(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154256
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気システム
(51)【国際特許分類】
F02D 13/02 20060101AFI20231012BHJP
F02D 23/00 20060101ALI20231012BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20231012BHJP
F02B 31/08 20060101ALI20231012BHJP
F02B 31/00 20060101ALI20231012BHJP
F02B 23/10 20060101ALI20231012BHJP
F01L 1/08 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
F02D13/02 H
F02D23/00 K
F02D13/02 B
F02D13/02 L
F02D43/00 301R
F02D43/00 301U
F02D43/00 301Z
F02B31/08 500A
F02B31/00 500A
F02B23/10 310A
F02B23/10 310E
F01L1/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063467
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 泰宏
【テーマコード(参考)】
3G016
3G023
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G016AA02
3G016AA08
3G016AA19
3G016BA03
3G016BA28
3G016BA36
3G023AA01
3G023AD06
3G092AA10
3G092BA01
3G092DA01
3G092DA14
3G092DB03
3G092DC02
3G092DD03
3G092EA11
3G092FA50
3G384BA07
3G384BA21
3G384DA18
3G384EB08
(57)【要約】
【課題】内燃機関の動作特性を可変とすることができる吸気システムを提供する。
【解決手段】吸気システムは、内燃機関の燃焼室のスワールポートに設けられた第一吸気弁と、燃焼室のタンブルポートに設けられ、開状態の時間が第一吸気弁の開状態の時間よりも長く設定された第二吸気弁と、タンブルポートに接続されたタンブル吸気路に設けられた調整弁と、を備え、調整弁の閉状態において、燃焼室に高スワール比のスワール流を発生させ、且つ、オットーサイクルを実現し、調整弁の開状態において、燃焼室のスワール流のスワール比を下げつつ、ミラーサイクルを実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室のスワールポートに設けられた第一吸気弁と、
前記燃焼室のタンブルポートに設けられ、開状態の時間が前記第一吸気弁の開状態の時間よりも長く設定された第二吸気弁と、
前記タンブルポートに接続されたタンブル吸気路に設けられた調整弁と、を備え、
前記調整弁の閉状態において、前記燃焼室に高スワール比のスワール流を発生させ、且つ、オットーサイクルを実現し、
前記調整弁の開状態において、前記燃焼室のスワール流のスワール比を下げつつ、ミラーサイクルを実現する、
内燃機関の吸気システム。
【請求項2】
前記第一吸気弁を開閉する第一カムと、
前記第二吸気弁を開閉し、プロフィールが前記第一カムと異なる第二カムと、
回転可能であり、軸方向への移動が規制され、前記第一カム及び前記第二カムを支持するカムシャフトと、を更に備え、
前記第二カムにより前記第二吸気弁が開かれている時間が、前記第一カムにより前記第一吸気弁が開かれている時間よりも長い、請求項1に記載の内燃機関の吸気システム。
【請求項3】
前記第一カムと前記第二カムとは、カムノーズの形状が異なり、カムノーズの中心点が互いに前記カムシャフトの周方向において同位相となる状態で、前記カムシャフトに支持されている、請求項2に記載の内燃機関の吸気システム。
【請求項4】
前記内燃機関の運転状況に応じて、前記調整弁の開閉を制御する制御部を、更に備え、
前記制御部は、
前記内燃機関の運転状況が第一状況に該当する場合に、前記調整弁を閉状とし、
前記内燃機関の運転状況が第二状況に該当する場合に、前記内燃機関の運転状況に応じて前記調整弁の開度を調整し、
前記内燃機関の運転状況が第三状況に該当する場合に、前記調整弁を全開状態とする、
請求項1に記載の内燃機関の吸気システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記調整弁の開状態において、圧縮空気を前記燃焼室に送るように過給機を制御する、請求項4に記載の内燃機関の吸気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の吸気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンバルブの作動特性を変えることによりエンジン(内燃機関)の動作特性を可変にする吸気システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から知られている吸気システムの場合、エンジンバルブの作動特性を可変にするための構成が複雑になる傾向にある。このため、吸気システム、延いては吸気システムが搭載された車両のコストが嵩んでしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、内燃機関の動作特性を可変とすることができる内燃機関の吸気システムを低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関の吸気システムは、
内燃機関の燃焼室のスワールポートに設けられた第一吸気弁と、
燃焼室のタンブルポートに設けられ、開状態の時間が第一吸気弁の開状態の時間よりも長く設定された第二吸気弁と、
タンブルポートに接続されたタンブル吸気路に設けられた調整弁と、を備え、
調整弁の閉状態において、燃焼室に高スワール比のスワール流を発生させ、且つ、オットーサイクルを実現し、
調整弁の開状態において、燃焼室のスワール流のスワール比を下げつつ、ミラーサイクルを実現する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、内燃機関の動作特性を可変とすることができる内燃機関の吸気システムを低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るエンジンの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第一カムの形状を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第二カムの形状を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第一カム及び第二カムに関してクランク角とリフト量の関係を示す線図である。
【
図5】
図5は、吸気システムの動作を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、吸気システムの動作を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、吸気システムの動作を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、吸気システムの動作を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、エンジンの運転状況と吸気システムの状態との関係を説明するための線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
<実施形態>
図1に、本開示の実施形態に係る内燃機関1の構成を示す。内燃機関1は、例えば、トラック等の車両に搭載されるディーゼルエンジンである。
【0011】
内燃機関1のシリンダブロック11には、複数のシリンダ12が設けられている。尚、
図1では、一つのシリンダ12のみが示されている。
【0012】
シリンダ12には、ピストン13が設けられている。ピストン13は、クランク軸(不図示)にコンロッド14を介して連結されている。ピストン13は、クランク軸の回転に応じてシリンダ12内を上下方向に移動する。
【0013】
シリンダ12は、シリンダ12の内面とピストン13の上面とにより画定される燃焼室120を有する。燃焼室120は、吸気ポートであるスワールポート121及びタンブルポート122と、少なくとも1個(本実施形態の場合、2個)の排気ポート30、31(
図5~
図7参照)と、を有する。
【0014】
スワールポート121には、スワール吸気路17が接続されている。又、タンブルポート122には、タンブル吸気路18が接続されている。スワール吸気路17及びタンブル吸気路18は、例えば、シリンダヘッド15に形成された吸気路と所謂インテークマニホールドに設けられた吸気路とを含む。
【0015】
スワール吸気路17を通りスワールポート121から燃焼室120に流入する空気は、燃焼室120内に高スワール比のスワール流を発生させる。
【0016】
換言すれば、スワール吸気路17は、燃焼室120内で高スワール比のスワール流を発生させるための空気を、燃焼室120に供給できるような構成(形状及びスワールポート121に対する角度等)を有する。
【0017】
尚、スワール比とは、ピストン13が1往復する間のスワール流の回転数を意味する。例えば、ピストン13が1往復する間のスワール流の回転数が2回転であれば、スワール比は2である。
【0018】
又、タンブル吸気路18を通りタンブルポート122から燃焼室120に流入する空気は、燃焼室120内に高タンブル比のタンブル流を発生させる。
【0019】
換言すれば、タンブル吸気路18は、燃焼室120内で高タンブル比のタンブル流を発生させるための空気を、燃焼室120に供給できるような構成(形状及びタンブルポート122に対する角度等)を有する。
【0020】
尚、タンブル比とは、ピストン13が1往復する間のタンブル流の回転数を意味する。例えば、ピストン13が1往復する間のタンブル流の回転数が2回転であれば、タンブル比は2である。
【0021】
シリンダブロック11の上部を覆うシリンダヘッド15には、シリンダ12毎に、インジェクタ16、吸気システム2、及び排気システム3が設けられている。
【0022】
インジェクタ16は、例えばピエゾ式のインジェクタであり、着火用の燃料である軽油をシリンダ12内に噴射する。インジェクタ16からの軽油の噴射は、後述の制御部27によって制御される。
【0023】
次に、吸気システム2の構成について説明する。吸気システム2は、シリンダ12の燃焼室120に、吸気を供給するためのシステムである。吸気システム2は、シリンダ12毎に設けられている。以下、一つのシリンダ12に対応する吸気システム2の構成について説明する。
【0024】
吸気システム2は、第一吸気弁20、第二吸気弁21、調整弁22、カムシャフト23、第一カム24、第二カム25、過給機26、及び制御部27を有する。
【0025】
第一吸気弁20は、シリンダ12の燃焼室120のスワールポート121に設けられている。第一吸気弁20は、スワールポート121を開閉するための弁である。
【0026】
第一吸気弁20は、後述の第一カム24の回転に応じて、軸方向に移動することにより、開状態と閉状態とを取り得る。第一吸気弁20の開状態において、スワールポート121が開く。第一吸気弁20の閉状態において、スワールポート121が閉じる。
【0027】
第一吸気弁20は、開状態の時間が第一所定時間となるように構成されている。第一所定時間は、後述の第一カム24の形状に基づいて設定される時間である。又、第一吸気弁20が完全に閉じるタイミングは、ピストン13が下死点に到達するタイミングと同じ又はほぼ同じである。
【0028】
第二吸気弁21は、シリンダ12の燃焼室120のタンブルポート122に設けられている。第二吸気弁21は、タンブルポート122を開閉するための弁である。
【0029】
第二吸気弁21は、後述の第二カム25の回転に応じて、軸方向に移動することにより、開状態と閉状態とを取り得る。第二吸気弁21の開状態において、タンブルポート122が開く。第二吸気弁21の閉状態において、タンブルポート122が閉じる。
【0030】
第二吸気弁21は、開状態の時間が第二所定時間となるように構成されている。第二所定時間は、後述の第二カム25の形状に基づいて設定される時間である。本実施形態の場合、第二所定時間は、第一所定時間よりも長い。又、第二吸気弁21が完全に閉じるタイミングは、ピストン13が下死点に到達してから所定時間経過後である。
【0031】
調整弁22は、開度を調整可能な電磁弁であって、タンブル吸気路18に設けられている。調整弁22の動作は、後述の制御部27により制御される。調整弁22は、開度がゼロの閉状態と、開度がゼロより大きい開状態とを取り得る。又、調整弁22の開度が最大の状態を、全開状態と称する。
【0032】
調整弁22が閉状態の場合、第二吸気弁21の状態にかかわらず、タンブルポート122から燃焼室120に吸気が供給されることはない。
【0033】
一方、調整弁22が開状態の場合、第二吸気弁21の開状態において、タンブルポート122から燃焼室120に吸気が供給される。この際、タンブルポート122から燃焼室120に供給される吸気の量は、調整弁22の開度により調整される。
【0034】
カムシャフト23は、シリンダヘッド15に支持されている。カムシャフト23は、回転可能であり、規制機構(不図示)により軸方向の移動が規制されている。カムシャフト23は、クランクシャフト(不図示)の回転に基づいて回転する。
【0035】
第一カム24は、第一吸気弁20を開閉させるためのカムである。第一カム24は、カムシャフト23に固定されている。つまり、本実施形態の場合、第一カム24は、カムシャフト23とともに回転可能であり、且つ、軸方向に移動しない。よって、第一吸気弁20の作動特性(開閉のタイミング及び開き量等)は、変化しない。
【0036】
第一カム24のカム面240は、第一吸気弁20の上端部に当接している。尚、第一カムは、第一吸気弁を開閉させることができれば、第一吸気弁に直接当接していなくてもよい。例えば、第一カムは、他の部材(例えば、ロッカーアーム)を介して、第一吸気弁を開閉させてもよい。
【0037】
本実施形態の場合、第一カム24は、カム面240の形状に基づいて、第一吸気弁20の開閉のタイミング、開き量(リフト量)、及び開状態の時間等を規定している。本実施形態の場合、第一カム24は、第一カム24の長径D1(カムの高さ)と短径d1(カムの幅)との差に基づいて、第一吸気弁20の開き量(リフト量)を第一開き量に規定している。
【0038】
又、第一カム24は、カム面240におけるカムノーズ241の形状に基づいて、第一吸気弁20の開状態の時間を、第一所定時間に規定している。
【0039】
第二カム25は、第二吸気弁21を開閉させるためのカムである。第二カム25は、カムシャフト23に固定されている。つまり、第二カム25は、カムシャフト23とともに回転可能であり、且つ、軸方向に移動しない。よって、第二吸気弁21の作動特性(開閉のタイミング及び開き量等)は、変化しない。
【0040】
第二カム25のカム面250は、第二吸気弁21の上端部に当接している。尚、第二カムは、第二吸気弁を開閉させることができれば、第二吸気弁に直接当接していなくてもよい。例えば、第二カムは、他の部材(例えば、ロッカーアーム)を介して、第二吸気弁を開閉させてもよい。
【0041】
本実施形態の場合、第二カム25は、カム面250の形状に基づいて、第二吸気弁21の開閉のタイミング、開き量(リフト量)、及び開状態の時間等を規定している。
【0042】
第二カム25は、第二カム25の長径D2(カムの高さ)と短径d2(カムの幅)との差に基づいて、第二吸気弁21の開き量(リフト量)を第二開き量に規定している。
【0043】
又、第二カム25は、カム面250におけるカムノーズ251の形状に基づいて、第二吸気弁21の開状態の時間を第二所定時間に規定している。
【0044】
本実施形態の場合、第一吸気弁20の開き量(リフト量)である第一開き量と、第二吸気弁21の開き量(リフト量)である第二開き量とは、等しい。つまり、
図2~
図4に示すように、第一カム24の長径D1(カムの高さ)と短径d1(カムの幅)との差と、第二カム25の長径D2(カムの高さ)と短径d2(カムの幅)との差とは等しい。
【0045】
又、第二吸気弁21の開状態の時間である第二所定時間は、第一吸気弁20の開状態の時間である第一所定時間よりも長い。
【0046】
ここで、
図4は、第一カム24(第一吸気弁20)及び第二カム25(第二吸気弁21)に関する、クランク角とリフト量(開き量)との関係を示す線図である。
図4における実線は、第一カム24(第一吸気弁20)に関する、クランク角とリフト量(開き量)との関係を示している。又、
図4における点線は、第二カム25(第二吸気弁21)に関する、クランク角とリフト量(開き量)との関係を示している。
【0047】
図4から、第二カム25(第二吸気弁21)のリフト量(開き量)が最大となるクランク角の範囲(つまり、時間)が、第一カム24(第一吸気弁20)のリフト量(開き量)が最大となるクランク角の範囲(つまり、時間)よりも長いことが分かる。
【0048】
上述のような第二所定時間と第一所定時間との関係を規定するために、本実施形態の場合、第一カム24のプロフィール(具体的には、カムノーズ241の形状)と、第二カム25のプロフィール(具体的には、カムノーズ251の形状)とを、
図2及び
図3に示すように異ならせている。
【0049】
尚、第一カム24と第二カム25とは、カムノーズ241、251の中心点が互いにカムシャフト23の周方向において同位相となる状態で、カムシャフト23に支持されている。
【0050】
又、過給機26は、後述の制御部27の制御下で、圧縮空気を燃焼室120に供給する。過給機26は、例えば、所謂ターボチャージャ又はスーパーチャージャ等の従来から知られている過給機であってよい。又、過給機26は、電動の過給機であってもよい。
【0051】
制御部27は、吸気システム2を含む車両に搭載されている電子デバイス等の動作を制御する。制御部27は、例えば、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)等の電子制御装置である。
【0052】
本実施形態の場合、制御部27は、内燃機関1の運転状況に応じて、調整弁22の開閉を制御する。又、制御部27は、過給機26の動作を制御する。制御部27の動作については、後述の吸気システム2の動作説明において説明する。
【0053】
以下、
図8及び
図9を参照しつつ、吸気システム2の動作を説明する。本実施形態に係る吸気システム2は、上述のように、内燃機関1の燃焼室120のスワールポート121に設けられた第一吸気弁20と、燃焼室120のタンブルポート122に設けられ、開状態の時間(第二所定時間)が第一吸気弁20の開状態の時間(第一所定時間)よりも長く設定された第二吸気弁21と、タンブルポート122に接続されたタンブル吸気路18に設けられた調整弁22と、を備えている。
【0054】
そして、制御部27は、内燃機関1の運転状況に応じて、調整弁22の開閉を制御する。具体的には、制御部27は、調整弁22を閉状態とすることにより、燃焼室120に高スワール比のスワール流を発生させ、且つ、オットーサイクルを実現する。又、制御部27は、調整弁22を開状態とすることにより、燃焼室120のスワール流のスワール比を下げつつ、ミラーサイクルを実現する。
【0055】
図8は、吸気システム2の動作を説明するためのフローチャートである。吸気システム2の動作は、例えば、内燃機関1の始動により始まり、内燃機関1の停止により終わる。
図9は、内燃機関1の運転状況と吸気システム2の状態との関係を説明するための線図である。
【0056】
又、
図9には、内燃機関1の回転数及び内燃機関1のトルクに対応する内燃機関1の3つの負荷領域が示されている。
【0057】
具体的には、
図9において、右下がりの斜線が付された領域は、内燃機関1の負荷が低い領域である低負荷領域R1を示している。又、
図9において、左下がりの斜線が付された領域は、内燃機関1の負荷が高い領域である高負荷領域R3を示している。又、
図9において、斜格子が付された領域は、内燃機関1の負荷が低負荷領域R1より高く高負荷領域R3より低い領域である中負荷領域R2を示している。
【0058】
以上のように、
図9は、内燃機関の回転数及び内燃機関のトルクに基づいて決定される内燃機関の運転状況(負荷状況)と、予め設定された負荷領域(低負荷領域R1、中負荷領域R2、及び高負荷領域R3)との関係を示す図でもある。
【0059】
制御部27は、
図9に示される情報を予めマップ(以下、「負荷領域マップ」と称する。)として記憶している。つまり、制御部27は、負荷領域マップを参照することで、
図9から読み取ることができる種々の情報を取得可能である。
【0060】
尚、内燃機関の低負荷領域、中負荷領域、及び後負荷領域は、例えば、車種毎に予め設定される領域であって、
図9の場合に限定されるものではない。例えば、低負荷領域と中負荷領域とは、内燃機関の排気ガス中のスモーク濃度に基づいて実験的に設定されてよい。又、中負荷領域と後負荷領域とは、内燃機関の体積効率に基づいて実験的に設定されてよい。
【0061】
制御部27は、内燃機関1の運転状況が、低負荷領域、中負荷領域、及び後負荷領域のうちの何れかの領域に属しているかを判定し、当該判定の結果に応じて、調整弁22の状態を変える。
【0062】
以下、
図8を参照しつつ、吸気システム2の動作の一例について説明する。
図8に示される動作の主体は、制御部27である。以下、
図8において制御部27が実行する制御の総称を、吸気制御と称する。
【0063】
尚、
図8に示すフローチャートは、吸気システム2の動作の一例を示すものである。説明の便宜上、
図8において、吸気システム2の動作の一部は省略されている。よって、吸気システム2の動作は、
図8に示される動作に限定されるものではない。
【0064】
具体的には、
図8のステップS101において、制御部27は、内燃機関1の運転状況が低負荷領域R1に該当するか否かを判定する。制御部27は、内燃機関1の回転数及び内燃機関1のトルクを取得する。次に、制御部27は、取得した内燃機関1の回転数及び内燃機関1のトルクに基づいて、内燃機関1の運転状況を取得する。そして、制御部27は、予め記憶した負荷領域マップに基づいて、取得した内燃機関1の運転状況が、低負荷領域R1に属するか否かを判定する。
【0065】
制御部27は、内燃機関1の運転状況が低負荷領域R1に該当する場合(
図8のステップS101においてYES)、制御処理をステップS102に進める。低負荷領域R1に属する内燃機関1の運転状況は、第一状況に相当する。一方、制御部27は、内燃機関1の運転状況が低負荷領域R1に該当しない場合(
図8のステップS101においてNO)、制御処理をステップS103に進める。
【0066】
図8のステップS102において、制御部27は、調整弁22を閉状態(全閉状態)とする。
図8のステップS102において、既に調整弁22が閉状態の場合には、制御部27は、調整弁22の閉状態を維持する。
【0067】
図8のステップS102において、調整弁22が開状態の場合には、制御部27は、調整弁22を閉じて閉状態とする。その後、制御部27は、制御処理を終了した後、吸気制御をステップS101から繰り返す。
【0068】
図8のステップS102において、調整弁22が閉状態となると、吸気システム2は、
図5に示す状態(低負荷対応状態とも称する。)となる。
【0069】
吸気システム2の低負荷対応状態において、スワールポート121から燃焼室120に吸気が供給される。一方、吸気システム2の低負荷対応状態において、タンブルポート122から燃焼室120に吸気が供給されない。つまり、燃焼室120には、スワールポート121及びタンブルポート122のうちのスワールポート121のみから吸気が供給される。
【0070】
この結果、燃焼室120には、高スワール比のスワール流が発生する。又、第一吸気弁20が完全に閉じるタイミングは、ピストン13が下死点に到達するタイミングと同じ又はほぼ同じであるため、吸気システム2の低負荷対応状態において、内燃機関1では、所謂オットーサイクルが実現される。
【0071】
本実施形態の吸気システム2は、吸気システム2の低負荷対応状態において、燃焼室120に高スワール比のスワール流を発生させることができるため、内燃機関1の排気性能を向上できる(つまり、スモーク濃度を下げることができる)とともに燃費性能を向上できる。
【0072】
図8のステップS103において、制御部27は、内燃機関1の運転状況が中負荷領域R2に該当するか否かを判定する。当該判定の手順は、ステップS101における判定の手順とほぼ同様である。
【0073】
制御部27は、内燃機関1の運転状況が中負荷領域R2に該当する場合(
図8のステップS103においてYES)、制御処理をステップS104に進める。中負荷領域R2に属する内燃機関1の運転状況は、第二状況に相当する。一方、制御部27は、内燃機関1の運転状況が中負荷領域R2に該当しない場合(
図8のステップS103においてNO)、制御処理をステップS107に進める。
【0074】
図8のステップS104において、制御部27は、調整弁22の開度を調整する。その後、制御部27は、制御処理を、ステップS105に進める。
【0075】
図8のステップS104において、調整弁22が閉状態の場合には、制御部27は、調整弁22を開いて開状態としつつ、調整弁22の開度を調整する。
【0076】
又、
図8のステップS104において、既に調整弁22が開状態の場合には、制御部27は、調整弁22の開度を調整する。
【0077】
図8のステップS104において、制御部27は、内燃機関1の燃費及び排気性能が最適となるように、調整弁22の開度を調整する。制御部27は、予め記憶した制御マップに基づいて、内燃機関1の燃費及び排気性能が最適となる調整弁22開度を、調整弁22に設定する。
【0078】
制御マップは、内燃機関1の運転状況(内燃機関の回転数及び内燃機関のトルク)と、燃費及び排気性能が最適となるような調整弁22の開度との関係を、実験的に求めることにより得られたものである。
【0079】
図8のステップS104において、調整弁22の開度が調整されると、吸気システム2は、例えば、
図6に示す状態(中負荷対応状態とも称する。)となる。
図6において、調整弁22は、開状態である。
【0080】
吸気システム2の中負荷対応状態において、スワールポート121から燃焼室120に吸気が供給される。又、吸気システム2の中負荷対応状態において、タンブルポート122から燃焼室120に、調整弁22の開度に応じた量の吸気が供給される。つまり、吸気システム2の中負荷対応状態において、燃焼室120には、スワールポート121及びタンブルポート122の両方から吸気が供給される。
【0081】
この結果、スワールポート121から燃焼室120に流入される吸気とタンブルポート122から燃焼室120に流入する吸気とが干渉して、燃焼室120のスワール流のスワール比が、低負荷対応状態における燃焼室120のスワール流のスワール比よりも小さくなる。
【0082】
又、第一吸気弁20が完全に閉じるタイミングは、ピストン13が下死点に到達するタイミングと同じ又はほぼ同じであるが、第二吸気弁21が完全に閉じるタイミングは、ピストン13が下死点に到達してから所定時間経過後であるため、吸気システム2の中負荷対応状態において、内燃機関1では、所謂ミラーサイクルが実現される。ミラーサイクルの度合いは、調整弁22の開度に応じて決定される。この結果、本実施形態に係る吸気システム2は、吸気システム2の中負荷対応状態における燃費性能を向上できる。
【0083】
図8のステップS105において、制御部27は、過給機26を使用するか否かを判定する。制御部27は、内燃機関1の燃費性能等の観点で、過給機26を使用するか否かを判定してよい。換言すれば、制御部27は、過給機26を使用することで、内燃機関1の燃費性能が向上するようの状況だった場合に、過給機26を使用すると判定する。
【0084】
制御部27は、過給機26を使用する場合(
図8のステップS105においてYES)、制御処理をステップS106に進める。一方、制御部27は、過給機26を使用しない場合(
図8のステップS105においてNO)、制御処理を終了した後、吸気制御をステップS101から繰り返す。
【0085】
図8のステップS106において、制御部27は、過給機26を動作させて過給する。過給機26から供給される圧縮空気は、タンブル吸気路18と通り、タンブルポート122から燃焼室120に供給される。
【0086】
過給機により圧縮空気が燃焼室120に供給されることにより、内燃機関1の体積効率が上がるため、内燃機関1の燃費性能が向上する。
【0087】
図8のステップS107において、制御部27は、調整弁22の開度を最大開度に設定して、調整弁22を全開状態とする。その後、制御部27は、制御処理を、ステップS108に進める。
【0088】
尚、
図8のステップS103とステップS107との間で、内燃機関1の運転状況が高負荷領域R3に該当するか否かを判定する制御処理を実行してもよい。
【0089】
但し、実用的な運転領域である実用運転領域R4(
図9において点線で囲まれた領域)において、内燃機関1の運転状況が低負荷領域R1及び中負荷領域R2に属していなければ、内燃機関1の運転状況は高負荷領域R3に属する。このため、内燃機関1の運転状況が高負荷領域R3に該当するか否かを判定する制御処理は実行しなくてもよい。尚、高負荷領域R3に属する内燃機関1の運転状況は、第三状況に相当する。
【0090】
図8のステップS107において、調整弁22が全開状態となると、吸気システム2は、
図7に示す状態(高負荷対応状態とも称する。)となる。
【0091】
図8のステップS108において、制御部27は、過給機26を動作させて過給する。過給機26から供給される圧縮空気は、タンブル吸気路18と通り、タンブルポート122から燃焼室120に供給される。
【0092】
吸気システム2の高負荷対応状態において、スワールポート121及びタンブルポート122の両方から燃焼室120に吸気が供給される。
【0093】
この結果、スワールポート121から燃焼室120に流入される吸気とタンブルポート122から燃焼室120に流入する吸気とが干渉して、燃焼室120のスワール流のスワール比が、低負荷対応状態及び中負荷対応状態における燃焼室120のスワール流のスワール比よりも小さくなる。尚、調整弁22の開度が高くなるほど、燃焼室120のスワール流のスワール比は小さくなる。
【0094】
又、吸気システム2の中負荷対応状態と同様に、吸気システム2の高負荷対応状態において、内燃機関1では、所謂ミラーサイクルが実現される。吸気システム2の高負荷対応状態において、調整弁22は最大開度で開いているため、ミラーサイクルの度合いも最大となる。
【0095】
ミラーサイクルが実現されている状況では、内燃機関1の圧縮工程において燃焼室120の吸気の一部が、タンブルポート122から吸気側に戻ってしまい、燃焼室120の吸気量が減ってしまう可能性がある。
【0096】
これに対して、本実施形態の吸気システム2は、吸気システム2の高負荷対応状態において、過給機26による過給を実行する。この結果、吸気システム2の高負荷対応状態において、燃焼室120における必要な吸気量を確保できるため、内燃機関1の燃費性能を向上できる。
【0097】
(本実施形態の作用・効果)
上述のような本実施形態に係る吸気システム2の場合、運転状況に応じて調整弁22の状態を調整するといった簡易な構成を採用することにより、上述のように内燃機関の動作特性を所望の状態に変えることができる。この結果、本実施形態によれば、内燃機関の動作特性を可変とすることができる内燃機関の吸気システムを低コストで提供できる。その他、本実施形態に係る吸気システム2の作用・効果は、既述の通りである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本開示に係る内燃機関の吸気システムは、種々の内燃機関に適用できる。
【符号の説明】
【0099】
1 内燃機関
11 シリンダブロック
12 シリンダ
120 燃焼室
121 スワールポート
122 タンブルポート
13 ピストン
14 コンロッド
15 シリンダヘッド
16 インジェクタ
17 スワール吸気路
18 タンブル吸気路
2 吸気システム
20 第一吸気弁
21 第二吸気弁
22 調整弁
23 カムシャフト
24 第一カム
240 カム面
241 カムノーズ
25 第二カム
250 カム面
251 カムノーズ
26 過給機
27 制御部
3 排気システム
30、31 排気ポート
R1 低負荷領域
R2 中負荷領域
R3 高負荷領域
R4 実用運転領域