(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153922
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ミラー
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20231011BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20231011BHJP
G02B 23/02 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
G02B5/08 A
G02B5/10 Z
G02B23/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125313
(22)【出願日】2023-08-01
(62)【分割の表示】P 2021561279の分割
【原出願日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2019215322
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼村 健一
(57)【要約】
【課題】簡便に製造することができるミラーを提供する。
【解決手段】ミラーは、セラミックスで構成される板状の本体部のおもて面に設けられるミラー面と、本体部の裏面に形成される凹部と、凹部の縁に沿うように設けられるリブと、を備える。リブの凹部の底面側における幅を第1幅とし、リブの凹部の開口部側における幅を第2幅とした場合、リブは、第1幅が第2幅よりも大きい傾斜部を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスで構成される板状の本体部のおもて面に設けられるミラー面と、
前記本体部の裏面に形成される凹部と、
前記凹部の縁に沿うように設けられるリブと、
を備え、
前記リブの前記凹部の底面側における幅を第1幅とし、前記リブの前記凹部の開口部側における幅を第2幅とした場合、
前記リブは、前記第1幅が前記第2幅よりも大きい傾斜部を有する、ミラー。
【請求項2】
前記リブは、前記凹部の内側の側面に前記傾斜部を有し、
前記内側の側面の前記傾斜部は、前記底面を基準とする垂線に対する傾斜角が1°以上、5°以下である、
請求項1に記載のミラー。
【請求項3】
前記リブは、前記裏面の外周に沿って位置する外周リブを有し、
前記外周リブは、前記凹部の外側の側面に前記傾斜部を有し、
前記外側の側面の前記傾斜部は、前記底面を基準とする垂線に対する傾斜角が1°以上、5°以下である、
請求項1または2に記載のミラー。
【請求項4】
前記リブは、前記裏面の外周側に設けられる外周リブと、前記裏面の内周側に設けられる内周リブと、前記外周リブおよび前記内周リブを繋ぐように設けられる接続リブとを有し、
前記外周リブの幅は、前記内周リブの幅および前記接続リブの幅よりも広い
請求項1~3のいずれか一つに記載のミラー。
【請求項5】
前記リブは、前記裏面の中央部から、前記裏面の外縁部に向けて放射状に延びる、放射リブを有する、
請求項1~4のいずれか一つに記載のミラー。
【請求項6】
前記凹部は平面視した場合に、略扇形状である、
請求項5に記載のミラー。
【請求項7】
前記本体部は、前記おもて面から裏面にかけて貫通している貫通孔を中央部に有する、
請求項1~6のいずれか一つに記載のミラー。
【請求項8】
前記ミラー面は、曲面であり、
前記凹部の底面は、前記ミラー面の形状に沿った曲面である
請求項1~7のいずれか一つに記載のミラー。
【請求項9】
前記ミラー面は、曲面であり、
前記凹部の底面は、前記ミラー面の形状に沿った階段状である
請求項1~7のいずれか一つに記載のミラー。
【請求項10】
前記ミラー面は、曲面であり、
前記凹部の底面は、前記ミラー面の形状に沿った平面である
請求項1~7のいずれか一つに記載のミラー。
【請求項11】
前記本体部は、円板状であり、外周側の側面の一部に平面部を有する
請求項1~10のいずれか一つに記載のミラー。
【請求項12】
前記本体部は、複数の分割部材が繋ぎ合わされて構成される
請求項1~11のいずれか一つに記載のミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
天体望遠鏡などには、観測対象からの光を反射させるためのミラーが備えられている。このようなミラーとしては、たとえば、光を反射するための反射面を有し、低熱膨張セラミックスからなるミラー部材と、かかるミラー部材の反射面に設けられる反射膜とを備える天体望遠鏡用ミラーが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
実施形態の一態様に係るミラーは、セラミックスで構成される板状の本体部のおもて面に設けられるミラー面と、前記本体部の裏面に形成される凹部と、前記凹部の縁に沿うように設けられるリブと、を備える。前記リブの前記凹部の底面側における幅を第1幅とし、前記リブの前記凹部の開口部側における幅を第2幅とした場合、前記リブは、前記第1幅が前記第2幅よりも大きい傾斜部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施形態に係るミラーをおもて面側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るミラーを裏面側から見た平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る外周リブの構成を示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る外周リブの別の構成を示す拡大断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る内周リブの構成を示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る凹部の底面の構成を示す拡大断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る凹部の底面の別の構成を示す拡大断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る凹部の底面の別の構成を示す拡大断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る本体部の別の構成を示す平面図である。
【
図12】
図12は、実施形態の変形例1に係るミラーをおもて面側から見た平面図である。
【
図13】
図13は、実施形態の変形例1に係るミラーを裏面側から見た平面図である。
【
図14】
図14は、実施形態の変形例1に係る分割部材を裏面側から見た平面図である。
【
図16】
図16は、実施形態の変形例1に係る接続リブの別の構成を示す拡大断面図である。
【
図17】
図17は、実施形態の変形例1に係る本体部の別の構成を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、実施形態の変形例1に係る本体部の別の構成を示す平面図である。
【
図19】
図19は、実施形態の変形例2に係るミラーをおもて面側から見た平面図である。
【
図20】
図20は、実施形態の変形例2に係るミラーを裏面側から見た平面図である。
【
図22】
図22は、実施形態の変形例2に係る内周リブの構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するミラーの実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す各実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0007】
天体望遠鏡などには、観測対象からの光を反射させるためのミラーが備えられている。このようなミラーとしては、たとえば、光を反射するための反射面を有し、低熱膨張セラミックスからなるミラー部材と、かかるミラー部材の反射面に設けられる反射膜とを備える天体望遠鏡用ミラーが開示されている。
【0008】
しかしながら、従来技術では、ミラー部材を補強するためのコア部材が別途必要となることから、ミラーの製造工程において、コア部材を製造する工程やミラー部材とコア部材とを接合する工程などが別途必要となっていた。すなわち、従来技術では、ミラーを簡便に製造することが困難であった。
【0009】
そこで、上述の問題点を克服し、簡便に製造することができるミラーの実現が期待されている。
【0010】
<ミラーの構成>
最初に、実施形態に係るミラー1の全体構成について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係るミラー1をおもて面3側から見た平面図であり、
図2は、実施形態に係るミラー1を裏面4側から見た平面図であり、
図3は、
図2に示すA-A線の矢視断面図である。
【0011】
なお、本開示では、天体望遠鏡に用いられるミラー1について説明するが、実施形態に係るミラー1が適用される装置は天体望遠鏡に限られない。
【0012】
図1~
図3に示すように、実施形態に係るミラー1は、セラミックで構成される板状(本開示では円板状)の本体部2を備える。かかる本体部2は、おもて面3と裏面4とを有する。おもて面3は、曲面(たとえば、球面)のミラー面3aを全面に有する。
【0013】
ミラー面3aは、たとえば、おもて面3の全体を鏡面加工した後に、かかる鏡面に光を反射させるコーティングを施して形成される。実施形態に係るミラー1は、このミラー面3aで観測対象からの光を反射させることができる。
【0014】
なお、本開示ではミラー面3aが凹形状である場合について示しているが、ミラー面3aは凹形状に限られず、平面形状や凸形状であってもよい。また、ミラー面3aは、球面に限られず、非球面であってもよい。
【0015】
図3などに示すように、本体部2には、おもて面3から裏面4に貫通する円筒状の貫通孔5が中央部に形成される。ミラー1が適用される天体望遠鏡では、かかる貫通孔5を通した光を副鏡で観察することができる。
【0016】
図2などに示すように、本体部2の裏面4には、複数の凹部6が形成される。かかる凹部6は、たとえば、平面視で中心角が60°程度の扇形状である。そして、裏面4には、6個の凹部6が円板状の本体部2の周方向に沿って均等に配置される。
【0017】
また、本体部2の裏面4には、かかる凹部6の縁に沿うようにリブ7が設けられる。このリブ7は、
図3に示すように、凹部6の底面6aから裏面4にむけて略垂直に立ち上がるように設けられる。
【0018】
また、
図2に示すように、リブ7は、裏面4の外周側に設けられる外周リブ7aと、裏面4の内周側に設けられる内周リブ7bと、外周リブ7aおよび内周リブ7bを繋ぐように設けられる接続リブ7cとを有する。
【0019】
外周リブ7aは、たとえば、裏面4の外縁部に沿って設けられる。内周リブ7bは、たとえば、貫通孔5を囲むように貫通孔5と凹部6との間に設けられる。接続リブ7cは、たとえば、裏面4の中央部から裏面4の外縁部に向けて放射状に設けられる。
【0020】
実施形態では、本体部2に複数の凹部6を形成することにより、ミラー1の体積を減少させることができることから、ミラー1を軽量化することができる。また、実施形態では、凹部6の縁に沿うようにリブ7を形成することにより、凹部6によって軽量化されたミラー1の強度を確保することができる。
【0021】
つづいて、実施形態に係るリブ7の詳細について、
図4~
図7を参照しながら説明する。
図4は、
図2に示すB-B線の矢視断面図であり、実施形態に係る接続リブ7cの構成を示す拡大断面図である。
【0022】
図4に示すように、実施形態に係る接続リブ7cは、テーパ状の側面7c1を有する。かかる側面7c1は、接する凹部6の入口側が広がるように、裏面4に対して傾斜している。側面7c1の傾斜角αは、たとえば、1°~5°の範囲であり、傾斜角αが2°~3°の範囲であることが好ましい。
【0023】
実施形態では、接続リブ7cがテーパ状の側面7c1を有することにより、ミラー1の製造工程において、後に焼成して本体部2となる成形体を鋳型で成形した後に、かかる鋳型を容易に成形体から脱型することができる。
【0024】
したがって、実施形態によれば、本体部2となる成形体を鋳型で容易に成形することができることから、ミラー1を簡便に製造することができる。また、実施形態では、接続リブ7cの先端側を薄くすることができることから、ミラー1を軽量化することができる。
【0025】
また、実施形態では、接続リブ7cの下端に位置する角部7c2が、R形状を有するとよい。かかる角部7c2は、接続リブ7cの側面7c1と凹部6の底面6aとが接する部位である。
【0026】
このように、接続リブ7cの角部7c2がR形状を有することにより、かかる角部7c2に応力が集中することを抑制できることから、本体部2における接続リブ7c近傍の強度を向上させることができる。
【0027】
なお、
図4に示すように、接続リブ7cでは、両側の側面7c1をともにテーパ状にするとよい。これにより、本体部2となる成形体を鋳型で成形した後に、かかる鋳型をさらに容易に成形体から脱型することができる。
【0028】
図5は、実施形態に係る外周リブ7aの構成を示す拡大断面図である。
図5に示すように、実施形態にかかる外周リブ7aは、テーパ状の側面7a1を有する。両側の側面7a1のうち、凹部6に接する側面7a1は、かかる凹部6の入口側が広がるように、裏面4に対して傾斜している。
【0029】
また、両側の側面7a1のうち、本体部2の外周側の側面となる側面7a1は、おもて面3側よりも裏面4側のほうが本体部2の中心に近づくように、裏面4に対して傾斜している。側面7a1の傾斜角βは、たとえば、1°~5°の範囲であり、傾斜角βが2°~3°の範囲であることが好ましい。
【0030】
実施形態では、外周リブ7aがテーパ状の側面7a1を有することにより、ミラー1の製造工程において、後に焼成して本体部2となる成形体を鋳型で成形した後に、かかる鋳型を容易に成形体から脱型することができる。
【0031】
したがって、実施形態によれば、本体部2となる成形体を鋳型で容易に成形することができることから、ミラー1を簡便に製造することができる。また、実施形態では、外周リブ7aの先端側を薄くすることができることから、ミラー1を軽量化することができる。
【0032】
また、実施形態では、外周リブ7aの下端に位置する角部7a2が、R形状を有するとよい。かかる角部7a2は、外周リブ7aの側面7a1と凹部6の底面6aとが接する部位である。
【0033】
このように、外周リブ7aの角部7a2がR形状を有することにより、かかる角部7a2に応力が集中することを抑制できることから、本体部2における外周リブ7a近傍の強度を向上させることができる。
【0034】
なお、
図5に示すように、外周リブ7aでは、両側の側面7a1をともにテーパ状にしてもよいし、
図6に示すように、凹部6に接する側面7a1のみをテーパ状にしてもよい。
図6は、実施形態に係る外周リブ7aの別の構成を示す拡大断面図である。
【0035】
図5に示すように、両側の側面7a1をともにテーパ状にすることにより、本体部2となる成形体を鋳型で成形した後に、かかる鋳型をさらに容易に成形体から脱型することができる。
【0036】
また、
図6に示すように、本体部2の外周側となる側面7a1を裏面4に対して略垂直に形成した場合でも、かかる側面7a1に接する鋳型を成形体の外周側に抜くことにより、とくに支障なく鋳型を抜くことができる。
【0037】
図7は、実施形態に係る内周リブ7bの構成を示す拡大断面図である。
図7に示すように、実施形態にかかる内周リブ7bは、テーパ状の側面7b1を有する。両側の側面7b1のうち、凹部6に接する側面7b1は、かかる凹部6の入口側が広がるように、裏面4に対して傾斜している。
【0038】
かかる側面7b1の傾斜角γは、たとえば、1°~5°の範囲であり、傾斜角γが2°~3°の範囲であることが好ましい。
【0039】
実施形態では、内周リブ7bがテーパ状の側面7b1を有することにより、ミラー1の製造工程において、後に焼成して本体部2となる成形体を鋳型で成形した後に、かかる鋳型を容易に成形体から脱型することができる。
【0040】
したがって、実施形態によれば、本体部2となる成形体を鋳型で容易に成形することができることから、ミラー1を簡便に製造することができる。また、実施形態では、内周リブ7bの先端側を薄くすることができることから、ミラー1を軽量化することができる。
【0041】
なお、
図7に示すように、内周リブ7bでは、凹部6に接する側面7b1のみをテーパ状にするとよい。このように、貫通孔5に接する側面7b1を裏面4に対して略垂直に形成した場合でも、かかる側面7b1に接する鋳型を貫通孔の軸方向に沿って抜くことにより、とくに支障なく鋳型を抜くことができる。
【0042】
また、実施形態では、内周リブ7bの下端に位置する角部7b2が、R形状を有するとよい。かかる角部7b2は、内周リブ7bの側面7b1と凹部6の底面6aとが接する部位である。
【0043】
このように、内周リブ7bの角部7b2がR形状を有することにより、かかる角部7b2に応力が集中することを抑制できることから、本体部2における内周リブ7b近傍の強度を向上させることができる。
【0044】
また、実施形態では、外周リブ7aの幅が、内周リブ7bの幅および接続リブ7cの幅よりも広いとよい。これにより、ミラー1の強度をさらに向上させることができる。
【0045】
つづいて、実施形態に係るリブ7以外の詳細について、
図8~
図11を参照しながら説明する。
図8は、実施形態に係る凹部6の底面6aの構成を示す拡大断面図である。
【0046】
図8に示すように、実施形態に係る凹部6の底面6aは、ミラー面3aの形状に沿った曲面であるとよい。このように、ミラー面3aと底面6aとの肉厚を一定にすることにより、ミラー1を軽量化することができる。
【0047】
なお、実施形態に係る凹部6の底面6aは、ミラー面3aの形状に沿った曲面である場合に限られない。
図9は、実施形態に係る凹部6の底面6aの別の構成を示す拡大断面図である。
【0048】
図9に示すように、実施形態に係る凹部6の底面6aは、ミラー面3aの形状に沿った階段状であってもよい。このように、複数の平面で構成される階段状に底面6aを構成することにより、底面6aに曲面が多く含まれる場合よりも鋳型を容易に形成できることから、ミラー1の製造コストを低減することができる。
【0049】
なお、
図9の例では、底面6aの平面と平面とを繋ぐ段差部分がテーパを有する例について示しているが、かかる段差部分は1mm程度の低い段差であることから、必ずしもテーパを有する必要は無い。
【0050】
図10は、実施形態に係る凹部6の底面6aの別の構成を示す拡大断面図である。
図10に示すように、実施形態に係る凹部6の底面6aは、ミラー面3aの形状に沿った平面であってもよい。
【0051】
このように、1つの平面で底面6aを構成することにより、底面6aに曲面が多く含まれる場合よりも鋳型を容易に形成できることから、ミラー1の製造コストを低減することができる。また、
図10の例では、ミラー面3aと底面6aとの肉厚を極限まで薄くすることができることから、ミラー1をさらに軽量化することができる。
【0052】
図11は、実施形態に係る本体部2の別の構成を示す平面図である。
図11に示すように、本体部2は、外周側の側面の一部に平面部8を有していてもよい。このように、本体部2における側面の一部に平面部8を設けることにより、本体部2を加工する工程において位置決めを容易にすることができる。
【0053】
したがって、実施形態によれば、本体部2の寸法精度を向上させることができる。また、本体部2における側面の一部に平面部8を設けることにより、ミラー1を天体望遠鏡内に設置する際に、位置決めを容易にすることができる。
【0054】
本体部2を構成するセラミックスとしては、たとえば、コージェライト質セラミックスや酸化アルミニウム質セラミックス、酸化ジルコニウム質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、炭化珪素質セラミックス、ムライト質セラミックスなどを用いることができる。
【0055】
本体部2をセラミックスで構成することにより、機械的強度が高く、かつ耐熱性に優れたミラー1を実現することができる。特に、低比重かつ低熱膨張率であるコージェライト質セラミックスで本体部2を構成することにより、ミラー1を軽量化することができるとともに、温度変化が激しい環境下での信頼性を向上させることができる。
【0056】
ここで、コージェライト質セラミックスとは、セラミックスを構成する全成分100質量%のうち、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)を80質量%含有するものである。
【0057】
なお、本体部2の材質は、以下の方法により確認することができる。まず、CuのKα線を用いたX線回折(XRD)装置により、回折角度2θ=8°~100°の範囲でX線回折測定を行なう。
【0058】
そして、リートベルト解析プログラムRIETANを用いて求めたコージェライトの含有量が80質量%以上であれば、本体部2の材質をコージェライト質セラミックスとみなすことができる。
【0059】
<ミラーの製造工程>
つづいて、実施形態に係るミラー1の製造工程について説明する。なお、以下の説明では、本体部2がコージェライト質セラミックスで構成される場合について説明する。
【0060】
まず、炭酸マグネシウム粉末、酸化アルミニウム粉末および酸化珪素粉末を所定の割合となるように調合した混合粉末を仮焼合成して得られる合成コージェライト粉末を準備する。
【0061】
次に、得られた合成コージェライト粉末と焼結助剤粉末とを所定の割合で秤量し、1次原料とする。次に、得られた1次原料粉末を湿式混合した後、所定量のバインダを添加して、スラリーを得る。
【0062】
次に、得られたスラリーをあらかじめ所定形状に加工した鋳型に流し込み、所定の温度、時間で乾燥して固化させた後、脱型する鋳込み成形法などにより成形する。さらに、任意の形状となるように切削加工などを施して、成形体を得る。
【0063】
次に、得られた成形体を、焼成炉にて大気雰囲気中1300℃以上1450℃以下の最高温度で焼成することにより、焼成体を得る。その後、必要に応じて研削加工や研磨加工、コーティング加工などを焼成体に施すことで、実施形態に係る本体部2を得ることができる。
【0064】
<変形例1>
つづいては、実施形態に係るミラー1の変形例1について、
図12~
図18を参照しながら説明する。
図12は、実施形態の変形例1に係るミラー1をおもて面3側から見た平面図であり、
図13は、実施形態の変形例1に係るミラー1を裏面4側から見た平面図であり、
図14は、実施形態の変形例1に係る分割部材10を裏面4側から見た平面図である。
【0065】
図12などに示すように、変形例1に係るミラー1は、全体の形状自体は実施形態に係るミラー1と同様である一方、同一形状の複数の分割部材10が繋ぎ合わされて本体部2が構成される点が実施形態と異なる。
【0066】
たとえば、平面視で中心角が60°の扇形状である分割部材10(
図14参照)が6個繋ぎ合わされることにより、変形例1の本体部2を構成することができる。
【0067】
このように、同一形状の複数の分割部材10を繋ぎ合わせて本体部2を構成することにより、ミラー1を容易に大型化することができる。また、同一形状の複数の分割部材10を繋ぎ合わせて本体部2を構成することにより、ミラー1の一部に破損が生じた場合でも、かかる破損箇所のみを交換することができる。
【0068】
そして、
図14に示すように、かかる分割部材10の中央部に凹部6を形成し、さらに凹部6の縁に沿うように外周リブ7a、内周リブ7b、および部分リブ7d(接続リブ7cの一部に対応)を形成することにより、上述の実施形態で示した構成のミラー1を実現することができる。
【0069】
図15は、
図13に示すC-C線の矢視断面図であり、変形例1に係る接続リブ7cの構成を示す拡大断面図である。
図15に示すように、変形例1に係る接続リブ7cは、分割部材10の部分リブ7d同士が繋ぎ合わされて構成される。
【0070】
そして、変形例1に係る接続リブ7cは、上述の実施形態と同様、テーパ状の側面7c1を有する。なお、変形例1のミラー1における外周リブ7aおよび内周リブ7bの構成は、上述の実施形態と同様であることから、説明は省略する。
【0071】
変形例1では、接続リブ7cがテーパ状の側面7c1を有することにより、ミラー1の製造工程において、後に焼成して分割部材10となる成形体を鋳型で成形した後に、かかる鋳型を容易に成形体から脱型することができる。
【0072】
したがって、変形例1によれば、分割部材10となる成形体を鋳型で容易に成形することができることから、ミラー1を簡便に製造することができる。また、変形例1では、接続リブ7cの先端側を薄くすることができることから、ミラー1を軽量化することができる。
【0073】
変形例1では、分割部材10同士が接触する接触面を接合材などで接着することにより、複数の分割部材10を繋ぎ合わせることができる。
【0074】
また、
図16に示すように、ボルトやナットなどの締結部材20を用いることにより、隣接する分割部材10同士を繋ぎ合わせてもよい。
図16は、実施形態の変形例1に係る接続リブ7cの別の構成を示す拡大断面図である。
【0075】
具体的には、分割部材10の部分リブ7dを水平方向に貫通する貫通孔を形成し、隣接する部分リブ7dの貫通孔同士を連通させて、連通した貫通孔に締結部材20を挿通させることにより、隣接する分割部材10同士を繋ぎ合わせることができる。
【0076】
このように、締結部材20を用いて複数の分割部材10を繋ぎ合わせることにより、天体望遠鏡にミラー1を取り付ける際に振動などが加わった場合でも、隣接する分割部材10のおもて面3同士の高さがずれることを抑制することができる。したがって、
図16の例によれば、ミラー1の面精度を向上させることができる。
【0077】
なお、
図16の例では、部分リブ7dの側面7c1における貫通孔5の周囲に、貫通孔の軸方向と略垂直な平面を形成するとよい。ここで、かかる平面を形成しないまま、テーパを有する側面7c1に直接締結部材20を接触させた場合、締結部材20から傾いた側面7c1の一部に大きな応力が加わることから、締結する際に部分リブ7dが破損してしまう恐れがある。
【0078】
しかしながら、
図16の例では、側面7c1における貫通孔5の周囲に、貫通孔の軸方向と略垂直な平面を形成することから、締結部材20からかかる平面に均等に応力が加わるため、締結する際に部分リブ7dが破損することを抑制することができる。
【0079】
また、変形例1では、分割部材10同士が接触する接触面の算術平均粗さRaが0.8μm以下であるとともに、単位長さ当たりの平面度が5μm以下であるとよい。これにより、隣接する分割部材10同士の接触が良好となることから、隣接する分割部材10のおもて面3同士の隙間を減らすことができる。
【0080】
したがって、変形例1によれば、各分割部材10のおもて面3の集合により構成されるミラー面3aの面精度を向上させることができる。
【0081】
また、隣接する分割部材10同士を接合する部材は、締結部材20に限られない。
図17は、実施形態の変形例1に係る本体部2の別の構成を示す斜視図である。
【0082】
図17に示すように、隣接する分割部材10同士は、部分リブ7dを覆うように配置される板状部材21を介して繋ぎ合わされてもよい。かかる板状部材21には、複数の貫通孔21aが形成され、部分リブ7dの裏面4側の面にも、かかる貫通孔21aに対応する位置にねじ穴7d1が形成される。
【0083】
そして、隣り合った部分リブ7d同士を覆うように板状部材21を配置し、貫通孔21aおよびねじ穴7d1にボルト22を螺合させることにより、板状部材21を介して隣接する分割部材10同士を繋ぎ合わせることができる。
【0084】
このように、板状部材21を用いて複数の分割部材10を繋ぎ合わせることにより、天体望遠鏡にミラー1を取り付ける際に振動などが加わった場合でも、隣接する分割部材10のおもて面3同士の高さがずれることを抑制することができる。したがって、
図17の例によれば、ミラー1の面精度を向上させることができる。
【0085】
なお、
図17の例では、板状部材21および締結部材20を用いて、複数の分割部材10を繋ぎ合わせた例について示したが、締結部材20を用いずに板状部材21のみを用いて複数の分割部材10を繋ぎ合わせてもよい。
【0086】
図18は、実施形態の変形例1に係る本体部2の別の構成を示す平面図である。
図18に示すように、変形例1の本体部2は、外周側の側面の一部に平面部8を有していてもよい。このように、本体部2における側面の一部に平面部8を設けることにより、本体部2を加工する工程において位置決めを容易にすることができる。
【0087】
したがって、変形例1によれば、本体部2の寸法精度を向上させることができる。また、本体部2における側面の一部に平面部8を設けることにより、ミラー1を天体望遠鏡内に設置する際に、位置決めを容易にすることができる。
【0088】
<変形例2>
つづいては、実施形態に係るミラー1の変形例2について、
図19~
図22を参照しながら説明する。
図19は、実施形態の変形例2に係るミラー1をおもて面3側から見た平面図であり、
図20は、実施形態の変形例2に係るミラー1を裏面4側から見た平面図であり、
図21は、
図20に示すD-D線の矢視断面図である。
【0089】
図19などに示すように、変形例2に係るミラー1は、本体部2の中央部に貫通孔5ではなく凹部6Aが形成される点が実施形態と異なる。このように、貫通孔5を形成しないことにより、ミラー面3aの面積を拡大することができることから、観測対象からの光の反射量を増加させることができる。
【0090】
図22は、実施形態の変形例2に係る内周リブ7bの構成を示す拡大断面図である。
図22に示すように、変形例2に係る内周リブ7bは、テーパ状の側面7b1を有する。
【0091】
かかる側面7b1は、接する凹部6、6Aの入口側が広がるように、裏面4に対して傾斜している。側面7b1の傾斜角γは、たとえば、1°~5°の範囲であり、傾斜角γが2°~3°の範囲であることが好ましい。
【0092】
変形例2では、内周リブ7bがテーパ状の側面7b1を有することにより、ミラー1の製造工程において、後に焼成して本体部2となる成形体を鋳型で成形した後に、かかる鋳型を容易に成形体から脱型することができる。
【0093】
したがって、変形例2によれば、本体部2となる成形体を鋳型で容易に成形することができることから、ミラー1を簡便に製造することができる。また、変形例2では、内周リブ7bの先端側を薄くすることができることから、ミラー1を軽量化することができる。
【0094】
また、実施形態では、内周リブ7bの下端に位置する角部7b2が、R形状を有するとよい。かかる角部7b2は、内周リブ7bの側面7b1と、凹部6の底面6aまたは凹部6Aの底面6A1とが接する部位である。
【0095】
このように、内周リブ7bの角部7b2がR形状を有することにより、かかる角部7b2に応力が集中することを抑制できることから、本体部2における内周リブ7b近傍の強度を向上させることができる。
【0096】
なお、
図22に示すように、変形例2の内周リブ7bでは、両側の側面7b1をともにテーパ状にするとよい。これにより、本体部2となる成形体を鋳型で成形した後に、かかる鋳型をさらに容易に成形体から脱型することができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。たとえば、上述の実施形態では、円板状のミラー1について示したが、ミラー1の形状は円板状に限られず、ミラー1が適用される各種装置の仕様に合わせて適宜変更することができる。
【0098】
また、上述の実施形態では、6個の分割部材10をつなぎ合わせて本体部2を構成した例について示したが、本体部2を構成する分割部材10の数は6個に限られない。
【0099】
以上のように、実施形態に係るミラー1は、セラミックスで構成される板状の本体部2のおもて面3に設けられるミラー面3aと、本体部2の裏面4に形成される凹部6と、凹部6の縁に沿うように設けられ、テーパ状の側面7a1、7b1、7c1を有するリブ7(外周リブ7a、内周リブ7b、接続リブ7c)と、を備える。これにより、ミラー1を簡便に製造することができる。
【0100】
また、実施形態に係るミラー1において、ミラー面3aは、曲面であり、凹部6の底面6aは、ミラー面3aの形状に沿った曲面である。これにより、ミラー1を軽量化することができる。
【0101】
また、実施形態に係るミラー1において、ミラー面3aは、曲面であり、凹部6の底面6aは、ミラー面3aの形状に沿った階段状である。これにより、ミラー1の製造コストを低減することができる。
【0102】
また、実施形態に係るミラー1において、ミラー面3aは、曲面であり、凹部6の底面6aは、ミラー面3aの形状に沿った平面である。これにより、ミラー1の製造コストを低減することができるとともに、ミラー1をさらに軽量化することができる。
【0103】
また、実施形態に係るミラー1において、リブ7は、裏面4の外周側に設けられる外周リブ7aと、裏面4の内周側に設けられる内周リブ7bと、外周リブ7aおよび内周リブ7bを繋ぐように設けられる接続リブ7cとを有する。そして、外周リブ7aの幅は、内周リブ7bの幅および接続リブ7cの幅よりも広い。これにより、ミラー1の強度をさらに向上させることができる。
【0104】
また、実施形態に係るミラー1において、本体部2は、円板状であり、外周側の側面の一部に平面部8を有する。これにより、本体部2の寸法精度を向上させることができるとともに、ミラー1を天体望遠鏡内に設置する際に、位置決めを容易にすることができる。
【0105】
また、実施形態に係るミラー1において、本体部2は、同一形状の複数の分割部材10が繋ぎ合わされて構成される。これにより、ミラー1を容易に大型化することができるとともに、ミラー1の一部に破損が生じた場合でも、かかる破損箇所のみを交換することができる。
【0106】
また、実施形態に係るミラー1において、隣接する分割部材10同士は、リブ(接続リブ7c)の一部分(部分リブ7d)を貫通する締結部材20で繋ぎ合わされる。これにより、ミラー1の面精度を向上させることができる。
【0107】
また、実施形態に係るミラー1において、隣接する分割部材10同士は、リブ(接続リブ7c)の一部分(部分リブ7d)を覆うように配置される板状部材21を介して繋ぎ合わされる。これにより、ミラー1の面精度を向上させることができる。
【0108】
さらなる効果や他の態様は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 ミラー
2 本体部
3 おもて面
3a ミラー面
4 裏面
5 貫通孔
6 凹部
6a 底面
7 リブ
7a 外周リブ
7b 内周リブ
7c 接続リブ、放射リブ
7d 部分リブ
7a1~7c1 側面
8 平面部
10 分割部材
20 締結部材
21 板状部材