(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154293
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】車両の流体制御装置
(51)【国際特許分類】
B60J 7/22 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
B60J7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063535
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂ヶ平 雄作
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直人
(57)【要約】
【課題】車体の外観を損なうことなく、車室内を車外に対して開放する開口において気流により発生する騒音を抑制することができる車両の流体制御装置を提供する。
【解決手段】車両1の流体制御装置7、ルーフ開口10の縁部に設けられ、空気による噴流を発生させる複数のプラズマアクチュエータ12と、車体2に作用する風の風速及び風向きを検出する風圧センサ41と、各プラズマアクチュエータ12によって発生させる噴流を風速及び風向きに応じて制御し、車体2の表面に沿ってルーフ開口10を通過する気流に乱れを発生させる統合_ECU13と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外に対して車室内を開放する車体開口の縁部に設けられ、空気による噴流を発生させる噴流発生手段と、
車体に作用する風の風速及び風向きを検出する風検出手段と、
前記噴流発生手段によって発生させる前記噴流を前記風速及び前記風向きに応じて制御し、前記車体の表面に沿って前記車体開口を通過する気流に乱れを発生させる噴流制御手段と、を備えたことを特徴とする車両の流体制御装置。
【請求項2】
前記噴流発生手段は、プラズマアクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載の車両の流体制御装置。
【請求項3】
前記車体開口は、ルーフ開口であり、
前記ルーフ開口の車幅方向の内側に向けて前記噴流を発生させる前記噴流発生手段が、前記ルーフ開口の車幅方向の縁部に沿って複数設けられ、
前記噴流制御手段は、複数の前記噴流発生手段によって発生させる前記噴流の強さを個別に制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の流体制御装置。
【請求項4】
前記車体開口は、ルーフ開口であり、
前記車体の上側に向けて前記噴流を発生させる前記噴流発生手段が、前記ルーフ開口の後方の縁部に沿って複数設けられ、
前記噴流制御手段は、複数の前記噴流発生手段によって発生させる前記噴流の強さを個別に制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の流体制御装置。
【請求項5】
車外の走行環境情報を認識する走行環境認識手段と、
車内の騒音を検出する騒音検出手段と、を有し、
前記噴流制御手段は、前記走行環境情報及び前記騒音のレベルに応じて、前記噴流発生手段に対する制御量を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外に対して車室内を開放する車体開口において、風により発生する騒音を抑制するための車両の流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両においては、車体上部のルーフ部分にサンルーフを備えた車両が知られている。この種の車両では、ルーフに形成されたルーフ開口を開放した状態において、車両を低速の車速域にて走行させた際に、ウインドスロッブと呼ばれる低周波の騒音が発生する場合がある。このようなウインドスロッブの発生を抑制するため、一般に、車両には、ウインドディフレクタが設けられている。ウインドディフレクタは、ルーフ開口が開放された際に起立することにより、ルーフ開口の縁部に空気の渦流(気流)が衝突することを抑制する。これにより、ウインドスロッブの発生が抑制される。
【0003】
一方、ウインドディフレクタを起立させた場合、車両を高速の車速域にて走行させた際に、風切り音が発生する。特に、ウインドスロッブを効果的に抑制すべくウインドディフレクタに開口部等が形成されている車両では、風切り音の発生が顕著となる。
【0004】
これに対し、例えば、特許文献1には、ウインドディフレクタの開口部(貫通孔)を開閉するシャッタを備えたウインドディフレクタ装置が開示されている。この特許文献1に開示された技術では、車速域に応じて開口部を開閉させることにより、ウインドスロッブの抑制と風切り音の抑制との両立が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術は、開口部を閉塞することによって風切り音に対する抑制を図っているが、ウインドディフレクタを備えていることに変わりなく、ウインドディフレクタが風切り音の発生源であることに変わりない。従って、ウインドスロッブの抑制と風切り音の抑制とを高いレベルで両立することは、依然として困難である。
【0007】
また、上述の特許文献1に開示された技術のように、サンルーフにウインドディフレクタを設ける構成は、車体の外観を向上する観点からも好ましくない。
【0008】
本発明は、車体の外観を損なうことなく、車室内を車外に対して開放する車体開口において気流により発生する騒音を抑制することができる車両の流体制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による車両の流体制御装置は、車外に対して車室内を開放する車体開口の縁部に設けられ、空気による噴流を発生させる噴流発生手段と、車体に作用する風の風速及び風向きを検出する風検出手段と、前記噴流発生手段によって発生させる前記噴流を前記風速及び前記風向きに応じて制御し、前記車体の表面に沿って前記車体開口を通過する気流に乱れを発生させる噴流制御手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両の流体制御装置によれば、車体の外観を損なうことなく、車室内を車外に対して開放する開口において気流により発生する騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】サンルーフを閉塞時の車体の上部を示す斜視図
【
図2】サンルーフを開放時の車体上上部を示す斜視図
【
図6】車体の前方からルーフ開口を通過する気流に対する噴流の制御例を示す説明図
【
図7】車体の左斜め前方からルーフ開口を通過する気流に対する噴流の制御例を示す説明図
【
図9】第1の変形例に係り、ルーフ開口に対するプラズマアクチュエータの配置例を示す説明図
【
図10】第1の変形例に係り、プラズマアクチュエータを示す斜視図
【
図11】第1の変形例に係り、
図10のXI-XI線に沿う断面図
【
図12】第2の変形例に係り、ルーフ開口に対するプラズマアクチュエータの配置例を示す説明図
【
図13】第3の変形例に係り、ルーフ開口に対するプラズマアクチュエータの配置例を示す説明図
【
図14】第4の変形例に係り、ルーフ開口に対するプラズマアクチュエータの配置例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係り、
図1はサンルーフを閉塞時の車体の上部を示す斜視図、
図2はサンルーフを開放時の車体の上部を示す斜視図である。
【0013】
図1,2に示すように、車両(自車両)1は、車体2の上部にルーフパネル3を有する。ルーフパネル3には、サンルーフ装置5が設けられている。
【0014】
サンルーフ装置5は、ルーフパネル3に形成された車体開口としてのルーフ開口10と、ルーフ開口10を開閉するための可動ルーフパネル11と、噴流発生手段としての複数のプラズマアクチュエータ12と、車体統合制御ユニット(以下、統合_ECUと称す)13と、を有する。
【0015】
ルーフ開口10は、例えば、車室内を車外に開放するための矩形孔によって構成されている。このルーフ開口10の左右の側部には、ルーフ開口10の内側に突出するガイドレール14が設けられている(
図2参照)。ガイドレール14は、ルーフ開口10を開閉する可動ルーフパネル11をガイドする。
【0016】
可動ルーフパネル11は、例えば、矩形のガラス板によって構成されている。この可動ルーフパネル11にはルーフパネル3に内蔵されたパネル用モータ20が、図示しないパネル駆動機構を介して接続されている。
【0017】
これにより、可動ルーフパネル11は、ルーフ開口10を閉塞する進出位置(
図1参照)と、ルーフ開口10を開放する退避位置(
図2参照)と、の間をガイドレール14に沿って無段階に進退移動することが可能である。
【0018】
また、可動ルーフパネル11の外周部には、樹脂製のシール部材21が設けられている。このシール部材21により、可動ルーフパネル11は、進出位置に到達したとき、ルーフ開口10を液密に閉塞する。
【0019】
各プラズマアクチュエータ12は、統合_ECU13等とともに車両1の流体制御装置7を構成する(
図5参照)。
【0020】
図3,4に示すように、1つのプラズマアクチュエータ12は、軟性を有するシート状の絶縁基板15と、絶縁基板15に形成された単一の下部電極16と、下部電極16の上層に形成された誘電体層17と、誘電体層17の上層に形成された一対の上部電極18と、を有している。一対の上部電極18は、絶縁基板15の厚さ方向において、下部電極16と重畳しない位置に配置されている。さらに、一対の上部電極18は、下部電極16の両側において、互いに対向するように並んで配置さている。
【0021】
プラズマアクチュエータ12の下部電極16と、一対の上部電極18との間には、高周波の高電圧が印加される。これにより、各上部電極18は、下部電極16にそれぞれ近接する側のエッジから、空気の噴流を発生させる。これら各上部電極18において発生する噴流は、それぞれ、誘電体層17の壁面に沿って流れた後、合流する。これにより、プラズマアクチュエータ12は、絶縁基板15に交わる方向(例えば、直交する方向)に噴流を発生させる。
【0022】
このように構成された各プラズマアクチュエータ12は、例えば、車体2の前後方向に沿って、ルーフ開口10の左右の縁部にそれぞれ3個ずつ配置されている。具体的には、各プラズマアクチュエータ12は、例えば、ルーフ開口10を形成する左右の側壁にそれぞれ貼り付けられている。これにより、各プラズマアクチュエータ12は、ルーフ開口10の内側に向けて噴流を発生することが可能となっている。
【0023】
なお、以下の説明において、各プラズマアクチュエータ12を必要に応じて適宜区別するため、例えば、
図2,5においては、ルーフ開口10の左側の縁部に設けられたプラズマアクチュエータ12の符号として、前方から順に、「12l1」、「12l2」、「12l3」を付している。また、ルーフ開口10の右側の縁部に設けられたプラズマアクチュエータ12の符号として、前方から順に、「12r1」、「12r2」、「12r3」を付している。
【0024】
統合_ECU13は、可動ルーフパネル11の開閉制御、及び、各プラズマアクチュエータ12の駆動制御を行う。
【0025】
これらの制御を実現するため、例えば、
図5に示すように、統合_ECU13には、パネル開閉スイッチ40、風圧センサ41及び、マイク42が接続されている。
【0026】
パネル開閉スイッチ40は、例えば、車室内の運転席近傍に設けられている。
【0027】
風圧センサ41は、例えば、複数の圧力センサによって構成されている。この風圧センサ41は、例えば、フロントバンパに設けられている。風圧センサ41は、各圧力センサが風圧によって押圧されることにより、車体2の作用する風の風速(風圧)及び風向きを検出する。このように、風圧センサ41は、風検出手段としての一具体例に相当する。
【0028】
マイク42は、例えば、座席のヘッドレストに設けられている。これにより、マイク42は、乗員が聞くウインドスロッブや風切り音等の騒音と同等の騒音を検出する。このように、マイク42は、騒音検出手段としての一具体例に相当する。
【0029】
さらに、統合_ECU13には、走行制御ユニット(走行_ECU54)が接続されている。走行_ECU54は、車両1の運転支援制御を統括する。
【0030】
ここで、本実施形態において、走行_ECU54は、カメラユニット50に組み込まれている。カメラユニット50は、走行_ECU54の他に、ステレオカメラ51と、画像処理ユニット(IPU)52と、画像認識ユニット(画像認識_ECU)53と、を有して構成されている。なお、カメラユニット50は、例えば、車室内の上部において、当該車室の前部中央に固定されている。
【0031】
ステレオカメラ51は、メインカメラ51aと、サブカメラ51bと、を有する。メインカメラ51a及びサブカメラ51bは、例えば、CMOS等によって構成され、車幅方向の中央を挟んで左右対称な位置に配置されている。また、メインカメラ51a及びサブカメラ51bは、互いに同期された所定の撮像周期にて、車外前方の領域の走行環境を異なる視点からステレオ撮像する。
【0032】
IPU52は、ステレオカメラ51によって撮像した走行環境画像を所定に画像処理し、画像上に表された立体物や路面上の区画線等の各種対象のエッジを検出する。そして、IPU52は、左右の画像上において対応するエッジの位置ズレ量から距離情報を求める。これにより、IPU52は、距離情報を含む画像情報(距離画像情報)を生成する。
【0033】
画像認識_ECU53は、IPU52から受信した距離画像情報などに基づき、自車両1が走行する車線(自車進行路)の左右を区画する区画線の道路曲率〔1/m〕、及び左右区画線間の幅(車線幅)を求める。また、画像認識_ECU53は、自車両1が走行する車線に隣接する車線等の左右を区画する区画線の道路曲率及び左右区画線間の幅についても求める。これらの道路曲率及び車線幅の求め方は種々知られている。例えば、画像認識_ECU13は、道路曲率を走行環境情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小二乗法による曲線近似式などにて左右区画線の曲率を所定区間毎に求める。さらに、画像認識_ECU53は、左右両区画線の曲率の差分から車線幅を算出する。
【0034】
そして、画像認識_ECU53は、左右区画線の曲率と車線幅とに基づき、車線中央、及び、自車横位置偏差等を算出する。ここで、自車横位置偏差とは、車線中央から自車両1の車幅方向中央までの距離である。
【0035】
また、画像認識_ECU53は、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行う。これにより、画像認識_ECU53は、道路に沿って延在するガードレール、フェンス、縁石、及び、周辺車両等の立体物の認識を行う。ここで、画像認識_ECU53における立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と自車両1との相対速度などの認識が行われる。
【0036】
これら画像認識_ECU53において認識された各種情報は、走行環境情報として走行_ECU54に出力される。
【0037】
このように、本実施形態において、画像認識_ECU53は、ステレオカメラ51及びIPU52とともに、車外の走行環境情報を認識する走行環境認識手段としての一具体例に相当する。
【0038】
また、走行_ECU54には、各種のセンサ類として、ロケータユニット56と、自車両1の車速Vを検出する車速検出手段としての車速センサ57と、が接続されている。
【0039】
ロケータユニット56は、GNSSセンサ56aと、高精度道路地図データベース(道路地
図DB)56bと、を有して構成されている。
【0040】
GNSSセンサ56aは、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信することにより、自車両1の位置(緯度、経度、高度等)を測位する。
【0041】
道路地
図DB56bは、HDDなどの大容量記憶媒体である。この道路地
図DB56bには、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。道路地図情報には、例えば、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度データなどが含まれる。車線データは、道路地図上の各車線に、数メートル間隔で格納されている。さらに、道路地図情報には、道路種別(高速道路、或いは、一般道等の別)、及び、地表面粗度区分(沿岸地域、田園地域、一般地域、或いは、都市部等の別)に関する情報が格納されている。
【0042】
道路地
図DB56bは、例えば、走行_ECU54からの要求信号に基づき、GNSSセンサ56aにおいて測位された自車位置を基準とする設定範囲の道路地図情報を、走行環境情報として走行_ECU54に出力する。
【0043】
このように、本実施形態において、道路地
図DB56bは、GNSSセンサ56aとともに、車外の走行環境情報を認識する走行環境認識手段として一具体例に相当する。
【0044】
なお、走行_ECU54には、各種の制御ユニットとして、統合_ECU13の他に、図示しない、エンジン制御ユニット(E/G_ECU)と、トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)と、ブレーキ制御ユニット(BK_ECU)と、パワーステアリング制御ユニット(PS_ECU)と、がCAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を介して接続されている。
【0045】
そして、走行_ECU54は、各ECUに対する制御を通じて、追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)機能、車線中央維持制御(ALKC:Active Lane Keep Centering)機能等を実現する。
【0046】
統合_ECU13は、パネル用モータ20に対する駆動制御を介して、可動ルーフパネル11の開閉制御を行う。すなわち、統合_ECU13は、乗員によってパネル開閉スイッチ40が操作された際の操作信号に応じて、パネル用モータ20を駆動制御する。これにより、統合_ECU13は、可動ルーフパネル11によるルーフ開口10に対する開閉位置を制御する。
【0047】
また、統合_ECU13は、各プラズマアクチュエータ12に対する駆動制御を行う。各プラズマアクチュエータ12に対する駆動制御は、基本的には、風圧センサ41によって検出された、自車両1との風速及び風向きに基づいて行われる。なお、風圧センサ41によって検出された風速に代えて、車速Vに基づいて想定される風速(走行風の風速等)を用いることも可能である。この場合、車速センサ57は、風圧センサ41とともに、風検出手段としての一具体例に相当する。
【0048】
例えば、
図6に示すように、自車両1に対する気流の方向(風向き)が自車両1の前方から後方に向けて略自車両1の前後方向に沿った方向である場合(
図6中の太破線参照)、統合_ECU13は、各プラズマアクチュエータ12によって発生させる噴流を左右均等に制御する。すなわち、統合_ECU13は、左右対をなす、プラズマアクチュエータ12l1,12r1、プラズマアクチュエータ12l2,12r2、及び、プラズマアクチュエータ12l3,12r3において発生させる噴流の強さをそれぞれ等しく制御する。
【0049】
この場合において、統合_ECU13は、各プラズマアクチュエータ12において発生させる噴流の強さを、風速に応じて可変に制御する。
【0050】
また、統合_ECU13は、例えば、ルーフ開口10の後方となるほど噴流が相対的に弱くなるように各プラズマアクチュエータ12を制御する。すなわち、統合_ECU13は、プラズマアクチュエータ12l2,12r2からの噴流を、プラズマアクチュエータ12l1,12r1からの噴流よりも相対的に弱く制御する。また、統合_ECU13は、プラズマアクチュエータ12l3,12r3からの噴流を、プラズマアクチュエータ12l2,12r2からの噴流よりも相対的に弱く制御する。
【0051】
これらの制御により、ルーフ開口10の上方を通過する気流には、ルーフ開口10に対する位置(ルーフ開口10の横位置)に応じて異なる乱れが生じる。この気流の乱れにより、ルーフ開口10を通過した気流がルーフ開口10の後端に衝突するタイミングを、車幅方向の位置に応じて変化させることができる。これにより、ウインドスロッブの発生が抑制される。
【0052】
また、例えば、
図7に示すように、自車両1に対する気流の方向(風向き)が自車両1の左斜め前方から右斜め後方に向かう方向である場合(
図7中の太破線参照)、統合_ECU13は、各プラズマアクチュエータ12によって発生させる噴流を左右不等に制御する。すなわち、統合_ECU13は、左右対をなす、プラズマアクチュエータ12l1,12r1、プラズマアクチュエータ12l2,12r2、及び、プラズマアクチュエータ12l3,12r3において発生させる噴流の強さをそれぞれ不等に制御する。
【0053】
この場合において、統合_ECU13は、各プラズマアクチュエータ12において発生させる噴流の強さを、風速に応じて可変に制御する。
【0054】
また、統合_ECU13は、左側のプラズマアクチュエータ12l1,12l2,12l3において発生させる噴流を、ルーフ開口10の後方に位置するプラズマアクチュエータであるほど弱くなるように制御する。逆に、統合_ECU13は、右側のプラズマアクチュエータ12r1,12r2,12r3において発生させる噴流を、ルーフ開口10の後方に位置するプラズマアクチュエータであるほど強くなるように制御する。
【0055】
これらの制御により、ルーフ開口10の上方を通過する気流には、ルーフ開口10に対する位置に応じて異なる乱れが生じる。この気流の乱れにより、ルーフ開口10の右後側のコーナ部に大量の気流が衝突することが抑制される。これにより、ウインドスロッブの発生が抑制される。
【0056】
また、図示しないが、例えば、自車両1に対する気流の方向(風向き)が自車両1の右斜め前方から左斜め後方に向かう方向である場合も同様に、統合_ECU13は、各プラズマアクチュエータ12によって発生させる噴流を左右不等に制御する。
【0057】
この場合において、統合_ECU13は、各プラズマアクチュエータ12において発生させる噴流の強さを、風速に応じて可変に制御する。
【0058】
また、統合_ECU13は、右側のプラズマアクチュエータ12r1,12r2,12r3において発生させる噴流を、ルーフ開口10の後方に位置するプラズマアクチュエータであるほど弱くなるように制御する。逆に、統合_ECU13は、左側のプラズマアクチュエータ12l1,12l2,12l3において発生させる噴流を、ルーフ開口10の後方に位置するプラズマアクチュエータであるほど強くなるように制御する。
【0059】
これらの制御により、ルーフ開口10の上方を通過する気流には、ルーフ開口10に対する位置に応じて異なる乱れが生じる。この気流の乱れにより、ルーフ開口10の左後側のコーナ部に大量の気流が衝突することが抑制される。これにより、ウインドスロッブの発生が抑制される。
【0060】
その他、具体的な説明は省略するが、統合_ECU13は、自車両1に対して様々な方向から吹く風(気流)の風速及び風向きに応じて、各プラズマアクチュエータ12によって発生させる噴流を個別に制御する。なお、このような各方向から吹く風(気流)の風速及び風向きに応じて設定される各プラズマアクチュエータ12に対する制御量は、基本制御量として、予めマップ化されて統合_ECU13のROM等に格納されている。なお、各基本制御量は、実験やシミュレーション等に基づいて設定されるものである。
【0061】
但し、例えば、マイク42によって検出されたウインドスロップによる騒音レベルが予め設定された閾値以上である場合、統合_ECU13は、各プラズマアクチュエータ12に対する基本制御量を適宜補正する。
【0062】
さらに、各基本制御量に対する補正は、走行環境情報等に基づいても行うことが可能である。すなわち、自車両1が高速道路を走行中である場合、当該高速道路が、フェンス等の遮蔽物のないオープンエリアであるか否か、左右がフェンス等の遮蔽物によって囲まれたクローズドエリアであるか否か、片側のみにフェンス等の遮蔽物が存在する混合エリアであるか否か、或いは、トンネル内であるか否か等によって、同じ風向きの風であっても乱れ方が異なる。また、自車両1が一般道路を走行中である場合、当該一般道路が、沿岸地域であるか否か、田園地域であるか否か、一般地域であるか否か、或いは、都市部であるか否かによって、同じ風向きの風であっても乱れ方が異なる。
【0063】
また、自車両1の前方に先行車(前走車両)が存在する場合、前走車両がトラックであるか否か、前走車両が普通車であるか否か、前走車両が小型車であるか否か、或いは、前走車両が軽自動車であるか否か、及び、前走車両との車間距離によって、同じ風向きの風であっても乱れ方が異なる。
【0064】
そこで、統合_ECU13は、これらの条件に基づいて基本制御量を補正することも可能である。
【0065】
なお、統合_ECU13は、上述の各条件に基づく補正量は、予めマップ化されて統合_ECU13のROM等に格納されている。なお、各補正量は、実験やシミュレーション等に基づいて設定されるものである。
【0066】
このように、本実施形態において、統合_ECU13は、噴流制御手段としての一具体例に相当する。
【0067】
次に、各プラズマアクチュエータ12を用いた噴流制御について、
図8に示す噴流制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、統合_ECU13において、設定時間毎に繰り返し実行されるものである。
【0068】
ルーチンがスタートすると、統合_ECU13は、ステップS101において、サンルーフが開放されているか否かを調べる。すなわち、統合_ECU13は、可動ルーフパネル11の退避側への移動により、ルーフ開口10が開放されているか否かを調べる。
【0069】
そして、ステップS101において、サンルーフが開放されていないと判定した場合(ステップS101:NO)、統合_ECU13は、そのままルーチンを抜ける。
【0070】
一方、ステップS101において、サンルーフが開放されていると判定した場合(ステップS101:YES)、統合_ECU13は、ステップS102に進む。
【0071】
ステップS102において、統合_ECU13は、サンルーフが開放された後に、各プラズマアクチュエータ12に対する制御量が設定済みであるか否かを調べる。
【0072】
そして、ステップS102において、未だ制御量が設定されていないと判定した場合(ステップS102:NO)、統合_ECU13は、ステップS104に進む。
【0073】
一方、ステップS102において、制御量が設定済みであると判定した場合(ステップS102:YES)、統合_ECU13は、ステップS103に進む。
【0074】
ステップS103において、統合_ECU13は、各プラズマアクチュエータ12に対する制御条件に変動があったか否かを調べる。すなわち、統合_ECU13は、自車両1に対する気流の風向き及び風速、騒音レベル、及び、走行環境等に変動が合ったか否かを調べる。
【0075】
そして、ステップS103において、各プラズマアクチュエータ12に対する制御条件に変動がなかったと判定した場合(ステップS103:NO)、統合_ECU13は、各プラズマアクチュエータ12に対する前回の制御を維持したままルーチンを抜ける。
【0076】
一方、ステップS103において、各プラズマアクチュエータ12に対する制御条件に変動があったと判定した場合(ステップS103:YES)、統合_ECU13は、ステップS104に進む。
【0077】
ステップS102或いはステップS103からステップS104に進むと、統合_ECU13は、現在の制御条件に基づき、予め設定されたマップ等を参照して、各プラズマアクチュエータ12に対する制御量を設定する。すなわち、統合_ECU13は、例えば、自車両1に対する気流の風向き及び風速等に基づいて、各プラズマアクチュエータ12に対する各基本制御量を求める。また、統合_ECU13は、騒音レベル及び走行環境等に基づいて、各基本制御量に対する各補正量を求める。そして、統合_ECU13は、各基本制御量を各補正量によって補正することにより、各プラズマアクチュエータ12に対する制御量を設定する。
【0078】
ここで、自車両1の前方に先行車等が存在する場合、統合_ECU13は、先行車等から周期的に発生する渦流に対応するため、各プラズマアクチュエータ12からの噴流を、所定周期(例えば、4Hz程度の周期)毎に発生させることが望ましい。このように、基本制御量に対する補正量には、噴流の発生周期等を含ませることが可能である。
【0079】
続くステップS105において、統合_ECU13は、ステップS104で設定した各制御量に基づいて各プラズマアクチュエータ12に対する制御を実行した後、ルーチンを抜ける。
【0080】
このような実施形態によれば、車両1の流体制御装置7は、ルーフ開口10の縁部に設けられ、空気による噴流を発生させる複数のプラズマアクチュエータ12と、車体2に作用する風の風速及び風向きを検出する風圧センサ41と、各プラズマアクチュエータ12によって発生させる噴流を風速及び風向きに応じて制御し、車体2の表面に沿ってルーフ開口10を通過する気流に乱れを発生させる統合_ECU13と、を有する。
【0081】
これにより、車体2の外観を損なうことなく、ルーフ開口10において気流により発生する騒音を抑制することができる。
【0082】
すなわち、本実施形態の流体制御装置は、プラズマアクチュエータ12を用いて発生させる噴流によって気流に乱れを生じさせることで、ウインドスロッブ等の騒音を抑制する構成を採用している。従って、ウインドスロッブ等の抑制のために、車体2のルーフパネル3から上方に突出するウインドディフレクタ等を設ける必要がなく、車体2の外観を向上することができる。また、風切り音の発生源となるウインドディフレクタを設けない構成により、特段の対策を施すことなく、風切り音の発生を抑制することができる。従って、ルーフ開口10において気流により発生する騒音を効果的に抑制することができる。
【0083】
ここで、ルーフ開口10に対する各プラズマアクチュエータ12の配置については、種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、
図9に示すように、ルーフ開口10の前側の前部にプラズマアクチュエータ12f1~12f3を設けるとともに、ルーフ開口10の後側の縁部にプラズマアクチュエータ12b1~12b3を設けることも可能である。
【0085】
この場合、プラズマアクチュエータ12b1~12b3は、ルーフ開口10の上方に向けて噴流を発生するように構成されていることが望ましい。このような構成は、例えば、
図10,11に示すように、誘電体層17の上層に、単一の上部電極18を設けることにより実現することが可能である。
【0086】
また、例えば、
図12に示すように、ルーフ開口10の左右の縁部、及び、ルーフ開口10の前後の縁部に、それぞれプラズマアクチュエータ12を設けることも可能である。
【0087】
さらに、各プラズマアクチュエータ12から発生させる噴流の方向は、任意に変更することが可能である。例えば、
図13に示すように、左右のプラズマアクチュエータ12l1~12l3,12r1~12r3において発生させる噴流の方向を、ルーフ開口10の上方に設定することも可能である。
【0088】
また、例えば、
図14に示すように、ルーフ開口10の前側の縁部において、各プラズマアクチュエータ12f1~12f3をウインドディフレクタ45に設けることも可能である。このように、ルーフ開口10にウインドディフレクタ45を設ける場合であっても、各プラズマアクチュエータ12と組み合わせることにより、ウインドディフレクタ45の高さを低く設定することができる。従って、車体2の外観を維持し、且つ、風切り音の発生を抑制しつつ、ウインドスロッブの発生を効果的に抑制することができる。
【0089】
ここで、上述の実施形態において、統合_ECU13、画像認識_ECU53、及び、走行_ECU54等は、CPU,RAM,ROM、不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。なお、プロセッサの全部若しくは一部の機能は、論理回路あるいはアナログ回路で構成してもよく、また各種プログラムの処理を、FPGAなどの電子回路により実現するようにしてもよい。
【0090】
以上の実施の形態及び各変形例に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。
【0091】
例えば、上述のプラズマアクチュエータを、ルーフ開口のみならず、ドアウインドウ等に設けることも可能である。また、プラズマアクチュエータの数は、上述したものに限定されないことは勿論である。
【0092】
さらに、上述の実施の形態及び各変形例には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0093】
例えば、各形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0094】
1 … 車両(自車両)
2 … 車体
3 … ルーフパネル
5 … サンルーフ装置
7 … 流体制御装置
10 … ルーフ開口
11 … 可動ルーフパネル
12 … プラズマアクチュエータ
12b1,12b2,12b3 … プラズマアクチュエータ
12f1,12f2,12f3 … プラズマアクチュエータ
12l1,12l2,12l3 … プラズマアクチュエータ
12r1,12r2,12r3 … プラズマアクチュエータ
13 … 統合_ECU
14 … ガイドレール
15 … 絶縁基板
16 … 下部電極
17 … 誘電体層
18 … 上部電極
20 … パネル用モータ
21 … シール部材
40 … パネル開閉スイッチ
41 … 風圧センサ
42 … マイク
45 … ウインドディフレクタ
50 … カメラユニット
51 … ステレオカメラ
51a … メインカメラ
51b … サブカメラ
53 … 画像認識_ECU
54 … 走行_ECU
56 … ロケータユニット
56a … GNSSセンサ
56b … 道路地
図DB
57 … 車速センサ