(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154112
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20231012BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231012BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q19/00
A61K8/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063178
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(72)【発明者】
【氏名】枝 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 義之
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB032
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC442
4C083AC621
4C083AC622
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC712
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD352
4C083CC02
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE11
(57)【要約】
【課題】毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤を提供することである。
【解決手段】1.トラネキサム酸、パントテン酸誘導体から選ばれる1以上の成分を含む、毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤。2.パントテン酸誘導体がパントテン酸Caまたはパントテニルアルコールであることを特徴とする1に記載の毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラネキサム酸、パントテン酸誘導体から選ばれる1以上の成分を含む、毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤。
【請求項2】
パントテン酸誘導体がパントテン酸Caまたはパントテニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛穴が目立つと容貌が損なわれるため、毛穴の改善が望まれてきた。物理的な手法として、一時的に毛穴の目立ちを隠すような収斂剤や、角栓の除去による対応がとられてきたが、根本的な解決にはならなかった。そこで、生理化学的な解決方法が求められており、オリーブ葉のガラクトミセス属菌発酵物又はその抽出物を含む発酵組成物を含む、毛穴の目立ち改善剤(特許文献1)、腐植土抽出物とグルクロン酸を構成糖の一部として含有する多糖を含有する毛穴改善効果に優れる化粧料(特許文献2)、クスノハガシワ抽出物、ボダイジュ抽出物、ボタンピ抽出物、ベルゲニアリグラタ抽出物、アセンヤク抽出物、オリーブ抽出物、ゴレンシ抽出物またはサクラ抽出物と、レチノールまたはレチノール誘導体とを含む毛穴改善用組成物(特許文献3)などが開発されている。
また、肌状態を良好に保つため、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-102580号公報
【特許文献2】特開2017-031125号公報
【特許文献3】特開2014-227374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.トラネキサム酸、パントテン酸誘導体から選ばれる1以上の成分を含む、毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤。
2.パントテン酸誘導体がパントテン酸Caまたはパントテニルアルコールであることを特徴とする1.に記載の毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明の毛穴改善剤を適用することで、毛穴を目立たなくすることができ、容貌を改善できる。また、本発明のキメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤を適用することで、キメを改善し、ラメラ形成を促進し、角層の重層剥離を低減することができ、肌状態を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】画像解析ソフトで検出された毛穴数の変化を示すグラフ
【
図4】画像解析による角層のラメラ形成促進効果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、トラネキサム酸、パントテン酸誘導体から選ばれる1以上の成分を含む、毛穴改善剤、キメ改善剤、ラメラ形成促進剤、角層の重層剥離低減剤である。本発明の毛穴改善剤とは、毛穴を小さくし、目立たなくする効果を有する剤のことをいう。本発明のキメ改善剤は、肌のキメを明瞭にする剤のことをいう。本発明のラメラ形成促進剤は、角層のラメラの形成を促進する剤のことをいう。本発明の角層の重層剥離低減剤は、角層をテープストリッピングで剥離した際の、重層剥離を低減する剤のことをいう。
【0009】
本発明に用いるトラネキサム酸は、化粧品に汎用されている原料であり、市販品を入手して用いることができる。
本発明に用いるトラネキサム酸の配合量は0.00001質量%以上、10質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上、2質量%以下がさらにこのましい。
【0010】
本発明に用いるパントテン酸誘導体として、パントテン酸、パントテン酸のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩等、パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、アセチルパントテニルエチルエーテル、ベンゾイルパントテニルエチルエーテル、ジカルボエトキシパントテン酸エチルエステル、パンテチン、パンテテイン、パンテテイン-S-スルホネート等を用いることができる。
本発明のパントテン酸誘導体としては、パントテン酸Ca、パントテニルアルコールを用いることが好ましい。
本発明に用いるパントテン酸誘導体は、試薬や市販原料を入手して用いることができる。
本発明に用いるパントテン酸誘導体の配合量は0.00001質量%以上、10質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上、1質量%以下がさらにこのましい。
【0011】
本発明の毛穴改善剤は、皮膚外用剤、医薬品、医薬部外品、化粧料として用いることが好ましい。本発明の毛穴改善剤には、通常皮膚外用剤等に配合する保湿剤、油剤、界面活性剤、増粘剤、無機粉体、有機粉体、薬効剤等を配合することができる。
【実施例0012】
1.画像解析ソフトによる毛穴改善効果の測定
(方法)対象者は塗布する製剤ごとに、7名とした。
頬部を共通の洗顔料で洗顔し、キムタオル(日本製紙クレシア(株))を軽く押し当て水分をとった。
被験物質塗布前の全顔をVISIA(登録商標) evolusion((株)インテグラル社製) で撮影した。
トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含む製剤を2週間連用し、1週目、2週目も同様にVISIA evolusionで撮影した。
画像解析ソフト(winroof)(三谷商事社製)で毛穴数をカウントした。製剤連用前(0週目)の7名の毛穴数の平均値を1とし、1週目、2週目の7名の毛穴数の平均値との比を
図1のグラフに示した。
製剤の組成を表1に示す。トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含まない製剤をコントロールとした。
【0013】
【0014】
(結果)トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含む製剤では、目立つ毛穴の数が減少した。
【0015】
2.目視評価による毛穴改善効果の測定
(方法)対象者は塗布する製剤ごとに7名とした。
頬部を水で洗い、キムタオル(日本製紙クレシア(株))を軽く押し当て水分をとった。
被験物質塗布前に SKINCAST (アール・エス・アイ社製)を用いて、頬部の肌表面を写し採ったレプリカ剤を採取した。
トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含む製剤を2週間連用し、1週目、2週目に同様にレプリカ剤で採取した。製剤は表1に示した組成のものを用いた。
レプリカの毛穴の大きさを目視で判定(5段階評価)した。評価基準は以下のとおりであり、製剤連用前(0週目)の7名の毛穴の大きさの平均値を1とし、1週目、2週目の7名の毛穴の大きさの平均値との比を
図2のグラフに示した。
(評価基準)
1点:毛穴が小さい(良)
2点:毛穴がやや小さい
3点:毛穴のサイズが普通
4点:毛穴がやや大きい
5点:毛穴が大きい
(結果)トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含む製剤では毛穴の大きさが改善された。とくに、トラネキサム酸1%、2%は塗布1週目、パントテニルアルコール0.3%については塗布2週目の早期の段階から目視による毛穴改善効果が確認できた。一方、トラネキサム酸0.2%およびパントテニルアルコール0.03%について、塗布1週目、2週目の早期の段階においては目視による違いは確認できなかったものの、画像解析(
図1)による劇的な変化から推考するに、継続により目視評価においても毛穴改善効果が期待できることが確認できた。
【0016】
3.キメ改善効果の目視評価
(方法)対象者は塗布する製剤ごとに7名とした。
頬部を水で洗い、キムタオル(日本製紙クレシア(株))を軽く押し当て水分をとった。
被験物質塗布前に SKINCAST (アール・エス・アイ社製)を用いて、頬部の肌表面を写し採ったレプリカ剤を採取した。
トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含む製剤を2週間連用し、1週目、2週目に同様にレプリカ剤で採取した。製剤は表1に示したコントロール、トラネキサム酸1%配合品、トラネキサム酸2%配合品、パントテニルアルコール0.3%配合品を用いた。
レプリカのキメを目視で判定(5段階評価)した。評価基準は以下のとおりであり、7名の平均値を求めた。初期(0W)の平均値を1とし、1週目、2週目の平均値との比を求め、
図3のグラフに示した。
(評価基準)
1点:キメが不明瞭
2点:キメがやや不明瞭
3点:キメの明瞭さが普通
4点:キメがやや明瞭
5点:キメが明瞭(良)
(結果)トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含む製剤でキメへの効果が確認された。
【0017】
4.ラメラ形成促進効果の画像評価
(方法)対象者は塗布する製剤ごとに7名とした。
頬部を水で洗い、キムタオル(日本製紙クレシア(株))を軽く押し当て水分をとった。
被験物質塗布前に 角層テープで角層を採取した。
トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含む製剤を2週間連用し、1週目、2週目に同様に角層テープで角層を採取した。製剤は表1に示した組成のものを用いた。
採取した角層を、デジタルマイクロスコープ(VHX-5000、(株)キーエンス)を用い、倍率500で撮像した。画像解析ソフトでしきい値処理をすることにより、撮像した画像中の角層、ラメラ構造を検知し、角層総面積(単位ピクセル)並びにラメラ構造総面積(単位ピクセル)を算出し、以下の式によりラメラ率を求めた。
ラメラ率=ラメラ構造総面積÷角層総面積
各検体の塗布前を100%とし、
図4のグラフに示した。
(結果)トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含む製剤でラメラ量が増加することを確認した。
【0018】
5.重層剥離低減効果(バリア機能改善効果)の目視評価
(方法)対象者は塗布する製剤ごとに7名とした。
頬部を水で洗い、キムタオル(日本製紙クレシア(株))を軽く押し当て水分をとった。
被験物質塗布前に 角層テープで角層を採取した。
トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含む製剤を2週間連用し、1週目、2週目に同様に角層テープで角層を採取した。製剤は表1に示した組成のものを用いた。
図5に示す基準により、重層剥離低減効果を評価した。7名のスコアの平均値(小数点以下は四捨五入した)を表2に、被験者1名の角層画像の例を
図6に示す。
【0019】
【0020】
(結果)トラネキサム酸、パントテニルアルコールを含む製剤で重層剥離が低減する効果を確認した。