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特開2023-154073キメラ抗原受容体免疫療法薬を投与する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154073
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体免疫療法薬を投与する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20231011BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20231011BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 38/25 20060101ALI20231011BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231011BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231011BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20231011BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20231011BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20231011BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231011BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231011BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20231011BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P35/02
A61K47/42
A61K47/20
A61K31/573
A61P43/00 121
A61K9/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K38/19
A61K38/38
A61K38/25
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/705
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/867 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023132752
(22)【出願日】2023-08-17
(62)【分割の表示】P 2020521585の分割
【原出願日】2018-10-18
(31)【優先権主張番号】62/574,159
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514266932
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kite Pharma, Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエゾレック ジェフリー エス.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者における2ライン以上の全身療法後の特定不能の再発性若しくは治療抵抗性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫又は濾胞性リンパ腫に起因するDLBCLの治療法を提供する。
【解決手段】患者にアキシカブタゲンシロロイセル懸濁液を静脈内注入により、体重1kg当たり約1×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞から約1×10個のCAR陽性生存T細胞の最大用量までの用量で投与することを含み、ここで、アキシカブタゲンシロロイセルは、CD28及びCD3ゼータの共刺激ドメインに連結された抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)を含むキメラ抗原受容体を発現するようにレトロウイルス形質導入によりex vivoで遺伝子改変された患者自身の採取されたT細胞を含む、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬である、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における2ライン以上の全身療法後の再発性若しくは治療抵抗性の特定不能びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫又は濾胞性リンパ腫に起因するDLBCLを治療する方法であって、
治療を必要とする患者にアキシカブタゲンシロロイセル懸濁液を静脈内注入により、体重1kg当たり約1×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞から約1×10個のCAR陽性生存T細胞の最大用量までの用量で投与することを含み、
ここで、アキシカブタゲンシロロイセルは、CD28及びCD3ゼータの共刺激ドメインに連結された抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)を含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにレトロウイルス形質導入によりex vivoで遺伝子改変された患者自身の採取されたT細胞を含む、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬である、方法。
【請求項2】
前記静脈内注入の時間は15分間から120分間の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記静脈内注入の時間は最長30分間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
注入容量は50mLから100mLの間である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記注入容量は約68mLである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫療法薬は注入バッグから注入される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記注入バッグは注入の間に撹拌される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫療法薬は解凍後3時間以内に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記懸濁液はアルブミンを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アルブミンは約2%(容量/容量)~3%(容量/容量)の量で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルブミンは約2.5%(容量/容量)の量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アルブミンはヒトアルブミンである、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記懸濁液はDMSOを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
患者における2ライン以上の全身療法後の再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫を治療する方法であって、
(a)治療を必要とする患者にCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を投与することと、
(b)前記患者を注入後に有害反応の徴候及び症状についてモニタリングすることと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫は、特定不能のびまん性大細胞型B
細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫又は濾胞性リンパ腫に起因するDLBCLである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記有害反応は、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、過敏反応、重症感染症、血球減少症及び低ガンマグロブリン血症からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記有害反応の徴候及び症状は、発熱、低血圧症、頻脈、低酸素症及び悪寒からなる群から選択され、心不整脈(心房性細動及び心室頻拍を含む)、心停止、心不全、腎不全、毛細血管漏出症候群、低血圧症、低酸素症、臓器毒性、血球貪食性リンパ組織球症/マクロファージ活性化症候群(HLH/MAS)、発作、脳症、頭痛、振戦、眩暈、失語症、せん妄、不眠症、不安、アナフィラキシー、発熱性好中球減少症、血小板減少症、好中球減少症、及び貧血症を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
有害反応の症状を治療するために有効量のトシリズマブを投与することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
有害反応の症状を治療するためにコルチコステロイドを投与することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記有害反応はサイトカイン放出症候群(CRS)である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
サイトカイン放出症候群(CRS)の徴候及び症状を、注入後約7日間にわたり少なくとも毎日モニタリングすることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記有害反応は神経毒性である、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
発作予防のために非鎮静型抗てんかん薬を投与することを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記有害反応は血球減少症である、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
エリスロポエチン、ダルベポエチンアルファ、血小板輸血、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の少なくとも1つを投与することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
サイトカインレベル及びケモカインレベルを測定することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
IL-6、IL-8、IL-10、IL-15、TNF-α、IFN-γ及びsIL2Rαの少なくとも1つのレベルが測定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞、約5%のジメチルスルホキシド(DMSO)及び約2.5%のヒトアルブミン(容量/容量)の懸濁液を含む容器。
【請求項29】
ヒトにおける2ライン以上の全身療法後の再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫を治療する方法であって、治療を必要とするヒトにCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を投与することを含む方法であって、
(a)患者にCD19指向性キメラ抗原受容体(CAR)陽性生存T細胞を含む組成物を
投与することと、
(b)投与後に有害反応の徴候及び症状について前記患者をモニタリングすることと、
(c)(b)においてグレード2を上回るサイトカイン放出症候群(CRS)が観察された場合に、トシリズマブを約8mg/kg(静脈内)の用量で1時間かけて投与し、静脈内輸液又は酸素補給の増加に反応しない場合に必要に応じて8時間毎にトシリズマブを繰り返すことと、
(d)(b)で観察されたCRS症状が(c)の24時間後に改善しない場合に、メチルプレドニゾロン約1mg/kg(静脈内)を1日2回投与又は同等のデキサメタゾン用量を投与して、事象がグレード1以下になるまでコルチコステロイド類の使用を続け、その後3日間かけて徐々に減少させることと、
(e)(b)においてグレード3のCRSが観察された場合に、トシリズマブを8mg/kg(静脈内)の用量で1時間かけて投与し、静脈内輸液又は酸素補給の増加に反応しない場合に必要に応じて8時間毎にトシリズマブを繰り返し、メチルプレドニゾロン1mg/kg(静脈内)を1日2回投与又は同等のデキサメタゾン用量を投与して、事象がグレード1以下になるまでコルチコステロイド類の使用を続け、その後3日間かけて徐々に減少させることと、
(f)(b)においてグレード4のCRSが観察された場合に、トシリズマブを約8mg/kg(静脈内)の用量で1時間かけて投与し、静脈内輸液又は酸素補給の増加に反応しない場合に必要に応じて8時間毎にトシリズマブを繰り返して、1日当たり約1000mg(静脈内)のメチルプレドニゾロンを3日間にわたり投与することと、
を含む、方法。
【請求項30】
患者における2ライン以上の全身療法後の再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫を治療する方法であって、治療を必要とする患者にCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を投与することを含む方法であって、
(a)前記患者にCD19指向性キメラ抗原受容体(CAR)陽性生存T細胞を含む組成物を投与することと、
(b)投与後に有害反応の徴候及び症状について前記患者をモニタリングすることと、
(c)サイトカイン放出症候群(CRS)及び/又は神経毒性が観察された場合に、サイトカイン放出症候群(CRS)及び/又は神経毒性を表1及び/又は表2に従って管理することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年10月18日に出願された米国仮特許出願第62/574,159号に対する優先権を主張するものであり、これらの内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本開示は、包括的にはT細胞療法薬に関し、より具体的にはキメラ抗原受容体(CAR)を含むCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト癌は、本質的に正常細胞で構成され、この正常細胞が遺伝的又はエピジェネティックな変換を受けて異常な癌細胞となる。そうすることで、癌細胞は、正常細胞によって発現されるものとは明確に異なるタンパク質及び他の抗原を発現し始める。これらの異常な腫瘍抗原は、身体の自然免疫系によって、癌細胞を特異的に標的とし死滅させるのに使用され得る。しかしながら、癌細胞は、Tリンパ球及びBリンパ球等の免疫細胞が癌細胞を標的とすることに成功しないように様々な機構を利用する。
【0004】
特定の腫瘍抗原と相互作用することができる結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞が特定の腫瘍抗原を発現する癌細胞を標的とし、死滅させることを可能とする。
【発明の概要】
【0005】
以下に詳細に記載されるように、本開示は部分的に、本明細書に開示される投与方法によりCAR T細胞免疫療法薬の有害な副作用が特定及び管理されるという驚くべき発見に基づいている。
【0006】
本明細書に記載される任意の態様又は実施の形態は、本明細書に開示されるあらゆる他の態様又は実施の形態と組み合わせることができる。本発明をその詳細な説明と共に説明したが、上述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示するものであって限定するものではないと解釈される。他の態様、利点及び変更形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【0007】
1つの態様では、本発明は、患者における2ライン以上の全身療法後の特定不能の再発性若しくは治療抵抗性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫又は濾胞性リンパ腫に起因するDLBCLを治療する方法であって、
治療を必要とする患者にアキシカブタゲンシロロイセル懸濁液を静脈内注入により、体重1kg当たり約1×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞から約1×10個のCAR陽性生存T細胞の最大用量までの用量で投与することを含み、
ここで、アキシカブタゲンシロロイセルは、採取されてレトロウイルス形質導入によりCD28及びCD3ゼータの共刺激ドメインに連結された抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)を含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにex vivoで遺伝子改変された患者自身のT細胞を含む、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬である、方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、患者における2ライン以上の全身療法後の再発性又は治療抵抗性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び原発性縦隔大細胞型B細胞リン
パ腫(PMBCL)を治療する方法であって、治療を必要とする患者にアキシカブタゲンシロロイセル懸濁液を静脈内注入により約0.4×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞の用量で投与することを含み、ここで、アキシカブタゲンシロロイセルは、採取されてレトロウイルス形質導入によりCD28及びCD3ゼータの共刺激ドメインに連結された抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)を含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにex vivoで遺伝子改変された患者自身のT細胞を含む、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬である、方法を提供する。
【0009】
幾つかの実施の形態では、前記静脈内注入の時間は15分間から120分間の間である。幾つかの実施の形態では、前記静脈内注入の時間は最長30分間である。
【0010】
幾つかの実施の形態では、前記注入容量は50mLから100mLの間である。幾つかの実施の形態では、前記注入容量は約68mLである。
【0011】
幾つかの実施の形態では、前記免疫療法薬は注入バッグから注入される。幾つかの実施の形態では、前記注入バッグは注入の間に撹拌される。
【0012】
幾つかの実施の形態では、前記免疫療法薬は解凍後3時間以内に投与される。
【0013】
幾つかの実施の形態では、前記懸濁液はアルブミンを更に含む。幾つかの実施の形態では、アルブミンは約2%(容量/容量)~3%(容量/容量)の量で存在する。幾つかの実施の形態では、アルブミンは約2.5%(容量/容量)の量で存在する。幾つかの実施の形態では、アルブミンはヒトアルブミンである。
【0014】
幾つかの実施の形態では、懸濁液はDMSOを更に含む。幾つかの実施の形態では、DMSOは約4%(容量/容量)~6%(容量/容量)の量で存在する。幾つかの実施の形態では、DMSOは約5%(容量/容量)の量で存在する。
【0015】
1つの態様では、本発明は、患者における2ライン以上の全身療法後の再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫を治療する方法であって、
(a)治療を必要とする患者にCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を投与することと、
(b)前記患者を注入後に有害反応の徴候及び症状についてモニタリングすることと、
を含む、方法を提供する。
【0016】
幾つかの実施の形態では、前記再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫は、特定不能のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫又は濾胞性リンパ腫に起因するDLBCLである。
【0017】
幾つかの実施の形態では、前記有害反応は、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、過敏反応、重症感染症、血球減少症及び低ガンマグロブリン血症からなる群から選択される。
【0018】
幾つかの実施の形態では、前記有害反応の徴候及び症状は、発熱、低血圧症、頻脈、低酸素症及び悪寒からなる群から選択され、心不整脈(心房性細動及び心室頻拍を含む)、心停止、心不全、腎不全、毛細血管漏出症候群、低血圧症、低酸素症、臓器毒性、血球貪食性リンパ組織球症/マクロファージ活性化症候群(HLH/MAS)、発作、脳症、頭痛、振戦、眩暈、失語症、せん妄、不眠症、不安、アナフィラキシー、発熱性好中球減少症、血小板減少症、好中球減少症及び貧血症を含む。
【0019】
幾つかの実施の形態では、上記方法はIL-6受容体阻害剤を投与することを更に含む。
【0020】
幾つかの実施の形態では、上記方法は有効量のトシリズマブを投与して有害反応の症状を治療することを更に含む。
【0021】
幾つかの実施の形態では、トシリズマブは約8mg/kgの用量で静脈内投与される。幾つかの実施の形態では、トシリズマブは約1時間かけて静脈内投与される。幾つかの実施の形態では、トシリズマブは約8時間毎に投与される。幾つかの実施の形態では、トシリズマブは約24時間以下の間に投与される。
【0022】
幾つかの実施の形態では、上記方法はコルチコステロイドを投与して有害反応の症状を治療することを更に含む。
【0023】
幾つかの実施の形態では、コルチコステロイドはメチルプレドニゾン又はデキサメタゾンの少なくとも1つである。
【0024】
幾つかの実施の形態では、メチルプレドニゾンは約1mg/kgの用量で静脈内投与される。幾つかの実施の形態では、メチルプレドニゾンは1日2回で投与される。幾つかの実施の形態では、メチルプレドニゾンは1日当たり約1000mgの用量で静脈内投与される。幾つかの実施の形態では、メチルプレドニゾンは約3日間にわたり静脈内投与される。
【0025】
幾つかの実施の形態では、デキサメタゾンは約10mgの用量で投与される。幾つかの実施の形態では、デキサメタゾンは約6時間毎に静脈内投与される。
【0026】
幾つかの実施の形態では、有害反応はサイトカイン放出症候群(CRS)である。幾つかの実施の形態では、サイトカイン放出症候群(CRS)の徴候及び症状について、注入後約7日間にわたり少なくとも毎日モニタリングされる。幾つかの実施の形態では、サイトカイン放出症候群(CRS)の徴候及び症状について、注入後約8日間、約9日間又は約10日間にわたり少なくとも毎日モニタリングされる。幾つかの実施の形態では、サイトカイン放出症候群(CRS)の徴候及び症状について、注入後約10日間にわたり少なくとも毎日モニタリングされる。幾つかの実施の形態では、サイトカイン放出症候群(CRS)の徴候及び症状について、注入後約4週間にわたりモニタリングされる。
【0027】
幾つかの実施の形態では、有害反応は神経毒性である。
【0028】
幾つかの実施の形態では、神経毒性の徴候及び症状について、注入後約8週間までモニタリングされる。
【0029】
幾つかの実施の形態では、上記方法は発作予防のために非鎮静型抗てんかん薬を投与することを更に含む。
【0030】
幾つかの実施の形態では、非鎮静型抗てんかん薬はレベチラセタムである。
【0031】
幾つかの実施の形態では、有害反応は血球減少症である。幾つかの実施の形態では、血球減少症は血小板減少症、好中球減少症及び/又は貧血である。
【0032】
幾つかの実施の形態では、上記方法はエリスロポエチン、ダルベポエチンアルファ、血小板輸血、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子、フィルグラスチム、
ペグフィルグラスチム又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の少なくとも1つを投与することを更に含む。
【0033】
幾つかの実施の形態では、上記方法はサイトカインレベル及びケモカインレベルを測定することを更に含む。幾つかの実施の形態では、IL-6、IL-8、IL-10、IL-15、TNF-α、IFN-γ及びsIL2Rαの少なくとも1つのレベルを測定する。
【0034】
1つの態様では、本発明は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞、約5%のジメチルスルホキシド(DMSO)及び約2.5%のヒトアルブミン(容量/容量)の懸濁液を含む容器を提供する。別の態様では、容器は約0.4×10個~2×10個のCD19指向性遺伝子改変自己T細胞(CAR陽性生存T細胞)の懸濁液を含む。
【0035】
幾つかの実施の形態では、容器は滅菌注入バッグである。幾つかの実施の形態では、注入バッグの容量は、約100mL、250mL、500mL、750mL、1000mL、1500mL、2000mL又は3000mLである。
【0036】
1つの態様では、本発明は、ヒトにおける2ライン以上の全身療法後の再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫を治療する方法であって、治療を必要とするヒトにCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を投与することを含む方法において、
(a)前記患者にCD19指向性キメラ抗原受容体(CAR)陽性生存T細胞を含む組成物を投与することと、
(b)前記患者を投与後に有害反応の徴候及び症状についてモニタリングすることと、
(c)(b)においてグレード2を上回るサイトカイン放出症候群(CRS)が観察された場合に、トシリズマブを約8mg/kg(静脈内)の用量で1時間かけて投与し、静脈内輸液又は酸素補給の増加に反応しない場合に必要に応じて8時間毎にトシリズマブを繰り返すことと、
(d)(b)で観察されたCRS症状が(c)の24時間後に改善が見られない場合に、メチルプレドニゾロン約1mg/kg(静脈内)を1日2回投与又は同等のデキサメタゾン用量を投与して、事象がグレード1以下になるまでコルチコステロイド類の使用を続け、その後3日間かけて徐々に減少させることと、
(e)(b)においてグレード3のCRSが観察された場合に、トシリズマブを8mg/kg(静脈内)の用量で1時間かけて投与し、静脈内輸液又は酸素補給の増加に反応しない場合に必要に応じて8時間毎にトシリズマブを繰り返し、メチルプレドニゾロン1mg/kg(静脈内)を1日2回投与又は同等のデキサメタゾン用量を投与して、事象がグレード1以下になるまでコルチコステロイド類の使用を続け、その後3日間かけて徐々に減少させることと、
(f)(b)においてグレード4のCRSが観察された場合に、トシリズマブを約8mg/kg(静脈内)の用量で1時間かけて投与し、静脈内輸液又は酸素補給の増加に反応しない場合に必要に応じて8時間毎にトシリズマブを繰り返して、1日当たり約1000mg(静脈内)のメチルプレドニゾロンを3日間にわたり投与することと、
を含む、方法を提供する。
【0037】
1つの態様では、本発明は、患者における2ライン以上の全身療法後の再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫を治療する方法であって、治療を必要とする患者にCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を投与することを含む方法において、
(a)前記患者にCD19指向性キメラ抗原受容体(CAR)陽性生存T細胞を含む組成物を投与することと、
(b)前記患者を投与後に有害反応の徴候及び症状についてモニタリングすることと、
(c)サイトカイン放出症候群(CRS)及び/又は神経毒性が観察された場合に、サイ
トカイン放出症候群(CRS)及び/又は神経毒性を表1及び/又は表2に従って管理することと、
を含む、方法を提供する。
【0038】
本開示の他の特徴及び利点は、実施例を含む以下の詳細な説明、及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示は、特定不能のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫及び濾胞性リンパ腫に起因するDLBCLを含む、2ライン以上の全身療法後の再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫を有する成人患者の治療に適応されるCD19 CAR遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を含む操作された細胞(例えば、T細胞)に関する。幾つかの実施形態では、本開示は、癌を患っている患者の治療のために操作されたT細胞を使用する治療方法を提供する。
【0040】
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を調製するために、患者自身のT細胞が採取され、レトロウイルス形質導入によりCD28及びCD3ゼータの共刺激ドメインに連結されたマウス抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)を含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにex vivoで遺伝子改変され得る。幾つかの実施形態では、CARは、4-1BB及びCD3ゼータの共刺激ドメインに連結されたマウス抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)を含む。抗CD19 CAR T細胞は増殖されて患者に注入し直され得る。その際、それらのT細胞は、CD19を発現する標的細胞を認識して排除し得る。YESCARTA(商標)(Axi-cel(商標)、アキシカブタゲンシロロイセル)は、そのようなCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の1つの例である。Kochenderfer, et al., (J Immunother 2009;32:689 702)を参照のこと。追加のCD19指向性CAR療法薬には、JCAR017、JCAR015、JCAR014、Kymriah(チサゲンレクロイセル)が含まれる。Sadelain et al. Nature Rev. Cancer Vol. 3 (2003)、Ruella et al., Curr Hematol Malig Rep., Springer, NY (2016)及びSadelain et al. Cancer Discovery (Apr 2013)を参照のこと。
【0041】
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、典型的には標準的な白血球アフェレーシス(leukapheresis)の手順を介して得られる患者の末梢血単核細胞から調製され
得る。単核細胞からT細胞が濃縮され、IL-2の存在下にて抗CD3抗体で活性化され、その後に、抗CD19 CAR導入遺伝子を含む複製不全レトロウイルスベクターで形質導入され得る。形質導入されたT細胞は細胞培養で増殖され、洗浄され、懸濁液に製剤化され、及び/又は凍結保存され得る。典型的には、遺伝子改変された自己T細胞を含む製品は、注入バッグ等の患者固有の注入容器中で冷凍された懸濁液として出荷のために手放す前に無菌試験に合格しなければならない。典型的には、製品は注入前に解凍される。
【0042】
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、T細胞に加えてNK細胞及びNK-T細胞を含み得る。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬製剤は、約5%のジメチルスルホキシド(DMSO)及び約2.5%のアルブミン(ヒト)(容量/容量)を含有する。
【0043】
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞は、CD19を発現する癌細胞及び正常B細胞に結合する。研究により、抗CD19 CAR T細胞がCD19を発現する標的細胞と結合した後に、CD28及びCD3ゼータの共刺激ドメインが下流のシグナル伝達カスケードを活性化し、それによりT細胞の活性化、増殖、エフェクター機能の獲得並びに炎症性サイトカイン及びケモカインの分泌がもたらされることが実証された。この一連の事象により、CD19を発現する細胞の死滅が引き起こされる。
【0044】
1つの態様では、本発明は、患者における2ライン以上の全身療法後の特定不能の再発性又は治療抵抗性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫又は濾胞性リンパ腫に起因するDLBCLを治療する方法であって、治療を必要とする患者にCD19指向性遺伝子改変自己T細胞懸濁液を静脈内注入によって体重1kg当たり約1×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞から約1×10個のCAR陽性生存T細胞の最大用量までの用量で投与することを含む、方法を提供する。
【0045】
定義
本発明がより容易に理解されるように、まず特定の用語を以下に定義する。以下の用語及び他の用語に対する更なる定義は、本明細書を通して記載される。
【0046】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、数量を特定していないもの(the singular forms "a," "an" and "the")は、文脈より別段の明確な指示がない限り複数の指示対象を含む。
【0047】
具体的に述べられない又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「又は」の用語は「又は」と「及び」の両方を含み、それらを包含すると理解される。
【0048】
本明細書において使用される場合、「及び/又は」の用語は、2つの指定される特徴又は成分の各々ともう一方とを含む、又はもう一方を含まない具体的な開示として理解される。したがって、本明細書において「A及び/又はB」等の句で使用される「及び/又は」の用語は、A及びB;A又はB;A(単独);及びB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」等の句において使用される「及び/又は」の用語は、A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)の態様の各々を包含することが意図される。
【0049】
本明細書で使用される「例えば」及び「すなわち」の用語は、限定を意図せずに例として使用されるにすぎず、本明細書において明らかに列挙されるそれらの項目のみを指すものと解釈されるべきではない。
【0050】
「以上」、「少なくとも」、「それよりも多く」等の用語、例えば「少なくとも1つ」は、限定されないが、示される値よりも少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000以上多い値を含むと理解される。また、任意のより大きな数、又はその間の分数も含まれる。
【0051】
逆に、「以下」の用語は示される値よりも小さい各値を含む。例えば、「100ヌクレオチド以下」は、100個、99個、98個、97個、96個、95個、94個、93個、92個、91個、90個、89個、88個、87個、86個、85個、84個、83個、82個、81個、80個、79個、78個、77個、76個、75個、74個、73個、72個、71個、70個、69個、68個、67個、66個、65個、64個、63個、62個、61個、60個、59個、58個、57個、56個、55個、54個、53個、52個、51個、50個、49個、48個、47個、46個、45個、44個、43個、42個、41個、40個、39個、38個、37個、36個、35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、1個及び0個のヌクレオチドを含む。また、任意のより小さな数、又はその間の分数も含まれる。
【0052】
「複数」、「少なくとも2つ」、「2以上」、「少なくとも第2の」等の用語は、限定されないが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000以上を含むと理解される。また、任意のより大きな数、又はその間の分数も含まれる。
【0053】
明細書を通して、「含んでいる、含む(comprising)」の文言、又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」等の変化形は、示される要素、整数若しく
は工程、又は要素、整数若しくは工程の群を含むことを含意するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を排除しないと理解される。本明細書において「含んでいる、含む」の言葉と共に態様が記載される場合はいつでも、「からなる」及び/又は「から本質的になる」の用語で記載される他の類似の態様も提供されると理解される。
【0054】
具体的に述べられておらず又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「約」の用語は、当業者によって決定される特定の値又は組成に対する許容可能な誤差範囲に含まれる値又は組成を指し、その値又は組成がどのように測定され又は決定されるのか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」又は「およそ」は、当該技術分野における1回の実施当たりの1以上の標準偏差の範囲内を意味し得る。「約」又は「およそ」は、最大10%(すなわち±10%)の範囲を意味し得る。したがって、「約」は、示される値よりも10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、又は0.001%大きい又は小さい範囲に含まれると理解され得る。例えば、約5mgは、4.5mg~5.5mgの間の任意の量を含み得る。さらに、特に生物学的なシステム又はプロセスに関して、上記用
語は、或る値の最大10倍又は最大5倍を意味する場合がある。特定の値又は組成が本開示で提供される場合、別段の指示がない限り、「約」又は「およそ」の意味は、その特定の値又は組成に対する許容可能な誤差の範囲に含まれるとされる。
【0055】
本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、パーセンテージの範囲、比率範囲、又は整数の範囲は、別段の指示がない限り、述べられる範囲に含まれる任意の整数、また適切な場合には、その分数(或る整数の10分の1、及び100分の1等)の値を含むものと理解される。
【0056】
本明細書で使用される単位、接頭辞及び記号は、それらの国際単位系(SI:Systeme International de Unites)の容認される形態で提示される。数値範囲は、その範囲を規
定する数字を含む。
【0057】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、この開示が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Juo, "The Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology", 2nd ed., (2001), CRC Press、"The Dictionary of Cell & Molecular Biology", 5th ed., (2013),
Academic Press、及び"The Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology", Cammack et al. eds., 2nd ed, (2006), Oxford University Pressは、この開示で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供する。
【0058】
「投与すること、投与する(Administering)」は、当業者に知られている様々な方法
及び送達システムのいずれかを使用する、被験体に対する薬剤の物理的な導入を指す。本明細書に開示される製剤に対する例示的な投与経路として、例えば注射又は点滴による静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊柱又は他の非経口的な(parenteral:腸管外)投与経路が挙げられる。本明細書で使用される「非経口投与」の句は、経腸及び局所の投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び点滴、また同様にin vivo電気穿孔を含む。幾つかの実施形態では、上記製剤は、非経口的ではない経路、例えば経口で投与される。他の非経口的ではない経路として、局所、表皮、又は粘膜の投与経路、例えば、鼻腔内、経膣的、直腸、舌下又は局所的なものが挙げられる。また、投与は、例えば1回、複数回、及び/又は1以上の延長された期間に亘って行われ得る。
【0059】
「抗体」(Ab)の用語は、限定されず、抗原に特異的に結合する糖タンパク質免疫グロブリンを含む。一般に、抗体は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖、又はそれらの抗原結合分子を含み得る。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、すなわちCH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメイン、すなわちCLを含む。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存される領域が介在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細分され得る。VH及びVLはそれぞれ、アミノ末端からカルボキシ末端にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4の順で並ぶ、3つのCDR及び4つのFRを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。Abの定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主の組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0060】
抗体として、例えば、モノクローナル抗体、組み換えにより生成された抗体、単一特異的抗体、多重特異的抗体(二重特異的抗体を含む)、ヒト抗体、操作された抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、免疫グロブリン、合成抗体、2本の重鎖分子及び2本の軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-抗体重鎖対、イントラボディ(intrabodies)、抗体融合体(本明細書では「抗
体コンジュゲート」と称されることがある)、ヘテロコンジュゲート抗体、単一ドメイン抗体、一価抗体、単鎖抗体又は単鎖Fv(scFv)、ラクダ化抗体、アフィボディ(affybodies)、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば抗-抗-Id抗体を含む)、ミニボディ(minibodies)、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣物」と称されることがある)、及び上記のいずれかの抗原結合フラグメントが挙げられ得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ポリクローナル抗体集団を指す。
【0061】
「抗原結合分子」、「抗原結合部分」又は「抗体フラグメント」は、抗体の抗原結合部(例えばCDR)を含む任意の分子を指し、この分子は該抗体に由来する。抗原結合分子は、抗原相補性決定領域(CDR)を含み得る。抗体フラグメントの例として、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント、dAb、直鎖抗体、scFv抗体、並びに抗原結合分子から形成される多重特異性抗体が挙げられる。ペプチボディ(Peptibodies)(すなわち、ペプチド結合ドメインを含むFc融合分子)は、
好適な抗原結合分子の別の例である。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は腫瘍細胞上の抗原に結合する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は、過剰増殖性疾患(hyperproliferative disease)に関与する細胞上の抗原、又はウイルス若しくは細菌の抗原に結合する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子はCD19に結合する。更なる実施形態では、抗原結合分子は、その1以上の相補性決定領域(CDR)を含む、抗原に特異的に結合する抗体フラグメントである。更なる実施形態では、抗原結合分子は単鎖可変フラグメント(scFv)である。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は、アビマー(avimers)
を含む、又はそれからなる。
【0062】
「抗原」は、免疫応答を誘発する、又は抗体若しくは抗原結合分子によって結合されることが可能な任意の分子を指す。免疫応答は、抗体産生若しくは特定の免疫適格細胞(immunologically-competent cells)の活性化のいずれか、又はそれらの両方を含み得る。
当業者は、実質的に全てのタンパク質又はペプチドを含む任意の高分子が抗原としての役割を果たし得ることを容易に理解する。抗原は内因性に発現され得て、すなわちゲノムDNAによって発現され得るか、又は組み換えによって発現され得る。抗原は、癌細胞等の特定の組織に特異的となり得るか、又は広く発現され得る。さらに、より大きな分子のフラグメントが抗原として作用し得る。幾つかの実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。
【0063】
「CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬」は、キメラ抗原受容体(CAR)陽性T細胞の懸濁液を指す。そのような免疫療法薬の1つの例は、Kite Pharmaceuticals, Inc.社により開発されたアキシカブタゲンシロロイセル(Axi-cel(商標)、YESCARTA(商標)とも呼ばれる)である。
【0064】
「中和する、中和すること」の用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的効果を妨げる又は減少させる抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントを指す。幾つかの実施形態では、抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントは、リガンド上の結合部位を直接遮断する、或いは間接的な手段(リガンドの構造の又はエネルギーの変更等)によってリガンドの結合能を変更する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントは、結合されるタンパク質が生体機能を実施するのを妨げる。
【0065】
「自己」の用語は、後に再導入されることになっているのと同じ個体に由来する任意の材料を指す。例えば、本明細書に記載される操作された自己細胞療法(eACT(商標))は、患者からのリンパ球の収集を含み、該リンパ球は、その後、例えばCARコンストラクトを発現するように操作した後、同じ患者に戻される(administered back)。
【0066】
「同種異系」の用語は、一個体に由来する任意の材料を指し、該材料はその後、同種の別の個体に導入される(例えば同種異系T細胞移植)。
【0067】
「形質導入」及び「形質導入された」の用語は、外来DNAがウイルスベクターによって細胞へと導入されるプロセスを指す(Jones et al., "Genetics: principles and analysis," Boston: Jones & Bartlett Publ. (1998)を参照されたい)。幾つかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、DNAベクター、RNAベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタイン-バールウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルス随伴ベクター、レンチウイルスベクター、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0068】
「癌」は、身体における異常な細胞の制御されていない増殖を特徴とする、幅広い各種疾患のグループを指す。制御されていない細胞の分裂及び増殖は、隣接する組織に侵入して、更にリンパ系又は血流によって身体の離れた部分へと転移し得る、悪性腫瘍の形成をもたらす。「癌」又は「癌組織」は、腫瘍を含む場合がある。本明細書に開示の方法によって治療され得る癌の例として、限定されないが、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び他の白血球の悪性腫瘍(leukocyte malignancies)を含む免疫系の癌が挙げられる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の方法は、例えば、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC:primary mediastinal large B cell lymphoma)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse
large B cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫(transformed follicular lymphoma)、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL:splenic marginal zone
lymphoma)、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟
組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性又は急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病(chronic myeloid leukemia)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、幼少期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カ
ポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、石綿によって誘導されるものを含む、環境によって誘導される癌、他のB細胞悪性腫瘍、及び上記癌の組み合わせに由来する腫瘍の腫瘍サイズを減少するため使用され得る。幾つかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。特定の癌は、化学療法又は放射線療法に反応性となり得るが、そうでなければその癌は難治性となり得る。難治性癌は、外科的処置に適用できない癌を指し、その癌は最初に化学療法若しくは放射線療法に無反応であるか、又はその癌は経時的に無反応となるいずれかである。
【0069】
本明細書に使用される「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移の数の減少、全体生存期間又は無増悪生存期間の増加、平均余命の増加、又は腫瘍と関係する様々な生理学的症状の改善として提示され得る、生物学的効果を指す。また、抗腫瘍効果は、腫瘍の発生の予防、例えばワクチンを指す場合がある。
【0070】
本明細書で使用される「サイトカイン」は、特異抗原との接触に反応して1つの細胞に
よって放出される非抗体タンパク質を指し、ここで、サイトカインは第2の細胞と相互作用して、第2の細胞における反応を媒介する。本明細書で使用される「サイトカイン」は、1つの細胞集団によって放出され、細胞間メディエーターとして別の細胞に対して作用するタンパク質を指すことを意味する。サイトカインは、細胞によって内因性に発現され得るか、又は被験体に投与され得る。サイトカインは、マクロファージ、B細胞、T細胞、及び肥満細胞を含む免疫細胞によって放出されて、免疫応答を伝播し得る。サイトカインは、レシピエント細胞において様々な反応を誘導し得る。サイトカインは、ホメオスタシスサイトカイン(homeostatic cytokines)、ケモカイン、炎症誘発性サイトカイン、
エフェクター及び急性期タンパク質を含み得る。例えば、インターロイキン(IL)7及びIL-15を含むホメオスタシスサイトカインは、免疫細胞の生存及び増殖を促進し、炎症誘発性サイトカインは炎症反応を促進し得る。ホメオスタシスサイトカインの例として、限定されないが、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-15及びインターフェロン(IFN)ガンマが挙げられる。炎症誘発性サイトカインの例として、限定されないが、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-13、IL-17a、腫瘍壊死因子(TNF)-アルファ、TNF-ベータ、線維芽細胞成長因子(FGF)2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、可溶性細胞間接着分子1(sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(sVCAM-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF-C、VEGF-D及び胎盤増殖因子(PLGF)が挙げられる。エフェクターの例として、限定されないが、グランザイムA、グランザイムB、可溶性Fasリガンド(sFasL)及びパーフォリンが挙げられる。急性期タンパク質の例として、限定されないが、C反応性タンパク質(CRP)及び血清アミロイドA(SAA)が挙げられる。
【0071】
「ケモカイン」は細胞走化性又は指向性運動を媒介するサイトカインの一種である。ケモカインの例として、限定されないが、IL-8、IL-16、エオタキシン、エオタキシン-3、マクロファージ由来ケモカイン(MDC又はCCL22)、単球走化性タンパク質1(MCP-1又はCCL2)、MCP-4、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、MIP-1a)、MIP-1β(MIP-1b)、ガンマ誘導性タンパク質10(IP-10)、並びに胸腺及び活性化制御ケモカイン(TARC又はCCL17)が挙げられる。
【0072】
「治療的有効量」、「有効用量」、「有効量」又は「治療的に有効な投薬量」の治療剤、例えば操作されたCAR T細胞は、単独で又は別の治療剤と組み合わせて使用された場合に、疾患の発症から被験体を保護する、又は疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度及び持続期間の増加、若しくは疾患の罹患に起因する機能障害若しくは身体障害の予防によって明示される疾患の退縮を促進する、任意の量である。治療剤の疾患の退縮を促進する能力は、熟練した医師に知られている様々な方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト被験体において、ヒトにおける効能を予測する動物モデル系において、又はin vitroアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによって評価され得る。
【0073】
本明細書で使用される「リンパ球」の用語は、ナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞、T細胞、又はB細胞を含む。NK細胞は、生得免疫系の主な成分を占める細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種である。NK細胞は腫瘍及びウイルスによって感染された細胞を拒絶する。NK細胞は、アポトーシス又はプログラム細胞死のプロセスによって作用する。NK細胞は、細胞を死滅させるために活性化を必要としないことから、「ナチュラルキラー」と名付けられた。T細胞は、細胞媒介免疫(抗体が関与しない)において主な役割を果たす。そのT細胞受容体(TCR)は、他の種類のリンパ球からそれら自体を分化させる。免疫系の特殊化された器官である胸腺は、主としてT細胞の成熟を担う。6種類のT細胞、すなわち、ヘルパーT細胞(例えばCD4陽性細胞)、細胞傷害性T
細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、T-キラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8陽性T細胞又はキラーT細胞としても知られる)、メモリーT細胞((i)ナイーブ細胞のようなステムメモリーTSCM細胞は、CD45RO陰性、CCR7陽性、CD45RA陽性、CD62L陽性(L-セレクチン)、CD27陽性、CD28陽性及びIL-7Rα陽性であるが、それらは、大量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3及びLFA-1を発現し、メモリー細胞に特有の多数の機能的な属性を示す;(ii)セントラルメモリーTCM細胞は、L-セレクチン及びCCR7を発現し、IFNγ又はIL-4ではなくIL-2を分泌する;並びに(iii)エフェクターメモリーTEM細胞はLセレクチンもCCR7も発現しないものの、IFNγ及びIL-4のようなエフェクターサイトカインを産生する)、調節性T細胞(Treg、サプレッサーT細胞又はCD4陽性CD25陽性調節性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)及びガンマデルタT細胞が存在する。一方、B細胞は、液性免疫(抗体が関与する)で最も重要な役割を果たす。B細胞は抗体及び抗原を作り、抗原提示細胞(APC)の役割を発揮し、抗原相互作用による活性化後にメモリーB細胞となる。哺乳動物において、未成熟B細胞はその名前が由来する骨髄で形成される。
【0074】
「遺伝子操作された」又は「操作された」の用語は、限定されないが、コーディング領域若しくは非コーディング領域、又はそれらの一部分の欠失、又はコーディング領域若しくはその一部分の挿入を含む、細胞のゲノムを修飾する方法を指す。幾つかの実施形態では、修飾される細胞はリンパ球、例えば、患者又はドナーのいずれかから得ることができるT細胞である。T細胞は、例えば、細胞のゲノムに組み込まれる、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)等の外来コンストラクトを発現するように修飾され得る。
【0075】
「免疫応答」は、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌性若しくは他の異常な細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合、正常なヒトの細胞若しくは組織の選択的な標的化、それらへの結合、それらに対する損傷、それらの破壊、及び/又は脊椎動物の身体からのそれらの排除をもたらす、免疫系の細胞(例えばTリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、及び好中球)及びこれらの細胞のいずれか又は肝臓によって産生される可溶性高分子(Ab、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指す。
【0076】
「免疫療法」の用語は、免疫応答を誘導する、増強する、抑制する、或いは変更することを含む方法による、疾患に冒された、又は疾患にかかる若しくは疾患の再発を患うリスクがある被験体の治療を指す。免疫療法の例として、限定されないが、T細胞療法が挙げられる。T細胞療法は、養子T細胞療法(adoptive T cell therapy)、腫瘍浸潤リンパ
球(TIL)免疫療法、自己細胞治療、操作された自己細胞療法(eACT(商標))、及び同種異系T細胞移植を含み得る。しかしながら、当業者は、本明細書に開示されるコンディショニング法(conditioning methods)が任意の移植T細胞療法の有効性を増強し得ることを認識するであろう。T細胞療法の例は、米国特許出願公開第2014/0154228号及び同第2002/0006409号、米国特許第7,741,465号、米国特許第6,319,494号、米国特許第5,728,388号及び国際公開第2008/081035号に記載される。
【0077】
免疫療法のT細胞は、当該技術分野において知られている任意の起源に由来し得る。例えば、T細胞は、in vitroで造血幹細胞集団から分化させることもでき、又はT細胞は被験体から得ることもできる。T細胞を、例えば末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織及び腫瘍から得ることができる。さらに、T細胞は、当該技術分野において利用可能な1以上のT細胞系統に由来してもよい。また、T細胞は、FICOLL(商標)分離及び/
又はアフェレーシス等の当業者に知られている任意の多くの技術を使用して被験体から収集された血液単位から得ることもできる。T細胞療法用のT細胞を単離する更なる方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示され、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0078】
「eACT(商標)」と略記することができ、養子細胞移植としても知られる「操作された自己細胞療法」の用語は、患者自身のT細胞を収集し、その後、1以上の特定の腫瘍細胞又は悪性腫瘍の細胞表面上に発現される1以上の抗原を認識し、標的とするように遺伝的に変更するプロセスである。T細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作され得る。CAR陽性(+)T細胞は、少なくとも1つの共刺激ドメイン及び少なくとも1つの活性化ドメインを含む細胞内シグナル伝達部に連結された特定の腫瘍抗原に対する特異性を有する細胞外単鎖可変フラグメント(scFv)を発現するように操作される。CAR scFvは、例えば、全ての正常なB細胞と、限定されるものではないが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、特段の記載がない限り、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、及び濾胞性リンパ腫に起因するDLBCL、NHL、CLL、及び非T細胞ALLを含むB細胞悪性腫瘍とを含むB細胞系譜における細胞により発現される膜貫通タンパク質であるCD19を標的とするように設計することができる。CAR T細胞療法及びコンストラクトの例は、米国特許出願公開第2013/0287748号、同第2014/0227237号、同第2014/0099309号、及び同第2014/0050708号に記載され、これらの引用文献はそれらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0079】
本明細書で使用される「患者」は、癌(例えばリンパ腫又は白血病)に冒された任意のヒトを含む。「被験体」及び「患者」の用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0080】
本明細書で使用される「in vitro細胞」の用語は、ex vivoで培養される任意の細胞を指す。特に、in vitro細胞はT細胞を含み得る。
【0081】
「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」の用語は区別なく使用され、ペプチド結合によって共有結合的に連結されたアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含み、タンパク質又はペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いにつながれた2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用されるように、上記用語はまた、当該技術分野において、例えばペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーと一般的に称される短い鎖と、当該技術分野において一般的にはタンパク質と称され、多くの種類が存在する、より長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」として、例えば、特に、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同性のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類縁体、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0082】
本明細書で使用される「刺激」は、その同族のリガンドと刺激分子を結合することによって誘導される一次応答を指し、ここで、その結合はシグナル伝達事象を媒介する。「刺激分子」は、T細胞上の分子、例えば、抗原提示細胞上に存在する同族の刺激リガンドと特異的に結合するT細胞受容体(TCR)/CD3複合体を指す。「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞等)上に存在する場合、T細胞上の刺激分子と特異的に結合することができ、それによって、限定されないがT細胞の活性化、免疫応答の開始、増殖等を含むT細胞による一次応答を媒介するリガンドである。刺激リガンドとして、限定されないが、抗CD3抗体、ペプチドで充填されたMHCクラスI分子、スーパーアゴニスト抗CD2抗体、及びスーパーアゴニスト抗CD28抗体が挙げら
れる。
【0083】
本明細書で使用される「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーション等の一次シグナルと組み合わせて、限定されないがT細胞の増殖及び/又は主要な分子の上方制御若しくは下方制御等のT細胞の応答をもたらすシグナルを指す。
【0084】
本明細書で使用される「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族の共同刺激分子を特異的に結合する抗原提示細胞上の分子を含む。共刺激リガンドの結合は、限定されないが、T細胞の増殖、活性化、分化等を含むT細胞応答を媒介するシグナルを提供する。共刺激リガンドは、一次シグナルに加えて、刺激分子によって、例えば、ペプチドがロードされた主要組織適合複合体(MHC)分子とのT細胞受容体(TCR)/CD3複合体の結合によって提供されるシグナルを誘導する。共刺激リガンドとして、限定されないが、3/TR6、4-1BBリガンド、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD30リガンド、CD40、CD7、CD70、CD83、ヘルペスウイルスエントリーメディエーター(HVEM:herpes virus entry mediator)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、ILT4、免疫グロブリン様
転写物(ILT:immunoglobulin-like transcript)3、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、B7-H3と特異的に結合するリガンド、リンフォトキシンベータ受容体、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)、MHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)、OX40リガンド、PD-L2、又はプログラム細胞死(PD)L1が挙げられ得る。共刺激リガンドとして、限定されず、4-1BB、B7-H3、CD2、CD27、CD28、CD30、CD40、CD7、ICOS、CD83と特異的に結合するリガンド、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、ナチュラルキラー細胞受容体C(NKG2C)、OX40、PD-1、又は腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14又はLIGHT)等のT細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、限定されないが増殖等のT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーである。共刺激分子としては、限定されないが、を含む、「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、限定されないが増殖等のT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーである。共刺激分子として、限定されないが、4-1BB/CD137、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD33、CD45、CD100(SEMA4D)、CD103、CD134、CD137、CD154、CD16、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD22、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3(アルファ;ベータ;デルタ;イプシロン;ガンマ;ゼータ)、CD30、CD37、CD4、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD5、CD64、CD69、CD7、CD80、CD83リガンド、CD84、CD86、CD8アルファ、CD8ベータ、CD9、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、ICOS、Igアルファ(CD79a)、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、LIGHT、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;TNFSF14)、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD11a/CD18))、MHCクラスI分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX40、PAG/Cbp
、PD-1、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A;Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF、TNFr、TNFR2、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1若しくはVLA-6、又はそれらのフラグメント、短縮物(truncations)、若し
くは組み合わせが挙げられる。
【0086】
「減少する、減少させる(reducing)」及び「減じる(decreasing)」の用語は、本明細書において区別なく使用され、本来よりも少ない、あらゆる変化を示す。「減少する、減少させる」及び「減じる」は測定前と測定後の比較を必要とする、相対的な用語である。「減少する、減少させる」及び「減じる」は完全な欠乏を含む。
【0087】
被験体の「治療(Treatment)」又は被験体を「治療する、治療すること(treating)
」は、症状、合併症若しくは病状の発症、進行、発現、重症度若しくは再発、又は疾患と関連する生化学的指標の転換、緩和、改善、阻害、遅延又は予防の目的で、被験体に対して行われる任意の種類の処置若しくはプロセス、又は被験体に対する有効成分の投与を指す。幾つかの実施形態では、「治療」又は「治療する、治療すること」は部分寛解を含む。別の実施形態では、「治療」又は「治療する、治療すること」は完全寛解を含む。
【0088】
本発明の様々な態様は、以下のサブセクションに更に詳細に記載される。
【0089】
キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体(CAR又はCAR-T)は、遺伝子操作された受容体である。これらの操作された受容体は、当該技術分野で知られている技術によりT細胞を含む免疫細胞に容易に挿入され得て、その細胞によって発現され得る。CARにより、単一の受容体は、特異抗原を認識するとともに、その抗原に結合した場合に免疫細胞を活性化させてその抗原を持っている細胞を攻撃して破壊するよう、プログラム化され得る。これらの抗原が腫瘍細胞上に存在する場合、CARを発現する免疫細胞は、腫瘍細胞を標的とし、死滅させることができる。
【0090】
操作されたT細胞及び使用
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、特定不能のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫及び濾胞性リンパ腫に起因するDLBCLを含む、2ライン以上の全身療法後の再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者の治療に適応される。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、アキシカブタゲンシロロイセル(Axi-cel(商標)、YESCARTA(商標))である。
【0091】
本開示の細胞は、被験体から得られるT細胞を通じて得ることができる。T細胞は、例えば末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得られてもよい。さらに、T細胞は、当該技術分野において利用可能な1以上のT細胞株に由来し得る。また、T細胞は、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス等の当業者に知られている数多くの技術を使用して被験体から収集された血液単位から得られてもよい。幾つかの実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して血漿画分を除去し、後の処理に適切なバッファー又は培地に入れる。幾つかの実施形態では、細胞をPBSで洗浄する。理解されるように、洗浄工程は、例えばCobe(商標)2991細胞処理装置、Baxter CytoMate(商標)等の半自動フロースルー遠心分離機等を使用することによって使用され得る。幾つかの実施形態では、洗浄された細胞を1以上の生体適合性のバッファー、又はバッファーを含む若しくは含まない他の生理食塩水溶液に再懸濁する。幾つかの実施形態
では、アフェレーシス試料の望ましくない成分が除去される。T細胞療法用にT細胞を単離する追加の方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示され、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0092】
幾つかの実施形態では、T細胞は、例えば赤血球の溶解及びPERCOLL(商標)勾配による遠心分離を使用することによる単球の枯渇によってPBMCから単離される。幾つかの実施形態では、CD4陽性、CD8陽性、CD28陽性、CD45RA陽性及びCD45RO陽性のT細胞等のT細胞の特定の亜集団は、当該技術分野において知られている正又は負の選択技術によって更に単離される。例えば、負の選択によるT細胞集団の富化は、負に選択される細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせによって遂行され得る。幾つかの実施形態では、負に選択される細胞に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する負の磁気免疫付着(negative magnetic immunoadherence)又はフローサイトメトリーによる細胞の選別及び/又は選択を使用する
ことができる。例えば、負の選択によってCD4陽性細胞を富化するため、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD8、CD11b、CD14、CD16、CD20及びHLA-DRに対する抗体を含む。幾つかの実施形態では、フローサイトメトリー及び細胞選別は、本開示における使用に対する目的の細胞集団を単離するために使用される。
【0093】
幾つかの実施形態では、PBMCは、本明細書に記載される方法を使用して、免疫細胞(CAR等)により遺伝子修飾に直接使用される。幾つかの実施形態では、PBMCを単離した後、Tリンパ球を更に単離し、遺伝子修飾及び/又は拡大の前又は後のいずれかに、細胞傷害性Tリンパ球とヘルパーTリンパ球の両方を、ナイーブ、メモリー、及びエフェクターのT細胞亜集団へと選別する。
【0094】
幾つかの実施形態では、CD8陽性細胞は、これら各種のCD8陽性細胞と関連する細胞表面抗原を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、及びエフェクター細胞へと更に選別される。幾つかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞の表現型マーカーの発現は、CCR7、CD3、CD28、CD45RO、CD62L、及びCD127を含み、グランザイムBに対して陰性である。幾つかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD8陽性、CD45RO陽性及びCD62L陽性のT細胞である。幾つかの実施形態では、エフェクターT細胞は、CCR7、CD28、CD62L及びCD127に対して陰性であり、グランザイムB及びパーフォリンに対して陽性である。幾つかの実施形態では、CD4陽性T細胞は亜集団へと更に選別される。例えば、CD4陽性ヘルパーT細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞及びエフェクター細胞へと選別され得る。
【0095】
幾つかの実施形態では、免疫細胞、例えばT細胞は、単離に続いて、既知の方法を使用して遺伝子修飾されるか、又は遺伝子修飾に先だってin vitroで免疫細胞が活性化され、拡大される(又は、前駆細胞の場合、分化される)。別の実施形態では、免疫細胞、例えばT細胞は、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体によって遺伝子修飾され(例えば、CARをコードする1以上のヌクレオチド配列を含むウイルスベクターによって形質導入される)、次いでin vitroで活性化及び/又は拡大される。T細胞を活性化及び拡大する方法は当該技術分野において知られており、例えば米国特許第6,905,874号、同第6,867,041号、及び同第6,797,514号、並びにPCT公報国際公開第2012/079000号に記載され、それらの内容は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。一般的には、かかる方法は、PBMC又は単離されたT細胞と、一般的にはビーズ又は他の表面に付着された抗CD3抗体及び抗CD28抗体等の刺激物質及び共刺激物質とを、IL-2等の適切なサイトカインを含む培養培地中で接触させることを含む。同じビーズに付着された抗CD3抗体及び抗CD28抗体は、「代理」抗原提示細胞(APC)としての役割を果たす。一例は、ヒトT細胞の
生理学的な活性化に対するCD3/CD28活性化因子/刺激因子システムである、Dynabeads(商標)システムである。他の実施形態では、米国特許第6,040,177号及び同第5,827,642号、並びにPCT公報国際公開第2012/129514号(それらの内容は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されるような方法を使用して、フィーダー細胞、並びに適切な抗体及びサイトカインによって、T細胞は活性化され、刺激されて増殖する。
【0096】
幾つかの実施形態では、T細胞はドナー被験体から得られる。幾つかの実施形態では、ドナー被験体は、癌又は腫瘍に冒されたヒト患者である。幾つかの実施形態では、ドナー被験体は癌又は腫瘍に冒されていないヒト患者である。
【0097】
幾つかの実施形態では、上記組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントを含む。幾つかの実施形態では、上記組成物は賦形剤を含む。
【0098】
幾つかの実施形態では、上記組成物は、非経口的な送達に対し、吸入に対し、又は経口等の消化管による送達に対して選択される。かかる薬学的に許容可能な組成物の作製は、当業者の能力の範囲に含まれる。幾つかの実施形態では、バッファーを使用して上記組成物を生理学的pH又はわずかに低いpH、典型的には約5~約8の範囲のpHに維持する。幾つかの実施形態では、非経口投与が検討される場合、上記組成物は、薬学的に許容可能なビヒクル中、追加の治療剤と共に又はそれを伴わずに、本明細書に記載される組成物を含む、パイロジェンフリー(pyrogen-free)の非経口的に許容可能な水溶液の形態である。幾つかの実施形態では、非経口注射用のビヒクルは滅菌蒸留水であり、該蒸留水中において、少なくとも1つの追加の治療剤と共に又はそれを伴わずに、本明細書に記載される組成物が適切に保存される無菌の等張液として製剤化される。幾つかの実施形態では、上記作製は、所望の分子と、製品の制御放出又は持続放出を提供する、高分子化合物(ポリ乳酸又はポリグリコール酸等)、ビーズ、又はリポソームとの製剤化を含み、その後、デポー注射によって送達される。幾つかの実施形態では、所望の分子を導入するために、埋め込み可能な薬物送達デバイスが使用される。
【0099】
幾つかの実施形態では、癌の治療を、治療を必要とする被験体において行う方法は、T細胞療法を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるT細胞療法は操作された自己細胞療法(eACT(商標))である。この実施形態によれば、上記方法は、患者から血液細胞を収集することを含み得る。単離された血液細胞(例えばT細胞)は、その後、本明細書に開示されるCAR又はTCRを発現するように操作され得る。特定の実施形態では、CAR T細胞又はTCR T細胞は患者に投与される。幾つかの実施形態では、CAR T細胞又はTCR T細胞は、患者において腫瘍又は癌を治療する。幾つかの実施形態では、CAR T細胞又はTCR T細胞は、腫瘍又は癌のサイズを減少する。
【0100】
幾つかの実施形態では、T細胞療法における使用に対するドナーT細胞は、(例えば自己T細胞療法に対しては)患者から得られる。他の実施形態では、T細胞療法における使用に対するドナーT細胞は、患者でない被験体から得られる。T細胞は治療的有効量で投与され得る。例えば、T細胞の治療的有効量は、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、又は少なくとも約1010個の細胞となり得る。別の実施形態では、T細胞の治療的有効量は、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、又は約10個の細胞である。幾つかの実施形態では、CAR T細胞の治療的有効量は、約2×10細胞/kg、約3×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約5×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約7×10細胞/kg、約8×10細胞/kg、約9×10細胞/k
g、約1×10細胞/kg、約2×10細胞/kg、約3×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約5×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約7×10細胞/kg、約8×10細胞/kg、又は約9×10細胞/kgである。幾つかの実施形態においては、治療的有効量のCAR陽性生存T細胞は、最大用量約1×10個のCAR陽性生存T細胞までの、体重1kg当たり約1×10個から約2×10個の間のCAR陽性生存T細胞である。
【0101】
幾つかの実施形態では、治療的有効量のCAR陽性生存T細胞は、約0.4×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞である。幾つかの実施形態では、治療的有効量のCAR陽性生存T細胞は、約0.4×10個、約0.5×10個、約0.6×10個、約0.7×10個、約0.8×10個、約0.9×10個、約1.0×10個、約1.1×10個、約1.2×10個、約1.3×10個、約1.4×10個、約1.5×10個、約1.6×10個、約1.7×10個、約1.8×10個、約1.9×10個又は約2.0×10個のCAR陽性生存T細胞である。
【0102】
治療方法
本明細書に開示の方法は、被験体において癌を治療し、腫瘍のサイズを縮小させ、腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍細胞増殖を予防し、腫瘍の成長を予防し、患者から腫瘍を排除し、腫瘍の再発を予防し、腫瘍転移を予防し、患者において寛解を誘導するために、又はそれらの任意の組み合わせに使用され得る。幾つかの実施形態では、上記方法は完全奏功を誘導する。他の実施形態では、上記方法は部分奏功を誘導する。
【0103】
治療することができる癌としては、血管新生されていない腫瘍、まだ本質的に血管新生されていない腫瘍又は血管新生された腫瘍が挙げられる。癌には、充実性腫瘍又は非充実性腫瘍も含まれ得る。幾つかの実施形態では、癌は血液癌である。幾つかの実施形態では、癌は白血球細胞の癌である。他の実施形態では、癌は形質細胞の癌である。幾つかの実施形態では、癌は白血病、リンパ腫又は骨髄腫である。幾つかの実施形態では、癌は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、急性リンパ性白血病(ALL)及び血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄白血病(CML)、慢性若しくは急性肉芽腫性疾患、慢性若しくは急性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、有毛細胞白血病、血球貪食症候群(マクロファージ活性化症候群(MAS))、ホジキン病、大細胞肉芽腫、白血球接着不全症、悪性リンパ増殖性疾患、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、多発性骨髄腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群(MDS)、限定されるものではないが急性骨髄白血病(AML)を含む骨髄疾患、非ホジキンリンパ腫(NHL)、形質細胞増殖性障害(例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫)、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常増殖症;孤立性骨髄腫;孤立性形質細胞腫;髄外性形質細胞腫;及び多発性形質細胞腫)、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、及びPEP症候群)、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、小細胞若しくは大細胞濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、T細胞リンパ腫、形質転換後濾胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症又はそれらの組み合わせである。
【0104】
幾つかの実施形態では、癌は骨髄腫である。幾つかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫
である。幾つかの実施形態では、癌は白血病である。幾つかの実施形態では、癌は急性骨髄白血病である。
【0105】
幾つかの実施形態では、上記方法は、化学療法剤を投与することを更に含む。幾つかの実施形態では、選択される化学療法剤は、リンパ球除去(プレコンディショニング)化学療法剤である。有益なプレコンディショニング治療計画は、相関する有益なバイオマーカーと共に、米国仮特許出願第62/262,143号及び同第62/167,750号に記載されており、これらは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。これらは、例えば、特定された有益な用量のシクロホスファミド(200mg/m/日から2000mg/m/日の間)と特定された用量のフルダラビン(20mg/m/日から900mg/m/日の間)とを患者に投与することを含む、T細胞療法を必要とする患者をコンディショニングする方法を記載している。そのような投与計画の1つは、治療的有効量の操作されたT細胞を患者に投与する前に3日間にわたり、その患者に約500mg/m/日のシクロホスファミドと約60mg/m/日のフルダラビンとを投与することを含む患者の治療を伴う。
【0106】
幾つかの実施形態では、抗原結合分子、形質導入された(或いは操作された)細胞(例えばCAR)及び化学療法剤は、それぞれ被験体における疾患又は状態を治療するために有効な量で投与される。
【0107】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるCARを発現する免疫エフェクター細胞を含む組成物は、任意の数の化学療法剤と併せて投与され得る。化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))等のアルキル化剤、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のアルキルスルホン酸エステル、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa)等のアジリジン類、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロールメラミンのレジームを含む、エチレンイミン類及びメチルメラミン類、クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノボエンビキン、フェネストリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード類、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン等のニトロソウレア類、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノ
マイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタ
チン、ゾルビシン等の抗生物質、メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)等の代謝拮抗薬、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類縁体、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類縁体、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU等のピリミジン類縁体、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン類、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤、フォリン酸等の葉酸補液、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル、ビスアントレン、エダトラキサート、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジア
ジコン、エルフォルミチン(elformithine)、酢酸エリプチニウム、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンティナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(商標)、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2、2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb社)及びドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone-Poulenc Rorer社)、クロラムブチル、ゲムシタビン、6-チ
オグアニン、メルカプトプリン、メトトレキセート、シスプラチン及びカルボプラチン等の白金類縁体、ビンブラスチン、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン、ノバントロン、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロン酸塩、CPT-11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、Targretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン)等のレチノイン酸誘導体、ONTAK(商標)(デニロイキン・ディフティトックス)、エスペラミシン、カペシタビン、並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体が挙げられる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるCAR及び/又はTCRを発現する免疫エフェクター細胞を含む組成物は、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール類、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018
、オナプリストン及びトレミフェン(フェアストン)を含む抗エストロゲン薬、並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド及びゴセレリン等の抗アンドロゲン薬、並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体と併せて投与され得る。適宜、限定されるものではないが、CHOP、すなわち、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、ドキソルビシン(ヒドロキシドキソルビシン)、ビンクリスチン(Oncovin(商標))及びプレドニゾンを含む化学療法剤の組み合わせも投与される。
【0108】
幾つかの実施形態では、化学療法剤は、操作された細胞又は核酸の投与と同時に又はその投与後1週間以内に投与される。他の実施形態では、化学療法剤は、操作された細胞又は核酸の投与後の1週間~4週間、又は1週間~1ヶ月、1週間~2ヶ月、1週間~3ヶ月、1週間~6ヶ月、1週間~9ヶ月、又は1週間~12ヶ月で投与される。幾つかの実施形態では、化学療法剤は、細胞又は核酸を投与する少なくとも1ヶ月前に投与される。幾つかの実施形態では、上記方法は、2種以上の化学療法剤を投与することを更に含む。
【0109】
様々な追加の治療剤が、本明細書に記載される組成物と併せて使用され得る。例えば、有用な可能性がある追加の治療剤として、ニボルマブ(OPDIVO(商標))、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(商標))、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ(CureTech社)、及びアテゾリズマブ(Roche社)等のPD-1阻害剤が挙げられる。
【0110】
本明細書に開示の組成物及び方法と組み合わせて使用するために適した追加の治療剤としては、限定されるものではないが、イブルチニブ(IMBRUVICA(商標))、オファツムマブ(ARZERRA(商標))、リツキシマブ(RITUXAN(商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標))、トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(商標))、イマチニブ(GLEEVEC(商標))、セツキシマブ(ERBITUX(商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(商標))、カツマキソマブ、イブリツモマブ、オファツムマブ、トシツモマブ
、ブレンツキシマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、アキシチニブ、マシチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、トセラニブ、レスタウルチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、バンデタニブ、エントレクチニブ、カボザンチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ポナチニブ、ラドチニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、ルキソリチニブ、パクリチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、アフリベルセプト、アジポチド、デニロイキン・ディフティトックス、エベロリムス及びテムシロリムス等のmTOR阻害剤、ソニデギブ及びビスモデギブ等のヘッジホッグ阻害剤、CDK阻害剤(パルボシクリブ)等のCDK阻害剤が挙げられる。
【0111】
幾つかの実施形態では、CAR免疫細胞を含む組成物は、抗炎症剤と共に投与される。抗炎症剤又は抗炎症薬としては、限定されるものではないが、ステロイド類及びグルココルチコイド類(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含む)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキセート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスファミド及びミコフェノール酸塩を含む非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が挙げられ得る。例示的なNSAIDとしては、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、Cox-2阻害剤及びシアリレートが挙げられる。例示的な鎮痛剤としては、アセトアミノフェン、オキシコドン、トラマドール又は塩酸プロポキシフェンが挙げられる。例示的なグルココルチコイド類としては、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン又はプレドニゾンが挙げられる。例示的な生物学的応答調節物質としては、細胞表面マーカー(例えばCD4、CD5等)に対する分子、TNFアンタゴニスト(例えば、エタネルセプト(ENBREL(商標))、アダリムマブ(HUMIRA(商標))及びインフリキシマブ(REMICADE(商標))等のサイトカイン阻害剤、ケモカイン阻害剤、及び接着分子阻害剤が挙げられる。生物学的応答調節物質は、モノクローナル抗体及び分子の組み換え形も含む。例示的なDMARDとしては、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、金(経口(オーラノフィン)及び筋肉内)及びミノサイクリンが挙げられる。
【0112】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、サイトカインと併せて投与される。サイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン及び従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインの中でも、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン等の成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、リラキシン、プロリラキシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び黄体形成ホルモン(LH)等の糖タンパク質ホルモン、肝臓増殖因子(HGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、ミューラー管阻害物質、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮細胞増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、NGF-ベータ等の神経成長因子(NGF)、血小板増殖因子、TGF-アルファ及びTGF-ベータ等のトランスフォーミング増殖因子(TGF)、インスリン様増殖因子I及びII、エリスロポエチン(EPO、Epogen(商標)、Procrit(商標))、骨誘導因子、インターフェロン-アルファ、ベータ及びガンマ等のインターフェロン、マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球マクロファージ-CSF(GM-CSF)及び顆粒球-CSF(G-CSF)等のコロニー刺激因子(CSF)、IL-1、IL-1アルファ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15等のインターロイキン(IL)、TNF
-アルファ又はTNF-ベータ等の腫瘍壊死因子、並びにLIF及びkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が挙げられる。本明細書で使用されるサイトカインという用語は、天然起源由来又は組み換え細胞培養物由来のタンパク質、及び天然の配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0113】
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の投与
適応及び使用
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、特定不能のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫及び濾胞性リンパ腫に起因するDLBCLを含む、2ライン以上の全身療法後の再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫を有する成人患者の治療に適応される。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、原発性中枢神経系リンパ腫を有する患者の治療には適応されない。
【0114】
投薬及び投与
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入バッグは、およそ68mLのキメラ抗原受容体(CAR)陽性T細胞の懸濁液を含む。標的用量は、体重1kg当たり約1×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞であり、最大2×10個のCAR陽性生存T細胞であり得る。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、Axi-cel(商標)(YESCARTA(商標)、アキシカブタゲンシロロイセル)である。
【0115】
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は自己に使用される。患者のアイデンティティは、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬のカセット及び注入バッグ上の患者識別子と一致せねばならない。患者固有のラベル上の情報が対象の患者と一致しなければ、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を投与することはできない。
【0116】
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の薬物有用性を、リンパ球除去レジメンを開始する前に確認しなければならない。
【0117】
幾つかの実施形態では、患者は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入前に、リンパ球除去化学療法薬の投与により前治療されている。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入前の5日目、4日目及び3日目に、シクロホスファミド500mg/m(静脈内)及びフルダラビン30mg/m(静脈内)のリンパ球除去化学療法レジメンが施される。
【0118】
幾つかの実施形態では、患者は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入前に、約500mgから1000mg、約600mgから1000mg、約700mgから1000mg、約800mgから1000mg、約900mgから1000mg、約500mgから900mg、約500mgから800mg、約500mgから700mg、約500mgから600mg、約600mgから900mg、約600mgから800mg、約600mgから700mg、約700mgから900mg、約700mgから800mg又は約800mgから900mgの間の用量でアセトアミノフェンを経口投与することにより前投薬されている。幾つかの実施形態では、患者は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入前に、約500mg、約525mg、約550mg、約575mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、約700mg、約725mg、約750mg、約775mg、約800mg、約825mg、約850mg、約875mg、約900mg、約925mg、約950mg、約975mg又は約1000mgの用量でアセトアミノフェンを経口投与することにより前投薬されている。
【0119】
幾つかの実施形態では、患者は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入前に、アセトアミノフェン650mgを経口的に、かつジフェンヒドラミン12.5mgを静脈内又は経口的にCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入のおよそ1時間前に投与することにより前投薬されている。
【0120】
幾つかの実施形態では、全身性ステロイドの予防的使用は、全身性ステロイドがCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の活性を妨げる可能性があるため回避される。
【0121】
注入用のCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の調製
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の解凍及び注入のタイミングは調整される。幾つかの実施形態では、注入の時間が事前に確認され、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の解凍の開始時間は、患者の準備ができたときにそれが注入に利用可能であるように調節される。
【0122】
幾つかの実施形態では、患者のアイデンティティは、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の解凍の前に確認される。CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の調製の前に、患者のアイデンティティを、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬のカセット上の患者識別子と照合させる。幾つかの実施形態では、患者固有のラベル上の情報が対象の患者と一致していなければ、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の製品バッグをカセットから取り出さない。
【0123】
幾つかの実施形態では、患者の照合一致が確認されたら、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の製品バッグをカセットから取り出し、カセットのラベル上の患者情報を確認してバッグのラベルと照合させる。
【0124】
幾つかの実施形態では、上記方法は、解凍する前に、破損又は亀裂等の容器の完全性の何らかの違反について製品バッグを検査することを含む。幾つかの実施形態では、注入バッグは、現地のガイドラインに従って第2の滅菌バッグの内側に配置される。
【0125】
幾つかの実施形態では、上記方法は、注入バッグ中に目に見える氷がなくなるまで水浴法又は乾式解凍法のいずれかを使用して、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を約37℃で解凍することを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、バッグの内容物を混合又は撹拌して、細胞物質の塊を分散させることを含む。幾つかの実施形態では、バッグの内容物は優しく混合又は撹拌される。幾つかの実施形態では、上記方法は、バッグを目に見える残留している細胞集塊の存在について検査することを含み、混合又は撹拌が継続される。細胞物質の小さな塊は、優しく手動で混合することで分散するはずである。幾つかの実施形態では、上記方法は、注入前にCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を洗浄し、遠沈させ、及び/又は新しい培地中に再懸濁させることを含まない。
【0126】
幾つかの実施形態では、解凍されたら、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、室温(20℃~25℃)で最長3時間にわたり保管することができる。
【0127】
投与
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の本明細書に開示された投与方法は、工程又は留意事項として以下の1つ以上を含む。
注入前及び回復期間の間に、トシリズマブ及び非常用装備が利用可能であることを確認する。
白血球除去フィルターを使用しない。
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入のために、中心静脈アクセスが推奨される。
患者のアイデンティティが、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の製品バッグ上の患者識別子と一致することを確認する。
注入前に生理食塩水でチューブをプライミングする。
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬のバッグの全内容物を重力又は蠕動ポンプのいずれかにより30分以内に注入する。CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、解凍後に室温で最長3時間にわたり安定である。
細胞集塊を防ぐためにCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入の間に製品バッグを優しく撹拌する。
製品バッグの全内容物を注入した後に、全ての製品の導出を確実にするために同じ注入速度にて生理食塩水でチューブをすすぐ。
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、複製不全レトロウイルスで遺伝子改変されたヒト血液細胞を含む。感染症の伝染の可能性を回避するための取り扱い及び廃棄については普遍的予防策及び現地のバイオセーフティガイドラインに従う。
【0128】
モニタリング
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の投与は、認可された医療施設で行われる。
【0129】
幾つかの実施形態においては、本明細書に開示される方法は、患者を注入後に少なくとも毎日7日間にわたり認可された医療機関で、CRS及び神経毒性の徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、患者を注入後に少なくとも毎日10日間にわたり、認可された医療施設でCRS及び神経毒性の徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。
【0130】
幾つかの実施形態においては、患者は、認可された医療機関の近接範囲内で注入後に少なくとも4週間にわたって留まるよう指示される。
【0131】
重度の有害反応の管理
幾つかの実施形態においては、上記方法は、有害反応の管理を含む。幾つかの実施の形態においては、有害反応は、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、過敏反応、重症感染、血球減少症、及び低ガンマグロブリン血症からなる群から選択される。
【0132】
幾つかの実施形態では、有害反応の徴候及び症状は、発熱、低血圧症、頻脈、低酸素症、及び悪寒からなる群から選択され、心不整脈(心房性細動及び心室頻拍を含む)、心停止、心不全、腎不全、毛細血管漏出症候群、低血圧症、低酸素症、臓器毒性、血球貪食性リンパ組織球症/マクロファージ活性化症候群(HLH/MAS)、発作、脳症、頭痛、振戦、眩暈、失語症、せん妄、不眠症、不安症、アナフィラキシー、発熱性好中球減少症、血小板減少症、好中球減少症、及び貧血症を含む。
【0133】
サイトカイン放出症候群
幾つかの実施形態においては、上記方法は、CRSを臨床症状に基づき特定することを含む。幾つかの実施形態においては、上記方法は、発熱、低酸素症、及び低血圧症のその他の原因を評価し、治療することを含む。CRSが観察される又は疑われる場合に、表1の推奨に従って管理する。グレード2以上のCRS(例えば、輸液反応性でない低血圧症又は酸素補給を必要とする低酸素症)を経験している患者は、連続的な心電図遠隔測定法及びパルスオキシメトリーを用いてモニタリングされるべきである。幾つかの実施形態においては、重度のCRSを経験している患者については、心機能の評価のために心エコー図を実施することが検討される。重度又は生命を脅かすCRSについては、集中治療の支持療法が検討される場合がある。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される方法において、トシリズマブの代わりにトシリズマブのバイオシミラー又は同等物を使用すること
ができる。
【0134】
【表1】
【0135】
神経毒性
幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を神経毒性(表2)の徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、神経症状のその他の原因を除外することを含む。グレード2以上の神経毒性を経験した患者は、連続的な心電図遠隔測定法及びパルスオキシメトリーを用いてモニタリングされるべきである。重度又は命に関わる神経毒性の場合には集中治療の支持療法が提供される。グレード2以上の神経毒性の場合には全て、発作予防のために非鎮静型抗てんかん薬(例えば、レベチラセタム)を検討する。
【0136】
【表2】
【0137】
剤形及び分量
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、注入用の細胞懸濁液として利用可能である。
【0138】
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の単回用量は、注入バッグ内のおよそ68mLの懸濁液において、体重1kg当たり約1×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞(又は100kg以上の患者については最大で2×10個のCAR陽性生存T細胞)の標的用量を含む。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、アキシカブタゲンシロロイセル(YESCARTA(商標))である。
【0139】
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の単回用量は容器内に存在する。そのような容器は滅菌されていてよい。幾つかの実施形態では、容器は注入バッグである。幾つかの実施形態では、注入バッグの容量は、約100mL、150mL、200mL、250mL、300mL、500mL、750mL、1000mL、1500mL、2000mL又は3000mLである。
【0140】
リスク評価及び軽減戦略(REMS)
CRS及び神経毒性のリスクがあるため、幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、リスク評価及び軽減戦略(REMS)のもとで制約されたプログラムを通じて利用可能である。REMSの典型的な構成要素は以下の通りである。
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を調合及び投与する医療施設は、登録され、REMSの要件に準拠していなければならない。
認可された医療施設は、現場でトシリズマブを直ちに入手することができ、CRSの治療に必要とされる場合には、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入後2時間以内に最低2用量のトシリズマブを各患者のために注入用に利用可能であることを確実にしなければならない。
認定された医療施設は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬を処方、調合又は投与する医療提供者がCRS及び神経毒性の管理に熟練していることを確実にしなければならない。
【0141】
サイトカイン放出症候群(CRS)
幾つかの実施形態では、医療施設は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入前に2用量のトシリズマブを利用可能であることを確実にする。幾つかの実施形態では、医療施設は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入前に4用量のトシリズマブを利用可能であることを確実にする。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日7日間にわたり認可された医療施設で、CRSの徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日7日間~10日間にわたり認可された医療施設で、CRSの徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日8日間にわたり認可された医療施設で、CRSの徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日9日間にわたり認可された医療施設で、CRSの徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日10日間にわたり認可された医療施設で、CRSの徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に4週間にわたりCRSの徴候又は症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、CRSの徴候又は症状が万一発生したらいつでも、直ちに医師の診察を受けるように患者に助言することを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、CRSの最初の徴候が見られた時点で、示されたように支持療法、トシリズマブ又はトシリズ
マブ及びコルチコステロイド類による治療を開始することを含む。
【0142】
神経毒性
幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日7日間にわたり認可された医療施設で、神経毒性の徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日7日間~10日間にわたり認可された医療施設で、CRSの徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日10日間にわたり認可された医療施設で、CRSの徴候及び症状についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を、注入後に4週間にわたり神経毒性の徴候又は症状についてモニタリングし、速やかに治療することを含む。
【0143】
過敏反応
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入によりアレルギー反応が発生する場合がある。幾つかの実施形態では、アナフィラキシーを含む重篤な過敏反応は、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬中の残留ゲンタマイシンに起因し得る。
【0144】
ウイルス再活性化
幾つかの実施形態では、場合によっては劇症肝炎、肝不全及び死をもたらすB型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化は、B細胞に対する薬物で治療された患者で発生する場合がある。幾つかの実施形態では、上記方法は、製造のために細胞を収集する前に、臨床ガイドラインに従ってHBV、HCV及びHIVのスクリーニングを実施することを含む。
【0145】
長期の血球減少症
幾つかの実施形態では、患者は、リンパ球除去化学療法及びCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入後に数週間にわたって血球減少症を示す場合がある。幾つかの実施形態では、上記方法は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入後に血球数をモニタリングすることを含む。
【0146】
低ガンマグロブリン血症
幾つかの実施形態では、B細胞無形成症及び低ガンマグロブリン血症は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬による治療を受けている患者で発生する場合がある。幾つかの実施形態では、上記方法は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬による治療後に免疫グロブリンレベルをモニタリングし、感染予防策、抗生物質予防及び免疫グロブリン補充を使用して管理することを含む。
【0147】
幾つかの実施形態では、生ウイルスワクチンによるワクチン接種は、リンパ球除去化学療法の開始前の少なくとも6週間にわたり、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬治療の間、及びCD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬による治療後の免疫回復までは推奨されない。
【0148】
二次性悪性腫瘍
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬で治療された患者は、二次性悪性腫瘍を発症する場合がある。幾つかの実施形態では、上記方法は、二次性悪性腫瘍についての生涯についてモニタリングすることを含む。
【0149】
腫瘍崩壊症候群(TLS)
CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬で治療された患者はTLSを発症する場合があり、それは重度である場合がある。TLSのリスクを最小限にするために、幾つ
かの実施形態では、上記方法は、尿酸値の上昇又は高い腫瘍量について患者を評価し、アキシカブタゲンシロロイセルの注入前にアロプリノール又は代替予防薬を投与することを含む。TLSの徴候及び症状をモニタリングして、標準的ガイドラインに従って事象を管理するべきである。
【0150】
機械を運転して使用する能力に対する影響
精神状態の変化又は発作を含む神経学的事象の可能性のため、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法を受けている患者は、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入後8週間で意識又は協調運動が変化又は低下するリスクがある。幾つかの実施形態では、上記方法は、この初期の期間の間に車を運転すること及び重機又は危険の可能性がある機械の操作等の危険職業又は危険を伴う活動に従事することを控えるよう患者に助言することを含む。
【0151】
保管及び取り扱い
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、5%DMSO及び2.5%アルブミン(ヒト)中の遺伝子改変自己T細胞のおよそ68mLの凍結された懸濁液を収容する注入バッグで供給される。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、5%DMSO及び2.5%アルブミン(ヒト)(NDC 71287-119-01)中の遺伝子改変自己T細胞のおよそ68mLの凍結された懸濁液を収容する注入バッグで供給される。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、Cryostor CS10を含む。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、1注入当たり300mgのナトリウムを含む。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、5%DMSO及び2.5%アルブミン(ヒト)中の遺伝子改変自己T細胞のおよそ50mL~100mL、50mL~90mL、50mL~80mL、50mL~70mL、60mL~70mL、60mL~75mL又は65mL~75mLの懸濁液を収容する注入バッグで供給される。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、5%DMSO及び2.5%アルブミン(ヒト)中の遺伝子改変自己T細胞の100mL未満、90mL未満、80mL未満、70mL未満、70mL未満、72mL未満又は75mL未満の懸濁液を収容する注入バッグで供給される。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、5%DMSO及び2.5%アルブミン(ヒト)中の遺伝子改変自己T細胞の50mL超、60mL超、65mL超、66mL超、67mL超又は68mL超の懸濁液を収容する注入バッグで供給される。幾つかの実施形態では、懸濁液は凍結されている。
【0152】
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入バッグは、およそ68mLの細胞分散液を収容する、密封された添加用チューブと2つの利用可能なスパイクポートとを備えたエチレン-酢酸ビニル凍結保存バッグで供給される。
【0153】
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入バッグは、金属カセット中に個別包装されている。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入バッグは、金属カセット(NDC 71287-119-02)中に個別包装されている。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入バッグは、液体窒素の気相中で保管されている。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬の注入バッグは、液体窒素ドライシッパーで供給される。
【0154】
幾つかの実施形態では、上記方法は、患者のアイデンティティを、受け取り時にカセット及び注入バッグ上の患者識別子と照合させることを含む。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は、液体窒素の気相(-150℃以下)中で
凍結保管されている。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法薬は使用前に解凍される。
【実施例0155】
実施例1:再発性又は治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫の臨床研究
単群、非盲検、多施設試験により、再発性又は治療抵抗性の侵襲性B細胞非ホジキンリンパ腫を有する成人患者におけるAxi-cel(商標)(YESCARTA(商標))の単回注入の有効性を評価した。適格な患者は、殆どの最新の療法に対して治療抵抗性の疾患を有した、又は自家造血幹細胞移植(HSCT)後1年以内に再発した。この研究では、以前の同種HSCT、何らかの中枢神経系リンパ腫の病歴、2以上のECOGパフォーマンスステータス、100/μL未満の絶対リンパ球数、60mL/分未満のクレアチニンクリアランス、正常の上限の2.5倍超の肝トランスアミナーゼ、50%未満の心臓駆出率又は活動性重症感染症を有する患者を除外した。
【0156】
リンパ球除去化学療法後に、Axi-cel(商標)を、2×10個のCAR陽性生存T細胞/kgの標的用量(最大許容用量:2×10個の細胞)で単回静脈内注入として投与した。リンパ球除去レジメンは、シクロホスファミド500mg/m(静脈内)及びフルダラビン30mg/m(静脈内)からなっており、両者ともAxi-cel(商標)前の5日目、4日目及び3日目に投与した。白血球アフェレーシスとリンパ球除去化学療法との間をつなぐ化学療法は認められなかった。全ての患者はAxi-cel(商標)注入のために入院し、その後に最低7日間にわたり入院した。
【0157】
白血球アフェレーシスを受けた111人の患者のうち、101人にAxi-cel(商標)を投与した。治療された患者の年齢の中央値は58歳(範囲:23歳~76歳)であり、67%が男性で89%が白人であった。大部分(76%)がDLBCLを有し、16%は形質転換濾胞性リンパ腫を有し、8%は原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫を有していた。以前の療法の数の中央値は3(範囲:1~10)であり、患者の77%が第2ライン以上の療法に対して治療抵抗性疾患を有し、21%が自家HSCTの1年以内に再発した。
【0158】
111人の患者のうちの1人には、製造失敗のために製品は投与されなかった。他の9人の患者は、主に進行性疾患又は白血球アフェレーシス後の重篤な有害反応のために治療されなかった。白血球アフェレーシスから製品送達までの時間の中央値は17日(範囲:14日~51日)であり、白血球アフェレーシスから注入までの時間の中央値は24日(範囲:16日~73日)であった。用量の中央値は2.0×10個のCAR陽性生存T細胞/kg(範囲:1.1×10個の細胞/kg~2.2×10個の細胞/kg)であった。
【0159】
独立判定委員会が決定した完全寛解(CR)率及び奏効期間(DOR)に基づいて有効性を確立した(表3及び表4)。奏効期間の中央値は0.9ヶ月であった(範囲:0.8ヶ月~6.2ヶ月)。奏効期間は、部分寛解(PR)の最良奏効を示す患者と比較してCRに達した患者の方が長かった(表4)。CRに達した52人の患者のうち、14人は、最初は安定疾患(7人の患者)又はPR(7人の患者)を有し、改善までの時間の中央値は2.1ヶ月(範囲:1.6ヶ月~5.3ヶ月)であった。
【0160】
【表3】
【0161】
【表4】
【0162】
実施例2:Axi-cel(商標)注入後の薬力学及び薬物動態
Axi-cel(商標)注入後に、血中のサイトカイン、ケモカイン及び他の分子の一過性の上昇を測定することにより、4週間の間隔にわたり薬力学的反応を評価した。IL-6、IL-8、IL-10、IL-15、TNF-α、IFN-γ及びsIL2Rα等のサイトカイン及びケモカインのレベルを分析した。注入後の最初の14日以内にピークの上昇が観察され、レベルは一般的に28日以内にベースラインに戻った。Axi-cel(商標)のオンターゲット効果のため、B細胞無形成症の期間が予想される。
【0163】
Axi-cel(商標)の注入後に、抗CD19 CAR T細胞は最初の急速な増殖を示し、それに続いて3か月までにベースラインレベル近くまで低下した。抗CD19 CAR T細胞のピークレベルは、Axi-cel(商標)注入後の最初の7日~14日以内に起こった。年齢(範囲:23歳~76歳)及び性別は、Axi-cel(商標)のAUC(0日目~28日目)及びCmaxに有意な影響を及ぼさなかった。
【0164】
血中の抗CD19 CAR T細胞の数は、客観的反応(完全寛解(CR)又は部分寛解(PR))と正に関連していた。レスポンダー(n=73)における抗CD19 CAR T細胞のCmaxレベルの中央値は、ノンレスポンダー(n=23)の対応するレベルと比較して205%高かった(43.6個の細胞/μL対21.2個の細胞/μL)。反応性患者(n=73)の0日目~28日目のAUCの中央値は、ノンレスポンダー(n=23)の対応するレベルの251%であった(557.1日×細胞/μL対222.0日×細胞/μL)。
【0165】
一部の患者は、CRS及び神経毒性の管理のためにトシリズマブ及びコルチコステロイド類を必要とした。トシリズマブで治療された患者(n=44)は、トシリズマブが投与されなかった患者(n=57)と比較して、AUC(0日目~28日目)及びCmaxによりそれぞれ測定された262%及び232%高い抗CD19 CAR T細胞を有していた。同様に、コルチコステロイド類が投与された患者(n=26)は、コルチコステロイド類が投与されなかった患者(n=75)と比較して、217%及び155%高いAUC(0日目~28日目)及びCmaxを有していた。
【0166】
実施例3:CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法後の有害反応の管理
臨床試験は多種多様な条件下で行われるので、薬物の臨床試験で観察される有害反応率は、別の薬物の臨床試験での率と直接比較することはできず、実際に観察された率を反映していない場合がある。
【0167】
この節に記載される安全性データは、臨床試験(研究1)でのAxi-cel(商標)への曝露を反映しており、そこでは、再発性/治療抵抗性B細胞NHLを有する108人の患者には、体重に基づく推奨用量に基づいてCAR陽性T細胞が投与された。CNS障害(例えば、発作又は脳血管虚血)又は全身性免疫抑制を必要とする自己免疫疾患の病歴を有する患者は不適格であった。フォローアップ期間の中央値は8.7ヶ月であった。研究対象集団の年齢の中央値は58歳(範囲:23歳~76歳)であり、68%が男性であった。ベースラインのECOGパフォーマンスステータスは、43%がECOG0であり、57%がECOG1であった。
【0168】
最も一般的な有害反応(発生率20%以上)には、CRS、発熱、低血圧症、脳症、頻脈、倦怠、頭痛、食欲不振、悪寒、下痢、発熱性好中球減少症、詳細不明な感染体による感染症、吐き気、低酸素症、振戦、咳、嘔吐、眩暈、便秘及び心律動異常が含まれる。重篤な有害反応が患者の52%で発生した。最も一般的な重篤な有害反応(2%超)には、脳症、発熱、肺感染症、発熱性好中球減少症、心律動異常、心不全、尿路感染症、腎不全、失語症、心停止、クロストリジウム・ディフィシル感染症、せん妄、低血圧症及び低酸素症が含まれる。
【0169】
最も一般的な(10%以上)グレード3以上の反応には、発熱性好中球減少症、発熱、CRS、脳症、詳細不明な感染体による感染症、低血圧症、低酸素症及び肺感染症が含まれる。
【0170】
Axi-cel(商標)の注入後に、患者の45%(49人/108人)にトシリズマブを投与した。
【0171】
表5は、Axi-cel(商標)で治療された患者の少なくとも10%で発生した有害反応をまとめており、表6は、患者の少なくとも10%で発生したグレード3又はグレード4の臨床検査値異常を記載している。
【0172】

【表5】
【0173】
Axi-cel(商標)で治療された患者の10%未満で発生した他の臨床的に重要な有害反応には以下が含まれる:
血液及びリンパ系障害:凝固障害(2%)
心臓障害:心不全(6%)及び心停止(4%)
免疫系障害:血球貪食性リンパ組織球症/マクロファージ活性化症候群(HLH/MAS)(1%)、過敏症(1%)
感染症及び寄生虫症:真菌感染症(5%)
神経系障害:運動失調(6%)、発作(4%)、計算障害(2%)及びミオクローヌス(2%)
呼吸器、胸郭及び縦隔障害:肺水腫(9%)
皮膚及び皮下組織障害:発疹(9%)
血管障害:毛細血管漏出症候群(3%)
【0174】
臨床検査値異常:
【0175】
【表6】
【0176】
サイトカイン放出症候群
Axi-cel(商標)による治療後に、致命的又は命に関わる反応を含むCRSが発生した。研究1において、CRSはAxi-cel(商標)が投与された患者の94%(101人/108人)で発生し、そこには患者の13%(14人/108人)のグレード3以上(Leeによるグレード分けシステム)のCRSが含まれる。Axi-cel(商
標)の投与後に死亡した患者のうち、4人は死亡時にCRS事象が進行していた。発症までの時間の中央値は2日(範囲:1日~12日)であり、CRSの期間の中央値は7日(範囲:2日~58日)であった。CRSの主な症状発現には、発熱(78%)、低血圧症(41%)、頻脈(28%)、低酸素症(22%)及び悪寒(20%)が含まれる。CRSに関連し得る重篤な事象には、心不整脈(心房性細動及び心室頻拍を含む)、心停止、心不全、腎不全、毛細血管漏出症候群、低血圧症、低酸素症及び血球貪食性リンパ組織球症/マクロファージ活性化症候群(HLH/MAS)が含まれる。
【0177】
神経毒性
Axi-cel(商標)による治療後に、致命的又は命に関わる神経毒性が発生した。神経毒性は患者の87%で発生した。全ての神経毒性のうち98%は、Axi-cel(商標)注入の最初の8週間以内に発生し、発症までの時間の中央値は4日(範囲:1日~43日)であった。神経毒性の期間の中央値は17日であった。グレード3以上の神経毒性は患者の31%で発生した。
【0178】
最も一般的な神経毒性には、脳症(57%)、頭痛(44%)、振戦(31%)、眩暈(21%)、失語症(18%)、せん妄(17%)、不眠症(9%)及び不安(9%)が含まれた。173日間まで続く長期脳症が認められた。Axi-cel(商標)により、白質脳症及び発作を含む重篤な事象が発生した。Axi-cel(商標)で治療された患者では、脳浮腫の致命的で重篤な症例が発生した。
【0179】
重症感染症
Axi-cel(商標)注入後に患者に重症又は命に関わる感染症が発生した。研究1では、感染症(全てのグレード)が患者の38%で発生した。グレード3以上の感染症が患者の23%で発生した。非特定病原体によるグレード3以上の感染症は患者の16%で発生し、細菌感染症は9%で発生し、ウイルス感染症は4%で発生した。Axi-cel(商標)は、臨床的に重大な活動性全身性感染症を有する患者には投与すべきではない。
Axi-cel(商標)の注入前及び注入後に患者を感染症の徴候及び症状についてモニタリングして、適切に治療する。現地のガイドラインに従って予防的抗菌薬を投与する。
【0180】
Axi-cel(商標)注入後に患者の36%で発熱性好中球減少症が観察され、CRSと併発する場合がある。発熱性好中球減少症の場合には、感染症を評価して、広域スペクトルの抗生物質、輸液及び他の医学的に適応する支持療法で管理する。
【0181】
免疫原性
Axi-cel(商標)は、抗生産物抗体を誘発する可能性がある。Axi-cel(商標)の免疫原性は、抗CD19 CARの由来抗体であるFMC63に対する結合抗体を検出する酵素結合免疫吸着法(ELISA)を使用して評価した。投与前抗FMC63抗体について、ベースラインで研究1における1ヶ月目、3ヶ月目又は6ヶ月目に3人の患者に陽性が出た。これらの患者において、Axi-cel(商標)の初期増殖及び長期生存の動態又はAxi-cel(商標)の安全性若しくは有効性が変化したという証拠はない。
【0182】
研究1においては、Axi-cel(商標)注入後30日目までに解決しないグレード3以上の血球減少症が患者の(28%)で発生し、それには血小板減少症(18%)、好中球減少症(15%)及び貧血(3%)が含まれていた。Axi-cel(商標)注入後に血球数をモニタリングする。
【0183】
研究1では、低ガンマグロブリン血症が患者の15%で発生した。
【0184】
本明細書で挙げられる全ての出版物、特許、特許出願及び参考文献は、それぞれの個々の出版物、特許、又は特許出願が、引用することにより本明細書の一部をなすと具体的に個別に示されるのと同じ程度で、引用することにより本明細書の一部をなす。しかしながら、本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることの承認として解釈されるべきではない。引用することにより本明細書の一部をなす参考文献に示される定義又は用語のいずれかが、本明細書に示される用語及び考察と異なる限りにおいては、本明細書の用語及び定義が優先される。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【外国語明細書】