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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154128
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20231012BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20231012BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/18
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063207
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀明
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB04
2C056EB21
2C056EB34
2C056EB51
2C056EC04
2C056EC15
2C056EC20
2C056EC32
2C056EC64
2C056FA04
2C056FA13
2C056KB11
2C056KB16
2C056KB37
2C056KC27
(57)【要約】
【課題】供給インク貯留部と回収インク貯留部との間に印刷差圧を速やかに生成して、印刷開始までの時間を短縮可能とする。
【解決手段】回収タンク531から供給タンク511にインクを送液するリターンポンプ552が設けられ、印刷差圧生成の実行に並行して、リターン送液部55によって回収タンク531からリターン配管551にインクを送液する差圧生成補助が実行される(ステップS112)。これによって、回収タンク531においては気液界面L2より上側の空気層Vraの体積が膨張されて当該空気層Vraが減圧され、供給タンク511においては気液界面L1より上側の空気層Vfaの体積が圧縮されて当該空気層Vfaが加圧される。こうして、回収タンク531と供給タンク511との間の差圧の生成が補助される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドに供給するインクを貯留する供給インク貯留部と、
前記吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収インク貯留部と、
前記回収インク貯留部から前記供給インク貯留部に前記インクを送液するリターン送液部と、
前記供給インク貯留部に貯留される前記インクと空気との境界である供給気液界面に付与される第1圧力を調整する第1圧力調整部と、
前記回収インク貯留部に貯留される前記インクと空気との境界である回収気液界面に付与される第2圧力を調整する第2圧力調整部と、
前記第1圧力が供給圧力となるように前記第1圧力調整部によって前記第1圧力を調整するとともに前記第2圧力が前記供給圧力より低い回収圧力となるように前記第2圧力調整部によって前記第2圧力を調整する印刷差圧生成を実行する制御部と
を備え、
前記第1圧力が前記供給圧力に調整されるとともに前記第2圧力が前記回収圧力に調整されて前記印刷差圧生成が完了すると、前記供給圧力と前記回収圧力との差である印刷差圧によって前記供給インク貯留部から前記吐出ヘッドを経由して前記回収インク貯留部にインクが送液される印刷インク送液が実行され、
前記吐出ヘッドは、前記印刷インク送液に伴って前記供給インク貯留部から供給される前記インクを前記ノズルから吐出することで印刷を実行し、
前記制御部は、前記吐出ヘッドによる前記印刷が終了してから前記印刷差圧生成を完了するまでに、前記供給気液界面が第1準備液位未満であって前記回収気液界面が第2準備液位以上である液位準備状態を生成する液位準備を実行するとともに、前記印刷差圧生成の実行に並行して、前記リターン送液部によって前記回収インク貯留部から前記供給インク貯留部に前記インクを送液する差圧生成補助を実行する印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記供給気液界面が第1終了液位以上になると、前記差圧生成補助を終了する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記回収気液界面が第2終了液位未満になると、前記差圧生成補助を終了する請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記吐出ヘッドによる前記印刷が終了すると、前記リターン送液部による前記回収インク貯留部から前記供給インク貯留部への前記インクの送液を停止させ、前記供給気液界面を低下させつつ前記回収気液界面を上昇させることで、前記液位準備を実行する請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記液位準備のために前記リターン送液部による前記インクの送液を停止させると、前記第1圧力調整部により前記第1圧力を調整しつつ前記第2圧力調整部により前記第2圧力を調整することで前記第1圧力と前記第2圧力との差を前記印刷差圧から減少させる請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記インクを貯留するバッファインク貯留部と、
前記バッファインク貯留部から前記回収インク貯留部に前記インクを送液するインク補給部と、
前記供給インク貯留部から前記バッファインク貯留部に前記インクを送液するインク回収部と
をさらに備え、
前記制御部は、前記インク補給部による前記バッファインク貯留部から前記回収インク貯留部への前記インクの送液を制御しつつ、前記インク回収部による前記供給インク貯留部から前記バッファインク貯留部への前記インクの送液を制御することで、前記液位準備を実行する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1圧力調整部は、前記供給インク貯留部に接続された第1圧力タンクと、前記第1圧力タンクに前記供給圧力を生成する第1圧力生成部とを有し、前記第1圧力タンクに生成された前記供給圧力を前記供給インク貯留部の前記供給気液界面に付与し、
前記第2圧力調整部は、前記回収インク貯留部に接続された第2圧力タンクと、前記第2圧力タンクに前記回収圧力を生成する第2圧力生成部とを有し、前記第2圧力タンクに生成された前記回収圧力を前記回収インク貯留部の前記回収気液界面に付与する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第1圧力生成部は、外部から供給される圧縮空気を前記第1圧力タンクに導入する導入配管と、前記導入配管に取り付けられて前記第1圧力タンクへの前記圧縮空気の流入を制限する第1スピードコントローラとを有し、
前記第2圧力生成部は、前記第2圧力タンクを排気する排気ポンプと、前記排気ポンプと前記第2圧力タンクとを接続する排気配管と、前記排気配管に取り付けられて前記第2圧力タンクから前記排気ポンプへの空気の流出を制限する第2スピードコントローラとを有する請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記供給気液界面にパージ圧力を付与することで前記供給インク貯留部から前記吐出ヘッドに前記インクを送液して前記吐出ヘッドの前記ノズルから前記インクを押し出すパージを実行するパージ実行部をさらに備え、
前記パージ実行部は、前記液位準備が終了してから前記印刷差圧生成を開始するまでに前記パージを実行し、
前記制御部は、前記パージ実行部による前記パージの実行に伴って前記供給気液界面が前記第1準備液位未満になった状態で前記パージ実行部に前記パージを終了させる請求項1に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記供給インク貯留部から前記吐出ヘッドへのインクの送液を制御する供給制御部と、
前記吐出ヘッドから前記回収インク貯留部へのインクの送液を制御する回収制御部と
をさらに備え、
前記供給制御部は、前記印刷差圧生成の実行中は、前記供給インク貯留部から前記吐出ヘッドへのインクの送液を禁止する一方、前記印刷差圧生成の完了後に、前記供給インク貯留部から前記吐出ヘッドへのインクの送液を許容し、
前記回収制御部は、前記印刷差圧生成の実行中は、前記吐出ヘッドから前記回収インク貯留部へのインクの送液を禁止する一方、前記印刷差圧生成の完了後に、前記吐出ヘッドから前記回収インク貯留部へのインクの送液を許容する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記差圧生成補助は、前記液位準備が完了した後に開始される請求項1に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記印刷差圧生成は、前記吐出ヘッドによる前記印刷が終了した後、前記差圧生成補助が開始する前に開始される請求項1に記載の印刷装置。
【請求項13】
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドに供給するインクを貯留する供給インク貯留部に貯留される前記インクと空気との境界である供給気液界面に付与される第1圧力を調整する第1圧力調整部によって、前記第1圧力が供給圧力となるように前記第1圧力を調整するとともに、前記吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収インク貯留部に貯留される前記インクと空気との境界である回収気液界面に付与される第2圧力を調整する第2圧力調整部によって、前記第2圧力が前記供給圧力より低い回収圧力となるように前前記第2圧力を調整する印刷差圧生成を実行する工程と、
前記第1圧力が前記供給圧力に調整されるとともに前記第2圧力が前記回収圧力に調整されて前記印刷差圧生成が完了することで、前記供給圧力と前記回収圧力との差である印刷差圧によって前記供給インク貯留部から前記吐出ヘッドを経由して前記回収インク貯留部にインクが送液される印刷インク送液を実行する工程と、
前記印刷インク送液に伴って前記供給インク貯留部から供給される前記インクを前記ノズルから吐出することで、前記吐出ヘッドが印刷を実行する工程と
を備え、
前記印刷差圧生成を完了するまでに、前記供給気液界面が第1準備液位未満であって前記回収気液界面が第2準備液位以上である液位準備状態を生成する液位準備が実行され、
前記印刷差圧生成の実行に並行して、前記回収インク貯留部から前記供給インク貯留部に前記インクを送液するリターン送液部によって前記回収インク貯留部から前記供給インク貯留部に前記インクを送液する差圧生成補助が実行される印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吐出ヘッドに供給するインクを貯留する供給インク貯留部と、吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収インク貯留部との間に生成した差圧によって、供給インク貯留部から吐出ヘッドを経由して前記回収インク貯留部にインクを送液しつつ、吐出ヘッドからインクを吐出する印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクジェット方式でインクを吐出する吐出ヘッドによって印刷を行う印刷装置が記載されている。特にこの印刷装置は、吐出ヘッドに供給するインクを貯留する供給サブタンクと、吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収サブタンクとを備え、供給サブタンク内の圧力より回収サブタンク内の圧力を低くすることで、供給サブタンクと回収サブタンクとの間に所定の差圧を生成する。この差圧によって、供給サブタンクから吐出ヘッドを経由して回収サブタンクにインクが送液される。そして、吐出ヘッドは、供給サブタンクから供給されたインクを吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-146625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、印刷に必要なインクを吐出ヘッドに供給するには、供給インク貯留部(供給サブタンク)と回収インク貯留部(回収サブタンク)との間に十分な差圧(印刷差圧)を生成する必要がある。かかる印刷差圧の生成は、供給インク貯留部内の圧力を調整する圧力調整部と、回収インク貯留部内の圧力を調整する圧力調整部とによって実行できる。ただし、これらの圧力生成部によって印刷差圧を速やかに生成することができずに、印刷開始までに長時間を要する場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、供給インク貯留部と回収インク貯留部との間に印刷差圧を速やかに生成して、印刷開始までの時間を短縮可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、吐出ヘッドに供給するインクを貯留する供給インク貯留部と、吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収インク貯留部と、回収インク貯留部から供給インク貯留部にインクを送液するリターン送液部と、供給インク貯留部に貯留されるインクと空気との境界である供給気液界面に付与される第1圧力を調整する第1圧力調整部と、回収インク貯留部に貯留されるインクと空気との境界である回収気液界面に付与される第2圧力を調整する第2圧力調整部と、第1圧力が供給圧力となるように第1圧力調整部によって第1圧力を調整するとともに第2圧力が供給圧力より低い回収圧力となるように第2圧力調整部によって第2圧力を調整する印刷差圧生成を実行する制御部とを備え、第1圧力が供給圧力に調整されるとともに第2圧力が回収圧力に調整されて印刷差圧生成が完了すると、供給圧力と回収圧力との差である印刷差圧によって供給インク貯留部から吐出ヘッドを経由して回収インク貯留部にインクが送液される印刷インク送液が実行され、吐出ヘッドは、印刷インク送液に伴って供給インク貯留部から供給されるインクをノズルから吐出することで印刷を実行し、制御部は、吐出ヘッドによる印刷が終了してから印刷差圧生成を完了するまでに、供給気液界面が第1準備液位未満であって回収気液界面が第2準備液位以上である液位準備状態を生成する液位準備を実行するとともに、印刷差圧生成の実行に並行して、リターン送液部によって回収インク貯留部から供給インク貯留部にインクを送液する差圧生成補助を実行する。
【0007】
本発明に係る印刷方法は、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドに供給するインクを貯留する供給インク貯留部に貯留されるインクと空気との境界である供給気液界面に付与される第1圧力を調整する第1圧力調整部によって、第1圧力が供給圧力となるように第1圧力を調整するとともに、吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収インク貯留部に貯留されるインクと空気との境界である回収気液界面に付与される第2圧力を調整する第2圧力調整部によって、第2圧力が供給圧力より低い回収圧力となるように前第2圧力を調整する印刷差圧生成を実行する工程と、第1圧力が供給圧力に調整されるとともに第2圧力が回収圧力に調整されて印刷差圧生成が完了することで、供給圧力と回収圧力との差である印刷差圧によって供給インク貯留部から吐出ヘッドを経由して回収インク貯留部にインクが送液される印刷インク送液を実行する工程と、印刷インク送液に伴って供給インク貯留部から供給されるインクをノズルから吐出することで、吐出ヘッドが印刷を実行する工程とを備え、印刷差圧生成を完了するまでに、供給気液界面が第1準備液位未満であって回収気液界面が第2準備液位以上である液位準備状態を生成する液位準備が実行され、印刷差圧生成の実行に並行して、回収インク貯留部から供給インク貯留部にインクを送液するリターン送液部によって回収インク貯留部から供給インク貯留部にインクを送液する差圧生成補助が実行される。
【0008】
このように構成された本発明(印刷装置および印刷方法)では、供給インク貯留部内の気液界面(供給気液界面)に付与される第1圧力を調整する第1圧力調整部と、回収インク貯留部内の気液界面(回収気液界面)に付与される第2圧力を調整する第2圧力調整部とが具備されている。そして、第1圧力が供給圧力となるように第1圧力調整部によって第1圧力を調整するとともに第2圧力が供給圧力より低い回収圧力となるように第2圧力調整部によって第2圧力を調整する印刷差圧生成が実行される。この印刷差圧生成によって生成された供給圧力と回収圧力との差(印刷差圧)によって供給インク貯留部から吐出ヘッドを経由して回収インク貯留部にインクが送液される印刷インク送液が実行される。また、吐出ヘッドは、印刷インク送液に伴って供給インク貯留部から供給されるインクをノズルから吐出することで印刷を実行する。
【0009】
特に本発明では、回収インク貯留部から供給インク貯留部にインクを送液するリターン送液部が設けられ、印刷差圧生成の実行に並行して、リターン送液部によって回収インク貯留部から供給インク貯留部にインクを送液する差圧生成補助が実行される。これによって、回収インク貯留部においては回収気液界面より上側の空気層の体積が膨張されて当該空気層が減圧され、供給インク貯留部においては供給気液界面より上側の空気層の体積が圧縮されて当該空気層が加圧される。こうして、回収インク貯留部と供給インク貯留部との間の差圧の生成が補助される。この際、印刷差圧生成を完了するまでに、供給気液界面が第1準備液位未満であって回収気液界面が第2準備液位以上である液位準備状態を生成する液位準備が実行される。これによって、供給インク貯留部における空気層の圧縮幅と、回収インク貯留部における空気層の膨張幅とを確保してから、差圧生成補助を実行することができる。その結果、供給インク貯留部と回収インク貯留部との間に印刷差圧を速やかに生成して、印刷開始までの時間を短縮することが可能となる。
【0010】
また、制御部は、供給気液界面が第1終了液位以上になると、差圧生成補助を終了するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、差圧生成補助の実行に伴って供給インク貯留部に貯留されるインクの量が過大となるのを防止できる。
【0011】
また、制御部は、回収気液界面が第2終了液位未満になると、差圧生成補助を終了するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、差圧生成補助の実行に伴って回収インク貯留部に貯留されるインクの量が過少となるのを防止できる。
【0012】
また、制御部は、吐出ヘッドによる印刷が終了すると、リターン送液部による回収インク貯留部から供給インク貯留部へのインクの送液を停止させ、供給気液界面を低下させつつ回収気液界面を上昇させることで、液位準備を実行するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、吐出ヘッドによる印刷の終了時点に生成されている供給インク貯留部と回収インク貯留部との間の差圧を利用して液位準備を実行することができる。
【0013】
また、制御部は、液位準備のためにリターン送液部によるインクの送液を停止させると、第1圧力調整部により第1圧力を調整しつつ第2圧力調整部により第2圧力を調整することで第1圧力と第2圧力との差を印刷差圧から減少させるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、第1圧力調整部および第2圧力調整部による圧力調整の停止前に第1圧力と第2圧力の差が予め減少される。そのため、圧力調整の停止時において、ノズルに形成されたインクのメニスカスに加わる衝撃を緩和できる。
【0014】
また、インクを貯留するバッファインク貯留部と、バッファインク貯留部から回収インク貯留部にインクを送液するインク補給部と、供給インク貯留部からバッファインク貯留部にインクを送液するインク回収部とをさらに備え、制御部は、インク補給部によるバッファインク貯留部から回収インク貯留部へのインクの送液を制御しつつ、インク回収部による供給インク貯留部からバッファインク貯留部へのインクの送液を制御することで、液位準備を実行するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、バッファタンクから回収インク貯留部へのインクの補給および供給インク貯留部からバッファタンクへのインクの回収によって、液位準備を実行することができる。
【0015】
また、第1圧力調整部は、供給インク貯留部に接続された第1圧力タンクと、第1圧力タンクに供給圧力を生成する第1圧力生成部とを有し、第1圧力タンクに生成された供給圧力を供給インク貯留部の供給気液界面に付与し、第2圧力調整部は、回収インク貯留部に接続された第2圧力タンクと、第2圧力タンクに回収圧力を生成する第2圧力生成部とを有し、第2圧力タンクに生成された回収圧力を回収インク貯留部の回収気液界面に付与するように、印刷装置を構成してもよい。このように第1・第2圧力タンクに供給・回収圧力を生成する構成では、第1・第2圧力タンクが有する容積に起因して、供給・回収圧力の生成に時間を要する。そこで、本発明を適用して、供給インク貯留部と回収インク貯留部との間に印刷差圧を速やかに生成できるようにすることが好適となる。
【0016】
また、第1圧力生成部は、外部から供給される圧縮空気を第1圧力タンクに導入する導入配管と、導入配管に取り付けられて第1圧力タンクへの圧縮空気の流入を制限する第1スピードコントローラとを有し、第2圧力生成部は、第2圧力タンクを排気する排気ポンプと、排気ポンプと第2圧力タンクとを接続する排気配管と、排気配管に取り付けられて第2圧力タンクから排気ポンプへの空気の流出を制限する第2スピードコントローラとを有するように、印刷装置を構成してもよい。第1・第2圧力タンクに対する空気の流入を第1・第2スピードコントローラで制限する構成では、供給・回収圧力の生成に時間を要する。そこで、本発明を適用して、供給インク貯留部と回収インク貯留部との間に印刷差圧を速やかに生成できるようにすることが好適となる。
【0017】
また、供給気液界面にパージ圧力を付与することで供給インク貯留部から吐出ヘッドにインクを送液して吐出ヘッドのノズルからインクを押し出すパージを実行するパージ実行部をさらに備え、パージ実行部は、液位準備が終了してから印刷差圧生成を開始するまでにパージを実行し、制御部は、パージ実行部によるパージの実行に伴って供給気液界面が第1準備液位未満になった状態でパージ実行部にパージを終了させるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、液位準備で生成された液位準備状態がパージの実行に伴って崩れた場合であっても、パージの終了時には液位準備状態を回復することができる。
【0018】
また、供給インク貯留部から吐出ヘッドへのインクの送液を制御する供給制御部と、吐出ヘッドから回収インク貯留部へのインクの送液を制御する回収制御部とをさらに備え、供給制御部は、印刷差圧生成の実行中は、供給インク貯留部から吐出ヘッドへのインクの送液を禁止する一方、印刷差圧生成の完了後に、供給インク貯留部から吐出ヘッドへのインクの送液を許容し、回収制御部は、印刷差圧生成の実行中は、吐出ヘッドから回収インク貯留部へのインクの送液を禁止する一方、印刷差圧生成の完了後に、吐出ヘッドから回収インク貯留部へのインクの送液を許容するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、印刷差圧生成の実行中は、供給インク貯留部からのインクの流出および回収インク貯留部へのインクの流入が禁止される。そのため、印刷差圧を速やかに生成することができる。
【0019】
また、差圧生成補助は、液位準備が完了した後に開始されるように、印刷装置を構成してもよい。
【0020】
また、印刷差圧生成は、吐出ヘッドによる印刷が終了した後、差圧生成補助が開始する前に開始されるように、印刷装置を構成してもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、供給インク貯留部と回収インク貯留部との間に印刷差圧を速やかに生成して、印刷開始までの時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す図。
図2】吐出ヘッドおよび当該吐出ヘッドに対して設けられたインク送液機構を模式的に示す図。
図3図2のインク送液機構を制御するために印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図。
図4図1の印刷装置で実行される送液制御の一例を示すフローチャート。
図5A図4のフローチャートに伴って実行される動作の一例を模式的に示す図。
図5B図4のフローチャートに伴って実行される動作の一例を模式的に示す図。
図6A図4のフローチャートに伴って実行される動作の変形例を模式的に示す図。
図6B図4のフローチャートに伴って実行される動作の変形例を模式的に示す図。
図7図1の印刷装置で実行される送液制御の変形例を示すフローチャート。
図8】吐出ヘッドおよび当該吐出ヘッドに対して設けられたインク送液機構の変形例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す図である。印刷装置1は、ロール・トゥ・ロールで印刷媒体10を搬送する搬送部2と、印刷媒体10にインクを吐出するインク吐出部3とを備え、搬送部2による印刷媒体10の搬送に同期して、インク吐出部3から印刷媒体10にインクを吐出することで、印刷媒体10に画像を印刷する。
【0024】
搬送部2は、繰出ローラ21uと巻取ローラ21wとを有し、繰出ローラ21uにより繰り出された印刷媒体10を巻取ローラ21wによって巻き取ることで、印刷媒体10を搬送する。また、搬送部2は、繰出ローラ21uと巻取ローラ21wとの間で印刷媒体10を支持する支持ローラ23、24を有し、支持ローラ23から支持ローラ24に搬送される印刷媒体10に対して、インク吐出部3がインクを吐出する。また、搬送部2は、繰出ローラ21uから支持ローラ23へ搬送される印刷媒体10を支持するローラ25、26と、支持ローラ24から巻取ローラ21wに搬送される印刷媒体10を支持するローラ27、28を有する。
【0025】
インク吐出部3は、印刷媒体10の搬送方向に配列された複数のヘッドユニット31を有する。複数のヘッドユニット31は、互いに異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエロー)のインクをインクジェット方式で吐出する。各インク吐出部3は、インクジェット方式でインクを吐出する吐出ヘッド4を有する。続いては、吐出ヘッド4および当該吐出ヘッド4に対するインク送液を実行するインク送液機構について説明する。
【0026】
図2は吐出ヘッド4および当該吐出ヘッド4に対して設けられたインク送液機構を模式的に示す図であり、図3図2のインク送液機構を制御するために印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図である。図3に示すように、印刷装置1は制御部100を備える。制御部100はCPU(Central Processing Unit)といったプロセッサあるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等、およびメモリ等によって構成される。また、印刷装置1は、UI(User Interface)110を備える。UI110は例えばタッチパネルディスプレイで構成され、作業者による入力操作を受け付けて制御部100に送信したり、制御部100の指令に基づき作業者に情報を表示したりできる。
【0027】
図2に示すように、吐出ヘッド4はハウジング41を有し、ハウジング41の底面では複数のノズル42が水平方向に千鳥状に配列されて開口する。ハウジング41の内部には、複数のノズル42にそれぞれ連通する複数のキャビティ43と、複数のキャビティ43に連通するインク供給室44とが設けられ、各キャビティ43はインク供給室44から供給されたインクを貯留する。また、各キャビティ43には圧電素子45が設けられ、圧電素子45が駆動信号(電気信号)に応じて変位することで、キャビティ43内のインクに圧力変動を与える。この圧力変動によって、インクがキャビティ43から押し出されて、当該キャビティ43に連通するノズル42からインクが吐出される。また、ハウジング41の上部では、インク流入口46とインク流出口47とが開口する。そして、次に説明するように、インク送液機構5からインク流入口46を介してインク供給室44に流入したインクが、インク流出口47を介してインク供給室44からインク送液機構5に流出する。
【0028】
印刷装置1は、図2に示すインク送液機構5を備える。このインク送液機構5は、吐出ヘッド4にインクを供給するインク供給部5A、吐出ヘッド4からインクを回収するインク回収部5B、インク回収部5Bからインク供給部5Aにインクを送液するインクリターン部5Cおよび吐出ヘッド4へのインクの送液量を調整するインク送液量調整部5Dを有する。
【0029】
インク供給部5Aは、吐出ヘッド4にインクを供給する供給送液部51を有する。供給送液部51は、吐出ヘッド4に供給されるインクを貯留する供給タンク511と、供給タンク511と吐出ヘッド4のインク流入口46とを接続する配管512とを有し、供給タンク511から配管512を介して吐出ヘッド4にインクが送液される。また、供給送液部51は、配管512に設けられたヘッドバルブ513を有する。制御部100がヘッドバルブ513を開くと、供給タンク511から配管512を介した吐出ヘッド4へのインクの送液が許容される。制御部100がヘッドバルブ513を閉じると、供給タンク511から配管512を介した吐出ヘッド4へのインクの送液が禁止される。
【0030】
また、インク供給部5Aは、供給タンク511内の圧力P1を調整する圧力調整部52を有する。具体的には、供給タンク511内では、インクの液面である気液界面L1より上側に空気が溜まって空気層が形成され、圧力調整部52は、気液界面L1に付与される圧力P1を調整する。圧力調整部52は、空気を貯留する圧力タンク521と、圧力タンク521および供給タンク511それぞれの空気層を接続する配管522と、配管522に取り付けられたタンクバルブ523とを有する。制御部100がタンクバルブ523を開くと、圧力タンク521と供給タンク511とが配管522を介して連通して、圧力タンク521および供給タンク511それぞれの空気層の圧力が等しくなる。制御部100がタンクバルブ523を閉じると、圧力タンク521および供給タンク511とが遮断する。この実施形態において、タンクバルブ523は基本的に常時、開放されている。
【0031】
圧力調整部52は、圧縮空気を圧力タンク521に導入する導入配管524と、導入配管524に取り付けられた加圧バルブ525とを有する。制御部100が加圧バルブ525を開くと、導入配管524から圧力タンク521に圧縮空気が導入されて、圧力タンク521内の空気層が加圧される。制御部100が加圧バルブ525を閉じると、導入配管524から圧力タンク521への圧縮空気の導入が禁止される。さらに、圧力調整部52は、大気圧を圧力タンク521に導入する導入配管526と、導入配管526に取り付けられた開放バルブ527とを有する。制御部100が開放バルブ527を開くと、導入配管526を介して圧力タンク521が大気圧に開放される。制御部100が開放バルブ527を閉じると、圧力タンク521が大気圧から遮断される。
【0032】
また、圧力調整部52は、圧力タンク521とタンクバルブ523との間において配管522に取り付けられた圧力検出器528を有し、この圧力検出器528は配管522内の圧力、すなわち圧力タンク521内の圧力を検出して、制御部100に出力する。したがって、制御部100は、タンクバルブ523を開いて供給タンク511と圧力タンク521とを連通させた状態で、加圧バルブ525および開放バルブ527の開閉を圧力検出器528による検出圧力に基づき制御することで、供給タンク511の気液界面L1に付与される圧力P1を調整できる。
【0033】
インク回収部5Bは、吐出ヘッド4からインクを回収する回収送液部53を有する。回収送液部53は、吐出ヘッド4から回収されたインクを貯留する回収タンク531と、回収タンク531と吐出ヘッド4のインク流出口47とを接続する配管532とを有し、吐出ヘッド4から配管532を介して回収タンク531にインクが送液される。また、回収送液部53は、配管532に設けられたヘッドバルブ533を有する。制御部100がヘッドバルブ533を開くと、吐出ヘッド4から配管532を介した回収タンク531へのインクの送液が許容される。制御部100がヘッドバルブ533を閉じると、吐出ヘッド4から配管532を介した回収タンク531へのインクの送液が禁止される。
【0034】
また、インク回収部5Bは、回収タンク531内の圧力P2を調整する圧力調整部54を有する。具体的には、回収タンク531内では、インクの液面である気液界面L2より上側に空気が溜まって空気層が形成され、圧力調整部54は、気液界面L2に付与される圧力P2を調整する。圧力調整部54は、空気を貯留する圧力タンク541と、圧力タンク541および回収タンク531それぞれの空気層を接続する配管542と、配管542に取り付けられたタンクバルブ543とを有する。制御部100がタンクバルブ543を開くと、圧力タンク541と回収タンク531とが配管542を介して連通して、圧力タンク541および回収タンク531それぞれの空気層の圧力が等しくなる。制御部100がタンクバルブ543を閉じると、圧力タンク541および回収タンク531とが遮断する。この実施形態において、タンクバルブ543は基本的に常時、開放されている。
【0035】
圧力調整部54は、排気ポンプ549と圧力タンク541とを接続する排気配管544と、排気配管544に取り付けられた排気バルブ545とを有する。制御部100が排気バルブ545を開くと、排気ポンプ549が排気配管544を介して回収タンク531を排気して、回収タンク531内の空気層が減圧される。制御部100が排気バルブ545を閉じると、排気ポンプ549による排気配管544を介した回収タンク531の排気が禁止される。さらに、圧力調整部54は、大気圧を圧力タンク541に導入する導入配管546と、導入配管546に取り付けられた開放バルブ547とを有する。制御部100が開放バルブ547を開くと、導入配管546を介して圧力タンク541が大気圧に開放される。制御部100が開放バルブ547を閉じると、圧力タンク541が大気圧から遮断される。
【0036】
また、圧力調整部54は、圧力タンク541とタンクバルブ543との間において配管542に取り付けられた圧力検出器548を有し、この圧力検出器548は配管542内の圧力、すなわち圧力タンク541内の圧力を検出して、制御部100に出力する。したがって、制御部100は、タンクバルブ543を開いて回収タンク531と圧力タンク541とを連通させつつ排気ポンプ549に排気を実行させた状態で、排気バルブ545および開放バルブ547の開閉を圧力検出器548による検出圧力に基づき制御することで、回収タンク531の気液界面L2に付与される圧力P2を調整できる。
【0037】
上記の構成では、制御部100は、圧力調整部52によって供給タンク511内の圧力P1を供給圧力Pfに調整するとともに、圧力調整部54によって回収タンク531内の圧力P2を供給圧力Pfより低い回収圧力Prに調整する。ここで、供給圧力Pfは大気圧より高い正圧であり、回収圧力Prは大気圧より低い負圧である。こうして、供給タンク511と回収タンク531との間には、印刷差圧ΔPp=(Pf-Pr)が生成される。ヘッドバルブ513およびヘッドバルブ533を開いた状態で、この印刷差圧ΔPpが生成されると、供給タンク511から吐出ヘッド4を経由して回収タンク531に到達する送液経路Caに沿ってインクが送液される。
【0038】
インクリターン部5Cは、回収タンク531から供給タンク511にインクを送液するリターン送液部55を有する。リターン送液部55は、回収タンク531と供給タンク511とを接続するリターン配管551と、回収タンク531と供給タンク511との間でリターン配管551に設けられたリターンポンプ552を有する。このリターンポンプ552は、回収タンク531から供給タンク511に向けてインクを送液する。したがって、制御部は、リターンポンプ552にインクを送液させることで、回収タンク531からリターン配管551を経由して供給タンク511に到る送液経路Cbに沿ってインクを送液できる。また、リターン送液部55は、リターンポンプ552と供給タンク511との間においてリターン配管551に取り付けられたリターンバルブ553を有する。制御部100がリターンバルブ553を開くと、リターンポンプ552による送液経路Cbに沿ったインクの送液が許容され、制御部100がリターンバルブ553を閉じると、リターンポンプ552による送液経路Cbに沿ったインクの送液が禁止される。
【0039】
インク送液量調整部5Dは、バッファタンク56と、供給タンク511からバッファタンク56にインクを回収する回収送液部57と、バッファタンク56から回収タンク531にインクを補給する補給送液部58とを有する。バッファタンク56は、供給タンク511および回収タンク531それぞれより大きな容量でインクを貯留する。回収送液部57は、供給タンク511とバッファタンク56とを接続する回収配管571と、供給タンク511とバッファタンク56との間で回収配管571に取り付けられた回収ポンプ572とを有する。この回収ポンプ572は、供給タンク511からバッファタンク56に向けて回収配管571に沿ってインクを送液する。補給送液部58は、バッファタンク56と回収タンク531とを接続する補給配管581と、バッファタンク56と回収タンク531との間で補給配管581に取り付けられた補給ポンプ582とを有する。この補給ポンプ582は、バッファタンク56から回収タンク531に向けて補給配管581に沿ってインクを送液する。したがって、制御部100は、回収ポンプ572および補給ポンプ582にインクを送液させることで、供給タンク511からバッファタンク56を介して回収タンク531に到る送液経路Ccに沿ってインクを送液できる。
【0040】
また、インク送液機構5は、供給タンク511に貯留されるインクの気液界面L1を検出する液位検出器591と、回収タンク531に貯留されるインクの気液界面L2を検出する液位検出器592とを有する。液位検出器591による検出液位は、液位検出器591から制御部100に送信され、液位検出器592による検出液位は、液位検出器592から制御部100に送信される。
【0041】
また、図2に示されるように、印刷装置1はパージ機構6を有する。パージ機構6は、圧縮空気を供給タンク511の空気層に導入する導入配管61と、導入配管61に取り付けられたパージバルブ62とを有する。制御部100がパージバルブ62を開くと、導入配管61から供給タンク511内の気液界面L1に圧縮空気が導入されて、この圧縮空気が気液界面L1を押し下げる。その結果、供給タンク511から配管512を介して吐出ヘッド4にインクが流入して、吐出ヘッド4のノズル42からインクが流出する(パージ)。なお、制御部100は、ヘッドバルブ513を開くことで供給タンク511から吐出ヘッド4へインクを流入させてパージを許容する一方、ヘッドバルブ513を閉じることでパージを禁止することができる。
【0042】
図4図1の印刷装置で実行される送液制御の一例を示すフローチャートであり、図5Aはおよび図5B図4のフローチャートに伴って実行される動作の一例を模式的に示す図である。図4のフローチャートは、制御部100によって実行される。図5Aおよび図5Bでは、インクの検出が実行される各レベルLe、Lm、Lf(高さ)が示されている。ここで、エンプティレベルLeよりミドルレベルLmは高く、ミドルレベルLmよりフルレベルLfは高い。
【0043】
供給タンク511内のインクを検出する液位検出器591は、エンプティレベルLeおよびミドルレベルLmにおけるインクの有無を検出する。液位検出器591がミドルレベルLmにおいてインクを検出する場合には、制御部100は、供給タンク511内の気液界面L1がミドルレベルLm以上であると判定できる。液位検出器591がミドルレベルLmにおいてインクを検出せず、エンプティレベルLeにおいてインクを検出する場合には、制御部100は、供給タンク511内の気液界面L1がエンプティレベルLe以上であってミドルレベルLm未満であると判定できる。液位検出器591がエンプティレベルLeにおいてインクを検出しない場合には、制御部100は、供給タンク511内の気液界面L1がエンプティレベルLe未満であると判定できる。
【0044】
回収タンク531内のインクを検出する液位検出器592は、エンプティレベルLe、ミドルレベルLmおよびフルレベルLfにおけるインクの有無を検出する。液位検出器592がフルレベルLfにおいてインクを検出する場合には、制御部100は、回収タンク531内の気液界面L2がフルレベルLf以上であると判定できる。液位検出器592がフルレベルLfにおいてインクを検出せず、ミドルレベルLmにおいてインクを検出する場合には、制御部100は、回収タンク531内の気液界面L2がミドルレベルLm以上であってフルレベルLf未満であると判定できる。液位検出器592がミドルレベルLmにおいてインクを検出せず、エンプティレベルLeにおいてインクを検出する場合には、制御部100は、回収タンク531内の気液界面L2がエンプティレベルLe以上であってミドルレベルLm未満であると判定できる。液位検出器592がエンプティレベルLeにおいてインクを検出しない場合には、制御部100は、回収タンク531内の気液界面L2がエンプティレベルLe未満であると判定できる。
【0045】
このような液位検出器591および液位検出器592は、互いに異なる高さに設けられた複数のフロートセンサ等によって構成することができる。なお、供給タンク511に対して設定されるレベルLe、Lmのそれぞれが回収タンク531に対して設定されるレベルLe、Lmに等しい必要は必ずしもない。
【0046】
図4のステップS101~S103では、供給タンク511と回収タンク531との間に生成された印刷差圧ΔPpによってインクが送液経路Caに沿って送液され、吐出ヘッド4はノズル42からインクを吐出して印刷を実行している。このような印刷の実行中において、制御部100は、液位検出器591の検出結果に基づき、供給タンク511内の気液界面L1がミドルレベルLm以上であるかを監視する(ステップS101)。そして、気液界面L1がミドルレベルLm以上でない場合(ステップS101で「NO」の場合)には、制御部100はリターンポンプ552を始動させて、回収タンク531から供給タンク511に送液経路Cbに沿ってインクを送液する(ステップS103)。これによって、供給タンク511内の気液界面L1が上昇する。一方、気液界面L1がミドルレベルLm以上である場合(ステップS101で「YES」の場合)には、制御部100はリターンポンプ552を停止させて、回収タンク531から供給タンク511への送液経路Cbに沿ったインクの送液を停止する(ステップS103)。これによって、供給タンク511内の気液界面L1の上昇が停止する。
【0047】
なお、ステップS101~S103の実行中において、印刷を実行する吐出ヘッド4からのインクの吐出に伴って回収タンク531内の気液界面L2の液位の減少が確認された場合には、制御部100は、補給ポンプ582によってバッファタンク56から回収タンク531にインクを送液して、回収タンク531にインクを補給する。また、回収ポンプ572は基本的に停止させておけばよい。
【0048】
このような制御部100による気液界面L1の制御(ステップS101~S103)は、ステップS104において循環を停止すると判断されるまで実行される。例えば、ステップS101~S103に並行して実行された印刷が終了して、さらに次の印刷の予定がない場合や、UI110に循環の停止を示すコマンドが作業者に入力された場合には、循環を停止すると判断される。ここで、循環とは、印刷差圧ΔPpによって送液経路Caに沿ってインクを送液するとともに、リターンポンプ552によって送液経路Cbに沿ってインクを送液する動作を示し、換言すれば、ステップS101~S103の制御によってインクを送液する動作を示す。
【0049】
ステップS104で、循環を停止すると判断されると(YES)、制御部100はリターンポンプ552を停止する(ステップS105)。また、制御部100は、圧力P1と圧力P2との差圧を印刷差圧ΔPpから減少させる(ステップS106)。この差圧の減少は、開放バルブ527および開放バルブ547を断続的に開くことで、供給タンク511および回収タンク531を断続的に大気に開放することで実行できる。
【0050】
ステップS105でリターンポンプ552が停止されたことで、回収タンク531から送液経路Cbを介したインクの送液は禁止される。一方、圧力P1と圧力P2との差圧は、印刷差圧ΔPpより小さいものの、ゼロよりは大きく、圧力P2は圧力P1より低い。したがって、インクは、供給タンク511から送液経路Caを介して回収タンク531に送液される。その結果、供給タンク511内の気液界面L1は時間経過とともに低下し、回収タンク531内の気液界面L2は時間経過とともに上昇する。制御部100は、ステップS105、S106を実行することで、図5Aに示す液位状態(液位準備状態)に気液界面L1および気液界面L2を調整する(液位準備)。
【0051】
図5Aに示す液位状態では、供給タンク511内の気液界面L1はミドルレベルLm未満であって、回収タンク531内の気液界面L2はフルレベルLf以上である(液位準備状態)。つまり、気液界面L1がミドルレベルLm未満になって気液界面L2がフルレベルLf以上になると、制御部100は液位準備が完了したと判断して、圧力P1と圧力P2の差圧による送液経路Caに沿ったインクの送液(差圧送液)を停止する(ステップS108)。具体的には、加圧バルブ525を閉じるとともに開放バルブ527を開いて圧力P1を大気圧にし、排気バルブ545を閉じるとともに開放バルブ547を開いて圧力P2を大気圧にすることで、差圧送液を停止できる。そして、制御部100は、ヘッドバルブ513およびヘッドバルブ533を閉じて、供給タンク511から吐出ヘッド4へのインクの送液と、吐出ヘッド4から回収タンク531へのインクの送液を禁止する(ステップS109)。
【0052】
ステップS110では、制御部100は循環を開始するかを判断する。例えば、印刷の実行を示す指令がUI110に入力されると、制御部100は循環を開始すると判断し(ステップS110で「YES」)、制御部100は差圧の生成を開始する(ステップS111)。つまり、制御部100は、開放バルブ527を閉じるとともに加圧バルブ525を開いて、供給タンク511内の加圧を開始する。また、制御部100は、開放バルブ547を閉じるとともに排気バルブ545を開いて、回収タンク531内の減圧を開始する。これによって、供給タンク511内の圧力P1が上昇するとともに回収タンク531内の圧力P2が低下して、圧力P1と圧力P2との差(差圧)が増大する。この際、ヘッドバルブ513およびヘッドバルブ533は閉じており、供給タンク511から吐出ヘッド4を介して回収タンク531に至る送液経路Caに沿ったインクの送液は禁止されている。
【0053】
さらに、制御部100は、リターンポンプ552を始動させて(ステップS112)。回収タンク531から送液経路Cbを介して供給タンク511にインクが送液される。これによって、図5Bに示すように、供給タンク511においては、気液界面L1が上昇するとともに、気液界面L1よりも上側の空気層Vfaが圧縮される。そのため、空気層Vfaが加圧されて、圧力P1が上昇する。また、回収タンク531においては、気液界面L2が低下するとともに、気液界面L2より上側の空気層Vraが膨張される。そのため、空気層Vraが減圧されて圧力P2が低下する。つまり、リターンポンプ552による送液は、圧力P1と圧力P2との差圧の生成を補助する。
【0054】
ステップS113では、制御部100は、リターンポンプ552のインク送液による差圧生成補助の終了条件が満たされたかを判断する。具体的には、次の条件
・供給タンク511内の気液界面L1がミドルレベルLm以上である
・回収タンク531内の気液界面L2がエンプティレベルLe未満である
の少なくとも一方が満たされると、終了条件が満たされたと判断される(ステップS113で「YES」)。
【0055】
こうして終了条件が満たされると、制御部100はリターンポンプ552を停止させる(ステップS114)。これによって、回収タンク531から送液経路Cbを介した供給タンク511へのインクの送液が停止する。
【0056】
また、制御部100は、差圧の生成が完了したかを判断する。具体的には、制御部100は、圧力検出器528および圧力検出器548のそれぞれの検出圧力に基づき、供給タンク511内の圧力P1と回収タンク531内の圧力P2との差圧が印刷差圧ΔPpになったかを判断する(ステップS115)。そして、圧力P1と圧力P2との差圧が印刷差圧ΔPpになると(ステップS115で「YES」)、制御部100は、供給タンク511内の加圧を終了し、回収タンク531内の減圧を終了する(ステップS116)。すなわち、加圧バルブ525と排気バルブ545とを閉止する。つぎに、ヘッドバルブ513とヘッドバルブ533とを開く(ステップS117)。これによって、供給タンク511から吐出ヘッド4を介して回収タンク531に至る送液経路Caに沿ったインクの送液が開始される。そして、ステップS101に戻って、印刷実行のためのインクの送液制御が開始される(ステップS101~S103)。
【0057】
以上に示す実施形態では、供給タンク511(供給インク貯留部)内の気液界面L1(供給気液界面)に付与される圧力P1(第1圧力)を調整する圧力調整部52(第1圧力調整部)と、回収タンク531(回収インク貯留部内)の気液界面L2(回収気液界面)に付与される圧力P2(第2圧力)を調整する圧力調整部54(第2圧力調整部)とが具備されている。そして、圧力P1が供給圧力Pfとなるように圧力調整部52によって圧力P1を調整するとともに圧力P2が供給圧力Pfより低い回収圧力Prとなるように圧力調整部54によって圧力P2を調整する印刷差圧生成が実行される(ステップS111)。この印刷差圧生成によって生成された供給圧力Pfと回収圧力Prとの差である印刷差圧ΔPpによって供給タンク511から吐出ヘッド4を経由して回収タンク531にインクが送液される印刷インク送液が実行される。また、吐出ヘッド4は、印刷インク送液に伴って供給タンク511から供給されるインクをノズル42から吐出することで印刷を実行する。
【0058】
特にこの実施形態では、回収タンク531から供給タンク511にインクを送液するリターンポンプ552が設けられ、印刷差圧生成の実行に並行して、リターン送液部55によって回収タンク531からリターン配管551にインクを送液する差圧生成補助が実行される(ステップS112)。これによって、回収タンク531においては気液界面L2より上側の空気層Vraの体積が膨張されて当該空気層Vraが減圧され、供給タンク511においては気液界面L1より上側の空気層Vfaの体積が圧縮されて当該空気層Vfaが加圧される。こうして、回収タンク531と供給タンク511との間の差圧の生成が補助される。この際、印刷差圧生成(ステップS111)を開始するまでに、供給タンク511内の気液界面L1がミドルレベルLm(第1準備液位未満)であって回収タンク531内の気液界面L2がフルレベルLf(第2準備液位以上)である液位準備状態(図5A)を生成する液位準備が実行される(ステップS105~S107)。これによって、供給タンク511における空気層Vfaの圧縮幅と、回収タンク531における空気層Vraの膨張幅とを確保してから、差圧生成補助(ステップS112)を実行することができる。その結果、供給タンク511と回収タンク531との間に印刷差圧ΔPpを速やかに生成して、印刷開始までの時間を短縮することが可能となる。
【0059】
また、制御部100は、供給タンク511内の気液界面L1がミドルレベルLm(第1終了液位)以上になると、差圧生成補助を終了する(ステップS113)。かかる構成では、差圧生成補助の実行に伴って供給タンク511に貯留されるインクの量が過大となるのを防止できる。
【0060】
また、制御部100は、回収タンク531内の気液界面L2がエンプティレベルLe(第2終了液位)未満になると、差圧生成補助を終了する(ステップS113)。かかる構成では、差圧生成補助の実行に伴って回収タンク531に貯留されるインクの量が過少となるのを防止できる。
【0061】
また、制御部100は、ステップS101~S103に並行して実行される吐出ヘッド4による印刷が終了すると、リターン送液部55による回収タンク531から供給タンク511へのインクの送液を停止させ(ステップS105)、供給タンク511内の気液界面L1を低下させつつ回収タンク531内の気液界面L2を上昇させることで、液位準備を実行する(ステップS105~S107)。かかる構成では、吐出ヘッド4による印刷の終了時点に生成されている供給タンク511と回収タンク531との間の差圧を利用して液位準備を実行することができる。
【0062】
また、制御部100は、液位準備のためにリターン送液部55によるインクの送液を停止させると、圧力調整部52により圧力P1を調整しつつ圧力調整部54により圧力P2を調整することで圧力P1と圧力P2との差を印刷差圧ΔPpから減少させる(ステップS106)。かかる構成では、圧力調整部52および圧力調整部54による圧力調整を停止するステップS108の前に、圧力P1と圧力P2の差が予め減少される。そのため、圧力調整の停止時において、ノズル42に形成されたインクのメニスカスに加わる衝撃を緩和できる。
【0063】
また、圧力調整部52は、供給タンク511に接続された圧力タンク521(第1圧力タンク)と、圧力タンク521に圧縮空気を導入することで供給圧力Pfを生成する導入配管524および加圧バルブ525(第1圧力生成部)とを有する。そして、圧力タンク521に生成された供給圧力Pfを供給タンク511の気液界面L1に付与する。また、圧力調整部54は、回収タンク531に接続された圧力タンク541(第2圧力タンク)と、圧力タンク541を排気することで回収圧力Prを生成する排気配管544、排気バルブ545および排気ポンプ549(第2圧力生成部)とを有する。そして、圧力タンク541に生成された回収圧力Prを回収タンク531の気液界面L2に付与する。このように圧力タンク521、541に供給圧力Pfおよび回収圧力Prを生成する構成では、導入配管524により導入される圧縮空気や排気ポンプ549による排気の変動を圧力タンク521、541の容積により吸収して、ノズル42に形成されるインクのメニスカスが影響されるのを抑制できる。ただし、圧力タンク521、541が有する容積は、供給圧力Pfおよび回収圧力Prの生成に時間を要する要因となる。そこで、上記のように差圧生成補助を実行して、供給タンク511と回収タンク531との間に印刷差圧ΔPpを速やかに生成できるようにすることが好適となる。
【0064】
また、供給タンク511から吐出ヘッド4へのインクの送液を制御するヘッドバルブ513(供給制御部)と、吐出ヘッド4から回収タンク531へのインクの送液を制御するヘッドバルブ533(回収制御部)とが具備されている。ヘッドバルブ513は、印刷差圧生成の実行中(ステップS111~S115)は、供給タンク511から吐出ヘッド4へのインクの送液を禁止する一方、印刷差圧生成の完了後(ステップS115で「YES」)に、供給タンク511から吐出ヘッド4へのインクの送液を許容する(ステップS116)。また、ヘッドバルブ533は、印刷差圧生成の実行中(ステップS111~S115)は、吐出ヘッド4から回収タンク531へのインクの送液を禁止する一方、印刷差圧生成の完了後(ステップS115で「YES」)に、吐出ヘッド4から回収タンク531へのインクの送液を許容する。かかる構成では、印刷差圧生成の実行中(ステップS111~S115)は、供給タンク511からのインクの流出および回収タンク531へのインクの流入が禁止される。つまり、インクの流出および流入に起因する空気層Vra、Vfaの変動が防止される。その結果、印刷差圧ΔPpを速やかに生成することができる。
【0065】
図6Aはおよび図6B図4のフローチャートに伴って実行される動作の変形例を模式的に示す図である。この変形例では、制御部100は、ステップS105、S106を実行することで、図6Aに示す液位状態(液位準備状態)に気液界面L1および気液界面L2を調整する(液位準備)。
【0066】
図6Aに示す液位状態では、供給タンク511内の気液界面L1はエンプティレベルLe未満であって、回収タンク531内の気液界面L2はミドルレベルLm以上である(液位準備状態)。つまり、気液界面L1がエンプティレベルLe未満になって気液界面L2がミドルレベルLm以上になると、制御部100は液位準備が完了したと判断して、圧力P1と圧力P2の差圧による送液経路Caに沿ったインクの送液(差圧送液)を停止する(ステップS108)。
【0067】
また、制御部100は、ステップS111で差圧の生成を開始すると、ステップS112でリターンポンプ552を始動させる。これによって、回収タンク531から送液経路Cbを介して供給タンク511にインクが送液される。したがって、図6Bに示すように、供給タンク511においては、気液界面L1が上昇するとともに、気液界面L1よりも上側の空気層Vfaが圧縮される。そのため、空気層Vfaが加圧されて、圧力P1が上昇する。また、回収タンク531においては、気液界面L2が低下するとともに、気液界面L2より上側の空気層Vraが膨張される。そのため、空気層Vraが減圧されて圧力P2が低下する。つまり、リターンポンプ552による送液は、圧力P1と圧力P2との差圧の生成を補助する。
【0068】
つまり、この変形例では、印刷差圧生成(ステップS111)を開始するまでに、供給タンク511内の気液界面L1がエンプティレベルLe(第1準備液位未満)であって回収タンク531内のミドルレベルLm(回収気液界面)がミドルレベルLm(第2準備液位)以上である液位準備状態(図6A)を生成する液位準備が実行される(ステップS105~S107)。これによって、供給タンク511における空気層Vfaの圧縮幅と、回収タンク531における空気層Vraの膨張幅とを確保してから、差圧生成を実行することができる(ステップS111~S115)。その結果、供給タンク511と回収タンク531との間に印刷差圧ΔPpを速やかに生成して、印刷開始までの時間を短縮することが可能となる。
【0069】
図7図1の印刷装置で実行される送液制御の変形例を示すフローチャートである。図7のフローチャートは、図4のフローチャートにおけるステップS109とステップS110との間で実行される。つまり、ステップS105~S107による液位準備が完了してステップS109でヘッドバルブ513およびヘッドバルブ533を閉じた後、ステップS110で循環開始を待機している期間において、図7のフローチャートが実行される。また、ここでは、ステップS105~S107によって図5Aの液位準備状態が実現されたとする。
【0070】
ステップS201では、制御部100はパージを開始するかを判断する。パージを開始する場合(ステップS201で「YES」の場合)には、制御部100は、パージの対象となる吐出ヘッド4に対して設けられたヘッドバルブ513を開く(ステップS202)。これによって、供給タンク511から吐出ヘッド4へのインクの送液が許容される。
【0071】
ステップS203では、制御部100はリターンポンプ552と補給ポンプ582とを動作させることで、バッファタンク56から回収タンク531を介して供給タンク511にインクを送液する。例えば、制御部100は、リターンポンプ552よる送液量と、補給ポンプ582による送液量とを等しく制御することで、かかるインクの送液を実行する。あるいは、リターンポンプ552よる回収タンク531から供給タンク511へのインクの送液に伴って、回収タンク531内の気液界面L2が液位準備状態(図5A)で求められるフルレベルLf未満になると、制御部100は、当該気液界面L2がフルレベルLf以上になるようにバッファタンク56から回収タンク531にインクを送液する。
【0072】
ステップS204では、制御部100は、供給タンク511内にパージに必要な量のインクが確保されたかを判断される。具体的には、供給タンク511内の気液界面L1がミドルレベルLm以上になると、インクが確保されたと判断される(ステップS204で「YES」)。こうしてパージインクが確保されると、制御部100は、供給タンク511への送液を終了する(ステップS205)。なお、上記のステップS203におけるバッファタンク56から回収タンク531へのインクの送液によって、供給タンク511への送液を終了した時点では、回収タンク531内の気液界面L2は、液位準備状態(図5A)で求められるフルレベルLf以上にある。
【0073】
ステップS206では、制御部100はタンクバルブ523を閉じるとともにパージバルブ62を開いて、供給タンク511内に圧縮空気を導入することで、供給タンク511の加圧を開始する。こうして供給タンク511に導入された圧縮空気によって供給タンク511から吐出ヘッド4にインクが流入し、吐出ヘッド4のノズル42からインクが流出する(パージ)。
【0074】
このパージの実行に伴って、供給タンク511内の気液界面L2は低下する。そして、供給タンク511内の気液界面L1が液位準備状態(図5A)で求められるミドルレベルLm未満になると、制御部100はパージを終了すると判断して(ステップS207で「YES」)、供給タンク511の加圧を停止する(ステップS208)。具体的には、制御部100はパージバルブ62を閉じて、タンクバルブ523を開く。これによって、供給タンク511内の圧力P1は大気圧となる。そして、制御部100は、ヘッドバルブ513を閉じる(ステップS209)。
【0075】
この変形例では、パージ機構6(パージ実行部)は、供給タンク511内の気液界面L1にパージ圧力を付与することで供給タンク511から吐出ヘッド4にインクを送液して吐出ヘッド4のノズル42からインクを押し出すパージを実行する。このパージ機構6は、ステップS107で液位準備が完了してからステップS111で印刷差圧生成が開始するまでにパージを実行する(図7)。これに対して、制御部100は、パージ機構6によるパージの実行に伴って供給タンク511内の気液界面L1がミドルレベルLm(第1準備液位)未満になった状態でパージ機構6にパージを終了させる(ステップS207)。かかる構成では、ステップS107の液位準備で生成された液位準備状態(図5A)がパージの実行に伴って(特にパージインクの確保に伴って)崩れた場合であっても、パージの終了時には液位準備状態(図5A)を回復することができる。
【0076】
上述の様に、本実施形態では、印刷装置1が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、制御部100が本発明の「制御部」の一例に相当し、吐出ヘッド4が本発明の「吐出ヘッド」の一例に相当し、ノズル42が本発明の「ノズル」の一例に相当し、供給タンク511が本発明の「供給インク貯留部」の一例に相当し、圧力調整部52が本発明の「第1圧力調整部」の一例に相当し、回収タンク531が本発明の「回収インク貯留部」の一例に相当し、圧力調整部54が本発明の「第2圧力調整部」の一例に相当し、リターン送液部55が本発明の「リターン送液部」の一例に相当し、気液界面L1が本発明の「供給気液界面」の一例に相当し、気液界面L2が本発明の「回収気液界面」の一例に相当し、圧力P1が本発明の「第1圧力」の一例に相当し、圧力P2が本発明の「第2圧力」の一例に相当し、供給圧力Pfが本発明の「供給圧力」の一例に相当し、回収圧力Prが本発明の「回収圧力」の一例に相当し、印刷差圧ΔPpが本発明の「印刷差圧」の一例に相当し、ステップS105~S107が本発明の「液位準備」の一例に相当し、ステップS112、S113が本発明の「差圧生成補助」の一例に相当する。
【0077】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、図5Aあるいは図6Aの液位準備状態の生成は、インク送液量調整部5Dによって実行してもよい。つまり、インク送液量調整部5Dは、インクを貯留するバッファタンク56(バッファインク貯留部)と、バッファタンク56から回収タンク531にインクを送液する補給送液部58(インク補給部)と、供給タンク511からバッファタンク56にインクを送液する回収送液部57(インク回収部)とを有する。
【0078】
これに対して、制御部100は補給送液部58によるバッファタンク56から回収タンク531へのインクの送液を、液位検出器592の検出結果に基づき制御しつつ、回収送液部57による供給タンク511からバッファタンク56へのインクの送液を液位検出器591の検出結果に基づき制御する。これによって、図5Aあるいは図6Aの液位準備状態が生成される(液位準備)。かかる構成では、バッファタンク56から回収タンク531へのインクの補給および供給タンク511からバッファタンク56へのインクの回収によって、液位準備を実行することができる。
【0079】
また、上記した実施形態では、インク供給タンク511内の圧力P1は正圧であった。しかし、インク供給タンク511内の圧力P1が、回収タンク531内の圧力P2以上となる大小関係が確保されるのであれば、インク供給タンク511内の圧力P1は負圧であってもよい。この場合、圧力521内の圧力も負圧になるので導入管524は圧縮空気にではなく排気ポンプに連通されることが望ましい。
【0080】
図8は吐出ヘッドおよび当該吐出ヘッドに対して設けられたインク送液機構の変形例を模式的に示す図である。図8図2と異なるのは、スピードコントローラSC1、SC2が設けられている点である。つまり、圧力調整部52は、圧縮空気を圧力タンク521に導入する導入配管524に取り付けられたスピードコントローラSC1を有する。このスピードコントローラSC1は、圧力タンク521への圧縮空気の流入を制限する。また、圧力調整部54は、排気ポンプ549と圧力タンク541とを接続する排気配管544に取り付けられたスピードコントローラSC2を有する。このスピードコントローラSC2は、圧力タンク541から排気ポンプ549への空気の流出を制限する。
【0081】
このようにスピードコントローラSC1、SC2を設けた構成では、導入配管524により導入される圧縮空気や排気ポンプ549による排気の変動をスピードコントローラSC1、SC2により吸収して、ノズル42に形成されるインクのメニスカスが影響されるのを抑制できる。ただし、スピードコントローラSC1、SC2による気流の制限は、供給圧力Pfおよび回収圧力Prの生成に時間を要する要因となる。そこで、上記のように差圧生成補助を実行して、供給タンク511と回収タンク531との間に印刷差圧ΔPpを速やかに生成できるようにすることが好適となる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、吐出ヘッドに供給するインクを貯留する供給インク貯留部と、吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収インク貯留部との間に生成した差圧によって、供給インク貯留部から吐出ヘッドを経由して前記回収インク貯留部にインクを送液しつつ、吐出ヘッドからインクを吐出する印刷技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…印刷装置
100…制御部
4…吐出ヘッド
42…ノズル
511…供給タンク(供給インク貯留部)
52…圧力調整部(第1圧力調整部)
531…回収タンク(回収インク貯留部)
54…圧力調整部(第2圧力調整部)
55…リターン送液部
L1…気液界面(供給気液界面)
L2…気液界面(回収気液界面)
P1…圧力(第1圧力)
P2…圧力(第2圧力)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8