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特開2023-154177有機発光素子、有機発光材料および有機発光化合物
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  • 特開-有機発光素子、有機発光材料および有機発光化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154177
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】有機発光素子、有機発光材料および有機発光化合物
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/10 20230101AFI20231012BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20231012BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
H05B33/14 B
C09K11/06 660
C07F5/02 A CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063321
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】516003621
【氏名又は名称】株式会社Kyulux
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】バリジャパリ ウママヘシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ヨンジュ
(72)【発明者】
【氏名】柏▲ざき▼ 貴弘
【テーマコード(参考)】
3K107
4H048
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC07
3K107DD59
3K107DD66
4H048AA01
4H048AB92
4H048VA32
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規な化合物を発光層に含む有機発光素子を提供する。
【解決手段】有機発光素子の発光層は、下記式(I)で示される化合物を含む。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光素子であって、発光層に下記式(I)で示される化合物を含む、有機発光素子。
【化1】
[式(I)において、
1は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;
2、R3は、それぞれ、水素、または、R2とR2と、R3とR3とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R2、R3の両方が水素であることはなく;
4、R5は、それぞれ、水素、または、R4とR4と、R5とR5とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R4、R5の両方が水素であることはなく;
各六員環の水素原子は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、または、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基で置換されていてもよい。]
【請求項2】
式(I)で示される化合物が、
【化2】
である、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
有機発光材料であって、下記式(I)で示される化合物を含む、有機発光材料。
【化3】
[式(I)において、
1は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;
2、R3は、それぞれ、水素、または、R2とR2と、R3とR3とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R2、R3の両方が水素であることはなく;
4、R5は、それぞれ、水素、または、R4とR4と、R5とR5とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R4、R5の両方が水素であることはなく;
各六員環の水素原子は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、または、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基で置換されていてもよい。]
【請求項4】
式(I)で示される化合物が、
【化4】
である、請求項3に記載の有機発光材料。
【請求項5】
下記式(I)で示される発光性化合物。
【化5】
[式(I)において、
1は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;
2、R3は、それぞれ、水素、または、R2とR2と、R3とR3とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R2、R3の両方が水素であることはなく;
4、R5は、それぞれ、水素、または、R4とR4と、R5とR5とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R4、R5の両方が水素であることはなく;
各六員環の水素原子は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、または、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基で置換されていてもよい。]
【請求項6】
式(I)で示される化合物が、
【化6】
である、請求項5に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な有機発光材料を用いた有機発光素子、および、新たな構造の有機発光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機発光素子の発光層に用いる材料を工夫することにより、発光効率を高める研究が種々なされている。
本発明者らは、有機発光素子の発光層に複数の発光材料(発光性ドーパント)を使用し、そのような発光材料の一つに遅延蛍光体(アシストドーパント)を用いることによって、高い発光効率を有する有機発光素子を提供できることを見出した。(特許文献1)
そのような目的に使用する発光性ドーパント、アシストドーパントとして、各種の有機発光材料が開発されてきている(特許文献2~特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5669163号
【特許文献2】国際公開第2019/052940号
【特許文献3】国際公開第2021/008374号
【特許文献4】中国特許公開第112341482号
【特許文献5】国際公開第2021/245221号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な有機発光材料を用いた有機発光素子、それを提供することを可能にする新規な有機発光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
具体的には、下記の態様を含むものである。
[1]有機発光素子であって、発光層に下記式(I)で示される化合物を含む、有機発光素子。
【化1】
[式(I)において、
1は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;
2、R3は、それぞれ、水素、または、R2とR2と、R3とR3とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R2、R3の両方が水素であることはなく;
4、R5は、それぞれ、水素、または、R4とR4と、R5とR5とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R4、R5の両方が水素であることはなく;
各六員環の水素原子は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、または、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基で置換されていてもよい。]
[2]式(I)で示される化合物が、
【化2】
である、[1]に記載の有機発光素子。
[3]有機発光材料であって、下記式(I)で示される化合物を含む、有機発光材料。
【化3】
[式(I)において、
1は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;
2、R3は、それぞれ、水素、または、R2とR2と、R3とR3とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R2、R3の両方が水素であることはなく;
4、R5は、それぞれ、水素、または、R4とR4と、R5とR5とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R4、R5の両方が水素であることはなく;
各六員環の水素原子は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、または、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいアリール
基またはヘテロアリール基で置換されていてもよい。]
[4]式(I)で示される化合物が、
【化4】
である、[3]に記載の有機発光材料。
[5]下記式(I)で示される発光性化合物。
【化5】
[式(I)において、
1は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;
2、R3は、それぞれ、水素、または、R2とR2と、R3とR3とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R2、R3の両方が水素であることはなく;
4、R5は、それぞれ、水素、または、R4とR4と、R5とR5とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R4、R5の両方が水素であることはなく;
各六員環の水素原子は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、または、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基で置換されていてもよい。]
[6]式(I)で示される化合物が、
【化6】
である、[5]に記載の化合物。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】有機発光素子の層構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係る有機発光素子について説明する。
ある種のエネルギー刺激を与えられたとき、それに対する応答として光(蛍光)を放出する機能を有する有機材料を「有機発光材料」という。エネルギー源として電気エネルギーを使用した発光をエレクトロルミネッセンスとよばれている。エレクトロルミネッセンスとは、蛍光体に電気エネルギーを与えて励起させ、励起状態から失活する際のエネルギーを光として取り出す現象であるともいえる。このエレクトロルミネッセンス現象を利用した有機発光素子を有機EL素子という。
代表的な有機EL素子は、基板の上に、少なくとも陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極との間の有機層を含むものであって、該有機層の例として、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子注入層、電子輸送層、正孔障壁層、電子障壁層などが挙げられる。
有機EL素子の具体的な構成の例を図1に示すが、本発明の有機発光素子はそのような構成に限定されるものではない。
以下で、各層等について簡単に説明する。
【0008】
[基板]
有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。
この基板については、特に制限はなく、従来から有機EL素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0009】
[陽極]
いくつかの実施形態では、陽極は、金属、合金、導電性化合物またはそれらの組み合わせから製造される。例えば、CuI、酸化インジウム・スズ(ITO)、SnO2およびZnOが例示される。
いくつかの実施形態では、陽極の厚みは10~1,000nmである。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは10~200nmである。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは用いる材料に応じて変動する。
【0010】
[陰極]
いくつかの実施形態では、陰極は、合金、導電性化合物またはその組み合わせなどの電極材料で作製される。そのような材料として、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム-銅混合物、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アル
ミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム-アルミニウム混合物、希土類元素が例示される。
いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は10nm~5μmである。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は50~200nmである。
【0011】
[発光層]
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料は、正孔輸送能、電子輸送能を有する有機化合物であり、および/または、発光の長波長化を防ぐ化合物であり、および/または、高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
ホスト材料として、以下のものを使用することができるが、これらに限られるわけではない。
【0012】
【化7】
【0013】
【化8】
【0014】
【化9】
【0015】
[正孔輸送層]
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は単層である。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は、正孔の注入または輸送特性および電子の障壁特性のうちの1つの特性を有する。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は有機材料である。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は無機材料である。
正孔輸送材料の例としては、限定されないが、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導剤、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導剤、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導剤、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリンコポリマーおよび導電性ポリマーオリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、またはその組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料はポルフィリン化合物、芳香族三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物から選択される。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は芳香族三級アミン化合物である。
正孔輸送材料として以下のものを使用することができるが、これらに限られるわけではない。
【0016】
【化10】
【0017】
【化11】
【0018】
[電子輸送層]
電子輸送層は、電子輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、電子輸送層は単層である。いくつかの実施形態では、電子輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、電子輸送材料は、陰極から注入された電子を発光層に輸送する機能さえあればよい。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はまた、正孔障壁材料としても機能する。
電子輸送層の例としては、限定されないが、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アゾール誘導体、アジン誘導体またはその組合せ、またはそのポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はチアジアゾール誘導剤またはキノキサリン誘導体である。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はポリマー材料である。(さらにこれらの材料を
高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
電子輸送材料として以下のものを使用することができるが、これらに限られるわけではない。
【0019】
【化12】
【0020】
[注入層]
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層とがある。陽極と発光層(正孔輸送層)の間に、あるいは、陰極と発光層(電子輸送層)との間に、必要に応じて設けることができる。
以下に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げるが、これらに限られるわけではない。
【0021】
【化13】
【0022】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げるが、これらに限られるわけではない。
【化14】
【0023】
[障壁層]
障壁層は、発光層に存在する電荷(電子または正孔)および/または励起子が、発光層の外側に拡散することを阻止できる層である。
いくつかの実施形態では、電子障壁層は、発光層と正孔輸送層との間に(図1で、4:正孔輸送層と5:発光層との間に)存在し、電子が発光層を通過して正孔輸送層へ至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、正孔障壁層は、発光層と電子輸送層との間に(図1で、5:発光層と6:電子輸送層との間に)存在し、正孔が発光層を通過して電子輸送層へ至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、障壁層は、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、電子障壁層および正孔障壁層は励起子障壁層を構成する。本明細書で用いる用語「電子障壁層」または「励起子障壁層」には、電子障壁層の、および励起子障壁層の機能の両方を有する層が含まれる。
【0024】
[電子障壁層]
電子障壁層は、正孔を輸送する。いくつかの実施形態では、正孔の輸送の間、電子障壁層は電子が正孔輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。電子障壁層に用いる材料は、正孔輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。以下に電子障壁材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げるが、これらに限られるわけではない。
【0025】
【化15】
【0026】
【化16】
【0027】
[正孔障壁層]
正孔障壁層は、電子輸送層として機能する。いくつかの実施形態では、電子の輸送の間、正孔障壁層は正孔が電子輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、正孔障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。正孔障壁層に用いる材料は、電子輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
以下に、正孔障壁層に用いることができる好ましい化合物例を挙げるが、これらに限られるわけではない。
【0028】
【化17】
【0029】
本発明に係る有機発光素子で、発光層で使用される化合物は、以下の式(I)で示される化合物である。
【化18】
[式(I)において、
1は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;
2、R3は、それぞれ、水素、または、R2とR2と、R3とR3とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R2、R3の両方が水素であることはなく;
4、R5は、それぞれ、水素、または、R4とR4と、R5とR5とが結合しNを含む五員環を形成し、ただし、R4、R5の両方が水素であることはなく;
各六員環の水素原子は、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、または、1または複数の、直鎖、分岐または環状のアルキル基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基で置換されていてもよい。]
【0030】
上記の化合物は、ピラジン環に相当する環構造を有する点で、上記の先行技術に記載のものと相違するものである。
【0031】
斯かる化合物において、「直鎖、分岐または環状のアルキル基」の炭素数は、例えば1以上、2以上、4以上とすることができる。また、炭素数は30以下、20以下、10以下、6以下、4以下とすることができる。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デカニル基、イソデカニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。置換基たるアルキル基は、さらにアリール基で置換されていてもよい。
【0032】
1のフェニル基を置換することができる「直鎖、分岐または環状のアルキル基」は、1または複数であり、複数の場合には、同じ置換基であることもできるし、また、異なる置換基であることもできる。
1の具体的な例としては、
【化19】
【0033】
各六員環の水素原子を置換することができる「直鎖、分岐または環状のアルキル基」は、1または複数であり、複数の場合には、同じ置換基であることもできるし、また、異なる置換基であることもできる。また、各六員環の水素原子を置換することができるアリール基またはヘテロアリール基を置換することができる「直鎖、分岐または環状のアルキル基」は、1または複数であり、複数の場合には、同じ置換基であることもできるし、また、異なる置換基であることもできる
【0034】
また、アリール基またはヘテロアリール基としては、炭素以外の元素としてO、N、Sを1または2以上含有してもよい、単環あるいは縮合のアリール基、ヘテロアリール基であることができる。縮合環である場合、縮合した後の環の数は2~6であることが好ましく、例えば2~4の中から選択したり、2としたりすることができる。アリール基としては、フェニル基を挙げることができる。ヘテロアリール基を構成する環の具体例として、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キナゾリン環やキノキサリン環以外のナフチリジン環を挙げることができる。
【0035】
なお、上記の式(I)で示される化合物は、式(I)で示される化合物と対掌の関係にある以下の式(II)で示される化合物を包含するものである。
【化20】
【0036】
上記の式(I)で示される化合物として、具体的には、以下の化合物を例示することができるが、以下に限定されるものではない。
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【0037】
なお、上記化合物において、Rは、以下の基から選択される任意の基である。
【化26】
(*で、該当化合物に結合している。)
【0038】
上記式(I)で示される化合物の製造方法は、
【化27】
を例として、フローで示すと以下のとおりである。
【化28】
【0039】
上記式(I)で示される他の化合物も、同様のフローで製造することができる。
上記化合物は、有機発光素子の発光層の発光性ドーパントとしても使用可能であるし、また、アシストドーパントとしても使用可能である。
特に、遅延蛍光化合物と組み合わせて発光層で用いることが望ましい。
以下に、本発明で使用することができる遅延蛍光材料である化合物を挙げるが、本発明で用いることができる遅延蛍光材料はこれらの具体例により限定的に解釈されることはない。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
また、本発明では、上記以外にも公知の遅延蛍光材料を式(1)で表される化合物と適宜組み合わせて用いることができる。また、知られていない遅延蛍光材料であっても、用いることが可能である。
遅延蛍光材料として、WO2013/154064号公報の段落0008~0048および0095~0133、WO2013/011954号公報の段落0007~0047および0073~0085、WO2013/011955号公報の段落0007~0033および0059~0066、WO2013/081088号公報の段落0008~0071および0118~0133、特開2013-256490号公報の段落0009~0046および0093~0134、特開2013-116975号公報の段落0008~0020および0038~0040、WO2013/133359号公報の段落0007~0032および0079~0084、WO2013/161437号公報の段落0008~0054および0101~0121、特開2014-9352号公報の段落0007~0041および0060~0069、特開2014-9224号公報の段落0008~0048および0067~0076、特開2017-119663号公報の段落0013~0025、特開2017-119664号公報の段落0013~0026、特開201
7-222623号公報の段落0012~0025、特開2017-226838号公報の段落0010~0050、特開2018-100411号公報の段落0012~0043、WO2018/047853号公報の段落0016~0044に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物であって、遅延蛍光を放射するものを挙げることができる。また、特開2013-253121号公報、WO2013/133359号公報、WO2014/034535号公報、WO2014/115743号公報、WO2014/122895号公報、WO2014/126200号公報、WO2014/136758号公報、WO2014/133121号公報、WO2014/136860号公報、WO2014/196585号公報、WO2014/189122号公報、WO2014/168101号公報、WO2015/008580号公報、WO2014/203840号公報、WO2015/002213号公報、WO2015/016200号公報、WO2015/019725号公報、WO2015/072470号公報、WO2015/108049号公報、WO2015/080182号公報、WO2015/072537号公報、WO2015/080183号公報、特開2015-129240号公報、WO2015/129714号公報、WO2015/129715号公報、WO2015/133501号公報、WO2015/136880号公報、WO2015/137244号公報、WO2015/137202号公報、WO2015/137136号公報、WO2015/146541号公報、WO2015/159541号公報に記載される発光材料であって、遅延蛍光を放射するものを採用することもできる。なお、この段落に記載される上記の公報は、本明細書の一部としてここに引用している。
【0047】
本発明に係る有機発光素子は、たとえば、膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基材上に、真空蒸着法(真空度1×10-5Pa)で、以下の順に積層して製造することができる。しかしながら、使用している化合物の種類やその使用量、層の厚さなど、下記に限定されるわけではないし、また、当該技術分野で採用されている他の方法を用いることも当然にできる。
(1)ITO上にHAT-CNを10nmの厚さに形成。
(2)NPDを30nmの厚さに形成。
(3)TrisPCzを10nmの厚さに形成。
(4)H1を5nmの厚さに形成。
(5)H1、遅延蛍光化合物、本発明に係る化合物を異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さの発光層を形成。(H1、遅延蛍光化合物、本発明に係る化合物の含有量は、順に64.5質量%、35.0質量%、0.5質量%)。
(6)SF3-TRZを10nmの厚さに形成。
(7)LiqとSF3-TRZを異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの層を形成。(LiqとSF3-TRZの含有量はそれぞれ30質量%と70質量%)。
(8)Liqを2nmの厚さに形成。
(9)アルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成。
【0048】
なお、上記で使用した各種化合物の構造は、以下のとおりである。
【化29】
【化30】
【実施例0049】
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
なお、以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に具体的に示す実施例によって、限定的に解釈されるべきではない。
また、有機発光素子の発光特性の評価は、
・ハイパフォーマンス紫外可視近赤外分光光度計(パーキンエルマー社製:Lambda950)、
・蛍光分光光度計(堀場製作所社製:FluoroMax-4)、
・絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製:C11347)、
・ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、
・半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、
・光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、
・光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、
・分光放射計(トプコン社製:SR-3)および
・ストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)
を用いて行うことができる。
【0050】
実施例1(発光性化合物の製造)
式(I)で示される化合物である、化合物1
【化31】
を、以下のように製造した。
【0051】
(1-1)中間体Aの製造
【化32】
窒素気流下、1-ブロモ-3-フルオロ-2-ニトロベンゼン(5.00g,26.5mmol)、炭酸カリウム(7.31g,52.9mmol)と1-フルオロ-9H-カルバゾール(4.65g,25.1mmol)のDMF溶液(100mL)を100℃で17時間撹拌した。この混合物を室温に戻し、水を加えて、析出した固体をろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:ヘキサン=1:1)で精製することで橙色固体の中間体A(8.55g,22.2mmol,収率84%)を得た。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, δ): 8.07 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.87 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.56 (t, J = 8.0 Hz), 7.52-7.50 (m, 1H)7.44 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.33 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.25-7.19 (m, 1H), 7.15-7.08 (m, 2H)
MS (ASAP) : 385.12 (M+H+). Calcd for. C18H10BrFN2O2 : 383.99
【0052】
(1-2)中間体Bの製造
【化33】
窒素気流下、中間体A(8.55g,22.2mmol)、ヒドラジン一水和物(14.2g,444mmol)、塩化鉄(III)六水和物(0.60g,2.22mmol)と活性炭(0.8g)のトルエン/エタノール溶液(100mL)を110℃で17時間撹拌した。この混合物を室温に戻し、セライトろ過後のろ液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:1)で精製し、白色固体の中間体B(7.22g,20.3mmol,収率92%)を得た。
MS (ASAP) : 355.21 (M+H+). Calcd for. C18H12BrFN2 : 354.02
【0053】
(1-3)中間体Cの製造
【化34】
窒素気流下、1,4-ジヨードベンゼン(3.00g,9.09mmol)、中間体B(6.62g,18.6mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(0)(0.416g,0.455mmol)、SPhos(0.560g,1.36mmol)とナトリウムtert-ブトキシド(1.75g,18.2mmol)のトルエン溶液(80mL)を80℃で17時間撹拌した。反応液を室温に戻し、セライトろ過後のろ液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘ
キサン=3:1)で精製することで、緑黄色固体の中間体C(5.63g,7.18mmol,収率79%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.11 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 8.0 Hz, 2H),
7.70-7.55 (m, 3H), 7.45-7.05 (m, 12H), 7.00-6.90 (m, 2H), 6.74 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 5.54 (s, 1H), 4.02 (brs, 2H)
MS (ASAP) : 784.33 (M+H+). Calcd for. C42H26Br2F2N4 : 782.05
【0054】
(1-4)中間体Dの製造
【化35】
窒素気流下、中間体C(4.00g,5.10mmol)と水素化ナトリウム(0.367g,15.3mmol)のDMF溶液(50mL)を100℃で17時間撹拌した。反応液を室温に戻し、水を加えて析出した固体をろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=3:1)で精製することで、黄色固体の中間体D(0.650g,0.873mmol,収率17%)を得た。
MS (ASAP) : 744.40 (M+H+). Calcd for. C42H24Br2N4 : 742.04
【0055】
(1-5)化合物1の製造
【化36】
窒素気流下、化合物D(0.500g,0.672mmol)のトルエン溶液(200mL)に-30℃でn-BuLi(1.6mol/Lヘキサン溶液,1.7mL,2.69mmol)を加えて50℃で30分間攪拌した。反応混合物を-30℃に冷却し、三臭化ホウ素(1.01g,4.03mmol)を加えて室温で30分攪拌した。反応混合物に1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン(0.626g,4.03mmol)を加えて130℃で2時間攪拌した。反応混合物に、2-メシチルマグネシウムブロミド(1.0mol/LTHF溶液,8.1mL,8.06mmol)を加えて室温に戻しながら17時間撹拌した。得られた反応混合物の溶媒を留去し、メタノールを加えて沈殿をろ過した。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:9)で精製し、トルエン/アセトニトリルにて再結晶することで、紫色固体の化合物1(0.100g,0.119mmol,収率18%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 8.83 (s, 2H), 8.11-7.95 (m, 6H), 7.60-7.32 (m, 10H), 7.20-6.90 (m, 8H), 2.35 (s, 6H), 2.10 (s, 12H)
MS (ASAP) : 843.66 (M+H+). Calcd for. C60H44B2N4 : 842.38
【0056】
実施例2(評価)
実施例1で得られた化合物を用い、595nmの光を用いて、その発光特性を評価したところ、以下の結果が得られ、有機発光材料として有効に機能することが確認できた。
蛍光量子収率(PLQY):50%(1.0×10-4 Mのトルエン溶液で測定)
発光ピーク波長:652nm
半値幅(FWHM):70nm
【0057】
以上から、上記式(I)で示される化合物を発光層に含む有機発光素子は、有機発光素子として求められる性能を発揮するものである。
【符号の説明】
【0058】
1:基板
2:陽極
3:正孔注入層
4:正孔輸送層
5:発光層
6:電子輸送層
7:陰極
図1