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特開2023-154151転落検知装置およびこれを備えた転落検知システム、転落検知方法および転落検知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154151
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】転落検知装置およびこれを備えた転落検知システム、転落検知方法および転落検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20231012BHJP
   B61B 1/02 20060101ALI20231012BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20231012BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
B61B1/02
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063264
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】相澤 知禎
【テーマコード(参考)】
3D101
5H161
5J084
【Fターム(参考)】
3D101AB17
3D101AB18
3D101AD12
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM12
5H161MM15
5H161NN10
5H161NN12
5H161PP06
5H161PP07
5H161PP11
5H161QQ01
5H161QQ03
5J084AA01
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB07
5J084AC10
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA11
5J084BA49
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA31
5J084EA22
5J084EA29
(57)【要約】
【課題】導入コストを抑制しつつ、転落事象の発生を検知した際に、列車の何両目で転落事象が発生したのかを即座に駅係員等に認識させて、適切な対応を採らせることが可能な転落検知装置を提供する。
【解決手段】転落検知装置4は、走査データ取得部14、転落検知部15、車輪検知エリア設定部16、車輪検知部17、車輪検知回数検出部18、車両番号特定部19を備える。車輪検知エリア設定部16は、列車の車両の後方車輪の停止位置に設定される車輪検知エリアについて、車両進行方向の長さLを、同一車両の前方車輪位置と後方車輪位置との間の長さXよりも短く、隣接する車両間の前方車両の後方車輪群の中央位置と後方車両の前方車輪群の中央位置との間の長さYよりも長くなるように設定する。車両番号特定部19は、車輪検知回数検出部18における車輪の検知回数をn回とすると、車輪検知エリアに停止した車両が列車のn両目であると判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象駅のプラットホームから列車が通過する軌道の上へ転落した人を検知する転落検知装置であって、
前記軌道上に設定された転落検知エリアにおいて所定の角度範囲内で光を走査し前記光の反射光を受光する光走査器から、前記反射光の受光データを、所定の角度ごとに取得する受光データ取得部と、
前記受光データ取得部において取得された前記受光データに基づいて、前記軌道上への物体の侵入を検知する物体検知部と、
前記列車の車両の後方車輪の停止位置に設定される車輪検知エリアについて、車両進行方向における長さ(L)を、同一車両における前方車輪位置と後方車輪位置との間の長さ(X)よりも短く、隣接する車両間における前方車両の後方車輪群の中央位置と後方車両の前方車輪群の中央位置との間の長さ(Y)よりも長くなるように設定する車輪検知エリア設定部と、
前記車輪検知エリア設定部によって設定された前記車輪検知エリアにおいて、前記プラットホームに入線してきた前記列車の車輪を検知する車輪検知部と、
前記列車がプラットホームに入線してきた際に、前記車輪検知部によって検知された前記車輪の検知回数をカウントする車輪検知回数検出部と、
前記車輪検知回数検出部における前記車輪の検知回数をn回とすると、前記車輪検知エリアに停止した前記車両が前記列車のn両目であると判定する車両番号特定部と、
を備えている転落検知装置。
【請求項2】
前記車輪検知エリア設定部は、前記列車がプラットホームに入線してきた際に前記車輪検知エリアを通過する前記車輪を検知するための検知時間(T1)と、前記車輪検知エリアに停車した前記車輪を検知するための検知時間(T2)と、を設定する、
請求項1に記載の転落検知装置。
【請求項3】
前記検知時間(T1)は、前記検知時間(T2)よりも短い時間になるように設定されている、
請求項2に記載の転落検知装置。
【請求項4】
前記車輪検知部は、前記受光データ取得部において取得された前記受光データに基づいて、前記車輪を検知する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の転落検知装置。
【請求項5】
前記車輪検知エリア設定部は、前記車輪検知エリアの車両進行方向における長さ(L)として、前記プラットホームに入線してきた前記列車の前記車輪が前記車輪検知エリアを通過する際に前記車輪を検知するための第1の値を予め設定し、前記列車の前記車輪が前記車輪検知エリアに停止した際に前記車輪を検知するための、前記第1の値とは異なる第2の値を予め設定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の転落検知装置。
【請求項6】
前記第2の値は、前記第1の値よりも小さい、
請求項5に記載の転落検知装置。
【請求項7】
前記車輪検知エリア設定部は、前記車輪検知エリアの前記列車の車両の車幅方向における長さ(D)を、前記車両の車幅よりもやや大きい長さに設定する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の転落検知装置。
【請求項8】
前記車両番号特定部における判定結果を保存する記憶部を、さらに備えている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の転落検知装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の転落検知装置と、
前記軌道上に設定された転落検知エリアにおいて所定の角度範囲内で光を走査し光の反射光を受光する光走査器と、
を備えている転落検知システム。
【請求項10】
前記光走査器は、隣接する2両の車両の接続部分が停止する位置付近に設置されており、
前記物体検知部は、2両分の車両における転落検知を行う、
請求項9に記載の転落検知システム。
【請求項11】
前記物体検知部において物体を検知した位置、あるいは転落事象が発生した位置を示す転落位置表示器を、さらに備えている、
請求項9または10に記載の転落検知システム。
【請求項12】
対象駅のプラットホームから列車が通過する軌道の上へ転落した人を検知する転落検知方法であって、
前記列車の車両の後方車輪の停止位置に設定される車輪検知エリアについて、車両進行方向における長さ(L)を、同一車両における前方車輪位置と後方車輪位置との間の長さ(X)よりも短く、隣接する車両間における前方車両の後方車輪群の中央位置と後方車両の前方車輪群の中央位置との間の長さ(Y)よりも長くなるように設定する車輪検知エリア設定ステップと、
前記軌道上に設定された転落検知エリアにおいて所定の角度範囲内で光を走査し前記光の反射光を受光する光走査器から、前記反射光の受光データを、所定の角度ごとに取得する受光データ取得ステップと、
前記車輪検知エリア設定ステップによって設定された前記車輪検知エリアにおいて、前記受光データ取得ステップにおいて取得された前記受光データに基づいて、前記プラットホームに入線してきた前記列車の車輪を検知する車輪検知ステップと、
前記列車がプラットホームに入線してきた際に、前記車輪検知ステップによって検知された前記車輪の検知回数をカウントする車輪検知回数検出ステップと、
前記車輪検知回数検出ステップにおける前記車輪の検知回数をn回とすると、前記車輪検知エリアに停止した前記車両が前記列車のn両目であると判定する車両番号特定ステップと、
前記受光データ取得ステップにおいて取得された前記受光データに基づいて、前記軌道上への物体の侵入を検知する物体検知ステップと、
前記物体検知ステップにおいて前記物体の侵入が検知された結果と、前記物体が検知された位置として前記列車のn両目とを報知する報知ステップと、
を備えている転落検知方法。
【請求項13】
対象駅のプラットホームから列車が通過する軌道の上へ転落した人を検知する転落検知プログラムであって、
前記列車の車両の後方車輪の停止位置に設定される車輪検知エリアについて、車両進行方向における長さ(L)を、同一車両における前方車輪位置と後方車輪位置との間の長さ(X)よりも短く、隣接する車両間における前方車両の後方車輪群の中央位置と後方車両の前方車輪群の中央位置との間の長さ(Y)よりも長くなるように設定する車輪検知エリア設定ステップと、
前記軌道上に設定された転落検知エリアにおいて所定の角度範囲内で光を走査し前記光の反射光を受光する光走査器から、前記反射光の受光データを、所定の角度ごとに取得する受光データ取得ステップと、
前記車輪検知エリア設定ステップによって設定された前記車輪検知エリアにおいて、前記受光データ取得ステップにおいて取得された前記受光データに基づいて、前記プラットホームに入線してきた前記列車の車輪を検知する車輪検知ステップと、
前記列車がプラットホームに入線してきた際に、前記車輪検知ステップによって検知された前記車輪の検知回数をカウントする車輪検知回数検出ステップと、
前記車輪検知回数検出ステップにおける前記車輪の検知回数をn回とすると、前記車輪検知エリアに停止した前記車両が前記列車のn両目であると判定する車両番号特定ステップと、
前記受光データ取得ステップにおいて取得された前記受光データに基づいて、前記軌道上への物体の侵入を検知する物体検知ステップと、
前記物体検知ステップにおいて前記物体の侵入が検知された結果と、前記物体が検知された位置として前記列車のn両目とを報知する報知ステップと、
を備えている転落検知方法を、コンピュータに実行させる転落検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道駅のプラットホームから列車が通過する軌道上へ転落した人を検知する転落検知装置およびこれを備えた転落検知システム、転落検知方法および転落検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道駅では、鉄道利用者が、誤ってプラットホームから軌道上へ転落することがある。また、列車が鉄道駅で停止しているときには、鉄道利用者が、プラットホームと列車との間の隙間へ転落することがある。従来、これら軌道転落および隙間転落を検知して、関係者(指令員、駅係員、車掌あるいは運転士など)に発報するシステムが提案されている。
例えば、特許文献1は、レーザを偏向しながら射出して2次元的な走査範囲を形成するレーザスキャナを備えたシステムを開示している。レーザスキャナは、レーザを水平に射出する姿勢で、プラットホームよりも下方かつ軌道よりも上方の高さに設置される。当該高さに形成された水平な走査範囲内の任意領域が、監視領域として設定される。レーザスキャナは、物体が監視領域内に存在するか否かを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-168272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のシステムでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、プラットホームにおいて、例えば、列車Aでは5両目が停車する位置に、車両数が異なる別の列車Bでは3両目が停車する場合がある。よって、転落検知センサが転落事象を検知した際に、その転落検知センサの位置を警報表示しただけでは、駅係員等がその転落事象が何両目で発生したのかを即座に認識することはできない。このため、転落事象発生場所への駆けつけやアナウンスが遅れる等、適切な対応を採ることができないおそれがある。
【0005】
ここで、車両数が異なる列車にも対応するために、車両が停車する可能性がある全ての領域をカバーする複数の転落検知センサが設置されることも考えられる。この場合には、軌道上に車両の有無を確認するための車両検知エリアを設定し、停車している車両を各車両検知エリアで検知し、その位置や車両数を確認することで、各々の転落検知センサが何両目を監視中かを把握することができる。
【0006】
しかしながら、全ての車両をカバーするシステムでは転落検知システムの導入コストが大きくなってしまうため、導入コストを抑えるために、転落検知センサの設置個所が、ホームの曲線部分など転落事象が発生しやすい場所に限定されている場合もある。この場合には、転落検知センサが設置された位置には、異なる車両数が異なる列車A,Bが停車すると、何両目の車両であるのかを即座に認識することは困難であった。
【0007】
また、駅係員等が、列車のダイヤ毎に転落検知センサと車両番号との対照表を所持しておき、転落事象が発生する度に対応表を用いて転落事象の発生位置と車両番号とを照合することも考えられる。しかし、この場合でも、駅係員等にとって非常に手間が掛かるとともに、瞬時の対応が難しく、転落事象発生場所への駆けつけやアナウンスが遅れる等、適切な対応を採ることができないおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、導入コストを抑制しつつ、転落事象の発生を検知した際に、列車の何両目で転落事象が発生したのかを即座に駅係員等に認識させて、適切な対応を採らせることが可能な転落検知装置およびこれを備えた転落検知システム、転落検知方法および転落検知プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る転落検知装置は、対象駅のプラットホームから列車が通過する軌道上へ転落した人を検知する転落検知装置であって、受光データ取得部と、物体検知部と、車輪検知エリア設定部と、車輪検知部と、車輪検知回数検出部と、車両番号特定部と、を備えている。受光データ取得部は、軌道上に設定された転落検知エリアにおいて所定の角度範囲内で光を走査し光の反射光を受光する光走査器から、反射光の受光データを、所定の角度ごとに取得する。物体検知部は、受光データ取得部において取得された受光データに基づいて、軌道上への物体の侵入を検知する。車輪検知エリア設定部は、列車の車両の後方車輪の停止位置に設定される車輪検知エリアについて、車両進行方向における長さ(L)を、同一車両における前方車輪位置と後方車輪位置との間の長さ(X)よりも短く、隣接する車両間における前方車両の後方車輪群の中央位置と後方車両の前方車輪群の中央位置との間の長さ(Y)よりも長くなるように設定する。車輪検知部は、車輪検知エリア設定部によって設定された車輪検知エリアにおいて、プラットホームに入線してきた列車の車輪を検知する。車輪検知回数検出部は、列車がプラットホームに入線してきた際に、車輪検知部によって検知された車輪の検知回数をカウントする。車両番号特定部は、車輪検知回数検出部における車輪の検知回数をn回とすると、車輪検知エリアに停止した車両が列車のn両目であると判定する。
【0010】
ここでは、隣接する2つの車両の前方車輪と後方車輪を1まとめの車輪群として認識するように車輪検知エリアを設定することで、車輪検知エリアを通過した車輪を検知した回数(n回)をカウントして、車輪検知エリアに停止した車両が何両目(n両目)の車両であるかを判定する。
ここで、車輪検知エリア設定部によって設定される車輪検知エリアの車両進行方向における長さ(L)とは、プラットホームの長手方向に沿って列車の車両の長さに応じて設定される距離であって、例えば、5mである。
【0011】
これにより、隣接する2つの車両の前方車輪と後方車輪を1まとめの車輪群として認識するように車輪検知エリアが設定されているため、車輪検知エリアにおいて検出された車輪の検出回数をカウントすることで、停止した車両の位置が何両目であるのかを容易に認識することができる。よって、転落事象が発生した場合には、その転落事象が何両目で発生したのかを、駅員の待機室に報知したり、転落位置表示器等に表示させたりすることができる。
この結果、導入コストを抑制しつつ、転落事象の発生を検知した際に、列車の何両目で転落事象が発生したのかを即座に駅係員等に認識させて、適切な対応を採らせることができる。
【0012】
第2の発明に係る転落検知装置は、第1の発明に係る転落検知装置であって、車輪検知エリア設定部は、列車がプラットホームに入線してきた際に車輪検知エリアを通過する車輪を検知するための検知時間(T1)と、車輪検知エリアに停車した車輪を検知するための検知時間(T2)と、を設定する。
【0013】
ここでは、車輪検知エリアにおける検知時間が、通過時と停止時とでそれぞれ設定されている。
これにより、車輪検知エリアにおける車輪の検知において、例えば、車両が通過していく際には短い時間が設定され、車両が停止した際には長い時間が設定される等、適切な検知時間を設定することができる。
【0014】
第3の発明に係る転落検知装置は、第2の発明に係る転落検知装置であって、検知時間(T1)は、検知時間(T2)よりも短い時間になるように設定されている。
ここでは、通過する車輪を検知する検知時間は短く(例えば、100ms)、停止した車輪を検知する検知時間は長く(例えば、5000ms)、設定されている。
これにより、列車が車輪検知エリアを通過している際には、予め設定された短い検知時間で車輪検知エリアに車輪が進入するとすぐに検知することができるとともに、車輪検知エリアに車輪が停止した際には、予め設定された長い検知時間で停止した車輪を確実に検知することができる。
【0015】
第4の発明に係る転落検知装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る転落検知装置であって、車輪検知部は、受光データ取得部において取得された受光データに基づいて、車輪を検知する。
これにより、光検出器から取得した受光データを用いて、物体の転落検知だけでなく、車輪の検知も行うことができる。
【0016】
第5の発明に係る転落検知装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る転落検知装置であって、車輪検知エリア設定部は、車輪検知エリアの車両進行方向における長さ(L)として、プラットホームに入線してきた列車の車輪が車輪検知エリアを通過する際に車輪を検知するための第1の値を予め設定し、列車の車輪が車輪検知エリアに停止した際に車輪を検知するための、第1の値とは異なる第2の値を予め設定する。
これにより、車輪検知エリアの車両進行方向における長さ(L)が、列車の通過時と停止時とで異なる値に設定されることで、より適切に車輪の検出を行うことができる。
【0017】
第6の発明に係る転落検知装置は、第5の発明に係る転落検知装置であって、第2の値は、第1の値よりも小さい。
これにより、列車の車輪が車輪検知エリアにおいて停止した状態で車輪を検知する際に設定される第2の値は、車輪検知エリアにおいて通過していく車輪を検知する際に設定される第1の値よりも小さい範囲でも検知可能であるため、第2の値を第1の値よりも小さい値に設定した場合でも、車輪の検知を好適に実施することができる。
また、第2の値を第1の値よりも小さく設定することで、列車が徐行運転中に車輪検知エリアに長く留まったために、停車していない車輪を停車していると誤判定することを回避することができる。
【0018】
第7の発明に係る転落検知装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る転落検知装置であって、車輪検知エリア設定部は、車輪検知エリアの列車の車両の車幅方向における長さ(D)を、車両の車幅よりもやや大きい長さに設定する。
これにより、光検出器から照射された光の反射光を検出して車輪の有無を検出する際に、光検出器から見て手前側の車輪と奥側の車輪とをそれぞれ車輪検知エリアにおいて適切に検出することができる。
【0019】
第8の発明に係る転落検知装置は、第1から第7の発明のいずれか1つに係る転落検知装置であって、車両番号特定部における判定結果を保存する記憶部を、さらに備えている。
これにより、転落事象が発生した場合には、記憶部に記憶された車両番号特定部における判定結果として、何両目を監視しているかをすぐに認識して、報知することができる。
【0020】
第9の発明に係る転落検知システムは、第1から第8の発明のいずれか1つに係る転落検知装置と、軌道上に設定された転落検知エリアにおいて所定の角度範囲内で光を走査し光の反射光を受光する光走査器と、を備えている。
これにより、上述したように、導入コストを抑制しつつ、転落事象の発生を検知した際に、列車の何両目で転落事象が発生したのかを即座に駅係員等に認識させて、適切な対応を採らせることが可能なシステムを構成することができる。
【0021】
第10の発明に係る転落検知システムは、第9の発明に係る転落検知システムであって、光走査器は、隣接する2両の車両の接続部分が停止する位置付近に設置されている。物体検知部は、2両分の車両における転落検知を行う。
これにより、例えば、車輪検出回数検出部における検出回数がn回であった場合には、物体検知部は、n両目と(n+1)両目とにおける転落検知を行っていることを認識しつつ、転落者等の監視を行うことができる。
【0022】
第11の発明に係る転落検知システムは、第9または第10の発明に係る転落検知システムであって、物体検知部において物体を検知した位置、あるいは転落事象が発生した位置を示す転落位置表示器を、さらに備えている。
これにより、例えば、駅のプラットホーム上に設置された転落位置表示器において、転落検知装置によって検出された転落事象の発生と、転落事象が発生した位置(車両番号)とを表示することで、駅員等は速やかに転落事象が発生した位置へ駆けつけて適切な対処を採ることができる。
【0023】
第12の発明に係る転落検知方法は、対象駅のプラットホームから列車が通過する軌道の上へ転落した人を検知する転落検知方法であって、車輪検知エリア設定ステップと、受光データ取得ステップと、車輪検知ステップと、車輪検知回数検出ステップと、車両番号特定ステップと、物体検知ステップと、報知ステップと、を備えている。車輪検知エリア設定ステップは、列車の車両の後方車輪の停止位置に設定される車輪検知エリアについて、車両進行方向における長さ(L)を、同一車両における前方車輪位置と後方車輪位置との間の長さ(X)よりも短く、隣接する車両間における前方車両の後方車輪群の中央位置と後方車両の前方車輪群の中央位置との間の長さ(Y)よりも長くなるように設定する。受光データ取得ステップは、軌道上に設定された転落検知エリアにおいて所定の角度範囲内で光を走査し光の反射光を受光する光走査器から、反射光の受光データを、所定の角度ごとに取得する。車輪検知ステップは、車輪検知エリア設定ステップによって設定された車輪検知エリアにおいて、受光データ取得ステップにおいて取得された受光データに基づいて、プラットホームに入線してきた列車の車輪を検知する。車輪検知回数検出ステップは、列車がプラットホームに入線してきた際に、車輪検知ステップによって検知された車輪の検知回数をカウントする。車両番号特定ステップは、車輪検知回数検出ステップにおける車輪の検知回数をn回とすると、車輪検知エリアに停止した車両が列車のn両目であると判定する。物体検知ステップは、受光データ取得ステップにおいて取得された受光データに基づいて、軌道上への物体の侵入を検知する。報知ステップは、物体検知ステップにおいて物体の侵入が検知された結果と、物体が検知された位置として列車のn両目とを報知する。
【0024】
ここでは、隣接する2つの車両の前方車輪と後方車輪を1まとめの車輪群として認識するように車輪検知エリアを設定することで、車輪検知エリアを通過した車輪を検知した回数(n回)をカウントして、車輪検知エリアに停止した車両が何両目(n両目)の車両であるかを判定する。
ここで、車輪検知エリア設定部によって設定される車輪検知エリアの車両進行方向における長さ(L)とは、プラットホームの長手方向に沿って列車の車両の長さに応じて設定される距離であって、例えば、5mである。
【0025】
これにより、隣接する2つの車両の前方車輪と後方車輪を1まとめの車輪群として認識するように車輪検知エリアが設定されているため、車輪検知エリアにおいて検出された車輪の検出回数をカウントすることで、停止した車両の位置が何両目であるのかを容易に認識することができる。よって、転落事象が発生した場合には、その転落事象が何両目で発生したのかを、駅員の待機室に報知したり、転落位置表示器等に表示させたりすることができる。
この結果、導入コストを抑制しつつ、転落事象の発生を検知した際に、列車の何両目で転落事象が発生したのかを即座に駅係員等に認識させて、適切な対応を採らせることができる。
【0026】
第13の発明に係る転落検知プログラムは、対象駅のプラットホームから列車が通過する軌道の上へ転落した人を検知する転落検知プログラムであって、車輪検知エリア設定ステップと、受光データ取得ステップと、車輪検知ステップと、車輪検知回数検出ステップと、車両番号特定ステップと、物体検知ステップと、報知ステップと、を備えている転落検知方法をコンピュータに実行させる。車輪検知エリア設定ステップは、列車の車両の後方車輪の停止位置に設定される車輪検知エリアについて、車両進行方向における長さ(L)を、同一車両における前方車輪位置と後方車輪位置との間の長さ(X)よりも短く、隣接する車両間における前方車両の後方車輪群の中央位置と後方車両の前方車輪群の中央位置との間の長さ(Y)よりも長くなるように設定する。受光データ取得ステップは、軌道上に設定された転落検知エリアにおいて所定の角度範囲内で光を走査し光の反射光を受光する光走査器から、反射光の受光データを、所定の角度ごとに取得する。車輪検知ステップは、車輪検知エリア設定ステップによって設定された車輪検知エリアにおいて、受光データ取得ステップにおいて取得された受光データに基づいて、プラットホームに入線してきた列車の車輪を検知する。車輪検知回数検出ステップは、列車がプラットホームに入線してきた際に、車輪検知ステップによって検知された車輪の検知回数をカウントする。車両番号特定ステップは、車輪検知回数検出ステップにおける車輪の検知回数をn回とすると、車輪検知エリアに停止した車両が列車のn両目であると判定する。物体検知ステップは、受光データ取得ステップにおいて取得された受光データに基づいて、軌道上への物体の侵入を検知する。報知ステップは、物体検知ステップにおいて物体の侵入が検知された結果と、物体が検知された位置として列車のn両目とを報知する。
【0027】
ここでは、隣接する2つの車両の前方車輪と後方車輪を1まとめの車輪群として認識するように車輪検知エリアを設定することで、車輪検知エリアを通過した車輪を検知した回数(n回)をカウントして、車輪検知エリアに停止した車両が何両目(n両目)の車両であるかを判定する。
ここで、車輪検知エリア設定部によって設定される車輪検知エリアの車両進行方向における長さ(L)とは、プラットホームの長手方向に沿って列車の車両の長さに応じて設定される距離であって、例えば、5mである。
【0028】
これにより、隣接する2つの車両の前方車輪と後方車輪を1まとめの車輪群として認識するように車輪検知エリアが設定されているため、車輪検知エリアにおいて検出された車輪の検出回数をカウントすることで、停止した車両の位置が何両目であるのかを容易に認識することができる。よって、転落事象が発生した場合には、その転落事象が何両目で発生したのかを、駅員の待機室に報知したり、転落位置表示器等に表示させたりすることができる。
【0029】
この結果、導入コストを抑制しつつ、転落事象の発生を検知した際に、列車の何両目で転落事象が発生したのかを即座に駅係員等に認識させて、適切な対応を採らせることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る転落検知装置によれば、導入コストを抑制しつつ、転落事象の発生を検知した際に、列車の何両目で転落事象が発生したのかを即座に駅係員等に認識させて、適切な対応を採らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る転落検知装置を備えた転落検知システムの構成を示す図。
図2図1の転落検知システムに含まれる転落検知装置の構成を示す制御ブロック図。
図3】(a)は、駅のプラットホームに列車が不在の状態において光走査器による走査範囲を示す平面図。(b)は、駅のプラットホームに列車が在線の状態において光走査器による走査範囲を示す平面図。
図4】駅のプラットホームの下部空間に設置された光走査器と駅に停止した列車との位置関係を示す、列車の進行方向から見た断面図。
図5】(a)は、列車が駅のプラットホームに不在の状態における転落検知エリアを示す斜視図。(b)は、列車が駅のプラットホームに在線の状態における隙間転落検知エリアを示す斜視図。
図6】駅のプラットホームに入線してくる列車の同一車両における前方車輪位置と後方車輪位置との間の長さ(X)と、隣接する車両間における前方車両の後方車輪群の中央位置と後方車両の前方車輪群の中央位置との間の長さ(Y)とを示す図。
図7】車両数(長さ)が異なる列車A,Bが駅のプラットホームに入線して停止した状態を示す模式図。
図8】(a)は、プラットホームに入線してきた列車の車輪を検知する車輪検知エリアと、図4等に示す下走査器からの出力結果を示す図。(b)は、車輪検知エリアを通過する1両目の前方車輪が検知された際の下走査器からの出力結果を示す図。
図9】(a)は、車輪検知エリアを通過する1両目の後方車輪と2両目の前方車輪とを含む車輪群が検知された際の下走査器からの出力結果を示す図。(b)は、車輪検知エリアを通過する2両目の後方車輪と3両目の前方車輪とを含む車輪群が検知された際の下走査器からの出力結果を示す図。
図10】(a)は、車輪検知エリアを通過する6両目の後方車輪と7両目の前方車輪とを含む車輪群が検知された際の下走査器からの出力結果を示す図。(b)は、車輪検知エリアに停止した7両目の後方車輪が検知された際の下走査器からの出力結果を示す図。
図11図2の転落検知装置によって実行される転落検知方法の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態に係る転落検知装置4を備えた転落検知システム1について、図1図11を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0033】
また、出願人は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
以下の説明において、「長手方向」は、鉄道駅のプラットホームPの長手方向である(図3の紙面左右方向、図4の紙面直交方向)。長手方向は、プラットホームPに隣接した軌道Rの延在方向、および、軌道R上の車両Cの車長方向と略平行である。「幅方向」は、プラットホームPの幅方向(図3の紙面上下方向、図4の紙面左右方向)である。幅方向は、プラットホームPに隣接した軌道Rの軌間方向、および、軌道R上の車両Cの車幅方向と略平行である。幅方向の「内側」または「内方」は、プラットホームPの幅中心に近づく側または方向である。幅方向の「外側」または「外方」は、プラットホームPの幅中心から遠ざかる側または方向である。
【0034】
軌道Rは、道床と、その上に設けられた一対のレールとを含む。列車Tは、レールに沿って軌道R上を走行する。列車Tは、1両の車両Cで構成され、または、連結器を介して2両以上の車両Cを順次に連結することによって構成される。プラットホームPは、軌道Rと幅方向に隣接して設定され、その上面は軌道Rよりも上方に位置する。
軌道Rの状態には、図3(a)に示す「不在状態」と、図3(b)に示す「在線状態」とが含まれる。不在状態では、軌道R上に列車Tが存在せず、軌道Rの上方が広く開放される。不在状態において、鉄道利用者は、プラットホームPの上面で列車Tの到着を待つ。在線状態では、軌道R上で列車Tが停止している。在線状態において、鉄道利用者は、プラットホームPと列車Tとの間に形成される隙間Dを跨いで、プラットホームPの上面から列車Tに乗り、または、列車TからプラットホームPの上面へ降り立つ。
【0035】
(1)転落検知システム1の構成
本実施形態に係る転落検知システム1は、プラットホームPを備えた鉄道駅に適用され、プラットホームPから誤って転落した鉄道利用者を検知する。検知の対象は、不在状態でプラットホームPから軌道Rまで転落した「軌道転落者」と、在線状態で隙間Dへ転落した「隙間転落者」との両方である。隙間転落者には、軌道Rまで落下する者もいれば、隙間Dに挟まって宙吊りになる者もいるが、そのどちらも検知の対象である。
【0036】
なお、軌道Rの状態には、不在状態から在線状態への過渡状態としての「入線状態」と、在線状態から不在状態への過渡状態としての「出線状態」とが含まれる。
また、本実施形態に係る転落検知システム1は、図1に示すように、プラットホームPの下部空間に設置された走査装置3と、走査装置3と接続された転落検知装置4と、転落検知装置4における検知結果に応じて警報を発する転落警報器5と、転落検知装置4において検知された転落事象が発生した車両を表示する転落位置表示器6と、を備えている。
【0037】
走査装置3は、図2図4に示すように、プラットホームPの下部空間において、プラットホームPと隣接した軌道Rに沿って設けられており、複数の走査器ユニット3a,3b,3cを有している。各走査器ユニット3a,3b,3cは、上下一対で配置された上走査器31および下走査器(光走査器)32を含む。複数の走査器ユニット3a,3b,3cは、長手方向に間隔をおいて設定された複数の設置位置それぞれに設置されている。
【0038】
上・下走査器31,32は、例えば、レーザ光を所定の角度範囲内で走査する2Dレーザスキャナであって、図2に示すように、発光部33、偏向部34、受光部35、検知部36、距離算出部37を有している。
発光部33は、レーザ光のような走査光SLを発光する。
偏向部34は、ガルバノミラーのような偏向器、および、偏向器を回転駆動するアクチュエータを有する。発光部33で発光された走査光SLは、偏向部34によって偏向されながら射出される。これにより、2次元的な走査範囲SRが形成される。走査範囲SR内に物体が存在すると、走査光SLがその物体で反射する。
【0039】
受光部35は、走査光SLの反射光を受光する。
検知部36は、発光部33から照射されてから受光部35で受光された反射光を受光するまでの時間に基づいて、走査範囲SR(更に言えば、走査範囲SR内に設定された監視領域)に物体が存在するか否かを検知する。
距離算出部37は、受光部35において受光した反射光を受光するまでの時間の情報に応じて、光を反射した物体までの距離を算出する。
【0040】
上・下走査器31,32は、図4に示すように、プラットホームPよりも下方かつ軌道Rよりも上方に設置されている。上走査器31は、下走査器32よりも上方に設置されている。
下走査器32は、主として、軌道転落者を検知するとともに、在線状態において、レール上で支持されている車両Cの車輪Wを検知する。他方、下走査器32は、軌道Rの構成要素を検知しないことを求められる。下走査器32の上下方向の位置は、このような役割を果たすための適値(例えば、軌道から約250mm上方)に調整される。
【0041】
上走査器31は、主として、隙間Dで宙吊りになった隙間転落者を検知する。上走査器31の上下方向の位置は、このような役割を果たすための適値(例えば、軌道から約700mm上方、あるいは、プラットホームPから約600mm下方)に調整される。後述するとおり、本実施形態に係る上走査器31は、本来的な役割である隙間転落者の検知のみならず、不在状態において軌道転落者を精度よく検知するためにも活用される。
【0042】
上・下走査器31,32は、軌道Rよりも幅方向内方、更には、プラットホームPの端縁よりも幅方向内方に設置されている。プラットホームPの下方には、プラットホームPの端縁から見て幅方向内方に奥まった空間が形成されることがある。走査器ユニット3a,3b,3cの設置位置は、例えばこのような空間内に設定されており、当該空間内で上・下走査器31,32の上下方向および幅方向における位置が調整される。
【0043】
上・下走査器31,32は、走査光SLが幅方向外方へ水平に射出されて水平面内で偏向される姿勢で、設置されている。これにより、上・下走査器31,32が、プラットホームPよりも下方かつ上・下走査器31,32から見て幅方向外方に、2つの水平な走査範囲SRを形成する。
走査光SLの偏向範囲は、図3に示すように、約-5°~185°の角度範囲で設定されている。走査範囲SRは、平面視において、対応する上・下走査器31,32から幅方向に延びる基準線RLに対して線対称の半円形状に形成される。複数の走査範囲SRが、長手方向に並べられ、かつ、互いに部分的にオーバラップされるようにして、複数の走査器ユニット3a,3b,3cによって形成される。
【0044】
各走査範囲SR内に、監視領域が設定される。上・下走査器31,32は、それぞれ、走査範囲SR内の物体(転落者または車輪)の存否を検知することができる。そして、上・下走査器31,32は、それぞれが設定された監視領域内の物体の存在を検知したときに、その旨を示す検出信号を出力する。
監視領域のサイズおよび場所は、軌道の状態に応じて変更される。本実施形態に係る上・下走査器31,32においては、複数の監視領域を、同一の走査範囲SR内における互いに異なる領域に同時的に設定することが可能である。また、同時的に設定される2以上の監視領域を、同一の走査範囲SR内で部分的に互いにオーバラップさせることも可能である。
【0045】
本実施形態では、走査器ユニット3a,3b,3cのそれぞれの設置位置が、長手方向において車両2両分の長さに相当する間隔をおいて設定されている。各設置位置は、停車中の列車Tの車両連結部と幅方向に対向する位置である。
長手方向一方側(図3の紙面左側)の末端に設置された走査器ユニット3aは、1両目および2両目の車両連結部と対向する。その隣に設置された走査器ユニット3bは、末端の走査器ユニット3aから車両2両分の長さだけ離されており、3両目および4両目の車両連結部と対向する。
【0046】
上・下走査器31,32にそれぞれ設定される監視領域は、長手方向に車両2両分の長さを有している。監視領域は、設置位置から見て長手方向一方側の車両Cと他方側(図3の紙面右側)の車両Cとの2両が停止する領域と対応する。
複数の走査器ユニット3a,3b,3cにそれぞれ設定される複数の監視領域は、長手方向に連なる。したがって、列車Tが停車する全領域が監視の対象となる。
【0047】
ただし、走査器ユニット3a,3b,3cは、単数でも複数でもよく、特に限定されない。走査器ユニット3a,3b,3cの個数は、監視領域の長手方向における寸法や、プラットホームPの有効長や、軌道R上で停止すると想定されている列車Tの最大長に応じて、適宜変更可能である。
例えば、プラットホームPと列車Tとの間の隙間が広くなりやすい曲線状の部分にのみ、走査器ユニット3a,3b,3cが設置されており、プラットホームPの一部において転落検知が実施されてもよい。
【0048】
転落検知装置4は、図2に示すように、走査装置3と接続されており、走査装置3から出力された検知結果に基づいて、プラットホームPからの転落者、プラットホームPに入線してきた列車Tの車輪Wを検知する。転落検知装置4は、転落者を検知すると、関係者に知らせるために転落警報器5に発報動作を行わせる。
また、転落検知装置4は、プラットホームPに入線してきた列車Tの車輪Wを、所定の車輪検知エリアにおいて検出して、走査器ユニット3a,3b,3cが設置された車両の位置(何両目か)を検出する。なお、転落検知装置4による車輪検知から車両番号の特定までの処理については、後段にて詳述する。
【0049】
転落警報器5は、列車運行を管理する指令所に設けられ指令員に向けて警報を発する、あるいは、鉄道駅に設けられ駅係員に向けて警報を発する、あるいは、列車Tの制御車に設けられ運転士あるいは車掌に向けて警報を発する警報器を含む。警報器は、警告音等の音情報を出力するスピーカまたはブザーでもよいし、警告メッセージを表示するディスプレイ、または警告光を照射するランプであってもよい。
【0050】
関係者は、警報に基づいて、転落への対処、および、転落に付随する二次事故を未然に防ぐための措置を採ることができる。
転落位置表示器6は、例えば、駅員の待機所、プラットホームP上、列車Tの運転室、車掌室等に設置されており、転落検知装置4において検出された転落事象が発生した位置を、車両番号として表示する。
【0051】
(2)転落検知装置4
転落検知装置4は、一例として、CPUと、ROM、RAMおよびEEPROM等のメモリと、入出力インタフェースとを備えるコンピュータによって構成される。コンピュータは、単体でもよいし、物理的に分散された複数のコンピュータの複合でもよい。メモリは、このようなコンピュータに転落検知方法を実行させるための転落検知プログラムを記憶している。CPUは、メモリに保存された転落検知プログラムを読み込んで、転落検知プログラムに従って転落検知方法に係る情報処理を行う。メモリは、転落検知プログラムのほか、転落検知方法の実行に際して必要な情報またはデータを一時的に記憶することもできる。
【0052】
転落検知装置4は、CPUが転落検知プログラムを読み込んで実行することで、図2に示すように、制御部10、信号受信部11、軌道情報取得部12、監視領域設定部13、走査データ取得部14、転落検知部15、車輪検知エリア設定部16、車輪検知部17、車輪検知回数検出部18、車両番号特定部19、記憶部20および出力部21を有している。
【0053】
制御部10は、信号受信部11、軌道情報取得部12、監視領域設定部13、走査データ取得部14、転落検知部15、車輪検知エリア設定部16、車輪検知部17、車輪検知回数検出部18、車両番号特定部19、記憶部20および出力部21と接続されており、各部を制御する。
信号受信部11は、上・下走査器31,32から、例えば、受光部35において反射光を受光するまでの時間のデータ、検知部36において検知された検知結果、距離算出部37において算出された転落検知エリア内に存在する物体までの距離データ等を受信する。
【0054】
特に、信号受信部11は、後述する車輪検知エリアにおいて列車Tの車輪Wを検出して車両番号(何両目か)を特定するために、光走査器ユニット3a,3b,3cの下走査器32から照射された光の反射光を受光するまでの時間の情報に基づいて算出された所定の角度ごとに光を反射した物体までの距離データを受信する。
軌道情報取得部12は、軌道の状態を示す情報を取得する。本実施形態では、軌道情報取得部12は、軌道の状態として、在線状態であるか、不在状態であるか、これら2つの状態のいずれでもないか(過渡状態であるか)を示す情報を取得する。
【0055】
監視領域設定部13は、取得された軌道の状態等に応じて、上・下走査器31,32にそれぞれ設定されるべき転落を監視する監視領域を所定のパターンの中から1つ選択し、選択されたパターンの監視領域を上・下走査器31,32にそれぞれ設定する。監視領域設定部13は、軌道の状態に応じて、監視領域のパターン、転落検知システム1の検知の対象、あるいは、転落検知システム1の動作モードを切り換える。
【0056】
走査データ取得部14は、各走査器ユニット3a~3c(上・下走査器31,32)によって出力された監視領域内における物体の存否についての検知結果を取得する。
転落検知部15は、走査データ取得部14において取得された検知結果に基づいて、所定の判定ロジックに従って、プラットホームPからの転落者の有無を判定する。
車輪検知エリア設定部16は、車両Cの後方の車輪Wの停止位置に設定される車輪検知エリアについて、車両進行方向における長さ(L)を、同一の車両Cにおける前方の車輪Wの位置と後方の車輪Wの位置との間の長さ(X)よりも十分に短く、隣接する車両C間における前方の車両Cの後方の車輪群の中央位置と後方の車両Cの前方の車輪群の中央位置との間の長さ(Y)よりも長くなるように設定する(図6のX,Y、図8(a)のLを参照)。
【0057】
これにより、隣接する2つの車両Cの前方の車輪Wと後方の車輪Wを1まとめの車輪群として認識するように車輪検知エリアを設定することで、車輪検知エリアを通過した車輪Wを検知した回数(n回)をカウントして、車輪検知エリアに停止した車両Cが何両目(n両目)の車両であるかを判定することができる。
また、車輪検知エリア設定部16は、列車TがプラットホームPに入線してきた際に車輪検知エリアを通過する車輪Wを検知するための検知時間(T1)と、車輪検知エリアに停車した車輪を検知するための検知時間(T2)と、を設定する。
【0058】
ここで、検知時間(T1)(例えば、100ms)は、検知時間(T2)(例えば、5000ms)よりも短い時間になるように設定されている。
これにより、列車Tが車輪検知エリアを通過している際には、短い検知時間で車輪検知エリアに車輪Wが進入するとすぐに検知することができるとともに、車輪検知エリアに車輪Wが停止した際には、長い検知時間で停止した車輪Wを確実に検知することができる。
【0059】
さらに、車輪検知エリア設定部16は、車輪検知エリアの車両進行方向における長さLとして、プラットホームPに入線してきた列車Tの車輪Wが車輪検知エリアを通過する際に車輪Wを検知するための第1の値を予め設定し、列車Tの車輪Wが車輪検知エリアに停止した際に車輪Wを検知するための、第1の値とは異なる第2の値を設定する。
ここで、列車Tが停止した状態で車輪Wを検知する際の車輪検知エリアの長さLの第2の値(例えば、2~3m)は、列車Tが通過していく際の車輪検知エリアの長さLの第1の値(例えば、5m)よりも小さい。
【0060】
これにより、列車Tの車輪Wが車輪検知エリアにおいて停止した状態を検知するために予め設定される第2の値は、車輪検知エリアにおいて通過していく車輪Wを検知するために予め設定される第1の値よりも小さい範囲でも検知可能である。このため、第2の値が第1の値よりも小さい値に設定されている場合でも、車輪Wの確実に検知することができる。
【0061】
さらにまた、車輪検知エリア設定部16は、車輪検知エリアの列車Tの車両Cの車幅方向における長さDを、軌道の幅(間隔)よりもやや大きい長さ(例えば、1.5~2.0m)に設定する。
これにより、下走査器32から照射された光の反射光を検出して車輪Wの有無を検出する際に、下走査器32から見て手前側の車輪Wと奥側の車輪Wとをそれぞれ車輪検知エリアにおいて適切に検出することができる。
【0062】
また、車輪検知エリアにおいて検知される対象サイズは、例えば、100mmの大きさに設定されている。
車輪検知部17は、車輪検知エリア設定部16によって設定された車輪検知エリアにおいて、プラットホームPに入線してきた列車Tの車輪Wを検知する。具体的には、車輪検知部17は、走査データ取得部14において取得されたデータに基づいて、車輪Wを検知する。
【0063】
車輪検知回数検出部18は、列車TがプラットホームPに入線してきた際に、車輪検知部17によって検知された車輪Wの検知回数をカウントする。
車両番号特定部19は、車輪検知回数検出部18における車輪Wの検知回数をn回とすると、車輪検知エリアに停止した車両Cが列車Tのn両目であると判定する。
記憶部20は、信号受信部11において受信した各種信号、軌道情報取得部12において取得された軌道情報、監視領域設定部13において設定される監視領域、走査データ取得部14において取得された走査データ、転落検知部15における転落者の検知結果等を保存する。特に、記憶部20は、後述する車輪検知エリアの列車Tの進行方向における長さ、幅寸法に関する情報、車輪検知エリアにおける車輪の検知時間に関する情報等、車輪検知エリアに関する情報や、車輪検知エリアにおいて検出された車輪Wの検知回数に応じて特定された車両番号に関する情報等を保存する。
【0064】
出力部21は、転落検知部15が転落者を検知した場合に、転落警報器5に警報動作を行わせる指令を出力する。また、出力部21は、後述する車輪検知エリアに停車した列車Tの車輪Wが検出された回数に応じて特定される車両番号を、転落位置表示器6に出力し、表示させる。
本実施形態の転落検知装置4では、以上のような構成により、車輪検知エリアに停止した車輪Wが何両目の車両Cの車輪Wであるのかを認識することができる。そして、転落検知装置4は、各下走査器32の転落検知エリアにおける転落者の監視を開始して、転落事象が発生した際には、速やかに、転落事象の発生とともに、何両目の車両Cで転落事象が発生したのかを、転落位置表示器6等において報知することができる。
【0065】
(監視領域)
本実施形態の転落検知装置4では、図3に示すように、軌道の状態に応じて走査装置3に選択的に設定される監視領域のパターンとして、不在状態で設定されるパターンである軌道監視領域ARと、在線状態で設定されるパターンである隙間監視領域ADとが設定されている。
【0066】
軌道監視領域ARは、図3(a)に示すように、軌道Rの上部空間を覆うように設定される。軌道転落者は、転落の過程で軌道監視領域AR内に入る。よって、軌道監視領域AR内に物体が存在するとの検知結果に基づき、軌道Rの幅方向全体にわたって、軌道転落者を検知することができる。
隙間監視領域ADは、図3(b)に示すように、軌道監視領域ARよりも幅方向に狭く、隙間D内に設定される。隙間転落者のうち軌道Rまで達した者は、転落の過程で隙間監視領域AD内に入る。宙吊りになった者も、隙間監視領域AD(特に、上隙間監視領域ADU)内で留まる。よって、隙間監視領域AD内に物体が存在するとの検知結果に基づき、隙間転落者を検知することができる。
【0067】
(軌道監視領域)
走査装置3は、長手方向に並ぶ複数の走査器ユニット3a,3b,3cで構成される。
軌道監視領域ARは、図3(a)に示すように、複数の走査器ユニット3a,3b,3cごとに設定される軌道監視領域ARa,ARb,ARcを長手方向に連ねることによって構成される。
【0068】
各走査器ユニット3a,3b,3cは、上述したように、上下一対で設けられた上・下走査器31,32で構成されている。
走査器ユニット3aの軌道監視領域ARaは、上走査器31に設定される上軌道監視領域ARaUと、下走査器32に設定される下軌道監視領域ARaLとで構成される。他の走査器ユニット3b,3cの軌道監視領域ARb,ARcについても、これと同様である。
【0069】
すなわち、複数の上走査器31が長手方向に沿って並べられ、かつ、複数の下走査器32が長手方向に沿って並べられている。走査装置3の軌道監視領域ARは、上軌道監視領域ARUと、下軌道監視領域ARLとで構成されている。
上軌道監視領域ARUは、複数の上走査器31に設定された複数の上軌道監視領域ARaU,ARbU,ARcUを長手方向に連ねることによって形成されている。下軌道監視領域ARLは、上軌道監視領域ARUよりも低い位置に設定され、複数の下走査器32に設定された複数の下軌道監視領域ARaL,ARbL,ARcLを長手方向に連ねることによって形成されている。
【0070】
複数の上軌道監視領域ARaU,ARbU,ARcUは、長手方向に並ぶように設定されている。また、複数の下軌道監視領域ARaL,ARbL,ARcLは、複数の上軌道監視領域ARaU,ARbU,ARcUとそれぞれ対応して設定されている。各下軌道監視領域ARaL,ARbL,ARcLは、対応する上軌道監視領域ARaU,ARbU,ARcUと長手方向において略同じ位置に設定されている。
【0071】
図5(a)は、列車Tが不在状態で走査器ユニット3aに設定される軌道監視領域ARaを示す斜視図である。本実施形態では、上軌道監視領域ARaUが、走査器ユニット3aの上走査器31によって形成される単一の走査範囲SR内に設定された複数の上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4を長手方向に連ねることによって形成されている。下軌道監視領域ARaLも、走査器ユニット3aの下走査器32によって形成される単一の走査範囲SR内に設定された複数の下セグメントARaL1,ARaL2,ARaL3,ARaL4を長手方向に連ねることによって形成されている。
【0072】
このように、複数の上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4(複数の第1の監視領域)が、長手方向に並ぶように設定されている。また、複数の下セグメントARaL1,ARaL2,ARaL3,ARaL4(複数の第2の監視領域)が、複数の上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4とそれぞれ対応して設定されている。各下セグメントARaL1,ARaL2,ARaL3,ARaL4は、対応する上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4と長手方向において略同じ位置に設定されている。
【0073】
別の走査器ユニット3b,3cにおいても、これと同様である。セグメント数は、1つの走査器ユニットにおいて上下同じであれば、どのように設定されていてもよい。本実施形態では、単なる一例として、いずれの走査器ユニット3a,3b,3cにおいても、セグメント数が4である。
一例として、上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4は、上軌道監視領域ARaUを長手方向に等分割することによって形成されている。本例では、上軌道監視領域ARaUは、長手方向が長辺となる長方形状であり、長辺の長さは車両2両分(約40m)である。上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4も、平面視で概略長方形状であり、その長辺の長さは、車両半分の長さと概ね等しい。下セグメントARaL1,ARaL2,ARaL3,ARaL4についても、これと同様である。
【0074】
(隙間監視領域)
隙間監視領域ADについても、軌道監視領域ARと同様である。隙間監視領域ADは、複数の走査器ユニット3a,3b,3cごとに設定される隙間監視領域ADa,ADb,ADcを長手方向に連ねることによって構成される。
走査器ユニット3aの隙間監視領域ADaは、上走査器31に設定される上隙間監視領域ADaUと、下走査器32に設定される下隙間監視領域ADaLとで構成される。他の走査器ユニット3b,3cの隙間監視領域ADb,ADcについても、これと同様である。また、走査装置3の隙間監視領域ADは、上隙間監視領域ADUと、下隙間監視領域ADLとで構成されている。上隙間監視領域ADUは、複数の上走査器31に設定された複数の上隙間監視領域ADaU,ADbU,ADcUを長手方向に連ねることによって構成される。下隙間監視領域ADLは、上隙間監視領域ADUよりも低い位置に設定され、複数の下走査器32に設定された複数の下隙間監視領域ADaL,ADbL,ADcLを長手方向に連ねることによって構成される。
【0075】
複数の上隙間監視領域ADaU,ADbU,ADcUが、長手方向に並ぶように設定されている。また、複数の下隙間監視領域ADaL,ADbL,ADcLが、複数の上隙間監視領域ADaU,ADbU,ADcUとそれぞれ対応して設定されている。各下隙間監視領域ADaL,ADbL,ADcLは、対応する上隙間監視領域ADaU,ADbU,ADcUと長手方向において略同じ位置に設定されている。
【0076】
図5(b)は、在線状態で走査器ユニット3aに設定される隙間監視領域ADaを示す斜視図である。本実施形態では、単なる一例として、走査器ユニット3aの隙間監視領域ADaは、軌道監視領域ARa(図5(a)を参照)とは異なり、複数のセグメントに細分されていない。ただし、複数の上隙間監視領域ADaU,ADbU,ADcUが、部分的に互いにオーバラップされていてもよい。付随して、複数の下隙間監視領域ADaL,ADbL,ADcLも、部分的に互いにオーバラップされていてもよい。
【0077】
(車輪検知エリア)
本実施形態の転落検知装置4は、上述したように、車輪検知エリア設定部16が、プラットホームPに入線してきた列車Tの車両Cの前方・後方の車輪Wを検出するためのエリアとして、車輪検知エリアを設定する。
図6は、駅のプラットホームPに入線してくる列車Tの同一車両Cにおける前方の車輪Wの位置と後方の車輪Wの位置との間の長さXと、隣接する車両C,C間における前方の車両Cの後方の車輪群の中央位置と後方の車両Cの前方の車輪群の中央位置との間の長さYとを示している。
【0078】
ここで、図7を用いて、駅のプラットホームPに10両編成の列車Aと、8両編成の列車Bとが入線してくる場合であって、車輪Wを検知する光走査器(下走査器32)が、後方側の4つの車両Cに対応する位置に設置されている場合について説明する。
下走査器32は、図7に示すように、列車Aに対しては、7,8両目と9,10両目とをカバーする位置に設置されており、列車Bに対しては、5,6両目と7,8両目とをカバーする位置に設置されている。
【0079】
すなわち、下走査器32は、プラットホームPにおける固定された位置に設置されているが、入線してくる列車Tの車両数が変わると、検知エリアによって転落検知を行う対象車両Cが変化する。
よって、下走査器32において転落事象が発生したことを検知した場合、入線している列車Tの車両数によって何両目で転落事象が発生したのかを即座に認識することができないため、駅員等の対応が遅れてしまうおそれがあった。
【0080】
そこで、本実施形態の転落検知装置4では、車輪検知エリア設定部16が、図8(a)に示す車輪検知エリアの列車Tの進行方向における長さLを、図6に示す長さXよりも短く、長さYよりも長くなるように設定する。
なお、図8(a)において、距離(m)を示す縦軸の原点は、走査器ユニット3a,3b,3cが設置されている位置、縦軸の0~1は、プラットホームPと列車Tとの間の隙間の転落検知エリア、縦軸1~4は、列車Tの在線時に列車Tが存在し得るエリア(軌道上のエリア)、縦軸4~5は、反対側のプラットホームP側の物体を検知した検知エリアを、それぞれ示している。
【0081】
同様に、距離(m)を示す横軸の原点は、走査器ユニット3a,3b,3cが設置された位置であって、在線時の列車Tの車両Cと車両Cの接続部分のほぼ正面の位置である。横軸のマイナス側(図中左側)は、走査器ユニット3a,3b,3cの左側を意味しており、プラス側(図中右側)は、走査器ユニット3a,3b,3cの右側を意味している。
また、縦軸0.8~2.7、横軸-5~0の範囲は、車輪検知エリアを示している。
【0082】
これにより、車輪Wを検知する車輪検知エリアの進行方向(長手方向)における長さLは、図6の長さXよりも十分に短いため、例えば、1両目の車両の前方の車輪Wが通過したことを確実に検知して、1両目の通過をカウントすることができる。
また、車輪検知エリアの長さLは、図6の長さYよりも長いため、例えば、1両目の後方の車輪Wと2両目の前方の車輪との間の隙間によって、1両目の後方の車輪Wと2両目の前方の車輪Wとをそれぞれ検知して、別々にカウントしてしまうことを回避することができる。
【0083】
よって、図8(a)に示すように、列車Tの進行方向における長さLを持つ車輪検知エリアにおいて、図8(b)に示すように、1両目の車両Cの前方の車輪Wを検知して1両目としてカウント(N=1)する。
次に、図9(a)に示すように、1両目の車両Cの後方の車輪Wと2両目の車両Cの前方の車輪Wとをまとめて1つの車輪群として検知して2両目としてカウントする(N=2)。これにより、車輪検知エリアを通過した車両Cの数と、車輪検知エリアに停止した車両Cが何両目であるのかを、即座に認識することができる。
【0084】
次に、図9(b)に示すように、2両目の車両Cの後方の車輪Wと3両目の車両Cの前方の車輪Wとをまとめて1つの車輪群として検知して、3両目としてカウントする(N=3)。
以下、同様に、図10(a)に示すように、6両目の車両Cの後方の車輪Wと7両目の車両Cの前方の車輪Wとをまとめて1つの車輪群として検知して、7両目としてカウントする(N=7)。
【0085】
最後に、図10(b)に示すように、列車Tの進行方向における長さLを持つ車輪検知エリアにおいて、7両目の車両Cの後方の車輪Wを検知したまま通過せずに停止すると、検知回数Nをカウントアップせず、N=7のまま保持される。
本実施形態の転落検知装置4では、以上のように、下走査器32の走査範囲(転落検知エリア)に停止した車両Cが何両目であるかを即座に認識することができるように、車両Cの車輪Wを検知する車輪検知エリアが設定される。そして、車輪検知エリアの列車Tの進行方向における長さLは、列車Tの同一車両Cにおける前方の車輪Wの位置と後方の車輪Wの位置との間の長さXよりも十分短く、隣接する車両C,C間における前方の車両Cの後方の車輪群の中央位置と後方の車両Cの前方の車輪群の中央位置との間の長さYよりも長くなるように設定される。
【0086】
これにより、隣接する2つの車両C,Cの前方の車輪Wと後方の車輪Wとを1まとめの車輪群として認識するように車輪検知エリアが設定されているため、車輪検知エリアにおいて検出された車輪Wの検出回数をカウントすることで、停止した車両Cの位置が何両目であるのかを容易に認識することができる。よって、転落事象が発生した場合には、その転落事象が何両目で発生したのかを、駅員の待機室に報知したり、転落位置表示器6等に表示させたりすることができる。
この結果、導入コストを抑制しつつ、転落事象の発生を検知した際に、列車Tの何両目で転落事象が発生したのかを即座に駅係員等に認識させて、適切な対応を採らせることができる。
【0087】
<転落検知方法>
本実施形態の転落検知装置4は、上述した構成により、図11に示すフローチャートに基づいて転落検知方法を実行する。
【0088】
すなわち、本実施形態の転落検知方法は、対象駅のプラットホームから列車が通過する軌道の上へ転落した人を検知する転落検知方法であって、まず、ステップS11では、列車Tの車両Cの後方の車輪Wの停止位置に設定される車輪検知エリアについて、車両進行方向における長さLを、同一車両Cにおける前方の車輪Wの位置と後方の車輪Wの位置との間の長さXよりも短く、隣接する車両C,C間における前方の車両Cの後方の車輪群の中央位置と後方の車両Cの前方の車輪群の中央位置との間の長さYよりも長くなるように設定する(車輪検知エリア設定ステップ)。
【0089】
次に、ステップS12では、軌道上に設定された転落検知エリアにおいて所定の角度範囲内で光を走査し、光の反射光を受光する光走査器から、反射光の受光データを、所定の角度ごとに取得する(受光データ取得ステップ)。
次に、ステップS13では、車輪検知エリア設定ステップによって設定された車輪検知エリアにおいて、受光データ取得ステップにおいて取得された受光データに基づいて、プラットホームPに入線してきた列車Tの車輪Wを検知する(車輪検知ステップ)。
【0090】
次に、ステップS14では、列車TがプラットホームPに入線してきた際に、車輪検知ステップによって検知された車輪Wの検知回数をカウントする(車輪検知回数検出ステップ)。
次に、ステップS15では、車輪検知回数検出ステップにおける車輪Wの検知回数をn回とすると、車輪検知エリアに停止した車両Cが列車Tのn両目であると判定する(車両番号特定ステップ)。
【0091】
次に、ステップS16では、受光データ取得ステップにおいて取得された受光データに基づいて、軌道上への物体(人または物)の侵入を検知したか否かを判定し、検知すると、ステップS17へ進む(物体検知ステップ)。
次に、ステップS17では、物体検知ステップにおいて物体の侵入が検知された結果と、物体が検知された位置として列車Tのn両目とを報知する(報知ステップ)。
【0092】
これにより、上述した転落検知方法を実行することにより、隣接する2つの車両C,Cの前方の車輪Wと後方の車輪Wとを1まとめの車輪群として認識するように車輪検知エリアが設定されているため、車輪検知エリアにおいて検出された車輪Wの検出回数をカウントすることで、停止した車両Cの位置が何両目であるのかを容易に認識することができる。よって、転落事象が発生した場合には、その転落事象が何両目で発生したのかを、駅員の待機室に報知したり、転落位置表示器6等に表示させたりすることができる。
この結果、導入コストを抑制しつつ、転落事象の発生を検知した際に、列車Tの何両目で転落事象が発生したのかを即座に駅係員等に認識させて、適切な対応を採らせることができる。
【0093】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0094】
(A)
上記実施形態では、転落検知装置および転落検知方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した転落検知方法をコンピュータに実行させる転落検知プログラムとして本発明を実現してもよい。
【0095】
この転落検知プログラムは、転落検知装置に搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存された転落検知プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが転落検知プログラムを読み込んで、上述した車輪検知エリア設定ステップと、受光データ取得ステップと、車輪検知ステップと、車輪検知回数検出ステップと、車両番号特定ステップと、物体検知ステップと、報知ステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、転落検知プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0096】
(B)
上記実施形態では、列車TがプラットホームPに入線してきた際に車輪検知エリアを通過する車輪Wを検知するための検知時間T1を、車輪検知エリアに停車した車輪Wを検知するための検知時間T2と異なる値に設定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0097】
例えば、検知時間T1,T2を同じ時間になるように設定してもよい。
ただし、検知時間T1がT2よりも短い時間に設定されることで、列車が車輪検知エリアを通過している際には、短い検知時間で車輪検知エリアに車輪が進入するとすぐに検知することができるとともに、車輪検知エリアに車輪が停止した際には、長い検知時間で停止した車輪を確実に検知することができるという効果を考慮すれば、上記実施形態のような設定とすることがより好ましい。
【0098】
(C)
上記実施形態では、プラットホームPに入線してきた列車Tの車輪Wが車輪検知エリアを通過する際と、列車Tの車輪Wが車輪検知エリアに停止した際とで、車輪検知エリアの車両進行方向における長さLが、異なる値に設定される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、長さLは一定の値に設定されていてもよい。
【0099】
(D)
上記実施形態では、車輪検知エリアにおける列車Tの車両Cの車輪Wを、下走査器32における走査光の反射光を受光して検出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0100】
例えば、列車の車両の車輪の検知は、光走査器以外の車輪検知用の専用の装置等を用いて実施してもよい。
ただし、転落検知を行う光走査器を、車輪検知にも兼用することで、システム構成を簡素化することができるという点では、上記実施形態のような構成であることが好ましい。
【0101】
(E)
上記実施形態では、車両番号特定部19において特定された車両番号等を保存する記憶部20が、転落検知装置4の内部に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、車両番号等の情報を保存する記憶装置が、転落検知装置の外部に設けられた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の転落検知装置は、導入コストを抑制しつつ、転落事象の発生を検知した際に、列車の何両目で転落事象が発生したのかを即座に駅係員等に認識させて、適切な対応を採らせることができるという効果を奏することから、鉄道駅に設置される転落検知システムに対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 転落検知システム
3 走査装置
3a,3b,3c 走査器ユニット
4 転落検知装置
5 転落警報器
6 転落位置表示器
10 制御部
11 信号受信部
12 軌道情報取得部
13 監視領域設定部
14 走査データ取得部(受光データ取得部)
15 転落検知部(物体検知部)
16 車輪検知エリア設定部
17 車輪検知部
18 車輪検知回数検出部
19 車両番号特定部
20 記憶部
21 出力部
31 上走査器
32 下走査器(光走査器)
33 発光部
34 偏光部
35 受光部
36 検知部
37 距離算出部
AD 隙間監視領域
AR 軌道監視領域
C 車両
D 隙間
L 長さ
P プラットホーム
R 軌道
SR 走査範囲
T 列車
T1,T2 検知時間
W 車輪
X 長さ
Y 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11