖培地中で更に60時間増殖させた。MTTアッセイにより細胞増殖を検出した(図11)。
【0145】
本開示の多数の実施形態について記載したが、基本的な実施例を変更して、本発明の方法及びプロセスを用いる、または包含する他の実施形態を提供してよいことが明らかである。実施形態及び実施例は例証の目的のためのものであり、開示を限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2023153906000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列:X-X-X-X-X-X-X-X-X-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20を含むペプチド。(式中、Xはアミノ酸Dであり、X及びX20はそれぞれアミノ酸Vであり、X、X、X10及びX13はそれぞれ、L及びFからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X、X12及びX19はそれぞれアミノ酸Qであり、Xはアミノ酸AまたはAibであり、X、X16及びX18はそれぞれアミノ酸Kであり、X及びX15はそれぞれアミノ酸Eであり、X及びX14はそれぞれ、A、L、F及びAibからなる群から独立して選択されるアミノ酸であり、X11はA、Aib及びNからなる群から選択されるアミノ酸であり、X17はW、F及びLからなる群から選択されるアミノ酸であり(配列番号:1)、前記ペプチドは所望により、N末端がアシル化されているか、C末端がアミド化されているか、または共にN末端がアシル化されC末端がアミド化されており、前記ペプチドは20~24個のアミノ酸長である。)