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特開2023-154214電子部品パッケージの製造方法及び水溶性保護フィルム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154214
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】電子部品パッケージの製造方法及び水溶性保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/32 20060101AFI20231012BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231012BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20231012BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20231012BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
H05K3/32 Z
H01L21/78 P
H01L21/78 M
H01L21/78 Q
H01L21/56 R
H01L21/52 C
H05K3/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063388
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】高本 尚英
【テーマコード(参考)】
5E319
5F047
5F061
5F063
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AC02
5E319CD11
5E319GG15
5F047AA17
5F047BA34
5F047BA35
5F047BB19
5F061AA01
5F061BA04
5F063AA11
5F063BA18
5F063BA48
5F063CA04
5F063CC33
5F063DF19
5F063DF20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】配線回路基板上における電子部品の搭載位置のずれを抑制することと、配線回路基板の破損を抑制することとを両立できる、電子部品パッケージの製造方法を提供する。
【解決手段】配線回路基板20aと配線回路基板に実装された電子部品(例えば半導体チップ30)とを含む電子部品パッケージ(例えば半導体パッケージ50)の製造方法であって、配線回路基板の一表面に水溶性保護フィルム10を貼合する貼合工程を実施し、貼合工程後に、配線回路基板の他表面に少なくとも1つの電子部品の搭載と封止樹脂ERによる樹脂封止とを行う実装工程を実施し、実装工程後に、配線回路基板の一表面側から水溶性保護フィルムを除去する除去工程を実施する。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線回路基板と該配線回路基板に実装された電子部品とを含む電子部品パッケージの製造方法であって、
前記配線回路基板の一表面に水溶性保護フィルムを貼合する貼合工程を実施し、
前記貼合工程後に、前記配線回路基板の他表面に少なくとも1つの電子部品の搭載と樹脂封止とを行う実装工程を実施し、
前記実装工程後に、前記配線回路基板の一表面側から前記水溶性保護フィルムを除去する除去工程を実施する
電子部品パッケージの製造方法。
【請求項2】
複数の配線回路基板が連接されている連接配線回路基板に前記貼合工程を実施し、
前記貼合工程後に、前記複数の配線回路基板のそれぞれに前記実装工程を実施して、前記水溶性保護フィルムが貼合された状態で複数の電子部品パッケージが連接している電子部品パッケージ連接体を作製し、
前記水溶性保護フィルムが貼合された状態で前記電子部品パッケージ連接体を前記電子部品パッケージに分割する前または分割した後に、前記除去工程を実施する
請求項1に記載の電子部品パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記配線回路基板は、コアレス基板である
請求項1または2に記載の電子部品パッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電子部品パッケージの製造に用いられる
水溶性保護フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の電子部品パッケージの製造に用いられる
水溶性保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品パッケージの製造方法、及び、該電子部品パッケージの製造方法に用いる水溶性保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、以下のようにして、配線回路基板と該配線回路基板に実装された電子部品(例えば、半導体チップ)を含む電子部品パッケージ(例えば、半導体パッケージ)を製造することが知られている(例えば、下記特許文献1)。

(1)複数の配線回路基板が連接されている連接配線回路基板において、前記複数の配線回路基板のそれぞれの一表面上に電子部品を搭載し、これらの電子部品を一括して樹脂封止して実装することにより、電子部品パッケージ連接体を得る。
(2)前記電子部品パッケージ連接体を前記配線回路基板ごと分割することにより、複数の電子部品パッケージを得る。
【0003】
ところで、近年、高密度化の観点から、半導体パッケージなどの電子部品パッケージは低背化されており、この低背化に伴って、前記連接配線回路基板も薄型化されている。
このように、前記連接配線回路基板が薄型化されると、前記連接配線回路基板は、撓み易くなってハンドリングがし難くなり(取り扱い難くなり)、また、機械的強度に劣るものとなる。
そのため、上記の電子部品パッケージの製造方法は、通常、前記連接配線回路基板を補強すべく、前記連接配線回路基板の他表面(電子部品を実装する側と反対側の面)に、支持シートが取り付けられた状態で実施される。
そして、前記支持シートは、通常、基材上に接着剤層が積層されて構成されており、前記接着剤層を介して前記連接配線回路基板の他表面に取り付けられる。
上記のように、前記電子部品パッケージ連結体を前記配線回路基板ごとに分割すると、前記支持シートは、電子部品パッケージの大きさに相当するサイズ(パッケージ相当サイズ)に分割された状態で、複数の電子部品パッケージの配線回路基板上に取り付けられている。
そのため、複数の電子部品パッケージを得るに際しては、各電子部品パッケージの配線回路基板から、このパッケージ相当サイズの支持シートが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-170754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各電子部品パッケージからパッケージ相当サイズの支持シートの除去を容易に行う観点から、前記支持シートの前記接着剤層の接着力を小さくすることが考えられる。
しかしながら、前記支持シートの前記接着剤層の接着力を小さくすると、前記複数の配線回路基板のそれぞれの一表面上に前記電子部品を搭載し、これらの電子部品を一括して樹脂封止して実装するときに、前記複数の配線回路基板のそれぞれの表面において前記電子部品の搭載位置がずれることがある。
また、前記支持シートの前記接着剤層の接着力を小さくすると、前記実装時(前記電子部品の搭載及び前記電子部品の樹脂封止時)に、前記連接配線回路基板の前記他表面から前記支持シートが剥離し易くなるので、取り扱い性(ハンドリング性)が低下することもある。
【0006】
また、前記配線回路基板上における前記電子部品の搭載位置のずれを抑制する観点から、前記支持シートの前記接着剤層の接着力を大きくすることが考えられる。
しかしながら、前記支持シートの前記接着剤層の接着力を大きくすると、各電子部品パッケージからパッケージ相当サイズの支持シートを除去し難くなることから、各電子部品パッケージからパッケージ相当サイズの支持シートを除去するときに、前記配線回路基板にワレなどの破損が生じることがある。
【0007】
このように、支持シートを用いて電子部品パッケージを製造する方法においては、前記配線回路基板上において電子部品の搭載位置がずれることと、前記配線回路基板にワレなどの破損が生じることとは、トレードオフの関係にあるものの、このトレードオフの関係を解消することについて、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0008】
そこで、本発明は、配線回路基板上における電子部品の搭載位置のずれを抑制することと、配線回路基板の破損を抑制することとを両立できる、電子部品パッケージの製造方法、及び、前記電子部品パッケージの製造方法に用いられる水溶性保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討したところ、支持シートを用いた電子部品パッケージの製造方法において、前記支持シートとして、水溶性保護フィルムを用いることにより、配線回路基板上における電子部品の搭載位置のずれを抑制することと、配線回路基板の破損を抑制することとを両立できることを見出した。
そして、本発明を想到するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る電子部品パッケージの製造方法は、
配線回路基板と該配線回路基板に実装された電子部品とを含む電子部品パッケージの製造方法であって、
前記配線回路基板の一表面に水溶性保護フィルムを貼合する貼合工程を実施し、
前記貼合工程後に、前記配線回路基板の他表面に少なくとも1つの電子部品の搭載と樹脂封止とを行う実装工程を実施し、
前記実装工程後に、前記配線回路基板の一表面側から前記水溶性保護フィルムを除去する除去工程を実施する。
【0011】
斯かる構成によれば、十分な粘着性を有する水溶性保護フィルムを前記配線回路基板の一表面に貼合する貼合工程を実施した上で、前記配線回路基板の他表面に少なくとも1つの電子部品の搭載と樹脂封止とを行う実装工程を実施するので、前記実装工程の樹脂封止の際に前記配線回路基板上における前記電子部品の位置ずれを抑制することができる。
また、水溶性保護フィルムは十分な粘着性を有するものの、水で容易に溶解する性質を有しているので、水で洗浄するなどして前記除去工程を実施することにより、前記配線回路基板の一表面側から比較的容易に除去することができる。
その結果、前記配線回路基板の一表面側から支持シートたる前記水溶性保護フィルムを除去するに際して、前記配線回路基板が破損することを抑制することができる。
上記により、本発明に係る電子部品パッケージの製造方法によれば、配線回路基板上における電子部品の搭載位置のずれを抑制することと、配線回路基板の破損を抑制することとを両立できる。
【0012】
前記電子部品パッケージの製造方法においては、
複数の配線回路基板が連接されている連接配線回路基板に前記貼合工程を実施し、
前記貼合工程後に、前記複数の配線回路基板のそれぞれに前記実装工程を実施して、前記水溶性保護フィルムが貼合された状態で複数の電子部品パッケージが連接している電子部品パッケージ連接体を作製し、
前記水溶性保護フィルムが貼合された状態で前記電子部品パッケージ連接体を前記電子部品パッケージに分割する前または分割した後に、前記除去工程を実施する、ことが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、複数の配線回路基板が連接されている連接配線回路基板を用いた電子部品パッケージの製造方法においても、配線回路基板上における電子部品の搭載位置のずれを抑制することと、配線回路基板の破損を抑制することとを両立できる。
【0014】
前記電子部品パッケージの製造方法においては、
前記配線基板は、コアレス基板である、ことが好ましい。
【0015】
コアレス基板は、配線層(ビルドアップ層)のみで構成された配線回路基板であることから、特に厚さが薄く、厚さ方向に撓み易い(変形し易い)ものであるものの、前記水溶性保護フィルムを貼合することにより、厚さ方向の変形を抑制することができる。
これにより、厚さ方向の変形が原因となって、配線回路基板上における電子部品の搭載位置がずれることを十分に抑制できる。
【0016】
本発明に係る水溶性保護フィルムは、
上記の電子部品パッケージの製造に用いられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、配線回路基板上における電子部品の搭載位置のずれを抑制することと、配線回路基板の破損を抑制することとを両立できる、電子部品パッケージの製造方法、及び、前記電子部品パッケージの製造方法に用いられる水溶性保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る水溶性保護フィルムの構成を示す模式断面図。
図2A】半導体パッケージの製造方法における貼合工程の様子の一例を模式的に示す断面図。
図2B】半導体パッケージの製造方法における実装工程のうちの半導体チップの搭載の様子の一例を模式的に示す断面図。
図2C】半導体パッケージの製造方法における実装工程のうちの樹脂封止の様子の一例を模式的に示す断面図。
図2D】水溶性保護フィルムの保護層が貼合された状態で半導体パッケージ連接体をステージ上に載置した様子の一例を模式的に示す断面図。
図2E】半導体パッケージの製造方法における除去工程の様子の一例を模式的に示す断面図。
図2F】除去工程後に半導体パッケージ連接体を個々の半導体パッケージに分割する様子の一例を模式的に示す断面図。
図2G】半導体パッケージの製造方法における実装工程のうちの樹脂封止の様子の他の例を模式的に示す断面図。
図2H】半導体パッケージの製造方法における除去工程の様子の他の例を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
以下では、まず、本発明に係る電子部品パッケージの製造方法に用いられる水溶性保護フィルムについて説明した上で、前記水溶性保護フィルムを用いた電子部品パッケージの製造方法、すなわち、本発明に係る電子部品パッケージの製造方法について説明する。
【0020】
[水溶性保護フィルム]
本実施形態に係る水溶性保護フィルム10は、配線回路基板と該配線回路基板に実装された電子部品とを含む電子部品パッケージの製造方法に用いられるものであり、電子部品パッケージの製造時に前記配線回路基板を保護するために用いられる。
なお、保護とは、前記配線回路基板が厚さ方向に撓むことを抑制するために前記配線回路基板を支持することと、前記配線回路基板の表面に異物が付着することを抑制することとの両方を含む概念である。
水溶性保護フィルム10は、前記配線回路基板の一表面に貼合される。
前記電子部品パッケージとしては、例えば、半導体パッケージが挙げられる。
【0021】
本実施形態に係る水溶性保護フィルム10は、図1に示したように、保護層10aを備えるとともに、保護層10aの一表面に第1はく離ライナー10bを備え、保護層10aの他表面(前記一表面と対向する表面)に第2はく離ライナー10cを備える。
すなわち、本実施形態に係る水溶性保護フィルム10は、一対のはく離ライナー(第1はく離ライナー10b及び第2はく離ライナー10c)によって、保護層10aが両面側から挟持されて構成されている。
本実施形態に係る水溶性保護フィルム10では、保護層10aが、前記電子部品パッケージの製造方法において、前記配線回路基板の一表面に貼合される。
より具体的には、前記電子部品パッケージの製造方法において、保護層10aが、前記配線回路基板における前記電子部品を実装しない面に貼合される。
【0022】
本実施形態に係る水溶性保護フィルム10においては、保護層10aは、水溶性高分子化合物を含む。
水溶性高分子を含むことにより、保護層10aは、配線回路基板などの被着対象物に十分な接着強度で接着させることができる。
その理由について、発明者らは以下のように推察している。
前記水溶性高分子としては、後述するように、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、水溶性ポリエステル(PES)や、ポリエチレンオキシド(PEO)などが挙げられるが、これらは、構造中に水酸基(PVA、PES、PEO)やピロリドン基(PVP)などの水素結合に寄与する官能基を含んでいる。
ここで、前記配線回路基板は、通常、後述するように、一組の配線層(ビルドアップ層)と、該一組の配線層の間に配されてこれらの配線層をそれぞれ支持する支持体(コア層)とを有するいわゆるビルドアップ基板として構成されたり、前記支持体を介さずに一組の配線層を直に積層させたいわゆるコアレス基板として構成されたりしている。
すなわち、前記配線回路基板の両面は、通常、前記配線層によって構成されている。
そして、前記配線層は、通常、後述するように、ガラスクロスなどにエポキシ樹脂などを含む樹脂組成物を含浸させて得られるプリプレグの少なくとも一方面に配線部を形成することにより構成されている。
ここで、前記エポキシ樹脂は、構造中に、水酸基やエーテル基などの水素結合に寄与する官能基を有していることから、水溶性保護フィルム10の保護層10aを前記配線回路基板の一表面(前記配線回路基板における前記電子部品を実装しない面)に貼合すると、前記配線回路基板の前記配線層に含まれるエポキシ樹脂と保護層10aに含まれる水溶性高分子との間で水素結合が形成されるようになると考えられる。
上記により、保護層10aは、配線回路基板などの被着対象物に十分な接着強度で接着させることができると考えられる。
また、水溶性高分子を含むことにより、保護層10aは、十分な粘着性を示すものとなる。
なお、前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコール(PVA)の場合には、該ポリビニルアルコール(PVA)のけん化度や平均重合度を調整することにより、粘着性を調整することができる。
【0023】
前記水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、水溶性ポリエステル(PES)、ポリエチレンオキシド(PEO)などが挙げられる。
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどを単独で用いてもよいし、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンなどとを組み合わせて用いてもよい。
前記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、水溶性ポリエステル、及び、ポリエチレンオキシドからなる群から選択させる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0024】
前記ポリビニルアルコールは、けん化度が50以上95以下であることが好ましく、60以上90以下であることがより好ましい。
けん化度が上記数値範囲内であることにより、前記ポリビニルアルコールは、十分な水溶性を示すことができることに加えて、前記ポリビニルアルコールを後述する保護層形成組成物に含ませた場合においては、はく離ライナー上への前記保護層形成組成物の塗布を作業性良く実施することができる。
また、けん化度が60以上90以下であることにより、前記ポリビニルアルコールのガラス転移温度Tgを高くすることができるので、このようなポリビニルアルコールを用いて形成された保護層10aは耐熱性にも優れるものとなる。
ここで、配線回路基板に搭載された電子部品を樹脂封止するための封止樹脂としては、通常、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。
そして、樹脂封止の際には、このような熱硬化性樹脂たる封止樹脂を十分に硬化させる観点から、通常、175℃程度の温度が加えられる。
そのため、上記のように、ポリビニルアルコールのけん化度が60以上90以下であることにより、樹脂封止の際に上記のような温度が加えられた場合であっても、保護層10aに優れた耐熱性能を発揮させることができる。
また、前記ポリビニルアルコールは、けん化度を60以上にする観点から、オキシアルキレン基を含んでいないことが好ましい。
【0025】
前記ポリビニルアルコールのけん化度は、プロトン磁気共鳴分光法(H-NMR測定法)によって測定することができる。
なお、測定試料中に添加剤が含まれており、該添加剤由来のピークがけん化度の算出に用いるピークに重なる場合には、前記測定試料にメタノール抽出等を施して前記添加剤を分離した後に、前記ポリビニルアルコールのけん化度を測定する。
前記ポリビニルアルコールのけん化度は、以下のような条件で測定することができる。

<測定条件>
・分析装置 FT-NMR : Bruker Biospin , AVANCE III-400
・観測周波数 400MHz(1H)
・測定溶媒 重水、または、重ジメチルスルホキシド(重DMSO)
・測定温度 80℃
・化学シフト基準 外部標準TSP-d4(0.00ppm)(重水測定時)
測定溶媒(2.50ppm)(重DMSO測定時)

なお、前記ポリビニルアルコールのけん化度は、ビニルアルコールユニット(VOH)のメチレン基由来のピーク(重水;2.0~1.0ppm、重DMSO;1.9~1.0ppm)と、酢酸ビニルユニット(VAc)のアセチル基由来のピーク(重水;2.1ppm付近、重DMSO;2.0ppm付近)とを用いて、以下の式に基づいて算出する。
以下の式において、[VOH(-CH2)-]は、ビニルアルコールユニット中の-CH2-由来のピークの強度を意味し、[VAc(CH3CO-)]は、酢酸ビニルユニット中のCH3CO-由来のピーク強度を意味する。
【0026】
【数1】
【0027】
前記ポリビニルアルコールは、平均重合度が100以上1000以下であることが好ましく、100以上800以下であることがより好ましい。
平均重合度が上記数値範囲内であることにより、前記ポリビニルアルコールは、十分な水溶性を示すことができることに加えて、前記ポリビニルアルコールを後述する保護層形成組成物に含ませた場合においては、はく離ライナー上への前記保護層形成組成物の塗布を作業性良く実施することができる。
前記ポリビニルアルコールの平均重合度は、水系GPCによって測定することができる。
前記ポリビニルアルコールの平均重合度は、以下のような条件で測定することができる。

<測定条件>
・分析装置 Agilent, 1260Infinity
・カラム TSKgel G6000PWXL(東ソー社製)及びTSKgel G3000PWXL(東ソー社製)
上記2本のカラムは直列接続する。
・カラム温度 40℃
・溶離液 0.2Mの硝酸ナトリウム水溶液
・注入量 100μL
・検出器 示差屈折計(RI)
・標準試料 PEG標準試料及びPVA標準試料

具体的な測定は、以下のようにして行う。

(1)PEG標準試料を用いたGPC測定によって、被測定試料(PVA)及びPVA標準試料の質量平均分子量Mwをそれぞれ算出する。なお、PVA標準試料は、平均重合度が既知のものである。
(2)PVA標準試料の平均重合度、及び、算出したPVA標準試料の質量平均分子量Mwを用いて検量線を作成する。
(3)作成した検量線を用いて、被測定試料(PVA)の質量平均分子量Mwから被測定試料(PVA)の平均重合度を求める。
【0028】
また、前記水溶性高分子として、前記ポリビニルアルコールを用いる場合には、けん化度が異なる複数のポリビニルアルコールを組み合わせて用いてもよいし、平均重合度が異なる複数のポリビニルアルコールを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
前記水溶性ポリエステルは、多価カルボン酸の残基とポリオールの残基とを有する。
前記水溶性ポリエステルは、例えば、多価カルボン酸成分とポリオール成分とを含むモノマー成分の重合生成物である。
なお、前記水溶性ポリエステルが水溶性を有することは、技術常識に基づいて判断することができる。
【0030】
前記水溶性ポリエステルは、以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(1)前記水溶性ポリエステルで形成された厚み20μmの薄膜の表面全体に常温(23±2℃)の水を0.005MPaの噴霧圧で20分間噴霧すると、この薄膜が全て水に溶解する。
(2)前記水溶性ポリエステルで形成された厚み20μmの薄膜の表面全体に50℃の水を0.005MPaの噴霧圧で10分間噴霧すると、この薄膜が全て水に溶解する。
(3)前記水溶性ポリエステルと常温の水とを、水溶性ポリエステル:常温の水=1:5の質量比で混合して混合液を得て、該混合液に超音波を20分間照射すると、前記水溶性ポリエステルが水に全て溶解する。
(4)前記水溶性ポリエステルと50℃の水とを、水溶性ポリエステル:50℃の水=1:5の質量比で混合して混合液を得て、該混合液に超音波を10分間照射すると、前記水溶性ポリエステルが水に全て溶解する。
【0031】
前記水溶性ポリエステルは、質量平均分子量Mwが40,000(4万)以下であることが好ましい。
また、前記水溶性ポリエステルは、質量平均分子量Mwが15,000(1.5万)以上であることが好ましい。
保護層10aが上記数値範囲内の質量平均分子量Mwを有する水溶性ポリエステルを含むことにより、保護層10aは、30℃以下といった比較的低温の水と接した場合には、配線回路基板や連接配線回路基板の表面から除去され難いものの(低温での水耐久性が高いものの)、40℃以上といった比較的高温の水(温水)と接した場合には、配線回路基板や連接配線回路基板の表面から除去され易いものとなる(高温での水耐久性が低くなる)。
そのため、例えば、保護層10aが、連接配線回路基板の表面に取り付けられ、連接配線回路基板が30℃以下という比較的低温の水で洗浄されながら複数の配線回路基板へとブレードダイシングされるような場合には、保護層10aは連接配線回路基板の表面や配線回路基板の表面に十分固定された状態となっていてこれらの表面を十分に保護することができる。
一方で、ブレードダイシングによって得られる複数の配線回路基板を、40℃以上の温水を用いて洗浄することにより、前記複数の配線回路基板のそれぞれから、個片化された保護層10aを容易に除去することができる。
【0032】
前記ポリエチレンオキシドは、質量平均分子量Mwが1,000,000(100万)以下であることが好ましい。
また、前記ポリエチレンオキシドは、質量平均分子量Mwが20,000(2万)以上であることが好ましい。
保護層10aを形成するための前記保護層形成組成物が、上記数値範囲内の質量平均分子量Mwを有するポリエチレンオキシドを含むことにより、前記保護層形成組成物を好適な粘性を有するものとすることができる。
これにより、前記保護層形成組成物を用いて保護層10aを形成するに際して、保護層10aを形成し易くなる(成膜性が高くなる)。
なお、前記保護層形成組成物の質量平均分子量が1,000,000を超える場合には、前記保護層形成組成物の粘度が比較的高くなるため、保護層10aの形成時に前記保護層形成組成物を塗り広げにくくなることが多く、前記保護層形成組成物の質量平均分子量Mwが20,000を下回る場合には、前記保護層形成組成物の粘度が比較的低くなるため、保護層10aの形成時に保護層10aを所望の厚さとすることが難しくなることが多い。すなわち、成膜性が低くなることが多い。
また、保護層10aが上記数値範囲内の質量平均分子量Mwを有するポリエチレンオキシドを含んでいることにより、保護層10aは、水で洗浄することにより、配線回路基板や連接配線回路基板の表面から比較的容易に除去できるものとなる。
【0033】
前記水溶性ポリエステル及び前記ポリエチレンオキシドの質量平均分子量Mwは、前記ポリビニルアルコールの平均重合度で説明したのと同様にして、GPCによって測定することができる。
ただし、溶離液は、測定対象の組成に応じて、0.2Mの硝酸ナトリウム水溶液またはDMF(ジメチルホルムアミド)を適宜選択する。
具体的には、測定対象を溶解させることができるものを前記溶離液として適宜選択する。
【0034】
なお、図1に示した例では、水溶性保護フィルム10は、一対の剥離ライナー(第1はく離ライナー10b及び第2はく離ライナー10c)によって、保護層10aが両面側から挟持されて構成されているが、水溶性保護フィルム10の構成はこれに限られるものではない。
水溶性保護フィルム10は、保護層10aのみで構成されたものであってもよいし、保護層10aの一表面のみに、第1はく離ライナー10bまたは第2はく離ライナー10cのいずれか一方を備えるものであってもよい。
要すれば、水溶性保護フィルム10は、少なくとも保護層10aを含んでいればよい。
【0035】
水溶性保護フィルム10は、例えば、アプリケータなどを用いて、前記水溶性高分子を含む保護層形成組成物を第1はく離ライナー10b上に所定厚さ(例えば、10μm)で塗布し、所定温度で所定時間(例えば、110℃で2分間)乾燥させることにより、第1はく離ライナー10b上に保護層10aを形成した後、該保護層10aにおいて、第1はく離ライナー10bが取り付けられている面の反対面に第2はく離ライナー10cを貼り合せることにより作製することができる。
【0036】
本実施形態に係る水溶性保護フィルム10の保護層10aを得るに際しては、前記保護層形成組成物として、水に前記水溶性高分子を分散させたもの(以下、高分子分散組成物という)を用いることが好ましい。
高分子分散組成物においては、水100質量部に対して、前記水溶性高分子は、5質量部以上80質量部以下含まれていることが好ましく、10質量部以上70質量部以下含まれていることがより好ましく、15質量部以上60質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
また、前記高分子分散組成物では、水に水溶性高分子が溶解した状態となっていることが好ましい。
なお、前記高分子分散組成物では、前記水溶性高分子は、20℃~90℃の温度で加熱されることにより水に溶解した状態とすることができる。
さらに、前記高分子分散組成物は、25℃における粘度が0.03Pa・s以上であることが好ましく、0.05Pa・s以上であることがより好ましく、0.1Pa・s以上であることがさらに好ましい。
25℃における粘度が上記した下限値以上であることにより、前記高分子分散組成物をはく離ライナー上に塗布して該はく離ライナー上に保護層10aを形成したときに、保護層10aの厚みが変動し易くなることを比較的抑制することができる。
また、前記高分子分散組成物は、25℃における粘度が15Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以下であることがより好ましく、5Pa・s以下であることがさらに好ましい。
25℃における粘度が上記した上限値以下であることにより、前記高分子分散組成物をはく離ライナー上に塗布するときの塗布性を向上させることができる。
なお、25℃における前記高分子分散組成物の粘度は、測定装置として、英弘精機社製のデジタル粘度計(製品名「DV-I Prime」)を用いた上で、LV-3スピンドルを用いて、回転数50rpmという条件を採用することにより測定することができる。
【0037】
本実施形態に係る水溶性保護フィルム10においては、ベアウェハに対する保護層10aの密着力が0.2N/100mm以上であることが好ましい。
被着対象物が配線回路基板や複数の配線回路基板が連接された連接配線回路基板の場合であっても、これらの被着対象物に対して、保護層10aを十分に密着させることができる。
これにより、前記連接配線回路基板を構成する前記複数の配線回路基板のそれぞれの一表面上に半導体チップなどの電子部品を搭載し、これらの電子部品を一括して樹脂封止して実装するときに、前記複数の配線回路基板のそれぞれの表面において前記電子部品の搭載位置がずれることを抑制することができる。
また、前記実装時(前記電子部品の搭載及び前記電子部品の樹脂封止時)に、前記連接配線回路基板の他表面(前記電子部品と搭載した面と反対側の面)から保護層10aが剥離し難くなるので、取り扱い性(ハンドリング性)が低下することを抑制できる。
【0038】
ベアウェハに対する保護層10aの密着力は、以下のようにして測定することができる。以下では、図1に示したように構成された水溶性保護フィルム10を例にして、測定方法を説明する。

(1)保護層10aから一方のはく離ライナー(第1はく離ライナー10b)をはく離して、保護層10aの一方面を露出させ、該露出面(第1露出面)に裏打ちテープを貼り合せて、第1試験体を得る。第1露出面への裏打ちテープの貼り合せは、ハンドローラを用いて温度25℃にて行う。
(2)前記第1試験体を100mm幅にカットした後、保護層10aの他方のはく離ライナー(第2はく離ライナー10c)をはく離して、保護層10aの他方面を露出させ、該露出面(第2露出面)をベアウェハに貼り合せて、第2試験体(測定用サンプル)を得る。前記ベアウェハへの第2露出面の貼り合せは、2kg標準ローラ(手動接着試験プレスホイール接着テープ接着試験機)を用いて、温度90℃、10mm/秒の条件にて行う。なお、貼り合せ後には、20分以上の自然放冷(冷却)を行う。
(3)温度23℃の雰囲気下において、前記測定用サンプルについて、はく離角度を180°とし、はく離速度を300mm/minとする条件にて、はく離力を測定する。そして、測定されたはく離力を密着力とする。測定装置としては、例えば、オートグラフ(SHIMADZU社製)を使用することができる。
【0039】
本実施形態に係る水溶性保護フィルム10においては、保護層10aは、表面自由エネルギーが25mJ/m以上85mJ/m以下であることが好ましく、35mJ/m以上75mJ/m以下であることがより好ましい。
保護層10aでは、第1はく離ライナー10bと当接する面、及び、第2はく離ライナー10cと当接する面の両面について、表面自由エネルギーが上記数値範囲内であることが好ましい。
保護層10aにおいて、両面側の表面自由エネルギーが上記数値範囲内であることにより、第1はく離ライナー10b及び第2はく離ライナー10cとの密着力が制御し易くなる。
また、少なくとも、配線回路基板に貼合される側の面(例えば、第1はく離ライナー10bと当接する面)の表面自由エネルギーが上記数値範囲内であることにより、配線回路基板への密着性を比較的高くすることができる。これにより、後述する電子部品パッケージの製造方法において、配線回路基板上における電子部品の搭載位置のずれを抑制することができる。
【0040】
表面自由エネルギーは、以下のようにして測定することができる。

まず、温度20℃、相対湿度65%RHの条件下において、保護層10aの表面に接触させた水滴(HO)の接触角およびヨウ化メチレン(CH)の液滴の接触角を、接触角計を用いてそれぞれ測定する。
次に、水滴の接触角θwの測定値およびヨウ化メチレンの液滴の接触角θiの測定値から、以下のようにして、表面自由エネルギーを算出する。
詳しくは、Journal of Applied Polymer Science,vol.13,p1741-1747(1969)に記載のOwensらの方法にしたがって、γs(表面自由エネルギーの分散成分)およびγs(表面自由エネルギーの極性成分)を求める。
そして、γsおよびγsを加算して得られる値γs(=γs+γs)を、保護層10aの表面自由エネルギーとする。
γs(分散成分)およびγs(極性成分)それぞれの値は、下記式(1)及び(2)の二元連立方程式の解として得られる。
【0041】
【数2】
【0042】
なお、式(1)及び(2)において、γwは水の表面自由エネルギー、γwは水の表面自由エネルギーの分散成分、γwは水の表面自由エネルギーの極性成分、γiはヨウ化メチレンの表面自由エネルギー、γiはヨウ化メチレンの表面自由エネルギーの分散成分、γiはヨウ化メチレンの表面自由エネルギーの極性成分であり、下記の通り既知の値である。

γw=72.8[mJ/m
γw=21.8[mJ/m
γw=51.0[mJ/m
γi=50.8[mJ/m
γi=48.5[mJ/m
γi=2.3[mJ/m
【0043】
具体的には、保護層10aにおいて、一方の面(配線回路基板に貼合される側の面)の表面自由エネルギーを測定する。
水滴及びヨウ化メチレンの液滴の接触角をそれぞれ測定し、5回の測定値の平均値を採用する。
なお、接触角の測定は、1mLの液を前記一方の面上に垂らして5秒以内の接触角を測定することにより行う。
接触角の各測定値から分散成分と極性成分とを算出し、それらを加算することによって表面自由エネルギーを求める。
なお、保護層10aにおいて、他方の面(配線回路基板に貼合される側と反対側の面)の表面自由エネルギーも、上記と同様にして求めることができる。
【0044】
保護層10aの厚さは、2μm以上70μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。
保護層10aの厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5点の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0045】
第1はく離ライナー10bとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等などの樹脂を用いて作製された基材シートに、離型処理を施したものが挙げられる。
離型処理としては、シリコーン離型処理などが挙げられる。
このようなはく離ライナーとしては、例えば、三菱ケミカル社製の製品名MRA50が挙げられる。
また、第2はく離ライナー10cも、第1はく離ライナー10bと同様のものを用いることができる。
【0046】
第1はく離ライナー10b及び第2はく離ライナー10cの厚さは、15μm以上75μm以下であることが好ましく、20μm以上60μm以下であることがより好ましい。
第1はく離ライナー10bの厚さ及び第2はく離ライナー10cの厚さは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
第1はく離ライナー10b及び第2はく離ライナー10cの厚さは、保護層10aの厚さと同様にして求めることができる。
【0047】
[電子部品パッケージの製造方法]
本実施形態に係る水溶性保護フィルム10は、電子部品パッケージを製造するための補助用具として使用される。
以下、本実施形態に係る水溶性保護フィルム10を用いて電子部品パッケージを製造する方法、すなわち、本実施形態に係る電子部品パッケージの製造方法について説明する。
【0048】
本実施形態に係る電子部品パッケージの製造方法は、
配線回路基板と該配線回路基板に実装された電子部品とを含む電子部品パッケージの製造方法であって、
前記配線回路基板の一表面に水溶性保護フィルムを貼合する貼合工程を実施し、
前記貼合工程後に、前記配線回路基板の他表面に少なくとも1つの電子部品の搭載と樹脂封止とを行う実装工程を実施し、
前記実装工程後に、前記配線回路基板の一表面側から前記水溶性保護フィルムを除去する除去工程を実施する。
【0049】
また、複数の配線回路基板が連接されている連接配線回路基板を用いた、前記電子部品パッケージの製造方法では、
複数の配線回路基板が連接されている連接配線回路基板に前記貼合工程を実施し、
前記貼合工程後に、前記複数の配線回路基板のそれぞれに前記実装工程を実施して、前記水溶性保護フィルムに貼合された状態で複数の電子部品パッケージが連接している電子部品パッケージ連接体を作製し、
前記水溶性保護フィルムが貼合された状態で前記電子部品パッケージ連接体を前記電子部品パッケージに分割する前または分割した後に、前記除去工程を実施する。
【0050】
以下、図2A~2Hを参照しながら、複数の配線回路基板20aが連接されている連接配線回路基板20を用いた電子部品パッケージの製造方法を具体例に挙げて説明する。
なお、配線回路基板20aとは、連接配線回路基板20のうち、電子部品が実装されて一つの電子部品パッケージを構成する基板のことである。
また、図2A~2Eにおいて、連接配線回路基板20において破線で示されている部分は、隣り合う配線回路基板20aどうしの境界部分を示したものであり、連接配線回路基板20が切り離されていることを示したものではない。
以下では、電子部品パッケージが半導体パッケージである例を挙げて説明する。
【0051】
(貼合工程)
貼合工程では、図2Aに示したように、複数の配線回路基板20aが連接されている連接配線回路基板20の一表面に、水溶性保護フィルム10の保護層10aを貼合する。
連接配線回路基板20の一表面への水溶性保護フィルム10の保護層10aの貼合は、連接配線回路基板20の一表面に水溶性保護フィルム10の保護層10aを当接させた状態で、厚さ方向に所定の圧力で加圧することにより実施することができる。
前記加圧は、例えば、連接配線回路基板20と保護層10aとの積層体を一対の板状部材で厚さ方向に挟持しながら0.1MPa~1.0MPaの圧力を加えることにより実施することができる。
なお、保護層10aは、先に説明したように、水溶性高分子を含むことにより十分な粘着性を示すとともに、連接配線回路基板に対して十分な接着性を示すものとなっている。
そのため、貼合工程において、連接配線回路基板に十分な接着強度で接着させることができる。
【0052】
連接配線回路基板20としては、電子部品パッケージの製造に使用される配線回路基板が連接されたものであれば、どのようなものでも使用することができる。
連接配線回路基板20は、厚さが0.03mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、0.07mm以上であることがさらに好ましい。
また、連接配線回路基板20は、厚さが0.4mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがさらに好ましい。
さらに、連接配線回路基板20は、一組の配線層(ビルドアップ層)と、該一組の配線層(ビルドアップ層)の間に配されて、これらの配線層(ビルドアップ層)をそれぞれ支持する支持体(コア層)と、を有するいわゆるビルドアップ基板が連接されたもの(ビルドアップ基板の連接体)であってもよいし、前記支持体(コア層)を介さずに一組の配線層(ビルドアップ層)を直に積層させて構成されたいわゆるコアレス基板が連接されたもの(コアレス基板の連接体)、すなわち、一組の配線層(ビルドアップ層)のみで構成されたコアレス基板の連接体であってもよい。
一方で、前記配線層(ビルドアップ層)のみで構成されていることから、厚さ方向に撓み易い(変形し易い)という観点から、連接配線回路基板20としては、コアレス基板の連接体を用いることが好ましい。
連接配線回路基板20がコアレス基板の連接体である場合には、水溶性保護フィルム10の保護層10aで前記コアレス基板の連接体を一方面側から支持することができるので、前記コアレス基板の連接体が厚さ方向に撓むこと(変形すること)を十分に抑制することができる。
なお、前記配線層(ビルドアップ層)は、ガラスクロスなどにエポキシ樹脂などを含む樹脂組成物を含浸させて構成されるプリプレグの少なくとも一方面に配線部を形成することにより得られる。
【0053】
(実装工程)
実装工程では、前記貼合工程後に、複数の配線回路基板20aのそれぞれの他表面(保護層10aを貼合した面と反対側の面)に少なくとも1つの電子部品(本実施形態では、半導体チップ)の搭載と樹脂封止とを行う。
具体的には、図2Bに示したように、ダイボンド層(ダイボンドフィルム)40に接着させた状態で、半導体チップ30を複数の配線回路基板20aのそれぞれの他表面に搭載させた後、図2Cに示したように、各半導体チップ30を封止樹脂ERで樹脂封止する。
なお、図2Cでは、各半導体チップ30を封止樹脂ERで一括して樹脂封止する例を示しているが、図2Gに示したように、個々の半導体チップ30ごとに封止樹脂ERで樹脂封止を行ってもよい。
ダイボンド層(ダイボンドフィルム)40付の半導体チップ30は、所定寸法の半導体ウェハ(例えば、外径12インチ(300mm)、厚み40μm~50μmの半導体ウェハ)の一方面に、前記半導体ウェハの面積に相当する面積を有する一枚のダイボンドフィルムを貼合させた後、ステルスダイシングなどの各種公知のダイシング処理を施すことにより得ることができる。
すなわち、半導体チップ30に接着されたダイボンド層(ダイボンドフィルム)40は、一枚のダイボンドフィルムを分割することにより得られるものである。
本実施形態に係る電子部品パッケージ(半導体パッケージ)の製造方法では、水溶性高分子を含むことにより十分な粘着性を示すとともに十分な接着性を示す保護層10aが連接配線回路基板20に貼合されているので、実装工程における樹脂封止時に、配線回路基板20a上において電子部品(半導体チップ)の搭載位置がずれることを抑制できる。
また、実装工程において、連接配線回路基板20の前記他表面から保護層10aが剥離し難くなるので、取り扱い性(ハンドリング性)が低下することを抑制できる。
【0054】
上記のごとき半導体チップは、通常、半導体チップ本体と、該半導体チップ本体の少なくとも一方面に配されて他の部材の電極部と電気的に接続される電極部と、を有していて、前記半導体チップでは、少なくとも一方面が、回路が形成された回路形成面となっている。
前記半導体チップには、例えば、半導体チップ本体の両面に配されて他の部材と電気的に接続される対となる電極部と、対となる電極部を導通するように前記半導体チップ本体を厚さ方向に貫通する導通部とを備える、TSV(Through Silicon Via)形式のものも含まれる。
また、前記半導体チップには、前記回路が素子としてセンサ素子(例えば、受光素子や振動素子)を備えているセンサチップも含まれる。
前記センサチップとしては、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)チップやMEMS(Micro Electro Systems)チップなどが挙げられる。
なお、前記他の部材としては、配線回路基板や、前記半導体チップと同様に構成された他の半導体チップなどが挙げられる。
【0055】
ダイボンド層(ダイボンドフィルム)40としては、各種公知のものを用いることができる。
ダイボンド層(ダイボンドフィルム)40は、熱硬化性を有していることが好ましい。
ダイボンド層(ダイボンドフィルム)40は、熱硬化性を有する観点から、エポキシ樹脂やフェノール樹脂といった熱硬化性樹脂や、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含みかつ熱硬化性を示すアクリル系ポリマーなどを含んでいることが好ましい。
【0056】
封止樹脂ERとしては、各種公知のものを用いることができる。
封止樹脂ERとしては、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0057】
複数の配線回路基板20aのそれぞれの他表面への半導体チップ30の搭載は、例えば、室温(23±2℃)においてコレットでダイボンド層40付の半導体チップ30をピックアップし、圧力0.1MPa~1.0MPaの条件で、ダイボンド層40付の半導体チップ30を配線回路基板20aのそれぞれに上方から押し付ける(押圧する)ことにより実施することができる。
なお、複数の配線回路基板20aのそれぞれの他表面への半導体チップ30の搭載は、通常、連接配線回路基板20をステージ上に載置して実施されるため、上記のような半導体チップ30の搭載時においては、前記ステージは、170℃までの温度で加熱されてもよい。
すなわち、半導体チップ30の搭載は、室温~170℃までの温度で実施されてもよい。
半導体チップ30は、配線回路基板20aのそれぞれに搭載された後に、ボンディングワイヤなどによって配線回路基板20aと電気的に接続されてもよい。
樹脂封止は、通常、加熱条件下で実施されるが、前記加熱条件は、温度165~185℃で数分間(例えば、1~2分)であることが好ましい。
樹脂封止は加圧下で実施されてもよい。
前記加圧は、圧力1~15MPaで実施されることが好ましく、3~10MPaで実施されることがより好ましい。
【0058】
前記実装工程を行うことにより、水溶性保護フィルム10の保護層10aが貼合された状態で複数の半導体パッケージ50が連接している半導体パッケージ連接体50’が得られる(図2C参照)。
【0059】
(除去工程)
除去工程は、前記実装工程後に、配線回路基板20aの一表面側から水溶性保護フィルム10の保護層10aを除去する。
具体的には、図2Dに示したように、水溶性保護フィルム10の保護層10aが上側となるように、すなわち、樹脂封止した側が下側となるように、水溶性保護フィルム10の保護層10aが貼合された状態で半導体パッケージ連接体50’をステージS上に載置した後、図2Eに示したように、半導体パッケージ連接体50’を個々の半導体パッケージ50に分割する前に、保護層10aを水洗浄することにより溶解させて除去する。
なお、図2Eでは、半導体パッケージ連接体50’を個々の半導体パッケージ50に分割する前に、保護層10aを水洗浄する例を示しているが、図2Hに示したように、半導体パッケージ連接体50’を分割して個々の半導体パッケージ50を得た後に、個々の半導体パッケージ50に分割された状態で貼合されている保護層10aを水洗浄することにより溶解させて除去してもよい。
すなわち、除去工程は、半導体パッケージ連接体50’を個々の半導体パッケージ50に分割する前または分割した後のいずれかに実施すればよい。
なお、個々の半導体パッケージ50への半導体パッケージ連接体50’の分割は、図2Fに示したようなダイシングブレードDBを用いたブレードダイシングなどにより実施することができる。
【0060】
図2Eに示したように、半導体パッケージ連接体50’を個々の半導体パッケージ50に分割する前に、保護層10aを水洗浄することにより溶解させて除去した場合、図2Fに示したように、ダイシングブレードDBを用いたブレードダイシングなどを実施することにより、半導体パッケージ連接体50’を個々の半導体パッケージ50へと分割する。
これにより、個々の半導体パッケージ50を得ることができる。
なお、図2Hに示したように、半導体パッケージ連接体50’が個々の半導体パッケージ50へと分割されている場合には、保護層10aを水洗浄することにより溶解させて除去することにより、個々の半導体パッケージ50を得ることができる。
水溶性保護フィルム10の保護層10aは、十分な粘着性を有するものの、水で容易に溶解する性質を有しているので、水洗浄にて前記除去工程を実施することにより、配線回路基板20aの一表面側から比較的容易に保護層10aを除去することができる。
【0061】
なお、前記除去工程は、回転可能なステージと水洗浄機構を備える装置を用いて実施することができる。
前記水洗浄機構は、分割された保護層10aに向けて水を噴射する水噴射部を備えている。
そして、前記ステージを回転させながら、分割された保護層10aに向けて前記水噴射部から水を噴射することにより、水によって保護層10aが完全に溶解されたり、水によって一部が溶解された保護層10aがステージの外部に排出されたりすることとなる。
このような装置において、ステージの回転速度は、500rpm~4000rpmであることが好ましく、水の噴射量(水量)は、0.05L/min~5.0L/minであることが好ましく、水の噴射時間は、5秒~300秒であることが好ましい。
また、前記除去工程は、水を高圧で噴射することによって行ってもよい。水を噴射するときの圧力は、半導体パッケージ50のサイズや、半導体パッケージ50と保護層10a(分割された保護層10a)との密着力のバランスなどを考慮して適宜設定することができる。
【0062】
なお、本発明に係る電子部品パッケージの製造方法及び水溶性保護フィルムは、前記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る電子部品パッケージの製造方法及び水溶性保護フィルムは、前記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る電子部品パッケージの製造方法及び水溶性保護フィルムは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態では、電子部品パッケージとして半導体パッケージを例に挙げて半導体パッケージの製造方法について説明したが、電子部品パッケージは半導体パッケージに限られない。
前記半導体パッケージ以外の電子部品パッケージとしては、例えば、支持基板と該支持基板上に複数の半導体チップを配した状態で前記複数の半導体チップを一括して樹脂封止したパッケージ体とを備える疑似ウェハ、すなわち、前記支持基板と前記パッケージ体とが一体とされている疑似ウェハ、前記パッケージ体から前記支持基板が取り外されて構成されている疑似ウェハ、すなわち、前記パッケージ体のみで構成されている疑似ウェハ、及び、少なくとも一つの半導体チップを含む構成単位ごとに分割した疑似ウェハの分割体が挙げられる。
前記疑似ウェハの分割体の製造においては、前記疑似ウェハの分割体を搭載するための配線回路基板を連接配線回路基板から得るに際して、本実施形態に係る水溶性保護フィルム10の保護層10aが使用される。
すなわち、半導体チップなどの電子部品が搭載されていない連接配線回路基板から複数の配線回路基板を分割するに際して、前記連接配線回路基板を保護するように、本実施形態に係る水溶性保護フィルム10の保護層10aが使用される。
そのため、このような場合には、保護層10aは、前記連接配線回路基板の両面を保護するように貼合されてもよい。
なお、前記疑似ウェハの分割体は、前記連接配線回路基板から得られた一の配線回路基板上に搭載される。
【実施例0064】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
[実施例1]
容器内において、水にポリビニルアルコール(けん価度65、平均重合度240)を分散させた水分散溶液を作成した。
次に、該水分散溶液を含む容器を90℃の水浴中に入れ、該水分散容器を撹拌することによってポリビニルアルコールを水に溶解させて、高分子分散組成物を得た。
次に、シリコーン離型処理が施された面を有する第1PETはく離ライナー(三菱ケミカル社製の製品名MRA50.厚み50μm)の離型処理面上に、アプリケータを用いて前記高分子分散組成物を厚み40μmで塗布した。
次に、前記高分子分散組成物を塗布した第1PETはく離ライナーを110℃で2分間乾燥することにより、前記第1PETはく離ライナー上に保護層を形成した。
次に、前記保護層上に、シリコーン離型処理が施された面を有する第2PETはく離ライナー(三菱ケミカル社製の製品名MRA25.厚み25μm)の離型処理面側を貼り合せて、実施例1に係る水溶性保護シートを得た。
【0066】
前記ポリビニルアルコールのけん価度及び平均重合度は、上記の実施形態の項で説明した方法に準じて測定した。
【0067】
[実施例2]
ポリビニルアルコールとして、けん価度が80及び平均重合度が240のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る水溶性保護シートを得た。
実施例2においても、ポリビニルアルコールのけん価度、及び、ポリビニルアルコールの平均重合度は、実施例1と同様にして求めた。
【0068】
[比較例1]
ポリビニルアルコールとして、けん価度が98及び平均重合度が240のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る水溶性保護シートを得た。
比較例1においても、ポリビニルアルコールのけん価度、及び、ポリビニルアルコールの平均重合度は、実施例1と同様にして求めた。
【0069】
[比較例2]
ポリビニルアルコールとして、けん価度が10及び平均重合度が240のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る水溶性保護シートを得た。
比較例2においても、ポリビニルアルコールのけん価度、及び、ポリビニルアルコールの平均重合度は、実施例1と同様にして求めた。
【0070】
<保護層の厚み>
実施例1及び2に係る水溶性保護フィルム、並びに、比較例1及び2に係る水溶性保護フィルムについて、保護層の厚みを測定した。
保護層の厚みは、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5箇所の厚みを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めた。
その結果を、以下の表1に示した。
【0071】
<ベアウェハに対する保護層の密着性>
実施例1及び2に係る水溶性保護フィルム、並びに、比較例1及び2に係る水溶性保護フィルムについて、ベアウェハに対する保護層の密着力を測定した。
ベアウェハに対する保護層の密着力は、上記実施形態で説明したようにして測定した。
そして、以下の評価基準にしたがって、ベアウェハに対する保護層の密着性を評価した。

優 ベアウェハに対する保護層の密着力が0.2N/100mm以上
不可 ベアウェハに対する保護層の密着力が0.2N/100mm未満

その結果を、以下の表1に示した。
【0072】
<保護層の除去性>
ベアウェハの表面に各例に係る水溶性保護フィルムの保護層を取り付けた状態で、前記ベアウェハを複数のベアチップに割断した後において、前記複数のベアチップからの保護層の除去性について評価した。
前記複数のベアチップからの保護層の除去は、以下の手順にしたがって実施した。

(1)作製した水溶性保護シートから、第2PETはく離ライナーを取り除いて、前記水溶性保護シートの保護層の一方面を露出させる。
(2)一方面にダイシングテープが取り付けられた(詳しくは、ダイシングテープの粘着剤層に取り付けられた)ベアウェハ(外径12インチ(300mm)、厚み40μm)を準備する。
そして、前記ベアウェハの他方面(ダイシングテープが取り付けられていない面)に、前記水溶性保護シートの保護層を取り付ける。
なお、前記ダイシングテープの粘着剤層の端縁にはダイシングリングが取り付けられている。
(3)真空マウンター装置(型式MV3000、日東精機社製)のステージ上に、前記水溶性保護シートの保護層を取り付けた前記ベアウェハを載置した後、ステージ温度を90℃として、前記水溶性保護シートの保護層を前記ベアウェハに接着させる(以下、水溶性保護シート付のベアウェハという)。
(4)ステルスダイシング装置(型式DFL7361、ディスコ社製)のステージ上に、前記第1PETはく離ライナーが当接するように、水溶性保護シート付のベアウェハを載置した後、前記ステルスダイシング装置のレーザ照射光源から、予め定めておいたダイシング一に沿ってレーザ光を照射して、前記ベアウェハの内部に脆弱部を形成する。
具体的には、割断後において、平面寸法が10mm×10mmとなる複数のベアチップが得られるように、前記ベアウェハの内部に格子状に脆弱部を形成する。
なお、レーザ照射光源からのレーザ光の照射は、以下に示した条件に従う。
前記ベアウェハの内部に脆弱部を形成した後、前記水溶性保護シートの保護層の他方面から第1PETはく離ライナーを取り除いて、前記水溶性保護シートの保護層の他方面側を露出させる(以下、脆弱部形成済ベアウェハという)。

<レーザ光の照射条件>
(A)レーザ光
レーザ光源;半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ
波長;1064nm、1088nm、1099nm、または1342nm
レーザ光スポット断面積;3.14×10-8cm
発振形態;Qスイッチパルス
繰り返し周波数;100kHz以下
パルス幅;1μs以下
出力;1mJ以下
レーザ光品質;TEM00
偏光特性;直線偏光
(B)集光用レンズ
倍率;100倍以下
NA;0.55
レーザ光波長に対する透過率;100%以下
(C)ステージの移動速度;280mm/秒以下

(5)前記ステルスダイシング装置の前記ステージ上から、脆弱部形成済ベアウェハを取り除いた後、エキスパンド装置(型式DDS2300、ディスコ社製)を用いて、前記脆弱部形成済ベアウェハを面方向に広げることにより(エキスパンドすることにより)、前記脆弱部形成済ベアウェハを割断して複数のベアチップへと個片化するとともに、水溶性保護シートの保護層もチップ相当サイズに割断して個片化する。
なお、前記エキスパンド装置のエキスパンドは、温度-15℃、エキスパンド速度200mm/sという条件で行う。
(6)前記エキスパンド装置のステージを1000rpmで回転させながら、前記エキスパンド装置が備える水洗浄機構の水噴射部から、個片化された保護層に向けて水を加えて(水を噴射して)、各ベアチップの表面から個片化された保護層を前記ステージの外部に向けて除去することにより、各ベアチップの一表面(ダイシングテープが取り付けられていない側の面)を露出させる。
なお、水の噴射量(水量)は、100L/min~300L/minの範囲内の値とし、水の噴射時間は、60秒~90秒の範囲内の値とする。

そして、保護層の除去性については、水噴射後において、割断後に得られる10mm×10mmの複数のベアチップの全ての表面をフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で分析することにより、残留有機物の有無を評価することにより行った。
なお、保護層の除去性の評価基準は以下にしたがった。

・保護層の除去性
優 複数のベアチップの全てについて、残留有機物が認められない(800~4000cm-1における極大吸収≦0.05)
不可 複数のベアチップの一つでも、残留有機物が認められるものがある(800~400cm-1における極大吸収>0.05)

その結果を以下の表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
上記表1より、実施例1及び2に係る水溶性保護フィルムは、ベアウェハに対する密着性及びベアチップからの保護層の除去性の評価がいずれも優であることが分かる。
これに対し、比較例1及び2に係る水溶性保護フィルムは、ベアウェハに対する密着性及びベアチップからの保護層の除去性の評価の少なくとも一方が不可となっていることが分かる。
この結果から、実施例1及び2に係る水溶性保護フィルムは、被着対象物に対して優れた密着性を示すとともに、被着対象物から容易に除去できるものであることが把握される。
上記は、被着対象物をベアウェハやベアチップとした場合の結果であるが、被着対象物が配線回路基板や連接配線回路基板の場合においても、同様の結果が得られると予想される。
このことから、実施例1及び2に係る水溶性保護フィルムは、配線回路基板上における電子部品の搭載位置のずれを抑制することと、配線回路基板の破損を抑制することとを両立できることが把握される。
【符号の説明】
【0075】
10 水溶性保護フィルム、
10a 保護層、10b 第1はく離ライナー、10c 第2はく離ライナー、
20 連接配線回路基板、
20a 配線回路基板、
30 半導体チップ、40 ダイボンド層(ダイボンドフィルム)、50 半導体パッケージ、50’ 半導体パッケージ連接体。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H