(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153912
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】集光追尾光電変換装置
(51)【国際特許分類】
H02S 40/22 20140101AFI20231011BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H02S40/22
G02B3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123913
(22)【出願日】2023-07-29
(62)【分割の表示】P 2019092291の分割
【原出願日】2019-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2018094185
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516303174
【氏名又は名称】株式会社サンマリオン
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(72)【発明者】
【氏名】中谷 誠和
(72)【発明者】
【氏名】山田 昇
(57)【要約】 (修正有)
【課題】厚みが薄く、中央部に機械機構がなくすことができるため美観性が良く、低コストでの実現が可能な集光型光電変換装置を提供する。
【解決手段】集光追尾光電変換装置は、球状集光レンズ又は球状集光レンズ塊、光電変換パネル、駆動装置、制御装置及び追尾機構を含み、球状集光レンズ塊は2つ以上の球状集光レンズからなり、光電変換パネルとして、集光レンズ、複数の太陽電池セル及び回路を備える。追尾機構は複数の駆動機構からなり、片方の駆動機構はレンズを取り付けられ垂直動作をし、もう片方の駆動機構は光電変換パネルを取り付けられ水平動作をする。これらの機構により集光追尾光電変換装置は太陽光追尾を行う。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
1つの球状集光レンズ、または、2つ以上の球状集光レンズを前記球状集光レンズ中心部の高さが同じになるように板状に接合した球状集光レンズ塊と
追尾機構と、
光電変換パネルからなり、
前記追尾機構は
前記ベース部の上に配置され、前記ベース部に設けられたA駆動機構と、
前記A駆動機構によって前記ベース面の水平方向に移動可能なA移動部と、
前記ベース部の上に配置され、前記ベース部に設けられたB駆動機構と、
前記B駆動機構によって前記ベース部の垂直方向に移動可能なB移動部を備え、
前記A駆動機構は、
前記A移動部を前記ベース部上に支持するための第1可動支持部及び第2可動支持部と、
前記第1可動支持部を第1方向に移動させる第1駆動部と、前記第2可動支持部を前記第1方向に対して垂直方向である第2方向に移動させる第2駆動部とを含み、
前記A移動部の上には少なくとも1つ以上の光電変換パネルが配置され、
前記B移動部には球状集光レンズ、または、球状集光レンズ塊が配置され、
前記追尾機構を介して前記光電変換パネルと前記球状集光レンズ、または、前記球状集光レンズ塊が相対的に動作することを特徴とする集光追尾光電変換装置。
【請求項2】
前記第1駆動部は、前記第1方向に延びる第1移動軸と、前記第1移動軸に沿って前記第1可動支持部を移動させるための駆動装置とを含み、
前記第2駆動部は、前記第1方向に延びる第2移動軸と、前記第2移動軸に沿って前記第2可動支持部を移動させるための駆動装置とを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の集光追尾光電変換装置。
【請求項3】
前記第1駆動部は、回転部材及び直線移動部材を有し且つ前記回転部材の回転動作を前記直線移動部材の第1方向の直線動作に変換する変換機構と、回転部材に回転入力を加えるモータとを含み、
前記第1可動支持部は、前記第1駆動部における前記直線移動部材と共に移動するように該直線移動部材に取り付けられており、
前記第2駆動部は、回転部材及び直線移動部材を有し且つ前記回転部材の回転動作を前記直線移動部材の第2方向の直線動作に変換する変換機構と、回転部材に回転入力を加えるモータとを含み、
前記第2可動支持部は、前記第2駆動部における前記直線移動部材と共に移動するように該直線移動部材に取り付けられていることを特徴とする、
請求項1~2のいずれか一つに記載の集光追尾光電変換装置。
【請求項4】
第1光電変換セルの各々は、光電変換セル支持台の表面上に分散的に配置され、
前記第1光電変換セルの総受光面積は、前記球状集光レンズ塊の受光面面積の10%以下である、
前記光電変換パネルを有することを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1つに記載の集光追尾光電変換装置
【請求項5】
少なくとも前記ベース部と、前記光電変換セル支持台について
前記散乱光を透過する高透過板からなり、
前記高透過板は前記球状集光レンズ塊によって集光された太陽光を受光して、該太陽光の少なくとも散乱光成分を透過することを特徴とする、
請求項1~4のいずれか1つに記載の集光追尾光電変換装置。
【請求項6】
前記光電変換パネルについて、
前記第1光電変換セルの下部、又は周辺部に
前記第1光電変換セルより大きく、
前記第1光電変換セルと異なる光電変換素材からなる第2光電変換セルを備える
前記光電変換パネルを有することを特徴とする、
請求項1~5のいずれか1つに記載の集光追尾光電変換装置。
【請求項7】
前記第1光電変換セルに接する形で直上部に、第1光電変換セルとほぼ同等の大きさの接触面積を有する補助集光部品を設けることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか1つに記載の集光追尾光電変換装置。
【請求項8】
前記集光追尾光電変換装置について、
第1光電変換セル、第2光電変換セルとしてそれぞれ、太陽電池セルを用いた
請求項1~7のいずれか1つに記載の集光追尾太陽光発電装置。
【請求項9】
前記集光追尾光電変換装置について、
第1光電変換セルとして、センサを用いた
請求項1~8のいずれか1つに記載のLIDAR装置。
【請求項10】
前記集光追尾光電変換装置について、
第1光電変換セルとして、光電変換受光器を用いた
請求項1~9のいずれか1つに記載の光無線給電受光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光追尾光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、非集光型光電変換パネルや、レンズ、ミラー等の集光器を備えた集光型光電変換パネルが種々開発されている。また、予め設定された太陽軌道を追尾するようにこれら光電変換パネルを駆動する駆動装置と、該駆動装置の駆動量を予め設定された太陽軌道に合うように算出し、駆動装置を制御する制御装置とからなる追尾機構を備えた集光追尾光電変換装置も開発されている(特許文献2~5)。
【0003】
また、球状レンズは角度依存性がないが、球面収差が発生してしまう。この問題に対処するために、球内部の屈折率を変化させ、球表面に焦点が合い、かつ球面収差を発生させないレンズも開発されている(特許文献1,非特許文献1-3)。
【0004】
さらに近年では、直達光を高倍率で光電変換セルに集光させることが可能なだけでなく、入射した散乱光を効率よく透過させ、多目的に利用することが可能な集光型光電変換パネルと、前記のごとき追尾機構とを備えた集光追尾光電変換装置も提案されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-101502号広報
【特許文献2】特開2003-324210号公報
【特許文献3】特開2012-069610号公報
【特許文献4】特開2013-021286号公報
【特許文献5】特開2014-095280号公報
【特許文献6】特開2016-062931号公報
【非特許文献1】Hal Schrank and John SanFord “A Luneburg-Lens Update”, IEEE Antennas and Propagation Magazine, Vol, 37, No 1, February 1995
【非特許文献2】Panagiotis Kotsidas, Vijay Modi,Jeffery M Gordon “Nominally stationary high-concentration solar optics by gradient-index lenses.” OPTICAL EXPRESS vol 19, No 3,(2011)
【非特許文献3】Jeffrey M.Gordon “Spherical gradient-index lenses as perfect imaging and maximum power transfer devices.” APPLIED OPTICS vol 39,No 22 (2000)
【非特許文献4】Makoto Tabata, ET AL. “Development of transparent silica aerogel over a wide range of densities“ Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 623 (2010) 339-341
【非特許文献5】G.TORALDO “Sperical Lenses for Infrared and Microwaves”, Journal of Applied Physics 32, 2051(1961)
【非特許文献6】TOMOS L. APRHYS “The Design of Radially Symmetric Lenses”, IEEE TRANSACTION ON ANTENNAS AND PROPAGATION, JULY 1970
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な追尾装置は、耐風性に優れた構造を実現するために装置が大がかりであるが、その割には太陽電池の積載量が多くない。そのため、分散可動型の追尾装置も提案されているが、該追尾装置は、機構が複雑であり、コストが上昇してしまう。また、該追尾装置は、設置時や搬送時の不具合が大きい。
【0007】
さらに、従来の一般的な追尾装置には、その構成部材として、光透過性がないか非常に低いものが用いられている。そうすると、例えば入射した散乱光を透過させることが可能な集光型光電変換パネルを、一般的な追尾機構で追尾制御した場合、該集光型光電変換パネルを透過した散乱光は、追尾機構を透過することができず、散乱光を透過させることが可能な集光型光電変換パネルの利用価値が低下してしまう。
【0008】
また、集光型光電変換パネルと可動分散型の追尾機構について建築物につけるとなると、美観性、設置利便性の問題により、薄型であること、中央部に機構がないことが求められている。
【0009】
以上の点に鑑み、本発明の目的は、集光型光電変換パネルと分散可動型の追尾機構とを備えており、直達光を高倍率で集光することが可能であると同時に、散乱光を効率よく透過させ、多目的に利用することも可能なだけでなく、薄型で設置時の利便性や搬送時の可搬性に優れ、中央に機構部を配さないことも可能な、低コストでの実現が可能な集光追尾光電変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は集光型光電変換装置の集光部分に係る球状層構造集光レンズ、球状層構造集光レンズ塊を内包する。
本発明の一実施形態に係る球状層構造集光レンズは、
90%以上の電磁波を透過する球状最外層透明部と
90%以上の電磁波を透過し、
前記球状最外層透明部より0.02以上屈折率が低く、
屈折率が1.48以下で、
前記球状最外層透明部半径の60%以上90%以下の半径を持ち、
球面収差を相殺する屈折率と半径を持つ球状最内層透明部からなることを特徴とする。
【0011】
本実施形態に係る球状層構造集光レンズによると、球状レンズであり角度依存性はないが、そのもとで長焦点距離かつ球面収差を排することができる。
【0012】
集光追尾光電変換装置は太陽光を集光、追尾して、太陽電池セルを光電変換セルとして用いた集光追尾太陽光発電装置として用いることができる。集光追尾太陽光発電装置にとって角度依存性がないことは位置移動だけで集光がなせるということにつながる。長焦点距離は最大許容角の増大につながる。
【0013】
集光追尾光電変換装置は外部環境を追尾し、入射光を集光して、センサを光電変換セルとして用いたLIDER(LIGHT DETECTION AND RANGING)装置として用いることができる。
LIDER装置にとって角度依存性がないことは全方位レーダーを作りやすくなる。長焦点距離かつ球面収差がないことはセンサ受光器面積が同一として球レンズ表面から引き離したうえで回り込み電磁波が減りノイズが少ない測定が行えるということである。また、LIDER装置においては各センサにおける利得が課題となるが、該集光追尾光電変換装置は1光電変換セルであるセンサごとに球状集光レンズが対応し、球状集光レンズ塊がまとまって外部環境を追尾するため、入射光が少なくなる遠距離に対しての利得が向上し、遠方に対してのセンサ感度が向上する。
【0014】
集光追尾光電変換装置は特定の方向から来た光を曲げて第1光電変換セルとして光電変換受光器を用いて電力に変換する光無線給電受信機として用いることができる。光無線給電は、直進度の高い伝達光を用いて電気を遠方に給電させる装置であるが、送信側、受信側の位置が給電のたびに異なる。そのため、光無線給電においては伝達光の向きを整え、かつ多方向からくる伝達光を光電変換受光器に誘導する必要がある。該集光追尾光電変換装置は光無線給電受信機として特定の方向から来た伝達光を位置移動で光電変換受光器に誘導する。これにより、光無線給電受信を多方向の送信機に対して行うことができる。伝達光としてはレーザーを用いることができる。エキシマレーザー(波長190nm紫外線)、半導体レーザー(波長900nm近赤外線)CO2レーザー(波長10700nm遠赤外線)などがあげられるが、これに限られるものではない。
【0015】
また、前記球状最外層透明部と前記球状最内層透明部の中間に
90%以上の電磁波を透過する1層または複数層の球状中間層透明部を有してもよい。
【0016】
このことにより、例えば中間層にガラスなどソルベントクラックに強い素材を用い、最内層透明部に安価な有機溶剤性の素材を用い、最外層に安価な透明樹脂を用いることにより、安価な有機溶剤性の素材と透明樹脂を用いつつもソルベントクラックの問題を起こさない構成を作ることができる。
【0017】
また、前記球状最外層透明部として90%以上のミリ波を透過する球状最外層ミリ波透明部と
前記球状最内層透明部として90%以上のミリ波を透過し、
前記球状最外層ミリ波透明部より0.02以上屈折率が低く、
屈折率が1.48以下で、
前記球状最外層ミリ波透明部半径の60%以上90%以下の半径を持ち、
球面収差を相殺する屈折率と半径を持つ球状最内層ミリ波透明部からなってもよい。
【0018】
また、前記球状最外層透明部として、ミリ波に対して透明な球状最外層ミリ波透明部、前記球状最内層透明部として、ミリ波に対して透明な球状最内層ミリ波透明部を用いてもよい。
【0019】
このことによってLIDER装置でよく使われる波長である、ミリ波に対する集光を為すことができる。
【0020】
また、前記球状最外層透明部について90%以上の可視光、または赤外線、または紫外線を透過する球状最外層可視光透明部と
前記球状最内層透明部について
90%以上の可視光、または赤外線、または紫外線を透過し、
前記球状最外層可視光透明部より0.02以上屈折率が低く、
屈折率が1.48以下で、
前記球状最外層可視光透明部半径の60%以上90%以下の半径を持ち、
球面収差を相殺する屈折率と半径を持つ球状最内層可視光透明部を有してもよい。
【0021】
かつ、前記球状最外層可視光透明部と前記球状最内層可視光透明部の中間に
90%以上の可視光、または赤外線、または紫外線を透過する1層または複数層の球状中間層可視光透明部を有してもよい。
【0022】
このことにより、集光追尾光電変換装置が対象とする可視光、または赤外線、または紫外線について効率よく集光、発電することができる。
【0023】
前記球状最内層透明部に
シリコーン樹脂、水、アルコール、カルボン酸類、ニトリル化合物、エーテル類、エステル類、フッ化アルカリ金属、フッ化アルカリ土類金属、フルオロカーボン液、フッ素樹脂、エアロゲルの少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
【0024】
これらの素材には低屈折率であるものを含むため、球状最内層透明部の屈折率低下に寄与し、長焦点距離を為すこと、さらには最大許容角の増大につながる。
【0025】
前記球状層構造集光レンズを2つ以上用い、
前記球状層構造集光レンズ中心部の高さが同じになるように板状に接合されていることが好ましい、また、前記球状層構造集光レンズを6つ以上用い、板状、かつ、ハニカム状に配置、あるいは、格子状に配置した球状層構造レンズ塊を用いてもよい。
【0026】
このことにより、レンズ厚みを薄くしたうえで、同時に複数の第1光電変換セルに集光することができる。格子状に配置すると、分割した成型がしやすくなる。ハニカム状に配置すると、レンズを効率的に多く配置することができる。
【0027】
上記球状層構造集光レンズについて
前記球状最内層透明部から前記球状中間層透明部及び前記球状最外層透明部に向かって少なくとも1本以上の筒状空間を有することが好ましい。
また、前記筒状空間内に圧力吸収部品を有してもよい。
【0028】
このようにすると、温度上下が発生しても、筒状空間部内空間で圧力の上下を吸収できるため、長期耐久性に耐える構造がなせる。圧力吸収部品を筒状空間内に設置することにより、球レンズ本体の集光に対する影響をなくすことができる。
【0029】
本発明の一実施形態にかかる球状層構造集光レンズ塊は
前記球状層構造集光レンズを、
2つ以上用い、
前記球状層構造集光レンズ中心部の高さが同じになるように板状に接合していることを特徴とする。
【0030】
本発明の一実施形態にかかる集光追尾光電変換装置は
ベース部と、
1つの球状集光レンズ、または、2つ以上の球状集光レンズを前記球状レンズ中心部の高さが同じになるように板状に接合した球状層構造レンズ塊と
追尾機構と、
光電変換パネルからなり、
前記追尾機構を介して前記光電変換パネルと前記球状集光レンズ、または、前記球状集光レンズ塊が相対的に動作することを特徴とする。
【0031】
このようにすると、太陽光発電として、簡便な動作で太陽動作に合わせた追尾機構の動作により、前記球状集光レンズ、または、前記球状集光レンズ塊の焦点位置に、光電変換パネル上に配置された第一光電変換セルを相対的に移動させ、太陽光を集光したうえで第一光電変換セルに入射することができる。
【0032】
また、LIDER装置として、簡便な動作で観測したい方向に合わせた追尾機構の動作により、前記球状集光レンズ、または、前記球状集光レンズ塊の焦点位置に、光電変換パネル上に配置された第一光電変換セルであるセンサを相対的に移動させ、観測光を集光したうえで第一光電変換セルに入射することができる。
【0033】
また、光無線給電受信機として、簡便な動作で伝達光を受信したい方向に合わせた追尾機構の動作により、前記球状集光レンズ、または、前記球状集光レンズ塊の焦点位置に、光電変換パネル上に配置された第一光電変換セルである光電変換受光器を相対的に移動させ、伝達光を集光したうえで第一光電変換セルに入射することができる。
【0034】
よって、簡便な構造で、追尾機構の移動に対応して、光電変換パネル上の、単数、または、複数の光電変換セルに光入射をすることができる。
【0035】
上記実施形態に係る集光追尾光電変換装置について、
前記追尾機構は
前記ベース部の上に配置され、前記ベース部に設けられたA駆動機構と、
前記A駆動機構によって前記ベース面の水平方向に移動可能なA移動部と、
前記ベース部の上に配置され、前記ベース部に設けられたB駆動機構と、
前記B駆動機構によって前記ベース部の垂直方向に移動可能なB移動部を備え、
前記A駆動機構は、
前記A移動部を前記ベース部上に支持するための第1可動支持部及び第2可動支持部と、
前記第1可動支持部を第1方向に移動させる第1駆動部と、前記第2可動支持部を前記第1方向に対して垂直方向である第2方向に移動させる第2駆動部とを含み、
前記A移動部の上には少なくとも1つ以上の光電変換パネルが配置され、
前記B移動部には前記球状集光レンズ、または、前記球状集光レンズ塊が配置され、
前記追尾機構を介して前記光電変換パネルと前記球状集光レンズ、または、前記球状集光レンズ塊が相対的に動作することを特徴とすることが好ましい。
【0036】
このようにすると、外部から第1方向、第2方向、第3方向の移動をなすことができ、多数の装置の同時駆動がなすことができる。また、第1駆動部と第2駆動部の干渉に配慮する範囲で薄型化をなすことができる。
【0037】
上記実施形態に係る集光追尾光電変換装置について、
前記第1駆動部は、回転部材及び直線移動部材を有し且つ前記回転部材の回転動作を前記直線移動部材の第1方向の直線動作に変換する変換機構と、回転部材に回転入力を加えるモータとを含み、
前記第1可動支持部は、前記第1駆動部における前記直線移動部材と共に移動するように該直線移動部材に取り付けられており、
前記第2駆動部は、回転部材及び直線移動部材を有し且つ前記回転部材の回転動作を前記直線移動部材の第2方向の直線動作に変換する変換機構と、回転部材に回転入力を加えるモータとを含み、
前記第2可動支持部は、前記第2駆動部における前記直線移動部材と共に移動するように該直線移動部材に取り付けられていることを特徴とすることが好ましい。
【0038】
より具体的には、
前記第1駆動部は、前記変換機構である前記第1方向に延びるねじ軸、ナット及びボールからなる滑りねじと、前記ナットが前記ねじ軸に沿って移動するように該ねじ軸を回転させるためのギア部及び該ギア部に接続されたモータとを含み、
前記第1可動支持部は、前記第1駆動部における前記ナットと共に移動するように該ナットに取り付けられており、
前記第2駆動部は、前記変換機構である前記第2方向に延びるねじ軸、ナット及びボールからなる滑りねじと、前記ナットが前記ねじ軸に沿って移動するように該ねじ軸を回転させるためのギア部及び該ギア部に接続されたモータとを含み、
前記第2可動支持部は、前記第2駆動部における前記ナットと共に移動するように該ナットに取り付けられていることを特徴とすることが好ましい。
【0039】
このようにすると、上記第1可動支持部及び第2可動支持部の移動を簡便な構造で達成することができる。
【0040】
上記各実施形態に係る集光追尾光電変換装置において、
前記第1駆動部は、前記第1方向に延びる第1移動軸と、前記第1移動軸に沿って前記第1可動支持部を移動させるための駆動装置とを含み、
前記第2駆動部は、前記第1方向に延びる第2移動軸と、前記第2移動軸に沿って前記第2可動支持部を移動させるための駆動装置とを含むことが好ましい。
【0041】
このようにすると、第1可動支持部及び第2可動支持部が互いに垂直な方向に安定して移動でき、それにより移動部を円滑に移動できるので、光電変換パネルを円滑に駆動することが可能となる。
【0042】
また、上記各実施形態に係る集光追尾光電変換装置において、
前記第1駆動部は、前記変換機構である前記第1方向に延びるラックギア及びピニオンギアからなるラックアンドピニオンと、前記ラックギアを前記第1方向に移動させるように前記ピニオンギアを回転させるためのモータとを含み、
前記第1可動支持部は、前記第1駆動部における前記ラックギアと共に移動するように該ラックギアに取り付けられており、
前記第2駆動部は、前記変換機構である前記第2方向に延びるラックギア及びピニオンギアからなるラックアンドピニオンと、前記ラックギアを前記第2方向に移動させるように前記ピニオンギアを回転させるためのモータとを含み、
前記第2可動支持部は、前記第2駆動部における前記ラックギアと共に移動するように該ラックギアに取り付けられていてもよい。
【0043】
このようにしても、上記第1可動支持部及び第2可動支持部の移動を簡便な構造で達成することができる。
【0044】
また、上記各実施形態に係る集光追尾光電変換装置において、
前記第1駆動部は、リニアモータAを含み、
前記第1可動支持部は、前記第1駆動部における前記リニアモータAと共に移動するように該リニアモータAに取り付けられており、
前記第2駆動部は、リニアモータBを含み、
前記第2可動支持部は、前記第2駆動部における前記リニアモータBと共に移動するように該リニアモータBに取り付けられていてもよい。
【0045】
このようにしても、上記第1可動支持部及び第2可動支持部の移動を簡便な構造で達成することができる。
【0046】
また、上記各実施形態に係る集光追尾光電変換装置において、
前記第1駆動部は、リニアモータAを含み、
前記第1可動支持部として、前記第1駆動部における前記リニアモータAと共に移動するように該リニアモータAに取り付けられた別のリニアモータCを含み、
前記第2駆動部は、リニアモータBを含み、
前記第2可動支持部として、前記第2駆動部における前記リニアモータBと共に移動するように該リニアモータBに取り付けられた別のリニアモータDを含んでもよい。
【0047】
このようにしても、集光追尾光電変換装置について簡便な構成で為すことが可能である。
【0048】
上記実施形態に係る集光追尾光電変換装置について、
前記光電変換パネルは、
単数、または複数の第1光電変換セルと、
光電変換セル支持台と、
前記光電変換セル支持台の表面の一部に設けられ、前記第1光電変換セルに電気的に接続可能な回路を備え
前記第1光電変換セルの各々は、前記光電変換セル支持台の表面上に分散的に配置され、
前記第1光電変換セルの総受光面積は、前記球状集光レンズ、または、前記球状層構造集光レンズ塊の総レンズ面積の10%以下である、
前記光電変換パネルで有ってもよい。
【0049】
このようにすれば、光電変換セルとして、例えば、性能は非常に高いが高価な太陽電池の使用量を削減した末で、高性能発電をなすことができる。
【0050】
また、上記実施形態に係る集光追尾光電変換装置において、
少なくとも前記ベース部と、前記光電変換セル支持台について
前記散乱光を透過する高透過板からなり、
前記高透過板は前記球状集光レンズ塊によって集光された太陽光を受光して、
該太陽光の少なくとも散乱光成分を透過するようにしてもよい。
【0051】
このようにすれば、集光太陽光発電に適した直達光を第1光電変換セルで発電し、散乱光成分を透過させることができる。直達光は快晴日において熱成分となるため、直達光のみを発電に用いて除去できるということは、真夏の暑い日射のみを遮り、柔らかな光となった散乱光のみを屋内に入れるという選択的太陽光フィルタとしての役割も果たすことができる。
【0052】
また、上記実施形態に係る集光追尾光電変換装置において、
前記光電変換パネルについて、
前記第1光電変換セルの下部、又は周辺部に
前記第1光電変換セルより大きく、
前記第1光電変換セルと異なる光電変換素材からなる第2光電変換セルを備える
前記光電変換パネルを有してもよい。
【0053】
このようにすれば、集光太陽光発電に適した直達光を高性能だが高価な第1光電変換セルで発電し、集光太陽光発電に適さない散乱光成分を安価な第2光電変換セルで発電することができる。これは、高価な第1光電変換セルを用いつつもコストを抑えつつ、面積対高発電量をなすことができる。
【0054】
また、上記実施形態に係る集光追尾光電変換装置において
前記第1光電変換セルに接する形で直上部に、第1光電変換セルとほぼ同等の大きさの接触面積を有する補助集光部品を設けてもよい。
【0055】
このようにすれば、第1光電変換セルにおいて、入射がわずかにそれた光を第1光電変換セルに入射させることができる。また、第1光電変換セルにおいての光を第1光電変換セル表面全体に分散させることにより、過度な部分的な温度上昇による破損を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】実施例1に係る、球状層構造集光レンズの2層における構造を示す図である。
【
図2】実施例2に係る、球状層構造集光レンズの3層における構造を示す図である。
【
図3】実施例3及び実施例4に係る、球状層構造集光レンズの筒状空間を有する構造を示す図である。(a)が筒状空間のみの構造(b)が筒状空間内に圧力吸収部品を含んだ構造である。
【
図4】実施例5に係る、球状層構造集光レンズ塊について格子状に球状層構造集光レンズを配置した条件下での構造を示す図であり、(a)は上面図、(b)は斜面図である。
【
図5】実施例6に係る、球状層構造集光レンズ塊についてハニカム状に球状層構造集光レンズを配置した条件下での構造を示す図であり、(a)は上面図、(b)は斜面図である。
【
図6】実施例7に係る、集光型光電変換パネルの構成例を示す概略説明図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【
図7】実施例8に係る、集光型光電変換パネルの構成例を示す概略説明図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【
図8】実施例9に係る、集光型光電変換パネルの構成例を示す概略説明図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【
図9】実施例10に係る、集光型光電変換パネルの構成例を示す概略断面図である。
【
図10】実施例11及び実施例12に係る、集光型光電変換パネルの構成例を示す概略説明図であり、(a)は集光型光電変換パネルの断面図、(b)はセルパッケージの断面図、(c)はセルパッケージの断面図である。
【
図11】実施例13に係る、集光型光電変換パネルの構成例を示す概略説明図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【
図12】実施例14に係る、集光型光電変換パネルの構成例を示す概略説明図であり、(a)は集光型光電変換パネルの断面図、(b)はセルパッケージの断面図である。
【
図13】実施例15に係る、集光型光電変換パネルが太陽の動作に伴い動作する状況を示す概略説明図であり、(a)太陽が直上部にある場合の概略説明図(b)太陽が斜め上部にある場合の概略図である。
【
図14】実施例16に係る、集光追尾光電変換装置を示す斜視図である
【
図15】
図14の状態から球状層構造集光レンズ塊を除去した状況を示す斜視図である。
【
図16】
図15の状態から光電変換パネルを除去した状況を示す斜視図である。
【
図17】実施例16に係る、集光追尾光電変換装置のA駆動機構を示す斜視図である。
【
図18】実施例16に係る、集光追尾光電変換装置の第1可動支持部を示す斜視図である。
【
図19】実施例16に係る、集光追尾光電変換装置の第2可動支持部を示す斜視図である。
【
図20】
図17の状態からA移動部が第1方向に移動された状態を示す斜視図である。
【
図21】
図20の状態からA移動部が第2方向に移動された状態を示す斜視図である。
【
図22】実施例16に係る、集光追尾光電変換装置のB駆動機構を示す斜視図である。
【
図23】
図22の状態からB移動部が第3方向に移動された状態を示す斜視図である。
【
図24】実施例16に係る、集光追尾光電変換装置を示す斜視図である。
【
図25】
図24の状態から球状層構造集光レンズ塊と、光電変換パネルを除去した状況を示す斜視図である。
【
図27】
図26の状態から第1方向に移動された状態を表す上面図である。
【
図28】
図27の状態から第2方向に移動された状態を表す上面図である。
【
図29】設計理論1に係る、最大許容角の状態における、球状層構造集光レンズと光電変換セル支持台と第1光電変換セルの状態を示す概略説明図である。
【
図30】設計理論1に係る、球状層構造集光レンズ半径で正規化した焦点距離と、最大許容角との関連性を示すグラフである。
【
図31】設計理論1に係る、球状レンズの屈折率と、該屈折率における球レンズの焦点距離における、最大許容角の関連性を示すグラフである。
【
図32】光学シミュレーションにおける計算条件の概略説明図である。
【
図33】設計理論2に係る、球状最内層透明部の半径(以下最内層半径)を変化した場合において、最大光学効率を得る焦点距離を示す光学シミュレーションの結果である。
【
図34】設計理論2に係る、光学シミュレーションにおける光線のふるまいを示す。(a)全PMMA球(b)最外層透明部:PMMA、最内層透明部:siliconeにおける、球状最内層透明部最適化(c)全silicone球
【
図35】設計理論2に係る、光学シミュレーションにおける焦点面における光線の分散を示す。(a)全PMMA球(b)最外層透明部:PMMA、最内層透明部:siliconeにおける球状最内層透明部最適化(c)全silicone球
【
図36】設計理論3に係る、光学シミュレーションにおける、最外層透明部:PMMA、最内層透明部:siliconeの構造で、最内層半径を最適化した条件においての、集光倍率と、最内層半径と光学効率との関係のグラフである。
【
図37】設計理論3に係る、光学シミュレーションにおける、最外層透明部:PMMA、最内層透明部:siliconeの構造で、球状最内層透明部を最適化した条件においての、集光倍率と、焦点距離と光学効率の関係のグラフである。
【
図38】設計理論4に係る、光学シミュレーションにおける最外層透明部の屈折率1.5として、最内層透明部の屈折率(以下最内層屈折率)を変化させた際の、球状層構造集光レンズの半径で正規化された焦点距離(以下正規化焦点距離)と、光学効率の関係のグラフである。
【
図39】設計理論4に係る、光学シミュレーションにおける球状最外層可視光透明部の屈折率1.5として、最内層屈折率を変化させた際の、光学効率と、光学シミュレーションによる球状層構造集光レンズの正規化焦点距離と、球レンズの公式を用いた計算による単層球状レンズの正規化焦点距離の関係のグラフである。
【
図40】設計理論5に係る、光学シミュレーションにおける集光倍率100倍、3層構造の条件における、球状最外層透明部の半径(以下最外層半径)で正規化された球状中間層透明部の半径(以下正規化中間層半径)と、最外層半径で正規化された球状最内層透明部の半径(以下正規化最内層半径)とを変化させた場合の、最適な正規化中間層半径と正規化最内層半径の関係のグラフである。
【
図41】設計理論5に係る、光学シミュレーションにおける集光倍率100倍、3層構造の条件における、正規化中間透半径と、半径によって正規化された正規化最内層半径とを変化させた場合の、正規化球状最内層透明部と正規化焦点距離と光学効率の関係である。
【
図42】設計理論5に係る、光学シミュレーションにおける集光倍率100倍、3層構造の条件における、正規化中間層半径を80%に設定した条件の下での、正規化焦点距離と光学効率の関係のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示にすぎず、本発明、その適用方法あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0058】
<球状層構造集光レンズ>
本発明の一実施形態に係る球状層構造集光レンズは少なくとも
(1)90%以上の電磁波を透過する球状最外層透明部と
(2)前記球状最外層透明部routの60%以上90%以下の半径rcoreを持ち、
球面収差を相殺する屈折率と半径を持つ球状最内層透明部
を備えている。
【0059】
<集光追尾光電変換装置>
本発明の一実施形態に係る集光追尾光電変換装置は少なくとも
(1)ベース部と、
(2)1つの球状集光レンズ、または、2つ以上の球状集光レンズを前記球状レンズ中心部の高さが同じになるように板状に接合した球状層構造レンズ塊と、
(3)追尾機構と、
(4)光電変換パネルを備えている。
【0060】
[実施例1]
図1は、実施例1に係る球状層構造集光レンズの2層における構造を示す図である。
【0061】
球状層構造集光レンズ10は、
図1に示すように、高い屈折率を持つ球状最外層透明部11と、球状最内層透明部12から構成されている。
【0062】
球状最外層透明部11について、ミリ波に対して90%以上の透過率を有する物質、また、可視光、または赤外線、または紫外線に対して90%以上の透過率を有する物質を用いてもよい。例としてはガラス、ポリスチレン、PMMA、ポリカーボネートなどがあげられるが、これに制約されるものではない。設計理論2で示すが、球状単層構造集光レンズの光学効率は、本発明の球状層構造集光レンズにおける光学効率の88%程度である。逆を返せば、90%程度以上透過率がないと本発明による効果を発揮しない。
【0063】
球状最内層透明部12について、ミリ波に対して90%以上の透過率を有する物質、また、可視光、または赤外線、または紫外線に対して90%以上の透過率を有する物質を用いてもよい。また、屈折率が低いと長焦点をなせるため好ましい。
【0064】
球状最内層透明部12に用いるのが好ましい屈折率が低い物質の例として、信越化学製FER-7110(屈折率1.36)等シリコーン樹脂、水(屈折率1.33)、メタノール(屈折率1.326)等アルコール類、酢酸(屈折率1.37)等カルボン酸類、アセトニトリル(屈折率1.344)等ニトリル化合物、エチルエーテル(屈折率1.353)等エーテル類、酢酸メチル(屈折率1.361)等エステル類、フッ化ナトリウム(屈折率1.34)等フッ化アルカリ金属、フッ化カルシウム(屈折率1.433)などアルカリ土類金属、3M製FC-770(屈折率1.27)(登録商標)等フルオロカーボン液、三井化学デュポン製テフロン(登録商標)AF2400(屈折率1.29)等フッ素樹脂、エアロゲル(シリカにおいて、屈折率1.0026-1.26)等があげられる。
【0065】
また、球状最内層透明部12に用いるメタノール等アルコール類、水、酢酸等カルボン酸類については、水素結合により近赤外帯の吸収が発生するが、安価かつ低屈折率かつ安全な素材である。そのため、ほかの低屈折率で水素結合をなさない物質と混和することにより、価格を下げつつ、低屈折率であり、近赤外帯の吸収をするのを防いでもよい。
【0066】
球状最内層透明部12の半径(最内層半径)については、球面収差を相殺する半径を計算して設定する。具体的な最内層半径は後述
図33で示すように最外層半径の60-90%の範囲で計算された半径である。
【0067】
特許文献1、非特許文献1として屈折率を外側が低屈折率、内側が高屈折率で屈折率が傾斜変化をおこなうLUNEBURGレンズという球レンズがある。非特許文献2にてGRADIENT-INDEX LENSESを用いた集光太陽光発電装置が提案されている。長焦点距離がメリットであることも触れられているが、GRADIENT-INDEX LENSESを使用することを想定しており、ほぼ理論計算のみである。非特許文献3にGRADIENT-INDEX LENSESの中心の屈折率と焦点率の関係、並びに、長焦点距離のGRADIENT-INDEXの具体的な屈折率の例が示されている。焦点距離2.55における屈折率の範囲は1.0-1.14である。非特許文献2から使用候補の素材の例として非特許文献4があげられている。非特許文献4の素材はエアロゲルとして多孔質のシリカを使用しており、屈折率が1.0026-1.26である。あくまで均質な屈折率素材による物質を作成する手法であり、精密な屈折率制御は現実的なコストでできないと考えられる。本発明の球状層構造集光レンズは、それぞれの層の素材は均一でよく、細かい屈折率制御までは不要である。また、具体的にこの球レンズについての位置操作方法までは触れられていない。さらなる参考文献として非特許文献4、5にて最内層屈折率が低屈折率、最外層屈折率が高屈折率の2層構造の球レンズが示されている。いずれも球レンズ表面や表面から近距離位置に球面収差なく集光させるものである。2層構造球レンズについても屈折率は非特許文献4において、最外層誘電率3.4(推定屈折率1.84)、最内層誘電率2.665(推定屈折率1.63)、非特許文献5において、最外層誘電率3.236R0(R0=最外層透明部半径で正規化された焦点距離。ROは最低1以上)、最内層2.618(推定屈折率1.61)と、汎用的な透明素材であるPMMAの屈折率1.491や、ガラスの屈折率1.4-2.0に比べて、非常に高屈折率な素材を想定している。近年の技術動向としても、もっぱらLUNEBURGレンズばかりが用いられ、2層構造の球レンズは1961年以降特許においても論文においても出願、出版されたものは多くない。
【0068】
[実施例2]
図2は、実施例2に係る、球状層構造集光レンズの3層における構造を示す図である。球状層構造集光レンズは球状最外層透明部11と球状最内層透明部12の中間に球状中間層透明部13を設けるなど、3層以上球状透明層を設けてもよい。また、球状中間層透明層13はさらに多層設けてもよい。球状層構造集光レンズは、球状レンズでありながら球の外側部分を通る光の進路を変えることにより球面収差を相殺するものである。中心部を通る光は単層球レンズでも比較的よく集光されるが、端部を通る光は球面収差により集光されない。そのため、後述
図36で示すように、最内層半径を最外層半径の60%程度以上保つか、最内層半径を小さくして、中心から2層目の半径を60%程度以上保った状態が好ましい。
【0069】
球状中間層透明部13の素材としては球状最外層透明部の素材と同様にガラス、ポリスチレン、PMMA、ポリカーボネートなどがあげられるが、これに限られるものではない。
【0070】
ガラスはある程度厚みがある状態で、中空状態の厚み制御が困難ではあり、値段も比較的高いが、各種有機溶剤に対する耐性が高い。なので、中間層にガラスを使い外側に安価な透明樹脂、内側に低屈折率有機溶剤を用いてもよい。
【0071】
[実施例3]
図3(a)は、実施例3に係る、球状層構造集光レンズの、球状最内層透明部から筒状空間を設けた構造を示す図である。球状最内層透明部11から球状最外層透明部12内に向けて、筒状空間14が設けられている。球状層構造集光レンズの球状最内層は低屈折率であれば、長焦点距離をなせる。そのため、低屈折率素材であることが望ましいが、低屈折率素材はフルオロカーボン液や、水、アルコール類など室温で液体であることが多い。また、本発明品は太陽光発電設備としても用いるため、屋外に設置され、寒暖差が発生する。寒暖差に伴う素材の膨張縮小に対応するために、筒状空間として球状最内層透明部11外部に一部空間を設けた状態で、低屈折率素材を充填するようにすれば、筒状空間14内の圧縮縮小で熱膨張による圧力変化を吸収することができる。筒状空間14を設けても、球状最内層透明部11内が低屈折率素材で充填されていることが好ましいため、筒状空間14は球状最内層透明部11から見て、地平面から上部にあることが望ましい。
【0072】
[実施例4]
図3(b)は実施例4にかかわる球状層構造集光レンズ10の筒状空間14に圧力吸収部品15を設けた構造を示す図である。圧力吸収部品15は例えば中が中空のゴム状物質や、単なるゴム状物質からなる。圧力吸収部品15は球状層構造レンズがどの方向を向いても位置は固定である。寒暖差に伴う素材の膨張縮小には圧力吸収部品15で吸収することができる。実施例3では球状層構造レンズ10の角度を変えると球状最内層透明部に気泡が流れていくが、実施例4においては気泡が流れていかないため、角度による集光の変化は起きない。
【0073】
[実施例5]
図4において、球状層構造集光レンズ塊20は球状層構造集光レンズ10を格子状に連結して密集配置している。球状層構造集光レンズ塊は例えば射出成型などで成形する。また、射出成型を行う際に分割して成型し、後に結合することにより、低廉な射出成型を使い、コスト低減をなすことができる。
図4(a)は格子状配置図の上面図、(b)は格子状配置図の斜面図である。分解成形して後に結合する際には格子状のほうが好ましい。また、格子状に配置するには球が最低4個以上必要である。
図5(a)はハニカム状配置の上面図、(b)はハニカム状配置の斜面図である。
【0074】
[実施例6]
図5に示すように、球状層構造集光レンズ塊20は球状層構造集光レンズ10をハニカム状に連結して密集配置している。球状層構造集光レンズ塊は例えば射出成型などで成形する。
図5(a)はハニカム状配置の上面図、(b)はハニカム状配置の斜面図である。また、ハニカム状に配置するには球状層構造集光レンズが6つ以上必要である。円をハニカム状に配置したときの充填率は90.7%であり、面積対充填率を高くする際にはこちらのほうが好ましい。
【0075】
ただし、球状層構造レンズ塊の球状層構造集光レンズの配置についてはハニカム、格子状に限られるものではない。
【0076】
[実施例7]
図6(a)は、本発明の実施例6に係る光電変換パネル30の平面図を示す。
図6(b)は、
図6(a)のA-A’線で破断した実施例6に係る集光光電変換パネル30aの断面図を示す。
【0077】
(実施例6のモジュール構造の概要)
この集光光電変換パネル30aは、
図6(a)及び(b)に示すように、太陽光を集光する球状層構造集光レンズ塊20と、光電変換セル支持台41と、支持台の表面上に分散的に配置される第1光電変換セル42と、金属膜43と、第1光電変換セル42同士を電気的に接続する金属ワイヤ44と、第1光電変換セル42の一群の発電電力を外部に取り出すリード線45から構成されている。
【0078】
光電変換セル支持台41として、太陽光透過率が80%以上の高透過板を用いてもよく、ガラス板のほか、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂や、ガラスからなる板材を用いることができる。
【0079】
また、金属膜43は電気伝導率が高いものが望ましく、銅やアルミニウムや金等を用いることができる。また、金属膜に限らず電気伝導率が高い材料であれば用いることができる。なお、実施例6では、金属膜43は光電変換セル支持台41の球状層構造レンズ塊20側の表面に密着して形成されており、1つの第1光電変換セル42に対して2つの金属膜43a,43bを島状に形成し、一方の金属膜43aの球状層構造レンズ塊20側の表面には光電変換セル42の裏面電極(ここでは+極)が密着して形成されている。ている。また、この第1光電変換セル42の表面電極(ここでは-極)から、他方の金属膜43bの表面に金属ワイヤ44がボンディングされている。なお、本実施例では生産性を向上するために上述の回路接続構成を採用したが、必ずしもこれに限定されず、金属膜43を上述のように分割せずに1つの第1光電変換セル42に対して1つの金属膜43を設置する構成を採用してもよい。
【0080】
金属ワイヤ44には電気伝導率の高い金属(例えば、銅やアルミニウムや金等)を用いることができる。実施例6では、第1光電変換セル42が4直列及び4並列(4×4配列)に電気的に接続され、両端の細長い金属膜43t,43tに取り付けられた正負極のリード線45,45から外部に発電電力を取り出すことができる。金属ワイヤ44として、ワイヤーボンディングで使用される直径数十ミクロンの細線状のもの以外にも、薄い帯状の金属板などにもできる。直列及び並列の接続パターンは取り出したい電流および電圧のレベルに応じて任意に設定できる。
【0081】
この光電変換セル支持台41と、第1光電変換セル42と、金属膜43と、金属ワイヤ44とで光電変換パネル40を形成する。
【0082】
このように構成した集光光電変換パネル30aを、太陽光発電架台に搭載し、太陽が直上部にあると、
図6(b)に示すように直達光L1は球状層構造集光レンズ塊20内の球状層構造レンズ10aに入射する。球状層構造レンズ10a入射した光は該レンズに対応し、焦点の位置に配置される第1光電変換セル42aに集光され、電気に変換される。同様に球状層構造レンズ10bに入射する直達光も対応する第1光電変換セル42bに集光され、電気に変換される。球状層構造レンズ10cに入射する直達光は対応する第1光電変換セル42cに集光され、電気に変換される。一方、全方位から入射する散乱光L2は第1光電変換セル42には集光されない。光電変換セル支持台41として高透過板41を用いていると散乱光L2の大半が高透過板41を通過(透過)する。
【0083】
このとき、球状層構造集光レンズ塊20のレンズ塊を形成するレンズ全ての平面上面積合計(総レンズ面積)に対して、前述の特許文献6の場合とは異なり、受光面20aの内側に配置(封止)された不透明な金属膜43と金属ワイヤ44とが占める総投影面積(つまり回路面積)の割合を10%未満にするのが望ましい。これにより、第1光電変換セルの全受光面積を太陽光総入射面積の10%以下の超高倍率集光に設定した場合に、高透過板41の受光面積を太陽光総入射面積の80%以上にすることができる。また、第1光電変換セル42には化合物型多接合太陽電池などの集光時のセル変換効率が35%以上であるものが望ましい。多接合太陽電池は中に複数のPN接合があり、紫外線から赤外線まで幅広い波長を光電変換することができる。
【0084】
第1光電変換セル42は、出来るだけ小面積のものが望ましい。第1光電変換セル42の受光面サイズが小さくなると、
図6(b)に示す焦点距離FLが短くなり、集光光電変換パネル30の全高を低く抑えられ、球状層構造集光レンズ塊20内部での光吸収量が減少し、透過性が向上する。さらに、第1光電変換セル42のサイズが小さくなると、熱源が分散される効果により、第1光電変換セル42の到達温度が低下するため、変換効率と長期信頼性が向上する。この観点から好ましくは1mm×1mm以下(さらに好ましくは0.5mm×0.5mm以下)の第1光電変換セル42を用いる。このサイズはLEDチップと同程度であり、LEDの実装技術を適用(応用)できるメリットもある。
【0085】
直並列の組み合わせによって発電電圧が高くなる場合には、金属膜43と光電変換セル支持台41との間に電気絶縁性の高い材料を挿入しても良い。また、金属ワイヤ44に電気絶縁性の高い材料をコーティングする場合がある。金属膜43と光電変換セル支持台41との密着には高導電性接着剤を用いる他、めっき法、ろう付け法、固相接合法、溶接法、溶湯接合法など各種の接合を用いることができる。
【0086】
地上に降り注ぐ太陽光は主に直達光L1と散乱光L2とに分類できる。直達光L1は太陽の光球とその近傍から直接入射するほぼ平行な太陽光線(視野角±0.256°±5°)であり、散乱光L2は大気中の微粒子やガスによって散乱され、天空の全体から入射する太陽光線である。直達光L1はレンズやミラーで高倍率集光することが可能だが、散乱光L2は熱力学的制限により弱い集光しかできないという特性がある。
【0087】
日本においては、年間日射量の約6割を直達光L1が占め、約4割を散乱光L2が占める。本実施例では、年間日射量の約6割を占める直達光L1をセル変換効率が約40%(将来的に50%超)の超高効率PVセルに集光して発電する一方、年間日射量の約4割を占める散乱光L2の大半を透過する。従来PVモジュールとは異なり、散乱光L2はPVセルに当たらず透過してしまうが、第1光電変換セル42の変換効率が高い上に、太陽追尾機構を設ければより直達光の受光量が増えるため、直達光L1だけからでも従来PVモジュール以上の発電量が得られる。しかも、光電変換セル支持台41として高透過板41を用いた場合散乱光L2の大半が高透過板41を透過するので、設置スペースは太陽光を必要とする他用途にも使える。つまり、本発明は、貴重な太陽光を発電と他の用途にムダ無く振り分ける新たな集光追尾光電変換モジュールであると言える。
【0088】
[実施例8]
次に、実施例8について
図5を用いて説明する。
【0089】
図7(a)は、本発明の実施例8に係る集光型光電変換パネル30bの平面図を示す。
図7(b)は、
図7(a)のB-B’線で破断した実施例8に係る集光光電変換パネル30bの断面図を示す。
【0090】
(実施例8のモジュール構造の概要)
この集光光電変換パネル30bは、前記の実施例6の集光光電変換パネル30aと同じ部材から構成されるが、第1光電変換セル42,42同士の電気的接続において金属ワイヤ44の長さを短くし、その代わりに金属膜43を長くしたものである。この実施例8では実施例6よりも不透明な部分の面積は若干増えるが、接続回路の直列抵抗を減らすことが容易であり、高電流の場合において変換効率を維持することができる。また、実施例6及び実施例8のような3次元集光(点集光)ではなく、2次元集光(線集光)した場合において細長い光電変換セルを設置するのに適する。
【0091】
[実施例9]
次に、実施例9について
図8を用いて説明する。
【0092】
図8(a)は、本発明の実施例9に係る集光光電変換パネル30cの平面図を示す。
図8(b)は、
図8(a)のC-C’線で破断した実施例9に係る集光光電変換パネル30の断面図を示す。
【0093】
(実施例9のモジュール構造の概要)
この集光光電変換パネル30cは、前述の実施例6および実施例8とでは、第1光電変換セル42,42同士の電気的接続方法が異なる。
実施例6及び実施例8とは異なり、本実施例では電気接続の大部分を透明電極膜(例えば、ITO膜)47が担う構成となっている。実施例8と同様に、1つの第1光電変換セル42に対して、2つの金属膜43a,43bが島状に形成されているが、金属膜43a,43bと光電変換セル支持台41との間には透明電極膜47がスパッタリング等によってパターニングされており、実施例6のワイヤの代わりに第1光電変換セル42,42同士を電気的に接続している。
【0094】
この方式ではパターニングによって複雑な直並列接続回路を比較的容易に形成することが可能であり、また他の実施例よりも透過率を向上することができる。なお、金属膜43a,43bは無く、セル42が直接透明導電膜47上に設置されていても良い。なお、透明電極膜47と金属膜43、又は透明電極膜47とセル42との接合を容易にするために、両部材の間に他の材料で構成された層を挿入しても良い。
【0095】
[実施例10]
次に、実施例10について
図9を用いて説明する。
【0096】
図6は、本発明の実施例8に係る集光光電変換パネル30dの設置構成例を示す。この実施例8では、前述の実施例9の集光光電変換パネル30bの光電変換セル支持台41として高透過板41を用い、高透過板41の下面側に低コストである第2光電変換セル48を設置することにより、本モジュール30dの高透過板41を透過した散乱光L2を電気に変換することができる。つまり、前述の実施例6の場合とは異なり、実施例10では、透過した散乱光L2を他用途面に入射するのではなく、集光追尾光電変換装置を太陽光発電システムとして利用した場合の総発電量をさらに向上するために利用することができる。
【0097】
[実施例11]
次に、実施例11のモジュール30eについて
図10を用いて説明する。実施例11では、「第1光電変換セル42への集光太陽光の焦点の位置ズレ」の技術的課題を解消するための一例である。
【0098】
第1光電変換セル42を金属膜回路に実装する方法として、
図10(a)及び(b)のようにセル42を、受光ガイド51、導電性のセル取付部材(ダイアタッチ部材)52、絶縁体53、導電製のブリッジ54等の部材とを予め(別工程で)一体化したセルパッケージ50を複数用意し、パッケージ下面(本実施例では、ブリッジ54の下面)に正負の電極平面が接続される構造としておく。受光ガイド51と導電性ブリッジ54との間も絶縁体によって絶縁されてある。このセルパッケージ50を、予め接続箇所にハンダ55を塗布しておいた金属膜43上にマウントし、リフロー炉等で加熱することによって接着が完了する。前述の実装方式を採用すると、多数のセルパッケージ50の実装をロボット等で高速に行えるため大量生産に適する。
【0099】
また、セルパッケージ50内の受光ガイド51は、球状層構造集光レンズ塊20によって集光された太陽光を反射させて第1光電変換セル42の受光面へ案内する反射面51aをさらに備える。図示の反射面51aは、第1光電変換セル42に向かって狭まりながら傾斜した傾斜面である。この傾斜面の形状はセル42の形状が四角形の場合は四角錐形状、円形の場合は円錐形状が好ましい。また回転複合放物面形状などでも良い。また反射面51aはアルミニウムや銀等の蒸着や高反射率のめっきなどの処理によって鏡面反射率を80%以上にすることが望ましい。これにより、球状層構造集光レンズ塊20によって集められた太陽光の焦点がセル42の発電有効面よりも若干ずれた場合でも受光ガイド51の反射面51での反射作用によって一定割合の光を捕捉してセル42に入射させることが可能となる。
【0100】
[実施例12]
次に、実施例12について
図10(c)を用いて説明する。実施例12では、前述した「太陽光の焦点の位置ズレ」の課題だけでなく、「放熱性能の促進・向上」の課題を解決するための一例である。
【0101】
実施例12に係るセルパッケージ50は、実施例11と同様の構成を採用するが、セル温度の低減のために受光ガイド51(好ましくは、アルミニウム製)の一部を突起させた放熱フィン56を設けていることを特徴とする。なお、透過率を維持しつつ放熱性能を向上するために、セルパッケージ50を真上から見たときの放熱フィン56の投影面が、金属膜43上にほぼ重なるになるように配置することが望ましい。
【0102】
[実施例13]
次に、実施例13について
図11を用いて説明する。前述の実施例12と同様に更なるセル温度の低減を目的とするが、実施例13のモジュール30fでは、光電変換セル支持台41として高透過板41を用い、厚さを薄くして熱抵抗を低減し、その剛性を維持するためにハニカム構造材57を光電変換セル支持台41の下面に貼り付ける。なお、ハニカム構造材57の材料にはアルミニウム等の金属の他、透明樹脂を用いても良い。金属の場合は不透明となるのでハニカム構造材56の高さ(厚さ)を抑える必要がある。また、ハニカム構造材57の設置によって放熱面積も増加できる。
【0103】
[実施例14]
次に、実施例14について
図12を用いて説明する。実施例14も、実施例12,実施例13と同様の作用効果(放熱性能の向上)を得ることを目的に創作されたものである。
【0104】
ガラス板等を用いた場合、光電変換セル支持台41の板厚は、モジュール40の剛性を確保するためには3~5mmが必要であり、光電変換セル支持台41の上側に第1光電変換セル42を配置すると、第1光電変換セル42と光電変換セル支持台41と外気との間の熱抵抗が高いため、セル42が高温になりやすい。
【0105】
そこで実施例14のように、第1光電変換セル42と光電変換セル支持台41と外気との間の熱抵抗を格段に軽減するために、光電変換セル支持台41の下側に金属膜43と第1光電変換セル42とを配置する構成を創作した。つまり、実施例14では、受光ガイド51等の部材と第1光電変換セル42とを予め一体化したセルパッケージ50が複数構成され、封止材58によって該セルパッケージ50が光電変換セル支持台41の受光面とは反対側の面上に分散的に封止される。なお、符号54bは、導電性ブリッジ54と金属膜43との間を接続する導電体である。
【0106】
この実施例14の構成によると、モジュール剛性を気にせずに封止材の厚さを任意に調整することができるため、
図12(b)のようにセル位置から外気までの距離LAを、光電変換セル支持台41の上側に第1光電変換セル42を配置した場合の距離LB(
図10(b)参照)よりも、格段に短くできる。これにより放熱量を増大させることができ、セル温度が低減する。
【0107】
また、セルパッケージ50の近傍に図示しない放熱フィンやヒートスプレッダー等を付与することも可能である。ヒートスプレッダーにはグラフェンシートなど面方向の熱伝導率が高い薄膜等を使用するのが好ましい。封止材の外気側表面には防汚コーティングや傷に強いハードコート等の処理も行える。
【0108】
[実施例15]
次に、実施例15について
図13を用いて説明する。実施例15は集光光電変換パネル30が太陽の動作に伴い動作し、また、補助集光部品46を用いるケースである。
【0109】
図13(a)は太陽が直上部にある場合であり、
図13(b)は太陽が左斜上部にある場合である。
【0110】
球状層構造集光レンズ塊20と光電変換パネル40の相互作用として、太陽(図示せず)が
図13(a)のように直上部にある場合は、球状層構造集光レンズ塊20に含まれる球状層構造集光レンズ10の中心部の鉛直下に光電変換パネル40に含まれる第1光電変換セル42が来るように追尾機構で制御する。また、この時球状層構造集光レンズ10の中心から、第1光電変換セル42までの間隔は追尾機構により球状層構造集光レンズ10の焦点距離となる。
【0111】
図13(b)のように太陽(図示せず)が左斜上部にある場合には球状層構造集光レンズ塊20からみて、光電変換パネル40は
図13(a)の状態から右上部へ移動する。球状層構造集光レンズ10は球構造であるために移動だけで太陽の入射光を収差なしで焦点位置に集光させることができる。ここで、第1光電変換セル42に太陽光は斜めに入射することになる。
【0112】
第1光電変換セルに斜めに太陽光が入射すると表面で反射する懸念がある。補助集光部品46は、一度補助集光部品に入射させた光について、内部で光が反射させ、最終的に第1光電変換セル42に太陽光が入射するように誘導する。そのため、斜め入射による反射によるロスを減らすことができる。また、補助集光部品46は第1光電変換セルからわずかに角度がそれた光を第1光電変換セル42に誘導させ、第1光電変換セル42に入射する光を第1光電変換セル上で分散させることにより、特定部分だけ高温になるのを防止する役割もある。
【0113】
[実施例16]
次に、集光光電変換パネル30を、追尾機構100に積載した集光追尾光電変換装置について
図14~
図23を参照しながら説明する。
【0114】
図14~
図16が集光追尾光電変換装置の斜面図であり、
図14が省略部品なしの斜面図。
図14が球状層構造集光レンズ塊20を省略した場合の斜面図。
図15が球状層構造集光レンズ塊20と光電変換パネル40からなる集光光電変換パネル30を省略した場合の斜面図である。
【0115】
球状層構造集光レンズ塊20と光電変換パネル40を相対的に動かすものであるが、その際に用いる方向は
図14に示すように、ベース部101aの面に対し水平方向に第1方向、ベース部101aの面に対し水平方向かつ第1方向に垂直な方向に第2方向、ベース部101aと垂直な方向に第3方向とする。
【0116】
図14に示すように、実施例16の集光追尾光電変換装置は大きく分けて、集光光電変換パネル30、ベース部101a、A駆動機構を動かすための部品102~109、A駆動機構110a、B駆動機構130からなる。この説明においてA駆動機構を動かすための部品は第1モータ102、第2モータ103、第1伝導ベルト104(
図16にて図示)、第2伝導ベルト105、第1プーリ106(
図16にて図示,106a,106b,106c,106d)、第2プーリ107(107a,107b,107c,107d)、第2外部シャフト108(図示せず)、第2歯車109(図示せず)からなる。
【0117】
図16に示すように、A駆動装置110は水平方向である第1方向、第2方向へA移動部129(129a,129b,129c,129d)を駆動させる装置である。B駆動装置130は垂直方向である第3方向へB移動部139(139a,139b,139c,139d)を駆動させる装置である。A移動部129は光電変換セル支持台41(
図14で図示)と固着されている。B移動部139は球状層構造集光レンズ塊20(
図14で図示)と固着されている。なお、本発明ではA駆動装置110aが第1方向、第2方向移動の駆動、B駆動装置130が第3方向の駆動を担っているが、球状層構造集光レンズ塊20内の複数の球状層構造レンズ10と、光電変換セル支持台41上の第1光電変換セル42との間で相対的に位置制御がなせればよいため、光電変換セル支持台41を第1方向、第2方向、第3方向に駆動する装置を用いてもよいし、球状層構造集光レンズ塊20を第1方向、第2方向、第3方向に駆動する装置を用いてもよい。
【0118】
A駆動装置110は光電変換セル支持台41を水平に駆動し、光電変換セル支持台41を支えるため、光電変換セル支持台41直下に配置され、ベース部101aに固定される。B駆動装置130はA駆動装置と干渉しないように、A駆動装置110、光電変換セル支持台41の外周に配置され、ベース部101aに固定される。
【0119】
第1モータ102、第2モータ103、第3モータ134は一か所に配置され、それぞれ第1方向、第2方向、第3方向への移動を担う。これによりメンテナンスのしやすさ、集光光電変換パネル30の配置しやすさをなす。しかし、A駆動機構110に含まれる第1駆動部111(
図17にて図示、111a,111b)、第2駆動部121(
図17にて図示、121a,121b)、B駆動機構130に含まれる第3駆動部131(
図23にて図示、131a,131b,131c,131d)にリニアモータを使用することにより、これらの回転モータ、滑りねじなどの機構を使わない構成も可能である。
【0120】
なお、モータ102、103、134は、外部の制御装置に接続されており、そのON/OFFや回転方向が制御されている。制御装置は、人がマニュアル操作することによりモータのON/OFFや回転方向を制御するような構成であってもよく、また、太陽軌道のデータに基づいて、自動的に光電変換パネルが太陽軌道を追尾するように、モータのON/OFFや回転方向を制御するようにプログラムされていてもよい。
【0121】
第1方向の駆動には第1モータ102から、第1伝導ベルト104に回転が伝えられ、A駆動機構110内の第1駆動部111である第1滑りねじ111a,111bに取り付けられた第1プーリ106a、106bに回転が伝えられる。A駆動機構に伝えられた回転についてはのちのA駆動機構についての部分で動作を説明する。第1プーリ106a、106bは同じ歯数を持つプーリであるため、同量だけ回転することができる。
【0122】
第2方向の駆動には第2モータ103から、第2歯車109、第2シャフト108(図示せず)を伝わり、第2プーリ107aに動力を伝える。第2プーリ107aから、第2伝導ベルト105を伝い、第2駆動機構部121a、121bに取り付けられた第2プーリ107b、107dに回転が伝えられる。A駆動機構に伝えられた回転についてはのちのA駆動機構についての部分で動作を説明する。第1プーリ107b、107dは同じ歯数を持つプーリであるため、同量だけ回転することができる。
【0123】
第3方向の駆動には、第3モータ134から、B駆動機構131によって行う。B駆動機構についてはのちのB駆動機構についての部分で動作を説明する。
【0124】
【0125】
図17で示すように、ベース部101aの上には、第1方向に延びる第1駆動部111としての第1滑りねじ軸111aと、111bが配置されている。第1滑りねじ軸111a,111bには、ねじ軸に沿って移動可能な第1可動支持部ジョイントナット113aa(
図18にて図示),113ab(
図18にて図示)を含む第1可動支持部112aが取り付けられている。第1滑りねじ軸111a、111bには前述のとおり、第1プーリ106a、106b、第1伝導ベルト104、ギア部(図示せず)を介して第1滑りねじ軸111a、111bを回転させるためのモータ102がベース部101a上に設けられている(
図14~
図16の追尾機構100a-100cを参照)。モータ102aにより滑りねじ軸111a、111bが回転すると、第1可動支持部112a上の第1可動支持部ジョイント113aa,113abは第1方向に移動する。第1可動支持部112aは第1可動支持部ジョイント113ab,113abの移動に伴って移動する。
【0126】
また、ベース部101aの上には、第2方向に延びる第2駆動部121としての第2滑りねじ軸121a、121bが配置されている。第2滑りねじ軸121a、121bはねじ軸に沿って移動可能な第2駆動支持部ジョイントのナット126aa(
図19にて図示),126ab(
図19にて図示)が取り付けられている。第2滑りねじ軸121a、121bの一端部には、前述のとおり、第2プーリ107b、107d、第2伝導ベルト105a、ギア部(図示せず)を介してねじ軸121a、121bを回転させるためのモータ103がベース部101a上に設けられている(
図14~
図16を参照)。モータ103によりねじ軸121a、121bが回転すると、ナット126aa,126abは第2方向に移動する。ナット126aa,126aは、後に説明する移動部を支持する第2可動支持部122aの一部であり、第2可動支持部122aはナット126aa,126abの移動に伴って移動する。なお、第2可動支持部19は第1方向に延びている。
【0127】
なお、
図18で示すように第1可動支持部112aは、第1可動支持部ジョイント113aa,113abと、第1可動支持部シャフト114aからなる。第1可動支持部ジョイント113aa,113abは下部に滑りねじ軸111a,111bの回転に伴い第1方向に駆動するナット116aa、116abと、第1可動支持部シャフト114a上を自由に動くブッシュ117aa、117abからなる。第1可動支持部シャフト114aは第2方向に延びているため、第2方向に自在に動く。また、第1可動支持部112bも同じ構成である。
【0128】
同様に、第1可動部112bは、第1可動部ジョイント113ba、113bbと、第1可動部シャフト114b,ナット116ba,116bb,ブッシュ117ba,117bbからなり(いずれも図示せず)、同様の構成である。
【0129】
なお、
図19で示すように第2可動支持部122aは、第2可動支持部ジョイント123aa,123abと、第2可動支持部シャフト124aからなる。第2可動部シャフトには
図17で示すように、A移動部129aa、129abのブッシュ127aa、127abが取り付けられている。第2可動支持部ジョイント123aa,123abは下部に滑りねじ軸121aa,121abの回転に伴い第1方向に駆動するナット126aa、126abを含む。第2動支持部シャフト124aは第1方向に延びているため、
図17のA移動部129aa,129abは第1方向に自在に動く。
第2可動部122bは、第2可動支持部ジョイント123ba,123bbと、第2可動支持部シャフト124b、ナット126ba,126bb,ブッシュ127ba,127bbからなり(いずれも図示せず)、同様の構成である。
【0130】
このような構成により、A移動部129a,129b,129c,129dは、上記第1駆動部及び第2駆動部の駆動によって、第1方向及び第2方向に移動する。
【0131】
具体的に、
図20に示すように、第1滑りねじ軸111a、111bがモータ102(
図20では図示せず)により回転されると第1可動支持部112a上のナット116aa,116ab、第1可動支持部112b上のナット116ba(図示せず),116bb(図示せず)が第1方向に移動し、その結果、第1可動支持部112a,112b及び第1可動支持部112a,112bが取り付けられたA移動部129a,129b,129c,129dが第1方向に移動する。
【0132】
また、
図21に示すように、第2滑りねじ軸121a、121bがモータ103(
図21では図示せず)により回転されると第2可動支持部122a上のナット126aa,126ab及び第2可動支持部122b上のナット126ba(図示せず),126bb(図示せず)が第2方向に移動し、その結果、第2可動支持部122a,122b及び第2可動支持部122a,122bが取り付けられたA移動部129a,129b,129c,129dが第2方向に移動する。従って、A移動部129a,129b,129c,129dは、第1滑りねじ111a,111b及び第2滑りねじ121a,122bにより水平方向に自在に移動可能である。
【0133】
なお、滑りねじ以外にも、ボールねじ、台形ねじ、ラック&ピニオン、ジャッキ、リニアモータなど、外部からの入力に基づいて線形動作を行う部品を用いて第1駆動部、第2駆動部を構成することもできる。
【0134】
【0135】
図22で示すように、ベース部101aの上に、第3駆動部台140a、140b、140c、140d、第3モータプーリ台141、第3ガイドプーリ台142が配置されている。
【0136】
第3駆動部台140aには、第3駆動部131aが取り付けられている。第3駆動部131aは 第3駆動プーリ136a、第3駆動プーリ136aに固定された、第3滑りねじナット133a、第3滑りねじナット133aによって上下する第3滑りねじ軸132a(各部材に隠れている)、第3滑りねじ軸に取り付けられたB移動部139aからなる。
第3駆動部台140bには、第3駆動部131bが取り付けられている。第3駆動部131bは 第3駆動プーリ136b、第3駆動プーリ136bに固定された、第3滑りねじナット133b、第3滑りねじナット133bによって上下する第3滑りねじ軸132b(各部材に隠れている)、第3滑りねじ軸に取り付けられたB移動部139bからなる。
第3駆動部台140cには、第3駆動部131cが取り付けられている。第3駆動部131cは 第3駆動プーリ136c、第3駆動プーリ136cに固定された、第3滑りねじナット133c、第3滑りねじナット133cによって上下する第3滑りねじ軸132c(各部材に隠れている)、第3滑りねじ軸に取り付けられたB移動部139cからなる。
第3駆動部台140dには、第3駆動部131dが取り付けられている。第3駆動部131dは 第3駆動プーリ136d、第3駆動プーリ136dに固定された、第3滑りねじナット133d、第3滑りねじナット133dによって上下する第3滑りねじ軸132d(各部材に隠れている)、第3滑りねじ軸に取り付けられたB移動部139dからなる。
【0137】
第3モータプーリ台には第3シャフト137、第3歯車138、第3モータプーリ144が取り付けられている。第3ガイドプーリ台142には第3ガイドプーリ135が取り付けられている。
【0138】
第3駆動プーリ136a、136b,136c,136d、第3モータプーリ144a,第3ガイドプーリ135aはベース部101aから見て同じ高さにあり、第3伝導ベルト143aが取り付けられて、第3モータプーリ144aの動作に伴い、第3駆動プーリ136a、136b,136c,136dが回転するようにしている。
【0139】
第3モータ134が回転した場合、第3歯車138、第3シャフト137を通じて第3モータプーリ144が回転する。第3モータプーリ144の回転は第3伝導ベルト143を通じて、第3駆動プーリ136a、136b,136c,136dを回転させ、第3滑りねじナット133a、133b、133c、133dを回転させ、第3駆動部131a、131b、131c、131dの上下動作に変換させ、B移動部139a,139b,139c,139dを上下させる。B移動部139a,139d,139d,139dには球状層構造集光レンズ20(
図14にて示す)が取り付けられており、第3モータの回転により、球状層構造集光レンズ20の上下動作に変換させることができる。
【0140】
なお、滑りねじ以外にも、ボールねじ、台形ねじ、ラック&ピニオン、ジャッキ、リニアモータなど、外部からの入力に基づいて線形動作を行う部品を用いて第3駆動部を構成することもできる。
【0141】
[実施例16]
次に、さらに大型化した集光光電変換パネル30を、追尾機構100に積載した集光追尾光電変換装置について
図24~28を参照しながら説明する。
【0142】
図24~25が大型化した集光追尾光電変換装置の斜面図である。
図24が省略部品なしの斜面図である。
図25が集光光電変換パネル30を省略した場合の斜面図である。
図26は
図25のうちA駆動機構110hを拡大したものである。
図27は
図26から第1方向に移動された状態を示す。
図28は
図27から第2方向に移動された状態を示す。
【0143】
動作機構自体は実施例15と同じである。A駆動機構110で、光電変換パネル40(球状層構造集光レンズ塊20下)で動かす。B駆動機構130で球状層構造集光レンズ塊20を動かす。相対的な方向、距離を第1光電変換セル42で太陽光が焦点をなすように動かすものである。用いる方向は実施例15と同じで、
図25に示すように、ベース部101eから水平方向に第1方向、ベース部101eから水平方向かつ第1方向に垂直な方向に第2方向、ベース部101eと垂直な方向に第3方向とする。大型化に伴い、A駆動機構110は光電変換パネル40の下4隅に、A駆動部129eを含んだA駆動機構110e、A駆動部129fを含んだA駆動機構110f、A駆動部129gを含んだA駆動機構110g、A駆動部129hを含んだA駆動機構110hを配置する。
【0144】
実施例16においてのA駆動機構についての説明について行う。
【0145】
A駆動機構110gについて、モータ102e、モータ103eからの駆動を用いる。A駆動機構110gを
図26で示す。第1方向への移動はモータ102eからの回転をA駆動機構110e、第1駆動部延伸シャフト118eを経由して、第1滑りねじ111gを回転させる。第1滑りねじ111gの回転に伴って、第1可動支持部ジョイント113gが動くが、それに伴い、第2可動部シャフト122g上をA移動部129gが第1方向に動く。第1方向に動いた後を
図27にて示す。第2方向への移動はモータ103eからの回転駆動を、第2伝導ベルト105eを経由して、第2滑りねじ121gを回転させる。第2滑りねじの回転に伴って、第2可動支持部ジョイント123gが第2方向へ動くが、それにともない、第1可動支持部ジョイント113g上をA移動部129gに取り付けられた第1可動支持部シャフト114gが動くことにより、A移動部129gが第2方向に動く。第2方向に動いた後を
図28にて示す。これらの機構によりA駆動部128gを駆動させる。
【0146】
A駆動機構110eについて、モータ102e、モータ103eからの駆動を用いる。実施例15、110gにおいての駆動と同様に、駆動軸が第1滑りねじ111e(図示せず)、第2滑りねじ121e(図示せず)、第1可動支持部112e(図示せず)、第2可動支持部122e(図示せず)を通じてA駆動部129eを駆動させる。
【0147】
A駆動機構110fについて、モータ102f、モータ103fからの駆動を用いる。実施例15,110fにおいての駆動と同様に、駆動軸が第1滑りねじ111f(図示せず)、第2滑りねじ121f(図示せず)、第1可動支持部112f(図示せず)、第2可動支持部122f(図示せず)を通じてA駆動部129fを駆動させる。
110eと同様の駆動を行う。
【0148】
A駆動機構110hについて、モータ102f、モータ103fからの駆動を用いる。駆動内容はA駆動機構110gと同様に駆動軸が第1滑りねじ111g(図示せず)、第2滑りねじ121g(図示せず)、第1可動支持部112g(図示せず)、第2可動支持部122g(図示せず)を通じてA駆動部129hを駆動させる。
【0149】
このようにして、A移動部129e,129f,129g,129hを駆動し、その上に配置された光電変換パネル40を駆動させる。
【0150】
第3方向への移動は、実施例16と同様に光電変換パネル40B駆動機構130を用いて、B移動部139を動かして、球状層構造集光レンズ塊20を動かす。
【0151】
また、このように駆動部が端のみにある構成でベース部101、光電変換セル支持台41を透明構造のものを用いれば中央部に駆動機構がなく、開放感に優れた集光追尾光電変換装置をなすことが可能である。
【0152】
また、本実施形態に係る集光追尾光電変換装置には、架台の全体(追尾機構の全体)を覆う、透明部材からなるカバー(矩形状のケース)を設けることができる。
【0153】
[設計理論1]
<背景>
球状レンズは角度依存性がない。角度依存性がないため、位置制御のみで太陽光追尾動作をなすことができる。太陽の位置は日時により変動するため、最大許容角が大きいと、太陽を追尾できる日時が増え、通年での発電電力量増大につながる。球状レンズの焦点距離は屈折率で決まり、屈折率が低いと長焦点距離がなせる。
【0154】
<目的>
本発明の一実施形態に係る球状レンズを用いた集光追尾光電変換装置における焦点距離と最大許容角、並びに球状レンズにおける屈折率と最大許容角の関連をしめし、長焦点距離をなす低屈折率素材を用いることによる、球状層構造集光レンズの優位性を示す。
【0155】
<方法及び結果>
図29は、集光光電変換パネル30により機械的に許容される最大入射角の条件を示す。ここで、routは球状レンズ10の半径、fは球状層構造集光レンズの焦点距離、Θは光電変換パネル板の上端面が球状層構造レンズの下端面に接したときの最大許容角。
図29に示す空間条件によれば、Θは90°-sin^(-1)(rout/f)であらわされる。また、nを屈折率として、単層球状レンズの焦点fはf = 2*n*rout /(4*(n-1))であらわされる。
【0156】
図30は最大許容角Θと正規化焦点距離f/routとの間の計算された関係を示す。正規化焦点距離は、球状レンズの半径によって正規化されている。焦点距離が長いほど最大許容角が大きくなる。
【0157】
図31は正規化焦点距離f/routと屈折率nとの間の計算された関係をしめす。屈折率nが低いほど最大許容角が大きくなる。
【0158】
<結論>
焦点距離fが長いほど最大許容角Θが大きくなる。つまり、集光追尾光電変換装置として用いるのであれば、ただ収差がないだけでは不足であり、さらに焦点距離fが長い必要がある。また、焦点距離fを伸ばすためには屈折率nを下げることが有効であり、従来のレンズ素材では用いられていない低屈折率素材が必要である。
【0159】
[設計理論2]
<背景>
通常の球状レンズにおいては球面収差が発生するため、集光した際の光学効率が落ちる。最外層に当たる外側部分が低屈折率、最内層に当たる内側部分が高屈折率で、界面構造を持たず、傾斜的に屈折をなすことにより球面収差を相殺する球状レンズはLUNEBERGレンズという。しかし、あくまで球表面に焦点をなす。集光追尾光電変換装置として用いるには球面収差をなくして高い光学効率で、かつ長焦点距離である必要がある。
【0160】
<目的>
集光追尾光電変換装置として用いるには球面収差をなくしつつ、かつ長焦点距離である必要がある。本発明の一実施形態に係る球状層構造集光レンズが球面収差を相殺して高い光学効率をなし、かつ、長焦点距離をなす優れた特性を有することを確認するために、本光学シミュレーションを実施した。
【0161】
<方法及び結果>
図32に2層球状層構造集光レンズの光学シミュレーションに用いた球状層構造レンズ10と第1光電変換セルに相当する受光器302の位置を表す模式図を示す。
また、光学シミュレーション条件を下記に示す。
球状最外層透明部屈折率(以下最外層屈折率)(nout):1.4956@550nm(PMMA)
最内層屈折率(ncore):1.4215@550nm(silicone)
最外層半径(rcore):5mm
最内層半径(rout):0-5mm
受光器半径(rreceive):0.5mm
集光倍率(C):100倍
光線スペクトル:エアマス1.5D(280-4000nm)
【0162】
このモデルは、PMMA製の球状最外層透明部とsilicone製の球状最内層透明部を備えている。フレネル反射損失及び、屈折率の波長依存性が太陽スペクトル範囲全体について考慮されている市販のソフトウェア(Optical Research Associates製 LightTools8.5.0)を使用して3次元光線追跡を行った。最外層半径routは5mmに固定され、最内層半径rcoreは0~5mmの間で変化させた。このモデルにおいて、光源301の対面に受光器302と、焦平面303を配置した。焦点距離f、すなわち受光器と球状層構造レンズ10と受光器302の間の距離について、受光器302を動かすことにより最も高い光学効率を示す受光器302位置の探索を行い、焦点距離を求めた。また、光線のふるまいを確かめるために受光器302と同じ距離の位置に焦平面303を配置している。設計理論1で示したように本発明の一つの形態に係る集光追尾光電変換装置のコンセプトには高い光学効率ηoptと長い焦点距離fが望ましい。したがって、光学効率ηoptと焦点距離fについて分析した。
【0163】
図33に各最内層半径rcoreに対する最も高い光学効率値ηopt及び焦点距離fを示す。 rcore=0及び5mmは、レンズがそれぞれPMMAおよびsiliconeからなる単一構造の球状レンズであることを示す。この結果は、rcore=3.41mmで最も高い光学効率(76%)及び、より長い焦点距離(f/rout=6.99/5=1.4)を実行する最良の設計点が得られることを示す。
図30によれば、この設計構成によってΘ=44°を達成することができる。対して、rcore=0mm、すなわち、全球がPMMAの際に光学効率は73%であり、rcore=3.41mmの性能に対してrcore=5mm、すなわち、全球がシリコーン製の際には光学効率は67%である。rcore=3.41mmに対して88%である。このことは、電磁波を90%程度通過させないと、物質によるロスが大きくなるため光学効率が低下し、発明の効果が薄れることを示す。これらの結果は単一構造の球状レンズと比べて、本発明の球状層構造集光レンズの利点を示している。
【0164】
図34はrcore=0,3.41,5mmの3つの設計における光線の挙動を示す。
図34(a)及び(c)の単一構造の球状レンズの場合、レシーバーの外側に球面収差を示す多くの光線が漏れている。対照的に
図34(b)の最良の設計ケースでは球面収差が著しく減少している。この傾向は
図35によっても明確に示されている。
図35は焦平面303における光線の広がりである。焦点は
図35(b)の最良の設計ケースの場合、最も鮮明である。
【0165】
<結果>
球状最内層透明部に低い屈折率材料を使用した2層における球状層構造集光レンズにおいて、2層の下位面でのフレネル反射損失は増加するが、焦点位置での光学効率が良く、焦点距離は長くなり、最大許容角は広がることが示された。長焦点距離と広い最大許容角は、集光追尾光電変換装置をなすうえで優れた特性である。
【0166】
[設計理論3]
<背景>
設計理論2で示したように、2層球状層構造集光レンズにおいて、集光倍率Cが100倍の条件において、最外層半径rout5mmに対して、最内層半径rcore3.41mmの地点において、球面収差を相殺する特異点が存在することが示された。
【0167】
<目的>
本発明の実施形態の一つに係る球状層構造集光レンズの目的は光の集光であり、集光倍率Cがどのように設定できるのは重要な要素である。設計理論3において、どのような集光倍率Cの場合に球面収差を相殺する特異点が発生するのかを確かめる。
【0168】
<方法及び結果>
光学シミュレーション条件はほぼ設計理論2と同じで、受光器半径を走査する。
光学シミュレーション条件を下記に示す。
最外層屈折率(nout):1.4956@550nm(PMMA)
最内層屈折率(ncore):1.4215@550nm(silicone)
最外層半径(rcore):5mm
最内層半径(rout):0-5mm
受光器半径:(rreceive)0.1-4mm
集光倍率(C):1.6-10000倍
光線スペクトル:エアマス1.5D(280-4000nm)
【0169】
このモデルは、PMMA製の球状最外層透明部とsilicone製の球状最内層透明部を備えている。フレネル反射損失及び、屈折率の波長依存性が太陽スペクトル範囲全体について考慮されている市販のソフトウェア(Optical Research Associates製 LightTools8.5.0)を使用して3次元光線追跡を行った。最外層半径routは5mmに固定され、最内層半径rcoreは0~5mmの間で変化させた。このモデルにおいて、最良の焦点距離f、すなわち受光器半径位置について、受光器位置を動かし、最も高い光学効率を示す受光器位置の探索を行った。実験2に加えて、受光器半径rreceiveを走査し、各受光器半径rreceiveにおいて、最も高い光学効率ηoptをなす焦点距離fと最内層半径rcoreの探索を行った。集光倍率Cは(最外層半径rout/最内層半径rreceive)^2の式で求めた。また、最内層半径rcoreの結果は、最外層半径routで正規化した正規化最内層半径(rcore/rout)で示した。
【0170】
図36に各集光倍率Cにおける最も高い光学効率値ηopt及び正規化最内層半径rcore/routを示す。集光倍率Cが25倍以下の場合は、正規化最内層半径rcore/routが100%の地点が最も高い性能をなしている。すなわち、1層構造が最も高い光学効率をなすということである。集光倍率Cが25倍を超えるとおおよそ正規化最内層半径rcore/routが70%程度の2層球層構造レンズが最も高い光学効率ηoptを示す。また、集光倍率Cが277.8倍以上の場合では光学効率ηoptが70%を切るようになってくる。ここから言えるのは球状層構造集光レンズが適切なのは数百倍以下の集光倍率の場合であり、集光倍率が高くなると収差の相殺が追い付かなくなってきて光学効率ηoptが低下するということである。
【0171】
図37に各集光倍率cにおける最も高い光学効率ηopt及び正規化焦点距離f/routを示す。正規化焦点距離f/routは焦点距離fを最外層半径routで割った値である。正規化焦点距離f/routが1であるということは、球表面に最も光学効率が高い点が来るということである。
図37のグラフによると集光倍率Cが25倍以下の場合は、
図36で示したように1層構造球状レンズが高い光学効率ηoptを示すため、正規化焦点距離が1.08と球表面に近い。25倍を超えると
図36で示したように2層固有層構造レンズのほうが光学効率で有利になってきており、かつ、正規化焦点距離も1.2を超え、集光倍率Cが増えるにしたがって正規化焦点距離f/routも伸びてくる。光学効率ηoptが70%を切る集光倍率Cが277.8倍地点では正規化焦点距離は1.578まで伸びる。
【0172】
<結果>
2層における球状層構造集光レンズにおいて、集光倍率は数十倍―数百倍において単層球状レンズに比べて高い性能を示す。集光追尾光電変換装置における光の集光倍率もこの集光倍率範囲であり、集光追尾光電変換装置に適した集光系であることを示す。
【0173】
[設計理論4]
<背景>
設計理論2で示したように、2層球状層構造集光レンズにおいて、集光倍率Cが100倍の条件において、最外層半径rout5mmに対して、最内層半径rcore3.41mmの地点において、球面収差を相殺する特異点が存在することが示された。また、設計理論3で示したように、2層球層構造レンズは数十倍―数百倍において単層球状レンズより高い光学効率ηoptかつ、長い正規化焦点距離f/routを示すことを示した。
【0174】
<目的>
本発明においてさらに適切な素材を探索するにあたって、最外層屈折率を1.5の架空の物質を用い、球状最内層透明部の屈折を架空の低屈折率物質を用いた場合に光学効率ηoptと正規化焦点距離f/routがどのようなふるまいをするかを確かめる。
【0175】
<方法及び結果>
光学シミュレーション条件はほぼ設計理論2、3と同じで、架空の屈折率物質を用いた場合の変化を確かめる。
光学シミュレーション条件を下記に示す。
最外層屈折率(nout):1.5
最内層屈折率(ncore):1.1-1.5
最外層半径(rcore):5mm
最内層半径(rout):0-5mm
受光器半径:(rreceive):0.5mm
集光倍率(C):100倍
光線スペクトル:589.3nm(ナトリウムD線)
【0176】
設計理論2,3と同様に市販のソフトウェア(Optical Research Associates製 LightTools8.5.0)を使用して3次元光線追跡を行った。架空の屈折率物質を用いているためにフレネル反射損失は考慮しているが、物質自体の吸収、波長ごとの屈折率の変化は考慮しない。最外層半径routは5mmに固定され、最内層半径rcoreは0~5mmの間で変化させた。このモデルにおいて、最良の焦点距離f、すなわち受光器半径位置について、受光器位置を動かし、最も高い光学効率を示す受光器位置の探索を行った。実験2に加えて、最内層屈折率を走査し、各最内層屈折率ncoreにおいて、最も高い光学効率ηoptをなす焦点距離fと球状最内層透明部rcoreの探索を行った。集光倍率Cは100倍で固定した。また、最内層半径rcoreの結果は、最外層半径routで正規化した正規化最内層半径(rcore/rout)で示した。
【0177】
図38に各最内層屈折率ncoreにおける最も高い光学効率値ηopt及び正規化最内層半径rcore/routを示す。最内層屈折率ncoreと最外層屈折率noutとの差である屈折率差分ndiffが0.02以下の部分については光学効率ηoptが0.74,0.763とやや低い。屈折率差分ndiffが0.02である1.48になると、光学効率ηoptが0.806と程々高くなる。屈折率差分ndiffが0.04-0.07である1.46-1.43のときに、最も高い光学効率ηopt0.809を示す。屈折率差分ndiffが0.07をこえる1.43を超えてさらに低屈折率側の最内層屈折率ncoreにおいて、光学効率ηoptは低下していく。しかし、最内層屈折率ncoreが1.12における光学効率ηoptは71.3%と、幅広い最内層屈折率において高い光学効率ηoptが得られる。屈折率差分ndiffが大きいとフレネル反射損失が大きくなるため、光学効率ηoptが低下していることが考えられる。
【0178】
また、最内層屈折率ncoreと正規化最内層半径rcore/routとは比例関係にある。正規化最内層半径rcore/routは60%から90%の範囲にある。
【0179】
図39に各最内層屈折率ncoreにおける最も高い光学効率値ηopt及び正規化焦点距離f/rout、単球状レンズ焦点距離について、球半径で正規化した正規化単球状レンズ焦点距離fsingle/routとの関係を示す。
【0180】
このことが示すのは、正規化焦点距離f/routは球状最内層透明部の屈折率が低いと焦点が伸びるということである。また、傾向として、単球状レンズ焦点距離の焦点距離と二層球状層構造集光レンズの焦点距離は比較的傾向が似ている。ここからも、2層球層構造レンズは単層球状レンズの焦点距離をベースとして球面収差を相殺することにより光学効率ηoptを向上させていることが言える。
【0181】
<結果>
2層における球状層構造集光レンズにおいて、比較的屈折率差分ndiffが低いほうが高い光学効率ηoptが得られる。また、傾向として球状レンズの焦点距離と似たような傾向を示し、最内層屈折率ncoreが低いほど長い焦点距離を示す。
【0182】
[設計理論5]
<背景>
設計理論2で示したように、2層球状層構造集光レンズにおいて、集光倍率Cが100倍の条件において、最外層半径rout5mmに対して、最内層半径rcore3.41mmの地点において、球面収差を相殺する特異点が存在することが示された。さらに多層にすることにより性能が向上するかを図る。
【0183】
<目的>
本発明において3層以上の構造を探索する。最外層半径と、中間層半径がどのようなふるまいをするかを確かめる。
【0184】
<方法及び結果>
光学シミュレーション条件はほぼ設計理論2、3と同じで、球状最外層透明部にpolystyrene、中間層透明部にPMMA、球状最内層透明部にsiliconeの3層構造用いた際の各半径と、焦点距離、光学効率の変化を確かめる。
光学シミュレーション条件を下記に示す。
最外層屈折率(nout):1.5959@550nm(polystyrene)
球状中間層透明部屈折率(以下中間層屈折率)(nmid):1.4956@550nm(PMMA)
最内層屈折率(ncore):1.4215@550nm(silicone)
最外層半径(rcore):5mm
中間層半径(rmid):0-5mm
最内層半径(rout):0-rmidmm
受光器半径(rreceive):0.5mm
集光倍率(C):100倍
光線スペクトル:エアマス1.5D(280-4000nm)
【0185】
このモデルは、polystyrene製の球状最外層透明部とPMMA製の球状中間層透明部とsilicone製の球状最内層透明部を備えている。フレネル反射損失及び、屈折率の波長依存性が太陽スペクトル範囲全体について考慮されている市販のソフトウェア(Optical Research Associates製 LightTools8.5.0)を使用して3次元光線追跡を行った。最外層半径routは5mmに固定され、中間層半径rmidを0~5mmの間で変化させ、さらに球状最内層透明部rcoreを0mmから中間層半径rmidまでの範囲で変化させた。このモデルにおいて、最良の焦点距離f、すなわち受光器半径位置について、受光器位置を動かすことにより最も高い光学効率を示す受光器位置の探索を行った。また、結果については中間層半径rmidも、最内層半径rcoreも正規化して示している。
【0186】
図40に各正規化中間層半径rmid/routにおける最も高い光学効率ηopt及び正規化最内層半径rcore/routを示す。この結果は4つの部分に分かれているが、おおむね2層球層構造レンズに近しい結果が望ましいというものである。
【0187】
(i)まず、正規化中間層半径rmid/routが、1~0.7の範囲においては、正規化球状最内層中間部半径rcore/routがほぼ0.682-0.698の間で一定である。これは、正規化中間層半径が1~0.7の範囲において球状中間層透明部と球状最内層透明部の境界部分が球面収差を相殺する役割をしており、球状最外層透明部と球状中間層透明部の境界部分ではほぼ光学効率ηoptに影響を及ぼさないということである。
【0188】
(ii)次に、正規化中間層半径rmid/routが、0.68~0.58の範囲においては、正規化最内層半径rcore/routが0-0.02の間である。この結果は、正規化中間層半径が0.68~0.58の範囲においては、球状最外層透明部と球状中間層透明部の境界部分が球面収差を相殺する役割をしており、球状中間層透明部と球状最内層透明部の境界部分ではほぼ光学効率ηoptに影響を及ぼさないということである。
【0189】
(iii)次に、正規化球状中間層部半径rmid/routが、0.56~0.26の範囲においては、正規化球状最内層中間部半径rcore/routが正規化球状中間層部屈折率nmid/routと同一値を取る。この結果は球面収差を相殺する半径より正規化中間層半径が小さくなっているため、球面収差を相殺する働きがないこと。また、球状中間層透明部が事実上ない状態を示していることである。
【0190】
(iv)最後に、正規化球状中間層部半径rmid/routが、0~0.24の範囲においては、正規化球状最内層中間部半径rcore/routが0-0.02の間である。この結果は(iii)と同様に球面収差を相殺する半径より正規化中間層半径が小さくなっているため、球面収差を相殺する働きがないこと。また、球状最内層透明部が事実上ない状態を示していることである。
【0191】
図41に各正規化中間層半径rmid/routにおける最も高い光学効率値ηopt及び正規化焦点距離f/routを示す。各正規化中間層半径rmid/routが0.58-1の範囲で正規化焦点距離f/routが1.254以上の高い値と光学効率ηoptが63%以上の結果が得られる。この結果は、(i),(ii)において球面収差を相殺する構造がなせていることを示す。
【0192】
図42に、各正規化中間層半径rmid/routが0.8の時の、正規化最内層半径rcore/routと、正規化焦点距離f/routと、光学効率ηoptの結果を示す。この結果によると、最内層透明部半径rcore/rout=0.688において、光学効率ηopt=75.5%、正規化焦点距離f/rout=1.45が得られている。また、最内層透明部半径rcore/rout=0.688近辺においても光学効率が高い部分が広がっている。
【0193】
<結論>
3層球状層構造集光レンズについても球面収差を相殺する構造がなせることが示された。さらに多層においてもおおよそ似たような形になることが見込まれる。低屈折率素材は液体であることが多いため、別途液体低屈折率素材をくるむ球状中間層透明部を設け、その外に球状最外層透明部を設ける構造にすることも可能だと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明は、限られた土地面積において太陽光発電と農地などの他の太陽光利用を両立する手段、および、面積対高発電量をなす手段として有望である。散乱光は透過しながらも、直達光を集光して高効率に電気に変換でき、従来PVモジュールと比較して、日射透過量に対する発電量の比率が高い。従来集光追尾光電変換装置に対しても薄型構造がなせるためため、窓や壁面など開放感がありつつ適度な光のカットができるという特性があり、産業上の利用価値及び産業上利用できる可能性が非常に高い。
【符号の説明】
【0195】
10(10a~10c) 球状層構造集光レンズ
11 球状最外層透明部
12 球状最内層透明部
13 球状中間層透明部
14 筒状空間
20(20a~20d) 球状層構造集光レンズ塊
30(30a~30j) 集光光電変換パネル
40 光電変換パネル
50 セルパッケージ
100(100a~100d) 追尾機構
110(110a~110f)A駆動機構
111 第1滑りねじ(第1駆動部)
112(112a,112b)第1可動支持部
121 第2滑りねじ(第2駆動部)
122(122a,122b)第2可動支持部
129 A移動部
130(130a,131b) B駆動機構
131 第3滑りねじ(第3駆動部)
139 B移動部