(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154104
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】関節式顕微手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20231011BHJP
A61B 17/3205 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B17/3205
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134280
(22)【出願日】2023-08-21
(62)【分割の表示】P 2020565905の分割
【原出願日】2019-05-15
(31)【優先権主張番号】62/673,468
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520453733
【氏名又は名称】バスキュラー テクノロジー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】マルトーネ、スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ラフリン、トレバー、ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】サチデブ、ラチャナ、エス.
(72)【発明者】
【氏名】リーガン、デイビッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】関節式顕微手術器具のための装置及び方法を提供する。
【解決手段】関節式顕微手術器具100は、ドプラプローブ、骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は所望の手術角度に調整可能な、手術位置内にツールを提供するように構成された吸引/灌注ラインと共に操作可能なように構成され得る。先端アセンブリ21は遠位先端に関節動作部を備え、関節動作部は関節制御器を作動させると偏向するように構成可能である。関節制御器はトリガアセンブリ又はローラホイール28であってよい。バヨネット式ハンドルは、関節制御器の動作中に1以上の制御ワイヤ24と相互作用するように構成された一組の支柱38を含み得る。1以上の制御ワイヤは内腔に収納可能であって、ハンドルアセンブリ20の関節動作制御器を用いて作動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1長手軸に沿って整列された近位部と、第2長手軸に沿って整列された遠位部とを含むハンドルであって、前記第2長手軸が前記第1長手軸からずれているハンドルと、
前記ハンドルに少なくとも1本の制御ワイヤを介して動作可能に連結された関節先端であって、前記関節先端は複数の椎骨様部材から構成され、前記複数の椎骨様部材の各々は中央内腔及び制御内腔を規定し、前記少なくとも1本の制御ワイヤが前記複数の椎骨様部材の各々の前記制御内腔を貫通する、関節先端と、を備え、
前記少なくとも1本の制御ワイヤは、前記複数の椎骨様部材を相互接続するように構成されている、手術器具。
【請求項2】
第2制御ワイヤを備え、前記第2制御ワイヤは、前記複数の椎骨様部材のそれぞれの第2制御内腔に貫通されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記関節先端の遠位端に配置された診断用検知器具を備える、請求項1に記載の手術器具。
【請求項4】
前記関節先端は、少なくとも2つの方向に0度から90度まで関節運動可能である、請求項1に記載の手術器具。
【請求項5】
前記関節先端は、少なくとも2つの方向に0度から180度まで関節運動可能である、請求項4に記載の手術器具。
【請求項6】
前記複数の椎骨様部材は、ヒンジによってさらに相互連結されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項7】
前記ハンドルは、関節制御器を備える、請求項1に記載の手術器具。
【請求項8】
前記関節制御器は、ブレーキを備える、請求項7に記載の手術器具。
【請求項9】
前記関節制御器は、ローラホイールを備える、請求項7に記載の手術器具。
【請求項10】
前記関節先端は、5mm以下の外径を有する、請求項1に記載の手術器具。
【請求項11】
前記関節先端は、3mm以下の外径を有する、請求項10に記載の手術器具。
【請求項12】
前記複数の椎骨様部材の周囲に可撓性のカバーを備える、請求項1に記載の手術器具。
【請求項13】
前記関節先端は、内部部品及び外力によって関節動作可能である、請求項1に記載の手術器具。
【請求項14】
前記制御ワイヤは、前記ハンドル内の固定点で前記ハンドルに固定されている、請求項2に記載の手術器具。
【請求項15】
前記ローラホイールは、制御ワイヤの近位端に固定される穴又は固定点を含む、請求項9に記載の手術器具。
【請求項16】
骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ラインを含む、請求項1に記載の手術器具。
【請求項17】
前記ハンドルは、骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ラインを操作するように構成された第2関節制御器をさらに備える、請求項7に記載の手術器具。
【請求項18】
ドプラプローブを備える、請求項1に記載の手術器具。
【請求項19】
前記制御ワイヤは、前記ハンドルの内部に配置されており、
前記ハンドルは、前記ハンドルの内部に配置され、かつ、前記制御ワイヤのガイドとして機能するように構成された1つ以上の支柱をさらに備える、請求項2に記載の手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2018年5月18日出願の「関節式顕微手術器具(Articulating Microsurgical Instrument)」と題する、米国仮特許出願第62/673,468号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に医療装置に関する。より具体的には、本開示のいくつかの実施形態は、ドプラ検出で構成された操作可能なシースに関する。
【背景技術】
【0003】
関節式顕微手術器具は、例えば、脳神経外科、耳鼻咽喉科(ENT)処置、心血管処置を含む様々な種類の手術に使用され得る。外科医は、ハンドピースを手に保持して作業端を操作することにより所望のタスクを遂行することができる。従来の一部の医療器具では、可撓性の針を患者の体外の超音波装置と共に利用して、ドプラシフトを含むエコーの空間位置を測定する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、(1)ドプラ検出で構成された操作可能な細長部材、(2)関節制御で相互作用するように構成された1以上の制御ワイヤ、(3)バヨネット式ハンドル、(4)遠位先端における関節動作部、(5)関節制御器の動作中に1以上の制御ワイヤと相互作用するように構成された筐体アセンブリ内部の一組の支柱、の特徴の1以上を有する顕微手術器具を提供する。本明細書で使用されるように、バヨネット式ハンドルは、遠位ハンドル部の長手軸が近位ハンドル部の長手軸に平行で、かつ分離しているハンドルとして定義される。一部の実施形態において、遠位ハンドル部の長手軸は近位ハンドル部の長手軸からずれている。
【0005】
したがって、一態様によれば、近位部と中間部と遠位部を含むハンドルアセンブリであって、近位部は第1開口を形成し、遠位部は第2開口を形成するハンドルアセンブリと、第2開口を通って関節動作部を備える遠位先端まで延在する近位端を含む先端アセンブリと、ハンドルアセンブリと先端アセンブリの内部に配置され、関節動作部に結合された1以上の制御ワイヤと、第1開口を通って延在し、関節動作部を偏向させるために複数の位置の間で操作可能な関節制御器と、ハンドルアセンブリの内部に位置し、関節制御器の動作中に1以上の制御ワイヤと相互作用するように動作可能な1以上のガイドと、を備え、ハンドルアセンブリの近位部の第1長手軸はハンドルアセンブリの遠位部の第2長手軸からずれている、手術器具が提供される。
【0006】
本明細書に記載の実施例は、遠位先端にドプラプローブが設けられる、などの特徴の1つ又は任意の組合せによって更に特徴づけることが可能である。一部の実施例では、関節動作部は一組の椎骨である。一部の実施例では、関節動作部は区分化されたチューブである。一部の実施例では、関節制御はローラホイールである。一部の実施例では、ローラホイールは、回転軸の片側に雄型突起と、その反対側に雌型凹所とを備える。一部の実施例では、筐体アセンブリは、ばねテンショナ、固定点システム、従動プーリ、又は付勢部材のうちの1以上を更に備える。一部の実施例では、手術器具は、骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ラインのうちの1以上を備える。一部の実施例では、筐体アセンブリは、骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ラインを操作するように構成された第2関節制御器を更に備える。一部の実施例では、手術器具は1回使用の使い捨て装置である。
【0007】
別の態様によれば装置が提供される。この装置は、チューブの遠位部を形成するように接続された一組の個別椎骨、チューブの近位部を形成する連続チューブ及びその一組の個別椎骨を相互接続するように構成された1以上の牽引ワイヤを備える操作可能な細長部材と、操作可能な細長部材の近位端に位置する制御ハンドルアセンブリであって、制御ハンドルアセンブリの近位部の第1長手軸が制御ハンドルアセンブリの遠位部の第2長手軸からずれている制御ハンドルアセンブリと、を備え、操作可能な細長部材は1以上の牽引ワイヤを作動させることにより関節動作可能であり、制御ハンドルアセンブリは1以上の牽引ワイヤを操作するように構成されている。
【0008】
本明細書に記載の実施例は、ドプラプローブが遠位先端に位置するなどの特徴の1つ又は任意の組合せによって更に特徴づけることが可能である。一部の実施例では、制御ハンドルアセンブリは、ローラホイール、サムコントロール及びばねバイアスのうちの少なくとも1つを備える。一部の実施例では、制御ハンドルアセンブリは、1以上の牽引ワイヤに張力を生成させるように操作可能な1以上の支柱を備える。一部の実施例では、ドプラプローブは360度にわたり検出動作可能なエンドファイヤ(end-firing)型ドプラである。一部の実施例では、材料層がチューブの外側に位置して第2のチューブを形成する。一部の実施例では、1以上の導管がチューブの内部に位置する。一部の実施例では、骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ラインのうちの少なくとも1つが1以上の導管内に配置される。一部の実施例では、一組の個別椎骨が、ヒンジと成形の少なくとも1つによって形成される。一部の実施例では、一組の個別椎骨の近位端に位置する椎骨は、連続チューブに係合するためのリップで構成される。
【0009】
別の態様によれば装置が提供される。この装置は、チューブの遠位部を形成するように接続された一組の個別椎骨、チューブの近位部を形成する連続チューブ及びその一組の個別椎骨を相互接続するように構成された1以上のロッドを備える操作可能な細長部材と、操作可能な細長部材の近位端に位置する制御ハンドルアセンブリであって、制御ハンドルアセンブリの近位部の第1長手軸が制御ハンドルアセンブリの遠位部の第2長手軸からずれている制御ハンドルアセンブリと、を備え、操作可能な細長部材は1以上のロッドを作動させることにより関節動作可能である。
【0010】
本明細書に記載の実施例は、1以上のロッドが一組の個別椎骨を押し引きして操作可能な細長部材の遠位先端に関節を形成するように構成される、などの特徴の1つ又は任意の組み合わせによって更に特徴づけることができる。一部の実施例では、一組の椎骨のそれぞれが少なくとも1つのテーパ端部を形成する。一部の実施例では、テーパ端部は横軸に沿う平面から20度以下の角度で切断されている。一部の実施例では、テーパ端部は放射軸の中心からずれた傾斜面を形成する。
【0011】
更なる態様、利点及び適用領域は、本明細書の説明から明らかとなるであろう。説明および特定の実施例は例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本明細書に記載の図面は例示のみを目的としており、いかなる点においても本開示の範囲の限定を意図するものではない。
【0013】
【
図1】本開示の一部の実施形態による、ハンドルアセンブリ内部の斜視図である。
【0014】
【
図2A】本開示の一部の実施形態による、ハンドルアセンブリの左側面図である。
【0015】
【
図2B】本開示の一部の実施形態による、ハンドルアセンブリの平面図である。
【0016】
【
図2C】本開示の一部の実施形態による、ハンドルアセンブリの背面図である。
【0017】
【
図2D】本開示の一部の実施形態による、ハンドルアセンブリの正面図である。
【0018】
【
図3A】本開示の一部の実施形態による、右ハンドル筐体部の右側面図である。
【0019】
【
図3B】本開示の一部の実施形態による、右ハンドル筐体部の左側面図である。
【0020】
【
図3C】本開示の一部の実施形態による、右ハンドル筐体部の上面右透視図である。
【0021】
【
図4A】本開示の一部の実施形態による、左ハンドル筐体部の左側面図である。
【0022】
【
図4B】本開示の一部の実施形態による、左ハンドル筐体部の右側面図である。
【0023】
【
図4C】本開示の一部の実施形態による、左ハンドル筐体部の上面左透視図である。
【0024】
【
図5A】本開示の一部の実施形態による、ローラホイールの左側面図である。
【0025】
【
図5B】本開示の一部の実施形態による、ローラホイールの右側面図である。
【0026】
【
図5C】本開示の一部の実施形態による、ローラホイールの左斜視図である。
【0027】
【
図6A】本開示の一部の実施形態による、遠位キャップの正面図である。
【0028】
【
図6B】本開示の一部の実施形態による、遠位キャップの斜視図である。
【0029】
【
図7A】本開示の一部の実施形態による、近位キャップの背面図である。
【0030】
【
図7B】本開示の一部の実施形態による、近位キャップの斜視図である。
【0031】
【
図8A】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリの一部を構成し得る椎骨の断面図である。
【0032】
【
図8B】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリの一部を構成し得る椎骨の側面図である。
【0033】
【
図8C】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリの一部を構成し得る椎骨の斜視図である。
【0034】
【
図9A】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリの一部を構成し得る最近位椎骨の平面図である。
【0035】
【
図9B】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリの一部を構成し得る最近位椎骨の斜視図である。
【0036】
【
図9C】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリの一部を構成し得る最近位椎骨の断面図である。
【0037】
【
図9D】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリの一部を構成し得る最近位椎骨の側面図である。
【0038】
【
図10A】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリの一部を構成し得る最遠位椎骨の断面図である。
【0039】
【
図10B】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリの一部を構成し得る最遠位椎骨の側面図である。
【0040】
【
図10C】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリの一部を構成し得る最遠位椎骨の斜視図である。
【0041】
【
図11A】本開示の一部の実施形態による、関節式顕微手術器具の先端における椎骨例の形状を示す図である。
【0042】
【
図11B】本開示の一部の実施形態による、先端形状に関する制御ワイヤ設計のための閉ループアプローチの例を示す図である。
【0043】
【
図12】本開示の一部の実施形態による、制御ワイヤ移動距離に関する制御ワイヤ設計のための閉ループアプローチの例を示す図である。
【0044】
【
図13】本開示の一部の実施形態による、ぺバックス(pebax)チューブから切断された椎骨を示す遠位先端例の図である。
【0045】
【
図14】本開示の一部の実施形態による、制御ワイヤに取り付けられたばねテンショナを利用するハンドルアセンブリの断面図である。
【0046】
【
図15】本開示の一部の実施形態による、1以上の制御ワイヤをハンドルアセンブリに固定するために一対の固定点を利用するハンドルアセンブリの断面図である。
【0047】
【
図16】本開示の一部の実施形態による、関節式顕微手術器具の細長部材の遠位先端断面の揺動運動を示す図である。
【0048】
【
図17】本開示の一部の実施形態による、手術器具並びに関節式顕微手術器具の先端を操作するためのスライドトリガとホイールを示す後方ハンドル部の図である。
【0049】
【
図18】本開示の一部の実施形態による、先端アセンブリのヒンジ接続された椎骨を示す図である。
【0050】
【
図19】本開示の一部の実施形態による、鍵溝構造を用いて接続された先端アセンブリの椎骨を示す図である。
【0051】
本実施形態のこれら及び他の特徴は、本明細書に記載の図面と併せて以下の詳細な説明を読むことによってよりよく理解されるであろう。添付の図面は縮尺通りの表示を意図するものではない。わかりやすくするために、各図面においてはすべての構成要素に番号が付されているわけではいない。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本明細書では関節式顕微手術器具を開示する。ハンドルアセンブリにより、ユーザは装置を保持し、遠位先端部の関節動作をさせることが可能となる。ハンドルアセンブリには、遠位ハンドル部と近位ハンドル部との間のずれ、すなわちバヨネット形状が含まれ、ユーザの視点と入射点との間に、ユーザの四肢が邪魔とならない明瞭な射線を提供可能である。ハンドルアセンブリには、近位ハンドル部の長手軸に平行でそれとは分離された、遠位ハンドル部の長手軸が含まれ得る。一部の実施形態では、ハンドルアセンブリは、直線的なハンドルであってよく、そこでは遠位ハンドル部と近位ハンドル部は同じ軸上に延在する。一部の実施形態では、直線的ハンドルに一組の支柱が含まれてよい。ハンドルは丸い輪郭であって、ユーザが操作、回転、軸方向移動を安定した精度で行うことを支援できるように、その外表面には任意で浮き彫り又は彫り込みされた模様があってよい。ハンドルアセンブリは、可動部品及び恒久的に固定された部品の両方をガイドするための機構及び要素を収納してよい。一部の実施形態では、ハンドルアセンブリはその外径が、3cm以下、2.5cm以下、又は1.5cm以下であってよい。一部の実施形態では、ハンドルアセンブリには、直径が少なくとも1.2cm、少なくとも1.5cm、又は少なくとも2.0cmの内腔が含まれ得る。ハンドルアセンブリ及び内腔の寸法に対してこの外の代替案も考えられる。
【0053】
関節式顕微手術器具は、1回使用の使い捨て装置として構成されてよい。1回使用の装置は、再消毒される装置の使用に関係し得る相互汚染のリスクを最小化するので、1回使用の使い捨て装置を提供することが望ましい。これは、関節式の顕微手術先端などの、洗浄しにくい構成部品や機構を含む装置に関しては特に重要である。使い捨ての装置とすることで、使用後の再消毒処理に適した種類の材料の使用を必ずしも必要としなくなり、それにより潜在的に装置の材料コストの低減が可能である。これは、健康管理業界で普及している今の時代のコスト抑制において特に重要である。全ての構成部品が、所与の処置のタイプにすぐに適応できる簡単なパッケージで提供されるような1回使用の使い捨て装置を提供することが望ましい。関節式顕微手術器具は、診断用検知器具が遠位端に配置されて使用されるように構成されてもよい。一部の実施形態では、診断用検知器具は、遠位端におけるドプラプローブとして構成されてもよい。関節式顕微手術器具は、手術中に1以上の血管の位置を検出するために遠位端を操作するように構成されてもよい。関節式顕微手術器具は、例えば脳下垂体手術などの鼻腔内手術中に、頸動脈を検出するように構成されてもよい。
【0054】
重大な動脈の検出においては超音波照射角度が重要となり得るので、遠位先端のドプラプローブの角度をユーザが関節動作できるようになっていることが望ましい。一部の実施形態において、エンドファイヤ(end-firing)型ドプラが提供される。エンドファイヤ型ドプラは、360度検出するように構成され得る。一部の実施形態において、360度検出は対向する2方向への偏向により達成され得る。例えば、360度検出は、器具の遠位先端を、器具の長手軸から一方向に完全に湾曲した位置まで最大180度の第1偏向をさせることと、器具の遠位先端を、第1方向とは反対の方向へ、第1の完全に湾曲した位置とは反対の第2の完全に湾曲した位置まで最大180度の第2偏向をさせることにより達成され得る。一部の実施形態において、360度検出はユーザの手の回転により達成されてもよい。
【0055】
他の実施形態では、関節式顕微手術器具は、骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ラインを含んでよい。切断、把持若しくは吸引/灌注の角度を定め、及び/又は手術処置をより効果的かつ効率的に実行するために、骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ラインの角度を、ユーザが操作できるようになっていることが望ましい。ユーザは処置中に必要に応じて困難な場所に到達して、解剖領域の周りで操作可能であることが望ましい。
【0056】
ユーザは回転体又はスライドトリガを用いて、1以上の制御ワイヤが操作されてもよい。一部の実施形態において、回転体は回転ホイールであってよい。一部の実施形態において、1以上の制御ワイヤの巻き付けにらせんガイドは必要でない。したがって、制御ワイヤはハンドルアセンブリ内で浮遊してよく、ばねテンショナ、固定点システム、従動プーリ、又はバイアス部材によってガイドされてよい。ハンドルアセンブリはさらに1以上のプーリ軌道または巻き枠を含んで、ハンドルアセンブリを介して制御ワイヤをガイドしてもよい。ばねテンショナ、固定点システム、又は従動プーリは、回転ホイール又はスライドトリガを介して力を伝達して、遠位先端を曲げるのに使用され得る。一部の実施形態では、一組の個別椎骨が遠位先端内部に配置される。
【0057】
次に本教示の例示的実施形態を説明する図面を参照する。
図1は、本開示の一実施形態の詳細であり、ここでは1以上の制御ワイヤ24がハンドルアセンブリ20内部に収納可能である。ハンドルアセンブリ20は、ユーザが関節式顕微手術器具100及び関節遠位先端26を保持可能とする。
図1は、近位ハンドル部120の長手軸に平行で、それとは分離された遠位ハンドル部110の長手軸を含む、ハンドルアセンブリ20の詳細を示す。中間ハンドル部115が遠位ハンドル部110を近位ハンドル部120に接続する。図に示す実施形態において、ハンドル20は外形が丸く、テキスチャ付きの表面27となっている。ハンドルアセンブリ20は、一組の支柱38に張られた一対の制御ワイヤ24を含むように示されている。1以上の支柱38は、1以上のガイドであってもよい。支柱38は制御ワイヤ24が関節動作機構(
図1に示す実施形態ではローラホイール28)を用いて前後に操作されるときにそのガイドとして作用するように構成されている。ローラホイール28は、
図5A~5Cに示すように、制御ワイヤ24の端部をローラホイール28に固定するための、1以上の固定点56を含んでよい。固定点56は、制御ワイヤ24の端部を固定するために使用される楔又はスロットであってよい。
【0058】
支柱38又は固定点56の径方向及び/又は長手方向の位置は、先端アセンブリ21の形状によって決定される移動量に対応し得る。特に遠位先端26を複数の移動方向に制御するための2以上の制御ワイヤ24の場合には、関節動作するときに制御ワイヤ24にたるみがほとんどあるいはまったく導入されないようにされる。そのような構成により、関節位置が2つ(又はそれ以上)の方向へしっかりと保持される。支柱38又は固定点56の正確な位置決めは、人間の手足の、自然で快適な移動距離となるように最適化することも可能である。例えば、制御ワイヤ24をローラホイール28に固定する支柱38又は固定点56は、ローラホイール28の回転仕様をユーザが快適なように制限するように調整され得る。別の実施形態では、制御ワイヤ24の移動量は、ハンドルアセンブリ20内の追加的なプーリ、ばね、カム、又はギヤによって増加される。一部の実施形態において、制御ワイヤ24はローラホイール28の周りに1回以上巻かれて、シアノアクリレート及び/又は他の接着剤で固定されてもよい。
【0059】
一部の実施形態において、遠位先端26の関節動作を実行するために代替的な機構が用いられてもよい。例えば、剛性の細長体を操作して関節動作を実行してもよい。剛性細長体を筐体内で押し引きするか回転させて、遠位先端26を関節動作させてよい。あるいは、固定点位置の相対的な調節により回転動作を達成してもよい。例えば、
図18に示すように、1以上のカム体が、1以上のヒンジ接続されたチップ片(椎骨32)と相互作用してもよい。
図18に示すように、ヒンジ62は個別の椎骨32を相互接続するために使用される。一部の実施形態において、関節動作を実行するためにヒンジ接続されたチップ片(椎骨32)を異なる場所で押し引きする1以上の細長部材が含まれてよい。
図19には、椎骨32にフラット又は鍵溝構造64が設けられて、組立て時と使用時の両方において個々の椎骨32同士の間の位置合わせを提供するように構成された、例示的実施形態が示されている。
【0060】
一部の実施形態において、関節動作部22は一組の個別の椎骨32を備える。椎骨32のいくつかの例が
図8A~
図10Cに示されている。各椎骨32には、椎骨32の上部に突起部35が設けられて、1以上の制御ワイヤを作動すると、遠位先端26が曲がるようになっていてよい。突起部35は、傾斜した上端、平坦な上端、あるいは隣接する椎骨32の下部よりもさらに突出する湾曲した上部であってよい。制御ワイヤは、椎骨32の穴を通して配線されて、遠位先端26で固定されてよい。
【0061】
一部の実施形態では、関節動作部22は単一の中空チューブを含む。一部の実施形態では、関節動作部22には例えば
図13に示すように区分化されたチューブが含まれてもよい。
【0062】
先端シャフトの外径は、約5mm以下、4mm以下、又は3mm以下であってよい。遠位先端26は更なるトリガがかかるまでは、設定点としてその関節角度に留まるように構成されてよい。遠位先端26の関節動作部は、可撓性のカバーを有する約0.5”~0.75”の長さであってよい。
【0063】
図1~
図4Cに示す、任意選択により2つの部分からなるハンドルシェルアセンブリの片側に、その装置の内部に収納された構成部品のためのガイドの一部又は大部分が含まれ得る。そのような実施形態において、関節動作及び初期の機能テストは装置のシェルを完全に閉じる前に行うことができるために、組み立て方法が単純化される。一実施形態において、制御ワイヤは突出した支柱によってガイドされ、ドプラワイヤはヨークによってガイドされて、方向に依存する重力又は他の外力とは無関係に所定位置に保持される。
【0064】
ハンドルシェルの更なる部分が、内部部品を包囲して、さらにガイドする役目を果たし得る。一実施形態において、2つの部分から成るハンドルシェルの第2の半分が、横方向に突出するガイド構造を含み、これが、1以上の制御ワイヤを特定の軸位置に保持し、その制御ワイヤが支柱38などの相補的なガイド構造から滑落することを防止する。
【0065】
ハンドルアセンブリ20は関節制御器を含む。一部の実施形態において、関節制御器はユーザの1本の指で作動される。一部の実施形態において、関節制御器は、掌の押し付け、手の捩り、あるいは手首の制御によって制御される機構である。一部の実施形態では、関節制御器はローラホイール28である。一部の実施形態では、関節制御器はスライドトリガ30である。
図17は、ローラホイール28と共にスライドトリガ30を含む一実施形態を示す。制御機構を2以上含む実施形態は、遠位先端における関節動作を制御することに加え、手術ツールを操作又は動作させるように構成され得る。例えば、ローラホイール28が遠位先端の関節動作を制御する一方で、スライドトリガ30が手術ツールの操作又は動作の1つを制御してもよい。あるいは、ローラホイール28が手術ツールの操作又は動作の1つを制御する一方で、スライドトリガ30が遠位先端の関節動作を制御してもよい。
【0066】
図1~
図2B及び
図3A~
図5Cにはローラホイール28が示されている。ローラホイール28には、回転軸を拘束するように構成された、1以上の雄インタフェース48/雌インタフェース52が含まれてよい。
図3A~
図3Cはクラムシェルの第1半体44を示し、
図4A~
図4Cはクラムシェルの第2半体46を示す。クラムシェルの第1半体とクラムシェルの第2半体は、ともにスナップ嵌合してハンドルアセンブリ20を形成するように構成される。
図5A~
図5Cはローラホイール28の一実施形態を示し、雄型突起48が回転軸の片側に位置し、雌型凹所52が反対側に位置する。そのような組み合わせにより、ローラホイール28の中心点を超えて、長さの増加した嵌合軸が可能となる。ローラホイール28の対応する雄型突起48により、相補的なハンドルシェルが所定位置に配置されると、組み立て中及び組み立て後の両方においてより大きな安定性がもたらされる。回転機構、すなわちローラホイール28には、締結具、結び目、あるいは接着剤を収容する凹所又は空洞が含まれ得る。この凹所又は空洞は、ローラホイール28とその嵌合部品の1つとの界面における任意の盛り上がり形状及び任意の軟性材料の追加物と共に、先端及び/又はドプラプローブからの弾性力に逆らうブレーキとして組み込まれるか付加されて、ユーザが一定の外力をトリガにかけることを必要とせずに位置の安定性をもたらし得る。例えば、
図5A~
図5Cに示すように肩部54をハンドル又はホイール上の軸の周りに設けて、ローラホイールとハンドルの間の界面の圧力及び制動力の最適化に使用してもよい。ローラホイール28は、制御ワイヤ24の近位端を固定するための、1以上の穴又は固定点56を含んでもよい。
【0067】
図6A~
図6Bに示すように、ハンドルの遠位端にキャップ40、42が設けられてもよい。一部の実施形態において、遠位キャップ40は、環状のスナップフィットで構成されるか、ねじ止めされるか、及び/又は接合されてもよい。遠位キャップ40は、シャフトを径方向に、そして任意選択で軸方向に拘束するように構成されてよい。
【0068】
図7A~
図7Bに示すように、ハンドルの近位端に近位キャップ42が設けられてもよい。一部の実施形態において、近位キャップ42は、環状のスナップフィットで構成されるか、ねじ止めされるか、及び/又は接合されてよい。近位キャップ42は、近位方向、径方向及び任意選択で軸方向に延出すべきドプラプローブケーブル又は他の任意の部品を拘束するように構成され得る。
【0069】
関節式顕微手術器具100には、ユーザからの外力により1以上の方向への関節運動又は湾曲が可能な関節動作部22を備える先端アセンブリ21が含まれてよい。一実施形態において、関節動作部22には、近位部品、1以上の中間部品、及び遠位部品が含まれる。代替実施形態においては、関節動作部22は、
図13に示すような単一体から成り、関節制御の作動に従って、前もって定められた所望位置へ向かって弾性変形するように構成可能である。一実施形態において、関節動作部22は、内部部品からの所定の荷重及び/又は外力の下で、0度すなわち直線から90度まで、及びその逆に関節動作するように構成されている。他の実施形態においては、関節動作部22は、一方向に0度から180度の間、そして別の方向に0度から180度の間で関節動作してよい。代替案として様々なものが考えられる。両方向への適切な関節動作を達成するために、先端形状、先端材料組成、ローラホイール28の固定点56に変更を加えることが可能である。
【0070】
一実施形態において、関節動作部22は複数のセグメントから成る。例えば
図8Bに示すように、関節動作部22のセグメント例には、その横軸に沿う平面から20度のテーパがついている。関節動作部22を構成する1以上のセグメントにはこのようにテーパがついていてよい。一実施形態では、椎骨32の両側に等しいテーパがついている。一実施形態では、椎骨32の1つの上端にだけテーパがついている。一実施形態では、傾斜面は放射軸の中心からずれている。傾斜面が放射軸の中心からずれることで、椎骨32の上部分からより多くの材料が除去され、より機械的に優位な関節運動効果がもたらされ得る。
【0071】
一部の材料の弾性的なばね力が、先端を直線形状、すなわち0度に戻す役目をしてもよい。椎骨32による先端のカバースリーブ23の擦り付け及び挟み込みの可能性は、椎骨32の間の関節動作角度及び椎骨32の間の対応する最大距離を制限することで軽減可能である。主たる角度テーパに加えて、不十分な機械的利点及び材料損失を補償して先端を直線形状、すなわち0度に戻すためにカットバックテーパが導入されてもよい。一実施形態では、このカットバックは椎骨32の各側に2度、すなわち両側を含めて4度である。椎骨32には3つの内腔が含まれてもよい。2つの側部内腔33は筐体制御ワイヤ24、各方向への関節動作操作のためのプッシュ/プルロッド50、52、ドプラプローブへの接続のための電気ケーブル、の収納に使用されてよい。一部の実施形態において、中央内腔31は、1以上の構成要素(すなわち、ドプラプローブ、骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ライン)を収納するように構成されてよい。一部の実施形態において、1以上の構成要素(すなわち、ドプラプローブ、骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ライン)は筐体に組み込まれ、電気ワイヤ及び/又は制御ワイヤは1以上の側部内腔33内に配置されてもよい。椎骨32は任意選択で2つの内腔を有し、1つの側部内腔33が制御ワイヤ24及び/又はドプラプローブ用の電気ワイヤを収納し、1つの中央内腔31が1以上の内蔵部品を収納する。
【0072】
一部の実施形態において、最近位椎骨34は中央椎骨32とは異なってよい。最近位椎骨の一例示的実施形態を
図9A~
図9Dに示す。最近位椎骨は、関節動作部22の近位端でシャフトに平坦に嵌合するために、その主放射軸の片側に角度テーパを有し、反対側には角度テーパを持たなくてもよい。最近位椎骨34は、特にシャフトが単一内腔を有する場合には、シャフトへの同軸ガイドインタフェースとして作用する、1以上の近位突起ガイド58すなわちリップを任意選択的に含む。最近位椎骨34は2または3の内腔31、33を有してもよい。
【0073】
一部の実施形態において、最遠位椎骨36は中央椎骨とは異なってよい。最遠位椎骨36の一例示的実施形態を、
図10A~
図10Cに示す。最遠位椎骨36はその主軸の近位側に角度テーパがあって関節動作効果に寄与し、遠位側には角度テーパがなくて、包含する部品に対して直交する界面を提供することが可能である。最遠位椎骨36は、他のものよりも長くて、関節動作すると体内により到達しやすいようになっていてよい。最遠位椎骨36には、2又は3の内腔31、33があってよい。
【0074】
一態様において、外側スリーブ23が先端アセンブリ21に追加されて、ピンチポイント及び制御ワイヤの人体組織への接触を防止してもよい。一部の実施形態では、外側スリーブ23は軟質の先端カバースリーブである。一実施形態では、外側スリーブ23は薄い壁(0.003”)のポリエーテルブロックアミドでできている。別の実施形態では、外側スリーブ23はポリテトラフルオロエチレンでできている。別の実施形態では、外側スリーブ23はポリウレタンでできている。別の実施形態では、外側スリーブ23は熱収縮チューブ又は接着剤付きの平坦リボンでできている。外側スリーブ23の弾性ばね力を利用して、先端が直線形状の構成に戻ることを助けることが可能であり、あるいは、薄い壁により適合する材料を選択することで、最小化することも可能である。
【0075】
単一内腔又は複数内腔のシャフトが使用可能である。単一内腔シャフトは一般的に、簡単で安価という利点を有する。複数内腔のシャフトは一般的に、繰り返し組立てられる利点を有する。一実施形態では、単一内腔シャフトがPEEK又はポリイミドなどの高弾性率ポリマーで作られる。これに替わり、ステンレススチール製の単一内腔シャフトを使用して、薄い壁と、内側と外側に最大のスペースを達成することも可能である。
【0076】
1以上の制御ワイヤ24が先端の関節動作に使用され得る。制御ワイヤ24は任意選択で、金属でつくられるか、又はそれに代わってポリマーで作られる。一実施形態では、制御ワイヤ24は軟質のステンレススチールワイヤで作られる。これは簡単に曲がって、その位置に留まるが、張力によって容易に破断又は降伏することがない。一部の実施形態では、制御ワイヤ24は硬化されたステンレススチールワイヤで作られる。一実施形態では、硬化ワイヤを戻りワイヤとして使用し、軟性ワイヤを関節動作ワイヤとして使用する。別の実施形態では、制御ワイヤ24はナイロン製であり、これは強化されるか、フィルムをベースとする種類であってよい。別の実施形態では、制御ワイヤ24はポリエステル液晶ポリマー繊維で作られる。別の実施形態では、制御ワイヤ24はニッケルチタン合金で作られる。一部の実施形態では、制御ワイヤ24はePTFE又はLCPモノフィラメントで作られる。一部の実施形態では、制御ワイヤ24は特定領域の弾性率を最適化するために、一領域あるいは全長にわたって焼鈍される。
【0077】
図11A~
図12は、静止アイドラーを用いた「閉ループ」機構を実行する特定の理論的出力を調べる解析を示す。これは「閉ループ」手法と呼ばれるが、ループに沿って2つの固定点があり、実効的に2つの異なる線をもたらす。ラインAは、先端を90度方向に引っ張って関節動作させるべき線であり、ラインBは先端を直線形状(0度)に戻すために引っ張られる線である。
図11Aは、関節式顕微手術器具の先端における椎骨例の形状を示す。椎骨32は全長が0.108”であって、直線部分が長さ0.027”であり、傾斜部分の長さが0.063”であるように示されている。
図11Bは、それぞれの軸方向の移動距離を示す。
図12は、理論的な最大移動での閉ループ構成を示す。
【0078】
図12では、制御ワイヤ24や最遠位椎骨36や他の椎骨32に変形がないとして完全な関節運動に達する理論的最大値である、0.134”だけラインAが牽引されるとすると、ラインBに0.134”のワイヤが供給される。そのうちの0.057”が理論的にシャフト/先端に取り込まれ、残りの0.077”のラインがたるみとなる。
【0079】
椎骨32、36や制御ワイヤ24に変形がない場合には、関節運動機構を停止状態に戻すと、先端はゼロ(直線形状)に戻るべきである。ただし、先端カバーは直線化効果に寄与しないので、特に直線化の最終部分では機械的利点が得られない可能性がある。
【0080】
さらには、ラインBのたるみは、外力の影響により、先端に過度の関節動作を行わせる結果となり得る。例えば、ラインAを0.050”だけ引っ張ることにより、理論的には先端を45度とし、ラインBに約0.029”のたるみを導入することが可能である。このたるみの量は、約61度の角度の遊びに相当し、先端カバーに生じる力による場合を除いて、先端が106度にまではならない可能性がある。たるみは、テンショナとして作用するバイアス部材を用いて最小化可能である。たるみは、材料選択、形状、固定点の配置によっても最小化可能である。
【0081】
一例として
図13に示すように、レーザで切断されたポリエーテルブロックアミドが先端アセンブリ21に使用されてもよい。レーザ切断された63Dポリエーテルブロックアミドの椎骨32は、ABSやPVCなどの硬質プラスチックよりも軟らかくて外力による影響を受けやすい。そのために、椎骨32は、制御ワイヤによる力を受けると変形する可能性がある。制御ワイヤ24が制御内腔の開口壁を切断し始めて、椎骨32が軸方向に圧縮されると、先端を関節動作させようとする仕事の一部が、椎骨32を変形させることで代わりに消費される。それにより所与のストローク長/プル長に対して実際の関節動作効果が減少する結果となる。さらに、直線形状すなわち0度に戻す関節動作を行うと、ピボット点及び内腔位置が移動または変形した場合には、ラインBは機械的利点が更に下がる可能性がある。
【0082】
ナイロンの単線維は、伸びて弾性変形をする。種々のナイロンの破断伸びの値は広範囲にわたる。トリレンXT(Trilene XT)がナイロンの一例である。破断伸びが15%であるとすると、先端の遠位端とローラホイール28上の固定点の間に6.0”のラインがあれば、そのラインは破断点において0.9”伸びることになる。ナイロン単線維に破断点までの荷重がかかっていないとき、この20%の値(安全係数=5)ですらも、0.180”の伸びとなる。これは理論的には、完全な関節動作に必要なラインAの全引張量よりも大きい。中立軸、すなわち、椎骨32の揺動点はラインAの制御内腔に向かって移動しなければならず、したがって、戻り(B)ラインはゼロ度に戻るためにより機械的に有利となる。
図16は関節動作中の椎骨32の揺動を示す例示的実施形態であり、静止時の間隔aが関節動作時にはより小さい間隔bになる。先端もまた、制御ワイヤの圧力で降伏や変形をしない、より硬い材料を含むべきである。
【0083】
制御ワイヤ24に取り付けられたばねテンショナ66を利用するハンドルアセンブリの例が
図14に示されている。
図15は、1以上の制御ワイヤ24をハンドルアセンブリ20に固定するための、一対の固定点70を利用するハンドルアセンブリを示す。
図15は、1以上の制御ワイヤ24をハンドルアセンブリ20に固定するための、一対の固定点70の使用を示す。
(製造方法)
【0084】
本明細書では、関節動作部22を形成する2つの実施形態を説明する。一実施形態では、関節動作部22は区分化されたチューブから成る。チューブは、例えば、レーザ切断によりセグメント化されてもよいしあるいは所望形状にチューブを成形することにより製造されてもよい。別の実施形態では個別の椎骨32が結合されて関節動作部22を形成する。椎骨32は、貫通された制御ワイヤ24を用いて接続されてもよい。あるいは、椎骨32は嵌合しあって中立軸に沿ってヒンジ効果又は結合効果を生成してもよい。個々の椎骨32は成形又はプレス加工で形成され得る。
【0085】
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
<1> 近位部と中間部と遠位部を含み、前記近位部は第1開口を形成し、前記遠位部は第2開口を形成するハンドルアセンブリと、
前記第2開口を通って関節動作部を備える遠位先端まで延在する近位端を含む先端アセンブリと、
前記ハンドルアセンブリと前記先端アセンブリの内部に配置され、前記関節動作部に結合された、1以上の制御ワイヤと、
前記第1開口を通って延在し、前記関節動作部を偏向させるために複数の位置の間で操作可能な関節制御器と、
前記ハンドルアセンブリの内部に位置し、前記関節制御器の動作中に前記1以上の制御ワイヤと相互作用するように動作可能な1以上のガイドと、
を備え、
前記ハンドルアセンブリの前記近位部の第1長手軸は、前記ハンドルアセンブリの前記遠位部の第2長手軸からずれている、手術器具。
<2> 前記遠位先端にドプラプローブを更に備える、<1>に記載の手術器具。
<3> 前記関節動作部は一組の椎骨である、<1>に記載の手術器具。
<4> 前記関節動作部は区分化されたチューブである、<1>に記載の手術器具。
<5> 前記関節制御器はローラホイールである、<1>に記載の手術器具。
<6> 前記ローラホイールは、回転軸の片側に雄型突起と、その反対側に雌型凹所とを備える、<5>に記載の手術器具。
<7> 前記ハンドルアセンブリは、ばねテンショナ、固定点システム、又は従動プーリのうちの1以上を更に備える、<1>に記載の手術器具。
<8> 骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ラインのうちの1以上を更に備える、<1>に記載の手術器具。
<9> 前記ハンドルアセンブリは、前記骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、前記フレキシブル鉗子、又は前記吸引/灌注ラインを操作するように構成された第2関節制御器を更に備える、<8>に記載の手術器具。
<10> 前記手術器具は、1回使用の使い捨て装置である、<1>に記載の手術器具。
<11> 操作可能な細長部材であって、
チューブの遠位部を形成するように接続された一組の個別椎骨と、
前記チューブの近位部を形成する連続チューブと、
前記一組の個別椎骨を相互接続するように構成された1以上の牽引ワイヤと、
を備える操作可能な細長部材と、
前記操作可能な細長部材の近位端に位置する制御ハンドルアセンブリであって、前記制御ハンドルアセンブリの近位部の第1長手軸は、前記制御ハンドルアセンブリの遠位部の第2長手軸からずれている、制御ハンドルアセンブリと、
を備え、
前記操作可能な細長部材は、前記1以上の牽引ワイヤを作動させることにより関節動作可能であり、
前記制御ハンドルアセンブリは、前記1以上の牽引ワイヤを操作するように構成されている、装置。
<12> 遠位先端に位置するドプラプローブを更に備える、<11>に記載の装置。
<13> 前記制御ハンドルアセンブリは、ローラホイール、サムコントロール及びばねバイアスのうちの少なくとも1つを備える、<11>に記載の装置。
<14> 前記制御ハンドルアセンブリは、前記1以上の牽引ワイヤに張力を生成させるように操作可能な1以上の支柱を備える、<11>に記載の装置。
<15> 前記ドプラプローブは360度にわたり検出動作可能なエンドファイヤ(end-firing)型ドプラである、<12>に記載の装置。
<16> 前記チューブの外側に位置して第2のチューブを形成する材料層を更に備える、<11>に記載の装置。
<17> 前記チューブの内部に位置する1以上の導管を更に備える、<11>に記載の装置。
<18> 骨把持器、軟組織把持器/切開器、鋏、フレキシブル鉗子、又は吸引/灌注ラインのうちの少なくとも1つが前記1以上の導管内に位置する、<17>に記載の装置。
<19> 前記一組の個別椎骨が、ヒンジと成形の少なくとも1つによって形成される、<11>に記載の装置。
<20> 前記一組の個別椎骨の近位端に位置する椎骨は、前記連続チューブに係合するためのリップで構成される、<11>に記載の装置。
<21> 操作可能な細長部材であって、
チューブの遠位部を形成するように接続された一組の個別椎骨と、
前記チューブの近位部を形成する連続チューブと、
前記一組の個別椎骨を相互接続するように構成された1以上のロッドと、
を備える操作可能な細長部材と、
前記操作可能な細長部材の近位端に位置する制御ハンドルアセンブリであって、前記制御ハンドルアセンブリの近位部の第1長手軸は前記制御ハンドルアセンブリの遠位部の第2長手軸からずれている、制御ハンドルアセンブリと、
を備え、
前記操作可能な細長部材は、前記1以上のロッドを作動させることにより関節動作可能である、装置。
<22> 前記1以上のロッドは、前記一組の個別椎骨を押し引きして前記操作可能な細長部材の遠位先端に関節動作を生じるように構成された、<21>に記載の装置。
<23> 前記一組の個別椎骨のそれぞれが少なくとも1つのテーパ端部を形成する、<3>に記載の手術器具。
<24> 前記テーパ端部は、横軸に沿う平面から20度以下の角度で切断されている、<23>に記載の手術器具。
<25> 前記テーパ端部は、放射軸の中心からずれた傾斜面を形成する、<24>に記載の手術器具。