(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153918
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】屈折率のナノ勾配を示すポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 27/16 20060101AFI20231011BHJP
A61F 2/16 20060101ALI20231011BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
A61L27/16
A61F2/16
A61L27/24
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124866
(22)【出願日】2023-07-31
(62)【分割の表示】P 2022207732の分割
【原出願日】2019-08-19
(31)【優先権主張番号】62/765,088
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504363706
【氏名又は名称】スター サージカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】オシッポフ, アレクセイ, ヴィ.
(72)【発明者】
【氏名】ホリディ, キース
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリマー組成物において、屈折率の精密な多方向ナノ勾配を生成する方法を提供する。
【解決手段】ポリマー材料中に不均一な架橋密度を誘導する方法であって、複数の架橋結合を含む、既に架橋された三次元ポリマーマトリックスを提供するステップと、前記既に架橋された三次元ポリマーマトリックスにイオン化エネルギーを照射して、前記複数の架橋結合の少なくとも一部を切断し、それによって三次元ポリマーマトリックス内に不均一な架橋密度を形成する、照射ステップとを含む、方法、さらに、前記照射ステップの後に、前記三次元ポリマーマトリックスを水和溶液に配置して三次元ポリマーマトリックスの不均一な膨潤を引き起こし、それによって三次元ポリマーマトリックス内に不均一な屈折率を生成することを含む、方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料中に不均一な架橋密度を誘導する方法であって、
複数の架橋結合を含む、既に架橋された三次元ポリマーマトリックスを提供するステップと、
前記既に架橋された三次元ポリマーマトリックスにイオン化エネルギーを照射して、前記複数の架橋結合の少なくとも一部を切断し、それによって前記三次元ポリマーマトリックス内に不均一な架橋密度を形成する、照射ステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記照射ステップの後に、前記三次元ポリマーマトリックスを水和溶液に配置して前記三次元ポリマーマトリックスの不均一な膨潤を引き起こし、それによって前記三次元ポリマーマトリックス内に不均一な屈折率を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記三次元ポリマーマトリックス内の前記不均一な屈折率は、50nm~100μmの厚さの反射防止表面層を生成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記三次元ポリマーマトリックス内の前記不均一な屈折率は、眼内にあるとき、前記三次元ポリマーマトリックスを適合させて形状を動かしたり変化させたりすることなく、任意で0~3D、任意で0~2.5D、任意で0~2D、任意で0~1.5Dの輻輳で広範囲の距離から光を集束させている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記三次元ポリマーマトリックスを水和溶液に配置した後に、前記三次元ポリマーマトリックスを眼に移植することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記三次元ポリマーマトリックスを前記眼に移植することは、前記三次元ポリマーマトリックスの前記膨潤に実質的な変化を引き起こさない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記三次元ポリマーマトリックスを水和溶液に配置することは、前記三次元ポリマーマトリックスを眼に移植することを含み、
前記水和溶液は、眼の房水を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記三次元ポリマーマトリックスを水和溶液に配置することは、前記三次元ポリマーマトリックスを平衡塩類溶液に配置することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記照射ステップは、前記既に架橋された三次元ポリマーマトリックスに電子ビームを照射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記照射ステップは、前記三次元ポリマーマトリックスを静止位置に維持し、イオン化エネルギー源を少なくとも一方向に動かすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記照射ステップは、イオン化エネルギー源を静止位置に維持し、前記三次元ポリマーマトリックスを少なくとも一方向に動かすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記照射ステップは、実質的に前記三次元ポリマーマトリックス全体に不均一な架橋密度を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記照射ステップは、前記三次元ポリマーマトリックスの第2領域の第2架橋密度よりも小さい第1架橋密度を有する前記三次元ポリマーマトリックスの第1領域を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1領域は、前記三次元ポリマーマトリックスの表面層である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記照射ステップは、触覚部が前記三次元ポリマーマトリックスと一体的に形成された後に行われている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記照射された三次元ポリマーマトリックスは、湿布の一部としての蒸気滅菌に対して寸法的に安定であり、長期間の使用中に加水分解的に安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記三次元ポリマーマトリックスは、少なくとも1つの非イオン性アクリルモノマーと少なくとも1つのイオン性モノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの非イオン性アクリルモノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレートであり、
前記少なくとも1つのイオン性モノマーは、アクリルモノマーである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記三次元ポリマーマトリックスは、コラーゲン材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
不均一な屈折率を有する光学系を有する眼内レンズを形成する方法であって、
複数の架橋結合を有する三次元ポリマーマトリックスを含む、既に架橋された光学系を提供するステップと、
前記既に架橋された光学系にイオン化エネルギーを照射して、前記複数の架橋結合の少なくとも一部を切断し、それによって前記三次元ポリマーマトリックス内に不均一な架橋密度を形成する、照射ステップと、
前記照射ステップの後に、前記光学系を水和溶液に配置して前記三次元ポリマーマトリックスの不均一な膨潤を引き起こし、それによって前記光学系に不均一な屈折率を生成するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
本出願は、2018年8月17日に出願された米国仮特許出願第62/765,088
号の優先権を主張し、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
屈折率の多方向変化を示す、電離放射線吸収、線量感受性及び非常に柔軟なポリマー組
成物が提供される。また、ポリマー組成物において屈折率の精密な多方向勾配を生成する
方法も提供される。
【背景技術】
【0003】
レンズ本体全体で制御された方法で変化する屈折率を有するレンズは、屈折率勾配(G
RIN)レンズと呼ばれる。屈折率は、通常、レンズ本体全体で徐々に変化するという点
で、勾配として変化する。天然に存在する人間の水晶体は、屈折率勾配を有するレンズの
一例である。
【0004】
様々な屈折率(オリゴウレタンメタクリレート)を有する(紫外線)光硬化材料の転写
型において段階的重合技術を用いて製造された、単一の折り畳み式多焦点勾配眼内レンズ
(IOL)の製造が報告されている。Malyuginら、Middle East A
fr.J.Ophthalmol.2014年1~3月;21(1):32-39を参照
する。この技術は、勾配光学系を備えた多焦点人工レンズを製造し得る。ただし、製造プ
ロセスでは、材料の重合段階とレンズ製造を同時に組み合わせる。
【発明の概要】
【0005】
屈折率の変化を制御することにより、製造されたレンズに対して、画質、焦点距離、及
び焦点深度等の光学パラメータを定義し得るという点で、GRIN IOLを形成するた
めの方法論が望ましい。この方法論により、眼内レンズ(例えば、IOL等)を特定の患
者の視力矯正要件の仕様に合わせて製造することができる。眼内使用以外の用途のGRI
Nレンズの調製のための方法論と同様に、前もって製造された眼科用レンズの屈折率修正
を可能にする方法論が望ましいであろう。
【0006】
本開示の一様態は、三次元ポリマーマトリックスを有するコポリマーから作製された光
学体を含むレンズ、任意で眼科用レンズであり、コポリマーの三次元ポリマーマトリック
スは、不均一な架橋密度を有する。
【0007】
三次元ポリマーマトリックスは、第2領域よりも架橋が少ない第1領域を含んでもよい
。
【0008】
第1領域及び第2領域は、架橋密度勾配内にあってもよい。三次元ポリマーマトリック
スは、勾配内にない第3領域をさらに含んでもよく、第3領域は、均一な架橋密度を有す
る層を含む。第1領域は、第2領域よりも光学体の周辺に近くてもよい。
【0009】
第1領域は、第1架橋密度を備えた第1層であってもよく、第2領域は第2架橋密度を
備えた第2層であってもよい。第1領域は、光学体の表面層であってもよく、第2領域よ
りも少ない架橋を有する。
【0010】
第1領域は、光学体の周辺により近くてもよい。
【0011】
光学体全体は、架橋密度勾配を有してもよい。
【0012】
三次元ポリマーマトリックスは、天然水晶体の屈折率分布と実質的に同じ屈折率分布を
有してもよい。
【0013】
光学体の形状は、天然水晶体の形状と実質的に同じであってもよい。
【0014】
光学体全体は、架橋密度勾配を有さなくてもよい。
【0015】
光学体はトーリックレンズであってもよい。
【0016】
コポリマーは、少なくとも1つの非イオン性アクリルモノマーと、少なくとも1つのイ
オン性モノマーとを含んでもよい。コポリマーは、コラーゲン材料をさらに含んでもよい
。イオン性モノマーは有機酸でもよい。非イオン性アクリルモノマーとイオン性モノマー
との重量比は、10:1~10,000:1、例えば50:1~200:1、例えば75
:1~175:1、例えば75:1、100:1、125:1、150:1、又は175
:1であってもよい。非イオン性アクリルモノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート
であってもよい。
【0017】
マトリックスの不均一な架橋密度は、光学体が眼の房水に曝されたときに、光学体に反
射防止表面層を生成するように適合されてもよい。反射防止層は、50nm~400nm
の厚さであるマトリックスの領域を含んでもよい。反射防止層は、0.1μm~10μm
の厚さであるマトリックスの領域を含んでもよい。反射防止層は、1μm~100μmの
厚さであるマトリックスの領域を含んでもよい。反射防止表面層は、光学体に形成された
中央開口の周りに少なくとも部分的に配置されてもよい。
【0018】
光学体は、IOLの光学体であってもよい。
【0019】
三次元マトリックスは、「湿布」の一部として蒸気滅菌に対して寸法的に安定であって
もよく、長期間の使用中に加水分解的に安定である。
【0020】
不均一な架橋密度は、眼に配置されて房水に曝されたときに、光学体を適応させて、形
状を動かしたり変化させたりすることなく、任意で0~3D、任意で0~2.5D、任意
で0~2D、任意で0~1.5D、任意で0~1.0Dの輻輳で広範囲の距離から光を集
束させてもよい。
【0021】
不均一な架橋密度は、眼に配置されて房水に曝露されたときに、乱視を矯正するために
光学体を適合させてもよい。
【0022】
三次元ポリマーマトリックスは、光学体の表面の近くで、表面に対してさらに内側の領
域よりも低い架橋密度を有してもよい。
【0023】
レンズは、非光学体部(例えば、1つ又は複数の触覚部)をさらに含んでもよく、非光
学体部は非光学三次元ポリマーマトリックスを含み、非光学三次元ポリマーマトリックス
は不均一な架橋密度を有する。
【0024】
レンズは、光学体が曝された水和溶液をさらに含んでもよく、不均一な架橋密度は、溶
液中で水和すると、三次元ポリマーマトリックスを不均一に膨潤させる。これにより、光
学体内に不均一な屈折率が生じる。
【0025】
水和溶液は平衡塩類溶液であってもよい。
【0026】
水和溶液は、レンズが眼の房水に曝されたときに、三次元ポリマーマトリックスの膨潤
量が実質的に変化しないような構成部分を含んでもよい。水和溶液は平衡塩類溶液であっ
てもよい。
【0027】
水和溶液は、レンズが眼の房水に曝されたときに、三次元ポリマーマトリックスの膨潤
量が増加するような構成部分を含んでもよい。水和溶液は、塩化ナトリウム溶液であって
もよい。
【0028】
水和溶液は、レンズが眼の房水に曝されたときに、三次元ポリマーマトリックスの膨潤
量が減少するような構成部分を含んでもよい。
【0029】
水和溶液は、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンのうちの少なくとも1つを含ん
でもよい。
【0030】
不均一な屈折率は、第1及び第2屈折率をそれぞれ有する第1及び第2離散層を含んで
もよい。不均一な架橋密度は、架橋密度勾配をさらに含んでもよい。
【0031】
本開示の一様態は、本明細書のレンズのいずれかを水和溶液に配置する方法であり、レ
ンズを水和溶液に配置すると、マトリックスの不均一な膨潤を引き起こし、それによって
光学体に不均一な屈折率を生成する。この方法は、レンズを平衡塩類溶液に配置すること
を含んでもよい。
【0032】
本開示の一様態は、本明細書のレンズのいずれかを移植する方法であり、この移植方法
は、マトリックスの膨潤の変化を引き起こす。移植により、マトリックスの少なくとも一
部でマトリックスがさらに膨潤してもよい。移植は、マトリックスの少なくとも一部の膨
潤の減少を引き起こしてもよい。レンズを移植すると、移植された構成に対してレンズの
全体積が増加してもよい。
【0033】
本開示の一様態は、本明細書のレンズのいずれかを移植する方法であり、この移植方法
は、マトリックスの膨潤に実質的な変化を引き起こさない。
【0034】
本開示の一様態は、本明細書のレンズのいずれかを移植する方法であり、レンズの移植
は、完全に水和した移植された状態でレンズがレンズ体積よりも小さい体積を有する状態
で、送達デバイスを通してレンズを挿入することを含む。
【0035】
本開示の一様態は、三次元ポリマーマトリックスに屈折率勾配を誘導する方法であり、
この方法は、少なくとも1つの非イオン性アクリルモノマーと、少なくとも1つのイオン
性モノマーとから調製されたコポリマー系を含む三次元ポリマーマトリックスを有する(
例えば、すでに硬化された)形成体を提供すること、及びマトリックス内に不均一な架橋
密度を生成するように構成されたパターンで三次元ポリマーマトリックスにイオン化エネ
ルギーを照射することを含む。
【0036】
この方法は、本明細書のレンズのいずれかと組み合わせて使用され得る。
【0037】
イオン化エネルギーは、電子ビームであってもよい。イオン化エネルギーはX線であっ
てもよい。
【0038】
この方法は、形成体を静止位置に維持することをさらに含んでもよく、照射は、イオン
化エネルギー源を少なくとも一方向に移動させることを含む。この方法は、イオン化エネ
ルギー源を静止位置に維持すること、及び照射ステップ中に形成体を少なくとも一方向に
動かすことを含んでもよい。この方法は、形成体とエネルギー源の両方を同時に又は連続
して、又はそれらの任意の組み合わせで動かすことを含んでもよい。
【0039】
照射ステップは、マトリックスの少なくとも一部に架橋密度勾配を生成してもよい。
【0040】
照射ステップは、実質的にマトリックス全体に架橋密度勾配を生成してもよい。
【0041】
照射ステップは、マトリックスの第2領域の架橋密度よりも低い第1架橋密度を有する
第1層を生成してもよい。第1層は、形成体の表面層であってもよい。
【0042】
コポリマー系は、コラーゲン材料をさらに含んでもよい。
【0043】
イオン性モノマーは有機酸であってもよい。
【0044】
少なくとも1つの非イオン性アクリルモノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレートで
あってもよく、少なくとも1つのイオン性モノマーは、アクリルモノマーであってもよい
。
【0045】
形成体は、眼内レンズの光学体であってもよい。
【0046】
照射された三次元ポリマーマトリックスは、「湿布」の一部としての蒸気滅菌に対して
寸法的に安定であってもよく、長期間の使用中に加水分解的に安定である。
【0047】
照射ステップは、任意で50nm~400nm、任意で0.1μm~10μm、又は任
意で1μm~100μmの厚さの反射防止表面層を生成してもよい。
【0048】
照射ステップは、不均一な架橋密度を生成してもよく、その結果、形成体を眼の房水で
水和するとき、形成体を適応させて、形状を動かしたり変化させたりすることなく、任意
で0~3D、任意で0~2.5D、任意で0~2D、任意で0~1.5Dの輻輳で広範囲
の距離から光を集束させてもよい。
【0049】
照射ステップは、1つ又は複数の周辺支持体(例えば、触覚部)が形成体と一体的に形
成された後に開始され得る。
【0050】
イオン化エネルギーは、X線であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、イオン化エネルギーをポリマー体に適用するための例示的なシステムである。
【
図2】
図2は、イオン化エネルギーをレンズ本体に適用する場合の例示的な手法を示す。
【
図3】
図3Aは、架橋を有する、形成された(例えば、硬化された)ポリマー材料を示す。
図3Bは、膨潤を引き起こす、溶液中で水和された後の
図3Aの形成されたポリマー材料を示す。
【
図4】
図4Aは、イオン化エネルギーに曝された後に形成されたポリマー材料を示す。
図4Bは、膨潤を引き起こす、溶液中で水和された後の
図4Aのポリマー材料を示す。
図4Bの膨潤は、
図3Bよりも大きくなっている。
【
図5】
図5は、本明細書で膨潤が起こる方法をさらに詳細に示す。
【
図6】
図6は、主要なレンズ本体部分を含む、薄い反射防止層を備えた例示的なレンズを示す。
【
図7】
図7は、改質表面層の厚さが電子エネルギーによってどのように影響を受けるかを示す。
【
図8】
図8は、
図7と比較して、ベータ線の比較的高いエネルギー範囲を示す。
【
図9】
図9は、屈折率の変化率を示す。100%は、バルクから変化していない表面RIを示し、0%は、表面RIが保持されている溶液のRIに還元されていることを示す。
【
図10】
図10は、天然水晶体と実質的に同じ屈折率分布を有し得る例示的なレンズである。
【
図11】
図11は、本明細書の方法を使用して作成され得る、光学体に様々なRIを有する例示的な光学体を示す。
【
図12】
図12は、アクリル酸側鎖(左)とメタクリレート側鎖(右)を備えたポリマー鎖の一部を示す。
【
図13】
図13Aは、本明細書の方法を使用して照射される例示的なレンズを示し、該レンズは、光学体に1つ又は複数の開口を含む。
図13Bは、光学体の中央開口と、該開口の位置に反射防止層を作成するために本明細書の方法を使用して照射される該開口周りの領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本開示の一様態は、それらのレンズ本体全体にわたって制御された方法で変化する屈折
率(「RI」)で製造されたレンズ(例えば、眼科用レンズ)を含む。場合によっては、
RIはレンズ本体の一部でのみ変化する。場合によっては、変化するRIはRI勾配であ
ってもよいが、いくつかの例では、一般に、それぞれが異なるRIを有するレンズ本体の
1つ又は複数の層を指してもよい。本明細書のレンズは、RI勾配を有する1つ又は複数
のレンズ本体領域、並びに均一なRIを有する1つ又は複数のレンズ本体領域、及びそれ
らの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0053】
本開示の一様態は、レンズ内に変化するRIを生成する方法に関連している。
【0054】
一般に、(本明細書では光学体と呼ばれる)レンズ本体に可変RIを生成する方法は、
材料のレンズ本体が形成された後、すなわち、1つ又は複数のモノマーを硬化してポリマ
ー材料の硬化体を形成した後に行われる。これは、レンズ本体を形成する過程で様々なR
Iを生成する可能性のある代替アプローチとは対照的である。
【0055】
様々なRIを生成する本明細書の方法は、1つ又は複数の光学面が光学体にすでに形成
された後に(例えば、1つ又は複数の光学面を生成するための旋盤加工を介して)行われ
てもよい。又は、様々なRIを生成する方法は、光学体の1つ又は複数の光学面を形成す
る前に行われてもよい。例えば、方法は、光学体の前面及び/又は後面が形成される(例
えば、旋盤加工)前に行われてもよい。これらの代替例では、方法は、例えば、ポリマー
材料の硬化体(例えば、円筒形ボタン)に対して実行されてもよく、その後、1つ又は複
数の光学面がその上に形成されてもよい。
【0056】
本明細書に記載の方法の例示的な利点は、既知の硬化技術を使用して形成された多種多
様な光学体に使用され得ることである。これにより、既存の技術を使用して材料(例えば
、硬化)の光学体を形成することができ、その後、本明細書の方法を利用して、非常に制
御された方法でレンズの1つ又は複数の領域のRIを変更して、多種多様な光学的障害(
例えば、乱視)を処理し得るか、又は他の方法でレンズを変更して所望の光学的効果を生
成(例えば、レンズの最も外側の領域に反射防止表面層を生成)し得る。
【0057】
本明細書における「屈折率」(「RI」)という用語は、半透明/透明物質、特に眼球
媒体における屈折率の測定を包含する。RIは、真空中の光速と比較して、別の媒体(例
えば、ポリマー材料)における光の相対速度として測定される。例えば、水のRI(n)
は1.33である。
【0058】
本明細書のレンズのいずれかは、RI勾配を有する1つ又は複数の領域を有してもよい
。本明細書のレンズのいずれかは、領域間でRIが急激に変化する場所にインタフェース
する1つ又は複数の領域を有してもよい。本明細書のレンズのいずれかは、一定のRIを
有する1つ又は複数の領域を有してもよい。本明細書のレンズのいずれかは、本段落に記
載された例示的な領域の任意の組み合わせを含んでもよい。本明細書で使用するいずれか
の方法を利用して、本段落に記載のレンズのいずれかを作成してもよい。
【0059】
天然ヒト水晶体は、屈折率勾配レンズ(GRIN)であり、RIは、通常、レンズの本
体全体にわたって徐々に変化するという点で、勾配として変化する。一例として、本明細
書の方法は、屈折率の変化を制御することによって、画質、焦点距離、及び焦点深度等の
光学パラメータを定義することで、眼の水晶体と同様の性能を有するレンズの製造を容易
にし得、製造されたレンズはGRINレンズである。ただし、いくつかのレンズでは、勾
配の代わりに、又は勾配に加えて、RIの1つ又は複数の急激な変化を有する人工レンズ
を提供することが有利であってもよい。レンズの部分も一定のRIを有してもよい。
【0060】
本明細書の開示は、すでに形成されたレンズ内に所望のRIプロファイルを生成する方
法を含む。本明細書の技術は、特定のパターン又は方法で、形成されたポリマー材料にイ
オン化エネルギーを適用し、場合によっては、イオン化エネルギーは、電子ビームであっ
てもよい。電子ビーム(又は他のイオン化エネルギー)により、形成されたポリマー材料
の結合が切断される。続いて、ポリマー材料を溶液(例えば、平衡塩類溶液(「BSS」
)又は他の溶媒(例えば、水))で水和すると、ポリマー材料は膨潤する。ポリマー材料
の膨潤は、RIの低下を引き起こす。このようにして、印加されたエネルギーを使用して
、制御された予測可能な方法でレンズ内のRIを変化させて、レンズに所望のRIプロフ
ァイルを生成し得る。
【0061】
ポリマー体を形成するために、最初に架橋が行われる。これは、本明細書では「硬化」
と呼ばれることがあり、既知の技術を使用して実行され得る。いくつかの実施形態では、
第1及び第2成分は、三次元構造ランダムコポリマーを生成するために架橋される。化学
的架橋は、開始剤及び/又は架橋剤及び/又は触媒の組み合わせを使用して実施され得る
。又は、核照射装置で間接的に生成されたコンプトン電子を使用して架橋が開始され得る
。例えば、レンズの材料に浸透し、材料をイオン化し、コンプトン電子(すなわち、イオ
ン化中に分離される電子)を生成するガンマ線を提供するセシウム137又はコバルト6
0源が使用され得る。化学架橋法及び核照射剤架橋法の両方が、反応領域内で均一な架橋
速度をもたらす環境を提供し、したがって、均質なポリマーを製造し得る。
【0062】
コポリマーは、線形である代わりに、BSSにおけるもつれたコイルの形態をとり得る
。ランダムな三次元架橋コイルは、コポリマーと溶媒分子との間の分子間力が溶媒分子間
の力に等しく、またコポリマー鎖セグメント間の力に等しい場合にのみ形成される。ラン
ダムな三次元架橋コイルは、重合/架橋プロセス中に、最終ゲル化平衡点中に破壊プロセ
スが発生して構築速度と破壊速度が等しくなると形成される。繰り返すが、これは化学架
橋又は放射線プロセスのいずれかで可能であり得る。化学的架橋プロセスでは、架橋を促
進している開始剤及び/又は架橋剤及び/又は触媒の組み合わせは、阻害剤の作用によっ
て一致する。放射線プロセスでは、架橋密度が臨界レベルに達すると、架橋と結合の切断
が同じ速度で起こり始める。
【0063】
ポリマー体が形成された後、イオン化エネルギーがポリマー体に適用され、架橋結合の
破壊をもたらす。
図1は、イオン化エネルギー源12、イオン化エネルギー14、及びす
でに形成された(硬化された)ポリマー体15を含むシステム10を概念的に示している
。ポリマー体15は、その上に形成された光学面を有する場合と有しない場合がある。ポ
リマー体15は、安定した方法で取り付けられ、イオン化エネルギー14を使用して照射
されてもよい。電子ビームがイオン化エネルギーである場合、半導体製造のための電子ビ
ームリソグラフィーで使用される電子ビーム技術は、本明細書の実施形態の方法での使用
に容易に適用され得る。電子ビーム技術により、10nm未満の解像度でカスタムパター
ンを描画(直接書き込み)できる。例えば、Altissimo,M.、E-beam
lithography for micro-/nanofabrication B
iomicrofluidics 4、026503(2010)を参照する。偏向板1
3も示されており、ビームをポリマー体15に偏向させる電位を生成するために使用され
る。
【0064】
様々なシステム構成が考えられる。例えば、静的レンズが提供され得、静的レンズに対
して移動して照射パターンを生成し得る電子ビームが提供され得る。又は、静止源を使用
してもよく、
図1の矢印として示される任意の自由度に示されるように、ポリマー体を動
かすように適用させてもよい。又は、静止源とレンズの両方を動かしてもよい。
【0065】
照射パターンは、電子エネルギーと、電子がレンズに当たる方向と位置、及び空間内の
任意の位置が照射されている時間によって定義される。逆に、静的電子ビームの経路に配
置され、ビームに応じて移動して照射パターンを生成する、(例えば、
図1に示されるよ
うに6自由度で)移動に適したレンズが提供され得る。レンズと電子ビームの両方を動か
す構成も採用され得る。
【0066】
レンズの結果として生じるRIプロファイルを制御するために変更し得る方法の例示的
な様態は、電子の入射角である。特定の実施形態では、電子が(例えば、レンズの表面全
体にわたって)視射角でレンズに当たることが望ましい。これは、例えば、表面層を調製
する際に、より高いエネルギーを有利に使用することを可能にする。これは、入射角を制
御することにより、吸収エネルギー量又は電子ビームの強度を制御するものとみなし得る
。
図2は、この概念を示しており、レンズ20とエネルギー22が視射(浅い)角でレン
ズに当たっていることを示している。レンズ20は、エネルギー源(ここでは簡単にする
ために示されている)に対して移動してもよく、エネルギー源はレンズに対して又はレン
ズとエネルギー源の両方に対して移動してもよい。
【0067】
イオン化エネルギー(例えば、電子ビーム)の適用は、このステップにおけるイオン化
エネルギーがレンズ全体に特定のパターンで向けられるという点で、架橋用(ポリマー体
形成用)の上述の照射器とは異なる。ビームがポリマー材料と相互作用する場合、ポリマ
ー主鎖の結合が切断され、溶液(BSS、房水等)に配置されたときにポリマー体が膨潤
すると屈折率が変化する。結果として得られる選択されたパラメータの組み合わせにより
、(材料内に水がある場合)蒸気滅菌に耐えることが可能な材料にGRINを生成し得る
。異なる吸収線量の放射線は、膨潤指数に正比例する効果があり、ポリマー系に結果とし
て生じる効果は、GRINを形成するメカニズムを提供する。
【0068】
図3A、3B、4A及び4Bは、一般に、ポリマー材料に適用されたイオン化エネルギ
ーが、水和したときに膨潤量を増加させ、その結果、RIのより大きな減少をもたらし得
る方法を示す。
図3Aは、一般に正方形として示される(3つのみラベル付けされている
)架橋30を有する形成されたポリマー材料を示す。これは「乾燥」状態と呼ばれること
がある。
図3Bは、溶液(例えば、BSS、マグネシウム、カルシウム等)で水和したと
きのポリマー材料を示している。
図3Bでは、ポリマー材料は
図3Aの乾燥状態に比べて
膨潤している。正電荷32(明確にするために3つだけラベル付けされている)は互いに
無効になる。
【0069】
図4Aは、イオン化エネルギー40への曝露後のポリマー材料を示している。図示され
ているように、いくつかの架橋42は、イオン化エネルギー41の曝露により破壊されて
いる。
図4Aは、
図3Aと同様に、ポリマー材料の乾燥状態と呼ばれ得る。
【0070】
図4Bは、溶液(例えば、BSS、マグネシウム、カルシウム等)で水和した後のポリ
マーを示している。
図3Bと4Bを比較するとわかるように、(少なくともイオン化エネ
ルギーに曝された)ポリマー材料は、イオン化エネルギーに曝されていない場合と比較し
て、イオン化エネルギー吸収後に大きく膨潤する。
【0071】
図5は、膨潤が発生する方法をさらに詳細に示している。IOLの場合、レンズが眼の
中に配置されたときのレンズの光学特性が問題になる。コポリマーは、カルシウム及びマ
グネシウムカチオンの存在下で溶液中での膨潤を増加させる。レンズが配置されている溶
液(例えば、房水)からの拡散により、Ca
2+及びMg
2+イオンが材料内に存在する
ため、レンズ内の膨潤の変動が制御され得る。膨潤が大きいほど、マトリックス内の水分
が多いため、屈折率が低くなる。
図5は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に関連
する化学プロセスを示しており、アクリレートで使用するために変更され得る。
【0072】
図5の左上には、弱い架橋を示すために、2つのメタクリレート基の間に一対の水素結
合が示されている。Ca
2+及びMg
2+イオンの存在下では、カチオンがメタクリレー
ト基の末端の酸素原子と結合し、4つ以上の弱く結合したユニットの束を生成するため、
より強い錯体が構築される可能性がある。これらの種は親水性であるため、マトリックス
に水を引き込み、膨潤を引き起こし、屈折率を低下させる。高エネルギー電子がポリマー
に入射すると、ポリマー主鎖の結合が切断され、フローリーハギンズ溶液理論によれば、
追加の膨潤が発生し、その結果、屈折率がさらに低下する場合がある。要約すると、最初
の重合により、Ca
2+及びMg
2+イオンの存在下で膨潤する親水性ポリマーが生成さ
れる。電子ビームを照射すると(その例を
図4Aに示す)、この合成ポリマー鎖の結合が
切断され、RI変化(RI勾配等)を生成できる。この技術は、本明細書の(例えば、反
射防止層を生成する)方法のいずれかで使用され得る。
【0073】
本明細書のレンズは、架橋後、一般に、乾燥状態にあると呼ばれる。溶液(例えば、B
SS、眼の房水)に配置されると、ポリマー材料は乾燥状態に比べて膨潤する。膨潤量は
、レンズが配置されている溶液によって異なる。一般に、レンズは輸送及び/又は保存の
ために包装され、使用の準備ができたときに眼に埋め込まれる。場合によっては、本明細
書のレンズは、(乾燥ポリマー材料のある程度の膨潤を引き起こすために曝された)BS
Sに包装され得、移植されると、それらは房水に曝され、わずかな追加の膨潤を引き起こ
す場合がある。
【0074】
本明細書のレンズのいずれも、移植後にレンズが実質的に追加の膨潤を受けないように
、溶液中に保存/包装され得る。これは、移植時のレンズを可能な限り最終サイズに近づ
けることが望まれる場合に有益である場合がある。例えば、レンズは、移植直後に適切に
安定するように「フル」サイズで移植されることが望ましい場合がある。
【0075】
又は、その最終的な完全に移植されたサイズよりも小さい(すなわち、より少ない膨潤
)サイズでレンズを移植することが望ましい場合がある。例えば、移植されたレンズは、
送達ツールを通って前進しやすくなるようにより小さく、その後、最終的な移植されたサ
イズまでより大きく拡張することが望ましい場合がある。
【0076】
このようにして、移植後の膨潤の程度は、用途に基づいて必要に応じて制御され得る。
【0077】
電子ビームを利用してレンズの少なくとも一部に屈折率勾配プロファイルを生成する本
明細書の一般的な方法を使用して、個々の患者に合わせてレンズをカスタマイズし得る。
このアプローチは、本明細書の技術を使用することによって多くの患者の要求を満たし得
るという点で、多種多様な可能性を提供する。特定の患者は、レンズの特定のRIプロフ
ァイルから恩恵を受ける場合がある。本明細書の技術は、レンズに特定のRIプロファイ
ルを生成するために必要に応じて調整され得る。これらの特性及び他の特性は、光学特性
がレンズの形態によってのみ決定される単一屈折率材料とは対照的に、実施形態の方法を
使用して提供され得る。
【0078】
電子ビームは、表面又はバルク修飾に有利に使用され得、X線、レプトン、陽子、陽電
子、又はαもしくはβ源等の放射線源からの電離放射線等の他のエネルギーも使用され得
る。
【0079】
本明細書に記載の一般的な方法には、多種多様な特定の用途がある。いくつかの特定の
例が本明細書に提供されているが、一般的な方法を他の用途で使用して、多種多様なレン
ズに所望のRIプロファイルを生成し得ることが理解される。
【0080】
本開示の一様態は、眼内レンズ(例えば、IOL、眼の水晶体の人工代替物)等のレン
ズを製造する製造方法であり、大きさ及び絶えず変化する多数の方法で制御され得る屈折
率の多方向勾配(GRIN)を有する。GRINレンズの材料は、「湿布」の一部として
蒸気滅菌に対して寸法的に安定しており、長期間の使用でも加水分解的に安定している。
GRINレンズはレンズの材料によるものであり、三次元架橋分布が狭いため、長期間使
用しても変化しない。これらの製造方法により、多くの問題を解決するようにレンズを設
計することができる。
【0081】
例えば、限定されないが、これらの方法の例示的な用途は、屈折率が低下したベース材
料の薄層を生成することによって、レンズ内に反射防止層を生成することである。
図6は
、その中に形成された薄い反射防止層52を備え、主なレンズ本体部分54を備えた例示
的なレンズ50を示している。
【0082】
反射防止層(すなわち、表面層)は、視力障害を引き起こし得る眼内の迷光を低減し、
また、IOL以外のレンズ用途における望ましくない反射を低減するため、有用である場
合がある。
【0083】
図13A及び13Bは、光学体102及び周辺支持体104を含む追加の例示的なレン
ズ100を示している。光学体102は、光学体102を通って延びる開口106(この
実施形態では中央開口である)を含む。
図13Bは、本明細書の方法を使用して照射され
て、開口の位置に反射防止層を生成する開口を形成する光学体の領域108を示している
。これは、開口部の位置での光の散乱を低減するのに役立つ場合がある。
【0084】
本明細書に記載の製造プロセスは、反射防止層を形成するように操作され得る。一般に
、低エネルギー(例えば、500eVから10keVまで)及び任意で高フラックス(表
面を通る電子の高流量)を有する電子を、レンズの表面改質に使用し得る。例えば、反射
防止層は、例えば表面で化学結合を切断することによって生成され得、それによって、R
I及び/又は反射率が低下する。
【0085】
反射防止層を生成するために、0.5keV~2keVの範囲の電子が使用され得、吸
収された放射線量は4~8Mradの範囲である。線量はより高くても又はより低くても
よく、照射された基質化学物質の組成にも依存され得る。又は、約0.3~1keVのエ
ネルギーを持つ電子を高フラックスで使用し得る。吸収線量が約8Mradに達すると、
照射深度による屈折率の変化は実質的に均一になり、75%の相対的な減少でほぼ同じ屈
折率を持つ層(例えば、層52)が生成される。電子のエネルギーと線量を適切に選択す
ることにより、レンズ材料に干渉反射防止層が生成され得る。
【0086】
修飾された表面層の厚さは、主に電子エネルギーによって影響を受ける。これは
図7に
示され、Anderson,C.A.編、1973年、Microprobe Anal
ysis、John Wiley&Sons、571ppから取得した理論式に従って計
算される。
【数1】
ここで、Rはμm単位の電子の最大侵入深さ、ρはg/ml単位の材料の密度、E
0はk
eV単位の表面と衝突したときの電子のエネルギーである。
【0087】
屈折率の変化がステップである場合、所望の厚さは、修飾された表面層内の光の波長の
4分の1であり、RIに等しい係数だけ空気中の波長から減少する。したがって、層の厚
さは約100~200nmになる。単一の電子エネルギーを使用すると、実際のRI変化
は指数関数的減衰である。したがって、いくつかの実施形態における厚さは、約100~
200nm、例えば、約50~400nmよりもいくらか小さくても大きくてもよく、こ
こで、厚さは、最大RI変化の1/eとして定義される。いくつかの実施形態では、厚さ
は0.1μm~10μmである。いくつかの実施形態では、厚さは1μm~10μmであ
る。曝露中に電子エネルギーを変化させることにより、より段状の層を生成し得る。さら
に、レンズの中心からの距離の関数として表面層の厚さを変えることにより、レンズの曲
面への光の入射角が考慮され得る。
【0088】
本明細書の開示は、主に電子ビームをイオン化エネルギーとして説明しているが、ベー
タ放射線等の他のタイプのイオン化エネルギーを使用してもよい。ただし、ベータ線は通
常、より高いエネルギー(例えば、546keVで
90Sr→
90Y)であり、その使用
は所望の層の厚さによって、又は反射防止層以外の用途の場合はレンズ自体の厚さによっ
て制限され得る。IOLの場合、この厚さは0.05mm~5mmの間である。また、ベ
ータ線のエネルギーは、電子線とは異なり、調整され得ない。
図7に示される電子放射グ
ラフと比較すると、
図8はベータ放射の比較的高いエネルギー範囲を示している。
【0089】
追加の例示的な用途は、形状を移動又は変化させることなく広範囲の距離から光を集束
させるレンズを作成することであり、それにより、様々な方向からレンズに入射し、レン
ズの様々な表面位置に入射する光は、レンズ全体のRIのばらつきにより異なるレンズを
通る光経路を経験する。IOLは通常、自然のままの水晶体によって提供されるものと同
様の調節を提供しないため、広範囲の距離からの光の集束は、レンズを装着した患者にと
って有用である。さらに、この技術は、大きな被写界深度で設計されたカメラレンズ等、
他のレンズ用途でも役立ち得る。
【0090】
バルクレンズ材料に対する表面レンズ材料の屈折率の変化は、吸収された放射線量に依
存する。
図9は、屈折率の変化率を示しており、100%はバルクから変化していない表
面RIを指し、0%は表面RIが保持されている溶液(例えば、包装内の平衡塩類溶液、
眼の房水等)のRIに還元されていることを指す。
【0091】
本明細書に記載の一般的な技術の別の例示的な用途は、両方の表面から反射された光の
破壊的な干渉を引き起こさない、いくつかの波長の厚さにわたって拡張された表面層を生
成することである。これは
図6で表され得るが、領域52は均一なRIを持つ層ではなく
、RI勾配になる。この例示的な方法では、材料の外面のRIは、房水のRIに可能な限
り厳密に一致(例えば、10%以下の分散、例えば5%以下の分散)するように低減され
る。レンズと房水との間のRIのわずかな変化により、反射が少なくなる。フレネルの式
によると、下記式の通りである。
【数2】
ここで、n
lはレンズの屈折率、n
aは房水の屈折率である。この方法では、約8Mra
d以上の表面線量を利用するが、表面直下の層は、受ける放射線が少ないため屈折率が徐
々に変化する。したがって、このような勾配を生成するために必要な時間は、上記のよう
に飽和を防止するように選択される必要がある。より厚い表面層を達成するには、1ke
V~10keVの範囲のより高いエネルギーの電子が必要であるが、それでもここで定義
されている「低」エネルギーの範囲内である。
【0092】
照射の複数の指向性入射角を使用して、レンズの大部分、レンズの表面又はその両方に
おいて、屈折率勾配の異なる三次元(3D)パターンを生成し得る。RIの変化は、配向
に関係なく、電子エネルギー(透過)と吸収線量(影響の大きさ)によって決定されるた
め、レンズビームの配向を変えることで様々なパターンが実現され得る。効果の予測は、
3Dマトリックス内のすべての位置について、電子ビームの方向とその位置での吸収線量
に対するレンズ内の位置の深さが計算され、ビームが移動するにつれ時間の経過とともに
積分することによって行われ得る。
【0093】
前述の方法論は、レンズの表面改質において特に有用であり、その例は本明細書に記載
されている。しかしながら、レンズの大部分(すなわち、表面だけではない)の変更が望
まれる場合、高エネルギー(例えば、10keV~700keVまで)の電子を使用して
、レンズの大部分により深く浸透し得る。したがって、ビームのエネルギーは、特定の用
途に必要な深さまで透過するように必要に応じて変更され得る。電子のエネルギープロフ
ァイルとフラックス、及び入射角と照射位置を調整することにより、レンズの任意の部分
全体で所望のRIプロファイルを実現し得る。
【0094】
一般に、天然水晶体によって提供されるものと同様の網膜像は、脳がそのような画像に
慣れており、脳のニューラルネットワークがそのような画像をよりよく処理できる場合が
あるため、水晶体レシピエントにとって有利である場合がある。本明細書の方法の追加の
例示的な用途は、天然水晶体によって生成されるものにより類似した画像を生成するレン
ズを作成することである。
図10は、本明細書の方法を使用して生成され得る例示的なレ
ンズ60を示している。レンズ60は、天然水晶体のように機能するように作成されてお
り、
図10の屈折率の等高線を表す内部線で示されるように、RIが徐々に変化する。レ
ンズ60は、水晶体嚢に埋め込まれて、除去された天然水晶体に置き換えられてもよい。
図10では、前部はページの下部に向かっており、後部はページの上部に向かっている。
RIはレンズ本体で変化し、RIは外側領域64よりも中央領域62の方が大きくなる。
レンズ60は、天然水晶体の屈折率分布が実質的に同じである三次元ポリマーマトリック
スを持つ光学体の例である。レンズ60はまた、天然水晶体の形状と実質的に同じ形状を
有する光学体の例である。当業者は、天然水晶体の屈折率分布と実質的に同じ屈折率分布
、及び天然水晶体と実質的に同じ形状が何を意味するかを理解するであろうから、当業者
は、(対象の変動の対象となる可能性がある)天然水晶体との比較がこの説明を不明確又
は曖昧にしないことを理解するであろう。
【0095】
図10のレンズ60は、移植後に最終的な移植状態(サイズ)に膨潤するように適合さ
れ得るレンズの例である。例えば、レンズ60は、レンズ挿入器具を介した送達を容易に
するために、より小さな送達サイズを有し、その後、挿入されると、より大きな状態に膨
潤(拡張)して、眼内(例えば、水晶体嚢内)によりよく固定されることが望ましくても
よい。
【0096】
図11は、本明細書の方法を使用して生成され得る、光学体内に様々なRIを有する代
替の光学体70を示している。光学体70は、任意の適切な眼科用レンズ(例えば、1つ
又は複数の触覚部を備えたIOL)に組み込まれ得る。イオン化エネルギーをポリマー体
に適用して、光学体70を生成し得る。領域74は、領域72と比較してより低いRI領
域とみなしてもよい。RIは、レンズ70を通して連続的に(勾配)変化してもよい。レ
ンズ70は、屈折異常(レンズ形状の球形成分を介して)及び乱視(レンズ形状の円筒形
成分を介して)を治療するように構成されたレンズの例である。領域72と74との間の
RI変化の程度は、任意の適切な程度であり得る。
【0097】
本明細書に記載の方法のさらなる実施形態は、従来の形状のレンズ、例えば、両凸レン
ズ又は両凹レンズ内に埋め込まれたフレネルレンズを作成することである。光パワーを作
成するには、レンズの表面を湾曲させる必要がある。両凸レンズの場合、中心が光パワー
とともに増加する中心の厚さを持たなければならず、両凹レンズの場合、光パワーととも
に増加するエッジの厚さを持たなければならないことを意味する。フレネルレンズは、曲
率を様々なセクターに分割する形状を有しているため、レンズの厚みが薄くなる。フレネ
ルレンズの欠点の1つは、光を散乱させ得る曲率が急激に変化し得ることである。従来の
形状のレンズ内にフレネルレンズを製造することにより、出力の一部は従来のレンズの外
形から得られ得、出力を増加させた湾曲ゾーンを生成することにより、従来のレンズ内に
フレネルレンズを複製することによってより多くの出力が得られ得る。さらに、フレネル
レンズは、複数の焦点を同時に提供するように設計され得、例えば、遠距離及び近距離で
の良好な焦点、又は遠距離、近距離及び中距離での良好な焦点を提供する。さらに、フレ
ネルレンズの異なる屈折ゾーン間の相互作用は、有益な回折効果を生み出し得、屈折ゾー
ンの正確な形状の制御は、散乱を減らしてより良い画像を作成し得る。
【0098】
本開示の一様態は、GRINレンズを作製するために使用され得るコポリマー材料又は
コポリマー材料の組み合わせである。レンズは、例えば、IOLに組み込まれ得る。IO
L材料の特性は、眼への挿入を容易にする高い弾性、視力障害を回避するための低い反射
率、(例えば、有毒物質を眼に浸出させない)優れた生体適合性、及び眼の既存の構造を
乱したり刺激したりすることなく、レンズと支持要素とで構成される安定した形状を機械
的に正確に保持可能であることを含む。
【0099】
いくつかの眼科用デバイスは、光学体から半径方向外向きに延長し、眼に配置されたと
きに光学体に支持を提供する1つ又は複数の周辺支持体(例えば、プレート触覚部又は腕
触覚部等の1つ又は複数の触覚部)を含んでもよい。本明細書の照射方法のいずれかは、
光学体及び任意の周辺支持体が(例えば、旋盤、成形、機械加工、又はそれらの任意の組
み合わせを介して)一体構造に形成された後に発生してもよい。
【0100】
また、本明細書で不均一な架橋密度を生成する方法は、レンズの非光学体部(例えば、
1つ又は複数の触覚部)で使用されてもよい。また、非光学体部の少なくとも一部は、変
化する屈折率を生成するために照射されてもよい。これは、瞳孔のサイズが大きいために
非光学部分を通過する光が多い、瞳孔が比較的大きい一部の対象者の光散乱を減らすのに
役立つ場合がある。したがって、本明細書に記載の照射及び膨潤のすべての方法は、レン
ズの非光学部分、及び光学体に使用してもよい。
【0101】
(三次元コポリマーにおける屈折率勾配を調製する例示的な方法)
特定の実施形態のコポリマー系は、大部分の非イオン性アクリルモノマーと、小部分の
有機酸などのイオン性モノマーから構成される。「有機酸」という用語は、有機ラジカル
(炭素(炭化水素)含有部分)を含む分子から構成される酸を包含する。このような酸に
は、例えば、アクリル酸、ギ酸(H-COOH)、酢酸(CH3COOH)及びクエン酸
(C6H8O7)が含まれ、それぞれイオン化可能な-COOH基を含む。モノマーに適
用される「アクリル」という用語は、アクリル酸から誘導された合成プラスチック樹脂を
包含する。親水性モノマー及び疎水性モノマーは、疎水性モノマーが親水性モノマーに可
溶であるように選択されなければならない。親水性モノマーは、疎水性モノマーの溶媒と
して機能する。適切なモノマーは、本開示が関係する当業者によって容易に選択され得る
。適切なアクリルモノマーの例として、4-メタクリロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェ
ノン、エチル-3-ベンゾイルアクリレート、N-プロピルメタクリレート)N-プロピ
ルメタクリレート(アクリル)、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート、n-ヘ
プチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシ
プロピルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメ
タクリレートポリ(エチレングリコール)nモノメタクリレート、4-ヒドロキシブチル
メタクリレート、及び当該技術分野で既知の他のモノマーが含まれる。塩化ナトリウム又
は他の塩がコポリマー系に存在する場合、水中での膨潤が減少することが一般的に観察さ
れている。したがって、レンズが眼の外側にあるときにコポリマー系内の塩分を操作する
ことによって、目標とする膨潤量は変更され得る。レンズは、移植前に配置された溶液に
応じて、房水に曝されたときに眼に移植されると多かれ少なかれ拡張され得る。
【0102】
(三次元コラーゲン含有コポリマーの屈折率勾配)
コポリマーは、コラーゲン又は類似の生体分子をポリマーに添加することによって修飾
され得、その場合、放射線法が使用され得る。この配合方法は、GRINを備えたIOL
を製造し得る結果として得られる材料の構造的及び寸法的特性を提供する。任意の供給源
からの任意のタイプのコラーゲンが使用され得る。適切なコラーゲン材料には、ブタの眼
の強膜又は角膜から得られるコラーゲン、又は(例えば、遺伝子組み換え酵母等から人工
的に産生又は培養される)線維芽細胞が含まれるが、これらに限定されない。コラーゲン
は、疎水性、ヒドロキシル性及び分極性アミノ酸を含む自然に安定なポリエン、例えば、
テロコラーゲン等である。コラーゲン材料を含むコポリマー材料は、米国特許第5,65
4,349号、第5,910,537号及び第5,661,218号明細書に記載されて
いる。コラマーは、放射線に対するその安定性のために、特定の実施形態において望まし
い場合がある。ヒドロゲルは石灰化(ヒドロキシアパタイト沈着)に関連している。変性
コラーゲン等の生体分子は、レンズに組み込まれると、フィブロネクチンを引き付けて保
護層を形成し得る。この(個々の患者に固有の)フィブロネクチンの保護層は、異物とし
て認識されないため、レンズの石灰化に対する感受性が低下する。したがって、レンズの
構成要素として放射線学的に耐性があり、生物学的に活性である材料を提供することによ
って、特に光劣化に対して優れた安定性、及び生体適合性を有するレンズが得られ得る。
【0103】
ポリマー体を形成することは、非イオン性アクリルモノマーをイオン性モノマー(例え
ば、ギ酸等の酸)と混合することを含んでもよい。非イオン性アクリルモノマーとイオン
性モノマーとの重量比は、約10:1~約10,000:1、例えば、50:1~200
:1、例えば、75:1、100:1、125:1、150:1、又は175:1の範囲
であり得る。例示的な材料を調製する例示的な方法における追加のステップは、米国特許
出願第62/765,088号明細書に記載され、その優先権が本明細書で主張され、そ
の開示は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
したがって、ポリマーが形成されると、IOL(又は他のレンズ)は、例えば、旋盤及
びミルを使用して、又は型を用いて従来の方法で製造され得、次いで、第2照射プロセス
を使用して改変され得る。
【0105】
吸収された放射線の関数としてのRI変化は、コポリマーに架橋されるメタクリル酸及
びアクリル酸等、アニオン性成分の濃度等の要因によって影響を受ける。アニオン性成分
の濃度は膨潤係数に影響を与え、それが次にRIに影響を与える。より多くの膨潤はより
低いRIと相関し、より高い濃度のアニオン性成分はより多くの膨潤(したがってより低
いRI)をもたらす。生理学的及びBSS範囲のビカチオンの濃度は、0.7~2.0m
mol/Lのマグネシウム及び1~3.5mmol/Lのカルシウムである。材料が膨潤
する傾向は、コポリマーに架橋されるメタクリル酸やアクリル酸等のアニオン性成分によ
って決定される。過剰なモノマーは、通常、抽出プロセス中に除去される。
【0106】
コポリマー構造内の2つの異なるモノマーの比、吸収線量、及び電子エネルギーを中程
度の範囲内で変化させて、得られるGRINレンズ内の特性の異なるバランスを達成し得
る。このようにして、所望のRIプロファイルをレンズ内に作成し得る。一例として、患
者の視覚系の光学収差は、波面収差計などのデバイスを使用して測定され得、収差を補正
するために必要なレンズが計算され得る。その後、三次元照射計画が立てられ得、それに
より、電子エネルギーの関数として、レンズの任意の点での線量が計算され得、ビーム位
置及び角度、電子流束及び電子エネルギーからなる照射計画が作成され得る。様々な患者
向けのレンズは、単一の屈折率レンズの単一設計から製造され得、又はレンズの幾何学的
特性を追加の自由度(設計パラメータ)として使用され得る。したがって、本明細書の方
法を使用して、所望の屈折率プロファイルに基づいて多種多様なレンズを作成し得る方法
に大きな柔軟性がある。
【0107】
米国特許第9,545,340号、第9,492,323号、第9,144,491号
、第9,060,847号、第8,932,352号、第8,901,190号、第8,
617,147号、第8,512,320号、第8,486,055号、第8,337,
553号及び第7,789,910号明細書は、レンズの屈折率を変更するためのレーザ
ーの使用に関するものであり、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0108】
例示的なポリマーは、主成分としてのヒドロキシエチルメタクリレートモノマー及び微
量成分としてのアクリル酸から生成される構造のコポリマーであってもよい。重量比は上
記の通りであってもよい。
図12は、アクリル酸側鎖(左)とメタクリレート側鎖(右)
を持つポリマー鎖の部分を示している。コポリマーは、化学的又は(上記の)核照射中に
生成され、次に本明細書に記載の電子ビーム照射法(又は他のイオン化エネルギー源)を
使用して修正されて、GRIレンズが作成される。
【0109】
上記で提示された一般化された式に従って、他のコポリマーの組み合わせを使用して、
同じ最終特性を達成し得る。メタクリルイオン性モノマー及び電子ビーム衝撃に感受性の
あるメタクリル非イオン性モノマーを含む吸収線量感放射線性屈折率変化性コポリマー組
成物は、眼での使用にも適合性のある様々な屈折率を有する材料の調製に使用され得る。
【0110】
本明細書で使用される「低エネルギー」という用語は、広義の用語であり、500eV
~10keVを含むがこれに限定されない。
【0111】
本明細書で使用される「高エネルギー」という用語は、広義の用語であり、10keV
~700keVを含むがこれに限定されない。
【0112】
本明細書の説明及び実施例は、本開示の例示的な実施形態を詳細に示している。当業者
は、その範囲に含まれる本明細書の発明の多数の変形及び改変があることを認識するであ
ろう。したがって、例示的な実施形態の説明は、本明細書の発明の範囲を限定するとみな
されるべきではない。
【0113】
詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定するこ
とを意味するものではない。本明細書の教示は、例えば、特許請求の範囲によって定義及
びカバーされるものを含む、多数の異なる方法で適用し得る。本明細書の様態は、多種多
様な形態で具体化されてもよく、本明細書に開示される任意の特定の構造、機能、又はそ
の両方は単に代表的なものであることは明らかであるはずである。本明細書の教示に基づ
いて、当業者は本明細書に開示される様態が他の様態とは独立して実施されてもよく、こ
れらの様態のうちの2つ以上が様々な方法で組み合わされてもよいことを理解すべきであ
る。例えば、当業者は本明細書に記載の様態の任意の合意的な数又は組み合わせを使用し
て、システム又は装置を実装してもよく、又は方法を実施してもよい。さらに、本明細書
に記載の1つ又は複数の様態に加えて又はそれ以外の他の構造、機能又は構造及び機能を
使用して、そのようなシステム又は装置を実装してもよく、又はそのような方法を実施し
てもよい。本明細書に提示される主題の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形
態を利用してもよく、他の変更を行ってもよい。本明細書に一般的に記載され、図に示さ
れる本開示の様態は、多種多様な異なる構成で配置、置換、組み合わせ及び設計をし得、
それらはすべて明示的に企図され、本開示の一部として容易に理解される。他の実施形態
は本開示及び特許請求の範囲に含まれてもよいため、開示された実施形態は、以下に記載
される実施例に限定されないことが理解されるべきである。
【0114】
本開示は、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明されているが、そのような
例示及び説明は例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。本開示は、開示
された実施形態に限定されない。開示された実施形態の変形は、開示された特許請求の範
囲を実施する当業者によって、図面、開示及び添付の特許請求の範囲から理解され実施さ
れ得る。
【0115】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込ま
れる。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願は、本明細書に含まれる開示
と矛盾する範囲で、明細書はそのような矛盾する資料に取って代わる、及び/又は優先す
ることを意図している。
【0116】
値の範囲が提供される場合、上限と下限、及び範囲の上限と下限との間に介在する各値
は、実施形態に含まれることが理解される。
【0117】
さらに「A、B、及びCなどの少なくとも1つ」に類似する規則がある場合、一般にそ
のような構成は、当業者が規則を理解するという意味で意図されている(例えば、「A、
B及びCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一
緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、及び/又はA、B及びCを一緒に有する等のシ
ステムを含むが、これらに限定されない)。「A、B、又はCなどの少なくとも1つ」に
類似する規則がある場合、一般にそのような構成は、当業者が規則を理解するという意味
で意図されている(例えば、「A、B又はCの少なくとも1つを有するシステム」は、A
のみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、及び/又は
A、B及びCを一緒に有する等のシステムを含むが、これらに限定されない)。