(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154071
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】環境汚染物質の環境利用可能性を低減させるための処理
(51)【国際特許分類】
B09C 1/00 20060101AFI20231011BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20231011BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20231011BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20231011BHJP
B01J 20/12 20060101ALI20231011BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20231011BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B09C1/00 ZAB
C02F1/28 D
C02F1/28 A
B01J20/04 C
B01J20/10 C
B01J20/12 C
B01J20/18 E
B01J20/20 D
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023132750
(22)【出願日】2023-08-17
(62)【分割の表示】P 2020561647の分割
【原出願日】2019-05-03
(31)【優先権主張番号】62/666,943
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジオウ,チンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ランベス,グレゴリー・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジョン・エリック
(72)【発明者】
【氏名】フロスト,ティモシー・アレン
(72)【発明者】
【氏名】ベルツ,ザッシャ・ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】キム,セ・ヘ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固体、液体、及び固体と液体の組み合わせ中の1つまたは複数の環境汚染物質の環境利用可能性を低減(環境汚染物質の安定化、不動化、固定、封入、分離、封じ込め等)するための処理を提供する。
【解決手段】1つまたは複数の環境汚染物質を含む物質中の1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性を低減するための処理は、ハロゲン含有吸着剤を前記物質に添加する及び/または適用することを含む。前記ハロゲン含有吸着剤が、フッ素、塩素、臭素及び/またはヨウ素から選択される1つまたは複数のハロゲン、及び1つ以上の基材材料を含み、前記基材材料が、1つまたは複数の炭素質材料であるか、または、1つまたは複数の無機酸化物、天然ゼオライト、CaCO3及び粘土鉱物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の環境汚染物質を含む物質中の1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性を低減するための処理であって、前記処理が、
ハロゲン含有吸着剤を前記物質に添加する及び/または適用することであって、前記ハロゲン含有吸着剤が、フッ素、塩素、臭素及び/またはヨウ素から選択される1つまたは複数のハロゲン、及び/または1つ以上の基材材料を含む、前記添加すること及び/または適用することと、
それにより、前記物質中の1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性を低減させることと、を含む、前記処理。
【請求項2】
前記ハロゲン含有吸着剤が、1つまたは複数の炭素質材料から選択される基材材料を含む、請求項1に記載の処理。
【請求項3】
前記炭素質材料が活性炭である、請求項2に記載の処理
【請求項4】
前記ハロゲン含有吸着剤が、1つ以上の無機材料から選択される基材材料を含む、請求項1に記載の処理。
【請求項5】
前記無機材料が、無機酸化物、天然ゼオライト、CaCO3、及び粘土鉱物から選択される、請求項4に記載の処理。
【請求項6】
前記無機材料が、チャバザイト、シリカ、カオリナイト、及びベントナイトから選択される、請求項5に記載の処理。
【請求項7】
前記ハロゲン含有吸着剤が、臭素含有吸着剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の処理。
【請求項8】
前記ハロゲン含有吸着剤が、ハロゲン含有活性炭吸着剤である、請求項1に記載の処理。
【請求項9】
前記ハロゲン含有吸着剤が、臭素含有活性炭吸着剤である、請求項1に記載の処理。
【請求項10】
前記ハロゲン含有吸着剤が、臭素として計算され、前記ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて、約0.1~約20重量%のハロゲン含有量を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の処理。
【請求項11】
前記環境汚染物質を含む前記物質が、固体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の処理。
【請求項12】
前記ハロゲン含有吸着剤を前記固体に添加する及び/または適用することが、
(a)前記ハロゲン含有吸着剤を前記固体の中に注入すること、
(b)前記固体の表面に前記ハロゲン含有吸着剤を適用すること、
(c)前記ハロゲン含有吸着剤を前記固体の表面の少なくとも一部に配合すること、
(d)前記固体が処理される真空ウェル中に前記ハロゲン含有吸着剤を入れること、
(e)含有される固体に前記ハロゲン含有吸着剤を添加すること、
(f)前記ハロゲン含有吸着剤を前記固体と組み合わせること、
(g)前記ハロゲン含有吸着剤を反応性バリアに添加すること、及び/または、
(h)前記ハロゲン含有吸着剤を含む反応性バリアを形成すること、を含む、請求項11に記載の処理。
【請求項13】
前記環境汚染物質を含む前記物質が、液体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の処理。
【請求項14】
前記ハロゲン含有吸着剤を前記液体に添加する及び/または適用することが、
(a)前記ハロゲン含有吸着剤を前記液体に注入すること、
(b)前記液体の表面に前記ハロゲン含有吸着剤を適用すること、
(c)前記ハロゲン含有吸着剤を前記液体と組み合わせること、
(d)前記ハロゲン含有吸着剤を含む固定床上に前記液体を通過させること、
(e)前記ハロゲン含有吸着剤を含むフィルターに、前記液体を通すこと、
(f)前記ハロゲン含有吸着剤を含む固定床またはカラムを通して前記液体をポンプで送ること、及び/または、
(g)含有される量の液体に前記ハロゲン含有吸着剤を添加すること、を含む、請求項13に記載の処理。
【請求項15】
前記環境汚染物質を含む前記物質が、少なくとも1つの固体及び少なくとも1つの液体の配合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の処理。
【請求項16】
前記ハロゲン含有吸着剤を前記配合物に添加する及び/または適用することが、
(a)前記ハロゲン含有吸着剤を前記配合物の中に注入すること、
(b)前記ハロゲン含有吸着剤を前記配合物の表面に適用すること、
(c)前記ハロゲン含有吸着剤を前記配合物の表面の少なくとも一部と組み合わせること、
(d)前記ハロゲン含有吸着剤を前記配合物と組み合わせること、
(e)前記配合物が処理される真空ウェル中に前記ハロゲン含有吸着剤を入れること、
(f)含有される配合物に前記ハロゲン含有吸着剤を添加すること、
(g)前記ハロゲン含有吸着剤を含む層で、前記物質の表面を覆うこと、
(h)前記ハロゲン含有吸着剤をキャップの中に入れること、
(i)前記ハロゲン含有吸着剤を反応性バリアに添加すること、
(j)前記ハロゲン含有吸着剤を含む反応性バリアを形成すること、及び/または、
(k)ジオテキスタイルマットの中に前記ハロゲン含有吸着剤を配置すること、を含む、請求項15に記載の処理。
【請求項17】
前記固体が土壌である、請求項11または12に記載の処理。
【請求項18】
前記添加すること及び/または適用することが、
(a)前記ハロゲン含有吸着剤を前記土壌の中に注入すること、
(b)前記土壌の表面に前記ハロゲン含有吸着剤を適用すること、及び/または、
(c)前記ハロゲン含有吸着剤を前記土壌の表面の少なくとも一部に組み合わせること、を含む、請求項16に記載の処理。
【請求項19】
前記配合物が堆積物である、請求項15または16に記載の処理。
【請求項20】
前記添加する及び/または適用することが、
(a)前記ハロゲン含有吸着剤を前記配合物の中に注入すること、
(b)前記ハロゲン含有吸着剤を前記配合物の表面に適用すること、
(c)前記ハロゲン含有吸着剤を前記配合物の表面の少なくとも一部と組み合わせること、及び/または、
(d)前記ハロゲン含有吸着剤と前記配合物を組み合わせること、を含む、請求項19に記載の処理。
【請求項21】
前記物質が土壌または堆積物であり、前記ハロゲン含有吸着剤が、臭素含有活性炭吸着剤である、請求項1に記載の処理。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その環境利用可能性を低減させるための環境汚染物質の修復に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの汚染物質は、ヒト及び環境に有毒であることが知られている。これらの既知の環境汚染物質の1つである水銀は、米国保健福祉省の有害物質・疾病登録局(ATSDR)によって優先有害性物質として分類されている。米国環境保護局(EPA)によって管理されている米国全国浄化優先順位リスト(NPL)には、水銀で汚染された多数の場所が列挙されている。このような場所には、固体(例えば、土壌、くず、廃棄物)、液体(例えば、地下水、湖、池)、及び固体と液体の組み合わせ(例えば、底質、スラリー、堆積物)を含む、様々な汚染物質が含まれている。これらの場所の大部分は、水銀を除去するための除染がなされていない。許容できないレベルの水銀または水銀化合物は、米国のNPLに挙げられていない場所にも存在し得る。水銀以外の環境汚染物質も同様の懸念をもたらす。
【0003】
水銀汚染は、種々の異なる原因(例えば、鉱業及び鉱石処理、塩素アルカリプラント、及びバッテリー製造工程)から発生する可能性がある。水銀を含有する廃棄物で汚染された埋立て地もたくさんある。そのうえ、水銀汚染物質は、金属水銀、有機水銀化合物、及び無機水銀化合物を含む、複数の形態で、多くの場合同じ場所に存在する。様々な水銀形態及び/または様々な物質は、多くの場合、必要な処理方法も異なる。
【0004】
水銀で汚染された物質は、他の複数の環境汚染物質も含む傾向が見られる。例えば、いくつかの物質も有機物及び/または他の重金属で汚染されており、これらの他の環境汚染物質は、同様の課題を提供する。したがって、汚染された物質、物質の状態、廃棄物の種類、水銀の形態、及び存在する他の汚染物質または環境汚染物質によっては、特定の場所で環境汚染物質の環境利用可能性を低減させることは、技術的に困難でありかつ費用がかかる可能性がある。環境汚染物質の環境利用可能性を低減させることは、同様に、汚染物質の生物学的利用可能性を低下させ、それにより、特に土壌、地下水、堆積物、及びスラリーなどの物質におけるその生体内蓄積を低下させることは特に興味深い。
【0005】
土壌及び他の固形物に適用されている現在の商業的修復処理には、安定化/固化、洗浄、熱脱着、ガラス化が含まれる。水及び他の液体に適用される処理には、沈殿/共沈、吸着、濾過、及びバイオレメディエーションが挙げられる。堆積物及び他の固体と液体の組み合わせに適用される処理には、in situキャッピング、浚渫/掘削、これらの方法の組み合わせ、ならびに監視した自然回復(MNR)及び強化された監視した自然回復(EMNR)が含まれる。監視した自然回復は、汚染物質への許容できない曝露から環境と受容体を保護するための自然的作用に依存し、強化されたMNRは、自然回復処理を強化するために材料または修正を適用する(例えば、薄層キャップの追加または炭素などの反応性修正)。これらの修復技術はすべて、ヒトの健康や生態リスクを含む、環境汚染物質による環境への影響を制御する上でメリットをもたらすが、これらの修復技術には限界もある。
【0006】
いくつかの修復技術で考慮すべき別の要因は、環境汚染物質が隔離または安定化された後、その場所から移動する(または、その場所から浸出する)性質である。米国EPAはこれも規制しており、液体、固体、及び多相廃棄物中に存在する、有機及び無機分析物の両方の移動度を決定するために設計された試験である、毒性指標浸出法(TCLP)を有する。
【0007】
実際の汚染箇所の修復を選択する前に、技術を評価してそれが適切かどうかを判断するために、複雑なベンチスケール及びパイロットスケールの調査とスクリーニング試験を実施する必要がある。更に、処理される各場所のばらつきにより、水銀や他の環境汚染物質の汚染の修復にはかなりの費用と時間がかかる。したがって、固体及び液体中、ならびにそれらの組み合わせ中の環境汚染物質の環境利用可能性及び生物学的利用可能性を低減させるための、より商業的に魅力のある新しい処理が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、1つまたは複数の環境汚染物質を含む物質中の、1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性を低減させるための処理を提供する。本発明の処理によって提供される利点は、物質中の有毒な環境汚染物質の環境利用可能性の低減である。このような有毒な汚染物質には、水銀、及びメチル水銀、ならびに重金属、及び生態学的に有毒な有機物が含まれる。
【0009】
本発明の処理によって提供される利点は、物質中の環境汚染物質の環境利用可能性を低減させることによって、そのような汚染物質の生物学的利用可能性及び生体内蓄積も低減されることである。環境汚染物質が水銀である場合、別の利点は、本発明の処理が硫化物の存在を必要としないことであり、そのため、環境利用可能性の低減、したがって生物学的利用可能性の低減は、硫化物が硫酸または硫酸化合物の形成を可能にする酸性条件による悪影響を受けない。この硫酸塩の不存在は、同様に水銀のメチル化を最小限に抑える。
【0010】
本発明の処理は、物質中の環境汚染物質(例えば、水銀)の環境利用可能性及び/またはその存在を低減させるための唯一の処理として使用することができる、または、既存の技術によって達成されるものよりも、物質中のそのような環境汚染物質の環境利用可用性及び/またはその量の低減を補完する及び/またはそれを促進するために使用できる。
【0011】
本発明の一実施形態は、1つまたは複数の環境汚染物質を含む物質中の、1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性を低減させるための処理である。この処理には、ハロゲン含有吸着剤を物質に添加する及び/またはそれを適用することが含まれる。ハロゲン含有吸着剤にて、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及び/またはヨウ素、ならびに1つまたは複数の基材材料から選択される、1つまたは複数のハロゲンを含む。ハロゲン含有吸着剤を汚染物質含有物質に添加する及び/またはそれを適用すると、物質中の1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性が低減する。
【0012】
本発明のこれら及び他の実施形態及び特徴は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1からの平衡水銀吸着等温線データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図は、本発明の特定の態様の実施形態を示すものであり、本発明の範囲に制限を課すことを意図しない。
【0015】
本発明は、環境汚染物質の環境利用可能性を低減させるための処理を提供する。本明細書中で使用する場合、「環境利用可能性の低減」という用語は、安定化、不動化、固定、封入、分離、封じ込め、破壊、無害化、分解、及び腐敗、量の低減、移動性の低減、及び/または少なくとも1つの環境汚染物質の移動能力の低減を指す。安定化及び/または不動化は、媒体中で行うことができる。環境汚染物質の環境利用可能性を低減させると、汚
染物質の生物学的利用可能性が低減し、したがってその生体内蓄積が低減する。
【0016】
本明細書で使用する場合、「環境汚染物質(複数可)」という用語は、ヒトに有害である及び/または環境(生態系)に悪影響を及ぼすとして既知の、化学元素もしくは化合物、またはそれらの混合物を意味する。環境汚染物質は通常、1つまたは複数の政府機関によって規制されている。環境汚染物質の実施例には、あらゆる形態の水銀(例えば、元素水銀、有機水銀化合物、及び無機水銀化合物)、他の有機物(例えば、疎水性有機化合物、多環式芳香族炭化水素、ポリ塩化ビフェニル、ダイオキシン、フラン、及び/または塩素系農薬を含むが、これらに限定されない)、有害元素、有機及び無機重金属化合物(例えば、As、Pb、Zn、Cu、Cr及び/またはCdを含む化合物を含むが、これらに限定されない)、ならびに当業者に周知の他の環境汚染物質が含まれる。
【0017】
本明細書中で使用する場合、「処理済み」、「接触済み」、及び「浄化済み」などの用語は、1つまたは複数の環境汚染物質の環境利用可能性の低減をもたらすやり方で、ハロゲン含有吸着剤が1つ以上の環境汚染物質を含有する物質と相互作用することを示す。
【0018】
本発明の実施での修復剤は、ハロゲン含有吸着剤であり、本明細書で「ハロゲン化吸着剤」と呼ばれることもある。ハロゲン含有吸着剤は、通常、1つまたは複数のハロゲン含有化合物と1つまたは複数の基材材料から形成される。多くの基材材料、特に活性炭は、ナノメートルからセンチメートルまでの幅広い粒径で利用可能または入手可能である。
【0019】
基材材料には、炭素質材料と無機材料が含まれる。適切な炭素質材料には、例えば、活性炭、カーボンブラック、木炭、及び骸炭が含まれるが、これらに限定されない。好ましい炭素質材料は活性炭であり、それは、これらに限定されないが、例えば、粉末、粒状、または押し出しを含む、多くの形態で使用することができ、高比表面積である。粉末活性炭は、活性炭の特に好ましい形態である。
【0020】
適切な無機材料には、無機酸化物(例えば、アルミナ(非結晶性及び結晶性)、シリカ、マグネシア及びチタニア)、天然ゼオライト(例えば、チャバザイト、クリノプチロライト、フォージャサイト)、合成ゼオライト(例えば、合成チャバザイトなどの、高いSi:Al比を備えるゼオライト(ZSM-5、ベータゼオライト、ソーダライト)、中程度のSi:Al比を備えるゼオライト(Yゼオライト、Aゼオライト)、シリカアルミナホスフェート(SAPO)ゼオライト、イオン交換ゼオライト、未焼成ゼオライト)、粘土鉱物(例えば、カオリン、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト)、無機水酸化物(例えば、水酸化鉄)、混合金属酸化物(例えば、ハイドロタルサイト、金属化二層粘土)、珪藻土、セメントダスト、基材上の触媒を含む水素化処理触媒(例えば、アルミナ、シリカ、またはチタニア)、CaCO3、及び前述の任意の2つ以上の組み合わせが含まれる。好ましい無機材料には、無機酸化物(特に、シリカ)、天然ゼオライト(特に、チャバザイト)、及び粘土鉱物(特に、カオリナイト及びベントナイト)が含まれる。CaCO3も好ましい基材材料である。
【0021】
ハロゲン含有吸着剤中のハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、または任意の2つ以上のハロゲンの混合物であり得る。臭素は、好ましいハロゲンである。適切なハロゲン含有化合物には、当業者には周知であるように、例えば、元素状ヨウ素及び/またはヨウ素化合物、元素状臭素及び/または臭素化合物、元素状塩素及び/または塩素化合物、フッ素元素及び/またはフッ素化合物、及び他の適切なハロゲン化合物が含まれるが、これらに限定されない。使用できるハロゲン含有化合物の種類には、ハロゲン化水素酸、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物、及びハロゲン化アンモニウムが含まれる。
【0022】
ハロゲン化水素酸には、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素が含まれる。アルカリ金属ハロゲン化物には、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムが含まれる。アルカリ土類ハロゲン化物には、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化カルシウム、及び臭化カルシウムが含まれる。ハロゲン化アンモニウムには、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、及びヨウ化アンモニウムが含まれる。
【0023】
好ましいハロゲン含有化合物には、元素状臭素、臭化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、及び臭化カルシウムが含まれる。臭素含有化合物は、好ましいハロゲン含有化合物であり、より好ましいのは、臭化水素及び元素状臭素であり、特に好ましいのは元素状臭素である。
【0024】
ハロゲン含有吸着剤は、米国特許第6,953,494号及び同第9,101,907号、ならびに国際特許公開第WO2012/071206号に記載されているように、材料及びハロゲン含有化合物から作製することができる。いくつかの実施形態にて、好ましいハロゲン含有吸着剤は、臭素含有吸着剤である。いくつかの実施形態で、好ましいハロゲン含有吸着剤は、ハロゲン含有活性炭である。他の実施形態で、好ましいハロゲン含有活性炭は、塩素含有活性炭、臭素含有活性炭、及びヨウ素含有活性炭である。好ましい実施形態で、ハロゲン含有吸着剤は、塩素含有活性炭、及び臭素含有活性炭である。より好ましい実施形態で、ハロゲン含有吸着剤は、臭素含有活性炭である。臭素含有活性炭は、Albemarle Corporationから市販されている。
【0025】
他の実施形態で、好ましいハロゲン含有吸着剤は、塩素含有活性炭、及びヨウ素含有活性炭である。更に他の実施形態で、好ましいハロゲン含有吸着剤は、ハロゲン含有チャバザイト、ハロゲン含有ベントナイト、ハロゲン含有カオリナイト、及びハロゲン含有シリカである。
【0026】
別の実施形態で、好ましいハロゲン含有吸着剤には、臭素含有シリカ、臭素含有カオリナイト、及び臭素含有ベントナイトが含まれる。
【0027】
材料上のハロゲンの量(または、ハロゲン含有量)は、通常、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づき、約0.1重量%~約20重量%の範囲の総臭素含有量(または、臭素として計算した)に相当し、好ましくは、約0.5重量%~約15重量%、より好ましくは、約2重量%~約12重量%、更により好ましくは、約3重量%~約8重量%の範囲の総臭素含有量に相当する。
【0028】
本明細書中で使用する場合、「臭素として」、「臭素として報告した」、「臭素として計算した」という語句、及びハロゲンに関しての類似の語句は、特に記載がない限り、数値を臭素について計算したハロゲンの量を指す。例えば、フッ素元素を使用してもよいが、ハロゲン含有吸着剤中のハロゲンの量は、臭素の値として記載されている。
【0029】
本発明の処理での使用に適した臭素含有活性炭は、ナノメートルからセンチメートルまでの広範囲の粒径及び分布を有することができ、例えば、これらに限定されないが、粉末、粒状、または押し出しを含む、活性炭形態から形成することができ、高比表面積、様々な独自の細孔構造、及び当業者によく知られている他の特徴を有することができる。
【0030】
ハロゲン含有吸着剤、特に臭素含有吸着剤、更に具体的には臭素含有吸着剤は、例えば、これらに限定されないが、酸化及び/または吸着を含む手段を通じて、物質中の汚染物質の環境利用可能性を低減させることができる。吸着は、そのような汚染物質の移動性を低減させることにより、環境汚染物質の環境利用可能性を低減させることができる。ハロ
ゲン含有吸着剤が汚染物質の環境利用可能性を低減させることができる他の方法は、そのような汚染物質の分解を表面反応を通じて促進することによるもの、及び/またはメチル水銀などの汚染物質の形成を阻害することによるもの、及び/または他のメカニズムによるものである。本発明の処理で、固体、液体、またはそれらの組み合わせに適用されるかどうかにかかわらず、ハロゲン含有吸着剤によって吸着される環境汚染物質は、環境中への脱着が実質的に最小限に抑えられるように安定化される。
【0031】
水銀及び他の環境汚染物質は、ハロゲン含有吸着剤、特に臭素含有活性炭上に吸着される、またはそれによって除去される。ハロゲン含有吸着剤、特に臭素含有吸着剤、特に臭素含有活性炭上に、異なるハロゲン(特に臭素)種を形成することができる。例えば、臭素種の1つである臭素は、水銀元素を酸化させて、活性炭の細孔の中に吸着することができる臭化水銀を形成できる。別の種である臭化物イオンは、活性炭の表面上に吸着するためにイオン性水銀と化学的に結合することができる。別の成分は、水銀の酸化を触媒し、酸化水銀生成物の安定化または吸着を促進する可能性がある。
【0032】
いくつかのハロゲン含有吸着剤、特に臭素含有活性炭は、水銀元素、酸化水銀、及び有機水銀を含む、様々な酸化状態の水銀を物理的及び化学的に吸着できる。臭素含有活性炭に吸着された水銀は、広範囲のpH値で安定している。ここで「安定」とは、吸着後に、水銀がかなりの量で吸着剤から分離しないことを意味する。
【0033】
本発明の処理で使用される吸着剤は、他の任意の成分(例えば、pH緩衝液(例えば、炭酸塩及びリン酸塩を含むが、これらに限定されない)、担体(例えば、砂及び泥を含むが、これらに限定されない)、結合剤(例えば、泥、粘土、及びポリマーを含むが、これらに限定されない)、及び/または他の添加剤(例えば、鉄化合物及び硫黄化合物を含むが、これらに限定されない))と組み合わせることができる。
【0034】
本発明の実施にて、ハロゲン含有吸着剤は、乾燥吸着剤として、または(例えば、スラリー中の)適切な流体と組み合わせて、を含む、様々な形態で使用することができる。本明細書で使用する場合、「適切な流体」という用語は、水などの流体、及び他の流体を意味する。選択は変数(例えば、物質の組成、物質中に存在する環境汚染物質の組成など)に依存するので、本開示の教示を考えれば、当業者であれば、適切な流体を選択するための知識が手元にある。
【0035】
物質のいくつかの処理は、in-situ及びex-situの両方で実行できる。
【0036】
熱脱着及びレトルト処理は、水銀浄化のための2つの一般的なex situ熱処理である。この技術は、汚染された媒体を加熱して水銀を揮発させ、続いて蒸気を凝縮して液体の水銀元素にする。臭素含有活性炭は、液体水銀凝縮器の代わりに水銀を吸着するため、または凝縮器を出る排出ガス中の水銀を除去するために使用してもよい。
【0037】
いくつかの用途で、ハロゲン含有吸着剤は、物質内または物質と共に留まる。他の用途で、吸着剤は使用後に回収され得る。使用後にハロゲン含有吸着剤を回収する場合、吸着剤は、廃棄される、または再生して再利用することができる。
【0038】
1つまたは複数の環境汚染物質を含有する物質は、固体、液体、または固体と液体の組み合わせ、または1つまたは複数の固体と1つまたは複数の液体の組み合わせである。物質が固体である場合、それは複数の固体を含み得る。物質が液体である場合、それは複数の液体を含み得る。
【0039】
本発明のいくつかの処理にて、1つ以上の固体、1つ以上の液体、または少なくとも1
つの固体と少なくとも1つの液体の組み合わせを含む、物質に適用されるかどうかにかかわらず、ハロゲン含有吸着剤の使用は、独立した修復方法であり得る、または、他の修復方法の使用を補完することができる。本発明による他の処理で、同じ修復処理にて、1つまたは複数の他の修復剤に加えて、ハロゲン含有吸着剤を使用することができる。
【0040】
汚染された廃棄物の中にハロゲン含有吸着剤を加えると、1つまたは複数の汚染物質が吸着される。いくつかの実施形態で、ハロゲン含有吸着剤は、物質を安定化する及び/またはそれを固化させるために物質中に残る。他の実施形態で、配合されたハロゲン含有吸着剤及び物質は、しばしば結合剤及び他の化合物と共に、埋立て地に配置される。
【0041】
本明細書で使用する場合、「固体(複数可)」という用語は、土壌、くず、廃棄物、及び当業者に周知の他のそのような物質が含まれるが、これらに限定されない。土壌は、本発明の実施で処理するのに好ましい固体である。本発明の処理は、1つまたは複数の環境汚染物質を含む固体中の、1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性を低減させるために提供される。固体である物質は、本明細書では固体物と呼ばれることがある。
【0042】
ハロゲン含有吸着剤の固体への添加及び/または適用が、
(a)既に存在する、または手動で作成された(例えば、基材中にドリルで穴を開けることによって)かにかかわらず、所望により基材中に存在する穴及び/またはくぼみ及び/またはチャネルを通って、ハロゲン含有吸着剤を固体の中に注入すること、及び/または、
(b)ハロゲン含有吸着剤を固体の表面に適用すること、及び/または、
(c)ハロゲン含有吸着剤を固体の表面の少なくとも一部に配合すること、及び/または、
(d)固体が処理される真空ウェル中にハロゲン含有吸着剤を入れること、及び/または、
(e)含有される固体にハロゲン含有吸着剤を添加すること、及び/または、
(f)ハロゲン含有吸着剤を固体に配合すること、及び/または、
(g)ハロゲン含有吸着剤を反応性バリアに添加すること、及び/または、
(h)ハロゲン含有吸着剤を含有する反応性バリアを形成すること、を含むことができる。
【0043】
上述した(c)のようにハロゲン含有吸着剤を固体の表面に配合するには、ハロゲン含有吸着剤を固体の一部に配合してから、吸着剤と固体の配合物を固体の表面に適用することによって、またはハロゲン含有吸着剤を固体の表面に配合することによって行うことができる。
【0044】
ハロゲン含有吸着剤を固体に添加する及び/または適用する方法のいくつかの好ましい方法は、
(a)ハロゲン含有吸着剤を固体の中に注入すること、
(b)固体の表面にハロゲン含有吸着剤を適用すること、及び/または、
(c)ハロゲン含有吸着剤を固体の表面の少なくとも一部に配合すること、である。
【0045】
1つまたは複数の環境汚染物質の環境利用可能性を低減させるための固体の処理の実施形態は、(i)固体の中に穴、くぼみ及び/またはチャネルをドリルで作成することと、(ii)ハロゲン含有吸着剤の層で固体の表面を覆うことと、(iii)固体のいくつかの部分を加熱して、1つまたは複数の環境汚染物質(例えば、水銀)を、その上にハロゲン含有吸着剤を有する表面に向かって移動させることと、を含む。
【0046】
1つまたは複数の環境汚染物質の環境利用可能性を低減させるための固体の処理の別の実施形態は、(i)固体の中に穴、くぼみ及び/またはチャネルをドリルで作成することと、(ii)いくつかの穴またはチャネルにハロゲン含有吸着剤を充填することと、(iii)加熱された空気を穴またはチャネルの中にパージして、1つまたは複数の環境汚染物質(例えば、水銀)をハロゲン含有吸着剤で満たされた穴に向かって移動させることと、を含む。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、固体を加熱して、真空ウェル中で環境汚染物質(例えば、水銀)を気化させる。上記(d)のように、ハロゲン含有吸着剤が真空中に存在する場合、ハロゲン化吸着剤は、気化した環境汚染物質(複数可)を吸収することができる。これらの処理で、ハロゲン含有吸着剤は、真空ウェル内に入れられて、蒸気が大気に出る前に、1つまたは複数の場所で生成された蒸気と真空ウェル中で接触する。この処理の1つの用途は、水銀浄化のための土壌蒸気抽出(SVE)においてであり、ハロゲン含有吸着剤(特に、臭素含有活性炭)を真空ウェル中に入れて、水銀を吸着させることができる。
【0048】
特定の種類の固体状物質、土壌にて、ハロゲン含有吸着剤を利用して、in situ
及び/またはex situ処理で土壌の安定化かつ固化(S/S)する前またはその最
中に、水銀を固定化することができる。1つのex situ処理は、ハロゲン含有吸着
剤、1つまたは複数の結合剤、及び他の成分を汚染物質に添加し、それらを反応器内で混合する。次に、混合物は安定化されて、セメントで固められる、または埋立て地に配置される。いくつかの実施形態で、臭素含有粉末状活性炭は、S/S処理工程で使用され得る。臭素含有粉末状活性炭に吸着された水銀は、コンクリートの製造及び養生中に安定する。例えば、米国特許第8,404,038号及び第8,420,033号を参照のこと。フライアッシュ及びセメントは、S/S技術で使用される典型的な結合剤であるため、これは有利である。
【0049】
ハロゲン含有吸着剤(特に、臭素含有粉末状活性炭)が水銀汚染土壌の修復剤である、本発明の別の実施形態で、ハロゲン含有吸着剤は、汚染土壌の上に広げられる。この方法で、土壌は乱されず、ハロゲン含有吸着剤(特に、臭素含有活性炭)が土壌の最上層に存在し、土壌からの水銀の移動をブロックする。
【0050】
ハロゲン化吸着剤(特に、臭素含有活性炭)を別の薬剤と混合して、ハロゲン含有吸着剤の固体(特に、土壌)への浸透を改善する、混合物を作成することができる。ハロゲン含有吸着剤の添加量は、土壌の最上層の10%未満であり得て、土壌の最上層の厚さは最大10cmであり得る。いくつかの実施形態にて、pH調整剤も、別々に、またはハロゲン含有吸着剤と混合して、所望によりハロゲン含有吸着剤の固体への浸透を改善する薬剤と共に適用される。
【0051】
本発明の処理は、1つまたは複数の環境汚染物質を含む液体中の、1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性を低減させるために提供される。本明細書で使用する場合、「液体(複数可)」という用語は、地下水、廃水、地表水、塩水、淡水(例えば、湖、池)、及び当業者に知られている他のそのような物質が含まれるが、これらに限定されない。液体である物質は、本明細書では液体物と呼ばれることがある。
【0052】
ハロゲン含有吸着剤の液体への添加及び/または適用には、
(a)ハロゲン含有吸着剤を液体の中に注入することであって、所望により使用した吸着剤を濾過できる、前記注入すること、及び/または、
(b)ハロゲン含有吸着剤を液体の表面に適用すること、及び/または、
(c)ハロゲン含有吸着剤を液体に配合すること、及び/または、
(d)ハロゲン含有吸着剤を含む固定床上に液体を通過させること、及び/または、
(e)ハロゲン含有吸着剤を含むフィルターに、液体を通すこと、及び/または、
(f)ハロゲン含有吸着剤を含む固定床またはカラムを通して液体をポンプで送ること、及び/または、
(g)含有される量の液体にハロゲン含有吸着剤を添加すること、を含むことができる。
【0053】
上述(c)のようにハロゲン含有吸着剤を液体に配合するには、ハロゲン含有吸着剤をバルク液体に配合する、またはハロゲン含有吸着剤を液体の一部に配合してスラリーを形成し、次にスラリーを残りの液体と配合することによって、行うことができる。
【0054】
いくつかの物質は、少なくとも1つの固体と少なくとも1つの液体の組み合わせであり、底質、スラリー、堆積物、間隙水(例えば、土壌間隙水または堆積物間隙水)、及び他の固体と液体の組み合わせが含まれる。堆積物、土壌間隙水、及び堆積物間隙水は、本発明の実施で処理するのに好ましい配合物である。これらの組み合わせは、多相物質と呼ばれることもある。本発明の処理は、1つまたは複数の環境汚染物質を含む組み合わせ中の、1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性を低減させるために提供される。組み合わせである物質は、本明細書では配合物と呼ばれることがある。
【0055】
ハロゲン含有吸着剤の配合物への添加及び/または適用は、ハロゲン含有吸着剤を配合物に添加する及び/または適用することを含むことができる。そのような処理では、ハロゲン含有吸着剤を配合物に添加する及び/または適用することは、
(a)既に存在する、または手動で作成された(例えば、配合物にドリルで穴を開けることによって)かにかかわらず、所望により基材中に存在する穴及び/またはくぼみ及び/またはチャネルを通って、ハロゲン含有吸着剤を配合物の中に注入すること、及び/または、
(b)配合物の表面にハロゲン含有吸着剤を適用すること、及び/または、
(c)ハロゲン含有吸着剤を、固体及び/または液体物について上述したように、配合物の表面の少なくとも一部と組み合わせること、及び/または、
(d)ハロゲン含有吸着剤を配合物と組み合わせること、及び/または、
(e)固体物質について説明したのと同様の方法で、配合物が処理される真空ウェルにハロゲン含有吸着剤を配置すること、及び/または、
(f)含有される配合物にハロゲン含有吸着剤を添加すること、及び/または、
(g)物質の表面を、ハロゲン含有吸着剤を含む層で覆うこと、及び/または、
(h)ハロゲン含有吸着剤をキャップの中に入れること、及び/または、
(i)ハロゲン含有吸着剤を反応性バリアに添加すること、及び/または、
(j)ハロゲン含有吸着剤を含有する反応性バリアを形成すること、及び/または、
(k)ハロゲン含有吸着剤をジオテキスタイルマットの中に配置すること、を含むことができる。
【0056】
上述した(d)のようにハロゲン含有吸着剤を配合物と組み合わせるには、ハロゲン含有吸着剤を配合物と組み合わせる、またはハロゲン含有吸着剤を配合物の一部と組み合わせて混合物を形成し、次に混合物を配合物の表面と組み合わせることによって行うことができる。これらの実施形態で、ハロゲン含有吸着剤は、例えば、これに限定されないが、ハロゲン含有活性炭吸着剤、好ましくは臭素含有炭素吸着剤、より好ましくは臭素含有活性炭吸着剤を含むことができる。
【0057】
ハロゲン含有吸着剤を配合物に添加する及び/または適用するためのいくつかの好ましい方法は、
(a)ハロゲン含有吸着剤を配合物の中に注入すること、
(b)ハロゲン含有吸着剤を配合物の表面に適用すること、
(c)ハロゲン含有吸着剤を配合物の表面の少なくとも一部と組み合わせること、及び/または、
(d)ハロゲン含有吸着剤と配合物を組み合わせること、である。
【0058】
当業者には明らかであるように、処理される物質に応じて、本発明の使用に関する多くの変数を考慮しなければならない。本発明のすべての処理で、固体、液体、またはそれらの組み合わせに適用されるかどうかにかかわらず、本明細書の教示を考慮すると、任意の成分を吸着剤と組み合わせて使用するか、使用する場合、有益となる特定の任意の成分とその量、本発明の処理の適用の数、及び有益であろうそのような適用の期間、本発明の処理を既知の修復方法と組み合わせて使用するか、もしそうであれば、有益な結果を得るためにどのように使用するかなど、当業者は、使用するハロゲン含有吸着剤の量を決定する知識を手元に持っている。
【0059】
以下の実施例は、例示の目的のために提示され、本発明の範囲に制限を課すことを意図するものではない。
【0060】
実施例では、特に明記しない限り、試料中に存在する水銀の量は、水銀蒸気分析器を備えた原子吸光分光計(CVAA、ゼーマンバックグラウンド補正による原子吸光水銀分光計、Ohio Lumex Co.、モデル番号RA915+)にて、冷蒸気原子吸光分析法を介して測定された。
【0061】
すべての実施例で、プレーン(未処理)活性炭を使用した実験は、比較のためである。
【実施例0062】
実施例1
粉末状活性炭(平均粒径15μm)は、米国特許第6,953,494号に記載されている手順で、高温にて気相Br2で処理され、8重量%の臭素含有量を有する臭素含有粉末状活性炭を形成した。臭素含有活性炭吸着剤を使用して、合成水銀含有溶液から水銀を除去した。臭素含有粉末状活性炭(0.4g/L)を、いくつかの反応ボトルの中に入れた。溶液は、pH2のHg(NO3)2で調製し、吸着剤を含有する反応器ボトルに添加した。各反応ボトルには、異なるHg2+濃度で調製された一定量の溶液が含まれていた。試料を32±2回転/分で24時間回転させて、得られた混合物のそれぞれをシリンジフィルター(0.45μm細孔膜)に通して、吸着剤を液体から分離した。比較のために未処理(プレーン)活性炭を使用して、別の一連の実験を並行して実施した。次に、各溶液から濾過された液体の水銀濃度を測定した。
【0063】
これらの実験で、臭素含有活性炭による最大水銀吸着は8重量%であり、未処理の活性炭の場合、最大水銀吸着は3重量%だった。結果を表1にまとめる。
【0064】
Br-PACと未処理の粉末状活性炭(PAC)の吸着等温線は、どちらもラングミュアの式に適合する。計算したラングミュア平衡吸着容量は、実験データと一致する。
図1は、両方の実験セットの平衡水銀吸着等温線を示すグラフである。データは四角で示され、計算したラングミュア等温線は、Br-PAC(中黒の四角と実線)と未処理の活性炭を使用した比較実験(白抜きの四角と破線)の両方で示される。ここで、x軸は平衡水溶液のHg濃度(mg/L)であり、y軸は吸着剤に吸着したHg(mg/g)である。
【表1】
【0065】
実施例2
0.6mm~2.4mmの粒径範囲を有する粒状活性炭を、米国特許第6,953,494号に記載されている手順で、高温にて気相Br2で処理して、3重量%の臭素含有量を有する臭素含有粒状活性炭を形成した。臭素含有粒状活性炭を、高さ15cm、直径1.5cmのいくつかの石英カラムの中に詰めた。合成廃水溶液を、HgCl2またはHg(NO3)2としてHg2+を、脱イオン水の中に添加することによって作製し、pH6.8±0.2でHg2+濃度を約4000ng/lにした。合成廃水溶液は、0.1、0.3、0.5及び1.0BV/分(BVは、ベッド体積)の異なる流量で各カラムを上から下に通過させた。流入液と流出液の試料を各カラムから3時間ごとに採取し、米国EPA法1631を使用して原子吸光分光計で試料の水銀含有量を分析した。
【0066】
本実施例で使用される臭素含有粒状活性炭は、0.8~1.0mmの粒径を有する、市販の活性炭よりはるかに効率的なものであり(Filtrasorb(登録商標)300、Calgon Corp.)、それを、テネシー州オークリッジのY-12プラント近くの水銀汚染された水で試験した。Filtrasorb(登録商標)300吸着剤について生成したデータは、下請け契約395064-14-AMU,Oak Ridge,Tennessee,June1998の下で、U.S.Department of Energy, Office of Environmental Managementのために調製した、T&N Associates,Mercury Treatability Study Final Report:Oak Ridge Y-12
Plant,Report BJC/OR-46で報告されている。結果を以下の表2にまとめる。
【表2】
【0067】
実施例3
この実施例は、臭素含有活性炭によって捕捉されると、不飽和溶液からの水銀が、臭素含有活性炭から浸出しないことを示す。
【0068】
煙道ガスから捕捉された水銀を含む、臭素含有粉末状活性炭(Br-PAC、5重量%のBr)を含むフライアッシュを、フライアッシュ/Br-PAC中のいくつかの異なる量の水銀について、異なるpH値の溶液中の水銀浸出について試験した。これらの試験で、各溶液(100mL)中の各フライアッシュ/Br-PAC試料(5g)を32±2回転/分で24時間回転させて、濾過し、その後濾過した液体の水銀を分析した。結果を以下の表3にまとめる。
【0069】
これらのTCLP試験は、水銀の浸出性が、pH値3、8及び11で、米国EPA浸出液制限よりもはるかに低いことを示す。フライアッシュ/Br-PAC試料中の水銀の量が、(比較)フライアッシュのみのベースライン試料よりも多くても、フライアッシュ/Br-PAC試料から浸出する水銀は、フライアッシュのみの試料より少ない。同様の結果が、塩基性浸出液(pH11.12、Na
2CO
3水溶液)中の水銀、及びほぼ中性の浸出液(pH8.03、水)中の水銀で報告された(Nelson,Jr.,S.,et
al.,”Evaluation of Fly Ash Containing B-PAC(商標)Brominated Mercury Sorbent”presented in 2005World of Coal Ash Conference,2005、未発表の会議プレゼンテーション)。
【表3】
【0070】
表3のデータは、種々のpH値で、フライアッシュ及び臭素含有粉末状活性炭を含む試料の浸出液中の水銀が、最小であることを示す。表3の「差」欄の負の値は、臭素含有粉末状活性炭に吸着された水銀が放出されなかっただけでなく、臭素含有粉末状活性炭が酢酸の抽出溶媒に存在する水銀を除去したことを示す。
【0071】
実施例4
土壌と混合した臭素含有粉末活性炭(Br-PAC)中の吸着した水銀の安定性を試験した。米国特許第6,953,494号のように調製したBr-PAC(8重量%のBr)は、種々の割合で土壌混合物と接触して置かれた。各試料を50ppmのHg(HgCl
2溶液として)で処理した後、32±2回転/分で24時間回転させた。次に、試料を水銀吸着容量について試験した。吸着試験が終了すると、各試料の固体(吸着剤と土壌を含む)が液体から分離され、固体試料が乾燥され、米国EPAの毒性指標浸出法(TCLP)の下で試験して、各試料から脱着した水銀の量を決定した。使用した条件は、0.1Mの酢酸、pH=2.88±0.5、固体と液体の比率(S/L)1:20だった。結果を表4にまとめる。
【表4】
【0072】
実施例5
Br-PAC(米国特許第6,953,494号のように形成)及びプレーンPAC上/中の水銀吸着の動的データを作成した。実験は、50ppmの水銀を含有する溶液を使用して実施した。各水銀溶液に異なる量の吸着剤を添加した。吸着剤を含有する溶液は、いくつかの時間間隔で採取された。結果を表5A~表5Dにまとめる。動的データは、Br-PACが約30分(0.5g/l)~約5分(1.5g/l)で安定した吸着状態に達し、プレーンPACは24時間で安定した状態に達していないことを示す。
【表5A】
【表5B】
【表5C】
【表5D】
【0073】
実施例6
酸性条件下で土壌と混合した臭素化粉末状活性炭(Br-PAC)中の吸着した水銀の安定性を試験した。米国特許第6,953,494号のように調製したBr-PAC(8重量%のBr)は、1重量%で土壌混合物と接触して置かれた。各試料を50ppmのHg(HgCl
2またはHg(NO
3)
2溶液として)で処理した後、32±2回転/分で24時間回転させた。次に、試料を水銀吸着容量について試験した。結果を表6にまとめる。
【表6】
【0074】
実施例7
Br-PACは、米国特許第6,953,494号に記載されているように作製した。いくつかのハロゲン含有吸着剤は、(1)ハロゲン化物塩の水溶液を活性炭または無機材料に添加し、よく混合してから、混合物を乾燥させる、または(2)比較的均一な混合物が得られるまで、粉末状ハロゲン化物塩を炭素または無機材料とブレンドする、のいずれかによって調製した。これらの臭素含有吸着剤は、合成水銀含有溶液から水銀を吸収する能力を調べるために試験した。
【0075】
ハロゲン化吸着剤を、反応ボトルに入れた。溶液は、HgCl
2またはHg(NO
3)
2で調製し、吸着剤を含有する反応ボトルに添加した。各反応ボトルには、同じ濃度のHg
2+が含まれていた。試料を32±2回転/分で24時間回転させて、得られた混合物のそれぞれをシリンジフィルター(0.45μm細孔膜)に通して、吸着剤を液体から分離した。未処理(プレーン)活性炭を使用して、並行して比較実験を行った。次に、各溶液から濾過した液体の水銀濃度を測定した。特に無機ハロゲン化物塩から作製したハロゲン化吸着剤の場合、パラメータは最適化されていなかった。結果を表7にまとめる。
【表7】
【0076】
本発明の更なる実施形態としては、限定するものではないが、以下が挙げられる。
【0077】
A)1つまたは複数の環境汚染物質を含む物質中の1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性を低減するための処理であって、前記処理は、
ハロゲン含有吸着剤を前記物質に添加する及び/または適用することであって、ここで、ハロゲン含有吸着剤は、臭素含有活性炭吸着剤、塩素含有活性炭吸着剤、ヨウ素含有活性炭吸着剤、臭素含有チャバザイト、臭素含有ベントナイト、臭素含有カオリナイト、または臭素含有シリカである、前記添加する及び/または適用することと、
それにより、物質中の1つまたは複数の環境汚染物質の少なくとも一部の環境利用可能性を低減させることと、を含む、前記処理。
【0078】
B)ハロゲン含有吸着剤が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約0.1~約20重量%のハロゲン含有量を有する、A)と同様の処理。
【0079】
C)ハロゲン含有吸着剤が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約0.5重量%~約15重量%のハロゲン含有量を有する、A)と同様の処理。
【0080】
D)ハロゲン含有吸着剤が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約2重量%~約12重量%のハロゲン含有量を有する、A)と同様の処理。
【0081】
E)ハロゲン含有吸着剤が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約3重量%~約8重量%のハロゲン含有量を有する、A)と同様の処理。
【0082】
F)物質が土壌である、A)~E)のいずれかと同様の処理。
【0083】
G)物質が堆積物である、A)~E)のいずれかと同様の処理。
【0084】
H)物質が土壌間隙水または堆積物間隙水である、A)~E)のいずれかと同様の処理。
【0085】
I)吸着剤が臭素含有活性炭であり、ハロゲン含有量が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約0.1重量%~約20重量%であり、物質が土壌、堆積物、土壌間隙水、または堆積物間隙水である、A)と同様のプロセス。
【0086】
J)ハロゲン含有量が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約0.5重量%~約15重量%、好ましくは約2重量%~約12重量%、より好ましくは約3重量%~約8重量%である、I)と同様の処理。
【0087】
K)吸着剤が、臭素含有チャバザイト、臭素含有ベントナイト、臭素含有カオリナイト、または臭素含有シリカであり、ハロゲン含有量が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約0.1重量%~約20重量%であり、物質が土壌、堆積物、土壌間隙水、または堆積物間隙水である、A)と同様の処理。
【0088】
L)ハロゲン含有量が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約0.5重量%~約15重量%、好ましくは約2重量%~約12重量%、より好ましくは約3重量%~約8重量%である、K)と同様の処理。
【0089】
M)吸着剤が塩素含有活性炭であり、ハロゲン含有量が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約0.1重量%~約20重量%であり、物質が土壌、堆積物、土壌間隙水、または堆積物間隙水である、A)と同様のプロセス。
【0090】
N)吸着剤がヨウ素含有活性炭であり、ハロゲン含有量が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約0.1重量%~約20重量%であり、物質が土壌、堆積物、土壌間隙水、または堆積物間隙水である、A)と同様のプロセス。
【0091】
O)ハロゲン含有量が、臭素として計算され、ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて約0.5重量%~約15重量%、好ましくは約2重量%~約12重量%である、K)と同様の処理。
【0092】
成分が、化学名または化学型により参照される別の物質(例えば、別の成分、溶液またはその他)と接触する前に存在する場合、本明細書または請求項のどこかで化学名または式により参照される成分は、単数または複数で記載されているかどうかにかかわらず確認される。そのような変化、変換、及び/または反応は、特定の成分を本開示に従うために必要な条件下で一緒にすることの自然な結果であるため、得られた混合物または溶液中で、化学変化、変換及び/または反応が発生したとしても、それは問題ではない。したがって、この成分は、所望の操作の実行または所望の組成物の形成に関連して一緒にされる成
分として識別される。また、以下の請求項が、現在時制(「含む」「である」など)で、物質、成分及び/または材料を参照する場合であっても、本開示による1つ以上の他の物質、成分及び/または材料と、それが最初に接触される、ブレンドされる、または混合される直前にそれがその時に存在した場合、参照は物質、成分または材料に対するものである。したがって、物質、成分、または材料は、本開示及び化学者の通常の技術に従って実施された場合、接触、ブレンドまたは混合の操作の過程で、化学反応または変換により元の同一性を失う場合があるという事実には、実施上の懸念はない。
【0093】
本発明は、本明細書に列挙される材料及び/または手順を含み得る、それらからなり得る、またはそれらから本質的になり得る。
【0094】
本明細書で使用する場合、本発明の組成物中のまたは本発明の方法で使用される、成分の量を修飾する「約」という用語は、例えば、現実世界での濃縮物の作製または溶液の使用における、典型的な測定及び使用される液体処理手順によって、これらの手順の不注意によるエラーによって、組成物の製造または方法の実行に使用される成分の製造、供給源、または純度の違いによって、などによって生じ得る、数的な量の変化を指す。約という用語は更に、特定の初期混合物から生じる組成物の異なる平衡条件に起因して異なる、量も包含する。「約」という用語で修飾されているかどうかにかかわらず、請求項にはその量と等価なものが包含される。
【0095】
本明細書で使用される冠詞「a」または「an」は、本明細書で使用する場合、特に明示的に示され得る場合を除き、その詳細な説明または請求項の範囲を、その冠詞が指す1つの要素に対して限定することを意図しておらず、それを制限するものと解釈されるべきではない。むしろ、冠詞「a」または「an」とは、本明細書で使用する場合、本文で別段明記されていない限り、1つ以上のそのような要素を網羅することを意図している。
【0096】
本発明は、1つまたは複数の好ましい実施形態に関して説明されてきたが、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、他の修正を行ってもよいことを理解されたい。
前記ハロゲン含有吸着剤が、臭素として計算され、前記ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて、約0.1~約20重量%のハロゲン含有量を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の処理。