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特開2023-153969筋機能障害に関するデジタルバイオマーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153969
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】筋機能障害に関するデジタルバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/22 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
A61B5/22 210
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023128296
(22)【出願日】2023-08-07
(62)【分割の表示】P 2020534246の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】17209699.2
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.iPhone
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ゴッセンズ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン,ミヒャエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、疾患追跡の分野、そして潜在的にはさらに診断に関する。
【解決手段】特に、本発明は、被験体において、筋機能障害および好ましくは脊髄性筋萎縮症(SMA)を評価する方法であって、モバイルデバイス(A-D)を用いて、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットから、少なくとも1つの成績パラメータを決定し、そして決定された少なくとも1つの成績パラメータを参照に比較し、それによって筋機能障害および好ましくはSMAを評価する工程を含む、前記方法に関する。本発明はまた、モバイルデバイスであって、プロセッサ、少なくとも1つの圧センサおよびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に埋め込まれ、そして前記デバイス上で実行された際、本発明の方法を行うソフトウェアを含む、前記モバイルデバイス、ならびに筋機能障害および好ましくはSMAを評価するためのこうしたデバイスの使用にも関する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において、脊髄性筋萎縮症(SMA)を評価する方法であって:
a)モバイルデバイスを用いて、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットから、少なくとも1つの成績パラメータを決定し;そして
b)決定された少なくとも1つの成績パラメータを参照に比較し、それによってSMAを評価する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
前記SMAがSMA1(ウェルドニッヒ-ホフマン病)、SMA2(デュボヴィッツ病)、SMA3(クーゲルベルグ-ヴェランダー病)またはSMA4である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記の少なくとも1つの成績パラメータが、個々の指における筋緊張低下の指標となるパラメータである、請求項1または2の方法。
【請求項4】
個々の指の強度の圧測定のデータセットが、個々の指で被験体によって発揮されうる最大圧測定からのデータ、または経時的な個々の指で圧を発揮する能力に関するデータを含む、請求項1~3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
前記データセットが、軸性運動機能および/または中枢運動機能の指標となるデータをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項の方法。
【請求項6】
前記モバイルデバイスが、請求項4において言及される力の測定の1つまたはそれより多くを、被験体に対して行うために適応されている、請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項7】
前記モバイルデバイスが、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ、ポータブルマルチメディアデバイスまたはタブレットコンピュータに含まれている、請求項6の方法。
【請求項8】
前記参照が、工程a)に言及する圧測定のデータセットが被験体から得られる時点よりも前の時点で、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットから得られた少なくとも1つの成績パラメータである、請求項1~7のいずれか一項の方法。
【請求項9】
決定された少なくとも1つの成績パラメータおよび参照の間の悪化が、SMAを伴う被験体に関する指標である、請求項8の方法。
【請求項10】
前記参照が、SMAに罹患したことが知られる被験体または被験体群から得た個々の指の強度の圧測定のデータセット由来の少なくとも1つの成績パラメータである、請求項1~7のいずれか一項の方法。
【請求項11】
参照に比較して、本質的に同一である、決定された少なくとも1つの成績パラメータが、SMAを伴う被験体に関する指標である、請求項10の方法。
【請求項12】
前記参照が、SMAに罹患していないことが知られる被験体または被験体群から得た個々の指の強度の圧測定のデータセット由来の少なくとも1つの成績パラメータである、請求項1~7のいずれか一項の方法。
【請求項13】
参照に比較して悪化している、決定された少なくとも1つの成績パラメータが、SMA
を伴う被験体に関する指標である、請求項12の方法。
【請求項14】
モバイルデバイスであって、プロセッサ、少なくとも1つの圧センサおよびデータベース、ならびに該デバイスに有形に埋め込まれ、そして該デバイス上で実行された際、請求項1~13のいずれか一項の方法を行うソフトウェアを含む、前記モバイルデバイス。
【請求項15】
少なくとも1つの圧センサを含むモバイルデバイス、そしてリモートデバイスであって、プロセッサおよびデータベース、ならびに該デバイスに有形に埋め込まれ、そして該デバイス上で実行された際、請求項1~13のいずれか一項の方法を行うソフトウェアを含む、前記リモートデバイスを含む系であって、前記モバイルデバイスおよび前記リモートデバイスが、互いに機能可能であるように連結されている、前記系。
【請求項16】
被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットに関して、SMAを評価するための、請求項14記載のモバイルデバイスまたは請求項15の系の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患追跡の分野、そして潜在的にはさらに診断プロセスを補助する分野に関する。特に、本発明は、被験体において、筋機能障害および好ましくは脊髄性筋萎縮症(SMA)を評価する方法であって、モバイルデバイスを用いて、前記被験体由来の個々の指の強度の加圧力(pressure force)測定のデータセットから、少なくとも1つの成績パラメータを決定し、そして決定された少なくとも1つの成績パラメータを参照に比較し、それによって筋機能障害および好ましくはSMAを評価する工程を含む、前記方法に関する。本発明はまた、モバイルデバイスであって、プロセッサ、少なくとも1つの圧センサおよびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に埋め込まれ、そして前記デバイス上で実行された際、本発明の方法を実行するソフトウェアを含む、前記モバイルデバイス、ならびに筋機能障害および好ましくはSMAを評価するためのこうしたデバイスの使用にも関する。
【発明の概要】
【0002】
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、常染色体劣性疾患であり、近位脊髄性筋萎縮症および5q脊髄性筋萎縮症とも称される。該疾患は生命を脅かす、低有病率の神経筋障害であり、運動ニューロンの喪失および進行性筋消耗と関連する。
【0003】
該障害は、SMN1遺伝子における遺伝子欠損によって引き起こされる(Brzustowicz、1990、Lefebvre 1995)。この遺伝子は、すべての真核細胞において広範囲に発現され、そして運動ニューロンの生存に必要なSMNタンパク質をコードする。タンパク質レベルが減少すると、脊髄前角におけるニューロン細胞の機能喪失が生じる。ニューロン機能の喪失の結果として、骨格筋萎縮が起こる。
【0004】
脊髄性筋萎縮症は、多様な重症度を示し、これらはすべて、共通して、進行性の筋消耗および可動性障害を有する。近位筋および呼吸筋がまず影響を受ける。他の身体系もまた、特に障害の早発型で影響を受ける可能性もある。SMAは、乳幼児死亡の最も一般的な遺伝的原因である。
【0005】
4つの異なるタイプのSMAが記載されている。4つの異なるタイプのSMAが知られる。乳幼児SMAまたはSMA1(ウェルドニッヒ-ホフマン病)は重症型であり、生後1ケ月で顕在化し、通常、迅速でそして予期せぬ開始を伴う(「フロッピーベビー症候群」)。中程度のSMAまたはSMA2(デュボヴィッツ病)は小児に影響を及ぼし、罹患すると立つこともまた歩くこともできないが、生涯の少なくともある時点で、座位を維持することは可能である。若年性SMAまたはSMA3(クーゲルベルグ-ヴェランダー病)は、典型的には12ケ月齢より後に顕在化し、そしてある時点では補助なしに歩くことが可能であるが、多くは後にその能力を失う、SMA3を伴う人々を記載する。成人SMAまたはSMA4は、通常、20代以降に顕在化し、筋肉の漸進性減退を伴い、四肢の近位筋肉が影響を受け、しばしば、移動のために車椅子を使う必要が生じる。
【0006】
すべてのSMAタイプに関して、典型的な症状は、反射の欠如に関連する筋緊張低下、筋電図における細動、ならびに筋脱神経および(ときには)血清クレアチンキナーゼ増加(Rutkove 2010)である。
【0007】
上記の症状はSMAを示唆するが、診断は、SMN1遺伝子のエクソン7の二アレル欠失に関する遺伝子試験を通じてしか確実には確認されえない。遺伝子試験は、通常、血液試料を用いて実行され、そしてMLPAは、SMN2遺伝子コピーの数を確立することも
また可能にするため、これがより頻繁に用いられる遺伝子配列決定技術の1つである。
【0008】
SMAに関して、着床前または出生前遺伝子試験も利用してもよい。特に、in vitro受精中、SMAに罹患した胚に関してスクリーニングするため、着床前遺伝子診断を用いてもよい。SMAに関する出生前試験は、絨毛膜絨毛サンプリング、細胞不含胎児DNA分析および他の方法を通じて可能である。しかし、これらの遺伝子試験法は、例えば両親の病歴により、SMAの潜在的な発展に関してすでに疑いがある場合にのみ適している。
【0009】
これまでに、SMAの治療に関して認可された薬剤は、ヌシネルセン(スピンラザTM)のみである。該剤は、イントロンスプライサーN1をターゲティングする修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドである。薬剤治療に加えて、SMAに罹患した患者は、典型的には、特別な医学ケア、特に整形外科、可動性補助、呼吸ケア、栄養摂取、心臓病学およびメンタルヘルスに関するケアを必要とする。
【0010】
SMAは、臨床的に不均一のCNS疾患であるため、信頼性がある診断、ならびに現在の疾患状態および症状進行の同定を可能にし、そしてしたがって、正確な治療を補助しうる、診断ツールが必要である。
【0011】
本発明の根底にある技術的問題は、前述の必要性に適合する手段および方法を提供する際にわかる可能性もある。技術的問題は、請求項に特徴づけられ、そして本明細書に以下に記載する態様によって解決される。
【0012】
したがって、本発明は、被験体において、筋機能障害および好ましくは脊髄性筋萎縮症(SMA)を評価する方法であって:
a)モバイルデバイスを用いて、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットから、少なくとも1つの成績パラメータを決定し;そして
b)決定された少なくとも1つの成績パラメータを参照に比較し、それによって筋機能障害および好ましくはSMAを評価する
工程を含む、前記方法に関する。
【0013】
典型的には、方法は、(c)工程(b)で行った比較に基づいて、被験体において、筋機能障害および好ましくはSMAを診断する工程をさらに含む。
いくつかの態様において、方法はまた、工程(a)の前に、被験体が実行したあらかじめ決定された活動中の圧測定のデータセットを、モバイルデバイスを用いて、被験体から得る工程も含んでもよい。しかし、典型的には、方法は、前記被験体とのいかなる身体的相互作用も必要としない、被験体の活動測定の現存するデータセットに対して行われる、ex vivo法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、コンピュータ実装リング・ア・ベル試験からの結果を示す。最大圧の割合を、患者の日常活動(DA)スコアの結果に相関させた(A)。さらに、高いDAスコアを持つ患者はまた、リング・ア・ベル試験において強い結果を示す一方、低いDAスコアを持つ患者は、弱いリング・ア・ベル試験結果しか示さなかった(B)。
図2図2は、コンピュータ実装キャリー・ザ・エッグ試験からの結果を示す。タスクを実行するために必要な最大触圧(touch pressure)の割合を、患者の日常活動(DA)スコアの結果に相関させた(A)。さらに、高いDAスコアを持つ患者はまた、キャリー・ザ・エッグ試験において強い結果を示す一方、低いDAスコアを持つ患者は、弱いリング・ア・ベル試験結果しか示さなかった(B)。
図3図3は、コンピュータ実装スクイーズ・ア・シェイプ(ピンチング)試験からの圧測定の結果を示す。測定された指の圧を、DAスコアに相関させる(A)。さらに、高いDAスコアを持つ患者はまた、スクイーズ・ア・シェイプ試験において強い結果を示す一方、低いDAスコアを持つ患者は、弱い結果しか示さなかった(B)。
図4図4は、コンピュータ実装ドロー・ア・シェイプ試験からの圧測定の結果を示す。測定されたドローイング圧を、DAスコアに相関させた(A)。さらに、高いDAスコアを持つ患者はまた、ドロー・ア・シェイプ試験において強い結果を示す一方、低いDAスコアを持つ患者は、弱い結果しか示さなかった(B)。
図5図5は、リング・ア・ベル試験(A)、キャリー・ザ・エッグ試験(B)、スクイーズ・ア・シェイプ試験(C)、およびドロー・ア・シェイプ試験(D)のコンピュータ実装型を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にしたがって言及されるような方法には、前述の工程から本質的になる方法、またはさらなる工程が含まれてもよい方法が含まれる。
以下で用いるように、用語「有する(have)」、「含む(comprise)」または「含まれる(include)」あるいはその任意の恣意的な文法的変形は、非排他的な方式で用いられる。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で記載される実体に、さらなる特徴がまったく存在しない状況、および1つまたはそれより多いさらなる特徴が存在する状況の両方を指してもよい。例えば、表現「AはBを有する」、「AはBを含む」および「AにはBが含まれる」は、Bに加えて、Aに他の要素がまったく存在しない状況(すなわちAはもっぱらそして排他的にBからなる状況)、ならびにBに加えて実体Aに1つまたはそれより多いさらなる要素、例えば要素C、要素CおよびDまたはさらにさらなる要素が存在する状況の両方を指してもよい。
【0016】
さらに、用語「少なくとも1つ」、「1つまたはそれより多く」、あるいは、特徴または要素が1回または典型的には1回より多く存在してもよいことを示す類似の表現は、典型的には、それぞれの特徴または要素を導入する際に一度だけ用いられるであろうことに注目しなければならない。以下では、大部分の場合、それぞれの特徴または要素に言及する際、それぞれの特徴または要素が1回または1回より多く存在してもよいという事実にもかかわらず、表現「少なくとも1つ」または「1つまたはそれより多く」は反復されないであろう。
【0017】
さらに、以下で用いるように、用語「具体的に」、「より具体的に」、「特に」、「より明確に」、「典型的には」、および「より典型的には」または類似の用語は、別の可能性を制限することなく、さらなる/代替の特徴と組み合わせて用いられる。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、さらなる/代替の特徴であり、そしていかなる意味でも、請求項の範囲を制限するとは意図されない。本発明は、当業者が認識するであろうように、代替の特徴を用いることによって実行可能である。同様に、「本発明の態様において」または類似の表現によって導入される特徴は、本発明の別の態様に関するいかなる制限も伴わず、本発明の範囲に関するいかなる制限も伴わず、そしてこうした方式で導入される特徴と、本発明の他のさらなる/代替のまたはさらなるものでない/代替でない特徴とともにこうした方式で導入される特徴を組み合わせる可能性に関するいかなる制限も伴わずに、さらなる/代替の特徴であると意図される。
【0018】
方法は、圧測定のデータセットが獲得されたならば、被験体によってモバイルデバイス上で実行可能である。したがって、モバイルデバイスおよびデータセットを獲得するデバイスは、物理的に同一、すなわち同じデバイスであってもよい。こうしたモバイルデバイスは、データ獲得のための手段、すなわち物理的および/または化学的パラメータを定量的または定性的のいずれかで検出するかまたは測定し、そして本発明にしたがった方法を
行うために用いられるモバイルデバイスにおける評価ユニットに送信される電子シグナルに、該パラメータを変換する手段を典型的には含む、データ獲得ユニットを有するものとする。データ獲得ユニットは、データ獲得のための手段、すなわち物理的および/または化学的パラメータを定量的または定性的のいずれかで検出するかまたは測定し、そしてモバイルデバイスからはリモートであり、そして本発明にしたがった方法を行うために用いられるデバイスに送信される電子シグナルに、該パラメータを変換する手段を含む。典型的には、データ獲得のための前記手段は、少なくとも1つのセンサを含む。モバイルデバイスにおいて、1つより多いセンサ、すなわち少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つあるいは少なくとも10またはさらにより多い異なるセンサを用いてもよいことが理解されるであろう。データ獲得のための手段として用いられる典型的なセンサは、ジャイロスコープ、磁気計、加速度計、近位センサ、温度計、湿度センサ、歩数計、心拍検出装置、指紋検出装置、タッチセンサ、音声録音装置、光センサ、圧センサ、位置データ検出装置、カメラ、汗分析センサ等のようなセンサである。評価ユニットは、典型的には、プロセッサおよびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に埋め込まれ、そして前記デバイス上で実行された際、本発明の方法を行うソフトウェアを含む。より典型的には、こうしたモバイルデバイスはまた、評価ユニットによって行われた分析の結果をユーザに提供することを可能にする、ユーザインターフェース、例えばスクリーンもまた含んでもよい。
【0019】
あるいは、前記データセットを獲得するために用いられているモバイルデバイスに関してリモートであるデバイス上で、これを行ってもよい。この場合、モバイルデバイスは、データ獲得のための手段、すなわち物理的および/または化学的パラメータを定量的または定性的のいずれかで検出するかまたは測定し、そしてモバイルデバイスからリモートであり、そして本発明にしたがった方法を行うために用いられるデバイスに送信される電子シグナルに、該パラメータを変換する手段を単に含むものとする。典型的には、データ獲得のための前記手段は少なくとも1つのセンサを含む。モバイルデバイスにおいて、1つより多いセンサ、すなわち少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つあるいは少なくとも10またはさらにより多い異なるセンサを用いてもよいことが理解されるであろう。データ獲得のための手段として用いられる典型的なセンサは、ジャイロスコープ、磁気計、加速度計、近位センサ、温度計、湿度センサ、歩数計、心拍検出装置、指紋検出装置、タッチセンサ、音声録音装置、光センサ、圧センサ、位置データ検出装置、カメラ、汗分析センサ、GPS、心弾図法等のようなセンサである。したがって、モバイルデバイスおよび本発明の方法を行うために用いられるデバイスは、物理的に異なるデバイスであってもよい。この場合、モバイルデバイスは、データ送信のための任意の手段によって、本発明の方法を実行するために用いられるデバイスと連絡してもよい。こうしたデータ送信は、永続的または一時的物理連結、例えば同軸、ファイバー、光ファイバーまたはツイストペア、10 BASE-Tケーブルによって達成されてもよい。あるいは、伝達は、例えば電波、例えばWi-Fi、LTE、LTE-advancedまたはBluetoothを用いて、一時的または永続的ワイヤレス連結によって達成されてもよい。したがって、本発明の方法を実行するため、唯一の要件は、モバイルデバイスを用いて、被験体から得られる圧測定のデータセットの存在である。また、前記データセットを、獲得モバイルデバイスから、永続的または一時的メモリデバイス上に送信するかまたは保存してもよく、該メモリデバイスを続いて、本発明の方法を行うために用いられるデバイスにデータを伝達するために用いてもよい。このセットアップで、本発明の方法を行うリモートデバイスは、典型的には、プロセッサおよびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に埋め込まれ、そして前記デバイス上で実行された際、本発明の方法を行うソフトウェアを含む。より典型的には、前記デバイスはまた、評価ユニットによって行われた分析の結果をユーザに提供することを可能にする、ユーザインターフェース、例えばスクリーンもまた含んでもよい。
【0020】
用語「評価する」は、本明細書において、被験体が、筋機能障害および好ましくはSMAに罹患しているかどうかを決定するかまたは診断するための補助を提供することを指す。当業者には理解されるであろうように、こうした評価は、そうであることが好ましいが、通常は、調べる被験体の100%に関して正しくない可能性もある。しかし、該用語は、被験体の統計的に有意な部分が正しく評価され、そしてしたがって、筋機能障害またはSMAに罹患していると同定されうることを要する。部分が統計的に有意であるかどうかは、多様な周知の統計評価ツール、例えば信頼区間の決定、p値決定、スチューデントのt検定、マン-ホイットニー検定等を用いて、当業者によって困難なく決定可能である。詳細は、DowdyおよびWearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見出されうる。典型的には、想定される信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、典型的には、0.2、0.1、0.05である。したがって、本発明の方法は、典型的には、圧測定のデータセットを評価するための手段を提供することによって、筋機能障害またはSMAの同定を補助する。該用語はまた、SMAの任意の種類の診断、監視または病期決定も含み、そして特に、筋機能障害および好ましくはSMAに関連する任意の症状または任意の症状の進行の評価、診断、監視および/または病期決定に関する。
【0021】
「筋機能障害」は、本明細書において、障害を受けた筋機能が付随する状態である。典型的には、こうした筋機能障害は、疾患または障害、例えば筋萎縮症によって引き起こされる可能性もあり、そしてより典型的には、該障害は、神経筋疾患、例えば脊髄性筋萎縮症であってもよい。用語「脊髄性筋萎縮症(SMA)」は、本明細書において、典型的には脊髄において、運動ニューロン機能の喪失によって特徴づけられる神経筋疾患に関する。運動ニューロン機能の喪失の結果として、典型的には、筋萎縮症が起こり、罹患した被験体の早期死亡が生じる。該疾患は、SMN1遺伝子における遺伝性の遺伝子欠陥によって引き起こされる。前記遺伝子によってコードされるSMNタンパク質は、運動ニューロン生存に必要である。該疾患は、常染色体劣性方式で遺伝する。
【0022】
SMAに関連する症状には、特に四肢の反射消失、筋脱力および劣った筋緊張が含まれ、呼吸筋脱力の結果としての小児期の発達期完了における困難、呼吸の問題、ならびに肺の分泌物集積、ならびに吸引、嚥下および摂食/食事における困難が起こる。4つの異なるタイプのSMAが知られる。
【0023】
乳幼児SMAまたはSMA1(ウェルドニッヒ-ホフマン病)は重症型であり、生後1ケ月で顕在化し、通常、迅速でそして予期せぬ開始を伴う(「フロッピーベビー症候群」)。迅速な運動ニューロンの死は、特に呼吸系の、主要な身体臓器の非効率性を引き起こし、そして肺炎誘導性呼吸不全が最も頻繁な死因である。機械的人工換気下におかれなければ、SMA1と診断された乳幼児は、一般的に、2歳を超えることはなく、ときにSMA0と称される最も重症な症例では、わずか数週以内で死亡する。適切な呼吸補助を伴えば、SMA1症例のおよそ10%を占めるより穏やかなSMA1表現型の患者は、思春期および成人期まで生存することが知られる。
【0024】
中程度のSMAまたはSMA2(デュボヴィッツ病)は小児に影響を及ぼし、罹患すると立つこともまた歩くこともできないが、生涯の少なくともある時点で、座位を維持することは可能である。脱力の開始は、通常、6~18ケ月の間のある時点で認識される。進行は多様であることが知られる。長期に渡って漸進性に脱力していく人もあれば、注意深い維持を通じていかなる進行も回避する人もある。これらの小児には脊柱側彎症が存在する可能性もあり、そして装具による矯正は、呼吸の改善を補助しうる。筋肉は脱力化し、
そして呼吸系が主な懸念事項である。平均余命はいくぶん減少するが、大部分のSMA2患者は成人期まで十分に生存する。
【0025】
若年性SMAまたはSMA3(クーゲルベルグ-ヴェランダー病)は、典型的には12ケ月齢より後に顕在化し、そしてある時点では補助なしに歩くことが可能であるが、多くは後にその能力を失う、SMA3を伴う人を記載する。呼吸関与はより認められず、そして平均余命は正常であるかまたはほぼ正常である。
【0026】
成人SMAまたはSMA4は、通常、20代以降に顕在化し、筋肉の漸進性減退を伴い、四肢の近位筋肉が影響を受け、しばしば、移動のために車椅子を使う必要が生じる。他の合併症は稀であり、そして平均余命は影響を受けない。
【0027】
典型的には、本発明記載のSMAは、SMA1(ウェルドニッヒ-ホフマン病)、SMA2(デュボヴィッツ病)、SMA3(クーゲルベルグ-ヴェランダー病)またはSMA4である。
【0028】
SMAは、典型的には、筋緊張低下の存在および反射の非存在によって診断される。どちらも、筋電図を含めて、病院において臨床医により、標準的な技術によって測定されうる。生化学的パラメータとして、血清クレアチンキナーゼが上昇しうることもある。さらに、遺伝子試験もまた可能であり、特に出生前診断またはキャリアスクリーニングとして可能である。
【0029】
用語「被験体」は、本明細書において、動物、および典型的には哺乳動物に関する。特に、被験体は、霊長類、およびもっとも典型的にはヒトである。本発明にしたがった被験体は、筋機能障害および好ましくはSMAに罹患しているか、または罹患していると推測されるものとし、すなわち前記疾患に関連する症状のある程度またはすべてをすでに示していてもよい。
【0030】
用語「少なくとも1つ」は、本発明にしたがって、1つまたはそれより多い成績パラメータ、すなわち少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つあるいは少なくとも10またはさらにより多い異なる成績パラメータを決定してもよいことを意味する。したがって、本発明の方法にしたがって決定してもよい異なる成績パラメータの数に関する上限はない。しかし、典型的には、決定される圧測定のデータセットあたり、1~4の間の異なる成績パラメータがあるであろう。より典型的には、パラメータ(単数または複数)は:ピーク圧、積算圧(integral pressure)、経時的圧プロファイル、および圧振動からなる群より選択される。
【0031】
用語「成績パラメータ」は、本明細書において、被験体が指の圧を発揮する能力の指標となるパラメータを指す。より典型的には、成績パラメータは:ピーク圧、積算圧、経時的圧プロファイル、および圧振動からなる群より選択される。測定する活動のタイプに応じて、成績パラメータは、被験体に対して実行した圧測定によって獲得されるデータセットに由来してもよい。本発明にしたがって用いられるべき特定の成績パラメータを、より詳細に本明細書の別の箇所に列挙する。
【0032】
用語「圧測定のデータセット」は、圧測定中に被験体からモバイルデバイスによって獲得されているデータの全体、または成績パラメータを得るために有用な前記データの任意のサブセットを指す。
【0033】
用語「個々の指の強度」は、本明細書において、指によって発揮されうる力のレベルを
指す。これには、圧ピークを適用する能力、長期に渡って特定の圧レベルを適用する能力(積算圧)および/または長期に渡って圧を維持する能力が含まれる。
【0034】
以下において、本発明の方法にしたがって、モバイルデバイスによって測定するための、特定の想定される圧試験および手段を明記する。
1つの態様において、モバイルデバイスは、したがって、被験体の指によって発揮されうる最大圧を測定するために設定された圧試験(いわゆる「リング・ア・ベル試験」)を実行するかまたは該試験からデータを獲得するために適応されている。さらに、該試験は、典型的にはまた、最大圧適用の期間を測定するためにも設定されている。こうした試験から獲得されるデータセットは、ピーク圧、積算圧、ならびに経時的圧プロファイルを同定することを可能にする。該試験は、被験体の指によって適用されうる最大の力に関して、まず較正を必要としうる。さらに、考慮すべきセンサ特異的制限がある。センサ固有の飽和未満の範囲で圧を測定するため、最大圧の適用を回避するように試験を設定してもよい。これは、本明細書の別の箇所に詳細に記載するキャリー・ザ・エッグ試験などの試験によって好適に達成されうる。
【0035】
前述の圧測定を、Force Touch技術または3Dタッチ技術を用いることによって、スマートフォンなどのモバイルデバイスによって行ってもよい。Force Touch技術は、モバイルデバイスのスクリーンの縁に裏打ちされる、力を感知するための電極を用いる。前記電極は、スクリーンに適用された圧を決定する。したがって、試験は、前記スクリーンを指で押し、それによって特定の強度で、または特定の時間に渡って力を適用することを必要とする特定のタスクをスクリーン上にディスプレイしてもよい。続いて、電極から測定されるパラメータを、前後に振動する電磁気リニアアクチュエータにリレーする。前記アクチュエータは、本発明にしたがって、力の測定のデータセットに関するデータを生じる。3Dタッチ技術は、スクリーン内に直接組み込まれた容量センサを用いることによって働く。押す力が検出されたら、これらの容量センサは、バックライトおよびカバーガラスの間の距離の顕微鏡的変化を測定する。次いで、これらのデータを加速度計データおよびタッチセンサデータと組み合わせて、例えば評価ユニット上で実行される適切なアルゴリズムによって、少なくとも1つの成績パラメータを決定するために使用可能である、力の測定のデータセットのデータを完成させる。本発明の方法で用いられるべき力の測定のデータセットを生成するために用いられる、モバイルデバイス中に典型的に含められるべきフォースタッチセンサに関するさらなる詳細は、US 8,633,916に記載される。本発明の方法で用いられるべき力の測定のデータセットを生成するために用いられる、モバイルデバイス中に典型的に含められるべき3Dタッチ技術の力センサは、WO2015/106183に記載される。モバイルデバイスにおいて用いられるべきさらなる適切な力測定センサは、EP 2 368 170、US 9,116,569、EP 2 635 957、US 8,952,987またはUS2015/0097791のいずれか1つに記載される。
【0036】
別の態様において、定義される期間に渡って、指を通じて制御された量の圧を維持する能力を測定するように設定されたさらなる圧試験(いわゆる「キャリー・ザ・エッグ試験」)を実行するかまたは該試験からのデータを獲得するように、モバイルデバイスを適応させる。こうした試験から獲得されたデータセットは、圧の振動および経時的な圧プロファイルを同定することを可能にする。該試験は、安定した(comfort)圧レベルに関する較正を必要とし、すなわち圧の安定レベルに関する閾値をまず同定する必要がありうる。さらに、圧測定に関するセンサ固有の飽和未満で測定を実行するように、試験を設定すべきである。タッチスクリーン上の力または圧の測定を可能にする、本明細書の別の箇所に定義するようなフォースタッチ技術または3Dタッチ技術あるいは類似の技術を用いることによって、スマートフォンなどのモバイルデバイスによって、前述の圧測定を行ってもよい。
【0037】
どちらの試験も、対象ユーザが、潜在的な較正および実際の圧測定を可能にする特定のタスクを実行することを要求する、コンピュータプログラムコードによって、モバイルデバイス上に実装可能である。典型的には、こうしたタスクは、被験体が、デバイス上で、楽しく、そしてしたがって快適な方式でタスクを実行することを要求する、おもしろいエクササイズまたはゲーム内に隠されていてもよい。前記のゲームセットアップを用いることによって、タスクは、特に、小児または認知能障害を有する被験体によってもまた実行されうる。さらに、試験のゲーム性はまた、被験体が試験を実行する全体のモチベーションも改善しうる。典型的には、圧測定試験のための想定される例は、以下の付随する実施例により詳細に記載される。
【0038】
本発明にしたがって適用されうるモバイルデバイスを、前述の力の測定試験の1つまたはそれより多くを実行するように適応させてもよいことが理解されるであろう。特に、両方の試験を実行するようにデバイスを適応させてもよい。
【0039】
モバイルデバイスに応じて、ピーク圧、長期に渡って特定の圧レベルを適用する能力(積算圧)および/または長期に渡って圧を維持する能力(圧プロファイル)を測定する圧測定を、動作を実行するモバイルデバイスの他の使用中にもまた実行してもよく、これにより、ユーザがそれに集中することなく、前記圧測定を記録することが可能になる(受動的試験)。典型的には、スマートフォンをモバイルデバイスとして用いる場合、被験体(ユーザ)は、通常、指の圧が駆動するスクリーンとの相互作用を伴う、多様なタッチ制御タスクを実行するであろう。典型的には、電話番号をダイヤルするかまたは他の標準的活動を実行する、例えばインターネットクエリーを行う等の場合、タッピングが起こるであろう。こうしたタスクを実行する間に指によって適用される圧を、較正目的のため、および参照を提供するため、特定の時間に渡って分析してもよい。典型的には、タッピングタスク中、例えばダイヤリング中にピーク圧測定を実行してもよいし、または特定の時間ウィンドウに渡って適用された圧を積算して、積算圧を得てもよい。続いて、前記(受動的)圧測定から得られたデータセットを調べるために適用すべき、本発明にしたがった方法において、ピーク力、積算圧またはタスク特異的圧プロファイルにおける、参照に対する変化を用いてもよい。
【0040】
さらにタッピングおよび他の圧適用活動は、以下に言及するさらなる試験の実行中にも起こるはずである。圧測定はまた、前記のさらなる試験中の受動試験として行ってもよい。
【0041】
さらに、SMAまたは筋機能障害を評価するために適切なさらなる試験を実行するように、モバイルデバイスを適応させてもよい。したがって、本発明の方法において、さらなるデータもまたプロセシングしてもよい。これらのさらなるデータは、典型的には、被験体において、SMAまたは筋機能障害の評価をさらに強化するために適切である。以下により詳細に記載する、遠位運動機能(すなわち指のタッピング、ドローイングおよびピンチング能)、軸性運動機能(すなわち被験体のリフティング能、ツイスティング能、ウォーク・ザ・ロープ能、および水を注ぐ能力)、および/または中枢運動機能(すなわち発声能)を調べる特定の想定される試験。さらに、全身の健康状態および認知能に関する調査もまた考慮する。
【0042】
データを獲得するためのモバイルデバイス上に実装されるべきであり、本発明の方法によって調べられるべきデータセット内に典型的に含まれてもよい、特に想定されるさらなる試験は、以下の試験から選択される:
(1)遠位運動機能に関する試験:タッピング試験、ドロー・ア・シェイプ試験、およびスクイーズ・ア・シェイプ試験
指の器用さおよび遠位脱力を測定するように設定された、遠位運動機能に関するさらなる試験(いわゆる「タッピング試験」)を実行するかまたは該試験からデータを獲得するために、モバイルデバイスをさらに適応させてもよい。こうした試験から獲得されるデータセットは、指の速度、指の運動の正確さならびに指の移動時間および距離を同定することを可能にする。
【0043】
指の器用さおよび遠位脱力を測定するように設定された、遠位運動機能に関するさらなる試験(いわゆる「ドロー・ア・シェイプ試験」)を実行するかまたは該試験からデータを獲得するために、モバイルデバイスをさらに適応させてもよい。こうした試験から獲得されるデータセットは、指の運動の正確さ、圧プロファイルおよび速度プロファイルを同定することを可能にする。
【0044】
「ドロー・ア・シェイプ」試験の目的は、細かい指の制御およびストローク・シーケンシングを評価することである。試験は、損なわれた手の運動機能の以下の側面を含むと見なされる:振戦および痙縮ならびに損なわれた手指視覚協調。患者は、試験していない手にモバイルデバイスを保持し、そして例えば30秒間の最大時間内に「出来る限り迅速にそして正確に」、複雑さが増加する、6つのあらかじめ書かれた交互に現れる(alternating)形状(線、長方形、円、正弦曲線、およびらせん;以下を参照されたい)を、試験される手の第二指で、モバイルデバイスのタッチスクリーン上に描くように指示される。形状をうまく描くためには、患者の指はタッチスクリーン上を連続してスライドしなければならず、そしてすべての示されたチェックポイントを通過して、そしてできる限り描線経路の境界内で、示された出発点および終点を連結しなければならない。患者は、6つの形状各々を成功裡に完成するまでに最大2回の試行を有する。試験は、右手および左手で交互に実行される。ユーザは、毎日交互に行うように指示される。2つの線形状は、各々、連結するチェックポイントの特定の数「a」、すなわち「a-1」のセグメントを有する。四角形の形状は、連結するチェックポイントの特定の数「b」、すなわち「b-1」のセグメントを有する。円形の形状は、連結するチェックポイントの特定の数「c」、すなわち「c-1」のセグメントを有する。8の字の形状(eight-shape)は、連結するチェックポイントの特定の数「d」、すなわち「d-1」のセグメントを有する。らせんの形状は、連結するチェックポイントの特定の数「e」、すなわち「e-1」のセグメントを有する。その結果、6つの形状の完成は、総数「(2a+b+c+d+e-6)」のセグメントを描くことに成功することを示す。
【0045】
関心対象の典型的なドロー・ア・シェイプ試験成績パラメータ:
形状の複雑さに基づいて、線形および四角形の形状を1の重み付け係数(Wf)と、円形および正弦曲線の形状を2の重み付け係数と、そしてらせんの形状を3の重みづけ係数と関連させてもよい。第二の試行で成功裡に完成された形状を、0.5の重みづけ係数と関連させてもよい。これらの重み付け係数は、本発明の背景において、変更させうる数値の例である。
【0046】
1.形状完成成績スコア:
a. 試験あたりの成功裡に完成した形状の数(0~6)(ΣSh)
b. 第一の試行で成功裡に完成した形状の数(0~6)(ΣSh
c. 第二の試行で成功裡に完成した形状の数(0~6)(ΣSh
d. すべての試行での失敗した/完成しなかった形状の数(0~12)(ΣF)
e. それぞれの形状に関する異なる複雑さのレベルに関して重み付け係数で調整した、成功裡に完成した形状の数を反映する形状完成スコア(0~10)(Σ[ShWf])
f. それぞれの形状に関する異なる複雑さのレベルに関して重み付け係数で調整し、そして第一対第二の試行での成功を考慮した、成功裡に完成した形状の数を反映する形
状完成スコア(0~10)(Σ[Sh Wf]+Σ[Sh Wf0.5])
g. #1eおよび#1fで定義するような形状完成スコアは、30/tを乗じると、試験完了の速度を考慮することも可能であり、式中、tは試験を完了するまでの秒での時間を示す。
【0047】
h. 特定の期間内での多数の試験に基づく、各6つの個々の形状に関する全体のおよび第一の試行の完成速度:(ΣSh)/(ΣSh+ΣSh+ΣF)および(ΣSh+ΣSh)/(ΣSh+ΣSh+ΣF)。
【0048】
2.セグメント完成および迅速さ成績スコア/測定:
(適用可能である場合、各形状に関する2回の試行の最良のもの[完成されたセグメントの数が最も多いもの]に基づく分析)
a. 試験あたり、成功裡に完成したセグメントの数(0~[2a+b+c+d+e-6])(ΣSe)
b. 成功裡に完成したセグメントの平均の迅速さ([C]、セグメント/秒):C=ΣSe/t、式中、tは、試験を完了するまでの秒での時間を示す(最大30秒)
c. それぞれの形状に関する異なる複雑さのレベルに関して重み付け係数で調整した、成功裡に完成したセグメントの数を反映するセグメント完成スコア(Σ[SeWf])
d. 速度調整および重み付けセグメント完成スコア(Σ[SeWf]30/t)、式中、tは試験を完了するまでの秒での時間を示す。
【0049】
e. 線形および四角形形状に関する、成功裡に完成したセグメントの形状特異的数(ΣSeLS
f. 円形および正弦曲線形状に関する、成功裡に完成したセグメントの形状特異的数(ΣSeCS
g. らせん形状に関する、成功裡に完成したセグメントの形状特異的数(ΣSe
h. 線形および四角形形状試験において実行された、成功裡に完成したセグメントに関する形状特異的平均線形迅速さ:C=ΣSeLS/t、式中、tは、これらの特定の形状内で、対応する成功裡に完成されたセグメントの出発点から終点まで経過した秒での累積エポック時間を示す。
【0050】
i. 円形および正弦曲線形状試験において実行された、成功裡に完成したセグメントに関する形状特異的平均円形迅速さ:C=ΣSeCS/t、式中、tは、これらの特定の形状内で、対応する成功裡に完成されたセグメントの出発点から終点まで経過した秒での累積エポック時間を示す。
【0051】
j. らせん形状試験において実行された、成功裡に完成したセグメントに関する形状特異的平均らせん形迅速さ:C=ΣSe/t、式中、tは、この特定の形状内で、対応する成功裡に完成されたセグメントの出発点から終点までに経過した秒での累積エポック時間を示す。
【0052】
3. ドローイングの正確さの成績スコア/測定:
(適用可能である場合、各形状に関する2回の試行の最良のもの[完成されたセグメントの数が最も多いもの]に基づく分析)
a. 曲線下の全面積(AUC)の合計として計算される偏差(Dev)、これらの形状内の対応するターゲットパスの総累積長(出発チェックポイントから、到達した終点チェックポイントまで)で割った、出発チェックポイントから各特定の形状に関して到達された終点チェックポイントまでの描画トラジェクトリーおよびターゲットドローイング
パスの間の積算面偏差(integrated surface deviations)の測定。
【0053】
b. #3aにおけるDevとして計算するが、特に、線形および四角形形状の試験結果から計算した線形偏差(Dev)。
c. #3aにおけるDevとして計算するが、特に、円形および正弦曲線形状の試験結果から計算した円形偏差(Dev)。
【0054】
d. #3aにおけるDevとして計算するが、特に、らせん形状の試験結果から計算したらせん形偏差(Dev)。
e. #3aにおけるDevとして計算するが、6つの別個の形状の試験結果各々から、別個に計算した、少なくとも3つのセグメントが最良試行内で成功裡に完成した場合の形状に関してのみ適用可能である、形状特異的偏差(Dev1-6)。
【0055】
f. ターゲットトラジェクトリーからの形状特異的または形状非依存性全偏差を計算する任意の他の方法の連続変数分析。
4.)圧プロファイル測定
i)発揮平均圧
ii)圧の標準偏差として計算される偏差(Dev)
指の器用さおよび遠位脱力を測定するように設定された遠位運動機能に関するさらなる試験(いわゆる「スクイーズ・ア・シェイプ試験」)を実行するかまたは該試験からのデータを獲得するために、モバイルデバイスをさらに適応させてもよい。こうした試験から獲得されたデータセットは、指の運動の正確さおよび速度、ならびに関連する圧プロファイルを同定することを可能にする。試験は、まず、被験体の動きの正確さの能力に関して較正を必要とする可能性もある。
【0056】
スクイーズ・ア・シェイプ試験の目的は、つまむように閉じる指の動きの正確さを評価することによって、細かい遠位運動操作(握るおよびつかむ)および制御を評価することである。該試験は、損なわれた手の運動機能の以下の側面を含むと見なされる:損なわれた握る/つかむ機能、筋脱力、および損なわれた手指視覚協調。患者は、試験していない手でモバイルデバイスを保持し、そして同じ手の2本の指(親指+第二指または親指+第三指が好ましい)が、30秒の間にできる限り多くの丸い形状(すなわちトマト)を絞る(squeeze)/つまむ(pinch)よう指示される。損なわれた細かい運動操作は、成績に影響を及ぼすであろう。試験は右手および左手で交互に行われる。ユーザは、毎日交互に行うように指示される。
【0057】
関心対象の典型的なスクイーズ・ア・シェイプ試験成績パラメータ:
1. スクイーズされる形状の数
a. 30秒間でスクイーズされるトマトの形状の総数(ΣSh)
b. 30秒間の第一の試行でスクイーズされるトマトの総数(ΣSh)(第一の試行は、試験のまさに最初の試行でなくとも、成功したスクイーズの後、スクリーン上の最初の二重接触として検出される)
2. ピンチングの正確さの測定:
a. 試験の総期間内の、ピンチング試行(スクリーン上の別個に検出された二重の指の接触の総数として測定される)の総数(ΣP)によって割った、ΣShとして定義されるピンチングの成功率(PSR)。
【0058】
b. 検出されるすべての二重接触に関する、第一および第二の指がスクリーンにタッチする間のラグタイムとして測定される二重タッチ非同期性(DTA)。
c. 検出されるすべての二重接触に関する、トマト形状の中央への二重接触での2
つの指の出発タッチポイントの間の等距離ポイントからの距離として測定されるターゲットをピンチングする正確さ(PTP)。
【0059】
d. 成功裡にピンチングしたすべての二重接触に関する、二重接触出発ポイントからピンチギャップに到達するまでの2つの指によってスライドされるそれぞれの距離の間の比(最短/最長)として測定される、ピンチングする指の運動の非対称性(PFMA)。
【0060】
e. 成功裡にピンチングしたすべての二重接触に関する、二重接触の時間からピンチギャップに到達するまでの、スクリーン上での各1本のおよび/または両方の指のスライディングの速度(mm/秒)として測定されるピンチングする指の速度(PFV)。
【0061】
f. 成功裡にピンチングしたすべての二重接触に関する、二重接触の時間からピンチギャップに到達するまでの、スクリーン上でのそれぞれの個々の指のスライディングの速度間の比(最も遅い/最速)として測定されるピンチングする指の非対称性(PFA)。
【0062】
g. 経時的な2a~2fの連続変数分析、ならびに多様な期間(5~15秒間)のエポックによるそれらの分析
h. 試験したすべての形状(特にらせんおよび四角形)に関するターゲット描画トラジェクトリーからの偏差の積算測定の連続変数分析
3.)圧プロファイル測定
i)発揮平均圧
ii)圧の標準偏差として計算される偏差(Dev)
(2)軸性運動機能を測定するための試験:リフティング試験、ツイスティング試験、ウォーク・ザ・ロープ試験およびコレクト・コイン試験
上肢可動性(モバイルデバイスをリフトすることによる)、脱力および疲労、近位筋緊張低下、関節拘縮および振戦を測定するように設定された、軸性運動機能に関するさらなる試験(いわゆる「リフティング試験」)を実行するかまたは該試験からデータを獲得するため、モバイルデバイスをさらに適応させてもよい。こうした試験から獲得されたデータセットは、上肢運動の正確さおよび速度を同定することを可能にする。該試験は、被験体の動きの正確さの能力に関して、まず較正を必要としうる。
【0063】
上肢可動性(モバイルデバイスをリフトすることによる)、脱力および疲労、近位筋緊張低下、関節拘縮および振戦を測定するように設定された、軸性および近位運動機能に関するさらなる試験(いわゆる「ツイスティング試験」)を実行するかまたは該試験からデータを獲得するため、モバイルデバイスをさらに適応させてもよい。この試験のため、患者は掌に電話を保持して、電話のスクリーンを上下に反復して回転させなければならない。
【0064】
こうした試験から獲得されたデータセットは、ツイスト(手首の回転)の正確さおよび速度および数を同定することを可能にする。該試験は、被験体の動きの正確さの能力に関して、まず較正を必要としうる。
【0065】
上肢における近位筋緊張低下を測定するように設定された、軸性運動機能に関するさらなる試験(いわゆる「ウォーク・ザ・ロープ試験」)を実行するかまたは該試験からデータを獲得するため、モバイルデバイスをさらに適応させてもよい。こうした試験から獲得されたデータセットは、正しい運動の数、サイズおよび速度を同定することを可能にする。該試験は、被験体の平衡力および平衡失調の能力に関して、まず較正を必要としうる。
【0066】
上肢可動性(モバイルデバイスを動かすことによる)、脱力および疲労を測定するように設定された、軸性運動機能に関するさらなる試験(いわゆる「コレクト・コイン試験」)を実行するかまたは該試験からデータを獲得するため、モバイルデバイスをさらに適応させてもよい。こうした試験から獲得されたデータセットは、軸性回転運動の度合い、経時的な運動の速度および数、ならびに進行中のゲーム状況(すなわちスクリーンの反対の部位の間で、ユーザがボールを行ったり来たりさせる必要がある)に対する反応としての反応時間を同定することを可能にする。該試験は、被験体の運動の正確さの能力に関して、まず較正を必要としうる。
(3)中枢運動機能に関する試験:発声試験
発声能を測定することによって、近位中枢運動機能を測定するように設定された中枢運動機能に関するさらなる試験(いわゆる「発声試験」)を実行するかまたは該試験からのデータを獲得するため、モバイルデバイスをさらに適応させてもよい。
【0067】
典型的には、また、対象ユーザが、較正および力の測定を可能にする特定のタスクを実行することを要求する、コンピュータプログラムコードによっても、前述の試験をモバイルデバイス上に実装してもよい。典型的には、こうしたタスクは、被験体が、デバイス上で、楽しく、そしてしたがって快適でそしてリラックスした方式でタスクを実行することを要求するゲーム内に隠されていてもよい。前記のゲームセットアップを用いることによって、タスクは、特に、小児または認知能障害を有する被験体によってもまた実行されうる。さらに、試験のゲーム性はまた、被験体が試験を実行する全体のモチベーションも改善しうる。典型的には、前述の試験のための想定される例は、以下の付随する実施例により詳細に記載される。
【0068】
本発明の方法のさらなる態様において、データセットを得るモバイルデバイスは、圧測定のデータセットに加えて、遠位運動機能、軸性運動機能および/または中枢運動機能、およびより典型的には、これらのタイプのデータの任意の1つに関する試験の少なくとも1つからのデータを少なくとも提供するように設定される。
【0069】
しかし、本発明の方法にしたがって、さらなる臨床的、生化学的または遺伝的パラメータを考慮してもよい。典型的には、前記のさらなるパラメータを、筋電図検査、クレアチンキナーゼの測定ならびに/あるいは例えばSMN1、SMN2および/またはVABP遺伝子突然変異および/または異常に関する遺伝子検査から得てもよい。
【0070】
用語「モバイルデバイス」は、本明細書において、圧測定のデータセットを得るために適切な圧センサおよびデータ記録装置を少なくとも含む、任意のポータブルデバイスを指す。このデバイスはまた、データプロセッサおよび記憶装置、ならびにモバイルデバイス上で圧測定試験を電子的にシミュレーションするためのディスプレイも必要としうる。さらに、被験体の活動からデータを記録し、そしてモバイルデバイス自体または第二のデバイス上のいずれかで、本発明の方法によって評価されるべきデータセットにコンパイルしなければならない。想定される特定のセットアップに応じて、獲得されたデータセットをモバイルデバイスからさらなるデバイスに伝達するために、モバイルデバイスがデータ送信装置を含む必要もありうる。本発明にしたがったモバイルデバイスとして特によく適しているのは、スマートフォン、ポータブルマルチメディアデバイスまたはタブレットコンピュータである。あるいは、データ記録およびプロセシング装置を含むポータブルセンサを用いてもよい。さらに、実行すべき活動試験の種類に応じて、モバイルデバイスは、試験のために行われるべき活動に関して、被験体に指示をディスプレイするよう適応されていなければならない。被験体によって行われるべき特定の想定される活動は、本明細書の別の箇所に記載され、そして遠位筋緊張低下試験ならびに本明細書に記載される他の試験を含む。
【0071】
成績パラメータとして、データセットから直接、所望の測定値を得ることによってのいずれかで、少なくとも1つの成績パラメータの決定を達成してもよい。あるいは、成績パラメータは、データセット由来の1つまたはそれより多い測定された値を統合してもよく、そしてしたがって、計算などの数学演算によってデータセットから得られてもよい。典型的には、成績パラメータは、自動化アルゴリズムによって、例えばデータプロセシングデバイスに有形に埋め込まれたデバイスに前記データセットが入力された際に、活動測定データセットから自動的に成績パラメータを得る、コンピュータプログラムによって、データセットから得られる。
【0072】
用語「参照」は、本明細書において、被験体において、筋機能障害および好ましくはSMAを評価することを可能にする識別子を指す。こうした識別子は、筋機能障害および好ましくはSMAに罹患した被験体または筋機能障害および好ましくはSMAに罹患していない被験体に関する指標である、成績パラメータに関する値であってもよい。
【0073】
筋機能障害および好ましくはSMAに罹患していることが知られる被験体の1つまたはそれより多い成績パラメータから、こうした値を得てもよい。典型的には、こうした場合における識別子として、平均または中央値を用いてもよい。被験体から決定される成績パラメータが、参照と同一であるかまたは参照から得られる閾値よりも高い場合、こうした場合には、被験体を筋機能障害および好ましくはSMAに罹患していると同定することも可能である。決定される成績パラメータが参照と異なり、そして特に前記閾値未満である場合、被験体は、筋機能障害および好ましくはSMAに罹患していないと同定されなければならない。
【0074】
同様に、筋機能障害および好ましくはSMAに罹患していないことが知られる被験体の1つまたはそれより多い成績パラメータから、値を得てもよい。典型的には、こうした場合の識別子として、平均または中央値を用いてもよい。被験体から決定される成績パラメータが、参照と同一であるかまたは参照から得られる閾値よりも低い場合、こうした場合には、被験体を筋機能障害および好ましくはSMAに罹患していないと同定することも可能である。決定される成績パラメータが参照と異なり、そして特に前記閾値より高い場合、被験体は、筋機能障害および好ましくはSMAに罹患していると同定されなければならない。
【0075】
代替法として、参照は、実際のデータセットより前に、同じ被験体から得られている圧測定のデータセットからあらかじめ決定された成績パラメータであってもよい。こうした場合、あらかじめ決定された成績パラメータと異なる、実際のデータセットから決定された決定成績パラメータは、疾患の以前の状態またはそれに付随する症状および成績パラメータによって示される活動の種類に応じて、改善または悪化のいずれかの指標となるはずである。当業者は、活動の種類および以前の成績パラメータに基づいて、前記パラメータをどのように参照として用いうるかを知っている。
【0076】
決定された少なくとも1つの成績パラメータの参照への比較は、コンピュータなどのデータプロセシングデバイス上に実装された自動化比較アルゴリズムによって達成されてもよい。互いに比較するのは、決定された成績パラメータ、および本明細書の別の箇所に明記するような、前記の決定された成績パラメータに関する参照の値である。比較の結果として、決定された成績パラメータが参照と同一であるかまたは異なるかまたは特定の関連がある(例えば参照より大きいかまたは小さい)と評価することも可能である。前記評価に基づいて、被験体を、筋機能障害および好ましくはSMAに罹患している(「あてはまる(rule-in)」)またはしていない(「あてはまらない(rule-out)」)と同定してもよい。評価のため、本発明にしたがった適切な参照と関連して、別の箇所に記載するように、参照の種類を考慮する。
【0077】
さらに、決定された成績パラメータおよび参照の間の相違の度合いを決定することによって、被験体における筋機能障害および好ましくはSMAの定量的評価も可能となるはずである。実際に決定された成績パラメータを、参照として用いられる以前に決定されたものに比較することによって、疾患状態全体またはその症状の改善、悪化または不変を決定してもよいことが理解されるものとする。前記成績パラメータの値の定量的相違に基づいて、改善、悪化または不変状態を決定してもよく、そして随意に、また定量化してもよい。他の参照、例えばSMAを伴う被験体由来の参照を用いる場合、特定の病期を参照集合に割り当て可能であるならば、定量的相違に意味があることが理解されるであろう。こうした場合では、この病期に対して、疾患状態の悪化、改善または不変を決定することも可能であり、そして随意に、定量化することもまた可能である。
【0078】
前記診断、すなわち被験体における筋機能障害またはSMAの評価は、被験体または別の人物、例えば医師に示される。典型的には、これは、モバイルデバイスまたは評価デバイスのディスプレイ上に、診断をディスプレイすることによって、達成される。あるいは、療法、例えば薬剤治療に関する、あるいは特定のライフスタイル、例えば特定の栄養ダイエットまたはリハビリテーション手段に関する、推奨を、被験体または他の人物に自動的に提供する。この目的に向けて、確立された診断を、データベース中の異なる診断に割り当てられる推奨に比較する。確立された診断が、保存され、そして割り当てられた診断の1つにマッチしたら、確立された診断にマッチする保存された診断に対する推奨の割り当てにより、適切な推奨を同定してもよい。したがって、典型的には、推奨および診断が、関連データベースの形で存在することが想定される。しかし、適切な推奨の同定を可能にする他の配置もまた可能であり、そして当業者に知られる。
【0079】
さらに、1つまたはそれより多い成績パラメータをモバイルデバイス上に保存するか、または典型的にはリアルタイムで被験体に示してもよい。保存された成績パラメータを時間経過にまたは類似の評価手段に組み立ててもよい。こうして評価された成績パラメータを、本発明の方法にしたがって調べた活動能に関するフィードバックとして、被験体に提供してもよい。典型的には、こうしたフィードバックを、電子形式で、モバイルデバイスの適切なディスプレイ上に提供してもよく、そしてこれを、上に明記するような療法またはリハビリテーション手段に関する推奨にリンクさせてもよい。
【0080】
さらに、また、評価された成績パラメータを、医師のオフィスまたは病院にいる医師に、ならびに他の医療提供者、例えば診断試験の開発者または臨床試験の背景における薬剤開発者、生命保険提供者、あるいは公的または私的医療制度の他の利害関係者にも提供してもよい。
【0081】
典型的には、被験体においてSMAを評価するための本発明の方法を、以下のように行ってもよい。
第一に、モバイルデバイスを用いて、前記被験体から得た圧測定の現存するデータセットから、少なくとも1つの成績パラメータを決定する。前記データセットは、モバイルデバイスから評価デバイス、例えばコンピュータに送信されてもよいし、またはデータセットから少なくとも1つの成績パラメータを得るために、モバイルデバイスにおいてプロセシングされてもよい。
【0082】
第二に、決定された少なくとも1つの成績パラメータを、例えばモバイルデバイスのデータプロセッサによって、または評価デバイス、例えばコンピュータによって行われる、コンピュータ実装比較アルゴリズムを用いることによって、比較する。比較の結果を、比較に用いた参照に対して評価し、そして前記評価に基づいて、被験体は、SMAに罹患しているまたはしていない被験体として同定されるであろう。
【0083】
第三に、前記診断、すなわちSMAに罹患しているまたはしていない被験体としての被験体の同定を、被験体または他の人物、例えば医師に示す。しかし、最終臨床診断または評価のためには、さらなる要因またはパラメータが臨床医によって考慮されてもよいことが理解されるであろう。
【0084】
用語「同定」は、本明細書において、特定の尤度で被験体がSMAに罹患しているかどうかを評価することを指す。評価は、したがって、場合の100%に関して正しいわけではない可能性もあることが理解されるであろう。しかし、典型的には、調べた被験体の統計的に有意な部分が評価されうる、すなわちSMAに罹患していると同定されうることが想定される。統計的有意性をどのように決定しうるかは、本明細書の別の箇所に記載される。本明細書において、同定は、典型的には、最終結論よりむしろ、ヒントの提供を指す。
【0085】
あるいは、療法、例えば薬剤治療に関する、または特定のライフスタイル、例えば特定の栄養ダイエットに関する推奨を、被験体または他の人物に自動的に提供する。この目的に向けて、確立された診断を、データベース中の異なる診断に割り当てられる推奨に比較する。確立された診断が、保存され、そして割り当てられた診断の1つにマッチしたら、確立された診断にマッチする保存された診断に対する推奨の割り当てにより、適切な推奨を同定してもよい。典型的な推奨は、ヌシネルセン、ブチレート、バルプロ酸、ヒドロキシ尿素またはリルゾールでの療法を伴う。
【0086】
さらに、代替法としてまたはさらに、診断の根底にある少なくとも1つの成績パラメータをモバイルデバイス上に保存する。典型的には、適切な評価ツールによって、例えば本明細書の別の箇所に明記するようなリハビリテーションまたは療法推奨を電子的に補助しうる、モバイルデバイス上に実装されている時間経過組み立てアルゴリズムによって、他の保存された成績パラメータとともに評価されるべきである。
【0087】
本発明は、上記を考慮して、また、被験体において、筋機能障害および好ましくはSMAを評価する方法であって:
a)モバイルデバイスを用いて、前記被験体から、被験体によって実行される、あらかじめ決定された活動中の圧測定のデータセットを得て;
b)モバイルデバイスを用いて、前記被験体から得た圧測定のデータセットから決定される、少なくとも1つの成績パラメータを決定し;
c)決定された少なくとも1つの成績パラメータを参照に比較し;そして
d)工程(b)で行った比較に基づいて、典型的には被験体が筋機能障害および好ましくはSMAに罹患しているかまたはしていないかを決定することによって、筋機能障害および好ましくはSMAを評価する
工程を含む、前記方法も特に意図する。
【0088】
好適には、本発明の根底にある研究において、SMA患者における圧測定のデータセットから得られる成績パラメータを、これらの患者において、SMAを評価する、すなわちSMAに罹患している患者を同定するためのデジタルバイオマーカーとして用いてもよいことが見出されてきている。被験体が能動的または受動的圧試験を実行する、万能スマートフォン、ポータブルマルチメディアデバイスまたはタブレットコンピュータなどのモバイルデバイスを用いることによって、好適な方式で、SMA患者から前記データセットを獲得してもよい。特に、本発明の根底にある研究において、スマートフォン上で行われる他の活動中に実行される受動的圧測定によって得られるデータセットであってさえ、SMA患者の意味がある評価のために十分な品質を持つことが見出された。獲得されたデータセットを、続けて、デジタルバイオマーカーとして適している成績パラメータに関して、
本発明の方法によって、評価してもよい。前記評価を、同じモバイルデバイス上で行ってもよいし、または別個のリモートデバイス上で行ってもよい。さらに、こうしたモバイルデバイスを用いることによって、ライフスタイルまたは療法に関する推奨を患者に直接、すなわち医師のオフィスまたは病院救急車において医師の診察を受けることなく、提供してもよい。本発明のおかげで、本発明の方法によって実際に決定される成績パラメータの使用により、SMA患者の生活状態を、実際の疾患状態に合わせてより正確に調節することも可能である。それによって、より効率的である薬剤治療を選択することも可能であるし、または投薬措置を患者の現在の状態に適応させることも可能である。本発明の方法は、典型的には、被験体由来の活動測定の現存するデータセットを必要とするデータ評価法であることが理解されるものとする。このデータセット内で、方法はSMAを評価するために使用可能な、すなわちSMAに関するデジタルバイオマーカーとして使用可能な、少なくとも1つの成績パラメータを決定する。さらに、また、圧測定のデータセット由来の成績パラメータを用いる本発明の方法を、SMA以外の筋機能障害の評価のために適用してもよいことが理解されるであろう。こうした評価のため、SMAに関するものと同じ原理が適用されるはずである。
【0089】
したがって、本発明の方法を:
-疾患状態を評価する;
-患者を、特に実際の生活、日常の状況において、そして長期に、監視する;
-ライフスタイルおよび/または療法推奨で、患者を補助する;
-薬剤有効性を、例えばまた臨床試験中でも調べる;
-療法決定を容易にし、そして/または補助する;
-病院管理を補助する;
-リハビリテーション手段管理を補助する;
-リハビリテーション装置として、より高密度の認知、運動および歩行活動を刺激して、疾患状態を改善する
-生命保険評価および管理を補助する;そして/または
-公衆衛生管理における決定を補助する
ために用いてもよい。
【0090】
上記に行った、用語に関する説明および定義は、本明細書の以下に記載する態様にも、変更すべきところは変更して当てはまる。
以下において、本発明の方法の特定の態様を記載する:
本発明の方法の1つの態様において、前記SMAは、SMA1(ウェルドニッヒ-ホフマン病)、SMA2(デュボヴィッツ病)、SMA3(クーゲルベルグ-ヴェランダー病)またはSMA4である。
【0091】
本発明の方法の別の態様において、前記の少なくとも1つの成績パラメータは、個々の指における筋緊張低下の指標となるパラメータである。
本発明の方法のさらなる態様において、個々の指の強度の圧測定のデータセットは、個々の指で被験体によって発揮されうる最大圧測定からのデータ、または経時的な個々の指で圧を発揮する能力に関するデータを含む。
【0092】
本発明の方法の1つの態様において、前記データセットは、軸性運動機能および/または中枢運動機能の指標となるデータをさらに含む。
本発明の方法の1つの態様において、前記モバイルデバイスは、上記に言及される力の測定の1つまたはそれより多くを、被験体に対して行うために適応されている。より典型的には、前記モバイルデバイスは、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ、ポータブルマルチメディアデバイスまたはタブレットコンピュータに含まれている。
【0093】
本発明の方法の1つの態様において、前記参照は、工程a)に言及する圧測定のデータセットが被験体から得られる時点よりも前の時点で、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットから得られた少なくとも1つの成績パラメータである。より典型的には、決定された少なくとも1つの成績パラメータおよび参照の間の悪化は、被験体がSMAを伴う指標である。
【0094】
本発明の方法の別の態様において、前記参照は、SMAに罹患したことが知られる被験体または被験体群から得た個々の指の強度の圧測定のデータセット由来の少なくとも1つの成績パラメータである。より典型的には、参照に比較して、本質的に同一である、決定された少なくとも1つの成績パラメータは、被験体がSMAを伴う指標である。
【0095】
本発明の方法のさらなる態様において、前記参照は、SMAに罹患していないことが知られる被験体または被験体群から得た個々の指の強度の圧測定のデータセット由来の少なくとも1つの成績パラメータである。より典型的には、参照に比較して悪化している、決定された少なくとも1つの成績パラメータは、被験体がSMAを伴う指標である。
【0096】
本発明はまた、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品または前記コンピュータプログラムが有形に埋め込まれているコンピュータ読み取り可能記憶媒体であって、コンピュータプログラムが、データプロセシングデバイスまたはコンピュータ上で実行された際に、上に明記するような本発明の方法を行う命令を含む、前記コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品またはコンピュータ読み取り可能記憶媒体も含む。具体的には、本開示はさらに、以下を含む:
-少なくとも1つのプロセッサを含むコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、プロセッサが本明細書に記載する態様の1つにしたがった方法を実行するように適応されている、前記コンピュータまたはコンピュータネットワーク、
-データ構造がコンピュータ上で実行される間、本明細書に記載する態様の1つにしたがった方法を実行するように適応されているコンピュータ装填可能データ構造、
-プログラムがコンピュータ上で実行される間、本明細書に記載する態様の1つにしたがった方法を、コンピュータプログラムが実行するように適応されている、コンピュータスクリプト、
-コンピュータプログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されている間、本明細書に記載する態様の1つにしたがった方法を実行するためのプログラム手段を含む、コンピュータプログラム、
-プログラム手段が、コンピュータに読み取り可能である記憶媒体上に保存されている、先行する態様にしたがったプログラム手段を含む、コンピュータプログラム、
-記憶媒体であって、データ構造が該記憶媒体上に保存され、そしてデータ構造が、コンピュータまたはコンピュータネットワークの主記憶装置および/または作業記憶装置に装填された後に、本明細書に記載する態様の1つにしたがった方法を実行するように適応されている、前記記憶媒体、
-プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段が、コンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行される場合、本明細書に記載する態様の1つにしたがった方法を実行するため、プログラムコード手段が記憶媒体上に保存されてもよいし、または保存される、プログラムコード手段を有する前記コンピュータプログラム製品、
-モバイルを用いて被験体から得た圧測定のデータセットを含む、典型的には暗号化された、データストリームシグナル、および
-モバイルを用いて被験体から得た圧測定のデータセットから得られる少なくとも1つの成績パラメータを含む、典型的には暗号化された、データストリームシグナル。
【0097】
本発明はさらに、モバイルデバイスを用いた、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定値のデータセットから少なくとも1つの成績パラメータを決定するための方法であって
a)モバイルデバイスを用いて、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットから、少なくとも1つの成績パラメータを得て;そして
b)決定された少なくとも1つの成績パラメータを参照に比較する
ここで、典型的には、前記の少なくとも1つの成績パラメータが、前記被験体において、筋機能障害および好ましくはSMAを評価することも可能である
工程を含む、前記方法に関する。
【0098】
本発明はまた、筋機能障害および好ましくはSMAに対する療法の有効性を決定するための方法であって、本発明の方法の工程、特にa)モバイルデバイスを用いて、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットから、少なくとも1つの成績パラメータを決定して;そしてb)決定された少なくとも1つの成績パラメータを参照に比較し、それによって筋機能障害および好ましくはSMAを評価する工程または本明細書の他の箇所に明記するその態様、ならびに療法に際して被験体において筋機能障害および好ましくはSMAの改善が起きた際に、療法反応を決定するか、あるいは療法に際して被験体において筋機能障害および好ましくはSMAの悪化が起きた際にまたは筋機能障害および好ましくはSMAが不変のままであった際に反応の失敗を決定する、さらなる工程を含む、前記方法も含む。
【0099】
用語「筋機能障害および好ましくはSMAに対する療法」は、本明細書において、薬剤に基づく療法、精神療法、理学療法等を含む、すべての種類の医学的治療を指す。該用語はまた、ライフスタイル推奨、リハビリテーション手段、および栄養ダイエットの推奨も含む。典型的には、該方法は、薬剤に基づく療法の推奨、ならびに特に、筋機能障害および好ましくはSMAの治療に有用であることが知られる薬剤での療法を含む。こうした薬剤は、ヌシネルセン、ブチレート、バルプロ酸、ヒドロキシ尿素またはリルゾールであってもよい。さらに、前述の方法は、さらなる態様において、推奨される療法を被験体に適用するさらなる工程を含んでもよい。
【0100】
さらに、本発明にしたがって含まれるのは、筋機能障害および好ましくはSMAに対する療法の有効性を決定するための方法であって、本発明の前述の方法(すなわち被験体において、筋機能障害および好ましくはSMAを評価するための方法)の工程、ならびに療法に際して被験体において筋機能障害および好ましくはSMAの改善が起きた際に、療法反応を決定するか、あるいは療法に際して被験体において筋機能障害および好ましくはSMAの悪化が起きた際にまたは筋機能障害および好ましくはSMAが不変のままであった際に反応の失敗を決定する、さらなる工程を含む、前記方法である。
【0101】
本発明にしたがって言及されるような用語「改善」は、全体の疾患状態またはその個々の症状のいかなる改善にも関する。同様に、「悪化」は、全体の疾患状態またはその個々の症状のいかなる悪化も意味する。例えば、進行性疾患としてのSMAは、典型的には、全体の疾患状態またはその個々の症状の悪化と関連するため、前述の方法と関連して言及される悪化は、疾患の通常の経過を超える予期されぬまたは非典型的な悪化である。不変のSMAは、全体の疾患状態およびそれに付随する症状が、疾患の通常の経過内であることを意味する。
【0102】
さらに、本発明は、被験体において、進行中の筋機能障害および好ましくはSMAを監視する方法であって、本発明の方法の工程、特にa)モバイルデバイスを用いて、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットから、少なくとも1つの成績パラメータを決定し;そしてb)決定された少なくとも1つの成績パラメータを参照に比較し、それによって筋機能障害および好ましくはSMAを評価する工程、または本明細書の別の箇
所に明記するその態様を、あらかじめ定義された監視期間中に少なくとも2回行うことによって、被験体において、筋機能障害および好ましくはSMAが改善されるか、悪化するかまたは不変のままであるかを決定する工程を含む、前記方法に関する。
【0103】
用語「あらかじめ定義された監視期間」は、本明細書において、少なくとも2回の活動測定を行う、あらかじめ定義された期間を指す。典型的には、こうした期間は、個々の被験体に関して予期されるべき疾患進行に応じて、数日から数週、数ケ月、数年に渡ってもよい。監視期間内に、通常は監視期間の開始時である最初の時点、および少なくとも1回のさらなる時点で、活動測定および成績パラメータを決定する。しかし、活動測定および成績パラメータ決定のための1回より多いさらなる時点があることもまた可能である。いかなる場合でも、最初の時点の活動測定から決定される成績パラメータ(単数または複数)を、続く時点の成績パラメータに比較する。こうした比較に基づいて、あらかじめ定義された監視期間中、疾患状態の悪化、改善または不変を決定するために用いられるであろう定量的相違を同定してもよい。
【0104】
本発明は、モバイルデバイスであって、プロセッサ、少なくとも1つの圧センサおよびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に埋め込まれ、そして前記デバイス上で実行された際、本発明の方法を行うソフトウェアを含む、前記モバイルデバイスに関する。
【0105】
前記モバイルデバイスは、したがって、データセットを獲得可能であり、そしてそこから成績パラメータを決定するように設定されている。さらに、参照に対する比較を行い、そして診断、すなわち筋機能障害および好ましくはSMAに罹患しているものとしての被験体の同定を確立するように設定される。モバイルデバイスを前記目的のためにどのように設計しうるかに関するさらなる詳細は、本明細書の他の箇所にすでに詳細に記載されてきている。
【0106】
少なくとも1つのセンサを含むモバイルデバイス、そしてリモートデバイスであって、プロセッサおよびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に埋め込まれ、そして前記デバイス上で実行された際、本発明の方法のいずれかを行うソフトウェアを含む、前記リモートデバイスを含む系であって、前記モバイルデバイスおよび前記リモートデバイスが、互いに機能可能であるように連結されている、前記系。
【0107】
「互いに機能可能であるように連結されている」以下では、一方のデバイスから他方のデバイスへのデータ伝達を可能にするようにデバイスが連結されていると理解されるものとする。典型的には、被験体からデータを獲得する少なくともモバイルデバイスは、獲得されたデータを、プロセシングのためリモートデバイスに伝達可能であるように、本発明の方法の工程を行うリモートデバイスに連結されると想定される。しかし、リモートデバイスはまた、その適切な機能を制御するかまたは監督するシグナルなどのデータもモバイルデバイスに伝達してもよい。モバイルデバイスおよびリモートデバイスの間の連結を、永続的または一時的物理連結、例えば同軸、ファイバー、光ファイバーまたはツイストペア、10 BASE-Tケーブルによって達成してもよい。あるいは、伝達を、例えば電波、例えばWi-Fi、LTE、LTE-advancedまたはBluetoothを用いて、一時的または永続的ワイヤレス連結によって、達成してもよい。さらなる詳細は、本明細書の別の箇所に見出されうる。データ獲得のため、モバイルデバイスは、ユーザインターフェース、例えばスクリーンまたはデータ獲得のための他の装置を含んでもよい。典型的には、モバイルデバイスによって含まれるスクリーン上で、活動測定を行ってもよく、前記スクリーンは、例えば5.1インチスクリーンを含む異なるサイズを有してもよいことが理解されるであろう。
【0108】
さらに、本発明が、被験体からの個々の指の強度の圧測定のデータセットに関して、筋
機能障害および好ましくはSMAを評価するため、本発明にしたがったモバイルデバイスまたは系の使用を意図することが理解されるであろう。
【0109】
本発明はまた、患者を、特に、実際の生活、日常の状況において、そして長期に監視するための、本発明にしたがったモバイルデバイスまたは系の使用も意図する。
本発明によって含まれるのは、さらに、ライフスタイルおよび/または療法推奨で患者を補助するための、本発明にしたがったモバイルデバイスまたは系の使用である。
【0110】
さらに、本発明が、例えばまた臨床試験中でも、薬剤安全性および有効性を調べるため、本発明にしたがったモバイルデバイスまたは系の使用を意図することが理解されるであろう。
【0111】
さらに、本発明は、療法決定を容易にし、そして/または補助するため、本発明にしたがったモバイルデバイスまたは系の使用を意図する。
さらに、本発明は、リハビリテーション装置として、疾患状態を改善するための、そして病院管理、リハビリテーション手段管理、生命保険評価および管理、ならびに/あるいは公衆衛生管理における決定を補助するための、本発明にしたがったモバイルデバイスまたは系の使用を提供する。
【0112】
以下において、本発明のさらに特定の態様を列挙する:
態様1:被験体において、脊髄性筋萎縮症(SMA)を評価する方法であって:
a)モバイルデバイスを用いて、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットから、少なくとも1つの成績パラメータを決定し;そして
b)決定された少なくとも1つの成績パラメータを参照に比較し、それによってSMAを評価する
工程を含む、前記方法。
【0113】
態様2:前記SMAがSMA1(ウェルドニッヒ-ホフマン病)、SMA2(デュボヴィッツ病)、SMA3(クーゲルベルグ-ヴェランダー病)またはSMA4である、態様1の方法。
【0114】
態様3:前記の少なくとも1つの成績パラメータが、個々の指における筋緊張低下の指標となるパラメータである、態様1または2の方法。
態様4:個々の指の強度の圧測定のデータセットが、個々の指で被験体によって発揮されうる最大圧測定からのデータ、または経時的な個々の指で圧を発揮する能力に関するデータを含む、態様1~3のいずれか一項の方法。
【0115】
態様5:前記データセットが、軸性運動機能および/または中枢運動機能の指標となるデータをさらに含む、態様1~3のいずれか一項の方法。
態様6:前記モバイルデバイスが、態様4において言及される圧測定の1つまたはそれより多くを、被験体に対して行うために適応されている、態様1~5のいずれか一項の方法。
【0116】
態様7:前記モバイルデバイスが、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ、ポータブルマルチメディアデバイスまたはタブレットコンピュータに含まれている、態様6の方法。
【0117】
態様8:前記参照が、工程a)に言及する圧測定のデータセットが被験体から得られる時点よりも前の時点で、前記被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットから得られた少なくとも1つの成績パラメータである、態様1~7のいずれか一項の方法。
【0118】
態様9:決定された少なくとも1つの成績パラメータおよび参照の間の悪化が、SMAを伴う被験体に関する指標である、態様8の方法。
態様10:前記参照が、SMAに罹患したことが知られる被験体または被験体群から得た個々の指の強度の圧測定のデータセット由来の少なくとも1つの成績パラメータである、態様1~7のいずれか一項の方法。
【0119】
態様11:参照に比較して、本質的に同一である、決定された少なくとも1つの成績パラメータが、SMAを伴う被験体に関する指標である、態様10の方法。
態様12:前記参照が、SMAに罹患していないことが知られる被験体または被験体群から得た個々の指の強度の圧測定のデータセット由来の少なくとも1つの成績パラメータである、態様1~7のいずれか一項の方法。
【0120】
態様13:参照に比較して悪化している、決定された少なくとも1つの成績パラメータが、SMAを伴う被験体に関する指標である、態様12の方法。
態様14:モバイルデバイスであって、プロセッサ、少なくとも1つの圧センサおよびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に埋め込まれ、そして前記デバイス上で実行された際、態様1~13のいずれか一項の方法を行うソフトウェアを含む、前記モバイルデバイス。
【0121】
態様15:少なくとも1つの圧センサを含むモバイルデバイス、そしてリモートデバイスであって、プロセッサおよびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に埋め込まれ、そして前記デバイス上で実行された際、態様1~13のいずれか一項の方法を行うソフトウェアを含む、前記リモートデバイスを含む系であって、前記モバイルデバイスおよび前記リモートデバイスが、互いに機能可能であるように連結されている、前記系。
【0122】
態様16:被験体由来の個々の指の強度の圧測定のデータセットに関して、SMAを評価するための、態様14記載のモバイルデバイスまたは態様15の系の使用。
本明細書全体で引用されるすべての参考文献は、全開示内容に関して、そして本明細書に言及する特定の開示内容に関して、本明細書に援用される。
【実施例0123】
以下の実施例は、本発明を単に例示する。いかなるものであれ、これらは、本発明の範囲を限定するような方式で解釈されてはならない。
実施例1:指の強度を決定するためのコンピュータ実装試験(リング・ア・ベル試験)を用いた圧データセット獲得
指によって発揮される圧を測定するための試験を、モバイルフォン(iphone)上に実装した;図5Aを参照されたい。患者は、ベルが鳴るように、ディスプレイ表面上で最大圧を発揮しなければならない。該試験は、患者の指による圧適用を測定するために適応された。患者は、最大圧および最大圧適用期間を得ることを目的とするゲームを行う必要がある(リング・ア・ベル試験)。被験体の指によって適用されうる最大圧に関して、まず、試験を較正する必要があった。リング・ア・ベル試験の結果は、前記最大圧の割合として表される。
【0124】
図1は、患者の日常活動およびリング・ア・ベル試験からの結果の相関を示す。高い日常活動を伴う患者は、リング・ア・ベル試験において優れた結果を示す一方、低い日常活動を伴う者、すなわち通常、SMAにひどく影響を受けている者は、リング・ア・ベル試験において弱い結果を示す。23人の試験した患者のうち、8人が、天井効果を示した。
【0125】
実施例2:指の強度を決定するためのコンピュータ実装試験(キャリー・ザ・エッグ試
験)を用いた圧データセット獲得
指によって発揮される圧の測定のための別の方法、いわゆる「キャリー・ザ・エッグ試験」をモバイルフォン(iphone)上に実装した;図5Bを参照されたい。患者はディスプレイに示される模式的タマゴを運ばなければならない。大きすぎる圧が適用されると、キャリーモンスター(carrying monster)はタマゴを壊し、適用された圧が低すぎれば、モンスターはタマゴを落とすだろう。定義された期間に渡って、指を通じて、制御された量の圧を維持する能力を測定するように、試験を設定した。こうした試験から獲得されたデータセットは、圧の振動および経時的な圧プロファイルを同定することを可能にする。試験は、タスクを実行するために必要とされる圧レベルに関して、較正を必要としうる。さらに、測定が、圧測定のためのセンサ固有飽和より低い状態で行われるように、試験を設定した。
【0126】
図2は、患者の日常活動およびキャリー・ザ・エッグ試験からの結果の相関を示す。高い日常活動を伴う患者は、キャリー・ザ・エッグ試験において優れた結果を示す一方、低い日常活動を伴う者、すなわち通常、SMAにひどく影響を受けている者は、キャリー・ザ・エッグ試験において弱い結果を示す。
【0127】
実施例3:コンピュータ実装試験、ピンチングおよびドローイングを用いた圧データセット獲得
指によって発揮される圧を測定するための別の試験、いわゆる「ピンチングまたはスクイーズ・ア・シェイプ試験」をモバイルフォン(iphone)上に実装した;図5Cを参照されたい。患者は、ディスプレイ上に示される形状、例えばトマトの模式図をつまむ(pinch)かまたは絞らなければ(squeeze)ならない。ディスプレイ表面のピンチング運動中に、形状の圧(ピンチングジェスチャー)の標準偏差として示される指の圧を測定するように試験を設定した。図3は、患者の日常活動およびスクイーズ・ア・シェイプ試験からの結果の相関を示す。高い日常活動を伴う患者は、前記試験において優れた結果を示す一方、低い日常活動を伴う者、すなわち通常、SMAにひどく影響を受けている者は、弱い結果を示すことが明らかである。
【0128】
コンピュータ実装「ドロー・ア・シェイプ試験」で、類似の結果を得た;図5Dおよび図4を参照されたい。患者はディスプレイ上に示される形状を描かなければならない。描画の運動量、描画圧および速度を測定するように、この試験を設定した。試験結果は、中程度および強い患者の能力に関する患者の相違を示す。弱い患者はすべての形状に関しては描画試験を実行できなかった。
【0129】
引用参考文献
【0130】
【化1】
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】