(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154201
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20231012BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20231012BHJP
F16B 7/20 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
E04B1/58 503L
E04B1/26 E
F16B7/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063364
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
【テーマコード(参考)】
2E125
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AB12
2E125AB13
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG23
2E125AG25
2E125AG36
2E125BB08
2E125BB32
2E125BE07
2E125BE08
2E125BF06
2E125BF08
2E125CA79
2E125CA82
3J039AA03
3J039BB03
3J039JA17
(57)【要約】
【課題】金物を用いずに、抜け止めを適切に行える接合構造を実現する。
【解決手段】所定方向を長手方向とする第1部材の第1接合部と、所定方向を長手方向とする第2部材の第2接合部との接合構造であって、第1接合部は、所定方向と直交するX方向に沿った第1窪み部と、所定方向及びX方向と直交するY方向に沿った第2窪み部と、を備える第1凸部を有し、第2接合部は、第1凸部のY方向に隣接して配置され、第1窪み部と対向する位置に設けられた第3窪み部を備える第2凸部と、第1凸部のX方向に隣接して配置され、第2窪み部と対向する位置に設けられた第4窪み部を備える第3凸部と、を有し、第1窪み部と第3窪み部によって形成される第1孔に配置されて、隣り合う第1凸部と第2凸部との離間を係合により防止する第1係合部材と、第2窪み部と第4窪み部によって形成される第2孔に配置されて、隣り合う第1凸部と第3凸部との離間を係合により防止する第2係合部材と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向を長手方向とする第1部材の第1接合部と、前記所定方向を長手方向とする第2部材の第2接合部との接合構造であって、
前記第1接合部は、前記所定方向と直交するX方向に沿った第1窪み部と、前記所定方向及び前記X方向と直交するY方向に沿った第2窪み部と、を備える第1凸部を有し、
前記第2接合部は、
前記第1凸部の前記Y方向に隣接して配置され、前記第1窪み部と対向する位置に設けられた第3窪み部を備える第2凸部と、
前記第1凸部の前記X方向に隣接して配置され、前記第2窪み部と対向する位置に設けられた第4窪み部を備える第3凸部と、
を有し、
前記第1窪み部と前記第3窪み部によって形成される第1孔に配置されて、隣り合う前記第1凸部と前記第2凸部との離間を係合により防止する第1係合部材と、
前記第2窪み部と前記第4窪み部によって形成される第2孔に配置されて、隣り合う前記第1凸部と前記第3凸部との離間を係合により防止する第2係合部材と、
を備えることを特徴とする接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接合構造であって、
前記所定方向は鉛直方向である、
ことを特徴とする接合構造。
【請求項3】
請求項2に記載の接合構造であって、
前記第1部材は、前記第2部材の下側に配置されており、
前記第1接合部は、中央に第1支圧負担部を有し、
前記第1凸部は、前記第1支圧負担部よりも前記鉛直方向の上方に突出するように、前記第1支圧負担部の周囲に設けられている、
ことを特徴とする接合構造。
【請求項4】
請求項3に記載の接合構造であって、
前記第2接合部は、中央に第2支圧負担部を有し、
前記第2凸部及び前記第3凸部が、前記第1凸部と隣接して配置された際に、前記第2支圧負担部は、前記第1支圧負担部と当接する、
ことを特徴とする接合構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の接合構造であって、
前記第1係合部材及び前記第2係合部材は、それぞれ、各孔に充填された充填材である、
ことを特徴とする接合構造。
【請求項6】
請求項5に記載の接合構造であって、
各孔に挿入された袋部材を有し、
前記充填材は、前記袋部材を介して、各孔に充填される、
ことを特徴とする接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造柱の接合構造として、柱を構成する部材同士の接合部に、GIR(グルード・イン・ロッド)、ラグスクリューボルト、ガセットプレート+ドリフトピンなどの金物を用いて接合した接合構造が知られている。例えば、特許文献1では、部材同士をフィンガージョイントで組み合わせるとともに、接合部分をワークフォルダなどの金物(金具)を用いて固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる接合構造は、金物が存在することにより木材の質感が損なわれるため、意匠上好ましくい。また、金物を用いることによりコストもかかる。フィンガージョイントのみでは、引っ張りや曲げに対して抜けるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、金物を用いずに、抜け止めを適切に行える接合構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、所定方向を長手方向とする第1部材の第1接合部と、前記所定方向を長手方向とする第2部材の第2接合部との接合構造であって、前記第1接合部は、前記所定方向と直交するX方向に沿った第1窪み部と、前記所定方向及び前記X方向と直交するY方向に沿った第2窪み部と、を備える第1凸部を有し、前記第2接合部は、前記第1凸部の前記Y方向に隣接して配置され、前記第1窪み部と対向する位置に設けられた第3窪み部を備える第2凸部と、前記第1凸部の前記X方向に隣接して配置され、前記第2窪み部と対向する位置に設けられた第4窪み部を備える第3凸部と、を有し、前記第1窪み部と前記第3窪み部によって形成される第1孔に配置されて、隣り合う前記第1凸部と前記第2凸部との離間を係合により防止する第1係合部材と、前記第2窪み部と前記第4窪み部によって形成される第2孔に配置されて、隣り合う前記第1凸部と前記第3凸部との離間を係合により防止する第2係合部材と、を備えることを特徴とする接合構造である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金物を用いずに、抜け止めを適切に行える接合構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の接合構造1を示す概略斜視図である。
【
図3】第2部材20を斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】
図4Aは、隣接する凸部によって形成される孔40Xを示す図であり、
図4Bは、孔40Xに木栓30を挿入(配置)した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
所定方向を長手方向とする第1部材の第1接合部と、前記所定方向を長手方向とする第2部材の第2接合部との接合構造であって、前記第1接合部は、前記所定方向と直交するX方向に沿った第1窪み部と、前記所定方向及び前記X方向と直交するY方向に沿った第2窪み部と、を備える第1凸部を有し、前記第2接合部は、前記第1凸部の前記Y方向に隣接して配置され、前記第1窪み部と対向する位置に設けられた第3窪み部を備える第2凸部と、前記第1凸部の前記X方向に隣接して配置され、前記第2窪み部と対向する位置に設けられた第4窪み部を備える第3凸部と、を有し、前記第1窪み部と前記第3窪み部によって形成される第1孔に配置されて、隣り合う前記第1凸部と前記第2凸部との離間を係合により防止する第1係合部材と、前記第2窪み部と前記第4窪み部によって形成される第2孔に配置されて、隣り合う前記第1凸部と前記第3凸部との離間を係合により防止する第2係合部材と、を備えることを特徴とする接合構造。
【0012】
このような接合構造によれば、金物を用いずに、抜け止めを適切に行える接合構造を実現することができる。
【0013】
かかる接合構造であって、前記所定方向は鉛直方向であることが望ましい。
【0014】
このような接合構造によれば、柱を構成する部材同士を確実に接合することができる。
【0015】
かかる接合構造であって、前記第1部材は、前記第2部材の下側に配置されており、前記第1接合部は、中央に第1支圧負担部を有し、前記第1凸部は、前記第1支圧負担部よりも前記鉛直方向の上方に突出するように、前記第1支圧負担部の周囲に設けられていることが望ましい。
【0016】
このような接合構造によれば、第1部材と第2部材の間(隙間)に充填材を充填する場合に充填させやすくなる。
【0017】
かかる接合構造であって、前記第2接合部は、中央に第2支圧負担部を有し、前記第2凸部及び前記第3凸部が、前記第1凸部と隣接して配置された際に、前記第2支圧負担部は、前記第1支圧負担部と当接することが望ましい。
【0018】
このような接合構造によれば、鉛直軸力を確実に伝達することができる。
【0019】
かかる接合構造であって、前記第1係合部材及び前記第2係合部材は、それぞれ、各孔に充填された充填材であってもよい。
【0020】
このような接合構造によれば、例えば、柱のレベル調整などで、孔がずれて形成された場合(円形にならない場合)においても、その形状に応じて孔の内部に充填材を充填(配置)することができる。
【0021】
かかる接合構造であって、各孔に挿入された袋部材を有し、前記充填材は、前記袋部材を介して、各孔に充填されることが望ましい。
【0022】
このような接合構造によれば、充填材をより確実に充填させることができる。
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0024】
===本実施形態===
<柱接合構造について>
図1は、本実施形態の接合構造1を示す概略斜視図である。
図2は、
図1の分解斜視図であり、
図3は、第2部材20を斜め下方から見た斜視図である。
【0025】
なお、本実施形態において、図に示すように、互いに直交する3方向(X方向、Y方向、Z方向)を定義する。Z方向は鉛直方向(上下方向)である。以下の説明において、鉛直方向の上側を「上」とし、鉛直方向の下側を「下」とする。また、X方向及びY方向は、水平方向である。
【0026】
本実施形態の接合構造1は、木造柱を構成する木製の柱部材同士(ここでは第1部材10と第2部材20)を接合する接合構造である。なお、本実施形態の接合構造1を備える木造柱は角柱であり、Z方向(鉛直方向)に沿って立設される。また、第1部材10と第2部材20との接合には木栓30が用いられている。
【0027】
第1部材10は、Z方向(鉛直方向:所定方向に相当)を長手方向とし、水平断面が矩形(ここでは正方形)の角材である。本実施形態の接合構造1において、第1部材10は、第2部材20の下側に設けられている。また、第1部材10は、第1部材10の本体を構成する本体部10aと、第2部材20との接合を行うための接合部10bと、を備えている。第1部材10の上に第2部材20が接合されるため、接合部10bは、第1部材10の上端部(本体部10aよりも上側)に設けられている。なお、接合部10bの詳細については後述する。
【0028】
第2部材20は、第1部材10と同様に、Z方向(鉛直方向)を長手方向とし、水平断面が、第1部材10と同形状(正方形)の角材である。また、第1部材10は、第2部材20の本体を構成する本体部20aと、第1部材10との接合を行うための接合部20bと、を備えている。第2部材20の下に第1部材10が接合されるため、接合部20bは、第2部材20の下端部(本体部20aよりも下側)に設けられている。なお、接合部20bの詳細については後述する。
【0029】
木栓30は、第1部材10と第2部材20との接合部分に形成される孔40X,40Y(後述)に挿入(配置)されて、隣り合う凸部(後述)の離間を係合により防止する部材である。このため、木栓30は、孔40X,40Yに挿入可能な形状に設けられている。具体的には、孔40X,40Yは、断面が円形状の孔であり、木栓30は、これらの孔に適切に篏合されるように円柱形状(断面が円形状)の部材となっている。
【0030】
本実施形態において、孔40X(第1孔に相当)に配置された木栓30を木栓30X(第1係合部材に相当)ともいい、孔40Y(第2孔に相当)に配置された木栓30を木栓30Y(第2係合部材に相当)ともいう。なお、孔40Xは、X方向に沿って形成された孔であり、木栓30Xは、軸方向がX方向となるように挿入(配置)される。また、孔40Yは、Y方向に沿って形成された孔であり、木栓30Yは、軸方向がY方向となるように挿入(配置)される。
【0031】
このように木栓30X(30Y)を、孔40X(40Y)に配置することにより、第1部材10と第2部材20と木栓30とが一体化され、接合構造1が形成される。
【0032】
<接合部10bについて>
接合部10bは、第1部材10の長手方向の端部(ここでは上端部)に設けられている。また、接合部10bは、
図2に示すように、支圧負担部11と、凸部12a,12b,12cを有している。また、各凸部の間は、後述する第2部材20の凸部(凸部22b,22c)が篏合可能な形状(凹部)となっている。
【0033】
支圧負担部11(第1支圧負担部に相当)は、第2部材20(具体的には、後述する支圧負担部21)と当接し、鉛直軸力などの支圧を負担する。支圧負担部11は、第1部材10(接合部10b)の中央に設けられている。また、支圧負担部11は、第1部材10の上端(ここでは凸部12a,12b,12cの上端)よりも下方に設けられている。より具体的には、支圧負担部11は、接合部10bの下端(本体部10aの上端)の位置に形成されている。このため、第1部材10の接合部10bは、中央部分が凹んだ形状である。
【0034】
凸部12a,12b,12cは、支圧負担部11の周りに設けられており、本体部10aから上方に突出するように形成されている。各凸部(凸部12a,12b,12c)は、水平断面が矩形(ここでは正方形)であり、それぞれ、X方向の両端の側面(以下、X方向の側面ともいう)と、Y方向の両端の側面(以下、Y方向の側面ともいう)を有している。
【0035】
凸部12a(第1凸部に相当)は、第1部材10の4つの角部に設けられている。また、凸部12aは、Y方向に沿った窪み部13X(第1窪み部に相当)と、X方向に沿った窪み部13Y(第2窪み部に相当)とを備えている。
【0036】
窪み部13Xは、凸部12aのY方向の側面(柱の内側の側面)に形成されており、窪み部13Yは、凸部12aのX方向の側面(柱の内側の側面)に形成されている。このように、凸部12aには、方向の異なる2つの窪み部(窪み部13X,13Y)が設けられている。なお、窪み部13X,13Yの形状は、内側に窪むように切り欠かれた半円形状である。また、凸部12aにおいて、窪み部13X,13Yは、Z方向の中央に形成されている(後述する凸部12b,12cの窪み部13X,13Yについても同様)。
【0037】
凸部12bは、第1部材10のX方向の両端部においてY方向の中央(Y方向に並ぶ凸部12aの中間位置)に設けられている。また、凸部12bは、X方向に沿った窪み部13Xを備えている。窪み部13Xは、凸部12bのY方向の両側面にそれぞれ形成されている。
【0038】
凸部12cは、第1部材10のY方向の両端部においてX方向の中央(X方向に並ぶ凸部12aの中間位置)に設けられている。また、凸部12cは、Y方向に沿った窪み部13Yを備えている。窪み部13Yは、凸部12cのX方向の両側面にそれぞれ形成されている。
【0039】
<接合部20bについて>
接合部20bは、第2部材20の長手方向の端部(ここでは下端部)に設けられている。また、接合部20bは、
図2及び
図3に示すように、支圧負担部21と、凸部22b,22cを有している。
【0040】
支圧負担部21(第2支圧負担部に相当)は、第2部材20(接合部20b)の中央に設けられており、第1部材10の支圧負担部11と当接することにより、鉛直軸力などを支圧負担部11に伝達する。また、
図3に示すように、支圧負担部21は、本体部20aに対して、下方に突出している(凸部22b,22cと同じ高さの凸状である)。また、支圧負担部21の周囲には、第1部材10の凸部12a,12b,12cの間の空間(凹部)に配置可能な凸部22b,22cが設けられている。これにより、接合部10bと接合部20bは篏合可能な形状となっている(
図2、
図3参照)。そして、接合部10bと接合部20bを篏合させることにより、支圧負担部21は、支圧負担部11と当接する。
【0041】
凸部22b(第2凸部に相当)は、第1部材10の凸部12aと凸部12bとの間の空間(凹部)に対応して設けられている。つまり、凸部22bは、第2部材20のX方向の両側にそれぞれ2つ(合計4つ)設けられている。また、凸部22bは、支圧負担部21の周り(具体的にはX方向の両端部)に形成されている。なお、第2部材20では、支圧負担部21も本体部20aから突出しており、支圧負担部21と凸部22b(及び凸部22c)は、一体に形成されている。凸部22bは、X方向に沿った窪み部23X(第3窪み部に相当)を備えている。窪み部23Xは、凸部22bのY方向の両側面に設けられており、第1部材10の凸部12a及び凸部12bの窪み部13Xと対向する位置に設けられている。
【0042】
凸部22c(第3凸部に相当)は、第1部材10の凸部12aと凸部12cとの間の空間(凹部)に対応して設けられている。つまり、凸部22cは、第2部材20のY方向の両側にそれぞれ2つ設けられている。また、凸部22cは、凸部22bと同様に、支圧負担部21の周り(具体的にはY方向の両端部)に一体に形成されている。凸部22cは、Y方向に沿った窪み部23Y(第4窪み部に相当)を備えている。窪み部23Yは、凸部22cのX方向の両側面に設けられており、第1部材10の凸部12a及び凸部12cの窪み部13Yと対向する位置に設けられている。
【0043】
<接合部10b及び接合部20bの形成方法について>
次に、接合部10b及び接合部20bの形成方法の一例について説明する。
【0044】
まず、接合部10bについて説明する。加工前(接合部10bが形成されていない状態)の第1部材10を用意し、所定位置(窪み部13X,13Yに対応する位置)に、予めドリル等で円形の穴を正確に開けておく。そして、自動加工機などで、凹凸加工を施し、凸部以外のところを切除する。この際、上記のドリル等で開けられた穴を横断するように切断して凸部に半分(半円)残すようにする。これにより半円状の窪み部(窪み部13X,13Y)を側面に備えた凸部12a,12b,12cを形成できる。
【0045】
接合部20bについても同様である。すなわち、加工前(接合部20bが形成されていない状態)の第2部材20を用意し、所定位置(窪み部23X,23Yに対応する位置)に、予めドリル等で円形の穴を正確に開けておく。そして、自動加工機などで、凹凸加工を施し凸部以外のところを切除する。この際、上記のドリル等で開けられた穴を横断するように切断して凸部に半分(半円)残すようにする。これにより半円状の窪み部(窪み部23X,23Y)を側面に備えた凸部22b,22cを形成できる。
【0046】
<第1部材10と第2部材20との接合について>
次に、
図2、
図3、
図4A,4Bを参照しつつ、第1部材10と第2部材20との接合について説明する。なお、
図4Aは、隣接する凸部によって形成される孔40Xを示す図であり、
図4Bは、孔40Xに木栓30Xを挿入(配置)した状態を示す図である。なお、
図4A及び
図4Bでは、孔40Xと木栓30Xについて示しているが、孔40Yと木栓30Yの関係についても同様である。
【0047】
前述したように、第1部材10の接合部10bと、第2部材20の接合部20bは篏合可能な凹凸形状となっている(
図2、
図3参照)。
【0048】
まず、この接合部10bと接合部20bを篏合させ、第1部材10と第2部材20を組み合わせる。具体的には、
図2の状態から、第2部材20を第1部材10の上に移動させて接合部10bと接合部20bを篏合させる。この篏合により、凸部22bは、凸部12aと凸部12bの間の空間(凹部)に挿入され、凸部22cは、凸部12aと凸部12cの間の空間(凹部)に挿入され、支圧負担部21は支圧負担部11と当接する。なお、支圧負担部21と支圧負担部11の当接面の位置(Z方向の位置)は、第1部材10の接合部10bの下端(凸部12a,12b,12cの下端)となる。
【0049】
凸部22bは、凸部12a(及び凸部12b)とY方向に隣接して配置される。この際、
図4Aに示すように、凸部12a(凸部12b)の窪み部13Xと、凸部22bの窪み部23Xとによって、X方向を軸とし断面が円形状の孔40Xが形成される。
【0050】
また、凸部22cは、凸部12a(及び凸部12c)とX方向に隣接して配置される。
図4Aの場合と同様に、凸部12a(凸部12c)の窪み部13Yと、凸部22cの窪み部23Yとによって、Y方向を軸とし断面が円形状の孔40Yが形成される。
【0051】
このようにして形成された、孔40X及び孔40Yにそれぞれ、
図4Bに示すように木栓30(
図4Bでは木栓30X)を配置する。なお、
図2では、簡略化のため、木栓30を手前側しか図示していないが、全ての孔40X,40Yに木栓30を挿入(配置)する。
【0052】
例えば、凸部12aの窪み部13Xと凸部22bの窪み部23Xとにより形成された孔40Xには、木栓30はX方向に沿って挿入される。そして、孔40Xに配置された木栓30(木栓30X)は、隣り合う凸部(この場合、凸部12aと凸部22b)の鉛直方向の離間を係合により防止する。凸部12bの窪み部13Xと凸部22bの窪み部23Xとによって形成された孔40Xと、木栓30(木栓30X)との関係についても同様である。
【0053】
また、凸部12aの窪み部13Yと凸部22cの窪み部23Yとにより形成された孔40Yには、木栓30はY方向に沿って挿入される。そして、孔40Yに配置された木栓30(木栓30Y)は、隣り合う凸部(この場合、凸部12aと凸部22c)の鉛直方向の離間を係合により防止する。凸部12cの窪み部13Yと凸部22cの窪み部23Yとによって形成された孔40Yと、木栓30(木栓30Y)との関係についても同様である。
【0054】
これにより、接合部10bの各凸部と、接合部20bの各凸部との間に形成される孔(孔40X,40Y)が、木栓30で埋められ、第1部材10と第2部材20と木栓30とが一体化される。本実施形態では、金物を一切使用しないで、第1部材10と第2部材20の接合が可能である。よって、意匠性を高めることができる。また、金物を使用しないので、施工が簡易であり、また、コストを低減させることができる。
【0055】
このような接合構造1では、曲げモーメント(または引張力)に対しては、木栓30等の支圧で負担できる。せん断力については、隣接する凸部の側面で負担できる。また、鉛直軸力は、中央の支圧負担部11と支圧負担部21との接触面、又は、その周りの凹凸(凸部先端)の接触面で伝達できる。これにより、Z方向の抜け止めを適切に行えるとともに、軸力などの応力を適切に伝達できる接合構造1を実現できる。
【0056】
なお、本実施形態では、第1部材10の接合部10bと第2部材20の接合部20bの凹凸が直接接触(当接)するようにしていたが、これには限られない。例えば、支圧負担部11と支圧負担部21との間にグラウト材(無収縮モルタルなど)を注入(充填)し、グラウト材を介して応力(鉛直軸力など)を伝達するようにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態の接合構造1では、第1部材10を下側に配置し、第2部材20をその上に配置していたが、これには限られない。例えば、上下逆に配置してもよい。すなわち、第2部材20を接合部20bが上側になるように配置し、その上に、第1部材10を、接合部10bが下側になるようにして接合(接合部20bと接合部10bを接合)してもよい。
【0058】
ただし、その場合、凸状の支圧負担部21が上を向くように配置されることになる。このため、例えば、上記のように支圧負担部11と支圧負担部21との間にグラウト材を設ける場合、グラウト材を充填させることが困難になる。よって、本実施形態のように、中央が凹状となった第1部材10を下側に配置することが好ましい。これによりグラウト材を充填させやすくなり、支圧負担部11と支圧負担部21との間で確実に応力(鉛直軸力)を伝達させることができる。
【0059】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0060】
前述の実施形態では、柱(木造柱)は角柱であったが、これには限られない。例えば円柱であってもよい。
【0061】
また、前述の実施形態では、接合構造1は、木造柱に適用されていたが、これには限られない。例えば、梁を構成する部材の接合に適用してもよい(第1部材10と第2部材20の長手方向が水平方向に沿っていてもよい)。ただし、この場合、梁の下側に設けられる木栓30が抜け落ちるおそれがあるので、抜け落ちないような対策(例えば接着剤で接合するなど)をすることが望ましい。
【0062】
また、前述の実施形態では、木栓30(及び孔40X,40Y)は、断面が円形状であることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、断面が長方形状(隣り合う辺の長さが異なる矩形状)であることとしてもよいし、断面が正方形状であることとしてもよい。
【0063】
また、前述の実施形態では、第1部材10の窪み部13X,13Yは、凸部のZ方向の中央に設けられていたが、これには限られず、Z方向の中央からずれた位置に設けられていてもよい。その場合、第2部材20側の窪み部23X,23Yを、窪み部13X,13Yに対向する位置に設けるようにすればよい。
【0064】
また、前述の実施形態では、第1部材10の辺の中央部に凸部12b,12cが設けられていたが、凸部12bと凸部12cは無くても良い。この場合、第2部材20のX方向に並ぶ2つの凸部22bと、Y方向に並ぶ2つの凸部22cを、それぞれ、連続して1つの凸部にすればよい。この場合においても、凸部12aの窪み部13Xと凸部22bの窪み部23Xにより形成される孔40X(X方向を軸とする孔)と、凸部12aの窪み部13Yと凸部22cの窪み部23Yにより形成される孔40Y(Y方向を軸とする孔)にそれぞれ木栓30を配置することにより、同様の効果が得られる。ただし、本実施形態のように凸部の数を増やす方が、より確実に接合することができる。
【0065】
また、前述の実施形態では、孔40X,40Yに配置する係合部材として木栓30を用いていたが、これには限られない。例えば、以下に示すような変形例を適用しても良い。
図5A及び
図5Bは、変形例の説明図である。
【0066】
前述したように、各凸部の窪み部(窪み部13X,13Y,23X,23Y)は、第1接合部10bと第2接合部20bを篏合させた際に、孔(孔40X,40Y)が円形となるように、正確に形成される。このため、例えば、柱のレベル調整を行なうと、
図5Aに示すように、対向する窪み部(図では窪み部12Xと窪み部23X)の位置がずれて、木栓30を挿入できなくなるおそれがある。
【0067】
そこで、この変形例では、
図5Bに示すように、各孔(図では孔40X)に充填材32を注入している。より具体的には、各孔に袋部材50を挿入し、その袋部材50の内部に充填材32を注入している。換言すると、充填材32は、袋部材50を介して、各孔(ここでは孔40X)に充填されている。なお、袋部材50は、例えば、ビニール袋や風船などの袋状の部材であり、充填材32は、グラウト材(無収縮モルタルなど)である。
【0068】
これにより各孔(孔40X,40Y)が完全な円形でなくても、孔の形状に応じて充填材32を配置できる。なお、袋部材50は設けなくてもよい。ただし、その場合、隣接する凸部の側面の隙間から、充填した充填材32が漏れてしまうおそれがある。よって、袋部材50を設けて、その内部に充填材32を注入することが望ましい。これにより、充電材32を各孔に確実に充填させることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 接合構造
10 第1部材
10a 本体部
10b 接合部(第1接合部)
11 支圧負担部(第1支圧負担部)
12a 凸部(第1凸部)
12b 凸部
12c 凸部
13X 窪み部(第1窪み部)
13Y 窪み部(第2窪み部)
20 第2部材
20a 本体部
20b 接合部(第2接合部)
21 支圧負担部(第2支圧負担部)
22b 凸部(第2凸部)
22c 凸部(第3凸部)
23X 窪み部(第3窪み部)
23Y 窪み部(第4窪み部)
30 木栓
30X 木栓(第1係合部材)
30Y 木栓(第2係合部材)
32 充填材
40X 孔(第1孔)
40Y 孔(第2孔)
50 袋部材