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特開2023-154109コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラム
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  • 特開-コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラム 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154109
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E04G21/02 ESW
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054556
(22)【出願日】2022-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣中 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172BA25
2E172DE02
2E172FA00
2E172HA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンクリート打設中に発生したトラブルに対処するコンクリート打設管理装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】コンクリート打設管理装置は、構造物の3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分し、中ブロック夫々を、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する構造物の3次元設計情報を取得する取得部と、3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間に、小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、コンクリートの打設を実行することができなくなり、打設を一時停止をする場合、コンクリートの打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する一時停止開始信号受信部と、一時停止開始信号を受信した場合、所定の小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時し、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する経過時間計時部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、前記3次元設計情報に従ったコンクリートの打設を変更して、コンクリートの打設の一時停止をする場合、前記所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であって、コンクリートの打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する一時停止開始信号受信部と、
前記一時停止開始信号を受信した場合、前記所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する経過時間計時部と、
を備えたコンクリート打設管理装置。
【請求項2】
コンクリートの打設の一時停止終了を示す解除信号を受信する解除信号受信部をさらに備え、
前記経過時間計時部は、前記解除信号を受信した場合、前記一時停止時間の計時を停止する請求項1に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項3】
前記経過時間計時部は、計時された前記一時停止時間を記録する請求項1または2に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項4】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、前記3次元設計情報に従ったコンクリートの打設を変更して、コンクリートの打設の一時停止をする場合、前記所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であって、コンクリートの打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する一時停止開始信号受信ステップ、
前記一時停止開始信号を受信した場合、前記所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する、経過時間計時ステップと、
を含むコンクリート打設管理方法。
【請求項5】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、前記3次元設計情報に従ったコンクリートの打設を変更して、コンクリートの打設の一時停止をする場合、前記所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であって、コンクリートの打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する一時停止開始信号受信ステップ、
前記一時停止開始信号を受信した場合、前記所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する、経過時間計時ステップと、
をコンピュータに実行させるコンクリート打設管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、管理者が、リフト領域を指定し、指定されたリフト領域について、所定値以下であって、ほぼ均等分割となる位置を指定し、指定された高さ位置を境界面として、リフト領域を各層に分割して輪切りモデルを生成し、生成した輪切りモデルの上面図において、所定の個数となるように複数のブロックに分割し、他の各層についても、同様にブロックに分割することにより、領域分割処理を行うことが開示されている(同文献段落[0056]~[0059]、図4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-35626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、コンクリート打設中に発生したトラブルに対処することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理装置は、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、前記3次元設計情報に従ったコンクリートの打設を変更して、コンクリートの打設の一時停止をする場合、前記所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であって、コンクリートの打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する一時停止開始信号受信部と、
前記一時停止開始信号を受信した場合、前記所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する経過時間計時部と、
を備えた。
【0006】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理方法は、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、前記3次元設計情報に従ったコンクリートの打設を変更して、コンクリートの打設の一時停止をする場合、前記所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であって、コンクリートの打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する一時停止開始信号受信ステップ、
前記一時停止開始信号を受信した場合、前記所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する、経過時間計時ステップと、
を含む。
【0007】
さらに、上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理プログラムは、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、前記3次元設計情報に従ったコンクリートの打設を変更して、コンクリートの打設の一時停止をする場合、前記所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であって、コンクリートの打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する一時停止開始信号受信ステップ、
前記一時停止開始信号を受信した場合、前記所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する、経過時間計時ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリート打設中に発生したトラブルに対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の前提技術におけるコンクリート打設管理の概要を説明するための図である。
図1B】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による分割基準点設定の概要を説明するための図である。
図1C】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による軸線設定の概要を説明するための図である。
図1D】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による分割操作の概要を説明するための図である。
図1E】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による複数モデルを含む場合の分割基準点設定の概要を説明するための図である。
図1F】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置により記録される帳票の概要を説明するための図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置が有する小ブロックテーブルの一例を説明するための図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置のハードウェア構成を説明するための図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置が有する小ブロックテーブルの一例を説明するための図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置のハードウェア構成を説明するための図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としてのコンクリート打設管理装置100について、図1A図5を用いて説明する。コンクリート打設管理装置100は、コンクリートの打設計画に合わせて構造物を所定サイズの小ブロックに分割して、コンクリートの打設計画等を立て、効率的なコンクリート打込みを管理するための装置である。
【0012】
通常、構造物のコンクリート打設を行う場合、アジテータ車(コンクリート運搬車)で未硬化のコンクリートを運搬し、例えば、1日の施工領域に組み立てられた型枠内に、順次、未硬化のコンクリートを打ち込む。そして、先に打ち込まれたコンクリートが硬化する前に、次のコンクリートを打ち重ね、バイブレータなどによりコンクリートを攪拌して、打ち重ねたコンクリートと打ち重ねられたコンクリートとの両方のコンクリートを一体化させる。この打ち込みから一体化までの作業を繰り返すことで、施工領域へのコンクリート打設が完了する。コンクリートの打設完了後は、打設したコンクリートを一定期間養生して硬化させ、組み立てた型枠の脱型を行う。
【0013】
この場合、例えば、図1Aに示したような構造物のコンクリートを打設する場合に、コンクリートを順次打ち込むときに、先行して打込んだコンクリートが硬化する前に、打ち重ねられたコンクリートと打ち重ねたコンクリートとをバイブレータなどによって一体化させる必要がある。このとき、コンクリートの打重ね時間が管理時間(例えば、コンクリート標準示方書に準ずる管理時間)を超過すると、コンクリートの打継ぎ部分にコールドジョイントなどが発生し、弱部となるおそれがある。そのため、構造物のコンクリート打込みにおいては、材料練り混ぜからの時間管理や、コンクリートの打設順序、打ち重ね時間の管理などが重要となる。
【0014】
ここで、コンクリートの施工領域の規模が大きくなると、多量のコンクリートが必要となり、コンクリートを運搬するために必要となるアジテータ車の台数が多くなる。さらに、大規模構造物のコンクリートを打ち込むためには、アジテータ車の運搬可能量などに応じて、当該構造物を複数の層に分けるなどして、順序立ててコンクリートを打ち込まなければならず、コンクリートの層数も多くなる傾向にある。そのため、打ち継ぎ部も多くなるので、コールドジョイント150などの弱部が発生することがないように、コンクリートの打重ね時間などを考慮した上で、打込み順序や打込み層厚などを決めてコンクリートの打設計画160を立てる必要があった。
【0015】
しかしながら、コンクリートの打設計画160を立てるために、構造物をいくつかの層へ分割したり、所定サイズの小ブロックへ分割したりする作業は、構造物の2次元設計図を用いて、現場において現場作業者の手作業で行われていた。そのため、層分割や小ブロック分割を行って厳密な打設計画を立てることは困難な場合が多く、現場作業者の負担になっていた。そこで、ユーザは、コンクリート打設管理装置100を用いることにより、層分割や小ブロック分割、各小ブロックの打込み順序の設定を容易に行えるようになる。
【0016】
次に、図1B図1Eを参照して、コンクリート打設管理装置100を用いた、打設計画の管理について説明する。まず、図1Bに示したように、3次元CAD(Computer-Aided Design)などを用いて設計した構造物の3次元データ等を含む3次元設計情報120が、コンクリート打設管理装置100に接続されたモニターやディスプレイ、ユーザが所持するタブレットやスマートフォンなどの携帯端末等のディスプレイ140などに表示される。なお、3次元設計情報120には、例えば、工区や工期などの情報も含まれている。また、3次元設計情報120は、予め3次元CADなどを用いて作成されている。
【0017】
3次元設計情報120は、所定期間に打設可能なコンクリートの量に応じて設定された施工領域であり、複数の中ブロック123,124,125,126に分けられている。例えば、中ブロック123に着目して、この中ブロック123を所定サイズの小ブロックに分割する場合を考える。
【0018】
まず、図1Bに示したように、ユーザは、小ブロックへの分割対象として着目する中ブロック123(着目中ブロック)において、小ブロックへの分割の基準となる分割基準点121を指定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが指定した位置に分割基準点121を設定する。ここで、分割基準点121は、中ブロック123を、どの位置を基準にどの方向へ分割するかの基準となる点である。
【0019】
図1Bに示した例では、中ブロック123の頂点部分(底面左下)に、分割基準点121を設定している。なお、分割基準点121は、頂点部分以外にも設定することが可能であり、例えば、頂点と頂点との間の辺の部分や、側面部分(表面部分)の任意の位置、中ブロック123の内部の任意の位置などに設定することができる。ユーザは、他の中ブロック124,125,126についても、中ブロック123と同様の操作を行って、分割基準点を設定することができる。
【0020】
次に、図1Cに示したように、軸線の設定を行う。すなわち、分割基準点121を原点と考えて、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが、指定した位置にX軸方向の端点122を設定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、分割基準点121から、端点122を通過する線分として、X軸127を生成させる。生成された軸線(X軸127)は、図示したように、例えば、中ブロック123の傍に表示しても、3次元設計情報120から離れた位置に表示してもよい。
【0021】
また、Y軸、Z軸についても同様に、ユーザが、指定した各軸線の端点の位置に基づいて、コンクリート打設管理装置100は、分割基準点121から、指定した各端点を通過する線分として、Y軸、Z軸を生成させる。そして、生成された各軸線(Y軸、Z軸)は、中ブロック123の傍に表示しても、3次元設計情報120から離れた位置に表示してもよい。各軸線(X軸127、Y軸、Z軸)は、中ブロック123の縦横高さ方向に平行な線分となっている。
【0022】
続いて、図1Dに示したように、ユーザは、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割するために必要なパラメータの設定を行う。ユーザが設定するパラメータは、例えば、等幅分割(分割の間隔)、均等分割(分割数及び丸め幅)、層厚などである。これらのパラメータは、例えば、ディスプレイ140の右側に表示されたパラメータ設定用ウィンドウの所定のボックスに数値を入力することにより設定される。
【0023】
ここで、等幅分割は、所定幅(所定の分割間隔)で構造物を分割して、所定サイズの小ブロックを得る場合をいう。この場合、例えば、分割基準点121から、800mm間隔で構造物の分割線が生成され、表示されるようになる(図1D参照)。
【0024】
また、均等分割は、所定の分割数の小ブロックが生成されるように構造物を分割する場合をいう。丸め幅は、例えば、均等分割する際の、分割により生成される各小ブロックの大きさの単位を決めるものである。例えば、丸め幅を100mmと設定すると、生成される小ブロックの大きさの単位(1辺の長さの単位)が、100mm刻みの単位である、600mm、700mm、800mmなどのサイズの小ブロックが生成されるようになる。同様に、例えば、丸め幅を10mmと設定すると、生成されるブロックの大きさの単位(1辺の長さの単位)が、10mm刻みの単位である、810mm、820mm、830mmなどのサイズの小ブロックが生成されるようになる。
【0025】
このように、丸め幅を設定して、小ブロックのサイズの端数を調整することにより、各小ブロックの体積等の管理が容易になるため、コンクリートの打設管理を容易に行えるようになる。そして、コンクリート打設管理装置100は、設定されたパラメータに従って、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割する。所定サイズの小ブロックに分割したら、小ブロックのそれぞれに、打設順を設定することにより、コンクリートの打設を適切に管理することができる。打設順の設定は、例えば、層毎に行われるが、これには限定されない。
【0026】
図1Eに示したように、構造物全体として、複数の異なる形状を有する構造物が含まれている場合には、例えば、それぞれの構造物に対して分割基準点を設定することにより、構造物全体として、小ブロックに分割する。なお、このような、1つの構造物として、複雑な形状を有している構造物と考えられる場合には、複数の異なる形状を有する構造物同士が結合したものと考えることが可能である。
【0027】
そして、構造物全体として、複数の異なる形状を有する構造物を含む場合、それぞれの構造物の接続部分は、Z軸方向から、構造物全体を見た場合、断面変化が不連続となる位置である断面変化面となっている。
【0028】
そして、このような断面変化面が存在するときに、例えば、1つの分割基準点131を基準に、構造物を分割する場合、断面変化面を跨る部分で連続してコンクリートを打ち込むことになり、断面変化面が弱部となってしまう。そのため、この断面変化面に境界を設けて管理する必要がある。したがって、断面変化面が出現するたびに、分割基準点131の設定が必要となる。例えば、断面変化面を跨いでコンクリートを打ち込んだ場合、未硬化のコンクリートからの水分上昇(ブリーディング)等が発生し、断面変化面にブリーディングが集中して、弱部となる恐れがある。よって、断面変化面が存在する場合には、断面変化面が境界面となるように、分割基準点131を設定することが好ましい。このように、断面変化面に分割基準点131を設定することで(断面変化面を境界面とすることで)、断面変化面を跨ぐ小ブロックが生成されることを抑制することができる。
【0029】
以上のように、ユーザは、3次元設計情報120に対して、分割基準点131を複数設定し、設定した分割基準点131のそれぞれについて、分割幅や分割数などのパラメータを設定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、設定された分割基準点131やパラメータに基づいて、構造物を所定サイズの小ブロックに分割する。
【0030】
上述したように、コンクリート打設管理装置100においては、小ブロック単位に分けて、コンクリートの打設計画を立案する。そして、コンクリートの打設現場では、立案された打設計画(3次元設計情報120)に従って、コンクリートの打設が行われる。
【0031】
しかしながら、3次元設計情報120に従って、コンクリートの打設を行っている間、例えば、交通事情などにより、生コンクリートを運搬するアジテータ車の配車計画が、予定通りに進まなくなることがある。この場合、既にコンクリートの打設が開始されているため、現在コンクリートを打設している打設層においては、速やかにコンクリートの打設を進めなければ、既打設のコンクリートの硬化が始まり、コールドジョイントなどの弱部発生の原因となる。
【0032】
そのため、アジテータ車が現場へ到着するまでの間の時間確保の方法として、当初計画よりも、小ブロック全体のコンクリートの厚みが薄くなるように打ち重ねておき、この状態で、コンクリートの打込みを一時停止して、次のアジテータ車の到着を待機する。そして、アジテータ車が到着したら、コンクリート打込みの一時停止を解除して、コンクリート打重ねを再開することがコールドジョイントなどの発生を防ぐための対処方法となる。なお、ここでは、一時停止するケースとして、アジテータ車の配車の遅延を例にしたが、これには限定されず、例えば、ポンプ車の故障や天候の急変など不測の事態の発生により工事の継続が難しい場合などである。
【0033】
しかしながら、このような対処方法は、打設計画には含まれていない緊急避難的な対処方法の一つであり、現場作業者の判断で行われることが多い。そのため、このような対処方法を記録する方法がない場合も多く、記録に残らない場合も多い。
【0034】
これに対して、コンクリートの打設を一時停止した場合、その事実を記録として残しておくことができれば、後の検証の際や、構造物にコールドジョイントなどの弱部が発生した場合の補修や補強を検討する際の参照情報として有用である。つまり、このような記録を残しておくことの利点の1つとして、一時停止した事実を、早急かつ容易に、特定することなどが可能となる。
【0035】
ここで、図1Fを参照すると、各小ブロックにいついて、コンクリートの打重ね時間等を記録した帳票170が示されている。帳票170には、備考欄171が設けられおり、例えば、番号21の備考欄171には、<12:53~13:38 一時停止>と記録されている。これは、番号21の小ブロックについて、ここに記録された時間の間、コンクリートの打設が一時停止されたことを示している。同様に、番号39の備考欄171には、<15:54~16:01 一時停止>と記録されている。これも、番号39の小ブロックについて、ここに記録された時間の間、コンクリートの打設が一時停止されたことを示している。なお、帳票170は、小ブロックのそれぞれについて、コンクリートの打設がいつのタイミングで行われたかなどの情報を記録したデータであり、コンクリート打設のタイミング以外の情報の記録が可能であるが、ここでは、タイミングのみを示したものとしている。
【0036】
このように、コンクリート打設管理装置100は、コンクリートの打設時間を計時して、記録するとともに、コンクリート打設の一時停止があった場合の一時停止時間も合わせて計時して、記録している。
【0037】
すなわち、コンクリート打設管理装置100による計時においては、所定小ブックについて、既にコンクリートの打設が開始されているため、当該所定小ブロックについての打設開始からの経過時間の計時は止めない。しかしながら、コンクリート打設管理装置100は、コンクリートの打設を一時停止している間の時間を、打設開始からの経過時間とともに計時する。
【0038】
ここで、図1Fに示した帳票170のブロック番号がA21の小ブロックを例に一時停止時間の記録について具体的に説明する。図示したように、A21のコンクリート打込みは、12:51~13:46まで行われていたが、そのうち、コンクリートの打込みの一時停止時間は、12:53~13:38となっている。ここで、コンクリートの打込みの一時停止が必要な場合には、作業者は、一時停止前に、A21の小ブロックに対して、当該小ブロックの厚みよりも薄くコンクリートを打ち込む。
【0039】
つまり、A21の小ブロックとA20の小ブロックとの境界面をコンクリートで薄く覆うことにより、一時停止をして、打重ね時間を捻出する。つまり、A20の小ブロックの打込みが終了すると、所定時間以内に次の小ブロックであるA21に対してコンクリートを打ち込まなければ、A20に打ち込まれたコンクリートが固化し、A20とA21との間の境界面にコールドジョイントなどが発生することとなる。そのため、コンクリート打込みを一時停止する場合には、小ブロックの厚みよりも薄くコンクリートを打ち込むことにより、一時停止のための時間を創出しなければならない。
【0040】
そして、図1Fに示した例では、まず、12:51~12:53の間に、A21の小ブロックにコンクリートを薄く打ち込む。その後、作業者が、タブレット端末等を操作して、12:53~13:38までA21の小ブロックにおけるコンクリート打込みを一時停止することを記録する。そして、一時停止時間が終了すると、作業者が、タブレット端末等を操作して、13:38に、コンクリートの打込みが再開され、このブロックにおける残りのコンクリートが打ち込まれ、13:46に打込が終了したことを記録する。このような、作業を経て、帳票170に一時停止時間が記録されるようになり、打込み(打重ね)が適切に行われたことを示すデータを確認することができる。
【0041】
よって、コンクリート打設管理装置100によれば、緊急事態等を回避するために、コンクリートの打設の一時停止があったことを、現場作業員のみならず、打設完了後の検証などにおいても確認することができるようになっている。そして、コンクリート打設管理装置100においては、緊急事態が発生した場合においても、帳票170に一時停止の開始時刻と終了時刻とを記録として残しておくので、構造物の補修や補強等が必要となった場合であっても、補修や補強すべき箇所を、いち早く特定することができるため、有利である。
【0042】
次に図2を参照して、コンクリート打設管理装置100の構成について説明する。コンクリート打設管理装置100は、取得部201、一時停止開始信号受信部202、経過時間計時部203および解除信号受信部204を有する。
【0043】
取得部201は、コンクリートを打設する構造物の3次元設計情報120であって、3次元設計情報120を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報120を取得する。3次元設計情報120は、3次元設計情報120を所定サイズの中ブロックに区分されている。そして、区分された中ブロックのそれぞれは、中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに、所定サイズの小ブロックに分割されている。3次元設計情報120は、分割された分割データを有している。
【0044】
3次元設計情報120が、コンクリート打設管理装置100とは異なる装置で生成された場合、取得部201は、3次元設計情報120を有線接続または無線接続により当該装置から取得する。また、取得部201は、3次元設計情報120が記録された記録媒体等を介して3次元設計情報120を取得してもよい。
【0045】
一時停止開始信号受信部202は、コンクリート打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する。すなわち、3次元設計情報120に従ってコンクリートを打設している間において、小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、3次元設計情報120に従ってコンクリートの打設を実行することができなくなることがある。この場合、コンクリート打設管理装置100は、コンクリートの打設ができなくなった所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であることを判定することもできる。
【0046】
そして、当該所定小ブロックが属する打設層がコンクリート打設中の打設層であれば、一時停止開始信号受信部202は、コンクリート打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する。所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であるか否かを判定するのは、コンクリート打設中の打設層でなければ、コンクリート打設が行われていないので、コンクリート打設の一時停止をする必要がないからである。しかしながら、コンクリート打設中でなければ、コンクリート打設の一時停止をする必要はないため、コンクリート打設管理装置100による判定は行わなくてもよい。
【0047】
一時停止の開始を示す信号は、例えば、現場の作業者が所持するタブレット端末などの携帯端末のディスプレイ等に表示されている、一時停止ボタンなどを操作することにより、送信される。そして、一時停止開始信号受信部202は、送信された一時停止開始信号を受信する。なお、一時停止開始信号受信部202は、一時停止開始信号を有線通信または無線通信で受信する。
【0048】
まず、経過時間計時部203は、所定小ブロックに対するコンクリートの打設が開始されると、当該所定小ブロックについて、コンクリートの打設開始からの経過時間を計時し始める。例えば、現場の作業者が、先ほどと同様に、タブレット端末などの携帯端末のディスプレイ等に表示されている計時開始ボタンなどを操作することにより、経過時間計時部203は、経過時間の計時を開始する。そして、当該所定ブロックに対するコンクリートの打設が完了すると、現場の作業者が、タブレット端末のディスプレイに表示されている、打設完了ボタンなどを操作することにより、経過時間計時部203は、経過時間の計時を終了する。
【0049】
そして、経過時間計時部203は、一時停止開始信号受信部202で一時停止開始信号を受信した場合、所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する。ここで、経過時間計時部203は、一時停止開始信号受信部202が、一時停止開始信号を受信すると、所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間の計時を行いつつ、コンクリート打設の一時停止時間の計時を行う。
【0050】
このように、経過時間計時部203においては、所定小ブロックに対するコンクリート打設開始からの経過時間の計時を止めることなく、一時停止時間の計時を行っている。これにより、コンクリート打設管理装置100においては、所定小ブロックに対するコンクリートの打設が行われている間に、コンクリート打設の一時停止があったことを記録できるようになっている。
【0051】
解除信号受信部204は、コンクリートの打設の一時停止終了を示す解除信号を受信する。そして、経過時間計時部203は、解除信号を受信した場合、一時停止時間の計時を停止する。コンクリート打設の一時停止時間が終了して、コンクリート打設を再開できる状態となると、現場の作業者が、例えば、タブレット端末のディスプレイに表示されている一時停止解除ボタンなどを操作すると、解除信号が送信されるようになっている。
【0052】
経過時間計時部203は、解除信号受信部204が解除信号を受信すると、一時停止時間の計時を停止するが、一時停止時間の計時を停止しても、経過時間計時部203は、所定小ブロックにおけるコンクリート打設開始からの経過時間の計時を継続する。なお、同一の所定小ブロックにおいて、コンクリート打設の一時停止は、複数回あってもよい。
【0053】
上述したように、コンクリート打設管理装置100においては、コンクリート打設の一時停止時間の計時の開始および停止は、一時停止開始信号および一時停止解除信号をそれぞれ受信したタイミングで行われる。
【0054】
図3は、コンクリート打設管理装置100が有する小ブロックテーブル301の一例を説明するための図である。小ブロックテーブル301は、小ブロック番号311に関連付けて計画打設時間312を記憶する。小ブロック番号311は、3次元設計情報120に含まれる小ブロックを識別するための識別子である。計画打設時間312は、各小ブロックについての、計画段階における打設時間である。そして、コンクリート打設管理装置100は、小ブロックテーブル301を参照して、コンクリート打設を管理する。
【0055】
図4を参照して、コンクリート打設管理装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで図2のコンクリート打設管理装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0056】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。3次元設計情報データ441は、コンクリートの打設対象となる構造物の3次元CADデータなどを含むデータである。計画打設時間データ442は、各小ブロックについて計画されたコンクリート打設の開始時間や終了時間のデータである。経過時間データ443は、各小ブロックについて、コンクリートの打設開始から計時された経過時間についてのデータである。一時停止時間データ444は、所定小ブロックにういて、コンクリートの打設中に打設の一時停止が生じた場合に計時される一時停止中の時間のデータである。
【0057】
送受信データ445は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域446を有する。
【0058】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、小ブロックテーブル301を格納する。小ブロックテーブル301は、図3に示した、小ブロック番号311と計画打設時間312との関係を管理するテーブルである。
【0059】
ストレージ450は、さらに、取得モジュール451、一時停止開始信号受信モジュール452、経過時間計時モジュール453および解除信号受信モジュール454を格納する。取得モジュール451は、構造物の3次元設計情報120であって、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する情報を取得するモジュールである。一時停止開始信号受信モジュール452は、一時停止開始信号を受信するモジュールである。経過時間計時モジュール453は、各小ブロックについて、コンクリートの打設開始からの経過時間を計時するモジュールである。解除信号受信もジール454は、コンクリート打設の一時停止の終了を示す解除信号を受信するモジュールである。これらのモジュール451~454は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。制御プログラム455は、コンクリート打設管理装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0060】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、図4に示したRAM440やストレージ450には、コンクリート打設管理装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0061】
次に図5に示したフローチャートを参照して、コンクリート打設管理装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、図2のコンクリート打設管理装置100の各機能構成を実現する。
【0062】
ステップS501において、取得部201は、3次元設計情報120を取得する。ステップS503において、コンクリート打設管理装置100は、構造物のコンクリート打設を管理する。ステップS505において、経過時間計時部203は、各小ブロックについて、コンクリート打設の開始からの経過時間を計時する。ステップS507において、一時停止開始信号受信部202は、コンクリート打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信したか否かを判定する。一時停止開始信号を受信していないと判定した場合(ステップS507のNO)、コンクリート打設管理装置100は、ステップS505へ戻る。一時停止開始信号を受信したと判定した場合(ステップS507のYES)、コンクリート打設管理装置100は、次のステップへ進む。
【0063】
ステップS509において、経過時間計時部203は、所定小ブロックについて、コンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、コンクリート打設を一時停止してからの一時停止時間の計時を開始する。ステップS511において、解除信号受信部204は、コンクリート打設の一時停止終了を示す解除信号を受信したか否かを判定する。解除信号を受信していないと判定した場合(ステップS511のNO)、コンクリート打設管理装置100は、ステップS509へ戻る。解除信号を受信したと判定した場合(ステップS511のYES)、コンクリート打設管理装置100は、次のステップへ進む。
【0064】
ステップS513において、経過時間計時部203は、一時停止時間の計時を終了する。ステップS515において、コンクリート打設管理装置100は、構造物のコンクリート打設の管理を終了するか否かを判定する。コンクリート打設管理を終了しないと判定した場合(ステップS515のNO)、コンクリート打設管理装置100は、ステップS505へ戻る。コンクリート打設管理を終了すると判定した場合(ステップS515のYES)、コンクリート打設管理装置100は、処理を終了する。
【0065】
本実施形態によれば、コンクリート打設中に発生したトラブルに対処することができる。コンクリート打設中に、打設計画通りにコンクリートの供給ができない場合などに、打設を一時停止している時間を計時して、記録できるので、施工後のコンクリートに問題が発生した場合などに、事後的な検証情報や、補修や補強などを行う際の参考情報とすることができる。
【0066】
また、所定小ブロックのコンクリート打設中に打設の一時停止があった場合、当該所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間と一時停止時間とを計時して記録するので、緊急事態に対処しつつ、履歴を残すことができる。さらに、コンクリート供給の遅延などの緊急事態が発生しても、所定小ブロックの中で、計画よりも少ない量のコンクリートを打設して、供給が再開され、その小ブロックの未打設部分の打重ね時間を稼ぐことができるので、全体の打設計画に与える影響を最小化できる。
【0067】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置600について、図6図9を用いて説明する。図6は、本実施形態に係るコンクリート打設管理装置600の構成を説明するためのブロック図である。本実施形態に係るコンクリート打設管理装置600は、上記第1実施形態と比べると、一時停止時間判定部および報知部を有する点で異なる。その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0068】
コンクリート打設管理装置600は、一時停止時間判定部601および報知部602を有する。一時停止時間判定部601は、経過時間計時部203により計時されている一時停止時間が、所定一時停止時間を超えたか否かを判定する。すなわち、コンクリート打設管理装置600においては、所定小ブロックにコンクリートを打設している間に、コンクリート打設を一時停止する必要が生じた場合、打設を一時停止している間の時間を計時することができる。しかしながら、コンクリートは、打設開始から所定時間経過すると硬化する性質のものであり、コンクリートの打設を無制限に一時停止させることはできない。
【0069】
そのため、一時停止時間判定部601は、計画していたコンクリートの打設量よりも少ない量のコンクリートを打設して、緊急事態が解消されるまでの打重ね時間を確保している間の時間(一時停止時間)が、コンクリートの硬化時間(所定一時停止時間)を超過しているか否かを判定する。ここで、所定一時停止時間は、警告を報知するか否かを判定するための基準時間(警告基準時間)となっている。また、所定一時停止時間は、コンクリートの性質や打設計画、アジテータ車の配車計画などに応じて複数設けてもよい。
【0070】
そして、報知部602は、一時停止時間判定部601により、コンクリート打設の一時停止時間が、所定一時停止時間を超えていると判定された場合、所定の警告を報知する。報知部602により報知される警告は、例えば、音や振動、光などである。報知部602は、例えば、作業者が有するタブレット端末などの携帯端末のスピーカから音を出力させたり、タブレット端末を振動させたり、タブレット端末のディスプレイを光らせたりして、警告を報知する。なお、警告の報知方法は、ここに示した方法には限定されない。
【0071】
図7は、コンクリート打設管理装置600が有する小ブロックテーブル701の一例を説明するための図である。小ブロックテーブル701は、小ブロック番号311に関連付けて一時停止時間711および所定一時停止時間712を記憶する。一時停止時間711は、コンクリートの打設を一時停止している間の時間であり、経過時間計時部203により計時される時間である。所定一時停止時間712は、一時停止時間判定部601が、経過時間計時部203により計時されている一時停止時間と比較するための時間(警告基準時間)である。一時停止時間が、所定一時停止時間712を超えると、報知部602により、一定の警告が報知される。なお、所定一時停止時間712は、コンクリートの性質やアジテータ車の配車計画などに応じて複数設定してもよい。
【0072】
図8を参照して、コンクリート打設管理装置600のハードウェア構成について説明する。RAM840は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM840には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。所定一時停止時間データ841は、一時停止時間が所定一時停止時間を超えているか否かを判定するための基準となる時間データである。
【0073】
ストレージ850には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ850は、小ブロックテーブル701を格納する。小ブロックテーブル701は、図7に示した、小ブロック番号311と所定一時停止時間712などとの関係を管理するテーブルである。
【0074】
ストレージ450は、さらに、一時停止時間判定モジュール851および報知モジュール852を格納する。一時停止時間判定モジュール851は、計時されている一時停止時間が、所定一時停止時間を超えたか否かを判定するモジュールである。報知モジュール852は、計時されている一時停止時間が、所定一時停止時間を超えていると判定された場合、警告を報知するモジュールである。これらのモジュール851~852は、CPU410によりRAM840のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。制御プログラム455は、コンクリート打設管理装置600の全体を制御するためのプログラムである。
【0075】
次に図9に示したフローチャートを参照して、コンクリート打設管理装置600の処理手順について説明する。このフローチャートは、図8のCPU410がRAM440を使用して実行し、図6のコンクリート打設管理装置600の各機能構成を実現する。
【0076】
ステップS901において、一時停止時間判定部601は、経過時間計時部203により計時されている一時停止時間が、所定一時停止時間を超えたか否かを判定する。所定一時停止時間を超えていないと判定した場合(ステップS901のNO)、コンクリート打設管理装置600は、ステップS511へ進む。
【0077】
所定一時停止時間を超えたと判定した場合(ステップS901のYES)、コンクリート打設管理装置600は、次のステップへ進む。ステップS903において、報知部602は、所定の警告を報知する。
【0078】
本実施形態によれば、一時停止時間が所定一時停止時間を超過する場合に警告を報知するので、現場の作業者は、警告に合わせて一時停止時間を調整することができる。
【0079】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0080】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
そのため、アジテータ車が現場へ到着するまでの間の時間確保の方法として、当初計画よりも、小ブロック全体のコンクリートの厚みが薄くなるように打ち重ねておき、この状態で、コンクリートの打込みを一時停止して、次のアジテータ車の到着を待機する。そして、アジテータ車が到着したら、コンクリート打込みの一時停止を解除して、コンクリートの打込みを再開することがコールドジョイントなどの発生を防ぐための対処方法となる。なお、ここでは、一時停止するケースとして、アジテータ車の配車の遅延を例にしたが、これには限定されず、例えば、ポンプ車の故障や天候の急変など不測の事態の発生により工事の継続が難しい場合などである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
つまり、A21の小ブロックとA12の小ブロックとの境界面をコンクリートで薄く覆うことにより、一時停止をして、打重ね時間を捻出する。つまり、A12の小ブロックの打込みが終了すると、所定時間以内に次の小ブロックであるA21に対してコンクリートを打ち込まなければ、A12に打ち込まれたコンクリートが固化し、A12とA21との間の境界面にコールドジョイントなどが発生することとなる。そのため、コンクリート打込みを一時停止する場合には、小ブロックの厚みよりも薄くコンクリートを打ち込むことにより、一時停止のための時間を創出しなければならない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1F
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1F
【手続補正書】
【提出日】2023-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、前記3次元設計情報に従ったコンクリートの打設を変更して、コンクリートの打設の一時停止をする場合、前記所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であって、コンクリートの打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する一時停止開始信号受信部と、
前記所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、前記一時停止開始信号を受信した場合、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する経過時間計時部と、
を備えたコンクリート打設管理装置。
【請求項2】
コンクリートの打設の一時停止終了を示す解除信号を受信する解除信号受信部をさらに備え、
前記経過時間計時部は、前記解除信号を受信した場合、前記一時停止時間の計時を停止する請求項1に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項3】
前記経過時間計時部は、計時された前記一時停止時間を記録する請求項1または2に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項4】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、前記3次元設計情報に従ったコンクリートの打設を変更して、コンクリートの打設の一時停止をする場合、前記所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であって、コンクリートの打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する一時停止開始信号受信ステップ、
前記所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、前記一時停止開始信号を受信した場合、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する、経過時間計時ステップと、
を含むコンクリート打設管理方法。
【請求項5】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層において、前記3次元設計情報に従ったコンクリートの打設を変更して、コンクリートの打設の一時停止をする場合、前記所定小ブロックが属する打設層が、コンクリート打設中の打設層であって、コンクリートの打設の一時停止の開始を示す一時停止開始信号を受信する一時停止開始信号受信ステップ、
前記所定小ブロックに対するコンクリートの打設開始からの経過時間を計時するとともに、前記一時停止開始信号を受信した場合、コンクリートの打設の一時停止からの一時停止時間を計時する、経過時間計時ステップと、
をコンピュータに実行させるコンクリート打設管理プログラム。