(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154008
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】複合樹脂組成物の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 7/72 20060101AFI20231011BHJP
B29B 7/82 20060101ALI20231011BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
B29B7/72
B29B7/82
B29K23:00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129972
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2019005329の分割
【原出願日】2019-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2018060512
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、環境省、平成29年度セルロースナノファイバー製品製造工程の低炭素化対策の立案事業委託業務 (セルロースナノファイバー製品製造工程におけるCO2排出削減に関する技術開発)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】今西 正義
(72)【発明者】
【氏名】浜辺 理史
(72)【発明者】
【氏名】名木野 俊文
(72)【発明者】
【氏名】黒宮 孝雄
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械的強度の高い複合樹脂組成物の製造装置を提供する。
【解決手段】複合樹脂組成物の製造装置は、繊維状フィラーと熱可塑性樹脂とを含む原材料を混練し、複合樹脂組成物を製造する製造装置であって、中心軸に対して回転する第1の回転体12aと、第1の回転体と平行に配置され、中心軸に対して回転することで第1の回転体と対となって原材料を混錬する混錬部を構成する第2の回転体12bと、第1の回転体の温度を制御する第1の温度制御部19aと、第2の回転体の温度を制御する第2の温度制御部19bと、第1の回転体の中心軸を挟み混錬部と対向する位置を冷却する第1の冷却部18aと、第2の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置を冷却する第2の冷却部18bと、を備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状フィラーと熱可塑性樹脂とを含む原材料を混練し、複合樹脂組成物を製造する製造装置であって、
中心軸に対して回転する第1の回転体と、
前記第1の回転体と平行に配置され、中心軸に対して回転することで前記第1の回転体と対となって前記原材料を混錬する混錬部を構成する第2の回転体と、
前記第1の回転体の温度を制御する第1の温度制御部と、
前記第2の回転体の温度を制御する第2の温度制御部と、
前記第1の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置を冷却する第1の冷却部と、
前記第2の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置を冷却する第2の冷却部と、
を備える、複合樹脂組成物の製造装置。
【請求項2】
前記第1の回転体と前記第2の回転体は、前記第1の回転体および前記第2の回転体の中心軸と平行な方向に沿って前記原材料を原材料供給部から複合樹脂排出部に移動させるスクリュー形状を有し、
前記第1の温度制御部は、前記第1の回転体の前記原材料供給部の温度を制御する第3の温度制御部と、前記第1の回転体の前記複合樹脂排出部の温度を制御する第4の温度制御部と、を有し、
前記第2の温度制御部は、前記第2の回転体の前記原材料供給部の温度を制御する第5の温度制御部と、前記第2の回転体の前記複合樹脂排出部の温度を制御する第6の温度制御部と、を有する、
請求項1記載の複合樹脂組成物の製造装置。
【請求項3】
前記第1の回転体と前記第2の回転体は、それぞれ回転体の表面に凸部と凹部を有する、
請求項1記載の複合樹脂組成物の製造装置。
【請求項4】
前記凸部の頂点の中心軸からの距離と前記凹部の底面の中心軸からの距離の差が、前記第1の回転体および前記第2の回転体のそれぞれの直径に対して0.05%以上14%以下である、請求項3記載の複合樹脂組成物の製造装置。
【請求項5】
繊維状フィラーと熱可塑性樹脂とを含む原材料を混練し、複合樹脂組成物を製造する製造方法であって、
第1の回転体の温度と、前記第1の回転体と平行に配置され前記第1の回転体と対となって前記原材料を混錬する混錬部を構成する第2の回転体の温度とを制御し、
前記第1の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置と前記第2の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置とを冷却し、
前記第1の回転体と前記第2の回転体とを回転し、
前記混錬部によって前記原材料を混錬する、複合樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記混錬部との温度差が5℃~80℃となるように、前記第1の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置と前記第2の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置とを冷却する、請求項5記載の複合樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記混錬部に対応する位置において、前記第1の回転体と前記第2の回転体との温度差が5℃以上100℃以下となるように、前記第1の回転体の温度と前記第2の回転体の温度とを制御する、請求項5記載の複合樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記第1の回転体と前記第2の回転体は、前記第1の回転体および前記第2の回転体の中心軸と平行な方向に沿って前記原材料を原材料投入部から複合樹脂排出部へ移動させるスクリュー形状を有し、
前記混錬部に対応する位置において、前記原材料投入部の温度が前記複合樹脂排出部の温度よりも5℃以上100℃以下の範囲で高くなるように、第1の回転体の温度と前記第2の回転体の温度とを制御する、請求項5記載の複合樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
回転速度差が5%以上80%以下となるように、前記第1の回転体と前記第2の回転体とを回転する、請求項5から8のいずれか1項記載の複合樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合樹脂組成物の製造装置及び製造方法に関するものであり、特に機械的特性に優れた繊維状フィラー含有複合樹脂組成物の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等のいわゆる「汎用プラスチック」は、比較的安価であり、金属、又はセラミックスに比べて重さが数分の一と軽量であり、成形等の加工が容易であるという特徴を有する。そのため、汎用プラスチックは、袋、各種包装、各種容器、シート類等の多様な生活用品の材料として、また、自動車部品、電気部品等の工業部品、及び日用品、雑貨用品等に利用されている。
【0003】
しかしながら、汎用プラスチックは、機械的強度が不十分であること等の欠点を有している。そのため、汎用プラスチックは、自動車等の機械製品、及び電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品に用いられる材料に対して要求される十分な特性を有しておらず、その適用範囲が制限されているのが現状である。
【0004】
一方、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、フッ素樹脂等のいわゆる「エンジニアリングプラスチック」は、機械的特性に優れており、自動車等の機械製品、及び電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品に用いられている。
しかしながら、エンジニアプラスチックは、高価であり、モノマーリサイクルが難しく、環境負荷が大きいといった課題を有している。
【0005】
そこで、汎用プラスチックの材料特性(機械的強度等)を大幅に改善することが要望されている。汎用プラスチックの材料特性を改善する方法として、2種類以上の樹脂またはフィラーなどの添加剤を配合して複合樹脂を製造する技術が知られている。特に機械的強度を向上させることを目的に、繊維状フィラーである天然繊維やガラス繊維、炭素繊維などが使用されている。中でもセルロースなどの有機繊維状フィラーは、安価であり、かつ廃棄時の環境性にも優れていることから、強化用繊維として近年注目されている。
【0006】
しかしながら、繊維状フィラーの添加による機械的強度向上効果を十分に機能させるためには、繊維状フィラーの均一な分散が必要とされる。繊維状フィラーは、フィラー同士が凝集しやすく、均一に分散させることが困難である。特にサイズの大きい凝集物が存在する場合、凝集物を起点にクラックが生じ、割れやすくなるため、衝撃強度が低下する。また、凝集することにより、繊維状フィラーによる弾性率向上効果も十分に発揮されない。そのため、複合樹脂の製造において繊維状フィラーを均一に分散させることが重要である。混錬により、原材料の分散を行う製造方法としては、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、混練時に樹脂材料が一定の温度で加熱され続けることにより、高温が維持され、複合樹脂の粘度が低下し、せん断が強くかからず、原材料の分散性が低いため、複合樹脂の強度が低下するという課題が存在する。また、混練されている間、原材料が高温状態に維持されることにより、原材料が劣化する(例えば、分子量の低下、着色など)という課題も存在する。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、機械的強度の高い複合樹脂組成物の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る複合樹脂組成物の製造装置は、繊維状フィラーと熱可塑性樹脂とを含む原材料を混練し、複合樹脂組成物を製造する製造装置であって、
中心軸に対して回転する第1の回転体と、
前記第1の回転体と平行に配置され、中心軸に対して回転することで前記第1の回転体と対となって前記原材料を混錬する混錬部を構成する第2の回転体と、
前記第1の回転体の温度を制御する第1の温度制御部と、
前記第2の回転体の温度を制御する第2の温度制御部と、
前記第1の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置を冷却する第1の冷却部と、
前記第2の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置を冷却する第2の冷却部と、
を備える。
【0011】
本発明に係る複合樹脂組成物の製造方法は、繊維状フィラーと熱可塑性樹脂とを含む原材料を混練し、複合樹脂組成物を製造する製造方法であって、
第1の回転体の温度と、前記第1の回転体と平行に配置され前記第1の回転体と対となって前記原材料を混錬する混錬部を構成する第2の回転体の温度とを制御し、
前記第1の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置と前記第2の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置とを冷却し、
前記第1の回転体と前記第2の回転体とを回転し、
前記混錬部によって前記原材料を混錬する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る複合樹脂組成物の製造装置及び製造方法によれば、常時加熱し、混練する従来方法に比べて原材料に強くせん断力をかけることができ、樹脂中にフィラーなどの添加剤を均一に分散させることができる。そのため、フィラーなどの添加剤の効果が十分に発揮された機械的強度などが高い複合樹脂組成物を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】実施の形態1に係る複合樹脂組成物の製造装置の構成を示す概略平面図である。
【
図2A】実施の形態1に係る別例の製造装置(二軸混練機)の模式側面図である。
【
図2B】
図2Aの製造装置について、バレルを省略した混練部の上面図(平面図)である。
【
図3A】実施の形態1に係る混練方法において、加熱と冷却が周期的に起こる構造を有する混練装置を用いて混練した場合の温度の経時変化の図である。
【
図3B】実施の形態1に係る混練方法において、加熱と冷却が周期的に起こる構造を有する混練装置を用いて混練した場合の粘度の経時変化を示した図である。
【
図3C】常時加熱が行われる混練装置を用いた従来の方法で混練した場合の温度の経時変化を示した図である。
【
図3D】常時加熱が行われる混練装置を用いた従来の方法で混練した場合の粘度の経時変化を示した図である。
【
図4A】実施の形態1における混練部の断面図において、2つの回転体の対向部分を局所的に拡大した拡大模式図である。
【
図4B】樹脂の対流による繊維状フィラーの移動を示す拡大模式図である。
【
図4C】混練前の繊維状フィラーの状態を示す拡大模式図である。
【
図4D】混練中の繊維状フィラーの状態を示す拡大模式図である。
【
図4E】混練後の繊維状フィラーの状態を示す拡大模式図である。
【
図5】各実施例1~4および各比較例1~12における測定結果をまとめた表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の態様に係る複合樹脂組成物の製造装置は、繊維状フィラーと熱可塑性樹脂とを含む原材料を混練し、複合樹脂組成物を製造する製造装置であって、
中心軸に対して回転する第1の回転体と、
前記第1の回転体と平行に配置され、中心軸に対して回転することで前記第1の回転体と対となって前記原材料を混錬する混錬部を構成する第2の回転体と、
前記第1の回転体の温度を制御する第1の温度制御部と、
前記第2の回転体の温度を制御する第2の温度制御部と、
前記第1の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置を冷却する第1の冷却部と、
前記第2の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置を冷却する第2の冷却部と、
を備える。
【0015】
第2の態様に係る複合樹脂組成物の製造装置は、上記第1の態様において、前記第1の回転体と前記第2の回転体は、前記第1の回転体および前記第2の回転体の中心軸と平行な方向に沿って前記原材料を原材料供給部から複合樹脂排出部に移動させるスクリュー形状を有し、
前記第1の温度制御部は、前記第1の回転体の前記原材料供給部の温度を制御する第3の温度制御部と、前記第1の回転体の前記複合樹脂排出部の温度を制御する第4の温度制御部と、を有し、
前記第2の温度制御部は、前記第2の回転体の前記原材料供給部の温度を制御する第5の温度制御部と、前記第2の回転体の前記複合樹脂排出部の温度を制御する第6の温度制御部と、を有してもよい。
【0016】
第3の態様に係る複合樹脂組成物の製造装置は、上記第1の態様において、前記第1の回転体と前記第2の回転体は、それぞれ回転体の表面に凸部と凹部を有してもよい。
【0017】
第4の態様に係る複合樹脂組成物の製造装置は、上記第3の態様において、前記凸部の頂点の中心軸からの距離と前記凹部の底面の中心軸からの距離の差が、前記第1の回転体および前記第2の回転体のそれぞれの直径に対して0.05%以上14%以下であってもよい。
【0018】
第5の態様に係る複合樹脂組成物の製造方法は、繊維状フィラーと熱可塑性樹脂とを含む原材料を混練し、複合樹脂組成物を製造する製造方法であって、
第1の回転体の温度と、前記第1の回転体と平行に配置され前記第1の回転体と対となって前記原材料を混錬する混錬部を構成する第2の回転体の温度とを制御し、
前記第1の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置と前記第2の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置とを冷却し、
前記第1の回転体と前記第2の回転体とを回転し、
前記混錬部によって前記原材料を混錬する。
【0019】
第6の態様に係る複合樹脂組成物の製造方法は、上記第5の態様において、前記混錬部との温度差が5℃~80℃となるように、前記第1の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置と前記第2の回転体の中心軸を挟み前記混錬部と対向する位置とを冷却してもよい。
【0020】
第7の態様に係る複合樹脂組成物の製造方法は、上記第5の態様において、前記混錬部に対応する位置において、前記第1の回転体と前記第2の回転体との温度差が5℃以上100℃以下となるように、前記第1の回転体の温度と前記第2の回転体の温度とを制御してもよい。
【0021】
第8の態様に係る複合樹脂組成物の製造方法は、上記第5の態様において、前記第1の回転体と前記第2の回転体は、前記第1の回転体および前記第2の回転体の中心軸と平行な方向に沿って前記原材料を原材料投入部から複合樹脂排出部へ移動させるスクリュー形状を有し、
前記混錬部に対応する位置において、前記原材料投入部の温度が前記複合樹脂排出部の温度よりも5℃以上100℃以下の範囲で高くなるように、第1の回転体の温度と前記第2の回転体の温度とを制御してもよい。
【0022】
第9の態様に係る複合樹脂組成物の製造方法は、上記第5から第8のいずれかの態様において、回転速度差が5%以上80%以下となるように、前記第1の回転体と前記第2の回転体とを回転してもよい。
【0023】
以下、実施の形態に係る複合樹脂組成物の製造装置及び製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、同じ構成部分には同じ符号を付して、適宜説明を省略している。
【0024】
(実施の形態1)
図1Aは、実施の形態1に係る複合樹脂組成物の製造装置(ロール混練機)10の構成を示す概略平面図である。
図1Bは、
図1Aのa-a方向から見た概略断面図である。
図2Aは、実施の形態1に係る別例の複合樹脂組成物の製造装置(二軸混練機)10aの側面図である。
図2Bは、
図2Aの製造装置について、バレルを省略した混練部20の上面図(平面図)である。
図2Cは、
図2Aのb-b方向から見た断面図である。ここで、混練部20とは原材料の分散・混合が行われる部分を指す。なお、便宜上、図面において、製造装置10,10aを構成する回転体12、12a,12bの中心軸方向をx方向とし、鉛直上方をz方向とし、2本の回転体12a、12bの配置方向を-y方向としている。
【0025】
実施の形態1における製造装置10、10aとしては、
図1A及び
図1Bに示す二軸混練機、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機、
図2A乃至
図2Cに示すロール混練機等を用いることができる。その中でも、二軸混練機又はロール混錬機を使用するのがより好ましい。以降の文脈において、二軸混練機の回転体はスクリュー、ロール混練機の回転体はロールとして扱う。なお、製造装置10、10aは、混練手段として回転体を有していればよく、上記の装置に限定されるものではない。
【0026】
図1A及び
図1Bに示す製造装置10は、ロール混練機である。
図1Aに示すように、この製造装置10は、2本のロール状の回転体12a、12bが対向して設けられている。具体的には、中心軸2aに対して回転する回転体12aと、回転体12aと平行に配置され、中心軸2bに対して回転する回転体12bとを備える。2本の回転体12a、12bが対となって原材料を混錬する混錬部20を構成する。
【0027】
また、この複合樹脂組成物の製造装置10は、回転体12aの中心軸2aを挟み混錬部20と対向する位置を冷却する第1の冷却部18aと、回転体12bの中心軸2bを挟み混錬部20と対向する位置を冷却する第2の冷却部18bと、を備える。また、回転体12aの温度を制御する第1の温度制御部19aと、回転体12bの温度を制御する第2の温度制御部19bと、を備える。さらに、第1の温度制御部19aは、回転体12aの上流側の温度を制御する第3の温度制御部29aと、下流側の温度を制御する第4の温度制御部29bと、を備えてもよい。また、第2の温度制御部19bは、回転体12bの上流側の温度を制御する第5の温度制御部29cと、下流側の温度を制御する第6の温度制御部29dと、を備えてもよい。
【0028】
図2A乃至
図2Cに示す製造装置10aは、二軸混練機である。
図2Aに示すように、この製造装置10aは、原材料を投入するホッパー14と、ホッパー14から投入された原材料を製造装置10aの混練部に導く原材料供給部16と、上記混練部を構成する2本の回転体12と、回転体12を覆うバレル11と、を備える。
【0029】
図1A、
図1B及び
図2Bに示すように、製造装置10、10aの混練部20は、互いに平行に配置された2本の回転体12a、12bの間に構成される。各回転体12a、12bは、x方向に延在する中心軸2a、2bと、中心軸2a、2bの周囲に設けられた混練ディスク3a、3bを備える。さらに、回転体12a、12bは、混練ディスクではなく回転体12a、12b自体の表面に微細な凸部13A及び凹部13Bと、を備える。中心軸2a、2bは、図示しないモータにより回転される。なお、2本の回転体12a、12bは、同方向回転でも異方向回転でもよい。また、混練ディスク3a、3bは、中心軸方向に沿ったらせん状のスクリューであってもよい。これによって回転体12a、12bの回転に伴って回転軸方向(x方向)に原材料が混練されながら搬送される。この製造装置10aでは、y方向に互いに平行に配置された2本の回転体12a,12bの表面の凸部13A及び凹部13Bは、混練部20を介して対向する。また、
図2Bに示すように、2本の回転体12a、12bの回転軸方向(x方向)において、回転体12a、12bに原材料が供給される部分を原材料供給部16と定義する。また、回転体12a、12bの複合樹脂組成物が排出される部分を複合樹脂排出部17と定義する。
【0030】
この複合樹脂組成物の製造装置10aは、回転体12aの中心軸2aを挟み混錬部20と対向する位置を冷却する第1の冷却部18aと、回転体12bの中心軸2bを挟み混錬部20と対向する位置を冷却する第2の冷却部18bと、を備える。また、
図2Bには図示していないが、
図1Aと同様に回転体12aの温度を制御する第1の温度制御部と、回転体12bの温度を制御する第2の温度制御部と、を備える。
【0031】
本実施の形態1においては、2本の前記回転体12a、12bの温度は、原材料の供給方向から排出方向へと進行するにしたがって減少させてもよい。2本の回転体12a、12bは、加熱部を有してもよい。また、繊維状フィラーをはじめとした添加剤が均一に分散されるために、混練時の樹脂は溶融状態であることが好ましい。そのため、混練前半部の原材料供給部16では、固体状態にある樹脂を溶融状態へと迅速に状態変化させるために、樹脂の軟化温度(融点)よりも高い温度であることが必要とされる。樹脂を溶融状態にすることで、樹脂が流動性を持ち、溶媒として機能し、添加剤の均一な分散が進む。樹脂が溶融状態にならず固体状態のままであると、溶媒に流動性がないため、原材料の分散が進まない。そのため、混練部20の中でも原材料供給部16が最も高温であることが必要とされる。それに対して、混練後半部の複合樹脂排出部17では、樹脂の粘度が高く、強いせん断応力がかけられる方が望ましいので、原材料供給部16に比べて温度が低いのが好ましい。また、複合樹脂排出部17は、スムーズに複合樹脂組成物の排出を行うためにも、原材料供給部16に比べて温度が低いことが好ましい。温度が高すぎる場合、回転体12a、12bに複合樹脂組成物がはりつくため、スムーズな排出ができない。温度が低すぎる場合、複合樹脂組成物が前記回転体12a,12b表面に固着してしまうため、排出ができない。そのため、回転体12a、12bの最も高温である原材料供給部16の温度に比べて、最も低温である複合樹脂排出部17の温度は、5℃以上100℃以下の温度差を有することが好ましい。さらに原料によっては、原材料供給部16と複合樹脂排出部17との温度差は、20℃以上100℃以下であることがより好ましい。
【0032】
また、本実施の形態1において、前記2本の回転体12a、12bの間には、温度差があってもよい。例えば、回転体12aの温度が回転体12bの温度に比べて高い場合、混練時に回転体12bは冷却部として機能し、せん断発熱による樹脂の温度上昇を防ぐことができる。例えば、
図1Aに示すように、第1の温度制御部19aと第2の温度制御部19bとによって、回転体12aの温度を回転体12bの温度より高くするようにしてもよい。なお、以降の文脈において、回転体12aは回転体12bよりも高温であるものとして扱う。また、前記回転体12a、12b間で温度差が存在することにより、樹脂中で対流が生じ、原材料の分散と繊維状フィラーの解繊が進む。回転体の温度差を大きくするには、回転体12aの温度を極端に高くする、回転体12bの温度を極端に低くする、またはその両方を行う必要がある。一方で、回転体12a、12b間の温度差が極端に大きい場合は問題が生じる場合がある。温度を極端に高くした場合、原材料が高温状態に維持されるため、原材料の劣化(分子量の低下、着色など)が生じる。逆に温度を極端に低くした場合、回転体12bの表面で樹脂の固着が生じて上手く混練を行うことができなくなる。そのため、具体的には、2本の回転体12aと回転体12bとの温度差が5℃以上100℃以下であることが好ましく、さらに原料によっては温度差が5℃以上90℃以下であることがより好ましい。
【0033】
したがって、製造装置10,10aには、2本の回転体12a、12bの中心軸方向に第3の温度制御部29a、第4の温度制御部29b、第5の温度制御部29c、第6の温度制御部29dを有してもよい。
【0034】
図3A乃至
図3Dは、複合樹脂組成物の混練時の温度と粘度の経時変化を示した図である。
図3Aは、実施の形態1に係る混練方法において、加熱と冷却が周期的に起こる構造を有する混練装置を用いて混練した場合の温度の経時変化を示した図である。
図3Bは、実施の形態1に係る混練方法において、加熱と冷却が周期的に起こる構造を有する混練装置を用いて混練した場合の粘度の経時変化を示した図である。
図3Cは、常時加熱が行われる混練装置を用いた従来の方法で混練した場合の温度の経時変化を示した図である。
図3Dは、常時加熱が行われる混練装置を用いた従来の方法で混練した場合の粘度の経時変化を示した図である。
【0035】
本実施の形態1においては、製造装置10aの混練部とそれ以外の箇所の樹脂の温度差があってもよい。
図3A及び
図3Bに示すように、実施の形態1における複合樹脂組成物の製造方法では、混練時において冷却と加熱が周期的に起こるため、冷却部において複合樹脂組成物の温度が低下し、粘度が上昇する。冷却により、複合樹脂組成物が高粘度を有することにより、混練部20において混練される際に複合樹脂組成物に大きなせん断応力がかかり、原材料の分散と繊維状フィラーの解繊が進行する。したがって、本実施の形態の複合樹脂組成物の製造方法では、原材料が均一に分散した機械的強度の高い複合樹脂組成物を作製することができる。温度差を大きくするには、一方の回転体12aの温度を極端に高くする、又は、他方の回転体12bの温度を極端に低くする、またはその両方を行う必要がある。一方で、温度差が極端に大きい場合は問題が生じる場合がある。回転体12aの温度を極端に高くした場合、高温により原材料が劣化(分子量の低下、着色など)し、粘度の低下によって弱いせん断応力しかかからず、原材料が均一に分散されない場合がある。回転体12bの温度を極端に低くした場合、温度を低くしすぎたため、回転体12bで固体状態にされた樹脂を加熱部で溶融状態に変化させることが出来ず、結果として混練ではなく、固体状態での粉砕が行われることになり、複合樹脂組成物の作製ができなくなる。そのため、具体的には、混練部における回転体12aと回転体12bの樹脂の温度差が5℃以上80℃以下であることが好ましく、さらに原料によっては10℃以上80℃以下であることがより好ましい。
【0036】
それに対して、
図3Bに示したように、従来の製造方法では、常時加熱が行われるため、複合樹脂組成物の温度が高温で維持され、粘度が低下することにより、せん断応力が十分にかからず、原材料が均一に分散せず、凝集物として存在し、機械的強度などの特性が低い複合樹脂組成物が作製される。
【0037】
また、原材料の劣化(分子量の低下、着色など)は瞬間的に高温になることよりも、高温が長時間維持されることにより進行する。そのため、冷却と加熱が回転軸の周囲の回転について周期的に起こる本実施の形態1に係る製造方法を用いることで原材料の劣化も抑制することが可能である。
【0038】
具体的な混練装置の構造としては、例えば、二軸混練機のバレルの外周部に冷却水を通す管をつけた二軸混練機とロールに局所的に風が当たるように送風機を取り付けたロール混練機が挙げられる。上記バレルの外周部に設けられた冷却水を通す管及び局所的に風を当てる送風機は、上述の冷却部に対応する。
【0039】
図4A乃至
図4Eは、
図1B、
図2Cの混練部20の断面図において、2つの回転体12a、12bの対向部分22を局所的に拡大した図である。
図4Aは、微細な凹凸13A、13Bを有する回転体12a、12bの混練部20を挟んで互いに対向する表面の構成を示す拡大模式図である。
図4Bは、樹脂24の対流による繊維状フィラー26の移動を示す拡大模式図である。
図4C乃至
図4Eは、混練の際の繊維状フィラー26の状態の経時変化を示しており、
図4Cは、混練前の繊維状フィラー26の状態を示す拡大模式図である。
図4Dは、混練中の繊維状フィラー26の状態を示す拡大模式図である。
図4Eは、混練後の繊維状フィラー26の状態を示す拡大模式図である。
【0040】
図4A乃至
図4Eに示すように、回転体12a、12bは、表面に微細な凹凸13A、13Bを有することが好ましい。前記凹凸13A、13Bの存在により、回転体12a、12bが回転する際に回転体12a、12b間のクリアランスが連続的に変化する。これにより、繊維状フィラー26に常時ほぼ一定の強さのせん断応力がかからず、クリアランスが広い場合にはせん断応力が小さくなり、クリアランスが狭い場合にはせん断応力が大きくなる。クリアランスが狭い状態になると、せん断応力により繊維状フィラー26の先端が解繊されるが、繊維状フィラーはせん断応力で押さえつけられた状態となり、それ以上解繊が進みにくい。しかし、クリアランスが狭い状態から広い状態に変化する際に、せん断応力が緩和されることで解繊された先端部が広がり、クリアランスが広い状態から狭い状態に変化する際に強いせん断応力がかかり、先端部の亀裂が広がっていく。前記クリアランスの広狭の変化の繰り返しにより解繊が効果的に進行する。また、微細な凹凸を有することにより対流が効果的に生じ、原材料の分散も進行する。一方で、凹凸を有する回転体を用いる場合、クリアランスが広すぎると十分にせん断応力がかからなくなり、解繊、分散が進まなくなる。そのため、具体的には、回転体表面の凹凸の適正な範囲をシミュレーションにより算出している。例えば、凸部13Aの頂点と凹部13Bの底面との距離、つまり、凸部13Aの頂点から最も離れた凹部13Bの点との距離を凹部の深さと定義したとき、回転体表面に回転体の直径に対して0.05%以上14%以下の深さを持つ凹部を有することが好ましい。さらに、原料によっては0.1%以上14%以下の深さを持つ凹部を有することが好ましい。
【0041】
それに対して、表面に凹凸を有さない回転体を使用した場合、微視的にはほぼ一定の強さの圧力がかかり続けるために、繊維状フィラーが圧力により一定の形状を維持しやすく、解繊が進行しにくい。
【0042】
本実施の形態1において、2本の前記回転体12a、12bが速度差を有することが好ましい。その際、回転体12bよりも高温である回転体12aが、回転体12bよりも高速であることが望ましい。回転体12aが回転体12bよりも高温であることにより、回転体12b側に複合樹脂組成物が付着し続けるため、複合樹脂組成物の排出、回収が容易になる。また、2本の回転体12a、12bが速度差を有することで、回転体12a,12b間の向かい合う面が常時変化し、最狭部分のクリアランスが変化するため、原材料の分散と繊維系フィラーの解繊とが効率的に進行する。具体的には、2本の回転体12a、12bの速度差が5%以上80%以下であることが好ましく、2本の回転体12a、12bの速度差が30%以上80%以下であることがより好ましい。
【0043】
実施の形態1における原材料は、少なくとも熱可塑性樹脂と、繊維状フィラーと、からなるものである。なお、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとの親和性が低い場合には、分散剤を添加する場合がある。
【0044】
実施の形態1における熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとの重量比率としては、95%:5%から10%:90%の範囲内であることが好ましい。繊維状フィラーの重量比率が5%よりも小さい場合、フィラーの量が少ないため、繊維補強効果による複合樹脂組成物の機械的特性の向上が見込めない。繊維状フィラーの重量比率が90%よりも大きい場合、樹脂の量が少ないため、複合樹脂組成物を形成することができない。そのため、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーの重量比率としては、前記範囲内であることが好ましい。
【0045】
実施の形態1における樹脂としては、加熱と冷却が繰り返されても良好な性能を確保するために、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂を含む)、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂またはその誘導体、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6-キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが挙げられる。上記の樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。なお、樹脂は熱可塑性を有していれば上記の材料に限定されるものではない。
【0046】
これらの熱可塑性樹脂のうち、樹脂は、比較的低融点であるオレフィン系樹脂であることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、オレフィン系単量体の単独重合体の他、オレフィン系単量体の共重合体や、オレフィン系単量体と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。オレフィン系単量体としては、例えば、鎖状オレフィン類(エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどのα-C2-20オレフィンなど)、環状オレフィン類などが挙げられる。これらのオレフィン系単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。上記オレフィン系単量体のうち、エチレン、プロピレンなどの鎖状オレフィン類が好ましい。他の共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系単量体;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその無水物;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);ノルボルネン、シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;およびブタジエン、イソプレンなどのジエン類などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度または線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1などの三元共重合体などの鎖状オレフィン類(特にα-C2-4オレフィン)の共重合体などが挙げられる。
【0047】
実施の形態1における繊維状フィラーとしては、機械的特性の向上などを目的として使用しているため、繊維状フィラーは樹脂よりも弾性率が高いことが好ましい。具体的にはカーボンファイバー(炭素繊維)、カーボンナノチューブ、パルプ、セルロース、セルロースナノファイバー、リグノセルロース、リグノセルロースナノファイバー、塩基性硫酸マグネシウム繊維(マグネシウムオキシサルフェート繊維)、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、炭化ケイ素繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、各種金属繊維、綿、絹、羊毛あるいは麻等の天然繊維、ジュート繊維、レーヨンあるいはキュプラなどの再生繊維、アセテート、プロミックスなどの半合成繊維、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミド、ポリオレフィンなどの合成繊維、さらにはそれらの表面及び末端に化学修飾した変性繊維などが挙げられる。またさらにこれらの中で、入手性、弾性率の高さ、線膨張係数の低さの観点から、カーボン類、セルロース類が特に好ましい。さらに環境性の観点からはセルロース類の天然繊維が好ましい。
【0048】
実施の形態1における分散剤としては、各種のチタネート系カップリング剤、シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記シランカップリング剤は、不飽和炭化水素系やエポキシ系のものが好ましい。分散剤の表面は、熱硬化性もしくは熱可塑性のポリマー成分で処理され変性処理されても問題ない。本発明の実施の形態における複合樹脂成形体の分散剤の含有量は、0.01質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、10質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上、5質量%以下であることがさらに好ましい。分散剤の含有量が、0.01質量%未満であると、分散不良が発生する場合がある。一方で、分散剤の含有量が20質量%を超えると、複合樹脂成形体の強度が低下する場合がある。分散剤は、樹脂と繊維状フィラーの組み合わせにより適切に選択され、分散剤が必要ない組み合わせの場合は添加しなくてもよい。
【0049】
なお、実施の形態1において、製造装置としてロール混練機(
図1A及び
図1B)と二軸混練機(
図2A乃至
図2C)とを用いた例を説明したが、二軸混練機及びロール混練機だけでなく、他の混練機を使用してもよい。
【実施例0050】
(実施例1)
以下の製造方法によってセルロース繊維含有複合樹脂成形体を製造した。前記したように、製造装置にはニーダー、バンバリーミキサー、押出機、ロール混練機などを用いることができるが、実施例では二軸混練機を使用している。
【0051】
熱可塑性樹脂として、ブロックポリマーであるポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製 商品名:BC03B)と、繊維状フィラーとして針葉樹パルプ(三菱製紙株式会社製 商品名:NBKP Celgar)と、分散剤として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成工業株式会社製 商品名:ユーメックス)とを重量比で80:15:5となるよう秤量し、ドライブレンドした。
【0052】
ドライブレンドした原材料を重量フィーダーにより、2kg/hで混練装置に供給した。前記したように、混練装置には、バレル外部に冷却水を通す管を取り付け、加熱と冷却が周期的に起こる構造を有するように改良した二軸混練機(株式会社JSW TEX30a)を使用した。スクリューは、中せん断タイプの仕様とした。二軸混練機から排出された複合樹脂組成物はホットカットし、セルロース繊維含有複合樹脂ペレットを作製した。
【0053】
作製したセルロース繊維含有複合樹脂ペレットを用いて射出成形機(日本製鋼所製 180AD)により複合樹脂成形体の試験片を作製した。試験片の作製条件は、樹脂温度190℃、金型温度60℃、射出速度60mm/s、保圧80Paとした。ペレットは、ホッパーを介して成形機のスクリューへ噛み込んでいくが、その際の侵入性を時間当たりのペレット減少量で測定しており、一定であることを確認した。試験片の形状は、下記に述べる評価項目によって変更し、弾性率測定用に1号サイズのダンベルを作製した。また、落下衝撃試験用に60mm角、厚さ1.2mmの平板を作製した。得られたセルロース繊維含有複合樹脂成形体試験片を以下の方法により評価を行った。
【0054】
[複合樹脂成形体の評価項目]
(解繊されていない部位のアスペクト比、解繊部位の長さ割合)
得られたセルロース繊維含有複合樹脂ペレットをキシレン溶媒に浸漬して、ポリプロピレンを溶解させ、残ったパルプ繊維についてSEMにより繊維の形状を観察した。代表的な繊維を約10本測定した結果、繊維径は2~10μmの範囲であり、繊維長は200~1000μmの範囲であった。また、解繊されていない部位のアスペクト比(以下、単にアスペクト比と称することがある。)は、約100~200であった。繊維長方向の端部には解繊部位がみられ、解繊部位は全体の繊維長の約30~40%であった。
【0055】
(繊維状フィラーの比表面積)
得られたセルロース繊維含有複合樹脂ペレットをキシレン溶媒に浸漬して、ポリプロピレンを溶解させ、残ったセルロース繊維について比表面積の測定を実施した。原材料のときに比べて比表面積が150%未満であったものを×とし、150%以上200%未満であったものを△とし、200%以上であったものを○とした。
実施例1の複合樹脂成形体では、同セルロース繊維の比表面積は210%で、その評価は〇であった。
【0056】
(複合樹脂成形体の弾性率)
得られた1号ダンベル形状の試験片を用いて、引張試験を実施した。ここで、弾性率の評価方法として、その数値が1.8GPa未満のものを×とし、1.8GPa以上2.0GPa未満のものを△とし、2.0GPa以上のものを〇とした。
実施例1の複合樹脂成形体では、同試験片の弾性率は2.3GPaで、その評価は〇であった。
【0057】
(複合樹脂成形体の落下衝撃強度)
得られた平板形状の試験片を用いて、落下衝撃試験を実施した。具体的には、重さ250gの重錐を高さ80cmから試験片の板面に向けて落下させ、ヒビが入るかどうかを確認した。この評価方法として、ヒビが確認されなかったものを〇とし、表面にのみヒビが確認され、かつ、そのヒビの長さが10mm未満であったものを△とし、貫通したヒビが確認された、または、ヒビの長さが10mm以上であったものを×とした。
実施例1の複合樹脂成形体では、同試験片は、ヒビが確認されず、その評価は〇であった。
【0058】
(繊維状フィラーの凝集度合い)
得られた平板形状の試験片を用いて、光学顕微鏡により繊維状フィラーの凝集物の数とサイズを観察した。ここで、凝集度合いの評価方法として10mm四方の領域に1000μm以上のサイズの凝集物が10個以上のものを×とし、3個以上10個未満のものを△とし、3個未満のものを○とした。
実施例1の複合樹脂成形体では、同試験片の1000μm凝集物の数は1個で、その評価は○であった。
【0059】
(分子量)
セルロース繊維含有複合樹脂ペレットの分子量の測定を実施した。複合樹脂ペレットの分子量分布が原材料に比べて20%より大きければ×とし、20%以下であれば○とした。
実施例1の複合樹脂成形体では、同ペレットは、その評価が○であった。
【0060】
(複合樹脂組成物の着色性)
セルロース繊維含有複合樹脂ペレットの着色性試験を実施した。複合樹脂ペレットの黄色度(YI値)が原材料に比べて増加していれば×とし、増加していなければ○とした。
実施例1の複合樹脂成形体では、同ペレットは、その評価が○であった。
【0061】
(実施例2)
実施例2では、原材料供給部と複合樹脂排出部の温度差を80℃に変更し、それ以外の条件は実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0062】
(実施例3)
実施例3では、スクリュー間の温度差を70℃に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0063】
(実施例4)
実施例4では、冷却水が流れる速度を2倍に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0064】
(比較例1)
比較例1では、原材料供給部から複合樹脂排出部までの温度を一定に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0065】
(比較例2)
比較例2では、原材料供給部と複合樹脂排出部の温度差が120度になるように変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0066】
(比較例3)
比較例3では、2本のスクリューにかかる温度が同じになるように変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0067】
(比較例4)
比較例4では、2本のスクリューにかかる温度差が140℃になるように変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0068】
(比較例5)
比較例5では、混練装置を加熱と冷却が周期的に起こるように改良していない二軸混練機(株式会社JSW TEX30a)に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0069】
(比較例6)
比較例6では、加熱部と冷却部の温度差が135℃になるように変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0070】
(比較例7)
比較例7では、表面に凹凸のないスクリューに変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0071】
(比較例8)
比較例8では、表面にスクリューの長径に対して20%の大きさの凹凸を有するスクリューに変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0072】
(比較例9)
比較例9では、2本のスクリューの速度が同じになるように変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0073】
(比較例10)
比較例10では、スクリュー間の速度差が100%になるように変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0074】
(比較例11)
比較例11では、ポリプロピレン、針葉樹パルプ、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの重量比を98.8:1:0.2に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0075】
(比較例12)
比較例12では、ポリプロピレン、針葉樹パルプ、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの重量比を4:95:1に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件については実施例1と同様にセルロース繊維含有複合樹脂ペレット作製した。
【0076】
各実施例1~4および各比較例1~12における測定結果を
図5の表に示す。
【0077】
図5の表から明らかなように、原材料供給部と複合樹脂排出部との温度差を80℃に変更した実施例2では、実施例に1に比べて複合樹脂排出部で大きなせん断応力がかかるため、解繊部位の長さ割合が40-50%となり、1000μm凝集物の数は0個であった。そのため、90cmで衝撃試験を行ってもヒビが確認されなかった。2本のスクリュー間の温度差を70℃に変更した実施例3及び2本のスクリューにかかる温度差を50℃になるように変更した実施例4でも同様の結果が得られた。以上より、実施例2、3および4は全ての試験で実施例1と同等以上の結果となった。
【0078】
比較例1では、原材料供給部から複合樹脂排出部までの温度を一定に変更した。この比較例1では、実施例1に比べて複合樹脂排出部での粘度が低く、せん断応力が弱いため、解繊部位の長さ割合が10-20%となった。そのため、耐衝撃性が低下し、落下衝撃試験にて割れる結果になった。
【0079】
比較例2では、原材料供給部と複合樹脂排出部との温度差が120℃になるように変更した。この比較例2では、複合樹脂排出部の温度を低くしすぎたため、スクリューに樹脂が固着し、複合樹脂組成物の排出が出来なかった。実験を行うために複合樹脂排出部の温度を複合樹脂組成物の形成できる最低限の温度に設定した場合、温度差が120℃になるように原材料供給部の温度を上げる必要があった。この場合には、逆に温度が高すぎたため、樹脂の粘度が著しく減少し、複合樹脂組成物の作製ができなかった。
【0080】
比較例3では、2本のスクリューにかかる温度が同じになるように変更した。この比較例3では、解繊部位の長さ割合が10-20%となった。そのため、耐衝撃性が低下し、落下衝撃試験にて割れる結果になった。
【0081】
比較例4では、2本のスクリューにかかる温度差が140℃になるように変更した。この比較例4では、低温側のスクリューの温度を低くしすぎたため、低温側のスクリューに樹脂が固着し、複合樹脂組成物の排出が出来なかった。一方、実験を行うために低温側のスクリューの温度を複合樹脂組成物の形成できる最低限の温度に設定した場合、温度差が140℃になるように高温側のロールの温度を上げる必要があった。この場合には、逆に温度が高すぎたため、樹脂の粘度が著しく減少し、複合樹脂組成物の作製ができなかった。
【0082】
比較例5では、混練装置を加熱と冷却とが周期的に起こるように改良していない二軸混練機(株式会社JSW TEX30a)に変更した。この比較例5では、せん断発熱による温度上昇による粘度低下のため、原材料の分散、繊維状フィラーの解繊が進まず、解繊部位の長さ割合が10-20%となった。そのため、耐衝撃性が低下し、落下衝撃試験にて割れる結果になった。
【0083】
比較例6では、加熱部と冷却部との温度差が135℃になるように変更した。この比較例6では、冷却部の温度を低くしすぎたため、冷却部で固体状態にされた樹脂を加熱部で溶融状態に変化させることが出来ず、結果として混練ではなく、固体状態での粉砕が行われることになり、複合樹脂組成物の作製ができなかった。実験を行うために冷却部の温度を加熱部で樹脂が溶融状態に変化できる温度に変更し、温度差が140℃になるように加熱部の温度を上げた場合は、逆に加熱部の温度が高くなりすぎ、樹脂の粘度が著しく減少し、複合樹脂組成物の作製ができなかった。
【0084】
比較例7では、表面に凹凸のないスクリューに変更した。この比較例7では、スクリュー表面の局所的な領域でのセルロース繊維の解繊が出来なかったため、解繊部位の長さ割合が10-20%となった。そのため、耐衝撃性が低下し、落下衝撃試験にて割れる結果になった。
【0085】
比較例8では、表面にスクリューの長径に対して20%の大きさの凹凸を有するスクリューに変更した。この比較例8では、スクリュー間のクリアランスが大きくなりすぎたため、原材料にせん断応力が十分にかからず、1000μm以上のサイズの凝集物の数が20-30個であった。そのため、耐衝撃性が低下し、落下衝撃試験にて割れる結果になった。
【0086】
比較例9では、2本のスクリューの速度が同じになるように変更した。この比較例9では、クリアランスの変化が少ないため、原材料の分散、繊維状フィラーの解繊が進まず、解繊部位の長さ割合が20-30%となった。そのため、耐衝撃性が低下し、落下衝撃試験にて割れる結果になった。
【0087】
比較例10では、スクリュー間の速度差が100%になるように変更した。この比較例10では、原材料の分散、繊維状フィラーの解繊が進まず、解繊部位の長さ割合が20-30%となった。そのため、耐衝撃性が低下し、落下衝撃試験にて割れる結果になった。
【0088】
比較例11では、セルロース繊維の重量比率を小さくした。この比較例11では、セルロース繊維の量が少ないため、粘度が低くなり、原材料の分散、繊維状フィラーの解繊が進まず、解繊部位の長さ割合が20-30%となった。また、セルロースの繊維の量が少なすぎるため、繊維補強効果による複合樹脂組成物の機械的特性の向上が現れず、1.4GPaと弾性率が下がる結果となった。
【0089】
比較例12では、セルロース繊維の重量比率を大きくした。この比較例12では、セルロース繊維の量に比べて樹脂の量が極端に少ないため、複合樹脂組成物を形成することができなかった。
【0090】
以上の評価から、プロセス条件で原材料供給部と複合樹脂排出部との温度差、スクリューにかかる温度差や加熱部と冷却部との温度差を大きくしすぎた場合、複合樹脂組成物を形成することが出来なかった。しかし、上記各態様に規定した範囲(複合樹脂組成物の形成が可能な範囲)では、温度差を大きくするほど、せん断応力が大きくなるため、原材料の分散、セルロース繊維の解繊が効果的に進み、高弾性率、高耐衝撃性を有するサンプルを作製できた。以上より、複合樹脂組成物中に添加されているセルロース繊維が解繊し、その繊維の解繊部位の長さの割合が長く、セルロース繊維のアスペクト比が大きく、凝集物のサイズが小さく、かつ均一に分散していることにより、複合樹脂組成物は高い弾性率と高い耐衝撃性を発現することが分かった。
【0091】
本開示に係る複合樹脂組成物の製造方法は、少なくとも繊維状フィラーと熱可塑性樹脂とを含む原材料を、混練装置で混練して、複合樹脂組成物を製造する複合樹脂組成物の製造方法であって、
前記混練装置は、2本の回転体を有し、前記各回転体は、回転軸と、前記回転軸の周囲に設けられた凸部及び凹部と、を有し、前記2本の回転体は、互いに平行に配置されて、混練部を構成し、
前記混練部に少なくとも一方の前記回転体を加熱する加温設備を有し、前記2本の回転体の表面温度を互いに異なる温度に設定し、少なくとも一方の前記回転体の前記回転軸の周囲について1周内で加熱と冷却が生じる前記混練装置を用いることを特徴とする。
【0092】
本開示に係る複合樹脂組成物の製造方法によれば、混練前に比べて混練後の繊維状フィラーの比表面積が増加してもよい。
【0093】
本開示に係る複合樹脂組成物の製造方法は、少なくとも一方の前記回転体の回転軸と平行な原材料の移動方向に沿った下流側に冷却部を設け、上流側に加熱部を設け、前記加熱部と前記冷却部との温度差が5℃以上100℃以下であってもよい。
【0094】
本開示に係る複合樹脂組成物の製造方法は、前記二本の回転体の温度差は、5℃以上100℃以下であってもよい。
【0095】
本開示に係る複合樹脂組成物の製造方法は、前記混練装置の加熱部に比べて冷却部の樹脂温度が5℃以上80℃以下の温度差を有してもよい。
【0096】
本開示に係る複合樹脂組成物の製造方法は、前記凸部の頂点と前記凹部の底面の前記凸部の頂点と最も離れた点との距離を前記凹部の深さと定義したとき、前記回転体として、回転体表面に回転体の直径に対して0.05%以上14%以下の深さを持つ凹部を有する回転体を使用してもよい。
【0097】
本開示に係る複合樹脂組成物の製造方法は、前記2本の回転体の回転速度差は、5%以上80%以下であってもよい。
【0098】
本開示に係る複合樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂:繊維状フィラーを95%:5%から10%:90%の範囲の混合比で前記複合樹脂組成物を作製してもよい。
【0099】
本開示に係る複合樹脂組成物の混練装置は、少なくとも繊維状フィラーと熱可塑性樹脂とを含む原材料を混練して、複合樹脂組成物を製造する複合樹脂組成物の混練装置であって、
互いに平行に配置された2本の回転体であって、前記各回転体は、回転軸と、前記回転軸の周囲に設けられた凸部及び凹部と、を有する混練部を構成する2本の回転体と、
前記混練部に少なくとも一方の前記回転体を加熱する加温設備と、
前記2本の回転体の表面温度を互いに異なる温度に制御する温度制御部と、
を備えていてもよい。
【0100】
本開示に係る複合樹脂組成物の混練装置は、前記回転体は、前記凸部の頂点と前記凹部の底面の前記凸部の頂点と最も離れた点との距離を前記凹部の深さと定義したとき、前記回転体として、回転体表面に回転体の直径に対して0.05%以上14%以下の深さを持つ凹部を有してもよい。
【0101】
本開示に係る複合樹脂組成物の混練装置は、前記2本の回転体の回転速度差は、5%以上80%以下であってもよい。
【0102】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
本発明に係る複合樹脂組成物は、従来の汎用樹脂よりも機械的強度に優れた成形体を提供することができる。本発明により、樹脂の特性を向上させることができるので、エンジニアリングプラスチックの代替物、または金属材料の代替物として利用され得る。従って、エンジニアリングプラスチック製または金属製の各種工業製品、または生活用品の製造コストを大幅に削減し得る。さらには家電筐体、建材、自動車部材への利用が可能である。
前記第1の回転体と前記第2の回転体は、前記第1の回転体および前記第2の回転体の中心軸と平行な方向に沿って前記原材料を原材料供給部から複合樹脂排出部に移動させるスクリュー形状を有し、
前記第1の温度制御部は、前記第1の回転体の前記原材料供給部の温度を制御する第3の温度制御部と、前記第1の回転体の前記複合樹脂排出部の温度を制御する第4の温度制御部と、を有し、
前記第2の温度制御部は、前記第2の回転体の前記原材料供給部の温度を制御する第5の温度制御部と、前記第2の回転体の前記複合樹脂排出部の温度を制御する第6の温度制御部と、を有する、
請求項1記載の複合樹脂組成物の製造装置。
前記第1の回転体と前記第2の回転体は、前記第1の回転体および前記第2の回転体の中心軸と平行な方向に沿って前記原材料を原材料投入部から複合樹脂排出部へ移動させるスクリュー形状を有し、
前記混練部に対応する位置において、前記原材料投入部の温度が前記複合樹脂排出部の温度よりも5℃以上100℃以下の範囲で高くなるように、第1の回転体の温度と前記第2の回転体の温度とを制御する、請求項3又は4に記載の複合樹脂組成物の製造方法。