(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153955
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】地図作成装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20231011BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20231011BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20231011BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
G08G1/00 A
G08G1/09 F
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127726
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2021192148の分割
【原出願日】2018-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2017108599
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】小山 和紀
(57)【要約】
【課題】オクルージョンが発生する可能性を好適に勘案して地図を作成することが可能な地図作成装置を提供する。
【解決手段】サーバ装置200は、複数のボクセルに分割された地
図DB20のボクセルデータに、静止物及び移動物の存在に関連する第1重み付け値をボクセル毎に付与する地図作成装置である。そして、サーバ装置200は、ボクセルデータの生成又は更新に必要な点群データを計測するときの計測車両の走行経路に関する位置情報を含むアップロード情報Iuを取得する。そして、サーバ装置200は、アップロード情報Iuに基づき特定した計測車両の走行経路に基づき、ボクセル毎の第1重み付け値を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の領域に分割された地図データに、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を前記複数の領域毎に付与する地図作成装置において、
前記地図データの生成又は更新に必要なデータを計測するときの走行経路を取得する取得部と、
前記走行経路に基づき、前記複数の領域毎の前記重み付け値を決定する決定部と、
を備える地図作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に設置されたセンサの出力に基づき地図データを更新する技術が知られている。例えば、特許文献1には、各車両がセンサにより地図データに対する変化点を検出した場合に、その変化点に関するデータを地図管理サーバに送信することで地図データの更新を行うシステムにおいて、変化点を検出する際に用いたセンサの信頼度を勘案して地図データを更新する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地図生成用の計測車両により道路周辺を計測する場合において、計測対象とすべき静止構造物が歩行者や他車両などの移動物体により遮蔽されてオクルージョンが発生し、正確に計測されない場合がある。このようなオクルージョンが発生する場合については、特許文献1では何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、オクルージョンが発生する可能性を好適に勘案して地図を作成することが可能な地図作成装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
複数の領域に分割された地図データに、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を前記複数の領域毎に付与する地図作成装置において、
前記地図データの生成又は更新に必要なデータを計測するときの走行経路を取得する取得部と、
前記走行経路に基づき、前記複数の領域毎の前記重み付け値を決定する決定部と、
を備え、
前記決定部は、前記走行経路上の車線が左側に存在する車線の場合には、当該車線より左側に存在する領域の重み付け値を大きくし、前記走行経路上の車線が右側に存在する車線の場合には、当該車線より右側に存在する領域の重み付け値を大きくする地図作成装置である。
【0007】
請求項6に記載の発明は、
制御部と、記憶部と、を備えるコンピュータに用いられる地図データ構造であって、
計測装置により計測された地物の位置を示す地物位置情報と、
前記地物を計測した際の前記計測装置の位置を示す計測位置情報と、
を含み、
前記制御部が前記地物位置情報を所定の規則に基づき空間を分割した領域毎の情報として前記記憶部に記憶する際に、前記地物位置情報に基づく前記領域の位置と、前記計測位置情報と、の位置関係に基づき前記領域のそれぞれに対し重み付けをする処理に用いられる、
地図データ構造である。
【0008】
請求項7に記載の発明は、
複数の領域に分割された地図データに、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を前記複数の領域毎に付与する地図作成装置が実行する制御方法であって、
前記地図データの生成又は更新に必要なデータを計測するときの走行経路を取得する取得工程と、
前記走行経路に基づき、前記複数の領域毎の前記重み付け値を決定する決定工程と、
を有し、
前記決定工程は、前記走行経路上の車線が左側に存在する車線の場合には、当該車線より左側に存在する領域の重み付け値を大きくし、前記走行経路上の車線が右側に存在する車線の場合には、当該車線より右側に存在する領域の重み付け値を大きくする。
請求項8に記載の発明は、
複数の領域に分割された地図データに、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を前記複数の領域毎に付与する地図作成装置が実行する制御方法であって、
前記地図データの生成又は更新に必要なデータを計測するときの走行経路を取得する取得工程と、
前記走行経路に基づき、前記複数の領域毎の前記重み付け値を決定する決定工程と、
を有し、
前記決定工程は、前記走行経路上において障害物を避けて走行したと判定される区間では、避けた方向と反対側に存在する領域の重み付け値を小さくする。
【0009】
請求項9に記載の発明は、
複数の領域に分割された地図データに、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を前記複数の領域毎に付与する地図作成装置のコンピュータが実行するプログラムであって、
前記地図データの生成又は更新に必要なデータを計測するときの走行経路を取得する取得部と、
前記走行経路に基づき、前記複数の領域毎の前記重み付け値を決定する決定部
として前記コンピュータを機能させ、
前記決定部は、前記走行経路上の車線が左側に存在する車線の場合には、当該車線より左側に存在する領域の重み付け値を大きくし、前記走行経路上の車線が右側に存在する車線の場合には、当該車線より右側に存在する領域の重み付け値を大きくする。
請求項10に記載の発明は、
複数の領域に分割された地図データに、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を前記複数の領域毎に付与する地図作成装置のコンピュータが実行するプログラムであって、
前記地図データの生成又は更新に必要なデータを計測するときの走行経路を取得する取得部と、
前記走行経路に基づき、前記複数の領域毎の前記重み付け値を決定する決定部
として前記コンピュータを機能させ、
前記決定部は、前記走行経路上において障害物を避けて走行したと判定される区間では、避けた方向と反対側に存在する領域の重み付け値を小さくするプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】車載機及びサーバ装置のブロック構成を示す。
【
図3】ボクセルデータの概略的なデータ構造の一例を示す。
【
図4】2車線の道路を走行中の計測車両の周辺状況を概略的に示した俯瞰図である。
【
図5】路駐車両が存在する道路の区間を走行中の計測車両の周辺状況を概略的に示した俯瞰図である。
【
図6】ライダによる計測に適した立体的な中央分離帯が存在する場合の計測車両の周辺状況を概略的に示した俯瞰図である。
【
図7】ライダが搭載された計測車両と、計測車両の左側の計測範囲内に存在する物体との位置関係の一例を示した図である。
【
図8】NDTスキャンマッチングの具体例を説明する図である。
【
図9】重み付けを行ったNDTスキャンマッチングの具体例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、地図作成装置は、複数の領域に分割された地図データに、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を前記複数の領域毎に付与する地図作成装置において、前記地図データの生成又は更新に必要なデータを計測するときの走行経路を取得する取得部と、前記走行経路に基づき、前記複数の領域毎の前記重み付け値を決定する決定部と、を備える。この態様により、地図作成装置は、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を領域ごとに好適に決定し、地図データに付与することができる。
【0012】
上記地図作成装置の一態様では、前記決定部は、前記走行経路上の車線の位置に基づき、前記複数の領域毎の前記重み付け値を決定する。好適な例では、前記決定部は、前記走行経路上の車線が左側に位置する車線の場合には、当該車線より左側に存在する領域の重み付け値を大きくし、前記走行経路上の車線が右側に位置する車線の場合には、当該車線より右側に存在する領域の重み付け値を大きくする。この態様により、地図作成装置は、同一道路の他車線を走行する車両によるオクルージョンの可能性が低い領域の重み付け値を大きくし、同一道路の他車線を走行する車両によるオクルージョンの可能性が高い領域の重み付け値を小さくすることができる。
【0013】
上記地図作成装置の他の一態様では、前記決定部は、前記走行経路上において障害物を避けて走行したと判定される区間では、避けた方向と反対側に存在する領域の重み付け値を小さくする。走行経路上において障害物を避けて走行したと判定される区間では、当該障害物に起因したオクルージョンが避けた方向と反対方向に発生する可能性が高い。よって、この態様では、このような障害物の存在を的確に考慮し、重み付け値を決定することができる。
【0014】
上記地図作成装置の他の一態様では、前記決定部は、前記複数の領域の各々の重み付け値を、前記複数の領域の各々の高さに基づき決定する。移動物などによるオクルージョンの可能性は、緯度経度が同じ場所では高度が高い領域ほど低くなる傾向がある。よって、この態様により、地図作成装置は、各領域の重み付け値を的確に決定することができる。
【0015】
上記地図作成装置の他の一態様では、前記決定部は、計測が行われた領域に対し、当該領域内の計測データの精度を示す精度情報を前記地図データに付与する。この態様により、地図データの信頼度に関する情報を好適に地図データに付与することができる。好適な例では、前記決定部は、前記精度情報を、計測時での位置推定精度と、計測位置から計測対象の領域までの距離とに基づき決定するとよい。
【0016】
本発明の他の好適な実施形態によれば、地図を示す地図データ構造であって、空間を所定の規則に基づき分割した領域ごとに、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値、又は、当該領域内のデータの精度を示す精度情報の少なくとも一方が含まれる。上記地図データ構造を有する地図には、重み付け値又は精度情報の少なくとも一方が含まれており、当該地図を参照する装置は、これらの情報をデータの信頼度に関する情報として地図の更新時や使用時に好適に用いることができる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態によれば、複数の領域に分割された地図データに、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を前記複数の領域毎に付与する地図作成装置が実行する制御方法であって、前記地図データの生成又は更新に必要なデータを計測するときの走行経路を取得する取得工程と、前記走行経路に基づき、前記複数の領域毎の前記重み付け値を決定する決定工程と、を有する。地図作成装置は、この制御方法を実行することで、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を領域ごとに好適に決定し、地図データに付与することができる。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態によれば、複数の領域に分割された地図データに、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を前記複数の領域毎に付与する地図作成装置のコンピュータが実行するプログラムであって、前記地図データの生成又は更新に必要なデータを計測するときの走行経路を取得する取得部と、前記走行経路に基づき、前記複数の領域毎の前記重み付け値を決定する決定部として前記コンピュータを機能させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、静止物及び移動物の存在に関連する重み付け値を領域ごとに好適に決定し、地図データに付与することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0020】
[システム概要]
図1は、本実施例に係る地図生成システムの概略構成図である。
図1に示す地図生成システムは、自動運転等に必要な道路周辺の地物の位置情報を生成するためのシステムであり、主に、計測車両に搭載される計測ユニット100と、サーバ装置200とを有する。
【0021】
計測ユニット100は、高精度な3D点群データを生成するシステムであり、主に車載機1と、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)2と、RTK-GPS3と、IMU(Inertial Measurement Unit)4とを有する。
【0022】
ライダ2は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群情報を生成する。この場合、ライダ2は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータを出力する出力部とを有する。スキャンデータは、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光の応答遅延時間とに基づき生成される。一般的に、対象物までの距離が近いほどライダの距離測定値の精度は高く、距離が遠いほど精度は低い。
【0023】
RTK-GPS3は、RTK測位方式(即ち干渉測位方式)に基づき計測車両の絶対的な位置(例えば緯度、経度、及び高度の3次元位置)を示す高精度な位置情報を生成する。RTK-GPS3は、生成した位置情報と、当該位置情報の精度(正確性)に関する情報(「位置精度情報」とも呼ぶ。)を、車載機1へ出力する。IMU(慣性計測装置)4は、3軸方向における計測車両の加速度及び角速度(又は角度)を、車載機1へ出力する。
【0024】
車載機1は、RTK-GPS3から供給される出力に基づき、計測車両の絶対的な位置及び方位を特定し、ライダ2が検知した点群の各点について、計測車両の位置及び向きに依存した相対的な3次元位置情報から絶対的な3次元位置情報を算出する。なお、計測車両の絶対的な位置及び方位は、RTK-GPS3からの出力に加え、IMU4の出力に基づいて特定するようにしてもよい。そして、車載機1は、算出した3次元点群データを、RTK-GPS3が出力した計測時の計測車両の位置情報及び位置精度情報と共に、アップロード情報「Iu」として、サーバ装置200へ供給する。この場合、車載機1は、アップロード情報Iuを無線通信により即時にサーバ装置200へ送信してもよく、サーバ装置200が後で読取り可能な記憶媒体等に蓄積してもよい。
【0025】
サーバ装置200は、車載機1から取得したアップロード情報Iuを記憶し、記憶したアップロード情報Iuに基づき地
図DB(DB:DataBase)20を更新する。ここで、地
図DB20には、3次元空間を複数の領域に分割した場合の各領域(「ボクセル」とも呼ぶ。)ごとに静止構造物の位置情報等を記録したデータであるボクセルデータが含まれている。ボクセルデータは、各ボクセル内の静止構造物の計測された点群データを正規分布により表したデータを含み、後述するように、NDT(Normal Distributions Transform)を用いたスキャンマッチングに用いられる。サーバ装置200は、後述するように、アップロード情報Iuに基づき、計測車両の計測範囲内となるボクセルに対応するボクセルデータの更新(生成も含む)を行う。サーバ装置200は、本発明における「地図作成装置」の一例であり、ボクセルデータは、本発明における「地図データ」の一例である。
【0026】
図2(A)は、車載機1の機能的構成を示すブロック図である。車載機1は、主に、インターフェース11と、記憶部12と、入力部14と、制御部15と、情報出力部16と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0027】
インターフェース11は、ライダ2、RTK-GPS3、及びIMU4などのセンサから出力データを取得し、制御部15へ供給する。記憶部12は、制御部15が実行するプログラムや、制御部15が所定の処理を実行するのに必要な情報を記憶する。入力部14は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等である。情報出力部16は、例えば、制御部15の制御に基づき出力を行うディスプレイやスピーカ等である。制御部15は、プログラムを実行するCPUなどを含み、車載機1の全体を制御する。
【0028】
図2(B)は、サーバ装置200の機能的構成を示すブロック図である。サーバ装置200は、インターフェース21と、記憶部22と、制御部25と、を有する。
【0029】
インターフェース21は、制御部25の制御に基づき、車載機1が生成したアップロード情報Iuを取得する。インターフェース21は、車載機1と無線通信を行うためのワイヤレスインターフェースであってもよく、アップロード情報Iuを記憶した記憶媒体等からアップロード情報Iuを読み出すためのハードウェアインターフェースであってもよい。
【0030】
記憶部22は、制御部25が所定の処理を実行するためのプログラム及び制御部25の処理に必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部22は、制御部25の制御に基づき、インターフェース21が取得したアップロード情報Iuを記憶する。また、記憶部22は、アップロード情報Iuによって更新されるボクセルデータを含む地
図DB20を記憶する。なお、地
図DB20には、ボクセルデータの他、計測車両の走行車線を位置情報に基づき特定するのに必要な道路データなどが含まれている。
【0031】
制御部25は、記憶部22等に記憶されたプログラムなどを実行し、サーバ装置200の全体を制御する。本実施例では、制御部25は、インターフェース21を介してアップロード情報Iuを取得し、記憶部22に記憶させる。その後、制御25は、記憶部22が記憶するアップロード情報Iuに基づき、地
図DB20のボクセルデータを更新する。制御部25は、本発明における「取得部」、「決定部」、及びプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0032】
[ボクセルデータのデータ構造]
次に、NDTに基づくスキャンマッチングに用いられるボクセルデータについて説明する。
図3は、ボクセルデータの概略的なデータ構造の一例を示す。
【0033】
ボクセルデータは、ボクセル内の点群を正規分布で表現する場合のパラメータの情報を含み、本実施例では、
図3に示すように、ボクセルIDと、ボクセル座標と、平均ベクトルと、共分散行列と、信頼度情報とを含む。ここで、「ボクセル座標」は、各ボクセルの中心位置などの基準となる位置の絶対的な3次元座標を示す。なお、各ボクセルは、空間を格子状に分割した立方体であり、予め形状及び大きさが定められているため、ボクセル座標により各ボクセルの空間を特定することが可能である。ボクセル座標は、ボクセルIDとして用いられてもよい。
【0034】
「平均ベクトル」及び「共分散行列」は、対象のボクセル内での点群を正規分布で表現する場合のパラメータに相当する平均ベクトル及び共分散行列を示し、任意のボクセル「k」内の任意の点「i」の座標を
【0035】
【数1】
と定義し、ボクセルk内での点群数を「N
k」とすると、ボクセルkでの平均ベクトル「μ
k」及び共分散行列「V
k」は、それぞれ以下の式(1)及び式(2)により表される。
【0036】
【0037】
【0038】
「信頼度情報」は、オクルージョン(障害物による遮蔽)の可能性に基づく重み付け値である第1重み付け値と、対象のボクセルのボクセルデータ(特に平均ベクトル及び共分散行列)の精度に基づく重み付け値である第2重み付け値とを含んでいる。第2重み付け値は、後述するように、計測車両の計測時での位置精度と、ライダ2の計測精度とに基づき設定される。本実施例では、第1重み付け値は、オクルージョンが生じにくいボクセルほど大きい値に設定され、第2重み付け値は、データの精度が高いボクセルほど大きい値に設定されるものとする。第1重み付け値及び第2重み付け値の具体的な設定方法については、後述する。第1重み付け値は、本発明における「重み付け値」の一例である。第2重み付け値は、本発明における「精度情報」の一例である。また、
図3に示すボクセルデータのデータ構造は、本発明における「地図データ構造」の一例である。
【0039】
[ボクセルデータの更新]
次に、アップロード情報Iuに基づく地
図DB20のボクセルデータの更新処理について説明する。
【0040】
サーバ装置200は、車載機1から供給されたアップロード情報Iuに含まれる点群データをボクセルごとに分割し、ボクセルごとにNDTのデータ(即ち平均ベクトル、共分散行列等)を生成する。さらに、本実施例では、サーバ装置200は、NDTのデータと共に、地
図DB20に登録すべき第1重み付け値及び第2重み付け値を、ボクセルごとに決定する。以下では、第1重み付け値と第2重み付け値のそれぞれの決定方法について説明する。
【0041】
(1)第1重み付け値の決定方法
サーバ装置200は、アップロード情報Iuに含まれる計測車両の位置情報に基づき車両の走行経路を特定し、特定した走行経路に応じて第1重み付け値を設定する。以後では、最も左側に存在する車線を単に「左車線」、最も右側に存在する車線を「右車線」とも呼ぶ。
【0042】
図4は、2車線の道路50を走行中の計測車両の周辺状況を概略的に示した俯瞰図である。
図4の例では、計測車両は、道路50の左車線を矢印「Lt」に沿って走行している。また、道路50の左側(路肩側)には地物40、41が存在し、道路50の右側には反対車線の道路51が存在している。
【0043】
図4に示すように、計測車両は、複数車線を有する道路を走行する場合には、原則として左車線を走行する。これにより、走行中の道路(
図4では道路50)沿いに存在する地物(
図4では地物40、41)等を、道路50を走行する他車両によるオクルージョンを発生させることなくライダ2により計測する。
【0044】
車載機1は、矢印Ltに沿って計測車両が走行する期間では、道路50の左車線上の位置を示す位置情報及びライダ2が計測した地物40、41等の点群データを含むアップロード情報Iuを生成する。そして、サーバ装置200は、車載機1が生成したアップロード情報Iuを取得した場合、当該アップロード情報Iuに含まれる位置情報と、地
図DB20に含まれる道路データとに基づき、矢印Ltに示す計測車両の走行経路を特定する。そして、サーバ装置200は、走行経路の特定に用いた位置情報と共にアップロード情報Iuに含まれていた点群データは、左車線を走行中に計測されたデータであると判定する。
【0045】
よって、この場合、サーバ装置200は、アップロード情報Iuの位置情報が示す移動軌跡(即ち左車線)よりも左側に存在するボクセルを特定し、特定したボクセルにはオクルージョンが生じていない静的構造物の点群データが含まれている可能性が高いと判定する。よって、この場合、サーバ装置200は、左側のボクセル(例えば地物40、41と重なるボクセル)に対応する第1重み付け値を、比較的大きい値(例えば初期値より大きい値)に設定する。一方、サーバ装置200は、アップロード情報Iuの位置情報が示す移動軌跡よりも右側に存在するボクセルには、道路50を走行する他車両の存在等によりオクルージョンが生じている可能性が高いと判定する。よって、この場合、サーバ装置200は、右側のボクセルに対応する第1重み付け値を、比較的小さい値(例えば初期値より小さい値)に設定する。
【0046】
また、サーバ装置200は、左車線を計測車両が走行していると判断した場合であっても、左側の路肩に存在する路駐車両などの障害物を避ける動作を検知した場合には、当該動作が行われたときにライダ2の左側の計測範囲となるボクセルの第1重み付け値を小さくしてもよい。
【0047】
図5は、路駐車両が存在する道路50の区間を走行中の計測車両の周辺状況を概略的に示した俯瞰図である。
図5の例では、計測車両は、道路50を矢印「Lt1」に沿って走行している。矢印Lt1に示されるように、計測車両は、道路50の左側車線の走行中に路駐車両を検出し、路駐車両を避けるため一時的に右車線側に偏って走行している。
【0048】
この場合、車載機1は、矢印Lt1に沿って計測車両が走行する期間に、道路50上の位置を示す位置情報及びライダ2による地物43等の点群データを含むアップロード情報Iuを生成する。サーバ装置200は、車載機1が生成したアップロード情報Iuを取得した場合、当該アップロード情報Iuに含まれる位置情報と、地
図DB20に含まれる道路データとに基づき、矢印Lt1に示す計測車両の走行経路を特定する。
【0049】
そして、この場合、サーバ装置200は、左車線の走行時に一時的に右車線に走行位置を偏らせて移動する計測車両の動作を、障害物を回避する動作として認識する。そして、サーバ装置200は、障害物を回避する動作が行われたと認識した走行区間(矢印60参照)では、走行経路が左車線上である場合であっても、アップロード情報Iuの位置情報が示す移動軌跡よりも左側に存在するボクセルに対する第1重み付け値を、比較的小さい値(例えば初期値より小さい値)に設定する。
図5の例では、矢印60が示す区間の走行時に地物43がライダ2の計測範囲内となる場合であっても、路駐車両によりオクルージョンが発生する可能性が高いため、矢印60が示す区間に取得される地物43を表す点群データの信頼性は比較的低いものと推定される。よって、
図5の例では、サーバ装置200は、矢印60が示す区間では、計測車両の左側のボクセル(地物43と重なるボクセルを含む)に対する第1重み付け値を小さくする。このように、
図5の例によれば、オクルージョンが発生する可能性がある区間に計測されるボクセルの第1重み付け値を的確に設定することができる。
【0050】
計測車両は、複数車線の道路を走行する際に左車線を走行することに限定されず、ライダ2による計測に好適な中央分離帯などの地物が右車線側に存在する場合には、右車線を走行してもよい。この場合、サーバ装置200は、計測車両の左側のボクセルの第1重み付け値よりも、計測車両の右側のボクセルの第1重み付け値を大きく設定する。
【0051】
図6は、道路52と道路53との間にライダ2による計測に適した立体的な中央分離帯45が存在する場合の計測車両の周辺状況を概略的に示した俯瞰図である。
図6の例では、計測車両は、中央分離帯45をライダ2により計測するため、右車線を矢印「Lt2」に沿って走行している。また、道路52の左側(路肩側)には地物44が存在している。
【0052】
この場合、車載機1は、矢印Lt2に沿って計測車両が走行する期間に、道路52の右車線上の位置を示す位置情報及びライダ2により計測した点群データを含むアップロード情報Iuを生成する。そして、サーバ装置200は、車載機1が生成したアップロード情報Iuを取得した場合、当該アップロード情報Iuに含まれる位置情報と、地
図DB20に含まれる道路データとに基づき、矢印Lt2に示す計測車両の走行経路を特定する。そして、サーバ装置200は、特定した走行経路に基づき、アップロード情報Iuに含まれる点群データは、道路52の右車線を走行中に計測されたデータであると判定する。
【0053】
よって、この場合、サーバ装置200は、アップロード情報Iuの位置情報が示す移動軌跡よりも右側に存在するボクセルを特定し、特定したボクセルにはオクルージョンが生じていない静的構造物の点群データが含まれている可能性が高いと判定する。よって、この場合、サーバ装置200は、中央分離帯45と重なるボクセルを含む計測車両の右側のボクセルに対応する第1重み付け値を、比較的大きい値に設定する。一方、サーバ装置200は、アップロード情報Iuの位置情報が示す移動軌跡よりも左側に存在するボクセルには、左側の車線を走行中の車両等によりオクルージョンが生じている可能性が高いと判定する。よって、この場合、サーバ装置200は、地物44と重なるボクセルを含む計測車両の左側のボクセルに対応する第1重み付け値を、比較的小さい値に設定する。
【0054】
なお、
図4~
図6では、一例として左側通行の道路について例示したが、これに限らず右側通行の道路についても同様に第1重み付け値を設定することが可能である。この場合であっても、サーバ装置200は、右車線を走行中に計測対象となるボクセルに関しては、左側のボクセルの第1重み付け値よりも右側のボクセルの第1重み付け値を大きく設定し、左車線を走行中に計測対象となるボクセルに関しては、右側のボクセルの第1重み付け値よりも左側のボクセルの第1重み付け値を大きく設定する。
【0055】
また、サーバ装置200は、計測車両の走行経路に加えて、各ボクセルが位置する高さ(即ち高度)に基づき第1重み付け値を設定してもよい。
【0056】
図7は、ライダが搭載された計測車両と、計測車両の左側の計測範囲内に存在する物体との位置関係の一例を示した図である。
図7の例では、車両が走行する道路の左側に地物(静止構造物)である低層建築物26が存在し、低層建築物26の奥に高層建築物27が存在している。また、低層建築物26の手前側には二輪車に乗った通行者28が存在する。ここでは、計測車両は、ライダ2により枠30~32内の位置を表す点群データを取得するものとする。
【0057】
この場合、枠30に囲まれた低層建築物26の部分は、比較的低い位置に存在し、通行者28などの移動物体によりオクルージョンが発生しやすい位置となっている。また、枠31に囲まれた低層建築物26の部分は、計測車両から少し高い位置に存在するものの、トラック等の高さの高い車両によるオクルージョンの可能性が残る。一方、枠32に囲まれた高層建築物27の部分は、比較的高い位置に存在し、通行者28や他車両などの移動物体によりオクルージョンが発生しにくい位置となっている。
【0058】
よって、この場合、好適には、枠30と重複する位置のボクセルデータの第1重み付け値は小さい値に設定され、枠31と重複する位置のボクセルデータの第1重み付け値は中程度の値に設定され、枠32と重複する位置のボクセルデータの第1重み付け値は、大きい値に設定される。このように、サーバ装置200は、計測車両が走行する車線に対して同一側に存在するボクセルに対し、各ボクセルが位置する高さに応じて各ボクセルの第1重み付け値を異ならせてもよい。これにより、サーバ装置200は、オクルージョンの可能性を的確に反映した第1重み付け値を、各ボクセルに対して設定することができる。
【0059】
(2)第2重み付け値の決定方法
第2重み付け値は、計測車両の計測時での位置精度と、ライダ2の計測精度とに基づき設定される。ここで、アップロード情報Iuには、ボクセルデータの生成に用いる点群データと共に、RTK-GPS3に基づく位置情報及び位置精度情報が含まれている。サーバ装置200は、アップロード情報Iuに含まれる位置精度情報に基づき、各ボクセルの第2重み付け値の算出に用いる位置精度を算出する。
【0060】
また、一般に、対象物までの距離が近いほどライダ2の距離測定値の精度は高く、距離が遠いほど精度は低い。よって、サーバ装置200は、例えば、アップロード情報Iuに含まれる計測車両の位置情報が示す位置と各ボクセルのボクセル座標が示す位置との距離に基づき、ライダ2の計測精度を算出する。
【0061】
そして、サーバ装置200は、例えば、計測車両の計測時での位置精度とライダ2の計測精度との2乗和の平方根から各ボクセルの精度を求め,その精度の2乗の逆数を第2重み付け値として設定する。
【0062】
ここで、ライダ2の計測精度と計測距離との関係について、再び
図7を参照して説明する。
【0063】
図7において、枠30に囲まれた低層建築物26の部分は、枠31に囲まれた低層建築物26の部分及び枠32に囲まれた高層建築物27の部分よりも、計測車両から近い位置に存在する。よって、枠30と重複する位置のボクセルデータの第2重み付け値は、枠31又は枠32と重複する位置のボクセルデータの第2重み付け値よりも大きい値(即ち精度が高いことを示す値)に設定される。一方、枠32に囲まれた高層建築物27の部分は、計測車両から比較的遠い位置に存在するため、ライダ2により取得される計測データの精度は低くなることが予測される。よって、枠32と重複する位置のボクセルデータの第2重み付け値は、枠30又は枠31と重複する位置のボクセルデータの第2重み付け値よりも小さい値(即ち精度が低いことを示す値)に設定される。そして、枠31と重複する位置のボクセルデータの第2重み付け値は、枠30と重複する位置のボクセルデータの第2重み付け値よりも小さく、枠32と重複する位置のボクセルデータの第2重み付け値よりも大きい値に設定される。
【0064】
次に、アップロード情報Iuに基づき第1重み付け値、第2重み付け値、平均ベクトル、共分散行列等を決定したボクセルに対して、地
図DB20に記録されたボクセルデータが既に存在する場合の更新方法の具体例について補足説明する。
【0065】
第1の例では、サーバ装置200は、地
図DB20に既に記録されたボクセルデータの第1重み付け値と、新たに生成したボクセルデータの第1重み付け値とを比較し、第1重み付け値が大きい方のボクセルデータを、地
図DB20に新たに登録すべきボクセルデータとして決定する。
【0066】
第2の例では、サーバ装置200は、地
図DB20に既に記録されたボクセルデータと、新たに生成したボクセルデータとを、第1重み付け値に基づいて平均化することで、地
図DB20に新たに登録すべきボクセルデータを決定する。この場合、サーバ装置200は、地
図DB20に記録されたボクセルデータの平均ベクトル及び共分散行列等と、新たに生成したボクセルデータの平均ベクトル及び共分散行列等とを、それぞれの第1重み付け値に基づいて平均化処理を行うことで地
図DB20に登録すべき平均ベクトル及び共分散行列等を算出する。なお、地
図DB20に登録すべき第1重み付け値、第2重み付け値等は、例えば、それぞれの第1重み付け値、第2重み付け値の平均値等に定められる。
【0067】
第3の例では、サーバ装置200は、第1重み付け値に加えて第2重み付け値をさらに勘案し、第1の例または第2の例と同様に、地
図DB20に登録すべきボクセルデータを決定する。この場合、例えば、サーバ装置200は、第1重み付け値及び第2重み付け値をパラメータとする式またはテーブルや場合分けに基づき所定の指標値を算出し、当該指標値を比較することで、第1の例と同様に、地
図DB20に登録すべきボクセルデータを決定する。他の例では、サーバ装置200は、地
図DB20に既に記録されたボクセルデータと、新たに生成したボクセルデータとを、上述の指標値に基づき重み付けを行うことで、第2の例と同様に、地
図DB20に登録すべきボクセルデータを算出する。
【0068】
[ボクセルデータを用いたスキャンマッチングの例]
次に、信頼度情報を含むボクセルデータを用いたNDTによるスキャンマッチングについて説明する。ここでは、ジャイロセンサやGPS受信機などの測位装置及びライダを備える車両(単に「一般車両」とも呼ぶ。)がサーバ装置200から配信された地図データを参照し、自車位置推定を行う例について説明する。
【0069】
車両を想定したNDTによるスキャンマッチングは、道路平面(ここではxy座標とする)内の移動量及び車両の向きを要素とした以下の推定パラメータ「P」を推定することとなる。
【0070】
【数4】
「t
x」は、x方向の移動量を示し、「t
y」は、y方向の移動量を示し、「Ψ」は、xy平面内での回転角(即ちヨー角)を示す。なお、垂直方向移動量、ピッチ角、ロール角は、道路勾配や振動によって生じるものの、無視できる程度に小さい。
【0071】
上述の推定パラメータPを用い、ライダ2により得られた点群データの任意の点の座標[xk(i)、yk(i)、zk(i)]Tを座標変換すると、変換後の座標「x′k(i)」は、以下の式(3)により表される。
【0072】
【0073】
そして、本実施例では、一般車両は、座標変換した点群と、ボクセルデータに含まれる平均ベクトルμkと共分散行列Vkとを用い、以下の式(4)により示されるボクセルkの評価関数「Ek」及び式(5)により示されるマッチングの対象となる全てのボクセルを対象とした総合的な評価関数「E」(「総合評価関数」とも呼ぶ。)を算出する。
【0074】
【0075】
【数7】
「M」は、マッチングの対象となるボクセルの数を示し、「w
k」は、ボクセルkに対する第1重み付け値を示し、ボクセルkに対する精度情報である「σ
k」を用いた「1/σ
k
2」は、ボクセルkに対する第2重み付け値を示す。ここで、第2重み付け値1/σ
k
2は大きい値ほど高い精度(即ち高い信頼度)を示す。よって、式(4)により、第1重み付け値w
kが大きいほど、第2重み付け値1/σ
k
2が大きいほど、評価関数E
kは大きい値となる。また、点群数N
kによる正規化を行っているので、点群の数による違いを少なくしている。なお、ライダにより得られる点群データの座標は、自車位置に対する相対座標であり、ボクセルデータの平均ベクトルは絶対座標であることから、式(4)を算出する際には、例えば、ライダにより得られる点群データの座標を、GPS受信機の出力等から予測した自車位置に基づき座標変換する。
【0076】
一方、従来のNDTマッチングで用いられるボクセルkの評価関数Ekは、以下の式(6)により示される。
【0077】
【0078】
式(4)及び式(6)を比較して明らかなように、本実施例では、一般車両は、第1重み付け値wk及び第2重み付け値1/σk
2を用いることで、各ボクセルに対し、それぞれのボクセルデータ(平均ベクトル、共分散行列)に対する信頼度に応じた重み付けを行っている。これにより、一般車両は、信頼度が低いボクセルの評価関数Ekの重み付けを相対的に小さくし、NDTマッチングによる位置推定精度を好適に向上させる。
【0079】
その後、一般車両は、ニュートン法などの任意の求根アルゴリズムにより総合評価関数Eが最大となるとなる推定パラメータPを算出する。そして、一般車両は、GPS受信機の出力等から予測した自車位置に対し、推定パラメータPを適用することで、高精度な自車位置を推定する。
【0080】
次に、NDTスキャンマッチングの具体例について説明する。以下では、説明便宜上、2次元平面の場合を例に説明する。
【0081】
図8(A)は、4つの隣接するボクセル「B1」~「B4」において、計測車両により計測された点群を丸印により示し、これらの点群に基づき式(1)と式(2)から作成した2次元正規分布をグラデーションにより示した図である。
図8(A)に示す正規分布の平均、分散は、ボクセルデータにおける平均ベクトル、共分散行列にそれぞれ相当する。
【0082】
図8(B)は、
図8(A)において、一般車両が走行中にライダ2により取得した点群を星印により示した図である。星印により示されるライダの点群の位置は、GPS受信機5等の出力による推定位置に基づき各ボクセルB1~B4との位置合わせが行われている。
図8(B)の例では、計測車両が計測した点群(丸印)と、一般車両が取得した点群(星印)との間にずれが生じている。
【0083】
図8(C)は、NDTスキャンマッチングのマッチング結果に基づき一般車両が取得した点群(星印)を移動させた後の状態を示す図である。
図8(C)では、
図8(A)、(B)に示す正規分布の平均及び分散に基づき、式(4)及び式(5)に示す評価関数Eが最大となるパラメータPを算出し、算出したパラメータPを
図8(B)に示す星印の点群に適用している。この場合、計測車両が計測した点群(丸印)と、一般車両が取得した点群(星印)との間のずれが好適に低減されている。
【0084】
ここで、ボクセルB1~B4に対応する評価関数「E1」~「E4」及び総合評価関数Eを、従来から用いられている一般式(6)により算出した場合、これらの値は以下のようになる。
E1=1.3290
E2=1.1365
E3=1.1100
E4=0.9686
E =4.5441
この例では、各ボクセルの評価関数E1~E4に大きな違いは無いが、ボクセルに含まれる点群の数による差が多少ある。
【0085】
本実施例では、各ボクセルに第1重み付け値及び第2重み付け値が設定されている。従って、信頼度の高いボクセルは重み付けを上げることで、そのボクセルのマッチング度合いを高めることが可能となっている。以下では、一例として、第1重み付け値をボクセルごとに設定する具体例について
図6を参照して説明する。
【0086】
図9(A)は、ボクセルB1~B4に対する第1重み付け値を全て等しくした場合のマッチング結果を示す図(即ち
図8(C)と同一の図)である。
図9(B)は、ボクセルB1の第1重み付け値を他のボクセルの重み付け値の10倍とした場合のマッチング結果を示す図である。
図9(C)は、ボクセルB3の第1重み付け値を他のボクセルの重み付け値の10倍とした場合のマッチング結果を示す図である。なお、いずれの例においても、第2重み付け値は、全て等しい値に設定されているものとする。
【0087】
図9(B)の例では、ボクセルB1~B4に対応する評価関数E1~E4及び総合評価関数Eの各値は、以下のようになる。
E1=0.3720
E2=0.0350
E3=0.0379
E4=0.0373
E =0.4823
【0088】
このように、
図9(B)の例では、ボクセルB1に対応する評価関数E1の値が高くなるようにマッチングが行われ、ボクセルB1におけるマッチングの度合いが高められている。よって、ボクセルB1の丸印と星印のずれが少なくなっている。また、点群の数で正規化しているため、評価関数の値は小さくなったが、それぞれの評価関数値は重み付け値と同程度の割合になっている。
【0089】
また、
図9(C)の例では、ボクセルB1~B4に対応する評価関数E1~E4及び総合評価関数Eの各値は、以下のようになる。
E1=0.0368
E2=0.0341
E3=0.3822
E4=0.0365
E =0.4896
【0090】
図9(C)の例では、ボクセルB3に対応する評価関数E3の値が高くなるようにマッチングが行われ、ボクセルB3におけるマッチングの度合いが高められている。よって、ボクセルB3の丸印と星印のずれが少なくなっている。このように、第1重み付け値を適切に設定することで、オクルージョン発生の可能性が低いボクセルに対するマッチングの度合いを好適に高める、言い換えると、オクルージョン発生の可能性が高いボクセルに対するマッチングの度合いを好適に低くすることができる。第2重み付け値についても同様に、第2重み付け値を適切に設定することで、計測精度が比較的高いボクセルに対するマッチングの度合いを高め、計測精度が比較的低いボクセルに対するマッチングの度合いを低くすることができる。
【0091】
以上説明したように、本実施例に係るサーバ装置200は、複数のボクセルに分割された地
図DB20のボクセルデータに、静止物及び移動物の存在に関連する第1重み付け値をボクセル毎に付与する地図作成装置として機能する。そして、サーバ装置200は、ボクセルデータの生成又は更新に必要な点群データを計測するときの計測車両の走行経路に関する位置情報を含むアップロード情報Iuを取得する。そして、サーバ装置200は、アップロード情報Iuに含まれる位置情報に基づき特定した計測車両の走行経路に基づき、ボクセル毎の第1重み付け値を決定する。これにより、サーバ装置200は、計測車両の車載機1により生成されたアップロード情報Iuに基づき、生成したボクセルデータに対して静止物及び移動物の存在に関連する第1重み付け値を好適に付与することができる。
【0092】
[変形例]
以下、実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、組み合わせて実施例に適用してもよい。
【0093】
(変形例1)
地
図DB20に含まれるボクセルデータには、
図3に示すように、信頼度情報として第1重み付け値と第2重み付け値とが記録されていた。これに代えて、ボクセルデータには、第1重み付け値又は第2重み付け値のいずれか一方のみが記録されていてもよい。この場合、サーバ装置200は、アップロード情報Iuに基づき、ボクセルごとに、第1重み付け値又は第2重み付け値のいずれか一方のみを決定する。
【0094】
(変形例2)
ボクセルデータは、
図3に示すように、平均ベクトルと共分散行列とを含むデータ構造に限定されない。例えば、ボクセルデータは、平均ベクトルと共分散行列を算出する際に用いられる計測車両が計測した点群データをそのまま含んでいてもよい。また、サーバ装置200が生成又は更新するボクセルデータは、NDTによるスキャンマッチングのみを対象とする場合に限定されず、ICP(Iterative Closest Point)などの他のスキャンマッチングに用いるためのボクセルデータであってもよい。