(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154263
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】クリーニング装置、画像形成装置、及び、制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/165 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063485
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】鴨田 雄二
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EC23
2C056EC31
2C056FA13
2C056JB01
2C056JB05
2C056JB07
2C056JB08
(57)【要約】
【課題】インクジェットヘッドのクリーニング時に、従来よりもノズル周辺の摩耗を低減できるようにする。
【解決手段】インクジェットヘッド13において所定の配列方向に複数のノズル22が配列されたノズル面13aをクリーニングするクリーニング装置30は、ノズル面13aとの接触位置に向けて清浄な払拭部材31を連続的に送り出し、払拭部材31によってノズル面13aをクリーニングするクリーニング手段を備え、クリーニング手段を複数のノズル22の配列方向に沿って相対的に移動させると共に、クリーニング手段をインクジェットヘッド13に対して相対的に揺動させることにより、払拭部材31に形成される払拭跡29を複数のノズル22の配列方向に対して傾斜させる構成である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドにおいて所定の配列方向に複数のノズルが配列されたノズル面をクリーニングするクリーニング装置であって、
前記ノズル面との接触位置に向けて清浄な払拭部材を連続的に送り出し、前記払拭部材によって前記ノズル面をクリーニングするクリーニング手段を備え、前記クリーニング手段を前記配列方向に沿って相対的に移動させると共に、前記クリーニング手段を前記インクジェットヘッドに対して相対的に揺動させることにより、前記払拭部材に形成される払拭跡を前記配列方向に対して傾斜させることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記クリーニング手段を前記インクジェットヘッドに対して相対的に揺動させる揺動手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記ノズル面には、前記配列方向と直交する方向に配置された複数のノズル列が設けられ、
前記揺動手段は、前記クリーニング手段を前記インクジェットヘッドに対して相対的に揺動させる際の揺動幅を前記複数のノズル列の配置間隔よりも小さくすることを特徴とする請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記揺動手段は、前記クリーニング手段によるクリーニング動作中に、前記クリーニング手段を前記インクジェットヘッドに対して前記揺動幅で相対的に揺動させる動作を繰り返すことを特徴とする請求項3に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記ノズル面には、前記配列方向と直交する方向に配置された複数のノズル列が設けられ、
前記揺動手段は、前記払拭部材に形成される前記払拭跡が前記複数のノズル列のうちの隣接するノズル列に到達する前に、前記クリーニング手段の前記インクジェットヘッドに対する相対的な揺動方向を反転させることを特徴とする請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記配列方向における前記払拭部材の搬送速度よりも、前記揺動手段による相対的な揺動速度の方が速いことを特徴とする請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記接触位置において前記払拭部材を前記ノズル面に押圧する押圧手段を更に備え、
前記押圧手段は、前記揺動手段による揺動方向が反転するとき、前記ノズル面に対する前記払拭部材の押圧力を低下させることを特徴とする請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記揺動手段は、前記クリーニング手段を揺動させることを特徴とする請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項9】
前記揺動手段は、前記クリーニング手段を、前記払拭部材の送り出し方向に対して直交する方向に直線揺動させることを特徴とする請求項8に記載のクリーニング装置。
【請求項10】
前記揺動手段は、前記クリーニング手段を所定角度範囲内で回動させることにより、前記クリーニング手段を円心揺動させることを特徴とする請求項8に記載のクリーニング装置。
【請求項11】
前記揺動手段は、前記インクジェットヘッドを揺動させることを特徴とする請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項12】
前記払拭部材は、ウェブによって構成されることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項13】
前記払拭部材は、ローラーによって構成されることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載のクリーニング装置を備える画像形成装置。
【請求項15】
インクジェットヘッドにおいて所定の配列方向に複数のノズルが配列されたノズル面をクリーニングするクリーニング装置の制御方法であって、
前記クリーニング装置は、前記ノズル面との接触位置に向けて清浄な払拭部材を連続的に送り出し、前記払拭部材によって前記ノズル面をクリーニングするクリーニング手段を備えており、
前記クリーニング手段を前記配列方向に沿って相対的に移動させると共に、前記クリーニング手段を前記インクジェットヘッドに対して相対的に揺動させることにより、前記払拭部材に形成される払拭跡を前記配列方向に対して傾斜させながら前記クリーニング手段によるクリーニングを行うことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置、画像形成装置、及び、制御方法に関し、特にインクジェットヘッドのノズル面をクリーニングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置は、インク滴を吐出する複数のノズルが所定の配列方向に配列されたノズル面を有するインクジェットヘッドを備えている。インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインク滴を吐出すると、サテライト等によりインクがノズル周辺のノズル面に付着する。そのため、従来の画像形成装置は、インクジェットヘッドのノズル面をクリーニングするクリーニング装置を備えている。
【0003】
例えば、ノズル面を払拭する弾性部材からなるワイパー部材を設け、ワイパー部材をノズル面に接触させた状態でワイパー部材をノズル面の延在方向に移動させることでノズル面に付着したインクをワイパー部材で払拭するクリーニング装置が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、洗浄液を含有させたウェブ状の払拭部材をノズル面との接触位置に送り出し、その接触位置において払拭部材がノズル面を拭き取るようにしたクリーニング装置も知られている(例えば特許文献2)。このクリーニング装置は、ウェブ状の払拭部材をローラーでノズル面に押圧し、ローラーによる払拭部材の接触位置をノズル面に沿って移動させることでノズル面の全体を拭き取るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-226610号公報
【特許文献2】特開2021-70289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたクリーニング装置は、ワイパー部材をノズル面に接触させた状態でノズル面の延在方向に移動させるため、ワイパー部材によって掻き取られたインクがワイパー部材と共にノズル面を移動する。そのため、ワイパー部材と共に移動するインクがノズル面を擦過し、ノズル周辺を摩耗させてしまうことになる。特に、ノズル面に付着するインクは、乾燥により粘度が増加していたり、固着していたりするため、これをワイパー部材によってノズル面に押し付けた状態でワイパー部材を移動させると、ノズル面が激しく摩耗する。ノズル周辺の摩耗はノズルから吐出されるインク滴の着弾位置に影響を与えるため、画質劣化の要因となる。
【0007】
また、特許文献2に記載されたクリーニング装置は、ローラーによるノズル面との接触位置に向けて清浄な払拭部材を順次連続的に送り出すと共に、ノズル面との接触位置を通過した払拭部材を巻き取っていくことでノズル面から拭き取ったインクを回収するように構成されている。しかし、払拭部材に転移したインクは、直ぐには払拭部材の巻き取り方向へ移動せず、しばらくの間はローラーによる払拭部材とノズル面との接触位置に進入して残留してしまうことがある。そして、払拭部材とノズル面との接触位置に進入したインクは、接触位置がノズル面に沿って移動することに伴い、ノズル面を擦過する。そのため、特許文献2のクリーニング装置は、特許文献1のクリーニング装置よりも摩耗度合は少ないものの、依然としてノズル周辺を摩耗させてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、従来よりもノズル周辺の摩耗を低減できるようにしたクリーニング装置、画像形成装置、及び、制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、インクジェットヘッドにおいて所定の配列方向に複数のノズルが配列されたノズル面をクリーニングするクリーニング装置であって、前記ノズル面との接触位置に向けて清浄な払拭部材を連続的に送り出し、前記払拭部材によって前記ノズル面をクリーニングするクリーニング手段を備え、前記クリーニング手段を前記配列方向に沿って相対的に移動させると共に、前記クリーニング手段を前記インクジェットヘッドに対して相対的に揺動させることにより、前記払拭部材に形成される払拭跡を前記配列方向に対して傾斜させることを特徴とする構成である。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1のクリーニング装置において、前記クリーニング手段を前記インクジェットヘッドに対して相対的に揺動させる揺動手段を更に備えることを特徴とする構成である。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2のクリーニング装置において、前記ノズル面には、前記配列方向と直交する方向に配置された複数のノズル列が設けられ、前記揺動手段は、前記クリーニング手段を前記インクジェットヘッドに対して相対的に揺動させる際の揺動幅を前記複数のノズル列の配置間隔よりも小さくすることを特徴とする構成である。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3のクリーニング装置において、前記揺動手段は、前記クリーニング手段によるクリーニング動作中に、前記クリーニング手段を前記インクジェットヘッドに対して前記揺動幅で相対的に揺動させる動作を繰り返すことを特徴とする構成である。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項2のクリーニング装置において、前記ノズル面には、前記配列方向と直交する方向に配置された複数のノズル列が設けられ、前記揺動手段は、前記払拭部材に形成される前記払拭跡が前記複数のノズル列のうちの隣接するノズル列に到達する前に、前記クリーニング手段の前記インクジェットヘッドに対する相対的な揺動方向を反転させることを特徴とする構成である。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項2のクリーニング装置において、前記配列方向における前記払拭部材の搬送速度よりも、前記揺動手段による相対的な揺動速度の方が速いことを特徴とする構成である。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項2のクリーニング装置において、前記接触位置において前記払拭部材を前記ノズル面に押圧する押圧手段を更に備え、前記押圧手段は、前記揺動手段による揺動方向が反転するとき、前記ノズル面に対する前記払拭部材の押圧力を低下させることを特徴とする構成である。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項2のクリーニング装置において、前記揺動手段は、前記クリーニング手段を揺動させることを特徴とする構成である。
【0017】
請求項9に係る発明は、請求項8のクリーニング装置において、前記揺動手段は、前記クリーニング手段を、前記払拭部材の送り出し方向に対して直交する方向に直線揺動させることを特徴とする構成である。
【0018】
請求項10に係る発明は、請求項8のクリーニング装置において、前記揺動手段は、前記クリーニング手段を所定角度範囲内で回動させることにより、前記クリーニング手段を円心揺動させることを特徴とする構成である。
【0019】
請求項11に係る発明は、請求項2のクリーニング装置において、前記揺動手段は、前記インクジェットヘッドを揺動させることを特徴とする構成である。
【0020】
請求項12に係る発明は、請求項1のクリーニング装置において、前記払拭部材は、ウェブによって構成されることを特徴とする構成である。
【0021】
請求項13に係る発明は、請求項1のクリーニング装置において、前記払拭部材は、ローラーによって構成されることを特徴とする構成である。
【0022】
請求項14に係る発明は、画像形成装置であって、請求項1乃至13のいずれかのクリーニング装置を備えることを特徴とする構成である。
【0023】
請求項15に係る発明は、インクジェットヘッドにおいて所定の配列方向に複数のノズルが配列されたノズル面をクリーニングするクリーニング装置の制御方法であって、前記クリーニング装置は、前記ノズル面との接触位置に向けて清浄な払拭部材を連続的に送り出し、前記払拭部材によって前記ノズル面をクリーニングするクリーニング手段を備えており、前記クリーニング手段を前記配列方向に沿って相対的に移動させると共に、前記クリーニング手段を前記インクジェットヘッドに対して相対的に揺動させることにより、前記払拭部材に形成される払拭跡を前記配列方向に対して傾斜させながら前記クリーニング手段によるクリーニングを行うことを特徴とする制御方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来よりもノズル周辺の摩耗を低減することが可能であり、画質劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】画像形成装置の概略構成を例示する図である。
【
図2】インクジェットヘッドのノズル面の構成例を示す図である。
【
図4】クリーニング装置の内部構造を示す拡大断面図である。
【
図6】クリーニング装置によるノズル面の払拭動作を説明する図である。
【
図7】クリーニング装置によるノズル面の払拭動作を説明する図である。
【
図8】クリーニング装置を揺動させない場合の払拭跡の例を示す図である。
【
図9】クリーニング装置を揺動させた場合の払拭跡の第1の例を示す図である。
【
図10】クリーニング装置を揺動させた場合の払拭跡の第2の例を示す図である。
【
図11】クリーニング装置を揺動させた場合の払拭跡の第3の例を示す図である。
【
図12】クリーニング装置の揺動方向を反転させる際の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】揺動機構の更に別の構成例を示す図である。
【
図16】具体的な実施例の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0027】
(画像形成装置の概略構成)
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置1の概略構成を示す図である。この画像形成装置1は、インクジェット方式の画像形成装置であって、媒体供給部2、画像形成部3、及び、媒体排出部4を備えている。媒体供給部2は、画像形成部3に、記録媒体Pを供給する。画像形成部3は、媒体供給部2から搬送される記録媒体Pに画像を形成する。媒体排出部4は、画像形成部3から排出される記録媒体Pを保持する。また、画像形成装置1は、画像形成部3に制御部9を備えている。制御部9は、媒体供給部2、画像形成部3、及び、媒体排出部4の動作を制御し、記録媒体Pに対する画像形成を実行する。
【0028】
記録媒体Pは、シート状のものであって、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛またはシート状の樹脂等、シート状の主面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0029】
このような画像形成装置1において、記録媒体Pは、媒体供給部2、画像形成部3、及び、媒体排出部4の順に搬送される。ここで、
図1に示すXYZ三次元座標系は、媒体供給部2、画像形成部3、及び、媒体排出部4の並び方向であって記録媒体Pが搬送される方向をX方向、そのX方向に直交する水平方向をY方向、及び、鉛直方向をZ方向とした座標系であり、他の図において示す座標系と共通する座標系である。
【0030】
媒体供給部2は、記録媒体Pを積載するトレイ5と、トレイ5上の記録媒体Pを画像形成部3へ搬送する媒体搬送部6とを備えている。媒体供給部2は、制御部9からの命令に基づき、トレイ5上に載置された記録媒体Pのうちから最上面に位置する1枚の記録媒体Pを取り出し、媒体搬送部6によってその記録媒体Pを画像形成部3へ搬送する。
【0031】
画像形成部3は、搬送ドラム10と、受け渡しユニット11と、加熱部12と、複数のインクジェットヘッド13と、定着部14と、受け渡し部15と、を有する。搬送ドラム10は、円柱形をなしており、その外周側面が、記録媒体Pを吸着保持する吸着面として構成される。受け渡しユニット11、加熱部12、複数のインクジェットヘッド13、定着部14、及び、受け渡し部15は、搬送ドラム10の周囲に配置されている。
【0032】
搬送ドラム10は、外周側面に記録媒体Pを吸着保持した状態で、回転軸10aを中心に一方向(図例では反時計回り方向)に回転する。これにより、搬送ドラム10は、外周側面に吸着保持した記録媒体Pを、加熱部12、複数のインクジェットヘッド13及び定着部14のそれぞれに対向する位置に順次搬送することができる。
【0033】
受け渡しユニット11は、媒体供給部2の媒体搬送部6によって搬送されてくる記録媒体Pを受け取り、記録媒体Pを搬送ドラム10に渡す。例えば、受け渡しユニット11は、媒体搬送部6から搬送されてくる記録媒体Pの一端を保持して取り上げ、搬送ドラム10の外周側面に沿うように搬送して搬送ドラム10が記録媒体Pを吸着保持できるように受け渡す。
【0034】
加熱部12は、受け渡しユニット11の下流側に設けられ、搬送ドラム10の外周側面に吸着保持されて搬送される記録媒体Pの表面が所定の温度範囲内の温度となるように記録媒体Pを加熱する。例えば、加熱部12は、赤外線ヒーター等のヒーターを備えており、制御部9からの命令に基づいてヒーターを駆動することで記録媒体Pを加熱する。
【0035】
複数のインクジェットヘッド13は、加熱部12の下流側に設けられている。本実施形態では、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのインクジェットヘッド13が、搬送ドラム10の回転方向の上流側から順に、所定の間隔で並ぶように配置されている。各インクジェットヘッド13は、複数のノズルが配置されたノズル面13aが搬送ドラム10の外周側面から所定間隔となる位置に設けられる。そして、各インクジェットヘッド13は、搬送ドラム10に吸着保持された記録媒体Pが所定の記録位置を通過する際に、複数のノズルのそれぞれから各色のインクを吐出することで記録媒体Pに画像を形成する。
【0036】
図2は、各インクジェットヘッド13のノズル面13aの構成例を示す図である。
図2(a)に示すように、インクジェットヘッド13のノズル面13aには、複数の吐出ユニット21が千鳥状に配置されている。各吐出ユニット21のノズル面13aには、
図2(b)に示すように、インク滴を吐出する複数のノズル22が2次元配列されている。例えば、吐出ユニット21は、所定の配列方向(具体的には、インクジェットヘッド13の長手方向(Y方向))に沿って所定間隔で複数のノズル22が配列された複数のノズル列L1~L6を有している。
図2(b)では、吐出ユニット21のノズル面13aに、6つのノズル列L1~L6が設けられた例を示している。これら複数のノズル列L1~L6の間隔は、所定間隔Wとなっている。本実施形態では、上記のような構成を有する6つの吐出ユニット21がインクジェットヘッド13のノズル面13aに千鳥状に配置され、インクジェットヘッド13の長手方向(Y方向)において複数のノズル22の配置間隔が均等となるように設けられている。これにより、インクジェットヘッド13は、搬送ドラム10によって搬送される記録媒体Pの幅方向(Y方向)の全域に対してインクを吐出し、画像を形成することができる。
【0037】
図1に戻り、定着部14は、複数のインクジェットヘッド13の下流側に設けられている。定着部14は、搬送ドラム10によって搬送される記録媒体Pの幅方向(Y方向)の全域にわたって配置され、記録媒体Pの表面に対して紫外線等のエネルギー線を照射する。インクジェットヘッド13によって吐出されるインクは、紫外線等のエネルギー線によって硬化する特性を有している。そのため、定着部14は、記録媒体Pにエネルギー線を照射することにより、記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。これにより、記録媒体Pに形成された画像が定着する。
【0038】
受け渡し部15は、定着部14の下流側に設けられており、搬送ドラム10によって搬送されてくる記録媒体Pの一端を保持して取り上げる。そして受け渡し部15は、画像が形成された記録媒体Pを、媒体排出部4に設けられている媒体搬送部7に渡す。
【0039】
媒体排出部4は、媒体搬送部7と、排出トレイ8とを有している。媒体搬送部7は、画像形成部3において画像が形成された記録媒体Pを排出トレイ8上に搬送する。排出トレイ8は、媒体搬送部7によって搬送される記録媒体Pを積載し、排出する。
【0040】
また、上記のように構成される画像形成装置1は、インクジェットヘッド13において複数のノズル22が配列されたノズル面13aをクリーニングするクリーニング装置を備えている。例えば、クリーニング装置は、画像形成部3内部の搬送ドラム10の軸方向(Y方向)において、搬送ドラム10に隣接する位置に設けられる。
【0041】
(クリーニング装置)
図3は、画像形成部3のYZ平面における内部構成を示す図である。
図3に示すように、クリーニング装置30は、記録媒体Pの搬送方向であるX方向に直交するY方向において搬送ドラム10に隣接する位置に設けられている。また、各インクジェットヘッド13は、それぞれが搬送ドラム10の軸方向(Y方向)に沿って個別に移動可能に設けられている。例えば、各インクジェットヘッド13は、Y方向に延びるボール螺子18によってノズル面13aが搬送ドラム10の外周側面から所定間隔となる位置に支持されている。そのボール螺子18の一端には、モーター17が取り付けられている。モーター17は、ボール螺子18を回転させることにより、インクジェットヘッド13を、搬送ドラム10に対向する位置(
図3において実線で示す位置)と、搬送ドラム10の軸方向Yに隣接して設けられたクリーニング装置30に対向する位置(
図3において破線で示す位置)との間で移動可能に設けられている。
【0042】
例えば、制御部9は、インクジェットヘッド13からインクを吐出して記録媒体Pに対する画像形成を行った後、所定のタイミングでモーター17を駆動し、インクジェットヘッド13を搬送ドラム10の軸方向(Y方向)へ移動させることにより、クリーニング動作を開始する。そして、クリーニング装置30は、インクジェットヘッド13がY方向へ移動することに伴い、インクジェットヘッド13のノズル面13aに接触した状態でインクジェットヘッド13の長手方向に相対移動し、ノズル面13aに付着したインクを払拭してクリーニングする。本実施形態では、一例として、インクジェットヘッド13をY方向へ移動させることにより、クリーニング装置30をインクジェットヘッド13のノズル面13aに沿って相対的に移動させる構成を説明する。ただし、これに限られるものではなく、例えばクリーニング装置30をY方向へ移動させる駆動機構を別途設け、制御部9がその駆動機構を制御する構成を採用しても構わない。
【0043】
図4は、クリーニング装置30の内部構造を示す拡大断面図である。また、
図5は、クリーニング装置30の斜視図である。クリーニング装置30は、インクジェットヘッド13のノズル面13aをクリーニングするクリーニング手段を備えている。クリーニング手段は、ノズル面13aを払拭する払拭部材31を備えており、その払拭部材31をノズル面13aに接触させた状態でノズル面13aに沿って相対移動することでノズル面13aの全体を払拭する。本実施形態のクリーニング装置30は、払拭部材31としてウェブ32を採用している。
【0044】
図4に示すように、クリーニング手段は、払拭部材31であるウェブ32の他に、供給ローラー33と、巻取ローラー34とを備えている。ウェブ32は、供給ローラー33に巻き付けられており、供給ローラー33から順次連続的に送り出され、巻取ローラー34によって巻き取り回収される。供給ローラー33と巻取ローラー34との間には払拭ローラー35が設けられており、ウェブ32は、その払拭ローラー35に掛けられている。払拭ローラー35は、供給ローラー33から送り出されるウェブ32を、ノズル面13aに押し付けるローラーである。したがって、クリーニング装置30は、払拭ローラー35によるノズル面13aとの接触位置に向けて清浄なウェブ32を供給ローラー33から順次連続的に送り出し、ノズル面13aとの接触位置においてウェブ32がノズル面13aを払拭するように構成されている。そして、クリーニング装置30は、ノズル面13aを払拭してインクが付着したウェブ32を巻取ローラー34に巻き付けて回収する。このようなクリーニング装置30の動作は、制御部9によって制御される。
【0045】
また、
図5に示すように、クリーニング装置30は、ウェブ32を矢印F2方向に送り出して搬送する。つまり、ウェブ32の搬送方向(矢印F2方向)は、インクジェットヘッド13の移動方向(矢印F1方向)とは逆方向である。したがって、ノズル面13aを払拭したウェブ32は、ノズル面13aのクリーニングされていない方向に向かって搬送されることとなり、ウェブ32に付着したインクがクリーニング済みのノズル面13aに再付着することを抑制することができる。
【0046】
また、
図5に示すように、払拭ローラー35の両端は、押圧部材36によって軸支されている。押圧部材36は、例えばソレノイドなどによって構成され、払拭ローラー35を上下方向に移動させる。つまり、押圧部材36は、払拭ローラー35を上下方向に移動させることで、ノズル面13aに対するウェブ32の押圧力を調整する。この押圧部材36は、制御部9によって制御される。
【0047】
更に、
図5に示すように、クリーニング装置30には、クリーニング装置30をインクジェットヘッド13に対して揺動させる揺動機構40が設けられる。例えば、揺動機構40は、クリーニング装置30の筐体に螺合するボール螺子42と、ボール螺子42の端部に設けられるモーター41とを備えている。この揺動機構40は、インクジェットヘッド13の移動方向(F1方向)に対して直交する矢印F3方向にクリーニング装置30を直線揺動させることができる。このような揺動機構40の動作も、制御部9によって制御される。
【0048】
図6及び
図7は、クリーニング装置30によるノズル面13aの払拭動作を説明する図である。
図6に示すように、クリーニング装置30は、インクジェットヘッド13が矢印F1方向へ移動してくることに伴い、ノズル面13aの一端にウェブ32を接触させる。その後、
図7に示すように、インクジェットヘッド13が矢印F1方向へ更に移動することに伴い、クリーニング装置30は、ウェブ32をノズル面13aに接触させた状態でノズル面13aの他端に向かって相対移動する。このとき、クリーニング装置30は、供給ローラー33から清浄なウェブ32を順次連続的に送り出している。そのため、ノズル面13aに付着しているインク28は、ウェブ32に払拭されることによってウェブ32に転移し、ウェブ32の搬送方向に向かって移動する。これにより、ウェブ32の表面には、インク28の払拭跡(払拭痕)29が形成される。この払拭跡29は、通常、ウェブ32の搬送方向に向かって延びていく。
【0049】
また、ウェブ32に転移したインク28は、直ぐにはウェブ32の搬送方向へ移動せず、しばらくの間、ウェブ32とノズル面13aとの接触位置(ニップ部)39に進入して残留してしまうことがある。そして、ウェブ32とノズル面13aとの接触位置39に進入したインク28は、接触位置39がノズル面13aに沿って移動することに伴い、ノズル面13aを擦過する。
【0050】
図8は、ウェブ32に形成される払拭跡29の一例を示す図である。例えば、クリーニング装置30によってノズル面13aのクリーニングが行われている間、揺動機構40がクリーニング装置30を揺動させない場合、ウェブ32には、
図8に示すような払拭跡29が形成される。具体的には、ウェブ32に形成される払拭跡29は、複数のノズル22の配列方向に向かって形成される。つまり、ウェブ32は、矢印F2方向に搬送されるため、ウェブ32が複数のノズル22の配列方向の先頭の位置P11にあるノズル22の周辺を払拭することでウェブ32とノズル面13aとの接触位置39にインク28が進入すると、接触位置39を基点として払拭跡29がウェブ32の搬送方向(矢印F2方向)の下流側に延びていくことになる。そしてウェブ32とノズル面13aとの接触位置39に進入したインク28がウェブ32と共に搬送方向へ移動すると、接触位置39にインク28がなくなるため、払拭跡29が途切れる。
【0051】
これに対し、ウェブ32とノズル面13aとの接触位置39にインク28が残留したままの状態で、ウェブ32とノズル面13aとの接触位置39が複数のノズル22の配列方向に沿って移動していくと、払拭跡29は、複数のノズル22の配列方向の2番目の位置P12にあるノズル22の周辺、更には3番目の位置P13にあるノズル22の周辺を払拭することになる。このとき、ウェブ32とノズル面13aとの接触位置39に進入したインク28が、2番目のノズル22の周辺、更には3番目のノズル22の周辺を擦過し、ノズル面13aを摩耗させることになる。
図8に示す例では、ウェブ32の搬送方向に沿って延びる払拭跡29の幅全体が、2番目のノズル22及び3番目のノズル22の全体を覆うようにして払拭するため、2番目のノズル22及び3番目のノズル22の周辺全体がウェブ32に付着したインク28によって擦過されることとなり、ノズル22の周辺の摩耗度合が大きくなる。また、払拭跡29が更に延びるようであれば、擦過による影響が更に後続するノズル22の周辺にも広がっていくことになる。このようにノズル22の周辺の摩耗度合が大きくなる原因は、払拭跡29の延びる方向が複数のノズル22の配列方向に一致していることにある。
【0052】
そこで、本実施形態の画像形成装置1は、クリーニング装置30によってノズル面13aのクリーニングが行われている期間に揺動機構40を作動させ、インクジェットヘッド13に対してクリーニング装置30を揺動させるようにしている。
【0053】
図9は、クリーニング装置30を揺動させた場合にウェブ32に形成される払拭跡29の一例を示す図である。例えば、クリーニング装置30によってノズル面13aのクリーニングが行われている間、揺動機構40が、ウェブ32の搬送方向(矢印F2方向)に対して直交する方向(矢印F3方向)にクリーニング装置30を揺動させると、ウェブ32には、
図9に示すような払拭跡29が形成される。具体的には、ウェブ32に形成される払拭跡29は、複数のノズル22の配列方向に対して傾斜した方向に向かって形成される。つまり、ウェブ32は矢印F2と矢印F3とが合成されたベクトル方向に移動するため、ウェブ32に形成される払拭跡29は、インクジェットヘッド13のノズル面13aにおける複数のノズル22の配列方向に対して傾斜する。そのため、ウェブ32が複数のノズル22の配列方向の先頭の位置P11にあるノズル22の周辺を払拭することでウェブ32とノズル面13aとの接触位置39にインク28が進入すると、その接触位置39を基点として払拭跡29がウェブ32の搬送方向(矢印F2方向)の下流側において斜め方向に延びていくことになる。その状態で、ウェブ32とノズル面13aとの接触位置39が複数のノズル22の配列方向に沿って移動していくと、払拭跡29は、複数のノズル22の配列方向の2番目の位置P12にあるノズル22の周辺を払拭することになるが、
図9に示すように、払拭跡29は、幅全体の約半分が2番目の位置P12にあるノズル22の約半分を覆うだけである。つまり、払拭跡29が形成される方向を複数のノズル22の配列方向に対して傾斜させることにより、2番目の位置P12にあるノズル22の周辺においてインク28が擦過する面積を小さくすることができる。そのため、払拭跡29によるノズル22の周辺の摩耗度合を、
図8に示した例よりも小さくすることができる。
【0054】
ただし、
図9では、払拭跡29の幅全体の約半分の領域が下流側のノズル22の約半分を払拭するため、依然としてウェブ32に転移したインク28が後続するノズル22の周辺を擦過してしまうことは否めない。そこで、ウェブ32に形成される払拭跡29が後続するノズル22の周辺を払拭しないようにするためには、ウェブ32の搬送方向におけるウェブ32の搬送速度よりも、揺動機構40によるクリーニング装置30の揺動速度の方を速くすることが好ましい。
【0055】
図10は、クリーニング装置30を揺動させた場合にウェブ32に形成される払拭跡29の他の例を示す図であり、例えばウェブ32の搬送速度よりも、揺動機構40によるクリーニング装置30の揺動速度の方を速くした例を示している。
図10に示すように、ウェブ32の搬送方向におけるウェブ32の搬送速度よりも、揺動機構40によるクリーニング装置30の揺動速度の方を速くすると、複数のノズル22の配列方向に対する払拭跡29の傾斜角度が大きくなる。そのため、例えば複数のノズル22の配列方向の先頭の位置P11,P21にあるノズル22の周辺を払拭することでウェブ32とノズル面13aとの接触位置39にインク28が進入し、ウェブ32に払拭跡29が形成されるとしても、その払拭跡29は、後続する位置P12,P13にあるノズル22の周辺を払拭することはない。それ故、ノズル面13aに配置されている複数のノズル22周辺の摩耗度合を低減することが可能である。
【0056】
ところで、クリーニング装置30がノズル面13aをクリーニングする際のノズル面13aに付着したインク28の乾き具合によって、ウェブ32に形成される払拭跡29の長さが変わる。
図10に示した例から払拭跡29が更に延びる場合、払拭跡29は、隣接するノズル列の位置まで到達してしまい、隣接するノズル列にあるノズル22の周辺を払拭してしまう可能性がある。これを回避するためには、例えばウェブ32に形成される払拭跡29が隣接するノズル列に到達する前に揺動機構40によるクリーニング装置30の揺動方向を反転させることが好ましい。これを実現するため、例えば、揺動機構40が複数のノズル列L1~L6の配置間隔Wよりも小さい揺動幅Dでクリーニング装置30を揺動させれば良い。
【0057】
図11は、クリーニング装置30を揺動させた場合にウェブ32に形成される払拭跡29の他の例を示す図であり、例えば揺動機構40によるクリーニング装置30の揺動幅Dを複数のノズル列L1~L6の配置間隔Wよりも小さくした例を示している。クリーニング装置30の揺動幅Dをノズル列L1~L6の配置間隔Wよりも小さくすると、
図11に示すように、ウェブ32に形成される払拭跡29が隣接するノズル列に到達する前に払拭跡29の傾斜方向が切り替わる。そのため、ウェブ32とノズル面13aとの接触位置39に進入して残量しているインク28が隣接するノズル列のノズル22を払拭してしまうことを抑制できる。この場合、揺動機構40は、クリーニング装置30によるノズル面13aのクリーニングが行われている間、複数のノズル列L1~L6の配置間隔W未満となる一定の揺動幅Dでクリーニング装置30の揺動方向を反転させる動作を繰り返すようにすれば良い。
【0058】
クリーニング装置30の揺動方向が反転するとき、ウェブ32の搬送方向に直交する方向に対するクリーニング装置30の移動が一時的に停止する。クリーニング装置30が揺動方向に移動しているときには、ノズル面13aに対するウェブ32の押圧力はその揺動方向に分散されている。しかし、揺動方向が反転するときにクリーニング装置30が一時停止すると、ウェブ32の押圧力が分散されないため、ノズル面13aに対する押圧力が一時的に増加する。そのため、ウェブ32によるノズル面13aの擦過力が一時的に上昇し、ノズル面13aの摩耗を促進してしまうことになる。インクジェットヘッド13のノズル面13aは、撥水処理が施されており、クリーニング時にウェブ32がノズル面13aに付着したインク28を払拭しやすいように構成されている。ウェブ32によるノズル面13aの擦過力が一時的に上昇し、撥水処理が施されたノズル面13aの表層部分が剥がれてしまうと、その後のクリーニングにおいてウェブ32がインク28を良好に払拭することができなくなる。
【0059】
そこで、制御部9は、クリーニング装置30の揺動方向を反転させるとき、押圧部材36を制御し、ノズル面13aに対するウェブ32の押圧力を一時的に低下させる。すなわち、制御部9は、クリーニング装置30を一定の速度で移動させているときには押圧部材36によるウェブ32の押圧力を所定圧力に保持しており、クリーニング装置30の揺動方向を反転させるときには一時的にウェブ32の押圧力を所定圧力よりも低下させるのである。これにより、揺動方向を反転させる際に、撥水処理が施されたノズル面13aの表層部分が剥がれてしまうことを抑制することができるようになる。
【0060】
図12は、制御部9がクリーニング装置30の揺動方向を反転させる際の処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部9は、インクジェットヘッド13のノズル面13aのクリーニング動作を開始することに伴い、揺動機構40を駆動し、クリーニング装置30の揺動を開始する(ステップS10)。そして、制御部9は、クリーニング装置30が揺動方向を反転させる位置に到達したか否かを判断する(ステップS11)。クリーニング装置30が揺動方向を反転させる位置に到達すると(ステップS11でYES)、制御部9は、押圧部材36による押圧力を所定圧力から低下させる(ステップS12)。その後、制御部9は、クリーニング装置30の揺動方向を反転させる(ステップS13)。そしてクリーニング装置30の揺動方向を反転させた後、制御部9は、押圧部材36による押圧力を所定圧力に復帰させる(ステップS14)。そしてクリーニング動作が終了するまで、ステップS11~S14の処理を繰り返す。これにより、撥水処理が施されたノズル面13aの表層部分を剥がすことなく、ノズル面13aの全面を良好にクリーニングすることができる。その後、制御部9は、クリーニングが終了したと判断すると(ステップS15でYES)、クリーニング装置30の揺動を終了させる(ステップS16)。
【0061】
以上のように、本実施形態のクリーニング装置30は、インクジェットヘッド13のノズル面13aとの接触位置39に向けて清浄な払拭部材31であるウェブ32を連続的に送り出し、そのウェブ32によってノズル面13aをクリーニングするように構成されており、クリーニング装置30をノズル面13aにおける複数のノズル22の配列方向に沿って相対的に移動させると共に、クリーニング装置30をインクジェットヘッド13に対して揺動させることにより、ウェブ32に形成される払拭跡29を複数のノズル22の配列方向に対して傾斜させながらクリーニングを行う。このような構成によれば、ノズル面13aとウェブ32との接触位置39にインク28が進入した状態のままその接触位置39がノズル22の配列方向に移動したとしても、ノズル22の周辺の摩耗度合を従来よりも低減することが可能であり、インクジェットヘッド13を長寿命化できるという利点がある。
【0062】
(揺動機構40の他の構成例)
次に、揺動機構40の他の構成例について説明する。
図13は、上記とは異なる揺動機構40の例を示す図である。
図13に示す揺動機構40は、クリーニング装置30の一方の側面を押圧付勢する付勢部材48と、クリーニング装置30の他方の側面に接合するカム部材46と、カム部材46を回転させるモーター45とを備えている。付勢部材48は、例えばコイルバネによって構成され、クリーニング装置30の一方の側面をX方向に押圧付勢している。カム部材46は、例えば偏心カムなどによって構成され、モーター45の回転軸45aに接続されており、その回転軸45aを中心に回転する。モーター17は、カム部材46を回転させるように構成され、制御部9によって回転駆動される。クリーニング装置30の他方の側面には、カム部材46に当接する軸部材47が設けられている。カム部材46が回転すると、軸部材47とカム部材46との当接位置がX方向に変位する。この変位がクリーニング装置30を矢印F3方向に直線揺動させることになる。したがって、クリーニング装置30を揺動させる揺動機構40は、
図5に示した機構に代えて、
図13に示すような機構を採用しても良い。
【0063】
図14は、更に異なる揺動機構40を例示する図である。
図14に示す揺動機構40は、クリーニング装置30を円心揺動させるものである。この揺動機構40は、クリーニング装置30の下面側にモーター44が設けられ、鉛直方向に延びるモーター44の回転軸43がクリーニング装置30に接続されている。例えば、モーター44の回転軸43は、クリーニング装置30の底面中央に接続される。モーター44は、制御部9によって回転駆動され、回転軸43を所定角度範囲内で回動させることにより、クリーニング装置30を円心揺動させる。揺動機構40がクリーニング装置30を円心揺動させる場合であっても、上述した直線揺動と同様の作用効果を奏する。したがって、クリーニング装置30を揺動させる揺動機構40は、
図5に示した機構に代えて、
図14に示すような機構を採用しても良い。
【0064】
(払拭部材31の他の構成例)
次に、払拭部材31の他の構成例について説明する。
図15は、払拭部材31の他の構成例を示す図である。
図15に示すクリーニング装置30は、インクジェットヘッド13のノズル面13aを払拭する払拭部材31として、ローラー51を備えている。ローラー51は、インクジェットヘッド13のノズル面13aに接触した状態で所定方向(R方向)に回転することにより、ノズル面13aを払拭する。また、クリーニング装置30の内部には、ローラー51に転移したインクを取り除いてローラー51の表面を洗浄する洗浄部材52が設けられている。例えば、洗浄部材52は、ローラー51の表面に接触してローラー51の表面からインクを取り除くブラシ状のローラーによって構成される。したがって、クリーニング装置30は、ローラー51の軸部51aをR方向に回転させることにより、ノズル面13aとの接触位置に向けてローラー51の清浄な部分を順次連続的に送り出し、ノズル面13aとの接触位置においてノズル面13aを払拭することが可能である。このようにクリーニング装置30は、払拭部材31として、ノズル面13aとの接触位置に向けて清浄な部分を順次連続的に送り出すことが可能なローラー51を採用しても構わない。
【0065】
(実施例)
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。この実施例では、
図5に示したクリーニング装置30を用い、インクジェットヘッド13のノズル面13aのクリーニングを行った。使用したインクジェットヘッド13の解像度は600dpi、複数のノズル列L1~L6の間隔は1mmである。また、インクジェットヘッド13が矢印F1方向へ移動する移動速度は20mm/s、ウェブ32を矢印F2方向へ搬送する搬送速度は10mm/sである。このような条件の下で、下記実施例1~3及び比較例を実施した。
【0066】
<実施例1>
実施例1として、クリーニング装置30によるクリーニング開始から終了するまでの間、
図9に示すように揺動機構40を駆動してクリーニング装置30を揺動させた。揺動機構40によるクリーニング装置30の揺動速度は、0.4mm/sであり、ウェブ32の搬送速度よりも遅い速度である。
【0067】
<実施例2>
実施例2として、クリーニング装置30によるクリーニング開始から終了するまでの間、
図11に示すようにクリーニング装置30の揺動幅Dをノズル列の配置間隔W未満に設定してクリーニング装置30を揺動させた。揺動機構40によるクリーニング装置30の揺動速度は、0.8mm/sであり、ウェブ32の搬送速度よりも遅い速度である。
【0068】
<実施例3>
実施例3として、クリーニング装置30によるクリーニング開始から終了するまでの間、
図11に示すようにクリーニング装置30の揺動幅Dをノズル列の配置間隔W未満に設定してクリーニング装置30を揺動させた。揺動機構40によるクリーニング装置30の揺動速度は、12mm/sであり、ウェブ32の搬送速度よりも速い速度である。
【0069】
<比較例>
比較例として、クリーニング装置30によるクリーニング開始から終了するまでの間、揺動機構40を駆動せず、クリーニング装置30を揺動させなかった。
【0070】
<評価>
上記実施例1~3及び比較例を行った後、ノズル面13aの摩耗面積の増加比を算出すると共に、実際に記録媒体Pに画像を形成して画質の評価を行った。その評価結果を、
図16に示す。
【0071】
図16に示すように、比較例では、クリーニング動作中にクリーニング装置30を揺動させていないため、クリーニング回数が400回に達したときに摩耗面積の増加比が12%となり、10%を超えた。また、比較例では、クリーニング回数が400回に達したときに記録媒体Pに形成される画像の画質劣化が検知された。したがって、クリーニング装置30を揺動させない場合は、クリーニング回数が400回程度になると、インクジェットヘッド13を交換することが必要である。
【0072】
一方、実施例1では、クリーニング動作中にクリーニング装置30を揺動させるため、摩耗面積の増加比が10%を超えるクリーニング回数は600回となった。また、実施例1では、クリーニング回数が600回に達したときに記録媒体Pに形成される画像の画質劣化が検知された。したがって、実施例1のようにクリーニング装置30を揺動させると、比較例よりもインクジェットヘッド13を長期間に亘って使用することが可能である。
【0073】
また、実施例2では、クリーニング動作中にクリーニング装置30を実施例1よりも速い揺動速度で揺動させるため、摩耗面積の増加比が10%となるクリーニング回数は700回となった。また、実施例2では、クリーニング回数が700回に達したときに記録媒体Pに形成される画像の画質劣化が検知された。したがって、実施例2のようにクリーニング装置30を揺動させることにより、実施例1よりもインクジェットヘッド13を長期間に亘って使用することが可能である。
【0074】
更に、実施例3では、クリーニング動作中にクリーニング装置30をウェブ32の搬送速度よりも速い揺動速度で揺動させるため、クリーニング回数が1000回に達した場合でも摩耗面積の増加比が7%であり、10%未満を保持していた。また、実施例3では、クリーニング回数が1000回に達した場合でも記録媒体Pに形成される画像の画質劣化が検知されないため、継続的にインクジェットヘッド13を使用することができる。したがって、実施例3のようにクリーニング装置30を揺動させることにより、インクジェットヘッド13を長期間に亘って使用することが可能である。
【0075】
(変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例を適用することが可能である。
【0076】
例えば、上記実施形態では、揺動機構40がクリーニング装置30を揺動させる例を説明した。しかし、クリーニング装置30の揺動は、インクジェットヘッド13に対する相対的な動作であれば良い。そのため、揺動機構40は、インクジェットヘッド13を揺動させることにより、クリーニング装置30をインクジェットヘッド13に対して相対的に揺動させる構成としても構わない。
【符号の説明】
【0077】
1 画像形成装置
13 インクジェットヘッド
13a ノズル面
22 ノズル
30 クリーニング装置
31 払拭部材
32 ウェブ(払拭部材)
36 押圧部材(押圧手段)
40 揺動機構(揺動手段)
51 ローラー(払拭部材)
L1~L6 ノズル列