(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154241
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】磁気測定センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20231012BHJP
G01R 33/12 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
G01R33/02 A
G01R33/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063442
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細井 勉
(72)【発明者】
【氏名】金原 匡隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 良行
(72)【発明者】
【氏名】米山 祐輔
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA07
2G017AD04
2G017AD53
(57)【要約】
【課題】構造の簡素化を図ることができる磁気測定センサを提供すること。
【解決手段】磁気測定センサ1は、センサ基材部2と、3本の探針3と、を有する。探針3は、センサ基材部2に固定された固定端部34から先端側へ突出する。探針3の突出側から見たとき、3本の探針3のそれぞれの先端が、三角形の頂点に位置するように、探針3が配置されている。測定対象に磁界を印加するとともに、3本の探針3を測定対象に当接させる。この状態において、3本の探針3のうち、第1探針31と第2探針32との間の電位差と、第1探針31と第3探針33との間の電位差とをそれぞれ測定する。これにより、磁気測定センサ1は、測定対象における、互いに直交する2方向の磁束密度を測定できるよう構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ基材部(2)と、
該センサ基材部に固定された固定端部(34)から先端側へ突出する3本の探針(3)と、を有し、
上記探針の突出側から見たとき、上記3本の探針のそれぞれの先端が、三角形の頂点に位置するように、上記探針が配置されており、
測定対象(9)に磁界を印加するとともに、上記3本の探針を上記測定対象に当接させた状態において、上記3本の探針のうち、第1探針(31)と第2探針(32)との間の電位差と、上記第1探針と第3探針(33)との間の電位差とをそれぞれ測定することにより、上記測定対象における、互いに直交する2方向の磁束密度を測定できるよう構成されている、磁気測定センサ(1)。
【請求項2】
上記探針の突出方向の長さ(L1)は、上記探針の突出側から見たときの上記探針間の距離(L2)よりも短い、請求項1に記載の磁気測定センサ。
【請求項3】
上記探針の突出方向の長さは、上記探針の径(L3)以下である、請求項2に記載の磁気測定センサ。
【請求項4】
上記3本の探針のそれぞれに電気的に接続される複数の配線(4)が設けられたフレキシブル配線基板(40)を有し、上記探針は、上記フレキシブル配線基板に直接接続されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁気測定センサ。
【請求項5】
上記フレキシブル配線基板の厚み方向から見たとき、少なくとも2本の上記配線同士が、互いに重なっている、請求項4に記載の磁気測定センサ。
【請求項6】
上記センサ基材部には弾性部材(5)が固定されており、該弾性部材は、上記センサ基材部と上記固定端部との間に介在しているか、又は上記センサ基材部の基端側面(21)に固定されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁気測定センサ。
【請求項7】
上記探針は、上記センサ基材部に直接固定されており、上記弾性部材は、上記センサ基材部の上記基端側面に固定されている、請求項6に記載の磁気測定センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気測定センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、電動機等の磁心を構成する電磁鋼板の磁束密度を測定する磁気測定センサが知られている。特許文献1に記載の磁気測定センサは4本の探針を有する。この4本の探針は、2本の探針を1組の測定部とすることにより、2組の測定部を構成している。これにより、特許文献1に記載の磁気測定センサは、電磁鋼板における2方向の磁束密度を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の磁気測定センサは4本の探針を用いて測定を行う。4本すべての探針を電磁鋼板に確実に当接させるためには、種々の機構が必要となる場合がある。それゆえ、特許文献1に記載の磁気測定センサは、構造が複雑になりやすい。そのため、構造の簡素化の観点から、更なる改善の余地があるといえる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、構造の簡素化を図ることができる磁気測定センサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、センサ基材部(2)と、
該センサ基材部に固定された固定端部(34)から先端側へ突出する3本の探針(3)と、を有し、
上記探針の突出側から見たとき、上記3本の探針のそれぞれの先端が、三角形の頂点に位置するように、上記探針が配置されており、
測定対象(9)に磁界を印加するとともに、上記3本の探針を上記測定対象に当接させた状態において、上記3本の探針のうち、第1探針(31)と第2探針(32)との間の電位差と、上記第1探針と第3探針(33)との間の電位差とをそれぞれ測定することにより、上記測定対象における、互いに直交する2方向の磁束密度を測定できるよう構成されている、磁気測定センサ(1)にある。
【発明の効果】
【0007】
上記磁気測定センサは、3本の探針を測定対象に当接させることによって、測定対象における、互いに直交する2方向の磁束密度を測定できるよう構成されている。探針が3本である場合、これらすべてを測定対象に確実に当接させることは比較的容易となる。それゆえ、磁気測定センサの構造を簡素化することができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、構造の簡素化を図ることができる磁気測定センサを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1における、磁気測定センサを、Y方向から見た図であって、
図2のI矢視図。
【
図2】実施形態1における、磁気測定センサを、探針の突出側から見た図であって、
図1のII矢視図。
【
図3】実施形態1における、磁気測定センサを、電磁鋼板側へ押圧する様子を示す図。
【
図4】実施形態1における、X方向の磁束とY方向の磁束とを示す図。
【
図5】実施形態2における、磁気測定センサを、Y方向から見た図であって、
図6のV矢視図。
【
図6】実施形態2における、磁気測定センサを、探針の突出側から見た図であって、
図5のVI矢視図。
【
図7】実施形態3における、磁気測定センサを、Y方向から見た図であって、
図8のVII矢視図。
【
図8】実施形態3における、磁気測定センサを、探針の突出側から見た図であって、
図7のVIII矢視図。
【
図9】実施形態3における、治具によって、磁気測定センサを電磁鋼板側へ押圧した状態を示す図であって、
図10のIX矢視図。
【
図11】実施形態4における、磁気測定センサを、Y方向から見た図であって、
図12のXI矢視図。
【
図12】実施形態4における、磁気測定センサを、探針の突出側から見た図であって、
図11のXII矢視図。
【
図15】実施形態5における、磁気測定センサを、探針の突出側から見た図。
【
図16】実施形態6における、磁気測定センサを、Y方向から見た図であって、
図17のXVI矢視図。
【
図17】実施形態6における、磁気測定センサを、探針の突出側から見た図であって、
図16のXVII矢視図。
【
図18】実施形態7における、磁気測定センサを、探針の突出側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
磁気測定センサに係る実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
本形態の磁気測定センサ1は、
図1、
図2に示すごとく、センサ基材部2と、3本の探針3と、を有する。探針3は、センサ基材部2に固定された固定端部34から先端側へ突出する。
図2に示すごとく、探針3の突出側から見たとき、3本の探針3のそれぞれの先端が、三角形の頂点に位置するように、探針3が配置されている。
【0011】
図3に示すごとく、測定対象9に磁界を印加するとともに、3本の探針3を測定対象9に当接させる。この状態において、3本の探針3のうち、第1探針31と第2探針32との間の電位差と、第1探針31と第3探針33との間の電位差とをそれぞれ測定する。これにより、磁気測定センサ1は、測定対象9における、互いに直交する2方向の磁束密度を測定できるよう構成されている。
【0012】
本形態の磁気測定センサ1は、例えば、電気自動車用の電動機やリアクトル等の磁心における磁束密度を測定する手段として用いることができる。
【0013】
本形態において、測定対象9は、電動機の磁心である。そして、電動機を駆動状態とし、当該電動機の磁心に磁気測定センサ1の探針3を当接させることにより、電動機の磁心の磁束密度を測定する。
【0014】
電動機の磁心は、
図3に示すごとく、複数の電磁鋼板91を積層してなる。
図3の矢印Pに示すごとく、磁気測定センサ1を、電磁鋼板91に対し、電磁鋼板91の積層方向に押圧することにより、探針3を電磁鋼板91の基端面911に当接させる。これにより、探針3を電磁鋼板91に電気的に接触させ、測定対象9の電磁鋼板91における、互いに直交する2方向の磁束密度を測定する。本明細書において、この互いに直交する2方向を、それぞれX方向及びY方向という。また、電磁鋼板91に対し磁気測定センサ1を押圧する方向を押圧方向Zという。また、押圧方向Zと平行な方向において、磁気測定センサ1が電磁鋼板91に当接する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、本形態において、X方向及びY方向は、それぞれ、電磁鋼板91の基端面911に平行な方向であって、押圧方向Zに直交する方向でもある。
【0015】
本形態において、磁気測定センサ1は、探針3を3本のみ有する。探針3は、押圧方向Zに沿って突出している。3本の探針3は、押圧方向Zにおいて、それぞれの先端が互いに同等の位置となるように、配置されている。また、探針3の先端は、センサ基材部2の先端よりも先端側に位置している。
【0016】
図2に示すごとく、探針3の突出側から見たとき、3本の探針3のそれぞれの先端が正三角形の頂点に位置するように、探針3が配置されている。探針3の突出側から見たとき、第1探針31と第2探針32との間の距離、第1探針31と第3探針33との間の距離、第2探針32と第3探針33との間の距離は、互いに同じ距離となっている。また、第1探針31と第2探針32との並び方向は、X方向となっている。
【0017】
また、センサ基材部2は、
図1、
図2に示すごとく、第1基材部22と第2基材部23とを有する。第1基材部22に、探針3が固定されている。また、第2基材部23の先端部には、後述する電界強度測定部6が固定されている。第2基材部23は、第1基材部22の先端側面221から先端側へ立設している。また、第2基材部23は、
図2に示すごとく、探針3の突出側から見たとき、3本の探針3の先端すべてを通る仮想円(図示略)の内側に収まるように形成されている。第1基材部22と第2基材部23とは、それぞれ略四角柱形状を有する。本形態において、センサ基材部2は、剛性が高いプラスチックからなる。
【0018】
センサ基材部2には弾性部材5が固定されている。弾性部材5は、センサ基材部2と固定端部34との間に介在しているか、又はセンサ基材部2の基端側面21に固定されている。本形態において、弾性部材5は、
図1に示すごとく、第1基材部22の先端側面221に固定されていると共に、第1基材部22と固定端部34との間に介在している。つまり、探針3は、弾性部材5を介して、第1基材部22の先端側面221に固定されている。
【0019】
弾性部材5は、例えば、エラストマー等のゴム弾性を有するものとすることができる。また、弾性部材5は、例えば、コイルバネ等のバネ弾性を有するものとすることができる。本形態において、弾性部材5は、ゴム弾性を有するシリコーンゴムからなる。
【0020】
また、センサ基材部2の第2基材部23は、4つの平坦な側面231を有する。側面231は押圧方向Zに沿って形成されている。側面231には、2つの電界強度測定部6が固定されている。本形態において、電界強度測定部6はホール素子を備えている。
【0021】
2つの電界強度測定部6は、それぞれ別々の側面231に固定されている。そして、一方の電界強度測定部6が固定された側面231と、他方の電界強度測定部6が固定された側面231とは、互いに直交するように形成されている。一方の電界強度測定部6が固定された側面231は、X方向に直交するように形成されている。また、他方の電界強度測定部6が固定された側面231は、Y方向に直交するように形成されている。一方の電界強度測定部6が、電磁鋼板91の基端面911付近の空間における、X方向の電界強度を測定し、他方の電界強度測定部6が、基端面911付近の空間における、Y方向の電界強度を測定できるよう構成されている。
【0022】
また、本形態において、探針3間の電位差は、外部に設けられた電圧検出部(図示略)によって測定する。それぞれの探針3の先端部には、探針3と、電圧検出部とを電気的に接続する配線(図示略)が接続されている。電圧検出部は、第1探針31と第2探針32との間の電位差と、第1探針31と第3探針33との間の電位差とをそれぞれ測定する。そして、この電位差の値を用い、外部に設けられた演算部(図示略)によって演算することにより、測定対象9の電磁鋼板91におけるX方向及びY方向の磁束密度を測定することができる。つまり、磁気測定センサ1は、3本の探針3によって、電磁鋼板91の局所における二次元の磁気特性を測定できるよう構成されている。演算部は、プロセッサとメモリとを備えている。
【0023】
具体的には、演算部は、第1探針31と第2探針32との間の電位差v2から、Y方向の磁束密度Byを算出する。また、演算部は、第1探針31と第3探針33との間の電位差v3、及び第1探針31と第2探針32との間の電位差v2から、X方向の磁束密度Bxを算出する。
【0024】
Nを探りコイルのターン数とし、Sを磁束鎖交面積としとしたとき、電位差v
2は下記式(1)にて表される。つまり、電位差v
2は、磁束密度Bxとは無関係に得られる。
図4に示すごとく、X方向の磁束Φxが、電磁鋼板91における第1探針31と第2探針32との間の部分を鎖交しないからである。
【数1】
【0025】
上記式(1)を変形することで、磁束密度Byは、下記式(2)にて求めることができる。また、本形態の磁気測定センサ1を用いた磁束密度の測定方法のように、探針法の場合、ターン数Nは1/2となる。また、電磁鋼板91の厚み(
図3参照)をT、探針3の突出側から見たときの探針3間の距離をLとしたとき、磁束鎖交面積Sは、厚みTと距離Lとを乗算することにより求めることができる。そのため、下記式(2)から、下記式(3)を導くことができる。
【数2】
【数3】
【0026】
また、
図4に示すごとく、電磁鋼板91における第1探針31と第3探針33との間の部分には、X方向の磁束ΦxとY方向の磁束Φyとの双方が、それぞれ斜めに鎖交する。そして、当該部分にX方向の磁束Φxが鎖交する鎖交面積はTLcos30°となる。また、当該部分にY方向の磁束Φyが鎖交する鎖交面積はTLcos60°となる。それゆえ、電位差v
3を求める式は、下記式(4)となる。また、下記式(4)と上記式(3)とから、磁束密度Bxを求める下記式(5)を導くことができる。
【数4】
【数5】
【0027】
本形態において、演算部は、上記式(2)及び上記式(5)を用いた演算によって、測定対象9の電磁鋼板91におけるX方向及びY方向の磁束密度を算出することができる。
【0028】
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記磁気測定センサ1は、3本の探針3を測定対象9に当接させることによって、測定対象9における、互いに直交する2方向の磁束密度を測定できるよう構成されている。探針3が3本である場合、これらすべてを測定対象9に確実に当接させることは比較的容易となる。それゆえ、磁気測定センサ1の構造を簡素化することができる。
【0029】
仮に、探針の数以外の基本構造を実施形態1と同様としつつ、4本の探針を測定対象に当接させる必要がある磁気測定センサについて考える。この場合、本形態のように、探針が3本である場合と比較し、測定対象の電磁鋼板の基端面に、すべての探針を当接させにくい。すなわち、探針が4本である場合、すべての探針の先端を、同一平面上に配置させにくい。それゆえ、4本の探針の全てを電磁鋼板の基端面に確実に当接させるためには、種々の機構が必要となり、磁気測定センサの構造が複雑になりやすい。そこで、本形態の磁気測定センサ1は、3本の探針3を電磁鋼板91に当接させることにより、電磁鋼板91における、互いに直交する2方向の磁束密度を測定できるよう構成されている。探針3が3本である場合、すべての探針3の先端を同一平面上に配置させやすいため、
図3の矢印Pに示すごとく、磁気測定センサ1を電磁鋼板91側へ押圧することにより、3本の探針3すべてを測定対象9に確実に当接させることができる。その結果、磁気測定センサ1の構造を簡素化することができると共に、測定精度を向上させることができる。また、測定精度の向上により、測定対象9の局所の鉄損について、正確に把握することができる。これにより、電動機のエネルギー変換効率を高めるために必要となる、製造工程において大きく変化する鉄損の低減指針を得ることができる。
【0030】
また、すべての探針3の先端を同一平面上に配置させやすいため、磁気測定センサ1を電磁鋼板91側へ押圧することにより、それぞれの探針3は、電磁鋼板91に形成された絶縁被膜を貫通して、電磁鋼板91と電気的に接触しやすい。それゆえ、予め、電磁鋼板91の絶縁被膜を剥離させることなく、電磁鋼板91の磁束密度を測定することができる。その結果、電磁鋼板91の磁束密度を容易に測定することができる。
【0031】
センサ基材部2には弾性部材5が固定されている。弾性部材5は、センサ基材部2と固定端部34との間に介在している。それゆえ、磁気測定センサ1を電磁鋼板91側へ押圧することにより、3本の探針3すべてを、電磁鋼板91に一層確実に当接させることができる。その結果、測定精度を一層向上させることができる。
【0032】
磁気測定センサ1は、3本の探針3によって、電磁鋼板91におけるX方向及びY方向の磁束密度を測定できるよう構成されている。また、磁気測定センサ1は、電界強度測定部6によって、電磁鋼板91のX方向及びY方向の電界強度を測定できるよう構成されている。それゆえ、磁気測定センサ1は、電磁鋼板91における2次元のBH特性を測定することができる。その結果、電磁鋼板91の局所の磁気特性を一層正確に把握することができる。
【0033】
以上のごとく、本形態によれば、構造の簡素化を図ることができる磁気測定センサ1を提供することができる。
【0034】
なお、実施形態1の磁気測定センサ1は、測定時において、探針3が、探針3の径方向に移動しないよう、探針ガイド部を設けることもできる。つまり、例えば、センサ基材部に固定されると共に、探針の突出方向に貫通する貫通孔が形成された探針ガイド部を設け、この探針ガイド部の貫通孔に探針を挿通させた構成とすることもできる。これにより、測定精度を一層向上させることができる。
【0035】
(実施形態2)
本形態は、
図5、
図6に示すごとく、実施形態1に対し、探針3の形状を変更した形態である。
【0036】
本形態において、
図5に示す探針3の突出方向の長さL1は、
図6に示す探針3の突出側から見たときの探針3間の距離L2よりも短い。また、長さL1は、
図5に示す探針3の径L3以下である。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0037】
長さL1は距離L2よりも短い。それゆえ、磁気測定センサ1の押圧方向Zの長さを短くすることができる。その結果、磁気測定センサ1の小型化を図ることができる。
【0038】
長さL1は、探針3の径L3以下である。それゆえ、磁気測定センサ1の押圧方向Zの長さを一層短くすることができる。そのため、磁気測定センサ1を一層小型化させることができる。これにより、例えば、電動機の磁心のティース部と、ティース部に巻回されたコイルとの間の隙間にも、磁気測定センサ1を配置させることができる。そのため、ティース部における鉄損密度が高くなりやすい部分の磁束密度を測定することができる。それゆえ、駆動状態にある電動機の磁心における二次元の磁気特性を一層精度高く測定することができる。その結果、測定対象9の鉄損について、一層正確に把握することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0039】
(実施形態3)
本形態は、
図7~
図10に示すごとく、弾性部材5が、センサ基材部2の基端側面21に固定された形態である。
【0040】
探針3は、
図7、
図8に示すごとく、センサ基材部2に直接固定されている。弾性部材5は、
図7に示すごとく、センサ基材部2の基端側面21に固定されている。探針3は、第1基材部22の先端側面221に直接固定されている。また、弾性部材5の基端面は、押圧方向Zに直交するように形成されている。
【0041】
また、本形態においては、電磁鋼板91の磁気特性を測定する際、
図9、
図10に示すごとく、治具7を用いて、磁気測定センサ1を電磁鋼板91側に押圧する。
【0042】
治具7は、測定対象9に固定された固定治具71と、ボルト部72とを有する。固定治具71は、ボルト部72と螺合する雌ネジ部711が形成された螺合部712と、螺合部712から測定対象9側へ突出した2つの脚部713とを有する。雌ネジ部711は、押圧方向Zに貫通している。また、固定治具71の2つの脚部713は、接着部材73を介して、測定対象9に固定されている。
【0043】
ボルト部72は固定治具71に形成された雌ネジ部711に螺合している。また、ボルト部72の先端面は、磁気測定センサ1の弾性部材5の基端面と圧接している。そして、固定治具71に対し、ボルト部72を螺入させることにより、
図9の矢印Pに示すごとく、磁気測定センサ1を先端側へ押圧する。これにより、探針3を測定対象9に電気的に接触させることができる。
その他は、実施形態2と同様である。
【0044】
本形態において、弾性部材5は、センサ基材部2の基端側面21に固定されている。それゆえ、電磁鋼板91の磁束密度を測定する際、弾性部材5を先端側へ押圧することにより、3本の探針3すべてを、電磁鋼板91に一層確実に当接させることができる。その結果、測定精度を一層向上させることができる。
【0045】
また、3本の探針3のそれぞれとセンサ基材部2との間に弾性部材5を介在させることなく、弾性部材5をセンサ基材部2の基端側面21に固定している。それゆえ、磁気測定センサ1の構造を一層簡素化させつつ、測定精度を一層向上させることができる。
【0046】
探針3は、センサ基材部2に直接固定されている。また、弾性部材5は、センサ基材部2の基端側面21に固定されている。それゆえ、磁気測定センサ1を電磁鋼板91側へ押圧する際、センサ基材部2に対する探針3の位置が変わることを抑制することができると共に、3本の探針3すべてを電磁鋼板91に一層確実に当接させることができる。それゆえ、測定時において、探針3間の距離のバラツキを抑制できると共に、探針3を、電磁鋼板91に対し、電気的に一層確実に接続させることができる。その結果、測定精度を、より一層向上させることができる。
【0047】
本形態においては、治具7を用いて、磁気測定センサ1を先端側へ押圧する。それゆえ、3本の探針3すべてを電磁鋼板91に、より一層確実に当接させることができる。その結果、測定精度を、より一層向上させることができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0048】
(実施形態4)
本形態は、
図11~
図14に示すごとく、探針3がフレキシブル配線基板40に固定された形態である。
【0049】
磁気測定センサ1は、
図11~
図14に示すごとく、複数の配線4が設けられたフレキシブル配線基板40を有する。複数の配線4は、3本の探針3のそれぞれに電気的に接続される。探針3は、フレキシブル配線基板40に直接接続されている。
【0050】
フレキシブル配線基板40の基材は、例えば、ポリイミドからなる。フレキシブル配線基板40には、複数の端子部44が設けられており、それぞれの配線4は、端子部44を介して、電圧検出部に電気的に接続されている。
【0051】
図12、
図14に示すごとく、第1探針31に電気的に接続された第1配線41は、フレキシブル配線基板40の先端側面401に設けられている。本形態においては、2本の第1配線41が、フレキシブル配線基板40の先端側面401に設けられている。また、第2探針32に電気的に接続された第2配線42と、第3探針33に電気的に接続された第3配線43とは、
図13、
図14に示すごとく、それぞれフレキシブル配線基板40の基端側面402に設けられている。それぞれの配線4は、薄膜状に形成されている。なお、
図13は、
図12から第1配線41を除いた図である。
【0052】
図12に示すごとく、フレキシブル配線基板40の厚み方向から見たとき、少なくとも2本の配線4同士が、互いに重なっている。本形態においては、フレキシブル配線基板40の厚み方向から見たとき、第1配線41の一部と第2配線42の一部とが、互いに重なっている。詳細には、
図12と
図13とを比較して見ると、フレキシブル配線基板40の厚み方向から見たとき、X方向における、第2探針32と第2配線42との接続部から第1探針31と端子部44との接続部までにわたって、第1配線41と第2配線42とが、互いに重なっている。つまり、
図14に示すごとく、第1配線41の一部と第2配線42の一部とは、フレキシブル配線基板40の厚み方向において、互いに対向している。また、
図12に示すごとく、フレキシブル配線基板40の厚み方向から見たとき、第1配線41の一部と第3配線43の一部とも、互いに重なっている。詳細には、
図12と
図13とを比較して見ると、フレキシブル配線基板40の厚み方向から見たとき、X方向における、第3探針33と第3配線43との接続部から第1探針31と端子部44との接続部までにわたって、第1配線41と第3配線43とが、互いに重なっている。また、本形態において、押圧方向Zは、フレキシブル配線基板40の厚み方向でもある。
【0053】
探針3は、
図12~
図14に示すごとく、フレキシブル配線基板40と押圧方向Zに対向する環状の接続面35を有する。第2探針32の接続面35と第3探針33の接続面35とは、それぞれ配線4に固定されることにより、フレキシブル配線基板40に接続されている。探針3と配線4との接続は、例えば、はんだ付けによって行われる。
【0054】
また、第2探針32の一部と第3探針33の一部とは、それぞれ、フレキシブル配線基板40に形成されると共に、フレキシブル配線基板40の厚み方向に貫通する貫通孔403に挿通配置されている。
【0055】
また、フレキシブル配線基板40には、スルーホール404が形成されている。スルーホール404は、フレキシブル配線基板40の基端側面402から先端側面401までにわたって形成された、筒状の導通部406を有する。導通部406の内周側には、フレキシブル配線基板40の厚み方向に貫通する貫通孔405が形成されている。導通部406は、例えば、銅からなる。
【0056】
第1探針31の一部は、
図14に示すごとく、スルーホール404の貫通孔405に挿通されている。また、第1探針31の接続面35は、導通部406の基端面に固定されている。また、第1配線41は、導通部406の先端面に固定されている。これにより、第1探針31と第1配線41とは、導通部406を介して、電気的に接続される。
【0057】
また、フレキシブル配線基板40には、
図12に示すごとく、切欠き部407が形成されている。また、磁気測定センサ1は、磁界測定部側基板60を有する。探針3の突出側から見たとき、切欠き部407の内側に収まるように、磁界測定部側基板60が配置されている。磁界測定部側基板60は、基本構造をフレキシブル配線基板40と同様としつつ、電界強度測定部6に接続された配線61を備える。配線61は、磁界測定部側基板60に設けられた端子部601を介して、外部に接続されている。
その他は、実施形態3と同様である。
【0058】
探針3は、フレキシブル配線基板40に直接接続されている。それゆえ、配線4も含めて、磁気測定センサ1の小型化を図ることができる。その結果、磁気測定センサ1の小型化を一層図ることができる。
【0059】
また、フレキシブル配線基板40の厚み方向から見たとき、少なくとも2本の配線4同士が、互いに重なっている。つまり、第1配線41の一部と第2配線42の一部、及び第1配線41の一部と第3配線43の一部とが、厚みが薄いフレキシブル配線基板40の基材を介して、フレキシブル配線基板40の厚み方向に互いに対向するように配置されている。それゆえ、耐ノイズ性能を向上させることができる。その結果、測定精度を一層向上させることができる。
【0060】
磁気測定センサ1が有する探針3は3本である。そのため、探針3に接続された配線4と、電界強度測定部6に接続された配線61とを互いに干渉させることなく、配線4、61を設けやすい。その結果、耐ノイズ性能を向上させることができる。
【0061】
また、探針3がセンサ基材部2に直接固定されている。それゆえ、磁気測定センサ1を電磁鋼板91側へ押圧したとしても、探針3間の距離が変わることを抑制することができる。それゆえ、探針3に固定されたフレキシブル配線基板40が撓むことを抑制することができる。それゆえ、フレキシブル配線基板40にかかる負荷を抑制することができる。その結果、磁気測定センサ1の長寿命化を図ることができる。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0062】
(実施形態5)
本形態は、
図15に示すごとく、実施形態4に対し、配線4の配置を変更した形態である。
【0063】
図15に示すごとく、フレキシブル配線基板40には、複数のスルーホール404が設けられている。また、第1配線41は、先端側面401と基端側面402との双方に設けられている。つまり、先端側面401に設けられた第1配線41と、基端側面402に設けられた第1配線41とは、スルーホール404を介して、互いに電気的に接続している。また、第2配線42及び第3配線43も、第1配線41と同様に、先端側面401と基端側面402との双方に設けられている。
【0064】
フレキシブル配線基板40の厚み方向から見たとき、第1配線41と第2配線42とは、3回以上、互いに交差している。また、第1配線41と第2配線42とは、Y方向から見たときも(図示略)、3回以上、互いに交差している。すなわち、第1配線41と第2配線42とは、互いに撚りあわさった構造となっている。また、第1配線41及び第3配線43も、フレキシブル配線基板40の厚み方向及びY方向のそれぞれから見たとき、3回以上、互いに交差している。つまり、第1配線41と第3配線43も、互いに撚りあわさった構造となっている。
その他は、実施形態4と同様である。
【0065】
第1配線41と第2配線42とは、互いに撚りあわさった構造となっている。また、第1配線41及び第3配線43も、互いに撚りあわさった構造となっている。それゆえ、耐ノイズ性能を一層向上させることができる。その結果、測定精度を、より一層向上させることができる。
その他、実施形態4と同様の作用効果を有する。
【0066】
(実施形態6)
本形態は、
図16、
図17に示すごとく、探針3の基端部をフレキシブル配線基板40に固定した形態である。
【0067】
本形態において、センサ基材部2の第1基材部22には、
図16に示すごとく、押圧方向Zに貫通した挿通孔222が3つ形成されている。それぞれの探針3は、挿通孔222に挿通されると共に、第1基材部22に直接固定されている。
【0068】
また、それぞれの探針3の基端部は、第1基材部22の基端側面21から基端側へ突出している。探針3の基端部は、フレキシブル配線基板40に直接固定されている。つまり、フレキシブル配線基板40は、センサ基材部2よりも、基端側に配置されている。
【0069】
本形態においては、フレキシブル配線基板40を測定対象側へ押圧することにより、探針3を測定対象に電気的に接触させる。つまり、本形態において、フレキシブル配線基板40は、弾性部材5でもある。
その他は、実施形態4と同様である。
【0070】
フレキシブル配線基板40は、弾性部材5でもある。それゆえ、磁気測定センサ1の小型化を一層図りつつ、測定精度を一層向上させることができる。
その他、実施形態4と同様の作用効果を有する。
【0071】
(実施形態7)
本形態は、
図18に示すごとく、実施形態4に対し、探針3の配置を変更した形態である。
【0072】
本形態においては、
図18に示すごとく、探針3の突出側から見たとき、3本の探針3のそれぞれの先端が、二等辺三角形の頂点に位置するように、探針3が配置されている。また、探針3の突出側から見たとき、第1探針31と第2探針32との間の距離、及び第1探針31と第3探針33との間の距離が、互いに同じ距離となっている。また、第1探針31と第2探針32との並び方向は、X方向となっている。また、第1探針31と第3探針33との並び方向は、Y方向となっている。
【0073】
演算部は、実施形態1と同様に、第1探針31と第2探針32との間の電位差から、Y方向の磁束密度を算出する。また、本形態においては、第1探針31と第3探針33との間の電位差から、X方向の磁束密度を算出する。電磁鋼板91のY方向の磁束密度Byは、下記式(6)にて求めることができる。また、電磁鋼板91のX方向の磁束密度Bxは、下記式(7)にて求めることができる。なお、下記式(6)において、距離Lは、探針3の突出側から見たときの、第1探針31と第2探針32との間の距離である。また、下記式(7)において、距離Lは、探針3の突出側から見たときの、第1探針31と第3探針33との間の距離である。
その他の構成及び作用効果は、実施形態4と同様である。
【数6】
【数7】
【0074】
上記実施形態1~7の磁気測定センサ1は、測定対象9の磁束密度と電界強度との双方を測定できるよう構成されている。ただし、磁気測定センサは、例えば、電界強度測定部を備えることなく、測定対象の磁束密度のみを測定できるよう構成することもできる。
【0075】
また、磁気測定センサを、電動機を固定する定盤等に固定した3軸ステージ等を用いて走査させつつ、測定対象に押圧することにより、測定対象の磁束密度を測定する構成とすることもできる。
【0076】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…磁気測定センサ、2…センサ基材部、3…探針、31…第1探針、32…第2探針、33…第3探針、34…固定端部、9…測定対象