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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154305
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】自動搬送フォークリフト
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
B66F9/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063553
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏志
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333FA05
3F333FA27
3F333FD14
(57)【要約】
【課題】コスト増を抑制しつつ、パレットの差込口の向きが基準となる方向からずれている場合でも、フォークを差込口に支障なく差し込むことができる自動搬送フォークリフトを提供する。
【解決手段】センサが、自動搬送フォークリフトの車体の前方の障害物を検出する。制御部が、車体の走行を制御する。制御部は、差込口が設けられたパレットに向かって走行しているときに、センサによるパレットの検出結果に基づいて、差込口への最適な差込走行経路を算出し、算出された最適な差込走行経路に沿って、第1基準点、及びパレットから見て第1基準点より遠い位置に第2基準点を設定する。制御部は、第2基準点に向かって車体を走行させる。その後、第2基準点から第1基準点に向かって車体を走行させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークを備えた車体と、
前記車体の前方の障害物を検出するセンサと、
前記車体の走行を制御する制御部と
を備えた自動搬送フォークリフトであって、
前記制御部は、
差込口が設けられたパレットに向かって走行しているときに、前記センサによる前記パレットの検出結果に基づいて、前記差込口への最適な差込走行経路を算出し、
算出された最適な差込走行経路に沿って、第1基準点、及び前記パレットから見て前記第1基準点より遠い位置に第2基準点を設定し、
前記第2基準点に向かって前記車体を走行させ、
その後、前記第2基準点から前記第1基準点に向かって前記車体を走行させる自動搬送フォークリフト。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2基準点から前記第1基準点に向かって前記車体を走行させるときに、前記車体を直進させる請求項1に記載の自動搬送フォークリフト。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2基準点に向かって前記車体を走行させるときに、前記第2基準点に向かって前記車体を直進させる請求項1または2に記載の自動搬送フォークリフト。
【請求項4】
前記パレットが置かれる受け渡し位置、及び前記受け渡し位置に置かれる前記パレットの標準姿勢が、予め設定されており、
前記制御部は、
前記受け渡し位置に前記標準姿勢で置かれた前記パレットの前記差込口への最適な差込走行経路に平行で、前記標準姿勢の前記パレットから前記差込口が向く方向に延びる参照経路に対して交差する方向に並ぶ複数の第1候補点及び複数の第2候補点の位置を記憶しており、
前記受け渡し位置から見て前記複数の第2候補点は前記複数の第1候補点より遠い位置に定義されており、
前記複数の第1候補点から前記第1基準点を選択し、前記複数の第2候補点から前記第2基準点を選択する請求項1または2に記載の自動搬送フォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送フォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
パレットに積載された荷物を自動搬送フォークリフト(AGF)で搬送する場合、一般的に、パレットは、予め決められた受け渡し位置に、決められた姿勢で置かれる。ただし、パレットが地面または床面に置かれる場合、機械的な位置決めガイドが設けられていないため、パレットの姿勢、例えば差込口の向きが基準となる方向からずれる場合がある。作業者がフォークリフトを運転している場合は、作業者がパレットの差込口の向きを確認し、差込口の正面からパレットに接近するようにフォークリフトを迂回させることができる。
【0003】
自動搬送フォークリフトのフォークの先端には、パレットの差込口を検出するためのセンサが取り付けられている。パレットの差込口が基準となる方向からずれているにもかかわらず、自動搬送フォークリフトが基準となる方向からパレットに接近すると、そのままでは差込口にフォークを差し込むことができないか、または差込通路の側面にフォークが接触してしまう。差込口にフォークを支障なく差し込むためには、差込口に対してほぼ正面からパレットに接近しなければならない。
【0004】
自動搬送フォークリフトからパレットにレーザレンジファインダのレーザビームを照射し、差込口の縁の画像に基づいて、支障なく差込口にフォークを差し込むことができるか否かを判定する自動搬送フォークリフトが知られている(特許文献1)。支障なくフォークを差し込むことができないと判定した場合は、自動搬送フォークリフトは、差込口の縁の画像が、予め取得されている正しい画像とマッチングするように操舵しながらパレットに接近する。これにより、差込口のほぼ正面からフォークを差込口に支障なく差し込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-19596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された自動搬送フォークリフトは、パレットに向かって走行している期間に常時差込口の画像を取得し、画像の解析結果に応じて走行経路を修正する。このため、パレットに接近している間の演算負荷が大きくなり、高性能のCPUを搭載することが必要になる。その結果、自動搬送フォークリフトの低コスト化を図ることが困難である。
【0007】
本発明の目的は、コスト増を抑制しつつ、パレットの差込口の向きが基準となる方向からずれている場合でも、フォークを差込口に支障なく差し込むことができる自動搬送フォークリフトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によると、
フォークを備えた車体と、
前記車体の前方の障害物を検出するセンサと、
前記車体の走行を制御する制御部と
を備えた自動搬送フォークリフトであって、
前記制御部は、
差込口が設けられたパレットに向かって走行しているときに、前記センサによる前記パレットの検出結果に基づいて、前記差込口への最適な差込走行経路を算出し、
算出された最適な差込走行経路に沿って、第1基準点、及び前記パレットから見て前記第1基準点より遠い位置に第2基準点を設定し、
前記第2基準点に向かって前記車体を走行させ、
その後、前記第2基準点から前記第1基準点に向かって前記車体を走行させる自動搬送フォークリフトが提供される。
【発明の効果】
【0009】
第2基準点から第1基準点に向かって自動搬送フォークリフトが走行することにより、フォークを最適な方向から差込口に差し込むことができる。最適な差込走行経路に沿うように第1基準点及び第2基準点を設定して走行経路を決定した後は、走行経路の修正を行わないため、演算負荷の増大を抑制することができる。これにより、自動搬送フォークリフトのコスト増を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施例による自動搬送フォークリフトの概略斜視図である。
図2図2は、荷役対象のパレットとフォークとの位置関係を示す斜視図である。
図3図3は、パレットに向かう走行経路とパレットとの位置関係を示す概略平面図である。
図4図4は、パレットが標準姿勢からずれた状態で置かれている場合の走行経路とパレットとの位置関係を示す概略平面図である。
図5図5は、一実施例による自動搬送フォークリフトの走行経路とパレットとの位置関係を示す概略平面図である。
図6図6は、一実施例による自動搬送フォークリフトの走行経路とパレットとの位置関係を示す概略平面図である。
図7図7は、一実施例による自動搬送フォークリフトの制御部が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図8図8は、他の実施例による自動搬送フォークリフトの荷役対象であるパレットと、最適な差込走行経路との位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図7を参照して、一実施例による自動搬送フォークリフトについて説明する。
図1は、一実施例による自動搬送フォークリフト10の概略斜視図である。車体19に、マスト15及び車輪18が取り付けられている。モータ17が車輪18を駆動するとともに、操舵を行う。制御部50がモータ17を制御することにより、作業エリア内で自動搬送フォークリフト10が所望の経路に沿って走行する。例えば、自動搬送フォークリフト10は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)方式により、作業エリア内を自律走行する。
【0012】
2本のフォーク11がマスト15に対して昇降可能に支持されている。昇降機構12がフォーク11を昇降させる。フォーク11は、L字型の部材の一部で構成されており、L字型の部材は、折れ曲がり箇所から前方に向かってほぼ水平に延びる部分と、上方に向かってほぼ鉛直に延びる部分とを含む。フォーク11は、折れ曲がり部分から前方に向かって延びる部分で構成される。L字状の部材は、折れ曲がり部分から上方に向かって延びる部分の上端に位置する支点14において、昇降機構12に対してチルト可能に支持されている。
【0013】
チルト機構13がフォーク11をチルトさせる。ここで、「チルト」とは、フォーク11を、水平面に対して上方向または下方向に傾ける動作を意味する。例えば、チルト機構13がL字状の部材の折れ曲がり部分を前方に押すと、フォーク11が上方向にチルトし、後方に引き込むと、フォーク11が下方向にチルトする。車体19に搭載された制御部50が昇降機構12を制御することにより、フォーク11を昇降させる。制御部50がチルト機構13を制御することにより、フォーク11をチルトさせる。
【0014】
車体19にセンサ16が搭載されている。センサ16は、車体19の前方の障害物を監視する。例えば、センサ16として二次元LiDARを用いることができる。センサ16による検出結果が制御部50に入力される。
【0015】
図2は、荷役対象のパレット60とフォーク11との位置関係を示す斜視図である。パレット60は、複数の天板61、複数の底板62、及び天板61と底板62とを間隔を隔てて接続する複数の桁63を含む。天板61、底板62、及び桁63によって囲まれた2つの差込口65が設けられている。2本のフォーク11を、それぞれ2つの差込口65からパレット60内の空間に差し込み、荷役作業を行う。
【0016】
次に、図3及び図4を参照して、比較例による方法で自動搬送フォークリフトがパレットに接近する経路について説明する。
【0017】
図3は、パレット60に向かう走行経路35とパレット60との位置関係を示す概略平面図である。パレット60を置く位置及びパレット60の姿勢は、予め決められている。差込口65からパレット60内に空洞が延びている。この空洞を、差込通路66ということとする。荷役作業時に、フォーク11が差込口65から差込通路66内に差し込まれる。予め決められたパレット60の姿勢を「標準姿勢」ということとする。標準姿勢が決まると、パレット60の差込口65が向く方向(差込通路66の長手方向)が決まる。
【0018】
自動搬送フォークリフト10の走行経路35は、自動搬送フォークリフト10が走行経路35に沿ってパレット60に接近したとき、2本のフォーク11がそれぞれ2つの差込口65に差し込まれる位置に設定されている。さらに、走行経路35は、標準姿勢で置かれたパレット60の差込口65が向く方向(差込通路66の長手方向)と平行である。このため、差込口65へのフォーク11の差し込み長さが長くなっても、フォーク11はパレット60の天板61、底板62、桁63等に接触するといった支障は生じない。
【0019】
図4は、パレット60が標準姿勢からずれた状態で置かれている場合の走行経路35とパレット60との位置関係を示す概略平面図である。比較例においては、パレット60の姿勢が標準姿勢からずれていても、パレット60が標準姿勢で置かれている場合(図3)の走行経路35と同一の走行経路に沿って自動搬送フォークリフト10が走行する。
【0020】
差込通路66の長手方向が走行経路35に対して傾いている。この状態で差込口65にフォーク11を差し込み、自動搬送フォークリフト10がそのまま前進すると、フォーク11の先端が差込通路66の側壁に接触する場合がある。以下に説明する実施例では、パレット60が標準姿勢からずれていても、フォーク11を差込通路66内に支障なく差し込むことができる。
【0021】
図5及び図6は、本実施例による自動搬送フォークリフト10の走行経路とパレット60との位置関係を示す概略平面図である。図5に示すように、パレット60が標準姿勢からずれた姿勢で配置されている。2つの差込口65の間の中心位置(2つの差込口65のそれぞれの中心を両端とする線分の中点)を、パレット60の接近目標点Ptということとする。パレット60が標準姿勢で配置されているときに、パレット60の接近目標点Ptから差込口65が向く方向(差込通路66の長手方向)に延びる経路を、参照経路31ということとする。参照経路31は、標準姿勢で置かれているパレット60の差込口65に支障なくフォーク11を差し込むための最適な接近経路である。
【0022】
標準姿勢からずれて置かれているパレット60の接近目標点Ptから、その差込口65が向く方向に延びる直線に沿う経路が、支障なくフォーク11を差し込むための最適な走行経路である。この走行経路を、最適な差込走行経路30ということとする。最適な差込走行経路30は、平面視において参照経路31に対してヨー角θだけ傾いている。
【0023】
自動搬送フォークリフト10は、予め設定されている参照経路31に沿ってパレット60に近づく。制御部50は、センサ16の検出結果、例えば二次元LiDARによるスキャン結果から、差込口65が設けられているパレット面及び差込口65の縁を検出する。この検出には、例えばハフ変換を用いることができる。この検出結果から、自動搬送フォークリフト10の現在位置からパレット60までの距離(例えば接近目標点Ptまでの距離)及びパレット60の姿勢(例えばヨー角θ)を計算する。
【0024】
自動搬送フォークリフト10がパレット60に所定の距離(以下、判定距離Lという。)まで近づくと、制御部50は、パレット60の姿勢に基づいて最適な差込走行経路30を決定する。
【0025】
制御部50は、最適な差込走行経路30に沿って、2つの第1基準点P1及び第2基準点P2を設定する。第1基準点P1及び第2基準点P2は、制御部50が記憶している作業エリアの環境マップ上に設定される。パレット60から見て第2基準点P2は第1基準点P1より遠い位置に設定される。パレット60の接近目標点Ptから第1基準点P1までの参照経路31に沿った距離L1及び第2基準点P2までの参照経路31に沿った距離L2は、予め設定されている。
【0026】
第1基準点P1及び第2基準点P2は、求められた最適な差込走行経路30上に設定するとよい。なお、第1基準点P1及び第2基準点P2は、最適な差込走行経路30からややずれた位置に設定してもよい。例えば、離散的に分布する複数の候補となる点から、最適な差込走行経路30に最も近い点を、第1基準点P1及び第2基準点P2として選択してもよい。
【0027】
制御部50は、第1基準点P1及び第2基準点P2を設定すると、図6に示すように現在位置から第2基準点P2に向かう方向に操舵し、第2基準点P2に向かって走行する。例えば、第2基準点P2に向かって直進する。この走行経路を、第2基準点P2に向かう走行経路32ということとする。自動搬送フォークリフト10が第2基準点P2に接近すると、制御部50は、自動搬送フォークリフト10を第1基準点P1に向かう方向に操舵し、第2基準点P2から第1基準点P1に向かって走行させる。例えば、自動搬送フォークリフト10は、第2基準点P2から第1基準点P1に向かって直進する。すなわち、自動搬送フォークリフト10は、ほぼ最適な差込走行経路30に沿って走行する。
【0028】
なお、自動搬送フォークリフト10が現在地から第2基準点P2に向かって直進する代わりに、自動搬送フォークリフト10が第2基準点P2に達した時点で、自動搬送フォークリフト10の正面が第1基準点P1を向くように、現在地から第2基準点P2までの経路を設定してもよい。例えば、第1基準点P1と第2基準点P2とを両端とする線分を第2基準点P2の側に延長した直線上の目標点に向かって、現在地からの走行を開始し、目標点に近づいたら、正面が第2基準点P2の方に向くように操舵するとよい。
【0029】
自動搬送フォークリフト10は、第1基準点P1を通過し、そのまま直進する。自動搬送フォークリフト10が直進すると、2本のフォーク11がそれぞれ2つの差込口65に差し込まれる。
【0030】
次に、図7を参照して制御部50が実行する処理について説明する。図7は、制御部50が実行する処理の手順を示すフローチャートである。自動搬送フォークリフト10がパレット60(図5)に向かって走行しているときに、パレット60の接近目標点Ptまでの距離が判定距離L以下になるまでパレット60に近づくと、パレット60の位置及び姿勢を検出する(ステップS1)。例えば、パレット60の接近目標点Pt(図5)の位置、及びヨー角θ図5)を算出する。
【0031】
制御部50は、パレット60の姿勢に基づいて、最適な差込走行経路30(図5)を算出する(ステップS2)。さらに、最適な差込走行経路30に沿って第1基準点P1及び第2基準点P2(図5)を設定する(ステップS3)。第2基準点P2を設定したら、制御部50は、現在地から第2基準点P2に向かって自動搬送フォークリフト10を走行させる(ステップS4、図6)。自動搬送フォークリフト10が第2基準点P2に接近したら、制御部50は、第2基準点P2から第1基準点P1に向かって自動搬送フォークリフト10を走行させる(ステップS5、図6)。
【0032】
制御部50は、自動搬送フォークリフト10が第1基準点P1に到達しても、自動搬送フォークリフト10をそのまま直進させ、フォーク11の差込動作を行う(ステップS6)。差し込み長さが所定の長さになったら、自動搬送フォークリフト10の前進を停止させる。その後、フォーク11を上昇させることにより、パレット60を保持する。パレット60を保持した後、予め決められた荷役作業を実行する。
【0033】
次に、上記実施例の優れた効果について説明する。
上記実施例では、自動搬送フォークリフト10が、パレット60の姿勢に応じて設定された最適な差込走行経路30(図5図6)に沿って走行し、パレット60にフォーク11を差し込むため、パレット60の姿勢が標準姿勢からずれていても、パレット60に支障なくフォーク11を差し込むことができる。
【0034】
さらに、上記実施例では、自動搬送フォークリフト10がパレット60に判定距離Lまで近づいた時点で、第1基準点P1及び第2基準点P2を設定する。その後は、第1基準点P1及び第2基準点P2に基づいて決まる走行経路に沿って走行する。第1基準点P1及び第2基準点P2を設定した後は、最適な差込走行経路30を決定するための複雑な演算は行わない。このため、自動搬送フォークリフト10がパレット60に近づくにつれて、最適な差込走行経路30を再計算して修正する方法と比べて、制御部50の演算負荷を低減させることができる。制御部50に、処理能力の低いCPUを用いることができるため、自動搬送フォークリフトの低コスト化を図ることが可能になる。
【0035】
次に、判定距離L、パレット60の接近目標点Ptから第1基準点P1までの参照経路31に沿った距離L1、及びパレット60の接近目標点Ptから第2基準点P2までの参照経路31に沿った距離L2の好ましい長さについて説明する。
【0036】
パレット60の接近目標点Ptから第1基準点P1までの距離L1(図5)が長くなると、第1基準点P1と第2基準点P2とを通過する直線の、接近目標点Ptからのずれが大きくなりやすい。このずれを小さくするために、距離L1をなるべく短くすることが好ましい。一例として、フォーク11の長さ程度、またはそれより短くすることが好ましい。極端な場合として、距離L1をゼロにしてもよい。すなわち、第1基準点P1をパレット60の接近目標点Ptに一致させてもよい。
【0037】
パレット60の接近目標点Ptから第2基準点P2までの距離L2が、判定距離Lより長くなると、自動搬送フォークリフト10から第2基準点P2に向かって走行しているときに、自動搬送フォークリフト10がパレット60から遠ざかってしまう。このため、走行距離が無駄に長くなり、作業効率が低下してしまう。作業効率の低下を抑制するために、距離L2を判定距離Lより短くすることが好ましい。判定距離Lは、例えば、3m以上5m以下である。
【0038】
第2基準点P2を第1基準点P1に近づけすぎると、第2基準点P2と第1基準点P1とを通過する直線が、最適な差込走行経路30からずれやすくなる。このずれの拡大を抑制するために、距離L1と距離L2との差を、距離L2と判定距離Lとの差以上にすることが好ましい。または、距離L2を判定距離Lの1/2以上にすることが好ましい。
【0039】
次に、図8を参照して他の実施例による自動搬送フォークリフトについて説明する。以下、図1図7を参照して説明した実施例による自動搬送フォークリフトと共通の構成については説明を省略する。
【0040】
図8は、本実施例による自動搬送フォークリフトの荷役対象を載せたパレット60と、最適な差込走行経路30との位置関係を示す平面的な模式図である。作業エリア内に、パレット60を置く位置(受け渡し位置70)が予め固定的に設定されている。例えば、多数の荷物を高密度に保管し、庫内の保管場所と、外部との受け渡し場所との間で荷物を自動搬送する高密度自動倉庫システムの受け渡し場所が、本実施例における受け渡し位置70に相当する。または、床に白線等の輪郭線を描いて、その場所を受け渡し位置70と決めてもよい。例えば、人がフォークリフトを操作して受け渡し位置70に荷物を置くことにより、荷物を自動搬送フォークリフトに引き継ぐことができる。
【0041】
受け渡し位置70にパレット60が標準姿勢で置かれているときに、パレット60の接近目標点Ptから、差込口65が向く方向に延びる直線を参照経路31と定義する。複数の第1候補点C1及び複数の第2候補点C2が、参照経路31に対して直交する方向に並んでいる。ここで、「直交」とは、幾何学的に厳密な意味で直交である必要はなく、直交関係からずれていてもよい。例えば、複数の第1候補点C1及び複数の第2候補点C2が、参照経路31に対して交差する方向に並んでいてもよい。
【0042】
受け渡し位置70から見て複数の第2候補点C2は複数の第1候補点C1より遠い位置に定義されている。複数の第1候補点C1及び複数の第2候補点C2の位置は、作業エリアの環境マップ上に定義されており、複数の第1候補点C1及び複数の第2候補点C2の位置情報が制御部50(図1)に記憶されている。第1候補点C1及び第2候補点C2の位置は、受け渡し位置70に対して固定されている。
【0043】
制御部50(図1)は、検出したパレット60の姿勢に基づいて最適な差込走行経路30を決定する(図7のステップS2)。複数の第1候補点C1のうち最適な差込走行経路30に最も近い位置の第1候補点C1を、第1基準点P1として採用する。同様に、複数の第2候補点C2のうち最適な差込走行経路30に最も近い位置の第2候補点C2を、第2基準点P2として採用する。
【0044】
次に、図8に示した実施例の優れた効果について説明する。
図8に示した実施例においても図1図7を参照して説明した実施例と同様に、パレット60の姿勢が標準姿勢からずれていても、パレット60に支障なくフォーク11を差し込むことができる。さらに、制御部50の計算負荷を低減させることができる。また、複数の候補点から選択して第1基準点P1及び第2基準点P2を設定するため、第1基準点P1及び第2基準点P2の設定処理が容易になるという優れた効果が得られる。
【0045】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0046】
10 自動搬送フォークリフト
11 フォーク
12 昇降機構
13 チルト機構
14 支点
15 マスト
16 センサ
17 モータ
18 車輪
19 車体
30 最適な差込走行経路
31 参照経路
32 第2基準点に向かう走行経路
35 走行経路
50 制御部
60 パレット
61 天板
62 底板
63 桁
65 差込口
66 差込通路
70 受け渡し位置
C1 第1候補点
C2 第2候補点
P1 第1基準点
P2 第2基準点

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8